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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025909
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129273
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】田島 将太
(72)【発明者】
【氏名】佐治 恒士郎
(72)【発明者】
【氏名】港 智史
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC12
5C054FD03
5C054FE05
5C054FE13
5C054FE14
5C054FE23
5C054GB02
5C054GD03
5C054HA19
(57)【要約】
【課題】監視領域内の対象物を簡便かつ適切に監視できる監視システムを提供する。
【解決手段】監視システム1は、監視領域Rに位置する対象物2を監視端末10によって監視する監視システムであって、監視領域Rに位置する環境センサ3及び通信端末4の少なくとも一方から対象物2に関する仮想化用情報を取得する取得部31と、仮想化用情報に基づいて、静的対象物を仮想化した静的オブジェクト及び動的対象物を仮想化した動的オブジェクトを含む監視領域Rの仮想空間を生成する生成部32と、監視端末10から仮想空間Vにおける任意の視点位置の入力を受け付ける受付部33と、視点位置から見た仮想空間Vの画像を監視端末10に出力する出力部34と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域に位置する対象物を監視端末によって監視する監視システムであって、
前記監視領域に位置する環境センサ及び通信端末の少なくとも一方から前記対象物に関する仮想化用情報を取得する取得部と、
前記仮想化用情報に基づいて、静的対象物を仮想化した静的オブジェクト及び動的対象物を仮想化した動的オブジェクトを含む前記監視領域の仮想空間を生成する生成部と、
前記監視端末から前記仮想空間における任意の視点位置の入力を受け付ける受付部と、
前記視点位置から見た前記仮想空間の画像を前記監視端末に出力する出力部と、を備える監視システム。
【請求項2】
前記仮想化用情報は、前記対象物の動作情報を含み、
前記生成部は、前記動的オブジェクトの動作を可視化した拡張オブジェクトを前記動的オブジェクトに重畳する請求項1記載の監視システム。
【請求項3】
前記生成部は、前記静的対象物の位置に基づく重点監視エリアを可視化した補助オブジェクトを前記静的オブジェクトに重畳する請求項1記載の監視システム。
【請求項4】
前記生成部は、前記仮想化用情報の時間的な差分に基づいて、前記対象物が前記静的対象物であるか前記動的対象物であるかを判断する請求項1記載の監視システム。
【請求項5】
前記受付部は、前記監視端末から前記対象物の動作を制御する制御情報を受け付け、
前記出力部は、前記制御情報に基づいて、前記対象物の動作を制御する請求項1記載の監視システム。
【請求項6】
前記環境センサ及び前記通信端末からの前記仮想化用情報を集約するサーバを更に備え、
前記取得部は、ネットワークを介して前記サーバから前記仮想化用情報を取得する請求項1記載の監視システム。
【請求項7】
前記対象物は、産業車両を含む請求項1~6のいずれか一項記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の自動走行用の詳細地図を生成する外界認識システムが記載されている。この外界認識システムでは、車載カメラの撮影画像と路上カメラの撮影画像とを合成処理することで、車載カメラの死角領域をなくした合成画像を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-26858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
監視領域に配置された対象物の監視に特許文献1に記載の技術を適用する場合、対象物に搭載されたカメラの視点で見た合成画像が生成されることとなる。この場合、監視領域の視点が限定的となってしまうおそれがある。一方で、監視領域の視点の拡張にあたって設置するカメラを単純に追加していくと、監視すべき映像が増えて適切な監視が難しくなると共に、監視に要するコストも増大してしまうことが懸念される。
【0005】
