(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002607
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】発泡性飲料用缶及び容器詰飲料
(51)【国際特許分類】
B65D 25/14 20060101AFI20231228BHJP
B65D 1/16 20060101ALI20231228BHJP
B65D 85/73 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B65D25/14 A
B65D1/16 111
B65D85/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101904
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】中島 宏章
(72)【発明者】
【氏名】夏本 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄介
【テーマコード(参考)】
3E033
3E035
3E062
【Fターム(参考)】
3E033AA06
3E033BA07
3E033BA17
3E033BA30
3E033BB08
3E033CA20
3E033EA07
3E033GA02
3E035AA03
3E035AB06
3E035BA06
3E035BB08
3E035BC03
3E035BD02
3E035CA05
3E062AA04
3E062AB02
3E062AC09
3E062JA04
3E062JA07
3E062JB23
3E062JC02
3E062JC09
(57)【要約】
【課題】本開示の目的は、缶を開封した際に缶の開口が泡で覆われるように発泡性飲料が発泡する発泡性飲料用缶の提供及び上記発泡性飲料用缶を利用した容器詰飲料の提供である。
【解決手段】底部と、胴部と、を含み、上記胴部の内面の展開界面面積率Sdrが、30%以上である、発泡性飲料用缶及び上記発泡性飲料用缶を利用した容器詰飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、胴部と、を含み、
前記胴部の内面の展開界面面積率Sdrが、30%以上である、
発泡性飲料用缶。
【請求項2】
前記胴部の内面の二乗平均平方根勾配Sdqが、0.3~10である、請求項1に記載の発泡性飲料用缶。
【請求項3】
前記胴部の内面の算術平均高さSaが、0.1μm~5μmである、請求項1又は請求項2に記載の発泡性飲料用缶。
【請求項4】
前記胴部の内面の二乗平均平方根高さSqが、0.12μm~6μmである、請求項1又は請求項2に記載の発泡性飲料用缶。
【請求項5】
前記胴部が、前記胴部の内面を構成する樹脂層を含む、請求項1又は請求項2に記載の発泡性飲料用缶。
【請求項6】
開封後に30%以上の開口率を示す蓋を含む、請求項1又は請求項2に記載の発泡性飲料用缶。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡性飲料用缶と、
前記発泡性飲料用缶に密封された発泡性飲料と、を含む、
容器詰飲料。
【請求項8】
開封前後の質量変化に基づく気体放出量が、0.04g以上である、請求項7に記載の容器詰飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡性飲料用缶及び容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性飲料は、缶といった容器に密封され、容器の密封を保ったまま消費者に提供されることがある。この場合には一般的に、密封された容器は、飲料を飲む消費者によって開封される。例えば、消費者が発泡性飲料を飲む際の発泡性飲料の重要な特性の1つは発泡性であり、発泡性を高めるために様々な容器が検討されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1は、発泡性飲料用缶を開示している。具体的に、缶の内面に有機樹脂被覆層が形成されており、そして、有機樹脂被覆層において、特定の大径粒子が脱離して生じた凹部又は残留して生じた凸部と、特定の小径粒子が脱離して生じた凹部とが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、缶を開封した際に缶の開口が泡で覆われるように発泡性飲料が発泡する発泡性飲料用缶の提供及び上記発泡性飲料用缶を利用した容器詰飲料の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を包含する。
<1> 底部と、胴部と、を含み、上記胴部の内面の展開界面面積率Sdrが、30%以上である、発泡性飲料用缶。
