(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025916
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20240220BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129290
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀和
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA53
3C100AA57
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB17
3C100BB40
3C100CC02
3C100CC14
3C100EE07
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC04
5E353CC22
5E353CC23
5E353EE02
5E353EE53
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5E353GG01
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5E353JJ45
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5E353KK02
5E353KK03
5E353LL03
5E353LL04
5E353LL07
5E353QQ01
(57)【要約】
【課題】電子部品が搭載される基板の作業ラインに対して実行される作業の作業コストを可視化できる管理システムを提供する。
【解決手段】管理システムMSは、電子部品が搭載される基板を生産する実装基板生産ライン1の管理システムである。管理システムMSは、実装基板生産ライン1が含む複数の作業部に関する情報を表示するモニター2Mと、前記複数の作業部に発生した異常の処理に関するデータの入力を受け付けるデータ取得部21と、データ取得部21が受け付けた異常の復旧に必要な復旧負担量を算出する算出部22と、前記発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出された前記復旧負担量と、を関連付けてモニター2Mに表示させる表示制御部23と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載される基板を搬送する搬送路と、当該搬送路上に配置され前記基板に所定の作業を施す複数の作業部と、を含む作業ラインの管理システムであって、
前記複数の作業部に関する情報を表示する表示部と、
前記複数の作業部に発生した異常の処理に関するデータの入力を受け付けるデータ取得部と、
前記データ取得部が受け付けた異常の復旧に必要な復旧負担量を算出する算出部と、
前記発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出された前記復旧負担量と、を関連付けて前記表示部に表示させる表示制御部と、
を備える管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の管理システムにおいて、
前記データは、前記異常を復旧させるのに要した復旧時間および前記異常を復旧させるために必要な復旧資材費の少なくとも一つを含み、
前記算出部は、前記データと、前記異常の復旧に作業者の関与を要したときは当該作業者の人件費とに基づいて前記復旧負担量を算出する、管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の管理システムにおいて、
復旧負担量の基準値を記憶する基準値記憶部を備え、
前記表示制御部は、前記算出部が算出した復旧負担量の中に前記基準値よりも大きい特定復旧負担量が存在する場合、前記特定復旧負担量を他の復旧負担量と識別可能に前記表示部に表示させる、管理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の管理システムにおいて、
前記複数の作業部を有する単一の作業装置が、前記搬送路に配置されることによって前記作業ラインが構成され、
前記表示制御部は、前記単一の作業装置が備える前記複数の作業部について発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出された前記復旧負担量と、を関連付けて前記表示部に表示させる、管理システム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の管理システムにおいて、
一つまたは複数の作業部を有する作業装置が、前記搬送路に複数台配置されることによって前記作業ラインが構成され、
前記表示制御部は、前記複数台の作業装置に跨がって備えられている前記複数の作業部について発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出された前記復旧負担量と、を関連付けて前記表示部に表示させる、管理システム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の管理システムにおいて、
前記表示制御部は、前記発生した異常についての時間情報を、前記発生した異常に関連付けて前記表示部に表示させる、管理システム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の管理システムにおいて、
