(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026018
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】バッテリ電流制御回路
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240220BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240220BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/02 E
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147478
(22)【出願日】2022-09-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2022129351
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392029742
【氏名又は名称】田中 正一
(72)【発明者】
【氏名】田中 正一
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA10
5G503CB11
5G503DA04
5G503GB06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バッテリに交流電流を供給することによりバッテリの充放電を制御するバッテリ電流制御回路を提供する。
【解決手段】バッテリ6は、降圧トランス5の二次コイル51を通じて接続される2つのバッテリグループ6A、6Bを有する。二次コイルに誘導された二次AC電圧により、電力エネルギーが2つのバッテリグループ間を交互に移動する。バッテリの内部抵抗は、二次コイルと2つのバッテリグループからなる閉回路を循環する二次交流電流により、抵抗損失を発生する。二次コイルは、2つのバッテリグループの各中間電位点6X、6Yを接続する。発振駆動回路8は、一次交流電圧を降圧トランスの一次コイル52に印加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続された2つのバッテリグループを含む少なくとも一つのバッテリセットを有するバッテリと、
前記2つのバッテリグループの各中間電位点を接続する二次コイルを有する降圧トランスと、
前記降圧トランスの一次コイルに一次交流電圧を印加する発振駆動回路と、
前記二次コイルに供給される二次交流電流を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とするバッテリ電流制御回路。
【請求項2】
前記各バッテリグループはそれぞれ、直列接続された複数のバッテリブロックからなり、
前記2つのバッテリグループは、複数の前記二次コイルにより接続される請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項3】
前記バッテリは、並列接続された複数の前記バッテリセットを有する請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項4】
前記バッテリは、複数の前記降圧トランスに接続され、前記複数の降圧トランスは、複数の前記発振駆動回路に別々に接続される請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項5】
前記バッテリは、複数の前記降圧トランスに接続され、
前記複数の前記降圧トランスの一次コイルは直列に接続され、
前記発振駆動回路は、前記直列接続された一次コイルに交流電力を供給する請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項6】
前記発振駆動回路は、前記一次コイルの一端に矩形波電圧を印加する矩形波発振回路と、前記降圧トランスのインダクタンス成分と共に直列共振回路を形成する共振キャパシタとを有する請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項7】
前記降圧トランスは、前記バッテリが負荷へ直流負荷電力を供給する期間に前記二次交流電流を前記バッテリに供給する請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項8】
