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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002599
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B22D17/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101894
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 光貴
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成で水平状態を保ったまま射出装置及びCフレームを昇降させるダイカストマシンを提供する。
【解決手段】ダイカストマシンは、射出装置の下方で上下方向に伸縮することによって、型締装置に対して射出装置及びCフレームを昇降させる昇降シリンダと、長手方向において昇降シリンダを挟んでCフレームと反対側に配置されて、予め蓄圧した作動油をヘッド室に供給するアキュームレータと、昇降シリンダの伸縮を制御する制御装置とを備える。制御装置は、アキュームレータに蓄圧された作動油の圧力が許容範囲内のときに、昇降シリンダの伸縮を許容し、アキュームレータに蓄圧された作動油の圧力が前記許容範囲外のときに、昇降シリンダの伸縮を規制する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側金型及び可動側金型を開閉及び型締する型締装置と、
前記型締装置によって型締された前記固定側金型及び前記可動側金型の内部に形成されたキャビティに溶湯金属を射出する射出装置と、
C字形状の開放端側が前記型締装置に昇降可能に接続され、閉塞端側が前記射出装置に固定されるCフレームとを備えるダイカストマシンであって、
前記射出装置の下方で上下方向に伸縮することによって、前記型締装置に対して前記射出装置及び前記Cフレームを昇降させる昇降シリンダと、
前記昇降シリンダの伸縮を制御する制御装置とを備え、
前記射出装置は、
前記キャビティに連通するスリーブと、
前記スリーブ内で前記キャビティに向けて前進することによって、前記スリーブ内の溶湯金属を前記キャビティに供給するプランジャと、
作動油がヘッド室に供給されると前記プランジャを前進させ、作動油がロッド室に供給されると前記プランジャを後退させる射出シリンダと、
長手方向において前記昇降シリンダを挟んで前記Cフレームと反対側に配置されて、予め蓄圧した作動油を前記ヘッド室に供給するアキュームレータとを備え、
前記制御装置は、
前記アキュームレータに蓄圧された作動油の圧力が許容範囲内のときに、前記昇降シリンダの伸縮を許容し、
前記アキュームレータに蓄圧された作動油の圧力が前記許容範囲外のときに、前記昇降シリンダの伸縮を規制することを特徴とするダイカストマシン。
【請求項2】
前記長手方向において前記昇降シリンダを挟んで前記アキュームレータと反対側で前記Cフレームに支持されて、溶融炉から溶湯金属を給湯する給湯姿勢、前記射出装置に溶湯金属を注湯する注湯姿勢、及び前記給湯姿勢と前記注湯姿勢との間の中間姿勢に姿勢変化する給湯装置を備え、
前記ダイカストマシンを平面視したときに、
前記給湯姿勢の前記給湯装置の重心位置は、前記注湯姿勢の前記給湯装置の重心位置より、前記長手方向において前記昇降シリンダに近づき、且つ前記長手方向に直交する幅方向の一方側に張り出し、
前記中間姿勢の前記給湯装置の重心位置は、前記長手方向及び前記幅方向において、前記給湯姿勢の前記給湯装置の重心位置と、前記注湯姿勢の前記給湯装置の重心位置との間に位置し、
前記制御装置は、
前記給湯装置が前記中間姿勢のときに、前記昇降シリンダの伸縮を許容し、
前記給湯装置が前記注湯姿勢または前記給湯姿勢のときに、前記昇降シリンダの伸縮を規制することを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記射出装置及び前記Cフレームの下方で且つ前記長手方向における前記昇降シリンダの両側に配置されて、前記射出装置及び前記Cフレームを、上位置及び前記上位置より下方の下位置それぞれで位置決めする一対の位置決め機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記位置決め機構は、
前記射出装置及び前記Cフレームと共に昇降するスペーサロッドと、
前記射出装置及び前記Cフレームの下方に固定されて、前記スペーサロッドが進入可能な貫通孔が形成されたスタンドと、
