(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026136
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】幹細胞のベータ細胞への分化を促進する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240220BHJP
C12N 15/00 20060101ALI20240220BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N15/00
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023197550
(22)【出願日】2023-11-21
(62)【分割の表示】P 2020568947の分割
【原出願日】2019-03-01
(31)【優先権主張番号】62/637,923
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】598032106
【氏名又は名称】バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】パリュウカ,フェリシア
(72)【発明者】
【氏名】ハーブ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ガートラー,マッズ
(72)【発明者】
【氏名】ギャグリア,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ポー,イェ-チュイン
(72)【発明者】
【氏名】イエ,リリアン
(72)【発明者】
【氏名】ティール,オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ヤシン,ジハード
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,イブレット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】幹細胞のベータ細胞への分化を促進する方法および組成物を提供する。
【解決手段】膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、クロモグラニンA陽性(CHGA+)細胞の割合が増加した、またはC-ペプチド陽性かつNKX6.1陽性(C-PEP+、NKX6.1+)の細胞の割合が増加した内分泌細胞の集団をもたらす、方法とする。前記エピジェネティック修飾化合物が、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤等を含む、方法である。本開示は分化したベータ細胞を選別し富化する組成物および方法にも関する。本開示は増殖を低減させるために細胞集団を照射する組成物および方法にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが、前記エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、クロモグラニンA陽性(CHGA+)細胞の割合が増加した、またはC-ペプチド陽性かつNKX6.1陽性(C-PEP+、NKX6.1+)の細胞の割合が増加した内分泌細胞の集団をもたらす、方法。
【請求項2】
膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが、前記エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、VMATまたはCdx2を発現する細胞の割合が減少した内分泌細胞の集団をもたらす、方法。
【請求項3】
前記エピジェネティック修飾化合物が、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団に接触させる前記DZNepの濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記DZNepの前記濃度が少なくとも約0.5μMである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記DZNepの前記濃度が約1μMである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記HDAC阻害剤がKD5170である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エピジェネティック修飾化合物がHDAC阻害剤およびEZH2阻害剤を含む、請
求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記エピジェネティック修飾化合物がDZNepおよびKD5170を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
in vitroで実施される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団を(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含む、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含む、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含む、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含む、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含む、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含む、
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含む、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含む、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団を、ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記接触させるステップが少なくとも3日間である、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記接触させるステップが、前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団を前記エピジェネティック修飾化合物と3日を超える期間接触させるステップ、および前記期間のうち最初の3日間に前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団と前記接触させるステップの後で、前記SHH経路阻害剤、前記RAシグナル伝達経路活性化剤、または前記EGFファミリーからの前記成長因子を除去するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記接触させるステップが少なくとも5日間である、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記接触させるステップが約7日間である、請求項18から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記膵前駆細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞がPDX1およびNKX6-1のうち少なくとも1つを発現する、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記膵前駆細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞がPDX1およびNKX6-1の両
方を発現する、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記内分泌細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞がCHGAを発現する、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記内分泌細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞がC-ペプチドおよびNKX6.1を発現する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記内分泌細胞の集団が、フローサイトメトリーによって測定して、前記エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、400%、420%、450%、480%、または500%高い割合のCHGA+細胞を含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記内分泌細胞の集団が、フローサイトメトリーによって測定して、前記エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、400%、420%、450%、480%、または500%高い割合のC-PEP+、NKX6.1+細胞を含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記内分泌細胞の集団が、フローサイトメトリーによって測定して、前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、または400%低い割合の、VMATまたはCdx2を発現する細胞を含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から31のいずれか一項に記載の方法によって生成された細胞。
【請求項33】
細胞集団を含む組成物であって、前記細胞集団が、フローサイトメトリーによって測定して、
(a)少なくとも約20%の、C-ペプチドおよびNKX6.1を発現する細胞、
(b)少なくとも約60%の、CHGAを発現する細胞、
(c)多くとも約20%の、Cdx2を発現する細胞、または
(d)多くとも約45%の、VMAT1を発現する細胞
を含む、組成物。
【請求項34】
フローサイトメトリーによって測定して、少なくとも約30%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞および多くとも約20%のISL1陰性NKX6.1陰性の細胞を含む細胞集団を含む組成物。
