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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025798
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】防音室
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20240216BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20240216BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20240216BHJP
   F24F 1/02 20190101ALI20240216BHJP
【FI】
E04H1/12 302C
A62C3/00 J
A62C35/02 A
F24F1/02 441B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204414
(22)【出願日】2023-12-04
(62)【分割の表示】P 2019207351の分割
【原出願日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2019133756
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519207974
【氏名又は名称】テレキューブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】間下 浩之
(57)【要約】
【課題】快適な空気環境と安全を確保することができる防音室を提供する。
【解決手段】ユーザが入ることができる空間を形成する筐体12と、該筐体の側壁に設けられた出入口を開閉可能な扉と、前記空間に調和空気を送出する空気調和機とを備えた可搬式の防音室11であって、前記筐体の天井12dには、電源を要しない自動消火装置26が設けられ、前記自動消火装置は、火災の発生による熱を感知する熱感知部と、天井の高さ方向を縦方向として該縦の寸法が横の寸法よりも小さく形成された消火剤容器27と、該消火剤容器の下端に設けられ、熱感知部に使用される低融点金属の溶解によって消火剤容器内の消火剤を前記空間に放出可能な放出ノズルと、を一体的に備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが入ることができる空間を形成する筐体と、該筐体の側壁に設けられた出入口を開閉可能な扉と、前記空間に調和空気を送出する空気調和機とを備えた可搬式の防音室であって、
前記筐体の天井には、電源を要しない自動消火装置が設けられ、
前記自動消火装置は、火災の発生による熱を感知する熱感知部と、前記天井の高さ方向を縦方向として該縦の寸法が横の寸法よりも小さく形成された消火剤容器と、該消火剤容器の下端に設けられ、前記熱感知部に使用される低融点金属の溶解によって前記消火剤容器内の消火剤を前記空間に放出可能な放出ノズルと、を一体的に備えていることを特徴とする防音室。
【請求項2】
前記空気調和機は、圧縮機、凝縮器及び蒸発器をキャビネットに収め、前記筐体の床上に設けられ、
前記キャビネットは、底面に排気口を有し、
前記筐体の床は、前記排気口の位置に対応した開口が設けられ、前記排気口から吹き出した温風を前記開口から前記筐体の外部に排出可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の防音室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音室に関し、詳しくは、屋内や屋外に設置して使用可能な可搬式の防音室に関する。
【背景技術】
【0002】
