(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025907
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】半導体直流遮断器および半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240220BHJP
H01L 23/58 20060101ALI20240220BHJP
H02H 3/08 20060101ALI20240220BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/56 C
H02H3/08 A
H02J1/00 309Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129268
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 大助
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康二
(72)【発明者】
【氏名】前田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】富安 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】串間 宇幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
【テーマコード(参考)】
5G004
5G165
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB02
5G004BA04
5G004DA02
5G004DA04
5G004EA01
5G165BB04
5G165CA01
5G165EA01
5G165HA07
5G165KA05
5G165LA02
5G165NA02
5G165NA04
(57)【要約】
【課題】
異常電流を検出した時に電流を遮断するための半導体スイッチング素子が故障した場合でも電流の遮断が可能な冗長性を有する半導体直流遮断器を提供する。
【解決手段】
異常電流の検出時に主電流を遮断する半導体スイッチング素子21を有する半導体直流遮断器1において、半導体スイッチング素子21に直列に接続されたヒューズ25と、異常電流を検出する異常電流検出部11と、異常電流検出部11で異常電流が検出された場合に半導体スイッチング素子21をオフするゲート駆動部12と、を有し、半導体スイッチング素子21をオフする異常電流の大きさが、ヒューズ25の溶断電流よりも小さく設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常電流の検出時に主電流を遮断する半導体スイッチング素子を有する半導体直流遮断器において、
前記半導体スイッチング素子に直列に接続されたヒューズと、
前記異常電流を検出する異常電流検出部と、
前記異常電流検出部で前記異常電流が検出された場合に前記半導体スイッチング素子をオフするゲート駆動部と、を有し、
前記半導体スイッチング素子をオフする前記異常電流の大きさが、前記ヒューズの溶断電流よりも小さく設定されていることを特徴とする半導体直流遮断器。
【請求項2】
請求項1において、
前記異常電流検出部は、前記ヒューズの寄生抵抗または寄生インダクタンスの両端に生じる電圧を含んだ電圧に基づいて前記異常電流を検出することを特徴とする半導体直流遮断器。
【請求項3】
請求項1において、
前記半導体スイッチング素子を経路内に含み、かつ、前記ヒューズを経路内に含まないクランプ回路を有することを特徴とする半導体直流遮断器。
【請求項4】
請求項1において、
前記半導体スイッチング素子は、第1のスイッチング素子の基準電位端子と第2のスイッチング素子の基準電位端子とが接続されて構成された双方向スイッチであることを特徴とする半導体直流遮断器。
【請求項5】
請求項1において、
前記半導体スイッチング素子は、前記主電流が流れる第1の主端子および第2の主端子を有し、
前記半導体スイッチング素子と、前記半導体スイッチング素子を内蔵する筐体と、前記第1の主端子に接続された第1の外部端子と、前記第2の主端子に接続された第2の外部端子とを有する半導体モジュールを有し、
前記ヒューズは前記半導体モジュールの前記筐体内に内蔵されていることを特徴とする半導体直流遮断器。
