(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026011
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】光学系装置および光学素子製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20240220BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240220BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240220BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240220BHJP
【FI】
G02B3/00 A
F21S2/00 481
F21V5/04 350
F21V5/04 400
F21S2/00 330
F21S2/00 311
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129435
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】504097823
【氏名又は名称】SCIVAX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131657
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 律次
(72)【発明者】
【氏名】縄田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA07
3K244BA08
3K244BA19
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA02
3K244DA27
3K244GA01
3K244GB03
3K244GB14
(57)【要約】
【課題】 スペックルむらのない光を照射することができる光学系装置を提供すること。
【解決手段】 波長λの光を透過するレンズが周期的に配列された光学素子と、波長λの光をレンズの複数に照射する光源が周期的に配列された照射部と、を具備し、レンズのx方向のピッチをPx、x方向と直行するy方向のピッチをPyとし、光源のh方向のピッチをx方向と合わせてレンズに対する光源の位置を一つのレンズに集約した場合の見かけの光源のx方向のピッチをQx、y方向のピッチをQyとし、jおよびkを2以上の自然数とすると、下記式1および式2
Px=jQx・・・式1
Py=kQy・・・式2
を満たす光学系装置。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λの光を透過するレンズが周期的に配列された光学素子と、
波長λの光を前記レンズの複数に照射する光源が周期的に配列された照射部と、
を具備し、
前記レンズのx方向のピッチをPx、x方向と直行するy方向のピッチをPyとし、前記光源のh方向のピッチをx方向と合わせて前記レンズに対する前記光源の位置を一つのレンズに集約した場合の見かけの光源のx方向のピッチをQx、y方向のピッチをQyとし、jおよびkを4以上の自然数とすると、下記式1および式2
Px=jQx・・・式1
Py=kQy・・・式2
を満たすことを特徴とする光学系装置。
【請求項2】
前記レンズの焦点距離をf、nを1以上の自然数とすると、ピッチPxについて、前記照射部と前記レンズの焦点位置との距離Lが、下記式α1
【数1】
を満たさないことを特徴とする請求項1記載の光学系装置。
【請求項3】
前記照射部と前記レンズの焦点位置との距離Lが、下記式α2
【数2】
を満たさないことを特徴とする請求項2記載の光学系装置。
【請求項4】
前記照射部と前記レンズの焦点位置との距離Lが、下記式α3
【数3】
を満たさないことを特徴とする請求項3記載の光学系装置。
【請求項5】
前記x方向と前記h方向の角度差が1度以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光学系装置。
【請求項6】
前記j、kは5以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光学系装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系装置および光学素子製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイムオブフライト(TOF)法を用いた3次元計測センサが携帯機器、車、ロボット等に採用されようとしている。これは、光源から対象物に照射された光が反射され戻って来るまでの時間から対象物の距離を計測するものである。光源からの光が対象物の所定の領域に均一に照射されていれば、照射されている各点における距離を測定でき対象物の立体構造が検知できることになる。
