(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025988
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】サイクルタイム基準値管理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240220BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240220BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129397
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】小川 正
(72)【発明者】
【氏名】風間 祐太
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA23
3C100AA56
3C100BB03
3C100BB12
3C100BB14
3C100BB33
3C100CC02
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】作業機モジュールと、監視システムとを接続したシステムであって、サイクルタイムの管理方法を選択できるサイクルタイム基準値管理システムを提供すること。
【解決手段】本開示のサイクルタイム基準値管理システムは、ワークに対する作業を実行し、ワークのサイクルタイムに係わるサイクルタイム基準値を設定可能な作業機モジュールと、作業機モジュールと接続される監視システムと、を備え、作業機モジュール及び監視システムのうち、少なくとも一方の装置で設定されたサイクルタイム基準値を、他方の装置へ送信し設定するか否かに応じて異なる複数の管理モードの中から、任意の管理モードの選択を受け付ける。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対する作業を実行し、前記ワークのサイクルタイムに係わるサイクルタイム基準値を設定可能な作業機モジュールと、
前記作業機モジュールと接続される監視システムと、
を備えるサイクルタイム基準値管理システムであって、
前記サイクルタイム基準値管理システムは、
前記作業機モジュール及び前記監視システムのうち、少なくとも一方の装置で設定された前記サイクルタイム基準値を、他方の装置へ送信し設定するか否かに応じて異なる複数の管理モードの中から、任意の前記管理モードの選択を受け付ける、サイクルタイム基準値管理システム。
【請求項2】
前記サイクルタイム基準値管理システムは、
前記管理モードとして、前記作業機モジュールで前記サイクルタイム基準値が設定された場合に設定された前記サイクルタイム基準値を前記監視システムへ送信して設定する機械基準モード、前記監視システムで前記サイクルタイム基準値が設定された場合に設定された前記サイクルタイム基準値を前記作業機モジュールへ送信して設定する上位基準モード、前記監視システム及び前記作業機モジュールのうち、一方の装置で前記サイクルタイム基準値が設定された場合に設定された前記サイクルタイム基準値を他方の装置へ送信して設定し且つその逆の場合も実行する相互設定モード、の3つのモードを有する、請求項1に記載のサイクルタイム基準値管理システム。
【請求項3】
前記サイクルタイム基準値管理システムは、
前記管理モードとして、前記監視システム及び前記作業機モジュールのうち、少なくとも一方の装置で前記サイクルタイム基準値が設定された場合に設定された前記サイクルタイム基準値を他方の装置へ送信して設定する展開モードと、前記監視システム及び前記作業機モジュールのうち、一方の装置で前記サイクルタイム基準値が設定された場合に設定された前記サイクルタイム基準値を他方の装置へ送信しない非展開モードの2つのモードを有する、請求項1又は請求項2に記載のサイクルタイム基準値管理システム。
【請求項4】
前記作業機モジュール及び前記監視システムは、
複数の前記ワークの各々におけるサイクルタイムを取得して表示し、且つ、取得した複数の前記サイクルタイムのうち、前記サイクルタイム基準値以上の前記サイクルタイムを、他の前記サイクルタイムに比べて強調して表示する、請求項1又は請求項2に記載のサイクルタイム基準値管理システム。
【請求項5】
前記監視システムは、
表示機能と入力機能を有するユーザインタフェースを備え、前記サイクルタイム基準値の値の入力を受け付ける入力部と、前記作業機モジュールから収集した作業の実績に基づいて前記サイクルタイム基準値を決定するための条件を設定する条件設定部と、の2つを前記ユーザインタフェースに表示し、前記サイクルタイム基準値の決定方法を前記ユーザインタフェースで受け付ける、請求項1又は請求項2に記載のサイクルタイム基準値管理システム。
【請求項6】
前記監視システムは、
前記管理モードとして、前記監視システムで設定された前記サイクルタイム基準値を、前記作業機モジュールへ送信し設定するモードが設定されておらず、且つ前記サイクルタイム基準値の決定方法を前記ユーザインタフェースで受け付けた場合、前記サイクルタイム基準値が設定されているか否かを前記作業機モジュールへ問い合わせ、
前記作業機モジュールに前記サイクルタイム基準値が設定されていなかった場合、前記サイクルタイム基準値の決定方法を受け付けた後、受け付けた決定方法により決定した前記サイクルタイム基準値を、前記サイクルタイム基準値が設定されていなかった前記作業機モジュールの前記サイクルタイム基準値に適用するか否かの指示を、前記ユーザインタフェースで受け付ける、請求項5に記載のサイクルタイム基準値管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機モジュールで使用するサイクルタイム基準値を管理するサイクルタイム基準値管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、生産ラインが設けられた工場の管理を行う工場管理システムについて記載されている。工場管理システムは、生産ラインの各生産設備と接続された通信サーバと、通信サーバを介して各生産設備から生産状況データを収集しデータベース群へ蓄積する収集・蓄積装置と、データベース群に蓄積された生産状況データから任意のデータを集計して表示する集計・表示装置を備えている。集計・表示装置は、生産実績管理画面に表示したサイクルタイム設定部において、生産ラインのサイクルタイムを受け付け、受け付けたサイクルタイムに基づいて算出した稼働率を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生産ラインと、生産ラインを監視する上位の監視システムをネットワークで接続した場合、監視システムと生産ラインのそれぞれで、サイクルタイムを判断するサイクルタイム基準値として適切な値を参照できれば、生産ラインの生産状況をより正確に管理できる。しかしながら、監視システムと生産ラインのそれぞれでサイクルタイム基準値を設定できる場合、設定されたサイクルタイム基準値を他の装置へ展開するか否かはユーザの管理方法に応じて異なってくる。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、作業機モジュールと、監視システムとを接続したシステムであって、サイクルタイム基準値の管理方法を選択できるサイクルタイム基準値管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書はワークに対する作業を実行し、前記ワークに係わるサイクルタイムを設定可能な作業機モジュールと、前記作業機モジュールと接続される監視システムと、を備えるサイクルタイム基準値管理システムであって、前記サイクルタイム基準値管理システムは、前記作業機モジュール及び前記監視システムのうち、少なくとも一方の装置で設定されたサイクルタイムの値であるサイクルタイム基準値を、他方の装置へ送信し設定するか否かに応じて異なる複数の管理モードの中から、任意の前記管理モードの選択を受け付ける、サイクルタイム基準値管理システムを開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のサイクルタイム基準値管理システムによれば、作業機モジュール及び監視システムのうち、一方の装置で設定されたサイクルタイム基準値を、他方の装置へ展開するか否かを管理モードで設定できる。従って、ユーザは、サイクルタイム基準値の管理方法として望む方法を管理モードから選択することで、所望の管理方法でサイクルタイム基準値を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例に係わる生産システムのブロック図。
