(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025949
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】プログラム及び集団音再生方法
(51)【国際特許分類】
G06F 16/65 20190101AFI20240220BHJP
A63F 13/54 20140101ALI20240220BHJP
【FI】
G06F16/65
A63F13/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129346
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】595000427
【氏名又は名称】株式会社コーエーテクモゲームス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】白石 健太
(72)【発明者】
【氏名】隆藤 唯信
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA05
5B175FA03
(57)【要約】
【課題】処理負荷を抑えて臨場感のある集団音の再生を行う新たな仕組みを提供すること。
【解決手段】情報処理装置を、プレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトが動作する仮想空間において再生された個別音の再生履歴を記録するように構成された再生履歴記憶部、前記再生履歴に基づき、前記個別音の再生場所を複数のクラスタに分類するように構成されたクラスタリング部、前記クラスタを再生領域として集団音を再生するように構成された集団音再生部、として機能させるためのプログラムが提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置を、
プレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトが動作する仮想空間において再生された個別音の再生履歴を記録するように構成された再生履歴記憶部、
前記再生履歴に基づき、前記個別音の再生場所を複数のクラスタに分類するように構成されたクラスタリング部、
前記クラスタを再生領域として集団音を再生するように構成された集団音再生部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項2】
前記クラスタリング部は、前記個別音の種類ごとに記録されている複数の前記再生履歴のそれぞれに基づき、前記個別音の再生場所を複数のクラスタに分類するように構成されており、
前記集団音再生部は、前記クラスタを再生領域として、前記個別音の種類に対応した前記集団音を再生するように構成されている
請求項1記載のプログラム。
【請求項3】
前記クラスタリング部は、所定時間の間に記録された前記再生履歴に基づいて、前記個別音の再生場所を複数のクラスタに分類する処理を、前記所定時間が経過するごとに繰り返し行うように構成されている
請求項1又は2記載のプログラム。
【請求項4】
前記集団音再生部は、前記プレイヤオブジェクトの位置が一の前記クラスタの再生領域に含まれる場合に、一の前記クラスタの前記集団音を全方位から再生するように構成されている
請求項1記載のプログラム。
【請求項5】
前記情報処理装置を、
前記クラスタを表示領域としてエフェクトを表示するように構成されたエフェクト表示部、
として更に機能させる請求項1記載のプログラム。
【請求項6】
前記情報処理装置を、
前記クラスタを前記仮想空間における戦闘範囲として決定するように構成された戦闘制御部、
として更に機能させる請求項1記載のプログラム。
【請求項7】
情報処理装置が、
プレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトが動作する仮想空間において再生された個別音の再生履歴を記録する再生履歴記憶ステップと、
前記再生履歴に基づき、前記個別音の再生場所を複数のクラスタに分類するクラスタリングステップと、
前記クラスタを再生領域として集団音を再生する集団音再生ステップと、
