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特開2024-25956導電性高分子の製造方法、導電性高分子分散液の製造方法、及びキャパシタの製造方法
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  • 特開-導電性高分子の製造方法、導電性高分子分散液の製造方法、及びキャパシタの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025956
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】導電性高分子の製造方法、導電性高分子分散液の製造方法、及びキャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20240220BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20240220BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08G61/12
H01G9/00 290H
H01G9/028 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129354
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】神戸 康平
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝則
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032BA04
4J032BB01
4J032BC13
4J032BD02
(57)【要約】
【課題】静電容量の低下を抑制し、等価直列抵抗が低減したキャパシタの製造方法、並びにその製造方法に適した導電性高分子及び導電性高分子分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】弁金属の多孔質体からなる陽極11と、前記弁金属の酸化物からなる誘電体層12と、前記誘電体層の、前記陽極と反対側に設けられた導電物質製の陰極13と、前記誘電体層及び前記陰極の間に形成された少なくとも1層の固体電解質層14とを具備するキャパシタ10の製造方法であり、重量平均分子量Mwが5万以上30万以下であるポリアニオンを含む反応液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体を含有する導電性高分子分散液を得る工程と、前記誘電体層の表面に、前記導電性高分子分散液を塗布し、乾燥させることにより、前記固体電解質層を形成する工程を有するキャパシタの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量Mwが5万以上30万以下であるポリアニオンを含む反応液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体を形成する工程を含む、導電性高分子の製造方法。
【請求項2】
前記ポリアニオンが、スルホ基を有する繰り返し単位を含む、請求項1に記載の導電性高分子の製造方法。
【請求項3】
前記重合を開始するための触媒及び酸化剤を添加する直前の前記反応液の硫酸イオンの濃度が、150ppm以上1400ppm以下である、請求項2に記載の導電性高分子の製造方法。
【請求項4】
前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項3に記載の導電性高分子の製造方法。
【請求項5】
前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1に記載の導電性高分子の製造方法。
【請求項6】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、分散媒と、を含有する導電性高分子分散液の製造方法であって、
請求項1~5の何れか一項に記載の導電性高分子の製造方法により前記導電性複合体を形成するとともに、前記反応液を構成する溶媒を前記分散媒として用いることにより、導電性高分子分散液を得る工程を含む、導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項7】
前記反応液中に酸化剤及び触媒のうち少なくとも一方を添加して前記重合を促進させ、前記導電性複合体を形成し、前記導電性高分子分散液を得た後、
前記導電性高分子分散液に含まれる前記酸化剤及び前記触媒のうち少なくとも一方を除去することにより、前記導電性高分子分散液を精製する工程を含む、請求項6に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項8】
前記除去する方法が、前記酸化剤及び前記触媒のうち少なくとも一方を含む前記導電性高分子分散液と、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂のうち少なくとも一方とを接触させる方法である、請求項7に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項9】
弁金属の多孔質体からなる陽極と、前記弁金属の酸化物からなる誘電体層と、前記誘電体層の、前記陽極と反対側に設けられた導電物質製の陰極と、前記誘電体層及び前記陰極の間に形成された固体電解質層とを具備するキャパシタの製造方法であり、
請求項6に記載の製造方法によって導電性高分子分散液を得る工程と、
前記誘電体層の表面に、前記導電性高分子分散液が含まれる塗料を塗布し、乾燥させることにより、前記固体電解質層を形成する工程とを有する、キャパシタの製造方法。
【請求項10】
前記誘電体層の表面に塗布する前記塗料に含まれる前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンの含有量が、前記導電性高分子分散液の総質量に対して、1.0質量%以上2.0質量%以下である、請求項9に記載のキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子の製造方法、導電性高分子分散液の製造方法、及びキャパシタの製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を含む導電性高分子分散液から形成された固体電解質層を誘電体層と陰極との間に配置したキャパシタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-87615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性高分子分散液を用いて製造された従来のキャパシタには、静電容量の増大および等価直列抵抗の低減が求められている。
