(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026118
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】突発性の過活動膀胱症候群及び排尿筋過活動を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240220BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240220BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240220BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240220BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240220BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240220BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240220BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K35/76
A61K38/17
A61P13/10
A61K35/761
A61K9/08
A61K9/127
A61K47/02
A61K47/26
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196350
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2020513493の分割
【原出願日】2018-05-14
(31)【優先権主張番号】62/505,382
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】519399453
【氏名又は名称】イオン チャネル イノベーションズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ION CHANNEL INNOVATIONS,LLC
【住所又は居所原語表記】23 Agnes Cir,Ardsley,New York 10502,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド メルマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ クリスト
(72)【発明者】
【氏名】カール-エリック アンダーソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】平滑筋疾患の1種又は複数種の徴候又は症状を緩和する方法を提供する。
【解決手段】ヒト対象の過活動膀胱症候群又は排尿筋過活動の徴候又は症状を処置するか又は緩和する方法であって、プロモーターと、Maxi-Kチャネルペプチドをコードする核酸とを有するベクターを含む組成物の単位用量を少なくとも2箇所以上の部位に排尿筋内投与することを含む方法とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象の過活動膀胱症候群又は排尿筋過活動の徴候又は症状を処置するか又は緩和する方法であって、プロモーターと、Maxi-Kチャネルペプチドをコードする核酸とを有するベクターを含む組成物の単位用量を少なくとも2箇所以上の部位に排尿筋内投与することを含む方法。
【請求項2】
前記プロモーターは平滑筋プロモーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロモーターはサイトメガロウイルス中期-初期プロモーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記単位用量は単一単位用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記単位用量は約5,000~50,000mcgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単位用量は少なくとも10,000mcgである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記単位用量は16,000mcg又は24,000mcgである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物を5箇所以上の部位に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物を10箇所以上の部位に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物を15箇所以上の部位に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物を20箇所以上の部位に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記徴候又は症状は排尿又は切迫の頻度である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ベクターは、下記の順序:
a.ヒトサイトメガロウイルス中期-初期プロモーター配列;
b.T7プライミング部位配列;
c.hSloオープンリーディングフレーム配列;
d.BGHポリアデニル化シグナル配列;
e.カナマイシン耐性配列;及び
f.pUC複製起点配列
で核酸エレメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒトサイトメガロウイルス中期-初期プロモーター配列は配列番号1である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
T7プライミング部位配列は配列番号2である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記BGHポリアデニル化シグナル配列は配列番号3である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記カナマイシン耐性配列は配列番号5である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記pUC複製起点配列は配列番号4である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記hSloオープンリーディングフレーム配列は配列番号7である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記hSloオープンリーディングフレーム配列は、配列番号7のヌクレオチド位置1054で単一点変異を有し、前記点変異は配列番号8の352位でセリンを生じる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
下記の順序:
g.配列番号1を含むヒトサイトメガロウイルス中期-初期プロモーター配列;
h.配列番号2を含むT7プライミング部位配列;
i.配列番号7を含むhSloオープンリーディングフレーム配列;
j.配列番号3を含むBGHポリアデニル化シグナル配列;
k.配列番号5を含むカナマイシン耐性配列;及び
l.配列番号4を含むpUC複製起点配列
で核酸エレメントを含むベクター。
【請求項22】
前記hSloオープンリーディングフレーム配列は、配列番号7のヌクレオチド位置1054で単一点変異を有し、前記点変異は配列番号8の352位でセリンを生じる、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
前記ベクターは、プラスミド、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、又はリポソームを含む、請求項21又は22に記載のベクター。
【請求項24】
前記プラスミドはpVAXである、請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
請求項23に記載の複数のベクターと、薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物。
【請求項26】
前記医薬組成物は平滑筋への注射用に製剤化されている、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記複数のベクターは、生理食塩水溶液中の20~25%のスクロースと組み合わされている、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
単位用量は単一単位用量である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項29】
単位用量は約5,000~50,000mcgである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項30】
単位用量は少なくとも10,000mcgである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項31】
単位用量は16,000mcg又は24,000mcgである、請求項25に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月12日に出願された米国仮特許出願第62/505,382号明細書の利益を主張し、この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般に、平滑筋機能障害に関連する1種又は複数種の症状を改善するための医学療法の分野に関する。具体的には、膀胱の平滑筋機能障害。
【0003】
配列表の組み込み
2018年5月11日に作成され且つサイズが30KBである、IONC-002-001WO_SeqList.txtという名称のテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
膀胱機能の異常は、米国の数百万人の男性及び女性の生活の質に顕著に影響を及ぼす一般的な問題である。多くの一般的な疾患(例えば、BHP、真性糖尿病、多発性硬化症、及び脳卒中)は、正常な膀胱機能を変化させる。膀胱機能の顕著で有害な変化はまた、加齢の正常な結果でもある。膀胱の生理機能の変化には、下記の2種の主な臨床症状が存在する:無緊張性膀胱及び過敏性膀胱(hyperreflexic bladder)。無緊張性膀胱又は排尿筋活動低下は、排尿筋平滑筋(膀胱壁の外側の平滑筋)の効果のない収縮性に起因して、尿内容物を空にする能力が低下している。無緊張性状態又は活動低下状態では、平滑筋の収縮性の低下は、膀胱機能障害の病因に関係している。そのため、平滑筋の緊張の薬理学的調節は根本的な問題を修正するには不十分であるということは驚くことではない。実際には、この状態を処置するための一般的な方法は清潔間欠カテーテル法(clean intermittent catheterization)を使用し、これは、慢性尿路感染、腎盂腎炎、及び最終的な腎不全の予防に成功した手段である。従って、無緊張性膀胱の処置により疾患の症状が寛解されるが、根本的な原因は修正されない。
