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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026041
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電磁無音アラーム
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/14 20060101AFI20240220BHJP
   G04G 21/00 20100101ALI20240220BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B06B1/14
G04G21/00 302A
B06B1/04 S
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023124286
(22)【出願日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】22190383.4
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ジャック・ボルン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン カルロ・ポリ
【テーマコード(参考)】
2F002
5D107
【Fターム(参考)】
2F002AA07
2F002AA12
2F002AC01
2F002EH06
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD03
5D107DD12
5D107DE02
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】本発明の一態様は、振動効果を生み出すために電気で制御できる電磁モータ手段(200)を含む携帯型物品の無音アラーム(100)に関する。
【解決手段】無音アラーム(100)は、電磁モータ手段(200)が、可動磁気回路(210)および静止磁気回路(220)を含み;可動磁気回路(210)が、コイル(211)と、磁気ケージ(213)に磁気的に連結している強磁性コアであって、磁気ケージが強磁性コア(212)の延長部を形成する、強磁性コア(212)とを含み;可動磁気回路(210)の磁気アセンブリが、振動効果を生み出すことのできる無音アラーム(100)の可動性磁気質量体を構成することと;可動磁気回路(210)を静止磁気回路(220)に弾性接続させる弾性接続要素(60)を含み、弾性接続要素(60)が、電磁モータ手段(200)を電気制御する際に可動磁気回路(210)が線形、または準線形の振動運動を受けるよう案内して確実にするように形状加工されることとを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動効果を生み出すために電気で制御できる電磁モータ手段(200)を含む携帯型物品(1)の無音アラーム(100)であって、
-前記電磁モータ手段(200)は、可動磁気回路(210)および静止磁気回路(220)を含み;前記可動磁気回路(210)は、コイル(211)と、磁気ケージ(213)に連結している強磁性コアであって、磁気ケージが前記強磁性コア(212)の延長部を形成する、強磁性コア(212)とを含み;前記可動磁気回路(210)の前記磁気アセンブリは、前記振動効果を生み出すことのできる前記無音アラーム(100)の可動性磁気質量体を構成することと;
-前記可動磁気回路(210)を前記静止磁気回路(220)に弾性接続させる弾性接続要素(60)を含み、前記弾性接続要素(60)は、前記電磁モータ手段(200)を電気制御する際に前記可動磁気回路(210)が線形、または準線形の振動運動を受けるよう誘導して確実にするように形状加工される
ことを特徴とする、無音アラーム(100)。
【請求項2】
前記静止磁気回路(220)は、磁性材料製の2つの要素(221、222)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項3】
前記磁性材料製の2つの要素(221、222)は永久磁石であることを特徴とする、請求項2に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項4】
前記静止磁気回路(220)は、前記静止磁気回路(220)で前記磁束を閉じるための分路(223)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項5】
前記弾性接続要素(60)は、前記静止磁気回路(220)および前記可動磁気回路(210)を受け入れる支持体(10)に属することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項6】
