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特開2024-25922導電性高分子含有液の製造方法、及びキャパシタの製造方法
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  • 特開-導電性高分子含有液の製造方法、及びキャパシタの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025922
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】導電性高分子含有液の製造方法、及びキャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20240220BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20240220BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/028 G
C08G61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129301
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝則
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032BA04
4J032BB01
4J032BC13
4J032BD02
4J032CG01
(57)【要約】
【課題】キャパシタの製造に適した導電性高分子含有液の製造方法、及びキャパシタの製造方法を提供する。
【解決手段】アニオン性モノマーをその水溶液中で重合することにより、ポリアニオンを含む水溶液を得るポリアニオン重合工程と、前記ポリアニオンを含む水溶液を30日以上経過させる経過工程と、前記経過工程で30日以上経過させた前記ポリアニオン、水、及びπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを含む反応液で、前記モノマーを重合することにより、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体、並びに水を含む導電性高分子含有液を得る導電性高分子重合工程と、を有する導電性高分子含有液の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性モノマーをその水溶液中で重合することにより、ポリアニオンを含む水溶液を得るポリアニオン重合工程と、
前記ポリアニオンを含む水溶液を30日以上経過させる経過工程と、
前記経過工程で30日以上経過させた前記ポリアニオン、水、及びπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを含む反応液で、前記モノマーを重合することにより、
前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体、並びに水を含む導電性高分子含有液を得る導電性高分子重合工程と、を有する導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項2】
前記経過工程における前記水溶液の温度が0℃超40℃以下である、請求項1に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項3】
前記経過工程における前記水溶液に含まれるポリアニオンの濃度が1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項4】
前記ポリアニオン重合工程で得た前記ポリアニオンの重量平均分子量が10万以上80万以下である、請求項1に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項5】
前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項1に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項6】
前記ポリアニオン重合工程において前記アニオン性モノマーを重合させる際、酸化剤として過硫酸塩を添加する、請求項5に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項7】
前記導電性高分子含有液の25℃における粘度が20cP以上59cP以下である、請求項1に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項8】
前記導電性高分子含有液に塩基性化合物を添加する、請求項1に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項9】
前記導電性高分子含有液にポリオール化合物を添加する、請求項1に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の製造方法によって導電性高分子含有液を得る工程と、
弁金属の多孔質体からなる陽極の表面に形成された誘電体層の表面に、前記導電性高分子含有液を塗布し、乾燥させて固体電解質層を形成する工程を有する、キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含有する導電性高分子含有液の製造方法、及びキャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖がπ共役系で構成されているπ共役系導電性高分子は、アニオン基を有するポリアニオンがドープすることによって導電性複合体を形成し、水に対する分散性が生じる。