【請求項35】
前記細胞集団が、少なくとも約35%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記細胞集団が、少なくとも約40%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
前記細胞集団が、多くとも約15%のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む、請求項34から36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
フローサイトメトリーによって測定して、
(a)少なくとも約20%の、C-ペプチドおよびNKX6.1を発現する細胞、
(b)少なくとも約60%の、CHGAを発現する細胞、および
(c)多くとも約20%の、Cdx2を発現する細胞
を含む、請求項33から37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
フローサイトメトリーによって測定して、多くとも約45%の、VMAT1を発現する細胞を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
エピジェネティック修飾化合物をさらに含む、請求項33から39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記エピジェネティック修飾化合物が、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される、請求項42または43に記載の組成物。
【請求項45】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団に接触させる前記DZNepの濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記DZNepの前記濃度が少なくとも約0.5μMである、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記DZNepの前記濃度が約1μMである、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む、請求項40から48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記HDAC阻害剤がKD5170である、請求項50に記載の組成物。
【請求項53】
前記エピジェネティック修飾化合物がHDAC阻害剤およびEZH2阻害剤を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項54】
前記エピジェネティック修飾化合物がDZNepおよびKD5170を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項55】
(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤をさらに含む、請求項33から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
(A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含む、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含む、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含む、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含む、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含む、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含むか
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含む、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含む、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤を含む、請求項55または56に記載の組成物。
【請求項58】
膵前駆細胞、およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤のうち少なくとも1つを含む組成物。
【請求項59】
内分泌細胞をさらに含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、請求項58または59に記載の組成物。
【請求項61】
前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記HDAC阻害剤がKD5170である、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
前記組成物中の前記KD5170の濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記KD5170の前記濃度が少なくとも0.5μMである、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記KD5170の前記濃度が約1μMである、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、請求項58から65のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項67】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される、請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
前記組成物中の前記DZNepの濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記DZNepの前記濃度が少なくとも約0.5μMである、請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
前記DZNepの前記濃度が約1μMである、請求項69に記載の組成物。
【請求項72】
前記HDAC阻害剤がKD5170であり、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、請求項58に記載の組成物。
【請求項73】
in vitro組成物である、請求項58から72のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項74】
(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤をさらに含む、請求項58から73のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項75】
(A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含むか、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含むか、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含むか、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含むか、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含むか、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含むか、
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含むか、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含むか、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤をさらに含む、請求項74または75に記載の組成物。
【請求項77】
膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させて、内分泌細胞を含む細胞集団を産生させるステップ、および
前記内分泌細胞を含む細胞集団を成熟させて、グルコースチャレンジに対してin vi
troグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する少なくとも1個の膵β細胞を得るステップ
を含む方法。
【請求項78】
前記細胞集団を(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
(A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含む、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含む、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含む、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含む、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含む、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含む、
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含む、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含む、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記細胞集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
