(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002613
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/10 20160101AFI20231228BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/206 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/275 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20231228BHJP
A23L 5/41 20160101ALI20231228BHJP
A23L 5/43 20160101ALI20231228BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20231228BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20231228BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20231228BHJP
【FI】
A23L5/10 F
A23L29/238
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/231
A23L29/25
A23L29/244
A23L29/206
A23L29/275
A23L29/262
A23L29/30
A23L5/41
A23L5/43
A23L27/00 D
A23L3/00 101C
A23L13/00 Z
A23L13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101920
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】竹治 仁詩
(72)【発明者】
【氏名】田邉 利裕
(72)【発明者】
【氏名】厚木 将志
【テーマコード(参考)】
4B018
4B021
4B035
4B041
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
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4B018LB09
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4B047LP20
(57)【要約】
【課題】 対象食材の外観の色味が良好に整えられた食品の製造方法の提供。
【解決手段】 食品の製造方法は、対象食材の少なくとも一部に調味料を添加して調味料添加食材を得る調味料添加工程と、前記調味料添加食材を充填した容器を密封して密封容器を得る密封工程と、前記密封容器を加熱して殺菌処理する殺菌工程とを有し、前記調味料が、着色作用を有する成分を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象食材の少なくとも一部に調味料を添加して調味料添加食材を得る調味料添加工程と、前記調味料添加食材を充填した容器を密封して密封容器を得る密封工程と、前記密封容器を加熱して殺菌処理する殺菌工程とを有する食品の製造方法であって、
前記調味料が、着色作用を有する成分を含有することを特徴とする食品の製造方法。
【請求項2】
前記調味料添加工程において、前記調味料を前記対象食材の表面を覆う状態に直接的にまぶすことを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項3】
前記調味料として、ペースト状または粉末状のものを用いることを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項4】
前記調味料としてペースト状のものを用い、
前記調味料が増粘多糖類を含有することを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項5】
前記調味料における前記増粘多糖類の含有割合が、0.01~1.0質量%であることを特徴とする請求項4に記載の食品の製造方法。
【請求項6】
前記増粘多糖類としてグアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カードラン、トラガントガム、アラビアガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、カシアガム、タラガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、グルコマンナン、大豆多糖類、プルラン、サイリウム、キトサン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリンから選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項4に記載の食品の製造方法。
【請求項7】
前記調味料添加工程を行う温度において、前記調味料の粘度が100~2,000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項8】
前記着色作用を有する成分がカラメル色素であり、
前記調味料における前記着色作用を有する成分の含有割合が、0.005~0.1質量%であることを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項9】
前記対象食材として、密封環境における加熱によってその色が変化する色素を含有するものを用いることを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項10】
前記対象食材として、肉類を用いることを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項11】
前記対象食材として牛肉を用いることを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項12】
