(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002603
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】繊維製品処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/28 20060101AFI20231228BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20231228BHJP
D06M 13/256 20060101ALI20231228BHJP
D06M 15/09 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C11D1/28
C11D3/37
D06M13/256
D06M15/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101899
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】森川 悟史
(72)【発明者】
【氏名】喜多 亜矢子
【テーマコード(参考)】
4H003
4L033
【Fターム(参考)】
4H003AB17
4H003AB19
4H003AB22
4H003AB31
4H003AC08
4H003AC23
4H003BA12
4H003DA01
4H003DC02
4H003EB28
4H003EB42
4H003ED02
4H003FA21
4L033AB04
4L033AC09
4L033BA28
4L033CA05
(57)【要約】
【課題】繊維製品を処理する処理液の泡立ちを抑え、繊維製品に形成されるシワ抑制性能に優れる繊維製品処理剤組成物を提供する。
【解決手段】下記(a)成分及び(b)成分を含有する、繊維製品処理剤組成物。
(a)成分:炭素数5以上18以下の炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル又はその塩
(b)成分:下記(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のポリマー
(b1)成分:カチオン性ポリマー
(b2)成分:ノニオン性ポリマー
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)成分及び(b)成分を含有する、繊維製品処理剤組成物。
(a)成分:炭素数5以上18以下の炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル又はその塩
(b)成分:下記の(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のポリマー
(b1)成分:カチオン性ポリマー
(b2)成分:ノニオン性ポリマー
【請求項2】
繊維製品の乾燥時におけるシワの形成を抑制する繊維製品用シワ形成抑制剤である、請求項1に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項3】
繊維製品用洗浄剤組成物である、請求項1又は2に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
(b1)成分は、カチオン基を有する多糖ポリマーである、請求項1~3の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
更に、下記の(c)成分を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の繊維製品処理組成物。
(c)成分:アニオン界面活性剤
【請求項6】
(a)成分の含有量と(c)成分の含有量の質量比(a)/(c)が、1未満である、請求項5に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項7】
下記の(a)成分、(b)成分及び水を混合して得た処理液で繊維製品を処理し、その後、該繊維製品を乾燥する、繊維製品の処理方法。
(a)成分:炭素数5以上18以下の炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル又はその塩
(b)成分:下記の(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のポリマー
(b1)成分:カチオン性ポリマー
(b2)成分:ノニオン性ポリマー
【請求項8】
請求項1~6の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物及び水を混合した処理液で繊維製品を処理する、請求項7に記載の繊維製品の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品処理剤組成物及び繊維製品の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等のアニオン界面活性剤は、家庭用及び工業用の洗浄成分として用いられている。
【0003】
特許文献1には、所定の(A)陰イオン界面活性剤、(B)少なくとも1種の両性界面活性剤及び(C)少なくとも1種の非イオン界面活性剤を含む、洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献2には、(A)内部オレフィンスルホン酸塩、(B)所定の有機溶剤、(C)所定の水溶性多価アルコール及び水を、所定量含有し、(B)成分の含有量と(C)成分の含有量との質量比(B)/(C)が0.1以上10以下である、繊維製品用液体洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献3には、(a)カチオン基を有する多糖ポリマー、(b)炭素数3以上8以下の分岐鎖アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩、(c)アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を、所定量含有する、繊維製品用液体洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-151360号公報
【特許文献2】特開2021-088703号公報
【特許文献3】特開2020-105422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アニオン界面活性剤を主剤とする繊維製品処理剤組成物は優れた洗浄性能を示す一方で、繊維製品に対し、乾燥後の仕上がりにおいてシワを形成し易く、特に、衣料乾燥機で繊維製品を乾燥させた場合、シワの形成が顕著で、繊維製品乾燥後にスチーム処理やアイロン掛けによるシワ伸ばしが求められる。
また、アニオン界面活性剤は起泡性に優れるので、泡の制御も重要な要素である。例えば、繊維製品の処理方法によっては、処理中に形成された泡があふれ出さないよう、泡が過剰に形成されないように泡制御が必要な場合がある。また、処理中に形成される泡の量が低減されると、すすぎ時間やすすぎ水の量を少なくできるので、処理時間の短縮や環境負荷低減の観点から、繊維製品処理剤組成物の起泡性の抑制が求められる。
本発明は、繊維製品を処理する処理液の泡立ちを抑え、繊維製品を処理した後の乾燥工程で、繊維製品に形成されるシワ抑制性能に優れる繊維製品処理剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の(a)成分及び(b)成分を含有する、繊維製品処理剤組成物に関する。
(a)成分:炭素数5以上18以下の炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル又はその塩
(b)成分:下記の(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のポリマー
(b1)成分:カチオン性ポリマー
(b2)成分:ノニオン性ポリマー
【0007】
また、本発明は、前記(a)成分、(b)成分及び水を混合して得た処理液で繊維製品を処理し、その後、該繊維製品を乾燥する、繊維製品の処理方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維製品を処理する処理液の泡立ちを抑え、繊維製品を処理した後の乾燥工程で、繊維製品に形成されるシワ抑制性能に優れる繊維製品処理剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記の(a)成分と(b)成分を用いることで、繊維製品処理時の泡立ちを抑制し、更に、湿潤状態の繊維製品を乾燥する乾燥工程、特に、乾燥機による乾燥工程で、繊維製品に形成されるシワを低減する、繊維製品処理剤組成物及び繊維製品の処理方法が得られることを見出したものである。
本発明の繊維製品処理剤組成物により、処理時の泡立ちが抑制される作用機構や繊維製品の乾燥時のシワ形成が抑制される作用機構は明らかではないが、次のようなことが推認される。
まず、本発明の繊維製品処理剤組成物は、該処理剤組成物を含む水溶液中で、(a)成分が水和固体を形成することで、水溶液における泡立ちを抑制しているものと推認される。ここで(a)成分と(b)成分との併用系においては繊維表面における水和固体の形成が促進される結果、乾燥工程で繊維製品に形成されるシワを低減させていると推認される。
これにより、繊維製品を処理する処理液の泡立ちの抑制と、繊維製品の処理後の乾燥工程、特に、乾燥機での乾燥工程で繊維製品に形成されるシワの低減効果とを両立する、繊維製品処理剤組成物及び繊維製品の処理方法を提供しているものと考えられる。
なお、本発明の繊維製品洗浄剤組成物及び繊維製品の処理方法は、上記の作用機構に限定されるものではない。
【0010】
<繊維製品処理剤組成物>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、下記の(a)成分及び(b)成分を含有する。
(a)成分:炭素数5以上18以下の炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル又はその塩
(b)成分:下記の(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のポリマー
(b1)成分:カチオン性ポリマー
(b2)成分:ノニオン性ポリマー
【0011】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品を洗浄する繊維製品用洗浄剤組成物、繊維製品処理後の仕上がりを向上させる繊維製品用仕上げ剤組成物、繊維製品に柔軟性を付与する繊維製品用柔軟剤組成物、繊維製品を処理後に乾燥したときに該繊維製品におけるシワの形成を抑制する繊維製品用シワ形成抑制剤組成物から選択される1以上の組成物であってよい。
繊維製品を処理する処理液の起泡性の低減、繊維製品に形成されるシワ抑制及び洗浄性の観点から、本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品用洗浄剤組成物が好ましく、乾燥機で乾燥される繊維製品用洗浄剤組成物がより好ましい。
なお、本発明において、繊維製品に形成されるシワとは、繊維製品のヨレ、くたびれ、型崩れと同義である。
また、本発明において、消泡性とは、本発明の繊維製品処理剤組成物を含む処理液の泡立ちを抑制すること、該処理液で形成された泡が速やかに消えること、を含む。
【0012】
<(a)成分>
