(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025982
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】メンタルヘルスケア管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240220BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129389
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】520224801
【氏名又は名称】株式会社VIVIT
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬介
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義伸
(72)【発明者】
【氏名】大倉 朝子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光一
(72)【発明者】
【氏名】倉恒 弘彦
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】従業員等のメンタルヘルスの状態を、業務との関連において適切・的確に把握して管理・ケアする。
【解決手段】ケア対象者端末30で取得されるケア対象者のメンタルヘルス情報を受信するメンタルヘルス情報受信部11と、ケア対象者端末30で取得されるケア対象者の業務関連情報を受信する業務関連情報受信部12と、メンタルヘルス情報及び業務関連情報に基づいて、各ケア対象者のメンタルヘルス情報を可視化したダッシュボード画面を生成して表示させるダッシュボード画面生成部13を備え、ダッシュボード画面生成部13が、メンタルヘルス情報を一軸とし、業務関連情報を他の一軸とした二次元グラフ中に、各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面を生成する構成としてある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケア対象者のメンタルヘルス状態を監視して管理するためのシステムであって、
ケア対象者端末で取得されるケア対象者の所定のメンタルヘルス情報を受信するメンタルヘルス情報受信手段と、
前記ケア対象者端末で取得されるケア対象者の所定の業務関連情報を受信する業務関連情報受信手段と、
前記メンタルヘルス情報及び前記業務関連情報に基づいて、各ケア対象者のメンタルヘルス情報を可視化したダッシュボード画面を生成して表示させるダッシュボード画面生成手段と、を備え、
前記ダッシュボード画面生成手段が、
前記メンタルヘルス情報を一軸とし、前記業務関連情報を他の一軸としたグラフ中に、各ケア対象者を特定可能にプロット表示した前記ダッシュボード画面を生成する
ことを特徴とするメンタルヘルスケア管理システム。
【請求項2】
前記メンタルヘルス情報が、
前記ケア対象者のストレス状態又は脳の疲労状態の少なくともいずれかを示す情報からなる
ことを特徴とする請求項1記載のメンタルヘルスケア管理システム。
【請求項3】
前記ケア対象者がコールセンター業務に携わるオペレータである場合に、
前記業務関連情報が、
前記ケア対象者の、ACD呼,ACD時間,応答可能時間,保留呼,平均保留時間,研修・面談の回数,エスカレーション件数の少なくともいずれかを示す情報からなる
ことを特徴とする請求項1又は2記載のメンタルヘルスケア管理システム。
【請求項4】
ケア対象者のメンタルヘルス状態を監視して管理するためのシステムを構成する情報処理装置を、
ケア対象者端末で取得されるケア対象者の所定のメンタルヘルス情報を受信するメンタルヘルス情報受信手段、
前記ケア対象者端末で取得されるケア対象者の所定の業務関連情報を受信する業務関連情報受信手段、
前記メンタルヘルス情報及び前記業務関連情報に基づいて、各ケア対象者のメンタルヘルス情報を可視化したダッシュボード画面を生成して表示させるダッシュボード画面生成手段、として機能させ、
前記ダッシュボード画面生成手段に、
前記メンタルヘルス情報を一軸とし、前記業務関連情報を他の一軸とした二次元グラフ中に、各ケア対象者を特定可能にプロット表示した前記ダッシュボード画面を生成させる
ことを特徴とするメンタルヘルスケア管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば企業や団体,組織等で業務に携わる社員や従業員,職員等について、ケア対象者としてストレス状態や脳の疲労状態などを監視することにより、各ケア対象者のメンタルヘルスの管理・ケアを支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、企業や団体,組織等では、そこに所属する社員や従業員,職員等が適正に業務を遂行するために、各人の健全・健康なメンタルヘルス(心の健康)の維持・管理が必要となる。
特に近年は、働き方改革の伸展や、感染症のまん延防止等の観点から、所謂テレワーク・在宅勤務等と呼ばれる業務形態が普及してきており、職場の上司や同僚の目が行き届かない環境における個々人のメンタルヘルスのケアが重要となって来ている。
【0003】
そこで、そのような企業や組織等における社員,従業員等のメンタルヘルスケアを適切に行うことで、各業務担当者の心的な負担を軽減しつつ、効率的な業務運用を行えるようにすることができる支援技術等が望まれている。
ここで、このようなメンタルヘルスケアに関連する技術としては、例えば特許文献1には、個人の心拍数などの生体データを測定・検知することで、各人のストレス状態を評価・判定する「ストレス状態評価装置」が提案されている。
【0004】
具体的には、この特許文献1に開示されている「ストレス状態評価装置」は、集団を構成する各個人から生体データを取得する取得手段と、取得手段から取得した生体データから各個人の非ストレス状態を特定する第1の特定手段と、第1の特定手段で特定した各個人の非ストレス状態により各個人のストレス状態の判断基準を調整する調整手段と、取得手段から取得した生体データから調整手段により調整した判断基準で各個人のストレス状態を特定する第2の特定手段と、第2の特定手段により特定された各個人のストレス状態から集団としてのストレス状態を演算する演算手段を備えることで、集団におけるストレス状態を評価できる、とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術を含めて、これまでのメンタルヘルスケアの支援技術には、更なる改良の余地があった。
例えば、特許文献1のストレス状態評価方法では、ウェアラブル端末(個人が身に付けるタイプの端末)によって個人の心拍変動などを検出するとうものであるが、単にある時点における個人のストレス状態を評価するというだけであり、その個人が行っている業務の内容や業務量,業務時間,負荷の度合いなどの影響が考慮されることはなかった。
