IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ヤザキの特許一覧

<>
  • 特開-衝撃吸収部材 図1
  • 特開-衝撃吸収部材 図2
  • 特開-衝撃吸収部材 図3
  • 特開-衝撃吸収部材 図4
  • 特開-衝撃吸収部材 図5
  • 特開-衝撃吸収部材 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025852
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】衝撃吸収部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/04 20060101AFI20240220BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B60R21/04 320
B60J5/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129166
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502042953
【氏名又は名称】株式会社ヤザキ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三橋 晃子
(72)【発明者】
【氏名】石井 優貴
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 尚行
(72)【発明者】
【氏名】北堀 孝之
(57)【要約】
【課題】従来と比較して、側突荷重の吸収性能をより一層向上させることが可能な衝撃吸収部材を提供すること。
【解決手段】車両の内部又は外部からの衝撃を吸収することが可能な側突パッドであって、この側突パッド22は、内部に中空部30を有し、ブロー成形によって一体に形成された熱可塑性樹脂からなり、側突パッドの互いに対向する内側壁部48と外側壁部50には、それぞれ中空部側に向かって凹ませた凹状リブ52が設けられ、この凹状リブは、壁部に対して円周状の壁面68と、この壁面に囲まれた底面70とを有し、底面と壁面との接続部72には、凸状部74が部分的に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構成部材に内設され、車両の内部又は外部からの衝撃を吸収することが可能な衝撃吸収部材であって、
前記衝撃吸収部材は、内部に中空部を有し、ブロー成形によって一体に形成された熱可塑性樹脂からなり、
前記衝撃吸収部材の互いに対向する一方の壁部と他方の壁部には、それぞれ前記中空部側に向かって凹ませた凹状リブが設けられ、
前記凹状リブは、前記壁部に対して円周状の壁面と、前記壁面に囲まれた底面とを有し、
前記底面と前記壁面との接続部には、凸状部が部分的に設けられていることを特徴する衝撃吸収部材。
【請求項2】
請求項1記載の衝撃吸収部材において、
前記凸状部は、互いに対向するように2箇所配置されていることを特徴する衝撃吸収部材。
【請求項3】
請求項2記載の衝撃吸収部材において、
前記凸状部は、前記壁面と前記底面との前記接続部から、前記壁面の所定の高さ寸法の位置まで延びていることを特徴とする衝撃吸収部材。
【請求項4】
請求項2記載の衝撃吸収部材において、
前記凹状リブは、前記一方の壁部と前記他方の壁部とを繋ぐ側壁の少なくとも一部を開放するように構成された開放部を有し、
前記凸状部の一つは、前記開放部に配置されていることを特徴とする衝撃吸収部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ドア等の車両構成部材に内設することによって、車両の内部で発生する衝撃や、車両外部から受ける衝撃を吸収することが可能な衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ブロー成形時のパリソンの押圧にともなって凹状リブの接合部に膨出部を形成した衝撃吸収部材が開示されている。この膨出部は、凹状リブの接合部の全周にわたって連続して設けられている。
【0003】