前記細胞集団をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させるステップをさらに含む、請求項77から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記HDAC阻害剤がKD5170である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される、請求項77から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させる前記ステップが、前記内分泌細胞を含み、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、クロモグラニンA陽性(CHGA+)細胞の割合が増加した、またはC-ペプチド陽性かつNKX6.1陽性(C-PEP+、NKX6.1+)の細胞の割合が増加した集団をもたらす、請求項77から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させる前記ステップが、前記内分泌細胞を含み、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、VMATまたはCdx2を発現する細胞の割合が減少した集団をもたらす、請求項77から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記膵前駆細胞またはその前駆体のうち前記少なくとも1個の細胞がPdx1およびNKX6.1の両方を発現する、請求項77から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
複数の幹細胞をin vitroで分化させて前記膵前駆細胞またはその前駆体を含む前記細胞集団を得るステップをさらに含む、請求項77から87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
請求項77から88のいずれか一項に記載の方法によって産生された膵β細胞。
【請求項90】
(a)Pdx1陰性NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団を骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤およびトランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触させ、それによりPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団を産生させるステップ、および
(b)前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む前記細胞集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させて、内分泌細胞を含む細胞集団を産生させるステップ
を含む方法。
【請求項91】
前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がDMH-1、その誘導体、類似体、または変異体を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記DMH-1の濃度が、約0.01μM~約10μM、約0.05μM~約5μM、約0.1μM~約1μM、または約0.15μM~約0.5μMである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記DMH-1の濃度が約0.25μMのDMH-1である、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記TGF-βスーパーファミリーからの成長因子がアクチビンAを含む、請求項91から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記アクチビンAの濃度が、約0.5ng/mL~約200ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約2ng/mL~約50ng/mL、または約5ng/mL~約30ng/mLである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記アクチビンAの濃度が少なくとも約5ng/mLまたは少なくとも約10ng/mLのアクチビンAである、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記アクチビンAの濃度が約20ng/mLのアクチビンAである、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団を接触させる前記ステップが、FGFファミリーからの成長因子、SHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路活性化剤、プロテインキナーゼC活性化剤、およびROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む、請求項90から97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記エピジェネティック修飾化合物が、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラ
ーゼ阻害剤、およびブロモドメイン阻害剤からなる群から選択される化合物を含む、請求項90から98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される、請求項100または101に記載の方法。
【請求項103】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団に接触させる前記DZNepの濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、請求項103に記載の方法
【請求項105】
前記DZNepの前記濃度が少なくとも約0.5μMである、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記DZNepの前記濃度が約1μMである、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む、請求項90から106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記HDAC阻害剤がKD5170である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
in vitroで実施される、請求項90から110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む前記集団を(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む、請求項90から111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
(A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含む、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含む、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含む、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含む、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含む、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含むか、
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含む、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含む、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む前記集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む、請求項112または113に記載の方法。
【請求項115】
前記接触させるステップが少なくとも3日間である、請求項112から114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記接触させるステップが、前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む前記集団を前記エピジェネティック修飾化合物と3日を超える期間接触させるステップ、および前記期間のうち最初の3日間に前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団と前記接触させるステップの後で、前記SHH経路阻害剤、前記RAシグナル伝達経路活性化剤、または前記EGFファミリーからの成長因子を除去するステップを含む、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記接触させるステップが少なくとも5日間である、請求項112から116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記接触させるステップが約7日間である、請求項112から116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団が、フローサイトメトリーによって測定して多くとも約10%の、Cdx2を発現する細胞を含む、請求項90から118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団が、前記骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤および前記トランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触していない対応する細胞集団と比較して、より少ない割合の、Cdx2を発現する細胞を含む、請求項90から119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記内分泌細胞を含む細胞集団が、フローサイトメトリーによって測定して、少なくとも約40%の、ISL1およびNKX6.1を発現する細胞を含む、請求項90から120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
