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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002591
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】精製環状オレフィン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20231228BHJP
   C07C 15/27 20060101ALI20231228BHJP
   C07C 7/10 20060101ALI20231228BHJP
   C07C 7/12 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08F2/00 Z
C07C15/27
C07C7/10
C07C7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101872
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】志田 雄星
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文哉
(72)【発明者】
【氏名】松川 直人
【テーマコード(参考)】
4H006
4J011
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AD16
4H006AD17
4H006BB11
4H006DA15
4J011AC05
(57)【要約】
【課題】良好な重合活性を有する、芳香環を有する環状オレフィン化合物を効率的に得る。
【解決手段】芳香環を有する環状オレフィン化合物(2)を水酸化物イオンを含む水溶液と接触させた後、前記水酸化物イオンを含む溶液相を除去する工程(α)と、前記環状オレフィン化合物(2)を金属酸化物と接触させる工程(β)と、を含む、精製環状オレフィン化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を有する環状オレフィン化合物(2)を水酸化物イオンを含む水溶液と接触させた後、前記水酸化物イオンを含む溶液相を除去する工程(α)と、
前記環状オレフィン化合物(2)を金属酸化物と接触させる工程(β)と、
を含む、精製環状オレフィン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(α)を前記工程(β)に先立って実施する、請求項1に記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記工程(α)において、前記環状オレフィン化合物(2)が脂環族炭化水素化合物との溶液である、請求項1に記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記工程(α)において、前記環状オレフィン化合物(2)と前記脂環族炭化水素化合物との体積比(前記環状オレフィン化合物(2)/前記脂環族炭化水素化合物)が、20/80以上80/20以下である、請求項3に記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記工程(α)が、アルカリ金属塩水溶液と前記環状オレフィン化合物(2)とを接触させた後、アルカリ金属塩水溶液相を除去する工程(α―1)をさらに含む、請求項1に記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記金属酸化物はゼオライトおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製環状オレフィン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像レンズ、fθレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズには環状オレフィン系重合体が用いられている。このような光学レンズ等の成形体に用いられる環状オレフィン系重合体には、透明性が高いこと、寸法安定性に優れること、耐熱性に優れること等の特性が要求される。
また、例えばスマートフォンやデジタルカメラ等に使用される撮像レンズには、小型化薄型化のため複屈折の値を低く保ちながらも屈折率のさらなる向上が求められている。
【0003】
このような光学レンズに用いられる環状オレフィン系重合体に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開平10-287713号公報)および特許文献2(特開2010-235719号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、(A)炭素原子数が2~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンと、(B)特定の環状オレフィンと、(C)芳香族ビニル化合物とから得られ、極限粘度[η]が0.1~10dl/gの範囲にあり、上記(B)環状オレフィンから導かれる構成単位の含有割合と、上記(C)芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位の含有割合とが特定の関係を満たす環状オレフィン系共重合体が記載されている。
【0005】
特許文献2には、エチレンまたは炭素原子数が3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(A)を30~70モル%、所定の化学式で表される環状オレフィンから導かれる構成単位(B)を20~50モル%、芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位(C)を0.1~20モル%含み、極限粘度[η]、H-NMRおよびガラス転移温度が所定の要件を満たすことを特徴とする環状オレフィン系重合体が記載されている。
【0006】
また、特許文献3(国際公開2019-188447号)には、特定の芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位を含む環状オレフィン系共重合体が光学レンズの材料として好適であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-287713号公報
【特許文献2】特開2010-235719号公報
【特許文献3】国際公開2019-188447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば光学レンズ等の用途において、画質の向上および光学レンズ設計自由度の向上を目的として、従来の樹脂材料よりもアッベ数を低めに調整された樹脂材料が求められていることが明らかになった。そのためには芳香環を有する環状オレフィン化合物由来の構造単位を含む環状オレフィン共重合体が好適であることを見出した。芳香環を有する環状オレフィン化合物(以後、「環状オレフィン化合物(2)」と記載することがある。)としては、例えばベンゾノルボルナジエンやインデンノルボルネン等を挙げることができる。
【0009】
上記の通り、上記環状オレフィン化合物(2)は、光学レンズ用材料の重合体を製造するための有用な化合物である。一方で、本発明者の検討によればこのような化合物は、空気などの酸素を有する環境下で保管すると、前記特許文献3等に開示されたオレフィン重合用触媒での重合を試みても重合活性が極端に低下したり、全く重合しなかったりすることがあるという問題点があることが判明した。この原因としては、本発明者は以下のように推測している。
