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特開2024-25787間隔が密な浸漬平膜及び微細気泡エアレーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025787
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】間隔が密な浸漬平膜及び微細気泡エアレーション
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/08 20060101AFI20240216BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240216BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20240216BHJP
【FI】
B01D63/08
C02F1/44 D
C02F3/12 S
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023196728
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2020573490の分割
【原出願日】2019-07-02
(31)【優先権主張番号】62/693,617
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520513244
【氏名又は名称】フィブラキャスト リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ダイアナ ベネデック
(72)【発明者】
【氏名】ババク ラクゴミ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エム.ターンブル
(57)【要約】
【課題】浸漬膜ろ過ユニットにおける、平膜モジュールの連続的且つ効果的な動作を可能にし、生産性の低減を抑止すること。
【解決手段】浸漬膜ろ過ユニットであって、
平膜のモジュールであって、前記平膜の膜間の対面間隔が4mm以下である、平膜のモジュールと、
前記膜の下方にある微細気泡エアレーターであって、4mm以下、3mm以下のサイズを有するか、又は前記膜間の間隔よりも100%を超えて、若しくは50%を超えて大きいことはないサイズを有する気泡を生成するように形成されている、微細気泡エアレーターと、
を含む、浸漬膜ろ過ユニット。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬膜ろ過ユニットであって、
平膜のモジュールであって、前記平膜の膜間の対面間隔が4mm以下である、平膜のモジュールと、
前記膜の下方にある微細気泡エアレーターであって、4mm以下、3mm以下のサイズを有するか、又は前記膜間の間隔よりも100%を超えて、若しくは50%を超えて大きいことはないサイズを有する気泡を生成するように形成されている、微細気泡エアレーターと、
を含む、浸漬膜ろ過ユニット。
【請求項2】
前記微細気泡エアレーターが、2mm以下、又は前記膜間の対面間隔以下であるサイズを有する気泡を生成するように形成されている、請求項1に記載の浸漬膜ろ過ユニット。
【請求項3】
前記膜間の対面間隔が3mm以下、2mm以下、又は1.5mm以下である、請求項1又は2に記載の浸漬膜ろ過ユニット。
【請求項4】
前記膜間の対面間隔が3mm以下、例えば約2.2mmであり、前記微細気泡エアレーターの開口が直径5mm以下、例えば約4mmである、請求項1に記載の浸漬膜ろ過ユニット。
【請求項5】
前記膜間の対面間隔が2mm以下、例えば約1.5mmであり、前記微細気泡エアレーターの開口が直径3mm以下、例えば約2mmである、請求項1に記載の浸漬膜ろ過ユニット。
【請求項6】
前記膜が波状面を有している、請求項1から5までのいずれか1項に記載の浸漬膜ろ過ユニット。
【請求項7】
互いに隣接する膜の波が異なる高さにある、請求項6に記載の浸漬膜ろ過ユニット。
【請求項8】
水をろ過する方法であって、
水中に平膜モジュールを浸漬する工程であって、前記モジュールの前記膜間の間隔が4mm以下である、工程と、
前記膜の下方に気泡を生成する工程であって、前記気泡が5mm以下、又は3mm以下のサイズを有するか、又は前記膜間の間隔よりも100%を超えて又は50%を超えて大きいことはないサイズを有している、工程と
を含む、水をろ過する方法。
【請求項9】