前記作業ラインに従事する作業者についての作業に関する特定情報を記憶する作業者情報記憶部と、
過去に発生した前記異常の発生実績から直近に発生し得る異常を推測する推測部と、
前記推測部が推測した前記異常の復旧に携わるべき作業者を、前記特定情報に基づき決定する決定部と、をさらに備え、
前記表示制御部は、前記決定部が決定した作業者の情報を前記表示部に表示させる、管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の管理システムにおいて、
前記作業者情報記憶部が記憶する前記特定情報には、各作業者と、対応可能な前記異常の復旧作業とを関連付けた作業可能リストが含まれる、管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が搭載される基板に対して複数の作業を行う作業ラインの管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が搭載される基板は、例えば当該基板に回路パターンを印刷する印刷機、前記基板に電子部品を実装する実装機、部品実装後の前記基板を検査する検査機などの各種作業装置を含む作業ラインを通して生産される。前記作業ラインに対して、作業員が種々の作業を行う必要があり、その作業の管理も必要となる。特許文献1には、作業ラインの作業装置に対して作業員が実行した整備作業のデータを収集し、作業ラインに含まれる検査装置の検査結果データと照合して整備作業の効果を確認するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業ラインを管理するに際しては、当該作業ラインについての作業量を管理することが望ましい。前記作業ラインでは、各作業装置で発生するエラーの処理やメンテナンスの作業が発生する。特許文献1のシステムによれば、実行された作業の全体データは収集できるが、これらの作業について、どの作業員がどれだけの作業を負担したかまでの管理は行えない。すなわち、作業コストが可視化されていない。このため、例えば人件費の高い作業員が多くの作業負担を担って作業コストが割高になっている等、の不具合が看過されている状態にある。
【0005】
本発明の目的は、電子部品が搭載される基板の作業ラインに対して実行される作業の作業コストを可視化できる管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る管理システムは、電子部品が搭載される基板を搬送する搬送路と、当該搬送路上に配置され前記基板に所定の作業を施す複数の作業部と、を含む作業ラインの管理システムであって、前記複数の作業部に関する情報を表示する表示部と、前記複数の作業部に発生した異常の処理に関するデータの入力を受け付けるデータ取得部と、前記データ取得部が受け付けた異常の復旧に必要な復旧負担量を算出する算出部と、前記発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出された前記復旧負担量と、を関連付けて前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【0007】
この管理システムによれば、作業ラインが備える複数の作業部に発生した異常の内容と、異常の復旧に要した復旧負担量とが関連付けられて、表示部に表示される。このため、どの作業部がどれだけの復旧負担量を要したか、つまり作業コストを可視化することができる。当該表示に基づいて作業ラインの管理者は、例えば過剰に復旧負担量が生じている作業部について、人員配置の見直しや装置改良など、前記復旧負担量を軽減する工夫を施すことが可能となる。
【0008】
上記の管理システムにおいて、前記データは、前記異常を復旧させるのに要した復旧時間および前記異常を復旧させるために必要な復旧資材費の少なくとも一つを含み、前記算出部は、前記データと、前記異常の復旧に作業者の関与を要したときは当該作業者の人件費とに基づいて前記復旧負担量を算出することが望ましい。
【0009】
この態様によれば、復旧時間、復旧資材費および復旧に関与した作業者の人件費に基づいて、実状に即した復旧負担量を算出させることができる。従って、作業ラインに対して実行される作業の作業コストを的確に表示させ得る。
【0010】
上記の管理システムにおいて、復旧負担量の基準値を記憶する基準値記憶部を備え、前記表示制御部は、前記算出部が算出した復旧負担量の中に前記基準値よりも大きい特定復旧負担量が存在する場合、前記特定復旧負担量を他の復旧負担量と識別可能に前記表示部に表示させることが望ましい。
【0011】
この態様によれば、予め記憶された基準値を超過する特定復旧負担量が、表示部の看者において把握し易い態様で表示される。従って、特定復旧負担量が発生している作業部および異常の内容を、看者に速やかに認識させることが可能となる。
【0012】
上記の管理システムにおいて、前記複数の作業部を有する単一の作業装置が、前記搬送路に配置されることによって前記作業ラインが構成され、前記表示制御部は、前記単一の作業装置が備える前記複数の作業部について発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出された前記復旧負担量と、を関連付けて前記表示部に表示させても良い。
【0013】
この態様によれば、単一の作業装置が備える複数の作業部について、発生した異常の内容とその復旧負担量が表示部に表示される。従って、当該単一の作業装置についての作業コストを、作業部別に可視化することができる。
【0014】