前記バッテリは、前記発振駆動回路から前記一次コイルへの交流電力の供給により加熱される請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項9】
前記制御回路は、前記発振駆動回路から前記一次コイルへの交流電力の供給により、前記バッテリのインピーダンスを検出する請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項10】
前記制御回路は、前記発振駆動回路から前記一次コイルへの交流電力の供給により、前記バッテリの電極を電気化学的にリフレッシュするための電極リフレッシュ動作を実施する請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項11】
前記制御回路は、バッテリ充電期間の直前に前記降圧トランスに交流電力を供給することにより前記バッテリをプレヒーティングするためのプレヒーティング期間をもつ請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項12】
前記バッテリは、全固体バッテリである請求項11記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項13】
前記制御回路は、バッテリ充電期間の直後に前記降圧トランスに交流電力を供給することにより前記バッテリの電極をリフレッシュするためのトリートメント期間をもつ請求項1記載のバッテリ電流制御回路。
【請求項14】
前記バッテリは、全固体バッテリである請求項13記載のバッテリ電流制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに交流電流を供給することにより前記バッテリの充放電を制御するバッテリ電流制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリ(LIB)やナトリウムイオンバッテリ(SIB)のような二次電池は、電解液タイプと固体電解質タイプとを含む。
【0003】
一般的に、二次電池は、バッテリの性能が低温条件下において低下するという難しい問題をもつ。たとえば、この問題は、LFP電池が氷点下で充電される時に典型的に引き起こされる。バッテリの内部抵抗損失を利用するAC(交流)加熱法がその解決のために提案されている。このAC加熱法はバッテリを急速に加熱することができる。
【0004】
特許文献1は、バッテリに交流電流を供給することによりバッテリの電極状態を改善するACリフレッシュ法を提案している。さらに、バッテリに交流電流を供給することにより、バッテリのインピーダンスを検出することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】U.S.P.No.11,145,861
【発明の概要】
【0006】
けれども、バッテリの内部抵抗は非常に低い抵抗値をもつ。このため、AC加熱法は、バッテリの加熱のためにハイレートの交流電流をバッテリに供給する必要がある。同様に、ACリフレッシュ法は、バッテリ電極状態の改善のために、ハイレートの交流電流をバッテリに供給する必要がある。
【0007】
しかし、たとえば電気自動車用のバッテリは高い電圧をもつ。その結果、バッテリにハイレートの交流電流を供給するバッテリ電流制御回路は大電力を処理するために大型となる。特に、このバッテリ電流制御回路は、バッテリから放電された電力エネルギーを一時的に蓄積する必要があるため、回路サイズの増大はさらに深刻となってしまう。
【0008】
本発明の一つの目的は、バッテリへ供給する電流を制御することにより、バッテリの熱的性能及び/又は電気化学的性能を改善することである。本発明のもう一つの目的は、簡素で安価な回路構造によりバッテリへ供給する交流電流を制御することである。本発明のもう一つの目的は、簡素で安価な回路構造によりバッテリのインピーダンスを検出することである。
【0009】
本発明の一つの様相によれば、バッテリは少なくとも一つのバッテリセットをもち、このバッテリセットは、すくなくとも2つのバッテリグループをもつ。各バッテリグループは、直列接続された複数のセルをもつ。2つのバッテリグループのほぼ等しい電位点は、降圧トランスの二次コイルにより接続される。発振駆動回路が降圧トランスの一次コイルに一次交流電圧を印加する。これにより、二次コイルは、2つのバッテリグループにより形成される電流ループに交流電流を供給する。その結果、2つのバッテリグループは、充電及び放電を交互に繰り返す。
