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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025863
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】歩行評価システムおよび歩行評価方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/06 20060101AFI20240220BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240220BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A63B71/06 J
A61B5/11 230
A61B5/22 100
A63B71/06 M
A63B71/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129190
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】草野 拳
(72)【発明者】
【氏名】市川 将
(72)【発明者】
【氏名】田川 武弘
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA12
4C038VA13
4C038VB11
4C038VB12
4C038VB40
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】歩行運動の量および質を手軽に計測して運動効果を推定できる技術を提供する。
【解決手段】歩行評価システム100において、質的測定値取得部40,80は、被検者が身に着ける計測デバイス20によって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくともストライドおよびピッチの測定値を取得する。質的結果決定部96は、所定の評価モデルとして、少なくともストライドの測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて歩行フォームの評価結果を決定する。ストライドの測定値は、測定された被検者のストライド平均の身長比である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する量的測定値取得部と、
前記被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくともストライドおよびピッチの測定値を取得する質的測定値取得部と、
前記量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する量的結果決定部と、
歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルと前記質的パラメータの測定値とに基づいて歩行フォームの評価結果を決定する質的結果決定部と、
前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする歩行評価システム。
【請求項2】
前記質的結果決定部は、前記所定の評価モデルとして、少なくともストライドの測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて前記歩行フォームの評価結果を決定することを特徴とする請求項1に記載の歩行評価システム。
【請求項3】
前記ストライドの測定値は、測定された前記被検者のストライド平均の身長比であることを特徴とする請求項1または2に記載の歩行評価システム。
【請求項4】
前記質的結果決定部は、前記所定の評価モデルとして、前記被検者のストライド身長比の帰属レベル別平均に対する割合に重みを加えた値と、前記被検者のピッチの帰属レベル別平均に対する割合の値との和を求める評価式を用いて前記歩行フォームの評価結果を決定することを特徴とする請求項1に記載の歩行評価システム。
【請求項5】
前記質的測定値取得部は、前記質的パラメータとしてさらに骨盤の動きの測定値を取得し、
前記質的結果決定部は、前記所定の評価モデルとして、少なくとも骨盤の動きの測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて前記歩行フォームの評価結果を決定することを特徴とする請求項1に記載の歩行評価システム。
【請求項6】
前記質的測定値取得部は、前記質的パラメータとしてさらに腕振り角度の測定値を取得し、
前記質的結果決定部は、前記所定の評価モデルとして、少なくとも腕振り角度の測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて前記歩行フォームの評価結果を決定することを特徴とする請求項1に記載の歩行評価システム。
【請求項7】
前記出力部は、前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果のうち少なくともいずれかが所定の目標達成条件を満たしたか否かの情報を含む前記歩行結果情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の歩行評価システム。
【請求項8】
前記出力部は、前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果に基づく身体部位別の運動効果に関する情報を含む前記歩行結果情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の歩行評価システム。
【請求項9】
被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する量的測定値取得部と、
前記被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくとも骨盤の動きおよびピッチの測定値を取得する質的測定値取得部と、
前記量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する量的結果決定部と、
歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルと前記質的パラメータの測定値とに基づいて歩行フォームの評価結果を決定する質的結果決定部と、
前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする歩行評価システム。
【請求項10】
被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する過程と、
