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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002601
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】指サック
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20231228BHJP
   A61J 7/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61F 13/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61J3/06 T
A61J7/00 L
A61F13/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101897
(22)【出願日】2022-06-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】399010512
【氏名又は名称】株式会社メディング
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉村 和哲
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA25
4C047CC15
4C047EE01
4C047NN07
(57)【要約】
【課題】指先に挿入されて、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる指サックを提供する。
【解決手段】指サックは、手指に挿入するための指サックであって、弾性材料を含んでなり、指先に挿入される筒形状にして、その基端部を開口し、かつその先端部を閉塞した本体部10と、本体部10より硬質の弾性材料を含んでなり、薬剤に押し当てて押し出す押出部20とを備え、押出部20は、本体部10の先端側に配置され、本体部10に指先を挿入して、押出部20を介して薬剤に押し当てPTP包装から薬剤を取り出すよう構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手指に挿入するための指サックであって、
弾性材料を含んでなり、指先に挿入される筒形状にして、その基端部を開口し、かつ、その先端部を閉塞した本体部と、
前記本体部より硬質の弾性材料を含んでなり、薬剤に押し当てて押し出す押出部と、
を備え、
前記押出部は、前記本体部の先端側に連結されてなり、
前記本体部に挿入された指先を、前記押出部を介して薬剤に押し当てPTP包装から薬剤を取り出すよう構成してなる指サック。
【請求項2】
請求項1に記載の指サックであって、
前記押出部の厚みが前記本体部よりも厚い指サック。
【請求項3】
請求項1に記載の指サックであって、さらに、
前記本体部と前記押出部の間に介在される中間層を備えており、
前記中間層は、前記押出部より軟質の弾性材料からなり、かつ、前記本体部の2倍以上の厚みとする指サック。
【請求項4】
請求項1に記載の指サックであって、
前記本体部または前記押出部は、硬度の異なる軟質部と硬質部を有する指サック。
【請求項5】
請求項1に記載の指サックであって、
前記押出部は、本体部の外側で指、爪を保護する保護部を備え、
前記保護部は、薬剤に押し当てる押出面と、前記押出面の指先側の先端から前記押出面の厚み以上に基端部側に伸びる部分とを有してなる指サック。
【請求項6】
請求項1に記載の指サックであって、
前記本体部または前記押出部は、前記本体部の内側に挿入された指を保持する保持部を有する指サック。
【請求項7】
請求項1に記載の指サックであって、
前記押出部または前記本体部は、PTP包装に切り込みを入れるための切り込み部を有する指サック。
【請求項8】
請求項1に記載の指サックであって、
前記本体部及び前記押出部が一体に成形されてなる指サック。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の指サックであって、
前記本体部が、親指の挿入用に構成されてなる指サック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTP包装のポケットから薬剤などの被包装物を指先で押し出して取り出すために用いる指サックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬局等では、例えば服用時期(朝食後、昼食後、夕食後等)が異なる複数種類の薬剤を患者に処方する際に、一回服用分の複数種の薬剤(錠剤、カプセル剤等)を一の分包袋に分包袋する一包化調剤を行うことが多い。薬剤を服用時間ごとにまとめる一包化作業は、薬剤師が手作業で行う場合がある。
【0003】
一包化作業に対しては、同種類の薬剤を包装したPTP包装を、必要な薬剤の種類分だけ用意し、ここから薬剤師が手作業で必要な数の薬剤をPTP包装からそれぞれ取り出して、一回服用分にまとめる分包作業を行う。PTP包装5の平面図を図7Aに、このPTP包装5に対し、素手(親指)で薬剤8を押し出す様子を図7Bに、それぞれ示す。このような作業を薬剤師が、大量にPTP包装体から薬剤を指先で押し出す作業を連続して行う場合、指先や爪先に強い圧力が何度も加わり、多くの薬剤師が痛みを感じている。このような作業には事務用の指サックなどが使用されることもあるが、痛みを十分緩和、防止できず、指先や爪先を十分に保護できない。そこで、薬剤をPTP包装体から取り出す取出器具、装置、システムが提案されている(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-054115号公報
【特許文献2】特開2014-171847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示される薬剤分包システムは、極めて高価であり、また特許文献2で開示される薬剤取り出し具は、指で押し出すよりも時間がかかり非効率であるという問題があった。例えば、PTP包装体から薬剤を押し出して一旦収納するケースに溜めるため、ケースから取り出す工程が必要となる。また、PTP包装体の外側1列しか押し出しできない場合、PTP包装体を1列または1個ずつ分割する必要があり、工程が増え時間がかかり、非効率となる。また、取出器具は、対応できる薬剤、ポケットの形状、サイズに制約があり、異なる形状、錠剤、カプセルに対応できない、もしくは薬剤の形状に応じた異なる形状の複数の穴や押出部を設けられたものは、そのサイズや形状に対応できるが、各々の形状やサイズに合わせて所定の位置にセットしなければならないという問題もある。また、押し出しの微妙な力加減が困難で、薬剤を損傷したり砕いたりする問題もある。結果的に、指で押し出す方が、PTP包装体、薬剤、ポケットの形状を問わず対応でき、微妙な力加減も可能で、素早く短時間で、効率的に行える。このため、器具の導入に慎重な薬局も多く、多くの薬剤師が手作業で薬剤を押し出す作業を行っているのが現状であった。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、指先に挿入されて、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる指サックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る指サックは、手指に挿入するための指サックであって、ゴム状弾性体からなり、指先に挿入される筒形状にして、その基端部を開口し、かつその先端部を閉塞した本体部と、本体部より硬質のゴム状弾性体からなり、薬剤に押し当てて押し出す押出部とを備え、押出部は、本体部の先端側に配置され、本体部に指先を挿入して、押出部を介して薬剤に押し当てPTP包装から薬剤を取り出す。
