(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026076
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】超低灰分潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20240220BHJP
C10M 133/44 20060101ALN20240220BHJP
C10M 133/12 20060101ALN20240220BHJP
C10M 139/00 20060101ALN20240220BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20240220BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240220BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240220BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M133/44
C10M133/12
C10M139/00 A
C10N10:12
C10N40:25
C10N30:06
C10N30:12
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023192586
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2020539694の分割
【原出願日】2019-01-03
(31)【優先権主張番号】15/875,269
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ジョン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】キャラベル、ケビン デイビッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エンジンの摩耗及び銅腐食を低減する潤滑油組成物および方法を提供する。
【解決手段】ASTMD5185により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及びASTM D874により測定された0.6重量%までの硫酸灰分を有し、主要量の基油、少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及びモリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデンを含む潤滑油組成物であって、本質的にZnDTPを含まない、リン及び亜鉛の含有量が低レベルにおいてエンジンの対銅腐食性能を改善可能な潤滑油組成物とする。また、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)又はガソリン微粒子捕集フィルタ(GPF)後処理装置システムを備えたエンジンの摩耗及び銅腐食を低減する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物。
【請求項2】
油溶性又は油分散性のホウ素含有化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ホウ素含有化合物が、前記組成物の総重量に基づき、少なくとも約500ppmのホウ素の量で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ホウ素含有化合物が、前記組成物の総重量に基づき、約500ppm~約1500ppmのホウ素の量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記硫黄含有量が、前記組成物の総重量に基づき、約0.01重量%~約0.4重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記モリブデン含有化合物が、前記組成物の総重量に基づき、約900~1500ppmのモリブデンの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、4:1以下の硫黄対モリブデンの重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、0.5:1~4:1の硫黄対モリブデンの重量比を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記トリアゾール化合物が、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.02重量%~約1.0重量%の割合で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記硫酸灰分が、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.01重量%~約0.60重量%の割合で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ジフェニルアミン酸化防止剤が、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.20重量%~約1.30重量%の割合で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記潤滑油がジフェニルアミン酸化防止剤を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
リンが、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.01重量%~約0.12重量%の割合で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
エンジンの対銅腐食性能を改善するための方法であって、
(i)ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
【請求項15】
エンジンの対銅腐食性能を改善するための方法であって、
(i)ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ガソリン微粒子捕集フィルタ(GPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
【請求項16】
エンジンにおける対銅腐食性能を改善すると同時に摩耗を低減するための方法であって、
(i)ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
【請求項17】
エンジンにおける対銅腐食性能を改善すると同時に摩耗を低減するための方法であって、
(i)ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ガソリン微粒子捕集フィルタ(GPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
排出ガス規制に準拠するために内燃機関に装備されている排ガス後処理装置は、エンジンで使用される燃料と潤滑油の副産物による燃焼に影響され易いことが証明されている。さらに、ある特定のタイプの装置は、次の項目:(1)潤滑剤から生じるリン、(2)燃料と潤滑剤の両方から生じる硫黄、及び(3)燃料と潤滑剤の燃焼から生じる硫酸灰分のうちの1つ以上に影響され易い。様々なタイプの後処理装置の耐久性を確保するために、例えば硫黄、リン、及び硫酸灰分が比較的低レベルであることを特徴とする特殊な潤滑剤が開発されている。
【0002】
本質的にジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を含まない自動車エンジン潤滑剤を配合する場合、いくつかの課題が存在する。ZnDTPは、厳しい条件下で良好な摩耗と有益な酸化保護を提供する多用途の耐摩耗性/酸化防止成分である。しかしながら、ZnDTPには亜鉛、硫黄及びリンといった元素が含まれており、これらはすべて排ガス後処理装置に悪影響を及ぼす。
【0003】
ZnDTPからの耐摩耗性と抗酸化性の損失を補うために、硫酸灰分は比較的低レベルでありながら、内燃機関で使用したときに高い摩耗抑制を有利に実現するモリブデン含有潤滑油組成物が開発された。しかしながら、ZnDTPの損失を補うために高レベルのモリブデンを使用したときに直面した問題は、潤滑油の対銅腐食性能であった。
【0004】
上記の問題を解決する必要がある。元のエンジン製造会社は、ASTM D6594試験(HTCBT)及びASTM D130試験(銅ストリップ腐食試験)に合格して、エンジンでの使用に適した潤滑油が認定される必要があった。ZnDTP不含有油についての課題は、従来の自動車用潤滑油の対摩耗性能を維持すると同時に、腐食を防ぎ、様々なタイプの後処理装置の耐久性を確保する潤滑油組成物を開発することである。本発明者らは、この問題に対する解決策を開発した。
【0005】
本発明者らは、どのような銅腐食防止剤でも高モリブデン含有で本質的にZnDTP不含有の油において十分な対銅腐食性能を提供できる訳ではないことを発見した。特定の化学的構成が要求される。加えて、この化学的構成により、本発明のモリブデン含有潤滑油組成物で高い摩耗抑制性能を達成すると同時に、リン及び亜鉛の含有量を比較的低レベル(又は実質的に不含有)で使用することが可能となる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、概して、ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、主要量の基油、少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及びモリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデンを含む潤滑油組成物であって、本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物に関する。
【0007】
また、エンジンの摩耗及び銅腐食を低減するための方法であって、ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、主要量の基油、少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及びモリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデンを含む潤滑油組成物であって、本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物でエンジンを潤滑させることを含み、前記エンジンが、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)又はガソリン微粒子捕集フィルタ(GPF)後処理装置システムを備えているものである、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示される主題の理解を容易にするために、本明細書で使用されるいくつかの用語、略語又は他の略記について以下に定義する。定義されていない用語、略語又は略記は、本出願の提出と同時期に当業者によって使用される通常の意味を有するものと理解される。
【0009】
定義:
この明細書において、以下の単語と表現は、使用される場合には、下記の意味を有する。
【0010】
「主要量」とは、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0011】
「少量」とは、記載された添加剤に関して、1種又は複数種の添加剤の有効成分として認識される、組成物中に存在するすべての添加剤の総質量に関して示される量が、組成物の50重量%未満であることを意味する。