前記被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくともストライドおよびピッチの測定値を取得する過程と、
前記量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する過程と、
歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルと前記質的パラメータの測定値とに基づいて歩行フォームの評価結果を決定する過程と、
前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を出力する過程と、
を備えることを特徴とする歩行評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行評価システムに関する。特に、歩行運動の効果を分析するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人々の健康志向の高まりにより、いわゆるウォーキングが人気を集めている。特に近年は、GPS(Global Positioning System)モジュールを内蔵したスマートフォンや腕時計の普及により、歩行運動のログ(以下、「歩行ログ」ともいう)を誰でも手軽に記録することができる。こうした歩行ログの活用は、ウォーキングを継続して習慣化する動機付けとなり、ウォーキングの人気を後押ししている。
【0003】
ここで、ユーザの筋力トレーニングの動作を撮影装置で撮影し、撮影画像から関節位置や角度を算出してトレーニング効果を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、膝関節などの身体に装着される装着部の伸縮を検出する伸縮センサの検出結果に基づいて装着部における運動エネルギーを算出する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-51173号公報
【特許文献2】特開2020-174946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歩行ログとして記録される情報は、主に歩行時間や歩行距離といった歩行量に関する情報である場合が多く、必ずしも歩行運動の質に関する情報であるとは限らない。この点、特許文献1の技術で歩行運動の質を評価するとしても、ユーザの運動を撮影できる特殊な環境が必要となり、手軽に屋外でユーザ自身が撮影できるものではない。また、特許文献2の技術で運動エネルギーを算出するとしても、伸縮する部位に専用の器具を装着しなければならず、手軽に歩行運動の質を計測できるとはいえない。
【0006】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、歩行運動の量および質を手軽に計測して運動効果を推定できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の歩行評価システムは、被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する量的測定値取得部と、被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくともストライドおよびピッチの測定値を取得する質的測定値取得部と、量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する量的結果決定部と、歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルと質的パラメータの測定値とに基づいて歩行フォームの評価結果を決定する質的結果決定部と、歩行量の評価結果および歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を出力する出力部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様もまた、歩行評価システムである。この歩行評価システムは、被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する量的測定値取得部と、被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくとも骨盤の動きおよびピッチの測定値を取得する質的測定値取得部と、量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する量的結果決定部と、歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルと質的パラメータの測定値とに基づいて歩行フォームの評価結果を決定する質的結果決定部と、歩行量の評価結果および歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を出力する出力部と、を備える。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、歩行評価方法である。この方法は、被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する過程と、被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくともストライドおよびピッチの測定値を取得する過程と、量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する過程と、歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルと質的パラメータの測定値とに基づいて歩行フォームの評価結果を決定する過程と、歩行量の評価結果および歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を出力する過程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歩行運動の量および質を手軽に計測して運動効果を推定できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】歩行評価システムの構成を示す図である。
図2】歩行評価システムの各構成を示す機能ブロック図である。
図3】歩行速度、ストライド、筋活動レベルの関係を示す図である。
図4】筋活動レベル推定値を表示する画面例を示す図である。
図5】質的パラメータとしての測定値を表示する画面例を示す図である。
図6】量的パラメータと質的パラメータに分けた運動効果を表示する画面例を示す図である。