(a)成分は、炭素数5以上18以下の炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル又はその塩である。(a)成分は、スルホコハク酸モノエステルであっても、スルホコハク酸ジエステルであってもよく、スルホコハク酸ジエステル又はその塩が好ましい。本発明の繊維製品処理剤組成物は、(a)成分を、1種又は2種以上含有することができる。
(a)成分の炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、アルキル基が好ましい。(a)成分の炭化水素基の炭素数は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、それぞれ独立して、5以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、18以下、好ましくは15以下、より好ましくは12以下である。また、(a)成分の炭化水素基は、直鎖、分岐鎖の何れであってもよく、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、分岐鎖を有することが好ましい。
【0013】
(a)成分は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、炭素数5以上18以下の炭化水素基を2つ有するスルホコハク酸ジエステル又はその塩が好ましく、下記一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
【0014】
【化1】
〔式中、R
1、R
2は、それぞれ、炭素数5以上18以下の炭化水素基であり、A
1O、A
2Oは、それぞれ、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、x1、x2は、平均付加モル数であり、それぞれ、0以上10以下の数であり、Mは陽イオンである。〕
【0015】
一般式(a1)中、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭素数5以上18以下の炭化水素基である。炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が挙げられる。消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、アルキル基が好ましい。
【0016】
一般式(a1)中、R1及びR2の炭化水素基の炭素数は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、それぞれ、5以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、18以下、好ましくは15以下、より好ましくは12以下である。
【0017】
一般式(a1)中、R1及びR2の合計炭素数は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは12以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは20以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは24以下である。ここで、(a1)成分として、R1及びR2の合計炭素数の異なる2種以上の化合物を含有する場合、(a1)成分全体としてのR1及びR2の合計炭素数は、それぞれの化合物のR1及びR2の合計炭素数のモル平均を表す。
【0018】
一般式(a1)中、R1及びR2の炭化水素基は、それぞれ、直鎖、分岐鎖の何れでもよいが、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、分岐鎖を有することが好ましい。前記R1及びR2である分岐鎖の炭化水素基は、消泡性の観点から、炭素数2以上の側鎖を有することが好ましく、炭素数3以上の側鎖を有することがより好ましい。側鎖の炭素数は8以下、更に6以下であってよい。なお、R1及びR2の炭化水素基のうち、式中の酸素原子(O)と結合している炭素を1番目の炭素として最も長い炭素の並びを主鎖と呼び、主鎖の炭素数をX(R1及びR2の炭素数は5以上なので、Xの炭素数は3以上となる)とするときに、主鎖の1番目からX-1番目の何れかの炭素に結合している炭化水素基のことを、それぞれ、側鎖という。
一般式(a1)中、R1及びR2の炭化水素基は、飽和、不飽和の何れでもよい。
一般式(a1)中、R1及びR2の少なくとも1つが、分岐構造であることが好ましい。
一般式(a1)中、R1及びR2の炭化水素基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、飽和の分岐鎖炭化水素基が含まれることがより好ましい。
また、R1及びR2の炭化水素基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、ゲルベアルコール由来の基であってよい。
【0019】
一般式(a1)中のR1及びR2は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、それぞれ独立して、好ましくは炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基、より好ましくは炭素数8以上10以下の分岐鎖アルキル基、更に好ましくは炭素数10の分岐鎖アルキル基である。
【0020】
本発明においては、第2級アルコールから水酸基を除去した炭化水素残基を、分岐鎖アルキル基など鎖式分岐炭化水素基に含める。
R1及びR2が、それぞれ、炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基である場合、側鎖を構成する炭素数の合計は、同一あるいは異なっていてもよく、消泡性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは3である。
本発明において、側鎖を構成する炭素数の合計とは、一つの分岐鎖アルキル基において、主鎖以外の全側鎖の炭素数を合計したものであり、側鎖が複数ある場合は、それら全側鎖の炭素数の合計である。
【0021】
R1及びR2の側鎖の数は、同一あるいは異なっていてもよく、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。R1及びR2の側鎖の数は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、それぞれ、1であることが好ましい。
本発明において、側鎖の数とは、主鎖から分岐する側鎖の数であり、側鎖が、更に当該側鎖から分岐する側鎖を有していても側鎖の数としては変わらない。ただし、側鎖が更に当該側鎖から分岐する側鎖を有していてもよいが、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、側鎖は直鎖であることが好ましい。
【0022】
R1及びR2が、それぞれ独立して、炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基である場合、R1及びR2の分岐炭素の数は、同一あるいは異なっていてもよく、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。R1及びR2の分岐炭素の数は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、それぞれ、1であることが好ましい。本発明において、分岐炭素の数とは、分岐鎖アルキル基中の第3級炭素原子と第4級炭素原子の数の合計である。
【0023】
R1及びR2のより好ましい態様は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基であって、主鎖の炭素数が、それぞれ独立して、6以上8以下であり、側鎖を構成する炭素数が、それぞれ独立して、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは3であり、側鎖の数が、それぞれ独立して、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1である分岐鎖アルキル基である。
R1及びR2は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、それぞれ、分岐鎖オクチル基、分岐鎖デシル基及び分岐鎖ドデシル基から選ばれる分岐鎖アルキル基が好ましく、分岐鎖デシル基がより好ましい。分岐鎖オクチル基は、2-エチルヘキシル基などが挙げられる。分岐鎖デシル基は、2-プロピルヘプチル基、KHネオケム株式会社製デシルアルコール由来の基などが挙げられ、2-プロピルヘプチル基が好ましい。分岐鎖ドデシル基は、2-ブチルオクチル基などが挙げられる。
【0024】
一般式(a1)中、R1の炭化水素基とR2の炭化水素基は、同一でも異なっていてもよい。R1の炭化水素基とR2の炭化水素基が同一である場合は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点で好ましい。一般式(a1)中、R1の炭素数とR2の炭素数は、同一でも異なっていてもよい。R1の炭素数とR2の炭素数が同一である場合は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点で好ましい。
【0025】
一般式(a1)中、R1及びR2の炭化水素基は、下記式で定義される分岐度が、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下であり、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.04以上である。
分岐度=〔(R1及びR2の末端メチル基の総数)-2〕/(R1及びR2の有する総炭素数)
なお、分岐度は、1H-NMRを用いて測定することができる平均値である。
【0026】
一般式(a1)中、A1O、A2Oは、それぞれ、炭素数2以上4以下、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは炭素数2又は3のアルキレンオキシ基である。一般式(a1)中、x1、x2は、A1O、A2Oの平均付加モル数を表し、それぞれ、0以上10以下、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは2以下の数であり、0がより更に好ましい。
【0027】
一般式(a1)中、Mは陽イオンである。Mは水素イオン以外の陽イオンが好ましい。Mとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、モノメチルアンモニウムイオンなどの有機アンモニウムイオンなどが挙げられる。
Mは、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、アルカリ金属イオン、アルカノールアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。
【0028】
<(b)成分>
(b)成分は、(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のポリマーである。(b)成分は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(b1)成分から選ばれる1種以上のポリマーを含むことが好ましい。
【0029】
<(b1)成分>
(b1)成分は、カチオン性ポリマーである。本明細書において「カチオン性ポリマー」とは、カチオン性基を有し、かつ全体としてカチオン電荷のポリマーをいい、カチオン性基とはカチオン基、又は、イオン化されてカチオン基になり得る基をいう。具体的には、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基が挙げられる。