本発明は、静電容量の低下を抑制し、等価直列抵抗が低減したキャパシタの製造方法、並びにその製造方法に適した導電性高分子及び導電性高分子分散液の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1] 重量平均分子量Mwが5万以上30万以下であるポリアニオンを含む反応液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体を形成する工程を含む、導電性高分子の製造方法。
[2] 前記ポリアニオンが、スルホ基を有する繰り返し単位を含む、[1]に記載の導電性高分子の製造方法。
[3] 前記重合を開始するための触媒及び酸化剤を添加する直前の前記反応液の硫酸イオンの濃度が、150ppm以上1400ppm以下である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子の製造方法。
[4] 前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電性高分子の製造方法。
[5] 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、[1]~[4]の何れか一項に記載の導電性高分子の製造方法。
[6] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、分散媒と、を含有する導電性高分子分散液の製造方法であって、[1]~[5]の何れか一項に記載の導電性高分子の製造方法により前記導電性複合体を形成するとともに、前記反応液を構成する溶媒を前記分散媒として用いることにより、導電性高分子分散液を得る工程を含む、導電性高分子分散液の製造方法。
[7] 前記反応液中に酸化剤及び触媒のうち少なくとも一方を添加して前記重合を促進させ、前記導電性複合体を形成し、前記導電性高分子分散液を得た後、前記導電性高分子分散液に含まれる前記酸化剤及び前記触媒のうち少なくとも一方を除去することにより、前記導電性高分子分散液を精製する工程を含む、[6]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[8] 前記除去する方法が、前記酸化剤及び前記触媒のうち少なくとも一方を含む前記導電性高分子分散液と、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂のうち少なくとも一方とを接触させる方法である、[6]又は[7]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[9] 弁金属の多孔質体からなる陽極と、前記弁金属の酸化物からなる誘電体層と、前記誘電体層の、前記陽極と反対側に設けられた導電物質製の陰極と、前記誘電体層及び前記陰極の間に形成された固体電解質層とを具備するキャパシタの製造方法であり、[6]~[8]の何れか一項に記載の製造方法によって導電性高分子分散液を得る工程と、前記誘電体層の表面に、前記導電性高分子分散液が含まれる塗料を塗布し、乾燥させることにより、前記固体電解質層を形成する工程とを有する、キャパシタの製造方法。
[10] 前記誘電体層の表面に塗布する前記塗料に含まれる前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンの含有量が、前記導電性高分子分散液の総質量に対して、1.0質量%以上2.0質量%以下である、[9]に記載のキャパシタの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、重量平均分子量を特定の範囲に調整したポリアニオンを用いることによって、静電容量の低下を抑制し、等価直列抵抗(ESR)が低減したキャパシタを製造することができる。
【0007】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【0008】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のキャパシタの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪導電性高分子の製造方法≫
本発明の第一態様は、重量平均分子量Mwが5万以上30万以下であるポリアニオンを含む反応液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体を形成する工程(重合工程)を含む、導電性高分子の製造方法である。
【0011】
≪導電性高分子分散液の製造方法≫
本発明の第二態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、分散媒と、を含有する導電性高分子分散液の製造方法であって、第一態様の製造方法により前記導電性複合体を形成するとともに、前記反応液を構成する溶媒を前記分散媒として用いることにより、導電性高分子分散液を得る工程を含む、導電性高分子分散液の製造方法である。
【0012】
[重合工程]
本工程において、前記モノマーと、特定の重量平均分子量のポリアニオンを含む反応液を調製し、前記モノマーを重合させることにより、π共役系導電性高分子を形成する。前記反応液中で形成されたπ共役系導電性高分子にポリアニオンが自然にドープされ、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体が形成される。
【0013】
導電性複合体を構成するポリアニオンにおいては、一部のアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性が高く、有機溶剤分散性が低い。
導電性複合体を形成したポリアニオンが有する全てのアニオン基の個数を100モル%としたとき、余剰のアニオン基は、30モル%以上90モル%以下が好ましく、45モル%以上75モル%以下がより好ましい。
【0014】
<ポリアニオン>
