(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025940
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】放熱ニット網
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20240220BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240220BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20240220BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F28D15/04 D
F28D15/02 101H
F28D15/04 C
F28D15/02 L
H01L23/46 B
H05K7/20 Q
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129328
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】505406659
【氏名又は名称】陳 明正
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 明正
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA11
5E322DB02
5E322EA11
5E322FA04
5F136CC12
5F136CC14
5F136FA01
(57)【要約】
【課題】複数の縦織糸をまとめて位置決めすることで、縦糸ユニット間の間隔距離が不揃いになりにくく、毛細管現象による作動流体の移動を改善でき、作動流体の相変化サイクルを加速でき、迅速な放熱効果を達成できる放熱ニット網を提供すること。
【解決手段】第一方向B1に沿う複数の横糸ユニット31、及び第二方向B2に沿う複数の縦糸ユニット32を有し、横糸ユニット31と縦糸ユニット32とは重なり、第一方向B1と第二方向B2とは異なる方向であり、横糸ユニット31は横織糸311を有し、縦糸ユニット32は少なくとも2本の縦織糸321を有し、縦織糸321は互いにねじれて結合され、縦織糸間には、間隔を開けて設置される複数のツイスト点が形成される。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱ニット網であって、第一方向に沿って延伸し間隔を開けて設置される複数の横糸ユニット、及び第二方向に沿って延伸し間隔を開けて設置される複数の縦糸ユニットを有し、前記縦糸ユニットと前記横糸ユニットとは重なり、前記第一方向が向かう方向と前記第二方向が向かう方向とは異なり、
前記横糸ユニットはそれぞれ前記第一方向に沿って延伸する横織糸を有し、前記縦糸ユニットはそれぞれ少なくとも2本の縦織糸を有し、前記縦織糸は並列し、前記第二方向へと延伸して前記横糸ユニットと交錯し、前記縦糸ユニットの縦織糸は互いにねじれて、複数のツイスト点を形成し、前記ツイスト点は互いに間隔を開けて設置される
ことを特徴とする、放熱ニット網。
【請求項2】
前記放熱ニット網は、ベイパーチャンバー内に取り付けて使用され、
前記ベイパーチャンバーは、少なくとも2個のケース、前記ケースに取り囲まれて前記放熱ニット網を設置するための収容設置空間、及び前記収容設置空間内に充填される作動流体を有することを特徴とする、請求項1に記載の放熱ニット網。
【請求項3】
前記第二方向が向かう方向と気化した前記作動流体が上昇する方向とは略同じであることを特徴とする、請求項2に記載の放熱ニット網。
【請求項4】
前記各横糸ユニットと前記各縦糸ユニットは、金属で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の放熱ニット網。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造に関し、特に放熱ニット網に関する。
【背景技術】
【0002】
テクノロジーの進歩とライフスタイルの変化に伴い、電子製品は軽量、コンパクト、多機能、高性能へと発展しており、しかも全体的な構造はより複雑になっている。
機能が増え性能が向上するに伴い、電子製品が発する熱も増加している。
生じた熱をタイムリーに放熱できなければ、過熱により電子製品の作動性能に影響が及び、深刻な場合には損壊する可能性さえある。
そのため、放熱ニット網は、電子製品が生じる熱の排除に広く応用されており、なくてはならない熱処理部品の一つである。
【0003】
図1、
図1A及び
図2Aに示す通り、従来の放熱ニット網1は、ベイパーチャンバー2内に取り付けて使用する。
ベイパーチャンバー2は、2個のケース21、各ケース21に取り囲まれ、しかも放熱ニット網1を設置する収容設置空間22、及び収容設置空間22内に充填される作動流体23を有する。
【0004】
放熱ニット網1は、第一方向A1に沿って延伸し、しかも間隔を開けて設置される複数の横糸ユニット11、及び第二方向A2に沿って延伸し、しかも間隔を開けて設置される複数の縦糸ユニット12を有する。
