(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025932
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240220BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240220BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20240220BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20240220BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04746
H01M8/04701
F24H1/00 631Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129316
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】御堂 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】白木 壮哉
(72)【発明者】
【氏名】井上 修一
【テーマコード(参考)】
3L122
5H127
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA28
3L122AB22
3L122BB13
3L122BB15
5H127AB23
5H127AC07
5H127BA13
5H127BA33
5H127BA34
5H127BB02
5H127BB18
5H127BB19
5H127DB86
5H127DC18
5H127DC38
5H127DC87
5H127DC93
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】水タンクに関連したコストが小さくなる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムが、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部6と、燃料ガス及び酸素ガスを反応させて発電する燃料電池部9と、発電反応に用いられた後に燃料電池部9から排出されるガス中に存在する可燃性ガスを燃焼させて排ガスを生じさせる燃焼部11と、燃焼部11から排出される排ガスの熱を熱媒体で回収する熱交換部16と、熱交換部16による熱回収により排ガスから生じる凝縮水を回収して貯留する水タンク19と、水タンク19で貯留される貯留水を改質部6に供給可能な水供給路L6と、水タンク19での貯留水の量が過剰傾向にあることを示す所定の貯留水過剰条件が満たされる場合、貯留水の量の増加を阻害する貯留水増加阻害処理を行う運転制御部26とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、
前記燃料ガス及び酸素ガスを反応させて発電する燃料電池部と、
発電反応に用いられた後に前記燃料電池部から排出されるガス中に存在する可燃性ガスを燃焼させて排ガスを生じさせる燃焼部と、
前記燃焼部から排出される前記排ガスの熱を熱媒体で回収する熱交換部と、
前記熱交換部による熱回収により前記排ガスから生じる凝縮水を回収して貯留する水タンクと、
前記水タンクで貯留される貯留水を前記改質部に供給可能な水供給路と、
前記水タンクでの前記貯留水の量が過剰傾向にあることを示す所定の貯留水過剰条件が満たされる場合、前記貯留水の量の増加を阻害する貯留水増加阻害処理を行う運転制御部とを備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記貯留水の量の予測値である予測貯留水量が将来の所定期間内に基準値以上になる場合に前記貯留水過剰条件が満たされると判定する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記運転制御部は、現在の前記貯留水の量と将来の予想気温の推移とに基づいて導出される前記予測貯留水量の推移を参照して、前記予測貯留水量が前記所定期間内に前記基準値以上になるか否かを判定する請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記貯留水の実測値である実貯留水量が増加して上限側目標値以上になった場合に前記貯留水過剰条件が満たされると判定する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃焼部から排出される前記排ガスを前記熱交換部を迂回させることができる迂回路を備え、
前記運転制御部は、前記貯留水増加阻害処理を行う場合、前記排ガスを前記迂回路を介して流す請求項1~4の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体の温度を調節できる熱媒体温度調節部を備え、