前記内分泌細胞を含む細胞集団が、前記骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤および前記トランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と前記接触をしていない対応する細胞集団と比較して、より多い割合の、ISL1およびNKX6.1を発現する細胞を含む、請求項90から121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記内分泌細胞を含む細胞集団が、フローサイトメトリーによって測定して、多くとも約15%のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む、請求項90から122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記内分泌細胞を含む細胞集団が、前記骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤および前記トランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と前記接触をしていない対応する細胞集団と比較して、より少ない割合のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む、請求項90から122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記内分泌細胞を含む細胞集団を凍結保存するステップをさらに含む、請求項90から124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
前記内分泌細胞を含む細胞集団が細胞クラスターであり、前記方法が、
(a)前記細胞クラスターから複数の細胞を分離するステップ、および
(b)ステップ(a)からの前記複数の細胞を再凝集培地中で培養して、前記複数の細胞の少なくとも一部に第2の細胞クラスターを形成させるステップ
をさらに含む、請求項90から125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記分離するステップが、前記複数の細胞をフローサイトメトリーに供するステップを含まない、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記再凝集培地が血清を含まない、請求項126または127に記載の方法。
【請求項129】
前記再凝集培地が外因性分化因子を含まない、請求項126から128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記内分泌細胞をin vitroで成熟させて、グルコースチャレンジに対してin
vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する少なくとも1個の膵β細胞を得るステップをさらに含む、請求項90から129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記成熟させるステップが無血清培地中で実施される、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記成熟させるステップがゼノフリー培地中で実施される、請求項130または131に記載の方法。
【請求項133】
前記成熟させるステップが外因性分化因子を含まない培地中で実施される、請求項130から132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記成熟させるステップがヒト血清アルブミン(HSA)の存在下で実施される、請求項130から133のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
前記HSAが約0.1%~約5%、約0.5%~約2%の濃度で存在する、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記HSAが約1%の濃度で存在する、請求項134に記載の方法。
【請求項137】
(a)集団中の多能性幹細胞をTGF-βスーパーファミリーからの成長因子およびWNTシグナル伝達経路活性化剤と接触させることによって、前記多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップ、
(b)前記胚体内胚葉細胞をFGFファミリーからの成長因子と接触させることによって、前記胚体内胚葉細胞の少なくとも一部を原腸管細胞に分化させるステップ、
(c)前記原腸管細胞をROCK阻害剤、FGFファミリーからの成長因子、BMPシグ
ナル伝達経路阻害剤、PKC活性化剤、レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、SHH経路阻害剤、およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子と接触させることによって前記原腸管細胞の少なくとも一部をPdx1陽性膵前駆細胞に分化させるステップ、(d)前記Pdx1陽性膵前駆細胞をROCK阻害剤、TGFβスーパーファミリーからの成長因子、FGFファミリーからの成長因子、RAシグナル伝達経路活性化剤、およびSHH経路阻害剤と接触させることによって前記Pdx1陽性膵前駆細胞の少なくとも一部をPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップ、ならびに
(e)前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をTGF-βシグナル伝達経路阻害剤、EGFファミリーからの成長因子、RAシグナル伝達経路活性化剤、SHH経路阻害剤、THシグナル伝達経路活性化剤、γ-セクレターゼ阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、ROCK阻害剤、BMPシグナル伝達経路阻害剤、およびエピジェネティック修飾化合物と接触させることによって前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞の少なくとも一部を少なくとも1個のNKX6.1+かつC-ペプチド+の細胞を含む細胞集団に分化させるステップ
を含む方法。
【請求項138】
請求項90から129のいずれか一項または請求項137に記載の方法によって産生された内分泌細胞を含む細胞集団。
【請求項139】
請求項130から136のいずれか一項に記載の方法によって産生されるSC-β細胞を含む細胞集団。
【請求項140】
内分泌細胞を含むin vitroの細胞集団を約100rad~約100,000radの線量で約1分~約60分の時間の照射に曝露するステップを含む方法。
【請求項141】
幹細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、膵前駆細胞、または内分泌細胞を含む細胞集団を照射に曝露するステップを含み、前記照射が、照射に供されていない対応する細胞集団と比較して増殖能力が低減した細胞集団をもたらす、細胞の増殖を低減させる方法。
【請求項142】
前記細胞集団が、約100rad~約50,000rad、約100rad~約25,000rad、約100rad~約10,000rad、約250rad~約25,000rad、約500rad~約25,000rad、約1,000rad~約25,000rad、約2,500rad~約25,000rad、約5,000rad~約25,000rad、または約10,000rad~約15,000radの照射に曝露される、請求項140または141に記載の方法。
【請求項143】
前記細胞集団が約10,000radの照射に曝露される、請求項140または141に記載の方法。
【請求項144】
前記細胞集団が、約1分~約55分、約1分~約50分、約1分~約45分、約1分~約40分、約1分~約35分、約1分~約30分、約1分~約25分、約1分~約20分、約1分~約10分、約1分~約5分、約10分~約55分、約15分~約55分、約20分~約55分、約25分~約55分、約30分~約55分、約20分~約40分、または約25分~約35分、照射に曝露される、請求項140から143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記細胞集団が約30分、照射に曝露される、請求項140から143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記照射がイオン化照射を含む、請求項140から145のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項147】
前記イオン化照射がガンマ線、X線、紫外線放射、アルファ線、ベータ線、または中性子線を含む、請求項140から146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記照射が、前記照射に供されていない対応する細胞クラスターと比較して増殖が低減した細胞集団をもたらす、請求項140から147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
前記細胞集団が、約50μm~約500μm、約50μm~約300μm、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、約600μm~約150μm、約700μm~約150μm、約80μm~約150μm、または約60μm~約100μmの直径を有する第2の細胞クラスターを含む、請求項140から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項150】
(a)第1の細胞クラスターから複数の細胞を分離するステップ、および
(b)ステップ(a)からの前記複数の細胞を再凝集培地中で培養して、前記複数の細胞の少なくとも一部に前記第2の細胞クラスターを形成させるステップ
をさらに含む、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記分離するステップが、前記複数の細胞をフローサイトメトリーに供するステップを含まない、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記第1の細胞クラスターが、第3の細胞クラスターを分離し、前記第3の細胞クラスターから分離した細胞を培養して、前記第1の細胞クラスターを形成させることによって得られる、請求項150または151に記載の方法。
【請求項153】
前記細胞クラスターが前記照射の前に凍結保存され、前記方法が、凍結保存された前記細胞クラスターを前記照射の前に解凍するステップをさらに含む、請求項149に記載の方法。
