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特開2024-25866アニサキス活動抑制剤、アニサキス活動抑制方法、加工食品の製造方法、及び、動物生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025866
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】アニサキス活動抑制剤、アニサキス活動抑制方法、加工食品の製造方法、及び、動物生産方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 4/00 20060101AFI20240220BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240220BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/085 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A23B4/00 H
A23L17/00 Z
A61K36/899
A61K36/18
A61P33/00 171
A61K31/05
A61K31/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129198
(22)【出願日】2022-08-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「アニサキス発症リスクを最小化するサバ養殖技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】507157045
【氏名又は名称】公立大学法人福井県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】391003392
【氏名又は名称】大幸薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 文雄
(72)【発明者】
【氏名】末武 弘章
(72)【発明者】
【氏名】宮台 俊明
(72)【発明者】
【氏名】細井 公富
(72)【発明者】
【氏名】▲たぎし▼ 英彰
(72)【発明者】
【氏名】青木 賢吉
【テーマコード(参考)】
4B042
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B042AC10
4B042AD39
4B042AG27
4B042AH01
4B042AK04
4B042AK11
4B042AP07
4C088AB11
4C088AB76
4C088AC06
4C088BA07
4C088BA08
4C088BA11
4C088BA23
4C088BA32
4C088CA03
4C088CA15
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZB37
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206CA27
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZB37
(57)【要約】
【課題】コストが安価であり、且つ加工食品の製造や動物生産に適用可能なアニサキス活動抑制剤やアニサキス活動抑制方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、木酢液を有効成分として含有するアニサキス活動抑制剤、アニサキス活動抑制方法、加工食品の製造方法、及び動物生産方法を提供する。好ましくは、木酢液は、グアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び4-エチルグアヤコールを含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木酢液を有効成分として含有するアニサキス活動抑制剤。
【請求項2】
前記木酢液が、グアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び4-エチルグアヤコールを含有する、請求項1に記載のアニサキス活動抑制剤。
【請求項3】
前記木酢液が、さらに酢酸を含有する、請求項2に記載のアニサキス活動抑制剤。
【請求項4】
前記アニサキス活動抑制剤が、前記アニサキス活動抑制剤100mL当たりグアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び4-エチルグアヤコールを合計で約80mg~約400mg含有する、請求項3に記載のアニサキス活動抑制剤。
【請求項5】