上記の管理システムにおいて、一つまたは複数の作業部を有する作業装置が、前記搬送路に複数台配置されることによって前記作業ラインが構成され、前記表示制御部は、前記複数台の作業装置に跨がって備えられている前記複数の作業部について発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出された前記復旧負担量と、を関連付けて前記表示部に表示させても良い。
【0015】
この態様によれば、前記複数台の作業装置に跨がって備えられている前記複数の作業部について、発生した異常の内容とその復旧負担量が表示部に表示される。従って、複数台の作業装置で構成される作業ラインについての作業コストを、作業部別に可視化することができる。
【0016】
上記の管理システムにおいて、前記表示制御部は、さらに前記発生した異常についての時間情報を前記表示部に表示させることが望ましい。
【0017】
この態様によれば、時間情報を加味して、発生した異常の内容とその復旧負担量を表示部に表示させ得る。このため、例えば、所定の時間単位で作業コストを評価すること等が可能となる。
【0018】
上記の管理システムにおいて、前記作業ラインに従事する作業者についての作業に関する特定情報を記憶する作業者情報記憶部と、過去に発生した前記異常の発生実績から直近に発生し得る異常を推測する推測部と、前記推測部が推測した前記異常の復旧に携わるべき作業者を、前記特定情報に基づき決定する決定部と、をさらに備え、前記表示制御部は、前記決定部が決定した作業者の情報を前記表示部に表示させても良い。
【0019】
この態様によれば、複数の作業部の過去の異常発生実績に基づいて、直近に前記複数の作業部に発生し得る異常を推測し、適正な作業者の人員配置を決定し、これを表示部に表示させることができる。従って、管理者に、作業ラインについてコスト要素を考慮した的確な作業計画を作成させることが可能となる。
【0020】
この場合、前記作業者情報記憶部が記憶する前記特定情報には、各作業者と、対応可能な前記異常の復旧作業とを関連付けた作業可能リストが含まれることが望ましい。
【0021】
この態様によれば、前記決定部に、作業者の能力を踏まえて異常の復旧に携わるべき作業者を特定する処理を実行させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電子部品が搭載される基板の作業ラインに対して実行される作業の作業コストを可視化できる管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る管理システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す実装基板生産ラインに含まれる実装機の構成を示す上面視の平面図である。
【
図3】
図3は、サーバーの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4(A)および(B)は、表示部への復旧負担量の表示例を示す図、
図4(C)は、作業者情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、サーバーによる復旧負担量の表示制御の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、表示部への復旧負担量の表示例を示す図である。
【
図7】
図7(A)および(B)は、データ加工処理例を示す表形式の図である。
【
図8】
図8は、作業計画作成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、作業実績値データの一例を示す表形式の図である。
【
図10】
図10は、作業者別の作業可能リストの一例を示す表形式の図である。
【
図11】
図11は、作業計画作成処理により作成される作業計画表の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明に係る管理システムは、電子部品を基板に実装してなる部品実装基板を生産する作業ラインにおいて、異常の処理に関する管理を行うシステムである。前記作業ラインは、典型的には印刷機、マウンタ、リフロー炉、各種の検査機等の作業装置で構成されるが、単一の作業装置で構成される作業ラインであっても良い。部品実装基板は、回路パターンが印刷されたプリント基板に、例えばチップ抵抗やチップコンデンサ等のチップ部品、ボールバンプ部品、IC等のパッケージ型の部品等の電子部品が実装されてなる製品である。
【0025】
[管理システムの全体構成]
図1は、本実施形態に係る作業ラインの管理システムMSの全体構成を模式的に示す図である。管理システムMSは、プリント基板に電子部品を実装する実装基板生産ライン1(作業ライン)と、実装基板生産ライン1を構成する各種の作業装置とデータ通信を行うサーバー2と、実装基板生産ライン1の作業者OPに所持されるモバイル端末3とを含む。
【0026】
図1には、実装基板生産ライン1の構成を示すブロック図が示されている。実装基板生産ライン1は、
図1の右方から左方へ電子部品が搭載される基板を搬送する基板搬送路Fと、基板搬送路F上に配置され前記基板に所定の作業を施す作業装置とを含む。前記作業装置として
図1の例では、基板搬送方向の上流側から下流側にかけてタンデム配置された、印刷機11、印刷検査機12、実装機13、基板検査機14、リフロー炉15および外観検査機16を例示している。実装基板生産ライン1の上流端には、基板を印刷機11に搬入するローダー17が、下流端には外観検査機16から生産後の基板を取り出すアンローダー18が各々配置されている。
【0027】