導電性複合体を含有する導電性高分子含有液(導電性高分子分散液ということもある。)を用いて形成した固体電解質層を備えたキャパシタが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-100744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等のキャパシタの固体電解質層は、陽極の表面に化成処理で形成された誘電体層に導電性高分子含有液を塗布し、その塗膜を乾燥・固化することにより形成される。塗布する導電性高分子含有液には、多孔質な誘電体層の内部や、陽極と陰極の狭い隙間に含侵することが求められる。このため、キャパシタの製造に使用される導電性高分子含有液の粘度は適度に低いことが好ましい。
【0005】
本発明者らが鋭意検討したところ、導電性複合体の形成に供するポリアニオンの製造後の経過期間が30日以上であると、導電性高分子含有液の粘度が適度に低くなり、製造したキャパシタの等価直列抵抗(ESR)が充分に低くなることを見出した。
【0006】
本発明は、キャパシタの製造に適した導電性高分子含有液の製造方法、及びキャパシタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] アニオン性モノマーをその水溶液中で重合することにより、ポリアニオンを含む水溶液を得るポリアニオン重合工程と、前記ポリアニオンを含む水溶液を30日以上経過させる経過工程と、前記経過工程で30日以上経過させた前記ポリアニオン、水、及びπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを含む反応液で、前記モノマーを重合することにより、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体、並びに水を含む導電性高分子含有液を得る導電性高分子重合工程と、を有する導電性高分子含有液の製造方法。
[2] 前記経過工程における前記水溶液の温度が0℃超40℃以下である、[1]に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
[3] 前記経過工程における前記水溶液に含まれるポリアニオンの濃度が1質量%以上20質量%以下である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
[4] 前記ポリアニオン重合工程で得た前記ポリアニオンの重量平均分子量が10万以上80万以下である、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
[5] 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]~[4]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
[6] 前記ポリアニオン重合工程において前記アニオン性モノマーを重合させる際、酸化剤として過硫酸塩を添加する、[1]~[5]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
[7] 前記導電性高分子含有液の25℃における粘度が20cP以上59cP以下である、[1]~[6]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
[8] 前記導電性高分子含有液に塩基性化合物を添加する、[1]~[7]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
[9] 前記導電性高分子含有液にポリオール化合物を添加する、[1]~[8]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の製造方法。
[10] [1]~[9]の何れか一項に記載の製造方法によって導電性高分子含有液を得る工程と、弁金属の多孔質体からなる陽極の表面に形成された誘電体層の表面に、前記導電性高分子含有液を塗布し、乾燥させて固体電解質層を形成する工程を有する、キャパシタの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャパシタの製造に適した導電性高分子含有液を製造することができる。また、ESRが低減したキャパシタを製造することができる。
【0009】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のキャパシタの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪導電性高分子含有液の製造方法≫
本発明の第一態様は、後述のポリアニオン重合工程と、経過工程と、導電性高分子重合工程と、を有する導電性高分子含有液の製造方法である。
【0013】
<ポリアニオン重合工程>
本工程は、アニオン性モノマーの水溶液中でアニオン性モノマーを重合することにより、ポリアニオンを含む水溶液を得る工程である。
【0014】
[ポリアニオン]
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー(アニオン性モノマー)の重合体であり、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
アニオン性モノマーが有するアニオン基、すなわち、ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のアニオン性モノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のアニオン性モノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。つまり、アニオン性モノマーとしては、スルホ基を有するものが好ましく、スチレンスルホン酸がより好ましい。
前記水溶液に含まれるアニオン性モノマーのアニオン基は、カチオンと塩を形成していてもよい。
【0015】
