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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002594
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20231228BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q1/04
A61K8/29
A61K8/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101882
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】金澤 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】小坂 恭平
(72)【発明者】
【氏名】千葉 桐子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC012
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC372
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD022
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB11
4C083BB24
4C083CC13
4C083DD30
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する化粧料における有機顔料の退色を抑えて、すなわち、耐退色性に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】下記の成分を含有しており:(a)有機顔料、(b)二酸化チタン粒子、及び(c)油分、ここで、油分の見かけヨウ素価が、6.0~30.0である、化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含有しており:
(a)有機顔料、
(b)二酸化チタン粒子、及び
(c)油分、
前記油分の見かけヨウ素価が、6.0~30.0である、
化粧料。
【請求項2】
前記有機顔料が、赤色104号(1)を含む、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記油分が、飽和油と不飽和油との混合物を含む、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記油分が、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、オリーブ果実油、及びマカデミアナッツ油からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項5】
前記有機顔料の含有量が、0.001~20質量%である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項6】
前記二酸化チタン粒子の含有量が、0.1~20質量%である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項7】
前記油分の含有量が、50質量%以上である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項8】
成分(d)4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン、及び成分(e)リン脂質及び/又はその水素添加物を更に含み、かつ
前記成分(e)の含有量の前記成分(d)の含有量に対する割合が、1.0未満である、
請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項9】
油性化粧料である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項10】
口唇化粧料である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、例えばメーキャップ化粧料には、その美的役割を果たす目的のために、通常、様々な顔料が配合されている。
【0003】
しかしながら、それら顔料は、紫外線や酸化に対して非常に不安定であり、化粧料の色調が変化し、また損なわれて、化粧料としての質が低下するという問題があった。特に、口紅やアイシャドウ等の化粧料でよく使われている赤色有機顔料はその褪色が著しく、かつその褪色が化粧料の色調に及ぼす影響が大きい。
【0004】
そこで、有機顔料を含む化粧料において、有機顔料、特に赤色有機顔料の耐光性、すなわち耐褪色性を向上させることが強く望まれていた。
【0005】
このような問題に対して、例えば特許文献1では、4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタンと、ステアリン酸カルシウムと、リン脂質及び/又はその水素添加物とが配合された、有機顔料を含むメーキャップ化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-200378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
口紅やアイシャドウ等の化粧料には、白色顔料又は紫外線散乱剤として二酸化チタン粒子を配合することが多い。
【0008】
本発明者らは、二酸化チタン粒子と共に、有機顔料、特に、赤色104号(1)を配合する化粧料では、赤色104号(1)の退色が顕著であることを見出した。
【0009】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する化粧料における有機顔料の退色を抑えること、すなわち、耐退色性に優れた化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0011】
〈態様1〉
下記の成分を含有しており:
(a)有機顔料、
(b)二酸化チタン粒子、及び
(c)油分、
前記油分の見かけヨウ素価が、6.0~30.0である、
化粧料。
〈態様2〉