本発明者の検討によれば、この環状オレフィン化合物(2)は、室温であっても酸化され易く、一部がエポキシ構造を有する環状化合物を含む、複数種の酸素含有化合物に変化している可能性を示唆する結果が、GC-MS分析より得られている。この酸素含有化合物が、強烈な触媒毒となる場合があるのではないかと考えられる。したがって、このような酸素含有化合物を除去することが環状オレフィン共重合体を製造するためには重要な操作となる。
通常、このようなヘテロ原子含有化合物は、モレキュラーシーブなどのゼオライトや活性アルミナなどの酸点を有する化合物と接触、吸着させることで除去する方法がある。しかしながら、本発明者のさらなる検討によれば、この方法は効率が悪く、優れた活性を発現する環状オレフィン化合物(2)を得るには、例えば月単位の時間の接触が必要となる結果が得られた。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な重合活性を有する、芳香環を有する環状オレフィン化合物を効率的に得ることができる、精製環状オレフィン化合物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、前記重合活性を低下させることがある環状オレフィン化合物(2)を、特定の複数の工程で事前に処理することが好適であることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明によれば、以下に示す精製環状オレフィン化合物の製造方法が提供される。
【0013】
[1]
芳香環を有する環状オレフィン化合物(2)を水酸化物イオンを含む水溶液と接触させた後、前記水酸化物イオンを含む溶液相を除去する工程(α)と、
前記環状オレフィン化合物(2)を金属酸化物と接触させる工程(β)と、
を含む、精製環状オレフィン化合物の製造方法。
[2]
前記工程(α)を前記工程(β)に先立って実施する、前記[1]に記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
[3]
前記工程(α)において、前記環状オレフィン化合物(2)が脂環族炭化水素化合物との溶液である、前記[1]または[2]に記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
[4]
前記工程(α)において、前記環状オレフィン化合物(2)と前記脂環族炭化水素化合物との体積比(前記環状オレフィン化合物(2)/前記脂環族炭化水素化合物)が、20/80以上80/20以下である、前記[3]に記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
[5]
前記工程(α)が、アルカリ金属塩水溶液と前記環状オレフィン化合物(2)とを接触させた後、アルカリ金属塩水溶液相を除去する工程(α―1)をさらに含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
[6]
前記金属酸化物はゼオライトおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の精製環状オレフィン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、良好な重合活性を有する、芳香環を有する環状オレフィン化合物を効率的に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0016】
本実施形態の精製環状オレフィン化合物の製造方法は、芳香環を有する環状オレフィン化合物(2)を水酸化物イオンを含む水溶液と接触させた後、前記水酸化物イオンを含む溶液相を除去する工程(α)と、前記環状オレフィン化合物(2)を金属酸化物と接触させる工程(β)とを含む。
本実施形態の精製環状オレフィン化合物の製造方法によれば、良好な重合活性を有する、芳香環を有する環状オレフィン化合物を効率的に得ることができる。
本明細書において、芳香環を有する環状オレフィン化合物(精製前後を含む)を環状オレフィン化合物(2)と呼ぶ。また、工程(α)および工程(β)を実施する前の環状オレフィン化合物(2)の粗生成物を環状オレフィン化合物(2’)とも呼び、工程(α)後の環状オレフィン化合物(2)を環状オレフィン化合物(2α)とも呼び、環状オレフィン化合物(2)の酸化物を環状オレフィン化合物(2-2)とも呼ぶ。
以下、工程(α)および工程(β)を中心として、本発明を具体的に説明する。
【0017】
[工程(α)]
工程(α)は、本実施形態の精製環状オレフィン化合物の製造方法において、環状オレフィン化合物(2)(環状オレフィン化合物(2’))を水酸化物イオンを含む水溶液と接触させた後、前記水酸化物イオンを含む溶液相を除去する工程である。
水酸化物イオンを含む水溶液としては、公知の水溶液、例えばアルカリ金属の水酸化物の水溶液や、アルカリ土類金属の水酸化物の水溶液を制限なく用いることができる。
後述する含酸素環状オレフィン化合物(以下、環状オレフィン化合物(2-2)と記載することがある。)との相互作用などを考慮した場合、前記水溶液は塩基性の高い水溶液であることが好ましく、アルカリ金属の水酸化物の水溶液であることがより好ましい。入手容易性や、価格を考慮すると、好ましい水酸化物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。水酸化物の濃度は、前記の観点から高濃度であることが好ましい傾向にあるが、一方で、高濃度水溶液は粘性が増加し、後述する水溶液相と油相との分離速度が遅くなるなどの可能性も考慮されるので、好ましくは0.01mol/L~5mol/Lである。水酸化物の濃度は、より好ましくは0.05mol/L以上、さらに好ましくは0.1mol/L以上、さらに好ましくは、0.5mol/L以上であり、そして、より好ましくは3mol/L以下、さらに好ましくは2mol/L以下、さらに好ましくは1.5mol/L以下である。
【0018】
(環状オレフィン化合物(2))
本実施形態の環状オレフィン化合物(2)は、芳香環を有していれば特に限定されないが、好ましくは下記式(VI)で示される化合物、下記式(VII)で示される化合物、および下記式(VIII)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上の化合物を含む。
【0019】
【化1】
【0020】
式(VI)において、
201およびq201は、それぞれ独立に、0、1または2であり、
201~R217は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、
210~R217のうち一つは結合手であり、
201=0のとき、R210とR211、R211とR212、R212とR213、R213とR214、R214とR215、R215とR210は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、
201=1または2のとき、R210とR211、R211とR217、R217とR217、R217とR212、R212とR213、R213とR214、R214とR215、R215とR216、R216とR216、R216とR210は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、
上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、
上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0021】
【化2】
上記式(VII)において、
202およびm201は、それぞれ独立に、0、1または2であり、
202は、1、2または3であり、
218~R231は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、
202=1のとき、R228とR229、R229とR230、R230とR231は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、
