(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025972
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】印刷配線基板及び無線通信端末
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240220BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20240220BHJP
H01Q 9/04 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H01Q19/10
H01Q9/04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129376
(22)【出願日】2022-08-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】大和管財株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠島 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】坂本 宏文
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 学
(72)【発明者】
【氏名】疋田 冬樹
【テーマコード(参考)】
5E338
5J020
【Fターム(参考)】
5E338AA05
5E338AA18
5E338BB65
5E338BB75
5E338CC01
5E338CC06
5E338CD02
5E338CD12
5E338EE11
5J020BA04
5J020BC08
(57)【要約】
【課題】基板外周部分に高周波信号を伝送する信号線を配置しても、伝送される信号に生ずるリップルを抑制する。
【解決手段】本印刷配線基板は、板状に形成された誘電体基板と、上記誘電体基板の表面と裏面の夫々に設けられる接地導体層と、上記誘電体基板の側面に設けられ、高周波信号を伝送する信号線と、上記誘電体基板内に設けられ、上記表面に設けられた上記接地導体層と上記裏面に設けられた上記接地導体層とを接続し、上記信号線に沿って並んで配置される複数の接続導体と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成された誘電体基板と、
前記誘電体基板の表面と裏面の夫々に設けられる接地導体層と、
前記誘電体基板の側面に設けられ、高周波信号を伝送する信号線と、
前記誘電体基板内に設けられ、前記表面に設けられた前記接地導体層と前記裏面に設けられた前記接地導体層とを接続し、前記信号線に沿って並んで配置される複数の接続導体と、を備える、
印刷配線基板。
【請求項2】
前記複数の接続導体は、隣り合った前記接続導体の間隔が0.5mm以下である、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項3】
前記信号線は、
前記誘電体基板の側面に配置される第1壁部と、
前記誘電体基板の表面に配置され、前記第1壁部の一方の端部に接続される上壁部と、
前記誘電体基板の裏面に配置され、前記第1壁部の他方の端部に接続される下壁部と、を含む、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項4】
前記信号線は、
前記上壁部と前記下壁部との間に、前記第1壁部から前記誘電体基板に向けて突出する突出部が複数配置される、
請求項3に記載の印刷配線基板。
【請求項5】
前記複数の接続導体は、隣り合った前記接続導体の間隔が2.5mm以下である、
請求項3に記載の印刷配線基板。
【請求項6】
前記接続導体は、前記誘電体基板を厚さ方向に形成されるビアまたはスルーホールによって形成される、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項7】
前記信号線は、メッキによって形成される、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項8】
前記信号線は、前記高周波信号の送受信に用いられるアンテナに接続されるアンテナ接点と、前記アンテナを介して送受信される前記高周波信号を信号処理する処理回路とを接続する、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の印刷配線基板を備える、
無線通信端末。
【請求項10】
板状の導体板と、
前記裏面に設けられた前記接地導体と前記導体板とを電気的に接続する接続部材と、をさらに備える、
請求項9に記載の無線通信端末。
【請求項11】
導体で形成された筐体をさらに備え、
前記信号線は、前記筐体のうち、前記側面の隣に配置された部分によって形成される、