【0030】
(b1)成分のカチオン性ポリマーとしては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、例えば、ポリエチレンイミン;カチオン化グアガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム等の、カチオン化ポリガラクトマンナン;カチオン化セルロース;カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース等の、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース;カチオン性澱粉;カチオン化ポリビニルアルコール;
ビニルピロリドン/N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩共重合体、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体等の、第4級化ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸塩重合体;
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸/アクリルアミド共重合体等の、ジアリル第4級アンモニウム塩重合体;
ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体;ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート共重合体;ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体;ビニルピロリドン/(メタ)アクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体;アルキルアクリルアミド/(メタ)アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体;アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体;並びに、
特開昭53-139734号公報及び特開昭60-36407号公報に記載されているカチオン性ポリマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、ポリエチレンイミン、カチオン化ポリガラクトマンナン、セルロース系のカチオン性ポリマー(例えば、カチオン化セルロース、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース、アルキル化カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースなど)、第4級化ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸塩重合体及びジアリル第4級アンモニウム塩重合体からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエチレンイミン、カチオン化グアガム、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース、アルキル化カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース及び第4級化ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸塩重合体からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキル化カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースからなる群から選ばれる1種以上が更に好ましく、アルキル化カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースからなる群から選ばれる1種以上がより更に好ましい。
【0031】
消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(b1)成分は、カチオン基を有する多糖ポリマーであってよい。(b1)成分は、(b1)成分の前駆化合物である多糖又はその誘導体の水酸基から水素原子を除いた基に、直接又は連結基を介してカチオン基が結合した多糖ポリマーであってよい。なお、前記の「多糖又はその誘導体の水酸基から水素原子を除いた基に、直接又は連結基を介してカチオン基が結合している」には、多糖又はその誘導体の水酸基から水素原子を除いた基、即ち酸素原子に、カチオン基のカチオン原子、例えば窒素カチオンが直接共有結合する結合様式は含まない。
【0032】
多糖としては、例えばセルロース、グアーガム又はスターチから選ばれる1種以上の多糖が挙げられる。
【0033】
(b1)成分が、カチオン基を有する多糖ポリマーの場合、これを得るための前駆化合物として多糖ポリマーを用いることができる。すなわち、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(b1)成分は、多糖ポリマーの誘導体であってよい。
(b1)成分の前駆化合物である多糖ポリマーとしては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、前記多糖の水酸基の水素原子の一部又は全部が炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基で置換された多糖ポリマー(以下、ヒドロキシアルキル置換体ともいう)が挙げられる。炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基が好ましい。炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基及びヒドロキシブチル基から選ばれる1種以上の基が挙げられ、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる1種以上の基が好ましい。(b1)成分は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、セルロース、グアガム及びスターチから選ばれる1種以上の多糖又はそれらのヒドロキシアルキル置換体から選ばれる多糖又は多糖ポリマーにカチオン基が導入された化合物であってよい。
【0034】
(b1)成分である、カチオン基を有する多糖ポリマーのカチオン基の置換度は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0035】
カチオン基を有する多糖ポリマーは、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(b1)成分の前駆化合物である多糖又はその誘導体、好ましくは前記ヒドロキシアルキル置換体が有する水酸基から水素原子を除いた基に、連結基である、水酸基を含んでいてもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基〔以下、連結基(1)という〕を介して、カチオン基が結合している多糖ポリマーが挙げられる。
カチオン基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(a)成分との相互作用により本発明の課題を解決しやすい点で、窒素カチオンを含む基であり、本発明の課題を解決できる観点で第4級アンモニウム基であることがより好ましい。
【0036】
連結基(1)は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、水酸基を含んでいてもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基である。炭素数1以上4以下のアルキレン基としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、水酸基を含んでいても良い直鎖の炭素数1以上4以下のアルキレン基及び水酸基を含んでいても良い分岐鎖の炭素数3以上4以下のアルキレン基から選ばれる1種以上のアルキレン基が挙げられる。
【0037】
カチオン基が第4級アンモニウム基である場合、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、該第4級アンモニウム基に結合した連結基(1)以外の3つの炭化水素基は、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が挙げられる。炭素数1以上4以下の直鎖の炭化水素基としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びn-ブチル基が挙げられる。炭素数3以上4以下の分岐鎖の炭化水素基としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基が挙げられる。炭素数1以上4以下の直鎖の炭化水素基としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、メチル基又はエチル基が好ましい。
第4級アンモニウム基の対イオンは、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下の脂肪酸イオン及びハロゲン化物イオンから選ばれる1種以上の対イオンが挙げられる。これらの中でも、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン及びハロゲン化物イオンから選択される1種以上、より好ましくはハロゲン化物イオンである。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられる。消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは塩化物イオン及び臭化物イオンから選択される1種以上、より好ましくは塩化物イオンである。なお、対イオンは1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0038】
消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(b1)成分中のカチオン基の含有量を選定することが好ましい。(b1)成分である、カチオン基を有する多糖ポリマー中のカチオン基の含有量は、カチオン基を窒素原子に置き換えた値で算出する。即ち(b1)成分中のカチオン基の含有量は(b1)成分中の窒素原子の含有割合で求めることが出来る。(b1)成分中の窒素原子の含有量は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.6質量%以下、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。
(b1)成分中の窒素原子の含有量は、具体的には、下記<(b1)成分の窒素含有量、アルキル置換度の測定方法>で詳細に説明する方法で求めることができる。
【0039】
(b1)成分であるカチオン基を有する多糖ポリマーは、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、任意に、直接又は連結基〔以下、連結基(2)という〕を介して、炭素数1以上18以下の炭化水素基が更に結合した、カチオン基を有する多糖ポリマーであっても良い。
【0040】