前記支持体(10)は、前記静止磁気回路(220)を受け入れる静止部分(11a、11b)および前記可動磁気回路(210)を受け入れる可動部分(12a、12b)を含み、前記弾性接続要素(60)は、前記電磁モータ手段(200)を電気制御する際に線形、または準線形の振動運動を受けるよう前記可動磁気回路(210)を案内して確実にしながら、前記支持体(10)の前記可動部分(12a、12b)を前記静止部分(11a、11b)に機械的に接続することを特徴とする、請求項5に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項7】
前記支持体(10)の前記静止部分(11a、11b)は、前記支持体(10)の前記静止部分(11a、11b)を前記携帯型物品(1)と一体にすることができる固定手段(70)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項8】
前記支持体(10)は、前記電磁モータ手段(200)の前記可動磁気回路(210)および前記静止磁気回路(220)を閉じ込めるように形状加工した下側ハーフシェル(10a)および上側ハーフシェル(10b)で形成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項9】
前記支持体(10)の各ハーフシェル(10a、10b)は、前記電気機械モータ手段(200)の横側に隣接するように構成された、前記弾性接続要素(60)を形成する2つの横側の弾性タブ(60a、60b)を含むことを特徴とする、請求項8に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項10】
前記磁気ケージ(213)は、前記静止磁気回路(220)の近くで前記コイル(211)に誘導される磁束を案内するように構成された磁極片を形成する2つの分岐(214、215)を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項11】
前記磁極片および前記強磁性コア(212)を形成する前記2つの分岐(214、215)は、前記静止磁気回路(220)とともに前記可動磁気回路(210)の線形、または準線形の振動運動に対して垂直に延在する空隙(e)を画定することを特徴とする、請求項10に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項12】
前記コイル(211)に電力を供給して前記可動磁気回路(210)を共振周波数で振動させるように構成された電子制御ユニット(50)を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項13】
前記コイル(211)に電力を供給して前記可動磁気回路(210)を選択した120Hz~250Hzの周波数で振動させるように構成された電子制御ユニット(50)を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の携帯型物品(1)用無音アラーム(100)。
【請求項14】
請求項1に記載の無音アラーム(100)を含む携帯型物品(1)。
【請求項15】
前記携帯型物品は計時器であることを特徴とする、請求項14に記載の携帯型物品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型物品に使用することを意図した無音アラームに関する。
【0002】
本発明は、さらに詳細には、計時器などの厚みの薄い携帯型物品に組み込むのに適している小型で振動し共振する無音アラームに関する。
【0003】
本発明はさらに、このような無音アラーム付きの計時器、特に腕時計などの携帯型物品に関する。
【背景技術】
【0004】
携帯型物品、特に計時器に装着されている従来のアラームは、特定の範囲または音色から選択した音を発することによって、例えばイベントおよび/または時間情報に関連付けた音響情報を提供できる。
【0005】
これらのアラームの主な欠点は、音が鳴り、使用者のいる環境で知覚される可能性がある点である。
【0006】
さらに、このような音響アラームでは、使用者(着用者)の携帯型物品と、同じ環境にいる人が所有する他の携帯型物品との区別がつかない。
【0007】
そのため、これらの音響アラームにはいくつかの欠点があることがわかる。音響アラームは、控えめな音ではなく、使用者以外の人が知覚でき、これは特定の環境では問題となることがある。音響アラームは、着用者が自分の携帯型物品と他の携帯型物品を同一環境で、例えば数人のグループ内で区別できない。
【0008】
これを克服するために、静音のいわゆる無音振動アラームが提案されており、このアラームは、質量体を動かすモータを備え、全体が使用者に伝達できる振動効果を生み出すように構成されている。このような振動は、使用者のみに知覚されることが利点であるため、控えめで、アラームが例えば起床時間、電話がかかってきたとき、または時間変更の知らせのためなどで鳴ったときに、使用者の周囲にいる人の邪魔にならない。
【0009】
