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特開2024-25837ポリイソシアネート組成物、ブロックポリイソシアネート組成物、ポリウレタン樹脂組成物、コーティング組成物及びコーティング基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025837
(43)【公開日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート組成物、ブロックポリイソシアネート組成物、ポリウレタン樹脂組成物、コーティング組成物及びコーティング基材
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20240219BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20240219BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20240219BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C08G18/08 019
C08G18/79 010
C08G18/80
C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087170
(22)【出願日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】202210681613.0
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】P 2022130527
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】洪 昌峰
(72)【発明者】
【氏名】福地 崇史
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034BA02
4J034BA03
4J034CA02
4J034CA04
4J034CB01
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC09
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4J034CD07
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4J034DC50
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4J034HC12
4J034HC22
4J034HC34
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4J034HC71
4J034HC73
4J034HD03
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4J038MA15
4J038NA03
4J038NA04
4J038NA11
(57)【要約】
【課題】親水性溶剤に希釈した際の濁りが小さく、塗膜としたときの耐酸性と耐塩水噴霧性に優れるポリイソシアネート組成物を提供する。
【解決手段】親水性ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物であって、前記親水性ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと、アニオン性化合物と、アルコールと、の反応物であり、前記ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートからなり、前記アニオン性化合物は活性水素基を含み、前記ポリイソシアネート組成物の総質量に対する前記アニオン性化合物の質量分率が0.1質量%以上13.0質量%以下であり、前記アルコールは、一分子あたりの平均数が2.0以上3.5以下のヒドロキシル基を有し、数平均分子量が450以下である、ポリイソシアネート組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物であって、
前記親水性ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと、アニオン性化合物と、アルコールと、の反応物であり、
前記ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導され、
前記アニオン性化合物は、質量分率が0.1質量%以上13.0質量%以下の活性水素基を含み、
前記アルコールは、一分子あたりの平均数が2.0以上3.5以下のヒドロキシル基を有し、数平均分子量が450以下である、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート組成物中の前記アルコールの質量分率は、0.01質量%以上4.5質量%以下である、請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート組成物中の前記アルコールの質量分率は、0.01質量%以上2.5質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
ジイソシアネートに由来する環状3量体の質量分率が、20.0質量%以上、70.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
ウレトジオン2量体の質量分率が、0.01質量%以上、20.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
イソシアネート基濃度が17.0質量%以上24.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
尿素基とイソシアヌレート基を有し、前記尿素基と該イソシアヌレート基とのモル比(尿素基/イソシアヌレート基)が0.02/100以上10.0/100以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項8】
ウレタン基を有し、前記ウレタン基と前記イソシアヌレート基とのモル比(ウレタン基/イソシアヌレート基)が0.5/100以上50.0/100以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項9】
25℃における粘度が400mPa・s以上20,000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項10】
前記アニオン性化合物は、水酸基を含有するスルホン酸及びアミノ基を含有するスルホン酸からなる群より選ばれる1種以上のスルホン酸である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項11】
前記アニオン性化合物のスルホン酸基が、無機塩基又は有機アミン化合物で中和されている、請求項8に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項12】
前記アニオン性化合物が下記一般式(1)で表される化合物である請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R11は水酸基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、及び、イミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基である。R11は環構造を含んでもよい。前記環構造は、芳香族環、窒素原子を2つ含む5員環若しくは6員環、又は、窒素原子と酸素原子とを含む5員環若しくは6員環である。)
【請求項13】
前記アニオン性化合物が下記一般式(2)で表される化合物である請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【化2】
(一般式(2)中、R21及びR22は、互いに独立して、水素原子、又は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。R22及びR23のうち少なくとも1つは水素原子である。R23は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。)
【請求項14】
請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物と、熱解離性ブロック剤との反応物である、ブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物を含む、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物を含む、コーティング組成物。
【請求項17】
請求項16に記載のコーティング組成物によってコーティングされた、コーティング基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物、ブロックポリイソシアネート組成物、ポリウレタン樹脂組成物、コーティング組成物及びコーティング基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護や労働安全衛生等の観点から、有機溶剤の使用量を低減させるため、水系コーティング剤の開発が活発に行われている。水酸基を含有する主剤(いわゆる、ポリオール)と、硬化剤としてのポリイソシアネートと、からなる2成分型硬化樹脂組成物は、常温でも硬化が可能であり、かつ優れた機械的性能や耐薬品性、耐久性等の性能を発現することから、各種の塗料や粘接着剤等の用途において幅広く使用されている。
【0003】
このようなポリイソシアネートを硬化剤として用いる2成分型硬化樹脂組成物については、現状は溶剤系の製品が主流であり、水系の製品は、一部の地域や用途を除き、未だ大きく広がってはいない。
【0004】
その理由としては、ポリイソシアネートを硬化剤として用いる2成分型硬化樹脂組成物の場合、水系の硬化樹脂組成物は溶剤系のものと比較して、一般的に外観、耐水性、耐候性等の性能が劣ること、イソシアネート基と水系主剤中の水との反応が生じるため可使時間が短いこと、イソシアネート基が水と反応すると炭酸ガスが発生するため、気泡やピンホールが生じて硬化樹脂の品質を低下させる場合があること、乾燥性が劣ること等が挙げられる。
【0005】
水系2成分型硬化樹脂組成物の硬化剤としては、例えば、特許文献1には、ポリイソシアネートに特定のエチレンオキシド単位を導入することで、水への分散を可能にしたポリイソシアネート混合物を開示している。
また、特許文献2、3には、特定の構造、及び特定の粘度を有するポリイソシアネートを含有することにより、水系主剤への配合性を付与した水系2成分型硬化樹脂用硬化剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-328654号公報
【特許文献2】特許第4806511号公報
【特許文献3】国際公開第2015/035673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート構造中に親水性を有する基をウレタン基により結合しているため、イソシアネート基の官能基数が低くなり、乾燥性等の硬化性や、耐酸性等の塗膜物性が不十分である。また、特許文献2および3に記載の技術においては、耐酸性や耐塩水噴霧性等の塗膜耐久性がなお不十分であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、色度が高く、親水性溶剤に希釈した際の濁りが小さく、主剤と配合した際の粘度変化が小さく、さらに塗膜としたときの耐酸性と耐アルカリ性、耐塩水噴霧性、耐屈曲性、耐摩耗性、耐候性に優れるポリイソシアネート組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]親水性ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物であって、前記親水性ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと、アニオン性化合物と、アルコールと、の反応物であり、前記ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導され、前記アニオン性化合物は、質量分率が0.1質量%以上13.0質量%以下の活性水素基を含み、前記アルコールは、一分子あたりの平均数が2.0以上3.5以下のヒドロキシル基を有し、数平均分子量が450以下である、ポリイソシアネート組成物。
[2]前記ポリイソシアネート組成物中の前記アルコールの質量分率は、0.01質量%以上4.5質量%以下である、[1]に記載のポリイソシアネート組成物。
[3]前記ポリイソシアネート組成物中の前記アルコールの質量分率は、0.01質量%以上2.5質量%以下である、[1]又は[2]に記載のポリイソシアネート組成物。
[4]ジイソシアネートに由来する環状3量体の質量分率が、20.0質量%以上、70.0質量%以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[5]ウレトジオン2量体の質量分率が、0.01質量%以上、20.0質量%以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[6]イソシアネート基濃度が17.0質量%以上24.0質量%以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[7]尿素基とイソシアヌレート基を有し、前記尿素基と該イソシアヌレート基とのモル比(尿素基/イソシアヌレート基)が0.02/100以上10.0/100以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[8]ウレタン基を有し、前記ウレタン基と前記イソシアヌレート基とのモル比(ウレタン基/イソシアヌレート基)が0.5/100以上50.0/100以下である、[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[9]25℃における粘度が400mPa・s以上20,000mPa・s以下である、[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[10]前記アニオン性化合物は、水酸基を含有するスルホン酸及びアミノ基を含有するスルホン酸からなる群より選ばれる1種以上のスルホン酸である、[1]~[11]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[11]前記アニオン性化合物のスルホン酸基が、無機塩基又は有機アミン化合物で中和されている、[10]に記載のポリイソシアネート組成物。
[12]前記アニオン性化合物が下記一般式(1)で表される化合物である[1]~[11]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R11は水酸基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、及び、イミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基である。R11は環構造を含んでもよい。前記環構造は、芳香族環、窒素原子を2つ含む5員環若しくは6員環、又は、窒素原子と酸素原子とを含む5員環若しくは6員環である。)
[13]前記アニオン性化合物が下記一般式(2)で表される化合物である[1]~[12]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
【化2】
(一般式(2)中、R21及びR22は、互いに独立して、水素原子、又は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。R22及びR23のうち少なくとも1つは水素原子である。R23は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。)
[14][1]~[13]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物と、熱解離性ブロック剤との反応物である、ブロックポリイソシアネート組成物。
[15][1]~[14]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物を含む、ポリウレタン樹脂組成物。
[16][1]~[15]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物を含む、コーティング組成物。
[17][16]に記載のコーティング組成物によってコーティングされた、コーティング基材。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、色度が高く、親水性溶剤に希釈した際の濁りが小さいポリイソシアネート組成物を、さらに主剤と配合した際の粘度変化が小さく、塗膜としたときの耐酸性と耐アルカリ性、耐塩水噴霧性に優れたコーティング組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
<ポリイソシアネート組成物>
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、親水性ポリイソシアネートを含有する。
親水性ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと、アニオン性化合物と、アルコールと、の反応により得られる反応物である。
ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導される。
アニオン性化合物は、質量分率が0.1質量%以上13.0質量%以下の活性水素基を含む。
アルコールは、一分子あたりの平均数が2.0以上3.5以下のヒドロキシル基を有し、数平均分子量が450以下である。
以下に各構成成分について詳細を説明する。
【0013】
≪ポリイソシアネート≫
親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートおよび芳香族ジイソシアネートからなる群より選択される1種以上のジイソシアネートから誘導される。なお、ここでいう「ポリイソシアネート」とは、ジイソシアネート同士、及び、必要に応じて、ジイソシアネート以外の化合物(例えば、アルコール、水、アミン等)を反応させて得られた化合物を意味する。
【0014】
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、エチル(2,6-ジイソシアナト)ヘキサノエート、1,6-ジイソシアナトヘキサン(以下、「HDI」とも記す。)、1,9-ジイソシアナトノナン、1,12-ジイソシアナトドデカン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1、6-ジイソシアナトヘキサン等が挙げられる。
【0015】
脂環族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」とも記す。)、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル1-イソシアナト-3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「IPDI」とも記す。)、4-4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン(以下、「水添MDI」とも記す。)、2,5-又は2,6-ジイソシアナトメチルノルボルナン等が挙げられる。
【0016】
芳香族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
中でも、ジイソシアネートとしては、ポットライフの視点で、HDI、IPDI、水添XDI又は水添MDIが好ましい。特にポリイソシアネート中のジイソシアネート成分全体のうち、HDIが80質量%以上含まれているポリイソシアネートが、分散性と耐水性の両立の点で好ましい。
【0017】
また、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、上述したジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートに加えて、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナートメチルオクタン、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナト-ヘキサノエート等の脂肪族トリイソシアネート、又はこれら脂肪族トリイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートを含んでもよい。
【0018】
(イソシアネート基由来の結合基)
前記ポリイソシアネートは、上記ジイソシアネートのイソシアネート基に由来する結合基を有する。イソシアネート基由来の結合基としては、例えば、以下の(a)~(i)に示す基等が挙げられる。
(a)3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイソシアヌレート基。
(b)3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイミノオキサジアジンジオン基。
(c)2つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させて得られるアロファネート基。
(d)2つのイソシアネート基を環化二量化して得られるウレトジオン基。
(e)3つのイソシアネート基と1つの水分子とを反応させて得られるビウレット基。
