(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025978
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】社内コミュニケーションシステム、社内コミュニケーション方法、社内コミュニケーションプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20230101AFI20240220BHJP
【FI】
G06Q10/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129385
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】522324886
【氏名又は名称】一之瀬 卓
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】一之瀬 卓
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA12
(57)【要約】
【課題】従業員エンゲージメントを向上させる社内コミュニケーションシステム、社内コミュニケーション方法、社内コミュニケーションプログラムを提供する。
【解決手段】社内コミュニケーションシステム1は、本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを形成するコミュニケーション部と、コミュニケーション部によって形成されたコミュニケーションのうち、勤務時間帯外において一般従業員が経営者、店長及び/又は部門長からの通信文の共有、又は、勤務時間帯外において一般従業員が前記本社・本部、店長及び/又は部門長への通信文の共有、に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、一般従業員へのインセンティブを算出するエンゲージメント部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
従業員エンゲージメントを向上させる社内コミュニケーションシステムであって、
本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを形成するコミュニケーション部と、
前記コミュニケーション部によって形成されたコミュニケーションにおいて、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長からの通信文の共有、又は、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長への通信文の共有、に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、前記一般従業員へのインセンティブを算出するエンゲージメント部と、
を備える社内コミュニケーションシステム。
【請求項2】
前記インセンティブは、時間外手当及び/又は時間外ポイントである、請求項1に記載の社内コミュニケーションシステム。
【請求項3】
前記一般従業員がシフトワーカーである場合、前記エンゲージメント部は、前記一般従業員のシフト情報と連携して、前記インセンティブを算出する、請求項1に記載の社内コミュニケーションシステム。
【請求項4】
前記エンゲージメント部は、前記一般従業員が前記通信文の共有に要する時間について、あらかじめ統一的に設定された基準をもって計測し、前記インセンティブを算出する、請求項1に記載の社内コミュニケーションシステム。
【請求項5】
前記エンゲージメント部は、前記一般従業員が前記通信文の共有に要する時間に係る単価について、前記一般従業員の勤務状況及び在籍期間の少なくとも1つを含む組織との関係性、又は、前記一般従業員ごとに異なりうる個人事情、若しくは合法性を考慮してあらかじめ設定された基準をもって変動させ、前記インセンティブを算出する、請求項1に記載の社内コミュニケーションシステム。
【請求項6】
前記コミュニケーション部は、前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長からの前記通信文、又は、過去の通信文に関連して、前記一般従業員に組織の運営に関するクイズを送信し、前記一般従業員からの回答に示された理解度を記録し、
前記エンゲージメント部は、前記理解度に応じて、特別インセンティブを算出する、請求項1に記載の社内コミュニケーションシステム。
【請求項7】
前記特別インセンティブは、特別時間外手当及び/又は特別時間外ポイントである、請求項6に記載の社内コミュニケーションシステム。
【請求項8】
前記通信文は、文字情報及び/又は動画情報を含む、請求項1に記載の社内コミュニケーションシステム。
【請求項9】
前記一般従業員が休日又は休暇日にあたる場合、前記一般従業員による利用が制限される、請求項1に記載の社内コミュニケーションシステム。
【請求項10】
従業員エンゲージメントを向上させる社内コミュニケーション方法であって、
本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを形成するコミュニケーションステップと、
前記コミュニケーションステップによって形成されたコミュニケーションのうち、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長からの通信文の共有、又は、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長への通信文の共有、に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、前記一般従業員へのインセンティブを算出するエンゲージメントステップと、
を備える社内コミュニケーション方法。
【請求項11】
従業員エンゲージメントを向上させる社内コミュニケーションプログラムであって、
コンピュータに、
本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを形成するコミュニケーション処理と、
前記コミュニケーション処理によって形成されたコミュニケーションのうち、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長からの通信文の共有、又は、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長への通信文の共有、に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、前記一般従業員へのインセンティブを算出するエンゲージメント処理と、