図7】身体部位別の運動効果を表示する画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態、変形例では、同一または同等の構成要素には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、歩行評価システム100の構成を示す。歩行評価システム100は、歩行運動をする被検者10が身につけることができる腕時計型デバイス12、腰装着型デバイス14、情報端末型デバイス16と情報管理サーバ60とを備える。腕時計型デバイス12、腰装着型デバイス14、情報端末型デバイス16は、計測デバイス20として総称される。腕時計型デバイス12は、位置情報や動作情報等を計測し得るスポーツウォッチやスマートウォッチである。腰装着型デバイス14は、被検者10の腰付近に装着して位置情報や動作情報を計測し得るモーションセンサである。情報端末型デバイス16は、被検者10がポケット等に保持した状態で位置情報や動作情報を計測し得るスマートフォン等の携帯型情報端末である。なお、計測デバイス20は、腕時計型デバイス12、腰装着型デバイス14、情報端末型デバイス16といったデバイスに限られず、被検者の胸や手首、腰、腕の周りに巻いて位置情報や動作情報を取得できるベルト型デバイスであってもよい。その他、計測デバイス20としては様々なウェアラブルデバイスを用いることが考えられる。
【0014】
被検者10は、計測デバイス20として、腕時計型デバイス12、腰装着型デバイス14、情報端末型デバイス16のうち少なくともいずれか、または、すべてを身につけた状態で歩行運動をする。計測デバイス20は、情報管理サーバ60と通信を介して情報を同期する。ただし、計測デバイス20のうち、腕時計型デバイス12および腰装着型デバイス14が持つ通信手段は近距離無線通信であるため、情報管理サーバ60と直接通信するのではなく、情報端末型デバイス16(後に詳述する「情報端末50」としても機能する)との間で情報を同期し、情報端末50が情報管理サーバ60と情報を同期する形をとる。このように、腕時計型デバイス12および腰装着型デバイス14は、情報端末50への同期を介して情報管理サーバ60へ情報を送信するため、情報端末50を保有することを前提とする。ただし、歩行運動の実施中は必ずしも情報端末50を身につけていることを要さず、運動の実施後に情報端末50と同期できれば足りる。変形例として、腰装着型デバイス14は、近距離無線通信を介していったん腕時計型デバイス12と情報を同期し、腕時計型デバイス12がさらに近距離無線通信を介して情報端末型デバイス16(情報端末50)と情報を同期する形でもよい。
【0015】
被検者10は、計測デバイス20を身につけて歩行運動を実施するとともに、歩行運動の開始時に計測デバイス20のボタン等を操作して計測および歩行ログ記録を開始する。歩行運動の実施中において、計測デバイス20は、記録開始からの経過時間を歩行時間としてタイマーで計測し、所定の時間間隔で日時ごとの位置情報を記録する。計測デバイス20は、内蔵するモーションセンサにより単位時間あたりの歩数を計測する。計測デバイス20は、内蔵するモーションセンサにより腕振り角度、骨盤の動き、左右の歩行テンポ等の値をさらに計測する。
【0016】
被検者10は、計測デバイス20として、腕時計型デバイス12を身につける場合は、時間情報、位置情報、単位時間あたりの歩数、腕振り角度等の値を計測して歩行ログを記録する。被検者10は、計測デバイス20として、腰装着型デバイス14を身につける場合は、時間情報、位置情報、単位時間あたりの歩数、骨盤の動き(例えば、腰の回転角度、腰の左右の傾き、腰の前後の曲がり等)、左右の歩行テンポ等の値を計測して歩行ログを記録する。被検者10は、計測デバイス20として、情報端末型デバイス16を身につける場合は、時間情報、位置情報、単位時間あたりの歩数等の値を計測して歩行ログを記録する。
【0017】
歩行運動および歩行ログ記録の終了後に、計測デバイス20から情報管理サーバ60へ歩行時間や位置情報、歩数、腕振り角度、骨盤の動き、左右の歩行テンポ等の情報を歩行ログとして送信する。なお、計測デバイス20は、時間情報や位置情報に基づいて歩行時間や歩行距離、歩行速度等の情報を算出し、それら算出した情報を歩行ログに含めて情報管理サーバ60に送信してもよい。
【0018】
情報管理サーバ60は、インターネットに接続されて複数の被検者10の情報端末50とデータを送受信するサーバコンピュータである。情報管理サーバ60は、情報端末50から受信した被検者10の歩行ログデータとして時間情報、位置情報、単位時間あたりの歩数、腕振り角度等の測定値を被検者10の識別情報や属性情報とともに取得して、各測定値から算出される様々なデータや評価値とともに蓄積する。情報管理サーバ60は、情報端末50からのリクエストに応じて、蓄積した歩行ログデータや評価値等を情報端末50へ送信する。
【0019】
図2は、歩行評価システム100の各構成を示す機能ブロック図である。本実施形態における歩行評価システム100は、計測デバイス20、情報端末50、情報管理サーバ60により構成される。ただし、歩行評価システム100は、様々なハードウェア構成やソフトウェア構成にて実現することが考えられる。例えば、歩行評価システム100は情報端末50のみで構成されてもよいし、情報端末50と計測デバイス20の組み合わせで構成されてもよいし、情報端末50と情報管理サーバ60の組み合わせで構成されてもよい。あるいは、情報端末50と計測デバイス20と情報管理サーバ60の組み合わせで構成されてもよいし、計測デバイス20と情報管理サーバ60の組み合わせで構成されてもよいし、情報管理サーバ60のみで構成されてもよい。
【0020】
例えば、計測デバイス20としては様々な汎用的なデバイスを用いて歩行運動を計測して歩行ログとして記録することを前提に、情報端末50および情報管理サーバ60のみで歩行評価システム100を構成してもよいし、本図の情報端末50および情報管理サーバ60に含まれるソフトウェア構成をすべて含む単体の装置として実現してもよい。したがって、歩行評価システム100は、そのハードウェア構成の態様にかかわらず、少なくとも本図の情報端末50および情報管理サーバ60が持つソフトウェア構成を含んでいれば足りる。
【0021】