【0003】
このためのセンサーシステムは、対象物に光を照射する光照射部と対象物の各点から反射してきた光を検知するカメラ部及びカメラが受光した信号から対象物の距離を算出する演算部からなる。
【0004】
カメラ部と演算部は既存のCMOSイメージャとCPUを使用できるため、上記システムの独自の部分は光源と光学素子からなる光照射部となる。特にレーザ等の光を透過させることでビームを整形し、対象物に対して制御された領域での均一な照射を行うディフューザ(光学素子)は、上記システムの特徴的な部品となる。
【0005】
ここで、従来のディフューザは、マイクロレンズアレイが周期構造であるために、回折の影響で光強度のむらが生じるという問題があった。そこで、このむらを抑制するために、各レンズをランダムに配置する等の工夫が行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006-500621
【特許文献2】国際公開第2017/131585
【非特許文献1】H. Hamam, Lau Array Illuminator, Applied Optics, 43(14):2888-2894, May 10, 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、各レンズをランダムに配置するディフューザの場合、スペックルむらが生じるという問題があった。当該スペックルの発生は、コヒーレント光にランダム構造が関与する事で生じる光の干渉に起因している。したがって、各レンズをランダムに配置する方式のディフューザの場合、干渉縞を無くして均一性を上げることは可能であっても、スペックルをなくす事は原理的に不可能であるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、スペックルむらのない光を照射することができる光学系装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の光学系装置は、波長λの光を透過するレンズが周期的に配列された光学素子と、波長λの光を前記レンズの複数に照射する光源が周期的に配列された照射部と、を具備し、前記レンズのx方向のピッチをPx、x方向と直行するy方向のピッチをPyとし、前記光源のh方向のピッチをx方向と合わせて前記レンズに対する前記光源の位置を一つのレンズに集約した場合の見かけの光源のx方向のピッチをQx、y方向のピッチをQyとし、jおよびkを4以上の自然数とすると、下記式1および式2
Px=jQx・・・式1
Py=kQy・・・式2
を満たすことを特徴とする。
【0010】
この場合、前記レンズの焦点距離をf、nを1以上の自然数とすると、ピッチPxについて、前記照射部と前記レンズの焦点位置との距離Lが、下記式α
【数1】
を満たさない方が好ましい。
【0011】
また、前記照射部と前記レンズの焦点位置との距離Lが、下記式α2
【数2】
を満たさない方が好ましい。
【0012】
また、前記照射部と前記レンズの焦点位置との距離Lが、下記式α3
【数3】
を満たさない方が好ましい。
【0013】
また、前記x方向と前記h方向の角度差が1度以上である方が好ましい。
【0014】
また、前記j、kは5以上である方が好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学系装置は、スペックルのない光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の光学系装置を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る光学素子を示す概略平面図である。
【
図3】従来の光学系装置を用いた光の投影図である。
【
図4】シミュレーションに用いた光源の遠方界における配光分布を示す図である。
【
図5】シミュレーション1に用いた照射部の遠方界における配光分布を示す図である。
【
図6】シミュレーション1に用いた照射部の遠方界における総和の配光分布を示す図である。
【
図7】本発明のレンズに対する光源の(a)実際の位置と(b)見かけ上の位置を示す図である。
【
図8】シミュレーション2に用いた照射部の遠方界における配光分布を示す図である。
【
図9】シミュレーション2に用いた照射部の遠方界における総和の配光分布を示す図である。
【
図10】シミュレーション3における距離Lと配光分布の光強度の最大値との関係を示す図である。
【
図11】本発明の(a)実施例1と(b)比較例における投影図を示す図である。
【
図12】本発明の実施例2における角度差ごとの投影図を示す図である。
