(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025920
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】薬品注入装置および薬品注入方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20240220BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240220BHJP
C02F 1/56 20230101ALI20240220BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240220BHJP
C02F 1/76 20230101ALI20240220BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240220BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20240220BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C02F1/00 K
C02F1/00 U
C02F1/00 L
C02F1/00 V
C02F1/52 Z
C02F1/56 Z
C02F1/28 D
C02F1/76 A
C02F1/44 A
G01N21/59 Z
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129298
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 倫子
(72)【発明者】
【氏名】島村 和彰
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
4D006
4D015
4D050
4D624
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043CA03
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4D624AA01
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4D624DB04
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4D624DB23
(57)【要約】
【課題】浄水処理において、被処理水中の藻類の状況を従来よりも迅速且つ正確に把握し、その場で適切な薬品を選択してその注入を制御し得る薬品注入制御装置、および薬品注入制御方法を提供すること
【解決手段】被処理水2を固液分離して処理水7を得る浄水処理システム1中で薬品を注入するための薬品注入装置10である。薬品注入装置10は、任意の、被処理水をろ過するフィルタ12と、第一の光合成色素濃度を測定可能な第一測定手段14と、第二の光合成色素濃度を測定可能な第二測定手段16と、薬品を注入する薬品注入手段20と、第一測定手段14および第二測定手段16が測定可能な光合成色素濃度の少なくとも2つの測定値に基づき、薬品注入手段20が注入する薬品の注入率を制御する制御部40と、を有する。また、本発明は、浄水処理システムへと薬品を注入するための薬品注入方法をも提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を固液分離して処理水を得る浄水処理システム中で薬品を注入するための薬品注入装置であって、
任意の、被処理水をろ過するフィルタと、
未ろ過の前記被処理水および前記フィルタでろ過後の被処理水の少なくとも1つの第一の光合成色素濃度を測定可能な第一測定手段と、
未ろ過の前記被処理水および前記フィルタでろ過後の被処理水の少なくとも1つの第二の光合成色素濃度を測定可能な第二測定手段と、
前記浄水処理システム中で薬品を注入する薬品注入手段と、
前記第一測定手段および前記第二測定手段が測定可能な光合成色素濃度の少なくとも2つの測定値に基づき、前記薬品注入手段が注入する薬品の注入率を制御する制御部と、
を有することを特徴とする薬品注入装置。
【請求項2】
前記被処理水の固液分離が、凝集沈殿部での凝集沈殿処理に供して沈殿物と液部に分離し、得られた液部をろ過部でろ過して処理水を得ることであることを特徴とする請求項1に記載の薬品注入装置。
【請求項3】
前記第一測定手段が測定可能な光合成色素濃度が、クロロフィルaの色素濃度であることを特徴とする請求項1に記載の薬品注入装置。
【請求項4】
前記第二測定手段が測定可能な光合成色素濃度が、フィコシアニンの色素濃度であることを特徴とする請求項3に記載の薬品注入装置。
【請求項5】
被処理水をろ過するフィルタを有し、
前記第一測定手段が、未ろ過の被処理水のクロロフィルaの色素濃度、前記フィルタによりろ過後の被処理水のクロロフィルaの色素濃度を測定可能であり、前記第二測定手段が、未ろ過の被処理水のフィコシアニンの色素濃度、およびろ過後の被処理水のフィコシアニンの色素濃度を測定可能であり、
前記制御部が、前記第一測定手段および前記第二測定手段が測定しうる合計4つの色素濃度の少なくとも2つの測定値に基づき、前記薬品注入手段が注入する薬品の注入量を制御することを特徴とする請求項1に記載の薬品注入装置。
【請求項6】
前記薬品注入手段が、前記被処理水への粉炭注入手段、前記凝集沈殿部への次亜塩素酸ナトリウム注入手段、前記液部への次亜塩素酸ナトリウム注入手段、前記凝集沈殿部への無機凝集剤注入手段、前記液部への無機凝集剤注入手段、および前記凝集沈殿部への高分子凝集剤注入手段からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項2に記載の薬品注入装置。
【請求項7】
前記フィルタの孔径が1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の薬品注入装置。
【請求項8】
前記第一測定手段および第二測定手段が、蛍光を検出することを特徴とする請求項1に記載の薬品注入装置。
【請求項9】
被処理水を凝集沈殿部での凝集沈殿処理に供して沈殿物と液部に分離し、得られた液部をろ過部でろ過して処理水を得る浄水処理システムへと薬品を注入するための薬品注入方法であって、
前記被処理水を任意にろ過するろ過工程と、
前記ろ過された被処理水の第一の光合成色素濃度、未ろ過の前記被処理水の第一の光合成色素濃度、前記ろ過された被処理水の第二の光合成色素濃度、および未ろ過の前記被処理水の第二の光合成色素濃度の少なくとも2種の光合成色素濃度を測定する測定工程と、
前記測定工程で測定された前記少なくとも2種の光合成色素濃度の測定値に基づき、薬品の注入率を決定する注入率決定工程と、
前記注入率決定工程において決定された注入率で前記浄水処理システムへと薬品を注入する注入工程と、
を有することを特徴とする薬品注入方法。
【請求項10】
被処理水を固液分離して処理水を得る浄水処理システム中で薬品を注入するための薬品注入装置であって、
未ろ過の被処理水のフィコシアニンの色素濃度を測定可能なフィコシアニン測定手段と、
前記浄水処理システム中で薬品を注入する薬品注入手段と、
前記フィコシアニン測定手段が測定した未ろ過の被処理水のフィコシアニンの色素濃度の測定値のみに基づき、前記薬品注入手段が注入する薬品の注入率を制御する制御部と、
を有することを特徴とする薬品注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品注入装置および薬品注入方法に関し、特に、被処理水を固液分離して処理水を得る浄水処理システム中で薬品を注入するための薬品注入装置および薬品注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地表水や地下水等を原水とした浄水処理では、凝集沈澱や砂ろ過といった固液分離技術を用いて、原水から不溶解性成分を除去して処理水を得ている。
【0003】
河川水やダム・湖沼水などの地表水を原水とする場合には、種々の要因によって浄水障害が問題となる。非特許文献1は、しばしば原水中に増加する藻類が、凝集阻害、異臭味障害・着色障害、ろ過閉塞(ろ抗上昇)、ろ過水濁度漏出などの障害を引き起こしてきたことを開示する。
【0004】
これらの浄水障害に応じて、種々の対策が実施されており、浄水処理工程での薬品注入による対応としては、非特許文献2に示すように、以下のような対策が採られている。
【0005】
すなわち、凝集阻害に対しては、粉末活性炭処理、前塩素処理による凝集処理改善、前塩素の停止、凝集処理の強化と凝集補助剤の注入、凝集時pH値の低減対策などの対策が実施されている。
【0006】
異臭味障害に対しては、粉末活性炭処理、前塩素の停止、凝集処理の強化と凝集補助剤の注入、凝集時pH値の低減対策などの対策が実施されている。
【0007】
ろ過閉塞障害に対しては、前塩素処理による凝集処理改善、凝集処理の強化と凝集補助剤の注入、凝集時pH値の低減対策などの対策が実施されている。
【0008】
ピコプランクトンを原因とするろ過水濁度漏出に対しては、粉末活性炭処理、前塩素処理による凝集処理改善、前塩素の停止、凝集処理の強化と凝集補助剤の注入、凝集時pH値の低減対策、二段凝集処理などの対策が実施されている。
【0009】
藻類に起因する浄水障害は、藻類の種類によって影響の度合いが異なる。例えば、凝集阻害は藻類全般によって引き起こされ、異臭味障害はラン藻類に起因することが多い。また、ろ過水濁度漏出の原因はピコプランクトン(0.2-2.0μmの植物プランクトン)とされており、この場合は藻類のサイズが影響していることになる。
【0010】
特許文献1は、凝集沈殿処理後に加圧型精密ろ過を行う浄水処理において、原水の流量、圧力、水温、pH、濁度とともにクロロフィルaを計測し、計測結果に応じて消臭剤の投与量や撹拌強度を制御することを開示する。これによれば、従来の標準浄水処理と比べて凝集剤の使用量を低減させることができる。
【0011】
また、非特許文献3は、検鏡による藻類検出方法を開示する。この方法によれば、藻類の種類およびサイズを検出することができる。
【0012】
さらに、非特許文献4は、蛍光センサにより藻類を検出する方法が開示されており、これによれば、クロロフィルやフィコシアニンなど、複数の光合成色素濃度を迅速に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】佐藤敦久、眞柄泰基 編著、「上水道における藻類障害-安全で良質な水道水を求めて-」 1996年5月15日1版1刷発行 第1~第12頁、技報堂出版株式会社
【非特許文献2】「生物障害を起こさないための浄水処理の手引き」 平成18年3月、財団法人日本水道協会出版 第126~第139頁
【非特許文献3】公益社団法人日本水道協会編集、上水試験方法2000年版 IV.微生物編・V.生物編 令和3年3月1日初版第1刷発行 第276~第285頁、第412~第417頁
【非特許文献4】ザイレムジャパン株式会社「ProDSSマルチ水質センサー」のカタログ、令和4年4月21日ダウンロード、インターネット<URL:https://www.xylem-analytics.jp/media/pdfs/prodss-brochure-jpn.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1の浄水処理によれば、クロロフィルaの計測により藻類全般の藻体濃度を推定し得るものの、藻類の種類を推定することはできない。上述のとおり、藻類の種類によって浄水障害の症状が異なるので、クロロフィルaのみの計測では藻類に起因する浄水障害に対して適切な対応をとることが難しい。
【0016】
また、非特許文献3の検鏡による藻類検出方法によれば、サンプルを検鏡する必要があるので、その場(オンサイト)で藻類を検出することができず、時間も手間もかかる。また、目視による曖昧さも残る。
【0017】
非特許文献4のマルチ水質センサーによれば、複数の光合成色素濃度を迅速に測定することができるものの、このマルチ水質センサーの適用対象は湖、河川などと考えられ、水処理においてオンサイトで使用することは意図されていない。
【0018】