<2> 上記胴部の内面の二乗平均平方根勾配Sdqが、0.3~10である、<1>に記載の発泡性飲料用缶。
<3> 上記胴部の内面の算術平均高さSaが、0.1μm~5μmである、<1>又は<2>に記載の発泡性飲料用缶。
<4> 上記胴部の内面の二乗平均平方根高さSqが、0.12μm~6μmである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の発泡性飲料用缶。
<5> 上記胴部が、上記胴部の内面を構成する樹脂層を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の発泡性飲料用缶。
<6> 開封後に30%以上の開口率を示す蓋を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の発泡性飲料用缶。
<7> <6>に記載の発泡性飲料用缶と、上記発泡性飲料用缶に密封された発泡性飲料と、を含む、容器詰飲料。
<8> 開封前後の質量変化に基づく気体放出量が、0.04g以上である、<7>に記載の容器詰飲料。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、缶を開封した際に缶の開口が泡で覆われるように発泡性飲料が発泡する発泡性飲料用缶を提供し、かつ、上記発泡性飲料用缶を利用した容器詰飲料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更されてもよい。
【0009】
本開示において「~」を使用して表される数値範囲は、「~」の前に記載される数値を下限として含み、かつ、「~」の後に記載される数値を上限として含む。本開示において段階的に記載された複数の数値範囲に関して、ある数値範囲の下限は、他の数値範囲の下限に置き換えられてもよい。本開示において段階的に記載された複数の数値範囲に関して、ある数値範囲の上限は、他の数値範囲の上限に置き換えられてもよい。本開示において数値範囲の上限又は下限は、実施例に示される値に置き換えられてもよい。
【0010】
本開示において、序数詞(例えば、「第1」及び「第2」)は、構成要素を形式的に区別するための用語であり、構成要素の数及び構成要素の優位性を制限しない。
【0011】
<発泡性飲料用缶>
以下、本開示に係る発泡性飲料用缶(以下、単に「缶」という場合がある。)について説明する。缶は、底部と、胴部と、を含む。さらに、胴部の内面の展開界面面積率Sdrは、30%以上である。
【0012】
缶に収容された発泡性飲料の発泡性は、発泡性飲料に接する缶の表面構造の影響を受けると考えられる。特に、缶の内面に形成された凹凸は、発泡性に大きく寄与する。しかしながら、上記特許文献1のような従来技術は、缶を開封した際に缶の開口が泡で覆われるような発泡性を想定しておらず、そのような発泡性を得ることは困難であった。一方、本開示は、所望の発泡性を達成するために展開界面面積率Sdrという表面特性に着目している。Sdrは、対象領域の面積と比較した対象領域の表面積の増加率を表している。例えば、Sdrが100%である場合、対象領域の表面積は対象領域の面積の2倍になっている。Sdrは、表面形状の複合的な特徴を評価でき、例えば、凹凸の深さ及び高さだけでなく凹凸の緻密性を反映する。一般的に、凹凸の起伏が多くなり、かつ、凹凸が細かくなるほど、Sdrは大きくなる。本開示に係る缶によれば、胴部の内面のSdrが30%以上に設定されているため、胴部の内面に存在する細かな凹凸を起点に多くの泡が発生できる。この結果、缶を開封した際に缶の開口が泡で覆われるように発泡性飲料が発泡する。
【0013】
[底部]
缶は、底部を含む。平面視における底部の形状としては、例えば、円形が挙げられる。底部は、平面、曲面又は平面及び曲面の両方を含んでいてもよい。底部は、缶の内側へ凹む凹部を含んでいてもよい。凹部は、半球形の凹部であってもよい。また、底部は缶の外側へ突出する凸部を含んでいてもよい。凸部は、環状の凸部であってもよい。底部の形状は、公知の缶の底部の形状から選択されてもよい。
【0014】
[胴部]
缶は、胴部を含む。胴部は、一般的に底部と繋がっている。胴部は、底部と一体となっている胴部であってもよい。底部と一体となっている胴部は、「2ピース缶」と称される缶に採用されることが多い。2ピース缶は、一般的に2つの主要部品、すなわち、(1)底部及び胴部が一体に形成された部品と、(2)蓋と、を組み合わせて製造される。胴部は、底部と接合した胴部であってもよい。底部と接合した胴部は、「3ピース缶」と称される缶に採用されることが多い。3ピース缶は、一般的に3つの主要部品、すなわち、(1)底部と、(2)胴部と、(3)蓋と、を組み合わせて製造される。胴部と底部との接合方法としては、例えば、溶接及び二重巻締が挙げられる。接合方法は、公知の接合方法から選択されてもよい。