印刷機11は、プリント基板のパッド部にハンダを塗布する作業部を有する。例えば印刷機11は、プリント基板にハンダ塗布部分が開口したマスクを重ね、前記マスク上からクリームハンダを塗布する。印刷検査機12は、ハンダが塗布されたプリント基板を撮像して前記ハンダの二次元および三次元形状を求め、プリント基板に塗布されたハンダの位置や量、高さが適正であるか否かを検査する。なお、他の作業装置として、印刷検査機12の上流側に、プリント基板の所定位置に接着剤を塗布するディスペンサーを配置しても良い。
【0028】
実装機13は、作業部として部品実装用のヘッドを備え、プリント基板上に所要の電子部品を実装する。実装機13の構成は、
図2に基づき後述する。
図1に示す実装基板生産ライン1では、実装機13が三連で配置された例を示している。すなわち、上流側から第1実装機13A、第2実装機13Bおよび第3実装機13Cがタンデムに配置されている。一般に、部品点数の多い基板の生産ラインには、実装機13が多連で配置される。
【0029】
基板検査機14は、実装機13を通過したプリント基板を撮像し、プリント基板に実装された電子部品の位置ズレ、部品浮き、実装漏れ、ハンダ付け欠陥などを検査する作業部を有する。リフロー炉15は、電子部品が実装されたプリント基板を加熱してハンダを溶かし、当該電子部品をプリント基板に定着させる作業部を有する。外観検査機16は、リフロー炉15での加熱処理後のプリント基板を撮像し、基板検査機14と同様に電子部品の位置ズレ、部品浮き、実装漏れ、ハンダ付け欠陥などを検査する作業部を有する。
【0030】
サーバー2は、実装基板生産ライン1を構成する作業装置である印刷機11、印刷検査機12、実装機13、基板検査機14、リフロー炉15および外観検査機16から出力される各種の情報を収集する。前記各種の情報には、前記作業装置の動作状況を示すステータス情報、動作に不具合が生じた時に出力されるエラー情報、電子部品などの消費部材の補給要求情報、何らかの対応を求める対処要求情報などの、所定の通知情報が含まれる。また、サーバー2は、収集した通知情報をモバイル端末3へ通知する処理も行う。サーバー2の機能構成については、
図3に基づき後記で詳述する。
【0031】
サーバー2には、モニター2M(表示部)が付設されている。モニター2Mには、実装基板生産ライン1の前記作業装置に関する各種の情報が表示される。本実施形態では、前記作業装置に発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出された復旧負担量とを関連付けた管理情報が、モニター2Mに表示される。ここで、「異常」とは、各作業装置の本来の作業動作以外の何らかの事象であり、装置の停止や故障などのエラーのほか、部品切れ、段取り、メンテナンス、基板修理などに起因する装置停止やライン停止を含む。
【0032】
モバイル端末3は、実装基板生産ライン1の運用に携わる各作業者OPに所持される、例えばタブレットやスマートフォンなどの情報端末機である。
図1では二人の作業者OPが、それぞれモバイル端末3を所持している例を示している。モバイル端末3は、サーバー2とデータ通信が可能であり、情報の表示と操作入力とが可能なディスプレイ31(表示部)を備えている。モニター2Mに表示される前記管理情報は、ディスプレイ31にも表示可能とされている。
【0033】
[実装機の構造]
続いて、実装基板生産ライン1において作業部を多く備える実装機13について、説明を加えておく。
図2は、実装機13の概略的な平面図である。実装機13は、基台41、一対のコンベア42、移動フレーム43、ヘッドユニット44、Y軸固定レール45、X軸固定レール46、部品供給部47A、47B、47C、47D、基板認識カメラ51、部品認識カメラ52および通信部CSを備えている。なお、
図2のX方向は基板Pの搬送方向、Y方向はX方向と水平面内で直交する方向を示す。
【0034】
基台41は、実装機13の各部が載置される矩形の台である。一対のコンベア42は、基板Pを搬送する作業部であって、基台41上にX方向に延びるように配設されている。コンベア42は、基板PをX方向上流側から実装機13の機内に搬入し、所定の作業位置(
図2に示す基板Pの位置)までX方向へ搬送して一旦停止させる。この作業位置において、電子部品が基板Pに実装される。実装作業後、コンベア42は基板PをさらにX方向へ搬送し、実装機13の機外へ搬出する。
【0035】
移動フレーム43は、X方向に延びるフレームであって、Y方向に移動可能に基台41に支持されている。ヘッドユニット44は、移動フレーム43に搭載され、移動フレーム43の移動に伴ってY方向に移動可能であり、且つ、移動フレーム43に沿ってX方向に移動可能である。
【0036】
ヘッドユニット44は、電子部品を基板Pに実装する作業部として、複数の単位ヘッド44Hが環状に配列されたロータリーヘッド44Rを備える。ロータリーヘッド44Rは、Z方向に延びる中心軸の軸回りに回転可能である。単位ヘッド44Hは、昇降および自身の中心軸回りの回転が可能である。単位ヘッド44Hの各々の下端には、吸着ノズルが装着されている。前記吸着ノズルは、部品供給部47A~47Dの電子部品CA、CBを吸着して保持し、これを基板Pの表面に搭載することが可能である。
【0037】
Y方向に延びるY軸固定レール45は、移動フレーム43をY方向に移動可能に支持する。X軸固定レール46は、移動フレーム43に対してX方向に延びるように固定されている。Y軸固定レール45に対して、Y軸サーボモータ45MおよびY軸ボールねじ軸45Sが配置されている。X軸固定レール46に対して、X軸サーボモータ46MおよびX軸ボールねじ軸46Sが配置されている。ヘッドユニット4は、X軸サーボモータ46MによるX軸ボールねじ軸46Sの回転駆動によってX方向に移動し、Y軸サーボモータ45MによるY軸ボールねじ軸45Sの回転駆動によってY方向に移動する。