さらに、ろ過水濁度漏出はピコプランクトンを原因として生じるものの、被処理水の光合成色素をそのまま測定するだけでは被処理水中のピコプランクトン濃度を把握することはできない。
【0019】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、浄水処理において、被処理水中の藻類の状況を従来よりも迅速且つ正確に把握し、その場で適切な薬品を選択してその注入を制御し得る薬品注入制御装置、および薬品注入制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記目的の達成に向け、鋭意検討したところ、未ろ過/ろ過後の被処理水の光合成色素濃度を測定することで、被処理水中の凝集阻害の原因となる藻類全般、およびろ過水濁度漏出の原因となるピコプランクトンの状況を把握することができ、また、被処理水に対して二つの光合成色素濃度を測定することで、被処理水中の凝集阻害の原因となる藻類全般、および異臭味障害の原因となるラン藻類の状況を把握することができることを見出した。
【0021】
そして、未ろ過/ろ過後の被処理水の2区分×2区分の光合成色素濃度の合計4区分のうち少なくとも2区分をオンサイトで測定することで迅速に被処理水の浄水障害の原因となる藻類の状況を多角的に把握することができ、且つ、この藻類の状況に応じた薬品を選択し、注入することで迅速に処理水の品質を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0022】
すなわち、上記目的は、被処理水を固液分離して処理水を得る浄水処理システム中で薬品を注入するための薬品注入装置であって、
任意の、被処理水をろ過するフィルタと、未ろ過の前記被処理水および前記フィルタでろ過後の被処理水の少なくとも1つの第一の光合成色素濃度を測定可能な第一測定手段と、未ろ過の前記被処理水および前記フィルタでろ過後の被処理水の少なくとも1つの第二の光合成色素濃度を測定可能な第二測定手段と、前記浄水処理システム中で薬品を注入する薬品注入手段と、前記第一測定手段および前記第二測定手段が測定可能な光合成色素濃度の少なくとも2つの測定値に基づき、前記薬品注入手段が注入する薬品の注入率を制御する制御部と、を有することを特徴とする浄水処理システム中で薬品を注入するための薬品注入装置により達成されることが見いだされた。
【0023】
本発明に係る浄水処理で生じた排水の処理方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)被処理水の固液分離が、凝集沈殿部での凝集沈殿処理に供して沈殿物と液部に分離し、得られた液部をろ過部でろ過して処理水を得ることによりなされる。
(2)第一測定手段が測定可能な光合成色素濃度が、クロロフィルaの色素濃度である。
(3)第二測定手段が測定可能な光合成色素濃度が、フィコシアニンの色素濃度である。
(4)被処理水をろ過するフィルタを有し、前記第一測定手段が、未ろ過の被処理水のクロロフィルaの色素濃度、前記フィルタによりろ過後の被処理水のクロロフィルaの色素濃度を測定可能であり、前記第二測定手段が、未ろ過の被処理水のフィコシアニンの色素濃度、およびろ過後の被処理水のフィコシアニンの色素濃度を測定可能であり、前記制御部が、前記第一測定手段および前記第二測定手段が測定しうる合計4つの色素濃度の少なくとも2つの測定値に基づき、前記薬品注入手段が注入する薬品の注入量を制御する。
(5)薬品注入手段が、前記被処理水への粉炭注入手段、前記凝集沈殿部への次亜塩素酸ナトリウム注入手段、前記液部への次亜塩素酸ナトリウム注入手段、前記凝集沈殿部への無機凝集剤注入手段、前記液部への無機凝集剤注入手段、および前記凝集沈殿部への高分子凝集剤注入手段からなる群から選択される1種以上である。
(6)フィルタの孔径が1μm以上10μm以下である。
(7)第一測定手段および第二測定手段が、蛍光を検出する。
【0024】
また、上記目的は、被処理水を凝集沈殿部での凝集沈殿処理に供して沈殿物と液部に分離し、得られた液部をろ過部でろ過して処理水を得る浄水処理システムへと薬品を注入するための薬品注入方法であって、
前記被処理水を任意にろ過するろ過工程と、前記ろ過された被処理水の第一の光合成色素濃度、未ろ過の前記被処理水の第一の光合成色素濃度、前記ろ過された被処理水の第二の光合成色素濃度、および未ろ過の前記被処理水の第二の光合成色素濃度の少なくとも2種の光合成色素濃度を測定する測定工程と、前記測定工程で測定された前記少なくとも2種の光合成色素濃度の測定値に基づき、薬品の注入率を決定する注入率決定工程と、前記注入率決定工程において決定された注入率で前記浄水処理システムへと薬品を注入する注入工程と、を有することを特徴とする薬品注入方法によっても達成することができる。
【0025】
さらに、上記目的は、被処理水を固液分離して処理水を得る浄水処理システム中で薬品を注入するための薬品注入装置であって、
未ろ過の被処理水のフィコシアニンの色素濃度を測定可能なフィコシアニン測定手段と、前記浄水処理システム中で薬品を注入する薬品注入手段と、前記フィコシアニン測定手段が測定した未ろ過の被処理水のフィコシアニンの色素濃度の測定値のみに基づき、前記薬品注入手段が注入する薬品の注入率を制御する制御部と、を有することを特徴とする薬品注入装置によっても達成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、第一測定手段および前記第二測定手段が測定可能な光合成色素濃度の少なくとも2つの測定値により、被処理水中の藻類の種類をその場で迅速に把握することができ、制御部は、この把握された被処理水中の藻類の種類の状況に基づき、その場で薬品の注入を制御することができる。
【0027】
また、薬品注入装置がフィルタを備える場合には、未ろ過の被処理水の第一測定手段および前記第二測定手段が測定可能な光合成色素濃度の2つの測定値と、フィルタによるろ過後の被処理水の第一測定手段および前記第二測定手段が測定可能な光合成色素濃度の2つの測定値と、の合計4つの測定値の少なくとも2種の測定値により、被処理水中の藻類の種類および/またはその大きさの状況に基づき、その場で薬品の注入を制御することができる。
【0028】
したがって、浄水処理において、被処理水中の藻類の状況を従来よりも迅速且つ正確に把握し、その場で適切な薬品を選択してその注入を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の薬品注入装置10を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第一の例を説明するフローチャートである。
【
図3】本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第二の例を説明するフローチャートである。
【
図4】本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第三の例を説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第四の例を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第五の例を説明するフローチャートである。
【
図7】本発明の薬品注入装置50を説明するための模式図である。
【
図8】本発明の薬品注入装置50の制御部42による制御の例を説明するフローチャートである。
【
図9】本発明の薬品注入方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<薬品注入装置>
本発明の薬品注入装置は、被処理水を固液分離して浄水処理システム中で薬品を注入するための薬品注入装置である。薬品注入装置の説明に先立ち、まず、浄水処理システムについて説明する。
図1は、本発明の薬品注入装置10を説明するための模式図である。図示のように、浄水処理システム1において、被処理水2の固液分離は、例えば、急速ろ過方式により実施される。なお、被処理水2の固液分離は、急速ろ過方式に限られず、例えば、直接ろ過や緩速ろ過であってもよい。
【0031】
具体的には、急速ろ過方式による被処理水2の固液分離は、被処理水2を凝集沈殿部3での凝集沈殿処理に供して沈殿物4と液部5に分離し、得られた液部5をろ過部6でろ過して処理水を得ることにより実施される。
【0032】
被処理水2には水道原水が用いられる。水道原水は、例えば、河川水、地下水、ダム湖水、湖沼水、伏流水、地下水などが挙げられるが、本発明では、藻類に起因する浄水障害が生じ得る河川水、ダム湖水、湖沼水が特に妥当する。
【0033】
凝集沈殿部3は、例えば、凝集剤が添加され、添加された凝集剤を原水に混合・撹拌して原水中の濁質を凝集させる凝集槽と、凝集槽で凝集して得られたフロックを沈殿させる沈殿池と、有する。沈殿池の底に沈んだ沈殿物4はクラリファイヤーなどで定期的に掻き寄せて排出され、液部5はろ過部6に送られる。
【0034】
ろ過部6は、例えば、砂層を有する急速ろ過池である。液部5がこの砂層を通過することで、液部5中の沈殿しなかった小さいフロックが除去され、処理水7が得られる。
【0035】
ここで、
図1に示すように、本発明の薬品注入装置10は、フィルタ12と、第一測定手段14と、第二測定手段16と、薬品注入手段20と、制御部40と、を有する。
【0036】
本発明において、フィルタ12は任意の構成要素であり、被処理水2をろ過するために用いられる。フィルタ12の孔径は、藻類全般からピコプランクトン(0.2~2.0μmの植物プランクトン)を濾別できるサイズであればどのようなものであってもよいが、例えば、フィルタ12の孔径は1μm以上20μm以下であり、好ましくは1μm以上10μm以下であり、特に好ましくは2μm以上7μm以下である。
【0037】
被処理水2をフィルタ12でろ過し、ろ過後の被処理水2’について後述する第一測定手段および/または第二測定手段で測定することで、ろ過後の被処理水中の光合成色素濃度から被処理水に存在するピコプランクトンの濃度を決定することが可能になる。
【0038】
第一測定手段14は、未ろ過の被処理水2およびフィルタ12でろ過後の被処理水2の少なくとも1つの第一の光合成色素濃度を測定可能な手段である。第一の光合成色素は、クロロフィル、カロテノイドおよびフィコビリンなどの、光合成生物に含まれる色素から選択することができる。
【0039】
クロロフィルとしては、例えば、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc1、c2、c3、クロロフィルd、クロロフィルf、バクテリオクロロフィルa~gなどが挙げられる。
【0040】
カロテノイドとしては、例えば、β-カロテン、ビオラキサンチン、アンスラキサンチン、ゼアキサンチンなどが挙げられる。
【0041】
フィコビリンとしては、例えば、フィコシアニン、アロフィコシアニン、フィコエリスリン、フィコエリスロシアニンなどが挙げられる。
【0042】
第一測定手段14は、前記第一の光合成色素濃度を測定可能な手段であればよく、例えば、励起光を照射した際に試料が発する蛍光を検出する蛍光光度法により測定する手段、吸光光度法(すなわち、光を照射した際にその光を試料が反射する際の、対象となる物質による光の吸収の程度(吸光度)を測定する方法)により測定する手段などが挙げられる。
【0043】
本発明では、蛍光光度法は感度に優れ、低濃度のクロロフィルaなどの光合成色素を測定可能であることから、第一測定手段14は、前者の蛍光光度法により測定する手段であることが好ましい。
【0044】
第一測定手段14が測定可能な光合成色素濃度は、上記種々の光合成色素の中で、藻類および植物全般に含まれる光合成色素であって、この濃度を測定することで全藻類の濃度を推定可能とする観点から、クロロフィルaの色素濃度であることが好ましい。クロロフィルaを測定する場合、例えば、照射光波長(励起波長)は455~485nmの範囲であり、受光波長(蛍光波長)は640~750nmの範囲、感度の観点からは好ましくは665~705nmの範囲である。
【0045】
なお、第一測定手段14でクロロフィルa以外の光合成色素の濃度を測定する場合、その光合成色素に合わせた照射光波長および受光波長を適宜に設定すればよい。
【0046】