前記貫通孔から上方に抜去された前記スペーサロッド及び前記スタンドの間に介在して、前記スペーサロッドが前記貫通孔に進入するのを阻止することによって、前記射出装置及び前記Cフレームを前記上位置に位置決めする上位置ストッパと、
前記スペーサロッドと共に昇降し、前記スペーサロッドが前記貫通孔に進入した状態で前記スタンドの上面に当接することによって、前記射出装置及び前記Cフレームを前記下位置に位置決めする下位置ストッパとを備えることを特徴とする請求項3に記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯金属を金型内に射出するダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固定側金型及び可動側金型を開閉及び型締する型締装置と、型締装置によって型締された固定側金型及び可動側金型の内部に形成されたキャビティに溶湯金属を射出する射出装置と、C型形状の開放端側が型締装置に昇降可能に接続され、閉塞端側が射出装置に接続されたCフレームとを備えるダイカストマシンが知られている。
【0003】
このようなダイカストマシンでは、使用する金型に応じて射出装置の高さを変更する必要がある。そこで、特許文献1には、1本の昇降シリンダを用いてCフレームに対して射出装置を昇降させる技術が開示されている。また、特許文献2には、複数の電動ジャッキを用いて型締装置に対して射出装置及びCフレームを昇降させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-34106号公報
【特許文献2】実開平05-000248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、型締装置及びCフレームの位置を固定して射出装置だけを昇降させる場合、射出装置の位置を変更する度に芯出し作業が必要になる。そのため、作業を簡素化させる観点では、特許文献2のように、型締装置を固定して射出装置及びCフレームを昇降させるのが望ましい。
【0006】
また、特許文献2のように、複数の電動ジャッキを用いる方式では、部品点数が増加して装置が複雑になる。一方、特許文献1のように、1本の昇降シリンダを用いる方式では、推力を与える位置が重心位置から大きくずれると、射出装置及びCフレームを水平状態を保ったまま昇降させることができないという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、型締装置に対して射出装置及びCフレームを昇降させるダイカストマシンにおいて、シンプルな構成で水平状態を保ったまま昇降させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、固定側金型及び可動側金型を開閉及び型締する型締装置と、前記型締装置によって型締された前記固定側金型及び前記可動側金型の内部に形成されたキャビティに溶湯金属を射出する射出装置と、C字形状の開放端側が前記型締装置に昇降可能に接続され、閉塞端側が前記射出装置に固定されるCフレームとを備えるダイカストマシンであって、前記射出装置の下方で上下方向に伸縮することによって、前記型締装置に対して前記射出装置及び前記Cフレームを昇降させる昇降シリンダと、前記昇降シリンダの伸縮を制御する制御装置とを備え、前記射出装置は、前記キャビティに連通するスリーブと、前記スリーブ内で前記キャビティに向けて前進することによって、前記スリーブ内の溶湯金属を前記キャビティに供給するプランジャと、作動油がヘッド室に供給されると前記プランジャを前進させ、作動油がロッド室に供給されると前記プランジャを後退させる射出シリンダと、前記長手方向において前記昇降シリンダを挟んで前記Cフレームと反対側に配置されて、予め蓄圧した作動油を前記ヘッド室に供給するアキュームレータとを備え、前記制御装置は、前記アキュームレータに蓄圧された作動油の圧力が許容範囲内のときに、前記昇降シリンダの伸縮を許容し、前記アキュームレータに蓄圧された作動油の圧力が前記許容範囲外のときに、前記昇降シリンダの伸縮を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、シンプルな構成で水平状態を保ったまま射出装置及びCフレームを昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るダイカストマシンの側面図である。
図2】上位置に配置された射出装置及びCフレームの側面図である。
図3】下位置に配置された射出装置及びCフレームの側面図である。
図4】射出装置及びCフレームの平面図である。
図5】給湯装置の姿勢を示す図である。
図6】位置決め機構を長手方向から見た図である。
図7】位置決め機構を幅方向から見た図である。