前記気泡のサイズが2mm以下であるか、又は前記膜間の間隔以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記膜間の間隔が3mm以下、2mm以下、又は1.5mm以下である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記膜間の対面間隔が3mm以下、例えば約2.2mmであり、微細気泡エアレーターの開口が直径5mm以下、例えば約4mmである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記膜間の対面間隔が2mm以下、例えば約1.5mmであり、微細気泡エアレーターの開口が直径3mm以下、例えば約2mmである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記膜が波状面を有している、請求項8から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
互いに隣接する膜の波が異なる高さにある、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2018年7月3日付けで出願された米国仮出願第62/693,617号明細書の優先権を主張する。前記明細書は参照することにより本明細書中に援用される。
【0002】
分野
本明細書は、浸漬式膜(submerged membranes)とも呼ばれる浸漬膜(immersed membranes)、及びその操作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
以下のものは、後述のいかなるものも共通の一般知識であること又は従来技術として引用可能であることを認めるものではない。
【0004】
浸漬ろ過膜はプレート・フレームとも呼ばれる平板の形態で形成することができる。この形態の場合、不織布基体ロール上にポリマー分離層キャストをキャスティングすることにより、膜板ロールが形成される。2つのほぼ方形の膜板片の縁部が、中空プラスチックフレームの互いに対向する側に取り付けられる。これにより、透過水(permeate)とも呼ばれるろ過済水を収集するための中空内部チャネルを備えたパネルが形成される。透過水は、膜の内部に加えられる吸引力によって引き抜かれる。いくつかのパネルがサイドバイサイド式にフレーム内に滑り込む。フレームは被ろ過水内へ浸漬することができる。被ろ過水は典型的には、開放槽内に保持される。パネルの内側は、膜板を通して透過水を引き出すためにポンプの吸い込み側に接続されている。フレームの下方から提供された気泡は、気泡と液体との混合流を、パネル間の鉛直方向スロットを通って上昇させ、これにより膜表面をきれいに保つ。このタイプの装置例は、すべて株式会社クボタによって所有される米国特許第5,482,625号明細書、米国特許第5,651,888号明細書、米国特許第5,772,831号明細書、米国特許第6,287,467号明細書、及び米国特許第6,843,908号明細書に示されている。
【0005】
平膜モジュールは概ね堅牢であり、(中空糸膜と比較して)単位面積あたりの製造コストが低い。なぜならば、平膜モジュールは広幅板の形でキャスティングし得るからである。しかしながら、コンベンショナルな平膜は充填密度(モジュール単位体積当たりの膜表面積)が中空糸膜と比較して低い。
【0006】
平膜エレメントの変更形がMicrodyn-Nadir GMBHの国際公開第2007/036332号パンフレットに示されている。これらのエレメントにおいて、2つの緻密層間に多孔質中心領域を有するファブリックの正面側及び背面側上に2つの膜層がキャスティングされる。中心領域は透過水チャネルを提供し、そしてまた2つの緻密層を互いに結合して、エレメントが機械的清浄化のために逆洗されるのを可能にする。これらのエレメントは4つのサイドを有するフレームを必要とせず、約2mm厚であり、この厚さは上述のプレート・フレームエレメントよりも薄い。しかしながら、これらのエレメントはまた可撓性でもあり、フレーム内で約10mmだけ中心間で離隔されている。充填密度は上述のプレート・フレームエレメントよりも良好ではあるものの、中空糸膜モジュールよりもまだ著しく低い。同様の平膜ではあるが、しかし透過水チャネルが一体化されている平膜が、国際公開第2012/098130号パンフレット、及び米国特許第7,862,718号明細書に記載されている。
【0007】