【0015】
胴部は、円筒形の胴部であってもよい。円筒形の胴部の直径は、段階的又は連続的に変化してもよい。例えば、胴部は、円筒形の第1胴部と、底部から離れるにつれて漸次縮小する直径を有する第2胴部と、を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、少なくとも第1胴部の内面の展開界面面積率Sdrが30%以上である。好ましいSdrの値は、後述のとおりである。Sdrに加えて、第1胴部の内面は、後述のSdq、Sa及びSqから選択される表面特性を有していてもよい。好ましい実施形態において、第2胴部は、缶の高さ方向において第1胴部よりも底部から遠い位置にある。第2胴部の直径は、段階的又は連続的に縮小してもよい。胴部の形状は、公知の缶の胴部の形状から選択されてもよい。
【0016】
(表面特性:展開界面面積率Sdr)
胴部の内面のSdrは、30%以上である。Sdrは、好ましくは60%以上、より好ましくは120%以上、更に好ましくは200%以上である。さらに、Sdrは、好ましくは250%以上、より好ましくは300%以上、更に好ましくは500%以上である。Sdrの下限は、600%、800%、1000%又は1500%であってもよい。Sdrが上記範囲であると、胴部の内面に存在する細かな凹凸を起点に多くの泡が発生できる。この結果、缶を開封した際に缶の開口が泡で覆われるように発泡性飲料が発泡する。目的の発泡性が得られる限り、Sdrの上限は制限されない。Sdrは、30%~2000%であってもよい。Sdrが2000%以下であると、缶の開封によって発生した泡が過度にこぼれることを防止できる。さらに、後述の表面改質剤を使用してSdrを調整する場合、表面改質剤の使用量を低減でき、結果的に製造費用を低減できる。Sdrの上限は、好ましくは1800%、より好ましくは1600%、更に好ましくは1300%である。Sdrの上限は、1000%又は800%であってもよい。
【0017】
本開示において、胴部の内面のSdrは以下の方法によって測定される。
(1)缶から胴部を分離して胴部を展開する。ただし、缶に飲料が収容されている場合には次の方法を採用する。飲料を除去した後、缶から胴部を分離して胴部を展開する。胴部の内面を流水で1分間洗浄し、次に胴部を風乾する。
(2)胴部を、9つの試験片に均等に分割する。例えば、高さ方向及び周方向の各々において胴部を3等分することによって、9つの試験片を準備する。
(3)顕微鏡を用いて各試験片の4か所の領域を観察し、合計で36か所の領域の画像を取得する。各領域の大きさは、0.3mm×0.3mmである。各試験片の4か所の領域は、対象の試験片を3等分する2本の縦線と、対象の試験片を3等分する2本の横線との交点に位置する。
(4)各画像からSdrを測定する。具体的に、画像解析ソフトウェアによって画像ごとにSdrを測定し、次に算術平均を算出する。
【0018】
(表面特性:二乗平均平方根勾配Sdq)
好ましい実施形態において、胴部の内面は、既述のSdrに加えて、下記の表面特性を有する。胴部の内面のSdqは、好ましくは0.3~10、より好ましくは1.5~6である。Sdqは、表面の局所的な勾配の大きさを表している。一般的に、Sdqが大きくなるほど、凹凸の勾配が大きくなる。大きなSdqは、細かな凹凸の形成を示唆している。したがって、Sdqが上記範囲であると、細かな凹凸を起点に多くの泡が発生できる。Sdqの測定方法は、既述のSdrの測定方法に準ずる。
【0019】
(表面特性:算術平均高さSa)
好ましい実施形態において、胴部の内面は、既述の表面特性に加えて、下記の表面特性を有する。胴部の内面のSaは、好ましくは0.1μm~5μm、より好ましくは0.2μm~1.5μmである。Saは、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表している。一般的に、Saが大きくなるほど、大きな高さを有する凹凸の数は多くなる。したがって、Saが上記範囲であると、大きな高さを有する凹凸を起点に多くの泡が発生できる。Saの測定方法は、既述のSdrの測定方法に準ずる。
【0020】
(表面特性:二乗平均平方根高さSq)
好ましい実施形態において、胴部の内面は、既述の表面特性に加えて、下記の表面特性を有する。胴部の内面のSqは、好ましくは0.12μm~6μm、より好ましくは0.3μm~2μmである。Sqは、表面の平均面に対して、各点の高さの差の二乗平均平方根を表す。一般的に、Sqが大きくなるほど、大きな高さを有する凹凸の数は多くなる。さらに、各点の高さの差のばらつきが大きくなるほど、Saと比べてSqは大きくなる。したがって、Sqが上記範囲であると、大きな高さを有する凹凸を起点に多くの泡が発生できる。Sqの測定方法は、既述のSdrの測定方法に準ずる。