このため、検出されたストレス状態が、業務によるものなのか個人的なプライベートな要因によるものなかは不明であり、また、業務による影響があったとしても、どの程度の業務量や業務時間,負荷等によるものなのかといった評価・判定を行うことはできなかった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するために提案されたものであり、企業や団体,組織等で業務に携わる社員や従業員,職員等をケア対象者として、各人のストレス状態や脳の疲労状態などのメンタルヘルス情報を取得するとともに、各ケア対象者の業務関連情報を取得して、各人のメンタルヘルスと業務の相関関係を視覚的に示すダッシュボード画面を生成・出力することにより、従業員等のメンタルヘルスの状態を業務との関連において適切・的確に把握して管理・ケアすることができるメンタルヘルスケア管理システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ケア対象者のメンタルヘルス状態を監視して管理するためのシステムであって、ケア対象者端末で取得されるケア対象者の所定のメンタルヘルス情報を受信するメンタルヘルス情報受信手段と、前記ケア対象者端末で取得されるケア対象者の所定の業務関連情報を受信する業務関連情報受信手段と、前記メンタルヘルス情報及び前記業務関連情報に基づいて、各ケア対象者のメンタルヘルス情報を可視化したダッシュボード画面を生成して表示させるダッシュボード画面生成手段と、を備え、前記ダッシュボード画面生成手段が、前記メンタルヘルス情報を一軸とし、前記業務関連情報を他の一軸とした二次元グラフ中に、各ケア対象者を特定可能にプロット表示した前記ダッシュボード画面を生成する構成としてある。
【0009】
また、本発明は、上記のような本発明に係るメンタルヘルスケア管理システムで実行されるプログラムとして構成することができる。
さらに、本発明は、上記のような本発明に係るメンタルヘルスケア管理システム及びプログラムによって実行可能な方法として実施することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、企業や団体,組織等で業務に携わる社員や従業員,職員等をケア対象者として、各人のストレス状態や脳の疲労状態などのメンタルヘルス情報を取得するとともに、各ケア対象者の業務関連情報を取得して、各人のメンタルヘルスと業務の相関関係を視覚的に示すダッシュボード画面を生成・出力することができる。
これにより、従業員等のメンタルヘルスの状態を業務との関連において適切・的確に把握して管理・ケアすることが可能となり、例えば在宅勤務で業務を行うコールセンターのオペレータなどのメンタルヘルスケアに好適なメンタルヘルスケア管理システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るメンタルヘルスケア管理システムの全体構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】メンタルヘルスケア管理システムにおける各部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】メンタルヘルスケア管理システムにおけるメンタルヘルス情報/業務関連情報の流れを模式的に示す説明図である。
【
図4】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、ある指定日における、「脳の疲労」を縦軸に、「ストレス」を横軸に設定した二次元グラフ中に、該当する各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
【
図5】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、
図4に示すダッシュボード画面から引き続いて、「特定(一人)のケア対象者」についての所定期間(分析期間)における脳の疲労/ストレスの値をプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
【
図6】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、ある指定日における、「脳の疲労(朝)」を縦軸に、「ストレス(朝)」を横軸に設定した二次元グラフ中に、該当する各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
【
図7】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、
図6に示すダッシュボード画面から引き続いて、縦軸を「ACD時間」に変更した二次元グラフ中に、該当する各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
【
図8】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、ある指定日における、「脳の疲労(夜)」を縦軸に、「保留呼」を横軸に設定した二次元グラフ中に、該当する各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
【
図9】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、
図8に示すダッシュボード画面から引き続いて、横軸を「エスカレ回数」に変更した二次元グラフ中に、該当する各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
【
図10】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、ある指定日における、「ACD時間」を縦軸に、「脳の疲労(朝)」を横軸に設定した二次元グラフ中に、該当する各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
【
図11】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、
図10に示すダッシュボード画面から引き続いて、縦軸を「保留呼」に変更した二次元グラフ中に、該当する各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
【
図12】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、コールセンターのオペレータ業務における受付件数を縦軸とし、通話時間を横軸とした二次元グラフ中に、該当する各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
【