前記運転制御部は、
前記貯留水増加阻害処理を行わない場合、前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体の温度が上限熱媒温度以下になるように前記熱媒体温度調節部の動作を制御し、
前記貯留水増加阻害処理において、前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体の温度が前記上限熱媒温度より高くなるように前記熱媒体温度調節部の動作を制御する請求項1~4の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記熱媒体温度調節部は、前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体を冷却する冷却器を有する請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記熱媒体温度調節部は、前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体を加熱する加熱器を有する請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記水タンクにおいて前記貯留水を加熱する貯留水加熱部を備え、
前記運転制御部は、前記貯留水増加阻害処理において、前記貯留水加熱部を動作させて前記貯留水の気化を促進する請求項1~4の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、燃料ガス及び酸素ガスを反応させて発電する燃料電池部と、発電反応に用いられた後に燃料電池部から排出されるガス中に存在する可燃性ガスを燃焼させて排ガスを生じさせる燃焼部と、燃焼部から排出される排ガスの熱を熱媒体で回収する熱交換部と、熱交換部による熱回収により排ガスから生じる凝縮水を回収して貯留する水タンクと、水タンクで貯留される貯留水を改質部に供給可能な水供給路と、を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、水素を含む燃料ガスを生成するための改質処理に水が用いられるため、その水を供給するための水タンクを備える場合が多い。その場合、水タンクで貯えられる貯留水には、燃料電池システムの内部で回収した水が用いられる。例えば、特許文献1(特開2016-225103号公報)に記載の燃料電池システムは、燃料電池部から排出されるガス中に存在する可燃性ガスを燃焼させて排ガスを生じさせる燃焼部と、燃焼部から排出される排ガスの熱を熱媒体で回収する熱交換部と、熱交換部による熱回収により排ガスから生じる凝縮水を回収して貯留する水タンクと、タンクで貯留される貯留水を改質部に供給可能な水供給路とを備える。
【0003】
また、特許文献1(特開2016-225103号公報)に記載の燃料電池システムでは、改質部での改質処理に必要な水を、回収した水だけで賄えるように、即ち、外部から水タンクに水を補充しなくても良いように、回収する水を増量させる運転が行われる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の燃料電池システムでは、改質処理のために水タンクから改質部へ供給する水の量よりも、水タンクに回収する水の量の方を多くする運転(即ち、水収支がプラスになるような運転)が想定されている。そして、水タンクの容量を超えて貯めきれなくなった水は、水タンクから排水される。
【0006】
尚、水タンクの貯留水を排出する場合、水タンクから、燃料電池システムが設けられている施設の例えば汚水系統まで排水管を設置すること等が必要になる。そのため、配水管の部品コストや、配水管を設置するための工事費用などが必要になる。或いは、水タンクの容量を大きくして、貯留水が溢れないようにすることもできるが、その場合には水タンクを大型化するための費用が必要になる。このように、従来の燃料電池システムでは、水タンクに関連したコストが大きくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水タンクに関連したコストが小さくなる燃料電池システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、
前記燃料ガス及び酸素ガスを反応させて発電する燃料電池部と、
発電反応に用いられた後に前記燃料電池部から排出されるガス中に存在する可燃性ガスを燃焼させて排ガスを生じさせる燃焼部と、
前記燃焼部から排出される前記排ガスの熱を熱媒体で回収する熱交換部と、
前記熱交換部による熱回収により前記排ガスから生じる凝縮水を回収して貯留する水タンクと、
前記水タンクで貯留される貯留水を前記改質部に供給可能な水供給路と、