アニオン性モノマーは水溶性であるので、任意の濃度の水溶液を調製することができる。その濃度としては、例えば、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましく、8質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、水溶液に含まれるアニオン性モノマーのほとんど全てが重合したポリアニオンを得ることができる。
【0016】
水溶液に含まれるアニオン性モノマーの具体的な重合方法として、公知方法を適用することができる。前記水溶液に過硫酸塩を添加することにより、重合させることが好ましい。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。
【0017】
水溶液に含まれるアニオン性モノマーの反応性は高いので、充分な酸化剤を添加することによって、水溶液に含まれるアニオン性モノマーのほとんど全てが重合したポリアニオンを得ることができる。また、酸化剤の添加量を多くすると、得られるポリアニオンの質量平均分子量が小さくなり、酸化剤の添加量を少なくすると、得られるポリアニオンの質量平均分子量が大きくなる傾向を利用して、所望の質量平均分子量のポリアニオンが得られる。
【0018】
水溶液に添加する酸化剤の総量としては、水溶液中のアニオン性モノマーの含有量100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.2質量部以上4.0質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上2.0質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、質量平均分子量が2~100万のポリアニオンが容易に得られる。
【0019】
本工程で得るポリアニオンの質量平均分子量(重量平均分子量)は、本発明の効果をより一層高める観点から、2万以上100万以下が好ましく、10万以上80万以下がより好ましい。質量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて測定し、プルラン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
【0020】
重合反応後のポリアニオン水溶液をそのまま次の経過工程に供してもよいが、アニオン性モノマーのアニオン基がカチオンと塩を形成している場合、カチオンを除去してプロトンに置換しておくことが好ましい。カチオンを除去することにより、π共役系導電性高分子に対するドープ性能が優れたポリアニオンとなる。また、重合反応に使用した酸化剤に由来するカチオンをポリアニオン水溶液から除去することが好ましい。これらのカチオンを除去する方法としては、例えば、陽イオン交換樹脂にポリアニオン水溶液を接触させ、除去するカチオンを陽イオン交換樹脂に吸着させる方法、ポリアニオン水溶液を限外ろ過することにより分散媒の置換とともに除去する方法等が挙げられる。このうち、陽イオン交換樹脂を使用する方法が簡便であるため好ましい。
【0021】
<経過工程>
本工程は、ポリアニオン重合工程で得たポリアニオンを含む水溶液を30日以上経過させる工程である。
ここで、経過期間の始期は、前工程においてポリアニオンの重合が終了し、ポリアニオン水溶液が得られた時である。
ポリアニオン水溶液を30日以上経過させる方法は特に制限されず、静置してもよいし、時折攪拌してもよい。具体的には、ポリアニオン水溶液を密閉瓶に入れて、0℃超40℃以下、好ましくは4℃以上30℃以下で保管する方法が挙げられる。
経過期間を終期は、次工程の反応液に配合され、π共役系導電性高分子のモノマーと混合された時である。
経過期間の日数は30日以上が好ましく、60日以上がより好ましく、90日以上がさらに好ましい。これらの好ましい日数以上で経過させたポリアニオン水溶液を用いて得た導電性高分子含有液は、ESRがより一層低減されたキャパシタの製造に適している。
経過期間の日数の上限は特に制限されず、目安として1000日以下が挙げられ、好ましくは300日以下である。
【0022】
本工程のポリアニオン水溶液に含まれるポリアニオンの濃度は、本発明の効果をより一層高める観点から、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましく、8質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
<導電性高分子重合工程>
本工程は、経過工程で30日以上経過した前記ポリアニオン、水、及びπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを含む反応液で、前記モノマーを重合することにより、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体、並びに水を含む導電性高分子含有液を得る工程である。
【0024】
[導電性複合体]
本工程で得る導電性複合体はπ共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
【0025】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0026】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
【0027】
前記反応液を調製し、前記モノマーを重合させることにより、π共役系導電性高分子を形成する。前記反応液において、π共役系導電性高分子にポリアニオンが自然にドープされ、π共役系導電性高分子とポリアニオンからなる導電性複合体が形成される。
【0028】
導電性複合体中のポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して、例えば、1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
【0029】
