(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002579
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20231228BHJP
A61B 1/005 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61B1/00 610
A61B1/005 524
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101854
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】514043908
【氏名又は名称】中西 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100143638
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 真久
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】中西 弘幸
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA00
4C161BB00
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF32
4C161HH31
4C161HH42
4C161HH47
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、内視鏡の軸線に対する屈曲角度を約90°以上取ることが可能な方向転換手段を備えた内視鏡システムを得ることである。
【解決手段】本発明の内視鏡システム1は、撮像装置を含む光学系装置および前記光学系装置に接続されるチューブを含む内視鏡と、前記光学系装置の向きを調整可能な前記光学系装置に接続された複数の形状記憶部材を含む方向転換手段とを備え、前記方向転換手段は、前記複数の形状記憶部材への通電を制御する通電制御部を備え、前記複数の形状記憶部材は、伸縮可能な形態を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡システムであって、
撮像装置を含む光学系装置および前記光学系装置に接続されるチューブを含む内視鏡と、
前記光学系装置の向きを調整可能な前記光学系装置に接続された複数の形状記憶部材を含む方向転換手段と
を備え、
前記方向転換手段は、前記複数の形状記憶部材への通電を制御する通電制御部を備え、
前記複数の形状記憶部材は、伸縮可能な形態を有している、内視鏡システム。
【請求項2】
前記複数の形状記憶部材は、螺旋状または鋸歯状の形状を有している、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記方向転換手段は、前記内視鏡の軸線方向に対して約90°以上屈曲可能なように構成されている、請求項1または2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記複数の形状記憶部材は、それぞれ通電された場合に屈曲形状となるように記憶されている、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記通電制御部は、前記複数の形状記憶部材の少なくとも1つ以上に通電することを選択可能なように構成されている、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記チューブは蛇腹状である、請求項1に記載の内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システムにおいて内視鏡の方向転換を行うための機構に関し、特に、方向転換を形状記憶部材の記憶形状への復帰動作により行う機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、光学系装置およびチューブを含む内視鏡と光学系装置を方向転換させる装置(方向転換装置)とを備えた内視鏡システムとして、光学系装置を複数の形状記憶部材を介してチューブの先端部に固定し、形状記憶部材を選択的に記憶形状に復帰させるようにしたものを既に開発している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示の方向転換装置を備えた内視鏡システムでは、形状記憶部材の形状変化による内視鏡(つまり、内視鏡を構成するチューブ)の軸線に対する屈曲角度が小さいため(例えば、約40°)、例えば、胃内部などを内視鏡の進行方向の逆向きの状態で観察する場合や、大きく屈曲した大腸内などの管腔内を検査することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、内視鏡の軸線に対する屈曲角度を約90°以上取ることが可能な方向転換手段を備えた内視鏡システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の項目を提供する。