前記有機顔料が、赤色104号(1)を含む、態様1に記載の化粧料。
〈態様3〉
前記油分が、飽和油と不飽和油との混合物を含む、態様1又は2に記載の化粧料。
〈態様4〉
前記油分が、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、オリーブ果実油、及びマカデミアナッツ油からなる群より選択される少なくとも1種を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様5〉
前記有機顔料の含有量が、0.001~20質量%である、態様1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様6〉
前記二酸化チタン粒子の含有量が、0.1~20質量%である、態様1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様7〉
前記油分の含有量が、50質量%以上である、態様1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様8〉
成分(d)4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン、及び成分(e)リン脂質及び/又はその水素添加物を更に含み、かつ
前記成分(e)の含有量の前記成分(d)の含有量に対する割合が、1.0未満である、
態様1~7のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様9〉
油性化粧料である、態様1~8のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様10〉
口唇化粧料である、態様1~9のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する化粧料における有機顔料の退色を抑えることができる。
【0013】
また、本発明の化粧料は、高温で保存された後の不飽和油に固有の匂い問題も抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0015】
《化粧料》
本発明の化粧料は、
下記の成分を含有しており:
(a)有機顔料、
(b)二酸化チタン粒子、及び
(c)油分、
前記油分の見かけヨウ素価が、6.0~30.0である、
化粧料
である。
【0016】
理論に限定されるものではないが、二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する場合の有機顔料の退色は、次のメカニズムによるものと推測される。すなわち、化粧料中の二酸化チタン粒子は、光照射を受けてラジカルを発生させ、そして、赤色104号(1)等の有機顔料は、このラジカルによる攻撃を受けて、退色してしまうと考えられる。
【0017】
このような退色問題に対して、油分に含まれる不飽和部分(例えば、二重結合)によって、二酸化チタン粒子からのラジカルを消費させることができ、結果として、赤色104号(1)等の有機顔料の退色を抑制できると考えられる。
【0018】
本発明において、油分に含まれる不飽和部分の尺度として、「油分の見かけヨウ素価」を用いる。油分の見かけヨウ素価の値が大きければ多いほど、化粧料全体に対する不飽和部分の割合が多いことを示す。本発明者らの鋭意研究によれば、本発明の化粧料において、油分の見かけヨウ素価が6.0以上である場合には、赤色104号(1)等の有機顔料の退色を抑制できることが見出された。また、本発明者らの更なる鋭意研究によって、油分の見かけヨウ素価を30.0以下に抑えると、高温で化粧料を保存した後の不飽和油に固有の匂いも抑制できることが見出された。
【0019】
なお、化粧料が1種類のみの油分を含む場合には、「油分の見かけヨウ素価」は、その油分のヨウ素価と化粧料全体に対するその油分の重量割合との積である。
【0020】
すなわち例えば、化粧料中に油分として油分Aのみが含まれる場合には、油分Aのヨウ素価を「a」とし、化粧料全体に対する油分Aの含有率を「x質量%」とすると、この化粧料の「油分の見かけヨウ素価」は、以下の式(1)から求めることができる:
油分の見かけヨウ素価=a×x% …(1)
【0021】
また、化粧料が2種類以上の油分を含む場合には、「油分の見かけヨウ素価」は、個々の油分のヨウ素価と化粧料全体に対するその油分の重量割合との積を、すべての油分について合計した値である。
【0022】
すなわち例えば、化粧料中に2種類の異なる油分AとBが含まれる場合には、油分Aのヨウ素価を「a」とし、化粧料全体に対する油分Aの含有率を「x質量%」とし、また、油分Bのヨウ素価を「b」とし、化粧料全体に対する油分Bの含有率を「y質量%」とすると、この化粧料の「油分の見かけヨウ素価」は、以下の式(2)から求めることができる:
油分の見かけヨウ素価=a×x%+b×y% …(2)
【0023】
なお、各油分のヨウ素価は、100gの油分試料に付加することができるヨウ素(I)のグラム数であり、日本工業規格(JIS) K0070:1992に準じた試験によって測定することができる。
【0024】
以下では、本発明の化粧料に含有されうる各成分について詳細に説明する。
【0025】
〈成分(a) 有機顔料〉
本発明の化粧料に含有されうる有機顔料としては、特に限定されず、通常化粧料に使用できるものであってよく、より具体的には、例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号、赤色3号、赤色104号(1)、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等が挙げられる。本発明の化粧料には、これらの有機顔料を1種又は2種以上を含むことができる。特に、赤色有機顔料、中でも赤色104号(1)を含む場合には、本発明の効果がより顕著である。ここで、赤色104号(1)(又は「赤色104号」と記す)は、桃色に着色することのできる着色料であり、「フロキシンB」とも称する。
【0026】
