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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002606
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】配膳車
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/00 20060101AFI20231228BHJP
   A47B 96/06 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A47B31/00 H
A47B96/06 E
A47B96/06 B
A47B96/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101902
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 富和
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 勝弥
(57)【要約】
【課題】仕切壁のメンテナンス性に優れた配膳車を提供すること。
【解決手段】配膳車1は、食器を載せ置いたトレイ5を収容して運搬する。配膳車1は、トレイ5を収容可能な収容室44と、収容室44内に立設される支柱部45と、支柱部45に着脱可能に取り付けられる複数のトレイ保持部46と、を備える。複数のトレイ保持部46は、支柱部45の立設方向において支柱部45に沿って並んで、収容室44を区分けする仕切壁47を構成するとともに、前記立設方向において互いに隣り合う一のトレイ保持部46と他のトレイ保持部46との間にトレイ5を挟んで保持可能である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器を載せ置いたトレイを収容して運搬するための配膳車であって、
前記トレイを収容可能な収容室と、
前記収容室内に立設される支柱部と、
前記支柱部に着脱可能に取り付けられる複数のトレイ保持部と、を備え、
前記複数の前記トレイ保持部は、
前記支柱部の立設方向において前記支柱部に沿って並んで、前記収容室を区分けする仕切壁を構成するとともに、前記立設方向において互いに隣り合う一の前記トレイ保持部と他の前記トレイ保持部との間に前記トレイを挟んで保持可能である、
配膳車。
【請求項2】
請求項1に記載の配膳車において、
前記支柱部は、
当該支柱部の内側にある中空状の空間の内外を連通する複数の孔部を有し、
前記複数の前記トレイ保持部の各々は、
前記孔部に挿入される固定部を有するとともに、前記固定部を前記孔部から抜出できないように前記空間内において前記固定部が固定される固定状態と、前記固定部を前記孔部から抜出できるように前記固定部の固定が解除される解除状態と、を切り替え可能であることにより、前記支柱部に着脱可能に取り付けられる、
配膳車。
【請求項3】
請求項2に記載の配膳車であって、
前記空間内に配置される固定金具を、更に備え、
一対の前記トレイ保持部が、
前記支柱部を挟むように配置され、一方の前記トレイ保持部の前記固定部と他方の前記トレイ保持部の前記固定部とが前記固定金具を介して互いに係り合うことによって前記固定状態となり、且つ、前記固定金具を取り外すことによって前記解除状態となる、ように構成される、
配膳車。
【請求項4】
請求項2に記載の配膳車において、
前記複数の前記トレイ保持部の各々の前記固定部は、
前記孔部への挿入方向に片持ち梁状に延びる固定片と、前記固定片に連結されて前記挿入方向に交差する方向に延びる補強片と、を有する、
配膳車。
【請求項5】
請求項4に記載の配膳車において、
前記複数の前記トレイ保持部の各々は、
前記固定片の基端部の周辺に、当該トレイ保持部を構成する構造材の厚さが前記固定片に近づくにつれて厚くなる肉厚部を、有する、
配膳車。
【請求項6】
請求項1に記載の配膳車であって、
前記支柱部を取り囲むように配置される枠体部を、更に有し、
前記枠体部は、
前記トレイの前記トレイ保持部による被保持箇所とは異なる箇所を支持して前記トレイの傾きを規制可能なトレイ受け部を有する、
配膳車。
【請求項7】
請求項1に記載の配膳車において、
前記複数の前記トレイ保持部の各々は、
前記支柱部に取り付けられる本体部と、前記本体部に嵌め込まれて前記トレイに接触することになる弾性材料から構成されたシール部と、を有する、
配膳車。
【請求項8】
請求項7に記載の配膳車において、
前記シール部は、
発泡シリコーンゴム材から構成された母材と、前記母材を被覆して前記トレイに接触することになるシリコーン皮膜材から構成された表面材と、を有する、
配膳車。
【請求項9】
請求項7に記載の配膳車において、
前記トレイ保持部の前記本体部は、
同一形状を有する一対の筐体部品を組み付けることより、前記シール部が嵌め込まれる凹状の空間を当該本体部の内側に画成するように、構成される、
配膳車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器を載せ置いたトレイを収容して運搬するための配膳車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の施設(例えば、医療施設や介護施設など)での食事の提供を目的として、調理済みの食品が置かれた多数のトレイを収容して移動可能な配膳車と、食品の加熱や冷却が可能なステーションと、を備えた食品調温システムが提案されている。この種の食品調温システムは、例えば、ステーションに配膳車を接続した状態で食品の加熱や冷却を行った後、ステーションから配膳車を分離して食品の運搬及び提供を行うようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-291966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の食品調温システムで用いられる配膳車では、トレイを収容する収容室内に、左右方向に延びる棚板と、上下方向に延びて収容室を2つの空間に区分けする仕切壁と、が設けられている。配膳車を使用する際、仕切壁に設けたスリット状の隙間にトレイを挿し込むことで、トレイの下面が棚板に載せ置かれた状態となり、トレイがほぼ水平な姿勢で保持される。そして、必要に応じて、仕切壁で区分けされた一方の空間に熱風が供給され、且つ、他方の空間に冷風が供給されることで、一方の空間内に露出したトレイ上の食品が加熱されるとともに、他方の空間内に露出したトレイ上の食品が冷却されるようになっている。
【0005】
上述した従来の配膳車では、左右方向に延びる棚板に、仕切壁の骨格部材が溶接されて固定されている。換言すると、棚板と仕切壁とが分離不能に一体化されている。このような仕切壁の固定構造は、仕切壁を強固に固定する点では一見有利であるものの、実際には、仕切壁に破損や経年劣化等が生じたときに仕切壁の修理や交換等のメンテナンスが困難である点でデメリットがある。配膳車の仕切壁は、日常的に熱風及び冷風に晒されることになるため、定期的なメンテナンスを出来る限り容易に行い得ることが望ましい。このような理由から、仕切壁のメンテナンス性に優れた配膳車が望まれている。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、仕切壁のメンテナンス性に優れた配膳車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る配膳車は、下記[1]~[9]を特徴としている。
[1]
食器を載せ置いたトレイを収容して運搬するための配膳車であって、
前記トレイを収容可能な収容室と、
前記収容室内に立設される支柱部と、
前記支柱部に着脱可能に取り付けられる複数のトレイ保持部と、を備え、
前記複数の前記トレイ保持部は、