【発明の効果】
【0008】
以上の指サックは、指先に挿入されて、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは実施形態1に係る指サックを示す概略斜視図、図1Bはその分解斜視図である。
図2図2Aは実施形態1に係る指サックの変形例を示す概略断面図、図2Bはその使用状態を示す概略断面図である。
図3図3Aは実施形態2に係る指サックを示す概略斜視図、図3Bはその分解斜視図、図3Cは実施形態3の変形例に係る指サックを示す概略斜視図である。
図4図4Aは実施形態3に係る指サックを示す概略斜視図、図4Bは実施形態3の変形例に係る指サックを示す概略斜視図である。
図5】実施形態4に係る指サックを示す概略斜視図である。
図6A】実施形態5に係る指サックを示す概略斜視図である。
図6B】実施形態5の変形例に係る指サックの概略斜視図である。
図6C図6Bの指サックの模式断面図である。
図7図7AはPTP包装を示す平面図、図7BはこのPTP包装に対し、素手で薬剤を押し出す様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態及び実施例を、図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態及び実施例は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されるものでない。また各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに、本発明に係る実施形態及び実施例を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。さらに、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」および、それらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。なお、本明細書において「備える」とは、別部材として備えるもの、一体の部材として構成するものの何れをも含む意味で使用する。
【0011】
本発明の一実施態様に係る指サックは、手指に挿入するための指サックであって、弾性材料を含んでなり、指先に挿入される筒形状にして、その基端部を開口し、かつその先端部を閉塞した本体部と、本体部より硬質の弾性材料を含んでなり、薬剤に押し当てて押し出す押出部とを備え、押出部は、前記本体部の先端側に連結されてなり、本体部に挿入された指先を、押出部を介して薬剤に押し当てPTP包装から薬剤を取り出す。
【0012】
以上の指サックは、指先に挿入されて、指先や爪先に痛みを生じさせることなく、大量の薬剤をPTP包装体から押し出しできる特長がある。本体部より硬質の弾性材料を含む押出部を薬剤に押し当てて押し出すことで、指先や爪先に過度な負担が集中することを防止できるからである。弾性材料を含む本体部に指先が挿入されて、直接指先がPTP包装に触れることもなく、衛生的で、出血防止できる。押出部よりも軟らかく、弾性材料を含む本体部は挿入される指先の装着感を向上できる。
【0013】
以上の指サックは、指先に挿入されて、大量の薬剤を素早く、かつ、簡単にPTP包装体から押し出しできる特長がある。指サックを装着した指先をポケットに押し当てて薬剤に押し出すだけでよく、錠剤の取出器具の問題点が生じないからである。指サックの場合は、PTP包装体を分割する必要はなく、一旦収納ケースに入れる必要もなく、異なる形状、錠剤、カプセルに対応できる。また、指サックの場合、PTP包装のポケットに指先を当てるだけで位置決めでき、指の感覚と薬剤の外観をもとに微妙な力加減も可能である。その他、取出器具の出し入れ、保管場所も不要で、指先に指サックを装着したまま、脱着の手間なく他の作業もできる。
【0014】
従来より、手作業でPTP包装された錠剤を取り出す場合、PTP包装のポケット部に収容される薬剤を指先で押し出して取り出している。薬剤師のように一包化の作業が多い場合、1日当たり百、千という単位でこの作業を行っており、多数の薬剤を指先で押し出す作業を繰り返すことで、多くの薬剤師が指先や爪先に痛みを感じている。押し出す指先と爪先が圧迫されて痛みが生じ、さらに継続すると、親指の肉と爪の間から出血したり、爪の根元の白い部分(爪半月)が広くなったり、場合によっては爪の欠けや割れも生じ得る。痛みのある状態では効率良く作業が行えず、また、出血は不衛生であり、薬剤が患者が口にする飲み薬の取扱い上好ましくない。またさらに、欠けた爪はヒートシールを引っ掛けて破る原因にもなり得、指先で押して爪の間にPTP包装のバリや角などが突き刺さると容易に出血が生じ得るなど、作業効率を下げ、不衛生につながる。PTP包装のバリ、角、硬さは誤飲事故で問題が表面化することがある。
【0015】
錠剤の取出器具、装置、システムなどは、開発されている。しかし、自動化された装置、システムは、極めて高価である。手動の器具は、外側1列しか押し出しできないためPTP包装体を1列または1個ずつ分割する必要があったり、一旦薬剤を収納するケースに押し出してケースから取り出す工程が増えるなど、手で行うより時間がかかったり、効率よく行えないなどの問題がある。ケースから取り出す工程が増えることは、薬剤の入れ間違いを招きかねず、安全性の問題もある。取出器具は、対応できる薬剤、ポケットの形状、サイズに制約があり、異なる形状、錠剤、カプセルに対応できない、各々の形状やサイズに合わせた所定の位置にセットしなければならない、薬剤の形状などに応じた複数の穴や押出部を設ける装置は各々対応する薬剤の位置にセットしなければならない。取出器具の押し出す部分が邪魔になり所定の位置に合わせにくい、薬剤、PTP包装の多様化が進む中、指先のような押出の微妙な力加減ができず、押し出しの際、薬剤が損傷、砕け、また収納ケースでも薬剤の損傷などが生じる問題がある。
【0016】
本発明の他の実施態様に係る指サックは、押出部の厚みを本体部よりも厚くできる。以上の指サックは、指先に挿入されて、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる特長がある。押出部の厚みで指先や爪先を保護し、痛みを生じさせることがなく、また、押出部の厚みは押し出しの作業性を阻害しないからである。
【0017】
本発明の他の実施態様に係る指サックは、さらに、本体部と押出部の間に中間層を介在させ、中間層は、押出部より軟質の弾性材料からなり、かつ、本体部の2倍以上の厚みにできる。以上の指サックは、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる特長がある。押出部より軟質の弾性材料で、本体部の2倍以上の厚みの中間層が、本体部と押出部の間に介在されることで、指先や爪先を保護し、痛みを生じさせることがなく、また、中間部の介在は押し出しの作業性を阻害しないからである。
【0018】
本発明の他の実施態様に係る指サックは、本体部または押出部が、硬度の異なる軟質部と硬質部を有することができる。以上の指サックは、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる特長がある。本体部または押出部は、硬度の異なる軟質部と硬質部を設けることで、指先や爪先を保護し、痛みを生じさせることがなく、また、これらは押し出しの作業性を阻害しないからである。