本開示では、上記課題の解決のためになされたものであり、監視領域内の対象物を簡便かつ適切に監視できる監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る監視システムは、監視領域に位置する対象物を監視端末によって監視する監視システムであって、監視領域に位置する環境センサ及び通信端末の少なくとも一方から対象物に関する仮想化用情報を取得する取得部と、仮想化用情報に基づいて、静的対象物を仮想化した静的オブジェクト及び動的対象物を仮想化した動的オブジェクトを含む監視領域の仮想空間を生成する生成部と、監視端末から仮想空間における任意の視点位置の入力を受け付ける受付部と、視点位置から見た仮想空間の画像を監視端末に出力する出力部と、を備える。
【0007】
この監視システムでは、対象物の仮想化用情報に基づいて仮想空間が生成され、仮想空間では、監視領域内の静的対象物及び動的対象物が静的オブジェクト及び動的オブジェクトとして表現される。監視端末では、任意の視点位置から見た静的オブジェクト及び動的オブジェクトの配置や動き等を把握できるため、監視領域に設置するカメラを増加させることなく、監視領域に位置する実際の対象物を任意の視点位置から把握できる。したがって、この監視システムでは、監視領域内の対象物を簡便かつ適切に監視できる。
【0008】
仮想化用情報は、対象物の動作情報を含んでいてもよい。生成部は、動的オブジェクトの動作を可視化した拡張オブジェクトを動的オブジェクトに重畳してもよい。この場合、動的オブジェクトの動作が可視化されるため、対象物の監視を一層簡便かつ適切に実施できる。
【0009】
生成部は、静的対象物の位置に基づく重点監視エリアを可視化した補助オブジェクトを静的オブジェクトに重畳してもよい。この場合、監視領域において、死角となり易い領域、監視者が立ち入り難い領域、通路が狭くて動的対象物の動作が妨げられ易い領域など、重点的に監視すべきエリア(重点監視エリア)が可視化される。したがって、対象物の監視を一層簡便かつ適切に実施できる。
【0010】
生成部は、仮想化用情報の時間的な差分に基づいて、対象物が静的対象物であるか動的対象物であるかを判断してもよい。この場合、個々の対象物の仮想化情報に依らずに対象物が静的対象物であるか動的対象物であるかを判断できる。したがって、簡単な処理で仮想空間の更新が可能となる。
【0011】
受付部は、監視端末から対象物の動作を制御する制御情報を受け付けてもよい。出力部は、制御情報に基づいて、対象物の動作を制御してもよい。この場合、監視者は、任意の視点位置から見た仮想空間の画像に基づいて、対象物の動作を制御する制御情報を入力することができる。したがって、監視結果に基づいて、対象物の動作を適切に制御することができる。
【0012】
監視システムは、環境センサ及び通信端末からの仮想化用情報を集約するサーバを更に備えていてもよい。取得部は、ネットワークを介してサーバから仮想化用情報を取得してもよい。この場合、監視領域に多数の対象物が存在する場合でも、仮想化用情報の集約を容易化できる。
【0013】
対象物は、産業車両を含んでいてもよい。この場合、例えば工場や倉庫といった監視領域において、監視者が立ち入ることなく安全に産業車両の走行等を監視できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、監視領域内の対象物を簡便かつ適切に監視することができる監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】監視領域及び対象物の一例を示す図である。
図2】監視システムの構成の一例を示すブロック図である。
図3】視点位置から見た仮想空間の画像を示す図である。
図4】別の視点位置から見た仮想空間の画像を示す図である。
図5】更に別の視点位置から見た仮想空間の画像を示す図である。
図6】仮想空間を生成する処理の一例を示すフローチャートである。
図7】処理結果を出力する処理の一例を示すフローチャートである。
図8】対象物の動作を制御する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る監視システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
始めに、図1を参照して、本開示の一実施形態に係る監視システムが適用され得る監視領域及び監視領域に位置する対象物の具体例について説明する。図1は、監視領域及び対象物の一例を示す写真である。
【0018】