図8】ダイカストマシンのハードウェア構成図である。
図9】昇降制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係るダイカストマシン10の側面図である。ダイカストマシン10は、金型内に溶湯金属を射出して、成形品を製造する。図1に示すように、ダイカストマシン10は、型締装置20と、射出装置30とを主に備える。
【0012】
型締装置20は、金型21の開閉及び型締を行う。具体的には、型締装置20は、固定側金型22を支持する固定ダイプレート23と、可動側金型24を支持する可動ダイプレート25とを主に備える。固定側金型22及び可動側金型24は、ダイカストマシン10の左右方向(水平方向)において、互いに対面するように支持されている。
【0013】
可動ダイプレート25は、型開閉シリンダ26の駆動力がトグルリンク機構27を通じて伝達されることによって、タイバー28に沿って左右方向に移動する。可動ダイプレート25が左方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが離間(型開)する。一方、可動ダイプレート25が右方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが当接(型閉)する。そして、可動ダイプレート25を右方向に移動させる向きの圧力がさらに加わると、固定側金型22及び可動側金型24が型締される。
【0014】
射出装置30は、型締された金型21内に溶湯金属を射出する。射出装置30は、射出スリーブ(スリーブ)31と、プランジャ32と、射出シリンダ33と、アキュームレータ34(図2及び図3参照)とを主に備える。本実施形態に係る射出装置30は、型締装置20と水平方向(型締装置20の右方)に離間して配置されている。
【0015】
射出スリーブ31は、固定ダイプレート23に取り付けられた円筒形状の部材である。射出スリーブ31の先端部は、型締された金型21の内部空間(以下、「キャビティ」と表記する。)に連通している。また、射出スリーブ31には、給湯装置40(図2図4参照)によって供給された溶湯金属が貯留される。
【0016】
プランジャ32は、射出スリーブ31内に進退可能に収容されている。プランジャ32が前進すると、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属がキャビティに供給される。一方、プランジャ32が後退すると、ラドル41から供給される溶湯金属を貯留する空間が射出スリーブ31内に形成される。
【0017】
射出シリンダ33は、作動油が供給及び排出(以下、「給排」と表記する。)されて伸縮することによって、プランジャ32を進退させる。射出シリンダ33は、ヘッド室に作動油が供給され且つロッド室から作動油が排出されることによって伸長する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が前進する。一方、射出シリンダ33は、ロッド室に作動油が供給され且つヘッド室から作動油が排出されることによって縮小する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が後退する。
【0018】
アキュームレータ34は、ダイカストマシン10の長手方向において、昇降シリンダ51を挟んで給湯装置40(換言すれば、Cフレーム12)と反対側に配置されている。アキュームレータ34は、作動油を圧縮した状態で貯留(蓄圧)し、圧縮された作動油を射出シリンダ33のヘッド室に供給する。より詳細には、アキュームレータ34は、油圧ポンプ(図示省略)から圧送された作動油を予め貯留する。また、アキュームレータ34は、後述する制御装置60(図8参照)の制御に従って、貯留した作動を射出シリンダ33のヘッド室に供給する。アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力は、圧力センサ35(図8参照)によって検知される。圧力センサ35は、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力を検知して、検知した圧力を示す圧力信号を制御装置60に出力する。
【0019】
また、ダイカストマシン10は、基台11を備える。そして、型締装置20及び射出装置30は、基台11上に対向配置されている。型締装置20及び射出装置30の対向方向、可動ダイプレート25の移動方向、及びプランジャ32の進退方向は、ダイカストマシン10の「長手方向」に一致する。一方、水平方向において、長手方向に直交する短手方向をダイカストマシン10の「幅方向」と表記する。
【0020】