【0005】
逆に、排尿筋過活動を示す過敏性の、抑制されていない、又は膀胱は、膀胱の充填中に自然に収縮し、これにより頻尿、尿意切迫、及び尿失禁が生じる場合があり、個人は、尿の通過を制御することができない。過敏性膀胱は、処置がより困難な問題である。この状態を処置するために使用されている薬物は通常、部分的な効果のみであり、患者の使用と熱意とを制限する重度の副作用を有する。現在承認されている処置オプション(例えば、オキシブチニン及びトルテラジン(tolteradine))は大部分が非特異的であり、膀胱筋細胞のムスカリンレセプター経路及び/又はカルシウムチャネルの遮断を最も頻繁に伴う。身体内の多くの器官系の細胞機能におけるこれら2種の経路の中心的な重要性を考慮すると、そのような治療戦略は、膀胱平滑筋の緊張を調節するための粗い方法だけではなく、むしろ、この治療戦略の本当の作用機序に起因して、この治療戦略はまた、顕著で望ましくない全身効果を有することも実質的に保証されている。従って、膀胱機能障害のための改善された処置オプションに対する大きなニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
平滑筋の緊張の変化に起因する疾患の治療又は処置を開発しようとする多数の試みにもかかわらず、現在の治療法は、制限された有効性及び/又は顕著な副作用をもたらすこと
から不十分である。そのため、副作用を最小限に抑えつつ有効性を高めることにより、変化した平滑筋の緊張の根底にある原因に対処するための薬学的介入及び/又は医学的介入が当分野で長年にわたり必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プロモーターと、Maxi-Kチャネルペプチドをコードする核酸とを有するベクターを含む組成物の単位用量を少なくとも2箇所以上の部位に排尿筋内(intradetrusorally)投与することによる、ヒト対象の過活動膀胱症候群又は排尿筋過活動の徴候又は症状を処置するか又は緩和する方法を提供する。このプロモーターは、例えば、平滑筋プロモーター又はサイトメガロウイルス中期-初期プロモーターである。この単位用量は単一単位用量である。或いは、2つ以上の単位用量を異なる時間で投与する。
【0008】
この単位用量は約5,000~50,000mcgである。例えば、この単位用量は少なくとも10,000mcgである。好ましくは、この単位用量は16,000mcg又は24,000mcgである。
【0009】
本組成物を、5箇所、10箇所、15箇所、20箇所、又はより多くの部位に投与する。
【0010】
この徴候又は症状は、例えば、排尿又は切迫の頻度である。
【0011】
一部の態様では、このベクターは、下記の順序:ヒトサイトメガロウイルス中期-初期プロモーター配列、例えば配列番号1;T7プライミング部位配列、例えば配列番号2;hSloオープンリーディングフレーム配列、例えば配列番号7;BGHポリアデニル化シグナル配列、例えば配列番号3;カナマイシン耐性配列、例えば配列番号5;及びpUC複製起点配列、例えば配列番号4で核酸エレメントを含む。ある特定の態様では、このhSloオープンリーディングフレーム配列は、配列番号7の1054位で点変異を含み、その結果、配列番号8の352位でセリンが生じる。
【0012】
本発明は、ベクターであって、下記の順序:ヒトサイトメガロウイルス中期-初期プロモーター配列、例えば配列番号1;T7プライミング部位配列、例えば配列番号2;hSloオープンリーディングフレーム配列、例えば配列番号7;BGHポリアデニル化シグナル配列、例えば配列番号3;カナマイシン耐性配列、例えば配列番号5;及びpUC複製起点配列、例えば配列番号4で核酸エレメントを含むベクターを提供する。このベクターの一部の態様では、このhSloオープンリーディングフレーム配列は、配列番号7のヌクレオチド位置1054で単一点変異を有し、前記点変異は配列番号8の352位でセリンを生じる。一部の態様では、このベクターは、プラスミド、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、又はリポソームを含む。一部の態様では、このプラスミドはpVAXである。
【0013】
本発明は、本開示の複数のベクターと、薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物を提供する。一部の態様では、この医薬組成物は平滑筋への注射用に製剤化されている。一部の態様では、この複数のベクターは、生理食塩水溶液中の20~25%のスクロースと組み合わされている。
【0014】
本開示の医薬組成物の一部の態様では、単位用量は単一単位用量である。一部の態様では、この単位用量は約5,000~50,000mcgである。一部の態様では、この単位用量は少なくとも10,000mcgである。一部の態様では、この単位用量は16,000mcg又は24,000mcgである。
【0015】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用途は、本発明が関連する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で説明されているものと類似の又は同等の方法及び材料を本発明の実行で使用し得るが、適切な方法及び材料を下記で説明する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により明示的に組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配するだろう。加えて、本明細書で説明されている材料、方法、及び例は単なる例示であり、限定することは意図されていない。
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかであり、且つこれらに包含されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A-D】2つの処置群における2週間の閉塞後の排尿パラメータを示す一連の4つの棒グラフである。
【
図2A-C】コントロール群(
図2A)、ベクターのみ(pVAX)群(
図2B)、及びhSloで処置した群(
図2C)における2週間の閉塞後の膀胱内圧測定記録を示す一連の3つのグラフである。
【
図3】ベクターのみ(pVAX)、並びにpVAX/hSLO 300及び1000μgを与えたラットにおける膀胱内圧記録の3つのグラフを示す。
【
図4】1000μgの2回注射後の雌ラットの組織中におけるpVAX/hSLOベクターの平均コピー数を示す棒グラフである。
【
図5】ヒト対象におけるpVAX/hSLOベクターの注射部位を示す図である。
【
図6】ヒト対象における処置による経時的な1日当たりの平均排尿数の変化を示す棒グラフである。エラーバーは平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図7】ヒト対象における処置による経時的な平均切迫エピソードの変化を示す棒グラフである。エラーバーは平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図8】pVAX/hSLOのプラスミドマップである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、膀胱の生理学的機能障害を処置するための遺伝子治療の方法を提供する。具体的には、本発明は、ヒトMaxi-Kチャネル(hMaxi-K)を発現する遺伝子を含むベクターの膀胱壁の平滑筋への直接注射により女性の過活動膀胱及び尿失禁の症状が有意に緩和されたとうい発見に基づく。具体的には、参加者に、膀胱への20~30回の筋肉内注射として投与するhMaxi-Kの16,000mcg又は24,000mcgのいずれかの総用量を投与した。参加者を24週間以内に8回観察し、18ヶ月にわたり追跡調査した。各診察の7日前に収集した平均日記データから、プラセボと比較した、hMaxi-Kが投与された参加者の1日当たりの排尿と1日当たりの切迫エピソードの平均回数との静的に有意な減少が明らかになった。
【0019】
MaxiKチャネル(BKチャネルとしても既知である)は細胞からのカリウムイオンの排出経路を提供し、電圧感受性Ca2+チャネルの阻害により平滑筋の弛緩を可能にし、それにより、病理学的に高められた平滑筋の緊張を軽減することにより臓器機能の正常化を達成する。用語「MaxiKチャネル」及び「BKチャネル」は、本明細書では互換的に使用される。
【0020】
構造的に、MaxiKチャネルは、アルファサブユニット及びベータサブユニットで構成されている。4つのアルファサブユニットは、このチャネルの細孔を形成し、これらのアルファサブユニットは、単一のSlo1遺伝子(Slo、hSlo、及びカリウムカルシウム活性化チャネルサブファミリMアルファ1、又はKCNMA1とも称される)によ
りコードされる。MaxiKチャネル機能を調節し得る4つのベータサブユニットが存在する。各ベータサブユニットは、別個の組織特異的発現及び調節機能を有し、ベータ-1サブユニット(カリウムカルシウム活性化チャネルサブファミリMレギュレータベータサブユニット1、又はKCNMB1)は、平滑筋細胞中で主に発現される。
【0021】
基礎となる筋小胞体のリアノジン感受性カルシウム貯蔵部位に極めて近接するMaxiKチャネルの戦略的クラスターは、多様な平滑筋(例えば膀胱)中でのカルシウムシグナル(即ちスパーク)と膜電位との局所的な調節のための重要なメカニズムを提供する。細胞内カルシウムレベルの上昇はMaxiKチャネルの開放確率を増加させ、そのため、カルシウム感受性MaxiKチャネルを通るK+の外への動きが増加する。K+の排出により、細胞外への正の電荷の正味の移動が引き起こされ、細胞の内部は外側に対してより負に帯電している。これには2つの大きな効果がある。第一に、膜電位の増加により、確実に、カルシウムチャネルが開いているよりも閉じている時間が長くなる。第二に、カルシウムチャネルは閉じられている可能性が高いことから、細胞へのCa2+の正味の流動が減少し、それに応じて遊離細胞内カルシウムレベルが低下する。細胞内カルシウムの減少により、平滑筋の弛緩が促進される。従って、細胞膜中により多くのMaxiKチャンルを有するということの主な意味は、弛緩のための任意の刺激に対する平滑筋細胞の弛緩の増強につながるはずであるということである。
【0022】