【0012】
「有効成分」又は「活性物質」とは、希釈剤又は溶媒ではない添加材料を指す。
【0013】
報告されているすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り、有効成分ベースの重量%である(すなわち、担体又は希釈油に無関係である)。
【0014】
「ppm」という略語は、潤滑油組成物の総重量に基づいた、重量にして百万分のいくらの割合であるかを意味する。
【0015】
150℃での高温高せん断(HTHS)粘度は、ASTM D4683に従って決定した。
【0016】
100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って決定した。
【0017】
金属-「金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの混合物を指す。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、油溶性又は分散性という表現が使用されている。油溶性又は油分散性とは、所望のレベルの活性又は性能を提供するのに必要な量を、潤滑粘性のある油に溶解、分散又は懸濁させることにより組み込むことができることを意味する。通常、これは、材料の少なくとも約0.001重量%を潤滑油組成物に組み込むことができることを意味する。油溶性及び分散性、特に「安定した分散性」という用語のさらなる検討については、米国特許第4,320,019号を参照されたい。この点について関連する教示については、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用される「硫酸灰分」という用語は、潤滑油中の洗浄剤及び金属添加剤から生じる不燃性残留物を指す。硫酸灰分は、ASTMテストD874を使用して測定され得る。
【0020】
本明細書で使用される「全塩基価」又は「TBN」という用語は、1グラムの試料中のKOHのミリグラム数に相当する塩基の量を指す。したがって、TBNの数値が高くなるということは、アルカリ性の生成物が多くなることを反映するため、アルカリ性が増大することを反映している。TBNを、ASTM D 2896試験を使用して測定した。
【0021】
ホウ素、カルシウム、マグネシウム、モリブデン、リン、硫黄、及び亜鉛の含有量を、ASTM D5185に従って測定した。
【0022】
ここで言及されるすべてのASTM規格は、本出願の出願日時点での最新バージョンである。
【0023】
本開示については、様々な修正及び代替形態が可能であるが、その具体的な実施形態を本明細書で詳細に説明する。しかしながら、具体的な実施形態の本明細書における記載は、本開示を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、反対に、意図するところは、添付の特許請求の範囲によって定義される開示の精神及び範囲内にあるすべての修正、同等物、及び代替物を網羅するものであると理解されるべきである。
【0024】
全般的な記載又は例で説明されているすべての行動が必要な訳ではなく、特定の行動の一部が必要でない場合もあれば、説明された行動に加えて1つ以上のさらなる行動が実行され得る場合があるものとする。さらに、行動が列挙される順序は、必ずしも実行される順序ではない。
【0025】
本明細書では、特定の実施形態に関して、利益、他の利点、及び問題の解決策について記載している。ただし、利益、利点、問題の解決策、及び利益、利点、又は解決策が発生する、又はより顕著になる誘因となり得る、複数の場合もある特徴は、一部又は全部の特許請求の範囲の重要な特徴、必要とされる特徴、又は不可欠な特徴として解釈されるべきではない。
【0026】
本明細書に記載の実施形態の明細及び実例は、様々な実施形態の構造の一般的な理解をもたらすことを意図したものである。
【0027】
本明細書で使用される用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はその任意の他の変形は、非排他的含有という状況を包含するものとする。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、品目、又は装置については、必ずしもそれらの特徴だけに限定されず、明示的に列挙されていない他の特徴又はかかるプロセス、方法、品目、若しくは装置に固有のその他の特徴を含む場合がある。さらに、相反する記載が明示されていない限り、「又は」は、排他的論理和ではなく、包括的論理和を指す。例えば、次のいずれか一つによって条件A又はBが満たされる:Aは真である(又は存在する)かつBは偽である(又は存在しない)、Aは偽である(又は存在しない)かつBは真である(又は存在する)、並びにAとBの両方が真である(又は存在する)。
【0028】
「a」又は「an」の使用は、本明細書で説明されるエレメント及び構成要素を記載するために採られている。これは、単に便宜上、及び本開示の実施形態の範囲の一般的な意味を与えるために為される。この記載は、他の意味合いを有することが明らかではなければ、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は複数形の場合も含み、又は逆の場合も同様である。「平均」という用語は、値を指す場合、平均、幾何平均、又は中央値を意味するものとする。元素の周期表内の列に対応する族番号は、CRC化学・物理学ハンドブック(CRC Handbook of Chemistry and Physics)、第81版(2000-2001)に見られる「新しい表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0029】
別途定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。材料、方法、及び例は説明のみを目的としており、限定することを意図したものではない。本明細書に記載されていない範囲で、特定の材料及び処理加工行為に関する多くの詳細は慣用的なものであり、潤滑剤並びに石油及びガス産業内のテキスト及び他の情報源で見出され得る。
【0030】
本明細書及び例証は、本明細書に記載の構造又は方法を使用する配合物、組成物、装置及びシステムのすべてのエレメント及び特徴の網羅的かつ包括的な説明としての役割を果たすことを意図するものではない。また、別個の実施形態を単一の実施形態において組み合わせて提供することもあり得、逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明する様々な特徴を別個に又は任意の部分的な組合せで提供することもあり得る。さらに、範囲に挙げられている値については、その範囲内のすべての値が含まれる。本明細書を読んで初めて、多くの他の実施形態が当業者に明らかになることもあり得る。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的置換、論理的置換、又は別の変更を行うことができるように、他の実施形態を使用し、本開示から導出することができる。したがって、本開示は限定的ではなく例示的とみなされるべきである。
【0031】
トリアゾール化合物
トリアゾール部分を含む種であればすべて、本開示による組成物において有用である。
【0032】
本開示の組成物は、典型的には、約0.02~約1.0重量パーセントのトリアゾールを含むが、約0.02~0.08重量パーセント、0.02~0.07重量パーセント、0.02~0.06重量パーセント、0.02~約0.5重量パーセントのトリアゾール化合物も含み得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1重量パーセント以下、0.75重量パーセント以下、又はさらには0.5重量パーセント以下のトリアゾール化合物を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも0.02重量パーセント、0.03重量パーセント、0.04重量パーセント、0.05重量パーセント、0.07重量パーセント、又はさらには0.1重量パーセントのトリアゾールを含む。トリアゾール化合物は、ヒドロカルビル部分により置換され得る。
【0033】
本開示のトリアゾールは、約70~約1000g/mol、約70~約950g/mol、約70~約900g/mol、約70~約850g/mol、約70~約800g/mol、約70~約750g/mol、約70~約700g/mol、約70~約650g/mol、約70~約600g/mol、約70~約550g/mol、又は約70~約500g/molのMWを有し得る。
【0034】
一実施形態において、本開示のトリアゾールは、活性硫黄基を含まないものである。
【0035】
トリアゾールのアルキル及びアリール誘導体が好ましい。最も好ましいのはトリルトリアゾールである。これらは置換されていても置換されていなくてもよい。
【0036】
本明細書で使用する場合、「炭化水素」、「ヒドロカルビル」又は「炭化水素ベース」という用語は、説明されている部分が、本開示の文脈内で主に炭化水素特性を有することを意味する。これらには、本質的に純粋に炭化水素である部分、すなわち、炭素と水素のみを含む部分が含まれる。それらはまた、前記部分の主たる炭化水素特性を変えることのない置換基又は原子を含む部分を含むことができる。そのような置換基には、ハロ、アルコキシ、ニトロなどが含まれ得る。これらの部分は、ヘテロ原子を含むこともできる。適切なヘテロ原子は当業者に明らかなものであり、例えば、硫黄、窒素、酸素、及びリンが含まれることになる。したがって、本発明の文脈内で主たる炭化水素の性質を維持しながら、これらの部分は、他の点では炭素原子から構成される鎖又は環に存在する炭素以外の原子を含むこともあり得る。例えば、アルキル基及びアリール基は、ヒドロカルビル基ということになる。
【0037】
一例として、トリアゾール化合物は、単環又は複数環、例えば共有結合した環を含む置換又は非置換アリール部分で置換することができる。共有結合した環を含む置換芳香族部分の非限定的な例には、ビフェニル、1,1′-ビナフチル、p,p′-ビトリル、ビフェニレニルなどが含まれる。別の例として、アリール部分は、複数の縮合環を含み得る。複数の縮合環を含むアリール部分の非限定的な例には、ナフチル、アントリル、ピレニル、フェナントレニル、フェナレニルなどが含まれる。さらなる例として、アリール部分は、トリアゾールに共有結合した単環を含むことができる。トリアゾールに共有結合した単環を含むアリール部分の非限定的な例には、フェニルなどが含まれる。別の例として、アリール部分は、トリアゾールに縮合した単環を含み得る。トリアゾールに縮合した単環を含むアリール部分の非限定的な例には、ベンゾトリアゾール及びトリルトリアゾールが含まれる。
【0038】
本発明の置換トリアゾールは、その酸性-NH基を介して塩基性トリアゾールをアルデヒド及びアミンと縮合させることにより調製され得る。いくつかの実施形態では、置換トリアゾールは、トリアゾール、アルデヒド及びアミンの反応生成物である。本開示の置換トリアゾールを調製するために使用され得る適切なトリアゾールには、トリアゾール、アルキル置換トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、又は他のアリールトリアゾールが含まれ、適切なアルデヒドには、ホルムアルデヒド及びホルマリンのような反応性等価物が含まれ、適切なアミンには、第一級又は第二級のアミンが含まれる。いくつかの実施形態において、アミンは第二級アミンであり、さらに分枝状アミンである。さらに別の実施形態において、アミンはベータ分枝状アミン、例えばビス-2-エチルヘキシルアミンである。
【0039】
本開示のトリアゾールは、以下の構造:
【化1】
[式中、nは0~4の整数であり、mは0、1、又は2であり、Rはヒドロカルビル基であり、Yは-R
1又は-(R
2)
p-NR
3R
3であり、ここで-R
1はヒドロカルビル基であり、-R
2-はヒドロカルビレン基であり、pは0又は1であり、各-R