前記反応液における導電性複合体の合成は、前記反応液に配合するポリアニオンとして経過工程を経たポリアニオンを使用すること以外は、従来の導電性複合体の合成と同様にして行うことができる。
【0030】
前記反応液は水を含むので、前記モノマーの重合反応が安定して進行し、得られた導電性複合体が水中で安定に分散された状態で得られる。
前記反応液は水以外の分散媒を含んでもよい。水以外の分散媒としては、重合を阻害するものでなければよく、水溶性有機溶剤が好ましい。ここで水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。分散媒として含まれる水溶性有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
前記反応液の不揮発成分を除いた分散媒の総質量に対する水の含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0031】
前記反応液にはモノマーの化学酸化を促進する、公知の触媒及び酸化剤を添加することが好ましい。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。
【0032】
重合反応時の前記反応液の総質量に対する触媒の配合量としては、例えば、0.01質量%以上0.50質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.30質量%以下がより好ましい。
【0033】
重合反応時の前記反応液の総質量に対する酸化剤の配合量としては、例えば、0.10質量%以上1.00質量%以下が好ましく、0.30質量%以上0.80質量%以下がより好ましく、0.50質量%以上0.70質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
重合反応開始直前の前記反応液の総質量に対する前記モノマーの含有量は、例えば、0.01質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
重合反応開始直前の前記反応液の総質量に対する前記ポリアニオンの含有量は、例えば、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。
上記の好適な範囲とすることにより、キャパシタの製造に適した粘度の導電性高分子含有液が容易に得られる。
【0035】
重合反応により形成する導電性複合体において、前記π共役系導電性高分子と前記ポリアニオンの含有割合を、前述した好適な割合にする観点から、重合反応開始直前における前記反応液に含まれる前記モノマーと前記ポリアニオンの含有割合は、前記モノマー100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下が好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
【0036】
重合反応時の前記反応液の温度、すなわち反応温度としては、例えば、20~30℃とすることができる。上記反応温度であれば、重合反応は通常4~12時間程度で完了する。重合反応の終了は、反応液中の未反応のモノマーの量をガスクロマトグラフィー等の測定によって知ることができる。
【0037】
前記反応液に添加した触媒及び酸化剤を、前記モノマーの化学酸化重合の後で、導電性高分子含有液から除去することが好ましい。
除去する方法としては、例えば、イオン交換樹脂に導電性高分子含有液を接触させ、触媒及び酸化剤をイオン交換樹脂に吸着させる方法、導電性高分子含有液を限外ろ過することにより分散媒の置換とともに除去する方法等が挙げられる。このうち、イオン交換樹脂を使用する方法が簡便であるため好ましい。前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を併用することが好ましい。
【0038】
以上で得られた導電性高分子含有液には、目的の導電性複合体が含まれる。反応液から触媒及び酸化剤を除去すれば、そのまま後述するキャパシタの製造に用いることができるが、分散媒を所望のものに置換したり、導電性複合体の含有濃度を調整したり、塩基性化合物、ポリオール化合物、任意の添加剤等を添加してもよい。
【0039】
本態様の導電性高分子含有液に含まれるポリアニオンの合計の含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して、例えば、1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
【0040】
本態様の導電性高分子含有液の総質量に対する前記導電性複合体(すなわちπ共役系導電性高分子及び全ポリアニオン)の含有量は、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましい。
上記好適な範囲であると、前記導電性高分子含有液から形成される固体電解質層を有するキャパシタのESRをより低減することができる。
【0041】
(分散媒)
導電性高分子含有液には水以外の分散媒を含んでもよい。水以外の分散媒は、前記導電性複合体の分散性を著しく損なうものでなければ特に限定されない。導電性複合体はポリアニオンに由来する余剰のアニオン基を有し、水に対する分散性が高いので、水以外の分散媒は水溶性有機溶剤が好ましい。ここで水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。分散媒として含まれる水溶性有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0042】
導電性高分子含有液の不揮発成分を除いた分散媒の総質量に対する水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。上記下限値以上で水を含むと、導電性高分子含有液に含まれる導電性複合体の分散性が高まり、導電性高分子含有液から形成される固体電解質層を有するキャパシタのESRをより低減することができる。
【0043】