【0007】
(項目1)
内視鏡システムであって、
撮像装置を含む光学系装置および前記光学系装置に接続されるチューブを含む内視鏡と、
前記光学系装置の向きを調整可能な前記光学系装置に接続された複数の形状記憶部材を含む方向転換手段と
を備え、
前記方向転換手段は、前記複数の形状記憶部材への通電を制御する通電制御部を備え、
前記複数の形状記憶部材は、伸縮可能な形態を有している、内視鏡システム。
【0008】
(項目2)
前記複数の形状記憶部材は、螺旋状または鋸歯状の形状を有している、項目1に記載の内視鏡システム。
【0009】
(項目3)
前記方向転換手段は、前記内視鏡の軸線方向に対して約90°以上屈曲可能なように構成されている、項目1または2に記載の内視鏡システム。
【0010】
(項目4)
前記複数の形状記憶部材は、それぞれ通電された場合に屈曲形状となるように記憶されている、項目1に記載の内視鏡システム。
【0011】
(項目5)
前記通電制御は、前記複数の形状記憶部材の少なくとも1つ以上に通電することを選択可能なように構成されている、項目1に記載の内視鏡システム。
【0012】
(項目6)
前記チューブは蛇腹状である、項目1に記載の内視鏡システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内視鏡の軸線に対する屈曲角度を約90°以上取ることが可能な方向転換手段を備えた内視鏡システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1による内視鏡システム1を説明する概念図であり、内視鏡システム1の全体構成とともに、光学系装置10aの方向転換のための4つの形状記憶部材110(110a~110d)を含む内視鏡10を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示す内視鏡10を構成するチューブ100の先端部分(チューブ先端部)100aの具体的な構造、およびチューブ先端部100aに含まれる形状記憶部材110および対応する一対の給電線を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す内視鏡10におけるチューブ先端部100aの構造の変形例として、チューブ周壁201aを蛇腹形状としたチューブ先端部200aを示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す内視鏡10を構成するチューブの本体部分(チューブ本体)100bの具体的な構造を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す内視鏡10のチューブ先端部が屈曲することで光学系装置10aの方向転換を行う動作を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すようにチューブ先端部100aが屈曲したときに、通電により発熱したコイル状の形状記憶部材110aが屈曲して縮小し、発熱しなかった形状記憶部材110cが屈曲して伸長する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0016】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0017】
本発明は、内視鏡の軸線に対する屈曲角度を約90°以上取ることが可能な方向転換手段を備えた内視鏡システムを得ることを課題とし、
内視鏡システムであって、
撮像装置を含む光学系装置および光学系装置に接続されるチューブを含む内視鏡と、
光学系装置の向きを調整可能な光学系装置に接続された複数の形状記憶部材を含む方向転換手段と
を備え、
方向転換手段は、複数の形状記憶部材への通電を制御する通電制御部を備え、
複数の形状記憶部材は、伸縮可能な形態を有している内視鏡システムを提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0018】
従って、本発明の内視鏡システムは、撮像装置を含む光学系装置と光学系装置が接続されるチューブとを含む内視鏡を備えるとともに、光学系装置に接続されて光学系装置の向きを調整可能な複数の形状記憶部材を含む方向転換手段を備え、方向転換手段は、複数の形状記憶部材に対する通電制御が可能であり、複数の形状記憶部材は、伸縮可能な形態を有しているものであれば、内視鏡を移動させる駆動手段などその他の構成は特に限定されるものではなく、任意の形態であり得る。
【0019】
