(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025965
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】表皮被覆製品
(51)【国際特許分類】
B68G 7/05 20060101AFI20240220BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240220BHJP
【FI】
B68G7/05 B
B60N2/90
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129367
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】517191091
【氏名又は名称】日本プラスチックス・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】島 道一
(72)【発明者】
【氏名】横山 守
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一枚の表皮を真空成形によって基材に被覆することで、表皮の合わせ目部分を再現した表皮被覆製品を提供する。
【解決手段】本発明にかかる表皮被覆製品は、2.0mm~6.0mmの溝11と、溝11の底面に所定間隔で形成された真空成形用の真空孔13とを有する基材10と、基材10に対して、溝11に真空成形によって表皮溝が形成されるように被覆された表皮と、を備えていることを特徴とする。かかる構成を採用することによって、使用される基材に溝が形成されており、この溝には、真空成形用の真空孔を有することから、真空成形によって表皮は溝に吸い込まれるように形成され、基材の溝が形成された部位の表皮にも溝が形成される。この溝によって、あたかも2枚の表皮が縫い合わされたかのように表現することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.0mm~6.0mmの溝と、前記溝の底面に所定間隔で形成された真空成形用の真空孔とを有する基材と、
前記基材に対して、前記溝に真空成形によって表皮溝が形成されるように被覆された表皮と、
を備えていることを特徴とする表皮被覆製品。
【請求項2】
前記表皮溝の両側に、前記表皮溝に沿って縫製パターンが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表皮被覆製品。
【請求項3】
前記基材の溝は、幅の広い部分と狭い部分が交互に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表皮被覆製品。
【請求項4】
前記基材の溝に配置された表皮は、隙間のある部分と隙間のない部分が交互に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の表皮被覆製品。
【請求項5】
前記真空孔は、3.0mm~5.0mmピッチで形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表皮被覆製品。
【請求項6】
前記表皮は、厚さが2.0mm~4.0mmからなり、軟質性のプラスチック樹脂と、発泡樹脂との積層体からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表皮被覆製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、木材その他の硬質な材料からなる基材に、縫製パターンを施した表皮を被覆した表皮被覆製品に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に表皮を被覆した表皮被覆製品において、表皮を2枚縫い合わせた後に被覆することで、2枚の表皮の継ぎ目(合わせ目部分)をステッチのデザインの一つとして表現したものがある。例えば、皮革よりなる外皮シートと、その外皮シートの裏面側に設けられたスラブシートとを、それらの外周縁に沿って環縫いの縁かがり縫い目を施すことにより縫い合わせて、表皮シートを形成し、複数枚の表皮シートを外周縁において縫い目により互いに縫い付けて、袋状のヘッドレスト用表皮を形成する技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このように表皮を継ぎ合わせるには、表皮の加工工程が必要なため、時間もかかる上、コストがかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、一枚の表皮を真空成形によって基材に被覆することで、表皮の合わせ目部分が形成されたかのような外観を表現可能な表皮被覆製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用した。
本発明にかかる表皮被覆製品は、2.0mm~6.0mmの溝と、前記溝の底面に所定間隔で形成された真空成形用の真空孔とを有する基材と、
前記基材に対して、前記溝に真空成形によって表皮溝が形成されるように被覆された表皮と、