図13】メンタルヘルスケア管理システムにおいて生成・表示される表示画面の一例であり、管理者が参照するコールセンターの全オペレータによる業務状態を示すダッシュボード画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るメンタルヘルスケア管理システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここで、以下に示す本発明のメンタルヘルスケア管理システム(本システム)は、プログラム(ソフトウェア)の命令によりコンピュータで実行される処理,手段,機能によって実現される。プログラムは、コンピュータの各構成要素に指令を送り、以下に示す本発明に係る所定の処理や機能等を行わせることができる。すなわち、本発明における各処理や手段,機能は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段によって実現される。
【0013】
なお、プログラムの全部又は一部は、例えば、磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ,その他任意のコンピュータで読取り可能な記録媒体により提供され、記録媒体から読み出されたプログラムがコンピュータにインストールされて実行される。また、プログラムは、記録媒体を介さず、通信回線を通じて直接にコンピュータにロードし実行することもできる。
また、本システムは、単一の情報処理装置(例えば一台のパーソナルコンピュータ等)で構成することもでき、複数の情報処理装置(例えば複数台のサーバコンピュータ群等)で構成することもできる。
【0014】
また、本システムのハードウェア構成は、特に図示しないが、CPU,RAM,ROM,HDD,入力装置,表示装置等を含む情報処理装置によって構成される。これらの構成要素はシステムバスで接続され、システムバスを介してデータのやり取りが行われる。CPU(Central Processing Unit)は、中央処理装置とも呼ばれ、コンピュータの中心的な処理を行う部位であり、各装置の制御やデータの計算/加工を行う。RAM(Random Access Memory)は、メモリ装置の一種で、データの消去・書き換えが可能なものであり、ROM(Read Only Memory)は、半導体などを用いたメモリ装置の一種で、データ書き込みは製造時1回のみで、利用時には記録されたデータの読み出しのみできるものである。HDD(Hard Disk Drive)は、磁性体の性質を利用し、情報を記録し読み出す補助記憶装置である。入力装置は、ユーザがコンピュータに対して操作指示を行うため、あるいは、文字等を入力するために使用され、具体的には、キーボード,マウス等で構成される。表示装置は、例えば液晶ディスプレイ等で構成され、タッチパネル機能を有するものであってもよい。その他、他の端末や情報処理装置等との通信が可能となる通信機能を備えることもできる。
【0015】
[システム構成]
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るメンタルヘルスケア管理システム1(以下「本システム1」という)は、メンタルヘルスケア管理サーバ10と、一又は二以上のケア対象者端末30(30a~30n)と、管理者端末40を備えて構成されている。
そして、これらメンタルヘルスケア管理サーバ10・ケア対象者端末30・管理者端末40は、LAN・WAN等のネットワークを含むインターネット100を介して接続され、それぞれ相互にデータ通信が可能となっている。
また、メンタルヘルスケア管理サーバ10・ケア対象者端末30は、インターネット100を介して、本システム1の外部に設置されている外部システム50とも通信可能に接続されるようになっている。
【0016】
ここで、本システム1において管理対象となるケア対象者としては、例えば、各企業・組織等で業務に携わる社員や従業員等である。
そして、特に本実施形態では、近年の働き方改革の伸展や感染症のまん延防止等の観点から導入が進んでいる、在宅勤務(テレワーク,リモートワーク)の形態で、職場の上司や同僚の目が行き届かない環境で業務を行う社員等を対象としている。
以下、本実施形態では、本システム1のケア対象者として、在宅勤務の形態で業務を行う社員等のうち、顧客等からの電話対応業務を行うコールセンターのオペレータを例にとって説明する。
【0017】
また、本システム1においては、メンタルヘルスケア管理サーバ10と、ケア対象者端末30/管理者端末40は、それぞれ異なる組織・企業等に設置・運営される情報処理装置によって構成することができる。この場合には、例えば、メンタルヘルスケア管理サーバ10は、本システム1をサービスとして顧客に提供する企業が運用する情報処理装置、ケア対象者端末30/管理者端末40は、本システム1を介して従業員等のメンタルヘルスケアの管理サービスの提供を受ける一又は二以の各企業や組織・団体等に備えられる情報処理装置によって構成されることになる。この場合には、ケア対象者端末30/管理者端末40は、本システム1にネットワークを介して接続される外部装置として機能することになり、本システム1はメンタルヘルスケア管理サーバ10のみによって構成されることになる。
【0018】
一方、メンタルヘルスケア管理サーバ10とケア対象者端末30/管理者端末40は、例えば同一の組織・企業等において設置・運営される情報処理装置によって構成することもできる。この場合には、本システム1はメンタルヘルスケア管理サーバ10・ケア対象者端末30・管理者端末40によって構成されることになり、本システム1を、例えば同一の組織・企業単位で運用される社内システムとして機能させることができる。
さらに、本システム1では、後述するように、外部システム50がケア対象者端末30から取得したメンタルヘルス情報を受信する外部の独立したシステムとして機能するようになっている。但し、この外部システム50の機能を、メンタルヘルスケア管理サーバ10が備えるようにすることもできる。その場合には、本システム1において独立した外部システム50は必要とされない。
【0019】
[メンタルヘルスケア管理サーバ]
メンタルヘルスケア管理サーバ10は、ケア対象者のメンタルヘルス状態を監視して管理するための、本システム1の中核となる情報処理装置であり、本発明のメンタルヘルスケア管理システムを構成している。
このメンタルヘルスケア管理サーバ10は、例えば、1又は2以上のサーバコンピュータやパーソナルコンピュータ、クラウドコンピューティングサービス上に構築された1又は2以上の仮想サーバからなるサーバシステム等、所定のプログラム(ソフトウェア)が実装された情報処理装置によって構成することができる。
【0020】
また、メンタルヘルスケア管理サーバ10には、図示しないOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)などが備えられ、サーバコンピュータとして運用されるようになっている。
