(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025861
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20240220BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240220BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240220BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20240220BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240220BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20240220BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20240220BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20240220BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L9/00
C08K3/36
C08L45/00
C08L65/00
C08L93/04
C08L57/02
C08L101/12
B60C1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129188
(22)【出願日】2022-08-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 慶介
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA05
3D131BA12
3D131BA18
3D131BC19
3D131BC33
3D131BC51
4J002AA014
4J002AC031
4J002AC035
4J002AC065
4J002AC082
4J002AC083
4J002AF024
4J002BA014
4J002BB155
4J002BB175
4J002BB185
4J002BK004
4J002CE004
4J002DJ016
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD200
4J002FD205
4J002FD344
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性およびウェット性能に優れると共に、成形加工性にも優れるようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】 スチレンブタジエンゴム(A)、スチレンブタジエンゴム(B)およびブタジエンゴムからなるジエン系ゴム100質量部に、シリカを50~150質量部、熱可塑性樹脂を10~80質量部配合したゴム組成物であって、前記ジエン系ゴム100質量%中、前記ブタジエンゴムが30質量%以上、前記スチレンブタジエンゴム(A)が15~35質量%、前記スチレンブタジエンゴム(B)が前記スチレンブタジエンゴム(A)の1~2質量倍であり、前記スチレンブタジエンゴム(A)のガラス転移温度が-75℃~-50℃、前記スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量が前記スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量の2倍以上であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴム(A)、スチレンブタジエンゴム(B)およびブタジエンゴムからなるジエン系ゴム100質量部に、シリカを50~150質量部、熱可塑性樹脂を10~80質量部配合したゴム組成物であって、前記ジエン系ゴム100質量%中、前記ブタジエンゴムが30質量%以上、前記スチレンブタジエンゴム(A)が15~35質量%、前記スチレンブタジエンゴム(B)が前記スチレンブタジエンゴム(A)の1~2質量倍であり、前記スチレンブタジエンゴム(A)のガラス転移温度が-75℃~-50℃、前記スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量が前記スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量の2倍以上であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量が30万~60万であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記スチレンブタジエンゴム(B)のガラス転移温度が-30℃より低いことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、そのガラス転移温度が40℃~120℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
さらに、液状ポリマーを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド部を有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性、ウェット性能および成形加工性に優れたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
北米市場向けタイヤには、耐摩耗性およびウェット性能を高いレベルで両立することが求められる。トレッドを形成するゴム組成物にガラス転移温度が高いジエン系ゴムを使用することによりウェット性能を向上しようとすると、耐摩耗性が低下するため両者を兼備したタイヤを得ることは、従来、困難であった。また、高分子量のジエン系ゴムを使用して耐摩耗性を向上しようとすると、ゴム組成物の粘度が高くなり成形加工性が悪化する。逆に低分子量のジエン系ゴムを使用して粘度を低くしようとすると耐摩耗性が低下するという課題がある。
【0003】