を実行させる社内コミュニケーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、社内コミュニケーションシステム、社内コミュニケーション方法、社内コミュニケーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、社内コミュニケーションを活性化し、社員の定着率を向上することができるようにしたネットワークサービスシステムとして、特定の企業の社員同士でのネットワークを介してのコミュニケーションを支援する個人端末とSNSサーバを備えた社員間SNSシステムと、物又はサービスと交換することができる社外ポイントを発行し、管理し、また受け取った社外ポイントに基づいて物又はサービスを提供するポイントサービス会社のポイントサービスシステムとがインターネットで接続されている技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このSNSサーバは、個人端末から制御部及びデータベースにアクセスされ、制御部の特定の機能又はデータベースが利用されたときに社内ポイント数を導出し、また、社内ポイントの一部又は全部を社外ポイントへの変換管理を行うとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、当該ネットワークサービスシステムを利用する企業の社員同士でのネットワークを介してのコミュニケーションを支援する社員間SNSシステムが構成されており、当該企業の本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションは取り扱われておらず、企業全体のコミュニケーションを通じた一般従業員のエンゲージメントを向上させることは難しい。特に、この点は、非正規雇用労働者(臨時社員、契約社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイト等を含む社員。以下、一般従業員ということがある)としてノンデスクワーカーが多く就労する、例えばスーパーマーケットや外食産業などのチェーンストアを経営するチェーン企業の業態において、問題が指摘されうる。
【0005】
そこで、本発明は、本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを促進し、従業員エンゲージメントを向上させることが可能な、社内コミュニケーションシステム、社内コミュニケーション方法、社内コミュニケーションプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る1つの観点は、従業員エンゲージメントを向上させる社内コミュニケーションシステムであって、本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを形成するコミュニケーション部と、前記コミュニケーション部によって形成されたコミュニケーションのうち、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長からの通信文の共有、又は、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長への通信文の共有、に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、前記一般従業員へのインセンティブを算出するエンゲージメント部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを促進し、従業員エンゲージメントを向上させることが可能な、社内コミュニケーションシステム、社内コミュニケーション方法、社内コミュニケーションプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1a】本実施形態に係る社内コミュニケーションシステムのブロック図(その1)である。
【
図1b】本実施形態に係る社内コミュニケーションシステムのブロック図(その2)である。
【
図1c】本実施形態に係る社内コミュニケーションシステムのブロック図(その3)である。
【
図2】チェーン企業の社内コミュニケーションの構造を説明する図である。
【
図3】チェーン企業の社内コミュニケーションシステムが提供するサービスの特徴を説明する図である。
【
図4】チェーン企業の社内コミュニケーションシステムが提供するサービスの関連性を説明する図である。
【
図5】社内コミュニケーションシステムがチェーン企業(顧客会社等)にSaaSで提供される場合を説明する図である。
【
図6】社内コミュニケーションシステムが果たす各機能を説明する図である。
【
図7】社内コミュニケーションシステムにおいて、一般従業員の端末装置に表示される本社・本部、店長及び/又は部門長からの通信文の例を説明する図である。
【
図8】社内コミュニケーションシステムにおいて、エンゲージメント機能の具体例を説明する図である。
【
図9】
図1bの中のサーバ装置の機能を示す概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。なお、添付図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。また、図示されているそれぞれの構成要素の数は、例示的に示しているものであり、各構成要素の属性により、図示されている1つの構成要素を複数のそれらで構成したり、図示されている複数の構成要素を1つのそれで構成したりしてもよい。
【0010】
(社内コミュニケーションシステムの構成例)
本実施形態における社内コミュニケーションシステム1の構成について、説明する。
【0011】
図1aは、本実施形態における社内コミュニケーションシステム1の構成の一例を示すブロック図(その1)である。
図1aに示すように、社内コミュニケーションシステム1は、サーバ装置10と、端末装置20とを備えており、サーバ装置10と端末装置20は、互いに、ネットワーク30を介して通信可能に接続している。なお、
図1aにおいて、サーバ装置10を1つ、端末装置20を2つ、それぞれ図示しているが、社内コミュニケーションシステム1は、その具体的な用途において、必要に応じ、複数のサーバ装置10、1つ又は3つ以上の端末装置20を備えてもよい。
【0012】
図1bは、社内コミュニケーションシステム1の構成の一例を示すブロック図(その2)である。
図1bに示すように、サーバ装置10は、通信部11と、制御部12と、記憶部13とを備える。通信部11は、ネットワーク30を介して、外部装置である端末装置20とデータの送受信を行う。ネットワーク30の態様は特に限定されないが、その態様がインターネットである場合には、通信部11は、インターネットに接続する機能を有する。
【0013】
制御部12は、各種の情報処理を実行するものであり、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有する。CPUがメモリを用いて、サーバ装置10に記憶される情報処理プログラムを実行することによって、各種の情報処理が実行される。記憶部13は、サーバ装置10において保存される各種のデータを記憶する。各種のデータの主な例としては、一般従業員に割り当てられる個々のタスクに関するタスク情報、当該システムのユーザとしての一般従業員に関するユーザ情報、一般従業員ごとの勤務体制であるシフトに関するシフト情報、一般従業員のエンゲージメントに反映されるインセンティブに関するインセンティブ情報等が挙げられる。なお、サーバ装置10に記憶されるこれらの情報等の一部は、サーバ管理者によって手動で入力されることもあり得る。そのため、サーバ装置10は、サーバ管理者が入力を行うためのユーザインターフェースとして、入力部及び出力部(表示部)を備えていてもよい。
【0014】
ここで、本実施形態においては、サーバ装置10を1つの一体的な構成として説明するが、サーバ装置10は、既述のとおり、機能及び/又は役割に応じて役割分担した複数のサーバ装置10群であってもよい。例えば、サーバ装置10は、コミュニケーションを提供するサーバと、エンゲージメントを提供するサーバとを各別に含む構成であってもよいし、エンゲージメントの一環として一般従業員に付与されるインセンティブ(後記するように、例えば、時間外手当及び/又は時間外ポイント)を算出するサーバを別に含む構成であってもよい。