【
図13】本発明の実施例3における角度差ごとの投影図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の光学系装置について説明する。本発明の光学系装置は、
図1に示すように、波長λの光を透過するレンズ11が周期的に配列された光学素子1と、波長λの光をレンズ11の複数に照射する光源20が周期的に配列された照射部2と、で主に構成される。
【0018】
光学素子1は、波長λの光を透過するレンズ11が周期的に配列されたものである。ここでレンズ11とは、レンズ11から所定の距離f(f>0)離れた位置に焦点を有するものである。
【0019】
レンズ11の形状は、ディフューザとして照射したい光の領域(以下、照射領域という)に合わせて自由に設計することができる。たとえば、照射領域を円状にしたい場合には、レンズ11の形状を球面レンズにすればよい。また、照射領域を非円形にしたい場合には、レンズ11の形状を非球面レンズにして適宜調節すればよい。具体的なレンズ形状としては、例えば、凸レンズや凹レンズの他、断面によって凸レンズや凹レンズに見えるサドル型のレンズなどがある。
【0020】
また、周期配列には、
図2(a)に示すような平面視で正方形や長方形のレンズ11を正方配列にするものや、
図2(b)に示すような平面視で六角形のレンズ11を六方配列にするものなどが該当する。また、レンズ11は、レンズとして機能すればどのようなものでもよく、例えば、フレネルレンズやDOEレンズ、メタレンズ等を用いることもできる。また、レンズ11には、照射部からの光が反射するのを防止する反射防止膜が形成されている方が好ましい。また、レンズの数は、後述する照射部2の照射範囲に入る範囲で、可能な限り多い方が好ましい。
【0021】
照射部2は、波長λの光を照射する互いに位相が独立した複数の光源が周期的に配列されるものである。照射領域を二次元状とする場合には、光源も二次元的に周期配列されたものとすればよい。照射部を複数光源で構成する場合には、当該光源は、光学素子1との距離にむらが生じるのを防ぐため、同一平面上に形成される方が好ましい。照射部2の光源の数は多い方が好ましく、少なくとも200以上、好ましくは400以上、更に好ましくは600以上である方がよい。照射部2の具体例としては、例えば、少ない電力で高出力が見込めるVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を挙げることができる。VCSELは、発光面に垂直な方向に光を照射することができる光源20を複数有するものである。また、光源以外の部分に光吸収膜が形成されている方が反射光によるノイズが入らないため好ましい。
【0022】
光学素子1と照射部2は、照射部2の光源の光軸方向と光学素子1のレンズ11の光軸方向が一致するように配置される。
【0023】
ここで、nを1以上の自然数とし、レンズ11の最も小さいピッチの大きさをPxとすると、レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lが、下記式β1
【数4】
を満たすと光を大きく強め合い、
図3(a)に示すように、スポット状の光を照射することができる。一方、レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lが式β1を満たさない場合には、光を強め合う効果が小さくなり、
図3(b)に示すように、スポットが広がったような光を照射することになる。いずれの場合においても、光学素子1はレンズ11を周期的に配列したものでありランダム性はないため、スペックルは発生しない。しかしながら、このままでは照射された光はスポット状になるため、ディフューザとして使用することはできない。
【0024】
ここで投影されたスポット状の光は、レンズ11に対する光源の大きさや位置と密接に関連している。例えば、光のスポットサイズは、光源のサイズが小さいと小さくなり、大きいと大きくなる。また、上記距離Lは変えずに光学素子1に対する光源20の位置を平行移動すると、呼応して当該スポット状の光も移動する。
【0025】
もし、互いに位相が独立した光源20を隙間なく配置することができれば、上記光学系装置はスペックルのないディフューザとして機能する。実際には光源20を隙間なく配置することは不可能であるが、光源の周期とレンズ11の周期を調整して、光学素子1に対する光源20の見かけ上の位置を平行移動すれば、光源を隙間なく配置したものと同一視することができる。このことについてシミュレーションをした。
【0026】
[シミュレーション1]
光学素子1は、
図1に示すように、複数のレンズ11をピッチPxが10μm(Px=10)となるように周期配列したものを用いた。また、レンズ11としては、直径が10μm、屈折率が1.5、焦点距離fが20μm(f=20)であるものを用いた。照射部2は、波長が940nm(λ=0.94)で、