第二測定手段16は、未ろ過の被処理水2およびフィルタ12でろ過後の被処理水2’の少なくとも1つの第二の光合成色素濃度を測定可能な手段である。第二の光合成色素は、第一の光合成色素とは異なる光合成色素であることを前提として、上述の第一の光合成色素と同様、クロロフィル、カロテノイドおよびフィコビリンなどの、光合成生物に含まれる色素から選択することができる。
【0047】
第二測定手段16が測定可能な光合成色素濃度は、上記種々の光合成色素の中で、ラン藻類にのみ含まれる光合成色素であって、この濃度を測定することで異臭味障害の原因となるラン藻類の濃度を推定可能とする観点から、フィコシアニンの色素濃度であることが好ましい。フィコシアニンを測定する場合、例えば、照射光波長(励起波長)は570~630nmの範囲であり、受光波長(蛍光波長)は650~750nmの範囲、感度の観点からは好ましくは665~705nmの範囲である。
【0048】
第二測定手段16でフィコシアニン以外の光合成色素濃度を測定する場合も、その光合成色素に合わせた照射光波長および受光波長を適宜に設定すればよい。
【0049】
なお、第一測定手段14および第二測定手段16が、共に蛍光光度法により測定する手段であれば、1台の蛍光分光光度計を第一測定手段14および第二測定手段16として使用することができる。
【0050】
同様に、第一測定手段14および第二測定手段16が、共に吸光光度法により測定する手段であれば、1台の吸光光度計を第一測定手段14および第二測定手段16として使用することができる。
【0051】
第一測定手段14および第二測定手段16は、後述する制御部40により制御される。
【0052】
薬品注入手段20は、上述の浄水処理システム1中で薬品を注入する手段である。薬品は、その種類に応じて浄水処理システム1中の適切な箇所に注入される。
【0053】
薬品としては、例えば、粉末活性炭、次亜塩素酸ナトリウム(塩素)、無機凝集剤、高分子凝集剤、凝集補助剤などが挙げられるが、これらに限られるものでは無い。
【0054】
これらのうち、無機凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム(硫酸ばんど)やポリ塩化アルミニウムが挙げられる。浄水処理用途で使用される高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤や、ポリアクリル酸エステル系高分子凝集剤が挙げられる。凝集補助剤としては、フロック形成助剤とpH調整剤が挙げられる。フロック形成助剤は、例えば、活性ケイ酸、アルギン酸ソーダ、赤土、ベントナイト等が挙げられる。pH調整剤は、藻類の炭酸同化作用により上昇した原水(被処理水2)pH値の低下を目的として添加されるため、硫酸などの酸や二酸化炭素(炭酸ガス)が該当する。
【0055】
これらの中でも、薬品注入手段20が、被処理水2への粉炭注入手段22、凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24、液部5への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24、凝集沈殿部3への無機凝集剤注入手段26、液部5への無機凝集剤注入手段26、および凝集沈殿部3への高分子凝集剤注入手段28からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0056】
図1に示す薬品注入装置10は、薬品注入手段20が粉炭注入手段22、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24、無機凝集剤注入手段26および高分子凝集剤注入手段28を備えているが、本発明の薬品注入手段としてはこれら全てを備えることが必須では無く、また、必要に応じてフロック形成助剤注入手段やpH調整剤注入手段などの凝集補助剤注入手段を備えていてもよい。
【0057】
本発明の薬品注入装置10において、各薬品注入手段22、24、26、28からの薬品の被処理水2、凝集沈殿部3、液部5への注入は、制御部40からの信号により、例えば、各薬品注入手段22、24、26、28の薬品輸送ポンプ(図示せず)の駆動や配管中の弁(図示せず)の開閉を制御することによりなされる。
【0058】
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータである。制御部40は、ROMに記憶させたプログラムをRAM上に展開して対応する処理をCPUに実行させる。なお、上記プログラムはROMに記憶されている場合に限らず、NVRAM(Non-Volatile Randam Access Memory)に記憶されていればよい。
【0059】
制御部40は、第一測定手段14および第二測定手段16が測定可能な光合成色素濃度の少なくとも2つの測定値に基づき、薬品注入手段20が注入する薬品の注入率を制御する。
【0060】
以下、制御部40による制御について、
図2~
図6を参照して説明する。
(本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第一の例)
図2は、本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第一の例を説明するフローチャートである。
【0061】
本例では、第一の測定手段14のみを使用し、第二の測定手段16は使用しない。また、薬品注入手段20としては、凝集沈殿部3への無機凝集剤注入手段26および液部5への無機凝集剤注入手段26のみを使用する。また、本例では、第一の測定手段14は、蛍光を検出することでクロロフィルaの色素濃度を測定する。
【0062】
まず、ステップS201において、第一測定手段14は、未ろ過の被処理水2およびフィルタ12でろ過後の被処理水2’のクロロフィルa濃度を測定する。具体的には、制御部40の電源を投入して起動すると、制御部40は第一測定手段14に信号を送る。この信号により、励起波長455~485nmの範囲の励起光が、第一測定手段14内の未ろ過の被処理水2およびフィルタ12でろ過後の被処理水2’を照射する。
【0063】
そして、第一測定手段14内で、励起光を吸収した被処理水2、2’(および被処理水2、2’中の藻類などの物質)が放出した蛍光が640~750nmの蛍光波長の範囲に分光される。制御部40は、640~750nmの蛍光波長の範囲の蛍光の強度を予め作成した蛍光強度とクロロフィルa濃度の関係式に代入し、被処理水2、2’中のクロロフィルa濃度を決定する。なお、第一測定手段14に供された被処理水2、2’は、測定後は浄水処理システム1の被処理水2に混合されてもよいし、排水されてもよい(以上、ステップS201)。
【0064】
次に、ステップS202において、制御部40は、未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度は被処理水2中の全藻類濃度の指標であり、ステップS202において、閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS203に移行し、閾値以上(NO)であればステップS206に移行する(以上、ステップS202)。
【0065】
ステップS203では、制御部40は、フィルタ12でろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度は、ろ過水濁度漏出につながる被処理水2中のピコプランクトン濃度の指標であり、ステップS203において、閾値は、例えば、0.01~0.5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.05~0.2mg/Lの範囲である。ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS204に移行し、閾値以上(NO)であればステップS205に移行する(以上、ステップS203)。
【0066】
ステップS204では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量の増量を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26はその増量を停止し、凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量を低下させる。なお、この増量を中止した際のベースの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率は、例えば、10~50mg/Lの範囲であり、好ましくは15~35mg/Lの範囲である。
【0067】
さらに、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を停止する(以上、ステップS204)。
【0068】
ステップS203からの移行先のステップS205では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量の増量を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26はその増量を停止し、凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量を低下させる。なお、この増量を中止した際のベースの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率は、好ましくはステップS204の注入率と同じである。
【0069】
また、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っていない場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を開始する。液部5への無機凝集剤の注入率は、例えば、0.1~5mg/Lの範囲であり、好ましくは0.5~3mg/Lの範囲である。また、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、制御部40は特に信号を送ることなく、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入をそのまま継続する(以上、ステップS205)。
【0070】
ステップS202からの移行先のステップS206では、制御部40は、フィルタ12でろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS206の閾値は、ステップS203の閾値と同じであることが好ましい。ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS207に移行し、閾値以上(NO)であればステップS208に移行する(以上、ステップS206)。
【0071】
ステップS207では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる調整を行う。
【0072】
ここで、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式について説明する。
【0073】
光合成色素のうちクロロフィルaは藻類全般に含まれることから、クロロフィルa濃度は藻類全般の藻体濃度と相関があり、藻類全体の藻体濃度と無機凝集剤要求量には相関があることから、予めクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への最適無機凝集剤注入率との関係式を得ておき、第一測定手段14により測定し、決定された未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度の値を上記関係式に代入することで、凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率を算出することができる。
【0074】
なお、既にステップS207を経由し、無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率が増大されており、再度ステップS207に移行したような場合には、増大していた無機凝集剤の注入率が関係式に従って再度最適注入率を算出した結果、凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率が低下する場合もあり得る。したがって、