202=2または3のとき、R228とR228、R228とR229、R229とR230、R230とR231、R231とR231は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、
上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、
上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0022】
【化3】
【0023】
式(VIII)において、
203は1、2または3であり、
232~R239は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、
203=1のとき、R236とR237、R237とR238、R238とR239は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、
203=2または3のとき、R236とR236、R236とR237、R237とR238、R238とR239、R239とR239は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、
上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、
上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0024】
本実施形態の環状オレフィン化合物(2)における炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0025】
これらの中でも、本実施形態の環状オレフィン化合物(2)としては、芳香環を1つ有しているものが好ましく、例えば、ベンゾノルボルナジエン、インデンノルボルネンおよびメチルフェニルノルボルネンから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0026】
また、本実施形態に係る環状オレフィン化合物(2)としては、例えば、下記の式(VI’)で示される化合物、下記の式(VII’)で示される化合物、下記の式(VIII’)で示される化合物等も挙げられる。これらの環状オレフィン化合物(2)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
上記式(VI’)、上記式(VII’)、上記式(VIII’)において、m301、n301およびn302は0、1または2であり、R301~R336はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R310とR311、R311とR312、R312とR313、R313とR314、R325とR326、R326とR327、R327とR328、R333とR334、R334とR335、R335とR336は互いに結合して単環を形成していてもよく、該単環が二重結合を有していてもよい。
【0031】
また、上記式(VI’)、上記式(VII’)、上記式(VIII’)において、m301は0または1であることが好ましく、1であることがより好ましい。n301およびn302は0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。R301~R336は水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0032】
また、上記式(VI’)、上記式(VII’)、上記式(VIII’)における炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0033】
これらの中でも、本実施形態の環状オレフィン化合物(2)としては、芳香環を1つ有しているものが好ましく、例えば、ベンゾノルボルナジエン、インデンノルボルネンおよびメチルフェニルノルボルネンから選択される少なくとも一種が好ましい。
本発明者の検討によれば、上記環状オレフィン化合物(2)は、空気などの酸素存在下で酸化され易い場合があり、例えば、オレフィン部が酸化された環状エポキシ構造等を持つ化合物に変化する場合がある。このような環状エポキシ構造などを持つ化合物を含む環状オレフィン化合物(2)の態様も、本実施形態では環状オレフィン化合物(2)の粗生成物(環状オレフィン化合物(2’)の一態様である。更には、前記エポキシ構造が開環重合してポリエーテル構造に変化する可能性もある。このように環状オレフィン化合物(2)が酸化され易い傾向を有するのは、アリール基が有する電子雲等に由来する電子的な影響で、オレフィン部や他の炭素-水素結合の反応性が高まるためではないかと推測される。また、前記エポキシ構造等を持つ特定の酸素含有化合物は、遷移金属化合物を主体とするオレフィン重合用触媒にとっては強力な触媒毒となる可能性があるとも考えられる。
このような化合物は、部分的には非常に強力な極性を示す化合物であるが、化合物全体としては、極性部の少ない構造となる傾向があることが予想される。このため、モレキュラーシーブの様なゼオライトや活性アルミナなどの酸点や塩基点を有する(オレフィン重合体の精製用化合物として周知の)化合物に、上記の化合物は吸着され難く、吸着される速度が遅い傾向があると考えられる。よって、前記の環状オレフィン化合物(2-2)は実に厄介な化合物であると言える。
このような厄介な化合物であるため、これと相互作用を有して環状オレフィン(2)と分離するには、前記水酸化物イオンを含む水溶液を選択することが必要であると考えられる。
【0034】
前記環状オレフィン化合物(2’)は、工程(α)においては、脂環族炭化水素化合物との溶液として使用することが好ましい。環状オレフィン化合物(2’)と脂環族炭化水素化合物の割合は、体積比(前記環状オレフィン化合物(2)/前記脂環族炭化水素化合物)で20/80以上80/20以下が好ましく、より好ましくは35/65以上、さらに好ましくは40/60以上であり、そして、より好ましくは65/35以下、さらに好ましくは60/40以下である。この態様が好ましい理由も定かではないが、本発明者は以下のように考えている。
【0035】
前記の通り、環状オレフィン化合物(2―2)は非常に強力な極性を示す化合物と考えられるが、化合物全体としては、極性部の少ない構造であることが予想される(所謂界面活性効果を有する構造の可能性もある)。このため、環状オレフィン化合物(2-2)は環境によっては、強く会合する可能性もあると考えられる。このため、水酸化物イオンを含む水溶液との相互作用を効率的に発現させるために、環状オレフィン化合物(2’)を分散し易い環境で使用することが工程(α)では好ましいと考えられる。このため、上記のような脂環族炭化水素化合物の溶液として使用するのが好ましい態様なのであると考えられる。
脂環族炭化水素化合物以外に芳香族炭化水素化合物も有力な候補ではあるが、芳香族炭化水素化合物は脂環族炭化水素化合物に比して極性がやや高いので、後述する水相、油相の分離が起こり難くなる可能性がある。
【0036】
前記のように、環状オレフィン化合物(2’)と水酸化物イオンを含む水溶液とは、攪拌、振とう等の公知の方法によって十分に接触させた後に分離する必要がある。基本的にはこれらは水相と油相とに分離する関係にある。このため、周知技術により両相を分離するのは比較的容易である(この際、環状オレフィン化合物(2―2)は、水相に含まれると考えられる)。
前記環状オレフィン化合物(2)を含む油相は、前記水酸化物イオンを含む水溶液を分離後も、少量の前記水溶液が残存する可能性があるので、これらを水と十分に接触させた後に水相を分離する工程(α-1)を実施することが好ましい。この際、前記酸素含有化合物の構造や、その含有量によって、所謂油水分離が起こり難くなることがある。これは恐らく、前記化合物の界面活性的な性質の強弱等に由来すると考えられる。このような場合は、例えば水相をアルカリ金属塩の水溶液とすることが好ましい。この方法により、油水分離は起こり易くなることは自明であろう。