【請求項6】
請求項5において、
前記ヒューズは、前記筐体内の配線の一部で形成されており、前記溶断電流が流れた時に溶断するようになっていることを特徴とする半導体直流遮断器。
【請求項7】
請求項6において、
前記ヒューズは、前記第1の外部端子と一体に形成された接続配線の一部が細くなっている、または、薄くなっている、または、他の部分より融点の低い材料で構成されていることにより形成されていることを特徴とする半導体直流遮断器。
【請求項8】
第1の主端子および第2の主端子を有する半導体スイッチング素子と、前記半導体スイッチング素子を内蔵する筐体と、前記第1の主端子に接続された第1の外部端子と、前記第2の主端子に接続された第2の外部端子とを有する半導体モジュールにおいて、
前記半導体スイッチング素子は、前記第1の主端子を有する第1のスイッチング素子の基準電位端子と前記第2の主端子を有する第2のスイッチング素子の基準電位端子とが接続されて構成された双方向スイッチであり、
前記半導体スイッチング素子と直列に接続され、前記筐体内に内蔵されたヒューズをさらに有することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項9】
請求項8において、
前記ヒューズは、前記筐体内の配線の一部で形成されており、所定の溶断電流が流れた時に溶断するようになっていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項10】
請求項9において、
前記ヒューズは、前記第1の外部端子と一体に形成された接続配線の一部が細くなっている、または、薄くなっている、または、他の部分より融点の低い材料で構成されていることにより形成されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項11】
請求項9において、
前記ヒューズは、前記第1のスイッチング素子の前記基準電位端子と前記第2のスイッチング素子の前記基準電位端子との間に形成されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項12】
請求項8において、
前記筐体内にゲルを有し、
前記ヒューズは、前記ゲルにより封止されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項13】
請求項8において、
前記筐体の外部と接続される外部端子として、前記ヒューズの寄生抵抗または寄生インダクタンスの両端に生じる電圧を含んだ電圧を計測可能な計測端子を有することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項14】
請求項8から13の何れかに記載の半導体モジュールと、
前記ヒューズの寄生抵抗または寄生インダクタンスの両端に生じる電圧を含んだ電圧に基づいて異常電流を検出する異常電流検出部と、
前記異常電流検出部で前記異常電流が検出された場合に前記半導体スイッチング素子をオフするゲート駆動部と、を有し、
前記半導体スイッチング素子をオフする前記異常電流の大きさが、前記ヒューズの溶断電流よりも小さく設定されていることを特徴とする半導体直流遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体直流遮断器および半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
異常電流が発生した場合に電流を遮断する機器としては、例えば、ヒューズや、機械式直流遮断器や、半導体直流遮断器などがある。
【0003】
半導体直流遮断器ではないが、ヒューズを用いたものとしては、例えば特許文献1があり、特許文献1の要約および
図1には、「動作中に1個の半導体スイッチング素子が短絡故障した場合でも、動作の継続が可能な半導体モジュールを提供する。」こと、および、「実施形態の半導体モジュールは、第1の外部端子と、第2の外部端子と、第1の外部端子と第2の外部端子との間に電気的に接続され、第1のゲート電極を有する第1の半導体スイッチング素子と、第1の外部端子と第2の外部端子との間に第1の半導体スイッチング素子に対して電気的に並列に接続され、第2のゲート電極を有する第2の半導体スイッチング素子と、第1の外部端子と第1の半導体スイッチング素子との間に電気的に接続された第1のヒューズと、第2の外部端子と第1の半導体スイッチング素子との間に電気的に接続された第2のヒューズと、を備える。」ことが記載されている。