さらに、ダイカストマシン10は、Cフレーム12を備える。Cフレーム12は、側面視したときにC字形状(または、円弧形状)の外形を呈する。Cフレーム12は、基台11に支持されている。また、Cフレーム12は、ダイカストマシン10の長手方向において、型締装置20及び射出装置30の間に配置されている。
【0021】
Cフレーム12は、開放端側が型締装置20(より詳細には、固定ダイプレート23)に接続されている。そして、Cフレーム12は、型締装置20に対して昇降可能に構成されている。さらに、Cフレーム12は、閉塞端側が射出装置30に固定されている。そして、射出装置30及びCフレーム12は、後述する昇降シリンダ51(図2参照)の伸縮によって、型締装置20に対して一体となって昇降する。
【0022】
図2は、上位置に配置された射出装置30及びCフレーム12の側面図である。図3は、下位置に配置された射出装置30及びCフレーム12の側面図である。図4は、射出装置30及びCフレーム12の平面図である。図5は、給湯装置40の姿勢を示す図である。図2図4に示すように、ダイカストマシン10は、給湯装置40と、昇降装置50とをさらに備える。
【0023】
給湯装置40は、溶融炉Mから溶湯金属を掬い上げて射出装置30(より詳細には、射出スリーブ31)に供給する。図4に示すように、溶融炉Mは、ダイカストマシン10の幅方向の一方側(正面側)に設けられている。
【0024】
給湯装置40は、ダイカストマシン10の長手方向において、昇降シリンダ51を挟んでアキュームレータ34と反対側に配置されている。また、給湯装置40は、Cフレーム12に支持されている。給湯装置40は、ラドル41と、溶融炉M及び射出スリーブ31の間でラドル41を移動させるリンク機構42と、リンク機構42を動作させるモータ43と、姿勢センサ44(図8参照)とを主に備える。そして、給湯装置40は、図5(A)に示す注湯姿勢と、図5(D)に示す給湯姿勢と、図5(B)及び図5(C)に示す中間姿勢とに姿勢変化する。
【0025】
図5(A)に示す注湯姿勢は、ラドル41から射出スリーブ31に溶湯金属を注湯するときの給湯装置40の姿勢である。図5(D)に示す給湯姿勢は、溶融炉M内の溶湯金属をラドル41に給湯するときの給湯装置40の姿勢である。図5(B)及び図5(C)に示す中間姿勢は、注湯姿勢及び給湯姿勢の間の給湯装置40の姿勢である。すなわち、給湯装置40は、中間姿勢を経て注湯姿勢及び給湯姿勢の一方から他方に姿勢変化する。姿勢センサ44は、給湯装置40の姿勢を検知して、検知した姿勢を示す姿勢信号を制御装置60に出力する。
【0026】
図4に示すように、ダイカストマシン10を平面視すると、給湯装置40の重心位置は、一点鎖線で示す仮想線L上を移動する。仮想線Lは、長手方向において射出装置30(より詳細には、昇降シリンダ51)に近づくほど、幅方向におけるダイカストマシン10の中心(図4に破線で示す)から一方側に張り出すように直線的に延びている。換言すれば、仮想線Lは、長手方向において昇降シリンダ51から遠ざかるほど、幅方向におけるダイカストマシン10の中心に近づくように直線的に延びている。
【0027】
図4には、図5(A)に示す注湯姿勢の給湯装置40の重心位置G1と、図5(D)に示す給湯姿勢の給湯装置40の重心位置G2と、図5(B)に示す中間姿勢の給湯装置40の重心位置G3と、図5(C)に示す中間姿勢の給湯装置40の重心位置G4とを図示している。すなわち、重心位置G2は、重心位置G1より、長手方向において昇降シリンダ51に近づき、且つ幅方向の一方側に張り出している。また、重心位置G3、G4は、長手方向及び幅方向において、重心位置G1、G4の間に位置している。
【0028】
昇降装置50は、図2に示す上位置及び図3に示す下位置の間で、型締装置20に対して射出装置30及びCフレーム12を昇降させる。なお、下位置は、上位置より下方の位置である。これにより、上下方向において、金型21に対する射出スリーブ31の連通位置が切り替えられる。昇降装置50は、例えば、昇降シリンダ51と、一対の位置決め機構52A、52Bとを主に備える。
【0029】
昇降シリンダ51は、射出装置30及びCフレーム12の下方に配置されている。また、昇降シリンダ51は、長手方向においてアキュームレータ34及び給湯装置40の間に位置し、幅方向におけるダイカストマシン10の中心に配置されている。そして、昇降シリンダ51は、油圧ポンプから作動油の供給を受けて伸縮することによって、型締装置20に対して射出装置30及びCフレーム12を昇降させる。
【0030】
