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  • 特開-色データの変換を実行する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026055
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】色データの変換を実行する方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/60 20060101AFI20240220BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H04N1/60
B41J2/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132146
(22)【出願日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】22020391
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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(71)【出願人】
【識別番号】522142866
【氏名又は名称】ジーエムジー ゲーエムベーハー アンド シーオー.ケージー
【氏名又は名称原語表記】GMG GmbH & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ホフシュタット
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オリジナルに近い結果が得られるよう、コンピュータ支援による色空間変換を高精度で実行する方法を提供する。
【解決手段】供給元の色空間はn個の色を含み、供給先の色空間はm個の値を含み、変換ルールを介して、供給先の色空間のm個の成分の組み合わせが、供給元の色空間のn個の色の少なくとも一部の組み合わせに割り当てられる。既知の入力の組み合わせの出力値から未知の入力の組み合わせの出力値を段階的に構築し、各段階で追加された入力色の(出力値に対する)色の影響を推定する。入力の組み合わせ「AB」は、部分色「A」の寄与度と残りの色「B」の寄与度に分解され、ベース「B」に対する「A」の色効果を示すことを目的として、別のベース「C」に適用し、未知の組み合わせ「AC」を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換ルールTRVを用いて、供給元の色空間から供給先の色空間への色データの変換をコンピュータ支援で実行する方法であって、
・前記供給元の色空間は、表現される各点の色成分q(1)~q(n)の組み合わせで存在するn個の色を含み、
・前記供給先の色空間は、成分z(1)~z(m)の組み合わせを形成するために組み合わせることができるm個の値を含み、
・前記供給先の色空間の前記m色の成分の組み合わせは、前記変換ルールTRVを介して前記供給元の色空間の前記n個の色の少なくともいくつかの組み合わせに割り当てられ、
該方法は、
a)色成分qKB(1)~qKB(n)を有する前記供給元の色空間の前記n個の色における組み合わせKBの中で、前記供給先の色空間のm個の成分zKB(1)~zKB(m)の組み合わせが前記TRVを介して割り当てられていないものに対して、
i)色iの成分を含まない色成分qKB(iはjと異なる値)の残りの組み合わせに、成分z(1)、z(2)、・・・、z(m)を有する前記供給先の色空間の組み合わせが割り当てられる場合、
ii)色成分q(1)~q(n)の互いに同一の組み合わせが存在する1つの例外を除いて、
1)色成分q(i)=FAを持つ組み合わせq(1)~q(n)には、色データセットZ1を形成する、前記供給先の色空間のm個の値の成分z(1),z(2),・・・,z(m)の対応する組み合わせが割り当てられるように、
2)色成分q(i)=0を持つ組み合わせq(1)~q(n)には、色データセットZ2を形成する、前記供給先の色空間のm個の値の成分z(1),z(2),・・・,z(m)の対応する組み合わせが割り当てられるように、
さらに2つの組み合わせを選択し、それぞれに成分z(1)~z(m)の組み合わせが割り当てられ、色成分q(1)~q(n)及びq(1)~q(n)の2つの組み合わせは、q(i)=FA>0、そして、q(i)=0における色iの色成分q(i)のみが異なっている場合、
iii)V(1)=z(1)/z(1),V(2)=z(2)/z(2)12,・・・,V(m)=z(m)/z(m)12の因子のセットを形成する、色データセットZ1のm個の値の各成分z(1)、z(2)、・・・、z(m)と色データセットZ2のm個の値の対応する成分z(1)、z(2)、・・・、z(m)とのそれぞれの成分に対する比率V(1)、V(2)、・・・、V(m)を計算する場合、の
上記条件が適用され、色成分FA=qKB(i)>0を有する、組み合わせKBの色iを選択する工程と、
b)色iの色成分FAを含むが、変換に色成分q(i)=0が設定されている、n個の色を持つ前記供給元の色空間の色の組み合わせKBの、m個の成分を有する前記供給先の色空間への変換に際し、因子V(1),V(2),・・・,V(m)による変換から得た、前記供給先の色空間のz(1),z(2),・・・z(m)を乗算することで、因子V(1),V(2),・・・,V(m)を適用する工程であって、前記供給先の色空間のz(m)が、V(1),V(2),・・・,V(m)によって乗算される工程と、
を含む、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法は、色の比率q(1)~q(n)の組み合わせを有する、n個の色の所与の組み合わせに対する、k<n個の色の部分的な組み合わせに適用される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、k=nまでのk<n個の色との連続した部分組み合わせに適用され、得られた因子を乗法的に適用する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
より小さい色部分を有するものを、候補となる色iから優先的に選択して、より高い精度を達成するよう、ある色の色部分の大きさが考慮される、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