前記水タンクでの前記貯留水の量が過剰傾向にあることを示す所定の貯留水過剰条件が満たされる場合、前記貯留水の量の増加を阻害する貯留水増加阻害処理を行う運転制御部とを備える点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、水タンクでの貯留水の量が過剰傾向にあることを示す所定の貯留水過剰条件が満たされる場合、貯留水の量の増加を阻害する貯留水増加阻害処理が行われる。つまり、水タンクの容量が小さくても水タンクから貯留水が溢れることを回避できるため、水タンクの小型化が可能になる。また、水タンクの貯留水を排水する配水管などの設備を設けないことも可能になる。
従って、水タンクに関連したコストが小さくなる燃料電池システムを提供できる。
【0010】
本発明に係る燃料電池システムの別の特徴構成は、前記運転制御部は、前記貯留水の量の予測値である予測貯留水量が将来の所定期間内に基準値以上になる場合に前記貯留水過剰条件が満たされると判定する点にある。
ここで、前記運転制御部は、現在の前記貯留水の量と将来の予想気温の推移とに基づいて導出される前記予測貯留水量の推移を参照して、前記予測貯留水量が前記所定期間内に前記基準値以上になるか否かを判定してもよい。
【0011】
上記特徴構成によれば、貯留水の量の予測値である予測貯留水量が将来の所定期間内に基準値以上になる場合に、水タンクでの貯留水の量が過剰傾向にあると判定できる。
【0012】
本発明に係る燃料電池システムの更に別の特徴構成は、前記運転制御部は、前記貯留水の実測値である実貯留水量が増加して上限側目標値以上になった場合に前記貯留水過剰条件が満たされると判定する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、貯留水の実測値である実貯留水量が増加して上限側目標値以上になった場合に、水タンクでの貯留水の量が過剰傾向にあると判定できる。
【0014】
本発明に係る燃料電池システムの更に別の特徴構成は、前記燃焼部から排出される前記排ガスを前記熱交換部を迂回させることができる迂回路を備え、
前記運転制御部は、前記貯留水増加阻害処理を行う場合、前記排ガスを前記迂回路を介して流す点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、熱交換部を迂回して排ガスを流した場合、熱交換部での排ガスの冷却は行われないため、熱交換部では凝縮水は生じない。その結果、貯留水の量の増加を阻害できる。
【0016】
本発明に係る燃料電池システムの更に別の特徴構成は、前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体の温度を調節できる熱媒体温度調節部を備え、
前記運転制御部は、
前記貯留水増加阻害処理を行わない場合、前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体の温度が上限熱媒温度以下になるように前記熱媒体温度調節部の動作を制御し、
前記貯留水増加阻害処理において、前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体の温度が前記上限熱媒温度より高くなるように前記熱媒体温度調節部の動作を制御する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、熱交換部で排ガスと熱交換する熱媒体の温度を調節できる熱媒体温度調節部によって、熱交換部で排ガスと熱交換する熱媒体の温度を高くすることができる。熱交換部で排ガスと熱交換する熱媒体の温度を高くした場合、排ガスと熱媒体との温度差が小さくなるため、熱交換部で生じる凝縮水の量は減少する。その結果、貯留水の量の増加を阻害できる。
【0018】
本発明に係る燃料電池システムの更に別の特徴構成は、前記熱媒体温度調節部は、前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体を冷却する冷却器を有する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、冷却器による熱媒体の冷却能力を低下させることで、熱交換部で排ガスと熱交換する熱媒体の温度を高くすることができる。
【0020】
本発明に係る燃料電池システムの更に別の特徴構成は、前記熱媒体温度調節部は、前記熱交換部で前記排ガスと熱交換する前記熱媒体を加熱する加熱器を有する点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、加熱器による熱媒体の加熱能力を増大させることで、熱交換部で排ガスと熱交換する熱媒体の温度を高くすることができる。
【0022】
本発明に係る燃料電池システムの更に別の特徴構成は、前記水タンクにおいて前記貯留水を加熱する貯留水加熱部を備え、
前記運転制御部は、前記貯留水増加阻害処理において、前記貯留水加熱部を動作させて前記貯留水の気化を促進する点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、貯留水加熱部を動作させて貯留水の気化を促進することで、貯留水の量の増加を阻害できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態の燃料電池システムの構成を示す図である。