【
図3】作業機モジュールにおけるサイクルタイム基準値を用いた表示を実行した表示画面。
【
図4】上位監視装置におけるサイクルタイム基準値を用いた表示を実行した表示画面で、モジュール単位の表示を行なった画面の左側を示す図。
【
図5】上位監視装置におけるサイクルタイム基準値を用いた表示を実行した表示画面で、モジュール単位の表示を行なった画面の右側を示す図。
【
図6】上位監視装置におけるサイクルタイム基準値を用いた表示を実行した表示画面で、生産ライン単位の表示を行なった画面の左側を示す図。
【
図7】上位監視装置におけるサイクルタイム基準値を用いた表示を実行した表示画面で、生産ライン単位の表示を行なった画面の右側を示す図。
【
図9】上位監視装置でサイクルタイム基準値を受け付ける受付画面を示す図。
【
図10】モードの変更を受け付けるポップアップ画面を示す図。
【
図11】別実施例の生産システムを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のサイクルタイム基準値管理システムを具体化した一実施例である生産システム1について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例の生産システム1のブロック図を示している。
図1に示すように、生産システム1は、監視システム10と、管理装置12と、工作機械14を備えている。また、監視システム10は、上位監視装置11と、データベースサーバ(以下、DBサーバという)13を備えている。生産システム1は、例えば、管理装置12によって工作機械14のログデータDT1をDBサーバ13に収集し、監視システム10の上位監視装置11からログデータDT1を参照可能とするシステムである。生産システム1は、ログデータDT1を保存・参照可能にすることで、生産システム1のワークの製造におけるトレーサビリティを確保することができる。ユーザは、ログデータDT1を参照することで、ワークの品質管理を適切に行うことができる。
【0010】
また、生産システム1は、例えば、工作機械14で生産するワークのサイクルタイムに係わるサイクルタイム基準値をDBサーバ13に収集し、上位監視装置11からサイクルタイム基準値を参照可能とするシステムである。
図1に示すように、DBサーバ13、管理装置12、工作機械14には、サイクルタイム基準値が記憶されている。以下の説明では、各装置のサイクルタイム基準値を区別するため、DBサーバ13、管理装置12、工作機械14(後述する作業機モジュール43A~43I)のサイクルタイム基準値の各々を、この順番に、サイクルタイム基準値DT2,DT3,DT4と称して説明する。サイクルタイム基準値DT2~DT4の詳細については後述する。
【0011】
監視システム10の上位監視装置11は、例えば、パーソナルコンピュータであり、CPU21、記憶装置22、ユーザIF(インタフェースの略)23、ネットワークIF24等を備え、CPU21等が通信バス25を介して互いに接続され通信可能となっている。記憶装置22は、例えば、RAM、ROM、ハードディスク等を組み合わせて構成されている。記憶装置22には、管理プログラム26が記憶されている。管理プログラム26は、例えば、工作機械14のベンダーから提供されるプログラムであり、DBサーバ13のデータの表示等を実行するプログラムである。また、管理プログラム26には、後述するサイクルタイム基準値DT2~DT4の管理モードを実行するプログラムが含まれている。
【0012】
ユーザIF23は、例えば、LCDなどの表示装置、キーボードやマウスなどの入力装置を備えている。上位監視装置11は、ユーザIF23に対する操作入力に応じてCPU21で管理プログラム26を実行する。ユーザは、ユーザIF23を操作し、管理プログラム26を実行させることでDBサーバ13のデータを参照し、工作機械14(後述する作業機モジュール43A~43I)のログデータDT1、及びサイクルタイムの閲覧等を行なうことができる。尚、管理プログラム26は、DBサーバ13の情報の閲覧以外に、工作機械14の設定変更(設定日時の変更)等を実行する機能を有しても良い。ネットワークIF24は、例えば、LANインタフェースであり、ルータ(図示略)等を介してネットワーク15に接続されている。ネットワーク15は、例えば、インターネットなどのWANである。
【0013】
管理装置12は、例えば、パーソナルコンピュータであり、CPU31、記憶装置32、ユーザIF33、ネットワークIF34等を備え、CPU31等が通信バス35を介して互いに接続され通信可能となっている。尚、以下の説明では、上記した上位監視装置11と同様の内容については、適宜省略する。また、管理装置12及び上位監視装置11は、パーソナルコンピュータに限らず、ノートPC、タブレット端末、スマートフォンなどの他の情報処理装置でも良い。
【0014】
記憶装置32は、例えば、RAM、ROM、ハードディスク等を組み合わせて構成されている。尚、記憶装置32及び上記した記憶装置22は、上記した種類の記憶装置に限らず、フラッシュメモリやSSDなどの他の記憶装置でも良い。記憶装置32には、管理プログラム36が記憶されている。管理プログラム36は、例えば、管理プログラム26と同様に、工作機械14のベンダーから提供されるプログラムであり、DBサーバ13のデータの表示、管理モードの変更等を実行するプログラムである。また、ユーザIF33は、ユーザIF23と同様に、表示装置、入力装置を備えている。
【0015】
ネットワークIF34は、例えば、LANインタフェースであり、ルータ(図示略)等を介してネットワーク17に接続されている。ネットワーク17は、例えば、工作機械14を設置した工場のローカルネットワークである。ネットワーク17は、ネットワーク15と接続されている。尚、ネットワーク17は、LANに限らず、インターネットなどのWANでも良く、LANとWANを組み合わせた構成でも良い。また、ネットワークIF24,34、及び後述するネットワークIF49は、有線のインタフェースに限らず、無線LANなどの無線インタフェースでも良い。
【0016】
また、記憶装置32には、ローカルデータベース(以下、ローカルDB、という)39が記憶(構築)されている。ローカルDB39には、工作機械14のログデータDT1と、サイクルタイム基準値DT3が記憶されている。管理装置12は、例えば、同じネットワーク17に接続された工作機械14を管理するため、同じネットワーク17内の工作機械14からログデータDT1を収集しローカルDB39に登録する。また、管理装置12は、工作機械14からサイクルタイム基準値DT4を取得し、取得したサイクルタイム基準値DT4を、サイクルタイム基準値DT3としてローカルDB39に登録する。管理装置12は、DBサーバ13とローカルDB39の同期処理を実行することで、収集したログデータDT1をDBサーバ13に登録する。また、管理装置12は、DBサーバ13のサイクルタイム基準値DT2とローカルDB39のサイクルタイム基準値DT3の同期処理を、管理モードに応じて実行する。また、
図1では図示を省略しているが、ネットワーク15には、複数のネットワーク17、例えば、複数の生産工場の各々の管理装置12や工作機械14が接続されている。DBサーバ13には、各生産工場から収集されたログデータDT1及びサイクルタイム基準値DT3が登録される。ユーザは、管理装置12を操作することで、ローカルDB39に登録されたログデータDT1の閲覧やサイクルタイム基準値DT3を用いた表示を実行でき、各生産工場の生産状況を監視できる。
【0017】
DBサーバ13は、例えば、複数の生産工場(ネットワーク17)にそれぞれ設置された管理装置12との間で同期処理を実行し、ログデータDT1やサイクルタイム基準値DT2を自装置のデータベースに登録する。同期処理は、管理装置12からDBサーバ13に通知して実行しても良く、DBサーバ13から管理装置12に通知して実行しても良い。DBサーバ13は、例えば、AWS(Amazon Web Services(登録商標))などのクラウドコンピューティングサービスを利用して実装したデータベースである。尚、DBサーバ13としては、上記したクラウドコンピューティングサービスを利用したものに限らず、例えば、工作機械14のベンダーが準備しネットワーク15で公開したサーバにデータベースを構築したものでも良い。また、DBサーバ13やローカルDB39は、例えば、関係データベース管理システムであり、PostgreSQL(登録商標)、Oracle(登録商標)、SQL Server(登録商標)などを採用できる。また、サイクルタイム基準値DT2を、管理装置12の記憶装置22に記憶しても良い。即ち、サイクルタイム基準値DT2を用いた処理を実行する管理装置12と、サイクルタイム基準値DT2を記憶するDBサーバ13とは同一装置でも良い。この場合、1つにまとめた装置は、本開示の監視システムの一例である。
