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  • 特開-ボルテゾミブ保存用容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026093
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ボルテゾミブ保存用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/30 20060101AFI20240220BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B65D81/30 C
A61K31/69
A61K9/19
A61K47/26
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194413
(22)【出願日】2023-11-15
(62)【分割の表示】P 2019147507の分割
【原出願日】2019-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 武広
(72)【発明者】
【氏名】梶原 健一
(57)【要約】
【課題】ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤を保存するための容器であって、ボルテゾミブの光分解を抑制できる容器を提供すること。
【解決手段】ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤が充填され、200~360nmの波長の光透過率が10%以下の紫外線吸収性フィルムで包装された容器。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤を保存するための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルテゾミブ(一般名)は、下記式:
【化1】
で表され、プロテアソームを選択的かつ可逆的に阻害して抗腫瘍作用を発揮する分子標的薬としてミレニアム・ファーマシューティカルズによって開発された抗悪性腫瘍剤である(特許文献1)。ボルテゾミブは2003年に米国で多発性骨髄腫の適応で承認され、その後、日本、英国、ドイツをはじめ世界100ケ国以上で承認されて、ベルケイド(登録商標)の販売名で現在販売されている。
【0003】
特許文献2には、ボルテゾミブをマンニトールと共に凍結乾燥することで凍結乾燥した化合物を製造する方法、同製造方法で得られる組成物、および同製造方法で得られるボルテゾミブのマンニトールエステルが記載されている。アルキルボロン酸はアルコール共存下、エステルとの平衡状態を取り、水が少なくなればエステルになり、水が多くなるとエステルが加水分解されてアルキルボロン酸がフリー化されるとの性質を有している。特許文献2の発明はこの性質を利用したものであり、市販のベルケイド(登録商標)凍結乾燥製剤に応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3717934号公報
【特許文献2】特許第4162491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボルテゾミブは光によって分解することが知られているが、光安定性についての詳細な知見は少ないことが現状である。従来、ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤は、透明なガラス容器(例えば、バイアル)に充填されているが、光によるボルテゾミブの分解防止のため、さらに紙製の個包装箱に入れて遮光保存される必要があった。
【0006】
本発明は、ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤を保存するための容器であって、ボルテゾミブの光分解を抑制できる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の紫外線領域の光線が、ボルテゾミブの分解を促進することを見出した。そこで、所望の紫外線吸収性を有するフィルムで容器を包装することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤が充填され、200~360nmの波長の光透過率が10%以下の紫外線吸収性フィルムで包装された容器、
〔2〕前記紫外線吸収性フィルムにおいて、420~700nmの波長の光透過率が70%以上である、〔1〕記載の容器、
〔3〕前記紫外線吸収性フィルムの波長380nmにおける光透過率に対する波長420nmにおける光透過率の比率が5.0以上である、〔1〕または〔2〕記載の容器、
〔4〕前記紫外線吸収性フィルムにおいて、320~360nmの波長の光透過率が5%以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の容器、
〔5〕前記紫外線吸収性フィルムが、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤またはトリアジン系紫外線吸収剤を含有または塗工した紫外線吸収性フィルムである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の容器、
〔6〕前記凍結乾燥製剤が、ボルテゾミブとD-マンニトールとの凍結乾燥製剤である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の容器、