(f)1つのイソシアネート基と1つの水酸基を反応させて得られるウレタン基。
(g)1つのイソシアネート基と1つの1級又は2級アミンとを反応させて得られる尿素基。
(h)1つのイソシアネート基と1つのカルボキシ基とを反応させて得られるアシル尿素基。
(i)2つのイソシアネート基と1分子の二酸化炭素とを反応させて得られるオキサジアジントリオン基。
その中でも6員環構造を有する結合基が含有していることが好ましい。6員環構造としては、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基等が挙げられる。
【0019】
(イソシアヌレート基)
イソシアヌレート基は、3つのイソシアネート基を環状3量化して得られる官能基であり、下記式(III)で表される構造をいう。
【0020】
【化3】
【0021】
未反応のジイソシアネートを除いた状態で、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基、アロファネート基、及びウレトジオン基の合計モル数(100モル%)に対して、イソシアヌレート基の含有率は50モル%以上90モル%以下である。下限値は55モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。また、上限値は85モル%がより好ましく、80モル%がさらに好ましい。6員環構造の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる塗膜の耐水性と耐候性がより優れ、一方、上記上限値以下であることにより、分散性が優れる傾向がある。
【0022】
イソシアヌレート基の含有率の上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、イソシアヌレート基の含有率は、55モル%以上85モル%以下、60モル%以上80モル%以下が挙げられる。
【0023】
硬化剤中のイソシアネート基由来の各構造の含有率は、13C-NMR測定により求めることができる。具体的には、Bruker社製Biospin Avance600(商品名)を用いた13C-NMRの測定(測定溶媒:クロロホルム-d、試料濃度:60質量/容量%、観測周波数:150MHz、積算回数:10000回)において、脂肪族ジイソシアネートがHDIである場合、イソシアヌレート環構造は148.6ppm付近に6員環内のカルボニル基の炭素原子のシグナルが認められる。構造中に同じ炭素原子が三個あるため積分値の1/3の値が構造のモル分率に相当する。
【0024】
(イミノオキサジアジンジオン基)
イミノオキサジアジンジオン基は、3つのイソシアネート基を環状3量化して得られる官能基であり、下記式(IV)で表される構造をいう。
【0025】
【化4】
【0026】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基、アロファネート基、及びウレトジオン基の合計モル数(100モル%)に対して、イミノオキサジアジンジオン基のモル比率が、0.5モル%以上40.0モル%以下であることが好ましく、0.7モル%以上30.0モル%以下であることがより好ましい。イミノオキサジアジンジオン基のモル比率が上記範囲にあることで、低粘度化およびコーティング組成物としたときの分散性に優れる。イミノオキサジアジンジオン基のモル比率は、13C-NMR測定により求めることができる。
【0027】
(アロファネート基)
アロファネート基は、アルコールの水酸基とイソシアネート基との反応により形成される官能基であり、下記式(V)で表される構造をいう。
【0028】
【化5】
【0029】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基、アロファネート基、及びウレトジオン基の合計モル数(100モル%)に対して、アロファネート基のモル比率が1.0モル%以上20.0モル%以下であることが好ましく、2.0モル%以上16.0モル%以下であることがより好ましい。
アロファネート基のモル比率が上記範囲内にあることで、コーティング組成物としたときの分散性及び塗膜としたときの外観が優れる。
アロファネート基のモル比率は、例えば、13C-NMR測定により求めることができる。
【0030】
(ウレトジオン基)
ウレトジオン基は、2つのイソシアネート基を環化二量化して得られる官能基であって、下記式(VI)で表される構造をいう。ウレトジオン基を有するポリイソシアネートは、粘度が低く、コーティング組成物としたときの分散性が良好である。
【0031】
【化6】
【0032】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基、アロファネート基、及びウレトジオン基の合計モル数(100モル%)に対して、ウレトジオン基のモル比率が0.5モル%以上30.0モル%以下であることが好ましく、1.0モル%以上25.0モル%以下であることがより好ましい。ウレトジオン基のモル比率が上記範囲にあることで、コーティング組成物としたときの分散性とポットライフ及び塗膜としたときの外観が優れる。
ウレトジオン基のモル比率は、例えば、13C-NMR測定、又はH-NMR測定により求めることができる。
【0033】
さらに、2つのジイソシアネートを環状二量化して得られるウレトジオン2量体の質量分率は、配合時の粘度変化と希釈濁りを低減する観点から、0.01質量%以上20.0質量%以下が好ましい。
【0034】
ウレトジオン二量体の質量分率の上限値は、耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水噴霧性の点で18.0質量%以下がより好ましく、15.0質量%以下がさらに好ましい。また、低粘度化や希釈濁りの点で0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。該ウレトジオン2量体の質量分率は、GPCにより求めることができる。
【0035】
ウレトジオン二量体の質量分率の上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、0.1質量%以上18.0質量%以下、0.5質量%以上15.0質量%以下が挙げられる。
【0036】
(尿素基)
尿素基は、1つのイソシアネート基と1つの1級又は2級アミンとを反応、もしくは、2つのイソシアネート基と水とを反応させて得られる官能基であって、下記式(7)で表される構造をいう。
【0037】
【化7】
【0038】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、前記尿素基と前記イソシアヌレート基とのモル比(尿素基/イソシアヌレート基)は、0.001/100以上1/100以下であることが好ましく、0.002/100以上0.1/100以下であることがより好ましい。尿素基とイソシアヌレート基とのモル比が上記範囲であることで、色度および希釈濁りが優れる傾向にある。
尿素基およびイソシアヌレート基のモル比率は、例えば、13C-NMRにより求めることができる。
【0039】
(ウレタン基)
ウレタン基は、1つのイソシアネート基と1つのアルコールとを反応させて得られる官能基であって、下記式(8)で表される構造をいう。
【0040】
【化8】
【0041】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、前記ウレタン基と前記イソシアヌレート基とのモル比(ウレタン基/イソシアヌレート基)は、0.2/100以上20/100以下であることが好ましく、1.0/100以上10/100以下であることがより好ましい。ウレタン基とイソシアヌレート基とのモル比が上記範囲であることで、配合時粘度変化および耐酸性が優れる傾向にある。
ウレタン基のモル比率は、例えば、13C-NMR、又はH-NMRにより求めることができる。
【0042】
(その他の結合基)
本実施形態のポリイソシアネート組成物を構成するポリイソシアネートは、上述した結合基以外に、ビウレット基、アシル尿素基、及びオキサジアジントリオン基からなる群より選ばれる1種以上の結合基を更に有していてもよい。
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基、アロファネート基、及びウレトジオン基の合計モル数(100モル%)に対して、その他の結合基の合計モル比率は、0.01モル%以上10モル%以下であることが好ましい。
その他の結合基のモル比率は、例えば、13C-NMR測定、又はH-NMR測定により求めることができる。
【0043】
(環状3量体)
本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれる、ジイソシアネートに由来する環状3量体の質量分率は、20.0質量%以上70.0質量%以下が好ましい。該質量分率の下限値は、配合時の粘度変化を生じにくくする観点から30.0質量%が好ましく、40.0質量%がさらに好ましい。また上限値は希釈後の濁り防止と耐アルカリ性を向上させる観点から、65.0質量%が好ましく、60.0質量%がさらに好ましい。該環状3量体の構造には、イソシアヌレート基とイミノオキサジアジンジオン基が含まれる。該環状3量体の質量分率は、GPCにより求めることができる。
【0044】
ジイソシアネートに由来する環状3量体の質量分率の上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、30.0質量%以上65.0質量%以下、40.0質量%以上60.0質量%以下が挙げられる。
【0045】
[イソシアネート基濃度]
本実施形態でのポリイソシアネート組成物の平均イソシアネート基濃度は、耐酸性や耐アルカリ性、耐塩水噴霧性等の塗膜耐久性を向上させる観点から、17.0質量%以上24.0質量%以下が好ましく、18.5質量%以上23.5質量%以下がより好ましく、19.0質量%以上23.0質量%以下がさらに好ましい。
ポリイソシアネート組成物の平均イソシアネート基濃度は、後述する実施例に記載の滴定法により測定することができる。
【0046】
≪ポリイソシアネートの製造方法≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物に含有するポリイソシアネートは、イソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応、イミノオキサジアジンジオン基を形成するイミノオキサジアジンジオン化反応、アロファネート基を形成するアロファネート化反応、ウレトジオン基を形成するウレトジオン化反応等を、過剰のジイソシアネート存在下で一度に実施して、反応終了後に、未反応のジイソシアネートを除去して得ることができる。その際、各条件で生成する所望の結合基と同時に、他の結合基が生成する場合がある。
【0047】
また、上記の反応を別々に行ない、それぞれ得たポリイソシアネートを、各結合基のモル比率が上記範囲内となる割合で混合してもよい。ここで、製造の簡便さから、上記反応を一度に行ないポリイソシアネートを得ることが好ましく、各結合基のモル比率を自由に調整する観点からは、別々に製造した後に混合することが好ましい。
【0048】
[イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートの製造方法]
ジイソシアネートからイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、特に限定されないが、塩基性を示すものが好ましく、具体的には、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及び有機弱酸塩、ヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及び有機弱酸塩、アルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、金属アルコラート、アミノシリル基含有化合物、マンニッヒ塩基類、第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、燐系化合物等が挙げられる。
【0049】
テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0050】
有機弱酸としては、例えば、酢酸、カプリン酸等が挙げられる。
【0051】
ヒドロキシアルキルアンモニウムとしては、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0052】
アルキルカルボン酸としては、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等が挙げられる。
【0053】
アルカリ金属塩としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。
【0054】
金属アルコラートとしては、例えば、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等が挙げられる。
【0055】
アミノシリル基含有化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0056】
燐系化合物としては、例えば、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
【0057】
これらの触媒の使用量は、原料である、ジイソシアネート(及び、必要に応じてアルコール)の総質量に対して、10質量ppm以上10000質量ppm以下が好ましい。また、イソシアヌレート化反応を終了させるために、触媒を中和する酸性物質の添加、熱分解、化学分解等により不活性化してもよい。触媒を中和する酸性物質としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0058】
ポリイソシアネートの収率は、一般的には、10質量%以上70質量%以下となる傾向にある。より高い収率で得られたポリイソシアネートは、より粘度が高くなる傾向にある。収率は、原料成分の総質量に対する得られたポリイソシアネートの質量の割合から算出できる。
【0059】
イソシアヌレート化反応の反応温度は、特に限定されないが、50℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応がより進み易くなる傾向にあり、反応温度が上記上限値以下であることで、着色を引き起こすような副反応をより抑制することができる傾向にある。
【0060】
イソシアヌレート化反応の終了後には、未反応のジイソシアネートを薄膜蒸発缶、抽出等により除去することが好ましい。ポリイソシアネートは、未反応のジイソシアネートを含んでいた場合であっても、ジイソシアネートの含有量がポリイソシアネートの総質量に対して、3.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。残留未反応ジイソシアネート濃度が上記範囲内であることにより、硬化性がより優れる傾向にある。
【0061】
残留未反応ジイソシアネート濃度は0質量%であることが好ましい。
即ち、残留未反応ジイソシアネート濃度は、0質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0062】
[イミノオキサジアジンジオン基を含有するポリイソシアネートの製造方法]
ジイソシアネートからイミノオキサジアジンジオン基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、特に限定されないが、例えば一般にイミノオキサジアジンジオン化反応触媒として知られている下記(1)又は(2)の触媒が使用できる。
【0063】
(1)一般式M[Fn]、又は、一般式M[Fn(HF)m]で表される(ポリ)フッ化水素(式中、m及びnは、m/n>0の関係を満たす整数である。Mはn荷電カチオン(混合物)又は合計でn価の1個以上のラジカルである。)
(2)一般式R1-CR’2-C(O)O-、又は、一般式R2=CR’-C(O)O-で表される化合物と、第4級アンモニウムカチオン、又は、第4級ホスホニウムカチオンとからなる化合物。
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、飽和又は不飽和の炭素数1以上30以下のパーフルオロアルキル基である。複数あるR’はそれぞれ独立に水素原子、又は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1以上20以下のアルキル基若しくはアリール基である。)
【0064】
(1)の化合物((ポリ)フッ化水素)として具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウムフルオリド水和物、テトラエチルアンモニウムフルオリド等が挙げられる。
(2)の化合物として具体的には、例えば、3,3,3-トリフルオロカルボン酸、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブタン酸、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンタン酸、3,3-ジフルオロプロパ-2-エン酸等が挙げられる。
中でも、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒としては、入手容易性の観点からは、(1)が好ましく、安全性の観点からは、(2)が好ましい。
【0065】
上述したイミノオキサジアジンジオン化反応触媒の配合量は、仕込んだジイソシアネートの質量に対して、好ましくは10質量ppm以上1000質量ppm以下である。その下限値は、より好ましくは20質量ppmであり、さらに好ましくは40質量ppmであり、特に好ましくは80質量ppmである。その上限値は、より好ましくは800質量ppmであり、さらに好ましくは600質量ppmであり、特に好ましくは500質量ppm以下である。
【0066】
イミノオキサジアジンジオン化反応触媒の配合量は例えば、仕込んだジイソシアネートの質量に対して20質量ppm以上800質量ppm以下、40質量ppm以上600質量ppm以下、80質量ppm以上500質量ppm以下である。
【0067】
また、イミノオキサジアジンジオン化反応温度としては、好ましくは40℃以上120℃以下である。その下限値は、より好ましくは50℃であり、さらに好ましくは55℃である。その上限値は、より好ましくは100℃であり、さらに好ましくは90℃であり、特に好ましくは80℃である。
イミノオキサジアジンジオン化反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより高く維持することが可能である傾向にある。イミノオキサジアジンジオン化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0068】
イミノオキサジアジンジオン化反応温度は、例えば50℃以上90℃以下、55℃以上80℃以下である。
【0069】
[アロファネート基を含有するポリイソシアネートの製造方法]
ジイソシアネートからアロファネート基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、特に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩;2-エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物;2-エチルヘキサン酸鉛等の有機鉛化合物;2-エチルヘキサン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;2-エチルヘキサン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、2-エチルヘキサン酸ジルコニルが挙げられる。これらは、1種を単独又は2種以上を併用することができる。
【0070】
また、上述したイソシアヌレート化反応触媒もアロファネート化反応触媒となり得る。上述したイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行なう場合は、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートも当然のことながら生成する。アロファネート化反応触媒として、上述したイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応とイソシアヌレート反応を行なうことが経済的生産上、好ましい。
【0071】
上述したアロファネート化反応触媒の配合量は、仕込んだジイソシアネートの質量に対して、好ましくは10質量ppm以上1000質量ppm以下である。その下限値は、より好ましくは20質量ppmであり、さらに好ましくは40質量ppmであり、よりさらに好ましくは80質量ppmである。その上限値は、より好ましくは800質量ppmであり、さらに好ましくは600質量ppmであり、よりさらに好ましくは500質量ppm以下である。
【0072】
上述したアロファネート化反応触媒の配合量は、仕込んだジイソシアネートの質量に対して、例えば、20質量ppm以上800質量ppm以下、40質量ppm以上600質量ppm以下、80質量ppm以上500質量ppm以下である。
【0073】
また、アロファネート化反応温度としては、好ましくは40℃以上180℃以下である。その下限値は、より好ましくは60℃であり、さらに好ましくは80℃であり、よりさらに好ましくは100℃である。その上限値は、より好ましくは160℃であり、さらに好ましくは140℃である。
アロファネート化反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより高く維持することが可能である傾向にある。アロファネート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0074】