前記支柱部の立設方向において前記支柱部に沿って並んで、前記収容室を区分けする仕切壁を構成するとともに、前記立設方向において互いに隣り合う一の前記トレイ保持部と他の前記トレイ保持部との間に前記トレイを挟んで保持可能である、
配膳車であること。
[2]
上記[1]に記載の配膳車において、
前記支柱部は、
当該支柱部の内側にある中空状の空間の内外を連通する複数の孔部を有し、
前記複数の前記トレイ保持部の各々は、
前記孔部に挿入される固定部を有するとともに、前記固定部を前記孔部から抜出できないように前記空間内において前記固定部が固定される固定状態と、前記固定部を前記孔部から抜出できるように前記固定部の固定が解除される解除状態と、を切り替え可能であることにより、前記支柱部に着脱可能に取り付けられる、
配膳車であること。
[3]
上記[2]に記載の配膳車であって、
前記空間内に配置される固定金具を、更に備え、
一対の前記トレイ保持部が、
前記支柱部を挟むように配置され、一方の前記トレイ保持部の前記固定部と他方の前記トレイ保持部の前記固定部とが前記固定金具を介して互いに係り合うことによって前記固定状態となり、且つ、前記固定金具を取り外すことによって前記解除状態となる、ように構成される、
配膳車であること。
[4]
上記[2]に記載の配膳車において、
前記複数の前記トレイ保持部の各々の前記固定部は、
前記孔部への挿入方向に片持ち梁状に延びる固定片と、前記固定片に連結されて前記挿入方向に交差する方向に延びる補強片と、を有する、
配膳車であること。
[5]
上記[4]に記載の配膳車において、
前記複数の前記トレイ保持部の各々は、
前記固定片の基端部の周辺に、当該トレイ保持部を構成する構造材の厚さが前記固定片に近づくにつれて厚くなる肉厚部を、有する、
配膳車であること。
[6]
上記[1]に記載の配膳車であって、
前記支柱部を取り囲むように配置される枠体部を、更に有し、
前記枠体部は、
前記トレイの前記トレイ保持部による被保持箇所とは異なる箇所を支持して前記トレイの傾きを規制可能なトレイ受け部を有する、
配膳車であること。
[7]
上記[1]に記載の配膳車において、
前記複数の前記トレイ保持部の各々は、
前記支柱部に取り付けられる本体部と、前記本体部に嵌め込まれて前記トレイに接触することになる弾性材料から構成されたシール部と、を有する、
配膳車であること。
[8]
上記[7]に記載の配膳車において、
前記シール部は、
発泡シリコーンゴム材から構成された母材と、前記母材を被覆して前記トレイに接触することになるシリコーン皮膜材から構成された表面材と、を有する、
配膳車であること。
[9]
上記[7]に記載の配膳車において、
前記トレイ保持部の前記本体部は、
同一形状を有する一対の筐体部品を組み付けることより、前記シール部が嵌め込まれる凹状の空間を当該本体部の内側に画成するように、構成される、
配膳車であること。
【0008】
上記[1]の構成の配膳車によれば、収容室内に立設された支柱部に、複数のトレイ保持部が着脱可能に取り付けられる。複数のトレイ保持部は、支柱部の立設方向に沿って並んで、収容室を区分けする仕切壁を構成する。そして、隣り合うトレイ保持部同士の間の隙間にトレイを挟むことで、トレイが収容室内に保持されることになる。よって、本構成の配膳車は、収容室を複数の空間に区切ることや収容室内にトレイを保持すること等の配膳車としての機能を損なうことなく、トレイ保持部が支柱部から着脱可能であることで、トレイ保持部の修理や交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。したがって、本構成の配膳車は、従来の配膳車に比べ、仕切壁のメンテナンス性に優れる。
【0009】
上記[2]の構成の配膳車によれば、トレイ保持部を支柱部に着脱可能に取り付けるにあたり、トレイ保持部が有する固定部が、支柱部が有する孔部に挿入される。更に、支柱部の内側の空間内において、固定部が孔部から抜出不能であるように固定される固定状態と、固定部が孔部から抜出可能であるようにその固定が解除される解除状態と、を切り替え可能となっている。これにより、例えば、破損や経年劣化によりメンテナンスが必要となったトレイ保持部のみを固定状態から解除状態に切り替えることで、そのトレイ保持部を支柱部から容易に取り外すことができ、従来の配膳車のような棚板に仕切壁が溶接で一体化されているものに比べて作業性を向上させることができる。更に、支柱部の内側の空間内でトレイ保持部が固定されているため、支柱部の外側でトレイ保持部を固定する場合(例えば、支柱部の外壁面へのネジ止め等)に比べ、収容室の内部における凹凸を低減できる。これにより、収容室の内部の清掃が容易になることで、配膳車の衛生性を高めることができる。したがって、本構成の配膳車は、従来の配膳車に比べ、メンテナンス性に優れることに加え、衛生性にも優れる。
【0010】
上記[3]の構成の配膳車によれば、支柱部を挟むように一対のトレイ保持部が配置され、一方のトレイ保持部の固定部と他方のトレイ保持部の固定部とが、支柱部の内側に配置された固定金具を介して互いに係り合うことにより、固定状態となる。更に、その固定金具を取り外すことにより、解除状態となる。これにより、トレイ保持部の固定部を支柱部の孔部に容易に挿入可能なシンプルな形状にしながら、トレイ保持部とは別部品である固定金具を用いることで双方の固定部を強固に係合できる。したがって、本構成の配膳車は、トレイ保持部を着脱可能にしながら、トレイ保持部の傾き等の位置ズレを抑制することで、仕切壁によるトレイの保持力を高めることができる。
【0011】
上記[4]の構成の配膳車によれば、トレイ保持部の固定部は、孔部への挿入方向に片持ち梁状に延びる固定片と、挿入方向に交差する方向に延びる補強片と、を有する。固定片と補強片とが互いに交差する方向に延びることにより、固定部の全体的な剛性が向上する。これにより、固定部そのものの撓み等の変形を抑制し、トレイ保持部の傾き等の位置ズレを抑制することで、仕切壁によるトレイの保持力を更に高めることができる。
【0012】
上記[5]の構成の配膳車によれば、上述した固定片の基端部の周辺に、トレイ保持部を構成する構造材の厚さが固定片に近づくにつれて厚くなる肉厚部が設けられる。これにより、固定部の全体的な剛性が向上し、仕切壁によるトレイの保持力を更に高めることができる。
【0013】
上記[6]の構成の配膳車によれば、支柱部を取り囲むように配置される枠体部に、トレイ受け部が設けられる。そして、トレイの被保持箇所がトレイ保持部に保持され、且つ、トレイの被保持箇所とは異なる箇所がトレイ受け部に支持される。これにより、例えば、トレイ受け部の配置の工夫(例えば、仕切壁が区分けする一方の空間ではトレイ受け部がトレイを支持し、他方の空間ではトレイ受け部がトレイを支持しないこと)により、トレイの被保持箇所周りのトレイの傾きを適度に許容すれば、トレイの傾きが完全に禁止される場合に比べ、食器の入れ替えを容易に行うことができる。
【0014】
更に、本構成の配膳車は、仕切壁のトレイ保持部と枠体のトレイ受け部とでトレイを保持できるため、従来の配膳車で用いられているような棚板を必要としない。換言すると、上下に並ぶトレイの有効載置面(即ち、食器を載せ置く部分)同士の間を遮るものが存在しない状態で、トレイを保持できる。そのため、棚板が無い分だけ、上下に並ぶトレイ同士の間の距離を狭めることができる。その結果、収容室へのトレイの収容量を損なうことなく、配膳車をコンパクト化できる。
【0015】
上記[7]の構成の配膳車によれば、トレイ保持部は、支柱部に取り付けられる本体部と、本体部に嵌め込まれてトレイに接触することになる弾性材料から構成されたシール部と、を有する。これにより、トレイの重量をシール部で受け止めることで、シール部が弾性変形してトレイに密着することになる。その結果、シール部が無い場合に比べ、トレイと仕切壁との密着性が高まり、仕切壁が区分けした空間同士の間での空気漏れ等を抑制することができる。即ち、仕切壁による密封性が高まる。