図4に示すようなガウシアン配光である光を照射する単光源とした。レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lは106μm(式β1のn=2)とした。照射部2の位置を平行移動した場合の遠方界の配光分布を
図5に示す。なお、このシミュレーションは、計算を簡単にするために
図1における奥行き方向(y方向)を考慮しない2Dの計算結果である。シミュレーションには、光学シミュレーションソフトBeamPROP(Synopsys社製)を用いた。
【0027】
光学素子1に対する照射部2の光源20の位置を平行移動すると、呼応して当該スポット状の光も移動する。
図5(a)は、光源20の位置が1点のみ(0μm)、
図5(b)は4点(-5μm、-2μm、1μm、4μm)、
図5(c)は5点(-4μm、-2μm、0μm、2μm、4μm)、
図5(d)は10点(-5μm、-4μm、-3μm、-2μm、-1μm、0μm、1μm、2μm、3μm、4μm)の場合の遠方界における配光分布を重ねたものである。
図5に示すように、照射位置が増えるほど、光が重なり、光の当たらない部分が埋まることがわかる。
【0028】
また、
図6は、
図5のグラフに基づき、各位置に光源が配置されている場合の遠方界の配光分布である。なお、光源が1点、4点、5点、10点の場合のいずれも、照射部2の光の出力の総和は同一であるとした。
図5に示すように、光源の位置が増えるほど光の当たる部分が重なるため、
図6に示すように、光強度のむらは小さくなる。したがって、光源20の周期とレンズ11の周期を調整して、各レンズ11に照射される光源20の見かけ上の位置を規則配列に近づけることができれば、スペックルのないディフューザとして機能する光学系装置を提供することができる。ここで、各レンズ11に照射される光源20の見かけ上の位置とは、各レンズ11側から垂直に見た光源20の位置を一つのレンズに集約した場合の位置を意味する。例えば
図7(a)は、横と縦の比が1:√3である長方形のレンズ11を正方配列した光学素子1と、複数の光源20をピッチQ(P:Q=3:5)で六方配列にした照射部2を光学素子1側から平面視した図である。この場合、
図7(a)のグレーの領域で示すように、レンズ11に対する光源20の位置は、25種類になる。これらをすべて1つのレンズ11に集約すると、レンズ11に照射される光源20の見かけ上の位置20aは、
図7(b)のようになる。
【0029】
レンズのx方向のピッチをPx、x方向と直行するy方向のピッチをPyとし、光源20のh方向のピッチをx方向と合わせてレンズ11に対する光源20の位置を一つのレンズに集約した場合の見かけの光源のx方向のピッチをQx、y方向のピッチをQyとし、jおよびkを2以上の自然数とすると、下記式1および式2を満たせば、レンズ11に照射される光源20の見かけ上の位置を規則配列にすることができる。
Px=jQx・・・式1
Py=kQy・・・式2
【0030】
ここで、シュミュレーション1で示したように、照射位置が増えるほど、光が重なり、光強度のむらを小さくすることができることから、式(1)、式(2)のk、jは大きいほど配光分布を滑らかにすることができる。具体的には、k、jは4以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上である方がよい。また、k、jは、見かけの光源が一つのレンズに隙間なく並ぶ方が好ましい。したがって、光源サイズは大きい方が好ましい。
【0031】
なお、照射部2の光源が六方配列の場合、レンズ11の平面視における形状は、aおよびbを自然数とすると、縦と横の比がa:√3bの長方形である方が好ましい。特にレンズ11の縦と横の比が2:√3であると光強度のむらを小さくすることができる点で好ましい。また、照射部2の光源が正方配列の場合、レンズ11の平面視における形状は、aおよびbを自然数とすると、縦と横の比がa:bの長方形である方が好ましい。
【0032】
シミュレーション1では、レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lが式β1を満たす場合について説明した。一方、レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lが式β1を満たさない場合には、スポットの半値幅が広がるため、
図3(b)に示すように、スポットが広がったような光を照射することになる。したがって、レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lが式β1を満たさないようにすれば、より光強度のむらは小さくなる。また、より好ましくは、式β1を満たす距離Lから焦点距離fだけ前後に離す方が好ましい。具体的には、距離Lは下記式α1