を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる表皮被覆製品は、使用される基材に溝が形成されており、この溝には、真空成形用の真空孔を有することから、真空成形によって表皮は溝に吸い込まれるように形成され、基材の溝が形成された部位の表皮にも溝が形成される。この溝によって、あたかも2枚の表皮が縫い合わされたかのように表現することができる。
【0008】
また、本発明にかかる表皮被覆製品において、前記表皮溝の両側に、前記表皮溝に沿って縫製パターンが形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0009】
一般的に、革の縫い合わせの両側に、装飾用のステッチを行って装飾性を高めることが行われている。本発明は、表皮溝が設けられる位置の両側に予め縫製パターンを設けておくことによって、真空成形によって基材に被覆した際に、表皮溝に沿って装飾用のステッチを形成することができる。
【0010】
さらに、本発明にかかる表皮被覆製品において、前記基材の溝は、幅の広い部分と狭い部分が交互に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
かかる構成を採用することによって、真空成形後の表皮被覆製品の表皮溝も幅の広い部分と狭い部分が交互に形成される。よって、表皮を糸で縫い合わせたときに、きつく締められる糸孔の部分とその他の部分とを表現することができ、より表皮の縫い合わせの形態を表現することができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる表皮被覆製品において、前記基材の溝に配置された表皮は、隙間のある部分と隙間のない部分が交互に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
真空成形後に表皮溝も幅の広い部分と狭い部分が交互に形成される際に、幅の狭い部分は、互いに隙間ができないように形成し、幅の広い部分は隙間ができるように設計することによって、さらに表皮の縫い合わせの形態を表現することができる。
【0014】
さらに、本発明にかかる表皮被覆製品において、前記真空孔は、溝の底面に3.0mm~5.0mmピッチで形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0015】
真空孔は、溝の底面に3.0mm~5.0mmピッチで形成することによって、基材の溝にしっかりと引き込んで表皮に溝を形成することができる。
【0016】
さらに、本発明にかかる表皮被覆製品において、前記表皮は、厚さが2.0mm~4.0mmからなり、軟質性のプラスチック樹脂と、発泡樹脂との積層体からなることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
表皮の表皮溝の広狭を表現するに際しては、発泡樹脂を有していることによって容易に表現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる表皮被覆製品100の正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる表皮被覆製品100の基材10の正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる表皮被覆製品100及び基材10の断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる表皮被覆製品100を作製するための作製工程を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる表皮の縫製パターンを示す正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる表皮被覆製品100の溝11の成形状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、実施形態にかかる表皮被覆製品について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0020】
本発明にかかる表皮被覆製品100は、
図1から
図3に示すように、基材10と、この基材10に真空成形によって被覆された表皮20と、を備えている。
【0021】
基材10は、
図2及び
図3に示すように、プラスチックで作製された板状の部材であり、その形態は、特に限定されるものではなく、使用される部品に応じて外形及び面が形成されている。基材10には、最終製品となった際に、表皮20が縫い合わされた合わせ目を設けたい位置に溝11が形成されている。溝11は、幅が2.0mm~6.0mmに形成されており、深さが2.0mm~8.0mm程度に形成されている。溝11の底面には、長手方向に沿って5.0mm~10.0mmピッチで基材を貫通した真空孔13が作製されている。溝11は、
図2に示すように、同一幅の溝に形成してもよいが、好ましくは、
図4のD部拡大図に示すように、溝11は、幅が広い部分αと、幅の狭い部分βが交互に発生するように作製し、溝11の側面に凹凸が形成されるようにするとよい。このような基材10を使用して成形することによって、表皮20に