この衝撃吸収部材では、ブロー成形時のパリソンの押圧にともなって生じる樹脂の流れを膨出部によって吸収することで、接合部の外周に樹脂が押し出されることを防止している。これにより、特許文献1では、凹状リブの接合部に樹脂溜まりが生じることを防止することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4229676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、車両の側面に配置されたドアに対して側突荷重が入力された際、ドアに入力された側突荷重を吸収する衝撃吸収部材の吸収性能を向上させる必要がある。また、ドアに対して入力された側突荷重を衝撃吸収部材で好適に吸収することで、車室内の乗員の安全を確保する必要がある。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、従来と比較して、側突荷重の吸収性能をより一層向上させることが可能な衝撃吸収部材を提供することを目的とする。そして、延いては、車室内の乗員の安全確保に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、車両構成部材に内設され、車両の内部又は外部からの衝撃を吸収することが可能な衝撃吸収部材であって、前記衝撃吸収部材は、内部に中空部を有し、ブロー成形によって一体に形成された熱可塑性樹脂からなり、前記衝撃吸収部材の互いに対向する一方の壁部と他方の壁部には、それぞれ前記中空部側に向かって凹ませた凹状リブが設けられ、前記凹状リブは、前記壁部に対して円周状の壁面と、前記壁面に囲まれた底面とを有し、前記底面と前記壁面との接続部には、凸状部が部分的に設けられていることを特徴する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、従来と比較して、側突荷重の吸収性能をより一層向上させることが可能な衝撃吸収部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る衝撃吸収機構が適用された車両の前側ドアの側面図である。
図2図1のII-II線に沿った縦断面図である。
図3】衝撃吸収機構を構成する側突パッドとドアスティフナとの配置関係を示す透過側面図である。
図4】(a)は、側突パッドの側面図、(b)は、側突パッドの部分拡大斜視図である。
図5】(a)は、車両後方側に位置する凹状リブの拡大平面図、(b)は、(a)のVB-VB線に沿った縦断面図である。
図6】前側ドアに対する側突荷重入力時の側突パッドの変位量と荷重との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1に示されるように、車両は、左右一対の前側ドア(車両構成部材)10を備えている。図2に示されるように、各前側ドア10は、外側に配置されたアウタパネル12と、内側に配置されたインナパネル14と、インナパネル14に装着されるドアライニング16とを備えて構成されている。
【0012】
図2に示されるように、アウタパネル12とドアライニング16との間には、前側ドア10の上下方向の略中央に位置し、本実施形態に係る衝撃吸収機構18が配置されている。
【0013】
この衝撃吸収機構18は、金属製のドアスティフナ20と、このドアスティフナ20に装着される樹脂製の側突パッド(衝撃吸収部材)22とから構成されている。
【0014】
図3に示されるように、ドアスティフナ20は、車両前後方向に沿って略直線状に延びる上側延出部24と、上側延出部24の下方側に位置し略直線状に延びる下側延出部26と、上側延出部24と下側延出部26とを車両上下方向に沿って繋ぐ複数の連結部とを有する。上側延出部24と下側延出部26とは、側面視して略V字状を呈し、車両前方から車両後方にいくにつれて上下方向に沿った離間距離が大きくなっている。
【0015】
複数の連結部は、車両前方から車両後方に向かって、順に、第1連結部28a~第5連結部28eによって構成されている。第1連結部28aは、最も車両前方に位置し、上側延出部24の車両前端と下側延出部26の車両前端とを繋いでいる。第2連結部28bは、第1連結部28aよりも車両後方に位置し、上側延出部24の下端と下側延出部26の上端とを繋いでいる。
【0016】
第3連結部28cは、第2連結部28bよりも車両後方に位置し、上側延出部24の中央下端と下側延出部26の中央上端とを繋いでいる。第4連結部28dは、第3連結部28cよりも車両後方に位置し、上側延出部24の下端と下側延出部26の上端とを繋いでいる。第5連結部28eは、複数の連結部の中で最も車両後方に位置し、上側延出部24の後方側下端と下側延出部26の後方側上端とを繋いでいる。
【0017】