【数5】
を満たさない方が好ましい。このことについてシミュレーションをした。
【0033】
[シミュレーション2]
光学素子1は、
図1に示すように、複数のレンズ11をピッチPxが10μm(Px=10)となるように周期配列したものを用いた。また、レンズ11としては、直径が10μm、屈折率が1.5、焦点距離fが20μm(f=20)であるものを用いた。照射部2は、波長が940nm(λ=0.94)で、
図4に示すようなガウシアン配光である光を照射する単光源とした。レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lは80μm(式αのn=2を満たす)とした。照射部2の位置を平行移動した場合の遠方界の配光分布を
図8に示す。なお、このシミュレーションは、計算を簡単にするために
図1における奥行き方向(y方向)を考慮しない2Dの計算結果である。シミュレーションには、光学シミュレーションソフトBeamPROP(Synopsys社製)を用いた。
【0034】
光学素子1に対する照射部2の光源20の位置を平行移動すると、呼応して当該スポット状の光も移動する。
図8(a)は、光源20の位置が1点のみ(0μm)、
図8(b)は4点(-5μm、-2μm、1μm、4μm)、
図8(c)は5点(-4μm、-2μm、0μm、2μm、4μm)、
図8(d)は10点(-5μm、-4μm、-3μm、-2μm、-1μm、0μm、1μm、2μm、3μm、4μm)の場合の配光分布を重ねたものである。
図8に示すように、照射位置が増えるほど、光が重なり、光の当たらない部分が埋まることがわかる。
【0035】
また、
図9は、
図8のグラフに基づき、各位置に光源が配置されている場合の遠方界の配光分布である。なお、光源が1点、4点、5点、10点の場合のいずれも、照射部2の光の出力の総和は同一であるとした。
図8に示すように、光源の位置が増えるほど光の当たる部分が重なるため、
図9に示すように、光強度のむらは小さくなる。また、シミュレーション1の場合よりも光強度のむらは小さくなっていることがわかる。
【0036】
ここで、シュミュレーション2で示したように、照射位置が増えるほど、光が重なり、光強度のむらを小さくすることができることから、式(1)、式(2)のk、jは大きいほど配光分布を滑らかにすることができる。具体的には、k、jは4以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上である方がよい。また、k、jは、見かけの光源が一つのレンズに隙間なく並ぶ方が好ましい。したがって、光源サイズは大きい方が好ましい。
【0037】
[シミュレーション3]
光学素子1は、
図1に示すように、複数のレンズ11をピッチPxが27μm(Px=27)となるように周期配列したものを用いた。また、レンズ11としては、直径が27μm、屈折率が1.5、焦点距離fが12μm(f=12)であるものを用いた。照射部2は、波長が940nm(λ=0.94)で、
図4に示すようなガウシアン配光である光を照射する単光源とした。レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lを0~1000μmまで10μmずつ変化させた場合の遠方界の配光分布をシミュレーションした。この場合の距離Lと配光分布の光強度の最大値との関係を
図10に示す。なお、このシミュレーションは、計算を簡単にするために
図1における奥行き方向(y方向)を考慮しない2Dの計算結果である。シミュレーションには、光学シミュレーションソフトBeamPROP(Synopsys社製)を用いた。
【0038】
図10から、距離Lが式β1を満たす値(388μm、776μm)に近いとスポット部分の光強度が大きくなり光強度のむらが大きくなることがわかる。
【数6】
【0039】
また、
図10から、レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lが、下記式β2
【数7】
を満たす値(194μm、388μm、582μm、776μm、969μm)に近い場合も光を強め合うことがわかった。したがって、距離Lは、式β2を満たす値から10波長程度前後に離す方が好ましい。具体的には、レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lが、下記式α2
【数8】
を満たさない方が好ましい。
【0040】
また、
図10から、レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lが、下記式β3
【数9】