いくつか異なる候補となる色i1、i2、・・・に対して、異なる推定値z(1)i1、・・・、z(m)i1、z(1)i2、・・・、z(m)i2などの結果を、各色の比率q(i1)、q(i2)、・・・が小さいほど各推定値の重みが大きくなるよう、重みを選択しながら、加重平均化する、
ことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記供給先の色空間の成分z(1)~z(m)がデバイス依存値である、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記供給先の色空間の成分z(1)~z(m)が非デバイス依存値である、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記変換ルールTRVが変換テーブルの形態である、
ことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、制御ソフトウェアによってコンピュータユニット上で実施され、前記コンピュータユニットは、前記プロジェクトのデジタル色データを提供する入力部と、前記プロジェクトの前記供給元の色空間のデジタルカラーデータを提供する入力部と、前記供給先の色空間の変換値を出力する出力部と、変換テーブルが格納されているメモリとを備え、前記変換テーブルを用いた前記制御ソフトウェアによって、請求項1乃至8に記載の方法を適用することで、前記プロジェクトの前記供給元の色空間の色データに対して、値を生成し、それをデータセットとして提供する、
ことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換ルールTRVを用いて、n個の色を有する供給元の色空間から、m個の値を有する供給先の色空間へ、色データの変換を実行する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷業界では、印刷対象となるカラー印刷製品のデータセットを作成するため、色変換が必要になる場合がある。
【0003】
開始時点は、デジタルレイアウトである。デジタルレイアウトには、例えば、写真やスキャンで取り込んだカラー画像や、イラスト、文書などが含まれ得る。こうしたレイアウトは、印刷製品の形で、それ通りに再現されるテンプレートである。このようなレイアウトは、任意の形式でデザイン又は展開されており、色の観点では、意図された目的によって、所望のものを表す。通常、レイアウトは、いくつかのレイアウトオブジェクトを備える。したがって、それぞれのレイアウトオブジェクトは、一意に識別可能な色外観を有する。よく知られているように、印刷製品の場合、例えば、スクリーンされたプリントインクを互いに印刷するだけで、各色がその効果を通じて一定の貢献をし、最終的な結果が異なる色レイヤーの相互作用で作成されることにより、少数の色だけを混合することによって、色外観を作成することができる。
【0004】
各レイアウトオブジェクトの色外観は、データソースを表す色値(イメージピクセル、アウトラインカラー、又は塗りつぶし色)によって定義される。画像ピクセルの場合、通常、数百万のピクセルがあり、それぞれに独自の色値を有する。これらのソース色値は常に、特定の色数を有する供給元の色空間を参照する。これは、通常はデバイスと関連する色空間に対し、レイアウト内の各オブジェクトが割り当てられていることを意味し、色空間には、一般的に、sRGB又はAdobeRGBといった特定のRGB色空間、CMYK色空間、黒のみ(グレースケール)やその他の印刷色空間である。オブジェクトの色値は、RGB値、CMYK又はグレースケール値(0%~100%の色)、又はその他の色値として定量化される。ここで、供給元の色空間のデバイスカラーの総数は、nで表記する。
【0005】
色空間は通常、ICCカラープロファイル(ISO 15076-1:2010)によって表され、これらのICCカラープロファイルを含む、又は、参照できるPDF及びPDF/Xファイル(ISO 15930シリーズ)によるレイアウトによって表される。
【0006】
大きく異なる理由と目的により、レイアウトが再現される。多種多様な印刷プロセスと印刷機が再現に利用できる。これは、キャリア材料に特定の方法で特定の数の色を適用できる可能性を有している。つまり、印刷システムのデバイスが使用する色である。これらの色は、供給先の色空間を規定する、又は、基礎となるものであり、よって、印刷システムのデバイスが使用する色の、考えられる全ての組み合わせを含む。これは、供給先の色空間のm個のデバイスカラーと称される。多くの場合、印刷物の後の測定結果を確認したり、任意のデバイスで表示するためのデバイスに依存しないデータベースを提供したりする際に、Labやスペクトルカラー(以下参照)など、非デバイス依存値への変換も必要となる。これが、供給先の色空間のm個の値という用語が一般的な用語として使用される理由である。
【0007】
標準化された色空間は、通常、レイアウト設計時に供給元の色空間として使用されるが、印刷は独自の色挙動を持つ具体的な出力システムを使用して行われる。したがって、レイアウトの網点ごとに、供給元の色空間のn個のデバイスカラーの所定の組み合わせを、印刷に必要な供給先の色空間のm個のデバイスカラーの組み合わせに変換する必要がある。ここでの目的は、オリジナル、つまり、デジタルレイアウトにできるだけ近い成果物を印刷によって生成すること、理想的には、人の目で見た際に、同じ外観を再現することである。
【0008】
ハーフトーンポイント又はピクセルは、レイアウトオブジェクトの指定されたラスタライズの結果として生じるレイアウト上の任意の点である。これは、例えば、印刷フォーム作成のための、いわゆる画像の解像度に関連するものである。i行とj列を有するグリッドをレイアウト上に配置した場合、解像度はi×jピクセルと表すことができる。個々のピクセルは、その色構造によって、互いに識別できる。
【0009】
色変換は、レイアウトデータを所望の印刷カラーセットを有する印刷可能なデータに変換する際に実施される。これにより、例えば、オフセット印刷用の均一かつ純正のCMYKデータが得られる。色変換は、印刷前にこれらの印刷データの色外観をバインドしてシミュレートするためにも実行される。色外観は通常、CIELAB色空間(略してLab)でデバイスに依存しないか、スペクトル反射率を利用して表される。割り当てられた色空間を有する印刷データが、デバイスに依存しない色データに変換される。これらは、キャリブレーションされた画面又は特別なプルーフ印刷システム(いわゆる「プルーフ」、通常はインクジェットシステム)で表示される。これに関連して、元の色の印象を可能な限り保持しつつ、印刷データを他の印刷プロセスに適合させるタスク、つまり、変換によって既存の印刷データから他のインク用の新しい印刷データを生成するタスクがある。
