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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002589
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】通過物情報取得システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/04 20060101AFI20231228BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20231228BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01B11/04 Z
G08G1/04
G08G1/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101869
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】平松 潤
【テーマコード(参考)】
2F065
5H181
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA21
2F065AA67
2F065BB15
2F065CC11
2F065DD02
2F065FF11
2F065GG04
2F065GG08
2F065HH04
2F065JJ01
2F065MM02
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065UU06
5H181AA01
5H181CC03
5H181DD02
(57)【要約】
【課題】固定の所定面を走査する1つのレーザセンサのみからの入力情報に基づいて、通過物の幅、高さ、及び長さを算出可能とする。
【解決手段】通過物情報取得システム(10)は、所定場所(A)を通る固定の所定面(S)を走査してパルスレーザ光の各照射方向(θ)における物体までの各距離(r)を検出するレーザセンサ(20)と、各距離に基づいて通過物(C)の大きさを算出する算出部(20)と、を備える。レーザセンサは、想定している通過物の最大高さよりも高い位置に設置され、所定場所の地面と所定面との交線(B)が所定方向に対して斜めになり、且つ交線の所定方向に垂直な幅方向の長さが想定している通過物の幅方向の最大幅よりも長くなるように設置されており、算出部は、所定場所の地面とレーザセンサとの位置関係、各照射方向、及び各距離に基づいて、通過物の幅方向の幅、通過物の高さ、及び通過物の所定方向の長さを算出する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角間隔で照射するパルスレーザ光により所定場所を通る固定の所定面を走査して前記パルスレーザ光の各照射方向における物体までの各距離を検出するレーザセンサと、前記レーザセンサにより検出された前記各距離に基づいて、前記所定面を所定方向に通過する物体である通過物の大きさを算出する算出部と、を備える通過物情報取得システムであって、
前記レーザセンサは、対象として想定している前記通過物の最大高さよりも高い位置に設置され、前記所定場所の地面と前記所定面との交線が前記所定方向に対して斜めになり、且つ前記交線の前記所定方向に垂直な幅方向の長さが対象として想定している前記通過物の前記幅方向の最大幅よりも長くなるように設置されており、
前記算出部は、前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係、前記各照射方向、及び前記レーザセンサにより検出された前記各距離に基づいて、前記通過物の大きさとして前記通過物の前記幅方向の幅、前記通過物の高さ、及び前記通過物の前記所定方向の長さを算出する、通過物情報取得システム。
【請求項2】
前記算出部は、前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係、前記各照射方向、及び前記レーザセンサにより検出された前記各距離に基づいて、前記幅方向を第1軸、前記所定方向を第2軸、前記高さの方向を第3軸とする3次元座標系において、前記通過物の前記パルスレーザ光が照射された各部分の各座標を算出し、前記各座標に基づいて、前記通過物の前記幅方向の幅、前記通過物の高さ、及び前記通過物の前記所定方向の長さを算出する、請求項1に記載の通過物情報取得システム。
【請求項3】
前記算出部はさらに、前記所定方向は、前記通過物が前記所定面に対して前記レーザセンサから遠い側から近い側へ通過する第1方向と、前記通過物が前記所定面に対して前記レーザセンサから近い側から遠い側へ通過する第2方向とのいずれであるかを判定する、請求項2に記載の通過物情報取得システム。
【請求項4】
前記算出部は、前記通過物が前記所定面を前記所定方向に通過する際に、前記所定方向において、前記通過物の前部が前記所定面を最初に通過する第1位置と、前記通過物の後部が前記所定面を最後に通過する第2位置とのいずれが前記レーザセンサに近いかに基づいて、前記所定方向は、前記第1方向と前記第2方向とのいずれであるかを判定する、請求項3に記載の通過物情報取得システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記通過物が前記所定面を通過し始めてから通過し終わるまでに算出された前記各座標における前記第1軸の座標の最大値と最小値との差に基づいて、前記通過物の前記幅方向の幅を算出する、請求項2に記載の通過物情報取得システム。
【請求項6】
前記算出部は、前記通過物が前記所定面を通過し始めてから通過し終わるまでに算出された前記各座標における前記第3軸の座標の最大値に基づいて、前記通過物の前記高さを算出する、請求項2に記載の通過物情報取得システム。
【請求項7】
前記算出部はさらに、前記所定方向において前記通過物の前端の前記第2軸の座標を所定時間間隔で算出し、算出した前記前端の前記第2軸の座標の前記所定時間での変化量と、前記所定時間とに基づいて、前記通過物の前記所定方向の速度を算出する、請求項2に記載の通過物情報取得システム。
【請求項8】
前記算出部は、前記通過物が前記所定面を前記所定方向に通過する際に、前記所定方向において、前記通過物の前部が前記所定面を最初に通過する第1位置の前記第2軸の座標と、前記通過物の後部が前記所定面を最後に通過する第2位置の前記第2軸の座標と、前記所定方向において前記通過物の前部が前記所定面を最初に通過し始めてから前記通過物の後部が前記所定面を最後に通過するまでの時間と、を算出し、算出した前記速度と算出した前記時間との積から、前記第1位置の前記第2軸の座標と前記第2位置の前記第2軸の座標との変化量を引くことにより、前記通過物の前記所定方向の長さを算出する、請求項7に記載の通過物情報取得システム。
【請求項9】
前記第2軸の座標が前記レーザセンサの前記第2軸の座標と同じであり、且つ前記第1軸の座標が前記所定場所の地面における前記レーザセンサから最も離れた位置の座標である第1所定点と、前記第1軸の座標が前記レーザセンサの前記第1軸の座標と同じであり、且つ前記第2軸の座標が前記所定場所の地面における前記レーザセンサから最も離れた位置の座標である第2所定点とを、前記交線が通るように前記レーザセンサは設置されており、
前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係は、前記第1軸の方向における前記レーザセンサと前記第1所定点との距離、前記第2軸の方向における前記レーザセンサと前記第2所定点との距離、及び前記第3軸の方向における前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの距離を含む、請求項2~8のいずれか1項に記載の通過物情報取得システム。
【請求項10】
前記所定場所は、道路の一部であり、
前記所定方向は、前記道路が延びる方向であり、
前記幅方向における前記レーザセンサと前記第1所定点との距離は、前記道路において前記第2軸の座標が前記レーザセンサの前記第2軸の座標と同じである部分の前記幅方向の幅と同じである、請求項9に記載の通過物情報取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定場所を通過する通過物の情報を取得するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が通過する道路の上方から道路の横断方向に光ビームを走査する第1のレーザセンサと、通過する車両に斜め前方から光ビームを走査する第2のレーザセンサとを備え、第1のレーザセンサで受光した反射光から車両の外形形状を計測し、第2のレーザセンサで受光した反射光から車両の位置を計測し、これら計測結果に基づいて車両の車幅、車高、及び車長を求める車両計測装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-224397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の車両計測装置では、車両(通過物)の車幅、車高、及び車長を求めるために、道路の上方に設置された第1のレーザセンサと、車両の進行方向において第1のレーザセンサの下流側に一定の距離をおいて道路の脇に設置された第2のレーザセンサとを必要とする。すなわち、特許文献1に記載の車両計測装置では、通過物の幅、高さ、及び長さを算出するために、異なる位置に設置されて固定の所定面をそれぞれ走査する2つのレーザセンサを必要とし、未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、通過物情報取得システムにおいて、固定の所定面を走査する1つのレーザセンサのみからの入力情報に基づいて、通過物の幅、高さ、及び長さを算出可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