活きたアニサキスを含む食材を、請求項1に記載のアニサキス活動抑制剤を含有する溶液に浸漬するステップを含む、アニサキス活動抑制方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアニサキス活動抑制方法を含む、加工食品の製造方法。
【請求項7】
アニサキスが寄生した動物に、請求項1に記載のアニサキス活動抑制剤を経口で与える投与ステップを含み、前記動物の体内で前記アニサキスの活動を抑制する、アニサキス活動抑制方法。
【請求項8】
前記投与ステップが、前記アニサキス活動抑制剤を含有する飼料を与えるステップである、請求項7に記載のアニサキス活動抑制方法。
【請求項9】
前記飼料が、前記飼料1kg重量当たりグアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び4-エチルグアヤコールを合計で約0.2g~約4.0g含有する、請求項8に記載のアニサキス活動抑制方法。
【請求項10】
請求項7~9いずれか一項に記載のアニサキス活動抑制方法を含む動物生産方法。
【請求項11】
前記動物が魚介類である、請求項10に記載の動物生産方法。
【請求項12】
前記魚介類がサバである、請求項11に記載の動物生産方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木酢液を有効成分とするアニサキス活動抑制剤、並びに、当該アニサキス活動抑制剤を用いたアニサキス活動抑制方法、加工食品の製造方法、及び動物生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アニサキスとは、アニサキス亜科に属する線虫の総称であり、アニサキス症の病原体となる。アニサキスを原因とする食中毒は、活きたアニサキスが寄生した海産魚介類を生食することにより、アニサキスが人の消化管に穿入することが原因で発症する。アニサキスの感染性は冷凍により失われることが知られており、アニサキスが寄生した可能性のある海産魚介類を-20℃、24時間以上冷凍することが、アニサキス症の対策となっている。また、一対の電極の間に浸漬させた対象物に対し、電極間に発生させたパルス大電流により、アニサキス等の寄生虫を殺虫する技術が開発された(特許文献1参照)。
【0003】
また、アニサキス症の予防又は症状改善のための薬剤として、少なくともグアヤコール、4-エチルグアヤコール、クレオゾール、オルトクレゾール、及びパラクレゾールを含む木クレオソートを有効成分として含有する消化器アニサキス症用薬剤(特許文献2参照)や、コスツノライド、デヒドロコスタスラクトン、又はその誘導体を有効成分として含むアニサキス症予防剤(特許文献3参照)が知られている。
【0004】
一方で、家畜や養殖魚の疾病の予防や治療を目的とした、木酢液を含有する組成物や製剤が開示されている。具体的には、木酢液を有効成分とし家畜に散布するようにしたことを特徴とする家畜の病気の予防剤、予防剤を調整して家畜に散布するようにしたことを特徴とする家畜の病気の予防方法(特許文献4参照)、木酢液又はその水溶液に木炭粉末を分散させ、これを乾燥して得られた複合乾燥物や、当該複合乾燥物を水産生物に施与することを特徴とする養殖方法(特許文献5参照)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-018296号公報
【特許文献2】特許第5614801号公報
【特許文献3】特開平04-145076号公報
【特許文献4】特開2003-128572号公報
【特許文献5】特開2016-117694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置は、アニサキスを殺虫するためにパルス大電流を発生させる必要があり、装置の導入コストや電流発生に必要な電気代が高いという課題がある。また、電流が食材内部にまで伝播することで、食材の品質が変化する可能性は否定できない。
【0007】
特許文献2及び3の薬剤は、医薬品等を有効成分とするため、人が服用することを目的としており、加工食品の製造や動物の生産に適用することは想定されていない。また、特許文献5に記載の組成物や養殖方法は、防除の対象となる水産生物の病害として「アニサキスなどの寄生虫による病害」が例示されているものの、アニサキスは、宿主となる魚介類にとって病原性を持たないため、アニサキス症は水産生物の病害には該当しない。
【0008】
本発明は、コストが安価であり、且つ加工食品の製造や動物生産に適用可能なアニサキス活動抑制剤や、アニサキス活動抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、木酢液を有効成分として含有するアニサキス活動抑制剤である。木酢液は、グアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び4-エチルグアヤコールから選ばれる1又は複数を含有し得る。また、前記木酢液は、さらに酢酸を含有し得る。