そして、メンタルヘルスケア管理サーバ10には、Webサーバプログラムなどのミドルウェア上で稼働するソフトウェアが実装されるようになっている。
【0021】
このソフトウェアは、1又は2以上のケア対象者端末30/管理者端末40に対して、インターネット100等のネットワークを介して、例えばAPI(Application Programming Interface)の形式で利用可能なアプリケーションを公開、提供する。
これにより、各ケア対象者端末30/管理者端末40では、メンタルヘルスケア管理サーバ10から提供される、例えばケア対象者端末30からのメンタルヘルス情報の送信処理や、管理者端末40におけるダッシュボード画面の出力・表示処理等を実行するために運用される専用のアプリケーションプログラムやウェブブラウザ等を呼び出してログインすることにより、本発明に係るメンタルヘルスケア管理システムの機能を実行させ使用することができるようになる。
【0022】
また、メンタルヘルスケア管理サーバ10には、データベース等として実装される後述する所定のメンタルヘルスケア管理DB(データベース)20を構成する、本発明に係るメンタルヘルスケア管理システムの運用に必要となる所定の情報が取得・蓄積される記憶手段が備えられる。
記憶手段には、各種の情報リソースとして、本システム1における管理対象となる各ケア対象者を特定するための所定情報、例えば各ケア対象者の氏名・属性情報,ケア対象者端末30の識別情報などが記憶されるとともに、後述する各ケア対象者端末30から入力・送信される所定のメンタルヘルス情報や業務関連情報、例えば脈波に基づくストレス状態や脳の疲労状態を示す情報や業務時間・業務内容等を示す情報が、該当するケア対象者と対応付けて記憶され、また、後述するダッシュボード画面の生成や表示に必要となる描画データが記憶され、本システム1の運用に伴って随時必要な情報が読み出されて、記憶され更新されるようになっている。
【0023】
そして、本実施形態に係るメンタルヘルスケア管理サーバ10は、
図2に示すように、メンタルヘルス情報受信部11,業務関連情報受信部12,ダッシュボード画面生成部13の各部として機能するように構成される。
また、メンタルヘルスケア管理サーバ10には、上述した記憶手段によって構成されるメンタルヘルスケア管理DB20が構築されており、具体的には、メンタルヘルスケア管理DB20は、ケア対象者DB21,メンタルヘルス情報DB22,業務関連情報DB23,ダッシュボード描画データDB24が備えられており、本システム1におけるメンタルヘルスケア管理処理に必要な所定のデータがデータベースとして記憶・管理されるようになっている。
【0024】
[メンタルヘルス情報受信部]
メンタルヘルス情報受信部11は、ケア対象者端末30で取得されるケア対象者の所定のメンタルヘルス情報を受信する手段であり、本発明のメンタルヘルス情報受信手段を構成する。
このメンタルヘルス情報受信部11により、本システム1は、外部システム50を経由して間接的に、あるいは各ケア対象者端末30から直接的に、ケア対象者端末30において取得・生成された各ケア対象者のメンタルヘルス情報を受信することができる。
メンタルヘルス情報は、各ケア対象者の現在の心的状態、例えばストレス状態や脳の疲労状態を示す情報であり、このメンタルヘルス情報を本システム1において受信することで、各ケア対象者の心的状態を適切・的確に把握することが可能となる。
【0025】
ここで、メンタルヘルス情報受信部11におけるメンタルヘルス情報の受信は、例えば各ケア対象者端末30においてメンタルヘルス情報が出力・送信される定期・不定期のタイミングで実行することができ、例えば1日3回(朝9時・昼12時・夕方5時など)、ケア対象者端末30からのメンタルヘルス情報を受信することができる。
また、受信されたメンタルヘルス情報は、ケア対象者単位でメンタルヘルスケア管理DB20のメンタルヘルス情報DB22に格納・蓄積される。
【0026】
[業務関連情報受信部]
業務関連情報受信部12は、ケア対象者端末30で取得されるケア対象者の所定の業務関連情報を受信する手段であり、本発明の業務関連情報受信手段を構成する。
この業務関連情報受信部12により、
本システム1は、各ケア対象者端末30から直接的に、ケア対象者端末30において取得・生成された各ケア対象者の業務関連情報を受信することができる。
業務関連情報は、各ケア対象者の現在の業務状態、例えばその日の業務量や業務時間、業務内容等を示す情報であり、この業務関連情報を本システム1において受信することで、上述したメンタルヘルス情報から把握される各ケア対象者の心的状態と、そのケア対象者の業務との関連を適切・的確に把握することが可能となる。
【0027】
ここで、業務関連情報受信部12における業務関連情報の受信は、上述したメンタルヘルス情報受信部11におけるメンタルヘルス情報が出力・送信されるのと同じタイミングで実行することができ、例えば1日3回(朝9時・昼12時・夕方5時など)、ケア対象者端末30からの業務関連情報を受信することができる。
また、受信された業務関連情報は、ケア対象者単位でメンタルヘルスケア管理DB20の業務関連情報DB23に格納・蓄積される。
【0028】
[ダッシュボード画面生成部]
ダッシュボード画面生成部13は、上述したメンタルヘルス情報受信部11で受信されるメンタルヘルス情報及び業務関連情報受信部12で受信される業務関連情報に基づいて、各ケア対象者のメンタルヘルス情報を可視化したダッシュボード画面を生成して表示させる手段であり、本発明のダッシュボード画面生成手段を構成する。
このダッシュボード画面生成部13により、上述したメンタルヘルス情報・業務関連情報から把握できる各ケア対象者の心的状態と業務との関連を、ダッシュボード画面という資格を通じて直感的に認識される二次元の画面情報として生成・出力することができ、ケア対象者の心的状態と業務との関連を、より正確かつ適切・的確に把握することが可能となる。
【0029】
具体的には、本実施形態では、ダッシュボード画面生成部13は、ケア対象者の複数のメンタルヘルス情報、例えば、ストレス状態を一軸とし、当該ケア対象者の脳の疲労状態を他の一軸とした二次元グラフ中に、各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面として生成することができる(
図4~
図6参照)。
また、本実施形態では、ダッシュボード画面生成部13は、メンタルヘルス情報を一軸とし、業務関連情報を他の一軸とした二次元グラフ中に、各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面を生成するようになっている(
図7~
図11参照)。