上記の様なアルカリ金属塩としては、アルカリ金属ハロゲン化物塩が好ましい。具体的には、入手容易性、価格などの観点から塩化ナトリウムである。
また前記の塩の水溶液の濃度は、0.05~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、そして、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0037】
工程(α)や工程(α―1)の操作は、好ましくは1~10回実施される。より好ましい下限値は2回以上であり、より好ましい上限は8回以下、さらに好ましくは5回以下である。
【0038】
工程(α)、工程(α-1)の後、好ましくは公知の固体状の乾燥剤と油相とを接触させて、残存する水を除去することも可能である。
【0039】
[工程(β)]
工程(β)は環状オレフィン化合物(2)を金属酸化物と接触させる工程であり、好ましくは前記工程(α)で得られた所謂油相部(環状オレフィン化合物(2))と、金属酸化物とを接触させる工程である。この工程は、オレフィンなどの有機化合物の所謂脱水や不純物除去などをアルミナやゼオライトなどの金属酸化物を用いて行う公知の方法と同様であり、公知技術を制限なく用いることができる。例えば、前記金属酸化物の固定床を設置し、これに前記工程(α)で得られた環状オレフィン化合物(2α)を通過させる方法や、環状オレフィン化合物(2α)と前記金属酸化物とを容器などに装入して接触させる方法を挙げることができる。
【0040】
前記金属酸化物は公知のものを制限なく用いることができ、好ましくは酸点および塩基点から選ばれる活性点を有する金属酸化物であることが好ましい。具体的にはゼオライトおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。以下、ゼオライトやアルミナについて、具体例を紹介する。
【0041】
前記ゼオライトとしては多孔質ゼオライトが好ましく、市販のゼオライトを制限なく用いることができる。具体的な例としては、モレキュラーシーブの他、ZS-5型、ZSM-5型などの多種多様な構造を持つものが挙げられる。これらの中でも本実施形態においては東ソー社のゼオラム(登録商標)が好ましく用いられる。より好ましい例としては、東ソー社製の商品名ゼオラム(登録商標)F9を挙げることができる。また、住友化学アルケム社製の活性アルミや、東ソー社製のゼオラム(登録商標)A3も好適な製品である。
【0042】
多孔質アルミナについても市販の製品を制限なく用いることができる。それらの中でも非晶質構造を有し、表面積が好ましくは200m/g以上、より好ましくは250m/g以上である多孔質アルミナが好ましい。
【0043】
またアルミナとしての純度は好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上である。アルミナ以外の含有成分しては、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化ナトリウムなどを好ましい成分として挙げることができる。
前記多孔質ゼオライトと、多孔質アルミナとは併用することもできる。併用する場合の重量比は0.1~10の範囲である。好ましくは0.2~8、より好ましくは0.3~6、更に好ましくは0.3~5の範囲である。
【0044】
前記多孔質ゼオライトと多孔質アルミナとを前記環状オレフィン化合物(2α)と接触させる場合には、例えば多孔質ゼオライト、多孔質アルミナの順に接触させる方法や、多孔質ゼオライトと多孔質アルミナが共存する状態で接触させる方法などを挙げることができる。前者の場合、多孔質ゼオライトのみの層と多孔質アルミナのみの層の積層構造や、多孔質ゼオライトのみの層と多孔質ゼオライト/多孔質アルミナ混合層の積層構造、あるいはそれらの組合せた固定床を設置し、これに環状オレフィン化合物(2α)を流す方法を挙げることができる。
【0045】
本実施形態の場合、前記した通り、環状オレフィン化合物(2)は経時的に酸化し易い傾向があることを考慮すると、前記金属酸化物と環状オレフィン化合物(2α)とを、例えば容器中で接触させる態様が好ましく、この状態で保管することがさらに好ましい。前記金属酸化物は、速度は速くないが含酸素環状オレフィン化合物を吸着する能力を有しているので、もしも保管中にさらに前記含酸素環状オレフィン化合物が発生したとしても、前記金属酸化物の吸着速度が勝り、環状オレフィン化合物(2)を健全な状態(オレフィン重合触媒で重合できる状態)のまま保管することができると期待される。
【0046】
工程(α)および工程(β)を実施する順番は、基本的には制限は無いが、好ましくは、工程(α)、工程(β)の順に実施する工程を含むことが好ましい。
工程(β)は従来通り、主として公知の不純物を除去する工程である。このような不純物を除去した後、工程(α)で前記の環状オレフィン化合物(2-2)を除去してもよいが、工程(α)では様々な化合物を併用する為、公知の不純物などが混入する可能性がある。このため、工程(α)の後に工程(β)を実施する様な工程(β)を実質的に精製の最終工程とすることが望ましい。
また、工程(α)、工程(β)を交互に繰り返し行ってもよい。この際、工程(β)で本実施形態の製造方法の終了とすることが好ましい。
このようにして、精製した環状オレフィン化合物(2)を得ることができる。勿論、さらに減圧濃縮、蒸留、カラム処理などの公知の方法で、環状オレフィン化合物(2)を精製することもできる。
【0047】
(オレフィン重合触媒)
上記のようにして得られた環状オレフィン化合物(2)は、好ましくは炭素原子数2~20のα-オレフィンおよび芳香環を有さない環状オレフィンから選ばれる少なくとも一種のオレフィン類と共重合することができる。この際、オレフィン重合用触媒を用いることが好ましく、そのような触媒としては公知の触媒を制限なく用いることができる。従来から好ましい触媒として知られているのは、ハロゲン含有バナジウムと、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物とを含むオレフィン重合用触媒である。その他、下記のような遷移金属化合物(A)と化合物(B)とを含有するオレフィン重合用触媒も好適な例である。
【0048】
<遷移金属化合物(A)>
遷移金属化合物(A)は、下記式(I)で示される遷移金属化合物(A-1)、下記式(II)で示される遷移金属化合物(A-2)、および下記式(III)で示される遷移金属化合物(A-3)からなる群から選択される一種または二種以上を含有する。
【0049】
(遷移金属化合物(A-1))
遷移金属化合物(A-1)は、下記の式(I)で示される。
【0050】
【化7】
上記式(I)において、Mは、周期律表4族の遷移金属原子を示す。
としては、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子等を例示できる。
【0051】
は、チタン原子またはジルコニウム原子であることが好ましく、ジルコニウム原子であることがより好ましい。
【0052】
は、アルキレン基、アルキリデン基、アリレン基およびシリレン基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基を示す。
【0053】
が示すアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基またはジフェニルメチレン基を例示できる。
が示すアルキリデン基としては、イソプロピリデン基またはシクロヘキシリデン基等を例示できる。
が示すアリレン基としては、フェニレン基等を例示できる。
【0054】