を行う集団音再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム及び集団音再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲームプログラムの中には、演出の手法として、ノンプレイヤキャラクタ(NPC)がざわめいている雰囲気を表現する音声(ガヤ音声の一例)を発生するものがある。臨場感のあるガヤ音声の再生を行う音声再生方法は、従来から知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば臨場感のある仮想空間を実現するために、NPCなどによるボイス及びサウンドエフェクト(SE)などの個別音を再生すると共に、集団としての音(集団音)を再生する場合がある。特許文献1では、仮想空間において動作する複数の動的オブジェクトの全部又は一部を、クラスタリングによって、複数のクラスタに分け、クラスタのそれぞれに音声を対応付けて音声を再生している。
【0005】
しかしながら、特許文献1では仮想空間において動作する複数の動的オブジェクトを基にガヤ音を再生するため、動的オブジェクトの数が多くなると、臨場感のあるガヤ音声の再生を行うための処理が重くなるという問題があった。
【0006】
本開示は、処理負荷を抑えて臨場感のある集団音の再生を行う新たな仕組みを提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、情報処理装置を、プレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトが動作する仮想空間において再生された個別音の再生履歴を記録するように構成された再生履歴記憶部、前記再生履歴に基づき、前記個別音の再生場所を複数のクラスタに分類するように構成されたクラスタリング部、前記クラスタを再生領域として集団音を再生するように構成された集団音再生部、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、処理負荷を抑えて臨場感のある集団音の再生を行う新たな仕組みを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る情報処理システムの一例の構成図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】仮想空間における集団音を音発生オブジェクトに基づいて再生する処理の一例の説明図である。
【
図5】仮想空間における集団音を音発生オブジェクトに基づいて再生する処理の一例の説明図である。
【
図6】仮想空間における集団音を音発生オブジェクトに基づいて再生する処理の一例の説明図である。
【
図7】仮想空間における集団音を音発生オブジェクトに基づいて再生する処理の一例の説明図である。
【
図8】本実施形態における再生履歴の一例について説明する図である。
【
図9】再生履歴に記録されたヒット音及びやられボイスの再生場所の一例を示す説明図である。
【
図10】クラスタリングにより分類されたクラスタの一例を示す説明図である。
【
図11】本実施形態に係る情報処理装置の処理の一例のフローチャートである。
【
図12】情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
[システム構成]
まず、一実施形態に係るシステム構成について
図1を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る情報処理システムの一例の構成図である。一実施形態に係る情報処理システムは例えば
図1(A)又は
図1(B)に示すように構成される。
図1(A)は、情報処理装置10により構成される情報処理システムの一例である。
図1(B)は、情報処理装置10とサーバ装置14とがネットワーク18を介して通信可能に接続された構成の情報処理システムの一例である。
【0012】
図1(A)の情報処理装置10はユーザが操作するコンピュータである。
図1(A)の情報処理装置10は、ユーザからの操作をタッチパネル、コントローラ、キーボード、又はマウス等で受け付けて、操作に応じた情報処理を実行し、実行結果を表示及び音などにより出力する。
【0013】
また、
図1(B)の情報処理装置10及びサーバ装置14は、
図1(A)と同様なコンピュータである。サーバ装置14は情報処理装置10との間でデータを送受信し、情報処理装置10がユーザから受け付けた操作に応じた情報処理を実行し、実行結果を情報処理装置10に提供する。情報処理装置10はサーバ装置14から提供された実行結果を表示及び音などにより出力する。
【0014】
サーバ装置14はクラウドコンピュータにより実現してもよい。なお、