排尿筋細胞間の細胞間コミュニケーションの増加は、部分的な尿道閉塞(PUO)の動物モデルと排尿筋過活動(DO)を有するヒトとの両方で起こる。細胞間コミュニケーションの増加に関しては、細胞間カップリングのレベルが潜在的により低い正常な膀胱と比較した場合に、増加したカルシウムシグナル伝達の影響が増大する場合がある。このカルシウムシグナル伝達の増加は、PUOラットモデルで観察される「非排尿性収縮」の少なくとも部分的に一因となる。しかしながら、(例えば、本開示の組成物又は方法のMaxiKチャネルをコードする導入遺伝子の過剰発現の結果として)MaxiKチャネル発現が並行して増加した場合には、おそらく、これらのトランスフェクトされた細胞により発現される、結果としての組換え及び/又はトランスジェニックMaxiKチャネルが、異常に増加したカルシウムシグナルを「短絡」させる場合がる。これにより、ギャップジャンクションを介したさらなる広がりが妨げられ、そのため、(例えば、トランスフェクトされていない筋細胞動員による)異常な且つ増加したカルシウムシグナル伝達の十分な増大が妨げられて異常な収縮反応が緩和される。本開示の組成物又は方法のMaxiKチャネルをコードする導入遺伝子の過剰発現による個々の細胞又は細胞群における異常な収縮反応の減少により、切迫の臨床的相関であるDOの特徴の非排尿性収縮が除去されるか又は寛解される。逆に、排尿反応における脊髄反射の関与により、DOに関連する異常に増加したカルシウムシグナル伝達をはるかに超えて協調的な排尿筋収縮が生じることから、MaxiK導入遺伝子の過剰発現は、より頑強な排尿収縮反応に有意に又は検出可能に影響を及ぼすことなく、(IMP(排尿間圧(intermicturition pressure)又はSA(コントロールレベルと比較した自発活動)の減少として動物モデルにおいて測定した場合に)DOの一因となる、より弱い、異常に増加したカルシウムシグナルを効率的に減少させ得るか又は阻害し得る。
【0023】
加齢及び疾患により、大きなコンダクタンスCa2+活性化電圧感受性カリウム(BKα)チャネルのαサブユニットを発現する遺伝子であるhSlo遺伝子の最終産物の発現が変化する可能性がある。この変化により、器官を構成する平滑筋の緊張の器官特異的な生理学的修正が減少する。この影響は、ヒトの疾患(例えば、陰茎にける勃起不全(ED)、膀胱における尿意切迫、頻度、夜間頻尿、及び尿失禁(例えば、過活動膀胱(OAB)症候群)、肺における喘息、結腸における過敏性大腸、眼における緑内障、並びに前立腺における膀胱下尿道閉塞)を引き起こす、器官中の平滑筋細胞の増大した緊張である。
【0024】
本発明の方法
本発明は、平滑筋の生理学的機能障害を処置するための遺伝子治療の方法を提供する。具体的には、本発明の方法を使用して、過活動膀胱(OAB)症候群又は排尿筋過活動の症状を処置するか、又は緩和する。
【0025】
OAB症候群は、尿意切迫、頻度、夜間頻尿、及び尿失禁が挙げられるがこれらに限定されない一群の症状を特徴とする。OABは、突発性OABと神経原性OABとに細分される。
【0026】
排尿筋過活動は、自発的であり得るか又は誘発され得る充填期中の不随意な排尿筋収縮を特徴とする尿流動態観察として定義される。排尿筋過活動は、突発性排尿筋過活動と神経原性排尿筋過活動とに細分される。
【0027】
本開示の組成物及び方法は、必要とするヒト対象又は患者の細胞への、hMaxi-Kをコードする核酸の送達を提供する。場合によっては、この核酸の送達は遺伝子治療と称され得る。
【0028】
本開示の組成物及び方法は、hMaxi-K核酸又はその変異体の送達のための任意の適切な方法を提供する。場合によっては、この核酸の送達を、任意の適切な「ベクター」(「遺伝子送達」ビヒクル又は「遺伝子導入」ビヒクルとも称されることもある)を使用して実施し得る。ベクター、送達ビヒクル、遺伝子送達ビヒクル、又は遺伝子導入ビヒクルは、標的細胞に送達するポリヌクレオチドを含む任意の適切な高分子又は分子の複合体を指す場合がある。場合によっては、標的細胞は、核酸又は遺伝子が送達されるあらゆる細胞であり得る。送達するポリヌクレオチドは、遺伝子治療における目的のコーディング配列(例えばhSlo遺伝子)を含み得る。
【0029】
hSlo遺伝子は、排尿筋への直接注射により膀胱の平滑筋細胞に導入される。
【0030】
例えば、適切なベクターとして、ウイルスベクター、(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、及びレトロウイルス)、リポソーム、他の脂質含有複合体、並びに標的細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介し得る他の高分子複合体が挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0031】
或いは、哺乳動物ベクターを使用して、裸のDNA導入により、平滑筋細胞にhSlo遺伝子を導入する。「裸のDNA」は、本明細書では、非ウイルスベクターに含まれるDNAと定義される。このDNA配列を、好ましくはレシピエントの血液と等張である滅菌水溶液と組み合わせ得る。そのような溶液を、生理学的適合物質(例えば、塩化ナトリウム、グリシン、及び同類のもの)を含む水に、このDNAを懸濁させ、生理学的条件に適合する緩衝pHを維持し、次いで溶液を滅菌することにより調製し得る。本発明の好ましい実施形態では、このDNAを、平滑筋細胞への導入に備えて、20~25%のスクロース含有生理食塩水溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)と組み合わせる。
【0032】
本明細書で説明されているように、核酸はポリヌクレオチドを指す場合がある。核酸及びポリヌクレオチドは互換的に使用され得る。場合によっては、核酸はDNAを含んでもよいしRNAを含んでもよい。一部の態様では、核酸は、Maxi-Kの発現用のDNA又はRNAを含み得る。一部の態様では、RNA核酸として、目的の遺伝子(例えばSlo)の転写産物、イントロン、非翻訳領域、終止配列、及び同類のものが挙げられ得るがこれらに限定されない。他の場合では、DNA核酸として、ハイブリッドプロモーター遺伝子配列、強力な構成的プロモーター配列、目的の遺伝子(例えばSlo)、非翻訳領域、終止配列、及び同類のもの等の配列が挙げられ得るがこれらに限定されない。場合によ
っては、DNA及びRNAの組み合わせが使用され得る。
【0033】
本明細書の開示で説明されているように、用語「発現構築物」は、核酸コーディング配列の一部又は全てが転写され得る遺伝子産物をコードする核酸又はポリヌクレオチドを含む、あらゆるタイプの遺伝子構築物を含むことが意図されている。この転写産物はタンパク質へと翻訳され得る。一部の態様では、この転写産物は、部分的に翻訳されてもよいし翻訳されなくてもよい。ある特定の態様では、発現には、遺伝子の転写と、mRNAの遺伝子産物への翻訳との両方が含まれる。他の態様では、発現には、目的の遺伝子をコードする核酸の転写のみが含まれる。
【0034】
核酸を、核酸の量として測定し得る。一般に、核酸の任意の適切な量を、本開示の組成物及び方法と共に使用し得る。場合によっては、核酸は、少なくとも約1pg、10pg、100pg、1pg、10pg、100pg、200pg、300pg、400pg、500pg、600pg、700pg、800pg、900pg、1μg、10μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1ng、10ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng、1mg、10mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1g、2g、3g、4g、又は5gであり得る。場合によっては、核酸は、最大約1pg、10pg、100pg、1pg、10pg、100pg、200pg、300pg、400pg、500pg、600pg、700pg、800pg、900pg、1μg、10μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1ng、10ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng、1mg、10mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1g、2g、3g、4g、又は5gであり得る。
【0035】
場合によっては、核酸は、少なくとも約5000mcg、7500mcg、10,000mcg、12,500mcg、15,000mcg、16,000mcg、17,500mcg、20,000mcg、22,500mcg、24,000mcg、25,000mcg、30,000mcg、35,000mcg、40,000mcg、45,000mcg、又は50,000mcgであり得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、mcg及びμgは互換的に使用される。
【0037】
本発明は、具体的には、平滑筋の緊張の調節に関与するMaxiKチャネルタンパク質が平滑筋の弛緩を調節する遺伝子治療の方法を提供する。このタンパク質は、平滑筋の弛緩を促進するか又は増強し、そのため、平滑筋の緊張が軽減されるだろう。具体的には、膀胱において平滑筋の緊張が軽減されると、膀胱容量が増加するだろう。
【0038】
さらに、本発明は、具体的には、対象の膀胱の平滑筋の緊張を調製する方法であって、この対象の膀胱の平滑筋細胞への、平滑筋の緊張の調節に関与するタンパク質をコードするDNA配列の導入と、対象の膀胱の弛緩を増強するための、対象の膀胱の平滑筋細胞の十分な数の発現とを含む方法を提供する。この実施形態では、本発明の方法を使用して過敏性膀胱を緩和する。過敏性膀胱は、様々な障害(例えば、神経原性の機能障害、及び動脈原性の機能障害)、並びに膀胱の平滑筋の不完全な弛緩又は増大した収縮性を引き起こす他の状態に起因し得る。この対象は動物であってもよいしヒトであってもよく、好ましくはあヒトである。
【0039】
本発明の組換えベクター及びプラスミドはまた、適切な宿主細胞中でベクター構築物の発現を引き起こすために、適切な調節エレメントをコードするヌクレオチド配列も含んでもよい。本明細書で使用される場合、「発現」は、ベクターの、挿入されたDNAをmRNAへと転写する能力を指し、その結果、この挿入された核酸によりコードされるタンパク質の合成が起こり得る。当業者は下記を認識するだろう:(1)様々なエンハンサー及びプロモーターが、本発明の構築物中での使用に適していること;並びに(2)この構築物は、組換えベクター構築物の宿主細胞への導入時での、平滑筋の緊張の調節に関与するタンパク質をコードするDNA配列の適切な転写及び処理に必須の開始配列、終止配列、及び制御配列を含むであろうこと。
【0040】
本発明により提供される非ウイルスベクターは、平滑筋の緊張の調節に関与するタンパク質をコードするDNA配列の平滑筋細胞中での発現のために、当業者に既知の下記のベクターの内のいずれかの全て又は一部を含んでもよい:pVax(Thermo Fisher Scientific)、pCMVβ(Invitrogen)、pcDNA3(Invitrogen)、pET-3d(Novagen)、pProEx-1(Life Technologies)、pFastBac 1(Life Technologies)、pSFV(Life Technologies)、pcDNA2(Invitrogen)、pSL301(Invitrogen)、pSE280(Invitrogen)、pSE380(Invitrogen)、pSE420(Invitrogen)、pTrcHis A,B,C(Invitrogen)、pRSET A,B,C(Invitrogen)、pYES2(Invitrogen)、pAC360(Invitrogen)、pVL1392及びpVl1392(Invitrogen)、pCDM8(Invitrogen)、pcDNA I(Invitrogen)、pcDNA I(amp)(Invitrogen)、pZeoSV(Invitrogen)、pRc/CMV(Invitrogen)、pRc/RSV(Invitrogen)、pREP4(Invitrogen)、pREP7(Invitrogen)、pREP8(Invitrogen)、pREP9(Invitrogen)、pREP10(Invitrogen)、pCEP4(Invitrogen)、pEBVHis(Invitrogen)、並びにλPop6。当業者には他のベクターが明らかであるだろう。好ましくは、このベクターはpVaxである。