【0019】
本発明の他の実施態様に係る指サックは、押出部が、指爪を保護する保護部を備えることができる。以上の指サックは、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる特長がある。押出部は指爪を保護する保護部を備え、指先や爪先を保護し、痛みを生じさせることがなく、また、これらは押し出しの作業性を阻害しないからである。
【0020】
本発明の他の実施態様に係る指サックは、本体部または押出部が、本体部の内側に挿入された指を保持する保持部を有することができる。以上の指サックは、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる特長がある。例えば、保持部で本体部に挿入された指先を所定の位置及び姿勢に保持して、指先や爪先が本体部または押出部の内側に押し付けられることがないようにでき、また、本体部または押出部の内側と指先や爪先との間に隙間を生じさせて、指先や爪先を保護し、痛みを生じさせることがなく、また、これらは押し出しの作業性を阻害しないからである。
【0021】
本発明の他の実施態様に係る指サックは、押出部または本体部は、PTP包装に切り込みを入れるための切り込み部を有することができる。以上の指サックは、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる特長がある。押出部または本体部の切り込み部でPTP包装に切り込みを入れることで、薬剤を少ない力で押し出し可能とし省力化できるからである。
【0022】
本発明の他の実施態様に係る指サックは、本体部及び押出部が一体成形されてなる。
【0023】
本発明の他の実施態様に係る指サックは、本体部に親指を挿入させることができる。以上の指サックは、親指の指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる特長がある。
[実施形態1]
【0024】
図1A図2Bに、本発明の実施形態1に係る指サック100を示す。図1Aは指サック100の概略斜視図、図1Bは指サック100の分解斜視図を、図2A及び図2Bは指サック100の変形例を、それぞれ示す。
(指サック100)
【0025】
指サック100は、指先1aに挿入される筒形状の本体部10と、本体部10に連結されて、薬剤8に押し当てる押出部20とを備えてなる。指サック100は、本体部10に手指1の指先1aに穿かせて、本体部10に連結された押出部20を介してPTP包装体5のポケット7内の薬剤8を押し出す。以下、主に親指を指サック100に挿入する例を示すが、挿入される指先は親指以外の指、例えば、人差し指などにできる。指サック100は、本体部10に押出部20を積層した厚みと、押出部20の硬さで指先1a、爪先4aを保護し、また、本体部10の柔らかさで快適な装着性を有する。
【0026】
指サック100を親指に装着した場合で説明する。指サック100は、本体部10の開口部13から親指の指先1aが挿入されて、親指の指先1aをPTP包装5のポケット7に押し当てる部分に少なくとも押出部20の一部が配置される位置に指サック100が装着される。PTP包装5のポケット7に押出部20を押し当てて、親指で押した力が押出部20を内側から押すことで、押出部20がPTP包装5のポケット7を押しつぶし、ポケット7内の薬剤8を押して反対側のアルミシート9を破って押し出される。PTP包装5を両手または片手で持って、指サック100を装着した指1で、上から下方向に押し出しでき、また下から上方向に押し出すこともできる。親指で押して力を加える部分は、指先1a付近、または爪先4a、もしくは指腹2などにできる。指先1aは爪先4aよりも軟らかく、指腹2は更に軟らかい。ポケット7に押し当てる部分が柔らかい程、強い力で押す必要があり、その分指1側の接触面積が広がる。爪先4aは指先1aよりも硬く接触面積が小さいが、爪先4aは圧迫の耐性はそれ程強くなく、痛みを感じやすい。指1は、押す部分により、接触面積、押す力、痛みの感じ易さなどが異なることを踏まえて、指先1a、爪先4aの保護が必要である。
【0027】
指先1aや爪先4aに痛みを生じさせることなく、薬剤8をPTP包装5から簡単に、かつ、素早く押し出しできる指サック100は、一包化作業を大量に行う薬剤師だけでなく、非力な女性、高齢者などにも有用である。また、弾性材料で製造される安価な指サックは、使い捨てとして衛生的に使用でき、一般個人にも便利有用である。
【0028】
PTP包装5は、Press Through Packの略称で、内容物を指で押し出して取り出すことに由来する。PTP包装5は、容器フィルム、蓋フィルム、内容物の3要素で構成される。容器フィルムは、凸型にポケット成形の対象となるプラスチックの樹脂シート6であり、一方で成形されたポケット7で内容物を保護し、他方で容易に取り出しできる適度な強度が必要とされる。容器フィルムは、主にPVC(ポリ塩化ビニル)、CPP(無延伸ポリプロピレン)などからなる単層フィルム、またはラミネートフィルムなどが用いられる。蓋フィルムは、ヒートシールで成形後の容器フィルムと貼り合わせて、内容物を密閉する薄いフィルムで、主にアルミシート9が使用される。PTP包装5は、ポケット7を強く押すことで、アルミシート9が破け、ポケット7内の薬剤8を1錠ずつ取り出すことができる。
【0029】
PTP包装は、薬剤の空気接触を防止し防湿性に優れる他に、紫外線などの変質を防ぎ、清潔な状態を保ち、薬剤の破損を防ぎ、中身を確認し易い、持ち運びに便利など、市場での流通、管理性、使用者の利便性の面で優れ、繁用されている。近年、高価な医薬品などの登場によりPTP包装も変化、多様化が進行している。具体的には、薬の保護が優先して製造され、従来品に比べ硬く感じるほど強固なものが少なくない。これはPTP包装のポケット被包の厚みの増加、湿気に弱い口腔内崩壊錠(OD剤)の増加で、防湿に優れた包装素材の使用などが要因である。PTP包装からの薬剤の押出力(スクイズ力)は、薬剤により相違があり、被験者による官能評価試験において押し出しにくい製品があることが報告されている(「患者がPTP包装から錠剤を押し出しやすくする手技についての科学的検討」、「PTP包装からの錠剤の押し出し力に及ぼす製剤間の影響」)。報告書によると、腹型アタッチメント装着時のスクイズ力は、平均31.8±11.4(N)、最大57.4(N)、最小12.4(N)であり、爪型アタッチメント装着時のスクイズ力は、平均17.4±4.6(N)、最大27.8(N)、9.1(N)である。スクイズ力は、親指の指腹と爪で薬剤を押し出す場合を想定し、接触面積の異なる2種のアタッチメントを使用しPTP包装の裏面のアルミシートが破れた時までに加重された最大値とする。このように、スクイズ力は薬剤により大きな相違があること、押し出しにくい製品があることが確認され、薬剤によりスクイズ力の微妙な調整が必要であり、また指や爪の痛みにつながるおそれがあり、大量の薬剤の押出作業でその危険性がより高まることは明かである。
(本体部10)
【0030】
本体部10は、指先1aを挿入し、密着して保護する部分である。本体部10は、指先1aに挿入される筒形状にして、その基端部を開口し、かつ、その先端部を閉塞した形状とする。本体部10は、指先1aが挿入される筒状の筒状部11と、指先1aを挿入できるよう筒状部11の基端部側を開口する開口部13と、挿入された指先1a側の先端部を閉塞する閉塞面12とを有する。本体部10の開口部13から指先1aが挿入されて、指先1aは本体部10の閉塞面12の内側先端または先端付近まで挿入されて、指1は所定の位置及び姿勢で伸縮する本体部10の内側の形状に挿入される。