側突パッド22は、車両構成部材である前側ドア10に内設され(図2参照)、車両の内部又は外部からの衝撃を吸収することが可能に設けられている。
【0018】
側突パッド22は、ブロー成形によって一体に形成された熱可塑性樹脂によって構成されている。また、側突パッド22は、内部に断面矩形状の中空部30(図2参照)が設けられた本体部32と、本体部32の上部に設けられた上側取付部34と、本体部32の下部に設けられた下側取付部36とを有している(図4(a)参照)。
【0019】
図4(a)に示されるように、上側取付部34は、車両上方に向かって伸長する上部伸長部38と、上部伸長部38の下端に連続し本体部32側にいくにつれて車両前後方向の幅寸法が増大する一対の裾部40とによって構成されている。上部伸長部38の上端は、曲線状に面取りされた面取り部42を有している。図3に示されるように、この上側取付部34は、ドアスティフナ20の上側延出部24の車両後方側であって、第5連結部28eよりも車両後方に位置する部位に取り付けられている。
【0020】
図4(a)に示されるように、下側取付部36は、下方に向かって延びる複数の突起部を有し、車両前方から車両後方に向かって順に、第1突起部44a~第3突起部44cによって構成されている。第1突起部44aと第2突起部44bとの間、及び、第2突起部44bと第3突起部44cとの間には、側面視して略U字状の凹部46がそれぞれ設けられている。図3に示されるように、この下側取付部36は、ドアスティフナ20の下側延出部26の車両後方側であって、第5連結部28eよりも車両後方に位置する部位に取り付けられている。
【0021】
図2に示されるように、側突パッド22は、中空部30を間にして車幅方向に沿って互いに対向し、車幅方向内側に設けられた内側壁部(一方の壁部)48と、車幅方向外側に設けられた外側壁部(他方の壁部)50とを有する。内側壁部48及び外側壁部50には、それぞれ中空部30側に向かって凹ませた複数の凹状リブ52(図4(b)参照)が設けられている。
【0022】
図4(a)に示されるように、本体部32には、内側壁部48と外側壁部50との離間間隔が大きい厚肉部54と、内側壁部48と外側壁部50との離間間隔が小さい薄肉部56とを有している。薄肉部56は、車両前方側に位置し上下方向に沿って縦長の矩形状を呈する第1薄肉部58aと、車両後方の上側角部に位置する第2薄肉部58bとから構成されている。第1薄肉部58aと厚肉部54との境界部位には、上下方向に沿って略直線状に延在する前側段差部60が設けられている。また、第2薄肉部58bと厚肉部54との境界部位には、複合曲線状の後側段差部62が設けられている。
【0023】
図3に示されるように、第1薄肉部58aは、ドアスティフナ20の第5連結部28eの車両後方側と上下方向に沿って係合するように配置されている。
【0024】
第1薄肉部58aには、上下方向に沿って離間する2つの凹状リブ64が配置されている。第2薄肉部58bには、第2薄肉部58bの角部と対向し厚肉部54との境界部位に位置する単一の凹状リブ64が配置されている。
【0025】
図4(a)に示されるように、厚肉部54の略中央部には、車両前後方向に沿って離間する2つの凹状リブ66a、66bが配置されている。また、厚肉部54の下方側には、車両前後方向に沿って離間する2つの凹状リブ64が配置されている。
【0026】
各凹状リブ64、66a、66bは、各壁部(内側壁部48、外側壁部50)に対して円周状の壁面68と、この壁面68に囲まれた底面70とを有している(図5(a)、図5(b)参照)。複数の凹状リブ64のうち、厚肉部54の略中央部に配置された2つの凹状リブ66a、66bにおいて、この底面70と壁面68との接続部72には、凸状部74が部分的に設けられている(図4(a)参照)。この凸状部74は、周方向に沿って約180度の離間角度を有して互いに対向するように2箇所配置されている。
【0027】
図4(b)、図5(a)、及び、図5(b)に示されるように、凸状部74は、円弧状稜線部76と、天板部78と、円弧状周面部80とによって構成されている。円弧状稜線部76は、円周状の壁面68から底面70の中心O(図5(a)参照)に向かって突出し、平面視して半円弧状に湾曲するように設けられている。天板部78は、円弧状稜線部76と壁面68とによって囲繞された平坦面で構成されている。
【0028】