【0038】
部品供給部47A~47Dは、基板Pへ実装される電子部品CA、CBを供給する作業部である。部品供給部47A~47Dは、コンベア42を挟んでY方向の一方側と他方側とに各々配置されている。一方側の部品供給部47A、47Bは、X方向に配列された複数のテープフィーダー48を備えている。各テープフィーダー48は、チップ部品などの電子部品CAを所定間隔で収容したテープが巻回されたリールを保持している。テープフィーダー48は、前記リールからテープを間欠的に繰り出し、フィーダー先端の部品供給位置に電子部品CAを供給する。他方側の部品供給部47C、47Dは、ICなどの大型の電子部品CBを保持したトレイフィーダー49を備えている。
【0039】
基板認識カメラ51は、ヘッドユニット4の側部に搭載されている。基板認識カメラ51は、コンベア42により前記作業位置に搬入された基板Pの表面に付設されているフィデューシャルマークFMの撮像等を行う作業部である。フィデューシャルマークFMは、搬入された基板Pの前記作業位置の原点座標に対する位置ズレ量を検知するためのマークである。
【0040】
部品認識カメラ52は、基台10に組み込まれており、基台10の上方を撮像視野とするカメラである。部品認識カメラ52は、単位ヘッド44Hの吸着ノズルによる電子部品CA、CBの吸着状態を画像認識するために、前記吸着ノズルに保持された電子部品CA、CBをロータリーヘッド44Rの下方側から撮像する作業部である。
【0041】
通信部CSは、サーバー2との有線または無線でのデータ通信を実現するため通信回路を含む。実装機13は、図略のコントローラにより動作が制御される。前記コントローラは、前記ステータス情報、前記エラー情報、前記補給要求情報および対処要求情報などの通知情報を、通信部CSを介してサーバー2へ送信する。
【0042】
[管理システムの電気的構成]
図3は、サーバー2の機能構成を含む、管理システムMSのブロック図である。実装基板生産ライン1の各作業装置は、それぞれ
図2に示した通信部CSに相当する通信部を備え、動作ログやエラー発生情報などの通知情報をサーバー2へ送信可能とされている。作業者に保持されるモバイル端末3は、サーバー2と無線通信が可能であり、サーバー2に対して操作者の入力情報を送信する。本実施形態では、実装基板生産ライン1の各作業装置に発生した異常への対処に関するデータが、モバイル端末3からサーバー2へ送信される。
【0043】
サーバー2は、マイクロコンピュータを備え、所定のプログラムが起動することにより、機能的に、データ取得部21、算出部22、表示制御部23、データ記憶部24、基準値記憶部25、作業者情報記憶部26および作業計画作成部27を具備するように動作する。
【0044】
データ取得部21は、実装基板生産ライン1を構成する作業装置に発生した異常の処理に関するデータの入力を受け付ける。前記データはデータ取得部21へ、例えば、作業者に保持されるモバイル端末3からマニュアル入力される、あるいは、印刷機11や実装機13等の作業装置の通信部CSから自動入力される。モバイル端末3からマニュアル入力されるデータは、例えば異常対応作業の種別、作業開始時刻、対応した作業者名、異常を復旧させるのに要した復旧作業時間、異常の復旧に要した復旧資材費などのデータである。復旧資材費は、例えば部品交換や修理などに要した資材費である。前記作業装置から自動入力されるデータは、例えばメンテナンスモードが設定されていた期間、装置エラーのコードや、エラー停止の時間などを示すデータである。
【0045】
算出部22は、データ取得部21が受け付けた異常の復旧に必要な復旧負担量を算出する。復旧負担量とは、異常の復旧に要した関与した作業者の人件費、上述の復旧資材費などを含む、異常復旧のための総コストを意味する。復旧負担量には、異常の発生に伴う装置停止による機会損失費や廃棄損失費等を含めても良い。復旧負担量は、データ取得部21に入力された前記データを用い、例えば次式(1)で算出させることができる。
復旧負担量=作業時間×作業者人件費+復旧資材費 ・・・(1)
【0046】
表示制御部23は、実装基板生産ライン1の作業装置において発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出部22が算出した復旧負担量とを関連付けて、モニター2Mに表示する処理を行う。この表示の態様は、実装基板生産ライン1を構成する作業装置の数や機能などに応じて変更することができる。本実施形態では表示部としてモニター2Mを例示している。これに代えて、表示部は、モバイル端末3のディスプレイ31や、実装基板生産ライン1が設置された作業所内において作業者が視認可能に配設される大型モニター等であっても良い。
【0047】
図4(A)は、複数の作業部を有する単一の作業装置で作業ラインが構成されている場合の、モニター2Mへの表示例を示している。ここでは、実装基板生産ライン1が1台の実装機13を含む場合の表示例を示している。実装機13は、基板Pを搬送するコンベア42、電子部品の基板Pへの実装を行うヘッド(ロータリーヘッド44R)、基板の撮像を行う基板認識カメラ51など、複数の作業部を含んでいる。
【0048】