【0031】
図1A図1Bは、本体部10の閉塞面12を、一例として、球頭絞りの形状にする。ただし、閉塞面12の形状を特定するものではなく、その他の形状にできる。図2A図2Bは、例えば、閉塞面12を、より指先1aの形状に近い形状、具体的には、先端が窄まり、爪4側と指腹2側で非対称の形状などにできる。本体部10の筒状部11及び開口部12も同様に、指1の形状に近い形状にできる。本体部10の閉塞面12は、内側面と外側面で同じ形状にでき、また異なる形状にできる。例えば、閉塞面12の内側面を指先1aや爪4の外形に近い形として挿入しやすくし、外側を押出部20を連結、積層しやすい平面、凹凸などの形状にできる。本体部10の筒状部11も同様に、内側面と外側面で同じ形状にでき、また異なる形状にできる。
【0032】
本体部10は、弾性材料を含む素材からなる。弾性材料は、力を加えて変形し、力を除くと元の形状に戻る特性(弾性変形)を有する物質であり、代表例はゴム状弾性体である。本体部10は、例えば、シリコーンゴム、エラストマー、EPDM、天然ゴムなどゴム状弾性体の他に、樹脂なども使用できる。本体部10の弾性材料は、指の力で変形する程度の硬さと弾性特性を有する素材とする。弾性材料を含む素材とは、1または複数の弾性材料からなる場合、弾性材料とそれ以外の材料からなる場合を含むものとする。弾性材料を含む素材は、伸縮性があり、本体部10はフィット感に優れ、指1の形と動きに合わせて使い易く、指先1aを保護できる。また、指サック100は、弾性材料を含む素材で安価に製造できる。
【0033】
本体部10は、弾性変形して挿入された手指1を挟持する。本体部10の内径、内側の形状は、挿入される手指1を収納可能なサイズとし、想定される使用者の指の標準的なサイズを基準に適切に定められる。本体部10の内径及び内側の形状は、挿入される指1よりも少し小さく、弾性材料が伸びて、本体部10の内側が指1に適度にフィットするサイズが好ましい。挿入された指1に弾性材料の本体部10が適度にフィットして、本体部10の内側に指1が挿入されて所定の位置及び姿勢で、ホールドされる。弾性材料、例えばゴムの締め具合は、強すぎず、かつ、緩すぎないことが好ましい。ゴムの締め付けが強すぎると、圧迫感で血液循環が悪くなり、痛みが生じ、長時間の使用に好ましくない。また、ゴムの締め付けが緩すぎると、押出部20で薬剤8を押し出す際に押出部20がズレが生じるなど、押出部20の押し出す力を効率よく薬剤8に伝えることができないからである。そこで、本体部10は手指1に挿入されて、弾性材料による伸縮の締め付けを適切な範囲内とする。これにより、本体部10に挿入された指1は、長時間使用で締め付けによる痛みが生じることなく、指サック100を快適に利用でき、かつ、押出部20がずれることなく、押し出す力を効率よく薬剤8に伝えることができ、薬剤8をPTP包装5から簡単、かつ、素早く押し出しできる。
【0034】
図1A図1Bは、本体部10の厚みを略均一にする。本体部10の筒状部11の厚みは、例えば、好ましくは0.05mm~2mmとし、より好ましくは0.1mm~1mmとする。筒状部11の厚みを薄くして、装着した違和感を抑え快適に装着でき、また容易に装着でき、さらに指1や指先1aの素手に近い感覚を残して作業性を向上でき、さらにまたコストダウンできる。筒状部11の厚みを厚くして、指1や爪4を保護、ホールドできる。
【0035】
本体部10の厚みは、全体的または部分的に異なる厚みにできる。例えば、本体部10の厚みは、筒状部11と閉塞面12で異なるものにできる。例えば、相対的に筒状部11を薄く、閉塞面12を厚くできる。筒状部11を薄くして、装着感の快適性を向上し、指の感覚を残すことができ、閉塞面12を厚くして、指先1a、爪先4aの保護できる。また、閉塞面12を指先形状に近い形状にでき、また閉塞面12に押出部20との接合のための部分を設けるなどできる。本体部10のうち、押出部20が連結積層される部分を他よりも厚くして、指先1a、爪先4aを保護できる。指1で押し出す力が押出部20に加えられ、指先1a、爪先4aに圧迫が集中し傷めやすいからである。また、本体部10の厚みは、開口部13から閉塞面12にかけて徐々に厚みが増していくようにして、装着容易性と指先1a、爪先4aの保護を両立できる。図2Aは、本体部10の閉塞面12の内側において、(親指の)指先1aが接触する部分を厚くし、指先当接部12bを設け指先1aを保護している。さらに、爪先4a側は、薄くし、爪先空間図12aを設け、爪先4aが閉塞面12の内側に触れない、または強く押し付けられないようにして、爪先4aを保護している。図1A図2Bは、本体部10の外側に押出部20が積層されており、押出部20が積層された部分は他の部分よりも厚くなっている。図2Bは、さらに、本体部10自体も厚くして指先当接部12bを設けることで、弾性材料の厚みで指先1a、爪先4aを保護する。本体部10は、厚みの変化を持たせることができる。図示しないが、例えば、閉塞面から筒状部にかけて、また閉塞面から開口部にかけて徐々に厚みが薄くなるようにできる。
【0036】
本体部10の内側形状を挿入する指先1a、爪先4aの形状、配置に合わせた形状にできる。本体部10の内側形状を爪先1aへの負担を軽減する形状にできる。図2Aは、爪先4aの位置に合わせて凹部または溝状の爪先空間12aを設けて案内し、爪先4aが閉塞面12aの内側に接触しない、または強く押し付けられないようにして、爪先4aへの負担を軽減する。また、指先1aを段差部または凸部の指先当接部12bに当接させ、当接する部分を軟らかい素材として、また複数の凸部を設けることで、指先1aへの負担も軽減できる。図2Aのように、爪先空間12aと指先当接部12bを組み合わせることで、指先1a、爪先4aと本体部10の内側との間に隙間ができるようにして、指先1a、爪先4aが本体部10の内側に当たらない、または痛みを生じさせる程強く当たらないようにして、指先1a、爪先4aを保護でき、また長い爪にも対応できる。
【0037】
図1A図1Bは、本体部10の硬度を略均一にする。本体部10の硬度は、全体的または部分的に異なる厚みにできる。硬くする場合は、使用する材質の硬度を高くするもしくは、金属板、樹脂など補強を入れる。ゴム、単一素材では得られない特性を他の材料と複合することで得られ、複合補強、強化できる。例えば、ゴムに繊維を入れ、また、ゴムの力学的性能や物理的強度を高めるカーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、クレーなどの補強材、充填剤を配合できる。
【0038】