【0010】
一般的に、4色以下の通常の印刷プロセスの場合、これらの変換プロセスは、対応するデータシステムによってその大部分が確立され、標準化されている。
【0011】
しかしながら、例えばパッケージ印刷では、一般的に4色以上の印刷色が使用される。従来、ブランドカラーはスポットカラーとして追加され、画像は製品固有の色で構築される(例えば、乳製品にはライトグレーの印刷色が追加され、チョコレート製品には茶系のさまざまな印刷色が追加される)。また、透明フィルム包装には、白色印刷インキが添加されることが多い。使用される各インクは、印刷機の印刷ユニットを占有し、インク転写において、独自の印刷フォームを必要とする。色は順次適用され、原則として全ての色を互いに組み合わせることができる(オーバープリント可能)。別々の印刷フォームにおける全体性は、印刷データの作成のプロセス、又は、結果として「分離」という用語につながる。
【0012】
7~10個のインクユニットを備えた機械は、フレキソ印刷、オフセットリソグラフィー、グラビア印刷では特に珍しいものではない。ブランド製品のデザイナーは、PANTONE(商標登録)システムの2,000を超える色合いなど、数千のスポットカラーから印刷インクを選択できる。これらのインクは、インクメーカーによって製造及び供給される。いわゆるデジタル印刷では、インクジェット及びトナーベースの印刷機が使用され、多くの場合、6~8個のインクユニットが含まれているが、インクジェットインク及びカラートナーは非常に特殊な機械依存の処理特性を備えている必要があるため、固定インクセットで操作されたり、それらを変更したりすることは、技術的な複雑性が高すぎる。典型的なカラーセットには、オレンジ又は赤、緑、青又は紫、白で補完されたCMYKが含まれている。
【0013】
現在、デジタル印刷プロセスは従来の印刷プロセスよりも動作が遅くなるものの、印刷フォームを作成したり、色を変更したりする必要がないため、セットアップの労力が大幅に削減される。そのため、短期間での印刷がより経済的に実行され、パーソナライズされた印刷が可能となる。したがって、ここで、当初従来生産されたパッケージを短期間で印刷したり、必要に応じてパーソナライズ(実行1)したりするという要望があったとしても、色外観は、個々のスポットカラーで製造された以前に印刷された製品と可能な限り同一である必要がある。これは、異なるロットの製造品を販売棚に陳列できるようにするためである。このために、従来の印刷プロセスに使用可能な印刷データは、その供給元の色空間から、デジタル印刷プロセスを表す供給先の色空間に変換される。極端に変更、パーソナライズされた印刷の場合、コピーごとに異なるソースデータを変換する必要があり、その場合は変換がボトルネックとなる。
【0014】
よって、冒頭で述べた色変換では、供給元の色空間Q(例えば、n個のデバイスカラーを有する)から、m個の値を有する(例えば、デバイスカラー又は3つのCIELAB値L,a,bを有する)他の供給先の色空間Zに変換する。これは、変換ルールTRVを適用することにより、実行される。こうしたルールとは、計算式、変換モデル、又はTRVに基づいてすでに作成された変換テーブルを指す。ピクセルごとに頻繁に適用する必要があるため、高いスループットが重要となる(毎秒数百万ピクセル)。これを実現するために、補間はICC業界標準などの事前定義されたテーブルで実行される。テーブルは、n個の色の値の組み合わせを想定して構築されている。n個の入力色のそれぞれは、0%~100%のインク被覆率の間の値を撮り得る。テーブル上では、全ての組み合わせをリストにできないが、指定された特定の解像度で各入力色をサンプリングする。サンプリングされたレベルの全ての組み合わせを含む正四角形のn次元グリッドが得られる。その間に、n次元補間が適用される。精度は、このサンプリングに依存する。代表的なサンプルとしては、n=3(RGB/Lab)の場合、33階調(33、約36,000テーブルエントリ)であり、n=4(CMYK)の場合、17階調(6.25%毎、17、約84,000テーブルエントリ)である。階調の数は、乗数における基数を表し、インクの数nは指数となる。階調数は累乗の底、インク数nは指数である。変換テーブルの生成は、当業者に馴染みのある方法である。それらは、例えば、印刷されたインクの分光測定、推定及び/又は補間のための計算などに基づいている。
【0015】
テーブルのサイズは、入力色の数nとともに指数関数的に大きくなる。メモリ領域が限られているため、実用的な理由から、サンプリングを粗くする必要がでてくる。一般的なn=7の場合、6又は7レベルのみが使用される。一例として、広く使用されているオープンソースのカラーマネジメントシステムLittleCMSがあり、ここでは、7段階(16.67%毎、7、約820,000テーブルエントリ)である。したがって、テーブル構造は、インクの数が多いほどテーブルが大きくなり、保存できるグラデーションが少なくなるという問題を有している。ユーザーは、CMYKで慣れているのと同等の精度が実現されることを、CMYKと追加の色の場合にも期待している。そのため、7段階では、かなり粗いものとなる。
【0016】
既知の解決アプローチが特許文献1に開示されている。それによれば、4つ以上の入力色成分を有する割り当てテーブルは、最大4つの入力色成分を有するいくつかの割り当てテーブルに分割される。この手法は、割り当てテーブルが大きすぎる問題を解決することを目的としている。従来技術では、7色印刷でも、通常、印刷されたシート上の1つのポイントで互いに重ねて印刷されるのは4色以下であるという点を利用しているため、これに従って、基本的に4コンポーネントテーブルに縮小することによって、上記問題を解決するための具体的な提案を行った。このため、4コンポーネントテーブルへの削減も推進されている。より確実にするために、分離テーブルの作成時にグレーコンポーネント置換(GCR)やカラーコンポーネント置換(CCR)などの追加プロセスが適用される。同様の先行技術が、非特許文献1及び特許文献2にも見受けられる。
【0017】