請求項10に記載の無線通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷配線基板及び無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷配線基板には、当該基板の中央の領域にIntegrated Circuit(IC)等の集積回路が配置され、高周波信号(RF信号)を伝送する信号線は当該基板の外周部分に配置されることが多い(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-311337号公報
【特許文献2】特開2002-231849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RF信号を伝送する信号線は、好適なインピーダンス制御のために当該信号線とグランド配線との設計が行われる。しかしながら、基板外周部分に信号線が配置されると、信号線とグランド配線間における電磁界が不安定となり、伝送される信号にリップルが生じる等の悪影響が生じることがある。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、基板外周部分に高周波信号を伝送する信号線を配置しても、伝送される信号に生ずるリップルを抑制し得る印刷配線基板及び無線通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような印刷配線基板によって例示される。本印刷配線基板は、板状に形成された誘電体基板と、上記誘電体基板の表面と裏面の夫々に設けられる接地導体層と、上記誘電体基板の側面に設けられ、高周波信号を伝送する信号線と、上記誘電体基板内に設けられ、上記表面に設けられた上記接地導体層と上記裏面に設けられた上記接地導体層とを接続し、上記信号線に沿って並んで配置される複数の接続導体と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、基板外周部分に高周波信号を伝送する信号線を配置しても、伝送される信号に生ずるリップルを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る印刷配線基板の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、隣に配置された基板内配線間の距離Lを変動させてRF信号線に信号を伝送させた場合における通過損失を調べた第1のシミュレーションの結果を例示する図である。
【
図4】
図4は、RF信号線と基板内配線の間の距離Iを変動させた場合におけるRF信号線のS21を調べた第2のシミュレーション結果を例示する図である。
【
図5】
図5は、印刷配線基板を実装したスマートフォンの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第3のシミュレーションにおける各パラメータを説明する図である。
【
図7】
図7は、第3のシミュレーションの結果を例示する第1の図である。
【
図8】
図8は、第3のシミュレーションの結果を例示する第2の図である。
【
図9】
図9は、RF信号線に高周波信号を伝送させた場合における電界分布を模式的に示す第1の図である。
【
図10】
図10は、RF信号線に高周波信号を伝送させた場合における電界分布を模式的に示す第2の図である。
【
図11】
図11は、RF信号線に高周波信号を伝送させた場合における電界分布を模式的に示す第3の図である。
【
図12】
図12は、RF信号線に高周波信号を伝送させた場合における電界分布を模式的に示す第4の図である。
【
図13】
図13は、RF信号線に高周波信号を伝送させた場合における電界分布を模式的に示す第5の図である。
【
図14】
図14は、RF信号線に高周波信号を伝送させた場合における電界分布を模式的に示す第6の図である。
【
図15】
図15は、第1変形例に係る印刷配線基板の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、隣に配置された基板内配線16A間の距離を変動させた場合におけるRF信号線のS21を調べた第4のシミュレーション結果を例示する第1の図である。
【
図17】
図17は、RF信号線と基板内配線との間の距離を変動させた場合におけるRF信号線15のS21を調べた第4のシミュレーション結果を例示する第2の図である。
【
図18】
図18は、第2変形例に係る印刷配線基板の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、RF信号線近傍における電界を模式的に示す第1の図である。
【
図20】
図20は、RF信号線近傍における電界を模式的に示す第2の図である。
【
図21】
図21は、RF信号線近傍における電界を模式的に示す第3の図である。
【
図22】
図22は、第1変形例に係るRF信号線の特性と第2変形例に係るRF信号線の特性を比較する図である。
【
図23】