【
図2】運転制御部が行う処理について説明するフローチャートである。
【
図3】外気温と水タンクでの単位時間当たりの水収支との関係を示すグラフである。
【
図4】1日の中での外気温の推移例を示すグラフである。
【
図5】水タンクでの1時間毎の水収支と水タンクでの貯留水量の推移とを示すグラフである。
【
図6】水タンクでの1時間毎の水収支と水タンクでの貯留水量の推移とを示すグラフである。
【
図7】水タンクでの1時間毎の水収支と水タンクでの貯留水量の推移とを示すグラフである。
【
図8】貯留水増加阻害処理の効果を説明するグラフである。
【
図9】第2実施形態の燃料電池システムの構成を示す図である。
【
図10】第3実施形態の燃料電池システムの構成を示す図である。
【
図11】第4実施形態の燃料電池システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下に、図面を参照して本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。
図1は、第1実施形態の燃料電池システムの構成を示す図である。燃料電池システムは、外側容器1の内部に各種部品を備えている。
【0026】
外側容器1の内部には、ホットモジュール31が設けられている。ホットモジュール31には、高温環境下で動作するセルスタック9等などの機器を収容する内側容器2が設けられる。具体的には、内側容器2の内部には、気化部5、改質部6、マニホールド7、セルスタック(本発明の燃料電池部の一例)9などが設けられる。気化部5は、改質用水を気化させて改質部6に供給する。改質部6は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する。
【0027】
セルスタック9は、燃料ガス供給路L3によって供給される、改質部6で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セル8を有する。例えば、改質部6で生成された燃料ガスは、燃料ガス供給路L3を通ってマニホールド7に至り、マニホールド7で、燃料ガスは各燃料電池セル8に分配される。
【0028】
セルスタック9の上方の空間は、セルスタック9から排出されるオフガスを燃焼する燃焼部11となる。この燃焼熱は、その上方の気化部5及び改質部6に伝達される。点火部10は、オフガスに点火させる。
【0029】
内側容器2の給気口12には空気供給路L2が接続され、内側容器2の内部に空気(酸素)が供給される。内側容器2の排気口13から、内側容器2の内部に存在するガスが内側容器2の外部に排出される。排気口13には、排出されるガスに含まれる水素、一酸化炭素などを、酸素を用いて触媒燃焼させる燃焼触媒部14が設けられている。
【0030】
燃焼触媒部14を通過した排ガスは、内側容器2の外部に排出されて排ガス流路L4を流れ、熱交換部16に供給される。熱交換部16では、排ガスと、湯水循環路L9を流れる排熱回収用熱媒としての湯水との熱交換、即ち、排ガスの冷却が行われ、排ガスに含まれていた水分が凝縮する。
【0031】
熱交換部16の下流側の排ガス流路L4には分岐部17が設けられて、排ガス流路L4から水回収路L5が分岐する。そして、排ガス中の気相成分は排ガス流路L4を通って外側容器1の外部に排出され、排ガス中の液相成分(凝縮水)は水回収路L5を通って水タンク19に至り、水タンク19で貯留される。
【0032】
燃焼触媒部14と熱交換部16との間の排ガス流路L4の途中には切替弁15が設けられる。切替弁15によって、排ガス流路L4から迂回路L10が分岐する。迂回路L10は分岐部17よりも下流側の合流部18で排ガス流路L4に接続される。つまり、切替弁15は、排ガスが熱交換部16を介して流れる場合と、排ガスが熱交換部16を介さずに流れる場合とを切り替えることができる。この切替弁15の動作は運転制御部26が制御する。
【0033】
気化部5への原燃料の供給は原燃料供給路L1を介して行われる。
図1に示す例では、原燃料供給路L1の途中には、原燃料供給部3及び脱硫部4が設けられる。例えば、運転制御部26は、原燃料の単位時間当たりの流量が目標流量になるように原燃料供給部3を動作させる。脱硫部4は、原燃料に含まれる硫黄化合物などを除去する。
【0034】
内側容器2の内部への空気の供給は、空気供給路L2を介して行われる。空気供給路L2の途中には空気供給部22が設けられる。例えば、運転制御部26は、空気の単位時間当たりの流量が目標流量になるように空気供給部22を動作させる。
【0035】
水回収路L5を用いて回収した凝縮水は水タンク19に供給される。水タンク19には、水タンク19での貯留水の量を測定する水量測定部20が設けられる。水タンク19に貯えられている貯留水は水供給路L6を介して気化部5に供給される。水供給路L6の途中には水供給部21が設けられる。例えば、運転制御部26は、気化部5に供給される単位時間当たりの水量が目標流量になるように水供給部21を動作させる。