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能し、π共役系導電性高分子の導電性を向上させ得る。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基(スルホン酸基)、またはカルボキシ基であることが好ましい。つまり、ポリアニオンはスルホ基又はカルボキシ基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。
ポリアニオンが有するアニオン基は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。ポリアニオンを構成する繰り返し単位(重合前のモノマー)は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
ポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
本工程に用いるポリアニオンは1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0015】
ポリアニオンの重量平均分子量(Mw)は、8万以上30万以下が好ましく、9万以上25万以下がより好ましく、10万以上20万以下がさらに好ましい。
ここで、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により測定し、既知の重量平均分子量のプルランを標準物質として求めた質量基準の平均分子量(質量平均分子量と呼んでもよい)である。
重量平均分子量が上記の好適な範囲であると、静電容量の低下を抑制しつつ、等価直列抵抗が低減したキャパシタの製造に適した導電性高分子が得られる。
この効果が得られるメカニズムは、PSSなどのポリアニオンが高分子であればあるほどPEDOTなどのπ共役系導電性高分子の分散安定性が良くなるが等価直列抵抗は上昇する。低分子にすればするほどPEDOTなどのπ共役系導電性高分子同士が凝集し、分散安定性も悪くなるがその反面、等価直列抵抗は低減する。つまりPEDOTなどのπ共役系導電性高分子の最適な凝集を形成させるにはPSSなどのポリアニオンを適切な分子量の選定により最適な凝集状態の実現させることが重要だということが推測される。
【0016】
特定の重量平均分子量のポリアニオンを合成する方法として、例えば、ポリアニオンを構成するモノマーを重合する酸化剤の添加量を調整する方法が挙げられる。具体的には、酸化剤の濃度を高くすると、モノマーの重合により形成されるポリアニオンの重量平均分子量を小さくすることができる。この方法により、例えば、重量平均分子量Mwが1万以上100万以下のポリスチレンスルホン酸を得ることができる。
【0017】
<π共役系導電性高分子>
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0018】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
本工程で重合するπ共役系導電性高分子を構成するモノマーは、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0019】
前記反応液には触媒を添加してもよい。前記触媒は、前記モノマーの重合を促進させるものであれば特に制限されず、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。なかでも、室温におけるモノマーの重合が安定に進むことから、鉄を含む触媒を使用することが好ましい。
【0020】
前記反応液には前記触媒とともに、酸化剤を含有させることが好ましい。酸化剤は、前記モノマーを重合させることができる。酸化剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩が挙げられる。
前記酸化剤は予めイオン交換水に溶解した酸化剤溶液として、前記モノマー、前記ポリアニオン及び前記触媒を含む混合液S1に対してゆっくり添加し、重合を開始することが好ましい。
前記酸化剤溶液の濃度は、1.0質量%以上3.0質量%以下が好ましい。
前記酸化剤溶液を添加する前の前記混合液S1の体積をV1、前記酸化剤溶液の体積をV2としたとき、V1/V2で表される体積比は、5~20が好ましく、8~15がより好ましい。
前記混合液S1に前記酸化剤溶液の全てを添加する際、添加開始から添加終了までに要する時間は、1~8時間が好ましく、2~7時間がより好ましく、3~6時間がさらに好ましい。
前記酸化剤溶液を添加する前の前記混合液S1と、前記酸化剤溶液の各々の温度は、それぞれ独立に、5~30℃が好ましい。
【0021】
前記酸化剤溶液の全てを添加し終えて得られた反応液の温度は、5~30℃に保ち、重合反応を行うことが好ましい。
前記反応液における反応終了までに要する反応時間の目安は4~12時間であり、6~10時間で反応終了することが好ましい。重合反応の終了は、ガスクロマトグラフィーによってπ共役系導電性高分子を形成するモノマーが消失していることを確認することで知ることができる。
【0022】
前記混合液S1に含まれる前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比は、質量基準で(1:2)~(1:5)が好ましく、(1:2)~(1:4)がより好ましく、(1:2)~(1:3)がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、ポリアニオンによるドープ効果が充分に発揮され、導電性複合体の分散安定性がより向上する。
【0023】
前記混合液S1の総質量に対する前記モノマーの含有量は、例えば、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上1.0質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、重合反応を安定に進められるので、反応系に存在するポリアニオンとの複合化が容易に進む。
【0024】
前記混合液S1の総質量に対する前記ポリアニオンの含有量は、前記モノマーに対する前記含有比に基づいて設定されることが好ましい。例えば、0.3質量%以上10質量%以下が好ましく、0.6質量%以上6.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、目的の導電性複合体が容易に得られる。