図2では、計測デバイス20、情報端末50、情報管理サーバ60に関して、それぞれ様々なハードウェア構成およびソフトウェア構成の連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。計測デバイス20は、例えばマイクロプロセッサ、メモリ、通信モジュール、測位モジュール、モーションセンサ等のハードウェアの組み合わせで構成される。情報端末50は、例えばマイクロプロセッサ、メモリ、ディスプレイ、通信モジュール、測位モジュール、モーションセンサ等のハードウェアの組み合わせで構成される。情報管理サーバ60は、例えばマイクロプロセッサ、メモリ、ディスプレイ、通信モジュール等のハードウェアの組み合わせで構成される。以下、計測デバイス20、情報端末50、情報管理サーバ60のそれぞれの機能を説明する。
【0022】
計測デバイス20は、例えば腰装着型デバイス14である。計測デバイス20は、通信部21、時間測定部22、位置測定部24、動作検出部26を有する。時間測定部22は、歩行開始時刻、すなわち計測開始時刻からの歩行時間をタイマーのカウントにより測定する。位置測定部24は、GPS(Global Positioning System)モジュールが衛星測位システムから受信する位置情報により現在位置を測定する。動作検出部26は、モーションセンサにより被検者10の歩行運動における歩数、骨盤の動き等を検出する。歩数の測定値は、単位時間あたりの歩数の他、左右の歩行テンポを含む。骨盤の動きの測定値は、骨盤ないし腰の回転角度、骨盤ないし腰の左右の傾き角度、骨盤ないし腰の前後の曲がり角度を含む。
【0023】
計測デバイス20として、腕時計型デバイス12や情報端末型デバイス16を用いることもできる。計測デバイス20として腕時計型デバイス12を用いる場合、腕時計型デバイス12の動作検出部26は、モーションセンサにより被検者10の歩行運動における歩数の他、腕振り角度等を検出する。計測デバイス20として情報端末型デバイス16を用いる場合、情報端末型デバイス16の動作検出部26は、モーションセンサにより被検者10の歩行運動における歩数を検出する。なお、情報端末50は、計測デバイス20としての情報端末型デバイス16を兼ねてよく、その場合、例えば一つのスマートフォン等の携帯端末により計測デバイス20および情報端末50の双方の機能をすべて有してもよい。情報端末50が計測デバイス20として兼用しない場合、情報端末50はスマートフォンに限らず、被検者10が所有するタブレット端末やパーソナルコンピュータであってもよい。
【0024】
情報端末50は、量的測定値取得部30、質的測定値取得部40、出力部51、通信部52を有する。量的測定値取得部30は、被検者10が身に着ける計測デバイス20によって測定された情報を通信部52を介して受け取る。量的測定値取得部30は、計測デバイス20から受け取った情報に基づき、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する。量的測定値取得部30は、時間取得部32、距離取得部34、速度取得部36を含む。
【0025】
時間取得部32は、歩行量を示す量的パラメータの一つとして、時間測定部22から受け取る情報に基づく被検者10の歩行時間を取得する。距離取得部34は、歩行量を示す量的パラメータの一つとして、位置測定部24から受け取る情報に基づく被検者10の歩行距離を取得する。速度取得部36は、歩行量を示す量的パラメータの一つとして、歩行時間および歩行距離に基づく被検者10の歩行速度を取得する。
【0026】
質的測定値取得部40は、被検者10が身に着ける計測デバイス20によって測定された情報を通信部52を介して受け取る。質的測定値取得部40は、計測デバイス20から受け取った情報に基づき、歩行フォームを示す質的パラメータとしてストライド、ピッチ、腕振り角度、骨盤の動き、歩行テンポ左右差等のうち少なくともいずれかの測定値を取得する。質的測定値取得部40は、ストライド取得部42、ピッチ取得部44、腕動作取得部46、腰動作取得部48、テンポ取得部49を含む。
【0027】
ストライド取得部42は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、位置測定部24および動作検出部26から受け取る情報に基づく被検者10のストライドを取得する。ここでいうストライドは、単位時間または単位距離あたりのストライドの平均値であってもよい。ピッチ取得部44は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、動作検出部26から受け取る情報に基づく被検者10のピッチ(またはケイデンスともいう)を取得する。ここでいうピッチは、単位時間または単位距離あたりのピッチの平均値であってもよい。
【0028】
腕動作取得部46は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、動作検出部26から受け取る情報に基づく被検者10の腕振り角度を取得する。腰動作取得部48は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、動作検出部26から受け取る情報に基づく被検者10の骨盤の動きを取得する。ここでいう「骨盤の動き」の測定値は、骨盤ないし腰の回転角度、骨盤ないし腰の左右の傾き角度、骨盤ないし腰の前後の曲がり角度を含んでもよい。テンポ取得部49は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、動作検出部26から受け取る情報に基づく被検者10の歩行テンポ左右差を取得する。ここでいう「歩行テンポ左右差」は、左足から右足へのピッチ間隔と右足から左足へのピッチ間隔との差であってもよい。
【0029】
出力部51は、量的測定値取得部30が取得した歩行量を示す量的パラメータ(歩行時間、歩行距離、歩行速度)の測定値と、質的測定値取得部40が取得した歩行フォームを示す質的パラメータ(ストライド、ピッチ、腕振り角度、骨盤の動き、歩行テンポ左右差)の測定値を画面に表示する。出力部51は、被検者10が歩行運動を実施している間に量的パラメータの測定値および質的パラメータの測定値の双方を画面に表示するようにしてもよいし、歩行運動の実施中は量的パラメータのみを画面に表示するようにしてもよい。出力部51は、量的パラメータの測定値および質的パラメータの測定値を、歩行運動の終了後に画面に表示するようにしてもよい。出力部51は、量的パラメータの測定値および質的パラメータの測定値を、歩行ログデータとして被検者10の属性情報とともに通信部52を介して情報管理サーバ60へ送信する。なお、出力部51は、計測デバイス20から取得した時間情報、位置情報、単位時間あたりの歩数、腕振り角度等の測定値を歩行ログとして情報管理サーバ60へ送信してもよいし、計測デバイス20から取得した各測定値とともに、歩行時間や歩行距離、歩行速度、ストライド、ピッチ等の情報をさらに歩行ログとして情報管理サーバ60に送信してもよい。
【0030】