所定角間隔で照射するパルスレーザ光により所定場所を通る固定の所定面を走査して前記パルスレーザ光の各照射方向における物体までの各距離を検出するレーザセンサと、前記レーザセンサにより検出された前記各距離に基づいて、前記所定面を所定方向に通過する物体である通過物の大きさを算出する算出部と、を備える通過物情報取得システムであって、
前記レーザセンサは、対象として想定している前記通過物の最大高さよりも高い位置に設置され、前記所定場所の地面と前記所定面との交線が前記所定方向に対して斜めになり、且つ前記交線の前記所定方向に垂直な幅方向の長さが対象として想定している前記通過物の前記幅方向の最大幅よりも長くなるように設置されており、
前記算出部は、前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係、前記各照射方向、及び前記レーザセンサにより検出された前記各距離に基づいて、前記通過物の大きさとして前記通過物の前記幅方向の幅、前記通過物の高さ、及び前記通過物の前記所定方向の長さを算出する、通過物情報取得システム。
【0007】
上記構成によれば、レーザセンサは、所定角間隔で照射するパルスレーザ光により所定場所を通る固定の所定面を走査して、前記パルスレーザ光の各照射方向における物体までの各距離を検出する。このため、レーザセンサは、物体が所定面を通過する際に、前記パルスレーザ光の各照射方向における物体の所定面に交差した部分までの各距離を検出することができる。算出部は、前記レーザセンサにより検出された前記各距離に基づいて、前記所定面を所定方向に通過する物体である通過物の大きさを算出する。
【0008】
ここで、前記レーザセンサは、対象として想定している前記通過物の最大高さよりも高い位置に設置されている。このため、レーザセンサは、対象として想定している通過物が所定面を通過する際に、通過物の最も高い部分にパルスレーザ光を照射することができる。したがって、前記算出部は、前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係、前記各照射方向、及びレーザセンサから通過物の最も高い部分までの距離に基づいて、前記通過物の高さを算出することができる。
【0009】
また、前記レーザセンサは、前記所定場所の地面と前記所定面との交線の前記所定方向に垂直な幅方向の長さが、対象として想定している前記通過物の前記幅方向の最大幅よりも長くなるように設置されている。このため、レーザセンサは、通過物が所定場所を所定方向に通過する際に、通過物の幅方向の両端にパルスレーザ光を照射することができる。したがって、前記算出部は、前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係、前記各照射方向、及びレーザセンサから通過物の幅方向の両端までの各距離に基づいて、前記通過物の前記幅方向の幅を算出することができる。
【0010】
さらに、前記レーザセンサは、前記所定面と前記所定場所の地面との交線が前記所定方向に対して斜めになるように設置されている。このため、レーザセンサは、通過物が所定面を所定方向に通過する際に、通過物の前端及び後端に複数のタイミング及び複数の位置でパルスレーザ光を照射することができる。したがって、前記算出部は、前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係、前記各照射方向、並びにレーザセンサから通過物の前端及び後端までの複数のタイミング及び複数の位置で検出した各距離に基づいて、前記通過物の前記所定方向の長さを算出することができる。
【0011】
よって、通過物情報取得システムは、固定の所定面を走査する1つのレーザセンサのみからの入力情報に基づいて、通過物の幅、高さ、及び長さを算出することができる。
【0012】
前記幅方向を第1軸、前記所定方向を第2軸、前記高さの方向を第3軸とする3次元座標系により、前記通過物の前記パルスレーザ光が照射された各部分の各座標を表せば、前記通過物の前記幅方向の幅、前記通過物の高さ、及び前記通過物の前記所定方向の長さを算出しやすくなる。そして、前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係、前記各照射方向、及び前記レーザセンサにより検出された前記各距離に基づいて、前記通過物の前記パルスレーザ光が照射された各部分の各位置を、3次元座標系における各座標として表すことができる。
【0013】
そこで、第2の手段では、前記算出部は、前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係、前記各照射方向、及び前記レーザセンサにより検出された前記各距離に基づいて、前記幅方向を第1軸、前記所定方向を第2軸、前記高さの方向を第3軸とする3次元座標系において、前記通過物の前記パルスレーザ光が照射された各部分の各座標を算出し、前記各座標に基づいて、前記通過物の前記幅方向の幅、前記通過物の高さ、及び前記通過物の前記所定方向の長さを算出する。こうした構成によれば、前記通過物の前記幅方向の幅、前記通過物の高さ、及び前記通過物の前記所定方向の長さを算出しやすくなる。
【0014】
通過物が所定面を所定方向に通過する態様として、前記通過物が前記所定面に対して前記レーザセンサから遠い側から近い側へ通過する場合と、前記通過物が前記所定面に対して前記レーザセンサから近い側から遠い側へ通過する場合とがある。
【0015】
そこで、第3の手段では、前記算出部はさらに、前記所定方向は、前記通過物が前記所定面に対して前記レーザセンサから遠い側から近い側へ通過する第1方向と、前記通過物が前記所定面に対して前記レーザセンサから近い側から遠い側へ通過する第2方向とのいずれであるかを判定する。したがって、通過物情報取得システムは、固定の所定面を走査する1つのレーザセンサのみからの入力情報に基づいて、通過物の幅、高さ、及び長さを算出することに加えて、通過物の進行方向を判定することができる。
【0016】
前記レーザセンサは、前記所定面と前記所定場所の地面との交線が前記所定方向に対して斜めになるように設置されている。このため、通過物が所定面を所定方向に通過する際に、所定方向において、通過物の前部が所定面を最初に通過する第1位置と、通過物の後部が所定面を最後に通過する第2位置とが異なる。そして、前記通過物が前記所定面に対して前記レーザセンサから遠い側から近い側へ通過する場合と、前記通過物が前記所定面に対して前記レーザセンサから近い側から遠い側へ通過する場合とで、所定方向においてレーザセンサに対して第1位置と第2位置とのいずれが近いかが逆になる。
【0017】
そこで、第4の手段では、前記算出部は、前記通過物が前記所定面を前記所定方向に通過する際に、前記所定方向において、前記通過物の前部が前記所定面を最初に通過する第1位置と、前記通過物の後部が前記所定面を最後に通過する第2位置とのいずれが前記レーザセンサに近いかに基づいて、前記所定方向は、前記第1方向と前記第2方向とのいずれであるかを判定する。こうした構成によれば、通過物の進行方向を正確に判定することができる。
【0018】
通過物が所定面を通過している途中では、通過物の幅方向の一部までしか所定面を通過していない、すなわち通過物の幅方向の一部までしか、パルスレーザ光が照射された各部分の各座標が算出されていないおそれがある。この場合に、算出された分の各座標における第1軸の座標の最大値と最小値との差に基づいて通過物の幅方向の幅を算出すると、通過物の幅方向の幅を正確に算出することができない。
【0019】
この点、第5の手段では、前記算出部は、前記通過物が前記所定面を通過し始めてから通過し終わるまでに算出された前記各座標における前記第1軸の座標の最大値と最小値との差に基づいて、前記通過物の前記幅方向の幅を算出する。このため、通過物が所定面を通過し終わって、通過物の全体でパルスレーザ光が照射された各部分の各座標が算出されている。したがって、通過物の全体で算出された各座標における第1軸の座標の最大値と最小値との差に基づいて通過物の幅方向の幅を算出することができ、通過物の幅方向の幅を正確に算出することができる。
【0020】