既知の解決策によるアプローチは、モデル又はテーブルとモデルの組み合わせを使用している。モデルとは通常、数学ベースの変換ルールである。このようにして、オーバープリントのLab色値を個々の印刷カラーから推定できるようになっている。これは、例えば、画面にレイアウトやPDFファイルを表示するときに行われ、高速だが、正確性には欠ける。ICCのさらなる開発が進み、iccMAXでは、単色をスペクトル的にオフセットするか、CMYK部分にテーブルを使用し、追加の色ごとに値を変更することが提案されている。いずれの場合においても、個々の色を追加することは、これらの色が関係するオーバープリントの色の相互作用を考慮していないか、十分に考慮していないため、正確性を大いに欠いたものとなっている。
【0018】
色混合のオーバープリント動作をより適切に計算するための、より正確なモデルが存在するものの、そうしたモデルは、数百万ピクセルの変換に適用できるほどの高速処理には向かない。さらに、モデルはLab値又はスペクトルを提供するが、デバイスの色値は提供しないため、デバイス間(「デバイスリンク」)の直接変換には適していない。これは、出力されるデバイスの色値が特別な分離規則(以下参照)に従うことが多く、通常、品質を向上させるためには、特定の処理を必要とするためである。しかしながら、デバイスカラーへの変換は、非常に一般的なものとなっている。
【0019】
すでに詳述したように、オーバープリントされたインクの色特性評価は、入力側の印刷色成分をm個の非デバイス依存値(例えば、CIELAB色値又は分光反射率)又は別の出力装置のm個のデバイス色値に変換するテーブルを使用してマッピングされる。これらの出力側の値は、タプル、例えば、3Lab成分、m個のインク成分、又はm個のスペクトル値成分(m波長帯域の場合)である。これらのタプルの計算は、コンポーネントごとに実行される。
【0020】
これらのテーブルは通常、テストチャートの色の組み合わせに基づく。つまり、印刷テストで印刷され、比色測定された色の組み合わせに対してのみ存在する。このようなテーブルは、ICCプロファイルの形式で保存され、変換に使用されること場合もある。
【0021】
多くの場合、CMYKテストチャートは、これらの4つの重要な色の色域を正確にサンプリングするために使用される。CMYKが色域を広げるためにさらにプロセスカラーで補完される場合、オレンジ又は赤(ここではO)、緑(G)、青又は紫(ここではV)が使用されることが多い。これらの色はそれぞれ、色度セクター(ECG、拡張色域)を拡張することを目的とする。よく知られているプロセス(「Equinox」(商標登録))は、CMYKテストチャートを使用し、印刷中に各色を補色に置き換える。この結果、例えば、OMYK(CをOに置き換え)、CGYK(MをGに置き換え)、CMVK(YをVに置き換え)が得られる。したがって、CMYK、OMYK、CGYK、CMVKカラーグループの変換表のテストチャートも得られる。さらに、パッケージ印刷では、重要かつ頻繁に使用されるブランドカラーなどがあり、それらを照合印刷で使用したい場合、CMYKの黒印刷色を、ダークブルー、ダークグリーン、ダークブラウンなどの別のダークカラーと置き換えることが一般的である。これにより、確立された4次元CMYKのような色処理が使用できるようになる。
【0022】
ただし、プロセスにおいて定期的に使用されず、個々のジョブにのみ使用される他の追加カラー(X、・・・)がある場合、組み合わせが多すぎるため、テストチャートとして印刷する意味をなさない(多くの異なるXのCMY+Xなど)。このような色は通常、例えば、参照データをPantone(登録商標)カラー用にライセンス化するなど、個別にのみ特性化される。
【0023】
印刷データは通常、同時に最大4色を使用し、その結果として、色のキャラクタリゼーションは、同時に最大4色に制限されることが多く、レイアウトオブジェクトは最大4色の供給元の色空間しか必要としないが、4色を超える要素を変換する必要がある。2つの一般的な原因は、トラップと、リサンプリングによるイメージのスケーリングである(図2参照)。
【0024】
トラップは、レイアウト内で互いに接触するベクトルオブジェクトの輪郭を拡大することで、従来の印刷プロセスにおける見当合わせの誤差によって引き起こされる、いわゆる「フラッシュ」を防ぐためのものである。こうした拡大により、オブジェクトがある程度重なり合う。この重なりにおいては、個々のオブジェクトよりも多くの印刷色を含む場合がある(合併数量など)。特に校正アプリケーションでは、これらのプロセス上、重要な新しいエッジ部分を確認する必要がある。ここで、代わりにシグナルカラーを取得することは許容されない。つまり、このオーバーラップに関する情報がないことを示す。
【0025】
ピクセルデータ(画像又はラスタライズされたベクトルデータから)を処理する場合、解像度の調整が行われる場合が多い。次に、隣接するピクセルは、再スケーリング(バイリニア又はバイキュービックスケーリング、アンチエイリアシング)によって比例的に混ぜ合わされる。これには、寄与度するピクセルのインクの和集合量も含まれる。
【0026】
そのため、ベクトルデータとピクセルデータの両方で、レイアウトに4色以下のオブジェクトがある場合でも、変換される入力データは5色で発生する可能性がある。しかし、例えば、供給元の色空間の5色を供給先の色空間のm個の値に変換するための変換ルールがない場合、変換テーブルを使用した従来の変換は不可能である。
【0027】
これは、供給元の色空間のn個の色から供給先の色空間のm色への色データの変換ついて、n個の色の供給元の色空間からの色データの組み合わせが、変換テーブルが使用可能な部分又はサブグループと、変換テーブルが使用できない部分又はサブグループと、の両方を含む場合に、一般的に言えることである。
【0028】
特許文献3は、n個の色>4色の変換を可能にする方法を開示しており、正確な4色変換に加えて、粗い解像度のn個の色変換データが利用可能である必要がある。この方法では、複数の補間を使用して、最初に粗いn次元テーブルから粗い結果を取得し、それを正確な4色テーブルの補間と組み合わせ、中間結果のさらなる補間と組み合わせることで、改善が図られている。ただし、n個の色変換テーブルなしでは、該方法は適用されない。しかしながら、こうしたテーブルの生成については、例えば、示唆されているように、多くの色の印刷物に関する複数回の測定に基づいており、その製造には各色の組み合わせに適切な印刷形態及びセットアップ時間が必要であり、上記のように、多数の一般的なスポットカラーが用いられる場合においては、非常に不経済である。n個の色に関するテーブルが把握されていない場合であっても、理想の成果物が得られることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004003300号明細書