【0015】
図1cは、社内コミュニケーションシステム1の構成の一例を示すブロック図(その3)である。
図1cに示すように、端末装置20は、通信部21と、制御部22と、記憶部23と、入力部24と、表示部25とを備える。通信部21は、ネットワーク30を介して、サーバ装置10とデータの送受信を行う。既述のとおり、ネットワーク30の態様は特に限定されないが、サーバ装置10の通信部11と同趣旨において、通信部21は、インターネットに接続する機能を有する。例えば、通信部21は、無線LANを介してインターネット通信を行う通信モジュールであってもよい。このほかにも、通信部21は、モバイル通信網を介して通信を行うものであってもよい。
【0016】
制御部22は、端末装置20において実行される各種の情報処理を実行するものであり、CPU及びメモリを有する。端末装置20においては、CPUがメモリを用いて、端末装置20に記憶された情報処理プログラムを実行することによって、各種の情報処理が実行される。なお、本実施形態においては、端末装置20は、後述する本社・本部、店長及び/又は部門長からの画像や動画を含む通信文等を表示するためのシステムプログラムと、社内コミュニケーションシステム1に参加するためのアプリケーションプログラムとを記憶している。このほかにも、端末装置20には、後述する地図表示プログラムやゲームプログラム、クイズプログラム等、その他のアプリケーションプログラムが記憶されていてもよい。制御部22のCPUは、これらの各種プログラムを実行する。
【0017】
記憶部23は、端末装置20において用いられる各種のデータを記憶する。本実施形態においては、サーバ装置10から受信した通信文等のデータを記憶する。
【0018】
入力部24は、ユーザによる入力を受け付けるものであり、タッチパネル、ボタン、スティック等の任意の入力装置である。表示部25は、処理された各種の情報が出力されるものであり、液晶のディスプレイは、入力部24と共用のものであってもよい。
【0019】
なお、
図1cでは図示していないが、以上のほかに、端末装置20は、自機の位置に関する位置情報を検出する位置検出部を備えてもよい。位置検出部の態様は特に限定されないが、例えば、位置検出部は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて位置情報を検出してもよい。この場合、位置検出部は、いわゆるGNSSセンサであり、例えば、GPS(Global Positioning System)センサなどである。このほかにも、ビーコンを用いての位置検出、携帯電話基地局からの電波や無線アクセスポイントからの電波に基づいての位置検出、加速度センサ等によって端末装置20の動きを検出しての位置検出(算出)、カメラによって撮像される画像に基づいての位置検出、マイクによって検出される周囲の音に基づいての位置検出、端末装置20とは異なる他の装置からの情報の取得に基づいての位置検出などでもよい。
【0020】
詳しくは後述するが、以上の構成において、サーバ装置10は、本社・本部、店長及び/又は部門長からの通信文を記憶し、端末装置20にその通信文を提供する。通信文には、文字情報及び/又は動画情報を含んでよく、テキストに画像や動画を交えて、店長、部門長からの日々のタスクに関する業務連絡や、本社・本部からの経営方針に関する社長メッセージなどが含まれる。通信文は、テキスト(文字情報)、画像及び/又は音声を含むコンテンツであり、端末装置20の仕様や利用時の状況などに応じて、テキストのみ、静止画のみ、音声のみなどのコンテンツであってもよい。
【0021】
端末装置20は、ネットワークサービスに参加するユーザが有する情報処理装置である。本実施形態においては、端末装置20は、ネットワークサービスを利用することが可能な端末装置であればよく、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、PC(パーソナルコンピュータ)、VR(仮想現実)デバイス、ゲームコンソール等といった情報処理端末を用いることができる。また、端末装置20は、いわゆる多機能端末であって、一般的な多機能デバイスが有する各種の機能(入力機能、出力(表示)機能、情報処理機能、ネットワーク通信機能、通話機能、カメラ機能等)のうちのいくつかを有している。これらの機能を活用して、端末装置20は、サーバ装置10から通信文を受信し、受信した通信文を再生する。
【0022】
(社内コミュニケーションシステムの適用例)
図2から
図8を参照して、本実施形態に係る社内コミュニケーションシステム1の適用例について説明する。
図2は、チェーン企業の社内コミュニケーションの構造を、
図3は、チェーン企業の社内コミュニケーションシステム1が提供するサービスの特徴を、
図4は、チェーン企業の社内コミュニケーションシステム1が提供するサービスの関連性を、
図5は、社内コミュニケーションシステム1がチェーン企業(顧客会社等)にSaaSで提供される場合を、
図6は、社内コミュニケーションシステム1が果たす各機能を、それぞれ示す。また、
図7は、社内コミュニケーションシステム1において、一般従業員の端末装置20に表示される本社・本部、店長及び/又は部門長からの通信文の例を、
図8は、社内コミュニケーションシステム1において、エンゲージメント機能153Fの具体例を、それぞれ示す。
【0023】
図2に示されるように、チェーン企業CLにおける店舗ビジネスの特徴は、店頭に直接お客様が来店し、一般従業員であるスタッフが接客する。そのため、店頭にいるスタッフは、「営業」、「顧客ニーズ収集」、「顧客満足度への影響」など、「会社の顔」として、さまざまな機能・役割を果たしている。社内コミュニケーションシステム1は、そうした機能や役割をベースに、働きがいを実現する機能を構成していくことになる。なお、
図2では、「部門長・社員・パート」という1つの区分として図示しているが、本実施形態において「一般従業員」というとき、「部門長」を含むかどうかは、当該チェーン企業CLにおける雇用形態により、任意に設定されてよい。また、「社員・パート」なる表記は、臨時社員、契約社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイト等を含む一般従業員を示す表記として用いている。
【0024】
このような構成を有するチェーン企業CLは、店舗ビジネスを展開するにあたって、次のような課題を抱えている。すなわち、店舗ビジネスを展開するチェーン企業CLにとって、重要な問題は、競争激化、資源・原価高騰、働き方改革、人口減少などの外部要因の下、労働生産性が低いという点にある。
【0025】
労働生産性が低いという点について、具体的にいえば、店舗ビジネスを展開するチェーン企業CLにおける大きな課題は、次の2点に集約されうる。
(1)本社・本部や、店長及び/又は部門長からの業務指示が一般従業員に伝わりにくいことによるタスクの未達成が生じうる。
(2)いわゆるやる気のない一般従業員が少なからず存在することによる低い業務効率、低い品質管理、高い離職率が生じうる。
【0026】
この2点を、緊急度、重要度、頻度について、高/中/低の3段階で評価すると、発明者の分析によれば、次のように整理することができる。