図23は、スマートフォン100に収容された印刷配線基板1と筐体110の配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係る印刷配線基板は、例えば、以下の構成を備える。本実施形態に係る印刷配線基板は、板状に形成された誘電体基板と、上記誘電体基板の表面と裏面の夫々に設けられる接地導体層と、上記誘電体基板の側面に設けられ、高周波信号を伝送する信号線と、上記誘電体基板内に設けられ、上記表面に設けられた上記接地導体層と上記裏面に設けられた上記接地導体層とを接続し、上記信号線に沿って並んで配置される複数の接続導体と、を備える。
【0010】
上記印刷配線基板であれば、誘電体基板の表面に設けられた上記接地導体層と裏面に設けられた上記接地導体層とが、接続導体によって電気的に接続される。そのため、上記信号線から見たグランドをより大きなものとすることができる。その結果、上記信号線と上記接地導体層との間の電界を可及的に安定させることができ、ひいては、高周波信号を伝送する信号線の特性を改善することができる。その結果、上記信号線によって伝送される高周波信号のリップルを可及的に抑制することができる。
【0011】
以下、図面を参照して上記印刷配線基板の実施形態についてさらに説明する。
図1は、実施形態に係る印刷配線基板1の一例を示す図である。印刷配線基板1は、誘電体基板11、第1グランド面12、第2グランド面13、RF信号線15、RF回路21、回路接
続線22、アンテナ用バネ接点23及びアンテナ接続線24を備える。
【0012】
印刷配線基板1は、板状に形成された誘電体基板11を備える基板である。誘電体基板11は、例えば、紙、ガラス、セラミックス等の誘電体によって形成される。誘電体基板11の比誘電率は、例えば、1.2.0から10.0程度である。誘電体基板11の表面
及び裏面の夫々には、第1グランド面12及び第2グランド面13が設けられる。第1グランド面12及び第2グランド面13は、例えば、銅箔等の導体板によって形成される。第1グランド面12及び第2グランド面13は、印刷配線基板1に実装されたRF回路21等の電子部品やRF信号線15の接地に用いられる。印刷配線基板1は、「印刷配線基板」の一例である。誘電体基板11は、「誘電体基板」の一例である。第1グランド面12及び第2グランド面13は、「接地導体層」の一例である。
【0013】
アンテナ用バネ接点23は、アンテナが接続されるバネ接点である。アンテナ用バネ接点23は、アンテナ接続線24によってRF信号線15のポート152に接続される。RF回路21は、アンテナ用バネ接点23に接続されたアンテナによって送受信される高周波信号を処理する回路である。RF回路21は、回路接続線22によってRF信号線15のポート151に接続される。アンテナ用バネ接点23は、「アンテナ接点」の一例である。RF回路21は、「処理回路」の一例である。
【0014】
RF信号線15は、誘電体基板11の側面に設けられる。RF信号線15は、例えば、メッキによって形成される。RF信号線15は、例えば、銅等の導体によって形成される。
図1では、板状に形成されたRF信号線15が例示されているが、RF信号線15の形状は板状に限定されるわけではない。RF信号線15は、アンテナ用バネ接点23とRF回路21との間で授受される高周波信号を伝送する。また、第1グランド面12のRF信号線15側の端部には、基板露出部14が設けられる。基板露出部14は、導体等が設けられずに誘電体基板11の表面が露出している領域である。基板露出部14が設けられることで、第1グランド面12とRF信号線15とが電気的に接続されることが抑制される。なお、
図1では図示を省略するが、第2グランド面13とRF信号線15との間にも誘電体基板11の表面が露出する部分が設けられる。RF信号線15は、「信号線」の一例である。
【0015】
図2は、
図1の矩形Aの領域を拡大した図である。
図2では簡単のため、アンテナ用バネ接点23及びアンテナ接続線24の図示は省略している。また、
図2では、RF信号線15の近傍において誘電体基板11内に配置された基板内配線16も点線で例示される。
【0016】
基板内配線16は、誘電体基板11内に配置され、第1グランド面12と第2グランド面13とを接続する配線である。基板内配線16は、例えば、誘電体基板11の厚さ方向に形成されるビアやスルーホールに設けられる。また、基板内配線16は、誘電体基板11に打ち込まれることで設けられてもよい。
【0017】
基板内配線16は、RF信号線15に沿って所定間隔で複数並んで設けられる。基板内配線16は、例えば、RF信号線15と平行に並んで配置される。第1グランド面12と第2グランド面13は、基板内配線16によって接続されることで、RF信号線15からはひとつの大きなグランドとして見えることになる。基板内配線16は、「接続導体」の一例である。
【0018】
RF信号線15と基板内配線16との間の距離Iは、例えば、5.0mm以下である。隣に配置された基板内配線16間の距離L(隣に配置された基板内配線16の中心間の距離)は、例えば、0.5mm以下である。RF信号線15の幅Wは、例えば、0.1mmから10.0mmの範囲内である。RF信号線15の厚さTは、例えば、0.1mm以下
である。
【0019】
<シミュレーション>