円弧状周面部80は、円弧状稜線部76から底面70(接続部72)に向かって立ち下がって底面70(接続部72)に連続すると共に、円弧状稜線部76に沿って周方向に連続するように設けられている。凸状部74の天板部78は、壁面68と底面70との接続部72から、壁面68の所定の高さ寸法Hの位置まで延びている。
【0029】
厚肉部54の略中央部に配置された2つの凹状リブ66a、66bのうち、車両前方に位置する凹状リブ66aには、一方の内側壁部48と他方の外側壁部50とを繋ぐ側壁の少なくとも一部を開放するように切り欠かれて構成された開放部82が設けられている(図4(b)参照)。この開放部82には、互いに対向配置された凸状部74の一つが配置されている。
【0030】
本実施形態に係る衝撃吸収機構18は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0031】
本実施形態において、側突パッド22の互いに対向する一方の内側壁部48と他方の外側壁部50には、中空部30側に向かって凹ませた凹状リブ52がそれぞれ設けられている。この凹状リブ52は、各壁部(内側壁部48、外側壁部50)に対して円周状の壁面68と、この壁面68に囲まれた底面70とを有している。複数の凹状リブ52のうち、厚肉部54の略中央部に配置された2つの凹状リブ66a、66bにおいて、底面70と壁面68との接続部72には、凸状部74が部分的に設けられている。
【0032】
図6は、前側ドアに対する側突荷重入力時の側突パッドの変位量と荷重との関係を示す特性図である。図6において、太線実線Aは、本実施形態に係る荷重特性曲線を示したものであり、細線実線Bは、凹状リブ内に凸状部が設けられていない比較例に係る荷重特性曲線を示したものである。
【0033】
図6に示されるように、凸状部74を有しない比較例(細線実線B)では、ある程度の荷重に達すると変位量だけが増大して荷重が大きくならない、という不具合がある。
【0034】
これに対して、本実施形態では、底面70と壁面68との接続部72に、凸状部74を部分的に設けることで、側突パッド22が完全に潰れる前の段階において踏ん張ることが可能となり(図6に示す荷重特性曲線AのR領域参照)、側突荷重の荷重特性曲線Aの立ち上がりを大きくすることができる。この結果、本実施形態では、側突パッド22に入力される側突荷重をコントロールすることが可能となり、従来と比較して、側突荷重の吸収性能をより一層向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態において、複数の凹状リブ52のうち、厚肉部54の略中央部に配置された2つの凹状リブ66a、66bにおいて、凸状部74は、互いに対向するように2箇所配置されている。
【0036】
本実施形態では、互いに対向するように凸状部74を2箇所配置することで、側突荷重を互いに共働して且つ分散して吸収することができ、側突荷重の荷重特性曲線Aの立ち上がりをより大きくすることができる。
【0037】
本実施形態において、凸状部74は、壁面68と底面70との接続部72から、壁面68の所定の高さ寸法Hの位置まで延びている。換言すると、凸状部74の天板部78は、壁面68と底面70との接続部72から、壁面68の所定の高さ寸法Hの位置まで延びている(図5(b)参照)。
【0038】
本実施形態では、凸状部74の天板部78を、壁面68と底面70との接続部72から、壁面68の所定の高さ寸法Hの位置まで延ばすことで、所望の側突荷重吸収特性(図6の荷重特性曲線A参照)を得ることができる。
【0039】
本実施形態において、厚肉部54の略中央部に配置された2つの凹状リブ66a、66bのうち、車両前方に位置する凹状リブ66aには、一方の内側壁部48と他方の外側壁部50とを繋ぐ側壁の少なくとも一部を開放するように切り欠かれて構成された開放部82が設けられている。この開放部82には、互いに対向配置された凸状部74の一つが配置されている。
【0040】
本実施形態では、開放部82に凸状部74の一つを配置することで、他の部位と比較して脆弱部となる開放部82を凸状部74によって補強することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 前側ドア(車両構成部材)
22 側突パッド(衝撃吸収部材)
30 中空部
48 内側壁部(壁部)
50 外側壁部(壁部)
52、64、66a、66b 凹状リブ
68 壁面
70 底面
72 接続部
74 凸状部
82 開放部
A、B 荷重特性曲線
H 高さ寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6