図1(B)に示したサーバ装置14の個数は、1つに限定されるものではなく、2つ以上で分散処理してもよい。サーバ装置14は情報処理装置10へのプログラム(アプリケーション)などのダウンロード処理、ユーザのログイン処理、又は各種データベースを管理する処理、などに利用してもよい。なお、
図1のシステム構成は一例である。
【0015】
図1に示した情報処理システムは、仮想空間内にプレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトを生成して、仮想空間内におけるプレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトを制御するゲームシステム、ソーシャルネットワーキングサービスシステム、メタバースシステムなど、音発生オブジェクトによる個別音及び集団音を再生する様々な情報処理システムに適用可能である。
【0016】
プレイヤオブジェクトは、ユーザが仮想空間内で操作するプレイヤキャラクタなどの表示オブジェクトである。また、音発生オブジェクトはプレイヤオブジェクト以外の表示オブジェクトであって、音発生オブジェクトの行動や状態などを表す個別音及び集団音を仮想空間内で発生させる。なお、音発生オブジェクトには、他のユーザが仮想空間内で操作するプレイヤオブジェクトが含まれていてもよい。
【0017】
仮想空間がゲーム空間であれば、音発生オブジェクトは、例えば味方キャラクタ及び敵キャラクタである。また、仮想空間がゲーム空間であれば、個別音は例えば攻撃ヒット時のサウンドエフェクト(以下、ヒット音と呼ぶ)や攻撃ヒット時のボイス(以下、やられボイスと呼ぶ)などである。個別音は、例えば足音、鎧の音、又は突撃時のボイスなどであってもよい。
【0018】
また、仮想空間がゲーム空間であれば、集団音は例えば剣戟の音である。集団音は、例えば地響き、行軍音、又は喊声などであってもよい。なお、音発生オブジェクトが発生する音は、情報処理装置10が再生してユーザに聴かせる音となる。例えば単体の音発生オブジェクトが個別音として足音を発生させる場合、集団の音発生オブジェクトは集団音として地響き及び行軍音を発生させる。
【0019】
[ハードウェア構成]
本実施形態に係る情報処理装置10は、例えば
図2に示すように構成される。サーバ装置14の構成は情報処理装置10と同様であるため、説明を省略する。
図2は本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0020】
図2の情報処理装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)100、記憶装置102、通信装置104、入力装置106、及び出力装置108を有する。CPU100はプログラムに従って情報処理装置10を制御する。記憶装置102は、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージである。記憶装置102はCPU100で実行するプログラム及びデータを記憶する。
【0021】
通信装置104は、通信を制御するネットワーク回路などの通信デバイスである。入力装置106は、タッチパッド、コントローラ、マウス、キーボード、カメラ、マイクなどの入力デバイスである。また、出力装置108はディスプレイ、スピーカなどの出力デバイスである。タッチパネルは入力装置106の一例であるタッチパッドと出力装置108の一例であるディスプレイとを組み合わせることで実現される。
図2のハードウェア構成は一例である。例えば情報処理装置10は、スマートフォン、携帯ゲーム機、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、タブレット端末、家庭用ゲーム装置、業務用ゲーム装置等であってもよい。また、情報処理装置10はグラフィックプロセッサユニット(GPU)及びデジタルサウンドプロセッサ(DSP)を有していてもよい。
【0022】
[機能構成]
以下では、
図1(A)に示した情報処理装置10が仮想空間内の個別音及び集団音に関する処理を行う例を説明するが、
図1(B)に示した情報処理装置10とサーバ装置14とが連携して仮想空間内の個別音及び集団音に関する処理を行うようにしてもよい。
【0023】
図3は、情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
図3に示す情報処理装置10は、制御部20、操作受付部22、出力制御部24、通信部26、及び記憶部28を有する構成である。
【0024】