【特許文献2】米国特許第5892891号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0007332号明細書
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Boll H, “A COLOR TO COLORANT TRANSFORMATION FOR A SEVEN INK PROCESS", SPIE議事録,IEEE,米国,第2170巻,1994年2月1日,108頁~118頁
【非特許文献2】Adobe,PDF Blend Modes,補遺 to PDF Reference 5th edition,version 1.6,2006,p. 2,p. 6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
上述の先行技術に基づいて、本発明は、変換テーブルが利用可能なコンポーネント又はサブグループと、変換テーブルが利用できないコンポーネント又はサブグループと、の両方を含む、供給元の色空間のn個の色からの色データの組み合わせの場合であっても、変換ルールを使用して色空間変換を実行する方法を改善する、という課題に基づいている。これにより、供給先の色空間のm個の値に高精度で変換して、オリジナルにできるだけ近い結果を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0032】
特許請求の範囲における請求項1に記載の特徴を有する方法によって、この問題に対する技術的解決策が示される。さらなる利点及び特徴は、従属項によって明らかにされる。
【0033】
本発明は、既知のサブコンポーネントから混合物を組み立てる高速推定方法を提供する。例えば、入力が混合CMYKOを要求しているが、CMYKとOMYKの補間テーブル又はICCカラープロファイルしか使用できない場合、エントリは巧妙に組み合わせられる。
【0034】
本発明によれば、変換ルールTRVを用いて、n個の色の供給元の色空間からm個の値を有する供給先の色空間への色データの変換を行う方法が提案される。ここで、色iは、供給元の色空間のn個の色のうちの1色であり、供給元の色空間のn個の色の一部の組み合わせに対して、q(1),q(2),・・・,q(n)の色成分は、供給先の色空間の値z(1),z(2),・・・,z(m)に割り当てられる。本方法は、
a)色成分qKB(1)~qKB(n)を有する供給元の色空間のn個の色における組み合わせKBの中で、供給先の色空間のm個の成分zKB(1)~zKB(m)の組み合わせがTRVを介して割り当てられていないものに対して、
i)色iの成分を含まない色成分qKB(iはjと異なる値)の残りの組み合わせに、成分z(1)、z(2)、・・・、z(m)を有する供給先の色空間の組み合わせが割り当てられる場合、
ii)色成分q(1)~q(n)の互いに同一の組み合わせが存在する1つの例外を除いて、
1)色成分q(i)=FAを持つ組み合わせq(1)~q(n)には、色データセットZ1を形成する、供給先の色空間のm個の値の成分z(1),z(2),・・・,z(m)の対応する組み合わせが割り当てられるように、
2)色成分q(i)=0を持つ組み合わせq(1)~q(n)には、色データセットZ2を形成する、供給先の色空間のm個の値の成分z(1),z(2),・・・,z(m)の対応する組み合わせが割り当てられるように、
さらに2つの組み合わせを選択し、それぞれに成分z(1)~z(m)の組み合わせが割り当てられ、色成分q(1)~q(n)及びq(1)~q(n)の2つの組み合わせは、q(i)=FA>0、そして、q(i)=0における色iの色成分q(i)のみが異なっている場合、
iii)V(1)=z(1)/z(1),V(2)=z(2)/z(2)12,・・・,V(m)=z(m)/z(m)12の因子のセットを形成する、色データセットZ1のm個の値の各成分z(1)、z(2)、・・・、z(m)と色データセットZ2のm個の値の対応する成分z(1)、z(2)、・・・、z(m)とのそれぞれの成分に対する比率V(1)、V(2)、・・・、V(m)を計算する場合、の
上記条件が適用され、色成分FA=qKB(i)>0を有する、組み合わせKBの色iを選択する工程と、
b)色iの色成分FAを含むが、変換に色成分q(i)=0が設定されている、n個の色を持つ供給元の色空間の色の組み合わせKBの、m個の成分を有する供給先の色空間への変換に際し、因子V(1),V(2),・・・,V(m)による変換から得た、供給先の色空間のz(1),z(2),・・・z(m)を乗算することで、因子V(1),V(2),・・・,V(m)を適用する工程であって、供給先の色空間のz(m)が、V(1),V(2),・・・,V(m)によって乗算される工程と、
に特徴付けられる。
【0035】
基本的な考え方としては、既知の入力の組み合わせの出力値から未知の入力の組み合わせの出力値を段階的に構築し、各段階で追加された入力色の(出力値に対する)色の影響を推定し、この寄与度を以下に詳述する方法で追加することである。
【0036】
既知の入力色の組み合わせ、すなわち出力色値が(例えば、テーブル又は補間によって)利用可能なものにおいて、この色の組み合わせ内で部分的な色の求められる寄与度は、以下のように決定される。入力の組み合わせ「AB」は、部分色「A」の寄与度と残りの色「B」の寄与度に分解され、ベース「B」に対する「A」の色効果を示すことを目的として、別のベース「C」に適用し、未知の組み合わせ「AC」を推定することができる。
【0037】
ここで提案するアプローチでは、ブレンドABは2つのレイヤーAとBのオーバーレイと見なされ、コンピュータグラフィックスで確立された「ブレンディングモード」が使用される(W3C、PDF、Photoshop)。最も重要なブレンディングモードは「乗算」である。これは、線形色値(この場合は「線形値」)に基づいており、0と1の間で正規化されている。「乗算」は、光に関連する色空間(コンピュータグラフィックスではRGBであることが多い)内の2つのレイヤーの線形値を乗算して、色の暗くなるインクオーバーレイをシミュレートする。これにより、オーバープリントと同様の効果が得られる。