以上の方法で得た導電性高分子含有液の25℃における粘度は、20cP以上59cP以下が好ましい。また、ポリアニオン重合工程で得たポリアニオンの質量平均分子量が10万以上40万以下である場合、導電性高分子含有液の25℃における粘度は、20cP以上55cP以下がより好ましく、25cP以上50cP以下がさらに好ましく、30cP以上45cP以下が特に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、誘電体層の上に塗布した塗膜の厚さを確保でき、適度な厚さの固体電解質層を形成することが容易になる。
上記範囲の上限値以下であると、誘電体層の表面に予め形成された微細な多孔質構造の中に導電性高分子含有液を浸透させ、その内部にも固体電解質層を形成することが容易になる。
上記粘度の測定は、音叉振動式粘度計を用い、JIS Z8803:2011(振動粘度計による粘度測定法)に準拠して、25℃で測定された値である。
【0044】
(塩基性化合物)
導電性高分子含有液に1種以上の塩基性化合物を添加してもよい。塩基性化合物は、ポリアニオンの余剰のアニオン基からプロトンを受け取るブレンステッド塩基として機能するものである。この機能を果たすために、塩基性化合物の水に対する溶解量は、20℃の水100gに対して、0.001g以上であることが好ましい。前記溶解量の上限値は特に制限されないが、例えば0.1g程度であっても充分に上記機能は果たし得る。
【0045】
塩基性化合物としては、窒素を含む有機または無機の塩基性化合物、アルカリ金属または第2族金属の水酸化物、各種の炭酸塩や炭酸水素塩等を用いることができる。例えば、アルカリ金属の水酸化物、水酸化第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン等が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩または炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
水酸化第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0046】
アミンとしては、脂肪族3級アミン、窒素含有芳香族化合物等が挙げられる。
脂肪族3級アミンとしては、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
【0047】
窒素含有芳香族化合物(少なくとも1つの窒素原子が環構造を形成する芳香族化合物)としては、例えば、ピロール、インドール、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、N-プロピルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1-アセチルイミダゾール、2-アミノベンズイミダゾール、2-アミノ-1-メチルベンズイミダゾール、2-ヒドロキシベンズイミダゾール、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン及びこれらのアルキル置換体(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1~4のアルキル基での置換体)、ハロゲン置換体(例えば、フロロ、クロロ、ブロム等のハロゲン基での置換体)、ニトリル置換体等の誘導体が挙げられる。
なかでも、窒素含有芳香族化合物が好ましく、イミダゾールがより好ましい。
【0048】
導電性高分子含有液に含まれる塩基性化合物の含有量は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部(つまり導電性複合体100質量部)に対して、例えば、1質量部以上1000質量部以下が好ましく、5質量部以上100質量部以下がより好ましく、10質量部以上50質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0049】
導電性高分子含有液に含まれる塩基性化合物の含有量は、導電性高分子含有液(25℃)のpHが、2.0~8.0となる含有量が好ましく、2.0~5.0となる含有量がより好ましく、2.0~3.0となる含有量がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0050】
(ポリオール化合物)
導電性高分子含有液に1種以上のポリオール化合物を添加してもよい。ここで、ポリオール化合物は、前記π共役系導電性高分子、前記ポリアニオン、及び前記塩基性化合物とは異なる、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物をいう。ポリオール化合物を含有することにより、キャパシタのESRをより一層低減できる。
【0051】
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びトリメチロールエタンから選択される1種以上が挙げられる。
【0052】
導電性高分子含有液に含まれるポリオール化合物の含有量は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部(つまり導電性複合体100質量部)に対して、例えば、100質量部以上10000質量部以下が好ましく、200質量部以上2000質量部以下がより好ましく、300質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0053】
導電性高分子含有液の総質量に対するポリオール化合物の含有量は、1質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上12質量%以下がより好ましく、5質量%以上9質量%以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電性高分子含有液の塗工性が向上し、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0054】