【0018】
次に、工作機械14について説明する。
図2は、工作機械14の外観正面図を示している。
図2に示すように、工作機械14は、ベース41と、ベース41の上に配置された複数(
図2では9台)の作業機モジュール43A~43Iを備えている。尚、
図1は、複数の作業機モジュール43A~43Iのうち、作業機モジュール43A,43Iのみを図示し、他の作業機モジュール43B~43Hの図示を省略している。ベース41は、複数(
図2では5台)のベースモジュール41A~41Eを備えている。複数のベースモジュール41A~41Eは、
図2における左右方向に並んで配置され、互いに連結して固定されている。作業機モジュール43A~43Iは、ベースモジュール41A~41Eの上に配置されている。作業機モジュール43A~43Iは、
図2における左右方向に並んで配置されて互いに連結され、1つの生産ラインを構成している。
【0019】
尚、工作機械14は、ワーク搬送装置(図示略)を備えている。ワーク搬送装置は、例えば、ベース41の前面を左右方向にスライド移動するスライダ装置と、作業機モジュール43A~43Iとの間でワークの受け渡しを実行する多関節ロボットを備えている。工作機械14は、ワーク搬送装置を左右方向へ移動させ、作業機モジュール43A~43Iの間のワークの受け渡しを実行する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、作業機モジュール43A~43Iは、CPU45、記憶装置46、作業部47、ユーザIF48、ネットワークIF49を備えている。記憶装置46は、例えば、RAM、ROM、ハードディスク等を組み合わせて構成されている。記憶装置46には、制御プログラム51、ログデータDT1、サイクルタイム基準値DT4が記憶可能となっている。
【0021】
複数の作業機モジュール43A~43Iの各々は、例えば、ワークに対する旋削加工、穴開け加工、フライス加工、歯切り加工、研磨、計測などの各種の作業を実行可能となっている。作業部47は、この各種作業を実行するための装置、旋盤や主軸装置などである。作業機モジュール43A~43Iは、記憶装置46に記憶された制御プログラム51をCPU45で実行することで、上記した各種の作業(旋削加工など)を実行する。制御プログラム51には、例えば、ワークに対する加工動作を制御するNCプログラム、各種の信号を処理するラダー回路用のプログラム等が含まれている。
【0022】
作業機モジュール43Aは、例えば、ワークを供給する入口モジュール(ストッカ装置)である。作業機モジュール43B~43Eは、例えば、主軸装置やタレットを備える旋盤モジュールである。作業機モジュール43Fは、例えば、作業機モジュール43B~43Eで加工したワークを計測する計測モジュールである。作業機モジュール43G,43Hは、例えば、穴開け加工を実行するドリミルモジュールである。作業機モジュール43Iは、例えば、加工後のワークを排出する出口モジュールである。
【0023】
また、
図2に示すように、作業機モジュール43A~43Iの正面側の側壁には、ユーザIF48が取り付けられている。ユーザIF48は、例えば、タッチパネルや操作スイッチであり、そのユーザIF48を備える作業機モジュールに関する操作を受け付ける。また、ユーザIF48は、各作業機モジュール43A~43Iの現在の動作状況や設定状況等をタッチパネルに表示する。また、作業機モジュール43A~43Iは、記憶装置46に記憶されるサイクルタイム基準値DT4を用いた表示や、サイクルタイム基準値DT4の設定の受け付けを、ユーザIF48で実行する。
【0024】
また、ネットワークIF49は、例えば、LANインタフェースであり、ネットワーク17を介して管理装置12や他の作業機モジュール43A~43Iと接続されている。作業機モジュール43A~43Iは、ネットワーク17を介してログデータDT1やサイクルタイム基準値DT2を管理装置12へ送信する処理等を実行する。
【0025】
(サイクルタイム基準値DT2~DT4について)
次に、サイクルタイム基準値DT2~DT4について説明する。サイクルタイムは、例えば、工作機械14(生産ライン)においてワーク(製品)を1つ生産するのに必要な時間など、ワークごとに繰り返し実行する動作に必要な時間である。例えば、サイクルタイムは、
図2に示す作業機モジュール43I(出口装置)から加工が完了した任意のワークを排出した時点から、次の加工が終完了したワークを作業機モジュール43Iから排出するまでの時間である。また、サイクルタイムとしては、例えば、作業機モジュール43A~43Iの各々における作業時間を採用できる。例えば、サイクルタイムは、旋盤モジュールにおいて、上記したワーク搬送装置が主軸装置にワークを取り付けた後から、加工が完了しワークを取り外すまでの時間でも良い。あるいは、サイクルタイムは、検査モジュールにおいて、検査モジュールにワークを搬入してから排出までの時間でも良い。また、ワーク搬送装置を備えない工作機械であれば、ユーザがワークを主軸装置にセットした後、ワークの加工を開始してから加工が完了するまでの時間を、サイクルタイムとして採用しても良い。また、サイクルタイムとしては、1つの作業機モジュール43A~43Iにおける複数の工程(
図3参照)のうち、1つの工程を実行するのに必要な時間を採用できる。
【0026】
また、サイクルタイム基準値DT2~DT4は、サイクルタイムの上限値、あるいは目標値であり、上位監視装置11、管理装置12や作業機モジュール43A~43Iにおいてサイクルタイムの判断・表示に用いる値である。サイクルタイム及びサイクルタイム基準値DT2~DT4は、DBサーバ13、ローカルDB39、記憶装置46の各々において、例えば、ワーク番号と関連付けて記憶される。ここでいうワーク番号とは、加工対象のワークの種類を識別可能な識別情報である。換言すれば、サイクルタイム及びサイクルタイム基準値DT2~DT4は、ワークの種類ごとに設定・管理される。尚、ワークを識別する情報は、番号に限らず、文字や、文字と数字の組み合わせでも良い。
【0027】
作業機モジュール43A~43Iの各々は、自装置の全工程や各工程に応じてサイクルタイム基準値DT4を用いた判断・表示処理を実行する。以下の説明では、一例として、旋盤モジュールである作業機モジュール43Bがサイクルタイム基準値DT4を用いて判断・表示する処理について説明する。尚、作業機モジュール43B以外の他の作業機モジュール43A,43C~43Iについても同様にサイクルタイム基準値DT4を用いた判断・表示処理を実行する。
【0028】
図3は、作業機モジュール43BのユーザIF48の表示画面53を示している。作業機モジュール43Bは、例えば、ユーザIF48に対する所定の操作入力に応じて表示画面53を、ユーザIF48のタッチパネルに表示する。作業機モジュール43Bは、例えば、現在生産中、又は生産を開始する予定のワークのワーク番号に応じた表示画面53を表示する。尚、作業機モジュール43Bは、ワーク番号の選択・設定をユーザから受け付け、選択等されたワーク番号(現在や過去のものなど)に応じた表示画面53を表示しても良い。従って、作業機モジュール43Bは、任意の種類のワークに応じたサイクルタイム基準値DT4等を表示しても良い。
【0029】
図3に示すように、作業機モジュール43Bは、工程、サイクルタイム基準値DT4、1~8の各項目を左右方向に並べて表示する。「工程」の列は、作業機モジュール43Bでワークごとに実行される各工程であって、サイクルタイムの対象となる工程を示している。例えば、全行程は、生産ライン(作業機モジュール43A~43I)でワークを1つ生産するのに掛かるサイクルタイム(時間)である。1サイクルは、ワークの加工中、脱着、待ちの3つの合計のサイクルタイム、即ち、1つのワークあたりの作業機モジュール43Bでの作業時間である。加工中は、主軸装置でワークをチャックした後から、タレットによって加工を開始し加工が完了するまでのサイクルタイムである。脱着は、主軸装置のチャックを締める時間と、緩める時間の合計のサイクルタイム(時間)である。チャック締めは、チャックを締め主軸装置に着座したワークをチャックするサイクルタイム。チャック緩めは、チャックを緩めるサイクルタイムである。