図3の記憶部28は、プログラム40、オブジェクト情報42、及び再生履歴44を記憶する。プログラム40は仮想空間内にプレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトを生成して、仮想空間内におけるプレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトを制御する処理を情報処理装置10に実行させる。また、プログラムは仮想空間内の個別音及び集団音に関する処理を情報処理装置10に実行させる。オブジェクト情報42はプログラム40が利用する表示オブジェクトに関する情報の一例であって、例えばプレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトに関する情報である。
【0025】
再生履歴44は、仮想空間において再生した個別音の再生場所及び音の種類を記録した情報である。再生履歴44は、音の種類ごとに記録した情報であってもよい。また、再生履歴44は、仮想空間において再生した個別音のうち、後述のクラスタリングに利用する個別音の再生場所及び音の種類を記録した情報であってもよい。記憶部28は、記憶装置102により実現されてもよいし、通信部26により通信可能に接続された記憶装置により実現されてもよい。
【0026】
制御部20は情報処理装置10の全体の制御を行う。制御部20はCPU100がプログラム40に記載された処理を実行することにより実現される。制御部20は、仮想空間制御部50、オブジェクト制御部52、クラスタリング部54、個別音再生部56、及び集団音再生部58を有する構成である。
【0027】
仮想空間制御部50は、仮想のゲーム空間などの仮想空間を生成し、生成した仮想空間を制御する。仮想空間は二次元空間であってもよいし、三次元空間であってもよい。オブジェクト制御部52は、仮想空間にプレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトを生成して、仮想空間内におけるプレイヤオブジェクト及び音発生オブジェクトを制御する。
【0028】
クラスタリング部54は、再生履歴44に基づき、個別音の再生場所を複数のクラスタに分類して、クラスタを集団音の再生領域に設定する。なお、クラスタリング部54の処理の詳細は後述する。
【0029】
個別音再生部56は、個別音を再生し、再生した個別音の再生場所及び音の種類を再生履歴44として記憶部28に記憶する。集団音再生部58は、クラスタリング部54が分類したクラスタを再生領域として集団音を再生する。なお、集団音再生部58の処理の詳細は後述する。
【0030】
操作受付部22は入力装置106に対するユーザの各種操作を受け付ける。出力制御部24は制御部20の制御に従って各種画面を出力装置108に出力する。また、出力制御部24は制御部20の制御に従って仮想空間の個別音及び集団音などの音を出力装置108から出力する。
【0031】
操作受付部22はCPU100がプログラム40に従って入力装置106を制御することにより実現される。また、出力制御部24は、CPU100がプログラム40に従って出力装置108を制御することにより実現される。入力装置106に対するユーザの各種操作とは、CPU100に処理を実行させるため、ユーザが操作受付部22を操る操作をいう。出力制御部24は、制御部20の制御に従い、各種画面及び音の出力を行う。
【0032】
通信部26は、ネットワーク18等を介して通信する。通信部26はCPU100がプログラム40を実行し、通信装置104を制御することにより実現される。
【0033】
[処理]
以下、本実施形態に係る情報処理システムの処理について説明する。ここでは、仮想空間がゲームにおける戦場の例を説明する。仮想空間の戦場では、個別音とは別に、集団音を再生することで、戦場の臨場感を更に表現できる。
【0034】
例えば戦場の臨場感を表現するには、仮想空間の画像(見た目)と音との整合性、集団音の再生領域の表現、及び戦場の状況に応じたリアルタイムな表現を満たしている必要がある。仮想空間の見た目と音との整合性は、兵士などの音発生オブジェクトの動き、戦闘の規模感、及びプレイヤオブジェクトとの距離感と、再生される音との整合性である。集団音の再生領域の表現は、点音源ではなく、再生領域の範囲から聞こえる表現である。戦場の状況に応じたリアルタイムな表現は、戦場の状況の変化に追従する更新頻度の表現である。
【0035】
例えば仮想空間における集団音を音発生オブジェクトに基づいて再生する場合は、音発生オブジェクトの数が多くなるほど、
図4~
図7を用いて説明するように、処理負荷が重くなる。