図4(A)の表示例では、上掲の複数の作業部について発生した異常の内容である「エラー対応作業」と、この「エラー対応作業」について算出された「復旧負担量」とが、表形式で相互に関連付けて表示される例を示している。また、「復旧負担量」は、具体的なコストではなく、「高い」「低い」「普通」の三段階で評価する態様を例示している。このほか、「復旧負担量」の欄をインディケータ形式とし、復旧負担量が多いほどインディケータが長尺となるような表示形式としても良い。後記でも例示するが、表中の復旧負担量が大きかった「エラー対応作業」の行、ないしはその「復旧負担量」に、何らかの強調表示を伴わせ、目立たせた表示とすることが望ましい。このような表示を行わせることで、作業装置のどの作業部について、どれ位の復旧コストが発生しているかを可視化することができる。
【0049】
図4(B)は、
図1に示す実装基板生産ライン1のように、一つまたは複数の作業部を有する印刷機11、印刷検査機12、実装機13などの作業装置で作業ラインが構成されている場合の、モニター2Mへの表示例を示している。
図4(B)の表の「マシン」の欄には、異常の発生した作業装置が記載され、「作業部」の欄には当該作業装置のどの作業部で前記異常が発生したのかが示され、「エラー対応作業」の欄にはその異常の内容が表示されている。「復旧負担量」の欄には、「高い」「低い」「普通」の三段階評価が示されている。このように
図4(B)では、実装基板生産ライン1において、複数台の作業装置に跨がって備えられている複数の作業部について発生した異常の内容と、当該異常の復旧について算出された復旧負担量と、を関連付けてモニター2Mに表示させる態様を例示している。
【0050】
図4(A)および(B)の記載において、ヘッド(ロータリーヘッド44R)への「エラー対応作業」として記載されているエラー1、エラー2、エラー3は、ヘッドによる部品吸着から基板Pへの部品搭載までのプロセスで生じる各種のエラーを抽象的に示したものである。エラー1~3は、例えば単位ヘッド44Hの下端に装着されるノズルの詰まりの修復、前記ノズルの交換、異常の発生したテープフィーダー48やトレイフィーダー49の修理または交換、フィーダーにおける部品吸着部分の調整などが含まれる。「段取り」は、生産の準備に関する各種の作業であり、「メンテナンス」は、その名称通りの作業である。
図4(B)の「基板検査機」について、「エラー対応作業」として「基板修理」が示されている。これは、基板検査機14において「不良」と判定された部品実装基板を、作業者が手を加えて修理する作業である。
【0051】
図3に戻って、データ記憶部24は、データ取得部21がモバイル端末3や実装基板生産ライン1の各作業装置から受け付けた異常の処理に関するデータを記憶する。表示制御部23は、データ記憶部24に記憶されたデータを使用して、モニター2Mに表示させる表形式の画像等を作成する。
【0052】
基準値記憶部25は、復旧負担量の基準値を記憶する。前記基準値は、各々のエラー対応作業において、例えば通常の許容範囲を超過する復旧コストであるか否かを設定要件として、予め定められる値である。表示制御部23は、算出部22が算出した復旧負担量の中に前記基準値よりも大きい特定復旧負担量が存在する場合、前記特定復旧負担量を他の復旧負担量と識別可能にモニター2Mに表示することができる。前記識別可能な表示は、例えば太字の強調表示、他とは異なる色のカラー表示、マーカーの重畳表示などである。なお、上述した「復旧負担量」の「高い」「低い」「普通」の三段階評価を定める値の範囲を、基準値記憶部25に記憶させておいても良い。
【0053】
作業者情報記憶部26は、実装基板生産ライン1に従事する作業者についての作業に関する特定情報を記憶する。前記特定情報は、各作業者の固有の識別記号、管理情報、作業関連情報などである。前記管理情報には、
図4(C)に例示しているような、作業員の単位時間あたりの人件費が含まれる。また、前記作業関連情報は、例えば、各作業者と、これら作業者が対応可能な前記異常の復旧作業とを関連付けた作業可能リストが含まれる。後出の
図10には、前記作業可能リストの一例が示されている。
【0054】
作業計画作成部27は、将来の実装基板生産ライン1での基板生産において、いつ、どのような作業員を配置するかの作業計画を作成する。作業計画作成部27は、機能的に推測部28および決定部29を備える。推測部28は、過去に発生した実装基板生産ライン1の作業装置での異常発生実績から直近に発生し得る異常を推測する処理を行う。決定部29は、推測部28が発生を推測した前記異常の復旧に携わるべき作業者を、作業者情報記憶部26に格納されている前記特定情報に基づき決定する処理を行う。作業計画作成部27の動作例については、
図8~
図11を参照して後記で詳述する。
【0055】
[復旧負担量の表示制御]
続いて、サーバー2による復旧負担量の表示制御の一例を、
図5に示すフローチャートを参照して説明する。サーバー2のデータ取得部21は、逐次、モバイル端末3を介して作業者から送信される作業関連のデータの入力、または、実装基板生産ライン1の各作業装置から自動送信されるデータの入力を受け付ける(ステップS1)。受け付けられたデータは、データ記憶部24に格納される(ステップS2)。本実施形態では、前記データは、異常が発生した作業部とその作業装置名、異常(エラー)対応作業の種別、作業開始日時、対応した作業者名、異常を復旧させるのに要した復旧作業時間、異常の復旧に要した復旧資材費とする。
【0056】
次に、表示制御部23が復旧負担量の表示制御を実行するタイミングであるか否かが判定される(ステップS3)。前記表示制御の実行タイミングではない場合(ステップS3でNO)、ステップS1のデータ入力の受け付けと、ステップS2のデータの記憶の処理が繰り返される。前記表示制御の実行タイミングである場合(ステップS3でYES)、当該表示制御のための以下の処理が実行される。なお、ステップS3を省き、ステップS1のデータ入力の受け付けがあれば、逐次、前記表示制御を実行する態様としても良い。
【0057】