印刷配線基板1の特性を検証するためシミュレーションを行った。以下、図面を参照してシミュレーションの結果について説明する。
【0020】
(第1のシミュレーション)
図3は、隣に配置された基板内配線16間の距離Lを変動させてRF信号線15に信号を伝送させた場合における通過損失を調べた第1のシミュレーションの結果を例示する図である。
図3の縦軸は通過損失(dB)を例示し、横軸は伝送される信号の周波数を例示する。また、
図3に結果を例示する第1のシミュレーションでは、基板内配線16が無い状態、距離Lが0mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.9mm、1.0mm、∞、の夫々について、RF信号線15に信号を伝送させた場合に生じる通過損失が計測された。
【0021】
図3を参照すると、基板内配線16が無い状態では、伝送される信号の周波数に応じて通過損失が大きく波打つように変化するリップルが生じることが理解できる。一方、基板内配線16が設けられることでリップルが抑制されることが理解できる。ここで、通過損失を考慮すると、距離Lを0.5mm以下とすることで、RF信号線15の伝送特性を基板内配線16が無い状態よりも好ましい特性にすることが理解できる。
【0022】
(第2のシミュレーション)
図4は、RF信号線15と基板内配線16との間の距離Iを変動させた場合におけるRF信号線15のS21を調べた第2のシミュレーション結果を例示する図である。
図4の縦軸はS21(dB)を例示し、横軸は周波数(Hz)を例示する。また、
図4に結果を例示する第2のシミュレーションでは、距離Iは、0.725mm、0.825mm、0.925mm、1.025mm、1.125mm、1.225mm、1.325mm、1.425mm、1.525mmの夫々について、RF信号線15に信号を伝送させた場合のS21が計測された。
図4を参照すると、距離Iが0.925mm以下のときにS21が-1dB以下となっていることが理解できる。また、距離Iが1.1mm以上になると基板内配線16を設けた効果が低くなることが理解できる。そのため、RF信号線15と基板内配線16との間の距離Iは、1.1mm以下が好ましく、0.925mm以下がより好ましいことが理解できる。
【0023】
(第3のシミュレーション)
印刷配線基板1は、例えば、スマートフォン等の無線通信端末に適用することができる。
図5は、印刷配線基板1を実装したスマートフォン100の一例を示す図である。
図5では、スマートフォン100の筐体110内に収容された印刷配線基板1も点線で例示される。
【0024】
ここで、印刷配線基板1をスマートフォン100に適用すると、スマートフォン100の筐体110やディスプレイ120裏面の板金等の金属が印刷配線基板1の近傍に配置されることになる。そこで、以下では、図面を参照してこのような金属が配置されることによるRF信号線15の特性への影響について第3のシミュレーションを行った。スマートフォン100は、「無線通信端末」の一例である。
【0025】
図6は、第3のシミュレーションにおける各パラメータを説明する図である。第3のシミュレーションでは、印刷配線基板1の代わりに、誘電体基板11の表裏両面に第1グランド面12及び第2グランド面13を設け、誘電体基板11の側面にRF信号線15を配置した印刷配線基板1Aを採用した。印刷配線基板1Aでは、印刷配線基板1と同様に、
第1グランド面12と第2グランド面13とが基板内配線16によって電気的に接続される。印刷配線基板1Aは、印刷配線基板1から基板露出部14、RF回路21、回路接続線22、アンテナ用バネ接点23及びアンテナ接続線24を省略したものということができる。また、印刷配線基板1Aの裏面(第2グランド面13側の面)には、スマートフォンの筐体のケースやディスプレイの板金等の金属部材を想定した板金51が配置される。
【0026】
第3のシミュレーションでは、印刷配線基板1Aの幅W1は60mm、印刷配線基板1Aの高さH1は50mm、RF信号線15の長さL1は30mmに設定される。また、板金51の幅W2は70mm、高さH2は70mmに設定される。また、印刷配線基板1Aと板金51との間隔D1は、0.5mmに設定される。
【0027】
第3のシミュレーションでは、さらに、印刷配線基板1Aと板金51との間に複数の接続部材61が設けられる。接続部材61は、誘電体基板11のうち、RF信号線15が設けられた側面の近傍に配置される。接続部材61は、金属等の導体で形成され、印刷配線基板1Aの第2グランド面13と板金51とを電気的に接続する。接続部材61としては、例えば、金属ネジ、メフィット等を挙げることができる。
【0028】
第3のシミュレーションでは、高さH3及び幅W3が1.0mm、厚さD3が0.5mmの接続部材61が採用される。第2グランド面13と第1グランド面12とは基板内配線16によって電気的に接続されていることから、接続部材61が設けられることで第1グランド面12、第2グランド面13及び板金51が電気的に接続されることになる。接続部材61は、「接続部材」の一例である。