【0036】
図4~
図7は、仮想空間における集団音を音発生オブジェクトに基づいて再生する処理の一例の説明図である。ここでは、音発生オブジェクトを基に、剣戟の音を集団音として再生領域から再生する処理の流れについて説明する。
【0037】
図4はプレイヤオブジェクト1000及び音発生オブジェクト1002が動作する仮想空間のイメージを示している。
図4ではプレイヤオブジェクト1000の位置を「□」で表している。音発生オブジェクト1002の位置を「●」で表している。
【0038】
まず、仮想空間の戦場にいる音発生オブジェクト1002からプレイヤオブジェクト1000との距離が所定距離よりも近い音発生オブジェクト1002を、例えば
図5に示すように抽出する。
図5では、プレイヤオブジェクト1000との距離が所定距離よりも近い音発生オブジェクト1002の位置を「●」で表し、プレイヤオブジェクト1000との距離が所定距離よりも近くない音発生オブジェクト1002の位置を点線の「○」で表している。
図4から
図5のように音発生オブジェクト1002を抽出する処理は、仮想空間の戦場にいる音発生オブジェクト1002の数が多いほど、処理負荷が重くなる。
【0039】
次に、
図5のプレイヤオブジェクト1000との距離が所定距離よりも近い音発生オブジェクト1002から交戦中の音発生オブジェクト1002を抽出する。
図6では、交戦中の音発生オブジェクト1002を「a」及び「b」の「○」で表している。例えば
図6の「a」の「○」はプレイヤオブジェクト1000の敵である音発生オブジェクト1002を表している。
図6の「b」の「○」はプレイヤオブジェクト1000の味方である音発生オブジェクト1002を表している。
【0040】
交戦中の音発生オブジェクト1002は、音発生オブジェクト1002のモーションから判断することができるが、以下のように条件が複雑化しやすい。
【0041】
例えば攻撃モーション中の音発生オブジェクト1002を交戦中の音発生オブジェクト1002と判断する場合は、一人で攻撃モーションを行っている場合も交戦中と判断されてしまう。攻撃ターゲットがおり、攻撃モーション中の音発生オブジェクト1002を交戦中の音発生オブジェクト1002と判断する場合は、攻撃が当たらなくても、剣戟の音が鳴ってしまう。
【0042】
次に、
図6の交戦中の音発生オブジェクト1002の位置に応じて例えば
図7に示すように集団音の再生領域を決定する。
図7では、部隊単位で、例えば最も離れている交戦中の音発生オブジェクト1002の位置の4点を結んだ多角形を、集団音の再生領域とした例を示している。
図7の例では、プレイヤオブジェクト1000の前方左側に交戦中の音発生オブジェクト1002が多いため、プレイヤオブジェクト1000の前方左側からの剣戟の音を大きく、激しく鳴らしたいが、プレイヤオブジェクト1000の前方から満遍なく剣戟の音が鳴ってしまう。
【0043】
そこで、本実施形態では個別音の再生履歴44に基づき、仮想空間における集団音の再生領域を決定して、集団音を再生する。
図8は、本実施形態における再生履歴の一例について説明する図である。
図8に示すように、情報処理装置10は再生履歴44として個別音の一例であるヒット音及びやられボイスの再生場所を記録する。
【0044】
図8(A)は、近距離攻撃によりヒット音及びやられボイスが再生されている様子を示している。
図8(A)の近距離攻撃により再生されたヒット音及びやられボイスは再生履歴44として記録される。
【0045】
図8(B)は、遠距離攻撃によりヒット音及びやられボイスが再生されている様子を示している。
図8(B)の遠距離攻撃により再生されたヒット音及びやられボイスは再生履歴44として記録される。
【0046】
図8(C)は、敵味方が入り乱れた攻撃によりヒット音及びやられボイスが再生されている様子を示している。
図8(C)の敵味方が入り乱れた攻撃により再生されたヒット音及びやられボイスは再生履歴44として記録される。情報処理装置10は所定時間(例えば0.5秒など)の再生履歴44を記録すると、再生履歴44に記録された例えば
図9に示すヒット音及びやられボイスの再生場所1004をクラスタリングして、
図10に示すような複数のクラスタに分類する。
【0047】
図9は再生履歴に記録されたヒット音及びやられボイスの再生場所の一例を示す説明図である。また、
図10はクラスタリングにより分類されたクラスタの一例を示す説明図である。
【0048】
