(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025849
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】空調システム及び空調方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/65 20180101AFI20240220BHJP
F24F 11/875 20180101ALI20240220BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240220BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240220BHJP
F24F 1/0007 20190101ALI20240220BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240220BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/875
F24F5/00 102Z
F24F11/74
F24F5/00 101B
F24F5/00 K
F24F1/0007 331
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129161
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】島岡 宏秀
(72)【発明者】
【氏名】蔵永 真理
(72)【発明者】
【氏名】小関 由明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚志
【テーマコード(参考)】
3L050
3L054
3L260
【Fターム(参考)】
3L050BB09
3L054BB02
3L054BH04
3L260AB06
3L260BA20
3L260BA41
3L260CA12
3L260CA22
3L260CB63
3L260CB81
3L260EA06
3L260FA02
3L260FB60
3L260FC04
(57)【要約】
【課題】効率的な空調を実現するための空調システムおよび空調方法を提供する。
【解決手段】空調システム10は、スラブ12によって形成される空間を空調対象空間11とする。空調システム10は、スラブ12の表面から離れた位置に、スラブ12の表面の少なくとも一部を覆うように設けられ、スラブ12に臨む第1開口部23と空調対象空間11に臨む第2開口部25とが形成されたチャンバ20と、チャンバ20に接するように配設されて、温度調整された流体が流れる配管30と、チャンバ20に支持されて、第1開口部23を通じてチャンバ20内からスラブ12に向かう第1気流を形成する第1駆動状態と、第2開口部25を通じてチャンバ内から空調対象空間11に向かう第2気流を形成する第2駆動状態と、停止状態とを切り替えて制御されるファン40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント組成物製の躯体によって形成される空間を空調対象空間とする空調システムであって、
前記躯体の表面から離れた位置に、前記躯体の表面の少なくとも一部を覆うように設けられ、前記躯体に臨む第1開口部と前記空調対象空間に臨む第2開口部とが形成されたチャンバと、
前記チャンバに接するように配設されて、温度調整された流体が流れる配管と、
前記チャンバに支持されて、前記第1開口部を通じて前記チャンバ内から前記躯体に向かう第1気流を形成する第1駆動状態と、前記第2開口部を通じて前記チャンバ内から前記空調対象空間に向かう第2気流を形成する第2駆動状態と、停止状態とを切り替えて制御されるファンと、を備える
空調システム。
【請求項2】
前記チャンバは、
前記第1開口部が形成された第1パネルと、
前記第2開口部が形成され、前記第1パネルに対向配置される第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルとを繋ぐ周壁と、を有し、
前記周壁は、前記第1パネルおよび前記第2パネルの一方に一体的に形成されているとともに前記第1パネルおよび前記第2パネルの他方に連結されており、
前記周壁と連結対象のパネルとの間にチャンバ用シール材が設けられている
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記配管には、前記流体の循環を行う給水管が接続され、
前記チャンバは、
前記給水管を前記チャンバ外へ引き出すための引き出し孔を周端部に有し、
前記第1開口部および前記第2開口部が連通する空間と前記引き出し孔に連通する空間とに区画する区画材を有する
請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記ファンは、前記躯体と前記チャンバとの間に、前記第1開口部に対向するように着脱可能に設けられている
請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項5】
セメント組成物製の躯体によって形成される空間を空調対象空間とする空調方法であって、