【0016】
上記[8]の構成の配膳車によれば、上述したシール部は、発泡シリコーンゴム材から構成された母材と、母材を被覆してトレイに接触することになるシリコーン皮膜材から構成された表面材と、を有する。これにより、発泡シリコーンゴム材が適度な硬さを有するため、トレイを適正に保持できる。更に、シリコーン皮膜材が良好な滑り性を有するため、トレイを仕切壁で保持するとき、トレイ保持部同士の間にトレイを容易に挿し込むことができる。加えて、母材及び表面材に共にシリコーン系材料を用いることにより、母材と表面材との密着性を高め、表面材の剥離等を抑制できる。
【0017】
上記[9]の構成の配膳車によれば、トレイ保持部の本体部は、同一形状を有する一対の筐体部品から構成される。そして、一対の筐体部品を組み付けることより、シール部が嵌め込まれる凹状の空間が、本体部の内側に画成される。同一形状の筐体部品でトレイ保持部を製造できるため、筐体部品の部品管理が容易になり、トレイ保持部の生産性が高まる。更に、単一の筐体部品に凹状の空間を設ける場合よりも、筐体を製造するための金型の構造を単純化できることに加え、凹状の空間の形状の設計自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、仕切壁のメンテナンス性に優れた配膳車を提供できる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る配膳車を含む食品調温システムの斜視図である。
図2図2は、インサートとカートとステーションとが分離された図1に示す食品調温システムの斜視図である。
図3図3は、図2に示すステーションの正面図である。
図4図4は、図2に示すインサートの斜視図である。
図5図5は、図4に示すトレイ保持部の斜視図である。
図6図6は、図5のA部の拡大図である。
図7図7は、図5に示すトレイ保持部を前方から見た図である。
図8図8は、インサートの支柱部に形成された孔部にトレイ保持部を挿入する際の様子を示す斜視図である。
図9図9は、前後一対のトレイ保持部の固定部同士を締結固定する際の様子を右方から見た側面図である。
図10図10は、図9に示すように締結固定された前後一対のトレイ保持部を上方から見たときの支柱部の周辺を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る配膳車1を含む食品調温システム10について説明する。本例では、カート3にインサート4が格納されてカート3及びインサート4を一体として搬送可能となった構造体を「配膳車1」と称呼する。後述するように、配膳車1は、食品を載せ置いたトレイ5を収容室44に収容した状態で運搬可能となっている。
【0022】
図1及び図2に示すように、食品調温システム10は、床面に静置されるステーション2と、移動可能であってステーション2と接続されるカート3と、移動可能であってカート3に格納されるインサート4と、を備える。なお、「調温」は、食品を加熱すること(例えば、調理済みの食品を喫食温度まで加熱すること)、食品を冷却すること(例えば、調理済みの食品を保管する温度まで冷却すること)、及び、加熱又は冷却した食品の温度を喫食温度に維持することを含む概念である。
【0023】
食品調温システム10は、ステーション2から吹き出される冷風又は熱風によって、配膳車1に収容された食品の冷却及び加熱が可能であり、且つ、調温された食品が収容された配膳車1をステーション2から分離して運搬できるようになっている。食品調温システム10は、例えば、医療施設や介護施設などでの食事提供を目的として用いられる。
【0024】
以下、説明の便宜上、図1等に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、ステーション2へのカート3の接続方向、及び、カート3へのインサート4の格納方向と一致している(図2参照)。
【0025】
<ステーション2>
まず、ステーション2の構成について説明する。ステーション2は、接続された配膳車1の収容室44(具体的には、インサート4の枠体内に形成されてカート3によって外部から隔離される収容室44)に熱風又は冷風を供給可能な装置である。ステーション2は、図2及び図3に示すように、縦長の略矩形箱状の筐体11と、筐体11の上部に載置された機械室12と、筐体11の底部に設置された固定脚13と、を備えている。機械室12は、空気を冷却する冷却器(図示省略)へ冷媒を循環させる冷却装置(図示省略)と、熱風又は冷風の供給を制御する制御部(図示省略)と、を内部に備えている。
【0026】
筐体11は、左右一対の側壁と後壁とから構成されており、上方からみて前方が開口した略U字状の形状を有している。ステーション2への配膳車1の接続時、筐体11の内部空間14(図2参照)には、前方からカート3の後側部分が収容される(図1参照)。筐体11の後壁の前面(内部空間14の後端を画成する面)には、図3に示すように、縦長の矩形状の加熱冷却用開口部15及び冷却用開口部16が、左右方向に隣接し且つ加熱冷却用開口部15が冷却用開口部16の左側に位置するように、設けられている。加熱冷却用開口部15の周縁部には矩形枠状のパッキン17が設けられ、冷却用開口部16の周縁部には矩形枠状のパッキン18が設けられている。パッキン17の上下方向に延びる右端部分と、パッキン18の上下方向に延びる左端部分とは、兼用されている。
【0027】
筐体11の後壁の内部には、加熱冷却用開口部15に連通する加熱冷却部19と、冷却用開口部16に連通する冷却部20とが設けられている(図3参照)。加熱冷却部19は、機械室12に設けられた冷却装置と接続する第1冷却器(図示省略)と、ヒータ(図示省略)と、第1循環ファン(図示省略)と、を備えている。第1循環ファンは、加熱冷却用開口部15に設けられた吸引部21を介して内部空間14(実際には、内部空間14に配置された配膳車1の収容室44)から吸引した空気を第1冷却器とヒータに通過させて、加熱冷却用開口部15に設けられた吐出部22を介して内部空間14(配膳車1の収容室44)へ吹き出す機能を有している。冷却部20は、機械室12に設けられた冷却装置と接続する第2冷却器(図示省略)と、第2循環ファン(図示省略)と、を備えている。第2循環ファンは、冷却用開口部16に設けられた吸引部23を介して内部空間14(配膳車1の収容室44)から吸引した空気を第2冷却器に通過させて、冷却用開口部16に設けられた吐出部24を介して内部空間14(配膳車1の収容室44)へ吹き出す機能を有している。
【0028】
第1,第2冷却器、ヒータ、及び、第1,第2循環ファンの運転は、機械室12に設けられた制御部により制御される。加熱冷却部19について、ヒータ及び第1循環ファンの運転により、加熱冷却用開口部15(具体的には、吐出部22)から熱風が吹き出され、第1冷却器及び第1循環ファンの運転により、加熱冷却用開口部15(吐出部22)から冷風が吹き出される。このように、加熱冷却部19では、加熱冷却用開口部15からの熱風の吹き出しと冷風の吹き出しとが切り替え可能となっている。冷却部20については、第2冷却器及び第2循環ファンの運転により、冷却用開口部16(具体的には、吐出部24)から冷風が吹き出される。これにより、後述するように、1つのトレイ5(図2及び図4参照)上に配置した複数の食品の一部を冷却しながら他部を加熱する同時調温が可能である。
【0029】
機械室12の筐体の前面には、タッチ画面等で構成されて制御部を操作する操作部25が設けられている(図1図3参照)。なお、操作部25は、タッチ画面に限らず、物理的に作動するハードボタンで構成されてもよく、さらに外部端末による通信等により操作するように構成されても良い。筐体11の後壁の前面の上部には、カート3の接続を検知する接続センサ26が設けられている(図3参照)。
【0030】
<カート3>