図1に示される監視領域Rは、監視システム1(図2参照)による監視が行われる領域であり、3次元の実空間である。監視領域Rは、例えば工場、物流倉庫、及び作業現場を含む。図1に示される例では、監視領域Rは物流倉庫である。監視領域Rには、監視システム1による監視の対象となる対象物2が含まれている。対象物2は、例えば建物、車両、及び人間を含む。車両は、例えばトラック及び産業車両を含む。産業車両は、例えば荷物等の搬送に用いられるフォークリフト又は牽引車、及び、ピッキング作業に用いられるオーダーピッカーである。産業車両は、限られた領域における作業に用いられる種別であればよく、上述した種別に限定されない。ここでは、対象物2として、建物101、空箱102、トラック103、産業車両104及び作業員105が例示されている。
【0019】
この監視領域Rでは、例えば物流倉庫内に設定された所定の停車位置にトラック103が停車し、トラック103の荷台が荷物の荷置位置として設定されている。産業車両104は、予め定められた荷受位置で荷物を受け取り、荷置位置まで該荷物を運搬する。監視領域R内には、作業員105が立ち入り、例えば物流倉庫内での作業又は保守を行っている。また、監視領域R内には、カメラ106が設置されている。カメラ106は、物流倉庫内の状況を撮像している。
【0020】
上述したような監視領域Rでは、例えば監視者がカメラ106からの画像又は映像を確認することで、対象物2の監視を行うことが考えられる。しかしながら、この場合、カメラ106の設置台数によっては監視領域Rの視点が限定的となるおそれがある。一方で、監視領域Rの視点の拡張にあたって、カメラ106の設置台数を単純に増加すると、監視すべき映像が増えて適切な監視が難しくなると共に、監視に要するコストが増大してしまうことが懸念される。本実施形態に係る監視システム1は、上記課題を鑑み、監視領域R及び対象物2を仮想化した仮想空間Vを用いることで、対象物2の監視を簡便かつ適切に行うシステムとして構築されている。以下、監視領域R内に配置されている要素と共に、監視システム1の構成について詳細に説明する。
【0021】
図2は、監視システム1の構成の一例を示すブロック図である。まず、監視領域R内に配置されている要素について説明する。図2に示されるように、監視領域R内には、複数の対象物2、複数の環境センサ3、及び複数の通信端末4が配置されている。対象物2は、上述したように、監視システム1による監視の対象となる物体である。対象物2は、監視領域R内において静止している静的対象物2aと、監視領域R内を移動している動的対象物2bと、を含む。図1に示される例では、対象物2は、建物101、空箱102、トラック103、産業車両104、及び作業員105である。建物101、空箱102、停車しているトラック103は、静的対象物2aとして判断される。監視領域R内を移動している産業車両104及び作業員105は、動的対象物2bとして判断される。監視システム1では、対象物2の状況により静的対象物2aであるか動的対象物2bであるかが判断される。図1に示される例では、停車しているトラック103は、静的対象物2aであるが、該トラック103が動き出した場合には、動的対象物2bとして判断され得る。対象物2が静的対象物2aであるか、動的対象物2bであるかの判断の詳細については後述する。
【0022】
環境センサ3は、監視領域Rの環境を測定するための装置である。環境センサ3は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、及びレーダを含む。図1に示される例では、環境センサ3は、カメラ106である。
【0023】
通信端末4は、対象物2が有する情報通信可能な端末である。通信端末4は、例えば通信器、スマートフォン、及びタブレット端末である。図1に示される例では、通信端末4は、トラック103及び産業車両104に設けられた通信器、及び作業員105が有するスマートフォンである。
【0024】
複数の環境センサ3及び複数の通信端末4は、仮想空間Vを定義するための情報を示す仮想化用情報を取得する。本実施形態では、複数の環境センサ3及び複数の通信端末4と集約サーバ20とは、ネットワークN1を介して相互に情報通信可能に接続されている。仮想化用情報は、例えば地図情報、位置情報、サイズ情報、及び動作情報を含む。地図情報は、監視領域Rの地理的属性を示す情報である。地図情報は、例えば監視領域Rの地形と、監視領域R内の建物の位置及びサイズと、監視領域R内の通路の位置及びサイズと、を含む。位置情報は、対象物2の位置を示す情報である。サイズ情報は、対象物2のサイズを示す情報である。動作情報は、対象物2の動作を示す情報である。動作情報は、例えば対象物2の移動経路、目的地、速度、及びバッテリ状況を含む。対象物2の目的地は、例えば荷受位置及び荷置位置である。対象物2のバッテリ状況は、例えばバッテリ残量及び稼働残時間である。