前記表示制御の実行に際しては、まず算出部22が、作業者情報記憶部26から所定の作業者情報を読み出す(ステップS4)。本実施形態では前記作業者情報として、
図4(C)に例示されている、作業者の単位時間あたりの人件費データが読み出される。続いて、算出部22は、ステップS1で取得したデータであって、異常に対応した作業者の人件費、復旧作業時間および復旧資材費を、上掲の式(1)に適用して、復旧負担量RCを算出する(ステップS5)。
【0058】
次に、表示制御部23は、異常が発生した作業部について、基準値記憶部25から復旧負担量RCの基準値Thを読み出す(ステップS6)。そして、Th<RCの条件を満たすデータ、つまり基準値Thを超過するようなコスト高の特定復旧負担量RCが特定される。特定復旧負担量RCについては、モニター2Mへの表示に際して他の復旧負担量と識別可能な表示態様、例えば強調処理が施されるよう、フラグが付与される(ステップS7)。なお、強調処理等を特に施さない場合には、このステップS6およびS7を省くことができる。
【0059】
以上の処理を経て、表示制御部23は、モニター2Mに復旧負担量の表示を行う(ステップS8)。
図6は、モニター2Mへの復旧負担量の表示例を示す表形式の図である。ここでは、実装基板生産ライン1のうち、第1実装機13Aに対応する「実装機1」についての復旧負担量の算出例が表示されており、他の作業装置については省かれている。
【0060】
図6の表中、「エラー対応作業」の欄は、第1実装機13Aが備える複数の作業部において発生した異常が表示されている。「作業開始日時」の欄は、発生した異常に対して復旧作業を開始した日時を表示する欄であり、当該異常の時間情報に相当する。このような異常の時間情報を、発生した異常に関連付けて表示させることで、データ加工の際などに時系列的に整理できる。
【0061】
「対応作業者」は、発生した異常に対処した作業者名である。ここに挙げられている作業者A,B,C,Dは、
図4(C)に示している作業者A,B,C,Dに対応する。「作業時間」は、対応作業者が、発生した異常の復旧作業に要した時間(復旧時間)である。「資材費」は、発生した異常の復旧にあたり、装置の部品交換費用、修理費用、用いた治具の費用、廃棄せざるを得なかった基板や電子部品の損失、装置停止に伴う生産機会損失などの総計費用である。「復旧負担量」は、対応作業者の人件費、作業時間および資材費を上掲の式(1)に代入して求められた、発生した異常の復旧に要した総費用である。例えば「エラー1」は、人件費が1000円/時間の作業者A(
図4(C)参照)が、作業時間=1hで復旧させ、資材費として500円を要したので、復旧負担量=1500円となる。他のエラー対応作業についても、同様にして復旧負担量が求められる。
【0062】
図6の表において、「エラー2」の復旧負担量に注目する。「エラー2」の対応作業者は作業者Cである。
図4(C)に示すように、作業者Cの人件費は3000円/時間であって、実装基板生産ライン1に従事する4人の作業者の中で最も高い人件費である。そして、「エラー2」の復旧には6時間を要しており、結果として復旧負担量=18000円と高価になっている。
図6では、当該復旧負担量が、基準値記憶部25に記憶されている基準値Thを超過する特定復旧負担量であるとして、強調表示が付されている。
【0063】
このように、基準値Thを超過する特定復旧負担量が、モニター2Mの看者に対して把握し易い態様で表示することで、特定復旧負担量が発生している作業部および異常の内容を、看者が速やかに認識することが可能となる。また、
図6の表示により、人件費の高い作業者Cが、復旧に時間の要する「エラー2」の作業を行ったことで、単価の高い復旧負担量となったことが可視化される。例えば、同作業を、人件費の安価な作業者Aが実行したならば、復旧負担量=6000円に減額でき、12000円のコスト改善効果を得ることができる。このようなコスト改善提案も、
図6の表示から抽出可能となる利点がある。
【0064】
図5のフローチャートに戻り、ステップS8の表示処理の後、
図6の表に掲載されたデータの加工処理を実行するか否かが確認される(ステップS9)。データ加工処理を実行しない場合(ステップS9でNO)、表示制御部23は表示処理を終える。これに対し、データ加工処理を実行する場合(ステップS9でYES)、表示制御部23は、
図6の表作成に用いたデータを利用して、所定のデータ加工処理と、その結果をモニター2Mへ表示する処理とを実行する(ステップS10)。
【0065】
図7(A)および(B)は、データ加工処理例を示す表形式の図である。
図7(A)は、
図6の表のデータに基づき時間集計のデータ加工を行った例である。
図7(A)のデータ加工表によれば、作業者A~D毎、および、エラー対応作業毎に時間集計が為されている。このデータ加工表によれば、異常の復旧の作業負担が大きい作業者を可視化でき、作業分担の見直しの契機を提供できる。また、異常の復旧に多くの時間を要している作業装置や作業部を可視化できるので、装置の改修や入れ替えの検討機会を提供できる。
【0066】
図7(B)は、
図6の表のデータに基づきコスト集計のデータ加工を行った例である。
図7(B)のデータ加工表によれば、作業者A~D毎、および、エラー対応作業毎に復旧負担量=コスト集計が為されている。このデータ加工表によれば、作業者はA~D毎に異常の復旧作業に関して発生しているコストを可視化できる。従って、作業分担の見直しなどにより、コスト低減を図ることが可能となる。また、異常の復旧に多くのコストを要している作業装置や作業部を可視化でき、改善の必要性を示唆できる。
【0067】