【0041】
一部の実施形態では、このpVaxベクターの配列は、
【化1】
の配列を含む。一部の実施形態では、このpVAX配列は、配列番号10に対して少なくとも95%同一であるか、少なくとも96%同一であるか、少なくとも97%同一であるか、少なくとも98%同一であるか、又は少なくとも99%同一である配列を含む。一部の実施形態では、このpVAX配列は、配列番号10の2位でのAのGへの置換、配列番号10の5位でのGの付加、配列番号10の1158位でのCのTへの置換、配列番号10の2092位でのAの欠失、配列番号10の2493位でのCのTへの置換、又はこれらの組み合わせを含む。
【0042】
本発明に適したプロモーターとして、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、
及び誘導性プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、このプロモーターは平滑筋プロモーターである。他の実施形態では、このプロモーターは筋細胞プロモーターである。好ましくは、このプロモーターは、尿路上皮特異的発現プロモーターではない。
【0043】
本発明の一実施形態では、平滑筋の緊張の調節に関与するタンパク質をコードするDNA配列の発現は、このDNA配列が導入されている特定のベクターにより制御され、且つこのベクターの影響を受ける。いくつかの真核生物ベクターは、挿入された核酸を宿主細胞内で高レベルに発現し得るように操作されている。そのようなベクターは、多数の強力なプロモーターの内の1つを利用して、高レベルの発現を指示する。真核生物ベクターは、ウイルス遺伝子のプロモーター-エンハンサー配列(特に、腫瘍ウイルスのもの)を使用する。本発明のこの特定の実施形態は、誘導性プロモーターの使用により、タンパク質をコードするDNA配列の発現の調節を提供する。誘導性プロモーターの非限定的な例として、メタロチオネインプロモーター、及びマウス乳房腫瘍ウイルスプロモーターが挙げられる。ベクターに応じて、平滑筋細胞中でのDNA配列の発現は、この細胞の成長サイクルにおける特定の時点での特定の化合物の添加により誘導されるだろう。本発明の組換えベクターでの使用に有効なプロモーター及びエンハンサーの他の例として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:CMV(サイトメガロウイルス)、SV40(シミアンウイルス40)、HSV(単純ヘルペスウイルス)、EBV(Epstein-Barrウイルス)、レトロウイルス、アデノウイスルのプロモーター及びエンハンサー、並びに平滑筋特異的プロモーター及び平滑筋特異的エンハンサー。平滑筋特異的プロモーターの一例はSM22αである。例示的な平滑筋プロモーターが米国特許第7,169,764号明細書で説明されており、この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
好ましい実施形態では、このプロモーターはSM22αプロモーター配列であり、
【化2】
等の配列が挙げられ得るがこれに限定されない。
【0045】
好ましい実施形態では、このプロモーターはヒトサイトメガロウイルス中期-初期プロモーター配列であり、
【化3】
等の配列が挙げられ得るがこれに限定されない。
【0046】
一部の態様では、T7プライミング部位として、TAATACGACTCACTATAGGG 配列番号2等の配列が挙げられ得るがこれに限定されない。
【0047】
一部の態様では、本開示のDNA配列又はタンパク質を発現させるために使用される組換えウイルス及び/又はプラスミドは、ポリA(ポリアデニル化)配列(例えば、本明細書で提供されるもの(例えばBGHポリA配列))を含む。一般に、任意の適切なポリA配列を、導入遺伝子の所望の発現に使用してもよい。例えば、場合によっては、本開示は、BGHポリA配列又はBGHポリA配列の一部を含む配列を提供する。場合によっては、本開示は、1種又は複数種のポリA配列又は配列要素の組み合わせを含むポリA配列を提供する。場合によっては、ポリA配列は使用されない。場合によっては、1種又は複数種のポリA配列は、非翻訳領域(UTR)、3’UTR、又は終止配列と称され得る。
【0048】
ポリA配列は、1~10bp、10~20bp、20~50bp、50~100bp、100~500bp、500bp~1Kb、1Kb~2Kb、2Kb~3Kb、3Kb~4Kb、4Kb~5Kb、5Kb~6Kb、6Kb~7Kb、7Kb~8Kb、8Kb~9Kb、及び9Kb~10Kbの長さを含み得る。ポリA配列は、少なくとも1bp、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bp、10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1Kb、2Kb、3Kb、4Kb、5Kb、6Kb、7Kb、8Kb、9Kb、及び10Kbの長さを含み得る。ポリA配列は、最大1bp、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bp、10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1Kb、2Kb、3Kb、4Kb、5Kb、6Kb、7Kb、8Kb、9Kb、及び10Kbの長さを含み得る。
【0049】
場合によっては、BGHポリAとして、
【化4】
等の配列が挙げられ得るがこれに限定されない。
【0050】
場合によっては、ポリA配列は、タンパク質発現に影響を及ぼす様々なパラメータ(例えば、限定されないが、細胞中での導入遺伝子のmRNA半減期、導入遺伝子のmRNAの安定性、又は転写調節)に対して最適化され得る。例えば、ポリA配列は、導入遺伝子のmRNA転写を増加させるように変更され得、これによりタンパク質発現が増加し得る。場合によっては、このポリA配列は、導入遺伝子のmRNA転写産物の半減期を短縮するように変更され得、これによりタンパク質の発現が減少し得る。
【0051】
一部の態様では、本ベクターは、複製起点配列(例えば、本明細書で提供されるもの)をコードする配列を含む。複製起点配列は一般に、プラスミド/ベクターの増殖に有用な配列を提供する。
【0052】
場合によっては、pUC複製起点配列として、
【化5】
等の配列が挙げられ得るがこれに限定されない。
【0053】
本ベクターはまた、選択可能なマーカーを含んでもよい。選択可能なマーカーは、陽性であり得るか、陰性であり得るか、又は二機能性であり得る。陽性の選択可能なマーカーは、このマーカーを保有する細胞の選択を可能にし、陰性の選択可能なマーカーは、このマーカーを保有する細胞の選択的な排除を可能にする。様々なそのようなマーカー遺伝子(例えば、二機能性(即ち、陽性/陰性)マーカー)が説明されている(例えば、1992年5月29日に公開されたLupton,S.,国際公開第92/08796号パンフレット;及び1994年12月8日に公開されたLupton,S.,国際公開第94/28143号パンフレットを参照されたい)。陰性の選択可能なマーカーの例として、抗生物質(例えば、アンピシリン又はカナマイシン)に対する耐性遺伝子の包含が挙げられ得る。そのようなマーカー遺伝子は、遺伝子治療の状況で有利であり得る制御の追加の尺度を提供し得る。多種多様なそのようなベクターは当分野で既知であり、且つ一般に利用可能である。
【0054】
場合によっては、カナマイシンに対する耐性をコードする核酸として、
【化6】
等の配列が挙げられ得るがこれに限定されない。
【0055】
組換えベクター/プラスミドは、ヒトMaxi-Kタンパク質、変異体Maxi-Kタンパク質、又はこれらの機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明での使用に適したMaxi-Kタンパク質をコードする例示的な核酸として、配列番号6の核酸配列が挙げられる。
hSlo
【化7】
【化8】
【化9】
【0056】
hSlo遺伝子の改変を使用して、例えば、BKチャネル発現、活性、上流のシグナル伝達事象、及び/又は下流のシグナル伝達事象の変更により引き起こされるヒト疾患を効率的に処置し得る。hSloの野生型のヌクレオチド配列又はペプチド配列への改変として、欠失、挿入、フレームシフト、置換、及び逆位が挙げられ得るがこれらに限定されない。例えば、hSloの野生型配列への企図される改変として、hSloをコードするDNA配列、cDNA配列、若しくはRNA配列の単一ヌクレオチドの置換、及び/又はhSloをコードするペプチド配列若しくはポリペプチド配列の単一アミノ酸の置換が挙げられる。hSloをコードするDNA配列、cDNA配列、若しくはRNA配列の単一ヌクレオチドの置換、及び/又はhSloをコードするペプチド配列若しくはポリペプチド配列の単一アミノ酸の置換はまた、点変異とも称される。hSloをコードするDNA配列内の、cDNA内の、若しくはRNA配列内の置換、及び/又はhSloをコードするペプチド配列内の、若しくはポリペプチド内の置換は、保存されてもよいし保存されなくてもよい。
【0057】
hSlo遺伝子における好ましい改変として、配列番号7に従ってナンバリングされた場合に核酸位置1054での点変異が挙げられる。この点変異により、配列番号7に従ってナンバリングされた場合にMaxiKチャネルタンパク質の352位でのアミノ酸置換が生じる。例えば、この点変異はトレオニン(T)のセリン(S)への置換(例えばT352S)である。任意に、hSlo遺伝子中の追加の改変として、配列番号8に従ってナンバリングされた場合にアミノ酸位置496、602、681、778、805、又は977での1つ又は複数のアミノ酸置換を生じる点変異が挙げられる。
【0058】
アミノ酸配列(配列番号8)中の追加の変異も黒色の背景での白色の字体で強調し、且つ変異の名称(例えば、C977A(C1)、C496A(C2)、C681A(C3)、M602L(M1)、M778L(M2)、及びM805L(M3))を添付する。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0059】
本発明は、平滑筋の緊張の調節に関与するタンパク質をコードする外因性DNA配列を発現する平滑筋細胞をさらに提供する。本明細書で使用される場合、「外因性」は、生物又は細胞に導入されるあらゆるDNAを意味する。一部の実施形態では、この外因性DNA配列はhSloをコードする。
【0060】
医薬組成物