さらに、ダッシュボード画面生成部13は、ケア対象者の複数の業務関連情報を、例えば、オペレータの通話時間を一軸とし、通話の受付件数を他の一軸とした二次元グラフ中に、各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面として生成し、また、例えばコールセンターの全オペレータによる業務状態を一覧で示すダッシュボード画面を生成することもできる(
図12~
図13参照)。
【0030】
以上のような本実施形態に係るメンタルヘルスケア管理サーバ10で実現されるメンタルヘルス情報受信部11・業務関連情報受信部12・ダッシュボード画面生成部13の各部の具体的な機能・動作については、管理者端末40に出力・表示される表示画面例を参照しつつ後述する(
図3~13参照)。
【0031】
[メンタルヘルスケア管理DB]
メンタルヘルスケア管理DB20は、本システム1の管理対象となるケア対象者のメンタルヘルス及び業務に関する所定のデータ・情報がデータベースとして管理される記憶手段である。
このメンタルヘルスケア管理DB20には、管理対象となるケア対象者単位やケア対象者が所属する組織単位で、各ケア対象者とそのメンタルヘルス情報及び業務関連情報を特定するための所定の情報が予め記憶されており、また、各ケア対象者の日々の業務遂行などに応じて、データが随時格納・更新される。
また、メンタルヘルスケア管理DBには、インターネット100等のネットワークを介して各ケア対象者端末30や外部システム50から所定の情報が入力・送信されて、それらの情報に応じてもデータが随時格納・更新される。
【0032】
メンタルヘルスケア管理DB20に格納・管理される所定の情報としては、本システム1の管理対象となる、上記のような各ケア対象者に関する情報であり、例えば、
図2に示すように、ケア対象者DB21,メンタルヘルス情報DB22,業務関連情報DB23,ダッシュボード描画データDB24などの各種情報・データがある。
なお、以下に示すメンタルヘルスケア管理DB20に記憶される情報は、本システム1において処理対象となる情報の一例であって、特に以下の情報のみに限定されるものではなく、本システム1として必要な情報を追加・削除・変更等することができることは言うまでもない。
【0033】
具体的には、メンタルヘルスケア管理DB20ケア対象者DB21,メンタルヘルス情報DB22,業務関連情報DB23,ダッシュボード描画データDB24を構成する情報・データとしては、例えば以下のようなものがある。
[ケア対象者DB]
1:ケア対象者氏名
2:ケア対象者ID
3:所属
4:役職
など
【0034】
[メンタルヘルス情報DB]
1:ケア対象者氏名
2:ケア対象者ID
3:ストレス状態を示す数値
4:脳の疲労状態を示す数値
など
【0035】
[業務関連情報DB]
1:ケア対象者氏名
2:ケア対象者ID
3:ACD呼
4:ACD時間
5:応答可能時間
6:保留呼
7:平均保留時間
8:研修・面談の回数
9:エスカレーション件数
10:苦情対応件数
11:苦情対応時間
など
【0036】
[ダッシュボード描画データDB]
1:背景画像
2:グラフ画像
3:ケア対象者のプロット画像
4:閾値
5:閾値を超過した場合のアラート機能
など
以上のようなメンタルヘルスケア管理DB20で記憶・管理されるデータに基づいて、メンタルヘルスケア管理サーバ10のダッシュボード画面生成部13におけるダッシュボード画面生成の処理動作が実行され、対象となるケア対象者のメンタルヘルスケアが図られるようになる。
【0037】
[ケア対象者端末]
ケア対象者端末30(30a~30n)は、インターネット100や社内のLANやWAN等のネットワークを介してメンタルヘルスケア管理サーバ10に接続可能な、本システム1の管理対象となるケア対象者が操作する例えばPC,タブレット端末,スマートフォンなど、一又は二以上の情報処理装置によって構成することができる。
このようなケア対象者端末30を介して、ケア対象者端末30を使用する例えば当該企業や組織に所属する社員,従業員,スタッフ等は、インターネット100を介して、メンタルヘルスケア管理サーバ10にアクセスして必要な各種情報を送信/受信でき、出力・表示させることができるようになる。
【0038】
また、本実施形態では、ケア対象者端末30において、ケア対象者のメンタルヘルス情報が取得・生成され、このメンタルヘルス情報が外部システム50に出力・送信されて、外部システム50を経由して、メンタルヘルスケア管理サーバ10(メンタルヘルス情報受信部11)で受信・入力されるようになっている。
ここで、ケア対象者端末30におけるメンタルヘルス情報の取得・生成は、例えば各ケア対象者が定期・不定期のタイミングで操作・実行することができ、例えば1日3回(朝9時・昼12時・夕方5時など)、ケア対象者端末30においてメンタルヘルス情報が取得され、その都度、外部システム50に送信することができる。
【0039】
また、本実施形態では、このメンタルヘルス情報として、ケア対象者のストレス状態又は脳の疲労状態の少なくともいずれかを示す情報を生成・取得できるようになっている。
具体的には、人間のストレス状態や脳の疲労状態は、脈波を計測することで、自律神経(交感神経/副交感神経)のバランスと活動量を測定・解析し、これに基づいてストレス状態及び脳の疲労状態を示す数値として生成・出力できることが知られている。具体的には、脈波を計測可能なセンサに対象者の手指を当てて所定時間(例えば60~90秒程度)静止状態でいることにより、脈波(PPG)・心電波(ECG)を同時に測定し、その結果から心拍変動を解析して疲労・ストレスの評価基準となる自律神経のバランスと活動量(自律神経機能年齢)を示す数値データを生成・出力することができる。
【0040】
また、ケア対象者端末30では、ケア対象者の業務関連情報が取得・生成され、この業務関連情報は、外部システム50を経由することなく、メンタルヘルスケア管理サーバ10に出力・送信されて、業務関連情報受信部12で受信・入力されるようになっている。
ここで、ケア対象者端末30で取得・生成される業務関連情報としては、ケア対象者がコールセンター業務に携わるオペレータである場合には、各ケア対象者の、ACD呼,ACD時間,応答可能時間,保留呼,平均保留時間,研修・面談の回数,エスカレーション件数などを示す情報がある。
【0041】
ここで、「ACD」とは、「Automatic Call Distribution:着信呼自動分配)の略記であり、顧客等からのコール(入電)を所定のルールに従って各オペレータに自動的に分配して割り当てることで、その割り当てられた着信呼の数や時間が「ACD呼」,「ACD時間」として示される。
また、「エスカレーション」とは、上司やリーダーなどの上位者に業務遂行上の判断や指示を仰いだり、対応を要請したりすることで、その数が「エスカレーション件数」として示される。
【0042】
以上のような業務関連情報は、ケア対象者端末30において監視・検知されて、その数や時間がカウントされて、各ケア対象者の業務関連情報として生成・出力され、メンタルヘルスケア管理サーバ10に所定のタイミングで送信されるようになっている。