また、本発明の内視鏡システムを使用する対象としては、生体であれば任意であり得る。
【0020】
1つの実施形態においては、その対象は、被験者などの人体であるが、本発明の内視鏡システムは、その使用対象が人体に限定されるものではなく、人体以外の生物体を使用対象とするものであってもよい。
【0021】
なお、生体内(例えば、胃や腸管内)への内視鏡の挿入方法としては、限定されるものではなく、例えば、口や鼻から挿入する場合であってもよいし、肛門から挿入する場合であってもよい。好ましい実施形態においては、大腸や小腸などを観察する場合には内視鏡は肛門から挿入する。しかし、本発明はこれに限定されない
以下、本発明の内視鏡システムの構成要素、特に方向転換手段について説明する。
【0022】
本発明の内視鏡システムは、光学系装置の向きを調整可能な方向転換手段を備えているので、生体の管腔内において、観察したい向きに応じて、光学系装置が撮影する向きを方向転換することが可能となる。
【0023】
ここで、方向転換手段は、光学系装置の向きを、形状記憶部材の温度変化による変形により調整可能であれば任意の構成であり得る。
【0024】
また、形状記憶部材の素材は、任意であり得る。例えば、形状記憶合金部材であっても形状記憶樹脂部材であってもよい。ただし、形状記憶樹脂部材は導電性樹脂で構成されていることが望ましい。なぜなら、形状記憶樹脂部材が導電性とすることにより、この部材への通電を直接行うことが可能であって、発熱するための導電性部材(例えばヒータなど)との併用が不要となり、装置構成の簡易化が図れる。
【0025】
また、形状記憶部材の形態も、伸縮可能であれば任意の形態であり得る。例えば、螺旋状(コイルバネ状)または鋸歯状であり得る。この鋸歯状の部材は、帯状の平板部材を折板状にジグザグに折り曲げたものでもよいし、線状のワイヤ部材をジグザグに折り曲げたものでもよい。なお、これ以外の形状であってもよい。
【0026】
本発明の伸縮可能な形状記憶部材は、内視鏡の軸線方向に対して約90°以上、好ましくは約120°以上、更に好ましくは約150°以上屈曲することが可能となるように構成され得る。
【0027】
好ましい実施形態において、方向転換手段は、光学系装置に接続された複数の形状記憶部材を含み、形状記憶部材への通電を制御する通電制御部を備えるように構成されている。形状記憶部材は、その通電による加熱により温度が形状記憶温度に達したとき、形状記憶部材の加熱前の形状が予め記憶した形状に復帰するものである。なお、形状記憶部材への通電を制御する手段は、内視鏡を前進させる機能を持つ通電制御部とは別の手段で実現してもよいし、同じ制御手段で実現してもよい。
【0028】
ここで、複数の形状記憶部材は、例えば、通電されない状態が直線状であって、それぞれ通電された場合に屈曲形状となるように記憶されていてもよいし、通電されない状態が屈曲形状であって、通電された場合にそれぞれ直線形状となるように記憶されていてもよいし、それらの混合であってもよい。折り返し形状となるように記憶されていてもよい。
【0029】
また、通電制御部は、複数の形状記憶部材の少なくとも1つ以上に通電することを選択可能なように構成されている。複数の形状記憶部材の少なくとも1つ以上に選択的に通電する手段は、内視鏡を前進させる機能(駆動機構)を持つ通電制御部とは別に設けられていてもよい。複数の形状記憶部材への通電を選択的に制御することで、通電された形状記憶部材の変形に伴って光学系装置がその方向に傾くことになる。
【0030】
また、光学系装置に接続されるチューブは、中実であってもよいし、内部に空間を有する筒状であってもよい。筒状とすることにより、内部空間に磁気駆動など内視鏡を移動させる駆動手段や鉗子などの治療器具などを挿入が可能となる。
【0031】
なお、本発明の内視鏡システムは、内視鏡が自動で自走したり、あるいは操作者の操作により推進力を発生可能なものには限定されず、内視鏡の移動は操作者が内視鏡に与える推進力により行われるものであってもよい。
【0032】
(形状記憶部材の具体的な構成の一例)
この形状記憶部材は、チューブの光学系装置が接続される先端部に複数設けられており、複数の形状記憶部材の各々が、加熱による復帰形状として先端が屈曲形状あるいは折り返された形状を記憶している。この場合、内視鏡システムでは、複数の形状記憶部材のうちから形状復帰させる形状記憶部材の選択は、通電制御部により行われる。
【0033】
このように複数の形状記憶部材のうちから形状復帰させる形状記憶部材を選択可能とすることで、チューブの軸心に対して光学系装置の軸心が向く方向を調整することが可能となる。形状記憶部材を設ける数は任意であり得る。一つの実施形態において、チューブの軸心を中心に周方向に約90°間隔で4本配置されるが、本発明はこれに限定されない。必要に応じて2本以上所望の数備えることが可能である。