医薬組成物は、1種又は複数種の活性成分と、1種又は複数種の添加剤、担体、安定剤、又は増量剤と含む製剤であって、所望の診断結果、又は治療効果若しくは予防効果を達成するためにヒト患者への投与に適した製剤である。貯蔵安定性及び取扱いの利便性のために、医薬組成物を、患者への投与の前に生理食塩水又は水で再構成され得る凍結乾燥(lyophilized)(即ち、凍結乾燥(freeze dried))粉末又は真空乾燥粉末として製剤化し得る。或いは、この医薬組成物を水溶液として製剤化し得る。医薬組成物はタンパク質性活性成分を含み得る。医薬組成物中に存在するタンパク質活性成分の安定化を試みるために、様々な添加剤(例えば、アルブミン及びゼラチン)が様々な成功度で使用されている。加えて、凍結乾燥の凍結条件下でのタンパク質の変性を減少させるために、アルコール等の抗凍結剤が使用されている。
【0061】
内用に適した医薬組成物として、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、適切な担体として、生理食塩水、静菌水、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、この組成物は滅菌されていなければならず、且つ容易な注射能力(syringability)が存在する程度まで流動性であるべきである。この組成物は、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の混入作用に対して保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール、及び同類のもの)、並びにこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性を、例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散液の場合に必要される粒径の維持により、並びに界面活性剤(例えば、ポリソルベート(Tween(商標))、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール(Triton X100(商標))、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ポリオキシル10ラウリルエーテル、Brij 721(商標)、胆汁塩(デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム)、プルロニック酸(pluronic acid)(F-68、F-127)、ポリオキシルヒマシ油(Cremophor(商標))、ノニルフェノールエトキシレート(Tergitol(商標))、シクロデキストリン、及びエチルベンゼトニウムクロリド(Hyamine(商標)))の使用により維持し得る。微生物の作用の防止を、様々な抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベテン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、及び同類のもの)により達成し得る。多くの場合では、この組成物中に等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウム)を含めることが好ましいだろう。この内部組成物の長期にわたる吸収は、この組成物に、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を含めることによりもたらされ得る。
【0062】
必要な量の活性化合物を、上記に列挙した成分の内の1つ又は組み合わせと共に適切な溶媒に組み込み、その後、必要に応じてろ過滅菌することにより、滅菌溶液を調製し得る。一般に、活性化合物を、基本的な分散媒と、上記に列挙したものからの必要な他の成分とを含む滅菌ビヒクルに組み込むことにより、分散液を調製する。滅菌されている注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、調製方法は、活性成分の粉末と、既に滅菌ろ過された溶液からの任意の追加の所望の成分とを生じる真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0063】
本医薬組成物を、投与のための説明書と一緒に、容器、パック、又はディスペンサーに入れることができる。
【0064】
本開示のある特定の組成物はまた、製剤中に担体化合物も組み込む。本明細書で使用さ
れる場合、「担体化合物」又は「担体」は、不活性である(即ち、それ自体が生物学的活性を有さない)が、例えば、生物学的に活性な核酸の分解又は循環からの除去の促進により生物学的活性を有する核酸のバイオアベイラビリティを低下させるインビボのプロセスにより核酸として認識される核酸又はその類似体を指し得る。一般に過剰な後者の物質との核酸及び担体化合物の共投与は、おそらく共通のレセプターに対する担体化合物と核酸との競合に起因して、肝臓、腎臓、又は他の余分な循環リザーバーで回収される核酸の量の実質的な減少をもたらし得る。例えば、肝組織中での部分的なホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの回収は、ポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジン酸、又は4-アセトアミド-4’イソチオシアノ-スチルベン-2,2’ジスルホン酸と共投与される場合には減少する可能性がある(Miyao et al.,Antisense Res.Dev.,1995,5,115-121;Takakura et al.,Antisense & Nucl.Acid Drug Dev.,1996,6,177-183)。
【0065】
ベクターを、哺乳動物患者(特にヒト)への投与ための医薬組成物に組み込み得る。このベクター又はビリオンを、好ましくは3~8の範囲のpHで、より好ましくは6~8の範囲のpHで、最も好ましくは6.8~7.2の範囲のpHで、非毒性で不活性な薬学的に許容される水性担体で製剤化し得る。そのような滅菌組成物は、再構成時に許容可能なpHを有する水性緩衝液に溶解される治療用分子をコードする核酸を含むベクターを含むだろう。
【0066】
一部の態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、薬学的に許容される担体及び/又は添加剤(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ホスフェート及びアミノ酸、ポリマー、ポリオール、糖、緩衝液、保存料、並びに他のタンパク質)との混合物である治療上有効な量のベクターを含む。例示的なアミノ酸、ポリマー、及び糖、並びに同類のものは、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物、ポリエチレングリコールモノステアレート化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、スクロース、フルクトース、デキストロース、マルトース、グルコース、マンニトール、デキストラン、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、キシリトール、ラクトース、トレハロース、ウシ又はヒトの血清アルブミン、シトレート、アセテート、リンゲル溶液及びハンクス溶液、システイン、アルギニン、カルニチン、アラニン、グリシン、リシン、バリン、ロイシン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、並びにグリコールである。
【0067】
一部の態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、又はリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、トリス緩衝液、グリシン緩衝液、滅菌水、及び当業者に既知の他の緩衝液(例えば、Good et al.(1966)Biochemistry 5:467により説明されているもの))を含む。好ましい医薬組成物は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及びスクロースを含む。
【0068】
一部の態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、懸濁液の粘度を増加させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、スクロース、又はデキストラン)を約1~30パーセントの量で含み、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20パーセント(体積/体積)の量で含む。好ましくは、スクロースは約10~30%(体積/体積)であり、最も好ましくは、スクロースは約20%(体積/体積)である。
【0069】
投与前に、本医薬組成物は、製造中に使用される成分(例えば、培養成分、宿主細胞タンパク質、宿主細胞DNA、プラスミドDNA)を含まず、マイコプラズマ(mycoplasm)、エンドトキシン、及び微生物混入物を実質的に含まない。好ましくは、本医薬組成物は、10、5、3、2、又は1CFU/綿棒(swab)未満を有する。最も好
ましくは、組成物は0CFU/綿棒を有する。本医薬組成物中のエンドトキシンレベルは、20EU/mL未満であるか、10EU/mL未満であるか、又は5EU/mL未満である。
【0070】
キット
本開示に有用な組成物及び試薬を、本開示の適用を容易にするためのキットに入れてもよい。一部の態様では、本方法は、本開示の組換え核酸を含むキットを提供する。一部の態様では、本方法は、本開示の組換えウイルスを含むキットを提供する。説明書は、あらゆる所望の形態(例えば、限定されないが、キット挿入物に印刷されたもの、1つ又は複数の容器に印刷されたもの、及びコンピュータ可読記憶媒体等の電子気記憶媒体上で提供される電子的に保存された説明書)である可能性がある。同様に任意に含まれるのは、ユーザーが情報を統合して制御用量を算出することを可能にする、コンピュータ可読記憶媒体上のソフトウェアパッケージである。
【0071】
別の態様では、本開示は、本明細書で提供される医薬組成物を含むキットを提供する。さらに別の態様では、本開示は、疾患の処置におけるキットを提供する。
【0072】
一態様では、キットは、(a)本明細書で提供される組換えウイルスと、(b)この組換えウイルスの治療上有効な量を細胞又は個体に投与するための説明書とを含む。一部の態様では、このキットは、この組換えウイルスを投与するための薬学的に許容される塩又は溶液を含み得る。任意に、このキットは、ラベル又は別個の挿入物の形態で、適切な操作パラメータの説明書をさらに含み得る。例えば、このキットは、組換えウイルスの用量を調製するために医師又は検査技師に情報を提供する標準的な説明書を有し得る。
【0073】
任意に、このキットは標準又はコントロールの情報をさらに含み得、その結果、患者サンプルをコントロール情報標準と比較して、組換えウイルスの試験量が治療量であるかどうかを決定し得る。任意に、このキットは、投与用のデバイス(例えば、シリンジ、フィルタニードル、延長チューブ、及びカニュール)をさらに含む可能性がある。
【0074】
定義