アロファネート化反応温度は、例えば80℃以上160℃以下、100℃以上140℃以下である。
【0075】
アロファネート基の形成に用いられるアルコールは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールが好ましい。
前記アルコールとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、モノアルコール、ポリオール、及びこれらのアルコールの混合物が挙げられる。
【0076】
モノアルコールとして、具体的には、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2ジメチル-1-プロパノール、2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1--ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、2,2-ジメチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、4-ヘプタノール、1-オクタノール、6-メチル-1-ヘプタノール、2-エチルヘキサノールが挙げられる。モノアルコールは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
ポリオールとして、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキサンジオール等のジアルコールが挙げられる。
【0078】
また、請求項記載のアルコールを原料とし、アロファネート基を有するポリイソシアネートとして誘導することも可能である。
【0079】
[ウレトジオン基を含有するポリイソシアネートの製造方法]
ウレトジオン基を有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、特に限定されないが、具体的には例えばトリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、トリス-(ジメチルアミノ)-ホスフィン等のトリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロヘキシル-ジ-n-ヘキシルホスフィン等のシクロアルキルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。これらの化合物はアロファネート化反応触媒にもなり得る。また、これらの化合物の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進し、ウレトジオン2量体等のウレトジオン基含有ポリイソシアネートに加えて、イソシアヌレート3量体等のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを生成する。
【0080】
また、ウレトジオン基を有するポリイソシアネートは、ウレトジオン化反応触媒を用いなくとも、加熱により得ることもできる。本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれる、ウレトジオン2量体等のウレトジオン基含有ポリイソシアネートは、加熱で製造することが、貯蔵安定性の点で好ましい。
【0081】
さらに、前記ポリイソシアネートに、ジイソシアネートの2量体以上からなる、別のポリイソシアネートを、任意の割合で添加してもよい。該別のポリイソシアネートを構成する結合基は、特に限定されず、最終的に生成したポリイソシアネート組成物中に、ビウレット基が含まれていればよい。
【0082】
[その他のポリイソシアネートの製造方法]
さらに生成した前記ポリイソシアネート化合物は高分子ポリオールで変性してもよい。高分子ポリオールとは、水酸基を1つ以上有する化合物であり、例えば長鎖ポリオール、具体的にはポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール及びこれらのコポリオールなどが挙げられる。これらの長鎖ポリオールは単独で又は2種以上混合して使用してもよい。ポリイソシアネートを、さらに水酸基を1つ以上有するアルコールで変性してもよい。アルコールとは、水酸基を1つ以上有する化合物であり、例えば短鎖ポリオールや長鎖ポリオールが挙げられる。具体的な短鎖ポリオールとしては、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸エステル、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,3,5-トリメチルペンタンジ オール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1, 4-プチレンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメ チロールプロパン、グリセリン、1,1,7-トリメチロールヘプタン、1,2,7-ト リメチロールヘプタン等が挙げられる。また、長鎖ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール及びこれらのコポリオールなどが挙げられる。これらのポリオールは単独で又は2種以上混合して使用してもよい。
【0083】
≪アルコール≫
親水性ポリイソシアネートは、耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水噴霧を向上させ、低粘度化と希釈濁りを抑制する観点から、一分子あたりの平均数が2.0以上3.5以下のヒドロキシル基を有し、数平均分子量が450以下のアルコールとの反応により得られる。
【0084】
本実施形態に用いるアルコールのヒドロキシル基の平均数の下限値は、低粘度化と希釈濁りを抑制し、耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水噴霧性の向上を両立させる観点から、2.0以上3.0以下であることが好ましく、2.0以上2.5以下であることがさらに好ましい。また、数平均分子量は、低粘度化を抑制し、および分散性、塗膜硬度の点で、400以下が好ましく、350以下がさらに好ましい。
【0085】
前記ヒドロキシル基の平均数および数平均分子量を満たすアルコールとして、ジオール類、トリオール類、テトラオール類などがある。ジオール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられ、トリオール類としては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられ、テトラオール類としては、例えばペンタエリトリトールなどが挙げられる。
【0086】
重合アルコールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0087】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの群から選ばれた多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール、及び例えばε-カプロラクトンを多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
【0088】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒や、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体などの複合金属シアン化合物錯体などを使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物にランダムあるいはブロック付加して得られるポリエーテルポリオール類、更にエチレンジアミン類等のポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類及び、これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が含まれる。
【0089】
ポリカーボネートジオールとしては、2つのアルコール基と1つのカーボネート基が脱水縮合した構造単位を、繰り返し有する。また、ポリカーボネートジオールは、炭素数2以上20以下の第一のジオールと、炭素数2以上20以下の第二のジオール(以下、単に「2種のジオール」ともいう。)と、カーボネート化合物と、を共重合して得られるものが挙げられる。
【0090】
これらのアルコールは1種類を単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
本実施形態のポリイソシアネート組成物中のアルコールの質量分率は、0.01質量%以上4.5質量%以下が好ましい。また、希釈濁りとポリイソシアネート組成物の色度、耐酸性、耐塩水噴霧性の両立の点で、0.1質量%以上2.5質量%以下がさらに好ましい。
【0092】
≪アニオン性化合物≫
親水性ポリイソシアネートは、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部が、アニオン性化合物によって変性されている。すなわち、本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートのイソシアネート基の一部に、アニオン性化合物に由来するアニオン基が導入されていてもよい。このアニオン基が導入されているポリイソシアネートを親水性ポリイソシアネートという。
【0093】
アニオン性化合物は、アニオン基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、カルボン酸基を含有する化合物、リン酸基を含有する化合物、スルホン酸基を含有する化合物等が挙げられる。また、1つのイソシアネート基と反応するために、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基と反応するための活性水素基を、親水性化合物1分子に対して、1つ以上有することが好ましい。活性水素基として、具体的には、例えば、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。
【0094】
活性水素基を含むアニオン性化合物は、特に限定されないが、例えば、カルボン酸基を含有する化合物、リン酸基を含有する化合物、スルホン酸基を含有する化合物等が挙げられる。
【0095】
カルボン酸基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、1-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、12-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸;ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等のポリヒドロキシカルボン酸等の水酸基を含有するカルボン酸が挙げられる。中でも、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0096】
リン酸基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、特定のポリエーテルホスホネート(例えばRHODAFAC(登録商標)の商品名で市販されているもの(ソルベイ日華株式会社))が挙げられる。中でも、酸性リン酸エステルが好ましい。
【0097】
水分散性の観点から、ポリイソシアネート組成物は、該ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、リン原子の含有率が0.03質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。リン原子の含有率が上記下限値以上であることで、界面張力が下がることに起因して、より良好な水分散性を示す傾向にある。
【0098】
また、ポリイソシアネート組成物は、塗膜物性の観点から、ポリイソシアネート組成物の総質量(100質量%)に対して、リン原子の含有率が6.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましい。リン原子の含有率が上記上限値以下であることで、架橋に使用されるイソシアネート基が多くなることに起因して、塗膜物性がより良好となる傾向にある。
【0099】
リンの含有量の上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
組み合わせの例としては、ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対する、リン原子の含有率は、0.03質量%以上6.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下がさらに好ましい。
【0100】
リン原子の含有率を上記範囲に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、上記リン酸基を含有する化合物と原料となるポリイソシアネートとの配合比を調整する方法が挙げられる。また、リン原子の含有率は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)により測定する。
【0101】
(活性水素基を有するスルホン酸)
アニオン性化合物は、水酸基を含有するスルホン酸及びアミノ基を含有するスルホン酸からなる群より選ばれる1種以上のスルホン酸が好ましい。
スルホン酸アニオン基を分子内に含有するポリイソシアネートに用いられる活性水素基を有するスルホン酸において、活性水素基としては、例えば、アミノ基、カルボキシ基、水酸基等が挙げられる。中でも、活性水素基としては、アミノ基及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0102】
(スルホン酸(1))
活性水素基が水酸基である場合、水酸基を有するスルホン酸としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「スルホン酸(1)」と略記する)等が挙げられる。
【0103】
【化9】
【0104】
前記一般式(1)中、R11は水酸基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、及び、イミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基である。R11は環構造を含んでもよい。前記環構造は、芳香族環、窒素原子を2つ含む5員環若しくは6員環、又は、窒素原子と酸素原子とを含む5員環若しくは6員環である。
【0105】
・R11
一般式(1)において、R11は水酸基、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、イミノ基(-NR-)、及び、環構造からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基である。
【0106】
炭素数1以上10以下の炭化水素基としては、2価の炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基であってもよく、2価の炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基であってもよい。2価の炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1以上6以下の鎖状アルキレン基であることが好ましい。炭素数1以上6以下の鎖状アルキレン基である場合、当該鎖状アルキレン基の一部に、環構造を含む基であってもよい。炭素数1以上6以下のアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0107】
中でも、R11としては、炭素数1以上6以下の鎖状アルキレン基、2価の炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基(アリーレン基)、芳香環を含む2価の炭素数1以上6以下のアルキレン基、窒素原子を2つ含む5員環若しくは6員環を含む2価の炭素数1以上6以下のアルキレン基、又は、窒素原子と酸素原子とを含む5員環若しくは6員環を含む2価の炭素数1以上6以下のアルキレン基であることが好ましい。
【0108】
スルホン酸(1)で好ましいものとしては、例えば、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、3-ヒドロキシプロパンスルホン酸、4-ヒドロキシブタンスルホン酸、5-ヒドロキシペンタンスルホン酸、6-ヒドロキシヘキサンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ヒドロキシ(メチル)ベンゼンスルホン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸等が挙げられる。
なお、これら化合物は、好ましいスルホン酸(1)の一部に過ぎず、好ましいスルホン酸(1)はこれらに限定されない。
また、これらのスルホン酸(1)を1種用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0109】
中でも、水酸基を有するスルホン酸としては、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、3-ヒドロキシプロパンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、及び、ヒドロキシ(メチル)ベンゼンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0110】
なお、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、スルホン酸のアミン塩を2種以上含む場合、スルホン酸(1)は互いに同一であってもよく、異なってもよい。
【0111】
また、スルホン酸アニオン基を分子内に含有するポリイソシアネートに用いられるスルホン酸は、後述するアミン化合物と塩を形成していてもよい。
【0112】
(スルホン酸(2))
活性水素基がアミノ基である場合、アミノ基を有するスルホン酸としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物(以下、「スルホン酸(2)」と略記する)等が挙げられる。
【0113】
【化10】
【0114】
前記一般式(2)中、R21及びR23は、互いに独立して、水素原子、又は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。R21及びR23のうち少なくとも1つは水素原子である。R22は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。
【0115】
・R21及びR23
一般式(2)において、R21及びR23は、互いに独立して、水素原子、又は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。R21及びR23は互いに同一であっても、異なっていてもよい。R21及びR23のうち少なくとも1つは水素原子である。すなわち、R21が水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である場合、R23が水素原子である。また、R23が水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である場合、R21が水素原子である。また、R21及びR23のいずれも水素原子であってもよい。
【0116】
炭素数1以上12以下の炭化水素基としては、1価の炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基であってもよく、1価の炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基であってもよい。1価の炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1以上6以下の鎖状アルキル基、又は、炭素数3以上6以下の環状アルキル基であることが好ましい。炭素数1以上6以下の鎖状アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0117】
中でも、R21及びR23としては、それぞれ水素原子、炭素数1以上6以下の鎖状アルキル基、又は、炭素数3以上6以下の環状アルキル基であることが好ましい。
【0118】
・R22
22は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。
炭素数1以上12以下の炭化水素基としては、2価の炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基であってもよく、2価の炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基であってもよい。2価の炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1以上12以下の鎖状アルキレン基であることが好ましい。炭素数1以上12以下の鎖状アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
中でも、R22としては、2価の炭素数1以上6以下の鎖状アルキレン基、又は、2価の炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基(アリーレン基)であることが好ましい。
【0119】