このような無音アラームが、例えば欧州特許第0349230号に開示されている。このアラームは、シャフト上に移動可能に取り付けた偏心重りを回転させる圧電モータを備えている。
【0010】
ただし、このアラームは同軸の構成であるため、比較的多くの空間を占め、この計時器に取り付けるために特別な配置が必要になるか、計時器を完全に再構築する必要さえあり、これは問題である。
【0011】
さらに、この無音アラームには圧電モータを使用する必要があり、その製造には比較的複雑な技術を要する。
【0012】
この問題に対処するために、欧州特許第0625738A1号に開示されている無音アラームは、より簡易な設計で、小さい全体寸法で、少ない製造費用で開発されている。
【0013】
欧州特許第0625738A1号の無音アラームは、支持体に固定して取り付けられた電磁モータを含み、電磁モータは、重い質量体を動かして質量体に準線形の振動運動を与えて振動効果を生み出す。
【0014】
このような無音アラームは、消費電力が約10mWである。
【0015】
ただし、携帯型物品の分野では、携帯型物品、特にアラームなどの様々な構成要素の設計、全体寸法および/または消費電力を改善すること、特に、携帯型物品を形成している様々な部材の消費電力を最小限に抑えることによって携帯型物品の寿命を伸ばすことが常に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第0349230号
【特許文献2】欧州特許第0625738A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この背景で、本発明は、前述した課題の少なくとも1つに対して解決策を提供することを目的とする。
【0018】
特に、本発明は、構造を大幅に修正することなく、携帯型物品、特に計時器に容易に組み込むことができる簡易設計の無音アラームであって、例えば高速の自動作業により低コストで製造でき、消費電力が少ない無音アラームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この背景で、本発明は、振動効果を生み出すために電気で制御できる電磁モータ手段を含む携帯型物品の無音アラームであって、該無音アラームは、
-電磁モータ手段は、可動磁気回路および静止磁気回路を含み;該可動磁気回路が、コイルと、磁気ケージに磁気的に連結している強磁性コアであって、磁気ケージが強磁性コアの延長部を形成する、強磁性コアとを含み;該可動磁気回路の磁気アセンブリは、該振動効果を生み出すことのできる該無音アラームの可動性磁気質量体を構成することと;
-可動磁気回路を静止磁気回路に弾性接続させる弾性接続要素を含み、弾性接続要素は、電磁モータ手段を電気制御する際に可動磁気回路が線形、または準線形の振動運動を受けるよう案内して確実にするように形状加工されること
とを特徴とする、無音アラームに関する。
【0020】
全段落で述べた特徴に加えて、本発明による電磁無音アラームは、個別に検討されるか、技術的に可能な任意の組み合わせに従って検討される、以下の中から1つ以上の補足的特徴を有することができる。
-静止磁気回路は、磁性材料製の2つの要素を含む。
-磁性材料製の2つの要素は、永久磁石である。
-静止磁気回路は、可動磁気回路のコイルによって誘導される静止磁気回路で磁束を閉じる分路を含む。
-弾性接続要素は、静止磁気回路および可動磁気回路を受け入れる支持体に属する。
-支持体は、静止磁気回路を受け入れる静止部分および可動磁気回路を受け入れる可動部分を含み、弾性接続要素は、電磁モータ手段を電気制御する際に線形、または準線形の振動運動を受けるよう可動磁気回路を案内して確実にしながら、支持体の可動部分を支持体の静止部分に機械的に接続する。
-支持体の静止部分は、支持体の静止部分を携帯型物品と一体にすることができる固定手段を含む。
-支持体は、電磁モータ手段の可動磁気回路および静止磁気回路を閉じ込めるように形状加工した下側ハーフシェルおよび上側ハーフシェルで形成される。
-支持体の各ハーフシェルは、電気機械モータ手段の横側に隣接するように構成された、弾性接続要素を形成する2つの横側の弾性タブを含む。
-磁気ケージは、静止磁気回路の近くでコイルに誘導される磁場を案内するように構成された磁極片を形成する2つの分岐を含む。
-磁極片および強磁性コアを形成する2つの分岐は、静止磁気回路とともに、可動磁気回路の線形、または準線形の振動運動に対して垂直に延在する空隙eを画定する。
-無音アラームは、コイルに電力を供給して可動磁気回路を共振周波数で振動させるように構成された電子制御ユニットを含む。
-可動磁気回路の該共振周波数は、弾性接続要素の幾何学形状および可動磁気回路の質量によって決まる。
-可動磁気回路および弾性接続要素の幾何学形状は、可動磁気回路の共振周波数が120Hz~250Hzになるように構成される。この周波数範囲は、使用者の手首が最もよく感じる周波数に相当する。
-無音アラームは、コイルに電力を供給して可動磁気回路を120Hzから250Hzの間で選択した周波数で振動させるように構成された電子制御ユニットを含む。
