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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025994
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】不正防止教育システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 7/02 20060101AFI20240220BHJP
   G09B 5/02 20060101ALI20240220BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240220BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20240220BHJP
【FI】
G09B7/02
G09B5/02
G09B19/00 G
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129406
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】實原 信昭
(72)【発明者】
【氏名】梶間 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 義夫
【テーマコード(参考)】
2C028
5L049
【Fターム(参考)】
2C028AA12
2C028BA02
2C028BB04
2C028BC01
2C028BD01
5L049CC34
(57)【要約】
【課題】不正防止教育システムに適したデータ構造と被教育者との間で行われる情報の入出力を通じて、効率的な不正防止教育の実施システムを提供することを目的とする。
【解決手段】違反事例情報Dを格納する違反事例情報格納手段2と、当該違反事例情報格納手段2に格納されている違反事例情報Dを複数の被教育者Eに提示する1又は複数の提示手段3と、前記被教育者Eのうち少なくとも1人が(ア)前記違反事例情報Dにかかる違反の発生原因と(イ)前記違反の再発防止策とを入力するための入力手段とを有する不正防止教育システムを構成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
違反事例情報を格納する違反事例情報格納手段と、
前記違反事例情報を複数の被教育者に提示する1又は複数の提示手段と、
前記被教育者のうち少なくとも1人が、前記違反事例情報にかかる(ア)違反の発生原因を入力するための第1入力手段と、(イ)前記違反の再発防止策とを入力するための第2入力手段と、を有する不正防止教育システム。
【請求項2】
前記違反事例情報は、取決め事データと、当該取決め事に反する少なくとも1つの違反要素データとを有している請求項1に記載の不正防止教育システム。
【請求項3】
前記第1入力手段に入力されたテキスト情報と予め準備されている特定不適切テキストとを比較する比較手段と、
前記テキスト情報が前記特定テキストを含んでいる場合に、前記テキスト情報が不適切である旨を前記被教育者に知らせる提示手段を有している請求項1に記載の不正防止教育システム。
【請求項4】
前記第1入力手段または前記第2入力手段が前記被教育者毎に設けられており、前記被教育者毎に入力インターフェースを有している請求項1に記載の不正防止教育システム。
【請求項5】
前記第1入力手段または前記第2入力手段が、前記被教育者を代表して設けられている1つの代表入力インターフェースを更に有している請求項4に記載の不正防止教育システム。
【請求項6】
前記第1入力手段または前記第2入力手段から入力された情報を格納する成果格納手段を更に有している請求項1に記載の不正防止教育システム。
【請求項7】
前記提示手段からの事例表示から所定時間の経過後、または、前記被教育者からのリクエストにより、前記成果格納手段に格納されている情報が前記提示手段に表示される請求項6に記載の不正防止教育システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、違反事例情報を通じて複数の被教育者に人材育成を施すことを目的とした不正防止教育システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
社会的組織の形成において人材育成は最重要課題の一つであるが、大量情報社会の中では人材育成が属人的にならないこと、また人材育成が効率的であることが求められる。これらの課題の解決はコンピューターシステムが最も得意とするところである。
【0003】
例えば特許文献1のように、学習者の過去の学習状況である学習履歴情報が格納された学習者モデルと、前記学習者に提示した問題に対してその学習者が入力した解答の良否を判定する解答判定手段と、この解答判定手段の判定結果と前記学習者モデルの学習履歴情報とからその学習者の理解度の判定を行う理解度判定手段と、前記学習者の理解度に応じた指導方法を決定する指導方法決定手段とを備えた計算機を用いた教育支援システムにおいて、例題を前記学習者に提示するとともにその学習者から前記例題に対する回答を受ける質問応答手段と、この質問応答手段が受けた回答状況にもとづいて前記学習者の理解度を判定し、この理解度を前記学習者モデルに設定する学習者判定手段とを備えたことを特徴とする計算機を用いた教育支援システムが知られている。