室内を静粛に保つための遮音性を有した防音室は、従来から、家庭や企業など様々な場所に設置され、種々の目的に使用されてきた。近年では、各企業におけるテレワークへの関心の高まりを受けて、テレワーカを対象とする防音室が検討されている。そこで、機密情報への第三者のアクセス防止の観点から、不特定多数の人が通る場所に設置されるテレワーカ向けの防音室において、室内に入れる人を制限可能な防犯機能を備えた防音室が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-28995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不特定多数の人が通る場所に防音室を設置する場合、情報保護を確実なものとすることに加え、室内で作業や活動を行う利用者に快適な環境を提供することが不可欠である。また、防災上の観点から、初期火災を素早く鎮圧する必要がある。
【0005】
そこで本発明は、快適な空気環境と安全を確保することができる防音室を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の防音室は、ユーザが入ることができる空間を形成する筐体と、該筐体の側壁に設けられた出入口を開閉可能な扉と、前記空間に調和空気を送出する空気調和機とを備えた可搬式の防音室であって、前記筐体の天井には、電源を要しない自動消火装置が設けられ、前記自動消火装置は、火災の発生による熱を感知する熱感知部と、前記天井の高さ方向を縦方向として該縦の寸法が横の寸法よりも小さく形成された消火剤容器と、該消火剤容器の下端に設けられ、前記熱感知部に使用される低融点金属の溶解によって前記消火剤容器内の消火剤を前記空間に放出可能な放出ノズルと、を一体的に備えていることを特徴としている。
【0007】
また、前記空気調和機は、圧縮機、凝縮器及び蒸発器をキャビネットに収め、前記筐体の床上に設けられ、前記キャビネットは、底面に排気口を有し、前記筐体の床は、前記排気口の位置に対応した開口が設けられ、前記排気口から吹き出した温風を前記開口から前記筐体の外部に排出可能に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防音室によれば、快適な空気環境と安全を確保することができる。とりわけ、天井に消火剤容器を含む一体型の自動消火装置を設けているので、人の操作に依存せずに初期火災を素早く鎮圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1形態例を示す防音室の正面図である。
図2】同じく平面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4図1のIV-IV断面図である。
図5】本発明の第1形態例を示す一体型空気調和機の正面図である。
図6】同じく右側面図である。
図7】同じく左側面図である。
図8】同じく平面図である。
図9】同じく底面図である。
図10図6のX-X断面図である。
図11図2のXI-XI断面図である。
図12】本発明の第2形態例を示す一体型空気調和機の正面図である。
図13】同じく右側面図である。
図14】同じく左側面図である。
図15図13のXV-XV断面図である。
図16】本発明の第2形態例を示す防音室の正面図である。
図17図16のXVII-XVII断面図である。
図18図16のXVIII-XVIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図11は、本発明の第1形態例における防音室及び防音室の空調システムを示すものである。第1の防音室11は、図1乃至図4に示すように、筐体12と扉13とによって形成され、人が入ることができる空間を有し、例えば、駅構内、空港、商業施設、展示場、屋外の広場、店舗の内部、ホテル、共同住宅、又はオフィス内のように、さまざまな人が通行する場所に設置される。また、防音室11は、インターネットなどのネットワークを介して外部機器との間でデータを送受信することができる。防音室11を利用するユーザは、例えば、防音室11に設置されたテレビ会議用端末を用いて、テレビ会議機能を有する外部機器を利用するユーザとの間でテレビ会議を行うことができる。
【0011】
筐体12は、金属、木材又は樹脂などの部材からなり、全体として高さ寸法の大きい直方体に形成され、その一側面である正面(図1)に、ユーザが出入りするための開口が設けられている。また、筐体12の底面の四隅にはキャスター14及びその近傍にアジャスター15がそれぞれ設けられている。防音室11の設置者は、キャスター14を使って設置場所に防音室11を移動した後に、アジャスター15の長さが防音室11の底面と床面との距離に等しくなるように調整することで、防音室11を定位置に固定することができる。