ステップS10の処理の後、作業計画作成部27に実装基板生産ライン1についての今後の作業計画を作成させるか否かが確認される(ステップS11)。作業計画を作成しない場合は(ステップS11でNO)、サーバー2は処理を終える。一方、作業計画を作成する設定の場合、作業計画作成部27は実装基板生産ライン1における過去の復旧負担量を参照して、直近の作業計画を作成する処理を実行する(ステップS12)。
【0068】
[作業計画作成処理]
図8は、
図3に示すサーバー2の作業計画作成部27が実行する作業計画作成処理の一例を示すフローチャートである。作業計画作成部27は、処理実行の指令が与えられると、データ記憶部24から過去の作業実績値データを読み出す(ステップS22)。例えば、次月の作業計画を作成する場合、当月の作業実績値データが読み出される。
【0069】
図9は、作業実績値データの一例を示す表形式の図である。ここでは、12月の作業計画を作成するにあたり、11月の作業実績値データが読み出された例を示している。
図9の表では、作業日ごとに、実行された異常処理についての作業内容、作業数および作業時間が整理されている。例えば、11月1日に、「エラー1」の復旧作業が4回行われ、これらに要した作業時間が3時間であったこと、「エラー2」の復旧作業が1回だけ行われ、これに要した作業時間が6時間であったこと、等が示されている。
【0070】
上記の作業実績値データの読み出し、ならびにデータ整理により、作業日ごとに、どのような作業がどの程度発生するかの傾向を把握することが可能となる。作業計画作成部27の推測部28は、過去に発生した作業の実績から、直近に発生し得る作業を推定する処理を実行する(ステップS22)。例えば推測部28は、
図9に例示した11月の作業実績値データに基づき、次月である12月の日ごとに、発生が予測される「作業内容」およびその「作業数」と、これらの作業に処理に要する「作業時間」を予測する処理を行う。
【0071】
簡易な予測処理では、例えば11月1日と同じ品種の基板を、同じ生産時間にて生産することが予定されている12月の某日については、11月1日と同じ「作業内容」「作業数」および「作業時間」が発生すると予測する。なお、11月1日と同様の生産を行う日が複数日存在した場合は、これらの平均値を予測値としても良い。作業時間もしくは生産量が相違する場合は、実績値に予め定めた係数を乗じる等して予測値を求めることができる。
【0072】
続いて、決定部29が、作業者情報記憶部26から作業者別の作業可能リスト(作業に関する特定情報)を読み出す(ステップS23)。
図10は、前記作業可能リストの一例を示す表形式の図である。当該リストは、どの作業に、どの作業者が対応できるかを示しており、各作業者のスキルを示すリストとも言える。
図10に例示する表では、実装基板生産ライン1の各作業装置と、それらについて発生し得る作業内容とがリストアップされ、作業者A~Dが、それぞれ○印の付された作業を実行可能であることを示している。
【0073】
次に、決定部29は、ステップS22で求められた作業の予測値と、ステップS23で読み出した作業可能リストとを参照して、作業人員配分の決定処理を行う(ステップS24)。この決定処理は、作業者のスキル、人件費を参照しつつ、各作業日において発生が予測された作業量を埋めるように作業者を各作業日に割り当て、作業計画表を作成する処理となる。
図11は、作業計画作成処理により作成される作業計画表の一例である。ここでは、生産時間の長さに応じて人員構成を変えるシンプルな例を示している。例えば、生産品種によって発生が予測される作業が異なる場合には、生産時間が同じでも異なる人員構成となり得る。
【0074】
その後、表示制御部23が、
図11に例示した作業計画表をモニター2Mに表示させる処理を行い(ステップS25)、一連の処理を終える。以上のような作業計画作成処理によれば、推測部28が、実装基板生産ライン1の各作業装置の過去の異常発生実績に基づいて、各作業装置において直近に発生し得る異常を推測する。そして、決定部29が、適正な作業者の人員配置を決定する。従って、管理者に、実装基板生産ライン1について作業員のスクルやコスト要素を考慮した的確な作業計画を作成させることが可能となる。
【0075】
以上説明した管理システムMSによれば、実装基板生産ライン1が備える印刷機11や実装機13などの作業装置が備える複数の作業部に発生した異常の内容と、異常の復旧に要した復旧負担量とが関連付けられて、例えば
図6に示した表形式でモニター2Mに表示される。このため、どの作業部がどれだけの復旧負担量を要したか、つまり作業コストを可視化することができる。当該表示に基づいて実装基板生産ライン1の管理者は、例えば過剰に復旧負担量が生じている作業部について、人員配置の見直しや装置改良など、前記復旧負担量を軽減する工夫を施すことが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1 実装基板生産ライン(作業ライン)
11 印刷機(作業装置)
12 印刷検査機(作業装置)
13 実装機(作業装置)
14 基板検査機(作業装置)
15 リフロー炉(作業装置)
16 外観検査機(作業装置)
2 サーバー
2M モニター2M(表示部)
21 データ取得部
22 算出部
23 表示制御部
24 データ記憶部
25 基準値記憶部
26 作業者情報記憶部
27 作業計画作成部
28 推測部
29 決定部
3 モバイル端末
31 ディスプレイ(表示部)
42 コンベア(作業部)
44R ロータリーヘッド(作業部)
48 テープフィーダー(作業部)
51 基板認識カメラ(作業部)
52 部品認識カメラ(作業部)
MS 管理システム
F 基板搬送路(搬送路)
CA 電子部品