本体部10は、硬度の異なる軟質部と硬質部を有することができる。本体部10の軟質部と硬質部の各々を最適な引張弾性率、すなわち最適な硬さとして、配置、積層して、または一体成形により硬軟各々の長所を活かすことができる。本体部10は、指先1aの装着感と、指先1aの押圧力を薬剤8にロスなく効率よく伝えることができるように、軟質部と硬質部の配置、硬さを適切に定める。例えば、本体部10は、軟質部の外側に硬質部を設けることができる。内側の軟質部で指先1の装着感を向上し、またサイズの対応範囲を広げ、外側の硬質部で押出部20を所定の位置で支持でき、押出部20の位置及び姿勢のズレを抑制して、指先1aの力を効率良く伝え、薬剤8の押し出しの効率化に寄与できる。例えば、本体部10の内側に軟質部と硬質部を設けることもできる。本体部10の内側を、指先1aの当接する部位に合わせて、軟質部と硬質部を設けることで、軟質部の部分で違和感なくフィットさせて装着でき、挿入された指先1a及び指1を所定の姿勢及び位置に収まりよくはまるようにして、指先1aの力を効率良く伝え、薬剤8の押し出しの効率化に寄与できる。さらに、例えば、図2Bに示すように、本体部10の閉塞面12と爪4側の筒状部11を厚くし、さらにこの厚くした部分を硬質部として、断面図視で略L字状の補強にできる。これにより、筒状部11の高さ方向(図2Bにおいて、上下方向)に指サック100がつぶれて、閉塞面12の内側が指先1a、爪先4aに押し当てられることを抑止、防止できる。また、硬質部の内側に軟質部を設けて、接触の強度、違和感を少なくし、押し当てを和らげることもできる。
【0039】
本体部10は、硬度の異なる軟質部または硬質部を脱着自在に設けることもできる。軟質部または硬質部を交換、洗浄可能として衛生的に使用できる。使用者の手指の部位の形状に合わせたパッキンなどと交換、追加して、挿入された指先の当たり具合や隙間を調整でき、また違和感を少なくでき、痛みを抑制し、保護の厚みを調整でき、装着具合を向上できる。
【0040】
本体部10の長さは、薬剤8の押し出し作業で指先1aや爪先4aに痛みを生じさせることなく、かつ、効率よく指先1aの力を伝えることができる適切な長さとする。本体部10の長さは、少なくとも指先1a及び爪先4aを覆う長さとし、例えば、爪4を覆う長さ、第一関節3付近までの長さ、さらに、第一関節3と第二関節の間までの長さなどにできる。本体部10の長さは、爪4を覆う長さ、第一関節3付近までの長さなど短めにして、指サック100の装着を簡単に、素早く行うことができ、また覆われる面積を小さくして蒸れにくくできる。第一関節3よりも長くして、指1の位置及び姿勢を保持する部分を長くできる。本体部10の長さが第一関節3より長い場合は、第一関節3の曲げを阻害することがない、厚み、材質、硬さとすることが好ましい。開口部13の形状は、特に特定されないが、例えば、図2A及び図2Bのように、筒状部11の高さ方向に長短を設けて、長い部分を引っ張りながら、指サック100の装着、取り外しを容易にできる。
【0041】
本体部10は、特定の指用、例えば親指用にできる。また人差し指用など他の特定の指用にできる他、右手用、左手用など定めることができる。細かく定めることで、挿入される指1、爪4の形状、位置及び第一関節3の形状、曲がる方向、角度などに対応した形状にできる。
【0042】
本体部のサイズは、例えば、内径のサイズを3サイズ(S、M、L)など複数用意できる。本体部のサイズは、より細かく設定して、男性用、女性用、大人用、子供用、右手用、左手用、特定の指用などを用意できる。また、男女兼用、親指以外の4指用、親指も含めた5指用など複数の指用など、弾性材料の伸縮特性を利用して、フリーサイズとして適応可能な範囲を広くすることもできる。さらにサイズと共に上下左右がないタイプなどにできる。
【0043】
本体部は、弾性材料により伸び縮みして挿入可能な指の範囲を拡大される。本体部は、挿入可能な指の範囲をさらに広くして、個人差のある親指以外の人差し指から小指の4本の指に対応可能にでき、また、親指も含めた5本の手指に対応可能にできる。また逆に、本体部は、挿入可能な指の範囲を狭くして、特定の指専用のサイズ、形状にできる。例えば、標準的な人の親指、人差し指、中指などに対応するサイズ、形状にできる。特定の指専用の本体部も、ゴム状弾性により伸び縮みして一定の範囲で使用者の指に適合できる。
【0044】
その他、図示しないが、本体部に開口を設けて、蒸れを防止抑制できる。複数の開口、通気穴や凹凸を設けて蒸れにくくできる。開口を上下など装着位置の確認用の目印にできる。また、本体部の開口部に持ち手、開口などを設けて、指サック装着時に挟持でき、装着し易くできる。
(押出部20)
【0045】
押出部20は、PTP包装5のポケット7に押し当てられて、ポケット7内の薬剤8を押し出す部分である。押出部20は、本体部10の先端側で、ポケット7に押し当てられる位置に配置される。指1で押して力を加える部分は、指先1aの先端部付近または爪先4aに限定されず、指腹2などにもできる。押出部20は、指1で押して力を加える部分をカバーする位置に配置される。図1A図2Bは、指先1aまたは/及び爪先4aで薬剤8を押し出すことを前提とすることから、押出部20の中心をやや爪先4a寄りとして、効率よく押し出し、また指先1a、爪先4aを保護する。
【0046】
押出部20は、本体部10より硬質の弾性材料を含んでなる。押出部20は、弾性材料が衝撃吸収するだけでなく、その硬さで力を加える指先1a、爪先4aを保護できる。押出部20が本体部10より硬質の弾性材料であることで、押圧する指先1a、爪先4aが本体部10の内側に強く押し付けられることを防止できるからである。図1A及び図1B押出部20は、本体部10の外側に積層して連結される。指先1aで薬剤8を押し出すことで、薬剤8(ポケット7)から指先1a方向に力が加わるが、押出部20は、本体部10より硬質の弾性材料、例えば硬質系ゴムなどを用いることで変形が小さく、点ではなく、押出部20の内側全体という面的広がりをもって、圧力を小さくして本体部10側に対して内側方向に力を伝えることができる。そして、押出部20より軟質の弾性材料の本体部10が弾性変形して衝撃を吸収し、内側が指先1a、爪先4aに押し当てられる力を減少できるからである。このように、押出部20の硬さに加えて、本体部10の柔らかさ、弾性率の違い及び厚みにより力を加える指先1a、爪先4aを保護できる。
【0047】
また、押出部20は、その硬さで効率良く押す力を伝えて薬剤8を押し出す。押出部20は、本体部10より硬質の弾性材料、例えば硬質系ゴムなどを用いることで、指先1aでPTP包装5のポケット7に押し当てられる押出部20の接触部分の変形、広がりを抑制し、ポケット7との接触面積を小さく、圧力を大きくして、指先1aの力を効率良くポケット7に伝えることができることからである。また、小さい押圧力で薬剤8を押し出しできることは、反作用による薬剤8を収納するポケット7から指先1a方向への力も小さくでき、指先1a、爪先4aを保護に資する。
【0048】
また、押出部20は、ゴム状弾性体など滑りにくい素材を用いることで、ポケット7に押し当てられた押出部20のズレを防止し、押し当てたポケット7に容易に力を加えて、効率よく薬剤8を押し出しできる。
【0049】
押出部20は、ゴムよりも硬質、弾性率が大きい樹脂または金属板など、または非弾性材料の樹脂または金属板などを設けることができる。これらの樹脂または金属板などは、押出部20の外表面に配置することができ、または、ゴム状弾性体などの間に挟むように配置できる。これらの樹脂または金属板などを設けることにより、薬剤8から指先1a方向への力を減少または遮断して指先1a、爪先4aを保護できる。これらの樹脂または金属板などは、脱着自在、交換可能にできる。
【0050】
押出部20は、本体部10に連結される。押出部20は接着剤などで本体部10に接合して固定できる。押出部20は、本体部10から脱着可能に連結することもできる。例えば、押出部20及び本体部10の接合面に嵌め込み形状、差し込み、スライド溝などを設けることができ、また粘着シート、マジックテープ、両面テープなどを使用できる。脱着可能な押出部20は、使用者の押出部20のポケット7への当て方、角度、好み、癖などに合わせて、異なる形状、サイズ、厚みの押出部や新品の押出部への交換が容易であり、また洗浄可能として衛生的に使用できる。また、押出部20の位置を容易に変更、調整可能として、使用者の当て方など使用態様に対応できる。