通過物が所定面を通過している途中では、通過物の所定方向の一部までしか所定面を通過していない、すなわち通過物の所定方向の一部までしか、パルスレーザ光が照射された各部分の各座標が算出されていないおそれがある。この場合に、算出された分の各座標における第3軸の座標の最大値に基づいて通過物の高さを算出すると、通過物の高さを正確に算出することができない。
【0021】
この点、第6の手段では、前記算出部は、前記通過物が前記所定面を通過し始めてから通過し終わるまでに算出された前記各座標における前記第3軸の座標の最大値に基づいて、前記通過物の前記高さを算出する。このため、通過物が所定面を通過し終わって、通過物の全体でパルスレーザ光が照射された各部分の各座標が算出されている。したがって、通過物の全体で算出された各座標における第3軸の座標の最大値に基づいて通過物の高さを算出することができ、通過物の高さを正確に算出することができる。
【0022】
通過物の多くが車両である状況があり得る。車両の前部にはバンパーが通常設けられており、車両が所定方向に進行する場合に、バンパーの前端の位置は車両の幅方向であまり変化しないことが多い。このため、前記所定場所の地面と前記所定面との交線が前記所定方向に対して斜めになる場合に、パルスレーザ光が車両の幅方向においてバンパーの異なる部分に照射されても、それらの部分の第2軸の座標は近い値になる。
【0023】
この点、第7の手段では、前記算出部はさらに、前記所定方向において前記通過物の前端の前記第2軸の座標を所定時間間隔で算出し、算出した前記前端の前記第2軸の座標の前記所定時間での変化量と、前記所定時間とに基づいて、前記通過物の前記所定方向の速度を算出する。こうした構成によれば、通過物が車両である場合に、車両の所定方向の前端としてバンパーの座標を算出することができ、前記通過物の前記所定方向の速度を正確に算出することができる。
【0024】
前記所定場所の地面と前記所定面との交線が前記所定方向に対して斜めになる場合には、所定速度の列車が所定長さのトンネルを所定時間で通過する場合の通過算の考え方を適用して、通過物の所定方向の長さを算出することができる。通過算では、トンネルを通過し始めてから通過し終わるまでに列車が進んだ距離から、トンネルの長さを引くことにより列車の長さを算出する。ここでは、通過物が所定面を通過し始めた位置から通過し終わった位置までをトンネルとみなすことにより、通過算の考え方を適用することができる。
【0025】
そこで、第8の手段では、前記算出部は、前記通過物が前記所定面を前記所定方向に通過する際に、前記所定方向において、前記通過物の前部が前記所定面を最初に通過する第1位置の前記第2軸の座標と、前記通過物の後部が前記所定面を最後に通過する第2位置の前記第2軸の座標と、前記所定方向において前記通過物の前部が前記所定面を最初に通過し始めてから前記通過物の後部が前記所定面を最後に通過するまでの時間と、を算出し、算出した前記速度と算出した前記時間との積から、前記第1位置の前記第2軸の座標と前記第2位置の前記第2軸の座標との変化量を引くことにより、前記通過物の前記所定方向の長さを算出する。こうした構成によれば、通過物情報取得システムは、固定の所定面を走査する1つのレーザセンサのみからの入力情報に基づいて、通過物の所定方向の長さを正確に算出することができる。
【0026】
具体的には、第9の手段のように、前記第2軸の座標が前記レーザセンサの前記第2軸の座標と同じであり、且つ前記第1軸の座標が前記所定場所の地面における前記レーザセンサから最も離れた位置の座標である第1所定点と、前記第1軸の座標が前記レーザセンサの前記第1軸の座標と同じであり、且つ前記第2軸の座標が前記所定場所の地面における前記レーザセンサから最も離れた位置の座標である第2所定点とを、前記交線が通るように前記レーザセンサは設置されており、前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの位置関係は、前記第1軸の方向における前記レーザセンサと前記第1所定点との距離、前記第2軸の方向における前記レーザセンサと前記第2所定点との距離、及び前記第3軸の方向における前記所定場所の地面と前記レーザセンサとの距離を含む、といった構成を採用することができる。
【0027】
第10の手段では、前記所定場所は、道路の一部であり、前記所定方向は、前記道路が延びる方向であり、前記幅方向における前記レーザセンサと前記第1所定点との距離は、前記道路において前記第2軸の座標が前記レーザセンサの前記第2軸の座標と同じである部分の前記幅方向の幅と同じである。
【0028】
上記構成によれば、前記所定場所は、道路の一部であり、前記所定方向は、前記道路が延びる方向である。このため、通過物情報取得システムは、道路の所定場所を通過する通過物の前記幅方向の幅、前記通過物の高さ、及び前記通過物の前記所定方向の長さを算出することができる。
【0029】
さらに、前記幅方向における前記レーザセンサと前記第1所定点との距離は、前記道路において前記第2軸の座標が前記レーザセンサの前記第2軸の座標と同じである部分の前記幅方向の幅と同じである。このため、所定面は幅方向における道路の一端から他端まで広がっており、道路を所定方向に進行する通過物が所定面を漏れなく通過するようにすることができる。したがって、道路を所定方向に進行する通過物の前記幅方向の幅、前記通過物の高さ、及び前記通過物の前記所定方向の長さを、漏れなく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】車両情報取得システムを示す斜視図。
図2】車両の情報を示す斜視図。
図3】第1比較例の車両情報取得システムを示す平面図。
図4】第2比較例の車両情報取得システムを示す平面図。
図5】第3比較例の車両情報取得システムを示す平面図。
図6】レーザセンサの設置角度を示す斜視図。
図7】座標変換の態様を示す斜視図。
図8】車幅を算出する方法を示す平面図。
図9】車幅を算出する手順を示すフローチャート。
図10】進行方向が方向d1である場合を示す平面図。
図11】進行方向が方向d2である場合を示す平面図。
図12】進行方向を判定する手順を示すフローチャート。
図13】車高を算出する方法を示す斜視図。
図14】車高を算出する手順を示すフローチャート。
図15】進行方向が方向d1である場合の車速の算出方法を示す平面図。
図16】進行方向が方向d2である場合の車速の算出方法を示す平面図。
図17】車速を算出する手順を示すフローチャート。
図18】進行方向が方向d1である場合の車長の算出方法を示す平面図。
図19】進行方向が方向d2である場合の車長の算出方法を示す平面図。
図20】車長を算出する手順を示すフローチャート。
図21】車幅、進行方向、車高、車速、及び車長を算出する手順の変更例を示すフローチャート。
図22】車両情報取得システムの変更例を示す斜視図。
図23】車両情報取得システムの他の変更例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、車両の情報を取得する車両情報取得システムに具現化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
図1に示すように、車両情報取得システム10は、道路Rに設置されている。道路Rは、例えば一定幅Wで直線状に水平に延びている。車両情報取得システム10は、道路Rの一部である所定場所Aを道路Rの延びる方向(所定方向)に通過する車両の情報を取得する。所定場所Aは、矩形(矩形状)で平坦な領域である。
【0033】
図2に示すように、車両Cの情報は、車幅w、車高h、車長l、進行方向d、及び車速vを含んでいる。
【0034】
図3は、第1比較例の車両情報取得システム10Aを示す平面図である。車両情報取得システム10Aのレーザセンサ20Aは、道路の側方に設置されており、パルスレーザ光を水平に所定角間隔で照射して、道路の水平な路面に平行な走査面Sを走査する。走査面Sは、水平な平面であり、固定されている。この場合、車両情報取得システム10Aは、車長l、車速v、及び進行方向dを取得することができるが、車幅w及び車高hを取得することができない。
【0035】
図4は、第2比較例の車両情報取得システム10Bを示す側面図である。車両情報取得システム10Bのレーザセンサ20Bは、道路の上方に設置されており、パルスレーザ光を道路の縦断方向に所定角間隔で照射して、道路に垂直な走査面Sを走査する。走査面Sは、道路を垂直に縦断する平面であり、固定されている。この場合、車両情報取得システム10Bは、車長l、車高h、車速v、及び進行方向dを取得することができるが、車幅wを取得することができない。
【0036】
図5は、第3比較例の車両情報取得システム10Cを示す側面図である。車両情報取得システム10Cのレーザセンサ20Cは、道路の上方に設置されており、パルスレーザ光を道路の横断方向に所定角間隔で照射して、道路に垂直な走査面Sを走査する。走査面Sは、道路を垂直に横断する平面であり、固定されている。この場合、車両情報取得システム10Cは、車幅w及び車高hを取得することができるが、車長l、車速v、及び進行方向dを取得することができない。
【0037】