前記の連結基(2)としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、ヒドロキシ基を有していても良い炭素数1以上3以下のアルキレンオキシ基、アルキレン基が炭素数1以上3以下のアルキレン基であるポリオキシアルキレン基、カルボニル基、カルボニルオキシ基及びオキシカルボニル基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。一つの連結基(2)は、前記の連結基の1種類であっても良く、複数種類組み合わされていても良い。また、多糖ポリマー中に含まれる連結基は1種類でも良く、複数種類でも良い。
本発明において、連結基(2)が有する酸素原子に前記炭化水素基が連結されている場合は、(b1)成分が有する炭化水素基の炭素数は、酸素原子に結合した前記炭化水素基の炭素数を表す。前記炭化水素基がカルボニル基を介して連結している場合には、アシル基が結合した構造となり、この場合は、(b1)成分が有する炭化水素基の炭素数は、アシル基の炭素数を表す。カルボニルオキシ基及びオキシカルボニル基を介して連結している場合も、同様に、それらの炭素数を含む。多糖又は多糖ポリマーに炭化水素基を導入する場合に、1,2-エポキシアルカンを使用した場合には、エポキシ基から生じたエーテル基に結合する脂肪族炭化水素基の炭素数を表す。エポキシ基部分は連結基(2)となる。例えば1,2-エポキシテトラデカンを用いて、多糖又は多糖ポリマーに炭化水素基を導入した場合の炭化水素基の炭素数は12とする。すなわち、多糖又は多糖ポリマーの水酸基に連結基(1)であるオキシエチレン基が結合し、該連結基を介して炭素数12のアルキル基(ドデシル基)が結合する。アルキルグリシジルエーテルを用いる場合も同様である。
【0041】
(b1)成分の中で、カチオン基及び炭素数1以上18以下の炭化水素基を有する多糖ポリマーは、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、更にカチオン基を有する多糖ポリマーの一部又は全ての水酸基から水素原子を除いた酸素原子に、直接又は連結基(2)を介して、好ましくは連結基(2)を介して、炭素数1以上18以下の炭化水素基が結合した多糖ポリマーが挙げられる。
【0042】
炭素数1以上18以下の炭化水素基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点で、炭素数1以上18以下の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上、より更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。炭化水素基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点で、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0043】
(b1)成分である、カチオン基及び炭素数1以上18以下の炭化水素基を有する多糖ポリマーの、炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.005以上、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下、より更に好ましくは0.06以下である。
(b1)成分中の炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度は、具体的には、下記<(b1)成分の窒素含有量、アルキル置換度の測定方法>で詳細に説明する方法で求めることができる。
【0044】
本発明の(b1)成分の前駆化合物である多糖又はその誘導体の重量平均分子量は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは5万以上、より更に好ましくは7万以上、より更に好ましくは10万以上、より更に好ましくは30万以上、より更に好ましくは50万以上、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下、更に好ましくは100万以下である。この前駆化合物の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出することができる。
【0045】
(b1)成分の重量平均分子量は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは5万以上、より更に好ましくは7万以上、より更に好ましくは10万以上、より更に好ましくは30万以上、より更に好ましくは50万以上、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下、更に好ましくは100万以下である。この重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出することができる。
【0046】
(b1)成分の前駆化合物及び(b1)成分の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出する。測定条件は、以下の通りである。
・カラム:TSKgel α-M
・溶離液:50mmol/L LiBr、1%CH3COOH、エタノール/水=3/7
・温度:40℃
・流速:0.6mL/min
【0047】
<(b1)成分の窒素含有量、アルキル置換度の測定方法>
(b1)成分である多糖誘導体の窒素含有量及びアルキル基の置換度は、以下の方法で測定する。
・多糖誘導体の前処理
多糖誘導体1gを100gの水に溶かした後、水溶液を透析膜(スペクトラポア、分画分子量1000)に入れ、2日間透析を行い、得られた水溶液を、凍結乾燥機(eyela,FDU1100)を用いて凍結乾燥することで、前処理済の多糖誘導体を得る。
【0048】
・ケルダール法によるカチオン基質量の算出
前記の方法で前処理した多糖誘導体の200mgを精秤し、濃硫酸10mLとケルダール錠(Merck)1錠を加え、ケルダール分解装置(BUCHI社製、K-432)にて加熱分解を行う。分解終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留装置(BUCHI社製、K-370)を用いてサンプルの窒素含量(質量%)を求めることで、カチオン基の質量を算出する。
【0049】
・Zeisel法による炭化水素基(アルキル基)質量の算出
前記の方法で前処理した多糖誘導体200mg、アジピン酸220mgを10mLバイアル(マイティーバイアルNo.3)に精秤し、内標溶液(テトラデカン/o-キシレン=1/25(v/v))3mL及びヨウ化水素酸3mLを加えて密栓する。また、多糖誘導体の代わりに1-ヨードドデカンを2.4mg又は9mg加えた検量線用の試料を調製する。各試料をスターラーチップにより攪拌しながら、ブロックヒーター(PIERCE社製、Reacti-Therm III Heating/Stirring module)を用いて160℃、2時間の条件で加熱する。試料を放冷した後、上層(o-キシレン層)を回収し、下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)(島津製作所社、QD2010plus)にて分析する。
・GC分析条件
カラム:Agilent HP-1(長さ:30m、液相膜厚:0.25μL、内径:32mm)
スプリット比:20
カラム温度:100℃(2min)→10℃/min→300℃(15min)
インジェクター温度:300℃
検出器:HID
検出器温度:330℃
打ち込み量:2μL
GCにより得られた1-ヨードドデカンの検出量から、サンプル中のアルキル基の質量を求める。
【0050】
(b1)成分として用いることができる市販のカチオン性ポリマーとしては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、例えば下記が挙げられる。
(カチオン化グアガム)
JAGUAR Excel、JAGUAR C-17、JAGUAR C-14-S(以上、Solvay(Novecare)社)など
(カチオン化タラガム)
カチナール CTR-100(東邦化学工業(株))など
(カチオン化ローカストビーンガム)
カチナール CLB-100(東邦化学工業(株))など
(カチオン化ヒドロキシエチルセルロース)
ポリクオタニウム-10(塩化o-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース):UCARE POLYMER JR-30M、UCARE POLYMER JR-400(以上、ダウ・ケミカル社)、ポイズC-60H、ポイズC-150L(以上、花王(株))など、
ポリクオタニウム-67:SoftCAT(ダウ・ケミカル社)など
(カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース)
ソフケア C-HP2W(花王(株))など
(カチオン化ポリビニルアルコール)
ゴーセネックスK-434(日本合成化学工業(株))、CM318((株)クラレ)など
(ビニルピロリドン/N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩共重合体)
ポリクオタニウム-11:ガフカット734、ガフカット755N(以上、アイエスピー・ジャパン社)など
(N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体)
ポリクオタニウム-52:ソフケア KG-101E、ソフケア KG-101W-E(以上、花王(株))など
(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)
ポリクオタニウム-6:MERQUAT100(Lubrizol社)など
(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体)
ポリクオタニウム-22:MERQUAT280、MERQUAT295(以上、Lubrizol社)など
(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体)
ポリクオタニウム-7:MERQUAT550(Lubrizol社)など
(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸/アクリルアミド重合体)
ポリクオタニウム-39:MERQUAT3331PR(Lubrizol社)など
【0051】
<(b2)成分>
(b2)成分は、ノニオン性ポリマーである。本発明の繊維製品処理剤組成物は、(b2)成分を、1種又は2種以上含有することができる。
【0052】
(b2)成分のノニオン性ポリマーとしては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、ノニオン性モノマー由来の構成単位を有するポリマー、水溶性多糖類(セルロース系、ガム系、スターチ系等)及びその誘導体などが挙げられる。
ノニオン性ポリマーにおけるノニオン性モノマーとしては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、脂肪族炭化水素基を有するジオール又はジイソシアネート、アミンなどが挙げられる。
【0053】
(b2)成分は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、具体的には、ポリウレタンポリウレア、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキル化ヒドロキシアルキルセルロースなどセルロース系ポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、グアガム、ポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)などが挙げられる。