【0010】
したがって、発振駆動回路はバッテリから放電された電力エネルギーを蓄積する必要がない。さらに、発振駆動回路はバッテリ電圧に耐える必要がない。主としてバッテリの内部インピーダンスに交流電力を供給する発振駆動回路のサイズ及び損失は低減される。発振駆動回路は、たとえバッテリが負荷に直流電力を供給する場合でも、バッテリにAC電力を供給することができる。
【0011】
バッテリ加熱、電極リフレッシュ、及び内部インピーダンス検出は、二次コイルへの二次電圧の印加により実施されることができる。たとえばデンドライト低減、クラック回復、電極再フ゜レーティンク、及び電極トリートメントは、電極リフレッシュの例である。
【0012】
好適態様において、2つのバッテリグループはそれぞれ、直列接続された複数のバッテリブロックからなる。さらに、2つのバッテリグループは、複数の二次コイルにより接続される。これにより、各バッテリブロック間のAC電力供給のばらつきを低減することができる。好適には、各二次コイルは、それぞれ異なる降圧トランスに属する。一例において、各降圧トランスは、互いに異なる発振駆動回路から交流電力を受け取る。これにより、各二次コイルへ供給される交流電力を別々に制御することができる。他例において、各降圧トランスの一次コイルは直列に接続されて共通の発振駆動回路に接続される。その結果、高い内部抵抗をもつバッテリブロックに供給するAC電力を増加することができる。
【0013】
好適態様において、発振駆動回路は、一次コイルの一端に矩形波電圧を印加する矩形波発振回路と、降圧トランスのインダクタンス成分と共に直列共振回路を形成する共振キャパシタとを有する。これにより、発振駆動回路はコンパクトとなり、発振駆動回路の電力損失は低減される。
【0014】
本発明のバッテリ電流制御回路は、種々のバッテリに適用されることができる。交流電流によるバッテリの充放電は、バッテリの電極に熱的影響及び電気化学的影響を与える。たとえばシリコン粒子を含む負極を有するLIBにおいて、交流電流による充放電は、隣接するシリコン粒子は結合することができる。同様に、リチウム金属を含む負極を有するLIBにおいて、交流電流による充放電は、負極のクラックやデンドライトを修復することができる。
【0015】
同様に、負極が固体電解質に接する全固体バッテリは、負極と固体電解質との間の接触を改善することができる。さらに、バッテリの電極は急速充電により好ましくない変形を生じる可能性をもつ。このため、急速充電の直前にバッテリに交流電力を供給することによりバッテリをプレヒーティングすることができる。これにより、電極や固体電解質の急激な熱膨張を抑制することができる。さらに、急速充電の直後にバッテリに交流電力を供給することによりバッテリの電極を修復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施例のバッテリ電流制御回路を示す配線図である。
【
図2】
図2は、第2実施例のバッテリ電流制御回路を示す配線図である。
【
図3】
図3は、第3実施例のバッテリ電流制御回路を示す配線図である。
【
図4】
図4は、第4実施例のインピーダンス検出回路を示すブロック回路図である。
【
図5】
図5は、第5実施例のバッテリ電流制御例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第6実施例のバッテリ電流制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1実施例
第1実施例のバッテリ電流制御回路が
図1を参照して説明される。たとえばLFPバッテリのようなリチウムイオンバッテリからなるバッテリ6は、互いに並列接続されたバッテリグループ6A及び6Bからなる。バッテリグループ6Aは、直列接続されたバッテリブロック64及び65からなる。バッテリグループ6Bは、直列接続されたバッテリブロック66及び67からなる。
【0018】
80個のセルからなるバッテリ6は、高電位の電源線61及び低電位の電源線62を通じて図略の3相インバータに約160VのDC電圧を印加している。バッテリブロック64-67はそれぞれ、20個のセルを直列接続して構成されている。
【0019】