【0025】
一例では、環境センサ3は、地図情報、対象物2についての位置情報を取得する。通信端末4は、自らを有する対象物2から該対象物2についての位置情報、サイズ情報、及び動作情報を取得する。複数の環境センサ3及び複数の通信端末4は、取得した仮想化用情報及び該仮想化用情報を取得した時刻を、ネットワークN1を介して集約サーバ20へ送信する。
【0026】
続いて、監視システム1の構成について説明する。監視システム1は、監視端末10、集約サーバ20、及び仮想空間生成サーバ30を備えている。
【0027】
監視端末10は、監視システム1を利用する監視者が操作するコンピュータである。監視端末10は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、及びタブレット端末を含む。本実施形態では、監視端末10と仮想空間生成サーバ30とは、ネットワークN2を介して相互に情報通信可能に接続されている。監視端末10では、監視者からの仮想空間生成サーバ30への入力及び仮想空間生成サーバ30が行う処理結果の表示がなされる。
【0028】
集約サーバ20は、仮想化用情報を格納するためのサーバである。本実施形態では、集約サーバ20と仮想空間生成サーバ30とは、ネットワークN3を介して相互に情報通信可能に接続されている。集約サーバ20では、複数の環境センサ3及び複数の通信端末4から送信された仮想化用情報と該仮想化用情報が取得された時刻とが紐付けられて格納されている。
【0029】
仮想空間生成サーバ30は、仮想空間Vの生成及び仮想空間Vの画像の出力を行うサーバである。以下、仮想空間生成サーバ30の機能要素について詳細に説明する。
【0030】
図2に示されるように、仮想空間生成サーバ30は、機能要素として、取得部31、生成部32、受付部33、及び出力部34を備えている。
【0031】
取得部31は、仮想化用情報を取得する部分である。上述したように、本実施形態では、集約サーバ20と仮想空間生成サーバ30とは、ネットワークN3を介して、相互に情報通信可能に接続されている。取得部31は、ネットワークN3を介して集約サーバ20から仮想化用情報を取得し、取得した仮想化用情報を生成部32に出力する。
【0032】
生成部32は、仮想空間Vを生成する部分である。生成部32は、取得部31から受け取った仮想化用情報に基づいて、静的オブジェクトVa及び動的オブジェクトVbを含む仮想空間Vを生成する。静的オブジェクトVaは、静的対象物2aを仮想化したオブジェクトである。動的オブジェクトVbは、動的対象物2bを仮想化したオブジェクトである。生成部32は、既存の技術を用いて、仮想空間Vを生成する。既存の技術は、例えばグラフィック・レンダリングである。本実施形態では、生成部32は、以下のようにして、仮想空間Vを生成する。
【0033】
まず、生成部32は、取得部31から受け取った仮想化用情報に基づいて、拡張オブジェクトVcを設定する。拡張オブジェクトVcは、対象物2の動作を可視化したオブジェクトである。本実施形態では、仮想化用情報のうち対象物2の動作情報に基づいて、拡張オブジェクトVcを設定する。したがって、本実施形態では、対象物2の動作情報に対応して、対象物2の移動経路、目的地、速度、及びバッテリ状況が拡張オブジェクトVcとして設定され得る。
【0034】
次に、生成部32は、補助オブジェクトVdを設定する。補助オブジェクトVdは、静的対象物2aの位置に基づく重点監視エリアを可視化したオブジェクトである。重点監視エリアは、監視領域Rにおいて重点的に監視すべきエリアである。重点監視エリアは、例えば監視領域Rにおいて死角となり易い領域、監視者が立ち入り難い領域、及び通路が狭く動的対象物2bの動作が妨げられ易い領域を含む。本実施形態では、重点監視エリアは、監視者によって予め定められており、監視端末10に記憶されている。生成部32は、ネットワークN2を介して監視端末10から重点監視エリアを取得し、取得した重点監視エリアに基づいて補助オブジェクトVdを設定する。あるいは、生成部32は、仮想化用情報のうち対象物2の位置情報及びサイズ情報に基づいて、重点監視エリアを新たに定め、定めた重点監視エリアに基づいて補助オブジェクトVdを設定してもよい。
【0035】