3は独立して水素又はヒドロカルビル基である]
のうちの1つ又はそれらの組合せを有し得る。
【0040】
一例において、トリアゾールは、以下の構造(IX)又は(X)を有し得る:
【化2】
【0041】
モリブデン含有化合物
有機モリブデン化合物は、少なくともモリブデン原子、炭素原子及び水素原子を含むが、硫黄原子、リン原子、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい。適切な有機モリブデン化合物には、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、及びカルボン酸モリブデン、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミドなどの様々な有機モリブデン錯体が含まれ、これらは、酸化モリブデン又はモリブデン酸アンモニウムを脂肪、グリセリド、脂肪酸、又は脂肪酸誘導体(例、エステル、アミン、アミド)と反応させることで得ることができる。「脂肪(性)の」という用語は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖、通常は直鎖状の炭素鎖を意味する。
【0042】
米国特許第4,889,647号及び米国特許第6,806,241B2号に開示されている方法により調製されたモリブデン酸エステル。市販されている例は、R T Vanderbilt Company、Inc.によって製造されているMOLYVAN(登録商標)855添加剤である。
【0043】
ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)は、次の構造(XI):
【化3】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、互いに独立して、4個~18個の炭素原子(例えば、8個~13個の炭素原子)を有する直鎖又は分枝状のアルキル基である]
で表される有機モリブデン化合物である。
【0044】
これらの化合物の調製については、文献並びに米国特許第3,356,702号及び同第4,098,705号で周知であり、これらは参照のために本明細書に組み込まれる。市販されている例としては、R.T.Vanderbilt Company Inc.が製造しているMOLYVAN(登録商標)807、MOLYVAN(登録商標)822、及びMOLYVAN(登録商標)2000、ADEKA CORPORATIONが製造しているSAKURA-LUBE(登録商標)165及びSAKURA-LUBE(登録商標)515、並びにChemtura Corporationが製造しているNaugalube(登録商標)MolyFMが挙げられる。
【0045】
米国特許第5,888,945号及び同第6,010,987号によって教示されているように、三核ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンも当技術分野で知られており、これらの特許は参照により本明細書に組み込まれる。三核モリブデン化合物、好ましくは式Mo3S4(dtc)4や同Mo3S7(dtc)4[式中、dtcは、独立して選択された有機基を含む独立して選択されたジオルガノジチオカルバメートリガンドを表し、リガンドは、化合物のリガンドの全有機基の間で十分な数の炭素原子を有する]を有するもの及びそれらの混合物が存在することにより、化合物は潤滑油に可溶又は分散可能となる。
【0046】
ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、次の構造(XII):
【化4】
[式中、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、互いに独立して、4個~18個の炭素原子(例えば、8個~13個の炭素原子)を有する直鎖又は分枝状のアルキル基である]
で表される有機モリブデン化合物である。
【0047】
カルボン酸モリブデンは、米国特許RE(再発行)第38,929号及び米国特許第6,174,842号に記載されており、したがって、参照により本明細書に組み入れられる。カルボン酸モリブデンは、任意の油溶性カルボン酸から誘導され得る。典型的なカルボン酸には、ナフテン酸、2-エチルヘキサン酸、及びリノレン酸が含まれる。これらの特定の酸から生成されるカルボキシレートの商業的供給元は、それぞれMOLYBDENUM NAP-ALL、MOLYBDENUM HEX-CEM、及びMOLYBDENUM LIN-ALLである。これらの製品の製造元は、OMG OM Groupである。
【0048】
モリブデン酸アンモニウムは、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、チオモリブデン酸アンモニウムなどの酸性モリブデン供給源と、必要に応じて、例を少し挙げると硫黄、無機硫化物、ポリ硫化物、及び二硫化炭素などの硫黄供給源の存在下、油溶性アミンとの酸塩基反応によって調製される。好ましいアミン化合物は、一般に使用されるエンジン油組成物であるポリアミン分散剤である。かかる分散剤の例は、スクシンイミド及びマンニッヒ型である。これらの調製については、米国特許第4,259,194号、第4,259,195号、第4,265,773号、第4,265,843号、第4,727,387号、第4,283,295号及び第4,285,822号に見出される。
【0049】
一実施形態において、モリブデンアミンはモリブデン-スクシンイミド錯体である。適切なモリブデン-スクシンイミド錯体は、例えば、米国特許第8,076,275号に記載されている。これらの錯体は、酸性モリブデン化合物と、構造(XIII)又は(XIV):
【化5】
[式中、RはC
24~C
350(例えば、C
70~C
128)のアルキル又はアルケニル基であり、R′は、2個~3個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状鎖のアルキレン基であり、xは1~11であり、yは1~10である]
で示されるポリアミンのアルキル又はアルケニルスクシンイミド又はそれらの混合物との反応を含むプロセスによって調製される。
【0050】
モリブデン-スクシンイミド錯体の調製に使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物又は酸性モリブデン化合物の塩である。「酸性の」とは、ASTM D664又はD2896で測定されたところによると、モリブデン化合物が塩基性窒素化合物と反応するであろうことを意味する。一般的に、酸性モリブデン化合物は六価である。適切なモリブデン化合物の代表例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のアルカリ金属モリブデン酸塩、並びに他のモリブデン塩、例えば水素塩、(例、モリブデン酸水素ナトリウム)、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6などが含まれる。
【0051】
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用され得るスクシンイミドは、多くの参考文献に開示されており、当技術分野では周知である。「スクシンイミド」という技術用語に含まれるある特定の基本的なタイプのスクシンイミド及び関連材料は、米国特許第3,172,892号、第3,219,666号及び第3,272,746号に教示されている。「スクシンイミド」という用語は、当技術分野では、形成される可能性もあるアミド、イミド、及びアミジンなる化学種の多くを含むと理解されている。しかしながら、主な生成物はスクシンイミドであり、この用語は、アルキル又はアルケニル置換コハク酸又は同無水物と窒素含有化合物との反応の生成物を意味するものとして一般に受け入れられている。好ましいスクシンイミドは、約70~128個の炭素原子のポリイソブテニル無水コハク酸を、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びそれらの混合物から選択されるポリアルキレンポリアミンと反応させることにより調製されるものである。
【0052】
モリブデン-スクシンイミド錯体は、適切な圧力及び120℃を超えない温度で硫黄供給源により後処理して、硫化モリブデン-スクシンイミド錯体を提供することができる。硫化工程は、約0.5~5時間(例、0.5~2時間)実施され得る。硫黄の適切な供給源としては、元素の硫黄、硫化水素、五硫化リン、式R2Sx[式中、Rはヒドロカルビル(例:C1~C10アルキル)であり、xは少なくとも3である]で示される有機多硫化物、C1~C10メルカプタン、無機硫化物及び無機多硫化物、チオアセトアミド、並びにチオ尿素が挙げられる。
【0053】
本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性又は分散した油安定性モリブデン含有化合物から提供される、組成物の総質量に基づき、少なくとも約800ppm、少なくとも約850ppm、少なくとも約900ppm、少なくとも約950ppm、少なくとも約1000ppm、少なくとも約1050ppm、少なくとも約1100ppmのモリブデンを含有することになる。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性又は分散した油安定性モリブデン含有化合物から提供される、組成物の総質量に基づき約800ppm~約2000ppm、約900ppm~約1500ppm、約900ppm~約1400ppm、約900ppm~約1300ppm、約900ppm~約1200ppm、約900ppm~約1100ppmのモリブデンを含有することになる。
【0054】
一実施形態において、油溶性又は分散した油安定性モリブデン含有化合物は、潤滑油組成物における硫黄対モリブデンの重量比が約4:1以下となるように、本発明の潤滑油組成物中に存在することになる。別の実施形態において、潤滑油組成物では、硫黄対モリブデンの重量比が約3:1未満である。さらに別の実施形態において、潤滑油組成物では、硫黄対モリブデンの重量比が約0.5:1~約4:1である。別の実施形態において、潤滑油組成物では、硫黄対モリブデンの重量比が約1:1~約4:1である。さらに別の実施形態において、潤滑油組成物では、硫黄対モリブデンの重量比が約1:1~約3:1である。さらに別の実施形態において、潤滑油組成物では、硫黄対モリブデンの重量比が約1:1~約2.5:1である。
【0055】
硫黄含有化合物
一般に、本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいた場合、約4000ppm以下、例えば、約100~4000ppm、100~3000ppm、100~2500ppm、100~2400ppm、100~2300ppm、100~2200ppm、100~2100ppm、100~2000ppm、100~1900ppm、100~1800ppm、100~1700ppm、100~1600ppmの硫黄のレベルである。
【0056】
硫黄含有量は、元素の硫黄又は硫黄含有化合物から誘導され得る。硫黄又は硫黄含有化合物は、潤滑油組成物に意図的に添加されることもあれば、基油又は潤滑油組成物用添加剤の1つ以上に存在することもあり得る。一実施形態において、潤滑油組成物中の硫黄の主たる量は、活性硫黄化合物に由来し、すなわち、50%を超える量である。「活性硫黄」とは、耐摩耗活性があり、好ましくは防食性である硫黄化合物を意味する。硫黄含有化合物は、無機硫黄化合物又は有機硫黄化合物であり得る。硫黄含有化合物は、スルファモイル、スルフェナモイル、スルフェノ、スルフィド、スルフィナモイル、スルフィノ、スルフィニル、スルホ、スルホニオ、スルホニル、スルホニルジオキシ、スルフェート、チオ、チオカルバモイル、チオカルボニル、チオカルボニルアミノ、チオカルボキシ、チオシアナト、チオホルミル、チオキソ、チオケトン、チオアルデヒド、チオエステルなどの基の1つ以上を含む化合物であり得る。硫黄はまた、鎖又は環に炭素原子及び硫黄原子(及び、必要に応じて、酸素又は窒素などの他のヘテロ原子)を含むヘテロ基又は化合物中に存在し得る。好ましい硫黄含有化合物には、ジヒドロカルビルスルフィド及びポリスルフィド、例えばアルキル又はアルケニルスルフィド及びポリスルフィド、硫化脂肪酸又はそのエステル、無灰ジチオホスフェート、環状有機硫黄化合物、ポリイソブチルチオチオン化合物、無灰ジチオカルバメート及びそれらの混合物が含まれる。