【0021】
本発明はさらに、本発明による無音アラームを含む携帯型物品に関する。
【0022】
好ましくは、携帯型物品は計時器であり、例えば腕時計である。
【0023】
本発明の目的、利点および特徴は、以下の図面を参照して下記に記載した詳細な説明読むことでさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による無音アラームの一例の実施形態を概略的に示す全体斜視図である。
図2図1に示した無音アラームの分解図であり、本発明による無音アラームの様々な構成要素が見える図である。
図3図1に示した無音アラーム100の中央切断面M1に沿った断面図である。
図4図3の詳細図であり、特に、コイルが正の電力供給を受けたときの電磁モータ手段の磁気回路の異なる極性を示す図である。
図5図3の詳細図であり、特に、コイルが負の電力供給を受けたときの電磁モータ手段の磁気回路の異なる極性を示す図である。
図6】使用者が知覚できる振動効果を生み出すために、本発明による無音アラームの電磁モータ手段へ電力を供給する一例を示すグラフである。
図7図1に示した本発明による無音アラームを組み入れた計時器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
いずれの図でも、別段の指示がない限り、共通の要素には同じ参照番号を付している。
【0026】
図1は、本発明による無音アラーム100の一例の実施形態を概略的に示している斜視図である。
【0027】
図2は、図1に示した無音アラーム100の分解図を示し、無音アラームの様々な構成要素が見えるようにしている。
【0028】
図3は、図1に示した無音アラーム100を図1に示した中央切断面M1に沿って切断した断面図を示している。
【0029】
本発明による無音アラーム100は、電磁気タイプの無音アラームであり、電磁モータ手段200を備え、電磁モータ手段は、可動部材の揺れによる振動効果を生み出すために、可動部材を動かすように電気で制御できるものである。
【0030】
本発明による無音アラーム100は、例えば計時器1などの小さい携帯型物品に装着するのに特に適している。
【0031】
このような計時器1を例として図7に概略的に示している。
【0032】
計時器1は、中央部3と、中央部3に従来の方法で固定した背面4とからなるケース2を含む。ケース2は、測時運動(図示せず)を受けるように構成された内部空間5および本発明による無音アラーム100を画成する。
【0033】
計時器1はさらに、図示していない電源、例えば少なくとも本発明による無音アラーム100に給電するように構成された電池を含む。
【0034】
好ましくは、電源は、本発明による無音アラーム100の電磁モータ手段200を駆動するように構成された電子制御ユニット50に電気接続される。
【0035】
ここで、計時器1に装着された本発明による無音アラーム100について図1図3を参照して以下にさらに詳細に説明する。
【0036】
無音アラーム100は、
-無音アラーム100を計時器1に固定させる専用の固定要素70を含むことができる支持体10と、
-携帯型物品に取り付ける電源に電気接続できる電子制御ユニット50と、
-電子制御ユニット50に電気接続して振動効果を生み出すことのできる電磁モータ手段200と
を含む。
【0037】
電磁モータ手段200は、可動部材を動かすように電子制御ユニット50によって電気制御され、計時器1または携帯型物品を着用している使用者が、例えば使用者と接触している背面4を介して知覚できる振動効果を得るようにする。
【0038】
電子制御ユニット50は、電磁モータ手段200を無音アラーム100の共振周波数、または共振周波数に近い周波数まで励起するように構成される。
【0039】
好ましくは、電子制御ユニット50は、電磁モータ手段200を励起し、120Hz~250Hzの周波数での振動を発生させるように構成される。
【0040】
電磁モータ手段200は、可動磁気回路210と静止磁気回路220とからなる磁気回路を含む。可動磁気回路210および静止磁気回路220は、支持体10で保持される。
【0041】
支持体10は、静止磁気回路220を保持する静止部分11a、11bを含む多機能要素である。支持体10の静止部分11a、11bは、電子制御ユニット50も保持する。
【0042】
静止磁気回路220は、例えば、スポット溶接と呼ばれる電気溶接などによる固定手段によって、支持体10の静止部分11a、11bと一体に作られる。
【0043】
支持体10はさらに、可動磁気回路210を保持するように形状加工した可動部分12a、12bを含む。
【0044】
可動磁気回路210は、スポット溶接と呼ばれる電気溶接などによる固定手段によって、支持体10の可動部分12a、12bと一体に作られる。
【0045】
支持体10の静止部分11a、11bは、例えば計時器1の背面4で、例えばねじ止めまたは接着によって計時器と一体に作られるように意図されている。
【0046】