このバッテリ電流制御回路は、降圧トランス5、制御回路7及び発振駆動回路8からなる。降圧トランス5は、フエライトコアに巻かれた二次コイル51及び一次コイル52からなる。降圧トランス5の降圧比(巻数比)はたとえば15とされるが、必要に応じて適宜選択可能である。大電流が流れる二次コイル51は太い導体線により製造される。
【0020】
バッテリグループ6Aは、直列接続されたバッテリブロック64及び65の接続点からなる中間電位点6Xをもつ。バッテリグループ6Bは、直列接続されたバッテリブロック66及び67の接続点からなる中間電位点6Yをもつ。2つの中間電位点6X及び6Yは二次コイル51を通じて接続されている。
【0021】
発振駆動回路8は一次コイル52に交流電圧を印加する。発振駆動回路8は、共振キャパシタ80とハーフブリッジ83とからなる。ハーフブリッジ83は直列接続された上アームトランジスタ81及び下アームトランジスタ82からなる。ハーフブリッジ83は高電位側の電源線61及び低電位側の電源線82に接続されている。一次コイル52の一端はハーフブリッジ83の交流出力端子に接続され、一次コイル52の他端は共振キャパシタ80を通じて低電位側の電源線82に接続されている。
【0022】
トランジスタ81及び82は、0.5のテ゛ューティ比で相補的にスイッチングされ、ハーフブリッジ83は矩形波電圧を出力する。降圧トランス5及び共振キャパシタ80は公知のLLC直列共振回路を構成する。このLLC直列共振回路は、降圧トランス5の一次漏れインダクタンス及び励磁インダクタンスと共振キャパシタ80の静電容量との直列共振を使用する共振回路である。制御回路7は、ハーフブリッジ83のスイッチング周波数を制御することにより、一次コイル52に印加される発振電圧を調整する。
【0023】
発振駆動回路8は、共振キャパシタ80の代わりに、トランジスタ81及び82とそれぞれ並列接続された2つの共振キャパシタをもつZVS式の共振回路を採用することもできる。さらに、発振駆動回路8は、LLC直列共振回路の代わりにフルブリッジ発振回路を採用することができる。このフルブリッジ発振回路は共振回路構造を採用する必要はない。フルブリッジ発振回路の出力電圧は、PWM制御により制御されることができる。
【0024】
低抵抗値をもつ二次コイル51を通じて短絡されているバッテリ6の2つの中間電位点6X及び6Yは約80VのDC電位をもつ。ハーフブリッジ83が所定のスイッチング周波数でスイッチングされる時、一次コイル52にAC電流が流れ、二次コイル51に二次電圧が誘導される。この二次電圧は、2つの電流ループ(閉回路)を通じて二次AC電流を循環させる。第1の電流ループ(閉回路)は、バッテリブロック64、電源線61、バッテリブロック66、及び二次コイル51からなる。第2の電流ループ(閉回路)は、バッテリブロック65、電源線62、バッテリブロック67、及び二次コイル51からなる。
【0025】
第1の電流ループにおいて、バッテリブロック64及び66の開放電圧は相殺される。第2の電流ループにおいて、バッテリブロック65及び67の開放電圧は相殺される。バッテリブロック64は内部インピーダンス604をもち、バッテリブロック65は内部インピーダンス605をもつ。バッテリブロック66は内部インピーダンス606をもち、バッテリブロック67は内部インピーダンス607をもつ。したがって、二次コイル51に誘導される二次AC電圧のほとんどは、これらの内部インピーダンスにより消費される。言い換えれば、降圧トランス5からバッテリ6に供給されるAC電力は、4つのバッテリブロック64-67の内部インピーダンスにより消費される。実際には、AC電力は、4つの内部インピーダンスの抵抗成分により消費される。
【0026】
二次コイル51に誘導される二次AC電圧の正の半サイクル期間において、中間電位点6Xは中間電位点6Yよりも高い電位をもつ。その結果、バッテリブロック64及び67が放電され、バッテリブロック65及び66が充電される。二次コイル51に誘導される二次AC電圧の負の半サイクル期間において、中間電位点6Xは中間電位点6Yよりも低い電位をもつ。その結果、バッテリブロック64及び67が充電され、バッテリブロック65及び66が放電される。
【0027】
この実施例によれば、発振駆動回路8がバッテリ6に供給するAC電流は外部に流れないので、電力損失を低減することができる。LLC直列共振回路は回路構成が簡素であり、かつ、高効率をもつので、電力損失をさらに低減することができる。
【0028】