【0029】
図7は、第3のシミュレーションの結果を例示する第1の図である。
図7では、RF信号線15に高周波信号を伝送させた場合におけるS21(dB)のシミュレーションが例示される。
図7の縦軸はS21(dB)を例示し、横軸は周波数(GHz)を例示する。
図7において、実線は板金51が設けられるとともに、接続部材61が5か所に設けられた状態、点線は板金51が設けられていない状態、一点鎖線は板金51が設けられるとともに、接続部材61は設けられていない状態、を例示する。
図7を参照すると理解できるように、接続部材61が無い状態で板金51が設けられるとリップルが生じることが理解できる。そして、接続部材61によって第1グランド面12、第2グランド面13及び板金51が電気的に接続されることで、リップルが抑制されることが理解できる。
【0030】
図8は、第3のシミュレーションの結果を例示する第2の図である。
図8では、接続部材61が設けられていない状態で、RF信号線15に高周波信号を伝送させた場合におけるS21(dB)のシミュレーションが例示される。
図8の縦軸はS21(dB)を例示し、横軸は周波数(GHz)を例示する。
図8において、実線は板金51が設けられていない状態、一点鎖線は印刷配線基板1Aと板金51との距離Lが0.5mmである状態、破線は印刷配線基板1Aと板金51との距離Lが1.0mmである状態、一点鎖線は印刷配線基板1Aと板金51との距離Lが1.5mmである状態、を例示する。
図8を参照すると、接続部材61が設けられていない場合、印刷配線基板1Aと板金51との距離を調整してもリップルを抑制することは困難であることが理解できる。
【0031】
図9から
図14は、RF信号線15に高周波信号を伝送させた場合における電界分布を模式的に示す図である。
図9から
図11は、RF信号線15に5GHzの高周波信号を伝送した場合に印刷配線基板1Aの周囲の生じる電界を模式的に示す図である。また、
図12から
図14は、RF信号線15に2.4GHzの高周波信号を伝送させた場合に印刷配線基板1Aの周囲の生じる電界を模式的に示す図である。
【0032】
また、
図9及び
図12は、印刷配線基板1Aの周囲に生じる電界を模式的に示す図であ
る。
図10及び
図13は、印刷配線基板1Aと板金51との間隔D1が0.5mmとなるように板金51が配置された状態で印刷配線基板1Aの周囲に生じる電界を模式的に示す図である。なお、
図10及び
図13では、接続部材61は設けられていない。
図11及び
図14は、印刷配線基板1Aと板金51とが接続部材61によって接続された状態で印刷配線基板1Aの周囲の生じる電界を模式的に示す図である。
【0033】
図10及び
図13を参照すると、接続部材61が設けられていない場合、RF信号線15から離れた位置にも強い電界が生じることが理解できる。また、接続部材61が設けられていない状態で板金51が設けられた場合、板金51を挟んで印刷配線基板1Aとは反対側にも強い電界が生じていることが理解できる。RF信号線15から離れた位置や板金51を挟んで印刷配線基板1Aとは反対側に生じる強い電界の影響で
図3、
図7、
図8を参照して説明したリップルが生じていると考えられる。
【0034】
一方、
図11及び
図14を参照すると、接続部材61が設けられることで、RF信号線15から離れた位置や板金51を挟んで印刷配線基板1Aとは反対側における強い電界が抑制される。接続部材61のこのような働きにより、
図3、
図7、
図8を参照して説明したリップルが抑制されると考えられる。
【0035】
<実施形態の作用効果>
本実施形態では、第1グランド面12と第2グランド面13とが基板内配線16によって電気的に接続される。そのため、RF信号線15から見たグランドをより大きなものとすることができ、ひいては、RF信号線15、第1グランド面12及び第2グランド面13の間の電界を可及的に安定させることができる。その結果、高周波信号を伝送するRF信号線15の特性を改善することができ、ひいては、RF信号線15によって伝送される高周波信号のリップルを可及的に抑制することができる。
【0036】
本実施形態では、基板内配線16は、RF信号線15に沿って複数並んで配置される。基板内配線16がこのように配置されることで、RF信号線15によって伝送される高周波信号のリップルを一層抑制することができる
【0037】
印刷配線基板1がスマートフォン100に実装される場合、筐体110やディスプレイ120の裏面等の板金51が印刷配線基板1の近傍に配置されることになる。本実施形態では、第2グランド面13と板金51とを接続部材61によって接続することで、第1グランド面12、第2グランド面13及び板金51が電気的に接続される。このような接続部材61の働きにより、板金51が印刷配線基板1の近傍に配置されても、RF信号線15による高周波信号を伝送させる特性の低下が抑制される。
【0038】
<第1変形例>
以上説明した実施形態では板状に形成されたRF信号線15が例示されたが、第1変形例では、コの字型に形成されたRF信号線について説明する。実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、図面を参照して、第1変形例について説明する。