(b2)成分は、乾燥時のシワ形成抑制の観点の観点から、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキル化ヒドロキシアルキルセルロースからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、アルキル化ヒドロキシアルキルセルロースからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、アルキル化ヒドロキシエチルセルロースからなる群から選ばれる1種がより好ましい。
【0054】
消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(b2)成分は、多糖又はその誘導体であるノニオン性の多糖ポリマーであってよい。多糖としては、例えばセルロース、グアーガム又はスターチから選ばれる1種以上の多糖が挙げられる。
(b2)成分であるノニオン性の多糖ポリマーとしては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、前記多糖の水酸基の水素原子の一部又は全部が炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基で置換された多糖ポリマー(以下、ヒドロキシアルキル置換体ともいう)が挙げられる。炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基が好ましい。炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基及びヒドロキシブチル基から選ばれる1種以上の基が挙げられ、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる1種以上の基が好ましい。
【0055】
(b2)成分であるノニオン性の多糖ポリマーは、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、任意に、直接又は前記の連結基(2)を介して、前記多糖又は多糖のヒドロキシアルキル置換体に、炭素数1以上18以下の炭化水素基が更に結合した、多糖ポリマーであっても良い。
【0056】
炭素数1以上18以下の炭化水素基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点で、炭素数1以上18以下の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上、より更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。炭化水素基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点で、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0057】
(b2)成分である、炭素数1以上18以下の炭化水素基を有する多糖ポリマーの、炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.005以上であり、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下、より更に好ましくは0.06以下である。
(b2)成分中の炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度は、具体的には、前記(b1)成分で説明した方法と同様の方法で求めることができる。
【0058】
商業的に入手しうるノニオン性ポリマーとしては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、BAYCUSANシリーズ(コベストロジャパン社製、商品名)などのポリウレタンポリウレア;HECダイセルSE900、同SE850、同SE600、同SE550、同SE400(以上、ダイセルファインケム株式会社製、商品名)などのヒドロキシエチルセルロース;Polyox WSRN-12K、同WSRN-60K、同WSR-301(以上、ダウ・ケミカル株式会社製、商品名)などの高重合ポリエチレングリコール;PEO-27、PEO-18、PEO-15、PEO-8(以上、住友精化株式会社、商品名、ポリエチレンオキサイド)などが挙げられる。
【0059】
(b2)成分の重量平均分子量は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは10万以上、より更に好ましくは15万以上であり、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは100万以下である。この重量平均分子量は、(b1)成分の重量平均分子量と同様に、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出することができる。
【0060】
(b2)成分は、ビニル基を持つ単量体由来の構成単位を有するビニル系ノニオン性ポリマーであってよい。
ビニル系ノニオン性ポリマーの構成単量体であるノニオン性モノマーとしては、炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する、(メタ)アクリレート;N-ビニル-2-ピロリドン;ビニルアルコール;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの芳香族基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル及びその誘導体などである。
ビニル系ノニオン性ポリマーとしては、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体等のビニルピロリドンと他のノニオン性モノマーとの共重合体、ポリN、N-ジメチルアクリルアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリN-ビニルホルムアミドなどが挙げられる。
【0061】
<組成及びその他成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(a)成分を、消泡性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下含有する。本発明の(a)成分の質量に関する規定において、(a)成分の質量は、ナトリウム塩として換算した質量を用いる。
【0062】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(b)成分を、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下含有する。(b)成分が(b1)成分を含む場合、(b1)成分の質量は、塩化物に換算した質量を用いる。
【0063】
本発明の繊維製品処理剤組成物において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比(a)/(b)は、消泡性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは4以上、そして、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは15以下である。
【0064】
<(c)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、任意に(c)アニオン界面活性剤(ただし、(a)成分を除く)を含有することができる。
(c)成分のアニオン界面活性剤としては、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、例えば、内部オレフィンスルホン酸又はその塩、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩(LAS)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩(AES、APES)、アルキルカルボン酸又はその塩、アルキルスルホン酸又はその塩、α-オレフィンスルホン酸又はその塩、アルキル硫酸エステル又はその塩(AS)、アルキルリン酸エステル又はその塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル又はその塩(MES)などが挙げられる。なお、前記アニオン界面活性剤の酸型とその塩は組成物中に共存してもよく、組成物に酸型で添加してアルカリ剤にて中和してもよい。以下“又は”は同様に扱うものとする。
【0065】
前記(c)成分の塩としては、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0066】
(c)成分としては、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(c1)内部オレフィンスルホン酸及びその塩〔以下、(c1)成分という〕、下記一般式(c2)で示される化合物〔以下、(c2)成分という〕、一般式(c3)で示される化合物〔以下、(c3)成分という〕並びに一般式(c4)で示される化合物〔以下、(c4)成分という〕から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
【0067】
<(c1)成分>
(c1)成分の内部オレフィンスルホン酸塩は、原料として、炭素数17以上24以下の内部オレフィン(二重結合をオレフィン鎖の内部に有するオレフィン)をスルホン化、中和及び加水分解することにより得られるスルホン酸塩である。かかる内部オレフィンには、二重結合の位置が炭素鎖の1位に存在する、いわゆるアルファオレフィン(以下、α-オレフィンともいう。)を微量に含有するものも含まれる。また、内部オレフィンをスルホン化すると、定量的にβ-サルトンが生成し、β-サルトンの一部は、γ-サルトン、オレフィンスルホン酸へと変化し、更にこれらは中和・加水分解工程においてヒドロキシアルカンスルホン酸塩と、オレフィンスルホン酸塩へと転換する(例えば、J. Am. Oil Chem. Soc. 69, 39(1992))。ここで、得られるヒドロキシアルカンスルホン酸塩のヒドロキシ基は、アルカン鎖の内部にあり、オレフィンスルホン酸塩の二重結合はオレフィン鎖の内部にある。また、得られる生成物は、主にこれらの混合物であり、またその一部には、炭素鎖の末端にヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカンスルホン酸塩、又は炭素鎖の末端に二重結合を有するオレフィンスルホン酸塩が微量に含まれる場合もある。
本明細書では、これらの各生成物及びそれらの混合物を総称して内部オレフィンスルホン酸塩((c1)成分)という。また、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩を内部オレフィンスルホン酸塩のヒドロキシ体(以下、HAS体ともいう。)、オレフィンスルホン酸塩を内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体(以下、IOS体ともいう。)という。
なお、(c1)成分中の化合物のHAS体とIOS体の質量比は、高速液体クロマトグラフィー質量分析計(以下、HPLC-MSと省略)により測定できる。具体的には、(c1)成分のHPLC-MSピーク面積から質量比を求めることができる。
【0068】