(任意の添加剤)
導電性高分子含有液に任意の添加剤を添加してもよく、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部(つまり導電性複合体100質量部)に対して、例えば、1~1000質量部とすることができる。ここで、任意の添加剤は、前記導電性複合体、前記塩基性化合物、前記ポリオール化合物及び前記分散媒以外の化合物である。
【0055】
任意の添加剤としては、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0056】
《キャパシタの製造方法》
本発明の第二態様は、第一態様の製造方法によって導電性高分子含有液を得る工程と、弁金属の多孔質体からなる陽極の表面に形成された誘電体層の表面に、前記導電性高分子含有液を塗布し、乾燥させて固体電解質層を形成する工程を有する、キャパシタの製造方法である。
【0057】
本態様のキャパシタの製造方法は、弁金属の多孔質体からなる陽極の表面を酸化して誘電体層を形成する工程(誘電体形成工程)と、前記誘電体層に対向する位置に陰極を配置する工程(陰極形成工程)と、前記誘電体層の表面の少なくとも一部に固体電解質層を形成する工程(成膜工程)と、を含むことが好ましい。以下、図1を参照して各工程を説明する。
【0058】
[誘電体形成工程]
本工程では、弁金属の多孔質体からなる陽極11の表面を酸化して誘電体層12を形成する。誘電体層12を形成する方法は、特に制限されず、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液、ホウ酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液などの化成処理用電解液中にて、陽極11の表面を陽極酸化する方法が挙げられる。
【0059】
[陰極形成工程]
本工程では、誘電体層12に対向する位置に陰極13を配置する。陰極13の配置方法は、特に制限されず、例えば、カーボンペースト、銀ペースト等の導電性ペーストを用いて陰極13を形成する方法、アルミニウム箔等の金属箔を誘電体層12に対向配置させる方法などが挙げられる。
【0060】
[成膜工程]
本工程は、誘電体層12の表面の少なくとも一部に前述の導電性高分子含有液を塗布し、乾燥させることにより、固体電解質層14を形成する。
【0061】
導電性高分子含有液の塗布方法としては、例えば、浸漬(ディップコーティング)、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、マイクログラビアコーティング等を適用することができる。これらのうち、陽極11を減圧下で導電性高分子含有液中に浸漬する方法が好ましい。浸漬方法であると、誘電体層12の表面の多孔質構造の内部にまで導電性高分子含有液を充分に塗布することができる。浸漬後に取り出して次の乾燥処理に進む。
【0062】
乾燥方法としては、例えば室温乾燥、熱風乾燥、遠赤外線乾燥等が挙げられる。これらの中でも熱風乾燥が好ましい。
乾燥温度としては、例えば100~180℃が好ましく、120~150℃がより好ましい。乾燥時間としては、例えば0.2~1時間が好ましい。
乾燥処理の後、常法によりキャパシタを組み立てればよい。
【0063】
≪キャパシタ≫
本発明の第二態様によって製造したキャパシタの一例を説明する。キャパシタの一実施形態は、弁金属の多孔質体からなる陽極と、前記弁金属の酸化物からなる誘電体層と、前記誘電体層の、前記陽極と反対側に設けられた導電物質製の陰極と、前記誘電体層及び前記陰極の間に形成された固体電解質層とを具備し、前記固体電解質層が、前述の導電性高分子含有液の硬化物である、キャパシタである。
【0064】
図1を参照してさらに説明する。図1に示すキャパシタ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、弁金属の酸化物からなる誘電体層12と、誘電体層12の表面に形成された固体電解質層14と、最も表側に設けられた陰極13とを具備する。陰極13は誘電体層12及び固体電解質層14を間に挟んで、陽極11と反対側に設けられている。
【0065】
陽極11を構成する弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理してペレットにしたものが挙げられる。このように処理されたものは表面に凹凸が形成された多孔質体となる。
【0066】
本実施形態における誘電体層12は、陽極11の表面が酸化されて形成された層であり、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液などの電解液中にて、金属体の陽極11の表面を陽極酸化することで形成されたものである。陽極11と同様に誘電体層12にも凹凸が形成されている。
【0067】
本実施形態における陰極13としては、導電性ペーストから形成した導電層やアルミニウム箔など、導電物質製の金属層を使用することができる。
【0068】
本実施形態における固体電解質層14は、誘電体層12の表面に形成されている。固体電解質層14は、誘電体層12の表面の少なくとも一部を覆っており、誘電体層12の表面の全部を覆っていてもよい。
固体電解質層14の厚さは、一定でもよいし、一定でなくてもよく、例えば、1μm以上100μm以下の厚さが挙げられる。
【0069】
<導電性複合体>
固体電解質層に含有される導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
【0070】
固体電解質層の総質量に対する導電性複合体の含有量は、1質量%以上99質量%以下が好ましく、50質量%以上98質量%以下がより好ましく、70質量%以上97質量%以下がさらに好ましい。上記の範囲であると、キャパシタの等価直列抵抗がより低下し易くなるので好ましい。
【0071】
<塩基性化合物>