【0012】
筐体12の内側には吸音材12aが設けられており、防音室11の内部でユーザが話した声、及び外部機器を使用するユーザが発した声が防音室11の外部に漏れにくい。したがって、防音室11が、不特定多数の人が通る公共場所に設置されている場合であっても、ユーザは、機密性が高い内容を安心して話すことができる。また、床材12bの仕様は、枠組みされた基材の内側に梁が複数介在されることによって上下床板の間に床下空間が形成された二重床の構造となっており、人の出入りや座席となるソファ16などの支持に必要な強度が確保されている。さらに、防災上の観点から、内壁面の吸音材12aや床面に敷き詰めたタイル材12cについては不燃性のものが使用されている。
【0013】
ソファ16は、大人一人が若干の余裕をもって着座できるだけの幅を有して形成され、背もたれ16aが筐体12の互いに対向する内壁面の一方に接して配置されており、他方の内壁面には、着座した状態で使用可能なテーブル17が片持ち状に取り付けられている。室内の空間は、一組のソファ16及びテーブル17が配置された状態で、ユーザの出入りを妨げず、かつ、作業や活動を行うユーザの利便性を損なわない程度の大きさで、高さ、幅及び奥行きの各寸法が設定されている。
【0014】
扉13は、筐体12の開口を塞ぐことができるように筐体12に結合されており、ハンドル13aを操作することにより、筐体12との結合部位を軸にして開閉可能に構成されている。扉13には扉ガラス13bが設けられており、外部から防音室11の内部を視認することが可能になっている。
【0015】
筐体12と扉13との間には錠(図示せず)が設けられており、筐体12に組み込まれた制御部(CPU)の制御により、扉13を開くことができる解錠状態と扉13を開くことができない施錠状態とを切り替える。錠は、筐体12の内側からユーザが操作することによって解錠状態と施錠状態とを切り替えたり、遠隔操作によって切り替えたりすることで、防音室11を解錠又は施錠するように制御がなされる。
【0016】
また、筐体12の正面側には、ユーザの操作を受け付ける操作受付部18が設けられている。操作受付部18は、例えば、タッチパネル付きのディスプレイであり、ユーザにより入力された使用予定時間として、30分、60分、90分のいずれか一つの時間を受け付ける。さらには、スマートフォンなどの情報端末から、あらかじめ日時を指定した予約も行える。ユーザは、予約した時間になったら、自分が予約した防音室11の操作受付部18をタッチし、画面に表示されたQRコード(登録商標)を情報端末で読み取る。そして、ネットワーク上の管理装置(サーバ)において、ユーザ識別情報に基づく必要な認証が完了すると、防音室11が解錠されて入室可能な状態となる。決済される料金は、使用予定時間に応じて決定されており、決済が完了してから使用予定時間が経過するまでの間、防音室11の内部に設けた電子機器に電力が供給される。
【0017】
前記電子機器は、筐体12に組み込まれた電源部から電力供給を受けて機能を発揮し、常設されたテレビ会議用の設備19、筐体12の天井12dに設置された照明20、監視カメラ21、スピーカ22及び空調設備、並びにユーザが持ち込んだコンピュータ又は携帯端末などである。空調設備は、防音室の内部空間を換気するとともに、内部温度を調整するもので、例えば、床上に設置された冷暖房用の一体型空気調和機(エアコン)23や、天井12dに設置されたファン24が挙げられる。空調設備の具体的な構成については後述する。
【0018】
前記制御部は、外部の電源コンセントと電源部とが配線された状態で、ユーザ認証が完了した管理装置から指示を受けると、空調設備など各種電子機器に対して電源部による電力供給を開始させる制御を行う。すなわち、これらの機器は、制御部による制御に基づいて、決済が完了してから使用予定時間が経過するまでの間、動作する。また、ユーザは、必要に応じて、室内に設けられた電子機器の接続ポート25を使用して給電を受けることができる。
【0019】