次いで、カート3の構成について説明する。カート3は、インサート4を内部に格納した状態で、インサート4の仕切壁47(図2参照)によって左右に区分けされた加熱冷却用収容室44a及び冷却用収容室44b(図2参照)を覆い、加熱冷却用収容室44a及び冷却用収容室44bを外部から隔離する機能を有している。カート3は、図2に示すように、インサート4を格納する格納室33を有する矩形箱状のカート本体31と、カート本体31の底面に固定された複数のキャスター32と、を備えている。
【0031】
カート本体31は、ステーション2と接続される矩形状の後側開口部34と、インサート4が搬入出自在とされる矩形状の前側開口部35と、後側開口部34を開閉するための左右一対の開閉扉36と、前側開口部35を開閉するための左右一対の開閉扉37と、を有している。開閉扉37の内面外周部には、前側開口部35を密封するパッキン39が装着されている。カート本体31は、断熱材を内包した断熱構造を有し、格納室33を保温可能となっている。
【0032】
<インサート4>
次いで、インサート4の構成について説明する。インサート4は、仕切壁47によって収容室44を区分けする機能、及び、食器を載せ置いたトレイ5を保持する機能を有している。インサート4は、図4に示すように、直方体状の枠体である本体部41と、本体部41の下部に設けられた底板42の底面に固定された複数のキャスター43と、を備えている。本体部41の内部空間は、トレイ5を収容可能な収容室44として機能する。
【0033】
インサート4は、図4に示すように、底板42から上方に突出するように収容室44の中央部に立設された支柱部45と、支柱部45に着脱可能に取り付けられる複数の棒状のトレイ保持部46と、を備えている。なお、支柱部45及びトレイ保持部46を含むインサート4の構成の詳細については後述する。
【0034】
支柱部45には、複数の前後方向に延びるトレイ保持部46が、前後両側から、上下方向に沿って並ぶように取り付けられる(図4参照)。このように支柱部45に取り付けられた複数のトレイ保持部46は、支柱部45の前後両側において、前後方向且つ上下方向に延びる仕切壁47を構成している。前後一対の仕切壁47は、収容室44を、左側の加熱冷却用収容室44aと右側の冷却用収容室44bとに区分けしている(図2及び図3参照)。加熱冷却用収容室44aは、ステーション2の加熱冷却用開口部15に接続され、冷却用収容室44bは、ステーション2の冷却用開口部16に接続されることになる。
【0035】
上下に隣り合うトレイ保持部46同士の間には、トレイ5が保持可能となっている(図4参照)。より具体的には、トレイ5は、図2及び図4に示すように、左側の加熱冷却用トレイ部5aと、右側の冷却用トレイ部5bと、加熱冷却用トレイ部5a及び冷却用トレイ部5bを左右に連結する連結部5cと、を備えている。上下に隣り合うトレイ保持部46同士の間には、トレイ5の連結部5cが挿入され保持される(図4参照)。上下に隣り合うトレイ保持部46同士の間にトレイ5が保持された状態では、図2及び図4に示すように、加熱冷却用トレイ部5aが加熱冷却用収容室44aに露出し、冷却用トレイ部5bが冷却用収容室44bに露出している。
【0036】
後述する作動例のように、食品を載せたトレイ5をインサート4に収容する際(上下に隣り合うトレイ保持部46同士の間に保持させる際)、加熱冷却用トレイ部5aには温めて食する食品を配置し、冷却用トレイ部5bには加熱せず冷たいまま食する食品を配置することができる。
【0037】
<食品調温システム10の作動例>
食品調温システム10の実際の作動の一例を以下に記載する。まず、カート3の一対の開閉扉36が開放された状態(図2参照)で、カート3がステーション2の内部空間14に向けて後方に押し込まれる。これにより、カート3の後側部分が内部空間14に収容された状態で、カート3がステーション2に接続される。カート3の接続完了状態では、接続センサ26(図3参照)が、カート3の接続完了を検知する。カート3の接続完了状態では、カート3の後側開口部34が、ステーション2の加熱冷却用開口部15及び冷却用開口部16と密着して連通している。
【0038】
次いで、カート3の一対の開閉扉37が解放された状態(図2参照)で、食品を載せた複数のトレイ5が収容されたインサート4が、前側開口部35を介してカート3の格納室33に格納され、その後、一対の開閉扉37が閉じられる(図1参照)。これにより、インサート4の加熱冷却用収容室44aと冷却用収容室44bとが、カート本体31によって覆われることで外部から隔離されると共に、ステーション2の加熱冷却用開口部15(加熱冷却部19)と冷却用開口部16(冷却部20)とにそれぞれ個別に連通する。
【0039】
以上より、ステーション2へのカート3の接続、及び、カート3へのインサート4の格納が完了し、ステーション2の運転が可能な状態となる。ステーション2の操作部25への所定の操作により、ステーション2の運転を開始すると、冷却運転が開始され、第1循環ファンと第2循環ファンとが起動されるとともに、第1冷却器と第2冷却器とが駆動され、加熱冷却用収容室44a及び冷却用収容室44bともに冷風が循環する。これにより、加熱冷却用収容室44aに収容された食品、及び、冷却用収容室44bに収容された食品が、冷風によって冷却保存される。
【0040】
予め設定した再加熱開始時刻になると、再加熱運転が開始され、第1冷却器が停止し、ヒータが起動するように切り替わり、加熱冷却用収容室44aに熱風が循環する。これにより、加熱冷却用収容室44aに収容された食品が熱風により加熱される。このとき冷却用収容室44bでは継続して冷風が循環している。このように、食品調温システム10は、収容室44を仕切壁47で区分けすることで、食品の一部を冷却しながら他部を加熱する同時調温が可能である。
【0041】
所定時間経過したとき又は食事の温度が所定温度に到達したとき、再加熱運転は停止され、熱風及び冷風の循環が停止され、配膳可能な状態となる。そして、インサート4が格納されたカート3が一体的にステーション2から離脱され、カート3の一対の開閉扉36が閉じられる。これにより、食品を載せ置いたトレイ5を収容室44に収容した配膳車1を運搬しながら、配膳できるようになる。
【0042】
<インサート4の構成の詳細>
次いで、図4図10を参照しながら、インサート4の構成の詳細について説明する。図4に示すように、インサート4の本体部41は、略矩形平板状の底板42の四隅からそれぞれ上方に突出する棒状部51と、前側一対の棒状部51の上端部同士及び後側一対の棒状部51の上端部同士をそれぞれ連結する前後一対の左右方向に延びる棒状部52と、左側一対の棒状部51の上端部同士及び右側一対の棒状部51の上端部同士をそれぞれ連結する左右一対の前後方向に延びる棒状部53と、左右一対の棒状部53の前後方向中央部同士を連結する左右方向に延びる棒状部54と、からなる、直方体状の枠体である。上下方向に延びる支柱部45の上下方向の両端は、棒状部54の左右方向中央部と底板42の中央部とにそれぞれ連結されている。なお、図10ではいくつかの部材にハッチングを施しているが、これらハッチングは、あくまで説明の便宜上のものであり、断面を表すものではない。
【0043】
以下、支柱部45の構成の詳細について説明する。支柱部45は、図8図10に示すように、左右一対の上下方向に延びる金属製の支柱本体55により構成されている。各支柱本体55は、図10に示すように、前壁、後壁、及び、前壁及び後壁の左右方向内側端同士を連結する側壁で構成されており、上下方向からみて左右方向外側が開口した略U字状の形状を有している。各支柱本体55には、左右方向外側の開口を塞ぐための金属製のカバー56が取付け可能となっている(図8参照)。なお、図8では、右方のカバー56は、説明の便宜上、図示を省略している。
【0044】