しかも、各縦糸ユニット12と各横糸ユニット11は上下に重なり、これにより各横糸ユニット11と各縦糸ユニット12の間には、孔隙13が形成される。
各横糸ユニット11と各縦糸ユニット12は、単一の糸が設置されて構成される。つまり各横糸ユニット11は一本の横織糸111のみを有し、各縦糸ユニット12は一本の縦織糸121のみを有する。
また、第一方向A1と第二方向A2とは異なる方向である。
各ケース21と電子製品(図示なし)が接触することで、作動流体23と電子製品は熱交換を行い、同時に作動流体23は、放熱ニット網1から上昇し還流することで、相変化サイクルを生じ、これを繰り返すことで熱伝導の効果を達成する。
【0005】
しかし、実際の使用により、以下の状況が発見された。
各横糸ユニット11と各縦糸ユニット12の重なり位置には、滞留点14が形成される。
図2Aに示す通り、作動流体23は蒸発後に、各縦糸ユニット12に沿って上昇し、滞留点14にぶつかると左右両側へと移動する。
図2Bに示す通り、作動流体23が水平位置に等しい各横糸ユニット11と各縦糸ユニット12にいっぱいに充填されると、作動流体23は続けて上昇する。
図2C及び2Dに示す通り、作動流体23は上昇後に、滞留点14にぶつかると、左右両側へと移動し、水平位置に等しい各横糸ユニット11と各縦糸ユニット12が作動流体23を吸収後、作動流体23は続けて上昇する。
作動流体23が放熱ニット網1全体に充満するまで、これを繰り返す。
【0006】
しかし、作動流体23は放熱ニット網1により、同期した全面的な拡散を達成できず、作動流体23は、上向き、左向き、右向きで同期して流動拡散を行うことができない。
このため、作動流体23の上昇と還流の速度は緩慢で、放熱効率は良くない。
もし、各縦糸ユニット12を、2本或いは2本以上を単位として編むと、各縦糸ユニット12は、少なくとも2本の縦織糸121を有し、毛細管現象の効果を改善することができる。
しかし、同一縦糸ユニット12の縦織糸121は固定を欠くことでバラバラになり、しかも任意の2本の縦糸ユニット12間の間隔距離の維持は難しい。
これにより、作動流体23はさらに滞留しやすくなり、上昇と還流に対する抵抗力は拡大し、改善が待たれるところである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の放熱ニット網には、作動流体の上昇及び還流速度が緩慢で放熱効果が悪く、各縦糸ユニットを2本以上の縦織糸とし毛細管現象による伝導効果を改善しても、作動流体が堆積しやすくなり上昇と還流の抵抗力が拡大するという欠点がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、複数の縦織糸をまとめて位置決めすることで、任意の2本の縦糸ユニット間の間隔距離の大きさが不揃いになる状況を回避でき、毛細管現象による作動流体の移動を効果的に改善でき、作動流体の相変化サイクルを加速でき、迅速な放熱効果を達成できる放熱ニット網を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の放熱ニット網は、第一方向に沿って延伸し間隔を開けて設置される複数の横糸ユニット、及び第二方向に沿って延伸し間隔を開けて設置される複数の縦糸ユニットを有し、前記縦糸ユニットと前記横糸ユニットとは重なり、前記第一方向が向かう方向と前記第二方向が向かう方向とは異なり、前記横糸ユニットはそれぞれ前記第一方向に沿って延伸する横織糸を有し、前記縦糸ユニットはそれぞれ少なくとも2本の縦織糸を有し、前記縦織糸は並列し、前記第二方向へと延伸して前記横糸ユニットと交錯し、同時に前記縦糸ユニットの縦織糸は互いにねじれて複数のツイスト点を形成し、前記ツイスト点は互いに間隔を開けて設置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、横糸ユニットと縦糸ユニットが重なり、しかも各縦糸ユニットは、少なくとも2本の縦織糸を有し、同時に各縦糸ユニットの縦織糸はねじれ結合によりツイスト点を形成することで、任意の2本の縦糸ユニット間の間隔距離は保持され、縦糸ユニット間の間隔距離の大きさが不揃いになる状況を回避でき、同時に毛細管現象による作動流体の移動を効果的に改善でき、しかも作動流体は迅速に上昇及び還流し、相変化サイクルを行い、こうして迅速な放熱効果を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2A】従来の放熱ネットにおける作動流体の第1作動段階を示す模式図である。
【
図2B】従来の放熱ネットにおける作動流体の第2作動段階を示す模式図である。
【
図2C】従来の放熱ネットにおける作動流体の第3作動段階を示す模式図である。
【
図2D】従来の放熱ネットにおける作動流体の第4作動段階を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態を示す放熱ネットの模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る放熱ネットにおける作動流体の作動状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0013】