が示すアルキレン基、アルキリデン基、アリレン基もしくはシリレン基の置換体としては、ジメチルメチレン基、ジフェニルフェニレン基またはジメチルシリレン基等を例示できる。
【0055】
は、アルキレン基またはアルキレン基の置換体であることが好ましく、メチレン基またはメチレン基の置換体であることがより好ましく、ジメチルメチレン基またはジフェニルフェニレン基であることがさらに好ましい。
【0056】
は、炭素原子数1~20であることが好ましく、炭素原子数1~10であることがより好ましい。
【0057】
およびRは、それぞれ独立に、シクロアルカジエニル基またはそれらの置換体を示す。
【0058】
およびRは、それぞれ独立に、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基であることが好ましい。
およびRは、それぞれ独立に、シクロペンタジエニル基もしくはフルオレニル基、またはそれらの置換体であることがより好ましい。
【0059】
およびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~20であることが好ましい。
【0060】
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示す。
【0061】
およびRが示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子または臭素原子などを例示できる。
【0062】
およびRが示す炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基またはデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボニル基、ビシクロノニル基またはトリシクロデカン基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基またはアントラセニル基等のアリール基;ベンジル基またはフェニルエチル基等のアラルキル基;1,3-ブタジエニル基、イソプレニル(2-メチル-1,3-ブタジエニル)基、ピペリレニル(1,3-ペンタジエニル)基、2,4-ヘキサジエニル基、1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル基またはシクロペンタジエニル基等のジエン系二価誘導体基;等を例示できる。
【0063】
およびRが示すハロゲン含有基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルまたはノナフルオロ-t-ブチル等のハロゲン含有炭化水素基;ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル等のハロゲン含有アリール基;等を例示できる。
【0064】
およびRが示す酸素含有基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基またはt-ブトキシ基等のアルコシキ基;フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基または2,4,6-トリメチルフェノキシ基等のアリーロキシ基;アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基またはp-クロロフェノキシカルボニル基等のエステル基;エーテル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基またはp-メトキシベンゾイル基等のアシル基;カルボキシル基;カルボナート基;ヒドロキシ基;ペルオキシ基;カルボン酸無水物基;フリル基;等を例示できる。
【0065】
およびRが示す硫黄含有基としては、メルカプト基;アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基またはフェニルチオカルボニル基等のチオエステル基;ジチオエステル基;メチルチオ基またはエチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基またはナフチルチオ基等のアリールチオ基;チオアシル基;チオエーテル基;チオシアン酸エステル基;イソチオシアン酸エステル基;スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基もしくはスルホン酸フェニル基等のスルホンエステル基;フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基もしくはN-メチル-p-トルエンスルホンアミド基等のスルホンアミド基;チオカルボキシル基;ジチオカルボキシル基;スルホ基;スルホニル基;スルフィニル基;スルフェニル基;等を例示できる。
【0066】
およびRが示す窒素含有基としては、アミノ基;ジメチルアミノ基またはエチルメチルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のアリールアミノ基;イミノ基;メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノまたはブチルイミノ基等のアルキルイミノ基;フェニルイミノ基等のアリールイミノ基;アミド基;アセトアミド基またはN-メチルアセトアミド基等のアルキルアミド基;N-メチルベンズアミド基等のアリールアミド基;イミド基;アセトイミド基等のアルキルイミド基;ベンズイミド基等のアリールイミド基;ピロリジノ基;ヒドラジノ基;ヒドラゾノ基;ニトロ基;ニトロソ基;シアノ基;イソシアノ基;シアン酸エステル基;アミジノ基;ジアゾ基;アミノ基がアンモニウム塩となったもの等を例示できる。
およびRが示す窒素含有基の置換体としては、シリルアミド基またはホスフィノアミド基等を例示できる。
【0067】
およびRが示すリン含有基としては、ホスフィド基;ホスホリル基;チオホスホリル基;ホスファト基等を例示できる。
【0068】
およびRが示すケイ素含有基としては、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基またはジメチル-t-ブチルシリル基等のアルキルシリル基;等を例示できる。
【0069】
およびRが示すホウ素含有基としては、ボランジイル基;ボラントリイル基;ジボラニル基;等を例示できる。
およびRが示すホウ素含有基の置換体としては、(Et)B-、(iPr)B-、(iBu)B-、(Et)B、(iPr)Bまたは(iBu)B等で表されるアルキル基置換ホウ素;(CB-、(CB、(CBもしくは(3,5-(CFB等で表されるアリール基置換ホウ素;BCl-またはBCl等で表されるハロゲン化ホウ素;(Et)BCl-、(iBu)BCl-または(CBCl等で表されるアルキル基置換ハロゲン化ホウ素;等を例示できる。
ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0070】
およびRが示すアルミニウム含有基の置換体としては、(Et)Al-、(iPr)Al-、(iBu)Al-、(Et)Al、(iPr)Alまたは(iBu)Al等で表されるアルキル基置換アルミニウム;(CAl-等で表されるアリール基置換アルミニウム;AlCl-、またはAlCl等で表されるハロゲン化アルミニウム;(Et)AlCl-、(iBu)AlCl-等で表されるアルキル基置換ハロゲン化アルミニウム;等を例示できる。
ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0071】
およびRが炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基アルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である場合、RおよびRの炭素原子数は、それぞれ独立に、1~20であることが好ましい。
【0072】
およびRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子または炭化水素基であることが好ましい。
【0073】
およびRがハロゲン原子である場合、RおよびRは、それぞれ独立に、塩素原子であることがより好ましい。
【0074】
およびRが炭化水素基である場合、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0075】
(遷移金属化合物(A-2))
遷移金属化合物(A-2)は、下記の式(II)で示される。
【0076】
【化8】
【0077】
上記式(II)において、Mは、周期律表4族の遷移金属を示す。
としては、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子等を例示できる。
【0078】
は、チタン原子またはジルコニウム原子であることが好ましく、チタン原子であることがより好ましい。
【0079】
は、1~3の整数を示す。nは、Mの価数およびXの種類に応じて、式(II)が示す遷移金属化合物(A-2)全体が電気的に中性になるように選択される。
は、2であることが好ましい。
【0080】
Lは、それぞれ独立に、周期律表15族の原子が配位原子となる1価のアニオン性配位子を示す。
【0081】
Lは、式(IV)で表される1価のアニオン性配位子であることが好ましい。
【0082】
【化9】
【0083】
上記式(IV)において、Yは、周期律表の15族の原子を示す。Yとしては、窒素原子、リン原子またはヒ素原子等を例示できる。
Yは、窒素原子であることが好ましい。
【0084】
Zは、周期律表の14族、15族または16族から選ばれる一種類の原子を示す。Zとしては、14族である炭素原子またはケイ素原子等;15族である窒素原子、リン原子またはヒ素原子等;16族である酸素原子または硫黄原子等;を例示できる。
Zは、炭素原子または窒素原子であることが好ましく、炭素原子であることがより好ましい。
【0085】
は、1~3の整数を示す。nは、Zの価数およびR18の種類に応じて、式(IV)が示す1価のアニオン性配位子全体が電気的に中性になるように選択される。
は、1または2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0086】
18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基または原子を示し、各々が互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は共役二重結合を含む芳香族性を有するものでもよく、形成される環がシクロペンタジエニル基と結合していてもよい。
【0087】
18が示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体としては、RおよびRが示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体として例示したものを例示できる。
【0088】
18が互いに結合して環を形成し、形成される環がシクロペンタジエニル基と結合した構造の例としては、以下のものが例示できる。
【0089】
【化10】
【0090】
18が炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である場合、R19の炭素原子数は、それぞれ独立に、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0091】
18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミド基、アリール基、アラルキル基、シリル基、アルキルアミド基、アルキルシリル基、アリールアミド基、シリルアミド基、ホスフィノアミド基、およびホスフィド基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基であることが好ましく、アルキル基、シクロアルキル基もしくはアリール基、またはその置換体であることがより好ましく、t-ブチル基、トリシクロデカン基もしくはフェニル基、又はその置換体であることがさらに好ましく、t-ブチル基であることがさらに好ましい。
【0092】
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基または原子を示す。
【0093】
が示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体としては、RおよびRが示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体として例示したものを例示できる。
【0094】
が炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である場合、Xの炭素原子数は、それぞれ独立に、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
は、ハロゲン原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0095】
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基または原子を示し、R~Rのうち任意の2つまたは3つが縮合し環を形成していてもよく、形成される環は共役二重結合を含む芳香族性を有するものでもよい。
【0096】
~Rが示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体としては、RおよびRが示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体として例示したものを例示できる。
【0097】
~Rが炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である場合、R~Rの炭素原子数は、それぞれ独立に、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
~Rは、水素原子であることが好ましい。
【0098】
(遷移金属化合物(A-3))
遷移金属化合物(A-3)は、下記の式(III)で示される。
【0099】
【化11】
【0100】
上記式(III)において、Mは、周期律表4族の遷移金属を示す。
としては、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を例示できる。
は、チタン原子またはジルコニウム原子であることが好ましく、チタン原子であることがより好ましい。
【0101】
は、1~4の整数を示す。
は、Mの価数およびXの種類に応じて、式(III)が示す遷移金属化合物(A-3)全体が電気的に中性になるように選択される。
は、2であることが好ましい。
【0102】
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ケイ素含有基およびホウ素含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示す。
【0103】
が示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体としては、RおよびRが示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体として例示したものを例示できる。
【0104】
が炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である場合、Xの炭素原子数は、それぞれ独立に、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