図4に示すように、ダイカストマシン10の長手方向において、給湯装置40の重心位置G1~G4と、射出装置30及びCフレーム12の重心位置G5とは、昇降シリンダ51が射出装置30及びCフレーム12に推力を与える作用点P(すなわち、昇降シリンダ51)を挟んで反対側に位置している。なお、重心位置G5は、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力(換言すれば、アキュームレータ34内の作動油の量)によって、長手方向に移動する。より詳細には、重心位置G5は、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力が高くなる(換言すれば、アキュームレータ34内の作動油の量が多くなる)ほど、昇降シリンダ51から長手方向に離間する。
【0031】
また、射出装置30及びCフレーム12の重心位置G5は、幅方向におけるダイカストマシン10の中央より他方側(背面側)に偏っている。すなわち、給湯装置40の重心位置G1~G4と、射出装置30及びCフレーム12の重心位置G5とは、ダイカストマシン10の中央(すなわち、昇降シリンダ51)を挟んで幅方向の反対側に位置している。換言すれば、昇降シリンダ51が射出装置30及びCフレーム12に推力を与える作用点Pは、長手方向及び幅方向それぞれにおいて、重心位置G1~G4と重心位置G5との間に位置している。
【0032】
一対の位置決め機構52A、52Bは、射出装置30及びCフレーム12の下方に配置されている。また、一対の位置決め機構52A、52Bは、長手方向における昇降シリンダ51の両側に配置されている。そして、一対の位置決め機構52A、52Bは、図2に示す上位置及び図3に示す下位置それぞれで、射出装置30及びCフレーム12を位置決めする。
【0033】
図6は、位置決め機構52Aを長手方向から見た図である。図7は、位置決め機構52Aを幅方向から見た図である。なお、位置決め機構52A、52Bの構成は共通するので、以下、位置決め機構52Aについて詳細に説明する。図6及び図7に示すように、位置決め機構52Aは、複数のスペーサロッド53Aと、スタンド54Aと、複数の上位置ストッパ55Aと、複数の下位置ストッパ56Aとを主に備える。
【0034】
スペーサロッド53Aは、長尺棒状の部材である。また、スペーサロッド53Aは、射出装置30の下面から下方に延設されている。さらに、複数のスペーサロッド53Aは、長手方向及び幅方向に所定の間隔を隔てて配置されている。そして、スペーサロッド53Aは、射出装置30及びCフレーム12と共に昇降する。
【0035】
スタンド54Aは、水平方向に延設された板状の部材である。また、スタンド54Aは、射出装置30及びCフレーム12の下方に固定されている。さらに、スタンド54Aには、上下方向においてスペーサロッド53Aに対面する位置において、厚み方向(上下方向)に貫通する貫通孔57Aが形成されている。
【0036】
図6(A)及び図7(A)に示すように、昇降シリンダ51が伸長して射出装置30及びCフレーム12が上昇すると、スペーサロッド53Aが貫通孔57Aから抜去されて、スペーサロッド53Aの下端がスタンド54Aの上面より上方に位置する。また、図6(B)及び図7(B)に示すように、昇降シリンダ51が縮小して射出装置30及びCフレーム12が下降すると、スペーサロッド53Aが貫通孔57Aに進入する。
【0037】
上位置ストッパ55Aは、図6(A)に示す規制位置と、図6(B)に示す許容位置との間をスライド可能に、スタンド54Aの上面に支持されている。規制位置の上位置ストッパ55Aは、貫通孔57Aから上方に抜去されたスペーサロッド53Aと、スタンド54Aとの間に介在する。これにより、スペーサロッド53Aが貫通孔57Aに進入するのを阻止する。その結果、射出装置30及びCフレーム12が上位置に位置決めされる。一方、許容位置の上位置ストッパ55Aは、スペーサロッド53Aとスタンド54Aとの間から退避して、スペーサロッド53Aが貫通孔57Aに進入するのを許容する。
【0038】
図7に示すように、下位置ストッパ56Aは、水平方向においてスペーサロッド53Aに隣接する位置で、上下方向においてスタンド54Aに対面する位置において、射出装置30及びCフレーム12の下面に固定されている。すなわち、下位置ストッパ56Aは、射出装置30及びCフレーム12と共に昇降する。そして、図7(A)に示すように、射出装置30及びCフレーム12が上位置のとき、下位置ストッパ56Aは、スタンド54Aより上方に位置している。一方、図7(B)に示すように、射出装置30及びCフレーム12が下位置のとき、下位置ストッパ56Aは、スペーサロッド53Aが貫通孔57Aに進入した状態で、スタンド54Aの上面に当接する。その結果、射出装置30及びCフレーム12が下位置に位置決めされる。
【0039】