ここで、防音室11の天井12dには、防災設備の一つとして、自動消火装置26を設けている。自動消火装置26は、電源を必要としない下方放出型の消火装置(スプリンクラー)であって、消火剤が充填された消火剤容器27と、該消火剤容器27の下端中央に設けられ、内蔵される熱感知部の感知を受けて消火剤を室内に放出可能な放出ノズル28とを一体的に備えている。熱感知部には低融点金属が使用され、火災が発生した非常時に、放出ノズル28の下端にある集熱板が火災源からの熱を感知すると、低融点金属が融けるとともに、容器内の加圧されたガスが密閉栓及び集熱板を吹き飛ばし、消火剤の放出が始まる。
【0020】
自動消火装置26は、防音室11の機能性を失わないように、その取付位置が照明20や、スピーカ22、ファン24、各種カバー部材29などの配置を考慮して設定されている(図2)。特に、放出ノズル28の位置、つまり熱検知部の位置とファン24の位置とは、ファン24の作動によって形成した上昇気流で、火災源からの熱の上昇を促進させるように、互いに横並びの関係になるように設けられている。
【0021】
ところで、防音室11には、通常の使用状態において、室内で作業や活動を行うユーザに熱的な不快感を与えることなく、快適な空気環境を提供できる空調が望まれている。特に、防音室11を駅構内などの公共施設に設置することを考えると、夏期においては、外気温度に比べて高温となることも想定される。このような事情から、防音室11の床上には、室内を冷房又は暖房に適した状態に整える一体型空気調和機23が設置されている。
【0022】
図5乃至図10は、本発明の第1の防音室及び防音室の空調システムに適用した第1の一体型空気調和機23を示すものである。一体型空気調和機23は、冷房用の冷凍サイクルと、暖房用の発熱体であるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータとを同一キャビネット内に収納したものであって、図5に示すように、矩形箱状のキャビネット30の前面に設けられた操作パネル30aを操作することにより、冷房運転又は暖房運転の運転モードの選択や設定温度、送風量の入力が可能になっている。キャビネット30は、防音室11に据え付けた状態で、テーブル17の下に程よく収まる高さ寸法を有し、左右両側面には運搬や据付時に両手を掛けることが可能な把手30bを備えている。
【0023】
キャビネット30の前面には、操作パネル30aを挟む上下方向の上側に冷暖房用の送風口30cが、下側に室内の空気を取り入れるための前面吸気口30dがそれぞれ設けられている。また、キャビネット30の左側面についても、上部に室内の空気を取り入れるための側面吸気口30eが設けられている(図7)。キャビネット30の上面は、図8に示すように、貫通孔や凹凸のない平坦状に形成されているが、一方で、キャビネット30の据付面である底面には、図9に示すように、底蓋30fを避けた端部に排気口30gが設けられている。排気口30gは、所定の大きさの長孔が前後方向に複数配列されることにより、全体として矩形開口状に形成され、排出される温風の通気性を確保している。
【0024】
キャビネット30内は、図10に示すように、下部に圧縮機31が配置され、4本の支持柱32aにより圧縮機31を跨ぐようにして組まれた架台32上に、キャビネット30の前面吸気口30dの位置に対応する凝縮器33と、その後面側に凝縮器用ファン(図示せず)が横並びにそれぞれ配置されている。また、架台32の右側方に排熱用の空間が形成されており、この空間に排気ダクト34が設けられている。
【0025】
排気ダクト34は、キャビネット30の内側面に沿って上下方向に延びる矩形断面の管状をなし、上端部が前記凝縮器用ファンからの水平方向の気流(温風)を取り込んで鉛直下方に向かう流れに変更する円弧内側面34aを有して形成され、下端部が排気口30gに接続されている。こうして、キャビネット30内の下半部には、主に圧縮機31、凝縮器33、凝縮器用ファン及び排気ダクト34が集約配置されている。
【0026】
キャビネット30内の上部には、冷暖房の運転状態を制御するための制御回路や、側面吸気口30e及び送風口30cの位置に対応して設けられた蒸発器用ファン35、さらには、蒸発器用ファン35の上流側であってキャビネット幅方向に横並びの蒸発器36及びPTCヒータ37がそれぞれ配置されている。また、蒸発器36の真下には、冷房運転によって発生した結露水を確保するとともに、凝縮器33の熱で結露水を蒸発させるための処理部38が設けられている。