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0035】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による内視鏡システム1を説明する概念図であり、
図1(a)は、内視鏡システム1の全体構成を示し、
図1(b)は、
図1(a)のR1部分、つまり、内視鏡10における光学系装置10aの方向転換のための形状記憶部材110a~110dを含む部分(チューブ先端部100a)を示す。
【0036】
この実施形態1の内視鏡システム1は、人体(例えば、被験者の身体)の管腔内の撮影が可能な内視鏡システムである。人体の管腔は、胃、食道、小腸、大腸、直腸などであり得る。
【0037】
この内視鏡システム1は、
図1(a)に示すように、撮像装置(図示せず)を含む光学系装置10aおよび光学系装置10aに接続されるチューブ100を含む内視鏡10と、光学系装置10aの向きを調整可能な複数の形状記憶部材110を含む方向転換手段1aと、内視鏡10を操作するための内視鏡操作装置50とを備えている。複数の形状記憶部材110は光学系装置10aに接続されており、内視鏡操作装置50には、チューブ100を格納するチューブ格納部31が設けられている。さらに、方向転換手段1aは、複数の形状記憶部材110への通電を制御する通電制御部150を備え、複数の形状記憶部材110は、伸縮可能な形態を有している。なお、
図1中、54は内視鏡操作装置50の入力部であり、55は内視鏡操作装置50の表示部であり、56は内視鏡操作装置50の筐体(装置筐体)である。
【0038】
ここで、複数の形状記憶部材110は、
図1(b)に示すように、第1~第4の4つの形状記憶部材110a~110dである。なお、形状記憶部材に付した符号「110a~110d」は、これら第1~第4の4つの形状記憶部材を区別する必要がある場合のみ用いており、これら第1~第4の4つの形状記憶部材を区別する必要がない場合は符号「110」を用いる。
【0039】
(内視鏡10)
上述したように、内視鏡10は、撮像装置(図示せず)を含む光学系装置10aと、光学系装置10aに接続されたチューブ100とを有しており、内視鏡10に含まれる光学系装置10aは、カメラなどの撮像装置の他に、管腔内を照らす照明装置、外部からの入射光を集光するレンズなどの光学系を有している。
【0040】
ここで、チューブ100には、ビニールあるいはプラスチックなどの軟質性材料で構成された可撓性を有する筒型部材が用いられており、チューブ100は、先端部(チューブ先端部)100aとそれ以外の部分(チューブ本体)100bとは一体となっているが、チューブ先端部100aとチューブ本体100bとは構造が異なっている。
【0041】
具体的には、チューブ先端部100aおよびチューブ本体100bはいずれも円筒形状の周壁(チューブ周壁)101aおよび101bを有しており、これらの周壁101aおよび101bの内側領域は、チューブ100の中心軸(軸心)に沿って延びる内部通路102aおよび102bとなっている点では共通しているが、チューブ先端部100aには形状記憶部材110が設けられているのに対して、チューブ本体100bには形状記憶部材110が設けられていない点で両者は構成が異なっている。
【0042】
以下、チューブ先端部100aおよびチューブ本体100bを具体的に説明する。
【0043】
図2は、
図1に示す内視鏡10を構成するチューブ100の先端部分(チューブ先端部)100aの具体的な構造を示し、
図2(a)は、4つの形状記憶部材と、それぞれの形状記憶部材に給電するための給電線を示し、
図2(b)は、形状記憶部材の一例として螺旋状(コイルバネ状)の部材(
図2(a)のR2部分)を示し、
図2(c)は、形状記憶部材の他の例として鋸歯形状の部材(
図2(a)のR2部分)を示す。
【0044】
チューブ先端部100aのチューブ周壁101aには、第1~第4の4つの形状記憶部材110a~110dが組み込まれており、さらには、各形状記憶部材110a~110dへの給電を行うそれぞれ一対の給電線が組み込まれている。
【0045】
具体的には、
図2(a)に示すように、チューブ100の先端部(チューブ先端部)100aは、上述したように、可撓性を有する筒型部材で構成されており、その周壁(チューブ周壁)101aには、第1形状記憶部材110a、第2形状記憶部材110b、第3形状記憶部材110cおよび第4形状記憶部材110dがその軸心(チューブ100の中心軸)の回りに均等な間隔でこの順に組み込まれている。また、各形状記憶部材の近傍には、
図2(a)に示すように、対応する形状記憶部材110への給電のための給電線が埋め込まれている。
【0046】
すなわち、第1形状記憶部材110aの一端部(チューブ本体側の端部)には、一対の第1給電線111および112のうちの一方の第1給電線111が接続され、第1形状記憶部材110aの他端部(光学系装置10a側の端部)には他方の第1給電線112が接続されている。