さらに、LLC直列共振回路のインダクタンス成分を構成する漏れインダクタンス付き変圧器が降圧トランス5からなるため、発振駆動回路8の発振電流を増加することなく、バッテリ6の低い内部抵抗にハイレートの二次交流電流を供給することができる。
【0029】
第2実施例
第2実施例のバッテリ電流制御回路が
図2を参照して説明される。バッテリ6は、並列接続された4つのバッテリグループ6A-6Dからなる。バッテリグループ6Aは、直列接続された4つのバッテリブロック64、65、60、及び63からなる。バッテリグループ6Bは、直列接続された4つのバッテリブロック66、67、68、及び69からなる。2つのバッテリグループ6A及び6Bは、第1のバッテリセットを形成している。
【0030】
同様に、バッテリグループ6Cは、直列接続された4つのバッテリブロック64、65、60、及び63からなる。バッテリグループ6Dは、直列接続された4つのバッテリブロック66、67、68、及び69からなる。2つのバッテリグループ6C及び6Dは、第2のバッテリセットを形成している。第1のバッテリセットに属するバッテリブロックは、第2のバッテリセットに属するバッテリブロックとは異なるセルにより構成されている。
【0031】
各バッテリブロックはそれぞれ、直列接続された10個のセルからなる。したがって、160個のセルからなるバッテリ6は、高電位の電源線61及び低電位の電源線62を通じて図略の3相インバータに約160VのDC電圧を印加している。
【0032】
この実施例のバッテリ電流制御回路は、それぞれ降圧トランスと発振駆動回路からなる4つのACユニットをもつ。第1のACユニットは、降圧トランス5Aと発振駆動回路8Aからなる。第2のACユニットは、降圧トランス5Bと発振駆動回路8Bからなる。第3のACユニットは、降圧トランス5Cと発振駆動回路8Cからなる。第4のACユニットは、降圧トランス5Dと発振駆動回路8Dからなる。これら4つのACユニットはそれぞれ、
図1に示される降圧トランス5及び発振駆動回路8と同じの回路構成及び動作をもつ。このため、それらの説明は省略される。
【0033】
第1のバッテリセットにおいて、バッテリブロック64及び65の接続点である中間電位点6Xは、降圧トランス5Aの二次コイルを通じて、バッテリブロック66及び67の接続点である中間電位点6Yに接続されている。同様に、第2のバッテリセットにおいて、バッテリブロック64及び65の接続点である中間電位点6Xは、降圧トランス5Cの二次コイルを通じて、バッテリブロック66及び67の接続点である中間電位点6Yに接続されている。
【0034】
第1のバッテリセットにおいて、バッテリブロック60及び63の接続点である中間電位点6Wは、降圧トランス5Bの二次コイルを通じて、バッテリブロック68及び69の接続点である中間電位点6Zに接続されている。同様に、第2のバッテリセットにおいて、第2のバッテリセットにおいて、バッテリブロック60及び63の接続点である中間電位点6Wは、降圧トランス5Dの二次コイルを通じて、バッテリブロック68及び69の接続点である中間電位点6Zに接続されている。
【0035】
さらに、第1のバッテリセットにおいて、バッテリブロック65及び60の接続点は、短絡線600Aを通じて、バッテリブロック67及び68の接続点に接続されている。同様に、第2のバッテリセットにおいて、バッテリブロック65及び60の接続点は、短絡線600Bを通じて、バッテリブロック67及び68の接続点に接続されている。
【0036】
既述されたように、この実施例のバッテリ電流制御回路は、それぞれ降圧トランス及び発振駆動回路からなる4つのACユニットをもち、各ACユニットは、
図1に示される降圧トランス5及び発振駆動回路8と本質的に同じである。4つのACユニットはそれぞれ、4つのバッテリブロックにAC電流を供給する。このため、バッテリ6は、16個のバッテリブロックに分割されている。
【0037】
この実施例の一つの利点は、4つのACユニットをそれぞれ独立制御できる点にある。たとえば、
図2において、発振駆動回路8Aに接続される4つのバッテリブロック64-67の内部インピーダンスが相対的に高い時、制御回路は、発振駆動回路8Aの出力電圧を増加することができる。その結果、発振駆動回路8Aから降圧トランス5Aに供給されるAC電力を相対的に増加することができる。言い換えると、この実施例のバッテリ電流制御回路は、独立制御可能な多数のACユニットをもつため、バッテリ6の内部状態のばらつきに応じてAC電力の供給を別々に制御することができる。