【0025】
前記混合液S1に含有させるポリアニオンの重量平均分子量は前述の範囲であることが好ましい。
上記の好適な範囲であると、静電容量の低下を抑制しつつ、誘電正接及び等価直列抵抗が低減したキャパシタの製造に適した導電性高分子が得られる。
【0026】
酸化剤を全て添加し終えた前記反応液の総質量に対する、前記触媒の含有量は、例えば、前記反応液の総質量に対して、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.3質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、重合反応を安定に進められるので、ポリアニオンとの複合化が容易に進む。また、重合反応後に触媒を反応液から除去することも容易である。
【0027】
酸化剤を全て添加し終えた前記反応液の総質量に対する、前記酸化剤の添加量は、例えば、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.4質量%以上2.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、重合反応を安定に進められるので、ポリアニオンとの複合化が容易に進む。
【0028】
酸化剤を全て添加し終えた前記反応液の総質量に対する、前記モノマーの反応前の仕込み量は、例えば、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下がより好ましく、0.4質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、重合反応を安定に進められるので、反応系に存在するポリアニオンとの複合化が容易に進む。
【0029】
酸化剤を全て添加し終えた前記反応液の総質量に対する、前記ポリアニオンの反応前の仕込み量は、例えば、0.3質量%以上10質量%以下が好ましく、0.6質量%以上6.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、目的の導電性複合体が容易に得られる。
【0030】
前記ポリアニオンは水に対する溶解性が高いことから、前記反応液は水系分散媒を含むことが好ましい。水系分散媒は、少なくとも水を含み、さらに水溶性有機溶剤を含んでいてもよい。
【0031】
前記水系分散媒の総質量に対する水の含有割合は、例えば、60質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、80質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0032】
水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤である。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤から選択される1種以上が好ましい。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等の二価アルコールが挙げられる。
【0033】
本工程において、上述の通り、重量平均分子量Mwが5万以上30万以下であるポリアニオンを含む反応液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体を形成する際、前記重合を開始するための触媒及び酸化剤を添加する直前の前記反応液の硫酸イオン濃度は、150ppm以上1400ppm以下が好ましく、150ppm以上1200ppm以下がより好ましく、200ppm以上1000ppm以下がさらに好ましい。
触媒及び酸化剤添加前の反応液中の硫酸イオン濃度が上記の好適な範囲であると、静電容量の低下を抑制し、誘電正接及び等価直列抵抗が低減したキャパシタの製造に適した導電性高分子が得られる。このメカニズムの詳細は未解明であるが、触媒及び酸化剤の添加前の反応液中の硫酸イオン濃度がポリアニオンの凝集状態に影響し、結果として重合により形成される導電性複合体の分散・凝集状態に影響を与えていると推測される。
【0034】
(触媒及び酸化剤の除去)
触媒及び酸化剤を添加した反応液を用いた場合、反応後に得られた導電性高分子分散液から触媒及び酸化剤を除去することが好ましい。
除去する方法としては、例えば、イオン交換樹脂に導電性高分子分散液を接触させ、触媒及び酸化剤をイオン交換樹脂に吸着させる方法、導電性高分子分散液を限外ろ過することにより水系分散媒の置換とともに除去する方法等が挙げられる。このうち、イオン交換樹脂を使用する方法が簡便であるため好ましい。前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を併用することが好ましい。
【0035】
(分散処理)
導電性高分子分散液の使用に際しては、攪拌して導電性複合体の分散処理を施すことが好ましい。攪拌の方法は特に制限されず、スターラー等の剪断力が弱い攪拌であってもよいし、高圧ホモジナイザー等の高剪断力の分散機を用いて攪拌してもよいが、分散性を高める観点から高圧ホモジナイザー等を用いることが好ましい。
【0036】
分散処理時の導電性高分子分散液に含まれるπ共役系導電性高分子及びポリアニオンの濃度は、導電性複合体の分散性を高める観点から、導電性高分子分散液の総質量に対して、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0037】
以上の方法により、目的の導電性高分子を含む導電性複合体を形成することができる。
また、同時に、前記π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、分散媒と、を含む目的の導電性高分子分散液を得ることができる。
【0038】
≪キャパシタの製造方法≫
本発明の第三態様は、弁金属の多孔質体からなる陽極と、前記弁金属の酸化物からなる誘電体層と、前記誘電体層の、前記陽極と反対側に設けられた導電物質製の陰極と、前記誘電体層及び前記陰極の間に形成された固体電解質層とを具備するキャパシタの製造方法であり、第一態様で得た導電性高分子又は第二態様で得た導電性高分子分散液を用い、キャパシタを製造する方法である。
【0039】
本態様のキャパシタの製造方法は、前述した第二態様によって導電性高分子分散液を得る工程と、前記誘電体層の表面に、前記導電性高分子分散液を塗布し、乾燥させることにより、前記固体電解質層を形成する工程(成膜工程)とを有することが好ましい。