【0027】
このように形成された一体型空気調和機23を使用する場合、冷房運転時には、PTCヒータ37の回路がオフ状態にあり、圧縮機31の駆動によって冷凍サイクルが運転される。これにより、冷媒は、圧縮機31によって高圧状態となり、凝縮器33に送られ、凝縮器33によって凝縮して放熱される。さらに、膨張弁を経由した低温の冷媒は、蒸発器36に送られ、蒸発器36によって吸熱(冷房効果)し、低圧状態となって圧縮機31に戻される。
【0028】
ここで、蒸発器用ファン35の作動により側面吸気口30eから取り込まれた空気は、蒸発器36で冷却され、冷風となって送風口30cから送出される。一方、凝縮器33の熱は、凝縮器用ファンの作動により温風となって排気ダクト34の上部に流入し、排気ダクト34の円弧内側面34aによって鉛直下方に向かって流れることで、排気口30gから送出される。こうして、一体型空気調和機23の冷房運転が行われる。このとき、蒸発器36によって生成された結露水は、自然落下中に処理部38で確保された後、凝縮器33の熱によって蒸発し、外部に排水することなく、内部において処理がなされる。
【0029】
暖房運転時には、冷凍サイクルの運転が停止され、PTCヒータ37の回路がオンの状態になる。これにより、暖房運転においても兼用される蒸発器用ファン35の作動により側面吸気口30eから取り込まれた空気が昇温され、温風となって送風口30cから送出される。こうして、一体型空気調和機23の暖房運転が行われる。PTCヒータ37は、温度が上がると抵抗値も上がるPTC特性を利用したヒータであるため、一定の温度に達したら、それ以上に温度が上がらなくなることで過加熱を防止し、省エネ性、安全性を確保している。
【0030】
このように形成された防音室11は、その空調効果を最大限に発揮できるように、床材12bの構成や各種空調設備の配置について最適化がなされている。具体的には、図11に示すように、一体型空気調和機23は、テーブル17の真下に配置され、キャビネット30の背面を筐体12の内壁面に沿わせ、さらには、キャビネット30の左側面を扉13が結合された筐体12の内壁面に沿わせた位置(図3)、つまり出入り口側隅部に寄せるように配置された状態で、固定金具(図示せず)により転倒防止措置がなされている。これに加えて、天井12dに備わるファン24が、ソファ16との関係においては真上に位置するように配置されている。これにより、送風口30cから室内に送出された冷風又は温風は、図11の矢印Aに示すように、作動するファン24の吸引力と相俟って、緩やかに上昇気流を形成し、天井12dから外部に放出される。
【0031】
一方、筐体12の床材12bには、一体型空気調和機23の排気口30gの位置及び大きさに対応した開口(図示せず)が設けられており、この開口によって上下床板12e,12fの上面及び下面の間を連通する通過風路39が形成されている。これにより、冷房運転時に排気口30gから吹き出した温風は、図11の矢印Bに示すように、床下を抜けて防音室11が設置された場所の床面に放出される。
【0032】
このように、第1の構成では、一体型空気調和機23が設置された防音室11の床に、一体型空気調和機23の排気口30gから吹き出した温風を外部に排出可能な開口が形成されているので、冷凍サイクルの排熱を室内に拡散させずに冷風と分離させることが可能となり、エネルギーロスが少ない空気環境を簡易に実現することができる。しかも、床下排気構造によって、たとえ防音室11を周囲の壁や他の防音室と隣り合わせで設置した場合であっても、床下から吹き出した排気が詰まることなく流れ、さらには、近傍の人や通行人に不快感を与えることもないので、環境に優しい効果を発揮する。これに加えて、天井12dにファン24が設けられ、その作動によって防音室11内に上昇気流を形成するので、一体型空気調和機23からの冷風の上昇が促進され、室内全体の空気を吸い上げて空調することが可能となり、複雑な制御を伴わずに室内温度を均一に調整することができる。
【0033】