スルホン酸(2)で好ましいものとしては、例えば、2-アミノエタンスルホン酸、3-アミノプロパンスルホン酸、2-メチルアミノエタンスルホン酸、3-メチルアミノプロパンスルホン酸、2-シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸、3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸、3-シクロヘキシルアミノイソブチルスルホン酸、4-シクロヘキシルアミノブタンスルホン酸、2-シクロヘキシルメチルアミノエタンスルホン酸、3-シクロヘキシルメチルアミノプロパンスルホン酸、3-シクロヘキシルメチルアミノイソブチルスルホン酸、4-シクロヘキシルメチルアミノブタンスルホン酸、2-メチルシクロヘキシルアミノエタンスルホン酸、3-メチルシクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸、3-メチルシクロヘキシルアミノイソブチルスルホン酸、4-メチルシクロヘキシルアミノブタンスルホン酸、2-ジメチルシクロヘキシルアミノエタンスルホン酸、3-ジメチルシクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸、3-ジメチルシクロヘキシルアミノイソブチルスルホン酸、4-ジメチルシクロヘキシルアミノブタンスルホン酸、2-トリメチルシクロヘキシルアミノエタンスルホン酸、3-トリメチルシクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸、3-トリメチルシクロヘキシルアミノイソブチルスルホン酸、4-トリメチルシクロヘキシルアミノブタンスルホン酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、2-(メチルアミノ)ベンゼンスルホン酸、3-(メチルアミノ)ベンゼンスルホン酸、4-(メチルアミノ)ベンゼンスルホン酸、アミノ-メチルベンゼンスルホン酸、アミノ-ジメチルベンゼンスルホン酸、アミノナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
なお、これら化合物は、好ましいスルホン酸(2)の一部に過ぎず、好ましいスルホン酸(2)はこれらに限定されない。
また、これらのスルホン酸(2)を1種用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0120】
中でも、アミノ基を有するスルホン酸としては、2-シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸、3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸、4-シクロヘキシルアミノブタンスルホン酸、3-シクロヘキシルメチルアミノプロパンスルホン酸、3-(p-メチルシクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸、3-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸、4-(p-メチルシクロヘキシルアミノ)ブタンスルホン酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸、2-アミノ-3,5-ジメチルベンゼンスルホン酸、5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホン酸(4-アミノトルエン-2-スルホン酸)、4-アミノ-2-メチルベンゼンスルホン酸(5-アミノトルエン-2-スルホン酸)、及び、2-アミノナフタレン-4-スルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0121】
活性水素基を含むアニオン性化合物のカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性基は、例えば無機塩基や有機アミン化合物で挙げられるカチオン性化合物で中和することが好ましい。
【0122】
無機塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、カドミウム、鉛、アルミニウム等の金属;アンモニアが挙げられる。
【0123】
有機アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリトリデシルアミン、トリステアリルアミン等の直鎖三級アミン類;トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-2-エチルヘキシルアミン、トリ分岐トリデシルアミン等の分岐三級アミン類;N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジメチルイソブチルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチル-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルラウリルアミン、N,N-ジメチル(分岐)トリデシルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジエチルブチルアミン、N,N-ジエチルヘキシルアミン、N,N-ジエチルオクチルアミン、N,N-ジエチル-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジエチルラウリルアミン、N,N-ジイソプロピルメチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジイソプロピルブチルアミン、N,N-ジイソプロピル-2-エチルヘキシルアミン等の混合炭化水素基を有する三級アミン類;N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、N,N-ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルエチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等の脂環三級アミン類;N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、N,N-ジベンジルメチルアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチル-4-メチルベンジルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、N,N-ジエチルフェニルアミン、N,N-ジフェニルメチルアミン等の芳香環置換基を有する三級アミン類;N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、N-プロピルピロリジン、N-ブチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-プロピルモルホリン、N-ブチルモルホリン、N-sec-ブチルモルホリン、N-tert-ブチルモルホリン、N-イソブチルモルホリン、キヌクリジン等の環状アミン類等が挙げられる。これらの有機アミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0124】
中でも、炭素数5以上30以下の三級のアミン類が好ましく、具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリデシルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-2-エチルヘキシルアミン、トリ分岐トリデシルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジメチルイソブチルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチル-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルラウリルアミン、N,N-ジメチル(分岐)トリデシルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジエチルブチルアミン、N,N-ジエチルヘキシルアミン、N,N-ジエチルオクチルアミン、N,N-ジエチル-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジエチルラウリルアミン、N,N-ジイソプロピルメチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、N,N-ジベンジルメチルアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、N,N-ジエチルフェニルアミン、N,N-ジフェニルメチルアミン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、キヌクリジン、ピリジン、キノリン等が挙げられる。これらの好ましい有機アミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0125】
なお、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、スルホン酸のアミン塩を2種以上含む場合、スルホン酸(2)は互いに同一であってもよく、異なってもよい。
【0126】
ポリイソシアネートを水に分散させるために、活性水素基を含むアニオン性化合物で変性を行う(親水性化合物に由来する親水性基をポリイソシアネートに導入する)が、変性する割合を高くしすぎないことにより、塗膜物性(硬度、耐水性及び耐溶剤性)の低下を抑制できる傾向にある。すなわち、活性水素基を含むアニオン性化合物は乳化力が高いため、少量で高い乳化効果を得ることができる。
【0127】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、前記ポリイソシアネート化合物に結合している活性水素基を含むアニオン性化合物の質量分率は、該ポリイソシアネート組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上13.0質量%以下である。また、配合時の粘度変化と耐酸性と耐塩水噴霧性の点で、0.1質量%以上9.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上6.0質量%以下がさらに好ましい。
【0128】
<ポリイソシアネート組成物の製造方法>
本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法は、例えば、以下の(1)~(3)が挙げられる。
(1)ポリイソシアネートとアルコール、活性水素基を含むアニオン性化合物との反応を一括で行う方法。
(2)ポリイソシアネート(A)とアルコール、活性水素基を含むアニオン性化合物との反応を行い、その後で別のポリイソシアネート(B)を混合する方法。
(3)ポリイソシアネートとアルコールの反応物(C)と、ポリイソシアネートと活性水素基を含むアニオン性化合物との反応物(D)を別に製造し、(C)と(D)とを所望の質量比にて混合する方法。
【0129】
上記(1)~(3)の方法のうち、製造プロセスおよび製造時間の短縮と、得られるポリイソシアネート組成物の物性安定性の両立の点では(1)または(2)の方法が好ましく、さらに希釈濁りと耐アルカリ性の点で、(2)の方法がさらに好ましい。
さらに、前記活性水素基を含むアニオン性化合物にはあらかじめ酸性基をカチオン性化合物で中和して中和塩とし、該中和塩とポリイソシアネートとアルコールとの反応を行った方が、希釈濁りと低温濁りの抑制の点で好ましい。
【0130】
上記(2)の方法により製造する場合、ポリイソシアネートの質量(W)と、親水性ポリイソシアネートの質量(W)との比[(W)/(W)]が、99/1~50/50の範囲であることが好ましい。
【0131】
ポリイソシアネートとアルコール、活性水素基を含むアニオン性化合物との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
【0132】
ポリイソシアネートとアルコール、活性水素基を含むアニオン性化合物との反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上130℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0133】
アルコールと活性水素基を含むアニオン性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、ポリイソシアネート組成物の水分散性、及び、塗料組成物としたときのポットライフがより良好なものになる傾向にある。
【0134】
活性水素基を含むアニオン性化合物がヒドロキシル基を有するスルホン酸である場合に、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法は、例えば、(A)水酸基を有するスルホン酸のアミン塩と、ポリイソシアネートとを混合反応させる工程を含むことが好ましい。又は、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法は、例えば、(B)水酸基を有するスルホン酸と、ポリイソシアネートと、アミン化合物と、を混合反応させる工程を含むことが好ましい。
【0135】
工程(A)では、スルホン酸のアミン塩は、予め調整しておいてからポリイソシアネートに添加することが好ましい。また、工程(B)では、ポリイソシアネートに、水酸基を有するスルホン酸と、アミン化合物とを同時に添加してもよく、順に添加してもよい。
中でも、工程(A)であることが好ましく、スルホン酸のアミン塩は、予め調整しておいてからポリイソシアネートに添加することがより好ましい。
【0136】
当該反応工程において、ポリイソシアネート化合物中のスルホン酸又はそのアミン塩との変性率は、乳化性と塗膜物性との観点から、イソシアネート基/水酸基またはアミノ基のモル比で、2以上400以下の範囲であることが好ましく、5以上200以下の範囲であることがより好ましく、10以上100以下の範囲であるさらに好ましい。
スルホン酸又はそのアミン塩との変性率は、液体クロマトグラフィー(LC)により測定することができる。
【0137】
当該反応工程において、反応温度や反応時間は、反応の進行に応じて適宜決められるが、反応温度は0℃以上150℃以下であることが好ましく、反応時間は30分以上48時間以下であることが好ましい。
【0138】
また、当該反応工程において、場合により既知の通常の触媒を使用してもよい。当該触媒としては、特に限定されないが、例えば、以下の(a)~(f)に示すもの等が挙げられる。これらは単独又は混合して使用してもよい。
(a)オクタン酸スズ、2-エチル-1-ヘキサン酸スズ、エチルカプロン酸スズ、ラウリン酸スズ、パルミチン酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物。
(b)塩化亜鉛、オクタン酸亜鉛、2-エチル-1-ヘキサン酸亜鉛、2-エチルカプロン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物。
(c)有機チタン化合物。
(d)有機ジルコニウム化合物。
(e)トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン等の三級アミン類。
(f)トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のジアミン類。
【0139】
本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法において、溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよい。本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法に用いられる溶剤は、親水性溶剤でもよく、疎水性溶剤でもよい。親水性溶剤及び疎水性溶剤としては、上述にその他の成分において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0140】
また、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法において、ポリイソシアネート化合物及び亜リン酸エステル化合物に加えて、更に酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を添加してもよい。酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤及び界面活性剤としては、上述のその他の成分において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0141】
<数平均分子量>
本実施形態のポリイソシアネート組成物の数平均分子量は、低粘度と塗膜物性の両立の点から、300以上2,000以下であることが好ましく、500以上1,800以下であることがより好ましく、550以上1,550以下であることがさらに好ましい。該数平均分子量を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、ジイソシアネート原料の配合量や反応温度、反応時間等の条件を調整する方法が挙げられる。
数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーション クロマトグラフィー(以下、GPCで略す)を用いて測定することができる。
【0142】
[ポリイソシアネート組成物の粘度]
本実施形態のポリイソシアネート組成物の25℃における粘度は、取り扱い性および分散性、塗装性の点から、400mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましい。粘度の最小値は耐酸性と耐アルカリ性、耐塩水噴霧性の点から450mPa・sがさらに好ましく、500mPa・sがより好ましい。また最大値は配合時の粘度変化の点から10,000mPa・sがさらに好ましく、5,000mPa・sがより好ましい。
【0143】
ポリイソシアネート組成物の粘度の上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
組み合わせの例としては、450mPa・s以上10,000mPa・s以下、500mPa・s以上5,000mPa・s以下が挙げられる。
【0144】
<ブロックポリイソシアネート>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物に含まれるブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート、アルコール、熱解離性ブロック剤及び親水性化合物の反応物である。すなわち、ブロックイソシアネートは、アルコールがウレタン基を介してポリイソシアネートに結合しており、親水性化合物がウレタン基を介してポリイソシアネートに結合しており、且つ、ポリイソシアネート中の少なくとも一部のイソシアネート基がブロック剤でブロック化されている。
【0145】
[熱解離性ブロック剤]
ブロックポリイソシアネートは、イソシアネート基の少なくとも一部が熱解離性ブロック剤によってブロックされている。熱解離性ブロック剤とは、活性水素を分子内に1個有する化合物であり、加熱によりイソシアネート基から解離する性質を有する。熱解離性ブロック剤として具体的には、例えば、アルコール系化合物、アルキルフェノール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、ピラゾール系化合物等が挙げられる。
【0146】
熱解離性ブロック剤として、より具体的には、例えば、下記の(1)~(13)に示す化合物等が挙げられる。これらのブロック剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
(1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール。
【0148】
(2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ又はジアルキルフェノール類。例えば、n-プロピルフェノール、i-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
【0149】
(3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル。
【0150】
(4)活性メチレン系化合物:マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン。
【0151】
(5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン。
(6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム。
(7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド。
【0152】
(8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール。
(9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素。
【0153】
(10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム。
(11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン。
【0154】
(12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン。
(13)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール。