波状平膜が国際公開第2011/130853号パンフレットに記載されている。上述の平滑面型平膜とは異なり、これらの膜は、一連の平行な凹部を有するように形成された2つの基板から成っている。これらの凹部は凹部間で互いに結合されている。凹部は膜の内側に透過水チャネルを形成する。米国特許出願公開第2017095773号明細書には、粗大気泡エアレーター、及び波状平膜の操作方法が記載されている。
【0008】
粗大気泡エアレーターは、クロスフローモードで膜表面へ移動する空気、液体、及び固形物の複合運動エネルギーを用いて、浸漬膜の表面をきれいに保つための手段として多年にわたって使用されている。粗大気泡ディフューザから生じる典型的な気泡の直径は5~9mmである。Simon Juddは、The MBR Book: Principles and Applications of Membrane Bioreactors for Water and Wastewater, Elsevier Science, April 2011において、「伝統的に見れば、微細気泡拡散はバイオマスエアレーションのために用いられ、そして分離粗大気泡エアレーションシステムは膜の洗い流し(scouring)のために適用されている」(第129ページ)、そして「乱流が増大し、ひいては剪断力が形成されるという理由から、膜エアレーションは通常、粗大気泡エアレーションを用いて行われる」(第130ページ)、と要約している。
【発明の概要】
【0009】
序章
以下の序章は、読者をこれに続く詳細な説明に導こうとするものであり、特許請求の範囲に係る発明を限定又は定義しようとするものではない。
【0010】
出願人によって製造される、国際公開第2011/130853号パンフレットに記載された平膜のモジュールは、膜の間隔が極めて密に形成されている(典型的には対面間隔は約1.5mmであるがしかし2.2mm間隔及び3.8mm間隔まで形成可能である)。いくつかの事例では、具体的には1.5mm間隔の場合、膜はたった数時間の動作後に顕著な量の透過性を失う。5~10分毎に膜を逆洗することによって透過性を回復させようとすると、このような試みはモジュールの回収率を低減し、いくつかの事例では見かけ透過性を実質的には改善しない。
【0011】
見かけの透過性損失は有効表面積の損失によって実際に引き起こされると、発明者は考える。膜板が動くのに伴って、互いに隣接する板の中心はモジュールの内側で互いに接触することができる。2つの膜板が互いに接触したあと、これらの膜板は互いにくっつきあうことがある。膜の内側に加えられた吸引力が膜を一緒に保持するのを助け得るものの、粗大気泡が接触の問題を引き起こしていると発明者は仮定した。チャネル内へと変形された大型気泡が、効果的な洗い流しを可能にすることが知られている。しかしながら、平膜が密に離隔されている場合、粗大気泡は、いくつかの隣接膜板対を押し離し、これにより他の隣接膜対を強制的に一緒にすることによって、モジュールを通る大きな優先通路を形成する。
【0012】
さらに詳細に後述するように、微細気泡エアレーターを使用すると、板が密に離隔されたモジュールの透過性が改善される。微細気泡は、隣接する板対を押し離すことなしに、膜板間で均一に分散するように見える。任意には、微気泡のサイズは5mm未満、又は4mm以下、又は3mm以下であってよい。任意には、微気泡は、膜板間の対面間隔よりも最大で約100%大きいか、又は最大で約50%大きくてよい。任意には、気泡のサイズは膜板間の間隔にほぼ等しいか、又はこれよりも大きくてよい。膜板は波状であるか、或いはテクスチャ化されているか、或いは平滑面化されていてもよい。膜板は、鉛直方向に配向された平行な平面の集合の形で配列されていてよい。膜板間の間隔は4mm以下、3mm以下、又は2mm以下であってよい。任意には、微気泡ディフューザは、膜板に対して平行に配向されていてよい。ディフューザは、膜板の下方の、例えば10mm~300mm、又は50~200mmのところに配置されていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、膜板を示す端面図である。
図2図2は、図1におけるような膜板を含む膜モジュールを示す立面図である。
図3図3は、供給液及び透過水の流れ方向を示す破断したモジュールの概略斜視図である。
図4図4は、積み重ねられた図2のモジュールのうちの3つを示す立面図である。
図5図5は、図2のモジュールのうちのいくつかを含有するブロックを示す等角図である。
図6図6は、積み重ねられた図5のブロックのうちの3つを有するカセットを示す等角図である。
図7図7は、槽内に位置する図6のカセットを示す立面図の断面である。
図8図8は、膜板の間隔及び配列を示すモジュールの断面図である。