【0030】
また、サイクルタイム基準値DT4は、対象となる工程のサイクルタイムを判断する時間(例えば、秒単位の時間)である。1~8の各列には、各工程のサイクルタイム55であって、直近の8個の測定結果(作業時間の実測値)が表示されている。作業機モジュール43Bは、例えば、複数のワークについて同一の工程の作業を実行する場合に、各ワークについて対象の工程の作業時間を、サイクルタイム55として計測し、ログデータDT1として記憶する。また、作業機モジュール43Bは、例えば、他の作業機モジュール43A,43C~43Iから1サイクルのサイクルタイム55(各作業機モジュール43B~43Iの1つのワークに掛かる時間)を取得し、自装置の1サイクルのサイクルタイム55と合算し全行程のサイクルタイム55として演算する。あるいは、作業機モジュール43Bは、合算したものにさらにワーク搬送装置の作業時間を加算して、全行程のサイクルタイム55として演算する。前者のサイクルタイム55は、例えば、後述するローディング時間を含まない全行程のサイクルタイム55であり、後者は、ローディング時間を含む全行程のサイクルタイム55である。作業機モジュール43Bは、新たなサイクルタイム55を計測・演算すると、表示画面53の「1」の項目のサイクルタイム55を削除し、「2~8」のサイクルタイム55を1つ繰り上げて、「8」の項目に新たに計測したサイクルタイム55を表示する。尚、このログデータDT1に記憶されたサイクルタイム55は、管理装置12によって収集されてローカルDB39に登録され、同期処理によってDBサーバ13にも登録される。
【0031】
さらに、作業機モジュール43Bは、新たに表示するサイクルタイム55の各々について、サイクルタイム基準値DT4以上であるか否かを判断する。作業機モジュール43Bは、サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT4以上であった場合、その項目のサイクルタイム55を、他のサイクルタイム55に比べて強調した表示を実行する。例えば、
図3に示すように、作業機モジュール43Bは、該当するサイクルタイム55の背景を有色(黄色や赤色など)で塗りつぶし強調する。一方、作業機モジュール43Bは、サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT4未満であった場合、上記した強調表示を実行せず、通常の表示を実行する。これにより、例えば、生産ラインのユーザ(作業者など)は、各サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT4以上となっている工程を確認できる。ユーザは、全行程や各工程を確認することで、作業の遅延が発生しているか否かを確認でき、加工中、脱着、チャック締め・緩めを確認することで、遅延の原因となっている工程を確認できる。ユーザは、例えば、チャック締めに遅延が発生していた場合、チャックを駆動する油圧シリンダの油圧を高くするなど、適切な対応を実施できる。
【0032】
また、上位監視装置11も、サイクルタイム基準値DT2に基づく判断・表示を実行する。
図4~
図7は、上位監視装置11のユーザIF23の表示画面57,58を示している。上位監視装置11は、例えば、現在生産中、又は生産を開始する予定のワークのワーク番号に応じた表示画面57,58を表示する。上位監視装置11は、ユーザIF23に対する操作入力に応じて、モジュール単位のサイクルタイム55の表示と、生産ライン単位のサイクルタイム55の表示を切り替えることができる。
図4及び
図5は、モジュール単位で表示を行なった表示画面57の左側と右側を示している。
図6及び
図7は、生産ライン単位で表示を行なった表示画面58の左側と右側を示している。尚、
図4~
図7に示す数値や文字は一例であり、図面が煩雑となるのを避けるため、一部の項目を「---」などの表示で省略して図示している。また、上位監視装置11は、ワーク番号の選択・設定等をユーザから受け付け、選択等されたワーク番号に応じた過去のサイクルタイム55等を、表示画面57,58に表示しても良い。以下の説明では、上記した作業機モジュール43Bの表示処理と同様の内容については、その説明を適宜省略する。
【0033】
まず、モジュール単位の表示について説明する。
図4及び
図5に示すように、上位監視装置11は、例えば、ネットワーク15を介して監視する複数の生産ライン(工作機械14)の各モジュールのサイクルタイム55とサイクルタイム基準値DT2を表示する。上位監視装置11は、工程、ワーク、生産数、1時間あたり[実績/目標]、サイクルタイム[s]、機械稼働率、装置状態の各項目を左右方向に並べて表示画面57に表示する。
【0034】
「工程」の列は、各生産ラインと、生産ラインごとの作業機モジュール43A~43Iや他の作業機モジュール(以下、作業機モジュール43A等という場合がある)の識別情報を示している。尚、
図4に示す生産ラインや作業機モジュール43A等は、一例である。表示画面57の上部には、各生産ラインの作業機モジュール43A等の構成を示す装置構成52が模式的に示されている。上位監視装置11は、例えば、ネットワーク15を介して監視する全ての生産ラインについて表示画面57で表示する。あるいは、上位監視装置11は、ネットワーク15を介して監視する全ての生産ラインのうち、ユーザIF23で選択を受け付けた生産ラインについてのみ表示を行なっても良い。
【0035】
図4及び
図5に示す例では、A~D生産ラインの4つの生産ラインの装置構成52が表示されている。また、上位監視装置11は、各装置構成52の下に、その生産ラインでワークを流す方向(上流、下流)を示す矢印を表示する。また、上位監視装置11は、各装置構成52の上に作業機モジュール43A等を識別するモジュール識別情報54を表示する。上位監視装置11は、例えば、複数の装置構成52の順番と、
図4の「工程」の列の順番を同じ順番で表示する。具体的には、上位監視装置11は、表示画面57の左から右に向かってA~D生産ラインの順番に装置構成52を表示し、「工程」の列において上から下に同じ順番でA~D生産ラインのモジュール識別情報54を表示する。上位監視装置11は、「工程」の列において、モジュール識別情報54に加え、「DM」などの作業機モジュール43A等の種類を示す情報や、(A生産ライン)などの装置構成52(生産ライン)との関係を示す情報を表示する。尚、「DM」との標記は、ドリルによる孔開けやミーリング加工等を行うドリミルモジュールを示している。
【0036】
また、「ワーク」の「NO.」の列は、「工程」の列の作業機モジュール43A等が現在対象としているワークのワーク番号を示している。「ワーク」の「名称」の列は、ワークに設定された名称が表示される。「生産数」の「計画」は、「工程」の列の作業機モジュール43A等が「ワーク」の列のワークを生産する予定の数であり、「実績」は、既に生産済みの数である。「ワーク」の「進度率」は、表示画面57を表示した時点において生産されている予定の数に対する生産済みの数、即ち、実績の割合である。上位監視装置11は、例えば、生産開始時間から現在までの経過時間にサイクルタイム基準値DT2を乗算し、表示画面57を表示した時点の予定生産数を演算する。上位監視装置11は、「実績」の数を、演算した予定生産数で除算し、除算した結果に100の値を乗算してパーセント表示で「進度率」を表示する。「予想終了時間」は、「計画」の数の生産が終了すると予想される時間である。上位監視装置11は、例えば、計画の数にサイクルタイム基準値DT2を乗算し、乗算した結果を生産開始時間に加算して予想終了時間を演算する。上位監視装置11は、生産開始時間をユーザから受け付けても良く、最初にワークの加工を開始した時間を、生産開始時間として設定しも良い。
【0037】
次に、
図5の1時間あたり[実績/目標]の列は、1時間あたりのワークの生産数を実績として、1時間あたりの目標生産数を目標として示し、直近の4時間の実績を示している。目標生産数は、例えば、上記した進度率と同様に、1時間をサイクルタイム基準値DT2で除算することで演算できる。サイクルタイム[s]の1~5の各列は、各作業機モジュール43A等のサイクルタイム55であって、直近の5個のサイクルタイム55(例えば、秒単位)を示している。また、サイクルタイム基準値DT2は、各作業機モジュール43A等のサイクルタイム55を判断する時間である。機械稼働率は、各作業機モジュール43A等の稼働率である。装置状態は、各作業機モジュール43A等の現在の状態であり、生産中、ローディング(ワーク装着中)、待ち、操作中、刃具交換中、アラームなどの情報である。