前記対象食材として、厚み2.0mm以下にスライスされたものを用いることを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項13】
前記殺菌工程が、常温流通またはチルド流通が可能となるよう殺菌処理することを特徴とする請求項1に記載の食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象食材の色味が良好に整えられたレトルト食品等の密封容器入り調理済み食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レトルト食品やチルド食品等の密封容器入り食品の製造においては、対象食材を容器に収容して密封包装した後に加熱および/または加圧することで殺菌処理(いわゆるレトルト殺菌処理)を行うことが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような食品の製造において、例えば対象食材が肉類である場合にレトルト殺菌処理を行うと、肉の色が生の状態を想起させる赤色やピンク色になることがある。これは、肉類に含まれる色素であるミオグロビン類がその酸化還元状態により異なる4系統の色を呈するからである。具体的には、還元状態である濃紫色から、酸化されるにつれて赤色(ピンク色)、茶色(褐色)と変色していき、最終的に酸化状態において緑色となる。通常、肉類は、火が通った状態では茶色(褐色)を呈するが、レトルト食品等の密封容器入り食品においては、密封された状態でレトルト殺菌処理が施されるので、容器内において肉類のミオグロビン類は還元されてその色が一段階還元側の赤色(ピンク色)に変色してしまう場合がある。
このような赤色(ピンク色)をした肉は、ユーザーからは「生焼け」と見えてしまい、可食性を疑わせてしまうこととなることもある。なお、ミオグロビン類の呈色反応は可逆的変化であるため、密封容器から出してすぐは肉が赤色(ピンク色)をしていても数分間置くと酸素に触れて褐色化するが、例えばスライス肉の重なっている部分等の酸素に触れ難い部分はどうしてもできるものと考えられる。そして、このような部分は、ユーザーが食べる際に箸などのカトラリーで重なった肉をほぐしたときに赤色やピンク色の外観が目に入ってしまうことになり、レトルト食品として適当ではない。
【0004】
肉類の赤色呈色の問題を解決するために、特許文献2には、例えば食材として用いる肉類をグルコースオキシダーゼ及びグルコースを含有する水性液と接触させる方法が提案されている。
しかしながら、このような方法においては、本来的に食品の食材ではない、すなわち赤色呈色の問題さえなければ含有させなくてもよい材料を共に密封することになってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-73855号公報
【特許文献2】特開2021-7367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するものであって、その目的は、対象食材の外観の色味が良好に整えられた食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の食品の製造方法は、対象食材の少なくとも一部に調味料を添加して調味料添加食材を得る調味料添加工程と、前記調味料添加食材を充填した容器を密封して密封容器を得る密封工程と、前記密封容器を加熱して殺菌処理する殺菌工程とを有し、
前記調味料が、着色作用を有する成分を含有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の食品の製造方法によれば、着色作用を有する成分を含有する調味料を対象食材の少なくとも一部に添加する調味料添加工程を経ることにより、対象食材の表面が着色作用を有する成分を含有する調味料によって物理的に被覆されるので、対象食材が酸化還元によって変色する色素を含有する肉類等であって殺菌処理において容器内において還元反応により対象食材の色が例えば赤色やピンク色に変色した場合に、密封容器を開封してすぐであっても還元後の色が目立たなくなり、その結果、対象食材の外観の色味を良好に整えることができる。また、着色作用を有する成分が調味成分であることにより本来的に添加すべき成分によって上記効果を得ることができるので、その他の、対象食材の変色自体を抑制するためだけを目的とする成分等の添加をする必要がなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、例えばレトルト食品やチルド食品等の密封容器に調理済み食品が収容された密封容器入り調理済み食品に好適な食品を製造する方法であり、特に、使用する食材が酸化還元によってその色が可逆的に変化する色素を含有する例えば肉類等である場合に好適な製造方法である。
本発明の食品の製造方法は、対象食材の少なくとも一部に調味料を添加して調味料添加食材を得る調味料添加工程と、調味料添加食材を必要に応じてその他の食材とともに充填した容器を密封して密封容器を得る密封工程と、密封容器を加熱して殺菌処理する殺菌工程とを有する。
【0010】
〔対象食材〕
対象食材は特に限定されるものではなく、肉類、魚介類、野菜類等、公知の食材を使用することができるが、本発明に係る方法は、後記に詳述するようなレトルト食品の殺菌処理のような、密封環境における加熱を伴う処理によってその色が化学的に変化する色素を含有する食材を使用する場合に、特に有用である。密封環境における加熱を伴う処理によってその色が変化する色素としては、ミオグロビン等の生体色素が挙げられる。色素の色の変化を生じさせる化学的変化としては、酸化還元反応やpHの変化等の種々のものが挙げられる。ミオグロビンは、酸化還元反応によってその色が可逆的に変化する色素であり、調理前の生の状態では還元された、すなわち酸化が進んでいない赤色(ピンク色)を呈し、酸素が豊富に供給される状態で加熱されると酸化が進んで茶色(褐色)に変化する。一方、一旦茶色(褐色)に変化したミオグロビンは、密封状態において加熱を伴う処理を施されると、密封環境の酸素の含有量によっても異なるが、還元反応が生じて再び赤色(ピンク色)となることがある。