内部オレフィンスルホン酸塩の塩は、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0069】
(c1)成分の内部オレフィンスルホン酸塩のスルホン酸基は、上記の製法から明らかなように、内部オレフィンスルホン酸塩の炭素鎖、すなわちオレフィン鎖又はアルカン鎖の内部に存在し、その一部に炭素鎖の末端にスルホン酸基が存在するものも微量に含まれる場合もある。
【0070】
(c1)成分中における、スルホン酸基が5位以上、好ましくは5位以上9位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。
【0071】
(c1)成分中における、スルホン酸基が2位以上4位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩[以下(IO-1S)という場合がある]の含有量と、スルホン酸基が5位以上、好ましくは5位以上9位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩[以下(IO-2S)という場合がある]の含有量との質量比である、(IO-1S)/(IO-2S)は、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは1.5以上、より更に好ましくは2以上、より更に好ましくは2.5以上、より更に好ましくは3以上、より更に好ましくは4以上、より更に好ましくは4.5以上であり、そして、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
なお、(c1)成分中における、スルホン酸基の位置の異なる各化合物の含有量は、HPLC-MSにより測定できる。本明細書におけるスルホン酸基の位置の異なる各化合物の含有量は、(c1)成分の全HAS体における、スルホン酸基が各位置にある化合物のHPLC-MSピーク面積に基づく質量比として求めるものとする。
【0072】
(c1)成分中における、スルホン酸基が1位に存在するオレフィンスルホン酸塩の含有量は、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(c1)成分中に、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、そして、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.01質量%以上である。
これらの化合物のスルホン酸基の位置は、オレフィン鎖又はアルカン鎖における位置である。
【0073】
前記の内部オレフィンスルホン酸塩は、ヒドロキシ体とオレフィン体の混合物であることができる。(c1)成分中の内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体の含有量と内部オレフィンスルホン酸塩のヒドロキシ体の含有量との質量比(オレフィン体/ヒドロキシ体)は、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、0/100以上、更に5/95以上、そして、50/50以下、更に40/60以下、更に30/70以下、更に25/75以下であることができる。
【0074】
(c1)成分中における内部オレフィンスルホン酸塩のヒドロキシ体の含有量と内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体の含有量との質量比は、(c1)成分から、HPLC-MSにより測定することができる。
【0075】
(c1)成分は、例えば、原料として炭素数18の内部オレフィンを、スルホン化、中和及び加水分解することにより製造することができる。スルホン化反応は、内部オレフィン1モルに対し三酸化硫黄ガスを1.0~1.2モル反応させることにより行うことができる。反応温度は、20~40℃で行うことができる。
中和は、スルホン酸基の理論値に対し1.0~1.5モル倍量の水酸化カリウム、アンモニア、2-アミノエタノール等のアルカリ水溶液を反応させることにより行われる。加水分解反応は、水の存在下、90~200℃で30分~3時間反応を行えばよい。これらの反応は、連続して行うことができる。また反応終了後は、抽出、洗浄等により精製することができる。
【0076】
本発明において内部オレフィンとは、上記の如く、二重結合をオレフィン鎖の内部に有するオレフィンをいう。
【0077】
<(c2)成分>
(c2)成分は、下記一般式(c2)で表される化合物である。
R1c-B-SO3M (c2)
〔式(c2)中、R1cは炭素数9以上21以下のアルキル基を示し、Bはベンゼン環を示し、Bの炭素原子と結合するR1cの炭素原子が第2級炭素原子であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。Bに結合するR1cに対して、スルホン酸基はオルト位、メタ位又はパラ位に結合している。〕
【0078】
乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(c2)中、R1cは、炭素数9以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下のアルキル基である。
一般式(c2)中、Mは、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは水素原子、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アンモニウムである。有機アンモニウム塩は、pH調整剤で用いるアミンによる塩であってよい。Mは、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、より好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムなどのアルカノールアンモニウムであり、更に好ましくはナトリウムである。
【0079】
<(c3)成分>
(c3)成分は、下記一般式(c3)で表される化合物である。
R2c-O-[(PO)m(EO)n]-SO3M (c3)
〔式(c3)中、R2cは炭素数8以上22以下のアルキル基を示し、酸素原子と結合する炭素原子が第1炭素原子であり、POはプロピレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、EOとPOはブロック型結合又はランダム型結合であり、POとEOの結合順序は問わず、m及びnは平均付加モル数であって、mは0以上5以下、かつnは0以上16以下であり、そしてMは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。〕
【0080】
乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(c3)中、R2cは、好ましくは炭素数9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下のアルキル基である。R2cは直鎖アルキル基が好ましい。
乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(c3)中、mは、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、そして、0以上である。mは、0であってもよい。
乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(c3)中、nは、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下である。
乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(c3)中、Mは、好ましくは水素原子、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アンモニウムである。有機アンモニウム塩は、pH調整剤で用いるアミンによる塩であってよい。Mは、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、より好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムなどのアルカノールアンモニウムであり、更に好ましくはナトリウムである。
【0081】
乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(c3)成分としては、アルキル基の炭素数が12以上14以下であってプロピレンオキシ基の平均付加モル数が0以上4以下、エチレンオキシ基の平均付加モル数が1以上4以下であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩が好ましい。すなわち、(c3)成分は、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(c3)中、R2cが炭素数12以上14以下のアルキル基、mが0以上4以下、nが1以上4以下、Mがナトリウムである化合物が好ましい。
【0082】
<(c4)成分>
(c4)成分は、下記一般式(c4)で表される化合物である。
R3c-CH(SO3M)COOR4c (c4)
〔式(c4)中、R3cは炭素数6以上20以下のアルキル基を示し、R4cは炭素数1以上6以下のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。〕
【0083】
乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(c4)中、R3cは、好ましくは炭素数8以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のアルキル基を示す。
乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(c4)中、R4cは、炭素数1以上が好ましく、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下のアルキル基を示す。
乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(c4)中、Mは、好ましくは水素原子、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アンモニウム塩である。有機アンモニウム塩は、pH調整剤で用いるアミンによる塩であってよい。Mは、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、より好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムなどのアルカノールアンモニウムであり、更に好ましくはナトリウムである。
【0084】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(c)成分を、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、消泡性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下含有する。
【0085】
本発明の繊維製品処理剤組成物において、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量の質量比(a)/(c)は、消泡性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、そして、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは1未満である。
