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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026012
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】給液式スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20240220BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F04C18/16 Q
F04C29/02 321B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129445
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA21
3H129AB02
3H129BB06
3H129BB12
3H129BB42
3H129CC02
3H129CC12
3H129CC32
3H129CC48
3H129CC52
(57)【要約】
【課題】設定圧力に関わらず給油量を適切に調整することができる給液式スクリュー圧縮機の提供。
【解決手段】圧縮機は、圧力P3の作動空間313に潤滑油を供給する経路45aと、圧力P1の作動空間311に潤滑油を供給する経路45cと、経路45a,45cを(開、閉)状態とする第1弁体位置、(開、開)状態とする第2弁体位置、(閉、開)状態とする第3弁体位置に順に移動可能な給油切替弁42と、弾性体43による力FRと吐出圧力による力FLとにより給油切替弁42を駆動する駆動機構と、を備える。そして、第1吐出圧力≧吐出圧力>第2吐出圧力の場合は給油切替弁42を第3弁体位置へ駆動させ、所定圧力>吐出圧力>第1吐出圧力の場合は給油切替弁42を第2弁体位置へ駆動させ、吐出圧力≧所定圧力以上の場合は給油切替弁42を第1弁体位置へ駆動させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューロータが収められた圧縮機本体と、前記圧縮機本体から吐出された吐出ガスから冷却液を分離して前記圧縮機本体に戻す冷却液経路とを備え、前記圧縮機本体の作動空間圧力と前記冷却液経路の冷却液圧力との差圧によって給液を行う給液式スクリュー圧縮機において、
作動空間圧力が第1圧力である第1作動空間に、前記冷却液経路の冷却液を供給する第1供給路と、
作動空間圧力が前記第1圧力よりも小さい第2圧力である第2作動空間に、前記冷却液経路の冷却液を供給する第2供給路と、
前記第1供給路を開き前記第2供給路を閉じる第1弁体位置、前記第1供給路および前記第2供給路を開く第2弁体位置、および、前記第1供給路を閉じ前記第2供給路を開く第3弁体位置に順にスライド移動可能な弁体と、
弾性体の弾性力による前記第1弁体位置から前記第3弁体位置の方向への第1付勢力と、前記吐出ガスの吐出圧力による前記第3弁体位置から前記第1弁体位置の方向への第2付勢力とにより、前記弁体をスライド駆動する駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、
前記吐出圧力が、前記冷却液圧力が前記第1圧力となる第1吐出圧力以下、かつ、前記冷却液圧力が前記第2圧力となる第2吐出圧力より大きい場合には、前記弁体を前記第3弁体位置へスライド駆動させ、
前記吐出圧力が、前記第1吐出圧力よりも大きく、かつ、前記第1吐出圧力より大きな所定圧力よりも小さい場合には、前記弁体を前記第2弁体位置へスライド駆動させ、
前記吐出圧力が前記所定圧力以上の場合には、前記弁体を前記第1弁体位置へスライド駆動させる、給液式スクリュー圧縮機。
【請求項2】
スクリューロータが収められた圧縮機本体と、前記圧縮機本体から吐出された吐出ガスから冷却液を分離して前記圧縮機本体に戻す冷却液経路とを備え、前記圧縮機本体の作動空間圧力と前記冷却液経路の冷却液圧力との差圧によって給液を行う給液式スクリュー圧縮機において、
前記吐出ガスの圧力を検出する圧力検出装置と、
作動空間圧力が第1圧力である第1作動空間に、前記冷却液経路の冷却液を供給する第1供給路と、
作動空間圧力が前記第1圧力よりも小さい第2圧力である第2作動空間に、前記冷却液経路の冷却液を供給する第2供給路と、
前記第1供給路を開き前記第2供給路を閉じる第1弁体位置と、前記第1供給路を閉じ前記第2供給路を開く第2弁体位置との間を移動可能な弁体と、
前記弁体を移動させる駆動装置と、
前記圧力検出装置の圧力検出値に基づいて、前記駆動装置による前記弁体の移動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記圧力検出値に基づく前記冷却液圧力が前記第1圧力よりも大きい場合には、前記弁体を前記第1弁体位置へ移動させ、
前記圧力検出値に基づく前記冷却液圧力が前記第1圧力以下で第2圧力よりも大きい場合には、前記弁体を前記第2弁体位置へ移動させる、給液式スクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載の給液式スクリュー圧縮機において、