【0040】
まず、本態様によって製造することが可能なキャパシタの例について図面を参照して説明する。図1に示すキャパシタ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、弁金属の酸化物からなる誘電体層12と、誘電体層12の表面に形成された固体電解質層14と、最も表側に設けられた陰極13とを具備する。陰極13は誘電体層12及び固体電解質層14を間に挟んで、陽極11と反対側に設けられている。
【0041】
陽極11を構成する弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理してペレットにしたものが挙げられる。このように処理されたものは表面に凹凸が形成された多孔質体となる。
【0042】
本実施形態における誘電体層12は、陽極11の表面が酸化されて形成された層であり、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液などの電解液中にて、金属体の陽極11の表面を陽極酸化することで形成されたものである。陽極11と同様に誘電体層12にも凹凸が形成されている。
【0043】
本実施形態における陰極13としては、導電性ペーストから形成した導電層やアルミニウム箔など、導電物質製の金属層を使用することができる。
【0044】
本実施形態における固体電解質層14は、誘電体層12の表面に形成されている。固体電解質層14は、誘電体層12の表面の少なくとも一部を覆っており、誘電体層12の表面の全部を覆っていてもよい。
固体電解質層14の厚さは、一定でもよいし、一定でなくてもよく、例えば、1μm以上100μm以下の厚さが挙げられる。
【0045】
本態様のキャパシタの製造方法は、弁金属の多孔質体からなる陽極の表面を酸化して誘電体層を形成する工程(誘電体形成工程)と、前記誘電体層に対向する位置に陰極を配置する工程(陰極形成工程)と、前記誘電体層の表面の少なくとも一部に固体電解質層を形成する工程(成膜工程)と、を含むことが好ましい。以下、図1を参照して各工程を説明する。
【0046】
[誘電体形成工程]
本工程では、弁金属の多孔質体からなる陽極11の表面を酸化して誘電体層12を形成する。誘電体層12を形成する方法は、特に制限されず、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液、ホウ酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液などの化成処理用電解液中にて、陽極11の表面を陽極酸化する方法が挙げられる。
【0047】
[陰極形成工程]
本工程では、誘電体層12に対向する位置に陰極13を配置する。陰極13の配置方法は、特に制限されず、例えば、カーボンペースト、銀ペースト等の導電性ペーストを用いて陰極13を形成する方法、アルミニウム箔等の金属箔を誘電体層12に対向配置させる方法などが挙げられる。
【0048】
[成膜工程]
本工程では、誘電体層12の表面の少なくとも一部に、前述の第二態様で得た導電性高分子分散液が含まれる塗料を塗布し、乾燥させることにより、固体電解質層14を形成する。
【0049】
前記塗料の総質量に対するπ共役系導電性高分子及びポリアニオンの含有量は、0.1質量%以上3.0質量以下が好ましく、0.5質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、静電容量の低下を抑制しつつ、誘電正接及び等価直列抵抗が低減したキャパシタが得られ易い。
【0050】
前記塗料にはポリオール化合物が含まれていてもよい。ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、及びポリエチレングリコールから選択される1種以上が挙げられる。
【0051】
前記塗料中にポリオール化合物が含まれる場合、塗料の総質量に対するポリオール化合物の含有量は、例えば、1質量%以上25質量%が好ましく、10質量%以上20質量以下がより好ましい。
上記の範囲であるとキャパシタの静電容量の低下を抑制しつつ、誘電正接及び等価直列抵抗をより一層低減することができる。
【0052】
前記塗料には窒素含有芳香族性環式化合物が含まれていてもよい。その例として、ピロール、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、N-プロピルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1-アセチルイミダゾール、2-アミノベンズイミダゾール、2-アミノ-1-メチルベンズイミダゾール、2-ヒドロキシベンズイミダゾール、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール、ピリジン等が挙げられる。
【0053】
前記塗料中に窒素含有芳香族性環式化合物が含まれる場合、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部(つまり導電性複合体100質量部)に対して、5質量部以上50質量部以下が好ましく、10質量部以上40質量部以下がより好ましく、15質量部以上30質量部以下がさらに好ましい。
上記の範囲であるとキャパシタの静電容量の低下を抑制しつつ、誘電正接及び等価直列抵抗をより一層低減することができる。
【0054】
導電性高分子分散液の塗布方法としては、例えば、浸漬(ディップコーティング)、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、マイクログラビアコーティング等を適用することができる。これらのうち、陽極11を減圧下で導電性高分子分散液中に浸漬する方法が好ましい。浸漬方法であると、誘電体層12の表面の多孔質構造の内部にまで導電性高分子分散液を充分に塗布することができる。浸漬後に取り出して次の乾燥処理に進む。
【0055】
乾燥方法としては、例えば室温乾燥、熱風乾燥、遠赤外線乾燥等が挙げられる。これらの中でも熱風乾燥が好ましい。
乾燥温度としては、例えば100~180℃が好ましく、120~150℃がより好ましい。乾燥時間としては、例えば0.2~1時間が好ましい。
乾燥処理の後、常法によりキャパシタを組み立てればよい。
【0056】
[電解液]
組み立てたキャパシタは、従来と同様に電解液を備えていることが好ましい。