【0038】
また、上位監視装置11は、モジュール単位の表示から生産ライン単位の表示へ切り替える切替ボタン56を、表示画面57の左下に表示する(
図4参照)。上位監視装置11は、切替ボタン56を選択する操作をユーザIF23で受け付けると、
図6及び
図7に示す表示画面58をユーザIF23に表示する。
図6及び
図7に示すように、上位監視装置11は、例えば、A~Dの生産ライン単位でサイクルタイム55及びサイクルタイム基準値DT2を表示する。尚、以下の説明では、
図4及び
図5のモジュール単位の表示と同様の内容については、その説明を適宜省略する。
【0039】
上位監視装置11は、モジュール単位と同様に、装置構成52等を表示画面58の上部に表示する。また、上位監視装置11は、「ライン名」の列にA~D生産ラインの名称を表示する。上位監視装置11は、A~D生産ラインの各行に、ワーク、生産数、1時間あたり[実績/目標]、サイクルタイム55、サイクルタイム基準値DT2、機械稼動率、装置状態を表示する。上位監視装置11は、例えば、各生産ラインで最終工程まで生産され排出されたワークの数を実績とし、1時間あたり[実績/目標]の「実績」に表示する。また、上位監視装置11は、例えば、生産ライン単位の表示の場合、サイクルタイム55として直近のサイクルタイムを1つだけ表示する。このサイクルタイム55は、例えば、生産ラインの出口装置からワークを排出した時点から、次のワークを出口装置から排出するまでの時間である。また、上位監視装置11は、例えば、生産ライン全体の稼働率を、機械稼働率として表示する。上位監視装置11は、「装置状態」の列に、生産ライン全体の状態や生産ラインに含まれる作業機モジュール43A等の状態を表示する。尚、上記した表示方法は、一例である。例えば、上位監視装置11は、生産ラインに含まれる作業機モジュール43A等の稼働率の平均値や最大値を、「機械稼動率」として表示しても良い。また、上位監視装置11は、サイクルタイム[s]の列に、
図5に示すような複数のサイクルタイム55を表示しても良い。
【0040】
また、上位監視装置11は、生産ライン単位の表示からモジュール単位の表示へ切り替える切替ボタン59を、表示画面58の左下に表示する。上位監視装置11は、切替ボタン59を選択する操作をユーザIF23で受け付けると、
図4及び
図5に示す表示画面57を表示する。このようにして、上位監視装置11のユーザは、監視対象の生産ラインについて、生産ライン全体で比較・監視したい場合は
図6及び
図7の表示画面58を表示させて確認し、モジュールごとに比較・監視したい場合は
図4及び
図5の表示画面57を表示させて確認できる。上位監視装置11は、このような表示の変更を、切替ボタン56,59を操作するだけで実行できる。そして、後述するサイクルタイム55の強調表示を確認することで、ボトルネックとなっている生産ラインやモジュールを早期に発見することができる。
【0041】
上位監視装置11は、例えば、各生産ラインや作業機モジュール43A等に応じたログデータDT1(サイクルタイム55を含む)をDBサーバ13から取得し、上記した工程(ライン名)、ワーク、生産数、1時間あたり[実績/目標]、機械稼動率、装置状態の情報を、表示画面57,58に表示する。即ち、上位監視装置11は、例えば、作業機モジュール43A等から収集したサイクルタイム55などの情報を取得し表示する。上位監視装置11は、取得したサイクルタイム55から作業機モジュール43A等や生産ラインのサイクルタイム55(例えば、
図3の1サイクル)を演算し、サイクルタイム[s]の列に表示する。尚、作業機モジュール43A等は、自装置で演算した1サイクルのサイクルタイム55を、ログデータDT1に記憶しても良い。この場合、上位監視装置11は、演算結果の1サイクルのサイクルタイム55をDBサーバ13から取得できるため、演算の必要がなくなる。
【0042】
さらに、上位監視装置11は、表示するサイクルタイム55の各々について、サイクルタイム基準値DT2以上であるか否かを判断する。上位監視装置11は、サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT2以上であった場合、作業機モジュール43Bと同様に、その項目のサイクルタイム55を強調した表示を実行する(
図5、
図7参照)。また、上位監視装置11は、サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT2未満であった場合、上記した強調表示をせずに、通常の表示を実行する。これにより、上位監視装置11のユーザ(工場長やライン長)は、各サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT2以上となっている作業機モジュール43A等や生産ラインを確認できる。例えば、ユーザは、生産数、1時間あたり[実績/目標]に基づいて生産計画の目標数を達成できているか判断する。ユーザは、目標数を達成できるように、サイクルタイム基準値DT2を設定することで、生産が遅れているモジュールや生産ラインを判断できる。
【0043】
上記したように、上位監視装置11及び作業機モジュール43A~43Iは、複数のワークの各々におけるサイクルタイム55(作業時間)を取得して表示する。上位監視装置11及び作業機モジュール43A~43Iは、取得した複数のサイクルタイム55のうち、サイクルタイム基準値DT2,DT4以上のサイクルタイム55を、他のサイクルタイム55に比べて強調して表示する。これにより、サイクルタイム基準値DT2,DT4を満たしているサイクルタイム55と、満たしていないサイクルタイム55を視覚的に容易に判断可能にできる。
【0044】
尚、管理装置12においても、作業機モジュール43A~43Iや上位監視装置11と同様に、現在・過去のサイクルタイム55の表示や、サイクルタイム基準値DT3を用いたサイクルタイム55の強調表示を実行しても良い。管理装置12は、ローカルDB39のログデータDT1やサイクルタイム基準値DT3に基づいて、
図4~
図7のような表示をユーザIF33で実行しても良い。また、上位監視装置11等は、サイクルタイム基準値DT2~DT4を表示処理以外に用いても良い。例えば、作業機モジュール43A~43Iは、サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT4以上となった場合に、エラーを報知しても良い。あるいは、作業機モジュール43A~43Iは、サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT4以上となった場合に、加工動作を停止して良く、サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT4未満となるように、チャックの油圧等を自動で調整しても良い。また、上位監視装置11や管理装置12は、サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT2,DT3以上となった場合に、作業機モジュール43A~43Iに対する調整作業を実行しても良く、エラーをメール等で担当者に通知しても良い。
【0045】
(サイクルタイム基準値送信処理)
次に、生産システム1がサイクルタイム基準値DT2~DT4を送信するサイクルタイム基準値送信処理について
図8を参照しつつ説明する。以下の説明では、一例として、工作機械14(作業機モジュール43A~43I)や上記したA生産ラインを対象として説明する。生産システム1は、4つの管理モードを備え、その選択を受け付ける。4つの管理モードは、監視システム10及び作業機モジュール43A~43Iのうち、少なくとも一方の装置で設定されたサイクルタイム基準値DT2,DT4を、他方の装置へ送信し設定するか否かに応じて異なるモードである。
図8は、4つの管理モードを示している。
図8に示すように、生産システム1は、展開モードとして、機械基準モード、上位基準モード、相互設定モードの3つの管理モードを備えている。また、監視システム10は、もう1つの管理モードとして、非展開モードを備えている。
【0046】