前記制御装置は、前記圧力検出値に基づく前記冷却液圧力が前記第1圧力よりも大きく、かつ、前記第1圧力より大きな所定冷却液圧力よりも小さい場合には、前記弁体を、前記第1供給路および前記第2供給路を開く第3弁体位置へスライド駆動させる、給液式スクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の給液式スクリュー圧縮機において、
作動空間圧力が前記第2圧力よりも大きく、かつ、前記第1圧力よりも小さい第3作動空間に、前記冷却液経路の冷却液を供給する第3供給路をさらに備え、
前記弁体の弁体位置によらず常に前記第3供給路による冷却液の供給を行わせる、給液式スクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給液式スクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー圧縮機の中には、スクリューロータとケーシングとの間に生じる内部隙間の封止、圧縮気体の冷却、摺動部品の潤滑などを目的として、圧縮行程の作動室内に液体を供給する給液式のものがある。使用される液体としては、例えば、潤滑油が用いられる場合が多い。そのような給油式のスクリュー圧縮機では、吐出される圧縮気体に潤滑油が混入するので、分離器を用いて圧縮気体から潤滑油を分離している。分離器により分離された潤滑油は、圧縮機自身が生み出す吐出圧力と圧縮機本体の作動空間内の圧力との圧力差を利用して自己循環給油され、再び圧縮機本体に供給される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的なスクリュー圧縮機では、空気槽や各種フィルタを介して圧縮空気を使用する顧客設備に接続される。その場合、使用空気量により空気槽の圧力が変動するので、圧縮機に取り付けられた圧力検出装置から得られる情報に応じて、スクリュー圧縮機の負荷運転、無負荷運転の切替制御や停止制御をするのが一般的である。
【0004】
例えば、圧縮機本体を駆動する電動機の回転速度が一定となる一定速機の容量制御の場合、負荷運転から無負荷運転に切り替わる圧力(以下、上限圧力と称する)と、無負荷運転から負荷運転に切り替わる圧力(以下、復帰圧力と称する)に基づき、空気槽に圧縮空気を充填し、圧力を維持する制御を行う。
【0005】
また圧縮機本体を駆動する電動機の回転速度が可変となる可変速機の容量制御の場合、予め設定された圧力(以下、制御圧力と称する)を維持するように電動機の回転速度を変化させ、空気槽に圧縮空気を充填し、圧力を維持する制御を行う。
【0006】
これらの上限圧力、復帰圧力、制御圧力などは、工場出荷時の設定値(以下、定格状態と称する)の状態から顧客設備に応じて設定変更可能である。そのため、差圧によって給油される給油式スクリュー圧縮機では、圧縮機本体に給油される潤滑油の給油量は、これらの設定値に応じて変動することになる。つまり、定格状態において効率が最も良くなるように設定した給油位置に対し、顧客使用状態では最適な給油位置が異なっている可能性がある。
【0007】
特許文献1には、給油式スクリュー圧縮機において、通常の圧縮機本体の給油経路と、給油弁を設けた別の給油経路を備えた構造とし、定格状態を考慮した給油によって動力ロスを低減するとともに、水分凝縮を考慮した給油によって水分凝縮を抑制する方法が開示されている。特許文献1では、オイルタンク内の潤滑油の温度を測定し、潤滑油の温度が所定の温度よりも高い場合は、圧縮機本体の低圧側作動空間に位置する給油経路と、給油弁を介して設けられた高圧側作動空間に位置する給油経路の両方から給油する。一方、オイルタンク内の潤滑油の温度が所定の温度よりも低い場合には、給油弁を閉塞し、圧縮機本体の低圧側作動空間に位置する給油経路のみで給油することで動力ロスを低減するとともに、水分凝縮を考慮した給油によって水分凝縮を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許6843033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1には、定格状態において圧縮機本体への給油量を調整し、動力ロス低減を図ることは開示されているが、顧客の使用状態を考慮した圧縮機本体への給油量調整方法については開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様による給液式スクリュー圧縮機は、スクリューロータが収められた圧縮機本体と、前記圧縮機本体から吐出された吐出ガスから冷却液を分離して前記圧縮機本体に戻す冷却液経路とを備え、前記圧縮機本体の作動空間圧力と前記冷却液経路の冷却液圧力との差圧によって給液を行う給液式スクリュー圧縮機において、作動空間圧力が第1圧力である第1作動空間に、前記冷却液経路の冷却液を供給する第1供給路と、作動空間圧力が前記第1圧力よりも小さい第2圧力である第2作動空間に、前記冷却液経路の冷却液を供給する第2供給路と、前記第1供給路を開き前記第2供給路を閉じる第1弁体位置、前記第1供給路および前記第2供給路を開く第2弁体位置、および、前記第1供給路を閉じ前記