これらの比較例の車両情報取得システムでは、1つのレーザセンサのみからの入力情報に基づいて、車両の車幅w、車長l、車高h、車速v、及び進行方向d(車両の車幅w、車長l、及び車高h)を取得することができない。
【0038】
そこで、図1に示すように、本実施形態の車両情報取得システム10では、レーザセンサ20は、所定場所Aの路面(地面)に対して傾斜した走査面Sをパルスレーザ光により走査する。パルスレーザ光は、赤外線、可視光線、紫外線等のレーザ光である。走査面S(所定面)は、所定場所Aを通る固定の平面である。これにより、車両情報取得システム10は、1つのレーザセンサ20のみからの入力情報に基づいて、車両の車幅w、車長l、車高h、車速v、及び進行方向dを取得することを可能とする。
【0039】
以下、車両情報取得システム10の構成について詳細に説明する。車両情報取得システム10は、支柱11、レーザセンサ20、算出部30等を備えている。なお、算出部30は、レーザセンサ20に内蔵されていてもよいし、レーザセンサ20と別体で設けられていてもよい。
【0040】
支柱11は、直線(直線状)の柱であり、車両情報を取得する対象として想定している車両のうち最大の高さを有する車両の高さよりも長く、すなわち車両情報を取得する対象として想定している車両の最大高さH_maxよりも長く形成されている。支柱11は、矩形の所定場所Aの頂点の1つである点Oに立てられている。点Oは、道路Rの幅方向の端の点である。
【0041】
ここで、点Oを原点(0,0,0)とし、道路Rの幅方向をx軸とし、道路Rの延びる方向でありx軸に垂直な方向をy軸とし、高さ方向でありx軸及びy軸に垂直な方向をz軸として、3次元直交座標系(3次元座標系)を設定する。道路Rの幅方向のうち点Oが設定された道路Rの一端から道路Rの他端へ向かう方向(図1の右方向)をx軸(第1軸)の正方向とし、道路Rの延びる方向のうち図1の手前方向をy軸(第2軸)の正方向とし、高さ方向のうち上方(図1の上方向)をz軸(第3軸)の正方向とする。
【0042】
支柱11の上部には、レーザセンサ20が取り付けられている。レーザセンサ20は、車両の最大高さH_maxよりも高い位置に設置されている。レーザセンサ20は、点Pz(0,0,H)に設置されており(H>H_max)、詳しくはレーザセンサ20のパルスレーザ光を投光する部分が点Pz(0,0,H)に配置されている。
【0043】
点Px(第1所定点)は、矩形の所定場所Aの頂点の1つであり、道路Rの幅方向において点Oと反対側の端の点である。点Pxのx軸の座標は道路Rの幅Wと等しく、点Pxの座標は(W,0,0)である。すなわち、点Pxは、y軸の座標がレーザセンサ20のy軸の座標(y=0)と同じであり、且つx軸の座標が所定場所Aの路面におけるレーザセンサ20から最も離れた位置の座標(x=W)である。道路Rの幅Wは、車両情報を取得する対象として想定している車両のうち最大の車幅を有する車両の車幅よりも長い、すなわち車両情報を取得する対象として想定している車両の最大車幅W_maxよりも長い。
【0044】
点Py(第2所定点)は、矩形の所定場所Aの頂点の1つであり、道路Rの延びる方向において点Oと反対側の端の点である。点Pyのy軸の座標は所定場所Aの長さLと等しく、点Pyの座標は(0,L,0)である。すなわち、点Pyは、x軸の座標がレーザセンサ20のx軸の座標(x=0)と同じであり、且つy軸の座標が所定場所Aの路面におけるレーザセンサ20から最も離れた位置の座標(y=L)である。
【0045】
支柱11へのレーザセンサ20の取付角度は、所定場所Aの路面と走査面Sとの交線B(走査面S)が、点Px及び点Pyを通るように設定されている。すなわち、レーザセンサ20は、所定場所Aの路面と走査面Sとの交線B(走査面S)が、点Px及び点Pyを通るように設置されている。換言すれば、走査面S(所定面)は、点Px、点Py、及び点Pzを通る平面である。レーザセンサ20は、交線Bがy軸及びx軸に対して斜めになり、且つ交線Bのx軸方向の長さが車両の最大車幅W_maxよりも長くなるように設置されている。このように、所定場所Aの地面とレーザセンサ20との位置関係は、X軸の方向におけるレーザセンサ20と点Pxとの距離W、y軸の方向におけるレーザセンサ20と点Pyとの距離L、及びz軸の方向における所定場所Aの地面とレーザセンサ20との距離Hを含んでいる。
【0046】
図6に示すように、PzOベクトルとPzPxベクトルのなす角θxは、以下のように算出することができる。PzOベクトル=(0,0,-H)、PzPxベクトル=(W,0,-H)である。そして、PzOベクトルとPzPxベクトルとの内積は、以下の数式で表される。
【0047】
【数1】
したがって、PzOベクトルとPzPxベクトルのなす角θxは、以下のように算出することができる。
【0048】
【数2】
PzOベクトルとPzPyベクトルのなす角θyも同様にして、以下のように算出することができる。
【0049】
【数3】
ユーザが所定場所Aにレーザセンサ20を設置する際には、上記の角θx,θyとなるようにレーザセンサ20の角度(向き)を調節すればよい。
【0050】
図1に戻り、レーザセンサ20は、パルスレーザ光を所定角間隔(例えば0.25°間隔)で所定範囲に照射して、走査面Sを走査する。レーザセンサ20がパルスレーザ光を照射する照射角θは、例えば0°≦θ≦190°である。レーザセンサ20は、パルスレーザ光を照射してから、パルスレーザ光が物体で反射された反射光を受光するまでの時間に基づいて、パルスレーザ光の各照射角θ(各照射方向)におけるレーザセンサ20から物体までの各距離rを検出する。レーザセンサ20は、例えばレーザセンサ20から30~60[m]の範囲の物体までの距離を検出することができる。レーザセンサ20は、照射角θ=0°から照射角θ=190°までの1回の走査において、走査面S上で検出した物体の各部分の各座標(0°,r0)、(0.25°,r1)、(0.50°,r2)、・・・(190°,r760)を算出部30へ出力する。すなわち、レーザセンサ20は、1回の走査において、走査面S上で検出した物体の各部分の各座標(θ,r)を算出部30へ出力する(照射角θは所定範囲における所定角間隔の角度)。そして、レーザセンサ20は、走査毎に(パルスレーザ光の走査周期で)これを繰り返す。なお、所定範囲は、0°≦θ≦190°に限らず、パルスレーザ光が点Pxから点Pyまで照射される範囲であればよい。
【0051】
算出部30は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、及び入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを主体として構成されている。算出部30は、レーザセンサ20により検出された、パルスレーザ光の各照射角θにおけるレーザセンサ20から物体までの各距離rに基づいて、走査面Sを道路Rの延びる方向に通過する車両(通過物)の大きさ(車幅w、車高h、車長l)、進行方向d、及び速度vを算出する。以下、算出部30が、車両の車幅w、車高h、車長l、進行方向d、及び速度vを算出する方法について説明する。
【0052】
図7は、座標変換の態様を示す斜視図である。算出部30は、レーザセンサ20からの入力情報である各座標(θ,r)を、xyz座標系の各座標(x,y,z)に変換する。
なお、図7の角θ[rad]は、PzPxベクトルの方向をθ=0として、走査面Sに沿ったパルスレーザ光の照射方向を表す角である。算出部30は、上記照射角θ[°]を図7の角θ[rad]に変換して以下の処理を実行する。
【0053】
図7に示す位置関係から、以下の数式が成立する。なお、角φは、PzPxベクトルとPzPyベクトルの内積から算出することができる。
【0054】
【数4】
【0055】
【数5】
【0056】
【数6】
【0057】
【数7】
上記数式から、以下の数式を導くことができる。
【0058】
【数8】
【0059】
【数9】
【0060】
【数10】
算出部30は、xyz座標系の各座標(x,y,z)に基づいて、車両の車幅w、車高h、車長l、進行方向d、及び速度vを算出する。すなわち、算出部30は、所定場所Aの路面(地面)とレーザセンサ20との位置関係、パルスレーザ光の各照射角θ(各照射方向)、及びレーザセンサ20により検出された各距離rに基づいて、車両(通過物)の車幅w(幅)、車高h(高さ)、車長l(所定方向の長さ)、進行方向d、及び速度vを算出する。
【0061】
図8は、車幅を算出する方法を示す平面図である。車両Cが走査面Sを通過している途中では、車両Cの幅方向の一部までしか走査面Sを通過していない、すなわち車両Cの幅方向の一部までしか、パルスレーザ光が照射された各部分の各座標(x,y,z)が算出されていないおそれがある。この場合に、算出された分の各座標(x,y,z)におけるx軸の座標の最大値と最小値との差に基づいて車両Cの車幅wを算出すると、車両Cの車幅wを正確に算出することができない。
【0062】