【0004】
また、半導体直流遮断器としては、例えば特許文献2があり、特許文献2の要約および
図1には、「従来よりも汎用性に優れた半導体遮断装置を提供する。」こと、および、「半導体遮断装置(1)は、半導体スイッチ(20)と、半導体スイッチ(20)に流れる電流値を検出する電流センサ(30)と、上記電流値に対応する連続通電許容時間を示す限時特性に基づき半導体スイッチ(20)を遮断する制御回路(10)と、を備えている。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-47674号公報
【特許文献2】特開2022-39777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、特許文献1の
図6のように並列接続された複数の半導体スイッチング素子のうち1つが短絡故障した場合に、短絡故障した半導体スイッチング素子の両側に直列に接続された第1のヒューズと第2のヒューズが同時に切断され、ゲート電極への電流経路を遮断するので、残りの半導体スイッチング素子で動作の継続が可能となる。しかしながら、一度切断されたヒューズは再利用することができない。
【0007】
一方、特許文献2のような半導体直流遮断器であれば、異常電流を検出して半導体スイッチにより遮断するので、遮断後に再利用することが可能である。半導体直流遮断器は、機械式直流遮断器と比較して、半導体の高速遮断特性により異常電流の速やかな遮断が可能であり、保護対象機器へのダメージを抑制できる利点がある。
【0008】
しかしながら、半導体スイッチング素子は宇宙線などによる偶発故障がおこり得るという問題がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、異常電流を検出した時に電流を遮断するための半導体スイッチング素子が故障した場合でも電流の遮断が可能な冗長性を有する半導体直流遮断器と、それに用いるのに適した半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体直流遮断器は、例えば、異常電流の検出時に主電流を遮断する半導体スイッチング素子を有する半導体直流遮断器において、前記半導体スイッチング素子に直列に接続されたヒューズと、前記異常電流を検出する異常電流検出部と、前記異常電流検出部で前記異常電流が検出された場合に前記半導体スイッチング素子をオフするゲート駆動部と、を有し、前記半導体スイッチング素子をオフする前記異常電流の大きさが、前記ヒューズの溶断電流よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の半導体モジュールは、例えば、第1の主端子および第2の主端子を有する半導体スイッチング素子と、前記半導体スイッチング素子を内蔵する筐体と、前記第1の主端子に接続された第1の外部端子と、前記第2の主端子に接続された第2の外部端子とを有する半導体モジュールにおいて、前記半導体スイッチング素子は、前記第1の主端子を有する第1のスイッチング素子の基準電位端子と前記第2の主端子を有する第2のスイッチング素子の基準電位端子とが接続されて構成された双方向スイッチであり、前記半導体スイッチング素子と直列に接続され、前記筐体内に内蔵されたヒューズをさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異常電流を検出した時に電流を遮断するための半導体スイッチング素子が故障した場合でも電流の遮断が可能な冗長性を有する半導体直流遮断器と、それに用いるのに適した半導体モジュールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1の半導体直流遮断器および半導体モジュールの回路図。
【
図3】実施例1の半導体モジュールの内部の斜視図。
【
図4】実施例1の半導体モジュールの内部の上面図。
【
図5】実施例1の半導体モジュールの内部の上面図。
【
図6】実施例1の半導体モジュールの第1の外部端子およびヒューズの上面図。
【
図7】実施例2の半導体直流遮断器および半導体モジュールの回路図。
【
図8】実施例2の半導体モジュールの内部の斜視図。
【
図9】実施例2の半導体モジュールの内部の上面図。
【
図10】実施例3の半導体直流遮断器および半導体モジュールの回路図。
【