第2供給路を開く第3弁体位置に順にスライド移動可能な弁体と、弾性体の弾性力による前記第1弁体位置から前記第3弁体位置の方向への第1付勢力と、前記吐出ガスの吐出圧力による前記第3弁体位置から前記第1弁体位置の方向への第2付勢力とにより、前記弁体をスライド駆動する駆動機構と、を備え、前記駆動機構は、前記吐出圧力が、前記冷却液圧力が前記第1圧力となる第1吐出圧力以下、かつ、前記冷却液圧力が前記第2圧力となる第2吐出圧力より大きい場合には、前記弁体を前記第3弁体位置へスライド駆動させ、前記吐出圧力が、前記第1吐出圧力よりも大きく、かつ、前記第1吐出圧力より大きな所定圧力よりも小さい場合には、前記弁体を前記第2弁体位置へスライド駆動させ、前記吐出圧力が前記所定圧力以上の場合には、前記弁体を前記第1弁体位置へスライド駆動させる。
本発明の他の態様による給液式スクリュー圧縮機は、スクリューロータが収められた圧縮機本体と、前記圧縮機本体から吐出された吐出ガスから冷却液を分離して前記圧縮機本体に戻す冷却液経路とを備え、前記圧縮機本体の作動空間圧力と前記冷却液経路の冷却液圧力との差圧によって給液を行う給液式スクリュー圧縮機において、前記吐出ガスの圧力を検出する圧力検出装置と、作動空間圧力が第1圧力である第1作動空間に、前記冷却液経路の冷却液を供給する第1供給路と、作動空間圧力が前記第1圧力よりも小さい第2圧力である第2作動空間に、前記冷却液経路の冷却液を供給する第2供給路と、前記第1供給路を開き前記第2供給路を閉じる第1弁体位置と、前記第1供給路を閉じ前記第2供給路を開く第2弁体位置との間を移動可能な弁体と、前記弁体を移動させる駆動装置と、前記圧力検出装置の圧力検出値に基づいて、前記駆動装置による前記弁体の移動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記圧力検出値に基づく前記冷却液圧力が前記第1圧力よりも大きい場合には、前記弁体を前記第1弁体位置へ移動させ、前記圧力検出値に基づく前記冷却液圧力が前記第1圧力以下で第2圧力よりも大きい場合には、前記弁体を前記第2弁体位置へ移動させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、顧客の使用圧力に関わらず圧縮機本体への給油量を適切に調整することができ、圧縮機本体の信頼性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施形態における給液式スクリュー圧縮機の系統図の一例を示す図である。
図2図2は、圧縮機本体に循環供給される潤滑油の切替装置を示す図である。
図3図3は、圧縮機本体の吸込過程、圧縮過程および吐出過程を説明するPV線図である。
図4図4は、図2の切替装置が設けられた領域の拡大図である。
図5図5は、吐出圧力が吐出圧力上限値よりも低い状態における給油切替弁のスライド位置を示す図である。
図6図6は、本発明による給液式スクリュー圧縮機の第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施する事が可能である。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における給液式スクリュー圧縮機100の系統図の一例を示す図である。給液式スクリュー圧縮機においては、供給する液体として水や油等が用いられるが、以下では、冷却液として潤滑油を用いる場合を例に説明する。なお、以下では、給液式スクリュー圧縮機100のことを単に圧縮機100と呼ぶことにする。
【0015】
図示は省略したが、圧縮機100は、圧縮機本体3から発生する騒音を低減する筐体を備えている。吸入ガス(例えば、空気)は、筐体に設けられた開口部から吸入フィルタ1および吸込み絞り弁2を通過して圧縮機本体3へ吸い込まれ、圧縮機本体3により所定の圧力まで圧縮される。圧縮機本体3は主電動機4によって回転駆動される。主電動機4には、圧縮機制御基板を搭載した制御装置9から電力が供給される。
【0016】
圧縮機本体3により圧縮された圧縮ガス(例えば、圧縮空気)は、圧縮ガスに含まれる潤滑油が油分離器5で分離され、調圧逆止弁6、アフタークーラ7および図示しないドライヤ等を通過した後、圧縮機下流側に設置された貯留槽10に貯められる。圧縮機100から供給される圧縮ガスの圧力値は、圧力検出装置11によって検出され制御装置9に設けられた表示部(不図示)に表示される。貯留槽10に貯められた圧縮ガスは、顧客設備のガス源として使用される。
【0017】
圧力検出装置11で検出される圧力値は、圧縮ガスが油分離器5やアフタークーラ7を通過する際の圧力損失により、圧縮機本体3の吐出圧力よりも低くなる。スクリュー圧縮機の運転制御は圧力検出装置11で得られた圧力値に基づいて行われる。図1に示す例では、圧力検出装置11はアフタークーラ7と貯留槽10との間に設置されているが、設置場所はここに限らず圧縮機本体3から貯留槽10までのいずれに設置しても良い。
【0018】