【0039】
図15は、第1変形例に係る印刷配線基板1Bの一例を示す図である。
図15では、
図1の矩形Aに相当する領域を拡大した図である。
図15では簡単のため、アンテナ用バネ接点23及びアンテナ接続線24の図示は省略している。また、
図15では、RF信号線15Aの近傍において誘電体基板11内に配置された基板内配線16Aも実線で例示される。基板内配線16Aは、例えば、誘電体基板11を厚さ方向に貫通するビア17内に設けられる。
【0040】
RF信号線15Aは、側壁部15A1、上壁部15A2、下壁部15A3を含む。側壁部15A1は、誘電体基板11の側面に配置され、板状に形成される。上壁部15A2は、誘電体基板11の第1グランド面12上に配置されるとともに側壁部15A1の上端(第1グランド面12側)に一方の端部が接続され、板状に形成される。下壁部15A3は、誘電体基板11の第2グランド面13上に配置されるとともに側壁部15A1の下端(第2グランド面13側)に一方の端部が接続され、板状に形成される。すなわち、RF信号線15Aは、その長さ方向視においてコの字型に形成される。側壁部15A1は、「第1壁部」の一例である。上壁部15A2は、「上壁部」の一例である。下壁部15A3は、「下壁部」の一例である。
【0041】
印刷配線基板1Bの特性を検証するためシミュレーションを行った。以下、図面を参照してシミュレーションの結果について説明する。本シミュレーションでは、誘電体基板11は、比誘電率が3.80、tanδが0.015、厚さ0.045mmの基板を12枚積層し、6枚目と7枚目の基板の間に比誘電率が4.20、tanδが0.015の中央基板を配置した積層基板であるとした。また、本シミュレーションにおいて、ビア17の直径RAを0.3mm、ビア17から誘電体基板11のRF信号線15が設けられる側面までの距離DA1を0.5mm、上壁部15A2及び下壁部15A3と誘電体基板11との距離DA2を0.25mmとした。また、上壁部15A2及び下壁部15A3の長さLAを0.25mmとした。
【0042】
図16は、隣に配置された基板内配線16A間の距離Lを変動させた場合におけるRF信号線15BのS21を調べた第4のシミュレーション結果を例示する図である。
図16の縦軸はS21(dB)を例示し、横軸は周波数(Hz)を例示する。また、
図17は、
図16の矩形Bの領域を拡大した図である。
【0043】
図16及び
図17を参照すると、距離Lが2.0mmを超える範囲では一部の周波数範囲(例えば、4.2GHzから4.6GHzの範囲)においてリップルが生じることが理解できる。すなわち、RF信号線15Bを採用した第1変形例では、距離Lは2.5mm以下が好ましいといえる。
【0044】
また、第1変形例によれば、上壁部15A2、下壁部15A3をメッキ処理における電極として利用することで、実施形態におけるRF信号線15よりも容易に誘電体基板11の側面にRF信号線を形成することができる。
【0045】
<第2変形例>
第1変形例では、長さ方向視においてコの字型に形成されるRF信号線15Aが例示されたが、第2変形例では長さ方向視において櫛型に形成されるRF信号線について説明する。
【0046】
図18は、第2変形例に係る印刷配線基板1Cの一例を示す図である。
図18は、印刷配線基板1Cの矩形Aに相当する領域をRF信号線15Bの長さ方向から見た図となっている。
図18では、RF信号線15Bの長さ方向視において、誘電体基板11内に配置される突出部15B1も透視するように例示している。また、
図18では、誘電体基板11において積層された各基板上に配置され、基板内配線16Aに接続される基板上配線18も例示される。
【0047】
RF信号線15Bは、RF信号線15Aの上壁部15A2と下壁部15A3との間に複数の突出部15B1を配置したものである。突出部15B1は、一端が側壁部15A1に接続され、他端が誘電体基板11に向けて延びるように配置される。
【0048】
図19から
図21は、RF信号線近傍における電界を模式的に示す図である。
図19から
図21では、矢印によって電界が模式的に示される。
図19では、誘電体基板11の側面に側壁部15A1(実施形態のRF信号線15に相当)が配置された状態における電界分布が模式的に示される。
図20では、第1変形例に係るRF信号線15Aが誘電体基板11の側面に配置された状態における電界分布が模式的に示される。
図21では、第2変形例に係るRF信号線15Bが誘電体基板11の側面に配置された状態における電界分布が模式的に示される。
【0049】
図19から
図21を比較すると理解できるように、電界の広がりは、側壁部15A1>RF信号線15A>RF信号線15Bの順に小さくなる。すなわち、側壁部15A1よりもRF信号線15Aの方が信号線として不要な電波の放射が少なく、RF信号線15AよりもRF信号線15Bの方が信号線として不要な電波の放射が少ないことが理解できる。
【0050】