は、ハロゲン原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0105】
10~R17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ケイ素含有基およびホウ素含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示し、R10~R14のうち隣接するもの同士は互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は共役二重結合を含む芳香族性を有するものでもよい。
【0106】
10~R17が示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体としては、RおよびRが示すが示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体として例示したものを例示できる。
【0107】
10~R17が炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基アルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である場合、R10~R17の炭素原子数は、それぞれ独立に、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0108】
10~R17の組合せの具体例としては、R10~R14およびR17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基およびケイ素含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基であり、且つR15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基およびハロゲン含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基であることが好ましい。
10~R14のうち隣接するもの同士は互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は共役二重結合を含む芳香族性を有するものでもよい。
【0109】
10~R17の組合せの具体例としては、R10~R14およびR17は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であり、且つR15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基またはハロゲン含有炭化水素基であることがより好ましい。
【0110】
10~R17の組合せの具体例としては、R10~R14およびR17は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基または2個以上の置換基が結合した環状炭化水素基であり、且つR15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基またはハロゲン含有アルキル基であることがさらに好ましい。
【0111】
10~R17の組合せの具体例としては、R10~R14およびR17は、それぞれ独立に、水素原子またはt-ブチル基であり、且つR15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子またはイソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0112】
10~R17の組合せの具体例としては、R10~R14は、それぞれ独立に、水素原子、分岐状アルキル基または2個以上の置換基が結合した環状炭化水素基であり、且つ、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素、環状炭化水素基、分岐状アルキル基またはハロゲン含有アルキル基であり、且つ、R17は、水素原子、分岐状アルキル基またはハロゲン含有アルキル基であることが好ましい。
【0113】
<化合物(B)>
化合物(B)は、有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)、および上記式(I)で示される遷移金属化合物、上記式(II)で示される遷移金属化合物、または上記式(III)で示される遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)からなる群より選択される一種または二種以上を含有する。
【0114】
(有機金属化合物(B-1))
有機金属化合物(B-1)(以下「成分(B-1)」ともいう。)としては、例えば、一般式(B-1a)で表される有機アルミニウム化合物(B-1a)、一般式(B-1b)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化合物(B-1b)、一般式(B-1c)で表される第2族または第12族金属のジアルキル化合物(B-1c)等の、第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が挙げられる。
【0115】
(B-1a):RaAl(ORb)
式(B-1a)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であり、かつm+n+p+q=3である。有機アルミニウム化合物(B-1a)としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、トリシクロアルキルアルミニウムが挙げられる。
【0116】
(B-1b):M2AlRa
式(B-1b)中、M2はLi、NaまたはKであり、Raは炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基である。錯アルキル化合物(B-1b)としては、例えば、LiAl(C、LiAl(C15が挙げられる。
【0117】
(B-1c):RaRbM3
式(B-1c)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基であり、M3はMg、ZnまたはCdである。化合物(B-1c)としては、例えば、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジn-ブチルマグネシウム、エチルn-ブチルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジn-ブチル亜鉛、ジフェニル亜鉛が挙げられる。
【0118】
有機金属化合物(B-1)の中では、有機アルミニウム化合物(B-1a)が好ましい。
【0119】
(有機アルミニウムオキシ化合物(B-2))
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)(以下「成分(B-2)」ともいう。)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用することができる。
具体的には、下記一般式[B2-1]および/または下記一般式[B2-2]で表わされる化合物、特開平2-78687号公報、特開平2-167305号公報に記載れたベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンが挙げられる。
式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。
【0120】
【化12】
【0121】
【化13】
【0122】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)として、下記一般式[B2-3]で表されるような修飾メチルアルミノキサン等も挙げられる。