【0086】
<(x)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、任意に、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(a)成分及び(c)成分以外の界面活性剤〔以下、(x)成分という〕を含有することができる。
(x)成分としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
【0087】
(x)成分のノニオン界面活性剤としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型ノニオン界面活性剤と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型ノニオン界面活性剤及び脂肪酸アルカノールアミドが挙げられる。
【0088】
(x)成分のノニオン界面活性剤としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、下記一般式(x1)で表されるノニオン界面活性剤を挙げることができる。
R1x(CO)mO-(AO)n-R2x (x1)
〔式中、R1xは炭素数9以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R2xは水素原子又はメチル基であり、COはカルボニル基であり、mは0又は1の数であり、AO基はエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基であり、nは平均付加モル数であって、1以上70以下の数である。〕
【0089】
一般式(x1)中、R1xは炭素数9以上18以下の脂肪族炭化水素基である。消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、R1xの炭素数は、9以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
R1xの脂肪族炭化水素基としては、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基が好ましい。
消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(x1)中、mは0が好ましい。
消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、一般式(x1)中、R2xは水素原子が好ましい。
【0090】
一般式(x1)中、AO基は、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基である。エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を含む場合は、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基は、ブロック型結合でもランダム型結合でもよい。AO基は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、エチレンオキシ基を含む基であることが好ましい。また、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の結合順序は問わない。
【0091】
一般式(x1)中、nは平均付加モル数であって、1以上70以下の数である。nは、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、1以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、70以下、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは25以下である。
【0092】
消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(x)成分のノニオン界面活性剤としてより好ましい化合物は、エチレンオキシ基(以下EO基という場合がある)の平均重合度(平均付加モル数という場合もある)が1以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして70以下、好ましくは50以下、更に好ましくは25以下であり、プロピレンオキシ基(以下PO基という場合もある)の平均重合度(あるいは平均付加モル数という場合もある)が0以上5以下、好ましくは4以下であって、EO基とPO基とはブロック型結合又はランダム型結合であり、好ましくはブロック型結合であり、より好ましくはアルキルエーテル(例えば一般式(x1)中のR1x-O)に対してEOPOEOの順序であるかPOEOの順のブロック型結合であり、そしてアルキル基が炭素数12以上18以下、より好ましくは12又は14、更に好ましくは12の直鎖1級又は2級アルコール由来である、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)アルキルエーテルである。
【0093】
(x)成分のカチオン界面活性剤としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、第3級アミン塩であるカチオン界面活性剤及び第4級アンモニウム塩であるカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0094】
(x)成分の両性界面活性剤としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、ベタイン系両性界面活性剤及びアミンオキサイド型両性界面活性剤が挙げられる。
【0095】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(x)成分を含有する場合、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、該組成物は、(x)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは15質量%以下含有する。
【0096】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、界面活性剤の全量に対する、(a)成分及び(c)成分の合計量の割合が、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下である。界面活性剤の全量は、組成物中の(a)成分、(c)成分及び(x)成分の合計の含有量であってよい。本発明の繊維製品処理剤組成物は、界面活性剤を含有する組成物であって、界面活性剤として(a)成分及び(c)成分を前記所定の割合で含有し、界面活性剤の含有量に対する、(a)成分及び(c)成分の合計含有量の割合が前記範囲にあるものであってよい。
【0097】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、(a)成分、(b)成分以外の任意成分として、例えば、pH調整剤、香料、ダイクロサン等の抗菌剤、漂白剤、漂白活性化剤、消泡剤、香料カプセル、酵素、シリコーンなどを含有することができる。
【0098】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、水を含有することが好ましい。本発明の繊維製品処理剤組成物は、水を含有する液体組成物であってよい。水は、不純物を含まず適度に精製されている水が好ましく使用される。井戸水、工業用水の使用も可能である。水は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、例えば、水道水、精製水、イオン交換水が好ましい。本発明の繊維製品処理剤組成物は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、水を好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下含有する。水の含有量は、(a)成分、(b)成分及び任意成分の合計含有量の残部であってよい。
【0099】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、下記の方法で測定された25℃におけるpHが、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。
〔pHの測定方法〕
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター F-23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入する。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)を使用する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となるサンプル(本発明の繊維製品処理剤組成物)を25℃に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0100】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、各種繊維、例えば、天然繊維、合成繊維、半合成繊維を対象とすることができる。本発明の繊維製品処理剤組成物は、これらの繊維を含む繊維製品を対象とすることができる。
天然繊維としては、木綿、麻等が挙げられ、合繊繊維としては、ポリエステル系繊維等が挙げられる。
本発明において繊維製品とは、これら各種繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られた繊維製品、例えば、アンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、帽子、ハンカチ、タオル、マスク等の製品を意味する。好ましい繊維製品は織物、編み物等の織布及び織った繊維製品である。
【0101】
<繊維製品の処理方法>
本発明の繊維製品の処理方法は、(a)成分、(b)成分及び水を混合して得た処理液で繊維製品を処理し、その後、該繊維製品を乾燥する繊維製品の処理方法である。
前記処理液は、使用時の処理液のpH、更には25℃における処理液のpHが、本発明の繊維製品処理剤組成物で述べたpHの範囲と同じ範囲であってよい。また、前記処理液は、任意に、前記の(c)成分や(x)成分などを含有することもできる。そして、繊維製品の処理(洗浄)及び繊維製品の乾燥は、公知の方法に準じて行うことができる。
本発明の繊維製品の処理方法は、本発明の繊維製品処理剤組成物と水とを混合した処理液で繊維製品を処理し、その後、該繊維製品を乾燥する繊維製品の処理方法であってよい。
また、本発明の繊維製品の処理方法は、本発明の繊維製品処理剤組成物と水とを混合した洗浄液で繊維製品を洗浄し、その後、該繊維製品を乾燥する繊維製品の洗浄方法であってよい。
本発明の繊維製品の処理方法における繊維製品の乾燥は、自然乾燥又は乾燥機で繊維製品を乾燥することが挙げられる。乾燥時のシワ形成抑制の観点から、繊維製品を乾燥機で乾燥することが好ましい。乾燥機で乾燥することは、洗濯機の乾燥機能で繊維製品を乾燥することも含む。
本発明の繊維製品の処理方法では、前記処理液又は洗浄液で繊維製品を処理した後、繊維製品を水ですすぐこと及び/又は繊維製品を脱水することを行い、その後、繊維製品を乾燥してもよい。これら繊維製品のすすぎや脱水は公知の方法に準じて行うことができる。