図2において、関係式に従って前PACl注入量(すなわち、凝集沈殿部3への無機凝集剤への注入量)の増量というときには、関係式に従って前PACl注入量が低下する場合も含むものとする。以下、
図2~
図6および
図8において、各薬品の注入率が関係式に従う場合も同様であるものとする。
【0075】
また、ステップS207では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を停止する(以上、ステップS207)。
【0076】
ステップS206からの移行先のステップS208では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増減調整する。この関係式は、ステップS207の関係式と同じものを用いることが好ましい。
【0077】
また、ステップS208では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っていない場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を開始する。液部5への無機凝集剤の注入率は、ステップS205の注入率と同じであることが好ましい。また、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、制御部40は特に信号を送ることなく、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入をそのまま継続する(以上、ステップS208)。
【0078】
本例においては、薬品注入装置10は、ステップS204、S205、S207、S208の終了後、ステップS201に戻り、凝集処理システム1による浄水処理が実施される間、同じ制御を繰り返すが、場合によってはステップS204、S205、S207、S208の終了後に制御を終了することとしてもよい。以降、
図3~
図6および
図8の制御についても同様である。
【0079】
本例の制御部40による上記制御は、被処理水2中のラン藻の濃度が問題とはならず、全藻類の藻体濃度と、ピコプランクトン濃度が問題となる場合の制御を示している。全藻類の藻体濃度が閾値を超える場合には凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を大きくして凝集不良の問題を解消し、ピコプランクトン濃度が閾値を超える場合には少量の無機凝集剤を液部5へと注入し、ろ過水濁度漏出の問題を解消する。また、液部5への無機凝集剤の注入はろ過部6でのろ抗上昇につながるため、ろ過水濁度漏出しない全藻類に起因する凝集不良の問題については凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入で対応し(すなわち、この時には液部5へは無機凝集剤を注入しない)、ピコプランクトン濃度が閾値を超える時のみピンポイントで少量の無機凝集剤を液部5へと注入する制御を行っている。
【0080】
(本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第二の例)
図3は、本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第二の例を説明するフローチャートである。
【0081】
本例では、第一の測定手段14および第二の測定手段16の双方を使用する。また、薬品注入手段20としては、凝集沈殿部3への無機凝集剤注入手段26、被処理水2への粉炭注入手段22、および凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24を使用する。
【0082】
まず、ステップS211において、第一測定手段14は、未ろ過の被処理水2のクロロフィルa濃度を測定し、第二測定手段16は未ろ過の被処理水2のフィコシアニン濃度を測定する。具体的には、制御部40の電源を投入して起動すると、制御部40は第一測定手段14および第二測定手段16に信号を送る。第一測定手段14によるクロロフィルa濃度の測定については、第一の例のステップS201と同様であるので説明は省略する。
【0083】
第二測定手段16については、制御部40の信号により、励起波長570~630nmの範囲の励起光が、第二測定手段16内の未ろ過の被処理水2を照射する。
【0084】
そして、第二測定手段16内で、励起光を吸収した被処理水2(および被処理水2中の藻類などの物質)が放出した蛍光が650~750nmの蛍光波長の範囲に分光される。制御部40は、650~750nmの蛍光波長の範囲の蛍光の強度を予め作成した蛍光強度とフィコシアニン濃度の関係式に代入し、被処理水2中のフィコシアニン濃度を決定する。なお、第二測定手段16に供された被処理水2も、測定後は浄水処理システム1の被処理水2に混合されてもよいし、排水されてもよい(以上、ステップS211)。
【0085】
次に、ステップS212において、制御部40は、未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS212において、閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS213に移行し、閾値以上(NO)であればステップS214に移行する(以上、ステップS212)。
【0086】
ステップS213では、制御部40は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24から凝集沈殿部3へと次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を注入している場合、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24へと信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24はその注入を停止する。
【0087】
また、制御部40は、粉炭注入手段22が被処理水2への粉末活性炭の注入を行っている場合、粉炭注入手段22へと信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は被処理水2への粉末活性炭の注入を停止する。
【0088】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量の増量を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26はその増量を停止し、凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量を低下させる。なお、この増量を中止した際のベースの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率は、例えば、10~50mg/Lの範囲であり、好ましくは15~35mg/Lの範囲である(以上、ステップS213)。
【0089】
ステップS212からの移行先のステップS214では、未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度は被処理水2中のラン藻の藻体濃度の指標であり、ステップS214において、閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満(YES)であればステップS215に移行し、閾値以上(NO)であればステップS216に移行する(以上、ステップS214)。
【0090】
ステップS215では、制御部40は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24に信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の最適注入率との関係式に従って次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24からの凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を行う。
【0091】
ここで、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の最適注入率との関係式について説明する。
【0092】
既に述べたとおり、クロロフィルa濃度は藻類全般の藻体濃度と相関があり、藻類全体の藻体濃度と次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)要求量にも相関があることから、予めクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への最適次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入率との関係式を得ておき、第一測定手段14により測定し、決定された未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度の値を上記関係式に代入することで、凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の最適注入率を算出することができる。
【0093】
また、ステップS215では、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3への粉末活性炭の注入を行う。
【0094】
ここで、予め決定した未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式について説明する。
【0095】
フィコシアニン濃度はラン藻の藻体濃度と相関があり、ラン藻の藻体濃度と被処理水2への粉末活性炭要求量にも相関があることから、予めフィコシアニン濃度と被処理水2への最適粉末活性炭注入率との関係式を得ておき、第二測定手段14により測定し、決定された未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度の値を上記関係式に代入することで、被処理水2への粉末活性炭の最適注入率を算出することができる。
【0096】
さらに、ステップS215では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。関係式の説明については、第一の例のステップS207で説明済みであるのでここではその記載を省略する(以上、ステップS215)。
【0097】
ステップS214からの移行先のステップS216では、制御部40は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24から凝集沈殿部3へと次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を注入している場合、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24へと信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24はその注入を停止する。
【0098】
また、ステップS216では、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3への粉末活性炭の注入率を増大させる。なお、ステップS215の粉炭注入率よりもステップ216の粉炭注入率は大きく、したがって、ここでの関係式は、ステップS215の関係式に所定の係数を加算するか、または乗算した関係式とすることができる。
【0099】
さらに、ステップS216では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増減調整する。この関係式は、ステップS215と同じものを使用することが好ましい(以上、ステップS216)。
【0100】
本例の制御部40による上記制御は、被処理水2中のピコプランクトン濃度は問題とはならず、全藻類の藻体濃度と、ラン藻の藻体濃度が問題となる場合の制御を示している。本例では、全藻類の藻体濃度が大きくなった場合に凝集沈殿部3への塩素注入(いわゆる前塩素である)、凝集沈殿部3への無機凝集剤の増量、および凝集沈殿部3への粉末活性炭の少量添加により凝集不良に対応するが、異臭味を引き起こすラン藻の藻体濃度も同時に大きくなった場合には前塩素の停止、粉末活性炭の増量、および無機凝集剤の増量により対応する。