【0038】
次に、混合物ABの線形値=(Aの線形値)×(Bの線形値)が適用される。Aの色の寄与度を求めた後に、因子「Aの線形値」を解くことができる。ABとBの線形値は両方ともABを含むテーブルから既知である。光学的にも、Aの線形値は、ベースBの線形値に適用される、追加色の透過率のように機能する。
【0039】
CIEXYZや分光反射率などの線形光に関する供給先の色空間の場合、それらの出力値は線形値として直接取得できる。CIELABの場合、それらはまずCIEXYZに変換され、CIEXYZで計算され、計算の最後に、再び変換される。
【0040】
非線形RGB供給先の色空間の場合、計算は線形化されたドメインで実行される。例えば、0から1の値を持つガンマベースのRGB色空間の場合、非線形性はガンマによるべき乗によって除去され、こうして線形化されたRGB線形値が使用されて、最後に1/γのべき乗によって非線形RGB空間に戻される。
【0041】
インク関連の供給先の色空間では、0~100%の間の印刷色値xは、それらの補数値(1~x)に反転され、RGBの場合と同様に線形化され、オフセット後に再び非線形化される。これらの補数値は、乗算の線形値である。したがって、印刷色の値を使用した計算は、公式としては、「逆乗算」とも呼ばれるブレンディングモード「スクリーン」に対応する。これは、RGB又はDeviceCMYK用のPDFでの通常の処理に従う(非特許文献2)。補数値は再び透過因子のように機能し、したがってインク自体の寄与度は吸収するよう作用する。
【0042】
このアプローチは、Preucilによる印刷におけるインク受容として既知の概念に類似しており、最初に印刷されたインクBと上に印刷されたインクAの線形色値、ここでは、反射率値が個別に測定され、組み合わされた印刷ABでも測定される。後者の測定は製品アプローチAB≒Afa×Bで近似される。ここで未知のインク受入因子「fa」を決定する。「fa」は、Aを主に減少した膜厚<1によって補正する。これに対し、本発明は、AB及びBの既知の線形値を使用して、AB=A×BのアプローチからAの色効果を決定する。
【0043】
本明細書では、既知の組み合わせAB内のいくつかの色Aの色効果を決定し、それを他の色Cに適用して、組み合わせACの出力値を推定する方法を提案する。
【0044】
最も単純な形式では、入力色値の出力値をサブストレイトの出力値と比較することによって、各入力色についてサブストレイトへの影響を個別に把握できる(入力色値ゼロ)。出力値の差は、値によって記述される量における入力色の色効果の尺度である。次に、これらすべての効果が併せて追加される。
【0045】
しかしながら、本発明によるさらなる提案は、個々のインクを印刷シーケンスに段階的にサブストレイトに添加することにより、色の組み合わせの推定を大幅に改善する。すなわち、個々のインクをサブストレイトに一つずつ適用する際に、プロセス固有のインク受け入れ特性を考慮に入れることによって、例えば、オフセット印刷における固体の濃色を湿式オン湿式でオーバープリントする場合、約75%とされているプロセス固有のインク受け入れ特性を補正することによって、伝達因子、すなわち線形値をインク受け入れに指数的に適用する。
【0046】
一方、単色だけでなく、部分空間テーブル内の色の組み合わせも既知である場合、本発明に従った提案によれば、単色からの推定ではなく、既知の出力値として存在するテーブルから、入力組み合わせのできるだけ多くの部分カラーの相互作用を直接読み取る方が良い。最初に、部分空間テーブルが利用可能なカラーグループを選択する。例えば、その入力色値ができるだけ多くの入力組み合わせ全体の割合をカバーするように選択する。次に、残りの入力色から、例えば、その入力色値が組み合わせにおける最大の割合を持つものを特定し、この色を含む部分空間テーブル(既知の色との大きな重複を理想的に含む)を選択する。この部分空間において、この色を含む場合と含まない場合の出力色値を読み取り、それらを再度比較する。その差は、この色が与えられた色値に追加された場合に起こる事項を示す尺度である。したがって、この差を初期カラーグループの出力値に適用し、色が追加された状態となる。これは、次に、次の残りのカラーが特定され、すべての入力組み合わせの色が含まれるまでの新しい初期組み合わせである。
【0047】
本発明による方法は、以下のように一般化して提案される。
【0048】
特定の入力に対して、変換(テーブルなど)が使用可能で、入力の組み合わせの一部を含むカラーグループが検索される。(完全な組み合わせは推定されるため、含まれていない)。このカラーグループのセットは、段階的に処理される。例えば、1つのカラーグループが開始点として選択され、最初の段階で、入力色の追加に使用する2番目のカラーグループが選択される。以降の段階では、入力で発生するすべての色が追加されるまで、さらにカラーグループが選択される。
【0049】
段階ごとに次の処理が行われる。まず、一般的な印刷色(交差)は、段階に含まれるカラーグループから識別される。これは少なくとも2つ、最大でセット全体である。共通のインクがない場合、交差は印刷されていないサブストレイト、つまりテーブルのゼロエントリである。
【0050】
したがって、一方では、段階の各カラーグループには、一般的な印刷インクだけでなく、追加の印刷インクも含まれている。各カラーグループについて、これらの追加の、すなわち、非共通な印刷インクが識別される。
【0051】
各カラーグループについて、入力に含まれる部分は混合と見なされる。混合物は、上記の計算の「ベース」を表す一般的な色の寄与度と、追加の(「追加された」)色の寄与度に分解される。これにより、(ベースに対する)色の効果の尺度が与えられる。
【0052】
このようにして、ベースBに対する混合物AB中の色成分Aの色寄与度は、出力色の供給先の色空間内のグループごとに決定される。重要な点は、この貢献がその後、他のベース、つまり構成されたベースに適用できることである。したがって、関係する各カラーグループについて、ベースとしての共通色の寄与度と補色としての追加色の寄与度が固定される。これで、補数の寄与度をこの段階の他のカラーグループに適用できる。これにより、これまで知られていなかった色混合物について1つ以上の推定値が得られる。
【0053】