【0057】
ジヒドロカルビルスルフィド又はポリスルフィドの例には、式XV:
R9-Sb-R10(XV)
[式中、R9及びR10は同一又は異なり、C1~C20のアルキル基、アルケニル基又は環状アルキル基、C6~C20アリール基、C7~C20アルキルアリール基、又はC7~C20アリールアルキル基を表し、bは1~7の整数である]
により表される化合物がある。R9及びR10がそれぞれアルキル基の場合、その化合物はアルキルスルフィドと呼ばれる。式VIIIにおいてR9及びR10により表される基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、シクロヘキシル、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル、ベンジル、及びフェネチルが含まれる。
【0058】
本明細書での使用に適した無灰ジチオホスフェートの1つのクラスには、式XVI:
【化6】
[式中、R
11及びR
12は独立して、3~8個の炭素原子を有するアルキル基である]
のもの(RT Vanderbilt Co.、IncからVANLUBE(登録商標)7611Mとして市販されている)が含まれる。
【0059】
本明細書で使用するのに適した無灰ジチオホスフェートの別のクラスには、Ciba Geigy CorpからIRGALUBE(登録商標)63として市販されているものなどのカルボン酸のジチオリン酸エステルが含まれる。
【0060】
本明細書で使用するのに適した無灰ジチオホスフェートのさらに別のクラスには、Ciba Geigy CorpからIRGALUBE(登録商標)TPPTとして市販されているものなどのトリフェニルホスホロチオネートが含まれる。
【0061】
適切なポリイソブチルチオチオン化合物には、式XVII:
【化7】
[式中、R
13は水素又はメチルであり、Xは硫黄又は酸素であり、mは1~9の整数であり、nは0又は1であり、nが0のときR
13はメチルであり、nが1のときR
13は水素である]
で表される化合物が含まれる。これらのポリイソブチルチオチオン化合物の例は、例えば、米国特許出願公開第20050153850号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0062】
好ましい実施形態において、本発明の潤滑油組成物で使用するための硫黄化合物は、式XVIII:
【化8】
【0063】
[式中、R13、R14、R15、及びR16は、同一又は異なり、1~13個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビル基であり、R17は、1~8個の炭素原子を有するアルキレン基である]
で示されるビスジチオカルバメート化合物である。式XIのビスジチオカルバメートは既知の化合物であり、米国特許第4,648,985号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。1~13個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビル基は、1~13個の炭素原子を有する分枝状又は直鎖アルキル基であり得る。本明細書での使用に好ましいビスジチオカルバメート化合物は、商標Vanlube(登録商標)7723(R T Vanderbilt Co.、Inc)の下で市販されているメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)である。
【0064】
一実施形態において、本発明の潤滑油組成物で使用するための硫黄化合物は、米国特許公開第20140045737号及び同第20170260475号に記載されている無灰チオカルバメート化合物であり、両特許公開は参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、リン含有物を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.01重量%~約0.12重量%、約0.01重量%~約0.10重量%、約0.01重量%~約0.08重量%、約0.01重量%~約0.06重量%である。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を実質的に含まない。
【0066】
一実施形態において、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により判定されたところによると約0.60重量%以下、例えば、ASTM D 874によって判定されたところによると約0.10~約0.60重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により判定されたところによると約0.50重量%以下、例えば、ASTM D 874によって判定されたところによると約0.10~約0.50重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により判定されたところによると約0.40重量%以下、例えば、ASTM D 874によって判定されたところによると約0.10~約0.40重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により判定されたところによると約0.30重量%以下、例えば、ASTM D 874によって判定されたところによると約0.10~約0.30重量%の硫酸灰分のレベルである。
【0067】
ジフェニルアミン酸化防止剤
本発明の潤滑油組成物は、アミン酸化防止剤を含むことができる。一実施形態では、酸化防止剤はジフェニルアミン酸化防止剤である。ジフェニルアミン酸化防止剤の例には、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、トリアルキル化ジフェニルアミン、及びそれらの混合物が含まれる。これらのいくつかには、ブチルジフェニルアミン、ジブチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、t-ブチル-t-オクチルジフェニルアミン、ビスノニル化ジフェニルアミン、ビスオクチル化ジフェニルアミン、及びフェニル-α-ナフチルアミン、アルキル又はアリールアルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化p-フェニレンジアミン、テトラメチル-ジアミノジフェニルアミンなどが含まれる。
【0068】
いくつかの実施形態において、ジフェニルアミン酸化防止剤は、潤滑油組成物の総重量に基づき、1.3未満、1.2未満、1.0未満、0.90未満の重量%で存在する。いくつかの実施形態において、ジフェニルアミン酸化防止剤は、潤滑油組成物の総重量に基づき約0.20~約1.30、約0.20~約1.20、約0.20~約1.10、約0.20~約1.00、約0.30~約0.90、約0.60~約0.90、約0.70~約0.90の重量%で存在する。一実施形態において、配合物はジフェニルアミン酸化防止剤を含まない。
【0069】
ホウ素含有化合物
本発明の潤滑油組成物で使用するための少なくとも1つの油溶性又は分散した油安定性ホウ素含有化合物の代表例には、ホウ酸化分散剤、ホウ酸化摩擦調整剤、分散アルカリ金属又は混合アルカリ金属又はアルカリ土類金属ボレート、ホウ酸化エポキシド、ホウ酸エステル、ホウ酸化脂肪アミン、ホウ酸化アミド、ホウ酸化スルホネート、ホウ酸化サリチレートなど、及びそれらの混合物が含まれる。
【0070】
ホウ酸化分散剤の例には、ホウ酸化ポリアルケニル無水コハク酸などのホウ酸化無灰分散剤;ポリアルキレン無水コハク酸のホウ酸化非窒素含有誘導体;スクシンイミド、カルボン酸アミド、ヒドロカルビルモノアミン、ヒドロカルビルポリアミン、マンニッヒ塩基、ホスホノアミド、チオホスホナミド及びホスホルアミド、チアゾール、例えば2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール及びその誘導体、トリアゾール、例えばアルキルトリアゾール及びベンゾトリアゾール、アミン、アミド、イミン、イミド、ヒドロキシル、カルボキシルなどを含む、1つ以上のさらなる極性官能基を有するカルボン酸エステルを含むコポリマー、例えば上記官能基の単量体と長鎖アルキルアクリレート又はメタクリレートの共重合により調製された生成物からなる群から選択されるホウ酸化塩基性窒素化合物、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定される訳ではない。好ましいホウ酸化分散剤は、例えばホウ酸化ポリイソブテニルスクシンイミドなどのホウ素のスクシンイミド誘導体である。
【0071】
ホウ酸化摩擦調整剤の例には、ホウ酸化脂肪エポキシド、ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸化グリセロールエステルなど、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定される訳ではない。
【0072】
水和粒子状アルカリ金属ボレートは当技術分野で周知であり、市販されている。水和粒子状アルカリ金属ボレート及び製造方法の代表例には、例えば、米国特許第3,313,727号;第3,819,521号;第3,853,772号;第3,907,601号;第3,997,454号;第4,089,790号;第6,737,387号及び第6,534,450号に開示されたものがあり、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。水和アルカリ金属ボレートは、次式:M2O・mB2O3・nH2Oで表すことができ、式中、Mは、約11~約19の範囲の原子番号のアルカリ金属、例えばナトリウム及びカリウムであり、mは約2.5~約4.5の数(整数と小数の両方)であり、nは約1.0~約4.8の数である。水和ホウ酸ナトリウムが好ましい。水和ボレート粒子は一般に、約1ミクロン未満の平均粒径を有する。
【0073】
ホウ酸化エポキシドの例には、1つ以上のホウ素化合物と少なくとも1つのエポキシドとの反応生成物から得られるホウ酸化エポキシドが含まれる。適切なホウ素化合物には、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三酸化ホウ素、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、ボロン酸、ホウ酸、四ホウ酸及びメタホウ酸などのホウ素酸、ホウ素アミド、及びホウ素酸の様々なエステルが含まれる。エポキシドは一般に、約8~約30個の炭素原子、好ましくは約10~約24個の炭素原子、より好ましくは約12~約20個の炭素原子を有する脂肪族エポキシドである。適切な脂肪族エポキシドには、ドデセンオキシド、ヘキサデセンオキシドなど、及びそれらの混合物が含まれる。エポキシドの混合物、例えば約14~約16個の炭素原子又は約14~約18個の炭素原子を有するエポキシドの市販の混合物も使用することができる。ホウ酸化エポキシドは一般的に知られており、例えば、米国特許第4,584,115号に記載されている。
【0074】
ホウ酸エステルの例には、上記開示のホウ素化合物の1つ以上を、適切な親油性を有する1つ以上のアルコールと反応させることによって得られるホウ酸エステルが含まれる。典型的には、アルコールは6~約30個の炭素、好ましくは8~約24個の炭素原子を含むことになる。上記のホウ酸エステルの製造方法は、当技術分野で周知である。ホウ酸エステルは、ホウ酸化リン脂質でもあり得る。ホウ酸エステルの代表例には、式XIX~XXIに示される構造を有するものが含まれる:
【化9】
(式中、各Rは、独立してC
1-C
12直鎖又は分枝状アルキル基であり、R
1は水素又はC
1-C
12直鎖又は分枝状アルキル基である)。
【0075】
ホウ酸化脂肪アミンの例には、上記開示のホウ素化合物の1つ以上を、1つ以上の脂肪アミン、例えば、約14~約18個の炭素原子を有するアミンと反応させることにより得られるホウ酸化脂肪アミンが含まれる。ホウ酸化脂肪アミンは、アミンを約50~約300℃、好ましくは約100~約250℃の範囲の温度、及びアミンの当量対ホウ素化合物の当量の比が約3:1~約1:3であるホウ素化合物と反応させることにより調製することができる。
【0076】
ホウ酸化アミドの例には、8~約22個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状の飽和又は不飽和一価脂肪族酸、尿素、及びポリアルキレンポリアミンとホウ酸化合物など及びそれらの混合物との反応生成物から得られるホウ酸化アミドが含まれる。
【0077】
ホウ酸化スルホネートの例には、(a)炭化水素溶媒の存在下で(i)油溶性スルホン酸又はアルカリ土類スルホン酸塩又はそれらの混合物のうちの少なくとも1つ;(ii)アルカリ土類金属の少なくとも1つの供給源;(iii)少なくとも1つのホウ素供給源、及び(iv)ホウ素供給源以外で、ホウ素供給源に対して0から10モルパーセント未満の過塩基性酸を反応させ、(b)(a)の反応生成物を炭化水素溶媒の蒸留温度より高い温度に加熱して、この反応から炭化水素溶媒と水を蒸留することにより得られるホウ酸化アルカリ土類金属スルホネートが含まれる。適切なホウ酸化アルカリ土類金属スルホネートには、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20070123437号に開示されているものが含まれる。
【0078】
ホウ酸化サリチレートの例には、(a)炭化水素溶媒の存在下で(i)油溶性サリチル酸又はアルカリ土類サリチル酸塩又はそれらの混合物のうちの少なくとも1つ;(ii)アルカリ土類金属の少なくとも1つの供給源;(iii)少なくとも1つのホウ素供給源、及び(iv)ホウ素供給源以外で、ホウ素供給源に対して0から10モルパーセント未満の過塩基性酸を反応させ、(b)(a)の反応生成物を炭化水素溶媒の蒸留温度より高い温度に加熱して、この反応から炭化水素溶媒と水を蒸留することにより得られるホウ酸化アルカリ土類金属サリチレートが含まれる。
【0079】
本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性又は分散した油安定性ホウ素含有化合物から提供される、組成物の総質量に基づき、約400ppmを超えるホウ素を含有することになる。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性又は分散した油安定性ホウ素含有化合物から提供される、組成物の総質量に基づき、少なくとも約500ppmのホウ素を含有することになる。別の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性又は分散した油安定性ホウ素含有化合物から提供される、組成物の総質量に基づき、少なくとも約600ppmのホウ素を含有することになる。さらに別の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性又は分散した油安定性ホウ素含有化合物から提供される、組成物の総質量に基づき、少なくとも約700ppmのホウ素を含有することになる。他の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性又は分散した油安定性ホウ素含有化合物から提供される、組成物の総質量に基づき、約400ppm~約2000ppm以下、約500ppm~約1500ppm以下、約600ppm~約1500ppm以下、約600ppm~約1200ppm以下、約600ppm~約1000ppm以下、約600ppm~約900ppm以下、約700ppm~約900ppm以下、約750ppm~約900ppm以下のホウ素を含有することになる。
【0080】
他の潤滑油添加剤
本開示の潤滑油組成物はまた、これらの添加剤が分散又は溶解される潤滑油組成物の任意の望ましい特性を付与又は改善することができる他の慣用的添加剤を含有してもよい。本明細書に開示される潤滑油組成物には、当業者に知られている任意の添加剤を使用することができる。いくつかの適切な添加剤は、Mortierら、「潤滑剤の化学及び技術」(Chemistry and Technology of Lubricants)、第2版、ロンドン、Springer(1996);及びLeslie R.Rudnick、「潤滑剤添加剤:化学及び用途」(Lubricant Additives:Chemistry and Applications)、ニューヨーク、Marcel Dekker(2003)に記載されており、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。例えば、潤滑油組成物を、酸化防止剤、摩耗防止剤、金属洗浄剤、防錆剤、脱ヘイズ剤、解乳化剤、金属不活化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、腐食防止剤、無灰分散剤、多機能剤、染料、極圧剤など及びそれらの混合物とブレンドすることができる。様々な添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤又はそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順により本開示の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0081】
本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の洗浄剤を含むことができる。金属含有又は灰分形成性の洗浄剤は、堆積物を低減又は除去する洗浄剤として、また酸中和剤又は防錆剤として機能し、それにより摩耗と腐食を低減し、エンジン寿命を延ばす。洗浄剤は一般的に、長い疎水性の尾部を伴う極性の頭部を含む。極性頭部は、酸性有機化合物の金属塩を含む。塩は、実質的に化学量論的な量の金属を含む場合があり、その場合、それらは通常、正塩又は中性塩として記載される。過剰の金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)を酸性ガス(例えば、二酸化炭素)と反応させることにより、大量の金属塩基を組み込むことができる。
【0082】
使用され得る洗浄剤には、油溶性の中性及び過塩基性のスルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリチレート、及びナフテネート、並びに金属、特にアルカリ又はアルカリ土類金属、例えばバリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムの他の油溶性カルボキシレートが含まれる。最も一般的に使用される金属は、両方とも潤滑剤で使用される洗浄剤中に存在し得るカルシウム及びマグネシウム、並びにカルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムの混合物である。
本発明の潤滑油組成物は、可動部品間の摩擦を低下させることができる1つ以上の摩擦調整剤を含むことができる。当業者に知られている摩擦調整剤はすべて、潤滑油組成物に使用され得る。適切な摩擦調整剤の非限定的な例には、脂肪カルボン酸、脂肪カルボン酸の誘導体(例、アルコール、エステル、ホウ酸エステル、アミド、金属塩など)、モノ-、ジ-若しくはトリ-アルキル置換リン酸又はホスホン酸、モノ-、ジ-若しくはトリ-アルキル置換リン酸又はホスホン酸の誘導体(例、エステル、アミド、金属塩など)、モノ-、ジ-若しくはトリ-アルキル置換アミン、モノ-若しくはジ-アルキル置換アミド及びそれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態において、摩擦調整剤の例には、限定される訳ではないが、アルコキシル化脂肪アミン;ホウ酸化脂肪エポキシド;脂肪ホスファイト、脂肪エポキシド、脂肪アミン、ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ酸化グリセロールエステル;及び米国特許第6,372,696号(その内容が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されている脂肪イミダゾリン;C4~C75、又はC6~C24、又はC6~C20の脂肪酸エステル、並びにアンモニア及びアルカノールアミンなど、及びその混合物からなる群から選択される窒素含有化合物の反応生成物から得られる摩擦調整剤が含まれる。摩擦調整剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%の範囲で変動し得る。
【0083】
本発明の潤滑油組成物は、0.1~3重量%の量で追加の有機酸化防止剤を含むことができる。上記のジアリールアミンに加えて、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール酸化防止剤であり得る。
【0084】
ヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4′-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4′-メチレンビス(6-t-ブチル-o-クレゾール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4′-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチル、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、3-(3,54-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸オクチル、並びに限定される訳ではないが、IrganoxL135(登録商標)(BASF)、Naugalube531(登録商標)(Chemtura)、及びEthanox376(登録商標)(SI Group)などの市販品が含まれる。
【0085】
潤滑粘性がある油
潤滑粘性がある油(「ベースストック」又は「基油」と呼ばれることもある)は、潤滑剤の主要な液体成分であり、例えばそこに添加剤や場合によっては他の油をブレンドして最終潤滑剤(又は潤滑剤組成物)を生成する。基油は、濃縮物を製造するのに、またそれから潤滑油組成物を製造するのに有用であり、天然及び合成の潤滑油及びそれらの組合せから選択され得る。
【0086】
天然油には、動物性及び植物性の油、液体石油、並びにパラフィン系、ナフテン系及び混合パラフィン-ナフテン系の水素化精製された溶剤処理鉱物潤滑油が含まれる。石炭又は頁岩に由来する潤滑粘性がある油も有用な基油である。
【0087】
合成潤滑油には、炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン(例、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン);アルキルベンゼン(例、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン、アルキル化ナフタレン);ポリフェノール(例、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにその誘導体、類似体及び同族体が含まれる。
【0088】