固体電解質層には、前述の塩基性化合物の1種以上がさらに含まれていてもよい。塩基性化合物を含有することにより、キャパシタのESRをより一層低減できる。
【0072】
固体電解質層に含まれる塩基性化合物の含有割合は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部(つまり導電性複合体100質量部)に対して、例えば、1質量部以上1000質量部以下が好ましく、5質量部以上100質量部以下がより好ましく、10質量部以上50質量部以下がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0073】
<ポリオール化合物>
固体電解質層には、前述のポリオールの1種以上がさらに含まれていてもよい。ポリオールを含有することにより、キャパシタのESRをより一層低減できる。
【0074】
固体電解質層に含まれるポリオール化合物の合計の含有量は、固体電解質層に含まれるπ共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部(つまり導電性複合体100質量部)に対して、例えば、100質量部以上10000質量部以下が好ましく、200質量部以上2000質量部以下がより好ましく、300質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0075】
[電解液]
本実施形態のキャパシタは、固体電解質層を含浸する電解液を有していてもよい。
電解液を構成する溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン等のアルコール系溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン等の硫黄系溶媒、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、水等が挙げられる。
電解液を構成する電解質としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、蟻酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の有機酸;あるいは、硼酸、硼酸と多価アルコールより得られる硼酸の多価アルコール錯化合物;リン酸、炭酸、ケイ酸等の無機酸などをアニオン成分とし、1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等)、3級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等)、テトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)などをカチオン成分とした電解質;等が挙げられる。
【0076】
第二態様によって製造するキャパシタは、上記の構成に限らず、誘電体層と陰極との間に、セパレータが設けられていてもよい。誘電体層と陰極との間にセパレータが設けられたキャパシタとしては、巻回型キャパシタが挙げられる。
セパレータとしては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンなどからなるシート(不織布を含む)、ガラス繊維の不織布などが挙げられる。
セパレータの密度は、例えば0.1g/cm以上1.0g/cm以下が挙げられる。
セパレータを設ける場合には、セパレータにカーボンペーストあるいは銀ペーストを含浸させて陰極を形成する方法を適用することもできる。
【実施例0077】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造1
900mlのイオン交換水に100gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸ナトリウムを20分間滴下し、その溶液を12時間攪拌した。得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、デュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)100g添加し1時間攪拌した後、濾過してデュオライトC255LFHを除いて10質量%のポリスチレンスルホン酸溶液1000mlを得た。
【0078】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、既知の重量平均分子量のプルランを標準物質として、上記で得たポリスチレンスルホン酸(PSS)水溶液の重量平均分子量(Mw)を測定した結果、重量平均分子量20万であった。
重量平均分子量の測定は、株式会社島津製作所製の高速液体クロマトグラフ装置Prominenceを使用し、溶媒として0.1%NaNO水溶液を使用し、カラムとしてShodex OHpack SB-806M HQを使用し、検出器としてRID-20Aを使用し、溶媒温度40℃に設定し、流速0.6ml/minに設定し、試料中のPSS濃度0.1質量%にして、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過した試料100μlを注入し、解析ソフトウェアLab Solutions(島津製作所製)を使用して行った。
【0079】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸の製造2
製造例1において1.14gの過硫酸ナトリウムを、0.38gに変更したこと以外は、製造例1と同様にしてポリスチレンスルホン酸を得た。得られたポリスチレンスルホン酸の分子量をGPCにて測定した結果54万であった。また、得られたポリスチレンスルホン酸(PSS)水溶液の固形分は10質量%だった。
【0080】
(製造例3)キャパシタ用素子の作成
エッチドアルミニウム箔(陽極箔)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸アンモニウム10質量%水溶液中で40Vの電圧を印加し、化成(酸化処理)して、アルミニウム箔の両面に誘電体層を形成して陽極箔を得た。