図3及び
図3Aに示す通り、本実施形態において、放熱ニット網3は、ベイパーチャンバー4内に取り付けて使用される。
ベイパーチャンバー4は、2個のケース41、各ケース41に取り囲まれ、しかも放熱ニット網3を設置するための収容設置空間42、及び、収容設置空間42内に充填される作動流体43とを有する。
【0014】
放熱ニット網3は、第一方向B1に沿って延伸し、しかも間隔を開けて設置される複数の横糸ユニット31、及び第二方向B2に沿って延伸し、しかも間隔を開けて設置される複数の縦糸ユニット32を有する。
縦糸ユニット32と横糸ユニット31は、互いに重なり、相互に交錯し、これにより横糸ユニット31と縦糸ユニット32の間には、複数の孔隙33が形成される。
また、第一方向B1と第二方向B2とは異なる方向である。
本実施形態では、第一方向B1と第二方向B2は相互に直角を呈している。
また、第二方向B2と作動流体43の蒸発後の上昇方向とは略同じ方向であり、作動流体43の冷卻凝結後の還流方向と第二方向B2とは略逆方向である。
【0015】
各横糸ユニット31は、横織糸311を有し、各縦糸ユニット32は、少なくとも2本の縦織糸321を有する。
縦織糸321は並列し、しかも第二方向B2へと延伸する過程において、各横糸ユニット31と相互に交錯し、同時に各縦糸ユニット32の縦織糸321は、互いにねじれて結合する。
これにより、縦織糸321はねじれて相互に緊密に絡まり、しかも複数のツイスト点322を形成する。ツイスト点322は互いに間隔を開けて設置される。
当然、各縦糸ユニット32の縦織糸321の設置数量は、実際のニーズに応じて調整され、図に示す例では、各縦糸ユニット32が3本の縦織糸321を有する。
また、横糸ユニット31と縦糸ユニット32は、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなど高導熱係数の金属材質で形成されている。
【0016】
図3及び
図5に示す通り、ベイパーチャンバー4は使用時、面接触方式で電子製品(図示なし)上に設置される。
これにより、ベイパーチャンバー4のケース41と電子製品とは直接接触する。
ベイパーチャンバー4は、電子製品が作動時に大量の熱を発する箇所に設置され、また作動流体43は、電子製品が作動時に上昇する温度に応じて選択する。
電子製品が作動を開始して熱を生じると、ベイパーチャンバー4の、電子製品に接触するケース41は、熱を受けて温度が上がる。
この時、作動流体43は熱を受けて気化する。
気化した作動流体43は、続いて、放熱ニット網3に沿って、高温位置から低温位置へと移動する。
即ち、作動流体43は、各縦織糸321と各横織糸311から、第二方向B2へと上方に移動する。
【0017】
図4に示す通り、気化した作動流体43は上昇の過程において、各縦糸ユニット32の縦織糸321に沿って上方へと移動するだけでなく、同時に各横糸ユニット31の横織糸311に沿って、左右両側へも移動する。
こうして、同期した全面拡散を達成する。即ち、作動流体43は、放熱ニット網3により、同期して上向き、左向き、右向きの流動拡散を行い、作動流体43は迅速に上昇し、電子製品が生じた熱を低温位置へと迅速に伝導し、及び外部と熱交換を行うのに有利である。
さらに、各縦糸ユニット32は、少なくとも2本の縦織糸321により形成されるため、毛細管現象による作動流体43の移動を効果的に改善でき、しかも縦織糸321が相互に絡み合いねじれて形成される各ツイスト点322は、任意の2本の縦糸ユニット32間の間隔距離の保持に有効であり、且つ、各縦織糸321は緊密に結合し、簡単にバラバラになることはない。
【0018】
このように、各縦織糸321間に生じる不要な間隙を大幅に回避でき、抵抗力発生の低下に有利である。
同時に、前述の間隙間への作動流体43の滞留を回避できる。
作動流体43は熱を排除後は凝結して再び液化し、各縦織糸321と各横織糸311に沿って再び下方へと移動する。
よって、作動流体43は、迅速な上昇と還流により相変化サイクルを行い、電子製品が生じた熱を迅速に排出する。
これにより、迅速な放熱効果を達成し、電子製品の安定作動を維持し、電子製品の過熱による損壊の回避を確保できる。
【0019】
前述した本発明の実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明により保護される権利範囲は特許請求の範囲を基準とする。
【符号の説明】
【0020】
(従来の構造)
1 放熱ニット網
11 横糸ユニット
12 縦糸ユニット
13 孔隙
14 滞留点
111 横織糸
121 縦織糸
A1 第一方向
A2 第二方向
2 ベイパーチャンバー
21 ケース
22 収容設置空間
23 作動流体
(本発明)
3 放熱ニット網
31 横糸ユニット
32 縦糸ユニット
33 孔隙
311 横織糸
321 縦織糸
322 ツイスト点
4 ベイパーチャンバー
41 ケース
42 収容設置空間
43 作動流体
B1 第一方向
B2 第二方向