図4のB部拡大図に示すように幅が広い部分と、幅の狭い部分が形成され、実際に糸で縫い合わせたような外観を表現することができる。幅が広い部分αと、幅の狭い部分βは、使用される表皮20に応じて設定することができる。例えば、幅の広い部分が4.6mmで幅の狭い部位が4.0mmで形成するとよい。もちろんこれに限定するものではなく、例えば、幅の広い部位を4.3mmや、4.9mmといった具合に調整することが可能である。特に、幅の狭い部位に関しては、表皮20の厚さに応じて真空成形により表皮を被覆した際に、
図4のB部拡大図に示すように、幅の狭い部分の幅γをできる限り狭く、より好ましくは表皮溝21の幅がなくなるように、すなわち、表皮溝21の表皮20が互いに接触するような幅に形成することが好ましい。このように形成することで、実際にミシンで表皮20をつなぎ合わせた際の形態をより正確に再現することができる。
【0022】
表皮20は、真空成形に使用可能な表皮20であれば、特に限定するものではない。好ましくは、表皮溝21が形成された際に、表皮溝21に広狭を形成しやすくするため、軟質性のプラスチック樹脂と、発泡樹脂との積層体からなるものを使用するとよい。表皮20には、表皮溝21が形成される部位の両側にそれぞれステッチが形成されるように、縫製パターン22を形成してもよい。
【0023】
次に、本発明にかかる表皮被覆製品100の作製方法について説明する。表皮被覆製品100の作製方法は、
図5に示すように、主として、(1)表皮20の原反に縫製パターン22を縫製する表皮縫製工程(S1)。(2)真空成形によって基材10に表皮20を接合させる接合工程(S2)。(3)基材10の形態に合わせて表皮の周囲を切断する表皮トリム工程(S3)。(4)表皮トリム工程の後に、表皮20の巻き込みを行う巻込工程(S4)と、を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0024】
表皮縫製工程(S1)は、
図6に示すように、成形されていない平面状の表皮20に対して、装飾用の縫製パターン22を縫製する工程である。なお、
図6の細かい点線は基材10が配置される範囲を仮想的に記載したものであり、実際には点線は記載されていない。この縫製パターン22は、縫い合わせ部の両側に形成される装飾用ステッチであり、表皮溝21が形成される部位の両側に、5.0mm~10.0mm程度の距離に平行に設けられる。縫製パターン22は、1本縫い、2本縫い等特に限定するものではない。なお、装飾用のステッチを設けない場合には、本工程は省略してもよい。
【0025】
接合工程(S2)は、基材10に表皮20を真空成形により接合させ被覆する工程であり、本発明では、表皮20の成形工程と接合工程を同時に行う。具体的には、基材10の接合面側に表皮20を固定する。次に、表皮20をヒーターによって加熱する。これにより、表皮20は柔軟になり、基材10の表面に沿いやすくなる。そして、基材10の背面側を真空にして表皮20を引き込み、基材10の形態に成形しつつ、基材10の表面に表皮20を接合する。この際に、基材10の溝11の部分は、
図7に示すように、溝11に形成された真空孔13によって引き込まれ、表皮溝21が形成される。
【0026】
表皮トリム工程(S3)は、基材10に接合された表皮20のうち、余分な部分をカットするとともに、複数個を同時に成形・接合したものをそれぞれに分離する工程である。表皮トリム工程は、マシニングによって行ってもよい。
【0027】
巻込工程(S4)は、基材10の周囲にはみ出している表皮20を裏側に巻き込んで、固定する工程である。巻き込んだ表皮20は基材10の裏側に接着剤で接合又はステープラー等で固定される。
【0028】
こうして表皮被覆製品100が完成する。完成した表皮被覆製品100は、1枚の表皮を真空成形によって被覆したのみにも関わらず、表皮20を縫い合わせたかのような表皮溝21を形成することができる。また、この表皮溝21の両側に成形前に縫製された縫製パターン22が設けられた表皮20を有するものを使用した場合には、表皮20の合わせ目の両側に装飾用のステッチを形成することができる。また、溝11として、幅が広い部分αと、幅の狭い部分βが交互に発生するように作製されたものを使用することによって、表皮に、幅の狭い部分と広い部分が形成されるため、実際にミシンで表皮20をつなぎ合わせた際の形態をより正確に再現することができる。
【0029】
なお、表皮被覆製品100としては、ドアトリム、アームレスト、オーナメント、コンソールリッド等の自動車関連部品、椅子、机等の家具等が考えられるが、これに限定するものではなく、表皮を接合した製品として機能するものであれば、いかなる製品であっても構わない。
【0030】
なお、本発明は上述した各実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上述した実施の形態で示すように、自動車関連部品の作製方法として産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10…基材、11…溝、13…真空孔、20…表皮、21…表皮溝、22…縫製パターン、100…表皮被覆製品