別の適切な種類の合成潤滑油には、ジカルボン酸(例、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と様々なアルコール(例、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより形成される複合エステルが含まれる。
【0089】
また、合成油として有用なエステルには、C5~C12モノカルボン酸及びポリオール、並びにネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールなどのポリオールエーテルから作られたものも含まれる。
【0090】
基油は、フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素から誘導されることもある。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、H2とCOを含む合成ガスから作られる。かかる炭化水素は、通常、基油として有用であるためにさらなる処理を必要とする。例えば、前記炭化水素は、当業者に知られているプロセスを使用して、水素異性化、水素化分解及び水素異性化、脱ろう、又は水素異性化及び脱ろうされていてもよい。
【0091】
本発明の潤滑油組成物では、未精製油、精製油及び再精製油を使用することができる。未精製油とは、天然原料又は合成原料からさらなる精製処理を行わずに直接得られるものである。例えば、レトルト操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、又はエステル化プロセスから直接得られ、さらになる処理をせずに使用されるエステル油は、未精製油である。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製工程でさらに処理されていることを除き、未精製油に類似している。蒸留、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、濾過及び浸透などの多くのそのような精製技術は、当業者に知られている。
【0092】
再精製油は、すでに使用されたことがある精製油に適用される精製油を得るために使用されるプロセスと同様のプロセスによって得られる。かかる再精製油は、再生油又は再処理油としても知られており、多くの場合、使用済み添加物及び油分解製品の承認を得るための技術によってさらに処理される。
【0093】
したがって、本潤滑油組成物の製造に使用され得る基油は、米国石油協会(API)基油互換性ガイドライン(American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelines)(API Publication 1509)で指定されているグループI~Vの基油のいずれかから選択され得る。上記の基油グループを、以下の表1に要約する。
【表1】
【0094】
本明細書での使用に適した基油は、APIグループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油並びにそれらの組合せに対応する種類のいずれか、好ましくは並外れた揮発性、安定性、粘度及び清浄度といった特徴故にグループIII~グループVの油である。
【0095】
基油とも呼ばれる、本開示の潤滑油組成物に使用するための潤滑粘性がある油は、典型的には、主要量、例えば、組成物の総重量に基づき、50重量%を超える量、好ましくは約70重量%を超える量、より好ましくは約80~約99.5重量%の量、最も好ましくは約85~約98重量%の量で存在する。本明細書で使用される「基油」という表現は、単一の製造業者によって(供給源又は製造業者の場所と関係なく)同じ仕様に向けて製造され、同じ製造業者の仕様に適合し、固有の式、製品識別番号、又はその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストック又はベースストックのブレンドを意味すると理解される。本明細書で使用するための基油は、そういったあらゆる用途のための潤滑油組成物の配合に使用される潤滑粘性のある既知又は今後発見され得る油、例えばエンジン油、マリンシリンダー油、作動油、ギア油、トランスミッション液などの機能性流体などであり得る。さらに、本明細書で使用するための基油は、必要に応じて、粘度指数向上剤、例えば、高分子アルキルメタクリレート、オレフィン系共重合体、例えば、エチレン-プロピレン共重合体又はスチレン-ブタジエン共重合体など、及びそれらの混合物を含むことができる。粘度調整剤のトポロジーには、線形、分岐形、超分岐形、星形、又は櫛形のトポロジーが含まれ得るが、これらに限定はされない。
【0096】
当業者が容易に理解するように、基油の粘度は用途によって異なる。したがって、本明細書で使用するための基油の粘度は、通常、100℃(C.)で約2センチストークス~約2000センチストークス(cSt)の範囲となる。一般に、エンジン油として使用される基油は、個々に、100℃で約2cSt~約30cSt、好ましくは約2cSt~約20cSt、好ましくは約2cSt~約18cSt、好ましくは約3cSt~約16cSt、最も好ましくは約4cSt~約12cStの動粘度範囲を有することになり、所望の最終用途及び完成油中の添加剤に応じて選択又はブレンドすることにより、エンジン油の所望のグレードを達成、例えば、SAE粘度グレードが0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-26、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、15W-40、30、40などである潤滑油組成物が得られることになる。
【0097】
好適には、本潤滑油組成物は、4~12mg KOH/g(例、5~12mg KOH/g、6~12mg KOH/g、6~10mg KOH/g、6~8mg KOH/g)の全塩基価(TBN)を有し得る。
【0098】
一般に、潤滑油組成物中の各添加剤の濃度は、使用時、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約2.5重量%の範囲であり得る。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約5重量%の範囲であり得る。
【0099】
潤滑油配合物の調製では、炭化水素油、例えば鉱物潤滑油、又はその他の適切な溶媒中10~80重量%の有効成分濃縮物形態で添加剤を導入することが一般的慣行である。
【0100】
通常、これらの濃縮物は、完成潤滑剤、例えば、クランクケースモーター油を形成する際に、添加剤パッケージ1重量部当たり3~100重量部、例えば5~40重量部の潤滑油で希釈され得る。濃縮物の目的は、もちろん、様々な材料の取り扱いをより容易にし、扱い易くすること、及び最終ブレンドでの溶解又は分散を促進することである。
【0101】
潤滑油組成物を調製するプロセス
本明細書に開示される潤滑油組成物は、潤滑油を作製するための当業者に知られている任意の方法によって調製することができる。いくつかの実施形態において、基油は、本明細書に記載されている添加剤化合物とブレンド又は混合することができる。当業者に知られている任意の混合又は分散装置を、成分をブレンド、混合又は可溶化するために使用することができる。ブレンド、混合又は可溶化は、ブレンダー、攪拌機、分散機、ミキサー(例:プラネタリミキサー及び二重プラネタリミキサー)、ホモジナイザー(例:ガウリン(Gaulin)ホモジナイザー及びラニー(Rannie)ホモジナイザー)、ミル(例:コロイドミル、ボールミル及びサンドミル)又は当技術分野で知られている他の任意の混合若しくは分散装置で実施され得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている潤滑油組成物は、圧縮点火エンジン又は火花点火内燃エンジン、特に直接噴射、ブーストされたエンジンにおけるモーター油(すなわち、エンジン油又はクランクケース油)としての使用に適している可能性がある。ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)などの後処理装置を備えた高耐久性圧縮点火エンジンに関する銅腐食の改善と摩耗性能の低減に特に効果的であることに加えて、潤滑油組成物は、ガソリン微粒子捕集フィルタ(GPF)を備えた火花点火エンジンに関する銅腐食の改善と摩耗性能の低減に特に効果的であり得る。
【0103】
以下の例は、本開示の実施形態の実例を示すために提示されているが、本開示を記載された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。別段の指示がない限り、すべての部及びパーセンテージは重量による。すべての数値は近似値である。数値範囲が与えられている場合、記載された範囲外の実施形態が依然として本開示の範囲内に含まれ得ることを理解すべきである。各例で説明されている具体的詳細は、本開示の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【0104】
本明細書に開示された実施形態に対して様々な修正がなされ得ることは理解されるはずである。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の単なる例示として解釈されるべきである。例えば、上記で説明され、本開示を動作させるための最良のモードとして実現される機能は、例示のみを目的とするものである。本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、他の取り合わせ及び方法が当業者によって実施され得る。さらに、当業者であれば、本明細書に添付される特許請求の範囲及びその精神内で他の修正を想定するはずである。
【0105】
例
以下の例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を多少なりとも限定するものではない。特に明記しない限り、すべての重量%は、適量の希釈油を含む添加剤ベースで示されている。
【0106】
配合物A
低リン潤滑油組成物は、SAE 10W-30粘度グレード配合物を得るために以下の成分を一緒にブレンドすることにより調製された:
(1)ホウ素含有量に関して、760ppmの、ホウ酸化分散剤(添加剤に基づき、完成油中5.2重量%)、水和ホウ酸カリウム(完成油中0.556重量%)及びホウ酸化スルホネート(完成油中3mmol/kg)の、添加剤ベースで160の全塩基価(TBN)を有する組合せ。
(2)モリブデン含有量に関して、1200ppmのモリブデンスクシンイミド錯体。
(3)2.6重量%の分散剤。
(4)1つ以上の洗浄剤の合計14mmol/kg。
(5)1.31重量%のアルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤。
(6)1重量%のヒンダードフェノール酸化防止剤。
(7)0.7重量%の無灰ジチオカルバメート
(8)0.5重量%の流動点降下剤。
(9)3.0重量%の分散剤粘度指数向上剤。
(10)ケイ素含有量に関して、10ppmの消泡剤。
(11)残りは約70重量%のグループIII基油と約30重量%のグループII基油から成る希釈油であった。
【0107】
腐食防止剤A
銅腐食防止剤(金属不活性化剤)Aは、BASFから入手可能なトリルトリアゾール誘導体であるIRGAMET(登録商標)39であった。その化学名は、1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-4-メチルベンゾトリアゾールである。
【0108】
腐食防止剤B
銅腐食防止剤Bは、Rhodia Groupから入手可能なホスファイトであるDURAPHOS(登録商標)TLPであった。その化学名は亜リン酸トリラウリルである。
【0109】
腐食防止剤C
銅腐食防止剤Cは、Afton Chemicalから入手可能な無灰ジアルキルチアジアゾールであるHITEC(登録商標)4313であった。その化学名は、2,5-ビス(オクチルジスルファニル)-1,3,4-チアジアゾールである。
【0110】
腐食防止剤D