一方、油分離器5で分離された潤滑油は、温調弁12を介してオイルクーラ8に送られて冷却される。その後、図示しないオイルフィルタ等を通過した後に、潤滑油経路の戻り配管13により圧縮機本体3に戻され、圧縮機本体3の内部に収納されたロータや軸受等に供給される。なお、温調弁12は、オイルクーラ8をバイパスする潤滑油の量を制御して、圧縮機本体3に供給される潤滑油の温度を一定に制御するものである。このように、潤滑油は圧縮機100の潤滑油経路を循環する。
【0019】
一般に、圧縮機100の制御方式は大きく分けて2種類存在する。一つ目は主電動機4の回転速度を一定にして運転する一定速制御であり、二つ目は主電動機4の回転速度を可変にして運転する可変速制御である。一定速制御は、圧力検出装置11から得られる圧力検出値が予め設定された上限圧力および復帰圧力の範囲内になるように吸込み絞り弁2を開閉し、負荷運転と無負荷運転を繰り返すことにより圧力を維持する制御である。一方、可変速制御は、圧力検出装置11から得られる圧力値が予め設定された制御圧力となるように、制御装置9に接続された主電動機4の回転速度を調整する制御である。
【0020】
また、圧縮機100には定格状態と呼ばれる設計点が設定されている。定格状態は、圧縮機本体3が仕様圧力において規定ガス量を吐き出す状態である。そして、潤滑油経路を圧縮機本体3まで戻ってきた潤滑油の圧縮機本体3における給油位置aは、定格状態において最も高効率となる位置に予め決められている。
【0021】
図2は、圧縮機本体3に循環供給される潤滑油の切替装置40を示す図である。本実施形態では、切替装置40は圧縮機本体3のケーシングに一体に設けられている。本実施形態の圧縮機100は二軸型のスクリューロータ圧縮機であって、ロータケーシング30内には、複数条の螺旋溝が形成された雌ロータ31と雄ロータ(不図示)とで構成される一対のスクリューロータが設けられている。図2においては、紙面表裏方向に沿って一対のスクリューロータが配置されている。雌ロータ31は、軸受ケーシング32に設けられた軸受33,34とロータケーシング30に設けられた軸受35とにより回転自在に支持されている。雌ロータ31は、図1に示した主電動機4により回転駆動される。
【0022】
ロータケーシング30の図示上方には吸込口300が形成され、軸受ケーシング32には吐出口301が形成されている。圧縮機100では、雌ロータ31および雄ロータのかみ合いとロータケーシング30の組み合わせで閉じられた作動空間が形成され、ロータ回転に伴い作動空間が吸込側(図示右側)から吐出側(図示左側)へ移動する。移動の過程において、吸込口300だけに繋がっている時間(吸入過程)、吸込口300および吐出口301どちらにも繋がっておらず作動空間容積が減少する時間(圧縮過程)、吐出口301にだけ繋がる時間(吐出過程)があり、空気等のガスの吸い込み、圧縮、吐き出しという過程を連続で行う。
【0023】
図1に示す戻り配管13を戻ってきた潤滑油の一部は、切替装置40を介してロータケーシング30内へ供給される。本実施形態では切替装置40はロータケーシング30に一体に形成されているが、別体で形成しても良い。切替装置40には、弁体室41が形成されている。弁体室41には、弁体室41内を図示左右方向にスライド移動する給油切替弁42が設けられている。弁体室41は、給油切替弁42により弾性体室411、油路室412および制御室413に区画される。弾性体室411には、バネ等の弾性体43が配置される。油路室412には、戻り配管13により戻り潤滑油が供給される。制御室413には、吐出口301からの吐出ガスが配管経路46により供給される。なお、本実施形態では、配管経路46は制御室413を圧縮機本体3の吐出口301に接続しているが、圧縮機本体3から調圧逆止弁6の間であればどこに接続しても良い。
【0024】
弾性体室411は、周囲の外気と連通しており内部圧力は大気圧に維持されている。給油切替弁42は、弾性体43の弾性力により図示右方向に付勢され、かつ、制御室413の吐出ガスの圧力により図示左方向に付勢されている。そのため、給油切替弁42は、吐出ガス圧力の大きさに応じて左右にスライド移動する。弁体室41には、ロータケーシング30内の互いに異なる作動空間に連通する3つの作動空間給油経路45a,45b,45cが形成されている。作動空間圧力が高い方から順に、作動空間給油経路45a、作動空間給油経路45b、作動空間給油経路45cが設けられている。
【0025】
図3は、圧縮機本体3の吸込過程、圧縮過程および吐出過程を説明するPV線図であり、横軸は作動空間容積V、縦軸は作動空間圧力Pである。図3において、曲線L(ABC1)は定格状態のPV線図を示し、曲線L(ABD1)は設定圧力を定格状態より低くした場合のPV線図を示している。C1は定格状態の設定圧力であって、吐出圧力がC1となるように制御される。D1は設定圧力を定格状態より低くした場合の設定圧力である。以下では、圧縮機100は、設定圧力C1と設定圧力D1の間に設定されるとして説明する。そのため、圧力C1,D1のことを吐出圧力上限値C1および吐出圧力下限値D1と呼ぶ場合もある。
【0026】