を満たす値(129μm、259μm、388μm、517μm、646μm、776μm、905μm)に近い場合も光を強め合うことがわかった。したがって、距離Lは、式β3を満たす値から10波長程度前後に離す方が好ましい。具体的には、レンズ11の焦点位置と照射部2の距離Lが、下記式α3
【数10】
を満たさない方が好ましい。
【0041】
次に、各レンズを周期的に配置した本発明の光学素子と各レンズをランダムに配置した従来の光学素子の投影像を比較した。
【0042】
[実施例1]
照射部1としては、波長が940nm(λ=0.94)でバットウィング配光である光を照射する光源が45μmピッチで六方配列されたVCSELを用いた。光学素子2は、複数のレンズ21をピッチPxが27μm(Px=27)、ピッチPyが46.76μm(Py=46.76)で長方形配列にしたもので、屈折率は、1.53のものを用いた。また、レンズ21の形状は、平面視でx方向の辺が27μm、y方向の辺が46.76μmの長方形で、高さが17.9μmのものとした。また、レンズ表面は、x軸方向とy軸方向で曲率が異なる非球面とした。また、レンズ21の焦点距離fは、40μmであるものを用いた。また、照射部1と光学素子2の焦点位置9との距離を424μmとした。照射部1から光学素子2に光を照射し、光学素子から50cm離れたスクリーンに投影した照射領域の投影像を
図11(a)に示す。
【0043】
[比較例1]
照射部としては、実施例1と同じVCSELを用いた。光学素子2は、複数のレンズをランダムに配列にした市販品光学素子を用いた。照射部1から光学素子2に光を照射し、光学素子から50cm離れたスクリーンに投影した投影像を
図11(b)に示す。
【0044】
図11(b)に示すように、レンズをランダムに配置したものでは、スペックルが観察された。一方、
図11(a)に示すように、各レンズを周期的に配置した光学素子を用いた場合には、スペックルのない均一な光を投影することができた。
【0045】
次に、レンズ11のピッチ方向(x方向)と光源20のピッチ方向(h方向)の角度差の違いによる投影像を比較した。
【0046】
[実施例2]
照射部1としては、波長が940nm(λ=0.94)でバットウィング配光である光を照射する光源が45μmピッチで六方配列されたVCSELを用いた。光学素子2は、複数のレンズ21をピッチPxが27μm(Px=27)、ピッチPyが46.76μm(Py=46.76)で長方形配列にしたもので、屈折率は、1.53のものを用いた。また、レンズ21の形状は、平面視でx方向の辺が27μm、y方向の辺が46.76μmの長方形で、高さが17.9μmのものとした。また、レンズ表面は、x軸方向とy軸方向で曲率が異なる非球面とした。また、レンズ21の焦点距離fは、40μmであるものを用いた。また、照射部1と光学素子2の焦点位置9との距離Lは、上述した式α1、α2、α3のいずれも満たさない2122μmとした。また、レンズ11のピッチ方向(x方向)と光源20のピッチ方向(h方向)の角度差は、0~2.4度まで0.48度ずつ回転させた。照射部1から光学素子2に光を照射し、光学素子から50cm離れたスクリーンに投影した照射領域の投影像を
図12(a)~(f)に示す。
【0047】
[実施例3]
照射部1としては、波長が940nm(λ=0.94)でバットウィング配光である光を照射する光源が45μmピッチで六方配列されたVCSELを用いた。光学素子2は、複数のレンズ21をピッチPxが27μm(Px=27)、ピッチPyが46.76μm(Py=46.76)で長方形配列にしたもので、屈折率は、1.53のものを用いた。また、レンズ21の形状は、平面視でx方向の辺が27μm、y方向の辺が46.76μmの長方形で、高さが17.9μmのものとした。また、レンズ表面は、x軸方向とy軸方向で曲率が異なる非球面とした。また、レンズ21の焦点距離fは、40μmであるものを用いた。また、照射部1と光学素子2の焦点位置9との距離Lは、上述した式β1を満たす1163μmとした。また、レンズ11のピッチ方向(x方向)と光源20のピッチ方向(h方向)の角度差は、0~2.4度まで0.48度ずつ回転させた。照射部1から光学素子2に光を照射し、光学素子から50cm離れたスクリーンに投影した照射領域の投影像を
図13(a)~(f)に示す。
【0048】
図12、
図13に示すように、レンズ11のピッチ方向(x方向)と光源20のピッチ方向(h方向)に角度差があると、よりスペックルの少ない光を投影することができる。また、
図13に示すように、照射部1と光学素子2の焦点位置9との距離Lが、上述した式β1、β2、β3を満たす場合でも、角度差が1度以上、好ましくは1.5度以上になると、よりスペックルのない均一な光を投影することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 照射部
2 光学素子
11 レンズ
20 光源
20a 光源の見かけ上の位置