【0036】
熱交換部16では、排ガスと、湯水循環路L9を流れる排熱回収用熱媒としての湯水との熱交換が行われる。湯水は、貯湯タンク23に貯えられており、湯水循環路L9を介して貯湯タンク23と熱交換部16との間を循環する。貯湯タンク23から熱交換部16へ至る間の湯水循環路L9の途中には、湯水循環部24と湯水冷却部25と温度センサT2とが設けられている。例えば、湯水冷却部25は、ファンなどを備える放熱器を用いて実現できる。熱交換部16から貯湯タンク23へ至る間の湯水循環路L9の途中には、温度センサT1が設けられている。
【0037】
例えば、運転制御部26は、温度センサT2で測定される湯水の温度が所定の上限湯水温度未満になるように湯水冷却部25の動作を制御する。運転制御部26は、温度センサT1で測定される湯水の温度が目標貯湯温度になるように湯水循環部24の動作を制御する。
【0038】
このような構成により、貯湯タンク23の下部から湯水循環路L9を介して熱交換部16に供給される湯水はその熱交換部16で加熱され、加熱後の湯水は湯水循環路L9を介して貯湯タンク23の上部に供給される。このようにして、貯湯タンク23の上部には相対的に高温の湯水が存在し、貯湯タンク23の下部には相対的に低温の湯水が存在するというように、貯湯タンク23に温度成層を形成する状態で湯水が貯湯、即ち、蓄熱される。
【0039】
貯湯タンク23の下部には、貯湯タンク23に上水を供給するための給水路L7が接続され、貯湯タンク23の上部には、貯湯タンク23で貯えている湯水を排出するための出湯路L8が接続される。貯湯タンク23が貯えている湯水には、給水路L7の内部に加わっている給水圧が加わっている。このような構成により、貯湯タンク23では、例えば出湯路L8に接続される水栓(図示せず)が開かれることで出湯路L8へ貯湯タンク23から湯水が排出されるのに伴って、給水路L7から貯湯タンク23に上水が供給される。
【0040】
燃料電池システムは、運転制御部26と、燃料電池システムで取り扱われる情報を記憶する記憶部27と、通信部28とを備える。運転制御部26は、上述した点火部10、原燃料供給部3、水供給部21、空気供給部22、湯水循環部24などの各種機器の動作を制御する。
【0041】
次に、運転制御部26が行う貯留水増加阻害処理について説明する。運転制御部26は、水タンク19での貯留水の量が過剰傾向にあることを示す所定の貯留水過剰条件が満たされる場合、貯留水の量の増加を阻害する貯留水増加阻害処理を行う。
【0042】
図2は、運転制御部26が行う処理について説明するフローチャートである。運転制御部26はこのフローチャートを例えば12時間毎、6時間毎などの設定タイミングで実行する。
【0043】
工程#10において運転制御部26は、貯留水過剰条件が満たされるか否かを判定する。運転制御部26は、貯留水の量の予測値である予測貯留水量が将来の所定期間内に基準値以上になる場合に貯留水過剰条件が満たされると判定する。例えば、運転制御部26は、現在の貯留水の量と将来の予想気温の推移とに基づいて導出される予測貯留水量の推移を参照して、予測貯留水量が所定期間内に基準値以上になるか否かを判定する。
【0044】
図3は、定格出力でセルスタック9を発電運転させた場合での外気温と水タンク19での単位時間当たりの水収支との関係を示すグラフである。水収支とは、水タンク19から改質部6に供給される水量から、水タンク19に回収される水量を減算した値である。図示するように、外気温が高くなるほど、水タンク19での単位時間当たりの水収支は少なくなる。つまり、外気温が低い場合、水タンク19の貯留水量は増加し、外気温が高い場合、水タンク19の貯留水量は減少する。
【0045】
図4は、1日の中での外気温の推移例を示すグラフである。
図4では4月1日、6月21日、8月8日の3日間の例を示す。
図5~
図7は、
図4に示した4月1日、6月21日、8月8日の各日に定格出力でセルスタック9を発電運転させた場合での水タンク19での1時間毎の水収支と水タンク19での貯留水量の推移とを示すシミュレーション結果である。
【0046】
図5に示す4月1日の場合、水収支は常にプラス側であり、水タンク19での貯留水量も常に増加する。そして、時刻6時頃に水タンク19での貯留水量は上限値(1000mL)に到達する。その後は、水タンク19から貯留水が溢れ出すため、水タンク19での貯留水量は上限値を維持する。
【0047】
図6に示す6月21日の場合、時刻1頃~時刻17時頃の間、水収支はマイナスであり、水タンク19での貯留水量は減少する。それと比較して、その他の時間帯の水収支はプラスであり、水タンク19での貯留水量は増加する。この6月21日の場合、水タンク19での貯留水量は1日の中で増減し、上限値には到達しない。
【0048】
図7に示す8月8日の場合、水収支は常にマイナス側であり、水タンク19での貯留水量も常に減少する。
【0049】