次に、陽極箔の両面に、陰極リード端子が溶接された対向アルミニウム陰極箔を、セルロース製のセパレータを介して積層し、これを円筒状に巻き取ってキャパシタ用素子を得た。
【0081】
(実施例1)
3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.0gと、25℃で密閉・静置した状態で製造後1か月経過した製造例1のポリスチレンスルホン酸水溶液(10質量%)90gと、イオン交換水325gを20℃で混合した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、硫酸第二鉄0.15gを添加した。次に4.4gの過硫酸ナトリウムを295.6gのイオン交換水に溶かした溶液をゆっくり添加し、得られた反応液を8時間攪拌して反応させた。
上記反応により、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体(PEDOT-PSS)と、分散媒である水とを含む導電性高分子含有液を得た。
この導電性高分子含有液にデュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)39gとデュオライトA368MS(住化ケムテックス社製、陰イオン交換樹脂)39gを加え、濾過してイオン交換樹脂を除き、前記酸化剤及び前記触媒が除去された導電性高分子含有液710gを得て、固形分(不揮発成分)と粘度を測定した。この測定結果を表1に示す。
次に、得られた導電性高分子含有液からエバポレーターを用いて水を減圧留去し固形分を1.6質量%とした。得られた導電性高分子含有液100gに、イミダゾール(0.3g)を添加しpHを2.5に調整し、ジエチレングリコール8gを添加した。
次に、製造例3で得たキャパシタ用素子を上記の導電性高分子含有液に減圧下で浸漬した後、125℃の熱風乾燥機により30分間乾燥して、誘電体層表面上に導電性複合体を含む固体電解質層を形成させた。
次いで、アルミニウム製のケースに、上記の固体電解質層が形成されたキャパシタ用素子を装填し、封口ゴムで封止して、キャパシタを作製した。
【0082】
(実施例2)
25℃で密閉・静置した状態で製造後3か月経過した製造例1のポリスチレンスルホン酸水溶液(10質量%)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子含有液及びキャパシタを作製した。
【0083】
(実施例3)
25℃で密閉・静置した状態で製造後1か月経過した製造例2のポリスチレンスルホン酸水溶液(10質量%)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子含有液及びキャパシタを作製した。
【0084】
(実施例4)
25℃で密閉・静置した状態で製造後3か月経過した製造例2のポリスチレンスルホン酸水溶液(10質量%)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子含有液及びキャパシタを作製した。
【0085】
(実施例5)
25℃で密閉・静置した状態で製造後1か月経過した製造例1のポリスチレンスルホン酸水溶液(10質量%)90gを150gに変更した。また、イオン交換樹脂を濾過で除いて得られた導電性高分子含有液について、減圧留去せず水を加えて固形分1.6質量%に調整した。これら以外は実施例1と同様にして導電性高分子含有液及びキャパシタを作製した。
【0086】
(実施例6)
25℃で密閉・静置した状態で製造後3か月経過した製造例1のポリスチレンスルホン酸水溶液(10質量%)90gを150gに変更した。また、イオン交換樹脂を濾過で除いて得られた導電性高分子含有液について、減圧留去せず水を加えて固形分1.6質量%に調整した。これら以外は実施例1と同様にして導電性高分子含有液及びキャパシタを作製した。
【0087】
(比較例1)
25℃で密閉・静置した状態で製造後1日経過した製造例1のポリスチレンスルホン酸水溶液(10質量%)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子含有液及びキャパシタを作製した。
【0088】
(比較例2)
25℃で密閉・静置した状態で製造後1日経過した製造例2のポリスチレンスルホン酸を使用したこと以外は実施例3と同様にしてキャパシタを作製した。
【0089】
(比較例3)
25℃で密閉・静置した状態で製造後1日経過した製造例1のポリスチレンスルホン酸を使用したこと以外は実施例5と同様にしてキャパシタを作製した。
【0090】
[粘度の測定方法]
各例においてイオン交換樹脂を濾過で除いて得られた、イミダゾール及びジエチレングリコールを添加する前の導電性高分子含有液を、高圧ホモジナイザーで分散したものを試料として、音叉振動式粘度計(型番:SV-10、A&D社製)を用い、25℃にてJIS Z8803:2011(振動粘度計による粘度測定方法)に準拠して測定した。1Pa・s(パスカル秒)=1000cP(センチポアズ)として換算した。
【0091】
<評価>
[静電容量・等価直列抵抗]
各例のキャパシタについて、LCRメータZM2376((株)エヌエフ回路設計ブロック製)を用いて、120Hzでの静電容量(単位:μF)、及び100kHzでの等価直列抵抗(ESR)(単位:Ω)を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
<結果>
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の形成に供するポリアニオンが重合後30日以上経過している導電性高分子含有液を、キャパシタの製造に用いた各実施例にあっては、静電容量が微増し、等価直列抵抗(ESR)が低減していることが明らかである。
【符号の説明】
【0094】
10 キャパシタ
11 陽極
12 誘電体層
13 陰極
14 固体電解質層
図1