差圧によって給油が行われる給油式スクリュー圧縮機は、圧縮機本体3の吐出圧力と、圧縮機本体3に給油する作動空間内の圧力との圧力差を利用して自己循環給油される。戻り潤滑油の図1の給油口aでの圧力(以下では、給油圧力と称する)は、潤滑油が油分離器5やオイルクーラ8、オイルフィルタ(図示しない)等を通過する際の圧力損失ΔPにより圧力が低下し、吐出圧力C1,D1よりも低い圧力値C2,D2になる。そのため、給油する作動空間の圧力が給油圧力C2,D2と等しい場合には給油のための差圧が発生しなくなり、C2,D2は給油限界圧力を示している。作動空間容積E、Fは給油圧力C2,D2に対応する容積であり、給油限界位置を示している。設定圧力を吐出圧力上限値C1に設定した場合の定格状態における作動空間容積の給油可能範囲は区間BEとなり、設定圧力を吐出圧力下限値D1に設定した場合の給油可能範囲は区間BFとなる。なお、以下では、吐出圧力上限値C1での給油圧力C2を給油圧力上限値、吐出圧力下限値D1での給油圧力D2を給油圧力下限値と呼ぶ場合もある。
【0027】
ところで、設定圧力を吐出圧力下限値D1に設定すると給油圧力は給油圧力下限値D2になる。そのため、定格状態において最も効率が良くなることを考慮して点Eの給油限界位置付近に給油位置を設けた場合、区間EFの範囲は作動空間に給油できなくなり、ロータの信頼性が低下する。逆に設定圧力を定格状態より低くした状態を考慮して区間BFの範囲に給油位置を設けた場合、吐出圧力C1で給油圧力D1の定格状態では潤滑油の給油量が過多になり、つまり動力損失となり性能が低下するという問題が生じる。
【0028】
一方、本実施形態では、図2に示すような切替装置40を設けたので、上述のような問題の発生を防止することができる。図4は、図2の切替装置40が設けられた領域の拡大図である。なお、図4では、雌ロータ31に関しては図2に示すロータ歯形状に代えて作動空間を模式化して示した。符号311,312,313で示す帯状領域は、作動空間を表している。作動空間給油経路45a,45b,45cは、それぞれ異なる作動空間313,312,311に連通している。作動空間311の圧力はP1、容積はV1である。同様に、作動空間312の圧力はP2、容積はV2であり、作動空間313の圧力はP3、容積はV3である。
【0029】
スクリューロータの螺旋溝の条数に応じた数の作動空間が形成され、上述したように、ロータ回転に伴い作動空間は図示右側から左方向に移動する。図4はある瞬間における各作動空間の位置を示したものであり、時間経過とともに雌ロータ31が回転すると作動空間311,312,313は図示左方向に移動する。別の言い方をすると、符号Gを付したハッチング領域は作動空間に閉じ込められたガスを示しているが、このガスGが閉じ込められた作動空間はロータ回転に伴って左方向に移動する。
【0030】
ガスGが閉じ込められた作動空間が作動空間給油経路45cと連通する符号311で示す位置まで移動すると、ガスGは圧力P1、容積V1となる。作動空間311という呼び方は、このように作動空間給油経路45cに連通する位置まで移動した作動空間のことを表している。同様に、ガスGが閉じ込められた作動空間が、作動空間312と呼ぶ位置まで移動すると、ガスGは圧力P2、容積V2となり、作動空間給油経路45bに連通する状態となる。さらに、ガスGが閉じ込められた作動空間が、作動空間313と呼ぶ位置まで移動すると、ガスGは圧力P3、容積V3となり、作動空間給油経路45aに連通する状態となる。図3に示すPV線図の点H1,H2,H3が、それぞれの状態に対応している。
【0031】
図3に示すように、作動空間313の圧力P3は、吐出圧力下限値D1のときの給油圧力D2よりも大きく、作動空間311,312の圧力P1,P2は給油圧力D2よりも低い。すなわち、作動空間給油経路45b,45cは、設定圧力を吐出圧力下限値D1に設定した場合の給油圧力下限値D2における給油可能範囲BFの作動空間312,311に連通するように形成されている。
【0032】
給油切替弁42が弁体室41を区画する弁体径が同径である場合、切替装置40の給油切替弁42には、弾性体43により右方向の力FR、および、制御室413のガス圧による左方向の力FLが作用する。制御室413のガス圧は、圧縮機本体3の吐出圧力である。そして、給油切替弁42は、力FRと力FLとが釣り合う位置にスライド移動する。なお、給油切替弁42の左方向への移動は図4に示す係止部44aにより制限され、右方向への移動は図4に示す係止部44bにより制限されている。そのため、給油切替弁42の移動範囲は係止部44aから係止部44bまでである。弾性体43のバネ定数は、給油切替弁42が係止部44aに当接している状態においてFR(44a)<FL(C1)を満たし、給油切替弁42が係止部44bに当接している状態においてFR(44b)>FL(D1)を満たすように設定されている。すなわち、弾性体43のバネ定数は、FL(C1)>FR(44a)>FR(44b)>FL(D1)のように設定されている。
【0033】
次に、図3~5を参照して、切替装置40の動作、すなわち、制御室413のガス圧(すなわち、圧縮機本体3の吐出圧力)と給油切替弁42のスライド位置との関係について説明する。図4は、圧縮機本体3の吐出圧力が吐出圧力上限値C1である場合の給油切替弁42のスライド位置を示す。また、図5は、吐出圧力が吐出圧力上限値C1よりも低い状態における給油切替弁42のスライド位置を示す。
【0034】