図9図9は、種々の流束及びエアレーションレベルにおける粗大気泡と微気泡とを比較する透過性研究のグラフである。
図10図10は、透過性に対する気泡サイズの効果を示す透過性研究のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
具体的には0.1%を上回る固形物を含有する水の場合、気泡のない開放槽を通る水流は、流束及び膜生産性を維持するには十分ではない。大抵の浸漬膜は、膜表面の洗い流しを行い、ひいては流束を維持するために、粗大気泡エアレーションを用いる。粗気泡は、表面の効果的な洗い流しをするのに十分なエネルギーを有しており、大抵の膜製造業者の標準的な選択肢である。微細気泡ディフューザ(すなわち5mm直径の円の面積よりも小さい面積を有する開口を備えたディフューザ)は、極めて大量の小型気泡を発生させる。これらの小型気泡は典型的には膜表面の洗い流しをする上であまり効果的ではない。しかしながら、膜板の間隔が密な平膜モジュールという文脈においては、微細気泡は、膜の透過性を維持する上で効果的である。
【0015】
粗大気泡エアレーションはいくつかの用途において有用ではあるが、しかし、すべての用途において、膜板の間隔が密な状態で高い流束を維持する際には効果的ではない。理論に縛られるつもりはないが、粗大気泡によって、表面積が膜の接触に起因して損なわれることがある。他面において、間隔が密な膜板アレイを備えた微細気泡空気ディフューザを使用する場合、任意には気泡サイズが、膜板間の間隔よりも100%を超えて、又は50%を超えて大きいことはない場合、膜板は分離されたままである。任意には、気泡のサイズは、膜板間の間隔とほぼ等しいか又はこれよりも大きくてよい。気泡は板間のセパレータ又はスペーサとして作用することができ、或いは、板を少なくとも押し合わせることがない。膜表面のほぼ全てがアクティブなままである。膜板間の対面間隔は4mm以下、3mm以下、又は2mm以下であってよい。
【0016】
浸漬膜板は、モジュール内で密に離隔されている。例えば、膜板の対面間隔は4mm以下、3mm以下、又は2mm以下であってよい。モジュールは開放槽内に置かれ、透過水が吸引によって引き抜かれる。微細気泡エアレーターから生じた気泡は、隣接平膜対間で上昇する。気泡は板を互いに分離し、膜の洗い流しを行い、且つ/又は水中の微生物による生物学的取り込みのために酸素を提供することができる。
【0017】
浸漬膜システムは微細気泡エアレーターと膜モジュールとを組み合わせて含む。微細気泡エアレーターは任意の商業的に入手可能な微細気泡エアレーター又はカスタムメイドであってよい。微細気泡エアレーターはモジュールの下側及び/又は間、且つ/又は浸漬膜板のカセットの下側及び/又は間に取り付けられてよい。微細気泡エアレーターは典型的には膜モジュールの下に配置される。気泡が膜の底部の下方で放出されるか、又は膜の底部の上方約100mmの範囲内で放出される場合には、エアレーターはモジュールの下方にあると考えられる。しかしながら、微細気泡エアレーターは典型的には膜板の底部の下方10~300mm、又は50~200mmのところに配置される。微細気泡エアレーターは細長い形状を有していてよく、任意には膜板に対して平行に配向されていてよい。
【0018】
膜板は互いに密な間隔を置いて設けられており、例えばこれらの間の鉛直方向に延びるギャップ(すなわち対面間隔)は4mm以下、3mm以下、又は2mm以下、又は1.5mm以下である。微細気泡エアレーターは任意には、膜板間の対面間隔(すなわち鉛直方向に延びるギャップ)よりも100%を超えて、又は50%を超えて大きいことはないサイズ、任意には膜板間の間隔(すなわち鉛直方向に延びるギャップ)よりも大きくないサイズを有する気泡を生成するように形成され、操作される。気泡サイズは、気泡を生成するエアレーターに設けられた開口の面積に対して等しい面積を有する円の直径であると想定することができる。或いは、エアレーターが最も下側に位置する膜の底部の下方300mmを超える場所にある例では、気泡サイズは、開放槽内に典型的又は公称(nominal)浸漬操作深さで浸漬されたモジュールの底部、若しくは鉛直方向に積み重ねられたモジュールのカセット内の最も下側に位置するモジュールの底部で、又はその高さ近く、例えばこれから100mm以内の範囲で、気泡を測定することにより得ることができる。気泡は典型的には概ね単一のサイズであるが、しかし気泡サイズは任意には、中央値、又は好ましくは数平均気泡サイズとして測定されてもよい。微細気泡は、任意には4mm以下、3mm以下、2mm以下の任意の膜板間対面間隔を有するモジュールに対して、直径5mm以下、直径4mm以下、直径3mm以下、又は直径2mm以下であってよい。