図11】実施例4の半導体直流遮断器および半導体モジュールの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【実施例0015】
図1は、実施例1の半導体直流遮断器および半導体モジュールの回路図である。
【0016】
実施例1の半導体直流遮断器1は、電源3と保護対象機器4との間に接続され、異常電流の検出時に電流を遮断する。ここで、半導体直流遮断器1は、異常電流の検出時に主電流を遮断する半導体スイッチング素子21と、半導体スイッチング素子21に直列に接続されたヒューズ25と、異常電流を検出する異常電流検出部11と、異常電流検出部11で異常電流が検出された場合に半導体スイッチング素子21をオフするゲート駆動部12とを有する。そして、半導体スイッチング素子21をオフする異常電流の大きさが、ヒューズ25の溶断電流よりも小さく設定されている。なお、ヒューズ25の溶断電流は、保護対象機器4の許容電流以下に設定されている。
【0017】
このような構成により、異常電流が流れた際に、異常電流を検出して、ヒューズ25が溶断する前に半導体スイッチング素子21をオフして電流を遮断することができるので、半導体直流遮断器1を再利用することが可能であるとともに、半導体スイッチング素子21が宇宙線などによって故障した場合でも、直列に接続されたヒューズ25が溶断することで電流の遮断が可能となる。すなわち、異常電流を検出した時に電流を遮断するための半導体スイッチング素子21が故障した場合でも電流の遮断が可能な冗長性を有する。
【0018】
半導体スイッチング素子21は、第1のスイッチング素子21aの基準電位端子と第2のスイッチング素子21bの基準電位端子とが接続されて構成された双方向スイッチで構成されている。これにより、どちらの方向の電流でも遮断することができる。なお、双方向で遮断する必要がない場合は、一方向の半導体スイッチング素子21を用いてもよい。
【0019】
図1では、第1のスイッチング素子21aと第2のスイッチング素子21bとしてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いた例を示しているが、これに限られず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他の半導体スイッチング素子を用いてもよい。
【0020】
半導体スイッチング素子21がMOSFETの場合、主電流が流れる基準電位端子は主端子の1つであるソースSである。そして、主電流が流れるもう1つの主端子であるドレインDとの間に、MOSFETが内蔵するボディダイオードで構成されたダイオード22が逆並列に接続されている。そして、ゲートGにゲート駆動部12からの制御信号が入力されてオン、オフが制御される。なお、IGBTの場合は、ソースをエミッタと読み替え、ドレインをコレクタと読み替え、ダイオード22は外付けのダイオードを用いればよい。
【0021】
半導体直流遮断器1は、半導体スイッチング素子21を内蔵する半導体モジュール2を有している。
【0022】
図2は、実施例1の半導体モジュールの斜視図であり、
図3は、実施例1の半導体モジュールの内部の斜視図であり、
図4および
図5は、実施例1の半導体モジュールの内部の上面図であり、
図5は、実施例1の半導体モジュールの内部の上面図であり、
図6は、実施例1の半導体モジュールの第1の外部端子およびヒューズの上面図である。なお、
図5では、外部端子および補助端子と、それらに一体に形成された接続配線を図示しているが、
図4ではそれらを図示省略している。
【0023】
半導体モジュール2は、半導体スイッチング素子21と、半導体スイッチング素子21を内蔵する筐体38と、第1の外部端子31と、第2の外部端子32とを有する。第1の外部端子31は、半導体スイッチング素子21の第1の主端子に接続され、第2の外部端子32は、半導体スイッチング素子21の第2の主端子に接続されている。
図1では、第1の主端子は第1のスイッチング素子21aのドレインDであり、第2の主端子は第2のスイッチング素子21bのドレインDである例を示している。
【0024】
さらに、実施例1では、半導体スイッチング素子21と直列に接続されたヒューズ25も半導体モジュール2の筐体38内に内蔵されている。そして、この内蔵されたヒューズ25は、筐体38内の配線の一部で形成されており、所定の溶断電流が流れた時に溶断するようになっている。
【0025】
実施例1では、内蔵されたヒューズ25の一例として、