【請求項154】
前記細胞クラスターが前記照射に供されている間に凍結保存される、請求項149に記載の方法。
【請求項155】
凍結保存された前記細胞クラスターを照射の後に解凍し、前記内分泌細胞の少なくとも一部を分化させるステップをさらに含む、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
膵前駆細胞またはその前駆体をin vitroで分化させることによって前記内分泌細胞を含む前記細胞集団を得るステップをさらに含む、請求項140から155のいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
幹細胞をin vitroで分化させ、それにより前記内分泌細胞を含む前記細胞集団を産生させるステップをさらに含む、請求項140から156のいずれか一項に記載の方法。
【請求項158】
前記内分泌細胞の少なくとも一部をin vitroで膵β細胞に成熟させ、それにより細胞集団を産生させるステップをさらに含む、請求項140から157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記膵β細胞をそれを必要とする対象に埋め込むステップをさらに含む、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
埋め込まれた前記膵β細胞が、前記対象において少なくとも約50日、60日、70日、80日、90日、またはそれより長く、血中グルコースレベルを制御するように構成されている、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
請求項140から157のいずれか一項に記載の方法によって産生された内分泌細胞を含む細胞集団。
【請求項162】
請求項158から160のいずれか一項に記載の方法によって産生された膵β細胞を含む細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001]本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる2018年3月2日出願の米国仮特許出願第62/637,923号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]膵島細胞の再生、可塑性、および機能を指令する分子機構の解明によって、糖尿病を治療するためのβ細胞置換戦略を改善し拡大することが可能である。幹細胞から誘導されたβ-細胞の産生によって、膵島細胞および膵臓器官の産生に向けた潜在的に有用なステップを提供することができる。幹細胞から誘導された組織によって治療可能な急速に進行する疾患の1つが糖尿病である。1型糖尿病は膵島におけるβ-細胞の自己免疫的破壊に起因する。2型糖尿病は末梢組織のインスリン抵抗性およびβ-細胞の機能異常に起因する。糖尿病患者、特に1型糖尿病を患っている患者は、新たなβ-細胞の移植によって治癒する可能性がある。死体ヒト膵島の移植を受けた患者は、この戦略によって5年またはそれ以上、インスリン依存性を脱することができるが、ドナー膵島の希少性およびその品質のために、このアプローチには限界がある。幹細胞からヒトβ-細胞の無制限な供給を産生できれば、この療法を数百万人の新たな患者に広げることができ、これは幹細胞の生物学を臨床に変換する重要なテストケースになり得る。
参照による組込み
[0001]本明細書に記述する全ての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれの個別の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれていると具体的にかつ個別に示されていると同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。他に指示がなければ、本明細書に記述する刊行物、特許、および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0003】
[0002]一部の態様では、膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させるステップを含む方法であって、接触させるステップが、エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、クロモグラニンA陽性(CHGA+)細胞の割合が増加しまたはC-ペプチド陽性かつNKX6.1陽性(C-PEP+、NKX6.1+)細胞の割合が増加した内分泌細胞の集団をもたらす、方法が本明細書で提供される。
【0004】
[0003]一部の態様では、膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させるステップを含む方法であって、接触させるステップが、エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、VMATまたはCdx2を発現する細胞の割合が減少した内分泌細胞の集団をもたらす、方法が本明細書で提供される。
【0005】
[0004]一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はDNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はEZH2阻害剤である。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の例では、膵前駆細胞またはその前
駆体の集団に接触させるDZNepの濃度は約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである。一部の例では、DZNepの濃度は少なくとも約0.5μMである。一部の例では、DZNepの濃度は約1μMである。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む。一部の例では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はHDAC阻害剤およびEZH2阻害剤を含む。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はDZNepおよびKD5170を含む。一部の例では、本方法はin vitroで実施される。
【0006】
[0005]一部の例では、本方法は、膵前駆細胞またはその前駆体の集団を(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む。一部の例では、(A)SHH経路阻害剤はSANT1を含む、(B)RAシグナル伝達経路活性化剤はレチノイン酸を含む、(C)γ-セクレターゼ阻害剤はXXIを含む、(D)EGFファミリーからの成長因子はベータセルリンを含む、(E)BMPシグナル伝達経路阻害剤はLDNを含む、(F)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤はAlk5i IIを含む、(G)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤はGC-1を含む、(H)プロテインキナーゼ阻害剤はスタウロスポリンを含む、または(I)ROCK阻害剤はチアゾビニンを含む。一部の例では、本方法は、膵前駆細胞またはその前駆体の集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む。一部の例では、接触させるステップは少なくとも3日間である。一部の例では、接触させるステップは、膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と3日を超える期間接触させるステップ、および上記期間のうち最初の3日間に膵前駆細胞またはその前駆体の集団と接触させるステップの後でSHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路活性化剤、またはEGFファミリーからの成長因子を除去するステップを含む。一部の例では、接触させるステップは少なくとも5日間である。一部の例では、接触させるステップは約7日間である。一部の例では、膵前駆細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞はPDX1およびNKX6-1のうち少なくとも1つを発現する。一部の例では、膵前駆細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞はPDX1およびNKX6-1の両方を発現する。一部の例では、内分泌細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞はCHGAを発現する。一部の例では、内分泌細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞はC-ペプチドおよびNKX6.1を発現する。一部の例では、内分泌細胞の集団はフローサイトメトリーによって測定して、エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、400%、420%、450%、480%、または500%高い割合のCHGA+細胞を含む。一部の例では、内分泌細胞の集団はフローサイトメトリーによって測定して、エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、400%、420%、450%、480%、または500%高い割合のC-PEP+、NKX6.1+の細胞を含む。一部の
例では、内分泌細胞の集団はフローサイトメトリーによって測定して、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、または400%低い割合の、VMATまたはCdx2を発現する細胞を含む。
【0007】
[0006]一部の態様では、本明細書で提供する任意の方法によって生成された細胞が本明細書で提供される。
[0007]一部の態様では、細胞集団を含む組成物であって、細胞集団がフローサイトメトリーによって測定して、(a)C-ペプチドおよびNKX6.1を発現する少なくとも約20%の細胞、(b)CHGAを発現する少なくとも約60%の細胞、(c)Cdx2を発現する多くとも約20%の細胞、または(d)VMAT1を発現する多くとも約45%の細胞を含む、組成物が本明細書で提供される。
【0008】
[0008]一部の態様では、フローサイトメトリーによって測定して、少なくとも約30%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞ならびに多くとも約20%のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む細胞集団を含む組成物が本明細書で提供される。