ヒット音及びやられボイスの再生場所1004のクラスタリングは、例えばk-means法(k平均法)を用いることができる。ヒット音及びやられボイスの再生場所1004のクラスタリングは、k-means++法を用いてもよい。例えばk-means法及びk-means++法を用いることで、情報処理装置10は
図9の再生場所1004を
図10のクラスタA~Cに分類できる。
【0049】
情報処理装置10は、クラスタリングにより分類されたクラスタA~Cを集団音の一例である剣戟の音の再生領域とする。クラスタAの再生領域は、含まれる再生場所1004の数が多いため、強い剣戟の音が集団音として再生される。また、クラスタBの再生領域は、含まれる再生場所1004の数が普通であるため、中くらいの剣戟の音が集団音として再生される。さらに、クラスタCの再生領域は、含まれる再生場所1004の数が少ないため、弱い剣戟の音が集団音として再生される。
【0050】
なお、情報処理装置10はステートと呼ばれるサウンドエフェクトの再生手法を使用することで、クラスタを構成する要素数(再生履歴44の数など)に応じた段階的な剣戟の音の表現(段階的な集団音の表現)が可能となる。
【0051】
情報処理装置10はクラスタリングにより分類されたクラスタを再生領域として集団音を再生する。情報処理装置10は、プレイヤオブジェクト1000の位置がクラスタの内部に含まれていれば、全方位から聞こえるように集団音を再生する。また、情報処理装置10はプレイヤオブジェクト1000の位置がクラスタの内部に含まれていなければ、クラスタの方向から聞こえるように集団音を再生する。
【0052】
本実施形態では、音発生オブジェクト1002の数に基づいて表現できない以下のような集団音であっても表現できる。例えば少ない音発生オブジェクト1002が激しい戦闘を行っている場合であれば、記録される再生履歴44の数が多くなり、激しい剣戟の音を集団音として再生できる。
【0053】
また、例えば多い音発生オブジェクト1002であっても激しい戦闘を行っていない場合であれば、記録される再生履歴44の数が少なくなり、弱い剣戟の音を集団音として再生できる。
【0054】
情報処理装置10は、例えば
図11に示す手順で、本実施形態に係る集団音再生方法の処理を実行する。
図11は本実施形態に係る情報処理装置の処理の一例のフローチャートである。
【0055】
ステップS100において、情報処理装置10は再生履歴44として記録する個別音の種類を決定する。再生履歴44として記録する個別音の種類は、予め設定されていてもよいし、ユーザが設定してもよい。再生履歴44として記録する個別音の種類は、再生する集団音と対応付けられている。
【0056】
例えば、個別音の種類の一例であるヒット音及びやられボイスは、集団音の一例である剣戟の音と対応付けられている。また、個別音の種類の一例である足音は、集団音の一例である地響き及び行軍音と対応付けられている。また、個別音の種類の一例である突撃時のボイスは、集団音の一例である喊声と対応付けられている。
【0057】
ステップS102において、情報処理装置10は再生履歴44の記録を開始する。情報処理装置10は所定時間(例えば0.5秒など)が経過するまで、ステップS102の処理を繰り返す。これにより、記憶部28には所定時間の間に仮想空間において再生された例えばヒット音及びやられボイスなどの個別音の再生場所及び音の種類が再生履歴44として記録される。
【0058】
所定時間が経過すると、情報処理装置10は次の所定時間の再生履歴44の記録を開始すると共に、ステップS104からS106の処理に進む。ステップS106において情報処理装置10はステップS102で記録した所定時間の再生履歴44に基づき、所定時間の間に仮想空間で再生した個別音の再生場所1004を例えば
図10に示したようにクラスタリングする。
【0059】
ステップS108において、情報処理装置10はステップS106で分類したクラスタを集団音の再生領域に設定する。ステップS110において、情報処理装置10は例えば
図10に示すように設定した再生領域から剣戟の音などの集団音の再生を開始する。
【0060】
また、ステップS112の処理に進み、情報処理装置10は音を再生する場面が終了したか否かを判定し、音を再生する場面が終了していなければ、ステップS102の処理に戻る。したがって、情報処理装置10は音を再生する場面が終了するまでステップS102~S112の処理を繰り返す。音を再生する場面が終了すると、情報処理装置10は
図11に示したフローチャートの処理を終了する。