図6に示すように、ヒューズ25は、第1の外部端子31と一体に形成された接続配線31aの一部が細くなっていることにより形成されている。これにより、
図1に示すように、半導体スイッチング素子21と保護対象機器4との間にヒューズ25を設けることができる。なお、ヒューズ25の形成方法はこれに限られず、例えば、第1の外部端子31と一体に形成された接続配線31aの一部が薄くなっている、または、他の部分より融点の低い材料で構成されていることによってヒューズ25を形成してもよい。
【0026】
また、半導体モジュール2の筐体38内は、図示しないシリコーンゲルなどのゲルで封止されており、ヒューズ25もゲルにより封止されている。これによって、ヒューズ25の絶縁耐圧が向上し、小型化することができる。
【0027】
また、ヒューズ25は、寄生抵抗および寄生インダクタンスを有している。そして、半導体モジュール2の配線も、寄生抵抗および寄生インダクタンスを有している。
図1に示す寄生抵抗23は、配線の寄生抵抗とヒューズ25の寄生抵抗とを含んだものであり、寄生インダクタンス24は、配線の寄生インダクタンスとヒューズ25の寄生インダクタンスとを含んだものである。
【0028】
そこで、実施例1の異常電流検出部11は、ヒューズ25の寄生抵抗または寄生インダクタンスも利用し、ヒューズ25の寄生抵抗または寄生インダクタンスの両端に生じる電圧を含んだ電圧に基づいて異常電流を検出する構成とした。
【0029】
そのために、半導体モジュール2は、筐体38の外部と接続される外部端子として、ヒューズ25の寄生抵抗または寄生インダクタンスの両端に生じる電圧を含んだ電圧を計測可能な計測端子を有する構成とした。実施例1では、計測端子として、
図3に示す異常電流計測用補助端子37と、第1のドレインセンス補助端子35とを用いることができる。
【0030】
異常電流計測用補助端子37は、
図1の異常電流検出部11の右側に接続される端子であり、
図3において、第1の外部端子31に直接接続されている。なお、異常電流計測用補助端子37は、これに限られず、ヒューズ25よりも第1の外部端子31側であれば、接続配線31aに直接接続されていてもよい。なお、実施例1では2つある第1の外部端子31のうち一方のみに異常電流計測用補助端子37を設けた例を示しているが、他方の第1の外部端子31に設けてもよいし、両方の第1の外部端子31に設けてもよい。また、第1の外部端子31を1つだけにしてもよい。
【0031】
第1のドレインセンス補助端子35は、
図1の異常電流検出部11の左側に接続される端子であり、
図5の第1のドレインセンスパッド45に接続されている。これにより、第1のスイッチング素子21aのドレインDの電位を計測可能となる。なお、実施例1では第1のドレインセンス補助端子35を2つ設けているが、1つだけにしてもよい。また、第1のドレインセンス補助端子35は、他の補助端子よりも大きく、第1の外部端子31に近い形状の外部端子となっている。これによって電力変換装置などに用いられる半導体モジュールの交流端子の部品を流用することができる。なお、第1のドレインセンス補助端子35は、これに限られず、他の補助端子と同様の小さな形状としてもよい。
【0032】
図3から
図5に示すように、実施例1の半導体モジュール2は、ベースプレート39の上に、6枚の絶縁基板47を有している。絶縁基板47の上には、配線層48が形成されており、そのうちの一部がパッドとして機能する。
【0033】
図4に示すように、上側の3枚の絶縁基板47のうち、大きな2枚はそれぞれ複数の第1のスイッチング素子21aが搭載され、はんだなどの接合材やボンディングワイヤ49などによって接続されている。残りの1枚は、第1のスイッチング素子21aのゲートGに接続されたゲートパッド43と第1のスイッチング素子21aのソースセンスに接続されたソースセンスパッド44とを有する補助基板である。
【0034】
同様に、下側の3枚の絶縁基板47のうち、大きな2枚はそれぞれ複数の第2のスイッチング素子21bが搭載されている。残りの1枚は、第2のスイッチング素子21bのゲートGに接続されたゲートパッド43と第2のスイッチング素子21bのソースセンスに接続されたソースセンスパッド44とを有する補助基板である。
【0035】