図8は、ダイカストマシン10のハードウェア構成図である。ダイカストマシン10は、制御装置60を備える。制御装置60は、例えば、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)61、各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)62、及び演算手段の作業領域となるRAM(Random Access Memory)63を備える。そして、ROM62に記憶されたプログラムをCPU61が読み出して実行することによって、後述する各処理を実現してもよい。
【0040】
但し、制御装置60の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0041】
制御装置60は、ダイカストマシン10全体の動作を制御する。より詳細には、制御装置60は、圧力センサ35、姿勢センサ44、及び表示入力装置64から出力される各種信号に基づいて、型締装置20、射出装置30、給湯装置40、及び昇降装置50の動作を制御する。
【0042】
表示入力装置64は、オペレータに報知すべき各種情報を表示するディスプレイ、及びオペレータによる入力操作を受け付けるボタン、スイッチ、ダイヤルなどを備えるユーザインタフェースである。また、表示入力装置64は、ディスプレイに重畳されたタッチパネルを備えてもよい。表示入力装置64は、オペレータの入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作に対応する入力信号を制御装置60に出力する。
【0043】
表示入力装置64は、アキュームレータ34に蓄圧される作動油の圧力を設定するオペレータの入力操作を受け付ける。そして、制御装置60は、表示入力装置64を通じて設定された圧力になるように、アキュームレータ34に対して作動油を給排する。
【0044】
また、表示入力装置64は、給湯装置40の姿勢を指示するオペレータの入力操作を受け付ける。そして、制御装置60は、給湯装置40が表示入力装置64を通じて支持された姿勢になるように、モータ43を駆動する。また、表示入力装置64は、給湯装置40の現在の姿勢が図5(B)及び図5(C)の間の中間姿勢か否かを表示する。すなわち、オペレータは、表示入力装置64の表示を見ながら、給湯装置40の姿勢を調整することができる。
【0045】
さらに、表示入力装置64は、射出装置30及びCフレーム12の昇降を指示するオペレータの入力操作を受け付ける。そして、制御装置60は、表示入力装置64を通じて射出装置30及びCフレーム12の昇降が指示されたことに応じて、図9に示す昇降制御処理を実行する。図9は、昇降制御処理のフローチャートである。
【0046】
まず、制御装置60は、圧力センサ35から出力される圧力信号に基づいて、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力が許容範囲内か否かを判定する(S11)。また、制御装置60は、姿勢センサ44から出力される姿勢信号に基づいて、給湯装置40が図5(B)及び図5(C)の間の中間姿勢か否かを判定する(S12)。なお、ステップS11、S12の実行順序は、図9の例に限定されず、逆順でもよい。
【0047】
ここで、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力が許容範囲内で、且つ給湯装置40が中間姿勢である場合とは、ダイカストマシン10を平面視したときに、射出装置30、Cフレーム12、及び給湯装置40全体の重心位置が、射出装置30及びCフレーム12の水平状態を保ったまま昇降させることができる程度に、作用点Pに近づく条件となる。
【0048】
そこで、制御装置60は、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力が許容範囲内で、且つ給湯装置40が中間姿勢であると判定した場合に(S11:Yes&S12:Yes)、表示入力装置64を通じて指示された方向に射出装置30及びCフレーム12が昇降するように、昇降シリンダ51を伸縮させる(S13)。すなわち、制御装置60は、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力が許容範囲内で、且つ給湯装置40が中間姿勢である場合に、昇降シリンダ51の伸縮を許容する。
【0049】
一方、制御装置60は、ステップS11、S12の一方または両方の条件を満たさない場合に(S11:No/S12:No)、ステップS13の処理に代えて(すなわち、昇降シリンダ51を伸縮させずに)、射出装置30及びCフレーム12を昇降させることができないことを、表示入力装置64を通じてオペレータに報知する(S14)。すなわち、制御装置60は、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力が許容範囲外であるか、給湯装置40が注湯姿勢または給湯姿勢である場合に、昇降シリンダ51の伸縮を規制する。