【0155】
中でも、熱解離性ブロック剤は、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物及び酸アミド系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、両親媒性溶媒を含む塗液としたときの貯蔵安定性の観点から、ピラゾール系化合物又はオキシム系化合物がより好ましい。
【0156】
≪ブロックポリイソシアネート組成物の製造方法≫
ブロックポリイソシアネート組成物は、特に限定されないが、例えば、前記ポリイソシアネートと前記アニオン性化合物と前記アルコールと前記熱解離性ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネートのイソシアネート基とアニオン性化合物のアニオン基又はアルコールの水酸基との反応、及び、ポリイソシアネートのイソシアネート基と熱解離性ブロック剤との反応を同時に行うこともでき、予めどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を行うこともできる。中でも、イソシアネート基とアニオン性化合物の親水性基及びアルコールの水酸基との反応を先に行い、アニオン性化合物及びアルコールから誘導される構成単位を有するポリイソシアネートを得た後、次いで熱解離性ブロック剤との反応を行うことが好ましい。
【0157】
反応工程においては、例えば、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩;3級アミン系化合物;ナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
反応工程の反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上100℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより抑制できる傾向にある。
親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、水分散ブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性の低下をより抑制し、コーティング組成物として用いたときの硬化性の低下をより抑制する傾向にある。
【0158】
<ポリウレタン樹脂組成物>
本実施形態のポリウレタン樹脂組成物は、上述のポリイソシアネート組成物を含む。上記ポリウレタン樹脂組成物は、活性水素化合物として後述するポリオールを更に含んでいてもよい。
【0159】
<コーティング組成物>
本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリイソシアネート組成物を含む。上記コーティング組成物は、水に分散又は乳化された樹脂と、を更に含むことが好ましい。
【0160】
上述のポリイソシアネート組成物は、有機溶剤及び任意に樹脂と混合して、有機溶剤系のコーティング組成物として用いることもできるが、水に分散又は乳化された樹脂と、混合して、コーティング組成物として用いることが好ましい。
【0161】
本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリイソシアネート組成物を含むことで、ポットライフが良好であり、且つ、塗膜としたときの乾燥性、光沢、硬度、耐水性及び耐塩水噴霧性に優れる。
【0162】
本実施形態のコーティング組成物は、特に、建築用塗料、自動車用塗料、自動車補修用塗料、プラスチック用塗料、粘着剤、接着剤、建材、家庭用水系塗料、その他コーティング剤、シーリング剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック原料、繊維処理剤にも使用することができる。
【0163】
次いで、本実施形態のコーティング組成物に含まれる各構成成分について詳細を以下に説明する。
【0164】
(樹脂)
上記コーティング組成物において、主剤成分として用いられる樹脂としては、水に分散又は乳化することができるものであればよいが、活性水素化合物(多価活性水素化合物)が好ましい。
【0165】
活性水素化合物とは、分子内に活性水素が2つ以上結合している化合物である。活性水素化合物としては、例えば、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール等が挙げられるが、多くはポリオールが使われる。
【0166】
このような活性水素化合物として具体的には、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリエーテル樹脂類、エポキシ樹脂類、フッ素樹脂類、ポリウレタン樹脂類、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体等が挙げられる。
【0167】
中でも、活性水素化合物としては、アクリル樹脂類又はポリエステル樹脂類が好ましい。
例えばポリオールの水酸基価は、耐水性および耐塩水噴霧性の点で、樹脂分中の水酸基価として50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下が好ましい。
【0168】
[アクリル樹脂類]
アクリル樹脂類としては、特に限定されないが、例えば、以下の(a)~(e)等に示す重合性モノマーから選ばれた単独又は混合物を重合させて得られるアクリル樹脂類が挙げられる。これらアクリル樹脂類は単独又は混合して使用してもよい。
(a)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル類。
(b)(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル等の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
(c)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類。
(d)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類。
(e)メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、p-スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸等のその他の重合性モノマー類。
【0169】
その重合方法としては、乳化重合が一般的であるが、懸濁重合、分散重合、溶液重合でも製造できる。乳化重合では段階的に重合することもできる。
【0170】
[ポリエステル樹脂類]
ポリエステル樹脂類としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られるポリエステル樹脂類等が挙げられる。
【0171】
前記カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0172】
前記多価アルコールとしては、例えば、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等が挙げられる。
【0173】
ジオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ジグリセリン、ジメチロールプロパン、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0174】
又は、例えば、低分子量ポリオールの水酸基にε-カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトン類等もポリエステル樹脂類として用いることができる。
【0175】
[ポリエーテル樹脂類]
ポリエーテル樹脂類としては、例えば、以下(a)~(d)に示すもの等が挙げられる。
(a)多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、強塩基性触媒を使用して、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類;
(b)ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;
(c)環状エーテル類の開環重合によって得られるポリエーテルポリオール類;
(d)(a)~(c)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類
【0176】
(a)における前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)~(vi)に示すものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等;
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物;
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類;
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類;
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類;
(vi)スタキオース等の四糖類
【0177】
(a)における前記強塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属類の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。アルカリ金属類としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0178】
(a)における前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
【0179】
(b)における前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
【0180】
(c)における前記環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0181】
また、本実施形態のコーティング組成物において、これらの樹脂類は、必要に応じて、メラミン系硬化剤、ウレタンディスパージョン、ウレタンアクリルエマルジョン等の樹脂を併用することができる。
【0182】
また、これらの樹脂類は、水に乳化、分散又は溶解することが好ましい。そのために、樹脂類に含まれるカルボキシ基、スルホン基等を中和することができる。
【0183】
カルボキシ基、スルホン基等を中和するための中和剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
【0184】
水溶性アミノ化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0185】
中でも、中和剤としては、第三級アミンであることが好ましく、トリエチルアミン、又は、ジメチルエタノールアミンであることがより好ましい。
【0186】
(顔料)
顔料としては、有機顔料であってもよく、無機顔料であってもよく、特に限定されない。
白色顔料であれば、例えば、酸化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、リトポン(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉等の無機顔料;ポリスチレン系共重合体粒子等の有機顔料等が挙げられる。黒色顔料であれば、例えば、カーボンブラック等が挙げられる。赤色顔料であれば、例えば、鉛丹、酸化鉄赤等が挙げられる。黄色顔料であれば、例えば、黄鉛、亜鉛黄等が挙げられる。青色顔料であれば、例えば、ウルトラマリンブルー、フタロシアニン青等が挙げられる。緑色顔料であれば、例えば、フタロシアニン緑等が挙げられる。
【0187】
(その他の成分)
本実施形態のコーティング組成物は、ポリイソシアネート組成物及び樹脂以外に他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、界面活性剤、溶剤、脱水剤等が挙げられる。
【0188】
酸化防止剤及び光安定剤としては、例えば、以下の(a)~(e)に示すもの等が挙げられる。これらを単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
(a)リン酸若しくは亜燐酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体例えば、炭素数2~8のモノアルキルホスフェート、モノアルキルホスファイト、または、炭素数4~16のジアルキルホスフェート、ジアルキルホスファイト、または、ジラウリルホスフェート、ジフェニルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノフェニルホスフェート、ジラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、モノラウリルホスファイト、モノフェニルホスファイト等、特にメチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2--エチルヘキシルアシッドホスフェート、アルキル(C12、C14、C16、C18)アシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の酸性リン酸エステル、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラ(C12~C15アルキル)4,4イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tブチルフェニル)ホスファイト、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、メチレンビス(ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、SUMILIZER-GP(住友化学社製の商品名)、アデカスタブHP10、アデカスタブPEP-8、アデカスタブPEP-36/36A、アデカスタブHP1500、アデカスタブTPP(アデカ社製の商品名)、JP-333E(城北化学社製の商品名)、IRGAFOS168(BASF社製の商品名)等の亜リン酸トリエステル化合物。
【0189】
(b)フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物。
【0190】
(c)フェノール系誘導体(特に、ヒンダードフェノール化合物)、例えば、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチル-フェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-s-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ3’5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-ジおよびトリ-チオビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ3’,5’-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、カルシウム(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルモノエチルホスフォネート)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[2[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]イソシアネート、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、イルガノックス(商品名、BASF社製)、アデカスタブ(商品名、株式会社アデカ製)等。
【0191】
(d)チオエーテル系化合物、ジチオ酸塩系化合物、メルカプトベンズイミダゾール系化合物、チオカルバニリド系化合物、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物。
【0192】
(e)スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物。
【0193】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、フェノール類、クレゾール類、カテコール類、ベンゾキノン類等が挙げられる。重合禁止剤として具体的には、例えば、 ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、p-トルキノン、p-キシロキノン、ナフトキノン、2,6-ジクロロキノン、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、カテコール、p-t-ブチルカテコール、2,5-ジ-t- ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。これらを単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0194】
界面活性剤としては、例えば、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0195】
本実施形態のコーティング組成物において、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤及び界面活性剤の合計含有量は、コーティング組成物の総質量に対して、0質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0196】
本実施形態のコーティング組成物に用いられる溶剤としては、親水性溶剤でもよく、疎水性溶剤でもよいが、親水性溶剤であることが好ましい。これら溶剤は単独又は混合して使用することができる。
【0197】
疎水性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、LAWS(Low Aromatic White Spirit)、HAWS(High Aromatic White Spirit)、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、エステル類、ケトン類、アミド類が挙げられる。
【0198】
エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0199】
親水性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類、エーテル類、エーテルアルコール類のエステル類が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0200】
エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0201】
エーテルアルコール類のエステル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BGA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PMA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0202】
溶剤の含有量は、コーティング組成物の総質量に対して、0質量%以上90質量%以下であることが好ましく、0質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0203】
脱水剤としては、有機アルコキシ化合物類:例えば、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のオルトギ酸エステル;ジメトキシプロパン等、単官能イソシアネート類:例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート等の脂肪族モノイソシアネート、アディティブTI(製品名)(Covestro社製、p-トルエンスルホニルイソシアネート)等の芳香族モノイソシアネート等、粉末状で多孔性に富んだ金属酸化物又は炭化物質:例えば、合成シリカ、活性アルミナ、ゼオライト、活性炭等、カルシウム化合物類:例えば、焼き石膏、可溶性石膏、生石灰等、金属アルコキシド類:例えば、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート、ジルコニウムn-ブチレート、エチルシリケート、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0204】
本実施形態のコーティング組成物は、更に、一般的に塗料に加えられる添加剤を含んでもよい。該添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、増粘剤、レベリング剤、チキソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒(硬化促進用の触媒)、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、静電防止剤又は帯電調整剤、沈降防止剤等が挙げられる。これら添加剤を1種単独で含んでもよく、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0205】
前記コーティング組成物の製造は手撹拌により行なうことができるが、作業現場にて可能であれば撹拌機を用いることは、配合時間の短縮や硬化剤を希釈する有機溶剤量を減らすことができるため好ましい。配合に要する時間は、配合方法にもよるが、通常1分から10分程度である。