段階でいくつかの分解が発生し、したがって代替の組み合わせ組成方法が可能である場合、これらは重み付けされ、段階の最終結果に平均化される。有用な重みは、推定値の相対的な確実性(既知と見なされる部分結果からの距離など)である。以下の例では、ジャンプが回避されることにより、色遷移変換結果の品質が向上することが説明されている。
【0054】
平均化で段階が完了する。段階の最終結果は、推定によって新たに生成されたカラーグループとして、次の段階でさらなるカラーグループでオフセットされ、最終的にすべての入力色の組み合わせが推定されるまで、さらに入力色が取り込まれる。このようにして、混合物は入力が完了するまで、段階的に構成される。
【0055】
次の例では、カラーグループCMYKとOMYKを使用して、効率と精度の間の異なる妥協点を表す、異なる戦略が示されている。分解の組み合わせ論の観点から、他の戦略も考えられるため、本戦略の実行に制限されるものではない。
【0056】
目的の入力は、CMYK+Oの色の組み合わせと、30%C、60%M、10%Y、20%K、50%Oの比率である。CMYKとMYKOのテーブルはあるが、CMYKOのテーブルはない。簡略化のために、テーブルには光に関連する線形出力値がすでに含まれていることを前提とする。
【0057】
最速の方法は、最初の4色であるCMYKカラーグループを直接使用し、欠落している色の寄与度のみを混ぜることである(ここではオレンジのみ)。したがって、最初にCMYKカラーグループ30%C、60%M、10%Y、20%Kの出力値が読み取られる。
【0058】
50%Oのまだ欠けている色の寄与度は、次のように決定される。
【0059】
CMYKとMYKOの共通している色はMYKである。CMYKの追加の色はC、MYKOの追加の色はOである。MYKは、60%M、10%Y、20%Kの値を持つベースBと見なされ、出力値が読み取られる。60%M、10%Y、20%K、50%Oの値を持つ混合物ABの出力値も読み取られる。混合物ABの出力値が読み取られ、50%Oの色量Aの加算によって基数が変化する透過因子は、ABとBの出力値の商である。
【0060】
この因子は、CMYKカラーグループ50%C、60%M、10%Y、20%Kの出力値の、上記の読み取り値に適用(乗算)され、CMYKO色値の合計の望ましい結果が得られる。
【0061】
この方法の利点は、何も決定せずに左から右に順番に移動し、最初に表にされた色の値を読み取って、さらに右に追加されるすべての色を独自のテーブルから相対因子として適用できることである(A=AB/B)。
【0062】
別の方法では、Bの一般的な色(ここではMYK)の代わりに印刷されていないサブストレイトのみを使用する。AB=A=50%Oのテーブル値であり、50%Oの効果は、50%Oのテーブル値と未印刷用紙のテーブル値の商である。
【0063】
しかし、オレンジは、他の多くの色が存在する場合とは異なる効果を白い紙に与えることが想像できるであろう。ここでは、30+60+10+20%のCMYK色量の存在下での効果を探ろうとしている。この効果については不明であり、テーブルは存在しない。現実的な推定のためには、紙に対する50%Oの、強力で有り得る効果ではなく、60+10+20%MYKカラーセットに対する50%Oの、異なり得る効果が用いられることは、明らかである。
【0064】
精度を高めるために、追加する寄与度の大きさのサイズが考慮される。少量の塗布30%Cよりも、大量の塗布50%Oを追加する方が、精度が低くなりうる。つまり、MYKO60+10+20+50から始めると、上記のCMYK30+60+10+20のインクカバレッジが120%であるのに対し、表から特定の知識としてすでに140%のインクカバレッジが得られる。この改善は、追加のソート段階で取り入れられる。
【0065】
ただし、この寄与度の大きさに依存した手順には、優先順序が含まれているため、勾配で2つの値が収束する場合に問題となる。例えば、シアンがピクセルごとに30%から50%以上に増加すると仮定する。寄与度の大きさに基づく並べ替えでは、最初のピクセルのベースとしてMYKOが選択され、小さい方のC値が加算される。Cが等しいか最小で大きくなると、Oの寄与度が小さいため、ベースはCMYKに変更される。一般に、ベースCMYK+寄与度50%Oの結果は、ベースMYKO+寄与度50%Cの結果とは等しくない。そのため、ジャンプが発生する。このジャンプは望ましくない結果である。
【0066】
したがって、品質のさらなる向上には、前述のようにベース+寄与度の両方の組み合わせを使用し、それらを重み付けて平均化する方法が採用される。その後の移行が安定することが保証される。
【0067】
さらなる例において、本発明による方法のプロセスフローを実証する。入力色データは、4個の色成分q(1)、q(2)、q(3)、q(4)を持つ供給元の色空間からのものである。これらは、3つの色値z(1)、z(2)、z(3)を持つ供給先の色空間に変換される。
【0068】
供給元の色空間の色成分の組み合わせには、T(1)[q(1),q(2),q(3)],T(2)[q(1),q(2),q(4)],T(3)[q(1),q(3),q(4)],T(4)[q(2),q(3),q(4)],T(5)[q(3),q(4)]の変換マッピングを使用できる。
【0069】
入力データセットには、q(1)、q(2)、q(3)、q(4):20406080の値が含まれている、
【0070】
最初に、色iを選択する。必要な割り当て条件は、すべての色1~4に対して満たされており、色1が選択される。これは、その色成分q(1)が最も小さいためであり、したがって、おそらくより小さな影響が推定され、色2~4の色成分の既知の大きな供給先の色組み合わせに適用される。
【0071】
まず、T(4)が存在する、値Zの組み合わせ(色i=1の色部分なし)は、
04060 80であり、これは最大値のペアリングに関係する。これにより、値z(1),z(2),z(3)が得られる。
04060 80 22,763 19,558 6,670
【0072】
これをベースとし、色成分FA=q(1)=20の影響を決定する。
【0073】
q(1)の影響を判断するには、T(3)が存在する、q(1)=FAとの値の組み合わせ20060 80が選択される。これにより、z(1),z(2),z(3)(色データセットZ1)が得られる。
20060 80 29,779 22,759 5,153
【0074】
次に、T(5)が存在する、q(1)=0で、その他は等しくなる値の組み合わせ0060 80が選択される。これにより、z(1),z(2),z(3)(色データセットZ2)が得られる。
0060 80 42,435 31,883 6,821