【0010】
アニサキス活動抑制剤は、アニサキス活動抑制剤100mL当たりグアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び4-エチルグアヤコールを合計で約80mg~約400mg含有するアニサキス活動抑制剤であり得る。
【0011】
別の本発明は、活きたアニサキスを含む食材を、アニサキス活動抑制剤を含有する溶液に浸漬するステップを含む、アニサキス活動抑制方法である。また、アニサキス活動抑制方法を含む、加工食品の製造方法である。
【0012】
さらに別の本発明は、アニサキスが寄生した動物に、アニサキス活動抑制剤を経口で与える投与ステップを含み、動物の体内でアニサキスの活動を抑制する、アニサキス活動抑制方法である。投与ステップは、アニサキス活動抑制剤を含有する飼料を与えるステップであり得、飼料は、飼料1kg重量当たりグアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び4-エチルグアヤコールを合計で約0.2g~約4.0g含有し得る。
【0013】
また、本発明は、アニサキス活動抑制方法を含む動物生産方法であり、動物は魚介類であり得、魚介類はサバであり得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大掛かりな装置を必要とせずに、食材に含まれる活きたアニサキスの活動が抑制されるため、結果的にアニサキス症の発症リスクを低減することができる。また、本発明では、アニサキス活動抑制剤を動物に対して経口投与することで、アニサキスが寄生した動物の体内でアニサキスの活動が抑制されるため、アニサキス症の発症リスクが低く、且つ品質の高い生食用の食材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】アニサキス活動抑制剤の実施例によるアニサキス活動抑制効果を示す図面である。エラーバーは省略した。
図2】アニサキス活動抑制剤の実施例によるアニサキス活動抑制効果を示す図面である。エラーバーは標準偏差を示し、異なるアルファベットは、ANOVA後のTukey Kramer検定により有意な差(p < 0.05)があったことを示す。
図3】アニサキス活動抑制剤の実施例によるアニサキス活動抑制効果を示す図面である。エラーバーは省略した。
図4】アニサキス活動抑制剤の実施例によるアニサキス活動抑制効果を示す図面である。エラーバーは標準偏差を示し、異なるアルファベットは、ANOVA後のTukey Kramer検定により有意な差(p < 0.05)があったことを示す。
図5】アニサキス活動抑制剤の実施例を含有する飼料によるアニサキス活動抑制効果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を、実施形態に基づいて詳細に説明するが、本発明は、これら実施形態によって限定されるものではない。
【0017】
第一の本発明は、木酢液を有効成分として含有するアニサキス活動抑制剤である。本発明の有効成分である木酢液とは、木材等の植物原料を乾留して発生した煙やガスを冷却して生じた液状物から、木タールを分離して得られたものである。
【0018】
本発明における木酢液は、木タールを分離した木酢液を蒸留して得られる蒸留木酢液を含む。本発明に蒸留木酢液を用いた場合には、蒸留により、木酢液中の有効成分の濃度が高まったり、木酢液の品質が安定するため、効果の再現性に優れたりといった利点を有する。
【0019】
また、木酢液のうち、植物原料として主に竹を用いたものは、竹酢液や蒸留竹酢液と呼称される。本発明の効果が発揮される限り、本発明のアニサキス活動抑制剤は、竹酢液や蒸留竹酢液を有効成分としてもよい。
【0020】
本発明において用いられる木酢液は、好ましくは、酢酸、フェノール、グアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び/又は、4-エチルグアヤコールを含有する。クレゾールには、o-クレゾール、m-クレゾール、及びp-クレゾールの3種類の異性体が存在し、異性体それぞれが木酢液に含有され得る。
【0021】
本発明において用いられる木酢液は、木酢液100mL当たり、グアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び、4-エチルグアヤコールを、好ましくは合計値で約50mg~約500mg含有する。より好ましくは、木酢液は、木酢液100mL当たり、約30mg~約300mgのグアヤコール、約9mg~約90mgのクレゾール、約9mg~約90mgの4-メチルグアヤコール、及び、約2mg~約20mgの4-エチルグアヤコールを含有する。