本発明の化粧料において、有機顔料の含有量は、特に限定されず、例えば、化粧料全体に対して、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.50質量%以上、1.0質量%以上、1.1質量%以上、1.2質量%以上、1.3質量%以上、1.4質量%以上、1.5質量%以上、1.6質量%以上、1.7質量%以上、1.8質量%以上、1.9質量%以上、2.0質量%以上、2.1質量%以上、2.2質量%以上、2.3質量%以上、2.4質量%以上、又は2.5質量%以上であってよく、また、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は5.0質量%以下であってよい。
【0027】
〈成分(b) 二酸化チタン粒子〉
本発明の化粧料に含有されうる二酸化チタン粒子としては、特に限定されず、通常、化粧料に使用できるものであってよく、例えば、無機顔料(例えば、白色顔料)又は紫外線散乱剤として使用する二酸化チタン粒子であってよい。
【0028】
本発明において、二酸化チタン粒子は、そのまま用いてもよく、疎水化処理したものを用いてもよい。したがって、二酸化チタン粒子は、表面の少なくとも一部が他の材料、例えばシリコーン等で被覆処理されていてもよい。
【0029】
本発明の化粧料において、二酸化チタン粒子の含有量(なお、二酸化チタン粒子が被覆されている場合には、二酸化チタン粒子の含有量には、被覆処理材の重量を含む)は、特に限定されず、例えば、化粧料に対して、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.50質量%以上、1.0質量%以上、1.1質量%以上、1.2質量%以上、1.3質量%以上、1.4質量%以上、1.5質量%以上、1.6質量%以上、1.7質量%以上、1.8質量%以上、1.9質量%以上、2.0質量%以上、2.1質量%以上、2.2質量%以上、2.3質量%以上、2.4質量%以上、又は2.5質量%以上であってよく、また、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は5.0質量%以下であってよい。
【0030】
なお、二酸化チタン粒子が有機材料及び/又は無機材料である被覆処理材で被覆処理されている場合、一般的に被覆処理材の被覆量は、二酸化チタン粒子の全体の20質量%以内であることが多い。
【0031】
〈成分(c) 油分〉
本発明の化粧料に含有されうる油分は、1種類以上の不飽和油を含んでもよく、飽和油と不飽和油との混合物を含んでもよい。不飽和油のみによる匂いの発生懸念を解消する観点や「油分の見かけヨウ素価」の調節等の観点からは、油分は、飽和油と不飽和油との混合物を含むことが好ましい。なお、本発明において、「飽和油」は、ヨウ素価が5.0以下の油分として定義することができ、また「不飽和油」は、ヨウ素価が5.0超の油分として定義することができる。
【0032】
本発明において、油分の見かけヨウ素価が6.0~30.0の範囲になるように1種類以上の不飽和油を適宜に採用してもよく、又は、飽和油と不飽和油との混合物の種類及び含有量によって、油分の見かけヨウ素価が6.0~30.0の範囲になるように適宜に調整してもよい。なお、本発明において、油分の見かけヨウ素価は、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10.0以上、11.0以上、12.0以上、13.0以上、14.0以上、15.0以上、16.0以上、17.0以上、又は18.0以上であってよく、また30.0以下、25.0以下、又は20.0以下であってよい。
【0033】
本発明において、油分は、例えば植物油、又は合成油であってよく、また、その形状としては、例えば、固形状、半固形状、又は液体状であってよい。
【0034】
より具体的には、油分としては、例えば、油脂類、脂肪酸エステル類、脂肪酸類、炭化水素油、ワックス・ロウ類、硬化油類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、油性ゲル化剤類、極性油等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
油脂類としては、例えば、オリーブ果実油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、ホホバ油等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
脂肪酸エステル類としては、例えば、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリル、又はラノリン脂肪酸フィトステリル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
脂肪酸類としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、又はオレイン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン、水添ポリブテン、ポリデセン、又は水添ポリデセン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
ワックス・ロウ類としては、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モクロウ、ミツロウ、又はゲイロウ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
高級アルコール類としては、例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、又はオクチルドデカノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
シリコーン類としては、例えば、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、又はフッ素変性ポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
フッ素系油剤類としては、例えば、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、又はパーフルオロポリエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
油性ゲル化剤類としては、例えば、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、又はステアリン酸カルシウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