【0021】
(樹脂層)
胴部は、胴部の内面を構成する樹脂層を含んでいてもよい。上記のような実施形態によれば、樹脂層の表面、具体的には缶の内側を向く樹脂層の表面が、胴部の内面の役割を果たす。樹脂層は、胴部の内面の一部又は全部を構成する層であってもよい。
【0022】
樹脂層に含まれる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂及びアミノ樹脂が挙げられる。好ましい樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂が挙げられる。樹脂は、単独重合体又は共重合体であってもよい。樹脂は、2種以上の樹脂の複合体(以下、「複合化樹脂」という場合がある。)であってもよい。好ましい複合化樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との複合体が挙げられる。複合化樹脂は、2種以上の樹脂同士の反応によって形成されてもよい。複合化樹脂の製造方法としては、例えば、エステル化法、直接重合法及びグラフト重合法が挙げられる。これらの方法は、特開2014-55204号公報の段落0029に記載された事項を参考にして実施されてもよい。樹脂層は、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。
【0023】
好ましいエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。上記のような樹脂は、樹脂層の加工性及び金属への密着性を向上できる。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2500~70000である。重量平均分子量が上記範囲であると、樹脂層の加工性、密着性及び化学的安定性が向上する。
【0024】
好ましいアクリル樹脂としては、α、β-不飽和カルボン酸と、α、β-不飽和カルボン酸と共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。α、β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸及びフマル酸が挙げられる。上記のような共重合体は、金属への密着性を向上できる。アクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2000超である。重量平均分子量が上記範囲であると、樹脂層の加工性、耐傷性及び化学的安定性が向上する。
【0025】
樹脂層の平均厚さは、好ましくは1μm~10μm、より好ましくは3μm~8μmである。樹脂層の平均厚さが大きくなると、樹脂層の表面粗さは小さくなる傾向にある。したがって、樹脂層の平均厚さの調整は、既述の表面特性の調整に有用である。
【0026】
[蓋]
好ましい実施形態において、缶は、開口可能な蓋を含む。例えば、消費者は、蓋を開けて缶に開口を形成し、缶の開口を通じて飲料を飲むことができる。ただし、蓋は、飲料を充填する前の缶の必須の構成要素ではない。一般的に、蓋は、缶に飲料を充填した後に設けられる。
【0027】
開口予定の領域は、蓋の一部又は全部であってもよい。好ましい蓋としては、例えば、開封後に30%以上の開口率を示す蓋が挙げられる。開口率は、好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは55%以上である。開口率が上記範囲であると、次のような効果を期待できる。例えば、缶の開口を覆う発泡の視覚的効果が大きくなり、この効果は、ジョッキで発泡性飲料を飲んでいるような印象を消費者に与えることができる。さらに、開口を通じて消費者の口に流入する泡及び液の量が多くなるため、消費者は泡及び液の味わいを一度に感じることができる。開口率は、30%~100%であってもよい。開口率は、30%以上100%未満であってもよい。開口率は、下記式によって算出される。
式:開口率=([開口の面積]/[開封前の蓋の上面の面積])×100
【0028】
開口予定の領域は、缶の開封後に缶から分離されてもよい。開口予定の領域は、缶の開封後に缶に繋がったままであってもよい。好ましい実施形態において、開口予定の領域は、缶の開封後に缶から分離される。
【0029】
蓋、具体的には蓋の上面は、開口予定の領域を画定する溝を含んでいてもよい。上記のような溝は、一般的に「スコア」と称される。例えば、スコアに沿って蓋を開けることで、開口を容易に形成できる。スコアの位置は、目的の開口の形状及び開口率に応じて決定されてもよい。例えば、スコアは、蓋の上面の全周にわたって形成されていてもよい。
【0030】
平面視における蓋の形状としては、例えば、円形が挙げられる。蓋の形状は、公知の缶の蓋の形状から選択されてもよい。