管理モードの設定は、例えば、上位監視装置11において受け付ける。上位監視装置11は、例えば、ユーザIF23において、管理モードの種類と、その管理モードで管理する対象を受け付ける。管理する対象は、例えば、工作機械14単位でも良く、生産工場(ネットワーク17)単位、作業機モジュール43A~43I単位、作業工程単位でも良い。尚、管理モードの設定を受け付ける装置は、上位監視装置11に限らず、管理装置12や作業機モジュール43A~43Iでも良い。
【0047】
上位監視装置11は、例えば、管理対象として工作機械14が選択された場合、設定する管理モードの種類と選択された工作機械14とを関連付けて記憶装置22に記憶する。また、上位監視装置11は、設定する管理モードの種類を、選択された工作機械14へ管理装置12を介して通知する。通知を受けた管理装置12及び作業機モジュール43A~43Iは、通知を受けた種類の管理モードを自装置に設定する。これにより、選択された工作機械14(作業機モジュール43A~43I)においてサイクルタイム基準値DT4の設定が行なわれた場合、設定された管理モードの種類に応じた処理が実行される。また、上位監視装置11及び管理装置12は、任意の工作機械14を対象としたサイクルタイム基準値DT2,DT3の設定が行なわれた場合、その工作機械14に応じた管理モードを実行する。
【0048】
展開モードは、監視システム10及び作業機モジュール43A~43Iのうち、少なくとも一方の装置でサイクルタイム基準値DT2,DT4が設定された場合に設定されたサイクルタイム基準値DT2,DT4を他方の装置へ送信し設定する管理モードである。まず、展開モードの1つである機械基準モードについて説明する。機械基準モードは、作業機モジュール43A~43Iの何れかでサイクルタイム基準値DT4が設定された場合、設定されたサイクルタイム基準値DT4を、監視システム10側(DBサーバ13)に送信してサイクルタイム基準値DT2として設定する管理モードである。
【0049】
作業機モジュール43A~43Iの各々は、例えば、
図3に示す表示画面53のサイクルタイム基準値DT2の列(欄)において、サイクルタイム基準値DT2の入力を受け付ける。ユーザは、例えば、所謂、段取り替えによってワークの種類を変更する際、新たなワーク番号(ワーク識別番号)を設定し、表示画面53において各工程のサイクルタイム基準値DT4を設定する。また、ユーザは、例えば、ワークの加工が進むにつれて、サイクルタイム基準値DT4による判断結果(強調表示)を確認しつつ、チャックの油圧の調整等を実行し、必要に応じてサイクルタイム基準値DT4を設定し直す(変更する)。
【0050】
図8の最も左側に示すように、作業機モジュール43A~43Iにおいてサイクルタイム基準値DT4が設定されると、設定されたサイクルタイム基準値DT4を記憶装置46に記憶する。作業機モジュール43A~43Iは、設定されたサイクルタイム基準値DT4を管理装置12へ送信する。管理装置12は、受信したサイクルタイム基準値DT4をサイクルタイム基準値DT3としてローカルDB39に設定する。管理装置12は、例えば、一定の時間毎にDBサーバ13とローカルDB39の同期処理を実行しており、同期処理を実行することで、受信したサイクルタイム基準値DT4をDBサーバ13のサイクルタイム基準値DT2に反映する。これにより、作業機モジュール43A~43Iで設定されたサイクルタイム基準値DT4を、サイクルタイム基準値DT2,DT3に反映でき、サイクルタイム基準値DT2~DT4を統一することができる。
【0051】
尚、上記した反映方法は、一例である。例えば、管理装置12が、作業機モジュール43A~43Iの各々のサイクルタイム基準値DT4の変更を定期的に監視し、変更の検出に応じてサイクルタイム基準値DT4を作業機モジュール43A~43Iから取得しDBサーバ13に反映しても良い。
【0052】
また、上位監視装置11や管理装置12は、例えば、機械基準モードが設定された工作機械14については、サイクルタイム基準値DT2,DT3の設定を受け付けない処理を実行する。従って、機械基準モードは、生産ラインのユーザが設定するサイクルタイム基準値DT4を優先したい場合に有効である。生産ラインのユーザは、生産現場の状況(加工状況、加工プログラムの内容、機械設定など)から動作すべき時間を判断し、より適切なサイクルタイム基準値DT4を設定する。この現場の判断で設定されたサイクルタイム基準値DT4を上位監視装置11側にも反映させ強調表示に利用できる。例えば、上位監視装置11側の工場長と、工作機械14側の作業員との間で、統一したサイクルタイム55の管理を行える。尚、機械基準モードにおいて、上位監視装置11や管理装置12は、サイクルタイム基準値DT2,DT3の設定指示を受け付けた場合に、設定を受け付けない処理を実行するのではなく、管理モードの変更を促す処理を実行しても良い。
【0053】
次に、上位基準モードについて説明する。上位基準モードは、上記した機械基準モードとは逆に、上位監視装置11でサイクルタイム基準値DT2が設定された場合に設定されたサイクルタイム基準値DT2を作業機モジュール43A~43Iへ送信して設定するモードである。尚、以下の説明では、上記した機械基準モードと同様の内容については、その説明を適宜省略する。
【0054】
上位監視装置11は、例えば、
図4~
図7に示す表示画面57,58においてサイクルタイム基準値DT2を受け付けても良い。あるいは、
図9に示すように、上位監視装置11は、サイクルタイム基準値DT2を受け付ける受付画面61を別途備えても良い。
図9に示すように、上位監視装置11は、生産ライン選択部62、値登録部63、自動登録部64を、受付画面61に表示する。
【0055】
生産ライン選択部62は、サイクルタイム基準値DT2を設定する対象の生産ラインを選択する欄である。例えば、DBサーバ13は、生産ライン名と工作機械14を関連付けて記憶しており、ネットワーク15に接続された全ての生産ライン名を記憶している。上位監視装置11は、例えば、DBサーバ13のデータに基づいて、ネットワーク15に接続された全ての生産ライン名をプルダウンメニューとして生産ライン選択部62に表示し、プルダウンメニューの中からサイクルタイム基準値DT2を設定する生産ライン名の選択を受け付ける。
【0056】
値登録部63は、サイクルタイム基準値DT2の値を、入力する入力欄である。上位監視装置11は、ワーク番号選択部65、機械名表示部66、入力部67,68、登録ボタン69、破棄ボタン70を値登録部63に表示する。上位監視装置11は、例えば、登録済みのワーク番号(ワークの種類)をワーク番号選択部65にプルダウンメニューで表示し、表示したプルダウンメニューの中からサイクルタイム基準値DT2を設定するワーク番号の選択を受け付ける。また、上位監視装置11は、例えば、生産ライン選択部62で選択された生産ライン名(図示例ではA生産ライン)と、その生産ラインを構成する作業機モジュール43A等のモジュール識別情報54(
図4~
図7参照)を機械名表示部66に表示する。上位監視装置11は、入力部67,68において、機械名表示部66に表示した生産ラインやモジュール識別情報54(作業機モジュール43A等)の各々のサイクルタイム基準値DT2の入力を受け付ける。例えば、ユーザは、ユーザIF23を操作して入力したい入力部67,68を選択し数値を入力する。尚、上位監視装置11は、作業機モジュール43A~43I単位ではなく、
図3に示すような作業機モジュール43A~43Iの各工程を機械名表示部66に表示し、工程単位でサイクルタイム基準値DT2を受け付けても良い。
【0057】
入力部67は、ワーク搬送装置によるワークの着脱時間(ローディング時間)を含むサイクルタイム基準値DT2を入力する欄である。入力部68は、ローディング時間を含まないサイクルタイム基準値DT2を入力する入力欄である。上位監視装置11は、登録ボタン69を選択する操作をユーザIF23で受け付けると、DBサーバ13において生産ライン選択部62で選択された生産ライン(工作機械14)やその生産ラインを構成する作業機モジュール43A~43Iと関連付けられたサイクルタイム基準値DT2について、入力部67,68で入力された値を設定する。また、上位監視装置11は、破棄ボタン70を選択する操作をユーザIF23で受け付けると、例えば、入力部67,68に入力されたサイクルタイム基準値DT2を破棄し、受付画面61の表示を終了する。尚、上位監視装置11及び作業機モジュール43A~43Iは、
図3~
図7の表示において、ローディング時間を含むサイクルタイム55とサイクルタイム基準値DT2,DT4に基づく強調表示を実行するか、ローディング時間を含まないサイクルタイム55等に基づく強調表示を実行するかの選択をユーザから受け付けても良い。