このように、運転制御部26は、現在の貯留水の量と将来の予想気温の推移とに基づいて導出される予測貯留水量の推移を参照して、予測貯留水量が所定期間内に基準値以上になるか否かを判定できる。例えば、運転制御部26は、所定のタイミングで、通信部28を介して外部の気象情報サーバーから、現時点から例えば24時間後までの24時間分の予測外気温の推移についての情報を取得し、現時点から24時間後までの予測貯留水量の推移を導出する。そして、運転制御部26は、貯留水の量の予測値である予測貯留水量が例えば将来の24時間内に基準値以上(例えば、満水量の80%以上など)になる場合に貯留水過剰条件が満たされると判定する。
【0050】
工程#11において運転制御部26は、貯留水増加阻害処理の開始タイミングである場合には工程#12に移行して、貯留水増加阻害処理を開始する。例えば、運転制御部26は、予測貯留水量が基準値以上(例えば、満水量の80%以上など)になると予測される時刻になった場合に、貯留水増加阻害処理の開始タイミングであると判定する。或いは、運転制御部26は、予測貯留水量が基準値以上(例えば、満水量の80%以上など)になると予測される時刻の所定時間前になった場合に、貯留水増加阻害処理の開始タイミングであると判定してもよい。また或いは、運転制御部26は、水量測定部20で測定される貯留水の実測値である実貯留水量が増加して上限側目標値(例えば、満水量の80%以上など)以上になった場合に貯留水過剰条件が満たされると判定してもよい。
【0051】
本実施形態では、燃料電池システムは、燃焼部11から排出される排ガスを熱交換部16を迂回させることができる迂回路L10を備える。そして、運転制御部26は、貯留水増加阻害処理を行う場合、排ガスを迂回路L10を介して流す。具体的には、運転制御部26は、排ガスが熱交換部16を介さず、迂回路L10を介して流れるように切替弁15を動作させる。その場合、迂回路L10を流れた排ガスは合流部18で排ガス流路L4に合流し、外側容器1の外部へと排出される。そのため、排ガスに含有されていた水分は水タンク19に貯留されず、水タンク19の貯留水量は減少する。
【0052】
図8は、本実施形態の貯留水増加阻害処理の効果を説明するグラフである。具体的には、
図8には、貯留水増加阻害処理を行わない場合の外気温と水タンク19での単位時間当たりの水収支との関係(
図3に示した関係と同じ)、及び、貯留水増加阻害処理を行う場合の外気温と水タンク19での単位時間当たりの水収支との関係を示す。第1実施形態では、排ガスを迂回路L10に流しているため、排ガスに含有されていた水分は水タンク19に貯留されず、水タンク19から気化部5に供給される毎分200(mL)の貯留水の分だけ、水タンク19の貯留水は減少する。
【0053】
工程#13において運転制御部26は、貯留水適正条件が満たされるか否かを判定する。そして、運転制御部26は、貯留水適正条件が満たされる場合には工程#14に移行して、貯留水増加阻害処理を終了する。例えば、運転制御部26は、水量測定部20で測定される水タンク19での実際の貯留水量が所定量(例えば満水量の50%など)になった場合に、貯留水適正条件が満たされたと判定する。そして、運転制御部26は、排ガスが熱交換部16を介して流れるように切替弁15を動作させることで、貯留水増加阻害処理を終了する。
【0054】
以上のように、本実施形態の燃料電池システムでは、水タンク19での貯留水の量が過剰傾向にあることを示す所定の貯留水過剰条件が満たされる場合、貯留水の量の増加を阻害する貯留水増加阻害処理が行われる。つまり、水タンク19の容量が小さくても水タンク19から貯留水が溢れることを回避できるため、水タンク19の小型化が可能になる。また、水タンク19の貯留水を排水する配水管などの設備を設けないことも可能になる。従って、水タンク19に関連したコストが小さくなる燃料電池システムを提供できる。
【0055】
<第2実施形態>
第2実施形態の燃料電池システムは、貯留水増加阻害処理の内容が上記実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の燃料電池システムについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0056】
図9は、第2実施形態の燃料電池システムの構成を示す図である。第2実施形態の燃料電池システムは、上記実施形態で説明した切替弁15及び迂回路L10を備えていない。
【0057】
本実施形態では、燃料電池システムは、熱交換部16で排ガスと熱交換する熱媒体の温度を調節できる熱媒体温度調節部を備える。具体的には、熱媒体温度調節部は、熱交換部16で排ガスと熱交換する熱媒体を冷却する冷却器としての湯水冷却部25を用いて実現できる。そして、運転制御部26は、貯留水増加阻害処理を行わない場合、熱交換部16で排ガスと熱交換する熱媒体の温度が上限熱媒温度以下になるように熱媒体温度調節部の動作を制御し、貯留水増加阻害処理において、熱交換部16で排ガスと熱交換する熱媒体の温度が上限熱媒温度より高くなるように熱媒体温度調節部の動作を制御する。
【0058】