【0004】
また特許文献2のように、工程ごとに作業局面に関する画像情報を入力する画像情報入力手段と、上記作業局面に対応する危険予知情報を入力する危険予知情報入力手段と、画面指示情報を入力する画面指示情報入力手段と、入力された画像情報および危険予知情報の情報処理を行って危険予知訓練用テキストを作成する情報処理手段と、各種情報を表示する提示手段と、危険予知訓練用テキストに基づいて、作業局面ごとの画像情報を工程順に表示すると共に、各作業局面において入力画面指示情報に基づいて、危険予知情報を表示し且つ画面のページングを行うように、提示手段を制御する表示制御手段とを備えた危険予知訓練装置が知られている。
【0005】
また特許文献3のように、入力文及び出力文を連続的に配置する対話画面を表示部に表示し、前記対話画面において、作業現場に潜在する危険事項を表す前記入力文の入力を作業者から受け付け、前記危険事項を表す前記入力文の入力を受け付けた場合、該危険事項への対策を表す前記出力文を前記対話画面に表示する処理をコンピューターシステムに実行させることを特徴とするプログラムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-179984号公報
【特許文献2】特開平6-282222号公報
【特許文献3】特開2021-18751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1~3の教育プログラムでは、不正防止教育の観点から必要となるデータ構造を有するコンピューターシステムが開示されていない。本発明は、不正防止教育システムに適したデータ構造と被教育者との間で行われる情報の入出力を通じて、効率的な不正防止教育の実施システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが不正防止教育に必要な事項を鋭意検討した結果想到した本発明の実施の形態に係る不正防止教育システムは下記[1]の通りのものであり、より好ましくは下記[2]~[7]の通りのものである。
【0009】
[1]違反事例情報を格納する違反事例情報格納手段と、前記違反事例情報を複数の被教育者に提示する1又は複数の提示手段と、前記被教育者のうち少なくとも1人が、前記違反事例情報にかかる(ア)違反の発生原因を入力するための第1入力手段と、(イ)前記違反の再発防止策とを入力するための入力手段と、を有する不正防止教育システム。
【0010】
[2]前記違反事例情報は、取決め事データと、当該取決め事に反する少なくとも1つの違反要素データとを有している[1]に記載の不正防止教育システム。
【0011】
[3]前記第1入力手段に入力されたテキスト情報と予め準備されている特定不適切テキストとを比較する比較手段と、
前記テキスト情報が前記特定テキストを含んでいる場合に、前記テキスト情報が不適切である旨を前記被教育者に知らせる提示手段を有している[1]または[2]に記載の不正防止教育システム。
【0012】
[4]前記第1入力手段または前記第2入力手段が、前記被教育者毎に設けられており、前記被教育者毎に入力インターフェースを有している[1]~[3]のいずれか一項に記載の不正防止教育システム。
【0013】
[5]前記第1入力手段または前記第2入力手段が、前記被教育者を代表して設けられている1つの代表入力インターフェースを更に有している[4]に記載の不正防止教育システム。
【0014】
[6]前記第1入力手段または前記第2入力手段から入力された情報を格納する成果格納手段を更に有している[1]~[5]のいずれか一項に記載の不正防止教育システム。
【0015】
[7]前記提示手段からの事例表示から所定時間の経過後、または、前記被教育者からのリクエストにより、前記成果格納手段に格納されている情報が前記提示手段に表示される[6]に記載の不正防止教育システム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、不正防止教育システムに適したデータ構造と被教育者との間で行われる情報の入出力を通じて、不正防止教育の実効性がありかつ効率的なシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態における不正防止教育システムの概略図である。
図2図2は、本発明の実施の形態において用いられる不正防止教育システムの使用例を示すフローチャートである。
図3図3は、図1の不正防止教育システムにおける提示手段に表示される表示内容の例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態において用いられる違反事例情報の例を示す図である。
図5図5、違反事例情報のデータ構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0019】