そこで、算出部30は、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲に進入してから脱出するまでにおける車両Cのx座標の最大値x_maxと最小値x_minとの差(x_max-x_min)を、車両Cの車幅wとして算出する。具体的には、レーザセンサ20により車両Cが検知されて(走査面Sを通過し始めて)から検知されなくなる(走査面Sを通過し終わる)までに算出された車両Cの各部分の各座標(x,y,z)おけるx座標の最大値x_maxと最小値x_minとの差を、車両Cの車幅wとして算出する。
【0063】
図9は、車幅wを算出する手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、算出部30により実行される。
【0064】
まず、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲に進入したか否か判定する(S10)。具体的には、レーザセンサ20から物体までの距離が、パルスレーザ光のいずれかの照射角θ(変換した角θ)においてレーザセンサ20から道路Rの路面までの距離と異なった場合に、車両Cが検知範囲に進入したと判定する。一方、レーザセンサ20から物体までの距離が、パルスレーザ光のいずれの照射角θにおいてもレーザセンサ20から道路Rの路面までの距離と等しい場合に、車両Cが検知範囲に進入していないと判定する。なお、各照射角θにおけるレーザセンサ20から道路Rの路面までの距離は、予めレーザセンサ20により検出して算出部30に記憶しておくことができる。この判定において、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲に進入していないと判定した場合(S10:NO)、S10の処理を再度実行する。
【0065】
一方、S10の判定において、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲に進入したと判定した場合(S10:YES)、現在の照射角θ(変換した角θ)に対応する座標(x,y,z)を算出する(S11)。具体的には、上記[数8]~[数10]により、車両Cであると認識した部分の座標(θ,r)を、xyz座標系の座標(x,y,z)に変換する。なお、車両Cでなく道路Rであると認識した部分の座標(θ,r)は、対象外としてxyz座標系の座標(x,y,z)に変換しない(x,y,zを算出しない)。
【0066】
続いて、算出したx座標の値xが検知範囲へ車両Cが進入して以降の最小の値xであるか否か判定する(S12)。この判定において、算出したx座標の値xが最小の値xであると判定した場合(S12:YES)、最小値x_minを値xにする(S13)。すなわち、x_min=xとする。一方、この判定において、算出したx座標の値xが最小の値xでないと判定した場合(S12:NO)、S14の処理へ進む。
【0067】
続いて、算出したx座標の値xが検知範囲へ車両Cが進入して以降の最大の値xであるか否か判定する(S14)。この判定において、算出したx座標の値xが最大の値xであると判定した場合(S14:YES)、最大値x_maxを値xにする(S15)。すなわち、x_max=xとする。一方、この判定において、算出したx座標の値xが最大の値xでないと判定した場合(S14:NO)、S16の処理へ進む。
【0068】
続いて、レーザセンサ20による今回走査が終了したか否か判定する(S16)。具体的には、照射角θが1回の走査における最終の照射角(例えば190°)であるか否か判定する。この判定において、今回走査が終了していないと判定した場合(S16:NO)、次の照射角θについてS11の処理から再度実行する。
【0069】
一方、S16の判定において、今回走査が終了したと判定した場合(S16:YES)、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲から脱出したか否か判定する(S17)。具体的には、レーザセンサ20から物体までの距離が、パルスレーザ光のいずれの照射角θにおいてもレーザセンサ20から道路Rの路面までの距離と等しい場合に、車両Cが検知範囲から脱出したと判定する。一方、レーザセンサ20から物体までの距離が、パルスレーザ光のいずれかの照射角θにおいてレーザセンサ20から道路Rの路面までの距離と異なった場合に、車両Cが検知範囲から脱出していないと判定する。この判定において、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲から脱出していないと判定した場合(S17:NO)、最初の照射角θからS11以降の処理を再度実行する。
【0070】
一方、S17の判定において、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲から脱出したと判定した場合(S17:YES)、算出した最大値x_maxと最小値x_minとに基づいて、車両Cの車幅wを算出する(S18)。具体的には、車両Cのx座標の値xの最大値x_maxから最小値x_minを引いて車幅wを算出する(w=x_max-x_min)。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0071】
車両Cが走査面Sを所定方向に通過する態様として、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から遠い側から近い側へ通過する場合(図10)と、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から近い側から遠い側へ通過する場合(図11)とがある。図10は車両Cの進行方向が方向d1である場合を示す平面図であり、図11は車両Cの進行方向が方向d2である場合を示す平面図である。方向d1(第1方向)は、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から遠い側から近い側へ通過(進行)する方向である。方向d2(第2方向)は、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から近い側から遠い側へ通過(進行)する方向である。
【0072】
レーザセンサ20は、走査面Sと所定場所Aの路面との交線Bが所定方向(道路Rの延びる方向)に対して斜めになるように設置されている。このため、車両Cが走査面Sを所定方向に通過する際に、所定方向において、車両Cの前部が走査面Sを最初に通過する第1位置P1と、車両Cの後部が走査面Sを最後に通過する第2位置P2とが異なる。そして、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から遠い側から近い側へ通過する場合と、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から近い側から遠い側へ通過する場合とで、所定方向においてレーザセンサ20に対して第1位置P1と第2位置P2とのいずれが近いかが逆になる。具体的には、図10に示すように、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から遠い側から近い側へ通過する場合は、所定方向においてレーザセンサ20に対して第2位置P2が第1位置P1よりも近い。一方、図11に示すように、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から近い側から遠い側へ通過する場合は、所定方向においてレーザセンサ20に対して第1位置P1が第2位置P2よりも近い。
【0073】
そこで、算出部は、車両Cが走査面Sを所定方向に通過する際に、所定方向において、車両Cの前部が走査面Sを最初に通過する第1位置P1と、車両Cの後部が走査面Sを最後に通過する第2位置P2とのいずれがレーザセンサ20に近いかに基づいて、車両Cの進行方向(所定方向)は、方向d1と方向d2とのいずれであるかを判定する。
【0074】
図12は、進行方向dを判定する手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、算出部30により実行される。なお、算出部30は、図9の処理、図12の処理、及び後述する図14,17,20の処理を並行して実行する。
【0075】
S20,S21の処理は、図9のS10,S11の処理と同一である。
【0076】
続いて、算出したy座標の値yを順次保存する(S22)。具体的には、照射角θに対応するy座標の値yを時系列で(算出順に整理して)保存する。
【0077】
S23の処理は、図9のS16の処理と同一である。
【0078】
続いて、今回走査が1回目の走査であるか否か判定する(S24)。具体的には、今回走査が、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲に進入したと判定した最初の走査であるか否か判定する。この判定において、今回走査が1回目の走査であると判定した場合(S24:YES)、今回走査でのy値の平均値をy座標の最初値y_firstとする(S25)。すなわち、y座標の最初値y_firstは、今回走査で算出した各照射角θに対応するy値(0°≦θ≦190°)の平均値である。
【0079】