〔7〕ボルテゾミブを含有する溶液を容器に充填し凍結乾燥する工程、および前記容器を200~360nmの波長の光透過率が10%以下である紫外線吸収性フィルムで包装する工程を含む、ボルテゾミブの光安定化方法、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の容器の使用により、ボルテゾミブの分解を促進する有害な波長領域の光線が遮断される(すなわち、ボルテゾミブの光分解を抑制できる)ので、当該容器内に充填されたボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤を長期間安定に保存することができる。
【0010】
また、好ましい態様においては、容器の外側から内容物を視認することができ、この容器内でボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤を生理食塩水に溶かして患者に投与する前の溶解状態の確認や異物混入等の検査が容易である。さらに、集積体単位の遮光処理と異なり、容器をひとつずつ紫外線吸収性フィルムで包装しているので、カートンから取り出して照明器具からの光が当たる場所に放置されても、光による影響を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】D65ランプの分光分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態であるボルテゾミブ保存用容器の作製手順について、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0013】
(ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤)
本実施形態に係るボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤は、例えば以下の方法で製造することができる。
【0014】
ボルテゾミブ、および必要に応じて薬学上許容される添加剤を、水または水と有機溶媒との混合溶媒に加えて溶解させる。ボルテゾミブと薬学上許容される添加剤とを分けてそれぞれ溶媒に溶解させ、その後混合することもできる。得られた溶液の容量を水で一定量に調整した後、滅菌ろ過をして、一定量のボルテゾミブとなるように容器に充填して、凍結乾燥を行うことで、本実施形態に係るボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤を得る。
【0015】
添加剤としては、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、グルコース、スクロース、フルクトース、トレハロース等が挙げられ、D-マンニトールが好ましい。D-マンニトールを添加した場合、上記の凍結乾燥製剤の製造方法により、ボルテゾミブのボロン酸部分が、D-マンニトールエステルを形成し、ボルテゾミブの熱安定性が向上する。
【0016】
有機溶媒としては、例えば、水と混和性があり、凍結乾燥で除去される有機溶媒が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、2-プロパノール、t-ブタノール等の低級アルコール;1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;アセトニトリル等が挙げられる。好ましくは低級アルコールが挙げられ、エタノール、2-プロパノール、およびt-ブタノールがより好ましく、t-ブタノールが特に好ましい。
【0017】
有機溶媒の使用量は、ボルテゾミブが溶解するに十分な量であって、その後の凍結乾燥に過剰な負担をかけない程度の量であれば特に制限されないが、ボルテゾミブ3mgに対して通常0.03~3mLの範囲であり、0.05~1mLが好ましく、0.07~0.5mLがより好ましい。
【0018】
混合溶媒の組成は、混合溶媒が含水アルコールである場合、通常1~50%のアルコールを含有し、3~30%が好ましく、5~20%がより好ましい。
【0019】
滅菌ろ過は、無菌ろ過膜を用いて、例えば0.22ミクロンフィルターを用いて実施することができる。続いて、滅菌ろ過された溶液を一定量のボルテゾミブとなるように容器に充填して、凍結乾燥を行う。凍結乾燥は、例えば、-25℃~-50℃で凍結させて、減圧下、乾燥することができる。圧力としては、例えば、真空度3~10Pa等が挙げられる。
【0020】
以下の構造式で示される不純物が、後記する光安定性試験において増加することが確認された。
【化2】
【0021】
光安定性試験においては、上記の不純物A、B、D、およびEの増加に注目して、凍結乾燥製剤の光安定性を評価した。本実施形態に係る紫外線吸収性フィルムを包装した容器にボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤を保存することにより、上記の不純物の増加を顕著に抑制することができる。
【0022】
ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤は、例えば多発性骨髄腫の治療に用いられる。例えば、静脈内投与するための注射液を調製する場合は、ボルテゾミブ3mgを含有する容器に、生理食塩水3.0mLを加えて溶解させて、患者に適用する。例えば、皮下投与するための注射液を調製する場合は、ボルテゾミブ3mgを含有する容器に、生理食塩水1.2mLを加えて溶解させて、患者に適用する。
【0023】
(紫外線吸収性フィルム)