以下、図1~5を参照して、本発明の実施の形態に係る不正防止教育システムの構成について説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る不正防止教育システム1は、違反事例情報を格納する違反事例情報格納手段2と、違反事例情報格納手段2に格納されている違反事例情報D(図示せず)を複数の被教育者Eに提示する1又は複数の提示手段3と、被教育者Eのうち少なくとも1人が違反事例情報Dにかかる(ア)違反の発生原因を入力するための第1入力手段41と、(イ)違反の再発防止策とを入力するための第2入力手段42とを有している。このうち、違反事例情報格納手段2、第1入力手段41および第2入力手段42は、通常、コンピューター5内に格納されている。第1入力手段41および第2入力手段42は、キーボード等の入力インターフェース4に接続されていてもよい。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態において用いられる不正防止教育システム1の使用例を示すフローチャートである。図2、および適宜図1に示すようにまずステップS1において事例格納手段2に格納されている違反事例を複数の被教育者Eに提示する。次に、ステップ2において被教育者Eのうち少なくとも1人が(ア)違反事例の発生原因と、(イ)違反事例の不正の再発防止策とを検討する。最後に、ステップ3において被教育者Eが検討結果を、入力インターフェース4を通じて不正防止教育システム1に入力する。
【0021】
ステップ1においては、複数の被教育者Eが各々個別に準備された提示手段3により事例の提示を受けてもよいし、複数の被教育者が集合して1つの提示手段3により事例の提示を受けてもよい。
【0022】
ステップ2においては、複数の被教育者Eが各々個別に(ア)発生原因と(イ)再発防止策とを検討してもよいし、複数の被教育者Eが共同して(ア)発生原因と(イ)再発防止策とを検討してもよい。このように、複数の被教育者Eにより共同して検討(ブレーンストーミング)することにより再発防止策の内容をブラッシュアップすることができる。
【0023】
ステップ3においては、被教育者Eが各々個別に検討結果を不正防止教育システム1に入力してもよいし、被教育者Eのうち代表者ERが検討結果を不正防止教育システム1に入力してもよい。代表者ERが検討結果を不正防止教育システム1に入力する仕組みにしておくことにより、各々の被教育者Eが合同で検討することを促すことができる。
【0024】
図3は、図1の不正防止教育システムにおける提示手段3に表示される表示内容の例を示す図である。図3に示すように、提示手段3には、第1入力手段41および第2入力手段42の機能により被教育者Eからの入力を受け付ける記入欄が表示されていることが好ましい。記入欄は、被教育者Eが(ア)発生原因と(イ)不正の再発防止策とを間違わずに入力できるよう、(ア)原因記入ボックス41Eと、(イ)防止策記入ボックス42Eを個別に準備することが好ましい。被教育者Eのうち代表者ERが、他の被教育者Eと共同して検討した結果をグループの検討結果として入力可能な原因記入ボックス41ERおよび防止策記入ボックス42ERを準備することが好ましい。代表者ERは、グループの検討結果のみならず、個人的な検討結果をこれらの記入ボックスに入力してもよい。
【0025】
被教育者と他の被教育者が共同して検討するに際しては、一同が同じ部屋に会している必要はなく、被教育者Eが個々に操作するコンピューター5同士がオンラインで繋がっていれば遠隔地からでも参加できる。被教育者Eの提示手段3には、自己の原因記入ボックス41Eおよび防止策記入ボックス42Eだけでなく、他の被教育者Eの原因記入ボックス41Eおよび防止策記入ボックス42Eを表示してもよい。これにより(ア)発生原因と(イ)再発防止策を互いに参照でき、不正防止教育の効果が一層向上する。
【0026】
更には、図3に示すように不正防止教育システム1は第1入力手段41に入力されたテキスト情報と予め準備されている特定テキストとを比較する比較手段6を有していることが好ましい。テキスト情報が特定の不適切なテキストを含んでいる場合に、テキスト情報が不適切である旨を被教育者Eに知らせる提示手段(図示せず)を有していることが好ましい。特定不適切テキストとしては種々のものが考えられるが、不正の発生原因として明らかに検討の浅すぎる典型例が考えられる。例えば、「不注意」、「ミス」、「忘れた」などの語句は、不正の発生原因としては検討が浅すぎる典型例として保有しておくことができる。被教育者Eにより原因記入ボックス41Eを通じて第1入力手段41に入力されたテキスト情報がこれらの特定テキストを含んでいる場合、不正防止教育システム1はテキスト情報が不適切である旨を被教育者Eに知らせる。この通知を受け取った被教育者Eは、不正の発生原因をより一層深く検討し、原因記入ボックス41Eに改めて発生原因を記入しなければならない。このような構成により、自動的に被教育者Eの訓練を深化させることができる。
【0027】
図4は、本発明の実施の形態において用いられる違反事例情報Dの例を示す図である。図4の例のように、「JIS K 7125に規定の摩擦係数測定試験を行うに際し、記録装置を含めた荷重測定システムは誤差2.3%だった。応答時間は0.4秒だった。引張方向は摩擦面に対して平行にした」といった具体的な違反事例が表示される。違反事例情報Dは、被教育者Eのレベルに合わせて難易度が適切なものから順次表示されるようにしてもよいが、ランダムに表示されるものであってもよい。