例えば、業務関連情報は、ケア対象者端末30において常時監視・取得され、上述したメンタルヘルス情報と同様に、定期・不定期のタイミング、例えば1日3回(朝9時・昼12時・夕方5時など)、ケア対象者端末30からメンタルヘルスケア管理サーバ10に送信することができる。
【0043】
[管理者端末]
管理者端末40は、インターネット100や社内のLANやWAN等のネットワークを介してメンタルヘルスケア管理サーバ10に接続可能な、本システム1の管理対象となるケア対象者の上司やリーダーなどの管理者が操作する例えばPC,タブレット端末,スマートフォンなど、一又は二以上の情報処理装置によって構成することができる。
このような管理者端末40を介して、管理者端末40を使用する例えば当該企業や組織に所属する管理職やグループリーダー等は、インターネット100を介して、メンタルヘルスケア管理サーバ10にアクセスして必要な各種情報を送信/受信でき、出力・表示させることができるようになる。
【0044】
[外部システム]
外部システム50は、インターネット100を介してメンタルヘルスケア管理サーバ10に接続された、本システム1において管理対象となるケア対象者端末30から出力・送信されるメンタルヘルス情報を蓄積・格納し、メンタルヘルスケア管理サーバ10に対して必要情報を送信・提供するサービスを行う事業者等が運営するPCやサーバ群等によって構成される情報処理装置である。
この外部システム50に対してメンタルヘルスケア管理サーバ10からアクセスすることにより、その外部システム50が収集・蓄積したケア対象者のメンタルヘルス情報が本システム1において利用可能に提供されるようになり、所定のダッシュボード画面が生成できるようになる。
【0045】
以上のような外部システム50においてケア対象者のメンタルヘルス情報を収集・蓄積するようにすることで、メンタルヘルスケア管理サーバ10における処理負荷やコスト等の軽減を図ることができるようになる。
但し、上述のとおり、外部システム50におけるケア対象者のメンタルヘルス情報の収集・蓄積機能を、メンタルヘルスケア管理サーバ10に持たせることも可能である。
その場合には、本システム1において、外部システム50は必要とされず省略することができる。
【0046】
[動作]
次に、以上のような本システム1における具体的な処理・動作(メンタルヘルスケア管理方法の実施)について、
図3~
図13を参照して説明する。
本システム1では、上述したメンタルヘルスケア管理サーバ10のメンタルヘルス情報受信部11,業務関連情報受信部12,ダッシュボード画面生成部13における一連の処理動作が自動実行されることにより、ケア対象者となるコールセンターのオペレータのメンタルヘルスの状態と業務との関連について、管理者端末40を介して管理者が動的に監視・管理することができ、各ケア対象者のメンタルヘルスを健康・健全な状態に維持できるように業務の最適化等を図ることができるものである。
【0047】
まず、
図3を参照しつつ、本システム1における処理全体の流れを説明する。
図3は、本システム1におけるメンタルヘルス情報/業務関連情報の流れを模式的に示す説明図である。
前提として、ケア対象者はケア対象者端末30を操作して、また、管理者は管理者端末40を操作して、本システム1にアクセスする。この場合、各ケア対象者・管理者は、例えば自己に割り当てられたログインやパスワードを入力することにより、本システム1にログインすることができる。
そして、ログインした本システム1を介して、メンタルヘルスケア管理サーバ10のプログラムが起動・呼び出されて、以下のようにして本システム1で提供される機能を実行・利用することができる。
【0048】
(1)同図に示すように、本システム1では、コールセンターのオペレータである各ケア対象者(オペレータA,オペレータB・・・)は、それぞれ自宅やレンタルオフィスなどにおいて在宅勤務の形で業務を遂行しており、各ケア対象者端末30において、メンタルヘルス情報が所定のタイミング(例えば1日3回)測定されるようになる。測定されたメンタルヘルス情報は、所定のタイミングで(例えば測定の都度)外部システム50に出力・送信され、外部システム50を介してメンタルヘルスケア管理サーバ10において受信・入力されるようになる(メンタルヘルス情報受信部11)。
また、各ケア対象者30においては、ケア対象者の業務遂行に伴い、常時業務関連情報が監視・取得され、所定のタイミングで(例えば1日3回)出力・送信され、メンタルヘルスケア管理サーバ10において直接受信・入力されるようになる(業務関連情報受信部12)。
【0049】
(2)メンタルヘルス情報/業務関連情報が受信されたメンタルヘルスケア管理サーバ10では、所定のタイミングで(例えば管理者端末40に対する入力操作に応じて)、メンタルヘルス情報及び業務関連情報に基づいて各ケア対象者のメンタルヘルス情報を可視化した所定のダッシュボード画面が生成され、管理者端末40のディスプレイ等に出力・表示されるようになる(ダッシュボード画面生成部13)。
(3)そして、出力・表示されたダッシュボード画面を管理者端末40において確認した管理者(SV:Supervisor)は、そこに示されるメンタルヘルス情報(ストレス・脳の疲労等)や業務関連情報(処理件数や対応時間等)から、心的状態の正常/異常や危険性の有無等を判断することがあり、例えば「オペレータAさんはストレスも脳の疲労も高いから危険」と判断・発見すれば、該当するケア対象者(オペレータA)に対して電話や訪問などしてコンタクトを取り、適切なメンタルヘルスケアの措置を講じることができるようになる。
【0050】
以下、
図4~
図13に、本システム1において生成されて管理者端末40に出力・表示されるダッシュボード画面の具体例を示す。
本システム1にログインした管理者端末40には、各ケア対象者のメンタルヘルス情報を可視化したダッシュボード画面が、ディスプレイ等に表示され、また、プリンタ等で印刷することができる。
このダッシュボード画面は、管理者端末40からの入力操作に応じて、それぞれ任意のパラメータを設定・変更することができ、それに応じて異なるダッシュボード画面がダッシュボード画面生成部13によって生成され、管理者端末40側に出力されて、所定の表示手段を介して視認可能に表示される。
【0051】
図4は、あるグループやチームに所属する複数(8名)のオペレータについて、パラメータとして、ある指定日(2021年4月15日)における、「脳の疲労」を縦軸に、「ストレス」を横軸に設定した二次元グラフ中に、該当する各オペレータを特定可能にプロット表示したものである。
このダッシュボード画面により、グラフ中の右側に位置するオペレータは、急性の心的ストレス、例えば業務量やクレーム対応等の負荷がかかっていることが推定され、また、グラフ中の左側に位置するオペレータは、抑うつ状態、例えば長時間労働が継続していることが推定され、縦軸・横軸の双方について数値が高い場合には、ストレス及び脳の疲労ともに慢性的な状態であることが分かる。