【0011】
対象食材としては、特に肉類および魚介類を好適に使用することができる。肉類としては、例えば牛肉、豚肉等の畜肉、獣肉、鶏肉およびクジラ肉等、様々な肉類を使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、肉類の部位としては、まとまった状態で筋線維が存在する部位である、もも肉、ウデ肉、肩肉、ヒレ肉、ばら肉およびムネ肉等を使用することが特に好ましいが、これらに限定されるものではない。また、魚介類としては、例えばカツオ、マグロ、ブリ等、様々な魚介類を使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、魚介類の部位としては、背身や腹身を問わず使用することができる。
このような対象食材を必要に応じて適当な大きさにカットして以下の工程に供する。接触処理によって得られる効果は対象食材の大きさによってあまり変わらないが、脱水処理によって得られる効果は、対象食材の大きさ、具体的には表面積に依存して変化するため、対象食材の大きさは、脱水処理の方法や脱水処理の程度(求められる対象食材の水分含有量)によって決定されればよい。対象食材の大きさの具体例として、例えば、対象食材がスライスされたものである場合は、例えば0.6~20.0mmの厚みとされる。また、対象食材が塊状のものである場合は、例えば一辺が1~10cmの大きさとされ、これ以上の大きさのものであってもよい。
【0012】
〔調味料〕
調味料は、その目的から当然に調味成分を含有し、また、着色作用を有する成分を含有する。ここで、調味料における調味成分自体が着色作用を有する成分であることが好ましく、また、調味成分とは別に着色作用を有する成分を含有していてもよい。所期の着色効果を得るためには、着色作用を有する成分の「色」濃度が高いものを使用することが好ましい。また、後述するように、粉末またはペースト状の着色した調味料を生の対象食材の表面に直接まぶすことで特に高い着色効果を得ることができる。
着色作用を有する成分としては、カラメル色素、ターメリック、ベータカロテン等のカロテノイド、サフラン、クルクミン、コチニール色素、アナトー、パプリカ色素、ルテイン、ベタニン等の食用着色料、および、醤油、味噌、赤味噌、コーヒー粉末等の調味成分等を挙げることができ、特にカラメル色素を用いることが好ましい。
調味料における着色作用を有する成分の含有割合は、0.005~0.1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.1質量%である。
【0013】
調味料としては、ペースト状または粉末状のものを用いることが好ましい。また、調味料は、増粘多糖類を含有し、適度の粘度を有するペースト状のものであることが好ましい。
本発明において、調味料がペースト状であるとは、平らなガラス板を水平に置き、その上に調味料を乗せ、これを45度に傾けたときに流れないものをいう。
増粘多糖類としては、例えばグアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カードラン、トラガントガム、アラビアガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、カシアガム、タラガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、グルコマンナン、大豆多糖類、プルラン、サイリウム、キトサン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。増粘多糖類としては、後述の殺菌工程後に粘度を失うものが好ましく、このような増粘多糖類としてはグアーガムを挙げることができる。
調味料における増粘多糖類の含有割合は、要求される調味料の粘度によっても異なるが、具体的には0.01~1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
調味料の粘度は、調味料添加工程を行う温度(例えば25℃)において100~2,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは200~1,000mPa・sである。調味料の粘度は、殺菌工程後に室温(25℃)における粘度が1~100Pa・sであることが好ましい。
【0014】
〔調味料添加工程〕
調味料添加工程において、調味料を対象食材の表面を覆う状態に直接的にまぶす。対象食材がスライスされたものである場合は、スライス面を調味料によって被覆されるように添加、いわゆるタレ和えをする。スライス面は、スライス面同士が一度重なって密着してしまうとその後の工程においても剥離されることが少なく、その結果、酸素の供給がより抑制された状態で殺菌工程に供されてしまうので、例えば対象食材が肉類である場合は還元された赤色やピンク色を呈しやすい。上記のようにスライス面を調味料によって被覆することによって、対象食材の色を適宜に調整することができる。
調味料添加工程に供される食材は、生のままであることが好ましい。対象食材が肉類や魚介類である場合、生である場合に調味料が付着しやすく、その後の工程においても脱離しにくいためである。
【0015】
〔密封工程〕
密封工程においては、上記の調味料添加工程において得られた調味料添加食材を、必要に応じてその他の食材とともに容器に充填した後、この容器を密封して密封容器を得る。
【0016】
容器としては、例えば常温流通やチルド流通ができる密封性および実用強度がある袋状や硬質容器状などの容器が挙げられるが、これらに限定されるものではない。容器としては、電子レンジによる加熱または湯煎に対応するものを用いることが好ましい。硬質容器状の容器としては、樹脂性のカップ容器やトレー容器の開口に例えばプラスチックフィルムをヒートシールによって密封可能に構成されたものや、金属缶の開口を金属等の剛性のある蓋で巻締められて構成される缶詰容器、ビン詰容器等が挙げられる。また、袋状の容器としては、樹脂性の袋の開口をヒートシールによって密封可能に構成されたパウチが挙げられる。また、高温で加熱殺菌するための耐熱性、酸素ガスや光を遮断するバリア性、容易に開封を可能とする易開封性など、機能性を付与した容器としてもよい。