図2に示したように、支持体10の静止部分11a、11bは、ねじ式の固定要素70と協働して、支持体10の静止部分11a、11bを計時器1と一体にする。
【0047】
電子制御ユニット50は、例えば、接着によって、または支持体10を計時器1と一体にする固定手段70によって、支持体10の静止部分11a、11bと一体に作られる。
【0048】
支持体10はさらに、支持体10の可動部分12a、12bおよび静止部分11a、11bを機械的に接続する弾性接続要素60を含む。弾性接続要素60は、薄い弾性可撓性ストリップ60a、60bで形成され、このストリップは、支持体10の静止部分11a、11bと可動部分12a、12bとで形成される、中央面M1と平行な平面に対して垂直な平面に延在する。
【0049】
弾性接続要素60は、x方向の並進運動によって可動磁気回路210を横方向に変位させながら、支持体10の可動部分12a、12bを支持するように、かつそれに伴い可動磁気回路210を特にz方向およびy方向に支持するように構成される。
【0050】
弾性接続要素60は、特定の方向に、この場合はx方向に可撓性になるように形状加工され、可動磁気回路210が静止磁気回路220に対して図1に矢印Dで示した横方向に線形または準線形の振動を受けられるようにする。
【0051】
換言すると、支持体10、ならびに可動磁気回路210および静止磁気回路220に対する弾性接続要素60の形状および配置により、可動磁気回路210が電子制御ユニット50の制御下で、静止磁気回路220に対して実質的にx方向に並進して横に変位することが可能になる。
【0052】
弾性接続要素60は、支持体10に固定する形で接続されるか支持体10と一体になるよう一片に形成される可撓性ストリップである。
【0053】
弾性接続要素60は、可動磁気回路210の両側の側面に位置している。
【0054】
弾性接続要素60は、電磁モータ手段200に電気的負荷をかけることなく可動磁気回路210を平衡の静止位置に戻すように付勢された弾性戻り機能も有する。
【0055】
例として、各弾性接続要素60は、無音アラーム100を高さに沿って2つに分割する中央面M1に対して電磁モータ手段200の各縁に対称に配置された下タブ60aと上タブ60bで構成される。
【0056】
支持体10は、有利には、下側ハーフシェル10aおよび上側ハーフシェル10bを形成する2つの別個の部品で作製され、2つのハーフシェル10a、10bは、電磁モータ手段200、さらに詳細には可動磁気回路210および静止磁気回路220を閉じ込めて保持するように構成される。各ハーフシェル10a、10bは、前述の弾性接続要素60を形成する2つの横側の弾性タブ60a、60bを含む。よって対称に配置された弾性タブ60a、60bにより、電気機械モータ手段200の上部および電気機械モータ手段200の下部を横側で隣接させることができる。そのため、このような構成により、弾性タブ60a、60bの弾性変形によってz軸に沿って変位するのを回避する。
【0057】
支持体10のハーフシェル10a、10bは、例えば平坦で、例えば金属の薄板から作製され、弾性タブ60a、60bは、支持体10の静止部分11a、11bおよび可動部分12a、12bと一体になるよう一片に形成される。
【0058】
可動磁気回路210は、強磁性コア212、および強磁性コア212の周りに従来の方法で巻いたコイル211を含む。
【0059】
強磁性コア212は、強磁性コア212の片方の極で磁気ケージ213に連結され、磁気ケージ213が強磁性コア212の延長部を形成する。強磁性コア212は、専用の固定手段によって、例えばねじ要素216によって磁気ケージ213と一体に作製される。
【0060】
可動磁気回路210の磁気アセンブリは、使用者が知覚できる振動効果を生み出せる可動質量を構成するのに十分な重さである。
【0061】
図1図3に示した実施形態の例では、特に図2に見えているように、強磁性コア212は、磁気ケージ213から分離されているが、強磁性コア212と磁気ケージ213とは一片であってよい。別々に製造することで、コイル211を強磁性コア212の周りに巻きやすくなる。
【0062】
本発明によれば、無音アラーム100の振動可動質量体は、電磁モータ手段200の磁気回路の可動部分210で形成される。そのため振動質量体は、無音アラーム100の磁気回路に属する。
【0063】
換言すると、可動磁気回路210は、振動システムの可動質量体として作用するため、本発明による無音アラーム100では、磁気回路の一部に機械的に連結して振動質量体として作用するだけで電磁モータ手段の磁気回路には関わらない、例えば非磁性金属で作製された特定の追加の質量体は必要ない。
【0064】
そのため、先行技術の解決策とは異なり、本発明による無音アラーム100の可動質量体は、磁性または強磁性の質量体であり、電磁モータ手段200の可動磁気回路210も構成する。
【0065】
静止磁気回路220は、磁性材料製の2つの要素221、222を含む。
【0066】
磁性材料製の2つの要素は、永久磁石であることが好ましい。
【0067】