(1)については、「緊急度:中」、「重要度:高」、「頻度:高」。
(2)については、「緊急度:高」、「重要度:高」、「頻度:中」。
【0027】
この2点の課題について、その原因を探ると、次のように細分化されうる。まず、(1)については、原因となる問題として、次の4つが挙げられうる。
・チェーン企業CLの構造的な問題として、本社・本部と店舗が物理的に離れている。
・店舗内の問題として、シフトワーカーが多い場合、一般従業員同士は、互いに対面のタイミングを取りにくい。
・個人レベルの業務形態の問題として、一般従業員がパソコンを常時利用する業務形態でない場合、すなわち、ノンデスクワーカーの場合、メールやSlack(国際登録商標。チームコミュニケーションツール)は使いにくい。
・個人レベルのスキルの問題として、一般従業員のITリテラシーのレベルを一定に保ちにくい。
【0028】
これらの原因への対応としては、店長及び/又は部門長から、個別に、一般従業員にコミュニケーションを取る方法が主流となるほか、朝礼など限られた機会や、白板や連絡ノートなど物理的に制限がある方法で、伝達、情報共有をすることが多いというのが実情である。結果として、一般従業員によるタスク未達成につながることが多いと指摘されうる。
【0029】
次に、(2)については、原因となる問題として、次の5つが挙げられうる。
・一般従業員における構造的な問題として、生活のために仕方なく時間割で働いているシフトワーカーが多い。
・本社・本部と一般従業員の間の構造的な問題として、チェーン企業CLとのつながりやチェーン企業CLの方針を理解する仕組みに乏しい。
・会社などの組織を構成する人材の一般的問題として、いわゆる「2:6:2の法則」(人材の構成比率は、“優秀な働きを見せる人が2割、普通の働きをする人が6割、貢献度の低い人が2割となる”という理論)の問題が存在する。
・業務形態の問題として、単純労働でやる気の出にくい仕事が多い。
・組織運営の問題として、一般従業員のモチベーション向上の仕組みを導入していることが少ない。
【0030】
これらの原因があるため、店舗には、やる気のない一般従業員が一定数存在してしまうことは避けがたく、その結果、低い労働生産性、低い品質管理、高い離職率という問題が発生しうることとなる。
【0031】
発明者は、上記した課題について、次のような4つの観点から、検討を行った。
(a)上記した課題は、どのような現場の誰でもが持つ課題であるかどうか。検討の結果は、本社・本部と店舗の間における多層階の組織構造を有するチェーン企業CLのすべてが対象となりうるものであり、店長、部門長、一般従業員(臨時社員、契約社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイト等)の店舗スタッフ全員に関する課題である、と認識される。
【0032】
(b)本実施形態に係る社内コミュニケーションシステム1は、現在の何を代替するのか。検討の結果は、朝礼や紙、白板、連絡ノートなどによる伝達、個人的なスマホアプリ、一部の人が使うメール、店長及び/又は部門長から直接の声がけなどを代替できるものが好ましい、と認識される。
【0033】
(c)本実施形態に係る社内コミュニケーションシステム1は、チェーン企業CLにおいて、どの予算項目を充当して導入することが可能であるのか。検討の結果は、例えば、情報システム費、人材関連費、教育研修費などが充当可能であると考えられる。
【0034】
(d)本実施形態に係る社内コミュニケーションシステム1の導入について、費用対効果は計算できるか。検討の結果は、効果については、タスク達成率の向上、eNPS(Employee Net Promoter Score)の向上、一人あたり売上高の向上、採用コストの抑制、教育コストの抑制、クレーム減少(顧客満足度向上)などの総和として計算できると考えられる。なお、eNPSは、「親しい知人や友人にあなたの職場をどれくらい勧めたいか」を従業員に尋ね、その結果を「職場の推奨度」として数値化したものである。従業員のエンゲージメントを可視化する指標の1つとなりうる。
【0035】
上記の4つの観点をまとめると、本実施形態に係る社内コミュニケーションシステム1は、スーパーマーケットや飲食店など店舗ビジネスのほとんどを対象とすることができ、さらに店舗スタッフ全員に関する課題であることから「ターゲットは広く」、「業務組み込み系」かつ「既存業務の代替」であり、「効果測定が可能」なシステムであるということができる。
【0036】
ここで、上記した点と一部重複するが、店舗ビジネスを運営するチェーン企業CLの経営課題について補足すると、次のような点が指摘されうる。すなわち、経営課題としては、本社・本部からの指示が一般従業員に伝わりにくい、その指示が実行されているのかも分かりにくい、本社・本部からの指示も整理されているとは必ずしも言えない、今後はさらに人材不足でパートや外国人も増え、コミュニケーションは一層難しくなる、などの点が挙げられる。結果として、採用の厳しさ、退職抑制の必要性、労働生産性の向上が喫緊の課題となる。したがって、一般従業員の一人一人が持っているモバイルとつながり、コミュニケーションをとりやすくすること、一人一人に本部の指示を的確に伝えること、そして、一人一人が現場で感じていることや意見を吸い上げて、スタッフにモチベーションを上げてもらうことが重要になる。また、店舗ならではの機能として、本社・本部が顧客の声や現場の声を収集し、戦略に活かすことやスタッフのモチベーションをモニタリングできる仕組みも求められる。
【0037】
以上のような分析を踏まえ、本実施形態に係る社内コミュニケーションシステム1は、以下のように適用される。
【0038】
店舗ビジネスの営業機能は、店舗すなわち現場にあるということを再認識し、社内コミュニケーションシステム1は、その現場の一般従業員であるスタッフにとって、次の点を実現することで労働生産性を向上させる。
・本社・本部、店長及び/又は部門長と密なコミュニケーションを取る。
・店舗やチェーン企業CLの方針を理解し、顧客ニーズを把握し続ける。
・チェーン企業CLとのつながりを感じ、モチベーションを上げ続ける。
【0039】
社内コミュニケーションシステム1は、店舗ビジネスを展開するチェーン企業CLにおいて活用されるべく、以下のようなコンセプトを備える。なお、チェーン企業CLとしては、本邦企業はもちろんのこと、アジアのみならず、外国企業にも適用されうる。
【0040】
社内コミュニケーションシステム1は、本社・本部→店長→部門長→一般従業員(スタッフ)のすべてのコミュニケーションを一本化し、ノンデスクワーカーが意欲的に働ける世界を実現することで、すべての店舗の魅力を増やし、そして社会の生産性向上に貢献する。なお、本部側には、スーパーバイザー(エリア長)を含んでよい。スーパーバイザーは、エリアの複数の店舗の管理を担当する本部側の担当者であり、多くのチェーンストアに存在する役職である。社内コミュニケーションシステム1は、従業員エンゲージメントを向上させるコミュニケーションツールであって、スタッフの実行力が向上する仕組みを、「ToDo」と「コミュニケーション」をもって達成する。ここで、「ToDo」とは、「いつかやるべきこと」を示すものであり、具体的には、ToDoリストとして、リスト化される。また、社内コミュニケーションシステム1は、