本実施形態に係る紫外線吸収性フィルムは、波長360nm以下の紫外光をほとんど透過させないため、紫外線によるボルテゾミブの分解を抑制することができる。一方、波長420nm以上の可視光の透過率が高いため、内容物の状態を目視により容易に確認することができる。
【0024】
本明細書において「X~Ynmの波長の光透過率」とは、「X~Ynmの波長の全範囲における光透過率」を意味する。また、光透過率は、市販の分光光度計を用いて測定することができる。
【0025】
紫外線吸収性フィルムの200~360nmの波長の光透過率は、ボルテゾミブの分解を抑制する観点から、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下が特に好ましい。
【0026】
紫外線吸収性フィルムの320~360nmの波長の光透過率は、ボルテゾミブの分解を抑制する観点から、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0027】
紫外線吸収性フィルムの360~380nmの波長の光透過率は、ボルテゾミブの分解を抑制する観点から、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下が特に好ましい。
【0028】
紫外線吸収性フィルムの420~700nmの波長の光透過率は、内部の視認性の観点から、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上が特に好ましい。この構成によれば、ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤が充填された容器の外側から内容物を視認することが可能となるため、この容器に生理食塩水を投入して、凍結乾燥製剤の溶解状態を確認しながら、上述の注射液の調製を行うことが可能となる。
【0029】
紫外線の不透過性と内部の視認性とを両立させる観点から、紫外線吸収性フィルムの波長380nmにおける光透過率に対する波長420nmにおける光透過率の比率は、5.0以上が好ましく、6.0以上がより好ましく、7.0以上がさらに好ましい。
【0030】
紫外線吸収性フィルムのヘイズ値は、透明性の観点から、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、25%以下がさらに好ましい。
【0031】
紫外線吸収性フィルムの厚みは、紫外線透過を抑制する観点から、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましく、50μm以上が特に好ましい。一方、内部の視認性の観点からは、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、80μm以下が特に好ましい。
【0032】
紫外線吸収性フィルムとしては、複雑な形状をした容器に対して密着性を高く維持した状態で包装することができるシュリンクフィルム(熱収縮性フィルム)が好適に用いられるが、特に限定されない。
【0033】
紫外線吸収性フィルム(好ましくは紫外線吸収性シュリンクフィルム)には、紫外線吸収剤を含有または塗工することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、およびシアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が挙げられるが、360nm付近において強い紫外線吸収能を示すベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0034】
紫外線吸収性フィルム(好ましくは紫外線吸収性シュリンクフィルム)は、その片面に粘着剤層を形成することが好ましい。粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系、ロジン系、ゴム系、ビニル系等の粘着剤が挙げられるが、経時接着力変化が少なく、透明性に優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0035】
粘着剤層には、遮光性物質を含有していてもよい。遮光性物質としては、紫外線遮光性および透明性の観点から、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物が好ましく、平均粒子径が0.01~0.1μmの超微粒子金属酸化物がより好ましい。
【0036】
シュリンクフィルムとしては、カレンダ加工、Tダイ法、インフレーション法、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等により一軸または二軸延伸(同時二軸または逐次二軸延伸)されたシュリンクフィルムが好適に用いられる。
【0037】
シュリンクフィルムの基材としては、透明性に優れている樹脂が好ましく、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等が挙げられる。なかでも、透明性と熱収縮性能の観点から、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンが好ましい。
【0038】
<容器>
本実施形態に係る容器は、密封可能であり、内容物の無菌性を保つことができる容器であればどのような形態であってもよいが、一般的に注射用製剤や注射剤の充填に用いられるバイアルやアンプルが好ましい。また、凍結乾燥品用の溶解液(例えば、注射用蒸留水や生理食塩液等)と共にシリンジに充填してプレフィルドシリンジ(ダブルチャンバー型シリンジ)とすることも可能である。