【0058】
また、自動登録部64は、作業機モジュール43A~43Iから収集した作業の実績に基づいてサイクルタイム基準値DT2を自動登録する条件を設定する欄である。上位監視装置11は、ワーク番号選択部71、集計データ数部72、決定方法選択部73、実行ボタン74を自動登録部64に表示する。上位監視装置11は、ワーク番号選択部65と同様に、サイクルタイム基準値DT2を自動登録するワーク番号の選択をワーク番号選択部71で受け付ける。
【0059】
また、上位監視装置11は、集計データ数部72で入力された数をサンプル数として、決定方法選択部73で選択された決定方法によりサイクルタイム基準値DT2を決定し登録する。上位監視装置11は、例えば、最大値、平均値、最小値の3つのチェックボタンを、決定方法選択部73に表示する。上位監視装置11は、実行ボタン74を選択する操作をユーザIF23で受け付けると、生産ライン選択部62で選択された生産ラインで、且つワーク番号選択部71で選択されたワーク番号のワークについて、集計データ数部72で入力された数の実績データに基づいて、決定方法選択部73でチェックされた決定方法でサイクルタイム基準値DT2を決定する。
【0060】
例えば、
図9に示すように、集計データ数部72に「10」の数字が入力され、決定方法選択部73で最大値のチェックボックスがチェックされた場合、上位監視装置11は、過去の10件の測定したサイクルタイム55の中から最大値のサイクルタイム55を選択し、サイクルタイム基準値DT2として設定する。例えば、上位監視装置11は、A生産ラインやA生産ラインの作業機モジュール43A等のログデータDT1をDBサーバ13から取得し、直近の10件のサイクルタイム55を取得する。上位監視装置11は、10件のサイクルタイム55のうち、最大値のサイクルタイム55を、A生産ラインや作業機モジュール43A等のサイクルタイム基準値DT2としてDBサーバ13に登録する。また、上位監視装置11は、決定方法選択部73で平均値がチェックされた場合、10件のサイクルタイム55の平均値をサイクルタイム基準値DT2として登録する。また、上位監視装置11は、決定方法選択部73で最小値がチェックされた場合、10件のサイクルタイム55のうち、最小値のサイクルタイム55を、サイクルタイム基準値DT2として登録する。尚、決定方法は、上記した最大値、平均値、最小値に限らず、2乗平均などの他の方法でも良い。
【0061】
上位監視装置11は、実行ボタン74を選択された場合、上記したサイクルタイム基準値DT2の決定・設定処理を1回だけ実行する。あるいは、上位監視装置11は、自動登録の解除指示、値登録部63による登録、管理モードの変更などがあるまでサイクルタイム基準値DT2の自動設定を継続しても良い。例えば、上位監視装置11は、直近の10件のサイクルタイム55から最大値・平均値等を選択・演算し、新たなサイクルタイム55がDBサーバ13に登録されるごとにサイクルタイム基準値DT2を更新しても良い。尚、上記した例では、上位監視装置11がサイクルタイム基準値DT2の自動登録を実行したが、管理装置12や作業機モジュール43A~43Iがサイクルタイム基準値DT3,DT4の自動登録を実行しても良い。
【0062】
上記したように、本実施例の監視システム10の上位監視装置11は、サイクルタイム基準値DT2の値の入力を受け付ける入力部67,68と、作業機モジュール43A~43Iから収集した作業の実績に基づいてサイクルタイム基準値DT2を決定する条件を設定する集計データ数部72及び決定方法選択部73を表示する。上位監視装置11は、登録ボタン69又は実行ボタン74によりサイクルタイム基準値DT2の決定方法を受け付ける。これによれば、入力部67,68を用いることで、ユーザが所望のサイクルタイム基準値DT2を設定できる。また、集計データ数部72及び決定方法選択部73を用いることで、過去の実績から自動で決定したサイクルタイム基準値DT2を設定できるため、ユーザがサイクルタイム基準値DT2を検討し設定する作業が不要となる。例えば、決定方法選択部73で「最大値」を選択した場合は、サイクルタイム55がサイクルタイム基準値DT2以上となる確率が低下し一定の余裕を持たせることができる。換言すれば、新たに計測したサイクルタイム55が過去の最大値であるサイクルタイム基準値DT2以上となった場合には何らかの調整が必要である可能性が高い。強調表示をすることでユーザに迅速な対応を促すことができる。また、「平均値」、「最小値」を選択することで、サイクルタイム55をサイクルタイム基準値DT2で判断する条件の厳しさ(強調表示の発生頻度や許容範囲)を調整できる。ユーザは、使用環境や生産ポリシーなどに応じて、決定方法選択部73の選択を実行できる。
【0063】
上位監視装置11のユーザは、例えば、所謂、段取り替えを実行する場合や、新たな生産計画に基づく生産を開始する場合に受付画面61において各生産ラインのサイクルタイム基準値DT2を設定する。
図8の左から2番目に示すように、上位監視装置11は、サイクルタイム基準値DT2の設定を受け付けると、受け付けたサイクルタイム基準値DT2をDBサーバ13に登録する。管理装置12は、同期処理により、サイクルタイム基準値DT2とサイクルタイム基準値DT3を同期させる。管理装置12は、上位基準モードが設定された状態で、サイクルタイム基準値DT2の更新を検出すると、検出したサイクルタイム基準値DT2で、対応する工作機械14のサイクルタイム基準値DT4を更新する。これにより、上位監視装置11で設定されたサイクルタイム基準値DT2を、サイクルタイム基準値DT3,DT4に反映できる。例えば、生産ラインのユーザが適切なサイクルタイム基準値DT4を設定できない場合、上位監視装置11側でサイクルタイム基準値DT2を設定する必要がある。また、ユーザによっては、上位監視装置11側で設定したサイクルタイム基準値DT2を生産ライン(サイクルタイム基準値DT3)へ反映したい場合がある。このような場合に、上位基準モードを選択すれば、上位監視装置11で設定したサイクルタイム基準値DT2を、各生産ラインへ展開することが可能となる。
【0064】
次に、相互設定モードについて説明する。相互設定モードは、監視システム10及び作業機モジュール43A~43Iのうち、一方の装置でサイクルタイム基準値DT2,DT4が設定された場合に設定されたサイクルタイム基準値DT2,DT4を他方の装置へ送信して設定し且つその逆の場合も実行する管理モードである。従って、相互設定モードでは、上記した機械基準モードと上位基準モードの両方の処理を実行する。
図8の左から3番目に示すように、上位監視装置11又は作業機モジュール43A~43Iでサイクルタイム基準値DT2,DT4が設定されると、生産システム1の全体に反映する。これによれば、上位監視装置11と作業機モジュール43A~43Iとの両方でサイクルタイム基準値DT2,DT4を設定でき、その設定したサイクルタイム基準値DT2,DT4を迅速にシステム全体に反映できる。生産システム1のサイクルタイム基準値DT2~DT4を常に最新の状態で維持できる。
【0065】
次に、非展開モードについて説明する。非展開モードは、監視システム10及び作業機モジュール43A~43Iのうち、一方の装置でサイクルタイム基準値DT2,DT4が設定された場合に設定されたサイクルタイム基準値DT2,DT4を他方の装置へ送信しない管理モードである。従って、非展開モードでは、監視システム10と工作機械14とでサイクルタイム基準値DT2,DT4を別々に管理する。
【0066】
図8の最も右側に示すように、作業機モジュール43A~43Iの何れかでサイクルタイム基準値DT4が設定されたとしても、サイクルタイム基準値DT2,DT3には設定が反映されない。同様に、上位監視装置11でサイクルタイム基準値DT2が設定されたとしても、サイクルタイム基準値DT4には設定が反映されない。例えば、管理装置12は、非展開モードを設定されると、サイクルタイム基準値DT3についてサイクルタイム基準値DT2とのみ同期を実行し、サイクルタイム基準値DT4との同期を実行しない。例えば、上位監視装置11側では、生産計画の全体的な見通しからサイクルタイム基準値DT2を設定しサイクルタイム55を監視する。一方で、生産ライン側では、例えば、作業機モジュール43A~43Iの各工程のサイクルタイム55を監視する目的、装置の動作状況を監視する目的等で、サイクルタイム基準値DT4を設定し、装置の調整を実行する。このように、上位監視装置11と工作機械14とで目的に合ったサイクルタイム基準値DT2,DT4を設定することができる。非展開モードでは、異なるサイクルタイム基準値DT2,DT4となるため、例えば、作業機モジュール43A~43Iで強調表示となっても、上位監視装置11では強調表示とならない場合も発生する。尚、非展開モードにおいて、管理装置12は、DBサーバ13との同期を実行せず、作業機モジュール43A~43Iのサイクルタイム基準値DT4とサイクルタイム基準値DT3を同期させても良い。この場合、サイクルタイム基準値DT3は、サイクルタイム基準値DT2と異なる値となる可能性がある一方、サイクルタイム基準値DT4と同一値となる。