情報管理サーバ60は、通信部62、ログ取得部64、量的測定値取得部70、質的測定値取得部80、結果決定部90、データ記憶部98、出力部99を有する。ログ取得部64は、通信部62を介して情報端末50から歩行ログデータを取得してデータ記憶部98に蓄積する。
【0031】
量的測定値取得部70は、ログ取得部64が取得した歩行ログデータに基づいて、歩行時間、歩行距離、歩行速度等の歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する。量的測定値取得部70は、時間取得部72、距離取得部74、速度取得部76を含む。
【0032】
時間取得部72は、歩行量を示す量的パラメータの一つとして、歩行ログデータに基づいて被検者10の歩行時間を取得する。距離取得部74は、歩行量を示す量的パラメータの一つとして、歩行ログデータに基づいて被検者10の歩行距離を取得する。速度取得部76は、歩行量を示す量的パラメータの一つとして、歩行ログデータに基づいて被検者10の歩行速度を取得する。
【0033】
質的測定値取得部80は、ログ取得部64が取得した歩行ログデータに基づいて、歩行フォームを示す質的パラメータとしてストライド、ピッチ、腕振り角度、骨盤の動き、歩行テンポ左右差等のうち少なくともいずれかの測定値を取得する。質的測定値取得部80は、ストライド取得部82、ピッチ取得部84、腕動作取得部86、腰動作取得部88、テンポ取得部89を含む。
【0034】
ストライド取得部82は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、歩行ログデータに基づいて被検者10のストライドを取得する。ピッチ取得部84は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、歩行ログデータに基づいて被検者10のピッチを取得する。腕動作取得部86は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、歩行ログデータに基づいて被検者10の腕振り角度を取得する。腰動作取得部88は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、歩行ログデータに基づいて被検者10の骨盤の動きを取得する。テンポ取得部89は、歩行フォームを示す質的パラメータの一つとして、歩行ログデータに基づいて被検者10の歩行テンポ左右差を取得する。
【0035】
結果決定部90は、属性取得部92、基準値算出部93、量的結果決定部94、質的結果決定部96、条件判定部97を含む。
【0036】
属性取得部92は、歩行ログデータまたは歩行ログデータに紐付けられた被検者10の識別情報に基づいて被検者10の属性情報をデータ記憶部98から取得する。属性情報は、例えば被検者10の年齢、性別、身長等の情報や、体力や健康度に関して被検者10が帰属するレベルの情報である。体力レベルは、例えば筋力、柔軟性(股関節、肩関節可動域)、握力、脚力(立ち座りテスト)、平衡力(閉眼片足立ち)、持久力等を包括的に測定した測定値に基づく。体力レベルは、その他、一般的に用いられる体力評価測定項目によって評価された体力レベルを含んでもよい。健康度レベルは、例えば健康診断の指標(身長体重BMI、血圧、血液指標)やストレス指標等を測定した測定値に基づく。
【0037】
基準値算出部93は、被検者10の各種測定値の比較対象となる基準値として、被検者10が帰属する属性別やレベル別の平均測定値を算出する。基準値算出部93は、例えば世代別、性別ごと、体力レベル別、健康度レベル別の平均値を算出する。
【0038】
量的結果決定部94は、量的測定値取得部70が取得した量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する。量的結果決定部94は、例えば歩行時間、歩行距離、歩行速度といった量的パラメータの測定値に基づいて、帰属レベル別平均値との比較で評価結果を決定してもよい。例えば、歩行時間が世代平均以上の場合に「運動量が多い」と評価してもよいし、歩行時間が世代平均以下の場合に「運動量が少ない」と評価してもよい。
【0039】
質的結果決定部96は、質的測定値取得部80が取得した質的パラメータの測定値と、歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルとに基づいて、歩行フォームの評価結果を決定する。歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルとしては、例えば特定の質的パラメータの数値がよいほど、運動効果が高い理想的なフォームに近づく場合に、その特定の質的パラメータに対する重み係数を大きくすることで、評価に反映しやすくした評価式が考えられる。また、運動効果に寄与する大きさと比例するように、質的パラメータごとの重み係数として異なる値を設定してもよい。
【0040】
質的結果決定部96は、所定の評価モデルとして、少なくともストライドの測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて歩行フォームの評価結果を決定する。質的結果決定部96は、所定の評価モデルとして、被検者10のストライド身長比の帰属レベル別平均に対する割合に重みを加えた値と、被検者10のピッチの帰属レベル別平均に対する割合の値との和を求める評価式を用いて歩行フォームの評価結果を決定してもよい。質的結果決定部96は、所定の評価モデルとして、少なくとも骨盤の動きの測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて歩行フォームの評価結果を決定してもよい。質的結果決定部96は、所定の評価モデルとして、少なくとも腕振り角度の測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて歩行フォームの評価結果を決定してもよい。評価モデルないし評価式については後述する。
【0041】
条件判定部97は、歩行量の評価結果および歩行フォームの評価結果のうち少なくともいずれかが所定の目標達成条件を満たしたか否かを判定する。近年、運動による健康増進を目的とする運動習慣を継続させるため、ゲーミフィケーションとも呼ばれる手法が用いられる。例えば、歩行距離や歩数からエネルギー消費量を算出し、体脂肪の減少量を推定して表示するに留まらず、一定条件を満たすたびに特定のゲームを進行させ、そのゲームの達成度合いに応じて割引き券やポイントを発行するといったゲーム的手法が考えられる。このような、ゲーム的要素として被検者10に提示する複数種類の目標達成条件のうちいずれかを満たしたか否かを条件判定部97が判定する。
【0042】