【0031】
蓋が円形である場合、蓋の大きさ、すなわち口径は、例えば200径~211径、好ましくは202径~206径である。
【0032】
缶が蓋を含む場合、蓋は、一般的に胴部の上端に位置し、底部は、一般的に胴部の下端に位置する。言い換えると、蓋と底部との間に胴部が位置している。蓋は、胴部と繋がっていてもよい。蓋と胴部との接合方法としては、例えば、溶接及び二重巻締が挙げられる。
【0033】
[容量]
缶の容量は、制限されない。缶の容量は、135mL~2000mLであってもよい。缶の容量は、好ましくは320mL~500mLである。
【0034】
[材料]
樹脂層を除く缶の主な材料は、金属である。金属は、公知の缶に使用される金属から選択されてもよい。金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄及び鉄合金が挙げられる。
【0035】
[缶の製造方法]
目的の缶が得られる限り、缶の製造方法は制限されない。以下、缶の例示的な製造方法について説明する。例えば、既述の樹脂層を含む缶の製造方法は、(1)胴部又は胴部となる部材の対象領域に、樹脂及び表面改質剤を含む塗料を塗装することと、(2)塗装された上記塗料を加熱して、樹脂層を形成することと、を含む。上記のような方法によれば、例えば、塗料中の溶剤といった揮発成分が加熱によって除去され、残った表面改質剤が樹脂層の表面に凸部を形成する。塗料が、加熱温度よりも低い軟化点又は融点を有する表面改質剤を含む場合、加熱によって軟化又は溶融した表面改質剤は、樹脂層中に拡散若しくは混合し、又は樹脂層の表面に析出する。例えば、上記のような軟化又は融解に起因する表面改質剤の移動は、樹脂層中に空隙を形成し、又は樹脂層の表面に凹部を形成する。したがって、上記のような表面改質剤の作用は、胴部の内面の表面特性の調整に有用である。以下、各工程について具体的に説明する。
【0036】
(工程(1))
工程(1)は、胴部又は胴部となる部材の対象領域に、樹脂及び表面改質剤を含む塗料を塗装することである。塗料は、胴部の対象領域に塗装されてもよい。塗料は、胴部となる部材の対象領域に塗装されてもよい。対象領域は、胴部の内面を構成する樹脂層が形成される予定の領域である。対象領域の位置及び大きさは、目的の樹脂層の位置及び大きさに応じて決定される。
【0037】
胴部を形成する方法は制限されない。例えば、工程(1)における胴部は、金属板を加工することによって形成される。金属板の例示的な態様は、後述のとおりである。金属板を加工する方法は、目的の形状に応じて公知の方法から選択されてもよい。胴部を形成する方法において、公知の方法から溶接又は接着が選択されてもよい。工程(1)において、底部と繋がっている胴部が使用されてもよい。例えば、2ピース缶の製造の場合、絞りしごき加工によって一体に形成された底部及び胴部を含む円筒形の缶が使用されてもよい。例えば、上記のような円筒形の缶の胴部の内面に塗料を塗装することによって樹脂層を形成できる。一方、3ピース缶の製造の場合、胴部は、樹脂層の形成後に底部に接合されてもよい。
【0038】
胴部となる部材としては、例えば、金属板が挙げられる。金属板に含まれる金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄及び鉄合金が挙げられる。胴部となる部材は、最終的に成形加工を経て胴部に加工される。例えば、3ピース缶の製造の場合、金属板は、主に樹脂層の形成後に胴部に加工され、次に胴部は、底部に接合される。
【0039】
塗料の塗装方法としては、例えば、スプレー塗装(例えば、エアスプレー、エアレススプレー及び静電スプレー)、ロールコーター塗装、浸漬塗装及び電着塗装が挙げられる。塗料の塗装方法は、好ましくはスプレー塗装である。塗料の量は、目的の樹脂層の厚さ及び表面特性に応じて決定されてもよい。
【0040】
塗料は、樹脂及び表面改質剤を含む。塗料は、水性塗料であってもよい。「水性塗料」とは、溶剤として水を含む塗料を意味する。言い換えると、好ましい塗料は、樹脂、表面改質剤及び水を含む。
【0041】
樹脂としては、例えば、上記樹脂層の説明において例示された樹脂が挙げられる。塗料は、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。
【0042】
表面改質剤としては、例えば、1μm以上の平均粒径を有する粒子が挙げられる。本開示における「平均粒径」とは、体積基準の粒度分布において頻度累積が50%であるときの粒径(すなわち、D50)を意味する。平均粒径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックS3500」)を用いて測定される。
【0043】