【0047】
同様に、第2形状記憶部材110bの一端部には、一対の第2給電線121および122のうちの一方の第2給電線121が接続され、第2形状記憶部材110bの他端部には他方の第2給電線122が接続されており、第3形状記憶部材110cの一端部には、一対の第3給電線131および132のうちの一方の第3給電線131が接続され、第3形状記憶部材110cの他端部には他方の第3給電線132が接続されており、第4形状記憶部材110dの一端部には、一対の第4給電線141および142のうちの一方の第4給電線141が接続され、第4形状記憶部材110dの他端部には他方の第4給電線142が接続されている。
【0048】
このように各形状記憶部材110には、対応する給電線を介して内視鏡操作装置50に設けられている通電制御部150からの加熱電流が印加されるようになっている。
【0049】
また、この実施形態1では、形状記憶部材として、
図2(b)に示すようにコイルバネ状の形状記憶合金部材が用いられている。なお、形状記憶部材の具体的な構成としては、
図2(b)に示すようにコイルバネ状の形状記憶合金部材に限定されず、
図2(c)に示すように、鋸歯状の可撓性のある金属部材であってもよい。
【0050】
さらに、
図2に示すチューブ先端部100aは、可撓性を有する筒型部材で構成されているが、チューブ先端部100aを構成する筒型部材の内面および外面を蛇腹状の形状としたものでもよく、以下
図3を用いて具体的に説明する。
【0051】
図3は、
図1に示す内視鏡10におけるチューブ先端部100aの構造の変形例として、周壁の内面および外面を蛇腹形状としたチューブ先端部200a、250aの構造を示す模式図であり、
図3(a)は、その周壁にコイルバネ状の形状記憶部材110を組み込んだチューブ先端部200a(特にR3部分)を示し、
図3(b)は、その周壁に鋸歯状の形状記憶部材120を組み込んだチューブ先端部250a(特にR4部分)を示している。
【0052】
このチューブ先端部200aを有するチューブ200は、
図2(a)に示すチューブ先端部100aと同様に、チューブ先端部200aにはコイルバネ状の4つの形状記憶部材110を組み込んだものであるが、チューブ先端部100aの円筒形状となっているチューブ周壁101aの構造を断面矩形形状から蛇腹形状としたものであり、その他の構成は、
図2(a)に示すチューブ先端部100aと同様である。
【0053】
なお、このチューブ先端部250aを有するチューブ250は、
図3(a)に示すチューブ先端部200aのコイルバネ状の4つの形状記憶部材110に代えて鋸歯状の4つの形状記憶部材120を組み込んだものである。
【0054】
このようにチューブ先端部200a、250aの周壁201aを蛇腹形状とすることで、チューブの内周と外周との変形量の差を吸収することが可能であって、単なる筒形状に比べて小さい力でも容易に屈曲を行うことができる。
【0055】
次に、
図1に示す内視鏡10を構成するチューブ100の本体部分(チューブ本体100b)を具体的に説明する。
【0056】
図4は、
図1に示す内視鏡10を構成するチューブ100の本体部分(チューブ本体)100bの具体的な構造を示す模式図であり、チューブ本体100bの周壁(チューブ周壁)101b内に組み込まれた給電線を示している。
【0057】
チューブ本体100bのチューブ周壁101bには、チューブ先端部100aにおける4つの形状記憶部材110は組み込まれておらず、ここには、各形状記憶部材110への給電を行うそれぞれ一対の給電線が組み込まれている。
【0058】
具体的には、
図4に示すように、チューブ100の本体部分(チューブ本体)100bは、第1~第4の4つの形状記憶部材110a~110dへの給電を行うための4組の一対の給電線がチューブの軸心周りの位置に、
図4に示すように埋め込まれている。
【0059】
すなわち、チューブ本体100bでは、第1形状記憶部材110aへの給電のための一対の第1給電線111および112が、チューブ100の軸心周りでの第1形状記憶部材110aの位置に対応する位置に配置されている。同様に、チューブ本体100bでは、第2形状記憶部材110bへの給電のための一対の第2給電線121および122が、チューブ100の軸心周りでの第2形状記憶部材110bの位置に対応する位置に配置されており、第3形状記憶部材110cへの給電のための一対の第3給電線131および132が、チューブ100の軸心周りでの第3形状記憶部材110cの位置に対応する位置に配置されており、さらに、第4形状記憶部材110dへの給電のための一対の第4給電線141および142が、チューブ100の軸心周りでの第4形状記憶部材110dの位置に対応する位置に配置されている。
【0060】