【0019】
微細気泡エアレーターは板間に間隔を形成するために使用することができる。膜板は密に離隔されており、気泡を使用しなければ「キス」又は接触し、そして遮蔽(blind)するおそれがある。
【0020】
単一のモジュールの下、又は複数のモジュール、例えば鉛直方向に積み重ねられたモジュールを含有するカセットの下に微細気泡エアレーターを取り付けることができる。膜板の縁部に設けられたヘッダ又は他の構造エレメントは、もしあるならば、水平又は鉛直であってよい。
【0021】
膜板間に空間を形成又は維持するために気泡を使用することは、板間に物理的スペーサを加えることよりも好ましい。高い固形分含量、例えば膜バイオリアクタ内の活性汚泥を有する水をろ過するために膜板を使用する場合には、物理的スペーサは自由な固形物流を妨げ、或いは水流中に渦を形成することになる。物理的スペーサは汚泥堆積物を蓄積しやすく、汚泥堆積物は膜板全体にわたって膨張することになる。
【0022】
より高い流束、例えば18GFD以上で動作するときに、微細気泡の効果は最も注目に値する。浸漬膜内の流束を増大させる方法は、真空を増大させることであり、このことは、板が互いに接触することにより有効表面積が失われると、より多くの板を接触したままにさせるおそれがある。したがって、膜板と微細気泡との接触を防止することは、流束が高いほどより有益であり得る。
【0023】
図面は、間隔が密な膜板を備えたモジュールと、微細気泡エアレーターとの一例を示している。
【0024】
図1は膜板10を示している。膜板10は、内部チャネル14を提供するように形成され互いに結合された2つの基板12から形成されている。基板12の外側には多孔質分離層16が被覆されている。分離層16は限外ろ過範囲又は精密ろ過範囲の孔を有していてよい。2つの基板12間の中間板18は任意ではあるが、しかしより剛性の膜板10を提供するために加えられてよい。或いは、膜板10は平滑な面を有する平膜であってもよい。平滑面型平膜は例えば内部フレーム構造、内部透過水スペーサ構造、又は一体型透過水チャネル構造を有していてよい。膜板10は精密ろ過(MF)又は限外ろ過(UF)の範囲の孔を有していてよい。
【0025】
図2は膜モジュール20を示している。モジュール20は1つ又は2つ以上の膜板10を有している。内部チャネル14に対して開いた膜板10の縁部(すなわち図1に示された縁部)は、埋め込みヘッド又は透過水コレクタとも呼ばれるヘッド22内に埋め込まれている。使用時には、ヘッド22は概ね鉛直方向に配向され、そして内部チャネル14は概ね水平方向に配向される。ヘッダ22の透過水ポート24に加えられる吸引力により、透過水26が内部チャネル14内で生成され、そしてヘッダ22を貫流させられる。モジュール20は典型的には複数の平行な膜板10を有している。典型的には概ね等しい幅を有する鉛直方向のギャップによって、互いに隣接する膜板10が分離されている。膜板10間には、板形状の供給側スペーサ、例えばメッシュは存在しない。好ましくは、膜板10間には断続的なスペーサ、例えば一組の鉛直方向バーも存在しない。好ましくは、互いに隣接する膜板10間のギャップは開いている。
【0026】
膜バイオリアクタ(MBR)内で使用する場合、モジュール20を保持する開放槽に、典型的には活性汚泥法に基づいて混合液(mixed liquor)が充填される。膜モジュール20及び槽は二次浄化器の代わりとなる。モジュール20の下方から提供された気泡28は、混合液30が、互いに隣接する膜板10間のギャップを通ることを含めて、上方へ向かってモジュール20を通って流れるのを助け、或いはこのような流れを引き起こす。
【0027】
図3は、モジュール20を通る混合液30(又は別の供給液)の流れをさらに示すために切開されたモジュール20の概略斜視図である。膜板10の起伏形状は、混合液が上昇するのに伴って、混合液30中に乱流を形成する。膜板10は、これらの間を混合液30及び気泡28が移動するのに伴って振動する。気泡28は、混合液流を支援するか又は引き起こすのに加えて、膜板10の何らかの直接的な洗い流しを可能にする。
【0028】
図4は、3つのモジュール20のスタック32を示している。モジュール20はそれぞれの頂部に鉛直方向に積み重ねられている。下側モジュールの透過水部分24は上側モジュールのヘッダ22内に設けられたソケット(見ることができない)内に嵌り込む。最も下側のモジュール20のソケットは塞がれている。最も上側のモジュールの透過水部分24は、透過水引き込み管に接続し、3つすべてのモジュール20からの透過水を引き込むために使用することができる。スタック32は2つ、4つ、又は他の数のモジュール20を有するように形成されてもよい。互いに隣接するモジュールのヘッダ22が鉛直方向に整列され且つ連続しているため、供給液は、ヘッダ22によって妨げられることなしに、スタック32全体を通って鉛直方向に流れることができる。