【0051】
押出部20は、指1で押して力を加える部分をカバーする形状、面積とする。実際には、使用者により押し方、押し当てる位置、角度、力のいれ具合など好み、癖など個人差が存在する。押出部20は、ある程度対応可能な範囲を拡大するために、押して力を加える複数の位置を想定し、これらをカバーできる形状、面積とし、効率よく押し出しできる形状、位置、当て角度などのスイートスポットを適切に定めることが好ましい。ただし、押出部の形状は特定されるものではなく、左右上下対称または非対称にでき、またさらに、親指用、人差し指用、右手用、左手用など細かく形状を定めるなど様々にできる。
【0052】
図1A及び図1Bの押出部20は、外側及び内側共に略半球面とする。この他にも、例えば、図2A及び図2Bに示すように、押出部20の形状を、本体部10と共に、指先1aに近い形状にできる。図の押出部20は本体部10の外側に積層して連結されるため、押出部20の内側形状は本体部10の外側形状に適合する形状とする。押出部20の厚みは、略均一または非均一にできる。図示しないが、例えば、半球状の押出部の中心が厚く、外周縁が薄い形状などにできる。
【0053】
さらに図示しないが、押出部の外表面に、1または複数の凸部または凹部を設けることができる。凸部または凹部の外形、面は、ポケットの外表面の形状に合わせた曲面、またはそれ以外の形状にできる。押出部に凸部を設けることで、押出部を厚くでき、また接触面積を小さく圧力を大きく、また外表面の強度を向上できる。押出部に凹部を設けることで、位置ズレを防止でき、また接触面積を小さく圧力を大きく、外表面の強度を向上できる。押出部に複数の凸部または凹部を設けることで、接触面積を小さく圧力を大きくでき、押し当てる位置、角度など押し当て方の選択肢を増やし、効率よく押し出しできる角度、面積などを拡大できる。
【0054】
さらに図示しないが、押出部は、硬度の異なる軟質部と硬質部を設けることができる。また、押出部の軟質部または硬質部を脱着自在に有することができる。押出部を部分的に交換、洗浄可能として衛生的に使用できる。使用者のポケットへの当て方、角度、好み、癖などに合わせて交換や位置調整ができる。また図示しないが、指サックは、使用者の手指の部位の形状に合わせたパッキンなどを追加して、挿入された指先の当たり具合や隙間を調整でき、また違和感を少なくでき、痛みを抑制し、保護の厚みを調整でき、装着具合を向上できる。
[実施形態2]
【0055】
図3A図3Cに、本発明の実施形態2に係る指サック200を示す。図3Aは指サック200の概略斜視図、図3Bは指サック200の概略分解斜視図を、図3Cは指サック200の変形例を、それぞれ示す。指サック200は、本体部10と、押出部20と、さらに、本体部10と押出部20の間に介在される中間層30とを備える。
(中間層30)
【0056】
中間層30は、本体部10と押出部20の間に介在される層である。中間層30の内側面及び外側面は、接合される本体部10と押出部20の形状に合わせたものとする。指サック200は、本体部10と押出部20とは別に中間層30を介在させることで、本体部10及び押出部20を含めた指サック200の厚み、硬さ、弾力性、重さなどを調整できる。指サック200は、本体部10と押出部20の間に介在される中間層30の厚みや弾力性で、薬剤8の押し出しで力の加わる部分の指先1aや爪先4aの保護ができ、また効率よく薬剤8を押し出しできる。
【0057】
中間層30は、本体部10や押出部20と同じ素材、厚み、硬さ、弾力性などにでき、または本体部10や押出部20と異なる素材、厚み、硬さ、弾力性などにできる。本体部10と押出部20の間に介在される中間層30は、押出部20を支持する部分であり、本体部10と押出部20を連結する部分である。指サック200は、一方で、指先1a、爪先4aの保護し、また効率的に薬剤8を押し出すために、押出部20には硬さが要求される。また他方で、指サック200は、装着快適性及び装着容易性のために本体部10には柔らかさと薄さが要求される。そこで、中間層30を介在させ、本体部10と押出部20の各々の特徴をより活かす素材、厚み、硬さなどと選択できる。例えば、押出部20を押し出しに最適の形状、硬さ、サイズなどを選択しながら、別途、中間層30を押出部20を支持する部材として介在できる。また、本体部10を装着の快適性、装着の容易さに適切な厚み、弾性率、柔らかさ、形状、サイズとしながら、別途、中間層30を介在させて、本体部10と押出部20を連結できる。中間層30を本体部10や押出部20の間に介在させることで、硬い押出部20の圧力を分散させて、指先1a、爪先4aへの負担を軽減できる。中間層30を、押出部20よりも軟質の弾性材料とすることで、押出部20よりも軟質の弾性材料の中間層30及び本体層10が押出部20からの力、衝撃を面的に吸収、減少できる。また、装着感の違和感を少なくできる。また、中間層30を本体層10よりも硬質の弾性材料として、押出部20を安定的に支持できる硬さを確保できる。中間層30を本体部10よりも厚くすることで、押出部20を支持、連結する部分の厚みを本体層10に加算して大きくできる。中間層30は、本体部10の薄さ、柔らかさ、弾力性などの長所を活かし、また短所を補足でき、また、押出部20の硬さ、厚み、弾力性などの長所を活かし、短所を補足できる。
【0058】
中間層30のサイズ、面積、形状は、本体部10と押出部20との連結部分に限定されるものではなく、それ以外の部分にも拡大できる。例えば、中間層30は、指サック100の厚み、硬さ、柔らかさ、弾力性、材質などの調整が必要な範囲に広げることができる。図3A及び図3Bの中間層30は、本体部10の閉塞面12を覆う形状、サイズとして、指先1a、爪先4aの保護する。中間層30は、硬質の押出部20が指先1a、爪先4aに強く押し当てられることを防止でき、また押出部20からの力を分散して伝達できる。図3Cの中間層30は、本体部10の閉塞面12を覆うだけでなく、爪4側(図において、本体部10の上側)を閉塞面12側から開口部13側に向けて伸びる形状とする。図3Cの形状の中間層30は、指先1aで薬剤8を押した際に、本体部10の筒状部11及び閉塞面12がつぶれて、閉塞面12の内側が指先1a、爪先4aに強く押し当てられることを防止でき、指先1a、爪先4aの保護できる。この場合の中間層30は、指先1aで薬剤を押して本体部10の筒状部11及び閉塞面12がつぶれることがない強度及び厚み、幅を有する本体部10の補強部材とする。図3Cの中間層30は、閉塞面12を覆う部分と爪4側を開口部13側に伸びる部分が、断面図視において略L字状に連結される形状とする。ただし、中間層30の形状は、補強部材としても、他の働きとの関係においても、この形状に限定されるものではない。
【0059】
中間層30の厚みは、好ましくは本体部10の厚みの2倍以上、より好ましくは3倍以上とする。押出部20、中間層30、本体部10を3重に積層させることで、押し出しの力が加わる押出部20の連結部分を厚くして、硬い押出部20の圧力を分散させて指先1a、爪先4aへのダメージを小さくできる。本体部10、特に筒状部11の厚みを薄くして、装着快適性と装着容易性を向上し、また低コスト化を図りながら、中間層30の厚みを本体部10の厚みの2倍以上として押出部20との連結部分の十分な厚みを確保できる。中間層30の厚みが本体部10の厚みの2倍未満の場合、中間層30を介在させる効果を十分に活かすことができない。なお、中間層30の厚みと本体部10の厚みの比較は、中間層30の最も厚い部分の厚みと、本体部10の最も薄い部分の厚みとの比較により行うものとする。