特許文献1は、湿潤スキッド抵抗、低転がり抵抗性および摩耗特性を良好にするため、(A)-85℃~-50℃のガラス転移温度(Tg)を有する溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約20~約100phr;(B)天然ゴムまたは合成ポリイソプレン0~約40phr;(C)-110℃~-90℃のTgを有するシス-1,4ポリブタジエン0~約30phr;(D)プロセス油0~50phr;(E)少なくとも30℃のTgを有する炭化水素樹脂20~80phr;および(F)シリカ90~150phrを含む加硫可能なゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤを提案する。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された発明では、耐摩耗性およびウェット性能を高いレベルで兼備し、かつ成形加工性を優れたものにする効果が必ずしも十分に得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐摩耗性およびウェット性能を高いレベルで兼備し、かつ粘度が低く成形加工性が良好なタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム(A)、スチレンブタジエンゴム(B)およびブタジエンゴムからなるジエン系ゴム100質量部に、シリカを50~150質量部、熱可塑性樹脂を10~80質量部配合したゴム組成物であって、前記ジエン系ゴム100質量%中、前記ブタジエンゴムが30質量%以上、前記スチレンブタジエンゴム(A)が15~35質量%、前記スチレンブタジエンゴム(B)が前記スチレンブタジエンゴム(A)の1~2質量倍であり、前記スチレンブタジエンゴム(A)のガラス転移温度が-75℃~-50℃、前記スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量が前記スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量の2倍以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記構成にしたので、耐摩耗性およびウェット性能を高いレベルで兼備し、かつ粘度が低く成形加工性を良好にすることができる。
【0009】
前記スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量が30万~60万であるとよい。また、前記スチレンブタジエンゴム(B)のガラス転移温度が-30℃より低いことが好ましい。
【0010】
前記熱可塑性樹脂は、そのガラス転移温度が40℃~120℃であるとよく、また、テルペン、テルペンフェノール、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであるとよい。
【0011】
タイヤ用ゴム組成物は、さらに、液状ポリマーを含むとよい。
【0012】
上述したタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド部を有するタイヤは、耐摩耗性およびウェット性能を高いレベルで兼備し、かつ成形加工性が良好で高品質のタイヤを安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて成形したタイヤの実施形態を例示するタイヤ子午線方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッド部やサイド部に好適に用いることができる。なお、タイヤは、空気入りタイヤ、非空気式タイヤのいずれでもよい。
図1は、空気入りタイヤの実施形態の一例を示す断面図である。空気入りタイヤは、トレッド部1、サイド部2、ビード部3からなる。
【0015】
図1において、左右のビード部3間にタイヤ径方向に延在する補強コードをタイヤ周方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のカーカス層4が延設され、その両端部がビード部3に埋設したビードコア5の周りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。カーカス層4の内側にはインナーライナー層7が配置されている。トレッド部1のカーカス層4の外周側には、タイヤ周方向に傾斜して延在する補強コードをタイヤ軸方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のベルト層8が配設されている。この2層のベルト層8の補強コードは層間でタイヤ周方向に対する傾斜方向、すなわちコード方向を互いに逆向きにして交差している。ベルト層8の外周側には、ベルトカバー層9が配置されている。ベルトカバー層9は、ベルト層全体を覆うフルカバータイプ、ベルト層のタイヤ幅方向端部を覆うエッジカバータイプのいずれでもよく、両タイプを組み合わせてもよい。このベルトカバー層9の外周側に、トレッド部1が配置され、トレッド部1は、キャップトレッド10aおよびアンダートレッド10bからなる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、トレッド部1やサイド部2に好ましく用いられ、より好ましくはキャップトレッド10aやアンダートレッド10bに用いられるとよい。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムがスチレンブタジエンゴム(A)、スチレンブタジエンゴム(B)およびブタジエンゴムからなる。スチレンブタジエンゴム(A)は、そのガラス転移温度が-75℃~-50℃であり、その重量平均分子量がスチレンブタジエンゴム(B)より小さい。スチレンブタジエンゴム(A)を含むことにより、ゴム組成物の粘度を低くし成形加工性を良好にすることができる。
【0017】
スチレンブタジエンゴム(A)のガラス転移温度(以下、「Tg」と記載することがある。)は、好ましくは-75℃~-50℃、より好ましくは-70℃~-55℃であるとよい。本明細書において、Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件により得られたサーモグラムから転移域の中点の温度として測定することができる。また、ジエン系ゴムが油展品であるときは、油展成分(オイル)を含まない状態におけるジエン系ゴムのTgとする。
【0018】
スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量は、好ましくは30万~60万、より好ましくは32万~58万であるとよい。スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量をこのような範囲内にすることにより、ゴム組成物の粘度を一層低くし成形加工性を良好にすることができる。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値とすることができる。
【0019】