続いて、生成部32は、対象物2の属性を判断する。本実施形態では、生成部32は、対象物2が静的対象物2aであるか動的対象物2bであるかを判断する。具体的には、まず、生成部32は、前回の仮想空間生成時に利用した仮想化用情報を集約サーバ20から取得する。次に、生成部32は、前回の仮想化用情報と今回の仮想化用情報とを比較することで、仮想化用情報の時間的な差分を算出する。一例では、生成部32は、環境センサ3が撮像した監視領域Rの画像同士を比較することで、対象物2の位置情報の差分を仮想化用情報の時間的な差分として算出する。
【0036】
次に、生成部32は、算出した仮想化用情報の時間的な差分に基づいて、対象物2が、静的対象物2aであるか動的対象物2bであるかを判断する。一例では、生成部32は、前回の仮想空間生成時から監視領域R内での位置が変更されていない対象物2を静的対象物2aであると判断し、前回の仮想空間生成時から監視領域R内での位置が変更されている対象物2を動的対象物2bであると判断する。
【0037】
生成部32が、監視領域Rについての仮想空間Vを初めて生成する際には、上述した対象物2の属性の判断は行われない。この場合、生成部32は、地図情報に基づいて、監視領域R内に位置する建物のみを静的対象物2aとして判断して、建物以外の対象物2を動的対象物2bとして判断する。
【0038】
生成部32は、仮想化用情報、拡張オブジェクトVc、補助オブジェクトVd、及び対象物2の属性に基づいて、仮想空間Vを生成する。一例では、まず、生成部32は、仮想化用情報のうち地図情報に基づいて、監視領域Rの地形を仮想化した仮想空間Vを生成する。この時点では、仮想空間Vは監視領域Rを仮想化したのみであり、仮想空間Vには、静的オブジェクトVa及び動的オブジェクトVbは、配置されない。次に、生成部32は、対象物2の属性に基づいて、静的対象物2aのそれぞれを静的オブジェクトVaとして仮想空間V内にそれぞれ配置し、動的対象物2bのそれぞれを動的オブジェクトVbとして仮想空間V内にそれぞれ配置する。この処理により、仮想空間Vは、監視領域R及び監視領域Rに位置する対象物2を仮想化した空間となる。
【0039】
続いて、生成部32は、対応する静的オブジェクトVaに補助オブジェクトVdを重畳し、対応する動的オブジェクトVbに拡張オブジェクトVcを重畳する。これにより、生成される仮想空間Vには、上述した対象物2の移動経路、目的地、速度、バッテリ状況、及び重点監視エリアなど、実空間上で視認することのできない情報が、静的オブジェクトVa及び動的オブジェクトVbに重畳して表現される。生成部32は、仮想空間Vが生成されたことを示す情報を受付部33に出力し、生成した仮想空間Vを出力部34に出力する。
【0040】
受付部33は、監視端末10からの入力を受け付ける部分である。一例では、受付部33は、任意の視点位置の受付及び対象物2の動作を制御する制御情報の受付を行う。以下では、まず、任意の視点位置の受付について説明する。受付部33は、ネットワークN2を介して監視端末10と相互に情報通信可能に接続されている。受付部33は、生成部32から仮想空間Vが生成されたことを示す情報を受け取ると、監視端末10に視点位置の入力指示を表示する。本実施形態では、該入力指示を確認した監視者が監視端末10に視点位置を入力する。監視端末10は、入力された視点位置を受付部33に送信する。受付部33は、ネットワークN2を介して、監視端末10から送信された視点位置を受け付ける。受付部33は、受け付けた視点位置を出力部34に出力する。
【0041】
次に、対象物2の動作を制御する制御情報の受付について説明する。制御情報の受付は、例えば仮想空間Vの画像を用いた監視において、監視者が対象物2に関する危険や異常を察知した場合に行われる。本実施形態では、受付部33は、ネットワークN2を介して、監視者が監視端末10に入力した制御情報を受け付ける。受付部33は、受け付けた制御情報を出力部34に出力する。制御情報は、例えば対象物2の移動経路、目的地、及び速度を含む。
【0042】
出力部34は、処理結果を出力する部分である。一例では、出力部34は、仮想空間Vの画像の出力及び対象物2の制御を行う。以下では、まず、仮想空間Vの画像の出力について説明する。出力部34は、受付部33から受け取った視点位置から見た仮想空間Vの画像を生成する。本実施形態では、出力部34は、生成した画像を監視端末10に出力する。出力部34は、生成した画像を不図示のデータベースに格納してもよい。
【0043】