前記躯体の表面から離れた位置に、前記躯体の表面の少なくとも一部を覆うように設けられ、前記躯体に臨む第1開口部と前記空調対象空間に臨む第2開口部とが形成されたチャンバと、
前記チャンバに接するように配設されて、温度調整された流体が流れる配管と、
前記チャンバに支持されたファンと、を備え、
前記ファンを、前記第1開口部を通じて前記チャンバ内から前記躯体に向かう第1気流を形成する第1駆動状態と、前記第2開口部を通じて前記チャンバ内から前記空調対象空間に向かう第2気流を形成する第2駆動状態と、停止状態とに切り替えて制御する
空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温冷水配管を用いた空調システム及び空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射空調方式は、遠赤外線を介して、天井などに設置の放射源と空調対象空間との間で直接エネルギーを授受する。放射空調方式は、空気を介する対流空調に比べて、省エネルギー性と、不快な気流感や室内上下温度差が少ないという快適性との両立が可能である。
【0003】
こうした放射空調方式に関連して、温冷水が流通するパイプを天井に取り付けるための取付構造も検討されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載された取付構造では、建物内の天井スラブの下方に設けられる平面状のプレートと、プレートに取り付けられてパイプを保持するパイプ保持具と、を備える。そして、プレートを固定する取付構造により、パイプ保持具が取り付けられた逆面が天井スラブに対向かつ離隔した状態で、プレートが天井スラブに取り付けられている。また、建物の躯体に蓄熱した熱を利用する躯体蓄熱空調としては、温冷水管を躯体内に埋設する方式や躯体に温冷風空気を直接吹き付けて行う方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、温度調節がパイプを流通する温冷水のみによって行われているため、効率的な空調を期待できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する空調システムは、セメント組成物製の躯体によって形成される空間を空調対象空間とする。空調システムは、前記躯体の表面から離れた位置に、前記躯体の表面の少なくとも一部を覆うように設けられ、前記躯体に臨む第1開口部と前記空調対象空間に臨む第2開口部とが形成されたチャンバと、前記チャンバの下板に接するように配設されて、温度調整された流体が流れる配管と、前記チャンバに支持されて、前記第1開口部を通じて前記チャンバ内から前記躯体に向かう第1気流を形成する第1駆動状態と、前記第2開口部を通じて前記チャンバ内から前記空調対象空間に向かう第2気流を形成する第2駆動状態と、停止状態とを切り替えて制御されるファンと、を備える。この第1駆動状態により、躯体蓄熱を期待できる。また、第2駆動状態により、放射空調の補完や促進を期待できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率的な空調を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における空調システムの説明図である。
【
図2】実施形態における空調システムのシステム構成の説明図である。
【
図3】実施形態におけるハードウェア構成の説明図である。
【
図4】実施形態における第1モードの説明図である。
【
図5】実施形態における第2モードの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図5を用いて、空調システムおよび空調方法を説明する。
図1に示すように、空調システム10は、空調対象空間11の温度を調節する。空調システム10には、スラブ12(セメント組成物製の躯体)が用いられる。スラブ12は、コンクリート材13とデッキプレート14により構成される。コンクリート材13は、鋼製のデッキプレート14を型枠として打設されたコンクリートである。
【0010】
(空調システムの構成)
空調システム10は、チャンバ20を有している。チャンバ20は、吊りボルト21によりスラブ12に吊り下げられており、デッキプレート14の表面から離れた場所に位置している。チャンバ20は、スラブ12の表面の少なくとも一部を覆うように並設される。チャンバ20は、後述するファン40の風がデッキプレート14に到達可能な距離で配置される。この距離は、後述するファン40の送風性能に応じて決定すればよく、例えば、10cm程度である。チャンバ20のサイズは、搬入や取付等を考慮して、例えば、幅(短手)60cm程度、長さ(長手)1.5~3m程度である。
【0011】
チャンバ20は、チャンバ20の上板を構成する第1パネル22を有する。第1パネル22には、スラブ12に臨む第1開口部23が所定間隔(例えば、数十cm間隔)で設けられている。
【0012】
チャンバ20は、第1パネル22に対向配置されてチャンバ20の下板を構成する第2パネル24を有する。第2パネル24には、全ての領域または一部の領域に、空調対象空間11に臨む孔である第2開口部25によって構成されたメッシュ状の通気口が設けられている。また、第2パネル24には、チャンバ20の上板と下板とを繋ぐチャンバ20の周壁27が一体的に形成されている。