銅腐食防止剤Dは、Afton Chemicalから入手可能な無灰ジアルキルチアジアゾール誘導体であるHITEC(登録商標)4312であった。その化学名は、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体である。
【0111】
腐食防止剤E
銅腐食防止剤Eは、RT Vanderbiltから入手可能なアルキルコハク酸半酸エステル(half acid ester)誘導体である、Vanlube(登録商標)RI-Aであった。
【0112】
腐食防止剤F
銅腐食防止剤Fは、BASFから入手可能なN-β-ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリンである、Amine(アミン)Oであった。
【0113】
腐食防止剤G
銅腐食防止剤Gは、Kemiraから入手可能なヒドロキシエチルイミダゾリン濃縮物であるKemguard(登録商標)CI-4083であった。
【0114】
腐食防止剤H
銅腐食防止剤Hは、PMC Specialties Groupから入手可能な5-メチル及び4-メチル1H-ベンゾトリアゾールの混合物(すなわち、トリルトリアゾール)である、Cobratec(登録商標)TT-100であった。
【0115】
腐食防止剤I
銅腐食防止剤Iは、RT Vanderbiltから入手可能な2(3H)-ベンゾチアゾールチオンを含むC12-C14 tert-アルキル化合物である、Vanlube(登録商標)601Eであった。
【0116】
例1
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.85重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.02重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0117】
例2
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.85重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.42重量%の無灰のジチオカルバメートを使用し、0.03重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0118】
例3
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.85重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.04重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0119】
例4
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.85重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.05重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0120】
例5
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、モリブデン含有量に関して、1000ppmのモリブデンスクシンイミド錯体及び0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.02重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0121】
例6
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.85重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.07重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0122】
例7
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.85重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.10重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0123】
例8
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.85重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.15重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0124】
例9
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.75重量%のジフェニルアミン酸化防止剤を使用し、0.05重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0125】
例10
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.75重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.75重量%の水和ホウ酸カリウムを使用し、0.05重量%の腐食防止剤Aを加えた。これにより、配合物中のホウ素が760ppmから890ppmに増加した。
【0126】
例11
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.75重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.05重量%の腐食防止剤Aを加えた。これにより、配合物中の硫黄が2400ppmから1600ppmに低下した。
【0127】
例12
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.75重量%のジフェニルアミン酸化防止剤、0.75重量%の水和ホウ酸カリウム、0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.05重量%の腐食防止剤Aを加えた。これにより、配合物中のホウ素が760ppmから890ppmに増加し、配合物中の硫黄が2400ppmから1600ppmに低下した。
【0128】
例13
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.75重量%のジフェニルアミン酸化防止剤及び0.42重量%の無灰ジチオカルバメートを使用し、0.05重量%の腐食防止剤Hを加えた。これにより、配合物中の硫黄が2400ppmから1600ppmに低下した。
【0129】
比較例1
配合物Aを複製した。
【0130】
比較例2
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.02重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0131】
比較例3
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.03重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0132】
比較例4
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.04重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0133】
比較例5
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.05重量%の腐食防止剤Aを加えた。
【0134】
比較例6
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.5重量%の腐食防止剤Bを加えた。
【0135】
比較例7
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.15重量%の腐食防止剤Cを加えた。
【0136】
比較例8
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.05重量%の腐食防止剤Dを加えた。
【0137】
比較例9
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.05重量%の腐食防止剤Eを加えた。
【0138】
比較例10
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.05重量%の腐食防止剤Fを加えた。
【0139】
比較例11
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.05重量%の腐食防止剤Gを加えた。
【0140】
比較例12
潤滑油を配合物Aの場合と同様にブレンドしたが、ただし、0.05重量%の腐食防止剤Iを加えた。
【0141】
ASTM D6594 HTCBT(高温腐食ベンチ試験)
ASTM D6594 HTCBT試験は、ディーゼルエンジンの潤滑剤を試験して、様々な金属、特にカムフォロワーとベアリングで一般的に使用されている鉛と銅の合金を腐食する傾向を調べるために使用される。銅(Cu)、鉛(Pb)、スズ(Sn)及びリン青銅の4つの金属試験片を、測定された量のエンジン油に浸す。高温(170℃)の油に一定時間(168時間)空気(5l/時)を吹き込む。試験が完了すると、銅の試験片とストレスを受けた油を検査し、腐食と腐食生成物をそれぞれ検出する。新しい油とストレスを受けた油における銅、鉛、及びスズの濃度と、金属濃度のそれぞれの変化を記録する。合格するには、鉛の濃度が120ppmを超えるべきではなく、銅は20ppmを超えるべきではない。この試験方法のコピーは、100 Barr Harbor Drive、PO Box 0700、West Conshohocken、Pa 19428-2959にあるASTM Internationalから入手でき、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。HTCHTの結果を以下の表2及び3に示す。
【0142】
銅ストリップ腐食試験-ASTM D130
原油には硫黄化合物が含まれており、そのほとんどが精製時に除去される。しかしながら、石油製品に残存している硫黄化合物のうち、一部は様々な金属に対する腐食作用を有する可能性があり、この腐食性は必ずしも総硫黄含有量に直接関係する訳ではない。影響は、存在する硫黄化合物の化学的タイプによって異なり得る。銅ストリップ腐食試験は、石油製品の相対的腐食度を評価するために設計されている。この試験では、研磨された銅ストリップを、特定容量の被検試料に浸漬し、被検材料のクラスに固有の温度と時間の条件下で加熱する。加熱期間の終わりに、銅ストリップを取り除き、洗浄し、色と変色レベルを、以下に要約されているASTM銅ストリップ腐食標準に対して評価する(表2)。
【表2】
【0143】
例1~13及び比較例1~12の腐食特性を、HTCBT及び銅ストリップ腐食試験の両方で評価した。これらの結果を表3~7に示す。例1~13は、比較例1~12と比較して、銅腐食に対して優れた性能を提供したことが明らかである。この試験の目的の場合、銅に関する30未満の数値は並外れて良好である。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM
D5185により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び
ASTM D874により測定された0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%の