粒子の平均粒径は、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは2μm~15μmである。粒子の平均粒径が大きいと、樹脂層の表面に形成される凹凸が大きくなる。この結果、樹脂層の表面特性を表す数値が大きくなる傾向にある。一方、粒子の平均粒径が小さいと、塗料中の表面改質剤の分散安定性が向上する。この結果、表面改質剤の分離及び凝集が低減又は防止される。したがって、粒子の平均粒径に応じて樹脂層の表面特性を調整できる。
【0044】
表面改質剤は、異なる平均粒径を有する2種以上の粒子を含んでいてもよい。異なる平均粒径を有する2種以上の粒子を使用することによって、樹脂層の表面特性を調整できる。
【0045】
好ましい実施形態において、表面改質剤は、塗料が加熱される温度よりも低い軟化点又は融点を有する。表面改質剤の軟化点又は融点は、好ましくは50℃~250℃、より好ましくは80℃~200℃である。「塗料が加熱される温度」とは、工程(2)における加熱温度を意味する。
【0046】
表面改質剤の成分としては、例えば、カルナバワックス、ポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。上記のような成分を含む表面改質剤は、既述の軟化点又は融点を有することが多い。
【0047】
塗料が加熱される温度よりも低い軟化点又は融点を有する表面改質剤に加えて、塗料が加熱される温度よりも低い軟化点又は融点を有しない表面改質剤が使用されてもよい。塗料が加熱される温度よりも低い軟化点又は融点を有しない表面改質剤としては、例えば、微粉末状のシリカ又はポリテトラフルオロエチレン(すなわち、PTFE)が挙げられる。
【0048】
塗料における表面改質剤の含有量は、表面改質剤以外の100質量部の不揮発成分に対して、好ましくは1質量部~30質量部、より好ましくは3質量部~25質量部、更に好ましくは5質量部~20質量部である。「不揮発成分」とは、塗料が加熱される温度での加熱後に残る固形分を意味する。不揮発成分は、200℃及び10分間の条件での加熱後に残る固形分であってもよい。
【0049】
塗料は、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、粘度調整剤、硬化剤、造膜助剤及び滑り剤が挙げられる。他の添加剤の種類は、目的に応じて公知の添加剤から選択されてもよい。
【0050】
(工程(2))
工程(2)は、塗装された塗料を加熱して、樹脂層を形成することである。目的の樹脂層が得られる限り、加熱条件は制限されない。加熱温度は、好ましくは150℃~280℃、より好ましくは180℃~280℃である。加熱時間は、好ましくは10秒間~30分間、より好ましくは1分間~30分間である。表面改質剤の融解の促進の観点から、塗料を、180℃~280℃で1分間~30分間加熱することが好ましい。塗料の乾燥及び均一な樹脂層の形成のため、対象領域に塗料を塗装した後、速やかに塗料を加熱することが好ましい。樹脂層の好ましい平均厚さは、既述のとおりである。既述のとおり、樹脂層の厚さに応じて樹脂層の表面特性を調整できる。
【0051】
(他の工程)
缶の製造方法は、既述の工程(1)及び(2)に加えて、他の工程を含んでいてもよい。他の工程は、缶の製造に適用される一般的な工程(例えば、缶の成形)から選択されてもよい。
【0052】
<容器詰飲料>
以下、本開示に係る容器詰飲料について説明する。容器詰飲料は、発泡性飲料用缶と、発泡性飲料用缶に密封された発泡性飲料と、を含む。発泡性飲料用缶の実施形態は、既述のとおりである。したがって、以下の説明では発泡性飲料用缶の説明を省略する。
【0053】
発泡性飲料は、アルコール飲料であってもよい。発泡性飲料は、ノンアルコール飲料であってもよい。本開示における「ノンアルコール飲料」とは、アルコール濃度が1体積%未満である飲料を意味する。
【0054】
発泡性飲料は、麦芽を含む原料から製造される飲料であってもよい。発泡性飲料は、麦芽を含まない原料から製造される飲料であってもよい。
【0055】
発泡性飲料は、ホップを含む原料から製造される飲料であってもよい。発泡性飲料は、ホップを含まない原料から製造される飲料であってもよい。
【0056】
発泡性飲料は、発酵を経て製造される飲料であってもよい。発泡性飲料は、発酵を経ずに製造される飲料であってもよい。
【0057】
好ましい発泡性飲料としては、例えば、ビール様発泡性飲料が挙げられる。特に好ましい発泡性飲料は、ビールである。本開示における「ビール様発泡性飲料」とは、「ビール」又は「ビールと同等又は類似の風味及び質感を有する発泡性飲料」を意味する。ビール様発泡性飲料としては、例えば、ビール、発泡酒及びリキュールが挙げられる。
【0058】