【0013】
周壁27の上端部には、チャンバ20の内側へ突出する連結片28が設けられている。連結片28は、連結対象である第1パネル22に連結される。第1パネル22と周壁27の連結片28とは、チャンバ用シール材29が介在した状態で吊りボルト21によって連結される。これにより、第1パネル22と周壁27との間の隙間がシールされる。チャンバ用シール材29は、第1パネル22と周壁27との間の隙間を通じた空気の流通を抑える。また、チャンバ用シール材29は、その厚さによって第1パネル22と第2パネル24との距離を調整するスペーサーとしても機能する。
【0014】
空調システム10は、チャンバ20に支持される配管30を有している。配管30は、直線部31および接続部32を有する。
直線部31および接続部32は、直接またはヒートシンクを介してチャンバ20の内側下面、すなわち第2パネル24の上面に接触するように配設されている。直線部31および接続部32は、チャンバ20に接触する接触部を構成する。直線部31は、チャンバ20の内部空間に所定の間隔で並設されている。直線部31は、
図1における紙面の奥側あるいは手前側において、接続部32を介して、隣接する配管30と相互に接続されている。なお、以下では、直線部31が並設された方向を左右方向という。
【0015】
配管30には、給水管33が接続されている。給水管33は、左右方向における両端に位置する直線部31のそれぞれに接続されている。給水管33は、チャンバ20の周端部に形成された引き出し孔35を通じて、チャンバ20の外部空間へと引き出されている。引き出し孔35は、直線部31および接続部32が配設された領域よりも左右方向における外側に形成されている。給水管33と引き出し孔35との間の隙間は、図示されないシール材などによって封止されていることが好ましい。配管30においては、温度調節された流体の供給が一方の給水管33を通じて行われ、配管30を通過した流体の排出が他方の給水管33を通じて行われる。例えば、冷房の場合、配管30には、上記流体として比較的にポテンシャルが低い15~20℃の冷水(例えば地下水等)が給水管33を通じて供給される。なお、流体は、ヒートポンプ等を用いて、配管30の表面に結露が生じない程度に温度調節されてもよい。
【0016】
空調システム10は、チャンバ20の内部空間に区画材38を有している。区画材38は、チャンバ20の内部空間を内側領域と外側領域とに区画する。内側領域は、直線部31および接続部32が配設される領域であって、第1開口部23および第2開口部25の双方が連通する領域である。外側領域は、給水管33の一部が配設される領域であって、引き出し孔35が連通する領域である。区画材38には、給水管33が貫通する図示されない通孔が形成されている。区画材38には、例えばグラスウールなどの断熱材やゴム製のシール材を用いることができる。
【0017】
空調システム10は、ファン40を有する。ファン40は、スラブ12と第1パネル22との間に位置するように、また、第1開口部23のそれぞれを塞ぐようにチャンバ20に取り付けられる。ファン40は、着脱機構(例えば、クランプや面ファスナ、磁石等)により着脱可能にチャンバ20に取り付けられる。ファン40は、厚みが薄いファン、例えば、USB(Universal Serial Bus)規格(定格電圧:DC5V)で駆動可能なDCファンである。ファン40には、ケーブルラック(図示せず)からのケーブルを通じてUSBジャックから電力が供給される。ファン40は、供給される電圧に応じて正転駆動あるいは逆転駆動される。
【0018】
ファン40は、正転駆動により上方送風を行うことで、第1開口部23を通じてチャンバ20の内側領域からスラブ12に向かう第1気流を形成する。ファン40は、逆転駆動により下方送風を行うことで、第2開口部25を通じてチャンバ20の内側領域から空調対象空間11に向かう第2気流を形成する。
【0019】
空調システム10は、拡散部材41を有している。拡散部材41は、各第1開口部23の直下、すなわち各ファン40に対応するように設けられている。拡散部材41は、ファン40からの下方送風が衝突することでチャンバ20の内側領域において空気を拡散させる。拡散部材41は、チャンバ20の内部、すなわち第2パネル24とファン40との間に配設されている。また、拡散部材41は、直線部31の間に配設されている。拡散部材41は、着脱機構(例えば、クランプや面ファスナ、磁石等)により着脱可能に第2パネル24に取り付けられる。
【0020】
空調システム10は、各ファン40に対応する消音部材42を有している。消音部材42は、着脱機構(例えば、クランプや面ファスナ、磁石等)により着脱可能にチャンバ20の第1パネル22に取り付けられる。消音部材42は、スラブ12と第1パネル22との間に配設されている。消音部材42は、その下端部においてファン40を取り囲む筒状の形状を有している。消音部材42は、例えば遮音材や吸音材で構成される。消音部材42の上端は、第1パネル22よりもスラブ12に近い位置に配設されることが好ましい。本実施形態において、消音部材42は、グラスウールダクトである。