以下の構造で表されるトリアゾール化合物、
【化1】
式中、nは1であり、Rはヒドロカルビル基であり、Yは水素、-R
1
又は-(R
2
)
p
-NR
3
R
3
であり、ここで-R
1
はヒドロカルビル基であり、-R
2
-はヒドロカルビレン基であり、pは0又は1であり、各-R
3
は独立して水素又はヒドロカルビル基である、
c
.1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、本質的にZnDTPを含まない
、リン及び亜鉛の含有量が低レベルにおいてエンジンの対銅腐食性能を改善可能な潤滑油組成物。
【請求項2】
油溶性又は油分散性のホウ素含有化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ホウ素含有化合物が、前記組成物の総重量に基づき、少なくとも500ppmのホウ素の量で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ホウ素含有化合物が、前記組成物の総重量に基づき、500ppm~1500ppmのホウ素の量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記硫黄含有量が、前記組成物の総重量に基づき、0.01重量%~0.4重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記モリブデン含有化合物が、前記組成物の総重量に基づき、900~1500ppmのモリブデンの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、4:1以下の硫黄対モリブデンの重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、0.5:1~4:1の硫黄対モリブデンの重量比を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記トリアゾール化合物が、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、0.02重量%~1.0重量%の割合で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記硫酸灰分が、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、0.01重量%~0.60重量%の割合で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ジフェニルアミン酸化防止剤が、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、0.20重量%~1.30重量%の割合で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記潤滑油がジフェニルアミン酸化防止剤を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
リンが、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、0.01重量%~0.12重量%の割合で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
リン及び亜鉛の含有量が低レベルにおいてエンジンの対銅腐食性能を改善するための方法であって、
(i)ASTM
D5185により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び
ASTM D874により測定された0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%の
以下の構造で表されるトリアゾール化合物、
【化2】
式中、nは1であり、Rはヒドロカルビル基であり、Yは水素、-R
1
又は-(R
2
)
p
-NR
3
R
3
であり、ここで-R
1
はヒドロカルビル基であり、-R
2
-はヒドロカルビレン基であり、pは0又は1であり、各-R
3
は独立して水素又はヒドロカルビル基である、
c
.1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
【請求項15】
リン及び亜鉛の含有量が低レベルにおいてエンジンの対銅腐食性能を改善するための方法であって、
(i)ASTM
D5185により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び
ASTM D874により測定された0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%の
以下の構造で表されるトリアゾール化合物、
【化3】
式中、nは1であり、Rはヒドロカルビル基であり、Yは水素、-R
1
又は-(R
2
)
p
-NR
3
R
3
であり、ここで-R
1
はヒドロカルビル基であり、-R
2
-はヒドロカルビレン基であり、pは0又は1であり、各-R
3
は独立して水素又はヒドロカルビル基である、
c
.1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ガソリン微粒子捕集フィルタ(GPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
【請求項16】
リン及び亜鉛の含有量が低レベルにおいてエンジンにおける対銅腐食性能を改善すると同時に摩耗を低減するための方法であって、
(i)ASTM
D5185により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び
ASTM D874により測定された0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%の
以下の構造で表されるトリアゾール化合物、
【化4】
式中、nは1であり、Rはヒドロカルビル基であり、Yは水素、-R
1
又は-(R
2
)
p
-NR
3
R
3
であり、ここで-R
1
はヒドロカルビル基であり、-R
2
-はヒドロカルビレン基であり、pは0又は1であり、各-R
3
は独立して水素又はヒドロカルビル基である、
c
.1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
【請求項17】
リン及び亜鉛の含有量が低レベルにおいてエンジンにおける対銅腐食性能を改善すると同時に摩耗を低減するための方法であって、
(i)ASTM
D5185により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び
ASTM D874により測定された0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%の
以下の構造で表されるトリアゾール化合物、
【化5】
式中、nは1であり、Rはヒドロカルビル基であり、Yは水素、-R
1
又は-(R
2
)
p
-NR
3
R
3
であり、ここで-R
1
はヒドロカルビル基であり、-R
2
-はヒドロカルビレン基であり、pは0又は1であり、各-R
3
は独立して水素又はヒドロカルビル基である、
c
.1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ガソリン微粒子捕集フィルタ(GPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
本明細書に開示された実施形態に対して様々な修正がなされ得ることは理解されるはずである。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の単なる例示として解釈されるべきである。例えば、上記で説明され、本開示を動作させるための最良のモードとして実現される機能は、例示のみを目的とするものである。本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、他の取り合わせ及び方法が当業者によって実施され得る。さらに、当業者であれば、本明細書に添付される特許請求の範囲及びその精神内で他の修正を想定するはずである。
なお、下記[1]から[17]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物。
[2]
油溶性又は油分散性のホウ素含有化合物をさらに含む、[1]に記載の組成物。
[3]
前記ホウ素含有化合物が、前記組成物の総重量に基づき、少なくとも約500ppmのホウ素の量で存在する、[2]に記載の組成物。
[4]
前記ホウ素含有化合物が、前記組成物の総重量に基づき、約500ppm~約1500ppmのホウ素の量で存在する、[3]に記載の組成物。
[5]
前記硫黄含有量が、前記組成物の総重量に基づき、約0.01重量%~約0.4重量%である、[1]に記載の組成物。
[6]
前記モリブデン含有化合物が、前記組成物の総重量に基づき、約900~1500ppmのモリブデンの量で存在する、[1]に記載の組成物。
[7]
前記組成物が、4:1以下の硫黄対モリブデンの重量比を有する、[1]に記載の組成物。
[8]
前記組成物が、0.5:1~4:1の硫黄対モリブデンの重量比を有する、[7]に記載の組成物。
[9]
前記トリアゾール化合物が、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.02重量%~約1.0重量%の割合で存在する、[1]に記載の組成物。
[10]
前記硫酸灰分が、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.01重量%~約0.60重量%の割合で存在する、[1]に記載の組成物。
[11]
前記ジフェニルアミン酸化防止剤が、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.20重量%~約1.30重量%の割合で存在する、[1]に記載の組成物。
[12]
前記潤滑油がジフェニルアミン酸化防止剤を含まない、[1]に記載の組成物。
[13]
リンが、前記潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.01重量%~約0.12重量%の割合で存在する、[1]に記載の組成物。
[14]
エンジンの対銅腐食性能を改善するための方法であって、
(i)ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
[15]
エンジンの対銅腐食性能を改善するための方法であって、
(i)ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ガソリン微粒子捕集フィルタ(GPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
[16]
エンジンにおける対銅腐食性能を改善すると同時に摩耗を低減するための方法であって、
(i)ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
[17]
エンジンにおける対銅腐食性能を改善すると同時に摩耗を低減するための方法であって、
(i)ASTM D874により測定された0.4重量%までの硫黄含有量及び0.6重量%までの硫酸灰分を有し、
a.主要量の基油、
b.少なくとも0.02重量%のトリアゾール化合物、
c.約1.3重量%未満のジフェニルアミン酸化防止剤、及び
d.モリブデン含有化合物からの少なくとも900ppmのモリブデン
を含む潤滑油組成物であって、
本質的にZnDTPを含まない潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑させること、及び
(ii)前記エンジンを作動させること
を含み、
前記エンジンが、ガソリン微粒子捕集フィルタ(GPF)後処理装置システムを備えているものである、上記方法。
【外国語明細書】