次に、制御情報の出力について説明する。出力部34は、受付部33から受け取った制御情報を対象物2に出力する。本実施形態では、まず、出力部34は、受付部33から受け取った制御情報を、ネットワークN3を介して、集約サーバ20に送信する。次に、集約サーバ20は、出力部34から受け取った制御情報を、ネットワークN1を介して、対象物2に送信する。制御情報を受け取った対象物2は、制御情報に基づいて、自身の動作を制御する。出力部34は、制御情報を対象物2に送信することで、該対象物2の動作を制御する。例えば、対象物2が受け取った制御情報が移動経路の変更であった場合には、対象物2は受け取った制御情報で移動経路を更新し、更新された移動経路に基づく移動を行う。
【0044】
図3を参照して、出力部34が出力する仮想空間Vの画像の具体例について説明する。図3は、視点位置E1から見た仮想空間Vの画像I1を示す図である。視点位置E1は、図1に示される写真と同じ視点位置である。図3では、図1にて示される、建物101、空箱102、及び停車しているトラック103が静的オブジェクトVaとして仮想空間V内にそれぞれ配置され、産業車両104及び作業員105が動的オブジェクトVbとして仮想空間V内にそれぞれ配置されている。また、産業車両104の移動経路及び荷置位置が拡張オブジェクトVcとして対応する動的オブジェクトVbに重畳され、トラック103の停車位置及び監視者が立ち入り難い領域が補助オブジェクトVdとして対応する静的オブジェクトVaに重畳されている。一例では、拡張オブジェクトVc及び補助オブジェクトVdは、監視端末10により監視を行う監視者が認識し易いように、色付けされている。
【0045】
図4を参照して、出力部34が出力する仮想空間Vの画像の別の例について説明する。図4は、別の視点位置E2から見た仮想空間Vの画像I2を示す図である。視点位置E2は、荷置位置に注目した視点である。視点位置E2は、積荷確認視点である。画像I2では、対象物2による荷置きが適切に行われているか否かが監視される。具体的には、荷置位置に荷物が正しく置かれているか否か、荷置位置にその他の対象物2が配置されていないか等が監視される。
【0046】
図5を参照して、出力部34が出力する仮想空間Vの画像の更に別の例について説明する。図5は、更に別の視点位置E3から見た仮想空間Vの画像I3を示す図である。視点位置E3は、仮想空間Vを俯瞰する視点である。視点位置E3は、上面図での視点である。画像I3では、例えば重点監視エリア内に対象物2が位置していないかが監視される。画像I3では、拡張オブジェクトVcに基づいて、或る対象物2の移動経路中にその他の対象物2が位置していないかが監視されてもよい。
【0047】
図6図7、及び図8を参照して、監視システム1の動作の一例について説明する。図6は、仮想空間Vを生成する処理の一例を処理フローS1として示すフローチャートである。図7は、仮想空間Vの画像を出力する処理の一例を処理フローS2として示すフローチャートである。図8は、対象物2の動作を制御する処理の一例を処理フローS3として示すフローチャートである。
【0048】
以下では、図6を参照して、仮想空間Vを生成する処理である処理フローS1について説明する。
【0049】
ステップS11では、取得部31が集約サーバ20から仮想化用情報を取得する。ステップS12では、生成部32が拡張オブジェクトVcを設定する。ここでは、生成部32は、仮想化用情報のうち対象物2の動作情報に基づいて、拡張オブジェクトVcを設定する。ステップS13では、生成部32が補助オブジェクトVdを設定する。ここでは、生成部32は、重点監視エリアに基づいて、補助オブジェクトVdを設定する。
【0050】
ステップS14では、生成部32が前回取得された仮想化用情報との差分を算出する。ここでは、生成部32は、環境センサ3が撮像した監視領域Rの画像同士を比較することで、対象物2の位置情報の差分を仮想化用情報の時間的な差分として算出する。また、仮想空間Vの初回生成時には、ステップS14は省略される。
【0051】
ステップ15では、生成部32が仮想化用情報の時間的な差分に基づいて、対象物2の属性を判断する。ここでは、仮想化用情報の時間的な差分に基づいて、対象物2が、静的対象物2aであるか動的対象物2bであるかを判断する。また、仮想空間Vの初回生成時には、生成部32は、仮想化用情報のうち地図情報に基づいて、対象物2が、静的対象物2aであるか動的対象物2bであるかを判断する。
【0052】
ステップS16では、生成部32が静的オブジェクトVa及び動的オブジェクトVbを含む仮想空間Vを生成する。ここでは、生成部32は、拡張オブジェクトVc及び補助オブジェクトVdを対応する動的オブジェクトVb及び静的オブジェクトVaに重畳して、仮想空間Vを生成する。
【0053】
以下では、図7を参照して、仮想空間Vの画像を出力する処理である処理フローS2について説明する。
【0054】