左右一対の支柱本体55は、それぞれの側壁同士が所定の間隔をあけて配置されている(図10参照)。この結果、左右一対の支柱本体55の側壁同士の間には、隙間58が介在している。左側の支柱本体55の内部空間は加熱冷却用収容室44aと連通し、右側の支柱本体55の内部空間は冷却用収容室44bと連通する。隙間58は、加熱冷却用収容室44a及び冷却用収容室44bの間での伝熱を抑制する機能を有している。
【0045】
図8に示すように、左右一対の支柱本体55の前壁には、前側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46の後述する左右一対の固定部73(図5参照)を挿入するための左右一対の孔部59が、上下方向に等間隔を空けて並ぶように上下方向の複数箇所にそれぞれ形成されている。同様に、左右一対の支柱本体55の後壁には、後側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46の左右一対の固定部73を挿入するための左右一対の孔部59が、上下方向に等間隔を空けて並ぶように上下方向の複数箇所にそれぞれ形成されている。支柱本体55の前壁にて上下方向に並ぶ左右一対の孔部59のそれぞれの上下方向位置は、支柱本体55の後壁にて上下方向に並ぶ左右一対の孔部59のうち対応するものの上下方向位置と、一致している。このため、左右一対の支柱本体55の各々について、前後一対の孔部59が、上下方向に等間隔を空けて並ぶように上下方向の複数箇所にそれぞれ形成されている、ということもできる。
【0046】
図8及び図9に示すように、左右一対の孔部59の各々は、トレイ保持部46の固定部73を構成する後述する固定片74(以下、後述する固定片74a,74bを、固定片74と総称する。)及び補強片75(図5参照)をそれぞれ挿入するための固定片挿入孔60(以下、後述する固定片挿入孔60a,60bを、固定片挿入孔60と総称する。)及び補強片挿入孔61で、構成されている。固定片挿入孔60は、左右方向延び且つ前後方向(板厚方向)に貫通する貫通孔であり、補強片挿入孔61は、固定片挿入孔60の左右方向外側端から上下両方向に延び且つ前後方向(板厚方向)に貫通する貫通孔である。
【0047】
ただし、後述するように、前側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46の左右一対の固定片74が、右側の固定片74aと、右側の固定片74aより下側に位置する左側の固定片74bとで構成されることに対応して、支柱本体55の前壁に形成された左右一対の孔部59の左右一対の固定片挿入孔60は、右側の固定片挿入孔60aと、右側の固定片挿入孔60aより下側に位置する左側の固定片挿入孔60bとで構成されている(図8参照)。同様に、後側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46の左右一対の固定片74が、左側の固定片74aと、左側の固定片74aより下側に位置する右側の固定片74bとで構成されることに対応して、支柱本体55の後壁に形成された左右一対の孔部59の左右一対の固定片挿入孔60は、右側の固定片挿入孔60aと、右側の固定片挿入孔60aより下側に位置する左側の固定片挿入孔60bとで構成されている。
【0048】
この結果、右側の支柱本体55について、前後一対の孔部59の前後一対の固定片挿入孔60は、より詳細には、前側の固定片挿入孔60aと、前側の固定片挿入孔60aより下側に位置する後側の固定片挿入孔60bとで構成され(図8参照)、左側の支柱本体55について、前後一対の孔部59の前後一対の固定片挿入孔60は、より詳細には、後側の固定片挿入孔60aと、後側の固定片挿入孔60aより下側に位置する前側の固定片挿入孔60bとで構成されている。
【0049】
トレイ保持部46の左右一対の固定片74について、固定片74の板厚分だけ固定片74bが固定片74aより下側に位置することに対応して、左右一対の孔部59の左右一対の固定片挿入孔60、又は、前後一対の孔部59の前後一対の固定片挿入孔60について、固定片74の板厚分だけ固定片挿入孔60bが固定片挿入孔60aより下側に位置している(図6参照)。
【0050】
左右一対の支柱本体55の各々の内部空間には、図9に示すように、上下方向に並ぶ前後一対の孔部59のそれぞれの上下方向位置に対応して、金属製の下ブラケット62が、上下方向に並ぶように上下方向の複数箇所にそれぞれ取り付けられている。下ブラケット62は、前後一対の孔部59に挿入された前後一対のトレイ保持部46の固定片74a及び固定片74b同士を締結固定する際に使用される部材である。下ブラケット62は、左右方向且つ前後方向に延びる平板状の締結面部63と、締結面部63の左右方向内側縁から下方へ延びる平板状の垂下部64とで構成されており、前後方向からみて略L字状の形状を有する。締結面部63には、ボルト挿通孔63aが形成されている。各下ブラケット62は、締結面部63の上面が対応する前後一対の孔部59の固定片挿入孔60bの下側内壁面と面一になるように、垂下部64が支柱本体55の側壁にボルト等(図示省略)で締結固定されている(図9参照)。
【0051】
更に、インサート4の本体部41を構成する4本の棒状部51の各々には、図4に示すように、上下方向に並ぶ孔部59のそれぞれの上下方向位置に対応して、トレイ5の端部を保持するトレイ受け部65が、上下方向に並ぶように上下方向の複数箇所にそれぞれ取り付けられている。
【0052】
以下、トレイ保持部46の構成の詳細について説明する。トレイ保持部46は、図5及び図6等に示すように、棒状の樹脂製の本体部66と、本体部66の上側凹部(図示省略)に嵌め込まれるゴム製の上側シール部67と、本体部66の下側凹部(図示省略)に嵌め込まれるゴム製の下側シール部68とで構成され、前後方向に延びる棒状の形状を有している。図8に示すように、後側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46は、左右一対の固定部73が前側に位置する向き(図5に示す向きと同じ向き)で支柱部45に取り付けられ、前側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46は、左右一対の固定部73が後側に位置する向き(図5に示す向きと前後逆向き)で支柱部45に取り付けられる。以下、説明の便宜上、トレイ保持部46が図5に示す向きにあるものとして説明を続ける。
【0053】
本体部66は、図7に示すように、左右一対の分割体66a,66bを互いに組み付けることで構成される。分割体66bは、分割体66aと同じ形状を有する部材であり、分割体66aを上下逆向きに配置することで得られる。
【0054】
分割体66aの前端部には、支柱部45(支柱本体55)の孔部59(図8参照)に挿入される固定部73が、前方に突出するように一体に設けられている。固定部73は、固定片74と補強片75とで構成されている。固定片74は、左右方向且つ前後方向に延びる片持ち梁状の平板状の形状を有しており、分割体66aの上下方向中央位置より僅かに(固定片74の板厚の半分だけ)上側に設けられている。補強片75は、固定片74の根元部の左右方向外側端部から上下両方向に延び且つ前後方向に延びる平板状の形状を有している。このように、互いに連結された固定片74と補強片75とが互いに交差する方向に延びることにより、固定部73(=固定片74+補強片75)の全体的な剛性が向上されている。固定片74の先端部には、左右方向内側に突出する突部80が形成されている(図6参照)。また、固定片74には、上下方向(板厚方向)に貫通するボルト挿通孔81が形成されている(図6参照)。
【0055】
側壁部69の前端部には、側壁部69の板厚(左右方向の厚さ)が固定片74に近づくにつれて厚くなる肉厚部69aが設けられている(図6参照)。これによっても、固定部73(=固定片74+補強片75)の全体的な剛性が向上されている。
【0056】