式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。
【0123】
【化14】
【0124】
この修飾メチルアルミノキサンはトリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製されるものである。このような化合物は一般にMMAOと呼ばれている。このようなMMAOは、米国特許第4960878号明細書および米国特許第5041584号明細書で挙げられている方法で調製することができる。
【0125】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)として、下記一般式[B2-4]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も挙げることができる。
式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基を示す。Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1から10の炭化水素基を示す。
【0126】
【化15】
【0127】
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、市販品のために入手が容易なメチルアルミノキサン、およびトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製したMMAOが好ましい。このうち、各種溶媒への溶解性および保存安定性が改良されたMMAOが特に好ましい。
【0128】
(遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3))
遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下「イオン性化合物(B-3)」または「成分(B-3)」ともいう。)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。ただし、前述の(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物は含まない。
【0129】
イオン性化合物(B-3)としては、好ましくは下記一般式[B3-1]で表されるホウ素化合物が挙げられる。
式中、Re+としては、H、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。RからRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基であり、好ましくは置換アリール基である。
【0130】
【化16】
【0131】
上記一般式[B3-1]で表されるホウ素化合物の例としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、および国際公開第2015/122414号の[0133]~[0144]に記載されたものを挙げることができる。
【0132】
(炭素原子数2~20のα-オレフィン)
環状オレフィン化合物(2)と共重合する炭素原子数2~20のα-オレフィンとしては、直鎖状でも分岐状でもよく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素原子数が2~20の直鎖状α-オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン等の炭素原子数が4~20の分岐状α-オレフィン等が挙げられる。これらの中では、炭素原子数が2~4の直鎖状α-オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状または分岐状のα-オレフィンは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0133】
(芳香環を有さない環状オレフィン化合物)
環状オレフィン化合物(2)と共重合する、芳香環を有さない環状オレフィン化合物は、得られる光学レンズの屈折率をさらに向上させる観点から、下記の式(V)で示される化合物を含むことが好ましい。
【0134】
【化17】
【0135】
上記式(V)において、n101は0または1を示し、m101は0または正の整数を示し、q101は0または1を示し、R101~R118ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基を示し、R115~R118は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR115とR116とで、またはR117とR118とでアルキリデン基を形成していてもよい。ただし、芳香環を含まない。
【0136】
これらの中でも、芳香環を有さない環状オレフィン化合物としては、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンおよびヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデセン-4から選択される少なくとも一種の構成単位を含むことが好ましく、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンから選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンを含むことがさらに好ましい。
【0137】
本実施形態の精製環状オレフィン化合物の製造方法を用いれば、重合反応に用いるのに好適な芳香環を有する環状オレフィン化合物を効率よくタイムリーに提供することができるので、撮像光学レンズなどの用途に用いられる環状オレフィン共重合体を製造するプロセスに好適に組み込むことができる。
【0138】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0139】
本発明の態様を、以下の実施例、比較例にて示す。ただし、本発明は、これらの実施例、比較例によって制限されない。
【0140】
(実施例1)
空気中で長期保管していたベンゾノルボルナジエンを窒素雰囲気室温にてガラス製容器に保管した。
上記ベンゾノルボルナジエン375mLと市販のシクロヘキサン250mLを混合した溶液625mLと、濃度0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液125mLとを、窒素雰囲気下、攪拌機付きの油水分離可能な容器に装入し、10分間高速で攪拌した。攪拌完了後、静置し、油水分離状態となったことを確認した後、水相を除去した。除去した水相の油相部混在率は3.8体積%であった。
次いで、前記油相に0.4質量%の塩化ナトリウム水溶液125mL装入し、10分間高速で攪拌した。攪拌完了後、静置し、油水分離状態となったことを確認した後、水相を除去した。得られた油相を蒸留して、精製ベンゾノルボルナジエン(α)を得た。
前記精製ベンゾノルボルナジエン溶液(α)100gに、窒素雰囲気下で合成ゼオライト(東ソー社製、商品名:ゼオラム(登録商標)A-3)を10g装入して、1時間静置し、精製ベンゾノルボルナジエン(β)を得た。
次いで、得られた精製ベンゾノルボルナジエン(β)とエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとの共重合を公知の方法で実施した。その結果、十分な重合活性が発現することを確認した。
【0141】
(比較例1)
前記ガラス製容器に保管したベンゾノルボルナジエン100gに合成ゼオライト(東ソー社製、商品名:ゼオラム(登録商標)A-3)を10g装入して、一夜静置し、ベンゾノルボルナジエン溶液(γ)を得た。
得られたベンゾノルボルナジエン溶液(γ)とエチレンとテトラドデセンとの共重合を公知の方法で実施したところ、ほとんど重合が進行しなかった。