【0101】
これは、全藻類の藻体濃度と藍藻の藻体濃度が同時に大きくなったときには、ラン藻の藻体内に存在する異臭味物質を藻体から流出させずに凝集沈殿で除去することを目的とする制御である。
【0102】
(本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第三の例)
図4は、本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第三の例を説明するフローチャートである。
【0103】
本例では、第一の測定手段14および第二の測定手段16の双方を使用する。また、薬品注入手段20としては、凝集沈殿部3への無機凝集剤注入手段26、液部5への無機凝集剤注入手段26、および被処理水2への粉炭注入手段22を使用する。
【0104】
まず、ステップS221において、第一測定手段14は、未ろ過の被処理水2およびフィルタ12でろ過後の被処理水2’のクロロフィルa濃度をそれぞれ測定し、第二測定手段16は未ろ過の被処理水2およびフィルタ12でろ過後の被処理水2’のフィコシアニン濃度をそれぞれ測定する。具体的には、制御部40の電源を投入して起動すると、制御部40は第一測定手段14および第二測定手段16に信号を送り、第一測定手段14および第二測定手段16の測定結果に基づいて制御部はクロロフィルa濃度およびフィコシアニン濃度を決定する。なお、第一測定手段14によるクロロフィルa濃度の測定については、第一の例のステップS201と同様であり、第二測定手段16によるフィコシアニン濃度の測定については、第二の例のステップS211と同様であるので、ここでは説明を省略する(以上、ステップS221)。
【0105】
次に、ステップS222において、制御部40は、未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS222において、閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS223に移行し、閾値以上(NO)であればステップS224に移行する(以上、ステップS222)。
【0106】
ステップS223では、制御部40は、粉炭注入手段22が被処理水2への粉末活性炭の注入を行っている場合、粉炭注入手段22へと信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は被処理水2への粉末活性炭の注入を停止する。
【0107】
また、制御部40は、無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量の増量を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26はその増量を停止し、凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量を低下させる。なお、この増量を中止した際のベースの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率は、例えば、0.1~5mg/Lの範囲であり、好ましくは0.5~3mg/Lの範囲である。
【0108】
さらに、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を停止する(以上、ステップS223)。
【0109】
ステップS222からの移行先のステップS224では、制御部40は、未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。
ステップS224において、閾値は、例えば、0.001~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満(YES)であればステップS225に移行し、閾値以上(NO)であればステップS228に移行する(以上、ステップS224)。
【0110】
ステップS225では、制御部40は、ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS225において、ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度の閾値は、例えば、0.01~0.5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.05~0.2mg/Lの範囲である。ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS226に移行し、閾値以上(NO)であればステップS227に移行する(以上、ステップS225)。
【0111】
ステップS226では、制御部40は、粉炭注入手段22が被処理水2への粉末活性炭の注入を行っている場合、粉炭注入手段22へと信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は被処理水2への粉末活性炭の注入を停止する。
【0112】
また、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。
【0113】
さらに、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を停止する(以上、ステップS226)。
【0114】
ステップS225からの移行先のステップS227では、制御部40は、粉炭注入手段22が被処理水2への粉末活性炭の注入を行っている場合、粉炭注入手段22へと信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は被処理水2への粉末活性炭の注入を停止する。
【0115】
また、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。この関係式は、ステップS226の関係式と同じであることが好ましい。
【0116】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っていない場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を開始する。液部5への無機凝集剤の注入率は、例えば、0.1~5mg/Lの範囲であり、好ましくは0.5~3mg/Lの範囲である。また、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、制御部40は特に信号を送ることなく、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入をそのまま継続する(以上、ステップS227)。
【0117】
ステップS224からの移行先のステップS228では、制御部40は、ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS228において、ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度の閾値は、ステップS225と同じ値であることが好ましい。ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS229に移行し、閾値以上(NO)であればステップS230に移行する(以上、ステップS228)。
【0118】
ステップS229では、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22から凝集沈殿部3へと粉末活性炭を注入する。この関係式については、第二の例のステップS215において説明済みであるので、ここではその説明を省略する。
【0119】
また、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。なお、ステップS226の無機凝集剤注入率よりもステップ229の無機凝集剤注入率は大きく、したがって、ここでの関係式は、ステップS226の関係式に所定の係数を加算するか、または乗算した関係式とすることができる。
【0120】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を停止する(以上、ステップS229)。
【0121】
ステップS228からの移行先のステップS230では、制御部40は、ろ過後の被処理水2’中のフィコシアニン濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ろ過後の被処理水2’中のフィコシアニン濃度は、被処理水中のラン藻ピコプランクトンの藻体濃度の指標であり、ステップS230において、ろ過後の被処理水2’中のフィコシアニン濃度の閾値は、例えば、閾値は、例えば、0.01~0.5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.05~0.2mg/Lの範囲である。ろ過後の被処理水2’中のフィコシアニン濃度が閾値未満(YES)であればステップS231に移行し、閾値以上(NO)であればステップS232に移行する(以上、ステップS230)。
【0122】
ステップS231では、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3へと粉末活性炭を注入する。この関係式はステップS229の関係式と同じであることが好ましい。
【0123】
また、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。この関係式は、ステップS226の関係式と同じであることが好ましい。
【0124】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っていない場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を開始する。液部5への無機凝集剤の注入率は、例えば、0.1~5mg/Lの範囲であり、好ましくは0.5~3mg/Lの範囲である。また、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入をそのまま継続するが、注入率の範囲は上記の範囲となる(以上、ステップS231)。
【0125】
ステップS230からの移行先のステップS232では、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3への粉末活性炭の注入率を増大させる。この関係式はステップS231の関係式と同じであることが好ましい。
【0126】
また、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。この関係式は、ステップS226の関係式と同じであることが好ましい。
【0127】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っていない場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を開始する。液部5への無機凝集剤の注入率は、ステップS231における液部5への無機凝集剤の注入率よりも大きく、例えば、0.5~8mg/Lの範囲であり、好ましくは1~5mg/Lの範囲である。また、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合は、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入をそのまま継続するが、注入量の範囲は上記の範囲となる(以上、ステップS232)。
【0128】
本例の制御部40による上記制御は、全藻類の藻体濃度、ラン藻の藻体濃度、全藻ピコプランクトン濃度、およびラン藻ピコプランクトン濃度が問題となる場合の制御を示している。本例では、全藻類の藻体濃度が大きくなった場合に凝集沈殿部3への無機凝集剤注入量を増量して凝集不良に対処し、ラン藻の藻体濃度が大きくなった場合には粉末活性炭を注入することで異臭味対策とする。また、全藻ピコプランクトン濃度が大きくなった場合には液部5への無機凝集剤注入量を増量して全藻ピコプランクトンをろ過部6で除去してろ過水濁度漏出に対処する。なお、全藻ピコプランクトン濃度に加えてラン藻ピコプランクトン濃度も大きくなった場合には液部5への無機凝集剤注入量をさらに増量してろ過水濁度漏出に対処する。