発泡性飲料における炭酸ガスの含有量は、好ましくは2GV~4GVである。GVは、ガスボリュームの略である。例えば、1GVは、1Lの発泡性飲料が1Lの炭酸ガスを含むことを示す。
【0059】
容器詰飲料は、好ましくは下記の特性を有する。開封前後の質量変化に基づく気体放出量は、好ましくは0.04g以上、より好ましくは0.05g以上、更に好ましくは0.06g以上である。気体放出量は、発泡性を反映している。例えば、気体放出量の増大は、発泡性が高いことを意味している。気体放出量の上限は、0.10g又は0.20gであってもよい。気体放出量は、以下の方法によって測定される。
(1)密封された缶を4℃の環境で24時間静置し、次に缶及び缶内の飲料の総質量M1を23℃の環境で測定する。
(2)缶を開封した後、缶を23℃の環境で1分間静置し、次に缶及び缶内の飲料の総質量M2を23℃の環境で測定する。缶の開封によって缶から分離した部材の質量は、缶及び缶内の飲料の総質量M2に含められる。
(3)総質量M1と総質量M2との差、すなわち、「M1-M2」の値を「気体放出量」として求める。
【0060】
缶への発泡性飲料の充填及び密封は、公知の方法によって実施されてもよい。発泡性飲料の充填は、好ましくは低温条件下で実施される。充填における温度は、好ましくは1℃~20℃である。
【実施例0061】
以下、実施例に基づいて本開示を説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に制限されない。以下に説明される技術的事項(例えば、組成、製造方法及び製造条件)は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更されてもよい。以下の説明において、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0062】
<表面改質剤>
表面改質剤1:4μmの平均粒径を有するポリエチレン粒子
表面改質剤2:6μmの平均粒径を有するポリエチレン粒子
表面改質剤3:12μmの平均粒径を有するポリエチレン粒子
表面改質剤4:4μmの平均粒径を有するシリカ粉末
表面改質剤5:12μmの平均粒径を有するPTFE粉末
表面改質剤6:0.5μmの平均粒径を有するポリエチレン粒子
【0063】
<塗料A>
塗料Aは、水性エポキシアクリル系樹脂を含み、かつ、表面改質剤を含まない塗料である。塗料Aにおける不揮発成分の含有率は20%である。塗料Aの製造方法は次のとおりである。エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを反応させて、水性エポキシアクリル系樹脂を得た。エポキシ樹脂に関して、エポキシ当量は2900g/eqであり、重量平均分子量は20000である。アクリル樹脂に関して、酸価は93mgKOH/gであり、重量平均分子量は20000である。水性エポキシアクリル系樹脂、ジメチルアミノエタノール及び水を混合して、20%の不揮発成分を含む塗料Aを得た。
【0064】
<実施例1>
以下の方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)底部及び胴部を含むアルミニウム製容器を準備した。胴部は円筒形であり、底部は胴部の下端に繋がっている。容器の上端において、胴部の縁は開口を画定している。容器の容量は、350mLである。
(2)20%の表面改質剤1を含む水分散体を準備した。
(3)水分散体及び塗料Aを混合して、表1に示す組成を有する水性塗料を得た。
(4)水性塗料を、スプレー塗装によって胴部の内面の全域に塗装し、続けて250℃で90秒間加熱した。水性塗料の加熱によって樹脂層を形成した。
【0065】
<実施例2>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)表面改質剤1を表面改質剤3に変更した。
(2)加熱温度を230℃に変更した。
【0066】
<実施例3>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)実施例1における水性塗料を、次の方法によって得られた水性塗料に変更した。20%の表面改質剤1を含む水分散体、20%の表面改質剤2を含む水分散体及び塗料Aを混合して、表1に示す組成を有する水性塗料を得た。
(2)加熱温度を220℃に変更した。
【0067】
<実施例4>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)実施例1における水性塗料を、次の方法によって得られた水性塗料に変更した。20%の表面改質剤1を含む水分散体、表面改質剤4及び塗料Aを混合して、表1に示す組成を有する水性塗料を得た。
(2)加熱温度を190℃に変更した。
【0068】