条件判定部97が判定する目標達成条件は、例えば歩行距離が1kmに達するごとに1ポイントを付与する条件でもよいし、歩数が100歩に達するごとに1ポイントを付与する条件でもよい。またポイント付与率を通常は1倍であるところ、歩行フォームの評価結果として好結果を獲得するごとにポイント付与率を1.1倍などに増加させることとしてもよい。その他の目標達成条件は、例えば「30分以上の歩行を5回実施すること」「太腿の運動効果で好結果を5回獲得すること」「3km以上の歩行を1回実施すること」「平均歩行速度が6km/hを5回実施すること」「腰周りの運動効果で好結果を5回獲得すること」「二の腕の運動効果で好結果を5回獲得すること」「10kmの歩行を1回実施すること」「歩行運動を10回実施すること」といった条件でもよい。また、これらの各種の目標達成条件を画面上で3x3の行列に表示し、縦横斜めの列のうちいずれかのマスの分だけ目標を達成したときにゲームがクリアとなるビンゴゲームのような方式で表示してもよい。
【0043】
出力部99は、歩行量の評価結果および歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を、通信部62を介して情報端末50へ出力する。また、出力部99は、歩行量の評価結果および歩行フォームの評価結果のうち少なくともいずれかが所定の目標達成条件を満たしたか否かの情報を含む歩行結果情報を、通信部62を介して情報端末50へ出力する。出力部99は、目標達成条件を満たしたか否かの情報を情報端末50の画面に表示させることで、被検者10の運動の動機付けにつなげ、運動継続を促すことができる。
【0044】
出力部99は、歩行量の評価結果および歩行フォームの評価結果に基づく身体部位別の運動効果に関する情報を含む歩行結果情報を、通信部62を介して情報端末50へ出力する。出力部99は、例えば人体モデルの画像上で身体部位ごとに運動効果の種類および大きさを示すオブジェクトを情報端末50の画面に表示させることで、身体部位別の運動効果を表現してもよい。
【0045】
図3は、歩行速度、ストライド、筋活動レベルの関係を示す。筋活動レベルは、質的結果決定部96が所定の評価モデルを用いて推定する歩行運動の質的評価値の例である。ここで、身体部位ごとの筋活動量が大きいほど、身体部位ごとの運動効果が高いということができる。例えば、いわゆるピッチ型と呼ばれる、ピッチが相対的に多いタイプの場合、脚の可動域が相対的に狭く、脚の筋肉が十分に伸張されず、筋活動量は相対的に小さいといえる。逆に、いわゆるストライド型と呼ばれる、ストライドが相対的に大きいタイプの場合、脚の可動域が相対的に広く、脚の筋肉が十分に伸張され、筋活動量は相対的に大きいといえる。したがって、小さい可動域にて反復数が多い歩行より、大きい可動域にて反復数が少ない歩行の方が、脚の筋肉への負荷は大きいと考えられる。そこで、本図では特にストライドとの関係を大きく評価した筋活動レベルについて説明する。
【0046】
図3ではランニングにならない程度まで高めた速度の歩行(ファストウォーキングともいう)と、ゆっくりとした速度の歩行を約3分ごとに交互に繰り返すインターバルウォーキングを被検者10が実施した結果を示す。このようなインターバルウォーキングは、ランニングより脚への負担が少ないながら、ランニングと遜色ない運動効果が得られるとして知られている。図3のグラフにおいて、横軸は歩行時間[分]を示す。右の縦軸はストライド[cm]を示し、左の縦軸は歩行速度[km/h]および筋活動レベル推定値を示す。
【0047】
図3のグラフにおいて、歩行速度110の線は、1分ごとの平均歩行速度を示す。歩行速度110の線は、ファストウォーキング中は時速7~8km程度まで増加し、ゆっくりとしたインターバルの歩行中は時速5~6km程度まで減少し、このような速度の増加と減少を約3分ごとに繰り返す増減を示す。ストライド112の線は、1分ごとの平均ストライドを示す。ストライド112の線は、開始直後は100~120cm程度の大きなストライドでの歩行を示し、歩行時間の経過とともにストライドが80cm程度まで漸減していることを示す。筋活動レベル推定114の線は、1分ごとの筋活動レベル推定値の平均を示す。筋活動レベル推定114の線は、開始直後は6前後まで高まり、歩行速度110の増減に沿って筋活動レベル推定値も増減しながら歩行時間の経過とともに4.5~5程度まで漸減していることを示す。
【0048】
歩行運動の質的評価値は、身体部位ごとに複数種類の評価値に分けることもでき、身体部位ごとに運動効果を測ることができる。これにより、「部分痩せ」とも言われるような対象身体部位を特定部位に絞ったダイエットとしての運動効果を測ることもできる。以下、身体部位別の評価値を推定する方法を説明する。
【0049】
(臀部および太腿の筋活動レベル)
図3のグラフにおける筋活動レベル推定114の線は、臀部および太腿の筋活動レベルの評価値を示している。通常、大殿筋やハムストリングス、大腿直筋といった臀部および太腿の筋群の活動量は、歩行速度と比例関係にある。また、歩行速度は、ピッチの多さよりストライドの大きさの方が影響が大きいと考えられる。臀部および太腿の筋活動レベルは、ストライドとピッチの2つの変数から推定が可能である。1分あたりの筋活動レベル推定値yは、以下の推定式にて質的結果決定部96により決定される。
y=4*a/A+1*b/B
ここで、aは1分あたりのストライド身長比、bは1分あたりのピッチを示し、Aは世代平均のストライド身長比、Bは世代平均のピッチを示す。「ストライド身長比」は、被検者10の身長に対するストライドの比率を示す。ピッチよりストライドの寄与度が大きくなるような重み付けとして、ストライドに対する重み係数を例えば4に設定し、ピッチに対する重み係数を例えば1に設定する。
【0050】
例えば、ストライドとピッチの測定値が世代平均に等しい場合、a/A,b/Bとも1のためy=5となるため、この値が基準値となる。図3のグラフにおいて、左の縦軸の中間に位置する「5」の目盛りが基準値を示し、この基準値より上に評価値が位置している、すなわち推定値yが基準値である5より大きければ、被検者10の臀部および太腿の筋活動レベルは高いと評価できる。この基準値より下に評価値が位置している、すなわち推定値yが基準値である5より小さければ、被検者10の臀部および太腿の筋活動レベルは低いと評価できる。
【0051】
(腰回りの筋活動レベル)
通常、腹直筋や腹斜筋といった腰回りの筋群の活動量は、歩行中に骨盤を大きく回すことで増大する。腰回りの筋活動レベルは、骨盤の回転角度とピッチの2つの変数から推定が可能である。1分あたりの筋活動レベル推定値yは、以下の推定式にて質的結果決定部96により決定される。
y=4*c/C+1*b/B
ここで、cは1分あたりの骨盤の平均回転角度、bは1分あたりのピッチを示し、Cは平均的な骨盤の回転角度、Bは世代平均のピッチを示す。ピッチより骨盤の回転角度の寄与度が大きくなるような重み付けとして、骨盤の回転角度に対する重み係数を例えば4に設定し、ピッチに対する重み係数を例えば1に設定する。