本明細書で説明されている本開示の組成物及び方法は、別途示さない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、免疫化学、及び眼科の技術の従来の技術及び説明を利用し得、これらは当業者のスキル内である。そのような従来の技術には、対象の網膜又は視力を観察して分析する方法、組換えウイルスのクローニング及び増殖、医薬組成物の製剤化、並びに生化学的精製及び免疫化学が含まれる。本明細書の実施例を参照することにより、適切な技術の具体的な説明を得ることができる。しかしながら、当然のことながら、等価の従来の手順も使用し得る。そのような従来の技術及び説明を標準的な実験室マニュアルで見出し得、例えば、Green,et al.,Eds.,Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vols.I-IV)(1999);Weiner,et al.,Eds.,Genetic Variation:A Laboratory Manual(2007);Dieffenbach,Dveksler,Eds.,PCR Primer:A Laboratory Manual(2003);Bowtell and Sambrook,DNA Microarrays:A Molecular Cloning Manual(2003);Mount,Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis(2004);Sambrook and
Russell,Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2006);及びSambrook and Russell,Molecular Cloning:A
Laboratory Manual(2002)(全てCold Spring H
arbor Laboratory Pressから);Stryer,L.,Biochemistry(4th Ed.)W.H.Freeman,N.Y.(1995);Gait,”Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach”IRL Press,London(1984);Nelson and Cox,Lehninger,Principles of Biochemistry,3rd Ed.,W.H.Freeman Pub.,New York(2000);並びにBerg et al.,Biochemistry,5th Ed.,W.H.Freeman Pub.,New York(2002)で見出し得、これらは全て、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に示さない限り、複数形も含むことが意図されている。さらに、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、又はこれらの変形が、詳細な説明及び/又は特許請求の範囲のいずれかで使用されている限りにおいては、そのような用語は、用語「含む(comprising)」と同様の方法で包含的であることが意図されている。
【0076】
本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値からとして、及び/又は「約」別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、別のケースでは、ある特定の値から、及び/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、先行詞「約」の使用により値が近似値として表される場合、この特定の値が別のケースを形成することが理解されるだろう。範囲のそれぞれのエンドポイントは、他のエンドポイントとの関連で及び他のエンドポイントとは無関係にの両方で重要であることがさらに理解されるだろう。用語「約」は、本明細書で使用される場合、特定の使用の文脈内で、述べられた数値から15%プラスマイナスである範囲を指す。例えば、約10は8.5~11.5の範囲を含むだろう。用語「約」はまた、値の測定における典型的な誤差又は不正確さも説明する。
【0077】
本発明の文脈では、用語「処置する」又は「処置」は、本明細書で使用される場合、そのような用語が適用される障害若しくは状態、又はそのような障害若しくは状態(例えば突発性過活動膀胱症候群)の1種若しくは複数種の症状を反転させること、緩和すること、これらの進行を阻害すること、又は予防することを意味する。
【0078】
本発明によれば、用語「患者」又は「必要とする患者」は、突発性過活動膀胱症候群に罹患しているか又は罹患している可能性があるヒト又は非ヒト哺乳動物を対象とする。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「排尿筋(detrusor)」又は「排尿筋(detrusor muscle)」は、膀胱の筋肉を意味する。「排尿筋内」は、排尿筋へを意味する。
【0080】
本明細書で意図される場合、語句「単離核酸」は、あらゆるタイプの単離核酸を指し、特に、天然の又は合成のDNA又はRNA、一本鎖又は二本鎖であり得る。具体的には、核酸が合成である場合、核酸は、具体的には核酸の分解に対する耐性を増加させるために、塩基又は結合の非天然改変を含み得る。核酸がRNAである場合、この改変は、このRNAの末端のキャッピング又はリボース骨格の2’位の改変を特に包含し、その結果、例えば、(2’-デオキシリボース若しくは2’-デオキシリボース-2’-フルオロリボースが生じるように)ヒドロキシル部分を抑制することにより、又は(2’-O-メチル-リボースが生じるように)ヒドロキシル部分をアルキル基(例えばメチル基)で置換することにより、ヒドロキシル部分の反応性が低下する。
【0081】
2種のアミノ酸配列又は核酸配列は、アミノ酸配列又は核酸配列の80%超が同一であ
り、好ましくは85%超が同一であり、好ましいは90%超が同一であるか、又は約90%超が類似しており、好ましくは95%超が類似している(機能的に同一である)場合には、「実質的に相同」であるか、又は「実質的に類似」している。2種のアミノ酸配列又は2種の核酸の同一性パーセントを決定するために、これらの配列を、最適な比較目的のために整列させる(例えば、第2のアミノ酸配列又は核酸配列との最適な整列のために、第1のアミノ酸配列又は核酸配列の配列中にギャップを導入し得る)。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置でのアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドで占められている場合には、これらの分子はその位置で同一である。2種の配列間の同一性パーセントは、これらの配列により共有される同一の位置の数の関数である。一実施形態では、2種の配列は長さが同一である。2種の配列間の同一性パーセントの決定を、数学的アルゴリズムを使用して達成し得る。好ましくは、類似する又は相同の配列は、例えば、GCG(Genetics Computer Group、Program Manual for the GCG Package,Version 7,Madison,Wis.)パイルアッププログラム、又はBLAST、FASTA等の配列比較アルゴリズムの内のいずれかを使用する整列により特定される。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、核酸分子であって、この核酸分子が連結されている別の核酸を輸送し得る核酸分子を指す。あるタイプのベクターは「プラスミド」であり、このプラスミドは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状の二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、このウイルスベクターでは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。ある特定のベクターは、このベクターが導入される宿主細胞中での自己複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある特定のベクター、発現ベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指示し得る。
【0083】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明したが、上述の説明は、本発明の範囲を例示することが意図されており、限定することは意図されておらず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。他の態様、利点、及び変更は、下記の特許請求の範囲内である。
【実施例0084】
実施例1:hMaxi-K遺伝子導入による非臨床研究
ラット
ラットモデルにおける部分的な泌尿器出口の閉塞の病態生理は、ヒトで観察される、対応する下部尿路の症状の多くの関連する特徴を再現する。述べた生理学的類似性及び病態生理学的類似性により、ラット膀胱に関する研究は、ヒト膀胱の生理及び機能障害の少なくともいくつかの特徴の洞察を提供するであろうと仮定することは理にかなっている。
【0085】
ラット膀胱の生理はヒト膀胱の多くの特徴と類似していることから、研究は、部分的な泌尿器出口の閉塞のラットモデルでの膀胱過活動を寛解させるための、hSlo cDNA(即ち、maxi-Kチャネル)による膀胱注入Kチャネル遺伝子治療の潜在的有用性を調べた。
【0086】
ある研究では、22匹の雌のSprague-Dawleyラットを、部分的な尿道(即ち、出口、PUO)閉塞に供し、17匹の偽手術コントロールラットを並行に走らせた
。閉塞の6週間後、全てのラットの膀胱のドーム中に、恥骨上カテーテルを外科手術により留置した。12匹の閉塞ラットに、カテーテル挿入の最中にPBS-20%スクロース
1ml中のhSlo/pcDNA 100μgの膀胱滴下注入を行ない、別の10匹の閉塞ラットに、PBS-20%スクロース1ml(7匹のラット)又はpcDNAのみを含むPBS-20%スクロース1ml(3匹のラット)を投与した。手術の2日後、全ての動物に対して膀胱内圧測定を実施して、意識のあるラット及び拘束されていないラットにおける排尿反射の特徴を調べた。閉塞は、膀胱重量の3~4倍の増加と、ほぼ全ての排尿パラメータの推定値の変化とに関連していた(表1を参照されたい)。
【0087】
PBS-20%スクロースを注射した閉塞ラットは、排尿間で自発的な膀胱収縮を日常的に示した。対照的に、hSlo注射は、あらゆる他の膀胱内測定パラメータに検出可能な影響を及ぼすことなく、閉塞に関連する膀胱の活動亢進を除去した。おそらく、ラット膀胱中でのhSloの発現は、閉塞動物で通常観察される収縮性の増加に機能的に拮抗し、それにより膀胱の過剰活動を寛解させる。
【0088】
別の研究では、hSlo遺伝子導入が、閉塞された雄のラットモデルで観察される排尿間の圧力変動を変更する及び/又は寛解させる能力を調べた。これらの研究のために、会陰アプローチを使用して2週間にわたりラットを閉塞させた。2週間の閉塞の後、膀胱内圧測定検査のためにラットにカテーテルを挿入し、2つの処置群の内の1つに留置した。年齢を一致させたコントロールラットを偽の閉塞に供し、並行に走らせた。
【0089】
全ての実験動物の排尿パラメータの平均値を表2にまとめ、これらの結果の顕著な特徴を
図1及び
図2においてグラフで示す。重要なことに、6週間閉塞した雌のラットでの研究と同様に、hSlo/pVAX 100μgの単一膀胱内滴下注入は、主要な生理学的関連のいくつかの排尿パラメータの統計学的に有意な変化と関連していた。