【0009】
[0009]一部の例では、細胞集団は少なくとも約35%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞を含む。一部の例では、細胞集団は少なくとも約40%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞を含む。一部の例では、細胞集団は多くとも約15%のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む。一部の例では、組成物はフローサイトメトリーによって測定して、(a)C-ペプチドおよびNKX6.1を発現する少なくとも約20%の細胞、(b)CHGAを発現する少なくとも約60%の細胞、および(c)Cdx2を発現する多くとも約20%の細胞を含む。一部の例では、組成物はフローサイトメトリーによって測定して、VMAT1を発現する多くとも約45%の細胞を含む。一部の例では、組成物はエピジェネティック修飾化合物をさらに含む。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はDNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はEZH2阻害剤である。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ組成物はDZNepである。一部の例では、膵前駆細胞またはその前駆体の集団に接触させるDZNepの濃度は約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである。一部の例では、DZNepの濃度は少なくとも約0.5μMである。一部の例では、DZNepの濃度は約1μMである。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む。一部の例では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はHDAC阻害剤およびEZH2阻害剤を含む。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はDZNepおよびKD5170を含む。一部の例では、組成物は(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(vii
i)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤をさらに含む。組成物の一部の例では、(A)SHH経路阻害剤はSANT1を含む、(B)RAシグナル伝達経路活性化剤はレチノイン酸を含む、(C)γ-セクレターゼ阻害剤はXXIを含む、(D)EGFファミリーからの成長因子はベータセルリンを含む、(E)BMPシグナル伝達経路阻害剤はLDNを含む、(F)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤はAlk5i IIを含む、(G)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤はGC-1を含む、(H)プロテインキナーゼ阻害剤はスタウロスポリンを含む、または(I)ROCK阻害剤はチアゾビニンを含む。一部の例では、組成物はベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤を含む。
【0010】
[0010]一部の態様では、膵前駆細胞、およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤のうち少なくとも1つを含む組成物が本明細書で提供される。
【0011】
[0011]一部の例では、組成物は内分泌細胞をさらに含む。組成物の一部の例では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の例では、組成物中のKD5170の濃度は約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである。一部の例では、KD5170の濃度は少なくとも0.5μMである。一部の例では、KD5170の濃度は約1μMである。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はEZH2阻害剤である。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の例では、組成物中のDZNepの濃度は約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである。一部の例では、DZNepの濃度は少なくとも0.5μMである。一部の例では、DZNepの濃度は約1μMである。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170であり、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の例では、組成物はin vitro組成物である。一部の例では、組成物は(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤をさらに含む。一部の例では、(A)SHH経路阻害剤はSANT1を含む、(B)RAシグナル伝達経路活性化剤はレチノイン酸を含む、(C)γ-セクレターゼ阻害剤はXXIを含む、(D)EGFファミリーからの成長因子はベータセルリンを含む、(E)BMPシグナル伝達経路阻害剤はLDNを含む、(F)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤はAlk5i IIを含む、(G)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤はGC-1を含む、(H)プロテインキナーゼ阻害剤はスタウロスポリンを含む、または(I)ROCK阻害剤はチアゾビニンを含む。一部の例では、組成物はベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤をさらに含む。
【0012】
[0012]一部の態様では、膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させて内分泌細胞を含む細胞集団を産生させるステップ、および内分泌細胞を含む細胞集団を成熟させてグルコースチャレンジに対してin v
itroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する少なくとも1個の膵β細胞を得るステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0013】
[0013]一部の例では、本方法は、細胞集団を(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む。一部の例では、(A)SHH経路阻害剤はSANT1を含む、(B)RAシグナル伝達経路活性化剤はレチノイン酸を含む、(C)γ-セクレターゼ阻害剤はXXIを含む、(D)EGFファミリーからの成長因子はベータセルリンを含む、(E)BMPシグナル伝達経路阻害剤はLDNを含む、(F)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤はAlk5i
IIを含む、(G)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤はGC-1を含む、(H)プロテインキナーゼ阻害剤はスタウロスポリンを含む、または(I)ROCK阻害剤はチアゾビニンを含む。一部の例では、本方法は細胞集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む。一部の例では、本方法は細胞集団をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させるステップをさらに含む。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップは、内分泌細胞を含み、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較してクロモグラニンA陽性(CHGA+)細胞の割合が増加しまたはC-ペプチド陽性かつNKX6.1陽性(C-PEP+、NKX6.1+)の細胞の割合が増加した集団をもたらす。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップは、内分泌細胞を含み、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較してVMATまたはCdx2を発現する細胞の割合が減少した集団をもたらす。一部の例では、膵前駆細胞またはその前駆体のうち少なくとも1個の細胞はPdx1およびNKX6.1の両方を発現する。一部の例では、本方法は複数の幹細胞をin vitroで分化して膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団を得るステップをさらに含む。
【0014】
[0014]一部の態様では、本明細書で提供される任意の方法によって産生された膵β細胞が本明細書で提供される。
[0015]一部の態様では、(a)Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団を骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤およびトランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触させ、それによりPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団を産生させるステップ、および(b)Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させて内分泌細胞を含む細胞集団を産生させるステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0015】