また、防音室11に備わる制御部が、管理装置でなされる予約ユーザの認証を受けて、一体型空気調和機23やファン24の作動を開始する制御を行うので、空調設備の操作を行う手間などユーザの煩わしさの解消が図れるとともに、防音室11の運用をより経済的に行うことができる。すなわち、簡単な構成で優れた空調機能を発揮可能な防音室11の構造及び空調システムが実現され、もって、防音室11が設置される多様な環境において、その快適な利用を促進し得るものとなる。
【0034】
さらには、防音室11内に一組のソファ16及びテーブル17を配置した状態で、一体型空気調和機23がテーブル17の真下に、ファン24がソファ16の真上にそれぞれ位置するように構成されているので、一体型空気調和機23の送風口30cから送出した風が最適な風速と気流の広がりをもって緩やかに上昇気流を形成し、肌に直接風が当たる不快感を感じさせない快適な室内空間を実現できる。しかも、一体型空気調和機23がキャビネット30の一側面を扉13が結合された筐体12の内壁面に沿わせた位置に配置しているので、扉13の開閉動作による室内の温度変化に敏感に反応できるだけでなく、着座したユーザの足元空間を最大限に確保することもできる。その上、一体型空気調和機23をテーブル17の下に配置することで、その存在を気にすることがなくなり、室内の空間デザインを美しく形成することができる。
【0035】
また、防音室11が天井12dに消火剤容器27を含む一体型の自動消火装置26を設けているので、人の操作に依存せずに初期火災を素早く鎮圧することができる。しかも、天井12dには自動消火装置26と同じ高さ位置に設けたファン24が、その作動によって室内に上昇気流を形成するので、火災源からの熱の上昇が促進され、迅速かつ確実な熱検知が可能となり、しいては、防音室11の空調機能を最大限に発揮することが可能となる。
【0036】
ところで、第1の構成では、一体型空気調和機23に備わる排気口30gをキャビネット30の底面に設けた例を示したが、防音室11の設置場所について十分なスペースを確保できる状況であれば、必ずしも床下排気構造にする必要はない。また、防音室の設置場所は様々であることから、この種の空調システムにあっては、要求される冷却能力に応じて、より効率的な運転が行えること、すなわち、省エネルギー化については常に求められている。そこで、以下では、変形例として、防音室の室内及び室外間を隔てる壁に一体的に装着され、排気口を室外側に露出可能な一体型空気調和機の構成とその機能について説明する。
【0037】
図12乃至図18は、本発明の第2形態例における防音室及び防音室の空調システムを示すものである。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0038】
第2の一体型空気調和機51は、図12乃至図15に示すように、冷房用の冷凍サイクルと、暖房用の発熱体であるPTCヒータとを同一キャビネット内に収納したものであって、矩形箱状のキャビネット52の前面に設けられた操作パネル52aを操作することにより、冷房運転又は暖房運転の運転モードの選択や設定温度、送風量の入力が可能になっている。キャビネット52は、使用場所となる防音室に据え付けた状態で、例えば、室内に配置される前部側がテーブルの下に程よく収まり、かつ、室外に配置される後部側が吸排気機能を実現可能な程度に、高さ寸法及び奥行き寸法を有して形成されている。
【0039】
キャビネット52の前面には、図12に示すように、操作パネル52aを挟む上下方向の上側に冷暖房用の送風口52bが、下側に室内の空気を取り入れるための前面吸気口52cがそれぞれ設けられている。また、キャビネット52の右側面には、図13に示すように、排気口52dが、キャビネット52の左側面には、図14に示すように、前記排気口52dに対して向かい合う位置に側面吸気口52eがそれぞれ設けられている。
【0040】
キャビネット52内は、図15に示すように、仕切板52fが設けられることにより、奥行き方向(図15の左右方向)に区画された室内側熱交換室53と室外側熱交換室54とを有して形成されている。主な構成部品として、室内側熱交換室53には、下部に圧縮機55が配置されるとともに、架台56上であって送風口52bの位置に対応する蒸発器57及びPTCヒータ58と、これらの奥側に位置する蒸発器用ファン59とが横並びにそれぞれ配置されている。また、蒸発器57の真下には、冷房運転によって発生した結露水を確保するための処理部60が設けられている。