【0038】
第3実施例
第3実施例のバッテリ電流制御回路が
図3を参照して説明される。
図3に示されるバッテリ6及び降圧トランス5A-5Dは、
図2に示される第2実施例のそれらと同じである。この実施例の特徴は、共通の発振駆動回路8が4つの降圧トランス5A-5Dの一次コイル52A-52DにAC電力を供給することである。
【0039】
図3に示される発振駆動回路8は、
図1に示される発振駆動回路8と同じ回路構成をもつ。しかし、この実施例の発振駆動回路は、他の発振回路構造を採用することもできる。この実施例の重要な特徴は、発振駆動回路8が、直列接続された4つの一次コイル52A-52DにAC電圧を印加する点である。
【0040】
二次コイル51Aに接続されるバッテリ内部抵抗はRAと呼ばれ、二次コイル51Bに接続されるバッテリ内部抵抗はRBと呼ばれる。二次コイル51Cに接続されるバッテリ内部抵抗はRCと呼ばれ、二次コイル51Dに接続されるバッテリ内部抵抗はRDと呼ばれる。
図3に示されるように、ハーフブリッジ83及び共振キャパシタ80からなる発振駆動回路8は、直列接続された4つの一次コイル52A-52DにAC電圧を印加する。
【0041】
4つの二次コイル51A-51Dに接続される内部抵抗RA、RB、RC、及びRDが互いに等しい時、発振駆動回路8の出力電圧の25%がそれぞれ、4つの一次コイル52A-52Dに印加される。
【0042】
次に、二次コイル51Aに接続されるバッテリブロック64-67の内部抵抗が相対的に高い例が説明される。二次コイル51Aに接続される内部抵抗RAが、他の二次コイル51B-51Dに接続される内部抵抗RB、RC、及びRDよりも高くなる。その結果、発振駆動回路8は、一次コイル52B-52Dと比べて一次コイル52Aに相対的に高いAC電圧を印加する。
【0043】
言い換えれば、相対的に高い内部インピーダンスをもつバッテリブロックには、相対的に高いAC電圧が印加される。その結果、相対的に高い内部インピーダンスをもつバッテリブロックは、相対的に高いAC電力を受け取る。たとえば、低温のバッテリの内部インピーダンスは高くなる。結局、この実施例によれば、相対的に高いAC電力供給を必要とするバッテリに、相対的に高いAC電力を供給することができる。さらに、この実施例によれば、発振駆動回路8がコンパクトとなる。
【0044】
第4実施例
第4実施例が
図4を参照して説明される。
図4に示される回路は、
図1に示される第1実施例のバッテリ電流制御回路と本質的に同じである。この実施例において、バッテリ6の内部インピーダンスは、一次コイル52を流れる交流電流に基づいて検出される。電流検出用の低抵抗素子11は、降圧トランス5の一次コイル52を流れる一次電流I1を検出する。低抵抗素子11の電圧降下VS、及び、一次コイル52の電圧降下V1は制御回路7に送信される。
【0045】
バッテリ6のインピーダンスを検出する動作がさらに説明される。
図1に示されるように、バッテリ6はバッテリブロック64-67からなる。バッテリブロック64はインピーダンス604をもち、バッテリブロック65はインピーダンス605をもつ。バッテリブロック66はインピーダンス606をもち、バッテリブロック67はインピーダンス607をもつ。バッテリ6のインピーダンスは、4つのインピーダンス604-607からなる。
【0046】
二次コイル51がバッテリ6のインピーダンス604-607にAC電圧V2を印加する時、二次電流が二次コイル51を流れる。発振駆動回路8は、一次コイル52にAC電圧V1を印加し、一次電流I1が一次コイル52を流れる。オペアンプ70は低抵抗素子11の両端の電圧VSを増幅し、帯域フィルタ71は信号電圧VSからノイズを除去する。整流器72は信号電圧VSを整流し、A/Dコンバータ73は整流された信号電圧VSをデジタル電流信号に変換する。デジタル信号処理回路74はこのデジタル電流信号からバッテリ6のインピーダンス値を算出する。デジタル信号処理回路74はさらに、このインピーダンス値に基づいてバッテリ6の状態を算出する。
【0047】
バッテリの内部インピーダンスは、分極に関係するキャパシタに直列接続された直列抵抗成分と、このキャパシタと並列接続された並列抵抗成分とをもつ。主として電解液抵抗からなる直列抵抗成分は、低温状態にて増大し、さらに高SOC状態において増大する。並列抵抗成分は、バッテリの劣化により増大する。高周波帯域では、インピーダンス検出値に占める並列抵抗成分の影響が相対的に低減される。降圧トランス5は、信号電圧を増幅する機能をもち、さらに信号電圧をバッテリ電圧から絶縁する機能をもつ。