【0067】
また、監視システム10の上位監視装置11は、管理モードとして、監視システム10で設定したサイクルタイム基準値DT2を、作業機モジュール43A~43Iへ送信するモード、即ち、上位基準モードや相互設定モードが設定されていない場合に、
図9の受付画面61の操作後にモードの変更を受け付けても良い。上位監視装置11は、例えば、機械基準モードや非展開モードが設定された状態において、受付画面61で登録ボタン69又は実行ボタン74を選択された場合、生産ライン選択部62で選択された生産ラインについて、サイクルタイム基準値DT2が設定されているか否かを作業機モジュール43A~43Iへ問い合わせる。上位監視装置11は、例えば、管理装置12を介して問い合わせを実行する。
【0068】
上位監視装置11は、生産ライン選択部62の生産ラインの作業機モジュール43A~43Iへ、ワーク番号選択部65,71で選択されたワーク番号についてサイクルタイム基準値DT2が設定されているか否かを問い合わせる。上位監視装置11は、問い合わせ先の作業機モジュール43A~43Iにサイクルタイム基準値DT2が設定されていた場合、受付画面61で受け付けたサイクルタイム基準値DT2をDBサーバ13に登録して処理を終了する。即ち、サイクルタイム基準値DT4への展開を実行しない。
【0069】
一方、上位監視装置11は、サイクルタイム基準値DT2が設定されていなかった場合、登録ボタン69又は実行ボタン74を選択された後、
図10に示すポップアップ画面81を受付画面61に重ねて表示する。上位監視装置11は、受付画面61で選択された生産ラインにサイクルタイム基準値DT2が設定されていない旨のメッセージ、管理モードを変更するか確認するメッセージ、現在の管理モードを示すメッセージをポップアップ画面81に表示する。また、上位監視装置11は、管理モードを変更しない継続ボタン83と、変更を受け付ける変更ボタン84をポップアップ画面81に表示する。上位監視装置11は、継続ボタン83が選択された場合、受付画面61で受け付けたサイクルタイム基準値DT2をDBサーバ13に登録して処理を終了する。
【0070】
また、上位監視装置11は、変更ボタン84が選択された場合、管理モードの変更を受け付ける画面(図示略)を表示する。上位監視装置11は、上位基準モードや相互設定モードに変更された場合、受付画面61で受け付けたサイクルタイム基準値DT2の設定を、作業機モジュール43A~43Iのサイクルタイム基準値DT4に反映する。これによれば、工作機械14のユーザがサイクルタイム基準値DT4を設定し忘れていた場合に、上位監視装置11側で設定したサイクルタイム基準値DT2をサイクルタイム基準値DT4に展開できる。また、反映するか否かをユーザによって選択できる。
【0071】
因みに、生産システム1は、サイクルタイム基準値管理システムの一例である。集計データ数部72、決定方法選択部73は、条件設定部の一例である。
【0072】
以上、上記した本実施例では、以下の効果を奏する。
本開示の一態様である生産システム1は、監視システム10及び作業機モジュール43A~43Iにおいて設定されたサイクルタイム基準値DT2,DT4を送信し設定する4つの管理モードを備え、その中から任意の管理モードの選択を受け付ける。これによれば、ユーザは、管理モードを選択することで、所望の管理方法でサイクルタイム基準値DT2~DT4を管理できる。ユーザの生産ポリシーに応じたサイクルタイム基準値DT2~DT4の管理が実行できる。
【0073】
また、本開示の内容は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、生産システム1は、
図8に示す4つの管理モードを備えたが、このうちの少なくとも2つを備え、モードを設定するか否かを受け付けても良い。あるいは、生産システム1は、上記4つの管理モード以外のモードを備えても良い。例えば、管理装置12でサイクルタイム基準値DT3を受け付けて、サイクルタイム基準値DT2,DT4に反映し、その逆を実行しない管理装置基準モードを採用しても良い。
また、上位監視装置11や作業機モジュール43A~43Iは、
図3~
図7に示すようなサイクルタイム基準値DT2,DT4以上のサイクルタイム55を強調する処理を実行しなくとも良い。
また、上記した実施例では、サイクルタイム基準値DT2~DT4以上のサイクルタイム55を強調する方法として背景色を変更したが、これに限らない。例えば、強調する方法として、文字を太くする、文字を大きくする、丸で囲むなどの他の強調する方法を実行しても良い。
また、上位監視装置11は、
図10に示す作業機モジュール43A~43Iへの問い合わせや、管理モードの変更の受け付け処理を実行しなくとも良い。
【0074】
また、上記実施例の生産システム1の構成は、一例である。例えば、ネットワーク15に複数のネットワーク17(生産工場)が接続されたが、1つのネットワーク17のみが接続される構成でも良い。
また、1つのネットワーク17に、複数の監視システム10や複数の工作機械14(生産ライン)を接続しても良い。また、1つの監視システム10で1又は複数の工作機械14(生産ライン)を管理しても良く、複数の監視システム10で1又は複数の工作機械14を管理しても良い。
また、上記実施例では、本開示の監視システムとして上位監視装置11及びDBサーバ13を備える監視システム10を採用したが、これに限らない。
図11は、別実施例の生産システム1Aを示している。
図11に示すように、生産システム1Aは、監視システム10(上位監視装置11やDBサーバ13)を備えない構成でも良い。また、管理装置12は、管理モードに応じて作業機モジュール43A~43Iのサイクルタイム基準値DT4と管理装置12のサイクルタイム基準値DT3の同期を実行しても良い。管理装置12は、
図9に示すようなサイクルタイム基準値DT2の決定や、
図10に示すようなモードの変更を受け付けても良い。そして、管理装置12は、ユーザIF33に対する操作に応じてサイクルタイム基準値DT3に基づく強調表示を実行しても良い。これにより、管理装置12においてサイクルタイム基準値DT3の設定等を実行できる。また、
図11に示す構成では生産システム1Aは、本開示のサイクルタイム基準値管理システムの一例である。管理装置12は、本開示の監視システムの一例である。
【0075】
上記実施例では、本開示の作業機モジュールとして、
図2に示す複数の作業機モジュール43A~43Iを連結した構成を採用したが、これに限らない。本開示の作業機モジュールは、1又は2以上の連結されていない(スタンドアローンの)工作機械でも良い。
また、本開示のサイクルタイム基準値管理システムは、ワークを切削等する工作機械の生産システムに限らない。例えば、サイクルタイム基準値管理システムは、ワークとして基板を採用し、半田印刷装置、電子部品実装装置、リフロー炉、検査装置を備える基板生産システムでも良い。この場合、例えば、基板生産システムを管理する管理装置が、半田印刷装置や電子部品実装装置等との間でサイクルタイム基準値を送信しても良い。
【0076】
尚、本開示の範囲は、特許請求の範囲に記載された従属関係に限定されない。例えば、本明細書では、請求項4において「請求項1又は請求項2に記載のサイクルタイム基準値管理システム」を「請求項1~3の何れか1項に記載のサイクルタイム基準値管理システム」に変更した技術思想も開示されている。また、本明細書では、請求項5において「請求項1又は請求項2に記載のサイクルタイム基準値管理システム」を「請求項1~4の何れか1項に記載のサイクルタイム基準値管理システム」に変更した技術思想も開示されている。
【符号の説明】
【0077】
1 生産システム(サイクルタイム基準値管理システム)、10 監視システム、23 ユーザIF、43A~43I 作業機モジュール、55 サイクルタイム、67,68 入力部、72 集計データ数部(条件設定部)、73 決定方法選択部(条件設定部)、DT2~DT4 サイクルタイム基準値。