極性油としては、例えば、IOBが、0.10以上、0.15以上、0.20以上、0.22以上、又は0.24以上の極性油を挙げることができる。IOBの上限値としては特に制限はないが、例えば、0.50以下、0.45以下、又は0.40以下とすることができる。ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。
【0045】
このような極性油としては、例えば、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ(カプリル/カプリン)酸グリセリル、セバシン酸ジエチルヘキシル、オクチルドデカノール、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、オキシステアリン酸オキシステアリル、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、トリオクタノイン、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヒマシ油、セバシン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、又はトリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
上述した中でも、油分の見かけヨウ素価を6.0~30.0に調整しやすい観点から、油分は、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル(ヨウ素価:35~60)、オリーブ果実油(ヨウ素価:79~88)、及びマカデミアナッツ油(ヨウ素価:70~80)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0047】
本発明の化粧料において、油分の含有量は、化粧料に対して、例えば50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってよく、また99質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0048】
〈成分(d) 4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン〉
本発明の化粧料は、任意に、成分(d)4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタンを更に含んでよい。
【0049】
4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタンは、以下の構造式(I)で表されるジベンゾイルメタン誘導体であり、油溶性紫外線吸収剤として基礎化粧品やメ-キャップ化粧料において一般的に用いられている:
【化1】
【0050】
この4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタンは市販されており、例えばParsol 1789(Givandan製)のような市販品を本発明において用いることができる。
【0051】
本発明の化粧料において、成分(d)を含む場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、化粧料全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、また、%以下、7.5質量%以下、7.0質量%以下、6.5質量%以下、6.0質量%以下、5.5質量%以下、5.0質量%以下、4.5質量%以下、4.0質量%以下、3.5質量%以下、3.0質量%以下、又は2.5質量%以下であってよい。
【0052】
〈成分(e) リン脂質及び/又はその水素添加物〉
本発明の化粧料は、任意に、成分(e)リン脂質及び/又はその水素添加物を更に含んでよい。
【0053】
本発明において、リン脂質及び/又はその水素添加物は、天然若しくは合成のリン脂質、又はそれらの水素添加物であってよい。また、リン脂質は、化粧料の原料として用いられるものであってよく、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール等、又はこれらのリゾ化物等が挙げられる。
【0054】
本発明の化粧料に含有されうるリン脂質及び/又はその水素添加物としては、特に限定されず、例えば大豆、トウモロコシ、ナタネ等の植物、又は微生物から抽出した天然のリン脂質含有物や、それらを水素添加したもの、更には合成によって得られた又は天然から単離又は分画等した、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール等のリン脂質の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0055】
また、本発明で用いられるリン脂質及び/又はその水素添加物は、好ましくはホスファチジルエタノールアミンを10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは18質量%以上含んでよい。例えば、大豆レシチン、特に日清オイリオ(株)から市販されている水素添加大豆リン脂質であるベイシスLP-20H(ホスファチジルエタノールアミン含量18~25質量%)は、本発明において好適に用いることができる。
【0056】
本発明の化粧料において、成分(e)を含む場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、化粧料全体に対して、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、又は0.10質量%以上であってよく、また、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.0質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。なお、本発明において、「リン脂質及び/又はその水素添加物の含有量」は、本発明の化粧料がリン脂質及びその水素添加物の両方を含む場合には、それらの合計含有量を指す。
【0057】