【0017】
このような容器は、例えばカップ、トレー、パウチなどの樹脂性容器の場合は、食品側の最内層にはポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂層、外側にはポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなど)等といった樹脂層や、ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂などに、ケミカルベーパーデポジション(CVD)や真空蒸着法などの公知の方法により、シリコンオキサイド等の無機物、アルミナ等のセラミック、カーボン等を蒸着することにより形成される蒸着層、あるいは公知のバリア性樹脂コーティング剤から成るコーティング層とした酸素バリア材や、公知の易引裂き性樹脂層を、接着剤を介して若しくは共押出により適宜積層加工して作製される。また、金属缶の場合は、アルミや鋼板にスズをメッキしたブリキ等の薄板を加工して作製される。容器の容積は特に限定されない。
【0018】
調味料添加食材を容器に充填する際には、必要に応じて容器に気体を充填してもよい。充填する気体は、空気でも、窒素ガスおよび炭酸ガスなどの不活性ガスでもよい。このような気体を気体供給装置から容器に充填し、その後、容器を密封する。あるいは、気体を充填せず、バキュームシール機やバキュームシーマーを用いて密封してもよい。
【0019】
〔殺菌工程〕
殺菌工程においては、密封工程後に調味料添加食材が充填された密封容器を例えば加熱により殺菌処理する。殺菌工程で行う殺菌処理は、常温流通を可能とするレトルト殺菌処理や、チルド流通を可能とする120℃、4分未満の加熱処理等が挙げられるが、これらに限定されず、公知の種々の殺菌処理を採用することができる。レトルト殺菌処理とは、加圧加熱処理をいい、例えば耐熱性容器に充填した製品を品温上昇に伴う製品の内圧で容器が破損しないように加圧しながら110℃~130℃程度の蒸気又は熱水で数十分間程度加熱し、少なくとも120℃4分間相当以上であるF0 値=3.1分以上となるように処理することをいう。レトルト殺菌処理はバッチ式レトルト殺菌装置、連続式レトルト殺菌装置等の公知のレトルト殺菌装置を用いることができる。また、チルド流通可能な加熱殺菌は、例えば、一般的に多く用いられる90℃10分間相当以上の加熱処理することをいうが、バッチ式レトルト殺菌装置、連続式レトルト殺菌装置を用いて同条件の殺菌を行ってもよい。
【0020】
以上のような食品の製造方法を経ることにより、対象食材の色味が良好に整えられたレトルト食品等の密封容器入り調理済み食品を得ることができる。
このような密封容器入り調理済み食品は、密封容器を開封してすぐであっても対象食材の還元後の色が目立たず、外観の色味が良好に整えられたものとされる。
【0021】
以上、本発明の実施形態に係る食品の製造方法食品について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。
【実施例0022】
以下、本発明に係る実施例について説明する。
【0023】
<実施例1>
カラメル色素を0.03質量%、グアーガムを0.1質量%含有し、粘度が500mPa・sであるペースト状調味料を用意した。
厚み2mmにスライスした生の牛もも肉60gを90℃の熱水中で1分間ボイルし、次いで、牛もも肉の表面にまんべんなく上記のペースト状調味料17gをまぶした後、13mm幅にスライスした生の玉ねぎ40gとともにスタンディングパウチ(透明、層構成:外側から厚み12μmのアルミナの蒸着させた蒸着ポリエチレンテレフタレート/厚み15μmのナイロン/厚み70μmの無延伸ポリプロピレン、150×150mm(下部折り込み高さ41mm)、東洋製罐株式会社製)に充填(内容総量120g)し、窒素置換を行いながらヒートシールによって密封した(密封工程)。密封後、蒸気加圧殺菌シャワー冷却(殺菌温度120℃、殺菌時間25分間、F0 値=10分、殺菌圧力0.150MPa、加圧冷却3分間、圧降時間10分間)を行った(殺菌工程)。これをサンプル〔1〕とする。
【0024】
上記のサンプル〔1〕について、常温まで冷ました後、内容物における牛もも肉について、以下の肉赤色化の評価方法に従って肉色の外観を評価したところ、「○」であって肉の赤色化は認められなかった。
-肉赤色化の評価方法-
サンプルを、電子レンジを用いて500Wで60秒間加熱し、パウチを開封して内容物を取り出す。パウチの開封から1分間以内に、任意の肉片1片を箸で平らに広げて肉片の色における赤色、ピンク色の有無を目視で観察する。これを10サンプルについて行い、10サンプルとも赤色、ピンク色の肉片がなければ「○」、1サンプルでも赤色、ピンク色の肉片があれば「×」として評価した。
【0025】
<比較例1>
実施例1において、ペースト状調味料としてカラメルを含有しないものを用いたこと以外は同様にして、サンプル〔2〕を得た。
このサンプル〔2〕について実施例1と同様にして肉色の外観を評価したところ、10サンプル中4サンプルの肉片に赤色またはピンク色がまだらに存在することが観察され、評価は「×」であった。なお、カラメルを含有しないにもかかわらず肉片に褐色が呈されるサンプルがある理由としては、ペースト状調味料に醤油が含まれているため、醤油が肉の表面に存在する場合があること、および、肉片と空気の触れ具合によるものと考えられる。
【0026】
<参考例1>
実施例1において、ペースト状調味料ではなく液体調味料を用いたこと以外は同様にして、サンプル〔3〕を得た。
このサンプル〔3〕について実施例1と同様にして肉色の外観を評価したところ、10サンプル中5サンプルの肉片に赤色またはピンク色がまだらに存在することが観察され、評価は「×」であった。
【0027】
<比較例2>
実施例1において、ペースト状調味料ではなくカラメルを含有しない液体調味料を用いたこと以外は同様にして、サンプル〔4〕を得た。
このサンプル〔4〕について実施例1と同様にして肉色の外観を評価したところ、10サンプル中10サンプルの肉片が赤色またはピンク色であることが観察され、評価は「×」であった。