分割体66aは、固定片74を除いて、全体的に上下方向に対称な形状を有している。このため、分割体66aと、分割体66aを上下逆向きに配置することで得られる分割体66bとでは、上下一対の係止部(図示省略)のそれぞれの上下方向の位置関係が互いに一致する。
【0057】
本体部66では、図5及び図6に示すように、分割体66a,66bのそれぞれの固定部73によって、左右一対の固定部73が構成される。左右一対の固定部73では、分割体66aの固定片74が分割体66aの上下方向中央位置より僅かに(固定片74の板厚の半分だけ)上側に設けられていることに起因して、分割体66bの固定片74(以下、固定片74b)が、固定片74の板厚分だけ、分割体66aの固定片74(以下、固定片74a)より下側に位置している。
【0058】
本体部66に画成された上側凹部(図示省略)及び下側凹部(図示省略)にそれぞれ嵌め込まれる上側シール部67及び下側シール部68の各々は、前後方向に延びる棒状の形状を有し、弾性材料(好ましくは、発泡シリコーンゴム材)から構成された母材と、その母材を被覆してトレイ5に接触することになるシリコーン皮膜材から構成された表面材と、で構成されている。
【0059】
上側シール部67の取り付け完了状態では、本体部66に対する上側シール部67の上下方向の相対移動が規制され、下側シール部68の取り付け完了状態では、本体部66に対する下側シール部68の上下方向の相対移動が所定範囲内で許容される(図7における白矢印を参照)。以上のように、本体部66への上側シール部67及び下側シール部68の嵌め込みが完了することで、図5に示すトレイ保持部46が完成する。
【0060】
次いで、トレイ保持部46の支柱部45への取り付け手順について説明する。支柱部45には、図8に示すように、前後一対のトレイ保持部46が、前後両側から、支柱部45を挟むように取り付けられる。
【0061】
図8及び図9に示すように、後側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46は、左右一対の固定部73が前側に位置する向き(図5に示す向きと同じ向き)で、左右一対の固定部73が、左右一対の支柱本体55の後壁に形成された左右一対の孔部59に挿通される。より具体的には、トレイ保持部46の左側の固定片74a及び補強片75が左側の支柱本体55の後壁に形成された固定片挿入孔60a及び補強片挿入孔61にそれぞれ挿通され、且つ、トレイ保持部46の右側の固定片74b及び補強片75が右側の支柱本体55の後壁に形成された固定片挿入孔60b及び補強片挿入孔61にそれぞれ挿通される。
【0062】
図8及び図9に示すように、前側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46は、左右一対の固定部73(即ち、固定片74及び補強片75)が後側に位置する向き(図5に示す向きと前後逆向き)で、左右一対の固定部73が、左右一対の支柱本体55の前壁に形成された左右一対の孔部59に挿通される。より具体的には、トレイ保持部46の右側の固定片74a及び補強片75が右側の支柱本体55の前壁に形成された固定片挿入孔60a及び補強片挿入孔61にそれぞれ挿通され、且つ、トレイ保持部46の左側の固定片74b及び補強片75が左側の支柱本体55の前壁に形成された固定片挿入孔60b及び補強片挿入孔61にそれぞれ挿通される。
【0063】
これにより、図9に示すように、左右一対の支柱本体55の各々について、下ブラケット62の締結面部63の上に固定片74bが重なり、固定片74bの上に固定片74aが重なり、且つ、下ブラケット62のボルト挿通孔63a、固定片74bのボルト挿通孔81、及び固定片74aのボルト挿通孔81が上下方向に連通した状態が、得られる。
【0064】
次いで、左右一対の支柱本体55の各々について、金属製の上ブラケット83(図9及び図10参照)が、固定片74aの上に取り付けられる。上ブラケット83は、左右方向且つ前後方向に延びる平板状の締結面部84と、締結面部84の左右方向内側縁から下方へ延びる平板状の垂下部85とで構成されており、前後方向からみて略L字状の形状を有する。締結面部84には、ボルト挿通孔84aが形成されている。
【0065】
上ブラケット83は、垂下部85が、固定片74aの突部80と固定片74bの突部80との間に介在するように、締結面部84が固定片74aの上に載置される(図10参照)。このように、垂下部85が、固定片74aの突部80と固定片74bの突部80との間に介在することで、後述するように、前後一対のトレイ保持部46の支柱部45からの抜けが防止される。なお、図10では、後側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46、前側から支柱部45に取り付けられるトレイ保持部46、及び、上ブラケット83を視認しやすくするために、それら各々に異なるハッチングを施している。但し、上述したように、これらハッチングは説明の便宜上のものであり、断面を表すものではない。締結面部84が固定片74aの上に載置された状態では、下ブラケット62のボルト挿通孔63a、固定片74bのボルト挿通孔81、固定片74aのボルト挿通孔81、及び、上ブラケット83のボルト挿通孔84aが、上下方向に連通して「一つの連通孔」を構成している(図9参照)。
【0066】
次いで、左右一対の支柱本体55の各々について、図9に示すように、ボルト86が下側から「一つの連通孔」に挿通されて、ボルト86及びナット87を用いて、上ブラケット83及び下ブラケット62、並びに、これらの間に位置する固定片74a及び固定片74bが、支柱本体55の内部空間内で共締めされる。これにより、前後一対のトレイ保持部46の支柱部45への取り付けが完了する。これにより、固定部73が孔部59から抜出不能であるように固定される固定状態が得られる。このように、ボルト86及びナット87による共締め箇所が、支柱本体55の内部空間内に位置しているので、支柱部45の外でトレイ保持部46を固定する場合(一般的な、壁面へのネジ止め等)に比べてインサート4の収容室44(図2参照)内の凹凸を低減し、インサート4の清掃性を高めることができる。
【0067】
なお、支柱部45へ取り付けられた前後一対のトレイ保持部46を支柱部45から取り外す際には、上記共締め箇所からボルト86及びナット87を取り除いて、上ブラケット83を取り除く。これにより、上ブラケット83の垂下部85が、固定片74aの突部80と固定片74bの突部80との間に介在しなくなることで、前後一対のトレイ保持部46を支柱部45から抜く(取り外す)ことが可能となる。これにより、固定部73が孔部59から抜出可能であるようにその固定が解除される解除状態が得られる。このように、トレイ保持部46は、支柱部45に着脱可能に取り付けられている。
【0068】
前後一対のトレイ保持部46の支柱部45への取付完了状態において、支柱部45から延びるトレイ保持部46に下向きに加えられた荷重は、左右一対の補強片75の下端面に当接する左右一対の補強片挿入孔61の下端内縁、固定片74a,74bと共に共締めされた下ブラケット62における支柱本体55の側壁に締結固定された垂下部64、及び、固定片74a,74bと共に共締めされた上ブラケット83における固定片74a,74bの突部80同士の間に介在する垂下部85によって、強固に受け止められる。図10を参照しながらより具体的に述べると、トレイ保持部46に下向きに加えられた荷重は、固定片74aの突部80を後方且つやや上向きに移動させようとし、固定片74bの突部80を前方且つやや上向きに移動させようとする。ここで、固定片74a,74bの突部80の間に上ブラケット83の垂下部85が挟まれているため、双方の突部80同士が垂下部85を介して押し合うこととなり、結果的に、固定片74a,74bの突部80の前後方向の移動が抑制される。更に、固定片74a,74bが上ブラケット83と下ブラケット62とに上下方向に挟まれて共締めされているため、固定片74a,74bの上下方向の移動が抑制される。上ブラケット83の上下方向の移動も、同様の共締めによって抑制される。これらの働きにより、支柱部45から延びるトレイ保持部46の下向きの傾動が抑制されることになる。