具体的には、熱交換部16で排ガスと熱交換する熱媒体の温度は、温度センサT2で測定されて、運転制御部26に伝達される。運転制御部26は、貯留水増加阻害処理を行わない場合、温度センサT2で測定される湯水(熱媒体)の温度が上限熱媒温度以下になるように湯水冷却部25の動作を制御し、貯留水増加阻害処理を行う場合、温度センサT2で測定される湯水(熱媒体)の温度が上限熱媒温度より高くなるように湯水冷却部25による湯水の冷却力を低下させる又は湯水冷却部25を動作させない。
【0059】
図8は、本実施形態の貯留水増加阻害処理の効果を説明するグラフである。具体的には、
図8には、貯留水増加阻害処理を行わない場合の外気温と水タンク19での単位時間当たりの水収支との関係(
図3に示した関係と同じ)、及び、貯留水増加阻害処理を行う場合の外気温と水タンク19での単位時間当たりの水収支との関係を示す。第2実施形態では、湯水冷却部25による湯水の冷却力を低下させる、又は、湯水冷却部25を動作させない。その場合、貯留水増加阻害処理を行わない場合と比べて、水収支はマイナス側に遷移する。つまり、貯留水増加阻害処理を行うことで貯留水の増加は阻害される。
【0060】
<第3実施形態>
第3実施形態の燃料電池システムは、貯留水増加阻害処理の内容が上記実施形態と異なっている。以下に第3実施形態の燃料電池システムについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0061】
図10は、第2実施形態の燃料電池システムの構成を示す図である。図示するように、本実施形態の燃料電池システムは、熱媒体温度調節部として、熱交換部16で排ガスと熱交換する熱媒体を加熱する加熱器としての湯水加熱部29を有する。例えば、加熱器は電気ヒーターなどである。そして、運転制御部26は、貯留水増加阻害処理を行わない場合、温度センサT2で測定される湯水(熱媒体)の温度が上限熱媒温度以下になるように湯水加熱部29の動作を制御し、貯留水増加阻害処理において、温度センサT2で測定される湯水(熱媒体)の温度が上限熱媒温度より高くなるように湯水加熱部29の動作を制御する。
【0062】
図8は、本実施形態の貯留水増加阻害処理の効果を説明するグラフである。具体的には、
図8には、貯留水増加阻害処理を行わない場合の外気温と水タンク19での単位時間当たりの水収支との関係(
図3に示した関係と同じ)、及び、貯留水増加阻害処理を行う場合の外気温と水タンク19での単位時間当たりの水収支との関係を示す。第3実施形態では、湯水加熱部29により湯水を加熱する。その場合、貯留水増加阻害処理を行わない場合と比べて、水収支はマイナス側に遷移する。つまり、貯留水増加阻害処理を行うことで貯留水の増加は阻害される。
【0063】
<第4実施形態>
第4実施形態の燃料電池システムは、貯留水増加阻害処理の内容が上記実施形態と異なっている。以下に第4実施形態の燃料電池システムについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0064】
図11は、第2実施形態の燃料電池システムの構成を示す図である。図示するように、本実施形態の燃料電池システムは、水タンク19において貯留水を加熱する貯留水加熱部30を備える。貯留水加熱部30は、例えば電気ヒーターなどである。そして、運転制御部26は、貯留水増加阻害処理において、貯留水加熱部30を動作させて貯留水の気化を促進する。
【0065】
具体的には、水タンク19には、貯留水の温度を測定する温度センサT3が設けられており、その測定結果は運転制御部26に伝達される。そして、運転制御部26は、貯留水増加阻害処理を行う場合、温度センサT3で測定される貯留水の温度が目標温度になるように貯留水加熱部30を動作させて貯留水を加熱する。その結果、水タンク19での貯留水の気化による減少が促進される。尚、運転制御部26は、貯留水増加阻害処理を行わない場合、貯留水加熱部30を動作させない。
【0066】
<別実施形態>
上記実施形態では、燃料電池システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。例えば、第1実施形態~第4実施形態で説明した貯留水増加阻害処理のうちの複数を併用してもよい。
【0067】
上記実施形態では、具体的な数値例を挙げて本発明の燃料電池システムについて説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
【0068】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、水タンクに関連したコストが小さくなる燃料電池システムに利用できる。
【符号の説明】
【0070】
6 :改質部
9 :セルスタック(燃料電池部)
10 :点火部
11 :燃焼部
16 :熱交換部
19 :水タンク
24 :湯水循環部
25 :湯水冷却部(冷却器、熱媒体温度調節部)
26 :運転制御部
29 :湯水加熱部(加熱器、熱媒体温度調節部)
30 :貯留水加熱部
L6 :水供給路
L10 :迂回路