図2に矢印で示すように、店舗やチェーン企業CL外のお客様と、店舗やチェーン企業CL内の各種要素(一般従業員や部門長等)との間の、コミュニケーションにも寄与してもよい。例えば、お客様と接する機会が多いパートなどのスタッフが、お客様の意見や要望等を拾い上げることや、本社・本部等からの指示に基づく商品説明等を、お客様に伝えること等に、利用されてもよい。
【0041】
社内コミュニケーションシステム1は、
図3に示されるように、3つのサービスを提供する。1つ目のサービスの特徴Aは、一般従業員個人の端末装置20(スマートフォン等)が繋がるコミュニケーションシステムであること、2つ目のサービスの特徴Bは、一般従業員のやりがいを向上させる仕組み(機能)を有すること、3つ目のサービスの特徴Cは、カスタマーサクセス(社内コミュニケーションシステム1の顧客であるチェーン企業CLのために提供する成功支援の活動)や育成、eNPSなどを運用(サポート)することである。これによって、社内コミュニケーションシステム1は、コミュニケーションツールとして働く人の一人一人が会社や他のスタッフとつながり、会社への共感や、相互信頼関係の構築を実現することと、働きがいをもって仕事に取り組めるようにする仕組みを提供する。
【0042】
より具体的には、
図4に示されるように、社内コミュニケーションシステム1を導入したチェーン企業CLにおいて、本社・本部HQは、各店舗ST1,ST2に業務指示を行い、各店舗ST1,ST2の店長は、社員、パート(該当すれば、部門長を含む)などの一般従業員に業務指示を行う。それと同時に、本社・本部HQは、一般従業員に対し、彼らのエンゲージメントを高める仕組みとして、後述するように、通信文を直接発信する。また、各店舗の中では、店長、社員、パート(該当すれば、部門長を含む)間でのコミュニケーションを活性化させる。
【0043】
社内コミュニケーションシステム1は、チェーン企業CLがサーバ装置10を自社に導入して独自に運用してもよいが、システム提供者が、技術的にはSaaS(Software as a Service)として、また、経営的にはカスタマーサクセスとして、チェーン企業CLを顧客会社等として提供するようにしてもよい。
図5は、社内コミュニケーションシステム1が、チェーン企業CLを顧客会社等として、システム提供者のSaaSとして提供される場合を図示している。なお、社内コミュニケーションシステム1の利用者は、会社組織に限られず、同様の課題を抱える個人事業主も含まれうることから、顧客会社等としている。
【0044】
社内コミュニケーションシステム1は、チェーン企業CL(顧客会社等)内において、顧客である会社等と、その会社等に勤務する一般従業員である個人スタッフが利用する。したがって、会社等のユーザIDと、一般従業員(個人スタッフ)のユーザIDが設定されるが、システム提供者によってSaaSで提供される場合、提供された社内コミュニケーション1の利用料は、例えば、ユーザIDの数をベースとして課金されるようにしてもよい。
【0045】
図6を参照して、社内コミュニケーションシステム1が果たす各機能を説明する。より詳しくは、
図9を参照して、「社内コミュニケーションシステムにおける処理」として説明するので、ここでは概略にとどめる。社内コミュニケーションシステム1は、
図6に示されるように、タスク管理機能151F、コミュニケーション機能152F、エンゲージメント機能153F、コンディション調査・計測機能154Fを備えている。なお、社内コミュニケーションシステム1が備える機能は、これらの機能に限られず、そのほかの機能を備えるようにしてもよいし、一部が省略されてもよい。
【0046】
タスク管理機能151Fは、各店舗STにおける一般従業員ごとのタスクについて、例えば、ToDoリストを作成するなど、日々、実行すべきタスクを管理する機能である。具体的には、一般従業員に割り当てられる個々のタスクに関するタスク情報に基づき、タスク管理機能151Fによって、一般従業員が実行すべきタスクが端末装置20の表示部25に表示される。タスクを完了すると、一般従業員がタスクごとに設けられたチェックボックスをチェックすることにより、タスクが管理される。
【0047】
コミュニケーション機能152Fは、本社・本部HQ、店長、部門長、一般従業員(社員、パート等)間におけるコミュニケーションを形成する機能である。具体的な手段としては、本社・本部HQから一般従業員への情報シェア(通信文の送信)を行うとともに、店舗ST内では、店長、部門長、一般従業員の間で各種のSNSを活用してコミュニケーションを図る。後者については、
図6では、チャットを活用する例を示している。
【0048】
エンゲージメント機能153Fは、本社・本部HQから一般従業員への情報シェア(通信文の送信)や、店長、部門長、一般従業員の間のコミュニケーションに基づいて、一般従業員のエンゲージメントを向上させる機能である。具体的には、詳しくは後述するが、エンゲージメント機能153Fによって、勤務時間帯外において一般従業員が本社・本部HQからの情報シェア(通信文)や、店長及び/又は部門長からのチャット(通信文)の共有に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、一般従業員へのインセンティブを算出する。インセンティブは、時間外手当及び/又は時間外ポイントとしてよい。なお、時間外手当は、労働基準法などの法律に基づき、勤務時間帯外において行った各種の労働(例えば法定労働時間外の労働)に対して支払うべき対価であってよい。
【0049】
コンディション調査・計測機能154Fは、一般従業員の業務実行状況を調査し、個々のタスクの熟練度を計測する。コンディション調査・計測機能154Fによって、個々のタスクの開始時と完了時の日時を記録し、その推移を追跡する。また、この機能によって、コロナ禍の現況を考慮すると、一般従業員の体調などの身体面でのコンディションを記録するようにしてもよい。また、身体面のコンディションに加えて又は代えて、精神的なコンディションを記録するようにしてもよい。
【0050】
社内コミュニケーションシステム1の適用例として、
図7に、一般従業員の端末装置20に表示される本社・本部、店長及び/又は部門長からの通信文の例を、
図8に、エンゲージメント機能153Fの具体例を、それぞれ示す。
【0051】
図7(a)は、売り場リーダー(部門長の例)が一般従業員に送信した通信文(業務連絡)の例である。関連する画像とともに、売り場メンバーあてに、今日のタスクを連絡している。個々の通信文の内容は任意であるが、例えば、今日の売り上げ目標、商品の特別セールやキャンペーン情報、昨今のコロナ禍に伴う注意事項などが盛り込まれてよい。
【0052】
図の下段には、この業務連絡を共有した場合の一般従業員に対するインセンティブを付与し、会社の情報に触れる機会を増やすことでエンゲージメントを向上させる例を示している(端末装置20の表示部25に表示されるものではない)。ここでは、例として、通信文のテキストに係る全文字数又はあらかじめ定められたカウントの対象となる部分の文字数が300文字の場合に、テキスト1文字あたりの読み取りに要する時間を0.1秒として、通信文の共有に要する時間換算を30秒と算出している。そして、一般従業員の時給が1000円としたとき、秒単価が約0.28円となることから、30秒分として8円(円未満切り捨て)を一般従業員へ時間外手当を支給する例を示している。また、現金ではなく、エンゲージメントの付与が時間外ポイントの場合には、1円1ポイントとして、8ポイントを付与する例を示している。なお、ポイントを支給するか現金を支給するか又はその双方を支給するかは、その時の法律等に従って適宜設定されてもよい。例えば、