まず、圧縮機本体3の吐出圧力が吐出圧力上限値C1の場合には、制御室413には圧力C1の圧縮ガスが供給され、図4に示すように給油切替弁42は係止部44aに当接している。すなわち、定格状態においては、作動空間給油経路45cは給油切替弁42により塞がれ、作動空間給油経路45a,45bは開いた状態となる。図3に示すように、吐出圧力上限値C1の場合には、油路室412の圧力、すなわち、戻り潤滑油の給油圧力C2の大きさは、作動空間311,312,313の圧力P1,P2,P3に対してC2>P3>P2>P1となっている。そのため、油路室412の潤滑油は、作動空間給油経路45a,45bを介して作動空間313,312へ流れ込むことになる。
【0035】
次いで、吐出圧力が吐出圧力上限値C1から圧力J1に低下した場合を考える。その場合、給油切替弁42は、図5の上段に示すように、作動空間給油経路45cが閉状態から開き始めの状態へ切り替わる寸前の状態となる。吐出圧力がJ1より小さくK1よりも大きい状態では、図5の中段に示すように、作動空間給油経路45a,45b,45cが開いた状態になる。そして、吐出圧力がさらに低下してK1になると、図5の下段に示すように、作動空間給油経路45aが給油切替弁42により塞がれると共に作動空間給油経路45b,45cが開いた状態となる。図示は省略するが、さらに吐出圧力が低下すると、作動空間給油経路45b,45cが開いた状態を維持したまま給油切替弁42は図示右方向にさらに移動して、係止部44bに係止された状態となる。そのため、給油圧力下限値D2となる吐出圧力下限値D1においては、給油切替弁42は係止部44bに係止された状態になっている。
【0036】
吐出圧力がJ1の場合の給油圧力はJ2で、吐出圧力がK1の場合の給油圧力はK2で、吐出圧力下限値D1の場合には給油圧力は給油圧力下限値D2となる。作動空間313の圧力は図3の状態H3における圧力P3である。C1≧吐出圧力>K1の場合には給油圧力はC2≧給油圧力>K2>P3となるので、作動空間313に潤滑油を供給するための差圧(=給油圧力-P3)を確実に確保することができる。一方、K1≧吐出圧力≧D1の場合には給油圧力はK2≧給油圧力≧D2となるが、作動空間313へ潤滑油を供給する作動空間給油経路45aは給油切替弁42により塞がれるので、給油圧力が作動空間313の圧力P3よりも低下した場合であっても、作動空間313の圧縮ガスが油路室412へ逆流することはない。
【0037】
圧縮機本体3の作動空間圧力と給油圧力との差圧によって給液を行う圧縮機100において、本実施形態では、戻り潤滑油を作動空間給油経路45a,45bから作動空間313,312へ供給する状態が、定格状態(吐出圧力C1)における最適な給油状態を実現するように構成されている。そして、吐出圧力が吐出圧力上限値C1よりも低い状態においては、吐出圧力に応じて給油切替弁42をスライド駆動することで、潤滑油が供給される作動空間を、図5に示すように(作動空間312,313)←→(作動空間311,312,313)←→(作動空間311,312)のように切り替え、吐出圧力に応じた適切な潤滑油供給が行われるようにした。
【0038】
例えば、切替装置40を備えず、吐出圧力の大きさに関係なく作動空間312,313に潤滑油を供給する構成を考えてみる。ユーザが設定圧力を吐出圧力上限値C1から吐出圧力下限値D1に変更した場合、給油圧力D2は作動空間313の圧力P3よりも低くなる。その結果、適切な潤滑油供給ができなくなるという不具合が生じてしまう。一方、本実施形態では、吐出圧力が吐出圧力下限値D1になると、切替装置40は、作動空間給油経路45aを閉じると共に作動空間給油経路45cを開いて、作動空間313への潤滑油供給を停止すると共に新たにより低圧な作動空間311へ潤滑油を供給する。その結果、差圧による潤滑油供給を適切な状態に維持することが可能となり、圧縮機本体3の信頼性向上を図ることができる。
【0039】
上述のように、本実施形態の給液式スクリュー圧縮機においては、顧客の使用状態に関わらず圧縮機本体3の吐出圧力に応じて給油切替弁42をスライド移動させ、圧縮機本体3への給油量を調整することが可能である。それにより、圧縮機本体3の信頼性向上を図った給油式スクリュー圧縮機を提供することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図6は、本発明による給液式スクリュー圧縮機の第2の実施形態を示す図である。第2の実施形態の圧縮機本体3Bと上述した圧縮機本体3と比較した場合、切替装置40Bにおける給油切替弁42の駆動方法が異なり、モータ等の駆動装置18により給油切替弁42をスライド駆動するようにした。駆動装置18は、圧力検出装置11で検出された吐出圧力に関する圧力値に基づいて制御装置9により制御される。その他の構成は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0041】