【0021】
図2に示すように、空調システム10は、ファン40の駆動を制御する制御装置50を有している。制御装置50は、各種条件に基づいて、例えば空調対象空間11の状態情報を取得するセンサ51の計測値などに基づいて、ファン40の駆動モードを切り替える。センサ51は、空調対象空間11の状態情報として温度(室温)やスラブ12の放射温度を計測する。
【0022】
(制御装置50のハードウェア構成)
図3に示すように、制御装置50を構成する情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0023】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0024】
入力装置H12は、ユーザ等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。例えば、ユーザによる設定温度、寒暖の申告、ファンの風向き又は稼働の要否を受け付ける。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。記憶装置H14は、制御装置50の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0025】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて制御装置50における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0026】
(駆動モードについて)
制御装置50は、条件に応じて、ファン40の駆動モードを第1モード、第2モード、および、第3モードの間で切り替える。
【0027】
図4に示すように、第1モードは、チャンバ20からスラブ12へと向かう第1気流が形成される第1駆動状態にファン40が制御されるモードである。第1モードにおいて、ファン40は、第1開口部23を通じて吸引したチャンバ20内の空気をスラブ12へと吹き付ける。チャンバ20内においては、第2開口部25を通じて流入してきた空気と配管30との間で熱交換が行われる。すなわち、第1モードは、空調対象空間11内の熱や配管30を流れる流体の熱をスラブ12に蓄熱する蓄熱モードである。なお、
図4において、空調対象空間11に示している矢印のうち、両端に位置する矢印は、拡散部材41の奥側からチャンバ20に流入する空気を示している。
【0028】
図5に示すように、第2モードは、チャンバ20から空調対象空間11へと向かう第2気流が形成される第2駆動状態にファン40が制御されるモードである。第2モードにおいて、ファン40は、消音部材42を通じて吸引したスラブ12の表面付近の空気をチャンバ20内へと吹き付ける。このとき吸引される空気は、スラブ12との間で熱交換を行う。そして、ファン40が生成した下方送風が拡散部材41によってチャンバ20内に拡散されることで、配管30との間で熱交換を行いつつ第2パネル24の広範囲から空気が流出する。すなわち、第2モードは、スラブ12に蓄熱された熱や配管30を流れる流体の熱を空調対象空間11に放熱する放熱モードである。なお、
図5において、空調対象空間11に示している矢印のうち、両端に位置する矢印は、拡散部材41の奥側から空調対象空間11に流入する空気を示している。
【0029】
第3モードは、停止状態にファン40が制御されるモードである。このとき、空調対象空間11は、チャンバ20、より具体的には第2パネル24を放射パネルとする輻射によって空調される。すなわち、第3モードは、チャンバ20からの放射空調を行う放射モードである。
【0030】
(駆動モードの切り替えの一例について)
制御装置50は、現在日時を出力するタイマを備える。そして、制御装置50は、記憶装置H14に記録されたスケジュール(時間的条件)に基づいて、ファン40のスケジュール駆動(正転または反転)を行う。スケジュールには、例えば、第1モード時間帯(夜間)や第2モード時間帯(昼間)を記録しておく。
【0031】
また、例えば、制御装置50は、センサ51が検出した状態情報に基づいて、ファン40の駆動モードを強制的に切り替える。この場合、制御装置50は、空調対象空間11の室温が目標温度になるように、ファン40の駆動モードを切り替える。制御装置50は、空調対象空間11の室温が目標温度より許容範囲を超えて高く、スラブ12の温度が目標温度より低い場合には、下方送風が行われる第2モードを実行する。また、制御装置50は、空調対象空間11の室温が目標温度より許容範囲を超えて低く、コンクリート材13の温度が目標温度より高い場合には、上方送風が行われる第1モードを実行する。また、制御装置50は、室温が安定している場合、ファン40を停止する第3モードを実行する。
【0032】
(作用)
ファン40の駆動により、チャンバ20や空調対象空間11の熱が処理されてスラブ12に蓄熱される。更に、スラブ12の蓄熱された熱は、ファン40の反転駆動や輻射により、空調対象空間11に放熱される。