【0129】
(本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第四の例)
図5は、本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第四の例を説明するフローチャートである。
【0130】
本例では、第一の測定手段14および第二の測定手段16の双方を使用する。また、薬品注入手段20としては、凝集沈殿部3への無機凝集剤注入手段26、液部5への無機凝集剤注入手段26、被処理水2への粉炭注入手段22、および凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24を使用する。
【0131】
まず、ステップS241において、第一測定手段14は、未ろ過の被処理水2およびフィルタ12でろ過後の被処理水2’のクロロフィルa濃度をそれぞれ測定し、第二測定手段16は未ろ過の被処理水2およびフィルタ12でろ過後の被処理水2’のフィコシアニン濃度をそれぞれ測定する。詳細の記載については、ステップS221等を参照することとし、ここでその記載を省略する(以上、ステップS241)。
【0132】
次に、ステップS242において、制御部40は、未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS242において、閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS243に移行し、閾値以上(NO)であればステップS244に移行する(以上、ステップS242)。
【0133】
ステップS243では、制御部40は、粉炭注入手段22が被処理水2への粉末活性炭の注入を行っている場合、粉炭注入手段22へと信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は被処理水2への粉末活性炭の注入を停止する。
【0134】
また、制御部40は、無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量の増量を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26はその増量を停止し、凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量を低下させる。なお、この増量を中止した際のベースの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率は、例えば、10~50mg/Lの範囲であり、好ましくは15~35mg/Lの範囲である。
【0135】
さらに、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を停止する(以上、ステップS243)。
【0136】
ステップS242からの移行先のステップS244では、制御部40は、未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。
ステップS244において、閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満(YES)であればステップS245に移行し、閾値以上(NO)であればステップS248に移行する(以上、ステップS244)。
【0137】
ステップS245では、制御部40は、ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS245において、ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度の閾値は、例えば、0.01~0.5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.05~0.2mg/Lの範囲である。ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS246に移行し、閾値以上(NO)であればステップS247に移行する(以上、ステップS245)。
【0138】
ステップS246では、制御部40は、凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24に信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の最適注入率との関係式にしたがって次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)からの凝集沈殿部3へと次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を注入する。
【0139】
また、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3へと粉末活性炭を注入する。
【0140】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。
【0141】
そのうえ、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を停止する(以上、ステップS246)。
【0142】
ステップS245からの移行先のステップS247では、制御部40は、凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24に信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の最適注入率との関係式にしたがって次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)からの凝集沈殿部3へと次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を注入する。
【0143】
また、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3へと粉末活性炭を注入する。この関係式は、ステップS246と同じものを使用することが好ましい。
【0144】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。この関係式は、ステップS246と同じものを使用することが好ましい。
【0145】
そのうえ、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っていない場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を開始する。液部5への無機凝集剤の注入率は、例えば、0.1~5mg/Lの範囲であり、好ましくは0.5~3mg/Lの範囲である。また、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、制御部40は特に信号を送ることなく、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入をそのまま継続する(以上、ステップS247)。
【0146】
ステップS244からの移行先のステップS248では、制御部40は、ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS248において、ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度の閾値は、ステップS245と同じ値であることが好ましい。ろ過後の被処理水2’中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS249に移行し、閾値以上(NO)であればステップS250に移行する(以上、ステップS248)。
【0147】
ステップS249では、制御部40は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24が凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を行っている場合、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24へと信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24は凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を停止する。
【0148】
また、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3へと粉末活性炭を注入する。なお、ステップS247の粉炭注入率よりもステップ249の粉炭注入率は大きく、したがって、ここでの関係式は、ステップS247の関係式に所定の係数を加算するか、または乗算した関係式とすることができる。
【0149】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。なお、ステップS247の無機凝集剤注入率よりもステップ249の無機凝集剤注入率は大きく、したがって、ここでの関係式は、ステップS247の関係式に所定の係数を加算するか、または乗算した関係式とすることができる。
【0150】
そのうえ、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を停止する(以上、ステップS249)。
【0151】
ステップS248からの移行先のステップS250では、制御部40は、ろ過後の被処理水2’中のフィコシアニン濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS250において、ろ過後の被処理水2’中のフィコシアニン濃度の閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。ろ過後の被処理水2’中のフィコシアニン濃度が閾値未満(YES)であればステップS251に移行し、閾値以上(NO)であればステップS252に移行する(以上、ステップS250)。
【0152】
ステップS251では、制御部40は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24が凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を行っている場合、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24へと信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24は凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を停止する。
【0153】
また、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3へと粉末活性炭を注入する。なお、ステップS251の粉炭注入率は、ステップS249の粉炭注入率と同じであることが好ましい。
【0154】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。なお、ステップS251の無機凝集剤注入率は、ステップS249の無機凝集剤注入率と同じであることが好ましい。
【0155】
そのうえ、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っていない場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を開始する。液部5への無機凝集剤の注入率は、例えば、0.1~5mg/Lの範囲であり、好ましくは0.5~3mg/Lの範囲である。また、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入をそのまま継続するが、注入量の範囲は上記の範囲となる(以上、ステップS251)。
【0156】