各永久磁石221、222は、可動磁気回路210の並進運動に対して垂直に配向された永久N-S磁化軸(N-Sと表記)を有する。2つの永久磁石221、222は、互いに逆の磁化軸を有する。
【0068】
静止磁気回路220はさらに、静止磁気回路220で磁束を閉じて磁気漏れを最小限に抑えるための分路223を含む。これにより、無音アラームの性能が最適になる。
【0069】
磁気ケージ213は、2つの平行な分岐214、215を含み、この分岐は、コイル211の側面に隣接し、静止磁気回路220に向かって延在する。
【0070】
2つの分岐214、215は、コイル211の強磁性コア212の磁極片を構成し、この磁極片は、コイル211によって誘導される可動磁気回路210の磁束を、静止磁気回路220の近くに、さらに詳細には永久磁石221、222の近くに案内するように構成される。
【0071】
2つの分岐214、215は、永久磁石221、222に対面して延在する。
【0072】
2つの分岐214、215および強磁性コア212は、永久磁石221、222とともに、可動磁気回路210の横方向の変位に対して垂直に延在する空隙eを画定する。
【0073】
本発明による無音アラームの動作
電子制御ユニット50の制御下で、コイル211は、給電され、磁束を発生させることができ、磁束は、強磁性コア212内を流れて磁極片214、215で磁気ケージ213の中に伝播でき、空隙eを介して永久磁石221、222および分路223を通って閉じることができる。
【0074】
コイル211が例えば図6に示したようなパルスの形で正の電力供給を受けると、強磁性コア212は、図4に示したように分極され、磁気ケージ213の2つの分岐にも分極される。異なる極性は、永久磁石221、222の極性と相互作用し、その結果、同じ符号の極が互いに反発し、逆の符号の極が互いに引き付け合うため、永久磁石の極性の影響で、可動磁気回路210をx方向に左横に並進させる磁力が生じる。
【0075】
コイル211が、例えば図6に示したパルス状の負の電力供給を受けると、極性が反転し、可動磁気回路210は、図5に示したように、永久磁石の極性の影響でx方向に右横に並進する。
【0076】
したがって、AC電源では、可動磁気回路210は、弾性接続要素60によって案内されて、x方向の並進運動で左から右へ交互に横方向に変位することになる。この変位は、弾性接続要素60に応力を与え、この応力は、弾性復帰効果などによって可動磁気回路210を元の位置に戻すように働き、この元の平衡位置または休止位置の辺りを行ったり来たりする横方向の並進運動で振動させる。そのため、周波数および振幅に関して適切な電力供給を選択することによって、計時器1のケース2内に振動効果が生じ、着用者がそれを知覚できる。
【0077】
有利には、電子制御ユニット50は、図6に例として示したように、可動磁気回路210の振動運動を維持するための交流パルスの形態でコイル211への電力供給を生み出すように構成され、パルスは、可動磁気回路210の振動運動の減衰を補償する。
【0078】
本発明による無音アラーム100は、前述したように、全体の寸法が小さいため、時計用途に理想で適している。なぜなら、形状が本質的に平坦で薄く、腕時計ケースに容易に組み込むことができ、他の構成要素に大きな修正を加えることがないからである。参考までに、本発明によるこのような無音アラームは、全高約3mmで製造できる。
【0079】
全体の寸法および重さは、特に非磁性金属製の専用の可動質量体をなくすことによって特に縮小されている。
【0080】
本発明による無音アラームは、磁極片および分路を有する最適化した磁気設計であり、磁気漏れを防止し、磁気効率を最適化する。そのため、このようなアラームの消費電力は、最適化され、軽減される。参考までに、このような無音アラームの消費電力は、10mW未満と測定できる。
【0081】
コイルを含む磁気回路の一部に動きを持たせるという本発明による無音アラームの可動コイルタイプの逆の構造でも、専用の非磁性の重い質量体に動きを持たせるという必要性を解消することによって、このような無音アラームの消費電力を軽減できる。
【0082】
最後に、先行技術の解決策とは対照的に、提案する逆の構造は、例えばタングステン製の特定の質量体を使用する必要性を解消するものである。そのため、このような無音アラームの製造コストも削減される。
【符号の説明】
【0083】
1 計時器
2 ケース
3 中央部
4 背面
5 内部空間
10 支持体
10a 下側ハーフシェル
10b 上側ハーフシェル
11a、11b 静止部分
12a、12b 可動部分
50 電子制御ユニット
60 弾性接続要素
60a 下タブ
60b 上タブ
70 固定要素
100 無音アラーム
200 電磁モータ手段
210 可動磁気回路
211 コイル
212 強磁性コア
213 磁気ケージ
214、215 分岐
216 ねじ 要素
220 静止磁気回路
221、222 永久磁石
223 分路
e 空隙
M1 中央切断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】