図5に示すシステムであれば、社内コミュニケーションシステム1の運営側がポイントを支給してもよい。
【0053】
図7(b)は、本社・本部HQから、社長が直接、新事業年度の方針について記載した通信文(社長メッセージ)の例である。関連する画像とともに、全従業員あてに、今期の事業方針を示して共有するものである。このような通信文の場合、その重要性、インパクトを勘案して、画像は動画であることが好ましく、社長の肉声が流れることによる一体感を形成することが有効である。
【0054】
図の下段には、この業務連絡を共有した場合の一般従業員に対するインセンティブを付与し、会社の情報に触れる機会を増やすことでエンゲージメントを向上させる例を示している(端末装置20の表示部25に表示されるものではない)。ここでは、例として、通信文のテキストに係る全文字数又はあらかじめ定められたカウントの対象となる部分の文字数が100文字、動画が200MB(2分)の場合に、テキスト1文字あたりの読み取りに要する時間を0.1秒、動画再生時間2分として、通信文の共有に要する時間換算を2分10秒と算出している。そして、一般従業員の時給が1000円としたとき、秒単価が約0.28円となることから、2分10秒分として36円(円未満切り捨て)を一般従業員へ時間外手当を支給する例を示している。また、現金ではなく、エンゲージメントの付与が時間外ポイントの場合には、1円1ポイントとして、36ポイントを付与する例を示している。
【0055】
図8は、チェーン企業CLにおけるそれぞれの立場において、社内コミュニケーションシステム1を用いて、時間外手当や時間外ポイント以外の点においてエンゲージメントを高めていくことが可能かを表にまとめて示したものである。同表の横軸の項目に、「誰の?」、「何の課題を?」、「どこで」、「どうやって?」、「エンゲージメント機能」、「頻度」を取って整理しており、チェーン企業CLにおけるそれぞれの立場において、どのようなシチュエーションでエンゲージメントを高めうるかを示している。例えば、
図8では、スタッフの称賛行動(例えばお客様に喜ばれた行動やクレームなどにうまく対応した行動)等を投稿者が匿名で社内に共有(投稿)される例が開示されている。このような匿名の投稿に対しても本発明が適用されてもよい。なお、匿名であることから、投稿しやすさが増し、社内コミュニケーションの促進が期待できる。また、社内には匿名での共有であるが、直接の上長には誰が投稿者であるかがわかるため、投稿者の評価に繋がる仕組みとされてもよい。
【0056】
(社内コミュニケーションシステムにおける処理)
次に、
図9を参照して、上述した社内コミュニケーションシステム1に関連したサーバ装置10の機能的な処理について説明する。
図9は、上述した社内コミュニケーションシステム1に関連したサーバ装置10の機能を示す概略的なブロック図である。
【0057】
サーバ装置10は、
図9に示すように、記憶部門として、タスク情報記憶部140と、ユーザ情報記憶部142と、シフト情報記憶部144と、インセンティブ情報記憶部146とを含み、処置部門として、タスク管理部151と、コミュニケーション部152と、エンゲージメント部153と、コンディション調査・計測部154を備える。
【0058】
タスク情報記憶部140、ユーザ情報記憶部142、シフト情報記憶部144、インセンティブ情報記憶部146の各記憶部門は、
図1bに示したサーバ装置10の記憶部13により実現できる。なお、タスク情報記憶部140からインセンティブ情報記憶部146の各記憶部門の設定は、説明の便宜を考慮して機能別に分類したものであり、同様の機能が動作するのであれば、一の記憶部内に記憶されるデータの一部又は全部が、他の記憶部内に記憶されてもよい。
【0059】
タスク管理部151と、コミュニケーション部152と、エンゲージメント部153と、コンディション調査・計測部154の各処理部門は、
図1bに示したサーバ装置10の制御部12が、適宜、記憶部13や通信部11と連携し、記憶部13内の1つ以上のプログラムを実行することで実現できる。各記憶部門と同様に、タスク管理部151からコンディション調査・計測部154の各処理部門の設定は、説明の便宜を考慮して機能別に分類したものであり、同様の機能が動作するのであれば、一の処理部の機能の一部又は全部が、他の処理部により実現されてもよい。
【0060】
まず、各記憶部門について、説明する。タスク情報記憶部140には、一般従業員に割り当てられる個々のタスクに関するタスク情報が記憶される。例えば、スーパーマーケットであれば、売り場メンバー(規模によっては、肉類、魚類、野菜類、乾物類などの商品分類ごとに細分化)、お惣菜調理メンバー、場内整理メンバー、仕入れメンバー、ごみ処理メンバーなどの業務分担に応じた、時間割が伴ったタスク情報が記憶される。タスク情報には、日々の定型的なタスクが中心となるが、例えば地震などの災害時に備えた非定型的な、あるいは、非常時のタスク情報も含まれてよい。
【0061】
ユーザ情報記憶部142には、社内コミュニケーションシステム1のユーザに関するユーザ情報が記憶される。ユーザ情報には、本社・本部HQにおける社長や担当取締役のほか、管理部門スタッフに係るユーザ情報、各店舗STにおける店長、部門長、一般従業員に係るユーザ情報が含まれる。一般従業員に係るユーザ情報は、ユーザIDごとに、ユーザ名、年齢、性別、担当業務、経験年数、エンゲージメント情報(過去のエンゲージメントに関する情報<時間外手当及び/又は時間外ポイントなどの付与されたインセンティブ>の履歴)、及び各種のユーザパラメータを含んでよい。さらに、ユーザのプロフィール(趣味や好み、活動内容等)を表すユーザプロフィール情報を含んでもよい。ユーザ情報は、社内コミュニケーションシステム1において、エンゲージメント向上に反映されうる。
【0062】
シフト情報記憶部144には、チェーン企業CLの店舗STにおいて勤務している一般従業員の多くがシフトワーカーであることに鑑み、個々の一般従業員ごとの勤務時間帯を含むシフト情報が記録される。勤務日における出退勤時刻のみならず、シフトワーカーの場合、暦どおりの勤務体制ではない場合も多いことから、休日、休暇日などについても記憶される。なお、本明細書において、勤務日又は勤務日以外の定義は、法律等に基づくものであってよい。この際、本サービス(社内コミュニケーションシステム1に係るサービス)を利用する日は、労働契約上本来的には勤務日以外であったとしても、実質的に法律上の“勤務日”として扱われることしてよい。すなわち、任意の一のスタッフに関して、ある一日が、本来的には勤務日以外であったとしても、その日に、当該スタッフが本サービスを利用すると、その瞬間から、その日は、実質的に“勤務日”として扱われてよい。他方、本サービスでは、その日の再度、同スタッフが本サービスを利用した場合、「勤務日以外での本サービスの利用」として扱われてよい。以下、本明細書において、勤務日とは、特に言及しない限り、本来的な勤務日を意味する。
【0063】
インセンティブ情報記憶部146には、一般従業員のエンゲージメントに反映されるインセンティブに関するインセンティブ情報が記憶される。前述したように、社内コミュニケーションシステム1は、インセンティブとして、時間外手当及び/又は時間外ポイントの付与を柱としているが、インセンティブ情報には、時間外手当の単価、時間外手当の時間外ポイントへの変換率などについての基準に関する情報が含まれる。
【0064】