【0052】
例えば、骨盤の回転角度とピッチの測定値が世代平均に等しい場合、c/C,b/Bとも1のためy=5となるため、この値が基準値となる。推定値yが基準値である5より大きければ、被検者10の腰回りの筋活動レベルは高いと評価できる。推定値yが基準値である5より小さければ、被検者10の腰回りの筋活動レベルは低いと評価できる。
【0053】
なお、骨盤の回転角度が腰周りの筋活動レベル推定に寄与する度合いが高いのに対し、腰の左右傾きや前後の曲がりの測定値は腰周りの筋活動レベル推定に直接的には影響がなく、相対的に寄与度が低い。ただし、腰周りの筋活動レベルの評価式に腰の左右傾きや前後の曲がりの測定値を変数として相対的に低い重み係数にて加えることで、歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度をより精度よく測るようにしてもよい。
【0054】
(二の腕の筋活動レベル)
通常、上腕二頭筋や上腕三頭筋といった二の腕の筋群の活動量は、歩行中に腕を大きく振ることで増大する。二の腕の筋活動レベルは、腕振り角度とピッチの2つの変数から推定が可能である。1分あたりの筋活動レベル推定値yは、以下の推定式にて質的結果決定部96により決定される。
y=4*d/D+1*b/B
ここで、dは1分あたりの腕振り角度平均、bは1分あたりのピッチを示し、Dは平均的な腕振り角度、Bは世代平均のピッチを示す。ピッチより腕振り角度の寄与度が大きくなるような重み付けとして、腕振り角度に対する重み係数を例えば4に設定し、ピッチに対する重み係数を例えば1に設定する。
【0055】
例えば、腕振り角度とピッチの測定値が世代平均に等しい場合、d/D,b/Bとも1のためy=5となるため、この値が基準値となる。推定値yが基準値である5より大きければ、被検者10の二の腕の筋活動レベルは高いと評価できる。推定値yが基準値である5より小さければ、被検者10の二の腕の筋活動レベルは低いと評価できる。
【0056】
図4は、筋活動レベル推定値を表示する画面例を示す。画面120は、情報端末50の画面表示される内容を示す。第1枠122には、質的結果決定部96により決定された筋活動レベル推定値として「6」の数字が表示される。第2枠124には、ストライドの世代平均比が歩行運動する人の骨格により筋活動レベルの大きさを示すスティックピクチャーのオブジェクトで表される。図のように、被検者10を示す第1スティックピクチャー123が、世代平均を示す第2スティックピクチャー125と比べて筋活動レベルの大きさが異なるような骨格位置で表示することで、世代平均を上回ることを視覚的に表現している。第1スティックピクチャー123および第2スティックピクチャー125は、歩行運動するアニメーションで表示してもよく、その場合、腕振りや脚の運び、腰の左右揺れのそれぞれの大きさをアニメーションによる骨格の動きの大きさで表現してもよい。また、第1スティックピクチャー123のうち筋活動レベルとして主に評価する一部の身体部位を特定の色彩で強調してもよい。第3枠126には、腕振り角度の測定値がレベルインジケーター127と文字128にて表される。図のように、レベルインジケーター127が示すレベルを全8段階のうち6段階目で表示することで、中間値である標準値より大きいことを視覚的に表現している。
【0057】
本図の画面のように、腕振り角度を主に評価していることを表示することで、第1枠122および第2枠124に表示される筋活動レベル推定値が主に二の腕の筋活動レベルの評価に基づいていることを示している。他の態様として、臀部および太腿の筋活動レベルを主に評価する場合には、例えば主にストライドを評価した結果であることを第3枠126に表示してもよい。他の態様として、腰回りの筋活動レベルを主に評価する場合には、例えば主に骨盤の平均回転角度を評価した結果であることを第3枠126に表示してもよい。
【0058】
図5は、質的パラメータとしての測定値を表示する画面例を示す。画面120は、情報端末50の画面表示される内容を示す。画面120には、第4枠132、第5枠134、第6枠136が配置される。第4枠132には、第3スティックピクチャー130において腰の回転が矢印で示されるとともに、レベルインジケーター133による腰の回転レベルが示され、腰の回転角度の測定値(例えば「20.5°」といった数値)が文字135により表示される。第5枠134には、第3スティックピクチャー130において腰の左右揺れが矢印で示されるとともに、腰の左右揺れとして、レベルインジケーター133により揺れのレベルが示され、骨盤の左右の傾き角度の測定値(例えば「17.3°」といった数値)が文字135により表示される。第6枠136には、レベルインジケーター133によりピッチ左右差のレベルが示され、ピッチ左右差の測定値(例えば「105ミリ秒」といった数値)が文字135により表示される。本図のように、腕振り角度の測定値、骨盤の前後の曲がり角度の測定値、ストライドやピッチの測定値をさらに表示してもよい。
【0059】
図6は、量的パラメータと質的パラメータに分けた運動効果を表示する画面例を示す。画面120は、情報端末50の画面表示される内容を示す。図のグラフにおいて、横軸は運動の量、すなわち歩行量としての歩行時間を示し、縦軸は運動の質、すなわち筋活動レベルを示す。グラフ中の行列のうち、運動の量も質も高いことを示す右上の第1効果オブジェクト140は、完全燃焼を示す大きな炎のマークである。運動の量は低いが質は高いことを示す左上の第2効果オブジェクト142は、完全燃焼を示す小さな炎のマークである。運動の量は高いが質は低いことを示す右下の第3効果オブジェクト144は、不完全燃焼を示す大きな炎のマークである。運動の量も質も低いことを示す左下の第4効果オブジェクト146は、不完全燃焼を示す小さな炎のマークである。実際の画面においては、第1効果オブジェクト140、第2効果オブジェクト142、第3効果オブジェクト144、第4効果オブジェクト146のいずれか一つを表示することで、運動の量と質の高さを一目で把握できるように視覚的に表現している。
【0060】