【0048】
第5実施例
第5実施例が
図5を参照して説明される。
図5はバッテリ6に交流電流を供給することにより、バッテリ加熱動作、インピーダンス検出動作、及び電極リフレッシュ動作を行うフローチャートを示す。これら3つの動作は、発振駆動回路8から降圧トランス5を通じてバッテリ6に供給される交流電流により実施されるという共通の特徴をもつ。
【0049】
交流電流がバッテリに供給することにより、バッテリの電極に熱的及び電気化学的な影響を与えることができる。この明細書において、この動作は電極リフレッシュ動作と呼ばれる。
【0050】
まず、バッテリ6の温度が検出され(S100)、バッテリ加熱が必要であれば、発振駆動回路8から降圧トランス5を通じてのバッテリ6への交流電力が供給され、バッテリ加熱動作が実行される(S102)。次に、バッテリ6の電極リフレッシュ動作が必要が否かが判定され(S104)、電極リフレッシュ動作が必要と判定される時、電極リフレッシュ動作が実行される(S106)。次に、バッテリ6の内部インピーダンスが検出される(S108)。バッテリ6のインピーダンスは一次コイル52の電流及び電圧に基づいて検出される。
【0051】
次に、バッテリ6の内部状態が検出されたインピーダンスに基づいて決定される(S110)。バッテリ6のインピーダンス値がバッテリ6の内部状態に関連するパラメータに応じて変化することは公知である。これは、バッテリの内部状態をインピーダンスの検出値に基づいて判定できることを意味する。たとえば、バッテリインピーダンスの直列抵抗成分が高い時、バッテリ6が冷たい状態であると判断することができる。これにより、バッテリ加熱動作を開始することができる。同様に、バッテリインピーダンスの並列抵抗成分が高い時、電極上の不活性層の幅が厚いと判断することができる。これにより、電極リフレッシュ動作を開始することができる。
【0052】
電極リフレッシュ動作がさらに説明される。電極リフレッシュ動作の一つの効果は、滑らかな電極表面を形成できることである。たとえば、デンドライト成長は、低温バッテリのハイレート充電により促進される。交流電流をバッテリ6に供給することにより、デンドライトを低減することができる。
【0053】
電極リフレッシュ動作のもう一つの効果は、電極表面に形成された不活性層のような高抵抗層を破壊できることである。発振駆動回路8は、高抵抗層の破壊が可能な発振電圧を降圧トランス5に供給する。この高抵抗層破壊において発振周波数を低下することが好適である。電極リフレッシュ動作のもう一つの効果は、シリコン粒子を含む負極をもつリチウムイオンバッテリ(LIB)に交流電流が供給される時、電極加熱効果及び電極リフレッシュ効果により、負極内のシリコン粒子が一体化することである。
【0054】
第6実施例
第6実施例が
図6を参照して説明される。
図6は、全固体バッテリが急速充電される期間の前後において交流電流が供給されることを示す。たとえば、この全固体バッテリは、酸化物又は硫化物の固体電解質と、リチウム金属からなる負極と、リチウムを含む正極とをもつ。この種の全固体バッテリは公知となっている。全固体バッテリは急速充電に好適であるという重要な利点をもつ。ハイレートの充電電流を使用する急速充電はバッテリ温度を急速に上昇させる。固体電解質は、液体電解質よりも高温で動作することができる。
【0055】
全固体バッテリのもう一つの利点は、デンドライトによる短絡事故を回避できることである。液体電解質をもつバッテリはイオン移動可能な有機物セパレータをもつが、このセパレータはデンドライトにより破壊されやすい。デンドライト成長は、ハイレート充電において深刻となる。この問題は、セパレータの代わりに固体電解質を使用することにより解決される。したがって、全固体バッテリはリチウム負極などの金属負極を採用することができる。
【0056】
しかし、更なる検討によれば、非常にハイレートの急速充電は全固体バッテリと雖も深刻な問題を発生することがわかった。リチウム負極をもつ全固体バッテリを例としてこの問題が説明される。固体電解質及び負極は互いに異なる熱膨張率をもつ。このため、ハイレートの急速充電は固体電解質と負極との間の接触界面において大きな熱応力を発生する。さらに、固体電解質及び負極は、互いに異なる電気抵抗率をもつ。したがって、ハイレートの急速充電により固体電解質と負極とは異なる電力損失をもつ。これらの結果、ハイレートの急速充電により固体電解質と負極との間に接触界面において大きな熱応力が発生する。