電解液用溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン等のアルコール系溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン等の硫黄系溶媒、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、水等が挙げられる。
電解質としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、蟻酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の有機酸;あるいは、硼酸、硼酸と多価アルコールより得られる硼酸の多価アルコール錯化合物;リン酸、炭酸、ケイ酸等の無機酸などをアニオン成分とし、1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等)、3級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等)、テトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)などをカチオン成分とした電解質;等が挙げられる。
【実施例0057】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造:Mw175000
820mlのイオン交換水に110gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め55mlの水に溶解した4.88gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを2時間滴下し、その溶液を4時間攪拌した。得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、陽イオン交換樹脂を入れ、ナトリウムイオンを除去した。得られたポリスチレンスルホン酸(PSS)水溶液の固形分は10質量%だった。またPSSについて、GPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムを用いて、昭和電工株式会社製プルランを標準物質として重量平均分子量を測定した結果、175000であった。またイオンクロマトグラフィーで測定した結果、PSS水溶液中のSO 2-量は3400ppmだった。
【0058】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸の製造:Mw150000
製造例1において、4.88gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを6.10gに変更した以外は同様にして製造した。また重量平均分子量を測定した結果、150000であった。 またイオンクロマトグラフィーで測定した結果、PSS水溶液中のSO 2-量は4100ppmだった。
【0059】
(製造例3)ポリスチレンスルホン酸の製造:Mw125000
製造例1において、4.88gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを7.32gに変更した以外は同様にして製造した。また重量平均分子量を測定した結果、125000であった。またイオンクロマトグラフィーで測定した結果、PSS水溶液中のSO 2-量は4900ppmだった。
【0060】
(製造例4)ポリスチレンスルホン酸の製造:Mw105000
製造例1において、4.88gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを8.54gに変更した以外は同様にして製造した。また重量平均分子量を測定した結果、105000であった。またイオンクロマトグラフィーで測定した結果、PSS水溶液中のSO 2-量は5800ppmだった。
【0061】
(製造例5)ポリスチレンスルホン酸の製造:Mw93000
製造例1において、4.88gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを9.76gに変更した以外は同様にして製造した。また重量平均分子量を測定した結果、93000であった。またイオンクロマトグラフィーで測定した結果、PSS水溶液中のSO 2-量は6470ppmだった。
【0062】
(製造例6)ポリスチレンスルホン酸の製造:Mw75000
製造例1において、4.88gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを14.64gに変更した以外は同様にして製造した。また重量平均分子量を測定した結果、75000であった。またイオンクロマトグラフィーで測定した結果、PSS水溶液中のSO 2-量は9440ppmだった。
【0063】
(製造例7)ポリスチレンスルホン酸の製造:Mw45000
製造例1において、4.88gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを19.52gに変更した以外は同様にして製造した。また重量平均分子量を測定した結果、45000であった。またイオンクロマトグラフィーで測定した結果、PSS水溶液中のSO 2-量は13300ppmだった。
【0064】
(製造例8)ポリスチレンスルホン酸の製造:Mw262000
製造例1において、4.88gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを1.22gに変更した以外は同様にして製造した。また重量平均分子量を測定した結果、262000であった。またイオンクロマトグラフィーで測定した結果、PSS水溶液中のSO 2-量は1170ppmだった。
【0065】
<硫酸イオン濃度の測定方法>
上記の各製造例において、PSS水溶液中の硫酸イオン濃度をイオンクロマトグラフィーによって測定する具体的な方法は、Integrion RFIC(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて使用カラム:Dionex IonPac AS19、検出器:電気伝導度検出器により測定を行った。またカラム温度30℃、標準物質として陰イオン混合標準液IVを使用し、試料を0.03g、超純水50gで薄めたものを電気伝導度によりピークを測定した。定量値の算出方法は濃度-ピーク面積 の検量線により試料溶液の濃度を算出し、これを元の試料中の量(濃度)に換算し、測定値とした。