【0041】
一方、室外側熱交換室54には、架台61上であって側面吸気口52eと排気口52dと間の空間に、凝縮器62及び送風機である凝縮器用ファン63が、適正な通風を考慮した向きでそれぞれ配置されている。これにより、凝縮器用ファン63の作動を受けて、上流側の側面吸気口52eから内部に取り込まれた空気は、仕切板52fの板面に沿う方向(図15の矢印方向)に流通しながら凝縮器62を通過した後、下流側の排気口52dから外部に送出される。
【0042】
このように形成された一体型空気調和機51を使用する場合、冷房運転時には、PTCヒータ58の回路がオフ状態にあり、圧縮機55の駆動によって冷凍サイクルが運転される。これにより、冷媒は、圧縮機55によって高圧状態となり、凝縮器62に送られ、凝縮器62によって凝縮して放熱される。さらに、膨張弁を経由した低温の冷媒は、蒸発器57に送られ、蒸発器57によって吸熱(冷房効果)し、低圧状態となって圧縮機55に戻される。
【0043】
ここで、蒸発器用ファン59の作動により前面吸気口52cから取り込まれた空気は、蒸発器57で冷却され、冷風となって送風口52bから送出される。一方、凝縮器62の熱は、凝縮器用ファン63の作動により温風となって排気口52dから送出される。こうして、一体型空気調和機51の冷房運転が行われる。このとき、室外側熱交換室54の奥壁54aと仕切板52fとが互いに平行をなしているので、これらの間の空間を流通する空気が整流され、その結果、側面吸気口52eから排気口52dに向かう直線状の気流を形成する。また、蒸発器57によって生成された結露水は、自然落下中に処理部60で確保された後、室外側熱交換室54に導かれて凝縮器62の熱で蒸発し、外部に排水することなく、内部において処理がなされる。
【0044】
暖房運転時には、冷凍サイクルの運転が停止され、PTCヒータ58の回路がオンの状態になる。これにより、蒸発器用ファン59の作動により前面吸気口52cから取り込まれた空気が昇温され、温風となって送風口52bから送出される。こうして、一体型空気調和機51の暖房運転が行われる。
【0045】
図16乃至図18は、一体型空気調和機51が適用される防音室を示すものである。第2の防音室71は、基本的に、第1形態例のものと同一の構成及び機能を有しているが、筐体72の壁には、図17及び図18に示すように、対向配置された一対の壁のうち、扉13側と反対側(裏側)の壁72aにキャビネット52の外形に対応した壁穴73が設けられている。
【0046】
一体型空気調和機51は、排気口52dを筐体72の外側に露出させて前記壁穴73に気密に装着した状態で、凝縮器用ファン63によって室外側熱交換室54の空気を仕切板52fの板面に沿う方向に流通可能に、かつ、排気口52dから吹き出した温風を筐体72の壁(外壁面)72aに沿う方向に放出可能になっている。このとき、キャビネット52は、仕切板52fが壁穴73に対応した位置にあり、筐体72の内壁面に沿わせて室内側熱交換室53を床面上に配置し、言い換えると、送風口52bをテーブル17の真下に位置させ、壁穴73に装着した状態で、固定金具(図示せず)により脱落防止措置がなされている。
【0047】
これにより、送風口52bから室内に送出された冷風又は温風は、図17の矢印Cに示すように、作動するファン24の吸引力と相俟って、緩やかに上昇気流を形成し、天井12dから外部に放出される。一方、冷房運転時に排気口52dから吹き出した温風は、図18の矢印Dに示すように、筐体72の裏側において、室外側熱交換室54内の気流速度を維持したままで、排気口52dから筐体72の壁72aに沿って放出される。
【0048】