スチレンブタジエンゴム(A)は、そのスチレン含有量が好ましくは3~35質量%、より好ましくは5~30質量%であるとよい。スチレン含有量が3質量%未満であるとウェット性能が低下する虞があり、スチレン含有量が35質量%を超えると耐摩耗性能が低下する虞があり、いずれも好ましくない。本明細書において、スチレン含有量は1H-NMRにより測定する値とする。
【0020】
スチレンブタジエンゴム(A)は、そのビニル含有量が好ましくは5~60%、より好ましくは10~55%であるとよい。ビニル含有量が5%未満であるとウェット性能が低下する虞があり、ビニル含有量が60%を超えると耐摩耗性能が低下する虞があり、いずれも好ましくない。本明細書において、ビニル含有量は1H-NMRにより測定する値とする。
【0021】
スチレンブタジエンゴム(A)は、未変性のスチレンブタジエンゴムでも変性スチレンブタジエンゴムでもよい。変性スチレンブタジエンゴムの場合、少なくとも1つの末端が官能基で変性されているとよい。官能基として、例えばエポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、アミド基、オキシシリル基、シラノール基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、カルボニル基、アルデヒド基等が挙げられ、なかでもポリオルガノシロキサン構造またはアミノシラン構造を有するものが好ましく挙げられる。ポリオルガノシロキサン構造またはアミノシラン構造を有する官能基を有することにより、シリカの分散性を良好にし、耐摩耗性およびウェット性能を優れたものにすることができる。
【0022】
スチレンブタジエンゴム(A)は、ジエン系ゴム100質量%中15~35質量%、好ましくは17~33質量%、より好ましくは22~28質量%である。スチレンブタジエンゴム(A)が15質量%未満であると、ゴム組成物の粘度を低くして成形加工性を改良する効果が十分に得られない。また、35質量%を超えると、スチレンブタジエンゴム(B)とブタジエンゴムのバランスからゴム組成物の粘度を低くして成形加工性を改良する効果が十分に得られない。
【0023】
タイヤ用ゴム組成物は、その重量平均分子量がスチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量の2倍以上であるスチレンブタジエンゴム(B)を含有する。スチレンブタジエンゴム(B)を含むことにより、ゴム組成物の耐摩耗性を改良することができる。また、スチレンブタジエンゴム(B)のTgが、スチレンブタジエンゴム(A)のTgより高いことからウェット性能を改良することができる。
【0024】
スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量は、スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量の2倍以上であり、好ましくは60万以上、より好ましくは70万~160万、さらに好ましくは80万~150万であるとよい。スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量をこのような範囲にすることによりゴム組成物の耐摩耗性を一層向上することができる。
【0025】
スチレンブタジエンゴム(B)のTgは、好ましくは-30℃より低いとよく、より好ましくは-70℃~-31℃、さらに好ましくは-60℃~-32℃であるとよい。ただし、スチレンブタジエンゴム(B)のTgは、スチレンブタジエンゴム(A)のTgより高いとよい。スチレンブタジエンゴム(B)のTgをこのような範囲にすることにより、ゴム組成物のウェット性能を改良することができ、好ましい。
【0026】
スチレンブタジエンゴム(B)は、そのスチレン含有量が好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~45質量%であるとよい。スチレン含有量が5質量%未満であるとウェット性能が低下する虞があり、スチレン含有量が50質量%を超えると耐摩耗性能が低下する虞があり、いずれも好ましくない。
【0027】
スチレンブタジエンゴム(B)は、そのビニル含有量が好ましくは5~70%、より好ましくは10~65%であるとよい。ビニル含有量が5%未満以上であるとウェット性能が低下する虞があり、ビニル含有量が70%を超えると耐摩耗性能が低下する虞があり、いずれも好ましくない。
【0028】
スチレンブタジエンゴム(B)の含有量は、スチレンブタジエンゴム(A)の含有量の1~2質量倍であり、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは15~70質量%、好ましくは25~60質量%、より好ましくは30~55質量%である。スチレンブタジエンゴム(B)がスチレンブタジエンゴム(A)より少ないとゴム組成物の耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。また、スチレンブタジエンゴム(B)がスチレンブタジエンゴム(A)の2質量倍を超えると、ゴム組成物の粘度を低くして成形加工性を改良する効果が十分に得られない。
【0029】
タイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムをジエン系ゴム100質量%中、30質量%以上、好ましくは33~50質量%、好ましくは35~45質量%含有する。ブタジエンゴムが30質量%未満であると、耐摩耗性が低下する。またブタジエンゴムを50質量%以下にすることにより、シリカを良好に分散性しやすくなり、良好なウェット性能を確保することができる。ブタジエンゴムの種類は、特に制限されるものではなく、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられるものを使用することができる。
【0030】
タイヤ用ゴム組成物は、天然ゴムを含有しないことが好ましい。天然ゴムを含有しないことにより、ウェット性能が向上する傾向があり好ましい。なお、天然ゴムを含有しないこととは、タイヤ用ゴム組成物に天然ゴムを積極的に配合しないという意味である。例えば、天然ゴムを含有する他のゴム組成物の端材等を再利用、すなわち工程内リサイクルするため、タイヤ用ゴム組成物の調製時に配合し、その結果、少量の天然ゴムを含有することになってもよい。上記の場合、天然ゴムは、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~4質量%であるとよい。
【0031】
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部にシリカを50~150質量部、好ましくは60~140質量部、より好ましくは70~130質量部配合する。シリカを配合することにより、ウェット性能を向上させることができる。シリカが50質量部未満であるとウェット性能を向上する効果が十分に得られない。またシリカが150質量部を超えると成形加工性が低下する。