図22は、第1変形例に係るRF信号線15Aの特性と第2変形例に係るRF信号線15Bの特性を比較する図である。
図22の縦軸はS21(dB)を例示し、横軸は周波数(Hz)を例示する。
図22を参照すると、RF信号線15Bの方がRF信号線15Aよりも特性が良いことが理解できる。
【0051】
第2変形例によれば、RF信号線15Aよりも特性のよいRF信号線を提供することができる。
【0052】
<第3変形例>
以上説明した実施形態において、RF信号線15は、例えば、メッキによって形成される。しかしながら、RF信号線15は、メッキ以外の手法によって形成されてもよい。
図23は、スマートフォン100に収容された印刷配線基板1と筐体110の配置の一例を示す図である。筐体110は、例えば、厚さ10mm以下の金属で形成される。印刷配線基板1は、筐体110のうち印刷配線基板1の側面の近傍に配置された部分110A(
図23において斜線で図示)をRF信号線15として利用してもよい。この場合、部分110AとRF回路21とを回路接続線22で接続し、部分110Aとアンテナ用バネ接点23とをアンテナ接続線24で接続すればよい。
【0053】
以上説明した実施形態では、接続部材61は5か所に配置されたが、接続部材61は6か所以上に配置されてもよいし、4か所以下に配置されてもよい。なお、接続部材61は、RF信号線15がRF回路21に接続される箇所(ポート151)、RF信号線15がアンテナ用バネ接点23に接続される箇所(ポート152)及び、ポート151とポート152との間の3か所に設けられることが好ましい。
【0054】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・印刷配線基板
1A・・印刷配線基板
1B・・印刷配線基板
1C・・印刷配線基板
11・・誘電体基板
12・・第1グランド面
13・・第2グランド面
14・・基板露出部
15・・RF信号線
15A・・RF信号線
15B・・RF信号線
15A1・・側壁部
15A2・・上壁部
15A3・・下壁部
15B1・・突出部
151・・ポート
152・・ポート
16・・基板内配線
16A・・基板内配線
17・・ビア
18・・基板上配線
21・・RF回路
22・・回路接続線
23・・アンテナ用バネ接点
24・・アンテナ接続線
51・・板金
61・・接続部材
100・・スマートフォン
110・・筐体
120・・ディスプレイ
【手続補正書】
【提出日】2022-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成された誘電体基板と、
前記誘電体基板の表面と裏面の夫々に設けられる接地導体層と、
前記誘電体基板の側面に設けられ、高周波信号を伝送する信号線と、
前記誘電体基板内に設けられ、前記表面に設けられた前記接地導体層と前記裏面に設けられた前記接地導体層とを接続し、前記信号線に沿って並んで配置される複数の接続導体と、を備える、
印刷配線基板。
【請求項2】
前記複数の接続導体は、隣り合った前記接続導体の間隔が0.5mm以下である、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項3】
前記信号線は、
前記誘電体基板の側面に配置される第1壁部と、
前記誘電体基板の表面に配置され、前記第1壁部の一方の端部に接続される上壁部と、
前記誘電体基板の裏面に配置され、前記第1壁部の他方の端部に接続される下壁部と、を含む、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項4】
前記信号線は、
前記上壁部と前記下壁部との間に、前記第1壁部から前記誘電体基板に向けて突出する突出部が複数配置される、
請求項3に記載の印刷配線基板。
【請求項5】
前記複数の接続導体は、隣り合った前記接続導体の間隔が2.5mm以下である、
請求項3に記載の印刷配線基板。
【請求項6】
前記接続導体は、前記誘電体基板を厚さ方向に形成されるビアまたはスルーホールによって形成される、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項7】
前記信号線は、メッキによって形成される、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項8】
前記信号線は、前記高周波信号の送受信に用いられるアンテナに接続されるアンテナ接点と、前記アンテナを介して送受信される前記高周波信号を信号処理する処理回路とを接続する、
請求項1に記載の印刷配線基板。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の印刷配線基板を備える、
無線通信端末。
【請求項10】
板状の導体板と、
前記裏面に設けられた前記接地導体層と前記導体板とを電気的に接続する接続部材と、をさらに備える、
請求項9に記載の無線通信端末。
【請求項11】
導体で形成された筐体をさらに備え、
前記信号線は、前記筐体のうち、前記側面の隣に配置された部分によって形成される、
請求項10に記載の無線通信端末。