[0016]一部の例では、BMPシグナル伝達経路阻害剤はDMH-1、その誘導体、類似体、または変異体を含む。一部の例では、Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させるDMH-1の濃度は約0.01μM~約10μM、約0.05μM~約5μM、約0.1μM~約1μM、または約0.15μM~約0.5μMである。一部の例では、Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させるDMH-1の濃度は約0.25μMのDMH-1である。一部の例では、TGF-βスーパーファミ
リーからの成長因子はアクチビンAを含む。一部の例では、Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させるアクチビンAの濃度は約0.5ng/mL~約200ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約2ng/mL~約50ng/mL、または約5ng/mL~約30ng/mLである。一部の例では、Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させるアクチビンAの濃度は少なくとも約5ng/mLまたは少なくとも約10ng/mLのアクチビンAである。一部の例では、Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させるアクチビンAの濃度は約20ng/mLのアクチビンAである。一部の例では、Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団を接触させるステップは、FGFファミリーからの成長因子、SHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路活性化剤、プロテインキナーゼC活性化剤、およびROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はDNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、およびブロモドメイン阻害剤からなる群から選択される化合物を含む。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はEZH2阻害剤である。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の例では、膵前駆細胞またはその前駆体の集団に接触させるDZNepの濃度は約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである。一部の例では、DZNepの濃度は少なくとも約0.5μMである。一部の例では、DZNepの濃度は約1μMである。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む。一部の例では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される。一部の例では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の例では、本方法はin vitroで実施される。一部の例では、本方法はPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む集団を(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む。一部の例では、(A)SHH経路阻害剤はSANT1を含む、(B)RAシグナル伝達経路活性化剤はレチノイン酸を含む、(C)γ-セクレターゼ阻害剤はXXIを含む、(D)EGFファミリーからの成長因子はベータセルリンを含む、(E)BMPシグナル伝達経路阻害剤はLDNを含む、(F)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤はAlk5i IIを含む、(G)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤はGC-1を含む、(H)プロテインキナーゼ阻害剤はスタウロスポリンを含む、または(I)ROCK阻害剤はチアゾビニンを含む。一部の例では、本方法は、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む。一部の例では、接触させるステップは少なくとも3日間である。一部の例では、接触させるステップは、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む集団をエピジェネティック修飾化合物と3日を超える期間接触させるステップ、および上記期間のうち最初の3日間に膵前駆細胞またはその前駆体の集団と接触させるステップの後でSHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路活性化剤、またはEGFファミリーからの成長因子を除去するステップを含む。一部の例では、接触させるステップは少なくとも5日間である。一部の例では、接触させるステップは約7
日間である。一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団は、フローサイトメトリーによって測定してCdx2を発現する多くとも約10%の細胞を含む。一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団は、骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤およびトランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触していない対応する細胞集団と比較して、Cdx2を発現するより少ない割合の細胞を含む。一部の例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、フローサイトメトリーによって測定してISL1およびNKX6.1を発現する少なくとも約40%の細胞を含む。一部の例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤およびトランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触していない対応する細胞集団と比較して、ISL1およびNKX6.1を発現するより多い割合の細胞を含む。一部の例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、フローサイトメトリーによって測定して、多くとも約15%のISL-1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む。一部の例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤およびトランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触していない対応する細胞集団と比較して、より少ない割合のISL-1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む。一部の例では、本方法は内分泌細胞を含む細胞集団を凍結保存するステップをさらに含む。一部の例では、内分泌細胞を含む細胞集団は細胞クラスターであり、本方法は(a)細胞クラスターから複数の細胞を分離するステップ、および(b)ステップ(a)からの複数の細胞を再凝集培地中で培養して複数の細胞の少なくとも一部に第2の細胞クラスターを形成させるステップをさらに含む。一部の例では、分離するステップは複数の細胞をフローサイトメトリーに供するステップを含まない。一部の例では、再凝集培地は血清を含まない。一部の例では、再凝集培地は外因性分化因子を含まない。一部の例では、本方法は内分泌細胞をin vitroで成熟させて、グルコースチャレンジに応答してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する少なくとも1個の膵β細胞を得るステップをさらに含む。一部の例では、成熟させるステップは無血清培地中で実施される。一部の例では、成熟させるステップはゼノフリー培地中で実施される。一部の例では、成熟させるステップは外因性分化因子を含まない培地中で実施される。一部の例では、成熟させるステップはヒト血清アルブミン(HSA)の存在下で実施される。一部の例では、HSAは約0.1%~約5%、約0.5%~約2%の濃度で存在する。一部の例では、HSAは約1%の濃度で存在する。
【0016】
[0017]一部の例では、本明細書で提供される方法は、(a)集団中の多能性幹細胞をTGF-βスーパーファミリーからの成長因子およびWNTシグナル伝達経路活性化剤と接触させることによって多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップ、(b)胚体内胚葉細胞をFGFファミリーからの成長因子と接触させることによって胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかを原腸管細胞に分化させるステップ、(c)原腸管細胞をROCK阻害剤、FGFファミリーからの成長因子、BMPシグナル伝達経路阻害剤、PKC活性化剤、レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、SHH経路阻害剤、およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子と接触させることによって原腸管細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性膵前駆細胞に分化させるステップ、(d)Pdx1陽性膵前駆細胞をROCK阻害剤、TGFβスーパーファミリーからの成長因子、FGFファミリーからの成長因子、RAシグナル伝達経路活性化剤、およびSHH経路阻害剤と接触させることによってPdx1陽性膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップ、ならびに(e)Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をTGF-βシグナル伝達経路阻害剤、EGFファミリーからの成長因子、RAシグナル伝達経路活性化剤、SHH経路阻害剤、THシグナル伝達経路活性化剤、γ-セクレターゼ阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、ROCK阻害剤、BMPシグナル伝達経路阻害剤、およびエピジェネティック修飾化合物と接触させることによってPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞の少なくともいくつかを少なくとも1個のNKX6.