【0022】
本発明において用いられ得る木酢液の一例を示す。木酢液のpHは酸性~弱酸性領域であり、具体的には1.5~4.0であり、より具体的には2.0~3.0である。また、木酢液の比重は1.0~1.1であり、より具体的には1.005~1.025である。木酢液の色調は黄色であり、透明度は高い。100mLの木酢液に含まれる成分の含有量(重量)の一例を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
本発明のアニサキス活動抑制剤の一実施形態では、アニサキス活動抑制剤100mL当たりグアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び4-エチルグアヤコールを合計で約1mg~約500mg含有し、好ましくは、約20mg~約400mg含有し、さらに好ましくは、約80mg~約400mg含有する。活きた状態のアニサキスを、本実施形態のアニサキス活動抑制剤に浸漬することで、アニサキスの活動が抑制される。
【0025】
本発明のアニサキス活動抑制剤の別の実施形態では、アニサキス活動抑制剤100mL当たりフェノールを、約1mg~約250mg含有し、好ましくは、約5mg~約200mg含有し、さらに好ましくは、約14mg~約120mg含有する。活きた状態のアニサキスを、本実施形態のアニサキス活動抑制剤に浸漬することで、アニサキスの活動が抑制される。
【0026】
第二の本発明は、アニサキス活動抑制方法であり、具体的には、活きたアニサキスを含む食材を、アニサキス活動抑制剤を含有する溶液に浸漬するステップを含む。さらに、本発明は、アニサキス活動抑制方法を含む、加工食品の製造方法を提供する。
【0027】
活きたアニサキスを含む食材とは、アニサキスが寄生した動物から得られた食材であり、より好ましくは魚介類から得られた食材である。具体的には、サバ、カツオ、サンマ、イワシ、タラ、サケ、アジ、ブリ、ヒラメ、イカ等が挙げられる。アニサキスは、食材の加熱や冷凍(-20℃、24時間以上)により感染性を失うことが知られているため、食材は、加熱や冷凍をしていない、生食用の切り身やフィレ等であり得る。
【0028】
本発明の一実施形態は、活きたアニサキスを含む食材を、アニサキス活動抑制剤を含む溶液に浸漬するステップを含む。浸漬時間は限定されないが、活動抑制剤の有効成分が食材内部のアニサキス寄生部位まで到達し、アニサキスの活動が十分に抑制されるまで浸漬すればよい。アニサキス活動抑制剤に含有される木酢液は、独特な薫香を有するため、アニサキス活動抑制剤を含む溶液に浸漬された食材、すなわち本発明の製造方法により製造された加工食品は、良好な香りを纏い、魚臭さなどの不快な臭いが軽減されるという効果も有する。
【0029】
第三の本発明は、アニサキスが寄生した動物に、アニサキス活動抑制剤を経口で与える投与ステップを含み、当該動物の体内でアニサキスの活動を抑制する、アニサキス活動抑制方法である。さらに、本発明は、アニサキス活動抑制剤を経口で与える投与ステップを含む、動物生産方法を提供する。
【0030】
アニサキスが寄生した動物としては、クジラやイルカ、アザラシ等の海棲哺乳類や、サバ、カツオ、サンマ、イワシ、タラ、サケ、アジ、ブリ、ヒラメ、イカ等の魚介類が挙げられるが、好ましくは、アニサキスの幼虫が寄生した水産養殖用の魚介類である。天然から漁獲された魚介類を養殖生産に用いる場合には、漁獲された時点で既に魚介類がアニサキスに寄生されている可能性がある。したがって、本発明の動物生産方法によれば、養殖生産物を生食した場合のアニサキス症の発症リスクを低減することができる。
【0031】
本発明のアニサキス活動抑制方法の一実施態様では、投与ステップは、アニサキス活動抑制剤を含有する飼料を与えるステップである。アニサキス活動抑制剤を含有する飼料を魚介類等の動物に与えることで、魚介類はアニサキス活動抑制剤を効率的に摂取することができ、結果的に、魚介類のアニサキス寄生部位に有効成分が送達される。
【0032】
ここで、飼料には、魚介類の養殖生産に用いられる飼料が用いられるが、吸水性を有するペレットであることが好ましい。具体的には、飼料は、モイストペレット(MP)、ドライペレット(DP)、及び/又は、エクストルーデッドペレット(EP)であり、アニサキス活動抑制剤を含有する飼料は、液状のアニサキス活動抑制剤を吸水したペレット状の飼料であり得る。
【0033】
本発明のアニサキス活動抑制方法において用いられる飼料は、木酢液を有効成分とするアニサキス活動抑制剤を含有し、好ましくは、飼料1kg当たり、より好ましくは飼料1kg(乾燥重量)当たり、グアヤコール、クレゾール、4-メチルグアヤコール、及び4-エチルグアヤコールを合計で約0.01g(約10mg)~約5.0g含有し、好ましくは、約0.05g(約50mg)~約4.0g含有し、さらに好ましくは、約0.2g(約200mg)~約4.0g含有する。魚介類は、これらの飼料を摂取することで、その体内に寄生したアニサキスの活動が抑制される。