【0033】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)空調システム10では、スラブ12から離間した位置にチャンバ20が配設されている。これにより、スラブ12を蓄熱材として利用して空調対象空間11の放射空調を行うことができる。例えば、空調対象空間11の空調負荷が変動する場合にも、空調負荷が小さい場合にはスラブ12に蓄熱し、空調負荷が大きい場合には、そのスラブ12に蓄熱した熱を放熱する。これにより、空調負荷のバランスを取ることができる。
【0034】
また、チャンバ20を用いることにより、配管30を流れる流体とチャンバ20を通過する空気との熱交換を効率よく行うことができる。その結果、スラブ12への蓄熱や空調対象空間11への放熱を効率よく行うことができる。
【0035】
(2)チャンバ20内には、所定の間隔で並設された配管30が、直接またはヒートシンクを介して接触するようにして延在される。これにより、配管30をコンクリートスラブ等の躯体に埋め込む場合と異なり、工事が簡易である。
【0036】
(3)チャンバ20に支持されたファン40が、所定距離(例えば、数10cm)の間隔で設けられる。これにより、スラブ12とチャンバ20とが離れている場合にも、ファン40によるスラブ12への送風を用いて、蓄熱を促進することができる。また、ファン40による空調対象空間11への送風を用いて、強制対流空調、放熱を促進することができる。また、USB規格で駆動可能なDC冷却ファンを用いることにより、省電力の汎用品で送風を実現できる。
【0037】
また、ファン40は、チャンバ20に着脱機構(例えば、クランプや面ファスナ、磁石等)により取り付けられる。これにより、ファン40の配置変更やメンテナンスが容易である。
【0038】
また、チャンバ20内に配管30を設け、チャンバ20の上板にファン40を設けることにより、空調対象空間11側の下面の自由度を確保できる。
(4)制御装置50は、ファン40のスケジュール発停を行う。これにより、空調対象空間11の熱負荷が周期的に変化する場合にも、この周期性を利用して、駆動モードを切り替えることができる。例えば、夜間電力を利用して、ヒートポンプにより温度調節した生成した温冷水を配管30に流して、スラブ12の蓄熱や冷却するようにしてもよい。
【0039】
また、制御装置50には、センサ51が接続されている。そして、制御装置50は、このセンサ51での計測情報を用いて、駆動モードを強制的に切り替える。これにより、空調対象空間11やスラブ12の状況に応じて、ファン40の駆動モードを切り替えることができる。
【0040】
(5)第1パネル22と周壁27との間の隙間にチャンバ用シール材29が設けられている。これにより、該隙間を通じたチャンバ20への空気の流出入を抑えることができる。その結果、チャンバ20に流入した空気のうち、配管30の近傍を通過する空気の割合を高めることができる。
【0041】
(6)チャンバ用シール材29をスペーサーとして機能させることにより、第1パネル22および第2パネル24の形状を変更することなく、チャンバ用シール材29の厚さに応じてチャンバ20の容積を大きくすることができる。その結果、管径や経路など、配管30の設計についての自由度を向上させることができる。
【0042】
(7)チャンバ20内に区画材38が配設されている。これにより、引き出し孔35を通じた空気の流通を抑えるとともに第2開口部25を通じた空気の流通範囲を限定することができる。これにより、チャンバ20内において、より多くの空気が配管30の近傍を通るようにすることができる。
【0043】
(8)ファン40は、スラブ12とチャンバ20との間において、第1開口部23に対向するように設けられている。これにより、第1モードにおいては、チャンバ20内の空気を効率よく吸引することができる。また、第2オートにおいては、チャンバ20内に空気を効率よく吐出することができる。
【0044】
(9)拡散部材41は、第2パネル24とスラブ12との間に配設されて、第2モードにおいてファン40の下方送風を第2パネル24に沿う方向へと拡散させる。これにより、より多くの空気が配管30および第2パネル24と熱交換を行うことができる。
【0045】
(10)拡散部材41は、並設された直線部31の間に配設されている。これにより、拡散部材41によって方向転換された空気のうちで配管30の近傍を通る空気の割合を高めることができる。
【0046】
(11)拡散部材41は、各ファン40に対応するように設けられている。これにより、第2モードにおいて、各ファン40からの下方送風をチャンバ20内に拡散させることができる。
【0047】
(12)ファン40の周囲には、消音部材42が配設されている。これにより、ファン40の駆動にともなう騒音を抑えることができる。
(13)ファン40は、筒状の形状を有する消音部材42の下端部内側に配設されている。こうした構成によれば、ファン40が上方送風を行う場合に、上方送風の送風方向の精度を高めることができる。また、スラブ12に到達した上方送風がスラブ12に沿うように流れるため、スラブ12への蓄熱を効率よく行うことができる。
【0048】
(14)ファン40と消音部材42は、スラブ12とチャンバ20との間に配設されている。これにより、空調対象空間11側から見たときに、ファン40および消音部材42をチャンバ20で覆い隠すことができる。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、ファン40の騒音を抑える消音部材42を設けたが、消音部材42は必須の構成ではない。