<実施例5>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)実施例1における水性塗料を、次の方法によって得られた水性塗料に変更した。20%の表面改質剤1を含む水分散体、20%の表面改質剤2を含む水分散体及び塗料Aを混合して、表1に示す組成を有する水性塗料を得た。
(2)加熱温度を200℃に変更した。
【0069】
<実施例6>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)実施例1における水性塗料を、実施例5における水性塗料に変更した。
(2)水性塗料を塗布する前に、塗料Aを塗布した。具体的に、塗料Aを、スプレー塗装によって、底部の内面と、胴部の内面の中央部及び下部とに塗装した。次に、水性塗料を、スプレー塗装によって胴部の内面の上部及び中央部に塗装し、続けて200℃で90秒間加熱した。ここで、上部、中央部及び下部は、胴部を高さ方向に3等分することによって画定される3つの領域に対応する。
【0070】
<実施例7>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)実施例1における水性塗料を、次の方法によって得られた水性塗料に変更した。20%の表面改質剤1を含む水分散体、表面改質剤5及び塗料Aを混合して、表1に示す組成を有する水性塗料を得た。
(2)加熱温度を180℃に変更した。
【0071】
<実施例8>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)実施例1における水性塗料を、次の方法によって得られた水性塗料に変更した。20%の表面改質剤1を含む水分散体、表面改質剤5及び塗料Aを混合して、表1に示す組成を有する水性塗料を得た。
(2)加熱温度を190℃に変更した。
【0072】
<比較例1>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)実施例1における水性塗料を、次の方法によって得られた水性塗料に変更した。20%の表面改質剤2を含む水分散体及び塗料Aを混合して、表1に示す組成を有する水性塗料を得た。
【0073】
<比較例2>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)実施例1における水性塗料を、次の方法によって得られた水性塗料に変更した。20%の表面改質剤6を含む水分散体及び塗料Aを混合して、表1に示す組成を有する水性塗料を得た。
(2)加熱温度を200℃に変更した。
【0074】
<比較例3>
下記の変更を除いて、実施例1と同じ方法によって発泡性飲料用缶を製造した。
(1)実施例1における水性塗料を、次の方法によって得られた水性塗料に変更した。表面改質剤4及び塗料Aを混合して、表1に示す組成を有する水性塗料を得た。
(2)加熱温度を200℃に変更した。
【0075】
<評価>
実施例及び比較例で得られた発泡性飲料用缶を用いて、以下の評価を行った。
【0076】
[表面特性]
既述の方法に従って胴部の内面のSdr、Sdq、Sa及びSqを求めた。具体的な測定条件を以下に示す。結果を表1に示す。
(1)顕微鏡:レーザーテック株式会社製レーザー顕微鏡「OPTELICS HYBRID+」
(2)画像解析ソフトウェア:上記顕微鏡付属のソフトウェア
(3)観察倍率:50倍
【0077】
[ガス抜け量(開封前後の質量変化に基づく気体放出量)]
準備した発泡性飲料用缶にビール(炭酸ガスの含有量:4.8GV)を充填し、次に、フルオープン形式の蓋を用いて容器の開口を閉じた。フルオープン形式の蓋は、開封後に60%の開口率を示す蓋である。密封された缶を4℃の環境で24時間静置し、次に缶及び缶内のビールの総質量M1を23℃の環境で測定した。缶を開封した後、缶を23℃の環境で1分間静置し、次に缶及び缶内のビールの総質量M2を23℃の環境で測定した。総質量M2は、缶の開封によって缶から分離した蓋の質量を含む。総質量M1と総質量M2との差、すなわち、「M1-M2」の値を「ガス抜け量」として求めた。5本の缶を用いて上記測定を行い、ガス抜け量の最小値及び最大値を記録した。結果を表1に示す。ガス抜け量が多いほど、発泡性が高い。
【0078】
[泡立ち]
準備した発泡性飲料用缶にビール(炭酸ガスの含有量:4.8GV)を充填し、次に、フルオープン形式の蓋を用いて容器の開口を閉じた。密封された缶を4℃の環境で24時間静置し、次に缶を23℃の環境で開封した。23℃の環境で、缶の開封から缶の開口が泡で覆われるまでの時間を測定した。10本の缶を用いて上記測定を行い、5秒以内に缶の開口が泡で覆われた缶の数を記録した。結果を表1に示す。
【0079】
【0080】
表1に示されるとおり、比較例1~3と比較して、実施例1~8は高い発泡性を示した。具体的に、実施例1~8において、缶を開封した際に泡が発生し、缶の開口が泡で覆われた。