【0069】
上述した前後一対のトレイ保持部46の支柱部45への取り付け作業は、図8に示すように、上下方向に並ぶ孔部59に対して、下側の孔部59から上側の孔部59へと順に行われる。これにより、支柱部45に取り付けられた前後一対のトレイ保持部46が、上下方向に沿って並ぶ(図8参照)。このように上下方向に並んだ前後一対のトレイ保持部46は、支柱部45の前後両側において、前後方向且つ上下方向に延びる仕切壁47を構成する(図2参照)。前後一対の仕切壁47は、上述したように、インサート4の収容室44を、左側の加熱冷却用収容室44aと右側の冷却用収容室44bとに区分けしている(図2参照)。
【0070】
図4に示すように、仕切壁47を構成する上下に隣り合うトレイ保持部46の間にトレイ5が保持されていない状態では、上側のトレイ保持部46に設けられた下側シール部68と、下側のトレイ保持部46に設けられた上側シール部67とが、互いに密着している。これにより、左側の加熱冷却用収容室44aと右側の冷却用収容室44bとの間での空気漏れ等が抑制される。一方、仕切壁47を構成する上下に隣り合うトレイ保持部46の間にトレイ5の連結部5cが挿入される際には、連結部5cの厚み分だけ上側のトレイ保持部46の下側シール部68が上方に押し上げられる。これにより、図4に示すように、上下に隣り合うトレイ保持部46の間にトレイ5が保持された状態では、上側のトレイ保持部46の下側シール部68が連結部5cの上面に密着し、且つ、下側のトレイ保持部46の上側シール部67が連結部5cの下面に密着している。これにより、トレイ5が保持された状態においても、左側の加熱冷却用収容室44aと右側の冷却用収容室44bとの間での空気漏れ等が抑制される。
【0071】
上下に隣り合うトレイ保持部46の間にトレイ5の連結部5cが挿入される際には、上側のトレイ保持部46に設けられた下側シール部68の突起68bと、下側のトレイ保持部46に設けられた上側シール部67の突起67bとの間の空間に、トレイ5の連結部5cの端部を挿入することになる(図4参照)。突起68bと突起67bとでトレイ5の連結部5cが案内されることで、トレイ5の連結部5cの端部を上側シール部67と下側シール部68との間に導き易くなる。
【0072】
図4に示す例では、上下に隣り合うトレイ保持部46の間に保持されたトレイ5について、冷却用トレイ部5bの右端部が右側のトレイ受け部65に支持不能とされる一方で、加熱冷却用トレイ部5aの左端部が左側のトレイ受け部65に支持可能とされている。これにより、トレイ5の連結部5c周りのトレイ5の傾きを適度に許容することで、食器の入れ替えを容易に行うことができる。
【0073】
<作用・効果>
以上、本発明の実施形態に係る配膳車1によれば、収容室44内に立設された支柱部45に、複数のトレイ保持部46が着脱可能に取り付けられる。複数のトレイ保持部46は、支柱部45の立設方向に沿って並んで、収容室44を区分けする仕切壁47を構成する。そして、隣り合うトレイ保持部46同士の間の隙間にトレイ5を挟むことで、トレイ5が収容室44内に保持されることになる。よって、本構成の配膳車1は、収容室44を複数の空間に区切ることや収容室44内にトレイ5を保持すること等の配膳車1としての機能を損なうことなく、トレイ保持部46が支柱部45から着脱可能であることで、メンテナンスの対象となるトレイ保持部46のみの修理や交換等を容易に行うことができる。したがって、本構成の配膳車1は、従来の配膳車1のような棚板に仕切壁が溶接で一体化されているものに比べ、仕切壁47のメンテナンス性に優れる。
【0074】
更に、配膳車1によれば、トレイ保持部46を支柱部45に着脱可能に取り付けるにあたり、トレイ保持部46が有する固定部73が、支柱部45が有する孔部59に挿入される。更に、支柱部45の内側の空間内において、固定部73が孔部59から抜出不能であるように固定される固定状態と、固定部73が孔部59から抜出可能であるようにその固定が解除される解除状態と、を切り替え可能となっている。これにより、例えば、破損や経年劣化によりメンテナンスが必要となったトレイ保持部46のみを固定状態から解除状態に切り替えることで、そのトレイ保持部46を支柱部45から容易に取り外すことができ、従来の配膳車のような棚板に仕切壁が溶接で一体化されているものに比べて作業性を向上させることができる。更に、支柱部45の内側の空間内でトレイ保持部46が固定されているため、支柱部45の外側でトレイ保持部46を固定する場合(例えば、支柱部45の外壁面へのネジ止め等)に比べ、収容室44の内部における凹凸を低減できる。これにより、収容室44の内部の清掃が容易になることで、配膳車1の衛生性を高めることができる。したがって、本構成の配膳車1は、従来の配膳車1に比べ、メンテナンス性に優れることに加え、衛生性にも優れる。
【0075】
更に、配膳車1によれば、支柱部45を挟むように一対のトレイ保持部46が配置され、一方のトレイ保持部46の固定部73と他方のトレイ保持部46の固定部73とが、支柱部45の内側に配置された固定金具(上ブラケット83)を介して互いに係り合うことにより、固定状態となる。更に、その固定金具(上ブラケット83)を取り外すことにより、解除状態となる。これにより、トレイ保持部46の固定部73を支柱部45の孔部59に容易に挿入可能なシンプルな形状にしながら、トレイ保持部46とは別部品である固定金具(上ブラケット83)を用いることで双方の固定部73を強固に係合できる。したがって、本構成の配膳車1は、トレイ保持部46を着脱可能にしながら、トレイ保持部46の傾き等の位置ズレを抑制することで、仕切壁47によるトレイ5の保持力を高めることができる。
【0076】
更に、配膳車1によれば、トレイ保持部46の固定部73は、孔部59への挿入方向に片持ち梁状に延びる固定片74と、挿入方向に交差する方向に延びる補強片75と、を有する。固定片74と補強片75とが互いに交差する方向に延びることにより、固定部73の全体的な剛性が向上する。これにより、固定部73そのものの撓み等の変形を抑制し、トレイ保持部46の傾き等の位置ズレを抑制することで、仕切壁47によるトレイ5の保持力を更に高めることができる。
【0077】
更に、配膳車1によれば、上述した固定片74の基端部の周辺に、トレイ保持部46を構成する構造材の厚さが固定片74に近づくにつれて厚くなる肉厚部69aが設けられる。これにより、固定部73の全体的な剛性が向上し、仕切壁47によるトレイ5の保持力を更に高めることができる。
【0078】
更に、配膳車1によれば、支柱部45を取り囲むように配置される枠体部(本体部41)に、トレイ受け部65が設けられる。そして、トレイ5の被保持箇所(連結部5c)がトレイ保持部46に保持され、且つ、トレイ5の被保持箇所とは異なる箇所(トレイ5の縁部分)がトレイ受け部65に支持される。これにより、例えば、トレイ受け部65の配置の工夫(例えば、仕切壁47が区分けする一方の空間ではトレイ受け部65がトレイ5を支持し、他方の空間ではトレイ受け部65がトレイ5を支持しないこと)により、トレイ5の被保持箇所周りのトレイ5の傾きを適度に許容すれば、トレイ5の傾きが完全に禁止される場合に比べ、食器の入れ替えを容易に行うことができる。
【0079】
更に、本構成の配膳車1は、仕切壁47のトレイ保持部46と枠体のトレイ受け部65とでトレイ5を保持できるため、従来の配膳車1で用いられているような棚板を必要としない。換言すると、上下に並ぶトレイ5の有効載置面(即ち、食器を載せ置く部分である加熱冷却用トレイ部5a及び冷却用トレイ部5b)同士の間を遮るものが存在しない状態で、トレイ5を保持できる。そのため、棚板が無い分だけ、上下に並ぶトレイ5同士の間の距離を狭めることができる。その結果、収容室44へのトレイ5の収容量を損なうことなく、配膳車1をコンパクト化できる。