【0066】
[実施例1]
(PEDOT-PSS水分散液の製造)
5.71gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た147.2gのPSS水溶液と、741.5gのイオン交換水とを混合した。この混合溶液中の硫酸イオン量は500ppmであった。
得られた混合溶液を20℃に保ち攪拌しながら、26.65gのイオン交換水に溶かした硫酸第二鉄1.60gの触媒溶液を添加し、78.9gのイオン交換水に溶かした8.68gのペルオキソ二硫酸ナトリウムの酸化剤溶液を2時間かけて滴下し、その後4時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を入れ、残留したペルオキソ二硫酸ナトリウムと硫酸第二鉄を除去し、濾過によりイオン交換樹脂を除去した。その後高圧ホモジナイザーにより分散を行った。これによりPEDOT:PSS=1:2.5(質量比)の青色のPEDOT-PSS水分散液を得た。その固形分(不揮発成分)は1.49質量%だった。
【0067】
上記で得た85.27gのPEDOT-PSS水分散液と、9.0gのジエチレングリコールと、5.5gのPEG600と、0.23gのイミダゾールとを混合し、塗料Aを得た。
【0068】
(キャパシタ用素子の製造)
エッチドアルミニウム箔(陽極箔)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸アンモニウム10質量%水溶液中50Vの電圧を印加し、化成(酸化処理)して、アルミニウム箔の両面に誘電体層を形成して陽極箔を得た。次に、陽極箔の両面に、陰極リード端子を溶接させた対向アルミニウム陰極箔を、セルロース製のセパレータを介して積層し、これを円筒状に巻き取ってキャパシタ用素子を得た。
【0069】
(キャパシタの製造)
上記で得た塗料Aにキャパシタ用素子を減圧下で浸漬した後、120℃の熱風乾燥機により20分間乾燥する工程を2回実施して、誘電体層表面上に、導電性高分子複合体を含む固体電解質層を形成させた。さらに、アルミニウム製のケースに、キャパシタ用素子を装填し、封口ゴムで封止しキャパシタを作製した。
得られたキャパシタについて、LCRメータ2345(エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて、120Hzでの静電容量、誘電正接(tanδ)、及び100kHzでの等価直列抵抗(ESR)を測定した。その結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2]
製造例2のPSS水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、PEDOT-PSS水分散液を得た。その固形分は1.45質量%だった。このPEDOT-PSS水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製し、静電容量、誘電正接及びESRを測定した。その結果を表1に示す。
【0071】
[実施例3]
製造例3のPSS水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、PEDOT-PSS水分散液を得た。その固形分は1.43質量%だった。このPEDOT-PSS水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製し、静電容量、誘電正接及びESRを測定した。その結果を表1に示す。
【0072】
[実施例4]
製造例4のPSS水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、PEDOT-PSS水分散液を得た。その固形分は1.37質量%だった。このPEDOT-PSS水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製し、静電容量、誘電正接及びESRを測定した。その結果を表1に示す。
【0073】
[実施例5]
製造例5のPSS水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、PEDOT-PSS水分散液を得た。その固形分は1.27質量%だった。このPEDOT-PSS水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製し、静電容量、誘電正接及びESRを測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
[実施例6]
製造例6のPSS水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、PEDOT-PSS水分散液を得た。その固形分は1.05質量%だった。このPEDOT-PSS水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製し、静電容量、誘電正接及びESRを測定した。その結果を表1に示す。
【0075】
[実施例7]
製造例8のPSS水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、PEDOT-PSS水分散液を得た。その固形分は1.59質量%だった。このPEDOT-PSS水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製し、静電容量、誘電正接及びESRを測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
製造例7のPSS水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、PEDOT-PSS水分散液を得たが、凝集物が多数析出していたので、これをデカンテーションで除去した後に、キャパシタの製造に用いた。キャパシタの製造に用いたPEDOT-PSS水分散液の固形分は0.82質量%だった。このPEDOT-PSS水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製し、静電容量、誘電正接及びESRを測定した。その結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【符号の説明】
【0078】
10 キャパシタ
11 陽極
12 誘電体層
13 陰極
14 固体電解質層
図1