ステップS21では、受付部33が任意の視点位置を受け付ける。ここでは、受付部33は、監視者が監視端末10に入力した視点位置を、ネットワークN2を介して、受け付ける。ステップS22では、出力部34が受け付けた視点位置から見た仮想空間Vの画像を生成する。ステップS23では、出力部34が処理結果を出力する。ここでは、出力部34は、生成した仮想空間Vの画像を監視端末10に出力する。
【0055】
以下では、図8を参照して、対象物の動作を制御する処理である処理フローS3について説明する。
【0056】
ステップS31では、受付部33が制御情報を受け付ける。ここでは、受付部33は、監視者が監視端末10に入力した制御情報を、ネットワークN2を介して受け付ける。ステップS32では、出力部34が受け付けた制御情報に基づいて対象物2の動作を制御する。ここでは、出力部34は、受け付けた制御情報を対象物2に出力することで、対象物2の動作を制御する。
【0057】
以上説明したように、監視システム1では、対象物2の仮想化用情報に基づいて仮想空間Vが生成され、仮想空間Vでは、監視領域R内の静的対象物2a及び動的対象物2bが静的オブジェクトVa及び動的オブジェクトVbとして表現される。監視端末10では、任意の視点位置から見た静的オブジェクトVa及び動的オブジェクトVbの配置や動き等を把握できるため、監視領域Rに設置するカメラを増加させることなく、監視領域Rに位置する実際の対象物2を任意の視点位置から把握できる。したがって、この監視システム1では、監視領域R内の対象物2を簡便かつ適切に監視できる。
【0058】
監視システム1では、仮想化用情報は対象物2の動作情報を含んでいる。生成部32は、動的オブジェクトVbの動作を可視化した拡張オブジェクトVcを動的オブジェクトVbに重畳する。この場合、動的オブジェクトVbの動作が可視化されるため、対象物2の監視を一層簡便かつ適切に実施できる。
【0059】
監視システム1では、生成部32は、静的対象物2aの位置に基づく重点監視エリアを可視化した補助オブジェクトVdを静的オブジェクトVaに重畳する。この場合、監視領域Rにおいて、死角となり易い領域、監視者が立ち入り難い領域、通路が狭くて動的対象物2bの動作が妨げられ易い領域など、重点的に監視すべきエリア(重点監視エリア)が可視化される。したがって、対象物2の監視を一層簡便かつ適切に実施できる。
【0060】
監視システム1では、生成部32は、仮想化用情報の時間的な差分に基づいて、対象物2が静的対象物2aであるか動的対象物2bであるかを判断する。この場合、個々の対象物2の仮想化情報に依らずに対象物2が静的対象物2aであるか動的対象物2bであるかを判断できる。したがって、簡単な処理で仮想空間Vの更新が可能となる。
【0061】
監視システム1では、受付部33は監視端末10から対象物2の動作を制御する制御情報を受け付け、出力部34は制御情報に基づいて、対象物2の動作を制御する。この場合、監視者は、任意の視点位置から見た仮想空間Vの画像に基づいて、対象物2の動作を制御する制御情報を入力することができる。したがって、監視結果に基づいて、対象物2の動作を適切に制御することができる。
【0062】
監視システム1は、環境センサ3及び通信端末4からの仮想化用情報を集約する集約サーバ20を備えている。取得部31は、ネットワークN3を介して集約サーバ20から仮想化用情報を取得する。この場合、監視領域Rに多数の対象物2が存在する場合でも、仮想化用情報の集約を容易化できる。
【0063】
監視システム1では、対象物2は、産業車両を含んでいる。この場合、例えば工場や倉庫といった監視領域Rにおいて、監視者が立ち入ることなく安全に産業車両の走行等を監視できる。
【0064】
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0065】
取得部31は、仮想化用情報の取得にあたって、必ずしも環境センサ3及び通信端末4の双方から仮想化用情報を取得しなくてもよい。すなわち、取得部31は、環境センサ3及び通信端末4の少なくとも一方から仮想化用情報を取得してもよい。例えば、取得部31が環境センサ3のみから仮想化用情報を取得する場合には、仮想化情報のうち、サイズ情報及び動作情報が集約サーバ20に予め記憶されていてもよい。取得部31は、環境センサ3から取得された画像を解析することによりサイズ情報を取得してもよい。例えば、取得部31が通信端末4のみから仮想化用情報を取得する場合には、集約サーバ20に地図情報が記憶されていてもよい。
【0066】