【0032】
シリカとして、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるものを用いるとよく、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカ(デュアル・フェイズ・フィラー)、シランカップリング剤又はポリシロキサンなどシリカとゴムの両方に反応性或いは相溶性のある化合物で表面処理したシリカなどを使用することができる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法シリカが好ましい。
【0033】
また、シリカとともに、シランカップリング剤を配合することによりシリカの分散性を向上し、ウェット性能がさらに改善されるので好ましい。シランカップリング剤の種類は、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましく、例えばビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及びエボニック社製のVP Si363等特開2006-249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物等、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0034】
シランカップリング剤は、シリカの質量に対し好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%配合するとよい。シランカップリング剤がシリカ質量の3質量%未満の場合、シリカの分散性を向上する効果が十分に得られない。また、シランカップリング剤が20質量%を超えると、ジエン系ゴム成分がゲル化し易くなる傾向があるため、所望の効果を得ることができなくなる。
【0035】
タイヤ用ゴム組成物は、シリカ以外の他の充填剤を配合することにより、ゴム組成物の強度を高くし、タイヤ耐久性を確保することができる。他の充填剤として、例えばカーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレイ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウム等の無機フィラーや、セルロース、レシチン、リグニン、デンドリマー等の有機フィラーを例示することができる。
【0036】
なかでもカーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物の強度を優れたものにし耐摩耗性を向上することができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのカーボンブラックを種々の酸化合物等で化学修飾を施した表面処理カーボンブラックも用いることができる。
【0037】
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に熱可塑性樹脂を10~80質量部、好ましくは12~78質量部、より好ましくは15~75質量部配合する。熱可塑性樹脂を配合することにより、耐摩耗性を改良することができ、スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量が小さいときも耐摩耗性の低下を抑制することができる。また熱可塑性樹脂の可塑剤的な作用により成形加工性が良化すると共に、ゴム組成物のTgが高くなりウェット性能が向上する。熱可塑性樹脂が10質量部未満であると、耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。熱可塑性樹脂が80質量部を超えると、耐摩耗性を改良する作用が却って低下する。
【0038】
熱可塑性樹脂とは、タイヤ用ゴム組成物へ通常配合する樹脂であり、分子量が数百から数千くらいで、タイヤ用ゴム組成物に粘着性を付与する作用を有する。熱可塑性樹脂として、例えばテルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂が好ましい。例えば、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂などの天然樹脂、C5成分、C9成分からなる石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0039】
テルペン系樹脂としては、例えばα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、水添リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えばガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジンおよびフマル化ロジン等の変性ロジン、これらのロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステルおよびトリエチレングリコールエステルなどのエステル誘導体、並びにロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0040】
石油系樹脂としては、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂が挙げられ、例えばC5系石油樹脂(イソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C9系石油樹脂(α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C5C9共重合石油樹脂などが例示される。
【0041】
熱可塑性樹脂は、そのガラス転移温度が好ましくは40℃~120℃、好ましくは45℃~115℃、より好ましくは50℃~110℃であるとよい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度を40℃以上にすることにより、ドライグリップ性能が向上し好ましい。また。120℃以下にすることにより、耐摩耗性が向上し好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、上述した方法で測定することができる。
【0042】
タイヤ用ゴム組成物は、好ましくは液状ポリマーを配合するとよい。液状ポリマーを配合することにより、耐摩耗性能が向上する。液状ポリマーは、ジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは0~30質量部、より好ましくは3~25質量部配合するとよい。液状ポリマーが30質量部を超えると、ウェット性能が低下する。液状ポリマーとして、例えば液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα-オレフィン、液状エチレンプロピレン共重合体および液状エチレンブチレン共重合体等を挙げることができる。