【0028】
違反事例情報Dは、法律、政令、条例、社内規則、製造規則、製品規格、JIS規格等に違反する事例の情報であり、違反事例情報格納手段2に格納されている。違反事例情報Dは、被教育者に向けて五感を通じて伝達できるものであればよく、例えば、文字情報、図形情報、音声情報等が該当する。
【0029】
違反事例情報Dは、不正防止教育システム1の開発者が手作業で事例を一つ一つ入力してもよいが、事例を重ねることにより不正防止教育システム1にディープラーニングさせ、開発者が各種の法律や規則を不正防止教育システム1に蓄積するだけで典型的な不正の事例を自動的に違反事例情報Dとして生成することもできる。
【0030】
違反事例情報格納手段2は、例えば電気的又は磁気的に情報を保存することができる記憶デバイスであり、フラッシュメモリ、ハードディスク、磁気ディスク、磁気テープ、ROM等が好ましく利用できる。違反事例情報格納手段2は、上記のようにコンピューター5内に格納されていてもよいが、コンピューター5からルーターを通じて接続可能なクラウド上に存在するストレージを用いてもよい。
【0031】
提示手段3は、情報を被教育者に向けて五感を通じて情報表示できる手段であればどのようなものを用いてもよく、例えば、印刷物、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プロジェクター、電子管、スピーカー等を用いることができる。
【0032】
第1入力手段41および第2入力手段42は、ハードウエア、ソフトウエアを問わず被教育者からの入力を受け付けるために準備されている構成であり、図3に示した原因記入ボックス41Eは第1入力手段41の機能により表示されるものであり、防止策記入ボックス42Eは第2入力手段42の機能により表示されるものである。第1入力手段41および第2入力手段42への情報のインプット方法に特段の制約はないが、例えば図3に示すような入力インターフェース4を用いることもできるし、別途設けられたマイクロフォン(図示せず)により被教育者からの音声情報を受け付けてコンピューター5内で文字情報に変換されるように構成してもよい。
【0033】
入力インターフェース4としてはキーボードが最も一般的であるが、これに限らずマウス、トラックボール、タッチペン、タッチパネル等種々のインターフェースを利用することができる。
【0034】
使用するコンピューター5としては、パーソナルコンピュータを用いることが最も一般的であるが、これに限らず、ワークステーション等の情報処理装置に加えて、タブレット端末、ゲーム装置、携帯電話装置、電子辞書、電子ブックリーダー等も含む。
【0035】
不正防止教育システム1には機密情報が含まれていることがあるため、利用するすべてのユーザを記録するユーザマスタテーブルを有することが好ましい。ユーザには、被教育者、指導者を含んでよい。ユーザマスタテーブルは、ユーザを識別するためのユーザIDに紐づけて、ユーザの氏名、ログイン名、パスワード、連絡先(例えば、電子メールのアドレス)、等のユーザに関する諸情報を保有していることが好ましい。
【0036】
以上のように、本発明の実施の形態における不正防止教育システムが、違反事例情報Dを格納する違反事例情報格納手段2と、違反事例情報格納手段2に格納されている違反事例情報Dを複数の被教育者Eに提示する1又は複数の提示手段3と、被教育者Eのうち少なくとも1人が(ア)発生原因と(イ)再発防止策とを入力するための入力手段とを有していることにより、被教育者Eとの間で行われる情報の入出力を通じて、実効性がありかつ効率的な不正防止教育を実施することができる。
【0037】
以下、さらに好ましい実施の形態について説明する。既に説明した違反事例情報Dは、より詳しくは取決め事データD1と、取決め事に反する少なくとも1つの違反要素データD2とを有していることが好ましい。
【0038】
図5は、違反事例情報のデータ構造の例を示す図である。図5に示すように、取決め事データD1は、具体的な取決め事の内容、例えばJIS規格(JIS K 7125)の規定内容そのものを有している。取決め事データD1に基づき違反事例情報Dを生成するためには、(1)違反事例情報Dの中の違反箇所を特定する情報、(2)違反の内容を特定する違反要素データD2が準備されていることが好ましい。図5では、違反要素データD2の例として「荷重測定システムは誤差2.3%であった」(誤差は2%以内であるべきところ、2.3%となっている点が違反)、「応答時間が0.6秒であった」(応答時間は0.5秒以内であるべきところ、0.6秒となっている点が違反)、「引張方向が摩擦面に対して5度傾いていた」(引張方向が摩擦面に対して平行であるべきところ、5度傾いていた点が違反)を各々示している。このように構成することにより一つの取決め事データD1に基づき、違反箇所の異なる複数の違反事例情報Dを生成することができる。また違反要素データD2毎に被教育者Eから原因や再発防止策を取得して整理したうえで保存することもできる。
【0039】