ステップS250からの移行先のステップS252では、制御部40は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24が凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を行っている場合、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24へと信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24は凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を停止する。
【0157】
また、制御部40は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3へと粉末活性炭を注入する。なお、ステップS252の粉炭注入率は、ステップS249の粉炭注入率と同じであることが好ましい。
【0158】
さらに、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率を増大させる。なお、ステップS252の無機凝集剤注入率は、ステップS249の無機凝集剤注入率と同じであることが好ましい。
【0159】
そのうえ、制御部40は、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っていない場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入を開始する。液部5への無機凝集剤の注入率は、ステップS251の無機凝集剤の注入率よりも大きく、例えば、0.5~8mg/Lの範囲であり、好ましくは1~5mg/Lの範囲である。また、無機凝集剤注入手段26が液部5への無機凝集剤の注入を行っている場合、無機凝集剤注入手段26は液部5への無機凝集剤の注入をそのまま継続するが、注入量の範囲は上記の範囲となる(以上、ステップS252)。
【0160】
本例の制御部40による上記制御は、全藻類の藻体濃度、ラン藻の藻体濃度、全藻ピコプランクトン濃度、およびラン藻ピコプランクトン濃度が問題となる場合の制御を示している。本例では、全藻類の藻体濃度が大きくなった場合には、凝集沈殿部3への無機凝集剤注入量の増量、被処理水2への粉末活性炭の注入、次亜塩素酸ナトリウムの凝集沈殿部3への注入(前塩素ともいう)により凝集不良に対処する。また、ラン藻の藻体濃度が大きくなった場合には前塩素の停止、被処理水2への粉末活性炭の注入量のさらなる増量により異臭味の発生に対処する。さらに、全藻ピコプランクトン濃度およびラン藻ピコプランクトン濃度が大きくなった場合には段階的に液部5への無機凝集剤注入量を増量してこれらピコプランクトンを凝集させ、ろ過部6で除去してろ過水濁度漏出に対処する。
【0161】
(本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第五の例)
図6は、本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第五の例を説明するフローチャートである。
【0162】
本例では、第一の測定手段14および第二の測定手段16の双方を使用する。また、薬品注入手段20としては、凝集沈殿部3への無機凝集剤注入手段26、および凝集沈殿部3への高分子凝集剤注入手段28を使用する。
【0163】
まず、ステップS261において、第一測定手段14は、未ろ過の被処理水2のクロロフィルa濃度を測定し、第二測定手段16は未ろ過の被処理水2のフィコシアニン濃度を測定する。詳細の記載については、ステップS221等を参照することとし、ここでその記載を省略する(以上、ステップS261)。
【0164】
次に、ステップS262において、制御部40は、未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS262において、閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度が閾値未満(YES)であればステップS263に移行し、閾値以上(NO)であればステップS264に移行する(以上、ステップS262)。
【0165】
ステップS263では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量の増量を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26はその増量を停止し、凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量を低下させる。なお、この増量を中止した際のベースの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率は、例えば、10~50mg/Lの範囲であり、好ましくは15~35mg/Lの範囲である。
【0166】
また、制御部40は、高分子凝集剤注入手段28が凝集沈殿部3への高分子凝集剤の注入を行っている場合、高分子凝集剤注入手段28へと信号を送り、この信号に基づき、高分子凝集剤注入手段28は凝集沈殿部3への高分子凝集剤の注入を停止する(以上、ステップS263)。
【0167】
ステップS262からの移行先のステップS264では、制御部40は、未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。
ステップS264において、閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満(YES)であればステップS265に移行し、閾値以上(NO)であればステップS266に移行する(以上、ステップS264)。
【0168】
ステップS265では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率をベースの注入率から増大させる。
【0169】
さらに、制御部40は、高分子凝集剤注入手段28へと信号を送り、この信号に基づき、高分子凝集剤注入手段28は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への高分子凝集剤の最適注入率との関係式に従って高分子凝集剤注入手段28からの凝集沈殿部3へと高分子凝集剤を注入する。
【0170】
既に述べたとおり、クロロフィルa濃度は藻類全般の藻体濃度と相関があり、藻類全体の藻体濃度と高分子凝集剤要求量にも相関があることから、予めクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への高分子凝集剤注入率との関係式を得ておき、第一測定手段14により測定し、決定された未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度の値を上記関係式に代入することで、凝集沈殿部3への高分子凝集剤の最適注入率を算出することができる(以上、ステップS265)。
【0171】
ステップS264の移行先のステップS266では、制御部40は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率をベースの注入率から増大させる。なお、ステップS265の無機凝集剤注入率よりもステップ266の無機凝集剤注入率は大きく、したがって、ここでの関係式は、ステップS265の関係式に所定の係数を加算するか、または乗算した関係式とすることができる。
【0172】
さらに、制御部40は、高分子凝集剤注入手段28へと信号を送り、この信号に基づき、高分子凝集剤注入手段28は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のクロロフィルa濃度と凝集沈殿部3への高分子凝集剤の最適注入率との関係式に従って高分子凝集剤注入手段28からの凝集沈殿部3へと高分子凝集剤を注入する。この関係式は、ステップS265のものと同じものを使用することが好ましい(以上、ステップS266)。
【0173】
本例の制御部40による上記制御は、ピコプランクトン濃度は問題とならず、全藻類の藻体濃度、およびラン藻の藻体濃度が問題となる場合の制御を示している。本例では、全藻類の藻体濃度が大きくなった場合には、凝集沈殿部3への無機凝集剤注入量の増量、および凝集沈殿部3への高分子凝集剤の注入により凝集不良に対処する。また、ラン藻の藻体濃度が大きくなった場合には凝集沈殿部3への無機凝集剤注入量のさらなる増量により異臭味の発生に対処する。
【0174】
以上、第一測定手段および第二測定手段が測定可能な光合成色素濃度の少なくとも2つの測定値に基づき、薬品注入手段が注入する薬品の注入率を制御する制御部を有する薬品注入装置について説明したが、光合成色素の測定手段がフィコシアニン測定手段のみであり、フィコシアニンの色素濃度の測定値のみに基づき、前記薬品注入手段が注入する薬品の注入率を制御する制御部を有する薬品注入装置50に係る発明について、
図7を参照して以下に説明する。
【0175】
図7は、本発明の薬品注入装置50を説明するための模式図である。
図7において、
図1の構成と変わらない構成については、同一の符号を付すこととし、ここではその説明を省略する。
【0176】
図示のように、本発明の薬品注入装置50も、被処理水2を固液分離して処理水を得る浄水処理システム1中で薬品を注入するための薬品注入装置である。
【0177】
本発明の薬品注入装置50は、フィコシアニン測定手段52と、薬品注入手段20と、制御部42と、を有する。
【0178】
フィコシアニン測定手段52は、未ろ過の被処理水2のフィコシアニンの色素濃度を測定可能な測定手段である。フィコシアニン測定手段52としては、蛍光光度法により測定する手段や吸光光度法により測定する手段などが挙げられるが、前者の蛍光光度法により測定する手段であることが好ましい。この場合、フィコシアニン測定手段52としては、公知の蛍光分光光度計を用いることができる。フィコシアニン測定手段52は、後述する制御部42により制御される。
【0179】
薬品注入手段20は、浄水処理システム1中で薬品を注入する手段であって、
図1の薬品注入装置10の説明の際に例示した各薬品注入手段を用いることができる。本発明の薬品注入装置50では、薬品注入手段20として、被処理水2への粉炭注入手段22、凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24、および凝集沈殿部3への無機凝集剤注入手段26を採用している。
【0180】
制御部42は、フィコシアニン測定手段52が測定した未ろ過の被処理水2のフィコシアニンの色素濃度の測定値のみに基づき、薬品注入手段20が注入する薬品の注入率を制御する。制御部42も、制御部40同様コンピュータである。
【0181】
以下、制御部42による制御について、
図8を参照して説明する。
【0182】
(本発明の薬品注入装置50の制御部42による制御の第一の例)
図8は、本発明の薬品注入装置50の制御部42による制御の第一の例を説明するフローチャートである。
【0183】
まず、ステップS271において、フィコシアニン測定手段52は、未ろ過の被処理水2のフィコシアニン濃度を測定する。詳細の記載については、ステップS221等を参照することとし、ここでその記載を省略する(以上、ステップS271)。
【0184】
次に、ステップS272において、制御部42は、未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満であるかどうかを判断する。ステップS272において、閾値は、例えば、0.01~5mg/Lの範囲から選択することができ、好ましくは0.1~1mg/Lの範囲である。未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度が閾値未満(YES)であればステップS273に移行し、閾値以上(NO)であればステップS274に移行する(以上、ステップS272)。
【0185】