なお、上述した第1~第4の一対の給電線は、チューブ先端部100aとチューブ本体100bとで一体につながった構成となっている。
【0061】
また、図示していないが、この内視鏡システムでは、管腔内を膨らませる流体(空気、炭酸ガスなどの気体や生理食塩水や水などの液体)を送る送流体通路(図示せず)を形成する送流体チューブが光学系装置10aに接続されたチューブ100とは別に設けられており、内視鏡操作装置50に設けられているスイッチ(送流体フットスイッチ52a)の操作により、流体供給源からの流体が送流体チューブの送流体通路を介して管腔内に供給されるようになっている。従って、チューブ格納部31は、光学系装置10aが接続されているチューブ100とともに、送流体通路を形成する送流体チューブを格納可能な構造となっていることが好ましい。ここで、流体供給源は、内視鏡操作装置50の装置筐体56内に設けられていてもよいし、あるいは内視鏡操作装置50とは別体として設けられていてもよい。さらに、送流体通路は、光学系装置10aに接続されているチューブ100とは別のチューブに形成されたものには限定されず、光学系装置10aが接続されているチューブ100に形成されたものでもよい。
【0062】
次に、本実施形態1の内視鏡システム1の動作を説明する。
【0063】
以下では、実施形態1の内視鏡システム1を用いて人体(被検者)の管腔内の内視鏡検査を行う場合の内視鏡システム1の動作を説明する。
【0064】
まず、操作者は、内視鏡10のチューブ100を、
図1(a)に示す内視鏡操作装置50のチューブ収納部31から引き出して、チューブ100の先端部分に取り付けられている光学系装置10aを、チューブ100の先端部分100aとともに人体の腸管内に挿入し、さらに、送流体チューブ(図示せず)をチューブ格納部31から引き出して人体の管腔内に挿入する。
【0065】
次に、送流体フットスイッチ52aの操作により、送流体チューブの送流体通路(図示せず)から流体を管腔内に送り込む。なお、人体の管内への流体を送るのは、内視鏡10のチューブ100に形成した送流体通路から行うようにしてもよい。その後、操作者が内視鏡操作装置50の内視鏡推進ボタン51aを操作すると、図示しない駆動手段が内視鏡推進ボタン51aの操作信号に基づいて内視鏡10を管腔内で推進させることとなる。
【0066】
また、このように内視鏡100が管腔内を移動している状態で、光学系装置10aでの撮影により得られた画像信号が、光学系装置10aからモニタ信号線(図示せず)を介して通電制御部150にて受信されると、通電制御部150は、受信した画像信号をモニタ55に出力する。これによりモニタ55には、内視鏡100が管腔内を撮影した画像が表示される。なお、必要に応じて、画像信号は通電制御部150内の記憶装置に記録されてもよい。
【0067】
さらに、このように内視鏡100が管腔内を撮影している状態で、チューブ100の軸心に対する光学系装置10aの向きを、光学系装置10aが内視鏡100の進行方向の正面から約90°以上側面側を向いた状態に変更したいときは、内視鏡操作装置50の方向転換ボタン51bを操作することにより、光学系装置10aの軸心が内視鏡10の軸心に対してなす角度を変更することができる。なお、光学系装置10aの向きを変えたい場合は、例えば、管腔内を前進する内視鏡10が管腔の屈曲部にさしかかったときに、管腔の屈曲した部分の先を見たいとき、あるいは、特に胃内部の観察の場合などにおける管腔内のうちの既に通過した領域を、進行方向とは逆方向から見たいときなどである。
【0068】
つまり、方向転換ボタン51bの操作により、チューブ先端部100aに埋め込まれている4つの形状記憶部材110a~110dのうちの所定のものを選択すると、通電制御部150からは、選択された形状記憶部材に対応する給電線を介して加熱電流が印加されることとなり、これにより温度上昇した形状記憶部材の温度が形状復帰温度以上になると、予め記憶している屈曲した形状に変形することとなる。
【0069】
図5は、
図1に示す内視鏡10のチューブ先端部が屈曲することで光学系装置10aの方向転換を行う動作を示す図であり、
図5(a)は、チューブ先端部100aが屈曲しておらずに真っすぐに伸びた状態を示し、
図5(b)は、チューブ先端部100aを紙面に対して右回りに屈曲させた状態を示し、
図5(c)は、チューブ先端部100aを紙面に対して左回りに屈曲させた状態を示している。なお、
図5では、形状記憶部材としては、チューブ100の軸線を挟んで対向する一対の形状記憶部材110aと110cとを示している。
【0070】
図5(a)に示すように、一対の形状記憶部材110aおよび110cが発熱しておらず、チューブ先端部100aがまっすぐに伸びる状態で、一方の形状記憶部材(紙面右側の第1の形状記憶部材)110aが通電により加熱されて記憶形状に復帰して、チューブ先端部100aが