[実施形態3]
【0060】
図4A及び図4Bに、本発明の実施形態3に係る指サック300を示す。図4Aは指サック300の概略斜視図、図4Bは指サック300の変形例を、それぞれ示す。指サック300は、本体部10及び押出部20が一体成形されてなる。一体成形することで、部品数を減らし、接着工程が不要、低コスト化でき、通常の接着よりも接着強度を向上でき、異種材料成形でも経年劣化に強く、剥がれにくいなどのメリットがある。異種材料を積層でき、合成ゴム同士、ゴムと樹脂、硬質ゴムと軟質ゴム、さらに金属や不織布なども一体成形できる。
【0061】
指サック300も、上記と同様に、本体部10または押出部20の形状は特定されない。例えば、指サック300は、上記と同様に指に近い形状にできる。また、図4Bに示すように、本体部10より硬質の弾性材料を含んでなる押出部20が、爪先4aから爪根に向けて伸びる形状にできる。図4Bの押出部20は、指先1a、爪先4aの保護と効率よく薬剤8の押し出し、さらに筒状部11の高さ方向の補強を兼用する。図の指サック300は、補強部材の押出部20により、指1で薬剤8を押し出す際に、筒状部11がつぶれて、指先1a、爪先4aに強い力が加わることを防止できる。図示しないが、指サック300は、さらに、押出部や補強などを追加することもできる。
[実施形態4、5]
【0062】
図5及び図6A図6Cに、本発明の実施形態4、5に係る指サック400、500を示す。図5は実施形態4に係る指サック400の概略斜視図、図6Aは実施形態5に係る指サック500の概略斜視図、図6Bは実施形態5の変形例に係る指サック500の概略斜視図、図6C図6Bの指サック500の模式断面図を、それぞれ示す。指サック400、500は、本体部10と、押出部20とを備え、押出部20が指1、爪4を保護する保護部40を備えてなる。
(保護部40)
【0063】
保護部40は、本体部10の外側に配置されて、指1または/及び爪4を保護する。保護部40は、薬剤8に押し当てる押出面40aと、押出面40aの指先1a側の先端から押出面40aの厚み以上に基端部側(開口部13側)に伸びる部分とを有してなる。図5の保護部40は、本体部10の外側に配置されて、押出面40aの他に、爪側面40bと、指側面40cと、指腹面40dとを備え、指先1a及び爪先4aを覆う。押出面51aは、ポケット7に押し当てて薬剤8を押し出す面である。爪側面40bは、押出面51aに連結されて、少なくとも爪4の一部を覆う面である。指側面40cは、押出面51aに連結されて、指側面を覆う面である。指腹面40dは、押出面51aに連結されて、指腹2を覆う面である。図5の保護部40は、押出面40aと爪側面40bと指側面40cとが平面を有し、指腹面40dが曲面を有する。ただし、保護部40の形状はこれに特定されず、例えば、保護部40の各面を曲面または平面もしくは凹凸を伴う面にできる。保護部40が複数の面を有する場合に、各面の境界をいかに定めるか、いずれの面が指1や爪4のどの部分を覆うかは大きな問題ではない。図示しないが、保護部は、押出面のみ有する構成にできる。また、保護部40は、押出面40aと他の1または複数面を有することができる。図示しないが、例えば、保護部は、爪側面と、爪側面とを有する構成にできる。
【0064】
保護部40は、押出面40aと、押出面40aの指先1a側の先端から押出面40aの厚み以上に基端部側(開口部13側)に伸びる部分とを含んで、中空の立体形状を形成し、本体部10の外側に配置され、少なくとも指先1aと爪4を覆って保護し、効率よく薬剤8を押し出しできる。指サック400は、外側の保護部40と内側の本体部10との2層で、また保護部40と本体部10との接触の位置、面積など接触態様で指先1aと爪4を保護できる。保護部40は、少なくとも指先1aと爪4を覆う立体形状が、本体部10の外側に配置されることで、保護部40の内側及び本体部10の外側の形状により、保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分を定めることができる。保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分を、閉塞面12のうち、押し当てられて痛みが生じ易い指先1a、爪先4aが触れる部分以外の部分にすることで、指先1a、爪先4aが閉塞面12の内側に強く押し付けられることを防止、抑止でき、または指先1a、爪先4aが閉塞面12の内側への押し付けを弱くできる。保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分は、筒状部11側にできる。保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分を、例えば、指側面、指腹2、爪4、爪根、爪根から第一関節3までの部分にすることで、指先1a、爪先4aへの過度な負荷を防止または減少できる。また、保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分を、面的接触、また複数か所で接触することで、接触面積を広く、また接触数を多くして、過度な負荷が小面積、また少数点に集中することを回避できる。さらに、保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分を、指の軟らかい部分、例えば指腹2として、広く接触させて薬剤8押し出しで加わる力、負荷を分散でき、指先1a、爪先4aへの負担を軽減できる。また、保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分は、薬剤8の押し出しにより加わる力の方向に対して、垂直ではなく、略平行または垂直よりも平行に近い面とすることで、薬剤8押し出しで加わる力、負荷を分散でき、指先1a、爪先4aへの負担を軽減できる。
【0065】
立体形状を形成する保護部40は、本体部10の外側に配置されて、保護部40と本体部10との間の所定の位置に隙間を形成できる。保護部40は、薬剤8を押し出す際に、押し付けられて痛みが生じ易い指先1a及び爪先4aが押し当てられる閉塞面12の位置に、保護部40と本体部10(筒状部11)との間に隙間を形成することで、指先1、爪先4aが閉塞面12の内側に強く押し付けられることを防止して、指先1a、爪先4aへの負担を軽減し、保護できる。立体形状の保護部40は、保護部40と本体部10との間に隙間を所定の位置に形成し、さらに保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分を所定の位置に定めることで、薬剤8押し出しで加わる力、負荷を分散、指先1a、爪先4aを保護ながら、指1を適切な位置及び姿勢で保持し、効率よく押し出す力を薬剤8(ポケット7)に伝達できる。保護部40と本体部10との間に隙間と保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分は、保護部40側の形状、厚み、硬度、弾力性などで調整でき、また、本体部10側の閉塞面12、筒状部11の形状、厚み、柔らかさ、弾力性などで調整できる。
【0066】
保護部40は、各面の指先1a側から本体部10の基端部側(開口部13側)に伸びる部分を長く、また広くして、立体形状の保護部40が指1と爪4を覆う部分が大きくでき、保護部40と本体部10との間の隙間、保護部40の内側が本体部10の外側に当たる部分の配置、範囲などを調整、拡大できる。保護部40は、各面の異なる長さの指先1a側から本体部10の基端部側に伸びる部分を組み合わせできる。例えば、保護部40は、爪側面40bが表出する爪4の50%を覆い、指腹面40dが爪側面40b以上に指腹2側を覆うことができる。また、保護部40は、爪側面40bが表出する爪4の全部または爪根元から第一関節3までの間まで覆い、指腹面40dが爪側面40b以下に指腹2側を覆うこともできる。