一方、今回走査が1回目の走査でないと判定した場合(S24:NO)、今回走査でのy値の平均値をy座標の最後値y_lastとする(S26)。すなわち、y座標の最後値y_lastは、今回走査で算出した各照射角θに対応するy値(0°≦θ≦190°)の平均値である。
【0080】
S27の処理は、図9のS17の処理と同一である。そして、y座標の最後値y_lastを、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲から脱出したと判定する(S27:YES)まで走査毎に更新する。
【0081】
続いて、y座標の最初値y_firstが最後値y_lastよりも大きいか否か判定する(S28)。この判定において、y座標の最初値y_firstが最後値y_lastよりも大きいと判定した場合(S28:YES)、車両Cの進行方向dは方向d1であると判定する(S29A)。一方、この判定において、y座標の最初値y_firstが最後値y_lastよりも大きくないと判定した場合(S28:NO)、車両Cの進行方向dは方向d2であると判定する(S29B)。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0082】
図13は、車高を算出する方法を示す斜視図。車両Cが走査面Sを通過している途中では、車両Cの所定方向(道路Rの延びる方向)の一部までしか走査面Sを通過していない、すなわち車両Cの所定方向の一部までしか、パルスレーザ光が照射された各部分の各座標(x,y,z)が算出されていないおそれがある。この場合に、算出された分の各座標(x,y,z)におけるz座標の最大値z_maxに基づいて車両Cの車高hを算出すると、車両Cの車高hを正確に算出することができない。
【0083】
そこで、算出部30は、車両Cが走査面Sを通過し始めてから通過し終わるまでに算出された各座標(x,y,z)におけるz座標の最大値z_maxに基づいて、車両Cの車高hを算出する。具体的には、レーザセンサ20により車両Cが検知されて(走査面Sを通過し始めて)から検知されなくなる(走査面Sを通過し終わる)までに算出された車両Cの各部分の各座標(x,y,z)おけるz座標の最大値z_maxを、車両Cの車高hとして算出する。
【0084】
図14は、車高hを算出する手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、算出部30により実行される。
【0085】
S30,S31の処理は、図9のS10,S11の処理と同一である。
【0086】
続いて、算出したz座標の値zが検知範囲へ車両Cが進入して以降の最大の値zであるか否か判定する(S32)。この判定において、算出したz座標の値Zが最大の値Zであると判定した場合(S32:YES)、最大値z_maxを値zにする(S33)。すなわち、z_max=zとする。一方、この判定において、算出したz座標の値zが最大の値zでないと判定した場合(S32:NO)、S34の処理へ進む。
【0087】
S34,S35の処理は、図9のS16,S17の処理と同一である。そして、z座標の最大値z_maxを、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲から脱出したと判定する(S35:YES)まで走査毎に更新する。
【0088】
続いて、車高hを最大値z_maxとする(S36)。すなわち、h=z_maxとする。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0089】
車両Cの前部にはバンパーが設けられており、車両Cが所定方向(y軸方向)に進行する場合に、バンパーの前端の位置は車両Cの幅方向(x軸方向)であまり変化しないことが多い。このため、所定場所Aの路面と走査面Sとの交線Bが所定方向に対して斜めになる場合に、パルスレーザ光が車両Cの幅方向においてバンパーの異なる部分に照射されても、それらの部分のy座標は近い値になる。
【0090】
そこで、算出部30は、所定方向において車両Cの前端のy座標を所定時間間隔で算出し、算出した前端のy座標の所定時間での変化量と、所定時間とに基づいて、車両Cの所定方向の速度vを算出する。図15に示すように、算出部30は、進行方向が方向d1である場合は、所定方向において車両Cが走査面Sを通過し始めた時のy座標の最初の最小値y_min[1]と、1走査周期後のy座標の2走査目の最小値y_min[2]と、走査周期Tとに基づいて、車両Cの所定方向の速度vを算出する。進行方向が方向d1である場合は、最初の走査の最小値y_min[1]から2走査目の最小値y_min[2]を引いて、1走査周期でのy座標の変化量を算出する。一方、図16に示すように、算出部30は、進行方向が方向d2である場合は、所定方向において車両Cが走査面Sを通過し始めた時のy座標の最初の最大値y_max[1]と、1走査周期後のy座標の2走査目の最大値y_max[2]と、走査周期Tとに基づいて、車両Cの所定方向の速度vを算出する。進行方向が方向d2である場合は、最初の走査の最大値y_max[1]を2走査目の最大値y_max[2]から引いて、1走査周期でのy座標の変化量を算出する。
【0091】
図17は、車速vを算出する手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、算出部30により実行される。
【0092】
S40の処理は、図9のS10の処理と同一である。
【0093】
続いて、n=1にする(S41)。
【0094】
S42~S44の処理は、図12のS21~S23の処理と同一である。
【0095】
続いて、今回(n回目)走査でのy値の最大値をy座標の最大値y_max[n]とする(S45)。今回走査でのy値の最小値をy座標の最小値y_min[n]とする(S46)。
【0096】
続いて、nを1増加させる(S47)。すなわち、n←n+1とする。
【0097】
続いて、今回走査が2回目の走査であるか否か判定する(S48)。この判定において、今回走査が2回目の走査でないと判定した場合(S48:NO)、S42の処理から再度実行する。
【0098】
一方、S48の判定において、今回走査が2回目の走査であると判定した場合(S48:YES)、車両Cの進行方向dが確定するまで待機する(S49)。なお、車両Cの進行方向dは、図17の一連の処理と並行して実行されている図12の一連の処理により確定する。
【0099】
続いて、車両Cの進行方向dが方向d1であるか否か判定する(S50)。この判定において、車両Cの進行方向dが方向d1であると判定した場合(S50:YES)、y座標の最初の走査の最小値y_min[1]、2走査目の最小値y_min[2]、及び走査周期Tに基づいて車速vを算出する(S51)。具体的には、y座標の最初の走査の最小値y_min[1]から2走査目の最小値y_min[2]を引いてy座標の変化量を算出し、y座標の変化量を走査周期Tで割って車速vを算出する{v=(y_min[1]-y_min[2])/T}。
【0100】
一方、S50の判定において、車両Cの進行方向dが方向d1でないと判定した場合(S50:NO)、y座標の最初の走査の最大値y_max[1]、2走査目の最大値y_max[2]、及び走査周期Tに基づいて車速vを算出する(S52)。具体的には、y座標の2走査目の最大値y_max[2]から最初の走査の最大値y_max[1]を引いてy座標の変化量を算出し、y座標の変化量を走査周期Tで割って車速vを算出する{v=(y_max[2]-y_max[1])/T}。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0101】
所定場所Aの地面と走査面Sとの交線Bが所定方向に対して斜めになる場合には、所定速度vの列車が所定長さLのトンネルを所定時間tで通過する場合の通過算の考え方を適用して、車両Cの車長l(所定方向の長さ)を算出することができる。通過算では、トンネルを通過し始めてから通過し終わるまでに列車が進んだ距離(v×t)から、トンネルの長さLを引くことにより列車の長さlを算出する(l=v×t-L)。ここでは、車両Cが走査面Sを通過し始めた位置から通過し終わった位置までをトンネルとみなすことにより、通過算の考え方を適用することができる。
【0102】
そこで、図18,19に示すように、算出部30は、車両Cが走査面Sを所定方向に通過する際に、所定方向において、車両Cの前部が走査面Sを最初に通過する第1位置P1のy座標と、車両Cの後部が走査面Sを最後に通過する第2位置P2のy座標と、所定方向において車両Cの前部が走査面Sを最初に通過し始めてから車両Cの後部が走査面Sを最後に通過するまでの時間tと、を算出し、算出した速度vと算出した時間tとの積(v×t)から、第1位置P1のy軸の座標と第2位置P2のy軸の座標との変化量Δyを引くことにより、車両Cの車長l(所定方向の長さ)を算出する(l=v×t-Δy)。図18に示すように、車両Cの進行方向dが方向d1である場合は、所定方向において車両Cの前部が走査面Sを最初に通過し初めた時のy座標の最初の最小値y_fminから、車両Cの後部が走査面Sを最後に通過する時のy座標の最後の最小値y_lminを引いてΔyを算出する(Δy=y_fmin-y_lmin)。図19に示すように、車両Cの進行方向dが方向d2である場合は、所定方向において車両Cの前部が走査面Sを最初に通過し初めた時のy座標の最初の最大値y_fmaxを、車両Cの後部が走査面Sを最後に通過する時のy座標の最後の最大値y_lmaxから引いてΔyを算出する(Δy=y_lmax-y_fmax)。