【0029】
図5は、フレーム42内に複数のモジュール20を含有するブロック40を示している。モジュール20はフレーム42内にサイドバイサイド式に配置されている。モジュール20はフレーム42内へ又はフレーム42から外部へ鉛直方向にスライドすることができる。フレーム42内にあるときには、モジュール20のヘッダ22は、図示の例では、フレーム42に取り付けられたプラスチック成形物によって形成された対応スロット44内へ嵌まり込んでいる。
【0030】
図6は、1つのブロックが他のブロックの頂部上に位置する形で、鉛直方向に互いに積み重ねられた3つのブロック40から形成されたカセット50を示している。任意には、カセット50は、1つ、2つ、4つ、又は他の数のブロック40を有していてよい。上側ブロック40の透過水部分24は、任意には図示のような接続管52を通して、透過水ヘッダ管54に接続されている。ブロック40のフレーム42は、ストラット58によって互いに結合されている。これらのストラットは、図示の例では、端部にナットを有するねじ山付きロッドである。ストラット58はまた上側ブロック40をカセットフレーム56に取り付ける。カセットフレームは、槽内にカセット50を懸吊するために使用することができる。最も下側のブロック40の下側に位置する一組のエアレーター(見ることができない)に空気が供給されるように、給気管60がカセットの底部へ空気を運ぶ。
【0031】
図7は、槽70内に設けられたカセット50を示している。カセットフレーム56は、槽70の壁上に、具体的には図示の例では槽70に取り付けられた棚状の突起(ledges)72上に載置されている。或いは、カセット50は槽70の底部に載置することもでき、又はカセット50は、槽70の底部に載置されたフレーム又は他の構造に取り付けることもできる。
【0032】
槽70は任意には、図示のように密にカセット50を取り囲んでいる。混合液(又は他の供給液)は好ましくは、槽の一方の端部から槽70の底部に設けられたチャネル74内に供給され、そして槽70の反対側の端部の頂部に設けられた堰(weir)(図示せず)から出る。この配置は、モジュール20を通る供給液の平均的な上昇流を提供する。複数のカセット50を槽70の長さに沿って間隔を置いて配置し、これらを組み合わせることにより、膜列(membrane train)を形成することができる。完成した膜システムは1つ又は2つ以上の列を有してよい。
【0033】
給気管60はカセット50の下方で水平方向に延びている。各給気管60の水平方向部分は一連の穴を有しており、1つの穴が1~5つのモジュール20の各鉛直方向スタックの下方に配置されている。好ましくは1つがモジュール20の各鉛直方向スタックに対応する複数のエアレーター(図7では見ることができない)が、最も下側のブロック40のフレーム42に取り付けられており、給気管60の水平方向部分に対して垂直に、且つ水平方向部分の上方で、カセット50の底部を横切って延びている。エアレーターはこれらの下方で給気管60に接続されている。カセット50内のモジュール20の各スタックは、スタック内の最も下側のモジュール20の下方に1つのエアレーターを有している。エアレーターは、有孔ゴムスリーブによって覆われたその長さに沿って、一連の穴を備えた管である。空気が穴から流出し、そしてゴムスリーブ内へ流入する。空気の圧力はゴムスリーブの穿孔を強制的に開き、微細気泡が放出されるのを可能にする。ゴムスリーブの開口は直径1~3mmの円の面積を有することができる。或いは、エアレーターは一連の穴を備えた管であってもよい。穴は5mm未満、例えば2~4.5mmの直径の円の面積を有してよい。
【0034】
図8は、モジュール20内の一組の膜板10を示している。膜板10は凹部8を有している。膜板10は幅又は厚さCを有している。図示の例では、厚さCは規則的な表面フィーチャの末端で測定される。これらの表面フィーチャは膜表面積のほとんどをカバーしている。平滑面型平膜(smooth side flat sheet membrane)の幅又は厚さCは板10全体を通して概ね一定である。膜板10はまた中心間間隔Bを有している。
【0035】