【0043】
タイヤ用ゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。タイヤ用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって調製することができる。
【0044】
タイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッド部やサイド部を形成するのに好適であり、とりわけ高性能タイヤのトレッド部を形成するのに好適である。これにより得られたタイヤは、耐摩耗性およびウェット性能を高いレベルで兼備し、かつ成形加工性が良好で高品質のタイヤを安定して得ることができる。
【0045】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0046】
表6に示す共通の添加剤処方を有し、表1~5に示す配合からなる33種類のタイヤ用ゴム組成物(標準例、実施例1~20、比較例1~12)を調製するに当たり、それぞれ硫黄および加硫促進剤を除く成分を秤量し、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、そのマスターバッチをミキサー外に放出し室温冷却した。このマスターバッチを同バンバリーミキサーに供し、硫黄および加硫促進剤を加えて混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。表中、SBR(B)-1およびSBR(B)-2は、37.5質量部の油展品であるため、下段の括弧内に油展成分抜きの配合量を記載した。なお、表6の添加剤処方は、表1~5に記載したジエン系ゴム100質量部に対する質量部で記載している。
【0047】
上記で得られたタイヤ用ゴム組成物のムーニー粘度を以下の方法で測定した。またタイヤ用ゴム組成物をそれぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して評価用試料を作製した。得られた評価用試料を使用し、動的粘弾性(0℃の損失正接tanδ)、耐摩耗性を以下の方法で測定した。
【0048】
ムーニー粘度(ML1+4)
タイヤ用ゴム組成物のムーニー粘度をJIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。得られた結果は、標準例の値を100とする指数で表わし表1~5の「成形加工性(粘度)」の欄に示した。この指数が小さいほど粘度が小さく、成形加工性に優れることを意味する。
【0049】
動的粘弾性(0℃の損失正接tanδ)
タイヤ用ゴム組成物の評価用試料の動的粘弾性を、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件にて測定し、0℃の損失正接tanδを求めた。得られた結果は、標準例の値を100とする指数で表わし表1~5の「ウェット性能」の欄に示した。この指数が大きいほど、0℃のtanδが大きくウェット性能に優れることを意味する。
【0050】
耐摩耗性
得られたタイヤ用ゴム組成物の評価用試料をJIS K6264に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所株式会社製)を使用して、荷重15.0kg(147.1N)、スリップ率25%の条件にて、摩耗量を測定した。得られた結果それぞれの逆数を算出し、標準例の摩耗量の逆数を100にする指数として表1~5の「耐摩耗性」の欄に記載した。この指数が大きいほど、摩耗量が少なく耐摩耗性に優れていることを意味する。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
表1~5において使用した原材料の種類を下記に示す。
・SBR(A)-1:ポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性のスチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS612、ガラス転移温度が-60℃、重量平均分子量が45万、スチレン含有量が15質量%、ビニル含有量が30%、非油展品。
・SBR(A)-2:下記の重合方法により得られたポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性のスチレンブタジエンゴム、ガラス転移温度が-70℃、重量平均分子量が45万、スチレン含有量が18質量%、ビニル含有量が13%、非油展品。
・SBR(A)-3:スチレンブタジエンゴム、旭化成社製タフデンE1000、ガラス転移温度が-73℃、重量平均分子量が29万、スチレン含有量が18質量%、ビニル含有量が12%、37.5質量部の油展品。
・SBR(B)-1:変性スチレンブタジエンゴム、旭化成社製タフデンE581、ガラス転移温度が-34℃、重量平均分子量が126万、スチレン含有量が36質量%、ビニル含有量が42%、37.5質量部の油展品。
・SBR(B)-2:変性スチレンブタジエンゴム、旭化成社製タフデンE680、ガラス転移温度が-25℃、重量平均分子量が147万、スチレン含有量が36質量%、ビニル含有量が57%、37.5質量部の油展品。
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol BR1220、ガラス転移温度が-105℃、重量平均分子量が46万。
・カーボンブラック:OCIカンパニー社製DASHBLACK N220
・シリカ:ソルベイ社製ZEOSIL 195MP
・熱可塑性樹脂-1:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO-125、ガラス転移温度が79℃
・熱可塑性樹脂-2:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO-105、ガラス転移温度が57℃
・樹脂-3:C9樹脂、ENEOSE社製ネオポリマーS100、ガラス転移温度が58℃
・樹脂-4:C5C9樹脂、ENEOSE社製ネオポリマー170S、ガラス転移温度が105℃
・オイル:シェルルブリカンツジャパン社製エキストラクト4号S
・カップリング剤:シランカップリング剤、Evonik Degussa社製 Si69
【0057】
SBR(A)-2の重合方法