【0090】
3番目の研究では、雌のラットにおける2週間の部分的な尿道出口閉塞後のhSlo遺伝子導入の効果を評価した。部分的な尿道出口閉塞(PUO)を引き起こすために、上記で説明したように、200~250gの体重の雌のSprague-Dawleyラットの尿道に結紮糸を留置した(Christ et al.,2001)。結紮糸の留置の2週間後、ラットを、恥骨上カテーテルの留置のための手術に供した。2日後、膀胱機能の研究(即ち、膀胱内圧測定)を、代謝ケージ内の意識のある拘束されていないラットに対して実施した。表3及び
図3に示すように、2週間の部分的な尿道出口閉塞の後、雌のラットは、膀胱容量の2倍超の増加と有意な自発的膀胱収縮の出現とにより明らかなように、膀胱機能の有意な変化を示す。自発的膀胱収縮の増加は排尿間の圧力変動として観察され(
図3を参照されたい)、SA値及びIMP値で観察される、対応する増加により、表3に示すように定量され得る。pVAX/hSlo 300μg及び1000μg(PBS-20%スクロース1ml中)の1回の腔内膀胱注射により、排尿筋過活動がほぼ完全に除去された。この効果は、pVAXベクターのみで処置されたラットと比較した場合に、hSloで処置された閉塞ラットのIMP及びSAの有意な減少に反映される(表3を参照されたい)。このモデルでは、hSlo遺伝子導入の真のDO効果の関係は示されていなかったが、この研究では、DOの1ログ単位の変動(100~1000μg)を超えて、統計的に有意であり、さらに、膀胱が空になる能力に対するあらゆる検出可能な効果がない場合には、DOの減少において生理学的な関連が存在することが実証された。即ち、この動物モデルでは、pVAX/hSloは、膀胱機能にいかなる有害な影響も与えることなく、流出閉塞に関連するDOの病態生理学的影響を寛解させ得る。6週間閉塞した雌のSprague DawleyラットでのpVAX/hSlo 100μgの滴下注入後に同様の効果を観察し、下記に示す。
【0091】
膀胱壁に注射された遺伝子導入の様々な体積の分布を評価するためのウサギ研究を、直
接膀胱内注射を使用する、OABを有する女性の臨床試験の開始前に実施した(表4)。体重が平均6ポンドである9羽の雌の成体のNew Zealand白ウサギを使用した。これらの動物を麻酔にかけ、pVAX-laczを、膀胱壁の4箇所、8箇所、及び10箇所の部位に、0.05、0.1、及び0.15mlのアリコートで排尿筋に注射した。3羽の動物の追加のセットに、最高量の担体(4箇所、8箇所、又は10箇所の部位×0.15ml)のみで、担体のみを注射した。プラスミドは、4000μg/mlの濃度で溶液中に存在した。1週間後、これらの動物を安楽死させ、膀胱を摘出して秤量した。青色の領域を、組織学的検査及び分子分析のために準備した。hSlo発現組織の分子分析を、RNA抽出及びリアルタイムPCRで行なった。加えて、様々なウサギ組織に対して病理組織診断を実施した。
【0092】
この動物モデルでは膀胱への直接注射が困難であることから、1羽のウサギのみに0.05mlを注射した。6羽のウサギは、4箇所、8箇所、及び10箇所の部位で0.1mlを有した(膀胱の内側から3羽;膀胱の外側から3羽)。3羽のウサギは、4箇所、8箇所、及び10箇所の部位で0.15mlを有した。結果は、注射回数がより多いウサギ(8~10回の注射)は、注射回数が最少の数羽の動物(4回の注射)と比べて発現が少ないことを示した。全体的な結論は、膀胱壁への直接注射は遺伝子の発現をもたらすが、おそらく1cm離れた注射のより広い分布で最もうまくいくように見える。遺伝子を、処置後30分まで血液中で検出した。縫合糸に起因して肉芽腫病変を観察した(ウサギモデルにおける一般的な人為的結果)。
【0093】
毒性学
OABの徴候に関して、ヒトの試験で使用されるようなラットにおけるpVAX/hSloの膀胱内投与の同一の経尿道経路をシミュレートすることは技術的に不可能である。従って、pVAX/hSloの膀胱内注射を評価する毒性学及び生体内分布の研究では、動物の膀胱を外科的に曝露し、研究物質を、針を使用して膀胱に直接注射した。
【0094】
血液学的パラメータ及び化学的パラメータへのpVAX/hSloの効果を、15匹の275~300gmの正常な雌のSprague-Dawleyラットで評価した。pVAX/hSlo(8匹の動物)又はpVAXベクター(7匹の動物)のいずれか1000μgを、外科的曝露の後に膀胱の内腔に直接注射した。試験物質の注射後4、8、及び24時間並びに1週間で、動物をCO2麻酔で安楽死させた直後に、心臓スティックにより血液サンプルを採取した。サンプルを、グルコース、尿素窒素、クレアチニン、総タンパク質、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、ALT、AST、コレステロール、ナトリウム、カリウム、塩化物、A/G比、BUN/クレアチニン比、グロブリン、リパーゼ、アミラーゼ、トリグリセリド、CPK、GTP、マグネシウム、及び浸透圧に関して分析した。これらの検査室パラメータは、4つの時点でpVAX/hSloとコントロールとの間で類似していた。
【0095】
雌のSprague-Dawleyラット(275~300gm)の病理組織診断へのpVAX/hSloの効果を、2つの研究で評価した。第1の研究では、4匹のラットに部分的膀胱閉塞手術をし、2週間後に、PBS-20%スクロース1000μL中のpVAX/hSlo 100μgを、膀胱が外科手術により露出した膀胱の内腔に直接投与した。1匹の動物を、pVAX/hSloの注射後1、8、及び24時間並びに1週間で安楽死させた。47種の器官の組織を10%ホルマリンで直ちに固定し、通常の組織病理学検査のために処理した。病理組織学的変化は膀胱でのみ認められ、漿膜炎、浮腫、出血、及び線維症からなった。これらの変化は、部分的な尿道閉塞により予想されるものと一致し、pVAX/hSloの注射と関連するとは考えられなかった。
【0096】
pVAX/hSloを投与した、PUO有するラットの膀胱の病理組織学的変化のため
に、膀胱に対する組織診への、ベクター(pVAX)及びPBS-20%スクロースと比較したpVAX/hSloの効果を、正常なラットで評価した。外科手術による曝露の後、下記の試験物質を膀胱内腔に直接注射した:1)PBS-20%スクロース0.6ml、2)PBS-20%スクロース0.6ml中のpVAX 1000μg、又は3)PBS-20%スクロース0.6ml中のpVAX/hSlo 1000μg。滴下注入の72時間後にCO2で動物を安楽死させ、膀胱と摘出してすぐに10%ホルマリン溶液で固定した。膀胱壁への針穿刺の機械的影響を制限し、且つpVAX/hSlo、ベクター、又は希釈剤により引き起こされる可能性のある炎症のあらゆる潜在的な影響を最小限に抑えるために、72時間の時点を選択した。
【0097】
膀胱の検査では著しい所見はなかった。全体的に、pVAX/hSloとビヒクル又はpVAXのいずれかとの間には、処置に関連する差異はなかった。尿路上皮では、処置に関連する変化は認められなかった。組織学的検査で見られた病変は、分布が散乱性又は多巣性ではなく局所性であったことから、注射に使用された針による外傷と一致した。
【0098】
生体内分布研究では、275~300gの正常な雌のSprague-Dawleyラットの露出した膀胱の内腔に試験物質を直接注射した。PBS-20%スクロース0.6ml中のpVAX/hSlo 1000μgを12匹の動物に投与し、PBS-20%スクロース0.6mlを5匹の動物に投与した(
図4)。試験物質の注射後24時間、1週間、及び1ヶ月で、4匹の動物それぞれを屠殺した。組織サンプルを、下記のような指定の順序で採取した:心臓、肝臓、脳、腎臓、脾臓、肺、大動脈、気管、リンパ節、眼、二頭筋、結腸、膣、及び子宮。
【0099】
検証済みのQPCR法により、ゲノムDNAサンプルをカナマイシン遺伝子に関して分析した。結果は、pVAX/hSlo 1000μgの注射後に、大動脈、子宮、膀胱、及び尿道で24時間後にプラスミドを検出し得たことを示す。1週間で、膀胱中において約1300万個のコピー/総DNAのμgを測定し、二頭筋においてもpVAX/hSloをわずかに検出し得た。この結果を、
図4(下記)においてグラフ形式で示す。
【0100】
これらの結果は、海綿体内注射後の所見とは異なるが、1300万個のコピー/総DNAのμgの検出は、これらのワクチンの臨床治験薬(IND)試験での60日後のDNAワクチン注射の部位で持続するプラスミドの<30個のコピー/105個の宿主細胞よりも依然として低い。これらのDNAワクチン研究は、筋肉内送達、皮下送達、皮内送達、又は粒子に媒介される送達が、異所でのプラスミドの長期にわたる持続をもたらさないことを実証した。加えて、動物の外科出術により露出した膀胱にpVAX/hSloを直接注射するための手順が、膀胱以外の組織中でプラスミドを検出する能力を説明する場合がある。ヒトでは、経尿道カテーテルを使用してhMaxi-Kを膀胱に直接滴下注入し、組織の損傷又は外傷に起因するプラスミド分布のリスクが明らかに著しく低下する。
【0101】
実施例2:hMaxi-K遺伝子導入によるヒト臨床試験
試験設計
これは、突発性(非神経原性)過活動膀胱症候群(OAB)及び排尿筋過活動(DO)の女性患者の膀胱壁への直接注射として投与されるhMaxi-K遺伝子の2種の漸増用量の安全性及び潜在的活性を評価するフェーズ1Bの多施設研究である。
【0102】
この研究の対象集団は、過活動膀胱(OAB)及び排尿筋過活動を有するがそれ以外では健康である、出産可能性のない(例えば、子宮摘出、研究登録前に最後の月経周期>12ヶ月と定義される卵管結紮若しくは閉経後、又は血清FSH>40mIU/L)≧18歳の女性である。
【0103】
包含基準には、下記の内の少なくとも1つを含む≧6ヶ月の継続時間の過活動膀胱の臨床症状が含まれる。
1.頻尿(≧8回/24時間)
2.尿意切迫の症状(先送りすることが困難である、排尿に対する突然の抑え難い願望の訴え)、又は夜間頻尿の症状(排尿するために2回以上夜間に起きるという訴え)
3.切迫性尿失禁(1週間当たり平均5回-切迫性尿失禁とは下記のように定義される:切迫感を伴うか又は切迫感が即時に先行する不随意な漏出の訴え)
【0104】
参加者はまた、≦200mlの残尿量を実証するスクリーニング時での膀胱スキャンと、少なくとも5cm/H2Oの、排尿筋の≧1の制御されていない収縮のベースライン尿流動態試験の最中に記録された排尿筋過活動とを有した。
【0105】
表6は、診察による処置スケジュール及び手順の概要を示す。
【0106】
この研究の主な目的は、有害事象の発生と、プラセボ(PBS-20%スクロース)と比較したhMaxi-Kの約20~30回の膀胱壁筋肉内注射の単回処置との関係とを評価することである。これは、二重盲検の、不均衡なプラセボをコントロールとした連続投与試験であった。参加者は、出産可能性のない18歳以上の健康な女性であり、下記のうちの少なくとも1つを伴う≧6ヶ月の持続時間の中程度のOAB/DOを有した:1日当たり≧8回の頻尿、尿意切迫又は夜間頻尿の症状(排尿するために2回以上夜間に起きるという訴え)、切迫性尿失禁(1週間当たり5回以上の尿失禁エピソード)、及びCMGで記録された少なくとも5cm/H2O圧の、排尿筋の≧1の制御されていない一過性収縮を有する排尿筋過活動。参加者の全員が、抗コリン薬による以前の処置に失敗していた。4例がオナボツリヌムトキシンA療法に失敗していた。