膜板10は対面間隔Aを有している。特に断りがない限り、本明細書中で間隔に言及する場合、或いは膜板が離隔されていることに言及する場合、又は他の同様の記述がある場合には、これは対面間隔を意味する。間隔Aは中心間間隔Bマイナス幅Cに等しい。図8に示されているように、例えば板10の互いに隣接する凹部8間の鉛直方向距離の半分だけ、凹部8が互いに鉛直方向にオフセットされた状態で、互いに隣接する板10を配置することができる。膜板は例えば4mm以下、3mm以下、又は2mm以下の間隔Aを有するように、互いに密な間隔で配置されている。
【0036】
実施例
膜板間の間隔が1.5mmの、本明細書中に記載されたモジュール20と同様の波状平膜モジュールを、0.005及び0.01標準立方フィート/分(scfm)の空気流量で、粗大気泡エアレーター及び微細気泡エアレーターを用いて操作した。粗大気泡エアレーターは4mmよりも大きい気泡を生成した。「粗大(coarse)」という用語は、この実施例ではモジュールの間隔に関して使用され、用語の一般的な工業的使用には従わない。微細気泡エアレーターは3mmよりも小さな気泡を生成した。気泡サイズはモジュール20の底部の下方で、具体的にはエアレーターの頂部とエアレーターの頂部の上方5cmのところとの間の空間内で測定した。膜の内側の吸引力を変化させることにより、様々な流束値を生成した。種々異なる流束値で透過率を測定した。
【0037】
図9は、両エアレーターによって得られた典型的な結果を示している。膜の透過率は、微細気泡エアレーターを用いると、具体的には流束が高いほど高くなった。結果はまた、空気流量が低くても微細気泡エアレーターを用いると、膜が良好に機能することを示している。流束とは無関係に、0.005又は0.01scfmの空気で微細気泡エアレーターを操作すると、膜透過率は本質的に同じであった。0.005scfmの空気で動作する微細気泡エアレーターを用いた場合の膜透過率は、0.01scfmの空気で動作する粗大気泡エアレーターを用いた同じ流束における膜透過率と同じか又はこれよりも良好であった。このことは、微細気泡エアレーターによって顕著にエネルギーが節減されることを示唆している。
【0038】
4つのサイズ、すなわち平均直径が1mm未満、1.5mm、2mm超、及び5mm超の気泡を用いて、同じモジュールで付加的な試験を行った。FiberPlateモジュールの板間隔は1.5mmである。モジュールを種々の流束値で操作し、そして透過率を測定した。図10に示されているように、約2mm以下(すなわち1~2mm)のサイズの気泡は、5mmの気泡よりも著しく良好に機能した。1.5mmのサイズの気泡は、約2mmのサイズの気泡よりも一貫して良好に機能した。
【0039】
対面間隔1.5mm、2.2mm、及び3.8mmで形成された3つの同様のモジュールを用いて付加的な試験を実施した。膜バイオリアクタ内の返送活性汚泥(RAS)の4Q再循環に近似させた再循環流を有する槽内で、3.7g/Lのベントナイト懸濁液中でモジュールを操作した。空気は0.006scfm/膜表面積ftで提供した。膜の底部の下方約150mmに配置されたディフューザから気泡を提供した。1つのディフューザは、公称(すなわち等価円直径)開口サイズ2mmのゴムスリーブ型微細気泡ディフューザであった。別のディフューザは4mm直径の穴を有した。
【0040】
表1は、対面間隔と気泡サイズとの種々異なる組み合わせを用いて流束18GFDで操作したときのTMPの増大(psi/分)を示している。表1の結果は、具体的には3mm以下の極めて密な対面間隔を用いると、対面間隔の1~2倍のサイズを有する気泡によって、良好な結果が得られることを示唆している。
【表1】
【0041】
本明細書中の詳細な説明及び実施例は波状平膜モジュールに基づいてはいるものの、平滑面型平膜モジュールを用いても同様の結果が達成されると期待される。また、特定の実施例における任意の特定のプロセス条件又は物理的寸法を約50%だけいずれの方向にも変化させ得ることも期待される。
【0042】
国際公開第2011/130853号パンフレット、及び米国特許出願公開第2017095773号明細書が、参照することにより本明細書中に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬膜ろ過ユニットであって、
平膜のモジュールであって、前記平膜の膜間の対面間隔が4mm以下である、平膜のモジュールと、
前記膜の下方にある微細気泡エアレーターであって、4mm以下、3mm以下のサイズを有するか、又は前記膜間の間隔よりも100%を超えて、若しくは50%を超えて大きいことはないサイズを有する気泡を生成するように形成されている、微細気泡エアレーターと、
を含む、浸漬膜ろ過ユニット。
【外国語明細書】