上述した第1の実施形態と同様に、弁体室41は給油切替弁42によって弾性体室411B,油路室412,制御室413Bに区画されている。ただし、図2に示した配管経路46は削除されている。弾性体室411Bおよび制御室413Bは油路室412に連通しており、弾性体室411B,油路室412および制御室413Bは全て同じ圧力になっている。その他の構成は第1の実施形態と同様の構成であり、説明を省略する。なお、係止部44a,44bについては、設けても良いし設けなくても良い。
【0042】
次に、給油切替弁42による切替動作について説明する。前述したように、圧力検出装置11は圧縮機本体3Bから吐出された圧縮ガスの圧力を検出するために設けられたものであるが、圧縮機本体3Bの吐出口301における吐出圧力に対して圧力検出装置11までの経路の圧力損失分だけ低い圧力値が検出される。制御装置9は、圧力検出値に圧力損失分を加算した値を吐出圧力として算出し、その算出された吐出圧力に基づいて駆動装置18による給油切替弁42のスライド駆動を制御する。
【0043】
制御装置9は、吐出圧力が条件「圧力C1≧(吐出圧力)≧J1」を満たしている場合には、給油切替弁42を図4に示す位置に位置決めする。吐出圧力が「J1>(吐出圧力)>K1」である場合には、圧力低下に応じて給油切替弁42を図4に示す位置から図示右方向にスライド移動させる。その場合、吐出圧力=J1では図4に示す配置、吐出圧力=K1では図5の下段に示す配置とする。さらに、吐出圧力が吐出圧力<K1となったならば、作動空間給油経路45aが完全に閉じると共に作動空間給油経路45cが完全に開く位置へと給油切替弁42をスライド移動させる。
【0044】
第2の実施形態においても、吐出圧力の大きさに応じて給油切替弁42を移動させて、給油のための差圧がゼロ以下にならないように給油する作動空間を切り替えるようにしている。その結果、差圧による潤滑油供給を適切な状態に維持することが可能となり、圧縮機本体3Bの信頼性向上を図ることができる。
【0045】
なお、駆動装置18を用いて給油切替弁42をスライド移動させる場合には、「圧力C1≧(吐出圧力)≧J1」の範囲内のいずれかの吐出圧力の時に、作動空間給油経路45a,45b,45cの開閉状態を(開、開、閉)から(閉、開、開)へと急速にステップ状に移動させることも可能である。ただし、ステップ状に移動させた場合には給油量が急激に変化して負荷が急変する場合があるので、上述のように吐出圧力の変化に応じて徐々に(開、開、閉)状態から(閉、開、開)へと変化させるのが好ましく、給油量の急変を抑えることができる。
【0046】
また、別の動作方法としては、ユーザによる設定圧力に基づいて、給油切替弁42を設定圧力に応じた位置に位置決めするようにしても良い。ユーザは制御装置9に設定圧力情報を入力する。なお、制御装置9における設定圧力と給油切替弁42の位置との関係は、上述した吐出圧力とスライド位置との関係と同様としても良いし、設定圧力が「C1≧設定圧力≧所定値」の場合には作動空間給油経路45a,45b,45cの開閉状態を(開、開、閉)とし、設定圧力が「所定値≧設定圧力≧D1」の場合には作動空間給油経路45a,45b,45cの開閉状態を(閉、開、開)とするようにしても良い。
【0047】
なお、上述した第1,2の実施形態では供給する液体として油の場合を例に記載したが、その他の液体(例えば水)であっても構わない。また、給油切替弁42の弁体径を左右で同径としているが、異径で構成しても構わない。第1,2の実施形態では、給油経路45bは常に作動空間312と連通し給油する構成としているが、給油量が十分であれば無くても構わない。
【0048】
上述した第1,2の実施形態では、雄雌のスクリューロータを有するツインスクリューの雌ロータ31に、切替装置40,40Bを介して戻り潤滑油を供給する構成としたが、雄ロータに給油する構成であっても同様に適用することができる。さらに、本発明は、ツインスクリュー構成に限らず、シングルスクリュー構成の給液式スクリュー圧縮機にも同様に適用することができる。
【0049】
上述した第1,2の実施形態では、圧力の異なる2つの作動空間に連通する作動空間給油経路45aと作動空間給油経路45cとの開閉を給油切替弁42で切り替える構成としたが、3つ以上の作動空間給油経路の開閉を切り替える構成としても良い。また、切替装置40,40Bでは弁体がスライドする方式の切替弁としたが、スライド方式に限らず種々の形態が可能である。
【0050】
以上説明した本発明の第1、2の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0051】
(C1)図1~5に示すように、給液式スクリュー圧縮機100は、スクリューロータが収められた圧縮機本体3と、圧縮機本体3から吐出された吐出ガスから潤滑油を分離して圧縮機本体3に戻す戻り配管13と、を備え、圧縮機本体3の作動空間圧力と給油圧力との差圧によって給油を行う。そして、給液式スクリュー圧縮機100は、作動空間圧力が圧力P3である作動空間313に、戻り配管13の潤滑油を供給する作動空間給油経路45aと、作動空間圧力が圧力P3よりも小さい圧力P1である作動空間311に、戻り配管13の潤滑油を供給する作動空間給油経路45cと、図5の上段に示す作動空間給油経路45aを開き作動空間給油経路45cを閉じる第1弁体位置、図5の中段に示す作動空間給油経路45aおよび作動空間給油経路45cを開く第2弁体位置、および、図5の下段に示す作動空間給油経路45aを閉じ作動空間給油経路45cを開く第3弁体位置に順にスライド移動可能な給油切替弁42と、弾性体43の弾性力による第1弁体位置から第3弁体位置の方向への第1付勢力FRと、吐出圧力による第3弁体位置から第1弁体位置の方向への第2付勢力FLとにより、給油切替弁42をスライド駆動する駆動機構を構成する弁体室41と、を備える。