【0206】
塗装方法としては、例えば、スプレー塗装、ローラー塗装、カーテンフロー塗装、エアーナイフ塗装、グラビア塗装、ハケ塗り等の一般的な方法が挙げられる。その中でも、スプレー塗装が好ましい。
【0207】
<コーティング基材>
本実施形態は、前記本実施形態のコーティング組成物によってコーティングされたコーティング基材である。
コーティング組成物を塗装する基材としては、特別な限定はなく、例えば、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材を成形してなる成形品等が挙げられる。また、これら成形品の形状は特に限定されず、例えば、フィルム、シート、ボード等の厚みが小さいものであってもよく、円柱、立体構造物等の厚みの大きいものであってもよい。また、チューブ等の中空のものであってもよい。
【0208】
≪使用用途≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、自動車、バス、鉄道車両、建築機械、農業機械、建築物の床、壁及び屋根、金属製品、モルタルやコンクリート製品、木工製品、プラスチック製品、ケイ酸カルシウム板や石膏ボード等の窯業系建材等に用いられる、水系2成分型コーティング剤組成物、水系2成分型インキ組成物又は水系2成分型粘接着組成物として好適である。中でも、本実施形態の水系2成分型硬化樹脂組成物は、水系2成分型コーティング剤組成物として用いられることが好ましい。水系2成分型コーティング剤組成物は、例えば、スプレー塗装、ローラー塗装、カーテンフロー塗装、エアーナイフ塗装、グラビア塗装、ハケ塗り等の一般的な方法を用いて塗装することができる。水系2成分型コーティング剤組成物の分野では、主剤として、アクリル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール又はポリウレタン系ポリオールを用いることが好ましく、水系2成分型粘接着組成物の分野では、主剤として、アクリル系ポリオール又はポリウレタン系ポリオールを用いることが好ましい。
【実施例0209】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における、ポリイソシアネート組成物の物性及び評価は、以下のとおり測定及び評価を行なった。なお、特に明記しない場合は、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0210】
<測定方法>
【0211】
[物性1:粘度]
粘度はE型粘度計(株式会社トキメック社製)により25℃で測定した。標準ローター(1°34’×R4)を用いた。回転数は、以下のとおりである。
【0212】
(回転数)
100r.p.m. (128mPa・s未満の場合)
50r.p.m. (128mPa・s以上256mPa・s未満の場合)
20r.p.m. (256mPa・s以上640mPa・s未満の場合)
10r.p.m. (640mPa・s以上1280mPa・s未満の場合)
5r.p.m. (1280mPa・s以上2560mPa・s未満の場合)
2.5r.p.m. (2560mPa・s以上5120mPa・s未満の場合)
【0213】
[物性2:イソシアネート基含有率(NCO%)]
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物を試料として、イソシアネート基含有率の測定は、JIS K7301-1995(熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法)に記載の方法に従って実施した。以下に、より具体的なイソシアネート基含有率(NCO%)の測定方法を示す。
【0214】
(1)試料1g(Wg)を200mL三角フラスコに採取し、該フラスコにトルエン20mLを添加し、試料を溶解させた。(2)その後、上記フラスコに2.0Nのジ-n-ブチルアミン・トルエン溶液20mLを添加し、15分間静置した。(3)上記フラスコに2-プロパノール70mLを添加し、溶解させて溶液を得た。(4)上記(3)で得られた溶液について、1mol/L塩酸を用いて滴定を行い、試料滴定量(VmL)を求めた。(5)試料を添加しない場合にも、上記(1)~(3)と同様の方法で測定を実施し、ブランク滴定量(VmL)を求めた。
上記で求めた試料滴定量及びブランク滴定量から、イソシアネート基含有率(NCO%)を以下に示す式(A)を用いて、算出した。
【0215】
イソシアネート基含有率(質量%)=
(V-V)×42/[W(1g)×1000]×100 (A)
【0216】
[物性3:環状3量体の質量分率、ウレトジオン2量体の質量分率]
ポリイソシアネート組成物の環状3量体の質量分率およびウレトジオン2量体の質量分率は、下記に示す測定条件のGPC測定により、ポリスチレン基準の数平均分子量を測定することで得た。
【0217】
(測定条件)
装置:東ソー(株)HLC-8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)TSKgel SuperH1000(商品名)×1本
TSKgel SuperH2000(商品名)×1本
TSKgel SuperH3000(商品名)×1本
キャリアー:ジメチルホルムアミド
検出方法:示差屈折計
【0218】
[物性4:アルコールの数平均分子量]
アルコールを試料として、アルコールの数平均分子量を、下記式(3)により求めた。なお、アルコールの水酸基価は、下記の(物性9)により求めた。
数平均分子量=2/(アルコールの水酸基価×10-3/56.11) ・・・(3)
【0219】
[物性5:アルコールの水酸基価]
アルコールを試料として、アルコールの水酸基価は、JIS K 0070:1992に従い求めた。具体的には、無水酢酸12.5gをピリジン50mLでメスアップしアセチル化試薬を調製した。次に、100mLナスフラスコに、アルコールを2.5~5.0g精秤した。ナスフラスコに、アセチル化試薬5mLとトルエン10mLをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1hr撹拌加熱した。蒸留水2.5mLをホールピペットで添加し、さらに10min加熱撹拌した。2~3分冷却後、エタノールを12.5mL添加し、指示薬としてフェノールフタレインを2~3滴入れた後に、0.5mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。
一方で、空試験として、アセチル化試薬5mL、トルエン10mL、蒸留水2.5mLを100mLナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌した後、同様に滴定を行った。この結果をもとに、下記式(4)で水酸基価を計算した。
OH価(mg-KOH/g)={(b-a)×28.05×f}/e ・・・(4)
式(4)中、aは、サンプルの滴定量(mL)を表し、bは、空試験の滴定量(mL)を表し、eは、サンプル質量(g)を表し、fは、滴定液のファクターを表す。
【0220】
<評価方法>
[調製例1:コーティング組成物X1の製造]
後述する実施例1~23、25~30及び比較例1、2で得られたポリイソシアネート組成物に、水分量が1000ppm以下のPGDA(プロピレングリコールジアセテート)を添加し、固形分が70質量%になるよう溶解して、ポリイソシアネート組成物の溶液を調製した。次いで、アクリルポリオール水分散体(製品名:Bayhydrol A2470、樹脂あたりの水酸基量:3.9質量%、固形分:45質量%、Covestro社製):60g、及び脱イオン水:20gを容器に量り取り、プロペラ羽を用いて600rpmで5分間撹拌し、アクリルポリオール水希釈物を調整した。この希釈物中の水酸基のモル量に対する、実施例1~23、25~30及び比較例1、2で得られたポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のモル量の比(NCO/OH)が1.5となる割合で、各ポリイソシアネート溶液を加えた。さらに、粘度がフォードカップ(No.4)にて20秒となるよう脱イオン水を加えて調整し、プロペラ羽根を用いて600rpmで10分間撹拌し、各コーティング組成物Xを得た。作製したコーティング組成物X1を用いて、配合時粘度変化、耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水噴霧の評価を行った。
【0221】
[調製例2:コーティング組成物X2の製造]
後述する実施例31及び32で得られたポリイソシアネート組成物の溶剤として、水分量が1000ppm以下のPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を使用した以外は、調製例1と同様の方法にて調製し、評価を行った。
【0222】
[調製例3:ブロックコーティング組成物の製造]
後述する実施例24で得られたブロックポリイソシアネート組成物に、アクリルポリオール水分散体(製品名:Bayhydrol A2470、樹脂あたりの水酸基量:3.9質量%、固形分:45質量%、Covestro社製):60g、及び脱イオン水:20gを容器に量り取り、プロペラ羽を用いて600rpmで5分間撹拌し、アクリルポリオール水希釈物を調整した。この希釈物中の水酸基のモル量に対する、実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のモル量の比(NCO/OH)が1.5となる割合で、各ポリイソシアネート溶液を加えた。さらに、粘度がフォードカップ(No.4)にて20秒となるよう脱イオン水を加えて調整し、プロペラ羽根を用いて600rpmで10分間撹拌し、各ブロックコーティング組成物を得た。作製したブロックコーティング組成物を用いて、耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水噴霧の評価を行った。
【0223】
[調製例4:コーティング組成物Yの製造]
実施例33~36で得られたポリイソシアネート組成物に、水分量が1000ppm以下のPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を添加し、固形分が70質量%になるよう溶解して、ポリイソシアネート組成物の溶液を調製した。アクリルポリオール水分散体(製品名:Bayhydrol A2470、樹脂あたりの水酸基量:3.9質量%、固形分:45質量%、Covestro社製):450質量部、およびポリウレタン水分散体P-1(樹脂あたりの水酸基量:1.8質量%、固形分:50質量%):200質量部、消泡剤B(BYK-024、BYK Chemie社製):2.0質量部、潤湿剤(BYK-346、BYK Chemie社製):1.0質量部、レオロジー剤(B299、Elmentis社製):3.0質量部を添加した。ディスパーで2000回転/分、30分間撹拌し、混合ポリオールを得た、60gを容器に量り取った。この混合ポリオール水分散体中の水酸基のモル量に対する、実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のモル量の比(NCO/OH)が1.5となるよう、各ポリイソシアネート溶液を加えた。さらに、粘度がフォードカップ(No.4)にて20秒となるよう脱イオン水を加えて調整し、プロペラ羽根を用いて600rpmで10分間撹拌し、各コーティング組成物Yを得た。作製したコーティング組成物Yを用いて、屈曲性、耐摩耗性、耐候性評価を行った。
【0224】
[調製例5:コーティング組成物Zの製造]
実施例37~40で得られたポリイソシアネート組成物に、水分量が1000ppm以下のPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を添加し、固形分が70質量%になるよう溶解して、ポリイソシアネート組成物の溶液を調製した。アクリルポリオール水分散体(製品名:Bayhydrol A2470、樹脂あたりの水酸基量:3.9質量%、固形分:45質量%、Covestro社製):450質量部、およびポリウレタン水分散体P-2(樹脂あたりの水酸基量:0.0質量%、固形分:40質量%):240質量部、消泡剤B(BYK-024、BYK Chemie社製):2.0質量部、潤湿剤(BYK-346、BYK Chemie社製):1.0質量部、レオロジー剤(B299、Elmentis社製):3.0質量部を添加した。ディスパーで2000回転/分、30分間撹拌し、混合ポリオールを得た、60gを容器に量り取った。この混合ポリオール水分散体中の水酸基のモル量に対する、実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のモル量の比(NCO/OH)が1.5となるよう、各ポリイソシアネート溶液を加えた。さらに、粘度がフォードカップ(No.4)にて20秒となるよう脱イオン水を加えて調整し、プロペラ羽根を用いて600rpmで10分間撹拌し、各コーティング組成物Zを得た。作製したコーティング組成物Zを用いて、屈曲性、耐摩耗性、耐候性評価を行った。
【0225】
[評価1:色度]
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物の色度を、Lovibond社製の比色計PFXi-195を用いて、ハーゼン色数(APHA)として測定した。下に示す評価基準に従い、色度を評価した。
【0226】
(評価基準)
◎:30以下
○:30以上45以下
△:45以上60以下
×:60以上
【0227】
[評価2:希釈濁り]
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて固形分が70%となる割合で希釈液を調製し、島津製作所社製の分光光度計UVmini-1240を用いて、光路長2cmにおける波長430nmの透過率を測定した。
【0228】
(評価基準)
◎:96%以上
○:93%以上
△:90%以上93%未満
×:90%未満
【0229】
[評価3:配合時の粘度変化]
調製例1で得られた、アクリルポリオール水希釈物の粘度を初期粘度としてE型粘度計で測定した。また、ポリイソシアネート溶液を添加、撹拌後の粘度を再度測定した。ポリイソシアネート溶液添加前の粘度に対する添加後の粘度の割合を、粘度変化率として算出し、下記に示す評価基準に従い、配合時の粘度変化を評価した。
【0230】
(評価基準)
◎:粘度変化率が400%未満
○:粘度変化率が400%以上700%未満
△:粘度変化率が700%以上1000%未満
×:粘度変化率が1000%以上
【0231】
[評価4:耐酸性]
水平台上で、サンドブラスターで前処理済み鋼板に上記「調整例1」と同様の方法を用いてコーティング組成物をエアスプレーで(スプレー圧:0.3MPa、スプレーノズル:1.8mm)、乾燥膜厚50±5μmとなるよう塗装し、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させて、塗膜を得た。
前記ブロックコーティング組成物は、エアスプレーで塗装した後、130℃、30分で加熱乾燥後、塗膜を得た。
次いで、23℃の5%硫酸水中に塗膜を備える鋼板(以下、「塗板」と称する場合がある)を24時間浸漬し、表面に残った液を除いた後の塗膜の様子を観察した。以下の評価基準に従い、塗膜の耐酸性を評価した。
【0232】
(評価基準)
〇:4日以上で膨れ、変化なし
△:3日で膨れ発生
×:2日未満で膨れ発生
【0233】
[評価5:耐アルカリ性]
上記[評価4]と同様の方法を用いて、各コーティング組成物を硬化させてなる塗膜を得た。23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させて、塗膜を得た。次いで、23℃の5%水酸化ナトリウム水中に塗膜を備える鋼板(以下、「塗板」と称する場合がある)を24時間浸漬し、表面に残った液を除いた後の塗膜の様子を観察した。以下の評価基準に従い、塗膜の耐アルカリ性を評価した。
【0234】
(評価基準)
〇:4日以上で膨れ、変化なし
△:3日で膨れ発生
×:2日未満で膨れ発生
【0235】
[評価6:耐塩水噴霧性]
溶剤系の2液型ウレタン塗料(商品名「マイティーラック(白)、日本ペイント社製」を乾燥膜厚50μmとなるようアルミ板(150mm×75mm×1mm、型番:A1050P(JIS H4000)、テストピース社製)にスプレー塗装した。23℃/50%RHの雰囲気下で14日間乾燥させて、塗板を得た、1000番のサンドペーパーで表面を研磨し、白板を作成した。
上記[評価4]と同様の方法を用いて、各コーティング組成物を硬化させてなる塗膜を得た。23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させて、塗板を得た。次いで、得られた塗板に直線カットを行い、以下に示す測定条件下で試験を行った。試験後に塗板上の塗膜の状態を確認し、以下に示す評価基準に従い、評価した。
【0236】
(測定条件)
装置:Q-FOG(商品名)(Q-Lab社)
温度:35±1℃
噴霧液:5質量%中和塩水(pH6.5以上7.2以下)
噴霧時間:1000時間
【0237】
(評価基準)
○:カット部の一部に錆が発生、錆幅が2mm未満
△:カット部の一部に錆が発生、錆幅が2mm以上
×:カット部全体に錆又は膨れが発生、錆幅が2mm以上
【0238】
[評価7:耐屈曲性]
厚さ0.1mm、直径100mmの円形ブリキ板上に、各コーティング組成物を20μmの膜厚になるよう塗布し、恒温恒湿室(20℃、湿度65%)にて24時間放置して塗膜を作製した。-20℃の恒温室において5φ/180゜折り曲げ試験を行い、異状の有無を目視で評価した。
【0239】
(評価基準)
○:割れ、剥離などにおいて全く異常なし
△:若干の剥離
×:割れ、または剥離
【0240】
[評価8:耐摩耗性]
厚さ0.1mmのブリキ板上に、各コーティング組成物を20μmの膜厚になるよう塗布し、恒温恒湿下(20℃、湿度65%)にて24時間放置して塗膜を作製した。
テーバー摩耗試験を、ASTM D1044に記載の方法に準じ、摩耗輪CS-10F、荷重1000gの条件下で行い、試験前からの塗膜の摩耗量を求めた。
【0241】
(評価基準)
○:摩耗量が30mg未満
△:摩耗量が30mg以上50mg未満
×:摩耗量が50mg以上
【0242】
[評価9:耐候性(QUV-B)、耐黄変性]
厚さ0.1mmのブリキ板上に、各コーティング組成物を20μmの膜厚設定で塗布し、各塗膜の耐候性試験(QUV-B)を、下記の条件にて行った。光沢計(BYK社 micro-TRI-gloss)を用いて、実施前後のE値を測定し、前後の差をΔEとした。
装置:デューパネル 光コントロールウェザーメーター(型式FDP、スガ試験機製)
放射照度:28W/m
サイクル:60℃×10%RH×4時間⇔暗転:50℃×95%RH×4時間
テスト時間:1000時間
【0243】
(評価基準)
○:ΔEが5以下
△:ΔEが5以上10以下
×:ΔEが10以上
【0244】
[評価10:耐候性(QUV-B)、光沢保持性]
厚さ0.1mmのブリキ板上に、各コーティング組成物を20μmの膜厚設定で塗布し、各塗膜の耐候性試験(QUV-B)を、下記の条件にて行った。光沢計(BYK社 micro-TRI-gloss)を用いて、実施前後の光沢値を測定し、光沢保持率を評価した。
装置:デューパネル 光コントロールウェザーメーター(型式FDP、スガ試験機社製)
放射照度:28W/m
サイクル:60℃×10%RH×4時間⇔暗転:50℃×95%RH×4時間
テスト時間:1000時間
【0245】
(評価基準)
○:光沢保持率が85%以上
△:光沢保持率が70~85%
×:光沢保持率が70%以下
【0246】
<スルホン酸アミンの合成>
[合成例1]
(HES/TBAの合成)
70質量%の2-ヒドロキシエタンスルホン酸(以下、「HES」と略記する場合がある)水溶液:20質量部に、1-プロパノール:10質量部を添加して撹拌して溶液を得た。更に、HESに対するモル当量比が1となる割合でトリブチルアミン(以下、「TBA」と略記する場合がある)を量り取り、同質量部の1-プロパノールで希釈した液を、撹拌中の前記溶液に滴下した。滴下開始から1時間後に撹拌を止め、エバポレーターで脱水及び脱溶剤し、固形分99.8質量%の2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(以下、「HES/TBA」と略記する場合がある)を得た。
【0247】
[合成例2]
(HES/TPA-1の合成)
70質量%の2-ヒドロキシエタンスルホン酸(以下、「HES」と略記する場合がある)水溶液:20質量部に、1-プロパノール:10質量部を添加して撹拌して溶液を得た。更に、HESに対するモル当量比が1となる割合でトリプロピルアミン(以下、「TPA」と略記する場合がある)を量り取り、同質量部の1-プロパノールで希釈した液を、撹拌中の前記溶液に滴下した。滴下開始から1時間後に撹拌を止め、エバポレーターで脱水及び脱溶剤し、固形分99.8質量%の2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(以下、「HES/TPA-1」と略記する場合がある)を得た。このHES/TBA-1の残留水分量は500ppm、残留1-プロパノール量は200ppmであった。
【0248】
[合成例3]
(HES/TPA-2の合成)
70質量%の2-ヒドロキシエタンスルホン酸(以下、「HES」と略記する場合がある)水溶液:20質量部に、1-プロパノール:10質量部を添加して撹拌して溶液を得た。更に、HESに対するモル当量比が1となる割合でトリプロピルアミン(以下、「TPA」と略記する場合がある)を量り取り、同質量部の1-プロパノールで希釈した液を、撹拌中の前記溶液に滴下した。滴下開始から1時間後に撹拌を止め、エバポレーターで脱水及び脱溶剤し、固形分99.3質量%の2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(以下、「HES/TPA-2」と略記する場合がある)を得た。このHES/TBA-2の残留水分量は1,500ppm、残留1-プロパノール量は5,000ppmであった。