窒素置換された800mlアンプル瓶に、シクロヘキサン70.0g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.77mmolを添加し、さらに、n-ブチルリチウム7.69mmolを添加した。次いで、イソプレン27.9g、およびスチレン2.1gをゆっくりと添加し、温度50℃としたアンプル瓶内で120分間反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロックを得た。
攪拌機付きオートクレープに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、テトラメチルエチレンジアミン1.50mmol、1,3ーブタジエン445g、およびスチレン155gを仕込んだ後、上記にて得られた活性末端を有する重合体ブロックを全量加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから10分経過後、1,3-ブタジエン355g、およびスチレン40gを60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は75℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、下記式(I)で表されるポリオルガノシロキサンを、40質量%濃度のキシレン溶液の状態にて、2.44g添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴム(SBR(A)-2)を得た。
【化1】
上記式(I)において、mは80、kは120、X
1、X
4、R
1~R
3およびR
5~R
8はメチル基、X
2は下記式(II)で表される基である(ここで、*は結合位置を表す)。
【化2】
【0058】
【0059】
表6において使用した原材料の種類を下記に示す。
・老化防止剤:LANXESS社製VULANOX 4020
・ワックス:NIPPON SEIRO社製 OZOACE-0015A
・亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・加硫促進剤-1:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ‐G
・加硫促進剤-2:住友化学社製ソクシノールD‐G
・硫黄:鶴見化学工業社製サルファックス5
【0060】
表1~3から明らかなように、実施例1~20のタイヤ用ゴム組成物は、耐摩耗性、ウェット性能が優れ、かつ成形加工性(ムーニー粘度)にも優れることが確認された。
【0061】
表4から明らかなように、比較例1のタイヤ用ゴム組成物は、SBR(A)が15質量部未満、SBR(B)/SBR(A)の質量比が2を超えるので、ウェット性能が低く、成形加工性(ムーニー粘度)を改良することもできない。
比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、SBR(A)が35質量部を超えるので、成形加工性(ムーニー粘度)を改良することができない。
比較例3のタイヤ用ゴム組成物は、シリカが50質量部未満なので、ウェット性能を改良することができない。
比較例4のタイヤ用ゴム組成物は、シリカが150質量部を超えるので、成形加工性(ムーニー粘度)を改良することができない。
比較例5のタイヤ用ゴム組成物は、熱可塑性樹脂が10質量部未満なので、成形加工性(ムーニー粘度)を改良することができない。
比較例6のタイヤ用ゴム組成物は、熱可塑性樹脂が80質量部を超えるので、成形加工性(ムーニー粘度)を改良することができない。
【0062】
表5から明らかなように、比較例7のタイヤ用ゴム組成物は、SBR(A)が15質量部未満なので、ウェット性能を改良することができない。
比較例8のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムが30質量部未満なので、成形加工性(ムーニー粘度)、耐摩耗性を改良することができない。
比較例9のタイヤ用ゴム組成物は、SBR(B)を含有しないので、耐摩耗性、ウェット性能を改良することができない。
比較例10のタイヤ用ゴム組成物は、SBR(A)を含有しないので、成形加工性(ムーニー粘度)が悪化する。
比較例11のタイヤ用ゴム組成物は、SBR(B)/SBR(A)の質量比が1未満なので、耐摩耗性を改良することができない。
比較例12のタイヤ用ゴム組成物は、SBR(B)/SBR(A)の質量比が2を超えるので、成形加工性(ムーニー粘度)を改良することができない。
【0063】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] スチレンブタジエンゴム(A)、スチレンブタジエンゴム(B)およびブタジエンゴムからなるジエン系ゴム100質量部に、シリカを50~150質量部、熱可塑性樹脂を10~80質量部配合したゴム組成物であって、前記ジエン系ゴム100質量%中、前記ブタジエンゴムが30質量%以上、前記スチレンブタジエンゴム(A)が15~35質量%、前記スチレンブタジエンゴム(B)が前記スチレンブタジエンゴム(A)の1~2質量倍であり、前記スチレンブタジエンゴム(A)のガラス転移温度が-75℃~-50℃、前記スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量が前記スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量の2倍以上であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
発明[2] 前記スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量が30万~60万であることを特徴とする発明[1]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[3] 前記スチレンブタジエンゴム(B)のガラス転移温度が-30℃より低いことを特徴とする発明[1]または[2]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[4] 前記熱可塑性樹脂が、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、そのガラス転移温度が40℃~120℃であることを特徴とする発明[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[5] さらに、液状ポリマーを含むことを特徴とする発明[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[6] 発明[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド部を有するタイヤ。