図7は、身体部位別の運動効果を表示する画面例を示す。画面120は、情報端末50の画面表示される内容を示す。本図の画面例では、人体モデル150を画面中央に表示するとともに、身体部位ごとに炎のマークのオブジェクトを表示する。例えば、左右の二の腕に対応する箇所に、第5効果オブジェクト151および第6効果オブジェクト152を表示する。第5効果オブジェクト151および第6効果オブジェクト152は、図6における第3効果オブジェクト144と同様に不完全燃焼を示す大きな炎のマークである。これにより、左右の二の腕に関し、運動の量は高いが質は低い運動効果であったことが視覚的に示される。例えば、腰周りの位置に第7効果オブジェクト153を表示する。第7効果オブジェクト153は、図6における第1効果オブジェクト140と同様に完全燃焼を示す大きな炎のマークである。これにより、腰周りに関し、運動の量も質も高い運動効果であったことが視覚的に示される。例えば、左右の太腿の位置に第8効果オブジェクト154および第9効果オブジェクト155を表示する。第8効果オブジェクト154および第9効果オブジェクト155は、図6における第1効果オブジェクト140と同様に完全燃焼を示す大きな炎のマークである。これにより、太腿に関し、運動の量も質も高い運動効果であったことが視覚的に示される。その他、運動量が低い場合には、図6における第2効果オブジェクト142や第4効果オブジェクト146と同様の効果オブジェクトを対象の身体部位に表示してもよい。これにより、身体部位ごとの運動の量と質の効果を一目で把握できる。
【0061】
以上、本発明について実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。また、上述した実施形態を一般化すると以下の態様が得られる。
【0062】
〔態様1〕
被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する量的測定値取得部と、
前記被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくともストライドおよびピッチの測定値を取得する質的測定値取得部と、
前記量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する量的結果決定部と、
歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルと前記質的パラメータの測定値とに基づいて歩行フォームの評価結果を決定する質的結果決定部と、
前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする歩行評価システム。
【0063】
〔態様2〕
前記質的結果決定部は、前記所定の評価モデルとして、少なくともストライドの測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて前記歩行フォームの評価結果を決定することを特徴とする態様1に記載の歩行評価システム。
【0064】
〔態様3〕
前記ストライドの測定値は、測定された前記被検者のストライド平均の身長比であることを特徴とする態様1または2に記載の歩行評価システム。
【0065】
〔態様4〕
前記質的結果決定部は、前記所定の評価モデルとして、前記被検者のストライド身長比の帰属レベル別平均に対する割合に重みを加えた値と、前記被検者のピッチの帰属レベル別平均に対する割合の値との和を求める評価式を用いて前記歩行フォームの評価結果を決定することを特徴とする態様1から3のいずれかに記載の歩行評価システム。
【0066】
〔態様5〕
前記質的測定値取得部は、前記質的パラメータとしてさらに骨盤の動きの測定値を取得し、
前記質的結果決定部は、前記所定の評価モデルとして、少なくとも骨盤の動きの測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて前記歩行フォームの評価結果を決定することを特徴とする態様1から4のいずれかに記載の歩行評価システム。
【0067】
〔態様6〕
前記質的測定値取得部は、前記質的パラメータとしてさらに腕振り角度の測定値を取得し、
前記質的結果決定部は、前記所定の評価モデルとして、少なくとも腕振り角度の測定値に重みが加わるように設定された評価式を用いて前記歩行フォームの評価結果を決定することを特徴とする態様1から5のいずれかに記載の歩行評価システム。
【0068】
〔態様7〕
前記出力部は、前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果のうち少なくともいずれかが所定の目標達成条件を満たしたか否かの情報を含む前記歩行結果情報を出力することを特徴とする態様1から6のいずれかに記載の歩行評価システム。
【0069】
〔態様8〕
前記出力部は、前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果に基づく身体部位別の運動効果に関する情報を含む前記歩行結果情報を出力することを特徴とする態様1から7のいずれかに記載の歩行評価システム。
【0070】
〔態様9〕
被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する量的測定値取得部と、
前記被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくとも骨盤の動きおよびピッチの測定値を取得する質的測定値取得部と、
前記量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する量的結果決定部と、
歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルと前記質的パラメータの測定値とに基づいて歩行フォームの評価結果を決定する質的結果決定部と、
前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする歩行評価システム。
【0071】
〔態様10〕
被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行量を示す量的パラメータの測定値を取得する過程と、
前記被検者が身に着ける計測デバイスによって測定された、歩行フォームを示す質的パラメータとして少なくともストライドおよびピッチの測定値を取得する過程と、
前記量的パラメータの測定値に基づいて歩行量の評価結果を決定する過程と、
歩行運動効果を発揮しやすいフォーム傾向への近似度が反映される所定の評価モデルと前記質的パラメータの測定値とに基づいて歩行フォームの評価結果を決定する過程と、
前記歩行量の評価結果および前記歩行フォームの評価結果を含む歩行結果情報を出力する過程と、
を備えることを特徴とする歩行評価方法。
【符号の説明】
【0072】
10 被検者、 20 計測デバイス、 30 量的測定値取得部、 40 質的測定値取得部、 51 出力部、 70 量的測定値取得部、 80 質的測定値取得部、 90 結果決定部、 94 量的結果決定部、 96 質的結果決定部、 99 出力部、 100 歩行評価システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7