【0075】
2つ値の一連の比率Vが形成される。
0.701 0.714 0.755
【0076】
これらの因子Vは、変換中に適用される。したがって、ベースである色値
04060 80 22,763 19,558 6,670
より、得られたz(1),z(2),z(3)の結果に、因子を掛ける。
204060 80 15,948 13,961 5,039
【0077】
本発明は、確かな印刷システムにおいて、非常に高い解像度のレイアウト及び多数の入力色であっても、色空間への十分に高速かつ高品質の色空間変換を可能とする、当業者にとって実用的かつ実現可能な解決策を記載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図面を参照して、以下の説明により、さらなる利点及び特徴を説明する。図面は、以下の通りである。
【0079】
図1図1は、プロセス工程を説明するフローチャートである。
図2図2は、欠落した複数の色を推定するためのフローチャートである。
図3図3は、4次元以上の色データが起こった際の図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1によれば、n個の色の供給元の色空間から、色成分Q={q(1),q(2),・・・,q(n)}を有する色データ101の入力組み合わせKBが存在し、これは、m個の値の組み合わせを有する供給先の色空間に変換される。この組み合わせの消失しない色成分は、いわゆるカラーグループを形成する。工程102では、この色成分がFA=q(i)>0であり、特定の条件が適用されるカラーグループから色iが検索される。
1)色成分q(i)=0が設定されている色データ101の部分集合Q(103)に対して、供給先の色空間からの出力Z(107)は、変換ルールTRV106によって割り当てられなければならない。したがって、色iの存在しない色群の変換結果を示し、後に色iの影響によって補完されることになる。
2)q(i)=FA、又は任意であり、変換ルールTRV106によって出力Z1(108)が割り当てられる、すなわち色iの同じ色成分FAを有するこの他の入力の変換結果を示す、別の入力Q1(104)が存在しなければならない。
3)適切には、色iの部分がq(i)=0であることを除いて、Q1と同一の入力Q2(105)が形成される。出力Z2(109)は、変換ルールTRV106によってこの入力に割り当てられ、したがって、色iの影響なしにこの他の入力の変換結果を示す。
【0081】
この色iが存在する場合、その色成分FAの影響は、色成分FAの有無にかかわらず出力ペアZ1とZ2の比V(110)から推定される。この影響は、カラーシェアq(i)=FAでFAなしの割り当てがあるすべての組み合わせ、無論、特に入力の組み合わせKBに適用できる。この目的のために、工程111において、色iの寄与度のない出力Zに、成分ごとの比V(110)を乗算する。こうして求められた結果112が形成され、これが色群入力組合せKB全体の目標色値の推定値となる。
【0082】
つまり、この小さいカラーグループに出力が割り当てられるという条件で、入力の組み合わせのカラーグループは、色iを削除してサイズを縮小し、その後、元のカラーグループが再び完成するように、推定によって色iが追加される。本発明によれば、この削減操作は複数回行うこともでき、最大でn回の工程で空の色グループ、つまり未印刷のサブストレイトに到達する。そこから必要に応じて、各個の色を1つずつ追加して、完全な色グループを得ることができる。これを図2に示す。
【0083】
図2によれば、n個の色の供給元の色空間からの色データ201があり、これらは変換され、入力を表す。工程202では、変換ルールにおいてどの供給先の色データ203が利用可能であるかについてカラーグループが検索される。このカラーグループは、色データ201のサブセットであり、供給先の色データ203をフル出力に追加しながら、段階的にフルセットに追加されるものである。工程204において、現在のカラーグループが既に完成している場合、出力205は準備完了となる。そうでない場合、まだ欠けている色のうちの1つであるiが工程206において選択される。この1つについて、2つの色データセットQ1及びQ2のペアが選択される。すなわち、工程207において、色iの所与の色部分FA=q(i)を含み、色データセットZ1(208)を形成する、供給先の色空間のm個の値z(1)、z(2)、・・・、z(m)の組み合わせである色データセットQ1と、工程209において、色iを除くすべての色についてQ1と同じ色成分を含み、色iの成分が0に等しく、色データセットZ2(210)を形成する、供給先の色空間のm個の値z(1)、z(2)、z(m)の組み合わせが存在する色データセットQ2と、のペアが選択される。選択された両方のデータセット、iの割合を持つカラーグループとiの比率を持たないカラーグループは、供給元の色空間のn個の色の色データである。工程211では、色データセットZ1(108)のm個の値と、色データセットZ2(210)のm個の値との比が、成分ごとに計算される。これらの比Vは、色iの推定効果として、工程212において現時点の出力に成分ごとに適用され、色iが現在のカラーグループに付加される(213)。この工程は、カラーグループが完成するまで、つまり、変換205の結果が利用可能になるまで、必要に応じて繰り返される。
【0084】
図3は、7ページの説明に加えて、従来において、個々のオブジェクトが4色以上を使用していないにもかかわらず、4色を超えるオーバープリントの発生を示している。CMYKの4色で構築された画像領域202と、スポットカラーで構成されたロゴ領域203とを有する様式化されたパッケージデザイン201が示されている。デザインの拡大図204は、CMYK画像とスポットカラー矩形の輪郭が重ならず、当接しているだけであることを示している。したがって、デザインには5色の領域はない。印刷物製造におけるいわゆるトラッピング205のみが、見当合わせ関連のフラッシュを回避するために、上述のように使用される。輪郭の1つを拡大し、ひいては、CMYKによるスポットカラーのオーバープリント領域206を作成し、ここで5色が同時に現れる。これとは独立して、アンチエイリアシング207を用いたハーフトーン化は、それらに属する領域の部分からのハーフトーンドットを混合することもできる。そのため、CMYK及びスポットカラー部分を有するさらなる5色ピクセル208が作成される。
図1
図2
図3
【外国語明細書】