生成部32は、仮想化用情報の時間的な差分を算出するにあたって、必ずしも前回の仮想空間生成時に利用した仮想化用情報を用いなくてもよい。この場合、生成部32は、所定時間前の仮想空間生成時に利用した仮想化用情報と今回の仮想化用情報とを比較することで、仮想化用情報の時間的な差分を算出してもよい。所定時間は、監視領域R及び対象物2の性質に応じて変更され得る。例えば、対象物2が停止と移動とを短い時間間隔で繰り返す監視領域Rでは、所定時間は短く設定され得る。対象物2の移動が頻繁に行われない監視領域Rでは、所定時間は長く設定され得る。
【0067】
生成部32は、環境センサ3が撮像した監視領域Rの画像に代えて、対象物2の動作情報を用いて、仮想化用情報の時間的な差分を算出してもよい。この場合、生成部32は、各対象物2の速度を動作情報から取得し、取得した速度同士を比較することで、対象物2の速度変化を仮想化用情報の時間的な差分として算出してもよい。生成部32は、対象物2の属性の判断にあたって、速度が「0」に変化した対象物2及び速度が「0」で固定されている対象物2を静的対象物2aとして判断し、それ以外の対象物2を動的対象物2bとして判断してもよい。
【0068】
生成部32は、監視領域R内に配置されている建物について、対象物2の属性の判断を省略してもよい。時間の経過によって、監視領域R内における建物の位置が変更される可能性は極めて低い。そのため、生成部32は、地図情報に含まれる建物については、その属性を判断することなく、該建物を静的対象物2aと判断してもよい。この場合、仮想空間Vを生成するための処理の負荷を低減することができる。
【0069】
出力部34は、対象物2の動作を制御するにあたって、受付部33から受け取った制御情報を対象物2に直接出力してもよい。すなわち、出力部34は、ネットワークN1,N3及び集約サーバ20を介さずに、制御情報を対象物2に出力してもよい。このような構成によれば、例えば対象物2を緊急停止させる等の迅速な対応が求められる場合においても、対象物2の動作を適切に制御することができる。
【0070】
監視システム1は、必ずしも集約サーバ20を備えていなくてもよい。この場合、取得部31が、個々の対象物2、環境センサ3、及び通信端末4から仮想化用情報をそれぞれ取得してもよい。
【0071】
本開示の要旨は、以下の[1]~[4]のとおりである。
[1]監視領域に位置する対象物を監視端末によって監視する監視システムであって、前記監視領域に位置する環境センサ及び通信端末の少なくとも一方から前記対象物に関する仮想化用情報を取得する取得部と、前記仮想化用情報に基づいて、静的対象物を仮想化した静的オブジェクト及び動的対象物を仮想化した動的オブジェクトを含む前記監視領域の仮想空間を生成する生成部と、前記監視端末から前記仮想空間における任意の視点位置の入力を受け付ける受付部と、前記視点位置から見た前記仮想空間の画像を前記監視端末に出力する出力部と、を備える監視システム。
[2]前記仮想化用情報は、前記対象物の動作情報を含み、前記生成部は、前記動的オブジェクトの動作を可視化した拡張オブジェクトを前記動的オブジェクトに重畳する[1]記載の監視システム。
[3]前記生成部は、前記静的対象物の位置に基づく重点監視エリアを可視化した補助オブジェクトを前記静的オブジェクトに重畳する[1]又は[2]記載の監視システム。
[4]前記生成部は、前記仮想化用情報の時間的な差分に基づいて、前記対象物が前記静的対象物であるか前記動的対象物であるかを判断する[1]~[3]のいずれか記載の監視システム。
[5]前記受付部は、前記監視端末から前記対象物の動作を制御する制御情報を受け付け、前記出力部は、前記制御情報に基づいて、前記対象物の動作を制御する[1]~[4]のいずれか記載の監視システム。
[6]前記環境センサ及び前記通信端末からの前記仮想化用情報を集約するサーバを更に備え、前記取得部は、ネットワークを介して前記サーバから前記仮想化用情報を取得する[1]~[5]のいずれか記載の監視システム。
[7]前記対象物は、産業車両を含む[1]~[6]のいずれか記載の監視システム。
【符号の説明】
【0072】
1…監視システム、2…対象物、2a…静的対象物、2b…動的対象物、3…環境センサ、4…通信端末、10…監視端末、31…取得部、32…生成部、33…受付部、34…出力部、104…産業車両、E1,E2,E3…視点位置、I1,I2,I3…画像、N1…ネットワーク、R…監視領域、V…仮想空間、Va…静的オブジェクト、Vb…動的オブジェクト、Vc…拡張オブジェクト、Vd…補助オブジェクト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8