また、本発明の化粧料が、上記成分(d)及び(e)を同時に含むことが好ましく、この際に、成分(e)(リン脂質及び/又はその水素添加物)の含有量の成分(d)(4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン)の含有量に対する割合が1.0未満であることが好ましく、より具体的には、0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、0.55以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、0.35以下、0.30以下、0.25以下、0.20以下、0.15以下、0.10以下、0.09以下、0.08以下、0.07以下、0.06以下、0.05以下、又は0.04以下であってよく、また、この割合は、0超、0.01以上、0.02以上、0.03以上、又は0.04以上であってよい。
【0058】
〈その他の任意成分〉
本発明の化粧料は、上述した成分のほかに、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を1種類以上更に含んでよい。
【0059】
本発明において、その他の任意成分としては、例えば界面活性剤、水、保湿剤、高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の効果を損なわない限りその他の任意成分を適宜配合し、目的とする化粧料の類型に応じて常法により製造することができる。また、上述した有機顔料の他、通常化粧料に用いられる他の任意の色材を本発明の効果を損なわない限り含んでいてよい。
【0060】
〈化粧料の用途〉
本発明の化粧料は、その剤型には特に限定されず、例えば油性型、乳化型、又は粉末型等任意の剤型が挙げられる。これらの剤型のうち、油性型において、特に有機顔料の退色が問題となりやすいため、本発明の化粧料は、油性化粧料であることが好ましい。なお、油性化粧料とは、液状、半固形状、又は固形状の油剤や油溶性化合物である油分を連続相とする化粧料を指す。
【0061】
また、本発明の化粧料は、その用途には特に限定されず、例えば口唇化粧料として好ましく用いられる。
【0062】
口唇化粧料としては、例えば口紅、グロス、リップトリートメント、リップクリーム、リップ下地が挙げられ、その中でも特に口紅、リップクリームであることが好ましい。
【0063】
また、そのほかに、本発明の化粧料は、例えばファンデーション、チーク、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロー、ネールトリートメント等としても使用することができる。
【実施例0064】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0065】
《実施例1~3及び比較例1~7》
以下の表1に示す構成成分及びそれぞれの配合量に基づいて、実施例1~3及び比較例1~7の口紅試料を作製した。
【0066】
(退色の評価方法)
作製した各試料に対して、キセノンフェードメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、25℃にて、120MJ/mで30時間照射して、照射前後の各試料の色差(ΔE)を計測した。各試料の有機顔料の退色を評価し、それぞれの評価結果を表1に示す。
【0067】
より具体的には、比較例1の色差(ΔE)を基準として、その他の試料(実施例1~3及び比較例2~7)の色差を「ΔE」とする場合に、以下の式によって、その他の試料の「退色抑制率」を求めた。なお、「退色抑制率」の値が大きいほど、試料の退色が少なく、つまり、耐退色性に優れていることを意味する。
試料の退色抑制率=[(ΔE-ΔE)/ΔE]×100%
【0068】
【表1】
【0069】
表1から明らかなように、油分の見かけヨウ素価が6.0~30.0である実施例1~3の試料の退色抑制率は、比較例の退色抑制率よりも高かった。これは、実施例1~3の試料が耐退色性に優れていることを意味している。
【0070】
(高温保存後の匂い評価)
実施例1~3の試料に対して、50℃で、恒温槽にて1週間保存した後に、不飽和油由来の匂いについて評価した。評価は、以下に示す基準によって行い、評価結果を表2に示す。
【0071】
-評価基準-
室温(25℃)における1週間保管品(作製直後のものと同様)と比較して、同等の匂いを感じた場合:「A」;
室温における1週間保管品と比較して、匂いの変化を感じた場合:「B」;
室温における1週間保管品と比較して、はっきりと匂いの変化を感じた場合:「C」;
室温における1週間保管品と比較せずに、試料のみで使用しても匂いの変化が分かった場合:「D」。
【0072】
また、実施例1~3と比較するために、表2に示す参考例1~3に対しても同様に評価し、評価結果を表2に示す。なお、参考例1~3は、以下に示すようにそれぞれ100%の不飽和油である:
参考例1:マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル(ヨウ素価:47.5)
参考例2:オリーブ果実油(ヨウ素価:83.5)
参考例3:マカデミアナッツ油(ヨウ素価:75.0)
【0073】
【表2】
【0074】
表2から明らかなように、油分の見かけヨウ素価が30.0以下である実施例1~3の試料はいずれも、参考例1~3に比べて、50℃で保存した後の不飽和油の固有の匂い問題を抑制できていることが分かった。
【0075】
《参考例4及び5》
二酸化チタン粒子による有機顔料の退色を検証するために、下記表3に示す構成成分及び配合量に基づいて、参考例4及び5の口紅試料を作製した。上記の評価方法と同様に、比較例1を基準として、参考例4及び5の試料の退色を評価し、結果は表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3からは、二酸化チタン粒子を含まない参考例4及び5は、二酸化チタン粒子を含むことを除いて同様な比較例1に比べて、退色抑制率が大きかったこと、すなわち有機顔料の退色が少なかったことが分かる。
【0078】
したがって、二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する場合の化粧料において、有機顔料の退色は、二酸化チタン粒子の存在によるものであると示唆された。
【0079】
【表4】