【0052】
図5は、
図4に示すダッシュボード画面から引き続いて、特定(一人)のオペレータ「ID:test01」についての所定期間(分析期間:2021年4月13日~2021年4月16日)における脳の疲労/ストレスの値をプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
このダッシュボード画面により、該当するオペレータは、当該期間中に一度だけ脳の疲労が強く出たことがあるものの、それ以外はストレス・脳の疲労とも、比較的良好な状態が維持されていることが分かる。
【0053】
図6は、あるグループやチームに所属する20名(ID:1~20)のオペレータについて、パラメータとして、ある指定日(2021年4月12日)における、「脳の疲労(朝)」を縦軸に、「ストレス(朝)」を横軸に設定した二次元グラフ中に、該当する各オペレータのIDをプロット表示したものである。
このダッシュボード画面により、ほとんどのオペレータは、ストレス・脳の疲労とも、比較的良好な状態が維持されている一方、数名がストレスあるいは脳の疲労が高い値となっていることが分かる。この場合、朝一からクレーム対応や長時間対応の業務が発生していることなどを推定することができる。
【0054】
図7は、
図6のダッシュボード画面から引き続いて、縦軸のパラメータを「ACD時間」に変更して、該当する各オペレータのIDをプロット表示したものである。
このダッシュボード画面により、朝一の業務開始時には、全オペレータとも「ACD時間」はほとんど無い(ゼロ)にも拘わらず、人によってストレスの数値がばらついており、特にこの状態でストレスの値が高いオペレータは、新人や経験の浅い人間が業務に対して緊張を感じていることなどを推定することができる。
【0055】
図8は、同様に20名(ID:1~20)のオペレータについて、パラメータとして、ある指定日(2021年4月19日)における、「脳の疲労(夜)」を縦軸に、「保留呼」を横軸に設定した二次元グラフ中に、該当する各オペレータのIDをプロット表示したものである。
このダッシュボード画面により、「保留呼」と「脳の疲労(夜)」については、目立った相関関係は見いだせず、「保留呼」の多寡に拘わらず、オペレータごとに脳の疲労は様々であることが分かる。
【0056】
図9は、
図8のダッシュボード画面から引き続いて、横軸のパラメータを「エスカレ(ーション)回数」に変更して、該当する各オペレータのIDをプロット表示したものである。
このダッシュボード画面により、エスカレーションがゼロの場合でも、オペレータごとに脳の疲労は様々であることが分かる。
一方、エスカレーションの件数が増えた場合でも、脳の疲労が悪化する傾向は見いだせず、オペレータの経験や能力などによって、エスカレーション関連業務に対する適応性や耐性が異なることが分かる。
【0057】
図10は、同様に20名(ID:1~20)のオペレータについて、パラメータとして、ある指定日(2021年4月19日)における、「ACD時間」を縦軸に、「脳の疲労(朝)」を横軸に設定した二次元グラフ中に、該当する各オペレータのIDをプロット表示したものである。
このダッシュボード画面により、「ACD時間」と「脳の疲労(朝)」については、目立った相関関係は見いだせず、「ACD時間」の長短に拘わらず、オペレータごとに脳の疲労は様々であることが分かる。
【0058】
図11は、
図10のダッシュボード画面から引き続いて、縦軸のパラメータを「保留呼」に変更して、該当する各オペレータのIDをプロット表示したものである。
このダッシュボード画面により、保留呼がゼロの場合でも、オペレータごとに脳の疲労は様々であることが分かる。
一方、保留呼の数が増えた場合でも、脳の疲労が悪化する傾向は見いだせず、オペレータの経験や能力などによって、保留呼関連業務に対する適応性や耐性が異なることが分かる。
【0059】
図12及び
図13は、ケア対象者のメンタルヘルス情報を切り離して、業務関連情報飲みに基づいて生成・出力されるダッシュボード画面の一例である。
図12は、コールセンターのオペレータ業務における受付件数を縦軸とし、通話時間を横軸とした二次元グラフ中に、該当する各ケア対象者を特定可能にプロット表示したダッシュボード画面の一例である。
このダッシュボード画面からは、各オペレータの業務量の多寡を視覚的・直感的に把握することができる。また、同図中、各オペレータは氏名(苗字)・識別番号によって特定され、該当するオペレータのアイコンをマウス等で選択・指定することで、当該オペレータの年齢や所属等の詳細情報と顔写真情報が出力・表示されるようになっている。例えば、顔写真はWEBカメラ等を介して現在の映像を表示させることで、その表示や顔色などもメンタルヘルスケアの判断材料とすることができる。
【0060】
図13は、管理者が参照するコールセンターの全オペレータによる業務状態を示すダッシュボード画面の一例である。
このダッシュボード画面からは、各オペレータの業務量が数値とグラフで一覧表示されており、
図12で視覚的・直感的に把握された各オペレータの正確な業務量・業務内容などを参照することができる。
【0061】
このような
図12~
図13に示すような、各オペレータの業務量を客観的に示すダッシュボード画面を、
図4~
図11に示した各オペレータのメンタルヘルス情報を様々な観点・パラメータから示すダッシュボード画面と対比して参照・確認することで、より適切・的確な各オペレータのメンタルヘルスケア対応を取ることが可能となる。
例えば、
図13に示すコールセンターの全オペレータの管理画面に、
図4~
図11に示したダッシュボード画面を重畳させて表示させることで、管理者は、各オペレータの業務状況と心的状態を対比しつつ正確に把握することができるようになる。
また、
図12に示す各オペレータの個人の属性情報・ステータス表示に、ストレス/脳の疲労の数値を表示(重畳表示)することもできる。
【0062】
そして、以上のようなメンタルヘルス情報/業務関連情報の相関関係をダッシュボード画面で生成・出力した結果、例えば、対応処理件数は多いけれどストレスの低い人はどうするか、対応件数が多くかつストレスも高い人は、仕事の件数を調整し、問い合わせ内容などに応じて割り当てる内容を変える等、業務内容や割り振り自体を調整・変更等することが可能となる。
そのような業務内容の変更や割り振りは、可能な限りリアルタイムで行うことが、特に心的状態に負荷がかかっているオペレータについては好ましい。
【0063】
また、上述したACD(着信呼自動分配)の着信振り分け機能としては、ランダム割り当て、スキルベース割り当て(スキルが求められるコールをスキルの高い人に優先して割り当てる)、積滞割り当て(待ち時間が長いオペレータを割り当てる)などが存在しているが、例えば、ストレス/脳の疲労の値に応じてストレスベース割り当てを優先的に行うようにすることもできる。例えば、ストレス又は脳の疲労の値が所定以上の閾値の場合には、それを上回っている対象者以外の対象者に優先的に着振り分けを行う実装とすることもでき、この場合でも、ストレス又は脳の疲労の値がこの閾値以下に戻った場合には通常通りに着信振り分けを行うことになる。