このように、第2の構成では、防音室71の筐体72を形成する壁のうち、扉13側と反対側の壁72aに設けた壁穴73に一体型空気調和機51を装着し、この装着状態において、排気口52dを筐体72の外側に露出させているので、冷凍サイクルの排熱を室内に拡散させずに冷風と分離させることが可能となり、エネルギーロスが少ない空気環境を簡易に実現することができる。これに加えて、排気口52dから吹き出した温風を筐体72の壁72aに沿う方向に放出可能に形成されているので、たとえ防音室71を周囲の壁や他の防音室と隣り合わせで設置した場合であっても、排気が滞って再び装置内に吸入されてしまう、いわゆるショートサーキットの発生を抑制できることから、冷凍サイクルのバランスが維持され、これにより、空調能力の安定化に寄与することができる。すなわち、より簡単な構成で優れた空調機能を発揮可能な防音室71の構造及び空調システムが実現され、もって、防音室71が設置される多様な環境において、その快適な利用を促進し得るものとなる。
【0049】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、防音室には空調や防災に関する設備の他に、必要な各種設備を備えることができ、設置場所については鉄道車両、バス、タクシー又は飛行機などの移動体であってもよい。また、筐体の形状は、直方体に限られず、円柱体形状であってもよく、機動的な可搬式防音室の利点が損なわれない範囲で、一人だけでなく二人以上の収容が可能な空間を有して形成することができる。この場合、ユーザに気流感・不快感を与えず、室内における作業や活動を快適に行える範囲で、機材や空調設備の構成を変更することができる。
【0050】
さらに、ファンは、天井面に、つまり自動消火装置が取り付けられる面と同一面に設けることで防災上だけでなく、通常の使用においても顕著な空調効果を奏するものであるが、これに限られず、防音室が設置される環境に応じて側壁面の上部に設けるなど適宜に変更することができる。加えて、一体型空気調和機の仕様は、底面や側面に排気口を備えていれば種々のものが採用でき、キャビネットに収納される機器の配置も適宜に変更できる。また、第1の構成では、排気ダクトの形状は、例えば、風向き変更部を円弧内側面によって形成するだけでなく、傾斜や直立した面によって形成してもよい。さらに、床材に設けた開口は、一体型空気調和機の排気口に対応して設けてあれば、大きさや形状は任意であり、通気性を考慮して、ある程度の大きさを有したドット状やスリット状の孔を多数備えてもよい。
【0051】
また、第2の構成では、仕切板は熱交換室内の通風確保に必要な広さの板面を有していれば、形状は特に限定されず、冷媒の管路や電気回路などを設置するための通孔を設けることができる。さらに、室外側熱交換室の空気を仕切板の板面に沿う方向に流通可能であれば、排気口は側面のみだけでなく、例えば、上面にも備えることができる。この場合、後面から排気を行う一般的な空気調和機と比較するならば、例えば、不特定多数の人が通る駅構内の壁際など設置場所の条件による運転不可や、圧縮機の過負荷連続運転による寿命低下などの品質上の問題が生じないことから、極めて有益である。
【符号の説明】
【0052】
11…防音室、12…筐体、12a…吸音材、12b…床材、12c…タイル材、12d…天井、12e…上床板、12f…下床板、13…扉、13a…ハンドル、13b…扉ガラス、14…キャスター、15…アジャスター、16…ソファ、16a…背もたれ、17…テーブル、18…操作受付部、19…設備、20…照明、21…監視カメラ、22…スピーカ、23…一体型空気調和機、24…ファン、25…接続ポート、26…自動消火装置、27…消火剤容器、28…放出ノズル、29…カバー部材、30…キャビネット、30a…操作パネル、30b…把手、30c…送風口、30d…前面吸気口、30e…側面吸気口、30f…底蓋、30g…排気口、31…圧縮機、32…架台、32a…支持柱、33…凝縮器、34…排気ダクト、34a…円弧内側面、35…蒸発器用ファン、36…蒸発器、37…PTCヒータ、38…処理部、39…通過風路、51…一体型空気調和機、52…キャビネット、52a…操作パネル、52b…送風口、52c…前面吸気口、52d…排気口、52e…側面吸気口、52f…仕切板、53…室内側熱交換室、54…室外側熱交換室、54a…奥壁、55…圧縮機、56…架台、57…蒸発器、58…PTCヒータ、59…蒸発器用ファン、60…処理部、61…架台、62…凝縮器、63…凝縮器用ファン、71…防音室、72…筐体、72a…壁、73…壁穴
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