次に、各処理部門について、説明する。タスク管理部151は、各店舗STにおける一般従業員ごとのタスクについて、例えば、ToDoリストを作成するなど、日々、実行すべきタスクを管理する処理部門である。具体的には、タスク管理部151は、タスク情報記憶部140に記憶された、一般従業員に割り当てられる個々のタスクに関するタスク情報に基づいて、一般従業員が実行すべきタスクを端末装置20の表示部25に表示する。タスクを完了すると、一般従業員がタスクごとに設けられたチェックボックスをチェックすることにより、タスクが管理される。
【0065】
コミュニケーション部152は、本社・本部HQ、店長、部門長、一般従業員(社員、パート等)間におけるコミュニケーションを形成する機能である。具体的な手段としては、本社・本部HQから一般従業員への情報シェアを行うとともに、店舗ST内では、店長、部門長、一般従業員の間で各種のSNSを活用してコミュニケーションを図る。後者については、
図6で図示したように、例えばチャットを活用してよい。
【0066】
エンゲージメント部153は、本社・本部HQから一般従業員への情報シェア(通信文の送信)や、店長、部門長、一般従業員の間のコミュニケーションに基づいて、一般従業員のエンゲージメントを向上させる。具体的には、詳しくは後述するが、エンゲージメント部153は、勤務時間帯外において一般従業員が本社・本部HQからの情報シェア(通信文)や、店長及び/又は部門長からのチャット(通信文)の共有に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、一般従業員へのインセンティブを算出する。
【0067】
インセンティブは、時間外手当及び/又は時間外ポイントとしてよい。時間外手当について説明すると、本社・本部HQからの情報シェア(通信文)や、店長及び/又は部門長からのチャット(通信文)の共有には、一般従業員の個人差によって、通信文を読み込む速度などが異なるため、一般従業員間の不公平を招かないように配慮する必要がある。そこで、本実施形態では、読み込みの個人差を避け、統一的に設定された基準をもって計測することとし、通信文に記載されたテキストの文字数や動画の再生時間に基づいて、時間を合理的なロジックに基づいて時間外手当を算出することとしている。先に
図7で例示したとおり、例えば、テキストの場合は、1文字あたり平均0.1秒とすることが可能であり、動画の場合は、再生時間に基づくことが合理的と考えられる。
【0068】
時間外手当は一般従業員の労働状況などに応じて個別に算出しないといけないため、エンゲージメント部153は、シフト情報記憶部144に記憶されたシフト情報と連携して、時間外手当を算出する。例えば、通常の業務において残業が月60時間を超えた場合、時間外手当は割増50%となるため、社内コミュニケーションシステム1においても、これを反映する必要がある。また、例えば、扶養控除の上限を超えないかどうかについても、判定する必要がある。
【0069】
さらには、一般従業員の休日や休暇日に休日手当(時間外手当の一例)が生じないようにするため、例えば、一般従業員の端末装置20において、休日や休暇日には社内コミュニケーションシステム1を動作させるアプリケーションが起動できないようにするなど、利用が制限されるようにしてもよい。なお、法律上、原則として、週1日は休日(法定休日)が付与されなければならない。
【0070】
例えば、シフトワーカー等のサービス利用に関する割増給与などの判定の考え方は、以下の通りであってもよい。まず、勤務時間帯と、勤務時間帯以外の定義は、以下の通りであってよい。
勤務時間帯・・・勤務日の働いている時間
勤務時間帯以外・・・上記以外の時間、すなわち、勤務日の勤務時間帯の前後(例えば通勤中)や、勤務日以外の日(つまり休日、休暇日など)。
本サービス(社内コミュニケーションシステム1に係るサービス)の利用は、勤務時間帯以外において利用される場合に、以下の3種類の判定が実行されてもよい。なお、勤務時間帯における本サービスの利用は、支給(増額)の対象外である。
(判定1)勤務日の勤務時間帯以外の利用であるか否かの判定(休憩時間や法定時間外や深夜労働などの判定)。
(判定2)勤務日以外の利用であるか否かの判定(法定休日や法定時間外や、深夜労働などの判定)。
(判定3)その他、年間を通して所得税の扶養控除や社会保険の扶養の判定。
ここで、判定1及び判定2の判定結果に基づいて、勤務時間帯以外の利用の場合、本サービスの利用に起因した給与の増額が実現されてよい。他方、判定3の判定結果に基づいて、本サービスの利用に起因した給与の増額は禁止され、本サービスの停止が実現されてよい。換言すると、判定3に関連した不利益がユーザに生じないように、本サービスの停止の要否が、個人事情等に応じて個別に判定されてもよい。また、判定1及び判定2の判定結果が法令等に抵触しないように、本サービスの利用に起因した給与の増額は禁止され、本サービスの停止が実現されてよい。例えば、判定1に関しては、休憩時間とすべき期間であると判定した場合は、当該期間中は本サービスの使用を停止してもよい。また、会社が法定労働時間を超えた労働を禁止している場合であって、本サービスの更なる利用により、かかる規定に抵触してしまう状況下では、本サービスの利用を停止してもよい。また、判定2に関しては、法定休日である期間であると判定した場合は、当該期間中は本サービスの使用を停止してよい。また、いわゆる36協定で定めた月45時間の時間外労働を超えてしまうと判定した場合は、当該状況が解消するまでは、本サービスの使用を停止してよい。
【0071】
インセンティブとしての時間外手当の単価の設定については、
図7で示したように、契約済みの時給単価に基づくことが基本となるが、一般従業員の勤務状況や在籍期間など、会社との関係性等を考慮し、変動するようにしてもよい。この際、一般従業員間の不公正が生じないよう、また、会社側の恣意性を排除するため、エンゲージメント部153は、一般従業員の勤務状況及び在籍期間の少なくとも1つを含む組織との関係性を考慮して、あらかじめ設定された基準をもって変動させることが好ましい。
【0072】
一般従業員のエンゲージメントをさらに一層向上させるため、インセンティブに一般従業員の努力が反映されるような措置を採用してもよい。例えば、コミュニケーション部152は、本社・本部、店長及び/又は部門長からの通信文、又は、過去の通信文に関連して、一般従業員に組織の運営に関するクイズを送信し、一般従業員からの回答に示された理解度を記録する。そして、エンゲージメント部153は、この理解度に応じて、特別インセンティブを算出するようにしてもよい。例えば、日々のタスク以上に、本社・本部の社長から示された会社の経営方針の共有などにおいて、深い理解度や、現状の改善提案が示されたような場合に、特別時間外手当が支給されるようにしてもよい。
【0073】
以上では、インセンティブが、時間外手当、特別時間外手当である場合について述べたが、インセンティブは、
図7でも示したように、時間外手当、特別時間外手当に代えて又は加えて、ポイントを付与してもよい。ポイントを付与する場合は、以上の説明において、時間外手当、特別時間外手当は、時間外ポイント、特別時間外ポイントと読み替える。ここで、ポイントとは、例えば自社で独自に付与するポイントとする場合には、一般従業員が勤務する当該チェーン企業CLの店舗ST内で、商品と交換可能とするものであってよい。一方、ポイントとして、外部のカード会社のポイントを採用するようにしてもよい。また、特別時間外手当を含む時間外手当は、典型的には、通常手当よりも割増であるが、適宜、割増がない手当(通常手当相当)であってもよい。