【0057】
この熱応力は負極に悪影響を与える。この熱応力の第1の影響は、固体電解質が負極表面から剥がれ、それらの間に微細な隙間が形成されることである。また、負極表面に形成されたデンドライトは、隣接する固体電解質を押し上げる。このため、上記隙間形成はデンドライトによりさらに拡大される。同様に、充放電により形成された荒れた負極表面は、この隙間形成を促進する。結局、ハイレートの急速充電は、固体電解質と負極との界面接触性を悪化させる。この熱応力の第2の影響は、負極にクラックを発生することである。
【0058】
結局、急速充電に伴う熱応力は、全固体バッテリの内部電気抵抗を不可逆的に増加させる。たとえば、5C充電又は10C充電のような極めてハイレートの急速充電は、全固体バッテリの内部温度を急速に上昇させる。その結果、電極と固体電解質との間の界面に生じる大きな熱応力はバッテリの内部抵抗値を増加させる。
【0059】
この実施例によれば、交流電流が急速充電の直前に全固体バッテリに供給される。この動作は、プレヒーティングと呼ばれることができる。このプレヒーティングにおいて、全固体バッテリの温度上昇率は熱応力が許容できる範囲内に制限される。このため、プレヒーティングは緩慢に実施される。たとえば、プレヒーティングはたとえば5分以上持続される。電気自動車の全固体バッテリは、急速充電器に接続される前に、自己の電力エネルギーを用いてプレヒーティングされることができる。プレヒーティング期間にバッテリに供給される交流電流値は急速充電期間の直流充電電流値よりも低い。これにより、バッテリの温度上昇率は、プレヒーティング期間において急速充電期間と比べて低く維持される。
【0060】
このプレヒーティングの利点が説明される。ハイレートの急速充電により全固体バッテリの温度は上昇する。しかし、プレヒーティングにより既に高温となっている全固体バッテリの温度上昇率は、プレヒーティングを実施しない場合に比べて低下する。全固体バッテリの温度と外気温度との間の温度差が既に拡大されているため、全固体バッテリの温度上昇率は緩慢となる。
【0061】
もう一つの理由は、急速充電中において全固体バッテリの温度が高いため、全固体バッテリの内部電気抵抗が低くなり、そのオーム損失が減るためである。もう一つの理由は、急速充電中において全固体バッテリの温度が高いため、電極と固体電解質との間の機械的接触性が改善されることである。その結果、全固体バッテリの内部電気抵抗が低減され、そのオーム損失はさらに低減される。その結果、急速充電時の熱応力は抑制され、界面剥離や界面近傍のクラックが防止される。
【0062】
この実施例によればさらに、交流電流がハイレートの急速充電の終了直後に全固体バッテリに供給される。全固体バッテリに交流電流を供給するこの動作は、ACトリートメントと呼ばれることができる。これにより、電極表面近傍のマイクロクラックを含む電極の機械的ダメージを回復することができる。このACトリートメントは、予熱動作よりも低周波数で実施されることが好適である。このACトリートメントによれば、充電及び放電の繰り返しにより負極は円滑な表面をもつことができる。急速充電直後において、全固体バッテリの内部温度は高いため、このACトリートメントの効果は増加する。この実施例によれば、プレヒーティング及びACトリートメントは、共通の降圧トランス5及び発振駆動回路8を用いて実施される。
【0063】
図6は、この実施例の急速充電動作を説明するためのフローチャートを示す。急速充電が指令された時、交流電流を全固体バッテリに供給することにより、プレヒーティングが実施される(S200)。このプレヒーティングにより、全固体バッテリの温度は所定の上昇率で上昇する。次に、全固体バッテリの温度が所定目標値に達したか否かが判定され(S202)、達したら、全固体バッテリの急速充電が開始される(S204)。次に、全固体バッテリのSOC値や端子電圧値などのパラメータに基づいて、この急速充電を終了すべきか否かが判定され(S206)、終了すべきであれば、交流電流が全固体バッテリに供給される(S208)。このACトリートメントにより、全固体バッテリの電極表面は円滑となり、電極と固体電解質との接触性が改善される。次に、たとえば全固体バッテリの内部抵抗に基づいてこのACトリートメントを終了すべきか否かが判定され(S210)、終了すべきであればルーチンは終了される。