【0067】
指サック400の押出部20は、本体部10より硬質の弾性材料を含んでなり、保護部40を有する。指サック400は、保護部40と本体部10で、挿入された指、特に指先1a、爪先4aを保護できる。保護部40は、本体部10より硬質の弾性材料、例えば硬質系ゴムなどにできる他、ゴムよりも硬質、弾性率が大きい樹脂または金属板、非弾性材料の樹脂または金属板などを備えることができる。指サック400は、相対的に硬質の保護部40と、軟質の本体部10で、薬剤8から指先1a方向に伝わる力、衝撃を吸収し、減少または遮断し、指先1a、爪先4aを保護できる。指サック400の保護部40と本体部10は、2層により、異なる硬度のほか、異なる弾力性、厚み、材質などで指先1a、爪先4aを保護できる。さらに、本体部10の閉塞面12と筒状部11は、異なる厚み、柔らかさ、弾力性などにでき、例えば、内側の本体部10の閉塞面12を軟質で厚みのある弾性材料として指先1a、爪先4aを保護し、筒状部11を薄い弾性材料として良好な装着感にできる。
【0068】
従来の事務用の指サックには指爪を保護する部分がなく、指爪、特に爪先に強い力が加わると爪を痛めることを十分に防止できない。これに対し、指サック400の保護部40は、立体形状が本体部10の外側に配置されることで、外側の保護部40の硬さ、弾力性、厚み、機能と、内側に配置される本体部10の柔らかさ、弾力性、厚みとで、指先1、爪先4aが閉塞面12の内側に強く押し付けられることを防止して、指先1a、爪先4aへの負担を軽減して、保護できる。
【0069】
保護部40は、本体部10に固定できる。また、保護部40は、本体部10に脱着自在に連結できる。例えば、保護部40を本体部10の外側に差し込む、嵌め込むことで脱着自在に連結でき、また保護部40の位置及び姿勢を調整可能に連結できる。
【0070】
図6A図6Cの指サック500は、保護部40を備え、保護部40が脱着可能な保護ボード41を有する。保護ボード41で、指先1a、爪先4aを保護し、効率よく薬剤8を押し出しできる。爪先4aの外側部分に保護ボード41を設け、薬剤8を押し出す時に加わる力を遮断、抑制できる。保護ボード41は、薄く強度がある素材、金属または硬性合成樹脂が好ましい。保護部40は、硬質の保護ボード41を外側に設け、内側の本体部10の閉塞面12の弾性材料の軟性、弾力性で指先1a、爪先4aを保護し、しかも筒状部11の弾性材料で良好な装着感にできる。図6Aの保護部40は、薄板状の保護ボード41を有する。保護ボード41は、用途に応じて交換可能で、また衛生的に使用できる。さらに、保護ボード41は、差し込む金属を変えることで、押し出すだけでなく、切り込みで切る作業負担も軽減できる。
【0071】
保護ボード41は平面(図6A)、折り曲げ片(図6B)、曲面など様々な形状にできる。さらに、図6Cに示すように、指サック500はPTP包装5に切り込みを入れるための切り込み部42を有することができる。切り込み部42は、カッター刃、針状など、PTP包装5のアルミシート9または樹脂シート6に切り込みを入れることができる形状、態様とする。指サック500は、薬剤8を押し出す前に、切り欠け部42でPTP包装5、例えばアルミシート9に僅かな切り込みを入れることで、押出部20で薬剤8を押し出すと、切り込みからアルミシート9の破れが広がり、少ない押し出し力で簡単に薬剤8を押し出しできる。図示しないが、例えば、カッター刃、針状などの切り込み部で、PTP包装の裏側のアルミシートに切り込みを入れることができ、針状の切り込み部をPTP包装の表側からアルミシートまで貫通させて切り込みを入れることができる。切り込みは、ポケット内の薬剤を損傷しない位置に入れるものとする。
【0072】
さらに、図6Cに示すように、指サック500は、本体部10の内側において、指1が当接する部分に保持部50を設けることができる。保持部50は、本体部10の内側に挿入された指1を所定の位置及び姿勢に保持する部分である。保持部50は、例えば、本体部10を部分的に厚くして挿入された指1を当接でき、また本体部10の締め付けを部分的に強くして挿入された指1を当接できる。また、本体部10の内側に別部材の保持部50を設けることもできる。
【0073】
図6Cは、保持部50を爪4側で、爪4の根元から第一関節3までの間に配置する。図示しないが、保持部が爪上にかかるようにすることもできる。図において、筒状部11の設けられた保持部50は、挿入された指1の爪4側(指背側)では、指1(親指)の第一関節3から爪根元までの部分に当接する。筒状部11の指腹2側は、指先1a以外の部分に広く当接する。図の指サック500は、筒状部11の指背側の保持部50及び指腹2側とで、指1(親指)を所定の位置及び姿勢に保持する。図示しないが、筒状部の指側面においても、指腹側と同様に、指側面に広く当接できる。爪4側の爪根元付近、爪根元から第一関節3までの間は相対的に固く、指腹2は軟らかいため、保持部50は固い爪4側の爪根元の付近または爪根元から第一関節3までの間にかけて配置し、軟らかい指腹2側は指先1a以外の部分で広く当接させることが好ましい。親指の第一関節3が曲げられた状態で薬剤8を親指8で押し出す場合、爪4側(指背側)において、親指の第一関節3が曲げられた状態で、親指の第一関節3から爪根元までのアーチ状が形成され、親指を所定の位置及び姿勢に保持できる硬さとなり、保持部50の位置として好ましい。
【0074】
保持部50で指1が保持され、さらに、図6Cに示すように、保護部40の爪側面40bが保持部50まで伸びることで、筒状部11が押しつぶされることを防止し、指先1a、爪先4aが押出部20または本体部10の内側に押し付けられることがないようして、指先1a、爪先4aを保護できる。図の指サック500は、保護部40が設けられることで、指先1aまたは爪先4aと、押出部20または本体部10の内側との間に隙間が形成でき、または、押出部20または本体部10の内側が指先1aまたは爪先4aが僅かに触れる程度に接触させることができ、もしくは、スポンジなど軟らかい素材を介して接触する程度にとどめることができるなど、指先1a、爪先4aが押出部20または本体部10の内側に押し付けられることがないようにして、指先1aまたは爪先4aが圧迫されて痛みを感じることを防止できる。保持部50は、他の実施形態においても設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、指先に挿入されて、指先や爪先に痛みを生じさせることなく大量の薬剤などの被包装物をPTP包装から素早く、かつ、簡単に押し出しできる指サックに適用できる。
【符号の説明】
【0076】
100、200、300、400、500…指サック
1…指(手指)
1a…指先
2…指腹
3…第一関節(親指のIP関節)
4…爪
4a…爪先
5…PTP包装
6…樹脂シート
7…ポケット
8…薬剤
9…アルミシート
10…本体部
11…筒状部
12…閉塞面
12a…爪先空間
12b…指先当接部
13…開口部
15…軟質部
16…硬質部
20…押出部
30…中間層
40…保護部
40a…押出面
40b…爪側面
40c…指側面
40d…指腹面
41…保護ボード
42…切り込み部
50…保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7