ここでは、電流容量を確保するために複数の第1のスイッチング素子21a、第2のスイッチング素子21bを用いるとともに、左側の絶縁基板47と右側の絶縁基板47で2並列の構成としているが、これに限られず、3並列以上の構成としてもよいし、左側と右側に分けずに1つの経路としてもよい。また、補助基板を用いず第1のスイッチング素子21a、第2のスイッチング素子21bが搭載された絶縁基板47にゲートパッド43とソースセンスパッド44とを設ける構成としてもよい。また、上側と下側に分けずに、1つの絶縁基板47に第1のスイッチング素子21aと第2のスイッチング素子21bとを搭載してもよい。すなわち、絶縁基板47の枚数は任意である。
【0036】
図3および
図5に示すように、半導体モジュール2は、外部端子として、第1の外部端子31と、第2の外部端子32と、ゲート補助端子33と、ソースセンス補助端子34と、第1のドレインセンス補助端子35と、第2のドレインセンス補助端子36と、異常電流計測用補助端子37とを有している。
【0037】
第1の外部端子31は、第1のドレインパッド41に接続され、第1のスイッチング素子21aのドレインDと接続されて、主電流が流れる。第2の外部端子32は、第2のドレインパッド42に接続され、第2のスイッチング素子21bのドレインDと接続されて、主電流が流れる。
【0038】
右側のゲート補助端子33は、上側のゲートパッド43に接続され、第1のスイッチング素子21aのゲートGに接続されている。左側のゲート補助端子33は、下側のゲートパッド43に接続され、第2のスイッチング素子21bのゲートGに接続されている。
【0039】
右側のソースセンス補助端子34は、上側のソースセンスパッド44に接続され、第1のスイッチング素子21aのソースセンスに接続されている。左側のソースセンス補助端子34は、下側のソースセンスパッド44に接続され、第2のスイッチング素子21bのソースセンスに接続されている。
【0040】
ゲート補助端子33とソースセンス補助端子34は、ゲート駆動部12に接続され、ゲート駆動部12からの制御信号により半導体スイッチング素子21が駆動される。
【0041】
第1のドレインセンス補助端子35と、異常電流計測用補助端子37は、すでに説明した通りであるため説明を省略する。
【0042】
第2のドレインセンス補助端子36は、第2のドレインセンスパッド46に接続されている。これにより、第2のスイッチング素子21bのドレインDの電位を計測可能となる。なお、実施例1では第2のドレインセンス補助端子36を1つのみ設けているが、2つ以上設けてもよい。
【0043】
次に、実施例1のクランプ回路について説明する。
【0044】
図1に示すように、実施例1では、ヒューズ25を直列接続している。ヒューズ25は、所定の溶断電流が流れたときに溶断するよう電流密度を高く設定する必要があるため、インダクタンスが大きい。ヒューズ25を直列接続することによってインダクタンスが増大すると、半導体スイッチング素子21を遮断したときにサージ電圧が増大するので、半導体スイッチング素子21として高耐圧の素子が必要となってしまう。しかしながら、半導体スイッチング素子21の高耐圧化は半導体スイッチング素子21のオン抵抗の増大をもたらすので、損失が大きくなってしまうという問題がある。
【0045】
そこで、実施例1では、サージ電圧を抑制するために、クランプ回路を有する構成とした。半導体スイッチング素子21を経路内に含み、かつ、ヒューズ25を経路内に含まないクランプ回路を設けることで、ヒューズ25のインダクタンスによる影響を抑制することができる。
【0046】
実施例1では、2種類のクランプ回路を有する例を示している。
【0047】
1つ目のクランプ回路は、第1のスイッチング素子21aと、第1のスイッチング素子21aのゲートGとドレインDとの間に接続されたツェナーダイオード26と、ゲート駆動部12とを含む経路で構成されるクランプ回路である。異常電流が検出されて、ゲート駆動部12により第1のスイッチング素子21aのゲートから電荷を抜き、第1のスイッチング素子21aに流れる電流を遮断する際に、ドレインサージ電圧が誘起され、ツェナーダイオード26にアバランシェ電圧を越える電圧が印加されると、アバランシェ電流が第1のスイッチング素子21aのゲートGに充電されるので、スイッチングスピードを遅くしてゆっくり遮断することができる。これにより、ソースSとドレインDとの間の最大電圧を制限することができ、低い耐圧の半導体スイッチング素子21を用いることが可能となる。
【0048】