【0034】
本発明の別の実施形態の飼料は、飼料1kg当たり、好ましくは飼料1kg(乾燥重量)当たり、フェノールを約0.01g(約10mg)~約2.5g含有し、好ましくは、約0.05g(約50mg)~約2.0g含有し、さらに好ましくは、約0.07g(約70mg)~約1.2g含有する。魚介類は、これらの飼料を摂取することで、その体内に寄生したアニサキスの活動が抑制される。
【0035】
アニサキスが寄生した動物に対しアニサキス活動抑制剤を投与する期間は、体内のアニサキスの活動が十分に抑制されれば限定されないが、1日以上であり、好ましくは3日以上であり、より好ましくは7日以上であり得る。また、アニサキスが寄生した動物に対して飼料を投与する場合には、飼料の投与量は限定されず、養殖生産現場での一般的な条件に従って投与すればよい。
【実施例0036】
実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0037】
1.木酢液を有効成分とするアニサキス活動抑制剤による活動抑制効果の評価
【0038】
岩手県沖で漁獲されたサバ(魚体重300 g~400 g)から摘出したアニサキスを用い、木酢液を有効成分とするアニサキス活動抑制剤の評価を行った。アニサキスを、人工胃液(4mM塩酸、34mM塩化ナトリウム、pH 1.15~1.25)を入れたマルチウェルプレートの1ウェルにつき1隻ずつ、合計48隻を収容した。赤外線活動量計測機WMicrotracker ONE(SCREEN社製)を用いて、アニサキスの活動量を30分間測定後、対照区以外のウェルに、木酢液を2倍、4倍、又は8倍希釈になるように添加し、さらに活動量を100分間測定した。本試験に使用した木酢液原液、及び各希釈液の木酢液由来成分の含有量を表2に示す。各群12隻のアニサキスを用いて、アニサキス活動抑制剤の効果を評価した。
【0039】
【表2】
【0040】
木酢液添加前後のアニサキスの活動量推移を図1に、対照区に対する活動量の割合を図2に示す。木酢液の添加により、アニサキスの活動が抑制される傾向が見出され、2倍及び4倍希釈になるように木酢液を添加した群では、対照群と比較して、有意に活動量が低下した。
【0041】
次に、木酢液中の酢酸が、アニサキスの活動に与える影響を明らかにするため、人工胃液に対して木酢液を2倍希釈になるように添加した群と、木酢液2倍希釈に含まれる酢酸と等量の酢酸を添加した群との比較を行った。木酢液添加前後の1分当たりのアニサキスの活動量推移を図3に、対照区に対する活動量の割合を図4に示す。酢酸の添加によるアニサキスの活動抑制が観察されたが、木酢液添加群のように、時間を経るごとに活動量が減少する傾向は見られなかった。酢酸では、木酢液よりも活動抑制効果は小さく、木酢液中の酢酸以外の成分がアニサキスの活動抑制に有効であることが示唆された。以上のように、木酢液を有効成分とするアニサキス活動抑制剤の効果が確認された。
【0042】
2.木酢液を含有する飼料を給餌したサバから摘出したアニサキスの活動評価
【0043】
水産用養殖飼料(海産稚魚用EP4飼料、ファームチョイス株式会社)に対し、1.で使用したものと同じ木酢液を3重量%、6重量%、及び8重量%添加して混合し、70℃の温風乾燥機で1晩乾燥した。木酢液を添加した飼料における木酢液由来成分の含有量を表3に示す。
【表3】
【0044】
岩手県沖で漁獲されたサバ(魚体重100 g~200 g)を試験群と対照群の2水槽に分け、試験群には1日目~11日目は3重量%添加飼料を、12日目~18日目は6重量%添加飼料を、19日目~31日目は8重量%添加飼料を、対照群には、木酢液を添加していない養殖飼料を、毎日飽食給餌した。12日目、19日目、31日目に、試験群・対照群からそれぞれ5尾ずつサンプリングした。サバ体内からアニサキスを摘出し、人工胃液(74mM塩酸、34mM塩化ナトリウム、pH 1.15~1.25)を入れたマルチウェルプレートの1ウェルにつき1隻ずつ収容し、赤外線活動量計測機WMicrotracker ONE(SCREEN社製)を用いて活動量を100分間測定した。
【0045】
試験群(3重量%、6重量%、及び8重量%木酢液添加飼料を供与した群)と対照群のアニサキスの活動量の推移を図5に示す。6重量%以上の木酢液を添加した飼料を与えたサバ体内から摘出したアニサキスは、対照群から摘出したアニサキスと比較して、明らかに活動量が低い傾向が見出された。以上のように、木酢液を含有する飼料をサバに与えることで、サバの体内で、サバに寄生したアニサキスの活動が抑制され得ることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5