【0080】
更に、配膳車1によれば、トレイ保持部46は、支柱部45に取り付けられる本体部66と、本体部66に嵌め込まれてトレイ5に接触することになる弾性材料から構成されたシール部(上側シール部67及び下側シール部68)と、を有する。これにより、トレイ5の重量をシール部(上側シール部67)で受け止めることで、シール部(上側シール部67)が弾性変形してトレイ5に密着することになる。その結果、シール部が無い場合に比べ、トレイ5と仕切壁47との密着性が高まり、仕切壁47が区分けした空間同士の間での空気漏れ等を抑制することができる。即ち、仕切壁47による密封性が高まる。
【0081】
更に、配膳車1によれば、上述したシール部(上側シール部67及び下側シール部68)は、発泡シリコーンゴム材から構成された母材と、母材を被覆してトレイ5に接触することになるシリコーン皮膜材から構成された表面材と、を有する。これにより、発泡シリコーンゴム材が適度な硬さを有するため、トレイ5を適正に保持できる。更に、シリコーン皮膜材が良好な滑り性を有するため、トレイ5を仕切壁47で保持するとき、トレイ保持部46同士の間にトレイ5を容易に挿し込むことができる。加えて、母材及び表面材に共にシリコーン系材料を用いることにより、母材と表面材との密着性を高め、表面材の剥離等を抑制できる。
【0082】
更に、配膳車1によれば、トレイ保持部46の本体部66は、同一形状を有する一対の筐体部品(分割体66a,66b)から構成される。そして、一対の筐体部品(分割体66a,66b)を組み付けることより、シール部(上側シール部67及び下側シール部68)が嵌め込まれる凹状の空間(上述した上側凹部及び下側凹部。図示省略)が、本体部66の内側に画成される。同一形状の筐体部品(分割体66a,66b)でトレイ保持部46を製造できるため、筐体部品(分割体66a,66b)の部品管理が容易になり、トレイ保持部46の生産性が高まる。更に、単一の筐体部品に凹状の空間を設ける場合よりも、筐体を製造するための金型の構造を単純化できることに加え、凹状の空間(上述した上側凹部及び下側凹部。図示省略)の形状の設計自由度を高めることができる。
【0083】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0084】
例えば、上記実施形態では、調温後の食品を載せ置いたトレイ5を保持したインサート4をカート3で覆って、カート3及びインサート4を一体的に搬送させながら配膳を行うことから、カート3とインサート4とが組み付けられた構造体を配膳車1と称呼している。これに対し、インサート4のみを独立して搬送させながら配膳を行う場合、インサート4を単独で配膳車1と称呼してもよい。更に、上記実施形態では、カート3とインサート4とは別体の装置であるが、カート3の機能とインサート4の機能とを一体的に備えた装置(例えば、カート3の内部に仕切壁47等を設けた装置)を用いる場合、その装置を配膳車1と称呼してもよい。
【0085】
ここで、上述した本発明に係る配膳車1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[9]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
食器を載せ置いたトレイ(5)を収容して運搬するための配膳車(1)であって、
前記トレイ(5)を収容可能な収容室(44)と、
前記収容室(44)内に立設される支柱部(45)と、
前記支柱部(45)に着脱可能に取り付けられる複数のトレイ保持部(46)と、を備え、
前記複数の前記トレイ保持部(46)は、
前記支柱部(45)の立設方向において前記支柱部(45)に沿って並んで、前記収容室(44)を区分けする仕切壁(47)を構成するとともに、前記立設方向において互いに隣り合う一の前記トレイ保持部(46)と他の前記トレイ保持部(46)との間に前記トレイ(5)を挟んで保持可能である、
配膳車(1)。
[2]
上記[1]に記載の配膳車(1)において、
前記支柱部(45)は、
当該支柱部(45)の内側にある中空状の空間の内外を連通する複数の孔部(59)を有し、
前記複数の前記トレイ保持部(46)の各々は、
前記孔部(59)に挿入される固定部(73)を有するとともに、前記固定部(73)を前記孔部(59)から抜出できないように前記空間内において前記固定部(73)が固定される固定状態と、前記固定部(73)を前記孔部(59)から抜出できるように前記固定部(73)の固定が解除される解除状態と、を切り替え可能であることにより、前記支柱部(45)に着脱可能に取り付けられる、
配膳車(1)。
[3]
上記[2]に記載の配膳車(1)であって、
前記空間内に配置される固定金具(83)を、更に備え、
一対の前記トレイ保持部(46)が、
前記支柱部(45)を挟むように配置され、一方の前記トレイ保持部(46)の前記固定部(73)と他方の前記トレイ保持部(46)の前記固定部(73)とが前記固定金具(83)を介して互いに係り合うことによって前記固定状態となり、且つ、前記固定金具を取り外すことによって前記解除状態となる、ように構成される、
配膳車(1)。
[4]
上記[2]に記載の配膳車(1)において、
前記複数の前記トレイ保持部(46)の各々の前記固定部(73)は、
前記孔部(59)への挿入方向に片持ち梁状に延びる固定片(74)と、前記固定片(74)に連結されて前記挿入方向に交差する方向に延びる補強片(75)と、を有する、
配膳車(1)。
[5]
上記[4]に記載の配膳車(1)において、
前記複数の前記トレイ保持部(46)の各々は、
前記固定片(74)の基端部の周辺に、当該トレイ保持部(46)を構成する構造材(69)の厚さが前記固定片(74)に近づくにつれて厚くなる肉厚部(69a)を、有する、
配膳車(1)。
[6]
上記[1]に記載の配膳車(1)であって、
前記支柱部(45)を取り囲むように配置される枠体部(41)を、更に有し、
前記枠体部(41)は、
前記トレイ(5)の前記トレイ保持部(46)による被保持箇所(5c)とは異なる箇所を支持して前記トレイ(5)の傾きを規制可能なトレイ受け部(65)を有する、
配膳車(1)。
[7]
上記[1]に記載の配膳車(1)において、
前記複数の前記トレイ保持部(46)の各々は、
前記支柱部(45)に取り付けられる本体部(66)と、前記本体部(66)に嵌め込まれて前記トレイ(5)に接触することになる弾性材料から構成されたシール部(67,68)と、を有する、
配膳車(1)。
[8]
上記[7]に記載の配膳車(1)において、
前記シール部(67,68)は、
発泡シリコーンゴム材から構成された母材と、前記母材を被覆して前記トレイ(5)に接触することになるシリコーン皮膜材から構成された表面材と、を有する、
配膳車(1)。
[9]
上記[7]に記載の配膳車(1)において、
前記トレイ保持部(46)の前記本体部(66)は、
同一形状を有する一対の筐体部品(66a,66b)を組み付けることより、前記シール部(67,68)が嵌め込まれる凹状の空間を当該本体部(66)の内側に画成するように、構成される、
配膳車(1)。
【符号の説明】
【0086】
1 配膳車
3 カート
4 インサート
5 トレイ
5c 連結部(被保持箇所)
41 本体部(枠体部)
44 収容室
45 支柱部
46 トレイ保持部
47 仕切壁
59 孔部
65 トレイ受け部
66 本体部
66a 分割体(筐体部品)
66b 分割体(筐体部品)
67 上側シール部(シール部)
68 下側シール部(シール部)
69 側壁部(構造材)
69a 肉厚部
73 固定部
74a 固定片
74b 固定片
75 補強片
83 上ブラケット(固定金具)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10