【0249】
<ポリカーボネートジオールの合成>
[合成例4]
(PCD450の合成)
攪拌機、温度計、頭頂に還流ヘッドを有する真空ジャケット付きオルダーショウを備えた2Lセパラブルフラスコに、1,5-ペンタンジオール382g、1,6-ヘキサンジオール433g、エチレンカーボネート650gを仕込み、70℃で撹拌溶解した後、触媒として酢酸鉛三水和物を0.015g入れた。175℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温140℃、真空度1.0~1.5kPaで、還流ヘッドから還流比4で留分の一部を抜きながら、12時間反応した。その後、オルダーショウを単蒸留装置に取り替え、180℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温140~150℃、真空度を0.5kPaまで落として、セパラブルフラスコ内に残った、ジオールとエチレンカーボネートを除去した。その後、オイルバスの設定を185℃に上げ、フラスコの内温160~165℃で、生成するジオールを除去しながら、さらに1.3時間反応した。この反応により、常温で粘稠な液体のポリカーボネートジオール(PCD450)が得られた。得られたポリカーボネートジオールの水酸基価は249.1(分子量450)、共重合組成は1,5-ペンタンンジオール/1,6-ヘキサンジオール=50/50(モル比)であった。
【0250】
<ポリイソシアネートの製造>
[合成例5]
(ポリイソシアネートP-1の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 1,000質量部と2-エチルヘキサノール:30質量部とを仕込み、撹拌下90℃で1時間ウレタン化反応を行った。アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒としてカプリン酸テトラメチルアンモニウムをイソブタノールで5質量%に希釈した溶液 1.0質量部を加え、アロファネート化反応及びイソシアヌレート化反応を行った。反応液の屈折率の上昇が0.012となった時点で、リン酸を添加し反応を停止した。反応液を160℃で1時間加熱し、冷却、濾過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート組成物P-1を得た。得られたポリイソシアネート組成物P-1は、25℃における粘度470mPa・s、NCO含有率は23.2質量%であった。
【0251】
[合成例6]
(ポリイソシアネートP-2の製造)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、HDI1,000gと2-エチルヘキサノール3.1質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃、2時間保持した。その後、イソシアヌレート化反応触媒であるカプリン酸テトラメチルアンモニウムを加え、収率が30質量%になった時点でリン酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート組成物P-2を得た。得られたポリイソシアネート組成物P-2の25℃における粘度は1,800mPa・s、NCO含有率は22.3質量%であった。
【0252】
[合成例7]
(ポリイソシアネートP-3の製造)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、HDI:600gを仕込み、攪拌下、反応器内温度を60℃に保持した。そこに、ウレトジオン化反応触媒であるトリ-n-ブチルホスフィン(Cytop(商標) 340、Cytec)を加え、ウレトジオン化反応及びイソシアヌレート化反応を行い、転化率が55%になった時点でメチル-p-トルエンスルホネート12gを添加し反応を停止した。反応液を冷却後、ろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート組成物P-3を得た。得られたポリイソシアネート組成物P-3の25℃における粘度は420mPa・s、NCO含有率は23.1質量%であった。
【0253】
[合成例8]
(ポリイソシアネートP-4の製造)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、HDI:600gを仕込み、攪拌下、反応器内温度を60℃に保持した。そこに、ウレトジオン化反応触媒であるトリ-n-ブチルホスフィン(Cytop(商標) 340、Cytec)を加え、ウレトジオン化反応及びイソシアヌレート化反応を行い、転化率が48%になった時点でメチル-p-トルエンスルホネート12gを添加し反応を停止した。反応液を冷却後、ろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート組成物P-4を得た。得られたポリイソシアネート組成物P-4の25℃における粘度は310mPa・s、NCO含有率は23.4質量%であった。
【0254】
[合成例9]
(ポリイソシアネートP-5の製造)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、HDI1,000gと2-エチルヘキサノール3.1質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃、2時間保持した。その後、イソシアヌレート化反応触媒であるカプリン酸テトラメチルアンモニウムを加え、収率が55質量%になった時点でリン酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート組成物P-5を得た。得られたポリイソシアネート組成物P-5の25℃における粘度は13,200mPa・s、NCO含有率は18.0質量%であった。
【0255】
[合成例10]
(ポリイソシアネートP-6の製造)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、HDI1,000gと2-エチルヘキサノール3.1質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃、2時間保持した。その後、イソシアヌレート化反応触媒であるカプリン酸テトラメチルアンモニウムを加え、収率が48質量%になった時点でリン酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート組成物P-6を得た。得られたポリイソシアネート組成物P-6の25℃における粘度は8,200mPa・s、NCO含有率は19.7質量%であった。
【0256】
[合成例11]
(ポリイソシアネートP-7の製造)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、HDI1,000gと2-エチルヘキサノール3.1質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃、2時間保持した。その後、イソシアヌレート化反応触媒であるカプリン酸テトラメチルアンモニウムを加え、収率が22質量%になった時点でリン酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート組成物P-7を得た。得られたポリイソシアネート組成物P-7の25℃における粘度は1,130mPa・s、NCO含有率は23.3質量%であった。
【0257】
[合成例12]
(ポリイソシアネートP-8の製造)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、HDI1,000gと2-エチルヘキサノール3.1質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃、2時間保持した。その後、イソシアヌレート化反応触媒であるカプリン酸テトラメチルアンモニウムを加え、収率が15質量%になった時点でリン酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート組成物P-8を得た。得られたポリイソシアネート組成物P-8の25℃における粘度は730mPa・s、NCO含有率は23.8質量%であった。
【0258】
[実施例1]
(ポリイソシアネート組成物PA-1の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例5で得られたポリイソシアネートP-1 95gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)1.0gと、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)4.0gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PA-1を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-1の物性と評価結果を表1に示す。
【0259】
[実施例2]
(ポリイソシアネート組成物PA-2の製造、評価)
ポリイソシアネートP-1 93.5g、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)2.5g以外は、実施例1と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-2を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-2の物性と評価結果を表1に示す。
【0260】
[実施例3]
(ポリイソシアネート組成物PA-3の製造、評価)
ポリイソシアネートP-1 92g、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)4.0g以外は、実施例1と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-3を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-3の物性と評価結果を表1に示す。
【0261】
[実施例4]
(ポリイソシアネート組成物PA-4の製造、評価)
ポリイソシアネートP-1 91g、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)5.0g以外は、実施例1と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-4を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-4の物性と評価結果を表1に示す。
【0262】
[実施例5]
(ポリイソシアネート組成物PA-5の製造、評価)
1,2-プロパンジオール(1,2-PG)1.0g以外は、実施例1と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-5を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-5の物性と評価結果を表1に示す。
【0263】
[実施例6]
(ポリイソシアネート組成物PA-6の製造、評価)
トリメチロールプロパン(TMP)1.0g以外は、実施例1と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-6を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-6の物性と評価結果を表1に示す。
【0264】
[実施例7]
(ポリイソシアネート組成物PA-7の製造、評価)
ポリカプロラクトントリオール(プラクセル303(PL303)、ダイセル社製)1.0g以外は、実施例1と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-7を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-7の物性と評価結果を表1に示す。
【0265】
[実施例8]
(ポリイソシアネート組成物PA-8の製造、評価)
合成例3で得られたPCD450 1.0g以外は、実施例1と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-8を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-8の物性と評価結果を表1に示す。
【0266】
[実施例9]
(ポリイソシアネート組成物PA-9の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例6で得られたポリイソシアネートP-2 98.4gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)1.2gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PA-9を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-9の物性と評価結果を表2に示す。
【0267】
[実施例10]
(ポリイソシアネート組成物PA-10の製造、評価)
ポリイソシアネートP-2 97.1g、2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)2.5g以外は、実施例9と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-10を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-10の物性と評価結果を表2に示す。
【0268】
[実施例11]
(ポリイソシアネート組成物PA-11の製造、評価)
ポリイソシアネートP-2 95.6g、2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)4.0g以外は、実施例9と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-11を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-11の物性と評価結果を表2に示す。
【0269】
[実施例12]
(ポリイソシアネート組成物PA-12の製造、評価)
ポリイソシアネートP-2 89.6g、2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)10.0g以外は、実施例9と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-12を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-12の物性と評価結果を表2に示す。
【0270】
[実施例13]
(ポリイソシアネート組成物PA-13の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例6で得られたポリイソシアネートP-2 47.8gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)4.0gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行った。反応終了後、合成例4で得られたポリイソシアネートP-2 47.8gを添加、混合し、ポリイソシアネート組成物PA-13を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-13の物性と評価結果を表2に示す。
【0271】
[実施例14]
(ポリイソシアネート組成物PA-14の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例5で得られたポリイソシアネートP-1 14.9gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)1.2gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行った。反応終了後、合成例1で得られたポリイソシアネートP-1 83.5gを添加、混合し、ポリイソシアネート組成物PA-14を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-14の物性と評価結果を表2に示す。
【0272】
[実施例15]
(ポリイソシアネート組成物PA-15の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例5で得られたポリイソシアネートP-1 98.4gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)1.2gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PA-15を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-15の物性と評価結果を表2に示す。
【0273】
[実施例16]
(ポリイソシアネート組成物PA-16の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例7で得られたポリイソシアネートP-3 98.4gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)1.2gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PA-16を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-16の物性と評価結果を表2に示す。
【0274】
[実施例17]
(ポリイソシアネート組成物PA-17の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例8で得られたポリイソシアネートP-4 98.4gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)1.2gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PA-17を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-17の物性と評価結果を表3に示す。
【0275】
[実施例18]
(ポリイソシアネート組成物PA-18の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例9で得られたポリイソシアネートP-5 95.6gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)4.0gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PA-18を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-18の物性と評価結果を表3に示す。
【0276】
[実施例19]
(ポリイソシアネート組成物PA-19の製造、評価)
合成例10で得られたポリイソシアネートP-6 95.6g以外は、合成例18と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-19を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-19の物性と評価結果を表3に示す。
【0277】
[実施例20]
(ポリイソシアネート組成物PA-20の製造、評価)
合成例11で得られたポリイソシアネートP-7 95.6g以外は、合成例18と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-20を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-20の物性と評価結果を表3に示す。
【0278】
[実施例21]
(ポリイソシアネート組成物PA-21の製造、評価)
合成例12で得られたポリイソシアネートP-8 95.6g以外は、合成例18と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物PA-21を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-21の物性と評価結果を表3に示す。
【0279】
[実施例22]
(ポリイソシアネート組成物PA-22の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例5で得られたポリイソシアネートP-1 95.6gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS):2.5g、及び、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA):1.5gを添加し、80℃で5時間撹拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PA-22を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-22の物性と評価結果を表3に示す。
【0280】
[実施例23]
(ポリイソシアネート組成物PA-23の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例5で得られたポリイソシアネートP-1 95.6gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、3-シクロヘキシルアミノブタンスルホン酸(CABS):2.6g、及び、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA):1.4gを添加し、80℃で5時間撹拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PA-23を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-23の物性と評価結果を表3に示す。