不正防止教育システム1は、被教育者E毎に設けられている複数の入力インターフェース4を有していることが好ましい。被教育者E毎に自身なりの検討結果を不正防止教育システム1に入力することを可能にするためである。
【0040】
不正防止教育システム1が、被教育者Eを代表して設けられている代表者用の入力インターフェース4(図示せず)を更に有していることが好ましい。
【0041】
第1入力手段41および第2入力手段42に入力された情報を格納する成果格納手段(図示せず)を更に有していてもよい。不正防止教育自体は、被教育者Eからの入力をもって一旦終了するが、不正防止教育システム1に被教育者Eの検討結果をストックしておけばその後この不正防止教育システム1を利用する被教育者Eにより有効に利用され得る。成果格納手段としては、違反事例情報格納手段2と同様に、電気的又は磁気的に情報を保存することができる記憶デバイスを用いることができ、フラッシュメモリ、ハードディスク、磁気ディスク、磁気テープ、ROM等が好ましく利用できる。また、違反事例情報格納手段2は成果格納手段を兼ねていてもよい。
【0042】
第1入力手段41に入力される(ア)発生原因、第2入力手段42に入力される(イ)再発防止策の内容については本発明の実施の形態にかかる不正防止教育システムのオペレーション(使用方法)に関わる内容であるので、本発明の発明特定事項とは直接関連しない部分ではあるが、参考情報として記載すれば以下のような例が挙げられる。
【0043】
例えば図4に示した例では、違反事例情報Dは「JIS K 7125に規定の摩擦係数測定試験を行うに際し、記録装置を含めた荷重測定システムは誤差2.3%だった。応答時間は0.4秒だった。引張方向は摩擦面に対して平行にした。」という内容である。これは、JIS K 7125が求める「応答時間を0.5秒以内にすること」、および「引張方向は摩擦面に対して平行にする」という試験構成自体は誤ってはいないことからか、「記録装置を含めた荷重測定システムは誤差を2%以内にしなければならない」要件を満たしていないことを軽視した結果である。
【0044】
そのような場合、(ア)発生原因としては、試験の実施者1人或いは1部門が黙認すればそれが通ってしまうという閉鎖的な組織状態にあることが考えられる。したがって、(イ)再発防止策として、「組織の構成員を定期的にローテーションすること」をインターフェース4に入力することが考えられる。
【0045】
その他、(ア)発生原因として、そもそも当該試験がJIS K 7125の規定に従わなければならないものであることを知らなかった、無知であったという、法令や規則に対する認識の低さも考えられる。そのような場合、(イ)再発防止策として、「試験方向に関する技術的な事項についての社内教育を充実させること」を入力インターフェース4に入力することが考えられる。
【0046】
提示手段3からの事例表示から所定時間の経過後、または、被教育者Eからのリクエストにより、成果格納手段に格納されている情報が提示手段3に表示される構成とすることが好ましい。不正防止教育システム1に既に蓄積されている発生原因や再発防止策を参照することができるため、不正防止教育の実効性がさらに向上する。
【0047】
不正防止教育システム1への入力事項として、入力インターフェース4を通した発生原因のみならず、提示手段3に表示される原因分類選択ボックス411Eを通して、発生原因の分類を受け付けるように構成してもよい。発生原因の分類としては、例えば不正を発生させてしまう「動機がある」、不正を発生させてしまう「機会がある」、不正を「正当化させる要因がある」、「そもそも無知である」等がある。これらを原因分類選択ボックス411Eにおいて例えばプルダウンメニュー化しておけば発生原因の各々をタイプ別に分類することができる。このような分類を統計処理することにより、不正防止教育システム1を実施している部署或いは会社がどのような傾向にある組織であるのかを知得することができる。
【0048】
入力された違反の発生原因は、特性要因図、親和図、系統図といったチャートに落とし込むことが好ましいが、発生原因の5W1Hが特定されていれば、より完成度の高いチャートを作成することができる。例えば、違反発生の原因を作ったのが、週末金曜日の組織責任者の管理不足にある場合、発生原因の主語(WHO)は「組織責任者」であり、発生時(WHEN)は「金曜日」であり、発生原因に至る行為(HOW)は「管理不足」となる。
【0049】
以上のようにより好ましく構成された不正防止教育システム1と被教育者Eとの間で行われる情報の入出力を通じて、実効性がありかつ効率的な不正防止教育を実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 不正防止教育システム
2 違反事例情報格納手段
3 提示手段
4 入力インターフェース
41 第1入力手段
42 第2入力手段
41E 原因記入ボックス(被教育者)
411E 原因分類選択ボックス
42E 防止策記入ボックス(被教育者)
41ER 原因記入ボックス(代表被教育者)
42ER 防止策記入ボックス(代表被教育者)
5 コンピューター
6 比較手段
D 違反事例情報
D1 取決め事データ
D2 違反要素データ
E 被教育者
ER 代表被教育者
図1
図2
図3
図4
図5