図5(b)に示すU字状(光学系装置10aがチューブ本体100bの紙面右側にくるU字形状)に折り返される状態となるように変形(縮小)すると、加熱されていない他方の形状記憶部材(紙面左側の第3の形状記憶部材)110cが、チューブ先端部100aがU字状に折り返された状態となるように弾性変形(伸長)して第1形状記憶部材110aの形状変化に追随する。
【0071】
あるいは、
図5(a)に示すように、一対の形状記憶部材110aおよび110cが発熱しておらず、チューブ先端部100aがまっすぐに伸びる状態で、他方の形状記憶部材(紙面左側の第3の形状記憶部材)110cが通電により加熱されて記憶形状に復帰して、チューブ先端部100aが
図5(c)に示すU字形状(光学系装置10aがチューブ本体100bの紙面左側にくるU字形状)に折り返される状態となるように変形(縮小)すると、加熱されていない他方の形状記憶部材(紙面左側の第3の形状記憶部材)110aが、チューブ先端部100aがU字状に折り返された状態となるように弾性変形(伸長)して第3形状記憶部材110cの形状変化に追随する。
【0072】
これにより、チューブ先端部100aが、光学系装置10aの向きを約90°以上に屈曲させることができる。
【0073】
図6は、
図5(b)に示すようにチューブ先端部100aが紙面に右回りに屈曲したときに、通電により発熱したコイルバネ状の第1形状記憶部材110aが屈曲して縮小し、発熱しなかったコイルバネ状の第2形状記憶部材110cが、発熱した第1形状記憶部材110aの屈曲に応じて屈曲して伸長する様子を示す模式図である。なお、
図6でも、形状記憶部材としては、チューブ100の軸線を挟んで対向する一対の形状記憶部材110aと110cとを示している。
【0074】
第1形状記憶部材110aが記憶形状に復帰して縮小し、第3形状記憶部材110cが第1形状記憶部材110aの形状変化に追随して伸長して屈曲した状態(
図6(b))では、
図6(a)に示す状態と比べると、発熱により復帰形状に変化した第1形状記憶部材110aは、縮小しており、発熱せずに、復帰形状に変化した第1形状記憶部材110aの形状変化に追従した第3形状記憶部材110cは伸長していることが分かる。
【0075】
そして、内視鏡100による管腔内の撮影が終了し、内視鏡10を人体から取り出す際には、操作者が巻取フットスイッチ52bを操作することによって、チューブ格納部31のチューブ巻取機(図示せず)が駆動して内視鏡10のチューブ100の巻取りが行われ、人体の管腔内から内視鏡10が取り出されることとなる。
【0076】
このように本実施形態1の内視鏡システム1は、撮像装置を含む光学系装置10aと光学系装置10aが接続されるチューブ100とを含む内視鏡10を備えるとともに、光学系装置10aに接続されて光学系装置10aの向きを調整可能な複数の形状記憶部材110を含む方向転換手段1aを備え、方向転換手段1aは、複数の形状記憶部材110に対する通電制御が可能であり、複数の形状記憶部材110は、伸縮可能な形態を有しているので、方向転換手段1aにより通電する形状記憶部材を選択することで、選択された形状記憶部材は記憶形状に復帰して縮小し、非選択の形状記憶部材は、形状復帰した形状記憶部材の変形に追従して伸長することとなる。その結果、内視鏡(チューブ)を軸線に対して約90°以上に屈曲させることが可能となり、引いては、内視鏡の軸線に対する屈曲角度を約90°以上取ることが可能な方向転換手段を備えた内視鏡システムを得ることができる。
また、設ける形状記憶部材の数を増やすことによって、約360°全方位に関してほぼ均等に内視鏡の軸線方向に対して約90°以上の大きな屈曲角度を達成する方向転換が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、光学系装置および光学系装置に接続されるチューブを含む内視鏡において、内視鏡の軸線方向に対して約90°以上の方向転換が可能な内視鏡システムを得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 内視鏡システム
10 内視鏡
10a 光学系装置
31 チューブ格納部
50 内視鏡操作装置
51 第1操作部
51a 内視鏡推進ボタン
51b 方向転換ボタン
52 第2操作部
52a 送流体フットスイッチ
52b 巻取りフットスイッチ
54 入力部
55 表示部
56 装置筐体
100、200 チューブ
100a、200a、250a チューブ先端部
100b チューブ本体
101a、101b、201a チューブ周壁
110、120 形状記憶部材
110a 第1形状記憶部材
110b 第2形状記憶部材
110c 第3形状記憶部材
110d 第4形状記憶部材
111、112 第1給電線
121、122 第2給電線
131、132 第3給電線
141、142 第4給電線
150 通電制御部