図11のフローチャートの処理を実行することで、例えば刻一刻と変化する戦場のような仮想空間において、再生領域を変化させながら見た目に合った集団音を再生できる。
【0061】
本実施形態によれば、再生履歴44として記録する個別音の種類(例えばヒット音及びやられボイスなど)を決定しておけば、所定時間ごとに記録される再生履歴44に基づいて集団音の再生領域を設定し、記録した個別音の種類に対応した集団音を再生できる。
【0062】
なお、情報処理装置10は、記録する個別音の種類の異なる複数の再生履歴44を記録することで、複数の再生履歴44のそれぞれに基づき、
図11のフローチャートの処理を実行し、複数種類の集団音の再生領域を設定するようにしてもよい。
【0063】
また、
図11のフローチャートは所定時間ごとに記録される再生履歴44を用いる例を示したが、例えば再生履歴44に寿命を設け、寿命が尽きた再生履歴を順次消去する仕組みを設けてもよい。さらに、情報処理装置10は、再生履歴44の寿命に応じた重みを付けることで、より直近に再生された個別音の影響が大きくなるように、クラスタリングを行ってもよい。
【0064】
情報処理装置10は、ステップS106のクラスタリングについて、クラスタ数を調整できるようにしてもよい。例えば情報処理装置10はプレイヤオブジェクト1000から近い再生場所1004を細かく分類し、遠い位置の再生場所1004を大まかに分類するようにしてもよい。
【0065】
本実施形態によれば、処理負荷を抑えて集団音の再生領域を設定し、臨場感のある集団音の再生を行う仕組みを提供できる。
【0066】
[他の実施形態]
本実施形態の情報処理装置10は、例えば
図12に示す機能構成であってもよい。
図12は情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
図12の機能構成は、
図3の機能構成にエフェクト表示部60及び戦闘制御部62を追加したものである。
【0067】
エフェクト表示部60は、クラスタリング部54が分類したクラスタをエフェクトの表示領域として設定し、土煙、火の粉、霧などのエフェクトを表示する。表示領域に表示するエフェクトの種類は、例えば個別音の種類によって決定する。
【0068】
戦闘制御部62は、戦闘系の個別音の再生場所1004によりクラスタリング部54が分類したクラスタを、戦闘範囲として設定してもよい。設定した戦闘範囲は、例えば戦闘制御部62が制御する音発生オブジェクト1002の行動(戦闘範囲に音発生オブジェクト1002が集まるように移動するなど)の決定の指針とすることができる。また、設定した戦闘範囲は、ステータス強化などの影響範囲などとして利用できる。
【0069】
また、情報処理装置10はクラスタリング部54が分類したクラスタごとに、ボイスの再生数の制限を設けてもよい。ボイスの再生数の制限を設けることで、情報処理装置10は同じボイスが短時間で多数、鳴らないように制御できる。例えば情報処理装置10は弱ダメージボイスが1秒間に10回、鳴っていたら別のダメージボイスを確率で再生するようにしてもよい。また、情報処理装置10は、1フレームで同じサウンドエフェクトを5回まで再生できるなど、同時再生数を制限してもよい。
【0070】
さらに、情報処理装置10はクラスタリング部54が分類したクラスタごとに、ヒット数に応じて雰囲気作りのボイスの再生をしたり、BGMの音量を調整したり、するようにしてもよい。例えば情報処理装置10は、ヒットが続いた場合に、ユーザを褒めるようなボイスを再生してもよい。また、情報処理装置10は個別音の再生数が多いほど、BGMの音量を上げるようにしてもよい。
【0071】
なお、本実施形態では個別音の再生場所1004の分類にクラスタリングを利用する例を説明したが、個別音の再生場所1004をグループ分けできるのであれば、他の手法を用いるようにしてもよい。例えば個別音の再生場所1004のグループ分けを、主成分分析を用いて行うようにしてもよい。
【0072】
開示した一実施形態の情報処理装置10、サーバ装置14は例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。また、上記した複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 情報処理装置
14 サーバ装置
18 ネットワーク
20 制御部
44 再生履歴
50 仮想空間制御部
52 オブジェクト制御部
54 クラスタリング部
56 個別音再生部
58 集団音再生部
60 エフェクト表示部
1000 プレイヤオブジェクト
1002 音発生オブジェクト
1004 再生場所