また、ストレスが一時的に高い人は、割り当てを一時停止して、管理者(スーパーバイザー)が直ちにメンタルヘルスケア対応を取り、また、ストレスが高い人はクレーム性が低いコールを割り当てるようにし、あるいは、クレーマーのコールは廻さないようにすることもできる。クレーム性が低いコールとは、現在、コールセンターに問い合わせる場合には相談内容によって対象のサービス番号を押下することで所望の窓口につながることになるが、このサービス番号によってクレーム性は大きくことなり、例えば、単なる住所変更のみのサービス番号の場合にはクレーム性が低く、製品不具合のサービス番号の場合にはクレーム性が高いといった、サービス番号毎にある程度のクレーム性が予め分かっていることがあり、そのクレーム性が低いサービス番号を指定した回線を前記ストレス又は脳の疲労の値が高い対象者に廻す、若しくは、クレーム性が高いサービス番号を指定した回線を前記ストレス又は脳の疲労の値が高い対象者に廻さないといった処理とすることができる。更に、既に、相談を担当者が受けている場合に、クレーム性が途中で高まる場合もあり、そういった場合には急にストレス又は脳の疲労の値が高まることになり、そういった場合には、管理者への通知をシステムが実施し、又は、担当者の画面に管理者へエスカレーションするように通知を実施する構成が望ましい。
【0064】
また、ケア対象者端末30で取得される業務関連情報から、顧客との音声で、客が怒っている、オペレータが困っているなどを推定することができ、また、通話内容によってもクレーム・トラブル等の推測は可能であり、それらの情報と、今回のストレス結果などに基づいて、「重い案件」の件数として認識してグラフ表示等することも可能である。
さらに、ケア対象者端末30を介したメンタルヘルス情報(脈波等)の測定は、実施しないオペレータがいる場合も考えられ、そのようなオペレータに対しては、例えばACDの振り分け対象外とする、といった対応も可能となる。
【0065】
以上説明したように、本システム1によれば、コールセンターのオペレータのように、企業や団体等で業務に携わる社員や従業員等のケア対象者について、各人のストレス状態や脳の疲労状態などのメンタルヘルス情報/業務関連情報を常時監視して、それらの情報に基づいて、各人のメンタルヘルスと業務の相関関係を視覚的に示すダッシュボード画面を生成・出力することができる。
【0066】
これによって、オペレータの上司やリーダー等は、本システム1にアクセス・ログインして管理者端末40を介してダッシュボード画面を表示・確認するだけで、どのオペレータがどれだけの業務を担っており、どの程度の心的ストレスや疲れを感じているかということが資格を通じて一目で把握・認識することが可能となり、各オペレータが在宅勤務により上司や同僚等と直接顔を合わせることができない場合でも、各人のメンタルヘルスケアを適切・的確に行うことができるようになる。
したがって、多数のオペレータが個々に顧客対応に携わるコールセンターのような大規模な業務環境でも、オペレータ各人に対して、それぞれきめ細かいメンタルヘルスケアを迅速かつ適切に行うことが可能となる。
【0067】
以上、本発明について好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、本発明が対象とするケア対象者として、コールセンターのオペレータを例にとって説明したが、本発明を適用可能なケア対象者としては、特にコールセンターのオペレータのみに限定されものではなく、企業・組織等としてメンタルヘルスケアを必要とする社員や従業員,職員等であれば、その職種や業務内容等がどのようなものであっても本発明を提供することができ、また、そのケア対象者が所属する企業や組織等についても、どのような規模や業態の企業や組織等でも対象とすることができ、特に限定されるものではない。
【0068】
例えば、上述した本システム1を、営業職や事務職など、一般の普通の社員に適用することもできる。
この場合、営業職であれば、ダッシュボード画面でメンタルヘルス情報とかけ合わせるパラメータとして、例えば、残業の多さやノルマの量,ノルマの達成率,プロジェクト内容,顧客別などを設定することができる。
また、本システム1において、例えばある企業の全社員についてストレスチェックを年に1回の実行を義務付けるようにすることもできる。
【0069】
また、本システム1を退職者の分析ツールとして用いることもでき、例えば、1年で3割の社員が退職する企業があった場合に、本システム1を有効活用することで、離職率を低下させることが可能となる。社員の在職年数が伸びれば、CS(Customer Satisfaction:顧客満足度)も向上させることができるので、可能な限り多くの社員に長く勤めて欲しい場合も少なくない。
そこで、本システム1を活用することで、例えば心的状態の良くない社員には、一人あたりの業務量を下げるなど、その閾値を適切に設定・調整することで、早期退職の予防・離職率の低下を図ることができる。
【0070】
また、上述した実施形態では、ケア対象者端末30でのメンタルヘルス情報の取得(測定)の実施タイミングとして、例えば朝・昼・晩の1日3回などを例として説明したが、より単純に、所定のインターバル、例えば数時間に1回や、就業開始前と終了後など、任意のタイミングで実施しても良いことは言うまでもない。これらのタイミングの設定は、管理者端末から対象管理者の管理対象のケア対象者毎又はケア対象者が所属する組織毎に変更可能であってもよいし、ケア対象者端末でこの端末を使用するケア対象者自身向けに自身で設定変更であってもよい。
また、コールセンターのオペレータの場合であれば、所定の複数回のコール対応後のタイミングや、コールの対応時間が所定時間となったタイミング、難しいコールの対応後など、業務内容等に応じた適切なタイミングで実施することもできる。。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば企業や団体,組織等で業務に携わる社員や従業員,職員等についてのメンタルヘルスの管理・ケアを支援するためのシステム・プログラム・方法として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 メンタルヘルスケア管理システム
10 メンタルヘルスケア管理サーバ
11 メンタルヘルス情報受信部
12 業務関連情報受信部
13 ダッシュボード画面生成部
20 メンタルヘルスケア管理DB
21 ケア対象者DB
22 メンタルヘルス情報DB
23 業務関連情報DB
24 ダッシュボード描画DB
30 ケア対象者端末
40 管理者端末
50 外部システム