【0281】
[実施例24]
(ブロックポリイソシアネート組成物B-1の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、実施例11で得られたポリイソシアネートPA-11 100.0gと、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル62.5gに、3,5-ジメチルピラゾール47.4gを添加し、80℃で2時間撹拌して、反応を行い、ブロックポリイソシアネートB-1を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物B-1の物性と評価結果を表3に示す。
【0282】
[実施例25]
(ポリイソシアネート組成物PA-24の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例6で得られたポリイソシアネートP-2 97.1gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例3で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(HES/TPA-1)2.5gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシア ネート組成物PA-24を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-24の物性と評価結果を表4に示す。
【0283】
[実施例26]
(ポリイソシアネート組成物PA-25の評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例5で得られたポリイソシアネートP-1 93.5gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)2.5gと、合成例3で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(HES/TPA-1)4.0gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシア ネート組成物PA-25を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-25の物性と評価結果を表4に示す。
【0284】
[実施例27]
(ポリイソシアネート組成物PA-26の評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例6で得られたポリイソシアネートP-2 95.6gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例3で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(HES/TPA-1)4.0gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシア ネート組成物PA-26を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-26の物性と評価結果を表4に示す。
【0285】
[実施例28]
(ポリイソシアネート組成物PA-27の評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例5で得られたポリイソシアネートP-1 98.4gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例3で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(HES/TPA-1)1.2gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PA-27を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-27の物性と評価結果を表4に示す。
【0286】
[実施例29]
(ポリイソシアネート組成物PA-28の製造、評価)
2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(HES/TPA-2)を用いること以外は、実施例25と同様の方法で製造し、ポリイソシアネート組成物PA-28を得た。得られたPA-28の物性と評価結果を表4に示す。
【0287】
[実施例30]
(ポリイソシアネート組成物PA-29の製造、評価)
2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(HES/TPA-2)を用いること以外は、実施例28と同様の方法で製造し、ポリイソシアネート組成物PA-29を得た。得られたPA-29の物性と評価結果を表4に示す。
【0288】
[実施例31]
(ポリイソシアネート組成物PA-10の製造、評価)
実施例10で製造したポリイソシアネート組成物PA-10を用いて、調製例2にてコーティング組成物を調製し評価した。物性と評価結果を表4に示す。
【0289】
[実施例32]
(ポリイソシアネート組成物PA-14の製造、評価)
実施例14で製造したポリイソシアネート組成物PA-14を用いて、調製例2にてコーティング組成物を調製し評価した。物性と評価結果を表4に示す。
【0290】
[実施例33]
(ポリイソシアネート組成物PA-24の評価)
実施例25で製造したポリイソシアネート組成物PA-24を用いて、調製例4にてコーティング組成物を調製し、評価した。物性と評価結果を表5に示す。
【0291】
[実施例34]
(ポリイソシアネート組成物PA-25の評価)
実施例26で製造したポリイソシアネート組成物PA-25を用いて、調製例4にてコーティング組成物を調製し、評価した。物性と評価結果を表5に示す。
【0292】
[実施例35]
(ポリイソシアネート組成物PA-26の評価)
実施例27で製造したポリイソシアネート組成物PA-26を用いて、調製例4にてコーティング組成物を調製し、評価した。物性と評価結果を表5に示す。
[実施例36]
(ポリイソシアネート組成物PA-27の評価)
実施例28で製造したポリイソシアネート組成物PA-27を用いて、調製例4にてコーティング組成物を調製し、評価した。物性と評価結果を表5に示す。
【0293】
[実施例37]
(ポリイソシアネート組成物PA-24の評価)
実施例25で製造したポリイソシアネート組成物PA-24を用いて、調製例5にてコーティング組成物を調製し、評価した。物性と評価結果を表5に示す。
【0294】
[実施例38]
(ポリイソシアネート組成物PA-25の評価)
実施例26で製造したポリイソシアネート組成物PA-25を用いて、調製例5にてコーティング組成物を調製し、評価した。物性と評価結果を表5に示す。
【0295】
[実施例39]
(ポリイソシアネート組成物PA-26の評価)
実施例27で製造したポリイソシアネート組成物PA-26を用いて、調製例5にてコーティング組成物を調製し、評価した。物性と評価結果を表5に示す。
【0296】
[実施例40]
(ポリイソシアネート組成物PA-27の評価)
実施例28で製造したポリイソシアネート組成物PA-27を用いて、調製例5にてコーティング組成物を調製し、評価した。物性と評価結果を表5に示す。
【0297】
[比較例1]
(ポリイソシアネート組成物PB-1の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例5で得られたポリイソシアネートP-1 84.6gに、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)0.4gと、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)15.0gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PB-1を得た。得られたポリイソシアネート組成物PB-1の物性と評価結果を表6に示す。
【0298】
[比較例2]
(ポリイソシアネート組成物PB-2の製造、評価)
合成例5と同様の装置内を窒素雰囲気にし、合成例5で得られたポリイソシアネートP-1 96.0gに、合成例1で得られた2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA)4.0gを添加し、120℃で4時間攪拌して、反応を行い、ポリイソシアネート組成物PB-2を得た。得られたポリイソシアネート組成物PB-2の物性と評価結果を表6に示す。
【0299】
【表1】
【0300】
【表2】
【0301】
【表3】
【0302】
【表4】
【0303】
【表5】
【0304】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0305】
本実施形態のポリイソシアネート組成物によれば、色度良好であり、親水性溶剤に希釈した際の濁りが小さく、さらに主剤と配合した際の粘度変化が小さく、塗膜としたときの耐酸性と耐アルカリ性、耐塩水噴霧性に優れるポリイソシアネート組成物を提供する。また、前記ポリイソシアネート組成物を用いた、水系コーティング組成物及びコーティング基材を提供することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物であって、
前記親水性ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと、アニオン性化合物と、アルコールと、の反応物であり、
前記ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導され、
前記アニオン性化合物は活性水素基を含み、前記ポリイソシアネート組成物の総質量に対する前記アニオン性化合物の質量分率が0.1質量%以上13.0質量%以下であり
前記アルコールは、一分子あたりの平均数が2.0以上3.5以下のヒドロキシル基を有し、数平均分子量が450以下である、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート組成物中の前記アルコールの質量分率は、0.01質量%以上4.5質量%以下である、請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート組成物中の前記アルコールの質量分率は、0.01質量%以上2.5質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
ジイソシアネートに由来する環状3量体の質量分率が、20.0質量%以上、70.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
ウレトジオン2量体の質量分率が、0.01質量%以上、20.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
イソシアネート基濃度が17.0質量%以上24.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
尿素基とイソシアヌレート基を有し、前記尿素基と該イソシアヌレート基とのモル比(尿素基/イソシアヌレート基)が0.02/100以上10.0/100以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項8】
ウレタン基を有し、前記ウレタン基と前記イソシアヌレート基とのモル比(ウレタン基/イソシアヌレート基)が0.5/100以上50.0/100以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項9】
25℃における粘度が400mPa・s以上20,000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項10】
前記アニオン性化合物は、水酸基を含有するスルホン酸及びアミノ基を含有するスルホン酸からなる群より選ばれる1種以上のスルホン酸である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項11】
前記アニオン性化合物のスルホン酸基が、無機塩基又は有機アミン化合物で中和されている、請求項8に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項12】
前記アニオン性化合物が下記一般式(1)で表される化合物である請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R11は水酸基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、及び、イミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基である。R11は環構造を含んでもよい。前記環構造は、芳香族環、窒素原子を2つ含む5員環若しくは6員環、又は、窒素原子と酸素原子とを含む5員環若しくは6員環である。)
【請求項13】
前記アニオン性化合物が下記一般式(2)で表される化合物である請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【化2】
(一般式(2)中、R21及びR22は、互いに独立して、水素原子、又は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。R22及びR23のうち少なくとも1つは水素原子である。R23は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。
【請求項14】
請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物と、熱解離性ブロック剤との反応物である、ブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物を含む、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物を含む、コーティング組成物。
【請求項17】
請求項16に記載のコーティング組成物によってコーティングされた、コーティング基材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]親水性ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物であって、前記親水性ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと、アニオン性化合物と、アルコールと、の反応物であり、前記ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導され、前記アニオン性化合物は活性水素基を含み、前記ポリイソシアネート組成物の総質量に対する前記アニオン性化合物の質量分率が0.1質量%以上13.0質量%以下であり、前記アルコールは、一分子あたりの平均数が2.0以上3.5以下のヒドロキシル基を有し、数平均分子量が450以下である、ポリイソシアネート組成物。
[2]前記ポリイソシアネート組成物中の前記アルコールの質量分率は、0.01質量%以上4.5質量%以下である、[1]に記載のポリイソシアネート組成物。
[3]前記ポリイソシアネート組成物中の前記アルコールの質量分率は、0.01質量%以上2.5質量%以下である、[1]又は[2]に記載のポリイソシアネート組成物。
[4]ジイソシアネートに由来する環状3量体の質量分率が、20.0質量%以上、70.0質量%以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[5]ウレトジオン2量体の質量分率が、0.01質量%以上、20.0質量%以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[6]イソシアネート基濃度が17.0質量%以上24.0質量%以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[7]尿素基とイソシアヌレート基を有し、前記尿素基と該イソシアヌレート基とのモル比(尿素基/イソシアヌレート基)が0.02/100以上10.0/100以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[8]ウレタン基を有し、前記ウレタン基と前記イソシアヌレート基とのモル比(ウレタン基/イソシアヌレート基)が0.5/100以上50.0/100以下である、[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[9]25℃における粘度が400mPa・s以上20,000mPa・s以下である、[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[10]前記アニオン性化合物は、水酸基を含有するスルホン酸及びアミノ基を含有するスルホン酸からなる群より選ばれる1種以上のスルホン酸である、[1]~[11]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[11]前記アニオン性化合物のスルホン酸基が、無機塩基又は有機アミン化合物で中和されている、[10]に記載のポリイソシアネート組成物。
[12]前記アニオン性化合物が下記一般式(1)で表される化合物である[1]~[11]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R11は水酸基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、及び、イミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基である。R11は環構造を含んでもよい。前記環構造は、芳香族環、窒素原子を2つ含む5員環若しくは6員環、又は、窒素原子と酸素原子とを含む5員環若しくは6員環である。)
[13]前記アニオン性化合物が下記一般式(2)で表される化合物である[1]~[12]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
【化2】
(一般式(2)中、R21及びR22は、互いに独立して、水素原子、又は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。R22及びR23のうち少なくとも1つは水素原子である。R23は、水酸基を含んでもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基である。
[14][1]~[13]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物と、熱解離性ブロック剤との反応物である、ブロックポリイソシアネート組成物。
[15][1]~[14]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物を含む、ポリウレタン樹脂組成物。
[16][1]~[15]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物を含む、コーティング組成物。
[17][16]に記載のコーティング組成物によってコーティングされた、コーティング基材。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
<ポリイソシアネート組成物>
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、親水性ポリイソシアネートを含有する。
親水性ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと、アニオン性化合物と、アルコールと、の反応により得られる反応物である。
ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導される。
アニオン性化合物は活性水素基を含み、ポリイソシアネート組成物の総質量に対するアニオン性化合物の質量分率が0.1質量%以上13.0質量%以下である
アルコールは、一分子あたりの平均数が2.0以上3.5以下のヒドロキシル基を有し、数平均分子量が450以下である。
以下に各構成成分について詳細を説明する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0286
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0286】
[実施例29]
(ポリイソシアネート組成物PA-28の製造、評価)
2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(HES/TPA-2)を用いること以外は、実施例25と同様の方法で製造し、ポリイソシアネート組成物PA-28を得た。得られたPA-2の物性と評価結果を表4に示す。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0287
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0287】
[実施例30]
(ポリイソシアネート組成物PA-29の製造、評価)
2-ヒドロキシエタンスルホン酸トリプロピルアミン塩(HES/TPA-2)を用いること以外は、実施例28と同様の方法で製造し、ポリイソシアネート組成物PA-29を得た。得られたPA-2の物性と評価結果を表4に示す。