【0074】
最後に、コンディション調査・計測部154は、一般従業員の業務実行状況を調査し、個々のタスクの熟練度を計測する。コンディション調査・計測部154は、個々のタスクの開始時と完了時の日時を記録し、その推移を追跡する。また、この機能によって、コロナ禍の現況を考慮すると、一般従業員の体調などの身体面でのコンディションを記録するようにしてもよい。コンディション調査・計測部154によって計測されたこれらの情報は、上述したエンゲージメント部153におけるインセンティブの算出に反映される。
【0075】
(社内コミュニケーションシステムの拡張例)
社内コミュニケーションシステム1は、他の関連するシステムと組み合わせることにより、総合的な経営システムとして拡張されてもよい。関連するシステムとしては、例えば、勤怠管理システム、給与計算システム、人事システム、仕入れ売上管理システムなどが挙げられ、社内コミュニケーションシステム1をこれらのシステムと連携又は統合するように拡張してもよい。
【0076】
また、社内コミュニケーションシステム1は、スタッフからの情報の発信、共有などにおいても、スタッフ側から提供される情報に基づいて、当該スタッフに対する付与すべき同様の合理的な給与の計算が可能とされてもよい。すなわち、双方向のコミュニケーションに適用されてもよい。
【0077】
以上、社内コミュニケーションシステム1について説明したが、本実施形態の態様は、以下のように整理することができる。
【0078】
[1]
従業員エンゲージメントを向上させる社内コミュニケーションシステム1であって、
本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを形成するコミュニケーション部と、
前記コミュニケーション部によって形成されたコミュニケーションにおいて、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長からの通信文の共有、又は、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長への通信文の共有、に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、前記一般従業員へのインセンティブを算出するエンゲージメント部と、
を備える社内コミュニケーションシステム。
【0079】
[2]
前記インセンティブは、時間外手当及び/又は時間外ポイントである、上記[1]に記載の社内コミュニケーションシステム。
【0080】
[3]
前記一般従業員がシフトワーカーである場合、前記エンゲージメント部は、前記一般従業員のシフト情報と連携して、前記インセンティブを算出する、上記[1]に記載の社内コミュニケーションシステム。
【0081】
[4]
前記エンゲージメント部は、前記一般従業員が前記通信文の共有に要する時間について、あらかじめ統一的に設定された基準をもって計測し、前記インセンティブを算出する、上記[1]に記載の社内コミュニケーションシステム。
【0082】
[5]
前記エンゲージメント部は、前記一般従業員が前記通信文の共有に要する時間に係る単価について、前記一般従業員の勤務状況及び在籍期間の少なくとも1つを含む組織との関係性、又は、前記一般従業員ごとに異なりうる個人事情、若しくは合法性を考慮してあらかじめ設定された基準をもって変動させ、前記インセンティブを算出する、上記[1]に記載の社内コミュニケーションシステム。
この場合、一般従業員ごとに異なりうる個人事情とは、任意であるが、本人の希望に基づく収入の上限値(例えば、所得税の扶養控除の要件等との関係から設定される上限値等)等を含んでよく、一般従業員自身等により設定及び更新(変更)可能とされてよい。また、合法性は、日本では労働基準法といった法律に照らした合法性であってよく、最低賃金や時間外労働に対する割増賃金等に関連してよい。
【0083】
[6]
前記コミュニケーション部は、前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長からの前記通信文、又は、過去の通信文に関連して、前記一般従業員に組織の運営に関するクイズを送信し、前記一般従業員からの回答に示された理解度を記録し、
前記エンゲージメント部は、前記理解度に応じて、特別インセンティブを算出する、上記[1]に記載の社内コミュニケーションシステム。
【0084】
[7]
前記特別インセンティブは、特別時間外手当及び/又は特別時間外ポイントである、上記[6]に記載の社内コミュニケーションシステム。
【0085】
[8]
前記通信文は、文字情報及び/又は動画情報を含む、上記[1]に記載の社内コミュニケーションシステム。
【0086】
[9]
前記一般従業員が休日又は休暇日にあたる場合、前記一般従業員による利用が制限される、上記[1]に記載の社内コミュニケーションシステム。
【0087】
[10]
従業員エンゲージメントを向上させる社内コミュニケーション方法であって、
本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを形成するコミュニケーションステップと、
前記コミュニケーションステップによって形成されたコミュニケーションのうち、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長からの通信文の共有、又は、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長への通信文の共有、に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、前記一般従業員へのインセンティブを算出するエンゲージメントステップと、
を備える社内コミュニケーション方法。
【0088】
[11]
従業員エンゲージメントを向上させる社内コミュニケーションプログラムであって、
コンピュータに、
本社・本部、店長及び/又は部門長と、一般従業員との間のコミュニケーションを形成するコミュニケーション処理と、
前記コミュニケーション処理によって形成されたコミュニケーションのうち、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長からの通信文の共有、又は、勤務時間帯外において前記一般従業員が前記本社・本部、前記店長及び/又は前記部門長への通信文の共有、に要した時間に基づいて、所定の条件を満たした場合に、前記一般従業員へのインセンティブを算出するエンゲージメント処理と、
を実行させる社内コミュニケーションプログラム。
【0089】
以上、各実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素の全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 社内コミュニケーションシステム
10 サーバ装置
11 通信部
12 制御部
13 記憶部
20 端末装置
21 通信部
22 制御部
23 記憶部
24 入力部
25 表示部
30 ネットワーク
140 タスク情報記憶部
142 ユーザ情報記憶部
144 シフト情報記憶部
146 インセンティブ情報記憶部
151 タスク管理部
152 コミュニケーション部
153 エンゲージメント部
154:コンディション調査・計測部