【0050】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0051】
上記の実施形態によれば、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力が許容範囲内で、且つ給湯装置40が中間姿勢である場合に(S11:Yes&S12:Yes)、昇降シリンダ51の伸縮を許容する。これにより、射出装置30、Cフレーム12、及び給湯装置40全体の重心位置が作用点Pに近づいた状態で、昇降シリンダ51が伸縮される。その結果、シンプルな構成で水平状態を保ったまま射出装置30及びCフレーム12を昇降させることができる。
【0052】
また、上記の実施形態によれば、給湯装置40を注湯姿勢より幅方向の一方側に張り出した中間姿勢にした状態で、昇降シリンダ51を伸縮させる。これにより、射出装置30及びCフレーム12の昇降作業時に、給湯装置40が干渉するのを防止することができる。そして、中間姿勢の給湯装置40とバランスさせるために、昇降シリンダ51が射出装置30及びCフレーム12に推力を与える作用点Pは、中間姿勢の給湯装置40の重心位置G3、G4と、射出装置30及びCフレーム12の重心位置G5の中間位置付近に設置するのが望ましい。
【0053】
また、上記の実施形態によれば、長手方向における昇降シリンダ51の両側に位置決め機構52A、52Bを設けることによって、射出装置30及びCフレーム12の水平状態を保ったまま、上位置及び下位置に位置決めすることができる。
【0054】
また、上記の実施形態によれば、スタンド54A上で上位置ストッパ55Aをスライドさせるだけで、上位置における位置決め及び位置決めの解除を切り替えることができる。これにより、例えばスペーサロッド53Aを着脱するのと比較して、射出装置30及びCフレーム12を昇降させる作業を簡素化することができる。但し、位置決め機構52A、52Bの具体的な構成は、前述の例に限定されない。
【0055】
なお、上記の実施形態では、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力と、給湯装置40の姿勢との2つの条件に基づいて、昇降シリンダ51の伸縮を許容するか否かを判定する例を説明した。しかしながら、前述の2つの条件のうち、重心位置の変化に大きな影響を与える条件のみに基づいて、昇降シリンダ51の伸縮を許容するか否かを判定してもよい。すなわち、図9のステップS11、S12の一方を省略してもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、ステップS11、S12の条件を満たすように、オペレータが表示入力装置64を操作する例を説明したが、ステップS11、S12の条件を満たすための作業は、オペレータによって行われることに限定されない。
【0057】
他の例として、制御装置60は、ステップS11の条件を満たさないと判定した場合に、アキュームレータ34に蓄圧された作動油の圧力が許容範囲内に収まるように、アキュームレータ34に対して作動油を給排してもよい。また、制御装置60は、ステップS12の条件を満たさないと判定した場合に、給湯装置40が中間姿勢になるように、モータ43を駆動してもよい。これにより、射出装置30及びCフレーム12を昇降させる作業がさらに簡素化される。
【0058】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10…ダイカストマシン、11…基台、12…Cフレーム、20…型締装置、21…金型、22…固定側金型、23…固定ダイプレート、24…可動側金型、25…可動ダイプレート、26…型開閉シリンダ、27…トグルリンク機構、28…タイバー、30…射出装置、31…射出スリーブ、32…プランジャ、33…射出シリンダ、34…アキュームレータ、35…圧力センサ、40…給湯装置、41…ラドル、42…リンク機構、43…モータ、44…姿勢センサ、50…昇降装置、51…昇降シリンダ、52A,52B…位置決め機構、53A…スペーサロッド、54A…スタンド、55A…上位置ストッパ、56A…下位置ストッパ、57A…貫通孔、60…制御装置、61…CPU、62…ROM、64…表示入力装置
図1
図2
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図6
図7
図8
図9