第1のスイッチング素子21aに接続されるツェナーダイオード26は、第1のスイッチング素子21aのゲート補助端子33と第1のドレインセンス補助端子35との間に接続すればよい。なお、寄生インダクタンスは小さい方が望ましいため、第1のドレインセンス補助端子35よりも小さい端子で構成されたドレインセンス補助端子を別途設け、そちらに接続するようにしてもよい。
【0049】
また、
図1に示すように、第2のスイッチング素子21b側についても同様に、第2のスイッチング素子21bのゲートGとドレインDとの間にもツェナーダイオード26を設けることで、第2のスイッチング素子21bを経路内に含むクランプ回路を設けている。第2のスイッチング素子21bに接続されるツェナーダイオード26は、第2のスイッチング素子21bのゲート補助端子33と第2のドレインセンス補助端子36との間に接続すればよい。第2のドレインセンス補助端子36ではなく第2の外部端子32に接続することも可能であるが、寄生インダクタンスは小さい方が望ましいため、第2のドレインセンス補助端子36の方が望ましい。
【0050】
これらの1つ目のクランプ回路の経路内にはヒューズ25が含まれないので、ヒューズ25を直列接続することによってインダクタンスが増大してもその影響を受けない構成となっている。
【0051】
2つ目のクランプ回路は、半導体スイッチング素子21と、半導体スイッチング素子21の両端に接続されたバリスタ13とを含む経路で構成されるクランプ回路である。なお、
図1のバリスタ13の横に図示したインダクタンスはこのクランプ回路の寄生インダクタンスである。バリスタ13は、例えば金属酸化物バリスタ(MOV:Metal Oxide Varistor)を用いることができる。バリスタ13は、所定以上の電圧がかかるとアバランシェして抵抗が下がり、バリスタ13側に電流がバイパスして流れるので、低い耐圧の半導体スイッチング素子21を用いることが可能となる。また、1つ目のクランプ回路は、1つ目のクランプ回路の動作時に半導体スイッチング素子21に熱負荷がかかるので、この2つ目のクランプ回路によってそれを軽減できる効果もある。
【0052】
バリスタ13の一方は、第1のドレインセンス補助端子35に接続され、他方は、第2のドレインセンス補助端子または第2の外部端子32に接続すればよい。第2のドレインセンス補助端子よりも第2の外部端子32の方が大きな電流容量を有するので、第2の外部端子32に接続するのが望ましい。同じく、第1のドレインセンス補助端子35は、他の補助端子よりも大きな電流容量を有することが望ましい。
【0053】
この2つ目のクランプ回路の経路内にはヒューズ25が含まれないので、ヒューズ25を直列接続することによってインダクタンスが増大してもその影響を受けない構成となっている。
【0054】
なお、
図1では、ツェナーダイオード26とバリスタ13を半導体モジュール2の外部に設ける構成としているが、少なくとも一方を半導体モジュール2に内蔵するようにしてもよい。おなじく、異常電流検出部11とゲート駆動部12についても、一方または両方を半導体モジュール2に内蔵するようにしてもよい。
【0055】
以上説明したとおり、実施例1によれば、異常電流を検出した時に電流を遮断するための半導体スイッチング素子21が故障した場合でも電流の遮断が可能な冗長性を有する半導体直流遮断器1と、それに用いるのに適した半導体モジュール2を実現できる。
実施例2は、実施例1の変形例である。実施例2は、ヒューズ25の実現方法が実施例1とは異なっている。これ以外は実施例1と同じであるため、相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
実施例2の半導体直流遮断器1および半導体モジュール2は、ヒューズ25が第1のスイッチング素子21aの基準電位端子であるソースSと第2のスイッチング素子21bの基準電位端子であるソースSとの間に形成されている。なお、この場合でも、電流経路上は直列であるため、ヒューズ25と半導体スイッチング素子21は直列接続であると解釈する。
ただし、実施例2では、寄生抵抗23と寄生インダクタンス24にはヒューズ25の寄生抵抗と寄生インダクタンスは含まれていないので、異常電流を検出する感度は実施例1の方が高い。また、ヒューズ25が1つ目のクランプ回路の経路内に含まれていない点では実施例1と同じであるため同じ効果が得られるが、2つ目のクランプ回路については経路内にヒューズ25が含まれるため、2つ目のクランプ回路についてはヒューズ25を直列接続することによってインダクタンスが増大する影響を受ける点で実施例1と異なっている。