そして、吐出ガスの吐出圧力が、給油圧力が圧力P3となる吐出圧力K1以下、かつ、給油圧力が圧力P1となる吐出圧力P0より大きい場合には、給油切替弁42を第3弁体位置(図5の下段を参照)へスライド駆動させ、吐出圧力が、吐出圧力K1よりも大きく、かつ、吐出圧力K1より大きな所定圧力J1よりも小さい場合には、給油切替弁42を第2弁体位置(図5の中段を参照)へスライド駆動させ、吐出圧力が所定圧力J1以上の場合には、給油切替弁42を第1弁体位置(図5の上段を参照)へスライド駆動させる。
【0052】
上述のように、圧縮機本体3の作動空間圧力と給油圧力との差圧によって給液を行う給液式スクリュー圧縮機100において、吐出圧力の大きさに応じて給油切替弁42をスライド駆動して、潤滑油が供給される作動空間を、図5に示すように(作動空間312,313)←→(作動空間311,312,313)←→(作動空間311,312)のように切り替えることにより、差圧による潤滑油供給を適切な状態に維持することが可能となり、圧縮機本体3の信頼性向上を図ることができる。
【0053】
(C2)図1,3~6に示すように、給液式スクリュー圧縮機100は、スクリューロータが収められた圧縮機本体3Bと、圧縮機本体3Bから吐出された吐出ガスから潤滑油を分離して圧縮機本体3Bに戻す戻り配管13と、を備え、圧縮機本体3Bの作動空間圧力と戻り配管13の給油圧力との差圧によって給油を行う。そして、吐出ガスの圧力を検出する圧力検出装置11と、作動空間圧力が圧力P3である作動空間313に、戻り配管13の潤滑油を供給する作動空間給油経路45aと、作動空間圧力が圧力P3よりも小さい圧力P1である作動空間311に、戻り配管13の潤滑油を供給する作動空間給油経路45cと、図5の上段に示す作動空間給油経路45aを開き作動空間給油経路45cを閉じる第1弁体位置と、図5の下段に示す作動空間給油経路45aを閉じ作動空間給油経路45cを開く第2弁体位置との間を移動可能な給油切替弁42と、給油切替弁42を移動させる駆動装置18と、圧力検出装置11の圧力検出値に基づいて、駆動装置18よる給油切替弁42の移動を制御する制御装置9と、を備え、制御装置9は、圧力検出値に基づく給油圧力が圧力P3よりも大きい場合には、給油切替弁42を第1弁体位置へ移動させ、圧力検出値に基づく給油圧力が圧力P3以下で圧力P1よりも大きい場合には、給油切替弁42を第2弁体位置へ移動させる。
【0054】
上述のように、吐出圧力の大きさに応じて給油切替弁42を第1弁体位置または第2弁体位置に移動させることで、給油のための差圧がゼロ以下にならないように給油する作動空間を切り替えるようにしている。その結果、差圧による潤滑油供給を適切な状態に維持することが可能となり、圧縮機本体3Bの信頼性向上を図ることができる。
【0055】
(C3)上記(C2)において、図1,3~6に示すように、制御装置9は、圧力検出値に基づく給油圧力が圧力P3よりも大きく、かつ、圧力P3より大きな所定の給油圧力J2よりも小さい場合には、給油切替弁42を、作動空間給油経路45aおよび作動空間給油経路45cを開く第3弁体位置(図5の中段を参照)へ移動させる。上記(C2)の構成に対して、第1弁体位置と第2弁体位置との間に、作動空間給油経路45aおよび作動空間給油経路45cを開く第3弁体位置を設けることで、供給される潤滑油の量の急変を抑えることができる。
【0056】
(C4)上記(C1)から(C3)までのいずれか一に記載の給液式スクリュー圧縮機において、図2に示すように、作動空間圧力が圧力P1よりも大きく、かつ、圧力P3よりも小さい作動空間312に、戻り配管13の潤滑油を供給する作動空間給油経路45bをさらに備え、給油切替弁42の弁体位置によらず常に作動空間給油経路45bによる潤滑油の供給を行わせる。作動空間給油経路45bを設けることにより、より大きな給油量を必要とする場合にも対応することができる。
【0057】
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1…吸入フィルタ、2…吸込み絞り弁、3,3B…圧縮機本体、4…主電動機、5…油分離器、6…調圧逆止弁、7…アフタークーラ、8…オイルクーラ、9…制御装置、10…貯留槽、11…圧力検出装置、12…温調弁、13…戻り配管、18…駆動装置、30…ロータケーシング、31…雌ロータ、32…軸受ケーシング、33~35…軸受、40,40B…切替装置、41…弁体室、42…給油切替弁、43…弾性体、44a,44b…係止部、45a,45b,45c…作動空間給油経路、46…配管経路、100…給液式スクリュー圧縮機、300…吸込口、301…吐出口、311~313…作動空間、411,411B…弾性体室、412…油路室、413,413B…制御室
図1
図2
図3
図4
図5
図6