【0103】
図20は、車長lを算出する手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、算出部30により実行される。
【0104】
S40の処理は、図9のS10の処理と同一である。
【0105】
続いて、時間tの計測を開始する(S61)。
【0106】
S62~S64の処理は、図12のS21~S23の処理と同一である。
【0107】
続いて、今回走査が1回目の走査であるか否か判定する(S65)。この判定において、今回走査が1回目の走査であると判定した場合(S65:YES)、今回走査でのy値の最小値をy座標の最初の最小値y_fminとする(S66)。今回走査でのy値の最大値をy座標の最初の最大値y_fmaxとする(S67)。
【0108】
一方、S65の判定において、今回走査が1回目の走査でないと判定した場合(S65:NO)、今回走査でのy値の最小値をy座標の最後の最小値y_lminとする(S68)。今回走査でのy値の最大値をy座標の最後の最大値y_lmaxとする(S69)。
【0109】
S70の処理は、図9のS17の処理と同一である。そして、y座標の最後の最小値y_lmin及びy座標の最後の最大値y_lmaxを、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲から脱出したと判定する(S70:YES)まで走査毎に更新する。
【0110】
続いて、車両Cの進行方向d及び車速vが確定するまで待機する(S71)。なお、車両Cの進行方向dは、図20の一連の処理と並行して実行されている図12の一連の処理により確定する。車速vは、図20の一連の処理と並行して実行されている図17の一連の処理により確定する。
【0111】
続いて、車両Cの進行方向dが方向d1であるか否か判定する(S72)。この判定において、車両Cの進行方向dが方向d1であると判定した場合(S72:YES)、車速v、時間t、y座標の最初の最小値y_fmin、及びy座標の最後の最小値y_lminに基づいて車長lを算出する(S73)。具体的には、車速vと時間tとの積から、y座標の最初の最小値y_fminと最後の最小値y_lminとの差を引いて車長lを算出する{l=v×t-(y_fmin-y_lmin)}。
【0112】
一方、S72の判定において、車両Cの進行方向dが方向d1でないと判定した場合(S72:NO)、車速v、時間t、y座標の最後の最大値y_lmax、及びy座標の最初の最大値y_fmaxに基づいて車長lを算出する(S74)。具体的には、車速vと時間tとの積から、y座標の最後の最大値y_lmaxと最初の最大値y_fmaxとの差を引いて車長lを算出する{l=v×t-(y_lmax-y_fmax)}。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0113】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0114】
・レーザセンサ20は、情報を取得する対象として想定している車両Cの最大高さH_maxよりも高い位置に設置されている。このため、レーザセンサ20は、対象として想定している車両Cが走査面Sを通過する際に、車両Cの最も高い部分にパルスレーザ光を照射することができる。したがって、算出部30は、所定場所Aの路面(地面)とレーザセンサ20との位置関係、パルスレーザ光の各照射方向(各照射角θ)、及びレーザセンサ20から車両Cの最も高い部分までの距離rに基づいて、車両Cの車高hを算出することができる。
【0115】
・レーザセンサ20は、所定場所Aの路面と走査面Sとの交線Bの所定方向(道路Rの延びる方向)に垂直な幅方向の長さが、情報を取得する対象として想定している車両Cの幅方向の最大幅よりも長くなるように設置されている。このため、レーザセンサ20は、車両Cが所定場所Aを所定方向に通過する際に、車両Cの幅方向の両端にパルスレーザ光を照射することができる。したがって、算出部30は、所定場所Aの路面とレーザセンサ20との位置関係、各照射方向、及びレーザセンサ20から車両Cの幅方向の両端までの各距離rに基づいて、車両Cの車幅wを算出することができる。
【0116】
・レーザセンサ20は、走査面Sと所定場所Aの路面との交線Bが所定方向に対して斜めになるように設置されている。このため、レーザセンサ20は、車両Cが走査面Sを所定方向に通過する際に、車両Cの前端及び後端に複数のタイミング及び複数の位置でパルスレーザ光を照射することができる。したがって、算出部30は、所定場所Aの路面とレーザセンサ20との位置関係、各照射方向、並びにレーザセンサ20から車両Cの前端及び後端までの複数のタイミング及び複数の位置で検出した各距離rに基づいて、車両Cの車長l(車両Cの所定方向の長さ)を算出することができる。
【0117】
・上記により、車両情報取得システム10は、固定の走査面Sを走査する1つのレーザセンサ20のみからの入力情報(各座標(θ,r))に基づいて、車両Cの車幅w、車高h、及び車長lを算出することができる。
【0118】
・算出部30は、所定場所Aの路面とレーザセンサ20との位置関係、各照射方向、及びレーザセンサ20により検出された各距離rに基づいて、幅方向をx軸、所定方向をy軸、高さ方向をz軸とする3次元座標系において、車両Cのパルスレーザ光が照射された各部分の各座標(x,y,z)を算出し、各座標(x,y,z)に基づいて、車両Cの車幅w、車高h、及び車長lを算出する。こうした構成によれば、車両Cの車幅w、車高h、及び車両Cの車長lを算出しやすくなる。
【0119】
・算出部30はさらに、所定方向は、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から遠い側から近い側へ通過する方向d1と、車両Cが走査面Sに対してレーザセンサ20から近い側から遠い側へ通過する方向d2とのいずれであるかを判定する。したがって、車両情報取得システム10は、固定の走査面Sを走査する1つのレーザセンサ20のみからの入力情報に基づいて、車両Cの車幅w、車高h、及び車長lを算出することに加えて、車両Cの進行方向dを判定することができる。
【0120】
・算出部30は、車両Cが走査面Sを所定方向に通過する際に、所定方向において、車両Cの前部が走査面Sを最初に通過する第1位置P1と、車両Cの後部が走査面Sを最後に通過する第2位置P2とのいずれがレーザセンサ20に近いかに基づいて、所定方向は、方向d1と方向d2とのいずれであるかを判定する。こうした構成によれば、車両Cの進行方向dを正確に判定することができる。
【0121】
・算出部30は、車両Cが走査面Sを通過し始めてから通過し終わるまでに算出された各座標(x,y,z)におけるx座標の最大値x_maxと最小値x_minとの差に基づいて、車両Cの車幅wを算出する。このため、車両Cが走査面Sを通過し終わって、車両Cの全体でパルスレーザ光が照射された各部分の各座標(x,y,z)が算出されている。したがって、車両Cの全体で算出された各座標(x,y,z)におけるx座標の最大値x_maxと最小値x_minとの差に基づいて車両Cの車幅wを算出することができ、車両Cの車幅wを正確に算出することができる。
【0122】
・算出部30は、車両Cが走査面Sを通過し始めてから通過し終わるまでに算出された各座標(x,y,z)におけるz軸の座標の最大値z_maxに基づいて、車両Cの車高hを算出する。このため、車両Cが走査面Sを通過し終わって、車両Cの全体でパルスレーザ光が照射された各部分の各座標(x,y,z)が算出されている。したがって、車両Cの全体で算出された各座標(x,y,z)におけるz座標の最大値z_maxに基づいて車高hを算出することができ、車高hを正確に算出することができる。
【0123】
・算出部30はさらに、所定方向において車両Cの前端のy座標を走査周期T間隔で算出し、算出した前端のy軸の座標の走査周期Tでの変化量と、走査周期Tとに基づいて、車両Cの車速v(所定方向の速度)を算出する。こうした構成によれば、車両Cの所定方向の前端としてバンパーの座標を算出することができ、車両Cの車速vを正確に算出することができる。
【0124】
・算出部30は、車両Cが走査面Sを所定方向に通過する際に、所定方向において、車両Cの前部が走査面Sを最初に通過する第1位置P1のy座標と、車両Cの後部が走査面Sを最後に通過する第2位置P2のy座標と、所定方向において車両Cの前部が走査面Sを最初に通過し始めてから車両Cの後部が走査面Sを最後に通過するまでの時間tと、を算出し、算出した車速vと算出した時間tとの積から、第1位置P1のy座標と第2位置P2のy座標との変化量を引くことにより、車両Cの車長lを算出する。こうした構成によれば、車両情報取得システム10は、固定の走査面Sを走査する1つのレーザセンサ20のみからの入力情報に基づいて、車両Cの車長lを正確に算出することができる。