【0039】
容器の材質は特に限定されないが、例えば、バイアルやアンプルであればガラス材質やプラスチック材質のものが、例えば、ダブルチャンバー型シリンジであればプラスチック材質のものが好ましい。また、これらの材質を組み合わせて、例えば、内表面をプラスチック材質で被覆したガラス容器や、内表面をガラス材質で被覆したプラスチック容器も用いることができる。
【0040】
ガラス材質は、医薬品の充填用容器に使用可能なガラス材質であれば特に限定されない。ガラス容器の内表面は、シリコンでコーティングしてもよい。シリコンのコーティングは、シリコン系コーティング剤(例えば、ジメチルシリコンオイル、メチルフェニルシリコンオイル、メチルハイドロゲンシリコンオイル等)等を用いて、かかる容器の内表面を、加熱蒸着法、プラズマ強化化学蒸着法、プラズマパルス化学蒸着法等の公知の方法で処理することにより行われる。また、ガラス容器の内表面を、二酸化ケイ素で処理することもできる。二酸化ケイ素の処理は、公知の方法、例えば、シリコート処理、波状プラズマ化学的気相法処理等の公知の方法によって行われる。
【0041】
プラスチック材質は、医薬品の充填用容器に使用可能なプラスチック材質であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、または環状オレフィン系化合物もしくは架橋多環式炭化水素化合物の重合体樹脂等を使用することができる。
【0042】
容器がバイアルである場合は、ガラスバイアルが好ましく、シリコンで内表面をコーティングしたガラスバイアルがより好ましい。また、破ビンを防止するため、樹脂製プロテクター等からなる台座を設置してもよい。
【0043】
容器がバイアルである場合は、前記のボルテゾミブを含有する溶液を充填し、凍結乾燥に付した後に開口部をゴム栓、所望によってアルミニウム製のキャップ等を組み合わせて密封される。
【0044】
前記紫外線吸収性シュリンクフィルムの容器への被覆は、常法により、加熱炉にシュリンクフィルムを装着した容器を通過させることにより行うことができる。
【実施例0045】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
(凍結乾燥製剤の調製)
注射用水およびt-ブタノールの混合溶媒に、ボルテゾミブ200mg、D-マンニトール2000mgを加えて溶解し、注射用水で全量を100mLに定容した。得られた溶液を、無菌ろ過フィルターを用いてろ過し、1.5mLずつバイアルに充填した。次いで、バイアルにゴム栓を半打栓し、凍結乾燥機に入れて凍結乾燥処理を施した。乾燥終了後、窒素を用いて復圧し、全打栓してから、アルミキャップを巻き締めした。その後、バイアルを厚さ50μmの紫外線吸収性フィルム(光透過率 200nm:約1%、320nm:約2%、360nm:約3%、380nm:約10%、420nm:約85%)でシュリンク包装した。
【0047】
(光安定性試験)
凍結乾燥製剤の充填および紫外線吸収性フィルムによるシュリンク包装が完了したバイアルを光安定性装置に入れ、光源にD65ランプを用いて、照射強度3000lux/hrの散光下に置いた。総照度120万lux・hrの光に曝露した後、バイアルを試験装置より取り出した。その後、バイアルに水6mLおよびアセトニトリル4mLを加えて内容物を溶解させ、試料溶液とした。調製された溶液の安定性は、下記の方法により確認した。D65ランプの分光分布を図1に示す。
【0048】
各試料溶液の各類縁物質および総類縁物質量をHPLC法で測定した。HPLC法の条件は次のとおりである。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:270nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に3.5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相流量:毎分0.9mL
サンプル注入量:20μL
移動相:溶液AおよびBから構成される。
溶液A:水/ギ酸混液(1000:1)にトリエチルアミンを加えてpH3.0に調整する。この液860mLにテトラヒドロフラン140mLを加える.
溶液B:アセトニトリル/テトラヒドロフラン混液(43:7)
移動相の送液:溶液Aおよび溶液Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御する。
【0049】
【表1】
【0050】
各検体のピーク面積を自動積分法により測定し、面積百分率法によりそれらの量を求め、各類縁物質量および総類縁物質を求めた(表2)。なお、総類縁物質とは、不純物A、不純物B、不純物D、および不純物Eを含むすべての不純物を合わせたものである。
【0051】
[比較例1]
紫外線吸収性シュリンクフィルムを包装していないバイアルに凍結乾燥製剤を充填した以外は、実施例1と同様の方法で光安定性試験を実施した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2の結果より、本発明の紫外線吸収性フィルムで包装された容器の使用により、ボルテゾミブを含有する凍結乾燥製剤の光安定性が顕著に改善されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の容器は、ボルテゾミブの分解を促進する有害な波長領域の光線を遮断し、かつ好ましい態様においては容器の外側から内容物を視認できることから、ボルテゾミブの充填用容器として有用である。
図1