【0050】
・上記実施形態においては、チャンバ20の内部空間を内側領域と外側領域とに区画する区画材38を設けたが、区画材38は必須の構成ではない。例えば、第2開口部25が配管30の近傍にのみ形成されている場合などには区画材38を設けなくてもよい。これにより、空調システム10の構成要素を少なくすることができるとともにチャンバ20の組みたてが容易になる。
【0051】
・上記実施形態においては、第1パネル22と周壁27との間にチャンバ用シール材29が設けられている。これに限らず、第1パネル22と周壁27との間の隙間を通じた空気の流通が十分に抑えられる場合には、チャンバ用シール材29を設けなくともよい。
【0052】
・上記実施形態においては、第1パネル22と第2パネル24とを繋ぐ周壁27が第2パネル24に一体的に形成されている。これに限らず、周壁27は、第1パネル22に一体的に形成されていてもよいし、第1パネル22および第2パネル24とは別の部材であってもよい。この場合、周壁27の連結態様に応じてチャンバ用シール材29が配設されることが好ましい。
【0053】
・上記実施形態においては、ファン40の駆動時にチャンバ20内において空気を拡散させる拡散部材41を設けたが、拡散部材41は必須の構成ではない。
・上記実施形態においては、チャンバ20の内部に配管30を設けた。また、チャンバ20の上面にファン40を設けた。配管30、ファン40の配置は、これに限られるものではない。
【0054】
図6に示すように、ファン40をチャンバ20の外側下面に設けてもよい。これにより、ファン40のメンテナンスを容易にすることができる。
図7に示すように、配管30をチャンバ20の外側下面に設けてもよい。これにより、配管30をフィンとして機能させることにより、放射面積を稼ぐことができる。
【0055】
図8に示すように、配管30、ファン40をチャンバ20の外側下面に設けてもよい。これにより、ファン40のメンテナンスの利便性や放射面積の拡大を図ることができる。
上記
図6~
図8に示すパターンにおいては、チャンバ20内で空気が拡散されるように、第1開口部23と第2開口部25とが左右方向で異なる位置に形成されることが好ましい。また、第2開口部25は、ファン40の配置位置に対応するように形成されていることが好ましい。
【0056】
・上記実施形態においては、空調対象空間や躯体の温度(室温又は放射温度)を計測するセンサ51を用いる。センサ51による空調対象空間11の状態の計測は温度に限定されるものではない。例えば、人感センサ等のセンサ51を用いて、人の所在を検知してもよい。空調対象空間内に人を検知した場合には、制御装置50は、早く目標温度になるように調整する空調制御を強制的に行う。一方、人を検知しない場合には、制御装置50は、省電力を考慮して、空調対象空間の他の状態(例えば、温度)に応じて、目標温度になるように調整する各モードを実行する。
【0057】
・上記実施形態においては、蓄熱先として、デッキプレート14を用いたスラブ12を用いる。ここで、デッキプレート14は必須でない。また、デッキプレート14の形状は限定されるものではない。また、蓄熱を行う構造体もスラブ12に限定されるものではない。例えば、プレキャストコンクリート床版や、型枠を用いて形成したコンクリートスラブを用いてもよい。また、蓄熱できる構造体(躯体)であれば、コンクリート壁を用いてもよい。
【0058】
・上記実施形態においては、蓄熱を行う構造体として、スラブ12を用いた。構造体の下面に、蓄熱材を配置してもよい。例えば、潜熱蓄熱材(エコジュール(登録商標))を配置してもよい。
【0059】
・上記実施形態においては、第2パネル24には、複数の第2開口部25によって構成されたメッシュ状の通気口が設けられている。これに限らず、第2開口部25は、スリット状に形成されていてもよい。
【0060】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(付記1)
前記ファンの駆動を制御する制御装置を更に備え、
前記制御装置は、切替条件に応じて、前記ファンの正反転及び停止の駆動を制御する。
【0061】
(付記2)
前記切替条件には時間的条件が含まれており、前記制御装置は、予め定められたスケジュールに基づいて、前記ファンの正反転及び停止の駆動を制御する。
【0062】
(付記3)
前記制御装置は、センサから前記空調対象空間の状態情報を取得し、前記状態情報及び前記切替条件に基づいて、前記ファンの正反転及び停止の駆動を制御する。
【0063】
(付記4)
前記センサは、前記空調対象空間の温度、前記空調対象空間の人の所在の少なくとも1つを計測する。
【符号の説明】
【0064】
10…空調システム、11…空調対象空間、12…スラブ、13…コンクリート材、14…デッキプレート、20…チャンバ、21…吊りボルト、22…第1パネル、23…第1開口部、24…第2パネル、25…第2開口部、27…周壁、28…連結片、29…チャンバ用シール材、30…配管、31…直線部、32…接続部、33…給水管、35…引き出し孔、38…区画材、40…ファン、41…拡散部材、42…消音部材、50…制御装置、51…センサ。