本発明の繊維製品処理剤組成物で述べた事項は、本発明の繊維製品の処理方法に適宜適用することができる。本発明の繊維製品の処理方法における(a)成分、(b)成分の具体例や好ましい態様、任意成分、好ましい含有量の質量比なども、本発明の繊維製品処理剤組成物と同じである。
【0102】
前記処理液(洗浄液を含む、以下同じ)中の(a)成分の濃度は、消泡性の観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、そして、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0103】
前記処理液は、(a)成分の含有量がこの範囲となるように本発明の繊維製品処理剤組成物を水で希釈して調製することが好ましい。具体的な希釈倍率としては、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは500倍以上、より好ましくは800倍以上、そして、好ましくは5,000倍以下、より好ましくは、3,000倍以下であってよい。
【0104】
前記処理液中の(b)成分の濃度は、消泡性と乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
【0105】
前記処理液中の(c)成分の濃度は、乾燥時のシワ形成抑制の観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0106】
本発明の繊維製品の処理方法は、例えば、家庭用の洗濯機や業務用の洗濯機を用いて実施することができる。その際の条件は、通常行われる温度、時間、浴比などを採用することができる。本発明の繊維製品の処理方法では、繊維製品の処理するときの処理液の起泡性を低減することができる。また、繊維製品を乾燥するとき、特に、乾燥機で繊維製品を乾燥させるときに、繊維製品に形成されるシワを低減することができる。
【実施例0107】
(1)配合成分
実施例、比較例で用いた成分を以下に示す。
<(a)成分>
(a-1)ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
(a-2)ジ-2-プロピルヘプチルスルホコハク酸ナトリウム
<(b)成分>
(b1-1)AC-HEC:アルキル化カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、アルキル導入量0.02、カチオン基導入量0.10、分子量15万
(b1-2)C-HEC:カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、ポイズC-60H(花王(株)製)、分子量60万、カチオン基導入量0.40
(b1-3)C-HEC:カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、ポイズC-150L(花王(株)製)、分子量150万、カチオン基導入量0.25
(b1-4)ビニル系カチオンポリマー:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール/ポリオキシエチレンラウリルエーテル(16)、ソフケアKG-101W-E(花王(株)製)、カチオン基導入量0.10
(b2)A-HEC:アルキル化ヒドロキシエチルセルロース、分子量15万、アルキル導入量0.02
<(b’)成分>
(b’)アニオン性ポリマー(分散剤):ポリアクリル酸共重合物、アクアリック((株)日本触媒製)
<(c)成分>
(c1)C18IOS:炭素数18の内部オレフィンスルホン酸カリウム塩。当該C18IOS中のオレフィン体(オレフィンスルホン酸カリウム)/ヒドロキシ体(ヒドロキシアルカンスルホン酸カリウム)の質量比は16/84である。当該C18IOS中のHAS体のスルホン酸基の位置分布の質量比は以下の通りである。1位/2位/3位/4位/5位/6~9位=1.5/22.1/17.2/21.8/13.5/23.9である。また、(IO-1S)/(IO-2S)=1.6(質量比)である。
(c2)LAS:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(アルキル組成:C10/C11/C12/C13=11/29/34/26(質量比)、化合物全体の質量平均炭素数=17.75)
(c3-1)AES:ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(エマール20C、花王株式会社製)
(c3-2)APES:アルキル基がラウリルアルコール由来であって、プロピレンオキシ基の平均付加モル数が2モル、エチレンオキシ基の平均付加モル数が2モルである(ポリオキシプロピレン)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム塩
<ノニオン界面活性剤(基準)>
C12/14(EO)10:ポリオキシエチレン混合アルキルエーテル(混合アルキル基が炭素数12のアルキル基/炭素数14のアルキル基(7/3、質量比)の混合アルキル基に、ポリオキシエチレン基が結合しており、オキシエチレン基の平均付加モル数は10モルである。)
【0108】
(2)繊維製品処理剤組成物の調製
100mL容量のガラス製ビーカーに長さ5cmのテフロン(登録商標)製スターラーピースを投入し質量を測定した。次に、表1に記載の割合で、(c)成分、(a)成分、(b)成分(又は(b’))をこの順で投入し、さらにイオン交換水5gを入れてビーカーの上面をサランラップ(登録商標)で封をした。内容物が入ったビーカーをマグネチックスターラーに設置した60℃のウォーターバスに入れ、ウォーターバス内の水の温度が60±2℃の温度範囲内で、100r/minで30分間撹拌した。次に、ウォーターバス内の水を、5℃の水道水に替え、ビーカー内の該組成物の温度が20℃になるまで冷却した後、10分間攪拌した。次に、サランラップ(登録商標)を外し、内容物の質量が100gになるように、イオン交換水を入れ、再度、100r/minで5分間撹拌し、表1に記載の繊維製品処理剤組成物を得た。
【0109】
(3)繊維製品の前処理
(3-1)衣類調整布の前処理
予め、ノニオン界面活性剤(ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物(平均付加モル数8))を用いて、市販の肌着(グンゼ(株)YG肌着、木綿100%、サイズL)約1.6kgを、全自動洗濯機Panasonic NA-F70PB1で、連続で5回繰り返し洗濯した(ノニオン界面活性剤使用量4.5g、標準コース、水量45L、水温25℃、洗浄時間12分、ため濯ぎ2回)。その後、25℃、43%RHの条件下で1日間、乾燥した。
【0110】
(3-2)木綿Tシャツの前処理
予め、ノニオン界面活性剤(ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物(平均付加モル数8))を用いて、市販のTシャツ(UNIQLO クルーネックTシャツ(M)、木綿100%、10枚)を、全自動洗濯機Panasonic NA-F70PB1で、連続で5回繰り返し洗濯した(ノニオン界面活性剤使用量4.5g、標準コース、水量45L、水温25℃、洗浄時間10分、ため濯ぎ2回)。その後、25℃、43%RHの条件下で1日間、乾燥した。
【0111】
(4)評価繊維の洗浄
表1の繊維製品処理剤組成物を15g測りとり、前述の前処理した木綿Tシャツ3枚をドラム式洗濯乾燥機(Panasonic製 NA-VX3800L)にて水道水(25℃)、衣類総量4kgにて標準コース(水量25L(実測値)、洗い15分、すすぎ1回、脱水・乾燥自動設定)の条件で洗濯した。衣類質量の調整には、前述の前処理をした衣類調整布である肌着を使用した。乾燥工程まで終了後、洗濯機から取り出し、木綿Tシャツの見た目の状態について評価を行った。
【0112】
(5)シワ抑制能の評価
上記(4)に示す方法で、洗浄、濯ぎ、乾燥を行ったTシャツのシワ状態を、繊維製品の風合い評価の熟練者6名で下記の基準で点数づけし、6人の平均点を算出した。結果を表1に示した。表には四捨五入した小数点1桁までの値を記載した。この評価では、平均点が1以上であることが好ましく、数値が高い方が好ましい。
-1…比較例1の組成物で処理したTシャツよりもシワが多く仕上がった。
0…比較例1の組成物で処理したTシャツと同等のシワ状態に仕上がった。
1…比較例1の組成物で処理したTシャツと比較してややシワが少なく仕上がった。
2…比較例1の組成物で処理したTシャツと比較してシワが少なく仕上がった。
3…比較例1の組成物で処理したTシャツと比較して非常にシワが少なく仕上がった。
【0113】
(6)処理液の消泡性の評価
<硬度水の調製方法>
硬度水(Ca/Mg=8:2(質量比))の調製は、以下の方法で行った。
ドイツ硬度150°DHに相当する量の塩化カルシウム・2水和物(富士フイルム和光純薬株式会社)、塩化マグネシウム・6水和物(富士フイルム和光純薬株式会社)をカルシウムイオン/マグネシウムイオン比率(モル比)が8/2になるように計量し、計量した化合物を20℃のイオン交換水に溶解して濃厚原液を調製した。この濃厚原液をイオン交換水で100倍希釈し、5℃に温度調節したものを硬度水とした。
【0114】
<水のドイツ硬度の測定方法>
ドイツ硬度の測定は、以下の方法で行った。
〔試薬〕
・0.01mol/L EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/L水溶液(滴定用溶液、0.01MEDTA-Na2、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:UniversalBT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、イオン交換水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定方法〕
まず、試料となる水20mLをホールピペットでコニカルビーカーに採取し、硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加した。更に、UniversalBT指示薬を0.5mL添加し、添加後の溶液が赤紫色であることを確認した。
コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/LEDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とした。EDTA・2Na溶液の滴定量T(mL)より、試料中の全硬度を下記の算出式で求めた。
硬度(°DH)=(T×0.01×F×56.0774×100)/A
T:0.01mol/L EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/L EDTA・2Na溶液のファクター
【0115】
<消泡性の評価>
上記硬度水の調製方法で調製した各硬度水50mLをスクリュー管(No.8)に入れ、これに表1の繊維製品処理剤組成物を0.05g測りとり、滴下し、処理液を調製した。その後、スクリュー管に蓋をして振とう機(STRONGSHAKER SR-2DW、TAITEC製)で300rpmにて3分間振とうし、振とう後30秒の泡高さ(cm)をものさしにより測定した。
消泡性は、比較例1の泡高さを基準として消泡性能を下記式により算出した。算出された消泡性能の値が1.0未満であり、値が低いほど、消泡性に優れた処理液といえる。消泡性に優れた処理液は、すすぎ性に優れた組成物ともいえる。また、算出された消泡性能の値が0超であれば、生じる泡を適度に維持しているといえる。
消泡性能=(実施例又は比較例の処理液の泡高さ(cm))/(基準の処理液の泡高さ(cm))
【0116】