【0125】
・所定場所Aは、道路Rの一部であり、所定方向は、道路Rが延びる方向である。このため、車両情報取得システム10は、道路Rの所定場所Aを通過する車両Cの車幅w、車高h、及び車長lを算出することができる。
【0126】
・幅方向におけるレーザセンサ20と点Px(第1所定点)との距離は、道路Rにおいてy座標がレーザセンサ20のy座標と同じである部分の幅方向の幅Wと同じである。このため、走査面Sは幅方向における道路Rの一端から他端まで広がっており、道路Rを所定方向に進行する車両Cが走査面Sを漏れなく通過するようにすることができる。したがって、道路Rを所定方向に進行する車両Cの車幅w、車高h、及び車長lを、漏れなく算出することができる。
【0127】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0128】
図12のS25の処理において、今回走査での車両Cに対応するいずれかのy値をy座標の最初値y_firstとしてもよい。また、図12のS26の処理において、今回走査での車両Cに対応するいずれかのy値をy座標の最初値y_lastとしてもよい。
【0129】
図17の一連の処理において、車両Cの進行方向dが方向d1である場合に、y座標の最初の走査の最小値y_min[1]、3走査目の最小値y_min[3]、及び走査周期Tの2倍に基づいて車速vを算出することもできる。具体的には、y座標の最初の走査の最小値y_min[1]から3走査目の最小値y_min[3]を引いて所定時間間隔(2T)におけるy座標の変化量を算出し、y座標の変化量を所定時間間隔で割って車速vを算出することもできる{v=(y_min[1]-y_min[3])/2T}。なお、車両Cの進行方向dが方向d2である場合は、y座標の最初の走査の最大値y_max[1]、3走査目の最大値y_max[3]、及び走査周期Tの2倍に基づいて車速vを算出することができる。
【0130】
図21に示すように、図9,12,14,17,20のフローチャートの処理を1つのフローチャートの処理にまとめて実行することもできる。図21のフローチャートにおける各処理の内容は、図9,12,14,17,20のフローチャートにおける各処理の内容と同一である。以下に、手順の概要を記載する。
【0131】
車両Cがレーザセンサ20の検知範囲に進入したか否か判定する(S80)。n=1にする(S81)。時間tの計測を開始する(S82)。現在の照射角θに対応する座標(x,y,z)を算出する(S83)。算出したy座標の値yを順次保存する(S84)。算出したx座標の値xが検知範囲へ車両Cが進入して以降の最小の値xであるか否か判定する(S85)。算出したx座標の値xが検知範囲へ車両Cが進入して以降の最小の値xであると判定した場合(S85:YES)、最小値x_minを値xにする(S86)。一方、算出したx座標の値xが検知範囲へ車両Cが進入して以降の最小の値xでないと判定した場合(S85:NO)、S87の処理へ進む。
【0132】
続いて、算出したx座標の値xが検知範囲へ車両Cが進入して以降の最大の値xであるか否か判定する(S87)。算出したx座標の値xが最大の値xであると判定した場合(S87:YES)、最大値x_maxを値xにする(S88)。一方、算出したx座標の値xが最大の値xでないと判定した場合(S87:NO)、S89の処理へ進む。算出したz座標の値zが検知範囲へ車両Cが進入して以降の最大の値zであるか否か判定する(S89)。算出したz座標の値Zが最大の値Zであると判定した場合(S89:YES)、最大値z_maxを値zにする(S90)。一方、算出したz座標の値zが最大の値zでないと判定した場合(S89:NO)、S91の処理へ進む。レーザセンサ20による今回走査が終了したか否か判定する(S91)。今回走査が終了していないと判定した場合(S91:NO)、次の照射角θについてS83の処理から再度実行する。
【0133】
一方、今回走査が終了したと判定した場合(S91:YES)、今回走査が1回目の走査であるか否か判定する(S92)。今回走査が1回目の走査であると判定した場合(S92:YES)、今回走査でのy値の平均値をy座標の最初値y_firstとする(S93)。今回走査でのy値の最小値をy座標の最初の最小値y_fminとする(S94)。今回走査でのy値の最大値をy座標の最初の最大値y_fmaxとする(S95)。一方、今回走査が1回目の走査でないと判定した場合(S92:NO)、今回走査でのy値の平均値をy座標の最後値y_lastとする(S96)。今回走査でのy値の最小値をy座標の最後の最小値y_lminとする(S97)。今回走査でのy値の最大値をy座標の最後の最大値y_lmaxとする(S98)。
【0134】
続いて、今回(n回目)走査でのy値の最大値をy座標の最大値y_max[n]とする(S99)。今回走査でのy値の最小値をy座標の最小値y_min[n]とする(S100)。nを1増加させる(S101)。車両Cがレーザセンサ20の検知範囲から脱出したか否か判定する(S102)。車両Cがレーザセンサ20の検知範囲から脱出していないと判定した場合(S102:NO)、最初の照射角θからS83以降の処理を再度実行する。一方、車両Cがレーザセンサ20の検知範囲から脱出したと判定した場合(S102:YES)、車両Cの車幅wを算出する(S103)。y座標の最初値y_firstが最後値y_lastよりも大きいか否か判定する(S104)。y座標の最初値y_firstが最後値y_lastよりも大きいと判定した場合(S104:YES)、車両Cの進行方向dは方向d1であると判定する(S105)。一方、y座標の最初値y_firstが最後値y_lastよりも大きくないと判定した場合(S104:NO)、車両Cの進行方向dは方向d2であると判定する(S106)。
【0135】
続いて、車高hを最大値z_maxとする(S107)。車両Cの進行方向dが方向d1であるか否か判定する(S108)。車両Cの進行方向dが方向d1であると判定した場合(S108:YES)、y座標の最初の走査の最小値y_min[1]、2走査目の最小値y_min[2]、及び走査周期Tに基づいて車速vを算出する(S109)。車速v、時間t、y座標の最初の最小値y_fmin、及びy座標の最後の最小値y_lminに基づいて車長lを算出する(S110)。一方、車両Cの進行方向dが方向d1でないと判定した場合(S108:NO)、y座標の最初の走査の最大値y_max[1]、2走査目の最大値y_max[2]、及び走査周期Tに基づいて車速vを算出する(S111)。車速v、時間t、y座標の最後の最大値y_lmax、及びy座標の最初の最大値y_fmaxに基づいて車長lを算出する(S112)。その後、この一連の処理を終了する(END)。以上の処理によっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、算出部30は、複数のフローチャートの処理を並行して実行する必要がなく、1つのフローチャートの処理を実行することにより車両Cの情報を取得することができる。
【0136】
図22に示すように、点Px(第1所定点)及び点Py(第2所定点)が所定場所A(道路R)よりも外側に設定されていてもよい。こうした構成によれば、道路Rを走行する車両は、所定場所Aを通過する際に走査面Sを通過する。したがって、車両情報取得システム10は、走査面Sを道路Rの延びる方向(所定方向)に通過する車両(通過物)の大きさ等(情報)を算出することができる。
【0137】
図23に示すように、点Px(第1所定点)及び点Py(第2所定点)が所定場所A(道路R)の幅方向の両端よりも内側に設定されていてもよい。こうした構成によっても、例えば点Px,Pyが車道及び歩道を備える道路Rのうち車道の幅方向の両端付近に設定されていれば、車道(道路R)を走行する車両は所定場所Aを通過する際に走査面Sを通過する。したがって、車両情報取得システム10は、走査面Sを車道(道路R)の延びる方向(所定方向)に通過する車両(通過物)の大きさ等(情報)を算出することができる。
【0138】
・車両情報取得システム10は、車両C(通過物)の車幅w(幅)、車高h(高さ)、車長l(長さ)、進行方向d、及び車速v(速度)を取得してもよいし、車幅w、車高h、車長l、及び進行方向dのみを取得してもよいし、車幅w、車高h、及び車長lのみを取得してもよい。
【0139】
・所定場所Aは、道路Rの一部に限らず、高速道路の料金所の入口又は出口、駐車場の入口又は出口等であってもよい。また、車両情報取得システム10は、車両Cの進行方向により車両Cが正しい方向に進行しているか、逆走しているか判定してもよい。
【0140】
・車両情報取得システム10(通過物情報取得システム)は、車両C(自動車)の大きさに限らず、二輪車、自転車、歩行者等(通過物)の大きさを算出することもできる。
【符号の説明】
【0141】
10…車両情報取得システム、20…レーザセンサ、30…算出部、A…所定場所、R…道路、S…走査面。
図1
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