【0107】
参加者を、2種の用量(16,000μg若しくは24,000μg)の内の1種でのhMaxi-K、又はプラセボのいずれかに無作為に割り当てた。膀胱鏡検査の最中に、膀胱壁への20~30回のIM注射として処置を施した。参加者を24週間以内に8回観察し、18ヶ月にわたり追跡調査した。治験薬の投与後に発生する全ての報告された有害事象を記録した。スクリーニング診察1A(-1週目)及び注射後4週目(診察5)及び24週間目(診察8)で複合CMG(Complex CMG’s)を行なった。排尿後残尿量(PVR)を、Bladderscan(登録商標)により毎診察時に測定した。
【0108】
有効性を評価するためのデータを、処置群(プラセボ対2種の積極的処置群との組み合わせ、及びプラセボ対組み合わせた処置群の組み合わせ)毎に概要記述統計(summary descriptive statistics)を使用して評価した。線形混合効果モデルを使用して、プラセボと積極的処置との間のベースラインからの変化の差異を推定し、異なる結果に対する用量反応があったかどうかを試験した。一般化推定方程式(GEE)モデルを使用して、バイナリエンドポイント対する効果を推定した。
【0109】
6例の参加者には16000μgを投与し、3例の参加者には24000μgを投与し、且つ4例の参加者にはプラセボを投与した。両方の積極的処置群において、有害事象(AE)の大部分は重症度が軽度であり、全てが治験薬とは無関係であると見なされた。2例の女性は、hMaxi-Kによる処置後に軽度の無関係なUTIを有し、1例には投与後1ヶ月で24000μgを投与し、もう1例には投与後6ヶ月で16000μgを投与した。16000μ群で、下記の無関係の深刻なAEが1件報告された:ER診察と必要とし且つ喘息処置が施された後に回復した、寒空に起因する既存の喘息の悪化。AEに起因して中止された対象はおらず、全ての登録対象は6ヶ月の試験を完了した。加えて、18ヶ月の長期にわたる研究後の安全性の追跡調査の最中に、これまで追跡した対象で問題は報告されなかった(13例の内の9例が18ヶ月の追跡調査を完了し、13例の内の1
3例が12ヶ月の追跡調査を完了した)。
【0110】
各診察前の7日間にわたり収集した日記データの平均は、プラセボ及びベースラインに対して統計的に有意な(P<0.05)改善を明らかにし、試験の6ヶ月にわたり、1日当たりの平均排尿回数、及び1日当たりの切迫エピソードの平均数が永続的に減少した。下記の表7及び表8で示される変化は、プラセボと比較したベースラインからの平均変化(+/-SE)である。
【0111】
生活の質パラメータ(King Health Questionnaire)は、生活への影響、役割制限、身体的制限、社会的制限、及び睡眠エネルギーのドメインにおいて、個々の積極的処置及び組み合わされた積極的処置(全ての用量)対プラセボ及び対ベースラインに関する統計的に有意な持続的平均変化を示した。
【0112】
このフェーズ1B臨床試験の結果は、試験の6ヶ月の持続期間にわたりhMaxi-Kの単回投与が続いた後に、排尿及び切迫エピソードの数の有意な減少を示した。この結果を、PVRの変化及び処置に関連する深刻な有害事象の非存在下で観察した。この新たな臨床試験の結果は、ヒトMaxi-K遺伝子の単回排尿筋内投与が安全であったことを初めて示す。
【0113】
登録された対象集団が小さいにもかかわらず、参加者の日記からの全体的な所見は、全ての積極的処置に関して、プラセボに対する及びベースラインに対する排尿の平均数及び切迫エピソードの平均数の有意な減少(p<0.05)を示し、治験薬の全ての用量に関して、ベースラインに対する切迫性尿失禁エピソードの平均数の有意な減少(p<0.05)を示した。処置に対する参加者の反応は、診察3及び5において、全ての積極的な用量対プラセボに関していくつかの正のp値を示した(表9を参照されたい)。排尿及び切迫エピソードの数の減少に関して、プラセボ及びベースラインに対するこれらの有意な変化は、最終診察8(24週目)までに全ての診察で見られた。おそらく、24000μg群で登録された少数の参加者(N=3)に起因して、2種の積極的処置(16000μg及び24000μg)の間に有意な差異は見られなかった。
【0114】
生活の質パラメータ(King Health Questionnaire)は、多くのドメインにおいて、プラセボ及びベースラインに対して、個々の積極的処置及び組み合わされた積極的処置群(全ての用量)に関して統計的に有意な平均改善を示した。これは下記を含んだ:
・ドメイン2:生活への影響
・ベースラインに対して、診察5にて、全ての積極的な用量の場合にP=0.014、及び24000μgの場合にp=0.007、
・プラセボに対して、診察5にて、24000μgの場合にP=0.016;
・診察5にて、16000μg群に対して、24000μg群の場合にP=0.016
・診察6にて、ベースラインに対して、全ての積極的な用量の場合にP=0.043
・診察7にて、ベースラインに対して、16000μgの場合にP=0.010、及び全ての積極的な用量の場合にp=0.005
・診察8にて、ベースラインに対して、全ての積極的な用量の場合にP=0.026
・ドメイン3:役割制限
・診察5にて、ベースラインに対して、16000μg、24000μg、及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.004、P=0.015、P<0.001
・診察5にて、プラセボに対して、16000μg、24000μg、及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.030、P=0.035、及びP=0.015
・診察6にて、ベースラインに対して、16000μg、24000μg、及び全て
の積極的な用量それぞれの場合にP=0-023、P=0.014、及びP=0.001
・診察6にて、プラセボに対して、16000μg、24000μg、及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.047、P=0.020、及びP=0.014
・診察7にて、プラセボに対して、16000μg、24000μg、及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.012、P=0.014、及びP<0.001
・診察7にて、プラセボに対して、24000μg及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.032及びP=0.021
・診察8にて、ベースラインに対して、24000μg及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.014及びP=0.005
・診察8にて、プラセボに対して、16000μg、24000μg、及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.047、P=0.007、及びP=0.007
・ドメイン4 身体的制限
・診察6にて、ベースラインに対して、24000μg及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.018及びP=0.005
・診察7にて、ベースラインに対して、16000μg、24000μg、及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.012、P=0.018、及びP=0.001
・診察8にて、ベースラインに対して、16000μg、24000μg、及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.012、P=0.047、及びP=0.003
・ドメイン5:社会的制限
・診察6にて、ベースライン及びプラセボそれぞれに対して、24000μgの場合にP=0.032及びP=0.22
・診察7にて、ベースラインに対して、24000μg及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.002及びP=0.004
・診察7にて、プラセボに対して、24000μg及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.008及びP=0.043
・診察8にて、ベースラインに対して、24000μg及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.002及びP=0.014
・診察8にて、プラセボに対して、24000μgの場合にP=0.006
・ドメイン8:睡眠エネルギー
・診察5にて、ベースラインに対して、16000μg、24000μg、及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.047、P=0.007、及びP=0.001
・診察5にて、プラセボに対して、24000μg及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.020及びP=0.015
・診察6にて、ベースラインに対して、24000μg及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.005及びP=0.006
・診察7にて、ベースラインに対して、24000μg及び全ての積極的な用量それぞれの場合にP=0.001及びP=0.006
・診察7にて、プラセボに対して、24000μgの場合にP=0.012
【0115】
72時間パッド試験(表12)は、ベースラインに対するhMaxi-Kの積極的な用量に関して、診察3~6及び診察8で、ある程度の統計的に有意な変化を示したが、診察3~5及び診察8ではプラセボに関しても統計的に有意な変化があった。全体的に、プラセボ群は積極的処置群と比べて疾患が軽度であるように見え、積極的処置のベースライン(V2)パッド重量は、プラセボ群のものと比べてほぼ2倍高かった。加えて、プラセボのV1A平均パッド重量はわずか29グラムであったが、この群のV2での重量は259グラムであった(V1と比べてほぼ9倍高い)。これは、参加者002-001がV1Aの前にパッドを捨てていたことに起因し(そのため、彼女はV1A平均には含まれなかった)、彼女は、他の3例のプラセボ参加者と比べて疾患がより重症であったように見える(V2での3日間の平均パッド重量は295グラムであったが、他の3例の参加者の場合は3.3~36グラムであった)。
【0116】
【0117】
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【0124】
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【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
ヒト対象の過活動膀胱症候群又は排尿筋過活動の徴候又は症状を処置するか又は緩和する方法であって、プロモーターと、Maxi-Kチャネルペプチドをコードする核酸とを有するベクターを含む組成物の単位用量を少なくとも2箇所以上の部位に排尿筋内投与することを含む方法。