ステップS273では、制御部42は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24が凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を行っていない場合、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24へと信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24は凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を開始する。凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入率は、例えば、0.1~5mg/Lの範囲であり、好ましくは0.2~2.0mg/Lの範囲である。また、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24が凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を行っている場合、制御部42は特に信号を送ることなく、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24は凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入をそのまま継続する。
【0186】
また、制御部42は、粉炭注入手段22が被処理水2への粉末活性炭の注入を行っている場合、粉炭注入手段22へと信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は被処理水2への粉末活性炭の注入を停止する。
【0187】
さらに、制御部42は、無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量の増量を行っている場合、無機凝集剤注入手段26へと信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26はその増量を停止し、凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入量を低下させる。なお、この増量を中止した際のベースの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率は、例えば、10~50mg/Lの範囲であり、好ましくは15~35mg/Lの範囲である(以上、ステップS273)。
【0188】
ステップS272からの移行先のステップS274では、制御部42は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24が凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を行っている場合、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24へと信号を送り、この信号に基づき、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24は凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を停止する。
【0189】
また、制御部42は、粉炭注入手段22に信号を送り、この信号に基づき、粉炭注入手段22は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度と被処理水2への粉末活性炭の最適注入率との関係式に従って粉炭注入手段22からの凝集沈殿部3へと粉末活性炭を注入する。
【0190】
さらに、制御部42は、無機凝集剤注入手段26に信号を送り、この信号に基づき、無機凝集剤注入手段26は、予め決定した未ろ過の被処理水2中のフィコシアニン濃度と凝集沈殿部3への無機凝集剤の最適注入率との関係式に従って無機凝集剤注入手段26からの凝集沈殿部3への無機凝集剤の注入率をベースの注入率から増大させる。(以上、ステップS274)。
【0191】
本例の制御部42による上記制御は、全藻類の藻体濃度およびピコプランクトン濃度は問題とはならず、ラン藻の藻体濃度が問題となる場合の制御を示している。
【0192】
従来、ラン藻が浄水障害に与える影響が大きいことから、藻類の中でもラン藻に着目して薬品注入を調整することは公知であったが、非特許文献3ではラン藻の検出は検鏡により行われており、その場(オンサイト)でラン藻を検出することができず、時間と手間がかかっていた。また、目視による曖昧さもあった。
【0193】
本例の薬品注入装置50によれば、ラン藻の指標として光合成色素のフィコシアニンをフィコシアニン測定手段で測定することによりオンサイト、オンタイムで被処理水(原水)中のラン藻を監視して薬品注入に反映することが可能となった。すなわち、本発明の薬品注入装置によれば、藻類の総量にとらわれず、特に顕著に浄水障害を引き起こすラン藻に限定してその量を現場で迅速に計測することができるので、藻類全般の量が問題とならない場合には、藻類全般の量に基づいて薬品注入を制御するよりも効率的・効果的に薬品注入量をコントロールすることができる。
【0194】
具体的には、本例では、ラン藻の藻体濃度が大きくなった場合には、凝集沈殿部3への次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の注入を停止し、被処理水2に粉末活性炭を注入し、凝集沈殿部3に無機凝集剤を注入する。これにより、ラン藻の藻体内に存在する異臭味物質を藻体から流出させず、凝集沈殿で除去する。なお、流出した異臭味物質については粉末活性炭に吸着させて凝集沈殿により除去する制御を行う。
【0195】
なお、発明の理解を容易にするため、本発明の薬品注入装置50は、フィコシアニン測定手段を有する構成のみを特定しているが、薬品注入装置10のように、複数の光合成色素濃度測定手段を有していてもよい。例えば、薬品注入装置10を用いて未ろ過の被処理水のフィコシアニン濃度のみを測定し、この未ろ過の被処理水のフィコシアニン色素濃度の測定値のみに基づき、制御部により薬品注入手段が注入する薬品の注入率を制御する場合も、本発明の薬品注入装置の実施の形態に含まれる。
【0196】
<薬品注入方法>
本発明の薬品注入方法について、
図1の薬品注入装置10を用いる場合を例に以下に説明する。
図9は、本発明の薬品注入方法を説明するフローチャートである。
【0197】
本発明の薬品注入方法は、被処理水2を凝集沈殿部3での凝集沈殿処理に供して沈殿物4と液部5に分離し、得られた液部5をろ過部6でろ過して処理水7を得る浄水処理システム1へと薬品を注入するための薬品注入方法である。
【0198】
浄水処理システム1については、上記<薬品注入装置>の項目で説明済みであり、ここではその記載を省略する。
【0199】
図示のように、本発明の薬品注入方法は、任意のろ過工程(S100)と、測定工程(S110)と、薬品注入率決定工程(S120)と、薬品注入工程(S130)と、を有する。
【0200】
[任意のろ過工程(S100)]
本工程では、被処理水2を任意にろ過する。ろ過は、フィルタ12により行うことができる。フィルタ12についても上記<薬品注入装置>の項目で説明済みであり、ここではその記載を省略する。本工程は任意としているが、例えば、後述する測定工程(S110)で未ろ過の被処理水2の第一の光合成色素濃度と未ろ過の被処理水2の第二の光合成色素濃度のみを測定し、これらの測定値のみをその後の工程で用いる場合、フィルタ12は不要である。
【0201】
未ろ過の被処理水2と任意にフィルタ12によりろ過後の被処理水2’は次の測定工程(S110)に供される(以上、測定工程(S100))。
【0202】
[測定工程(S110)]
本工程では、ろ過された被処理水2’の第一の光合成色素濃度、未ろ過の被処理水2の第一の光合成色素濃度、ろ過された被処理水2’の第二の光合成色素濃度、および未ろ過の被処理水2の第二の光合成色素濃度の少なくとも2種の光合成色素濃度を測定する。
【0203】
第一の光合成色素および第二の光合成色素は、クロロフィル、カロテノイドおよびフィコビリンなどの、光合成生物に含まれる色素から選択することができる。但し、第二の光合成色素は、第一の光合成色素と異なる。
【0204】
第一の光合成色素濃度は、例えば、第一測定手段14により測定することができ、第二の光合成色素濃度は、例えば、第二測定手段16により測定することができる。第一測定手段14および第二測定手段16については、上記<薬品注入装置>の項目で説明済みであり、ここではその記載を省略する(以上、測定工程(S110))。
【0205】
[薬品注入率決定工程(S120)]
本工程では、測定工程(S110)で測定された少なくとも2種の光合成色素濃度の測定値に基づき、薬品の注入率を決定する。
【0206】
注入する薬品としては、例えば、粉末活性炭、次亜塩素酸ナトリウム(塩素)、無機凝集剤、高分子凝集剤、凝集補助剤などが挙げられるが、これらに限られるものでは無い。
【0207】
薬品の注入率の決定は、例えば、測定工程(S110)で測定された光合成色素濃度(例えば、未ろ過のクロロフィルa濃度など)が閾値を超えた場合に所定量添加する、あるいは添加を停止することとしても良いし、測定工程(S110)で測定された光合成色素濃度の値がその閾値を超えた場合に予め定めた光合成色素濃度と薬品要求量との関係式に上記測定された光合成色素濃度の値を代入し、薬品の注入量を決定することとしてもよい。
【0208】
薬品の注入率の決定は、例えば、上記<薬品注入装置>の本発明の薬品注入装置10の制御部40による制御の第一~第五の例を参考にすることができる。なお、これら制御部40による制御の第一~第五の例では、制御部40を用いて薬品の注入率を決定しているが、制御部40の使用が必須というわけではない。
【0209】
例えば、注入する薬品の組み合わせ、薬品の閾値、使用する関係式などをマニュアル化し、測定工程(S110)で測定された少なくとも2種の光合成色素濃度の測定値に基づき、このマニュアルに従って人が薬品の注入率を決定することとしてもよい。薬品の注入量の決定後は、薬品注入工程に移行する(以上、薬品注入率決定工程(S120))。
【0210】
[薬品注入工程(S130)]
本工程では、注入率決定工程(S120)において決定された注入率で浄水処理システム1へと薬品を注入する。
【0211】
薬品の注入先としては、選択された薬品に応じて、例えば、被処理水2、凝集沈殿部3および液部5を選択することができる。
【0212】
薬品は、
図1に示されるように、選択された薬品に応じて、例えば、粉炭注入手段22、高分子凝集剤注入手段28、無機凝集剤注入手段26、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)注入手段24を選択することができるが、これに限られるものではない。
【0213】
注入手段20としては、薬品が液体の形態であれば、薬品の貯槽、当該貯槽から薬品の注入先を繋ぐ配管、配管に設けられたポンプ、および配管中の開閉弁を備えた構成を例示することができる。また、薬品が粉末活性炭などの粉末状である場合、薬品を貯蔵しうるホッパと、ホッパから薬品の注入先を繋ぐ配管と、ホッパの下部に設けられた開閉式の計量投入弁と、を有する注入手段を例示することができる。なお、注入手段20の具体的構成はこの例示に限られるものではない。
【0214】
注入手段20からの薬品の注入は、上記<薬品注入装置>で述べたように、制御部40による制御により行ってもよいが、薬品注入率決定工程(S120)で決定された薬品の注入量に従い、人が注入手段20を操作して浄水処理システム1へと薬品を注入することとしても構わない。
【0215】
本方法によれば、第一の光合成色素濃度および第二の光合成色素濃度の少なくとも2つの測定値により、被処理水中の藻類の種類をその場で迅速に把握することができ、この把握された被処理水中の藻類の種類の状況に基づき、その場で薬品の注入を制御することができる。
【0216】
また、被処理水をろ過するろ過工程を備える場合には、ろ過後の被処理水の第一の光合成色素濃度、未ろ過の被処理水の第一の光合成色素濃度、ろ過後の被処理水の第二の光合成色素濃度、および未ろ過の被処理水の第二の光合成色素濃度の合計4つの測定値の少なくとも2種の測定値により、被処理水中の藻類の種類および/またはその大きさの状況に基づき、その場で薬品の注入を制御することができる。
【0217】
したがって、浄水処理において、被処理水中の藻類の状況を従来よりも迅速且つ正確に把握し、その場で適切な薬品を選択してその注入を制御することができる。