1+かつC-ペプチド+の細胞を含む細胞集団に分化させるステップを含む方法を含む。
【0017】
[0018]一部の態様では、本明細書で提供される任意の方法によって産生された内分泌細胞を含む細胞集団が本明細書で提供される。一部の態様では、本明細書で提供される任意の方法によって産生されたSC-β細胞を含む細胞集団が本明細書で提供される。
【0018】
[0019]一部の態様では、内分泌細胞を含むin vitroの細胞集団を約100rad~約100,000radの線量で約1分~約60分の時間の照射に曝露するステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0019】
[0020]一部の態様では、幹細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、膵前駆細胞、または内分泌細胞を含む細胞集団を照射に曝露するステップを含み、照射が照射に供されていない対応する細胞集団と比較して増殖能力が低減した細胞集団をもたらす、細胞の増殖を低減させる方法が本明細書で提供される。
【0020】
[0021]一部の態様では、細胞集団は約100rad~約50,000rad、約100rad~約25,000rad、約100rad~約10,000rad、約250rad~約25,000rad、約500rad~約25,000rad、約1,000rad~約25,000rad、約2,500rad~約25,000rad、約5,000rad~約25,000rad、または約10,000rad~約15,000radの照射に曝露される。一部の例では、細胞集団は約10,000radの照射に曝露される。一部の例では、細胞集団は約1分~約55分、約1分~約50分、約1分~約45分、約1分~約40分、約1分~約35分、約1分~約30分、約1分~約25分、約1分~約20分、約1分~約10分、約1分~約5分、約10分~約55分、約15分~約55分、約20分~約55分、約25分~約55分、約30分~約55分、約20分~約40分、または約25分~約35分、照射に曝露される。一部の例では、細胞集団は約30分、照射に曝露される。一部の例では、照射はイオン化照射を含む。一部の例では、イオン化照射はガンマ線、X線、紫外線放射、アルファ線、ベータ線、または中性子線を含む。一部の例では、照射は、照射に供されていない対応する細胞クラスターと比較して増殖が低減した細胞集団をもたらす。一部の例では、細胞集団は約50μm~約500μm、約50μm~約300μm、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、約600μm~約150μm、約700μm~約150μm、約80μm~約150μm、または約60μm~約100μmの直径を有する第2の細胞クラスターを含む。一部の例では、本方法は(a)第1の細胞クラスターから複数の細胞を分離するステップ、および(b)ステップ(a)からの複数の細胞を再凝集培地中で培養して複数の細胞の少なくとも一部に第2の細胞クラスターを形成させるステップをさらに含む。一部の例では、分離するステップは複数の細胞をフローサイトメトリーに供するステップを含まない。一部の例では、第1の細胞クラスターは、第3の細胞クラスターを分離し、第3の細胞クラスターから分離した細胞を培養して第1の細胞クラスターを形成させることによって得られる。一部の例では、細胞クラスターは照射の前に凍結保存され、本方法は凍結保存された細胞クラスターを照射の前に解凍するステップをさらに含む。一部の例では、細胞クラスターは照射に供されている間に凍結保存される。一部の例では、本方法は凍結保存された細胞クラスターを照射の後に解凍し、内分泌細胞の少なくともいくつかを分化させるステップをさらに含む。一部の例では、本方法は膵前駆細胞またはその前駆体をin vitroで分化させることによって内分泌細胞を含む細胞集団を得るステップをさらに含む。一部の例では、本方法は幹細胞をin vitroで分化し、それにより内分泌細胞を含む細胞集団を産生させるステップをさらに含む。一部の例では、本方法は内分泌細胞の少なくともいくつかをin vitroで膵β細胞に成熟させ、それにより を含む細胞集団を産生させるステップをさらに含む。一部の例では、本方法は膵β細胞の埋め込みを必要とする対象に膵β細胞を埋め込むステップをさらに含む。一部の例では、埋め込まれた膵β
細胞は対象において少なくとも約50日、60日、70日、80日、90日、またはそれより長く、血中グルコースレベルを制御するように構成される。
【0021】
[0022]一部の態様では、本明細書に記載した任意の照射方法によって産生された内分泌細胞を含む細胞集団が本明細書で提供される。一部の態様では、本明細書に記載した任意の照射方法によって産生された膵β細胞を含む細胞集団が本明細書で提供される。
【0022】
[0023]一部の態様では、膵前駆細胞またはその前駆体の集団を少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、VMATまたはCdx2を発現する細胞の割合が減少した内分泌細胞の集団をもたらす、方法が本明細書で提供される。
【0023】
[0024]一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はDNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はEZH2阻害剤である。
【0024】
[0025]一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、およびEPZ6438のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の実施形態では、組成物中のDZNepの濃度は0.1μMより大きい。一部の実施形態では、DZNepの濃度は少なくとも0.5μMである。一部の実施形態では、DZNepの濃度は約1μMである。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170、MC1568、およびTMP195のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はHDAC阻害剤およびEZH2阻害剤を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はDZNepおよびKD5170を含む。
【0025】
[0026]一部の実施形態では、本明細書で提供する方法においてVMATを発現する細胞のうち少なくとも1個はINS-である。一部の実施形態では、膵前駆細胞の集団のうち少なくともいくつかの細胞はPH細胞の集団に分化する。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、内分泌細胞の集団のうちの増加した割合の細胞がNKX6.1-またはChromA+である。一部の実施形態では、増加した割合の細胞のうち少なくとも1個の細胞はNKX6.1-かつChromA+である。一部の実施形態では、膵前駆細胞の集団のうち少なくともいくつかの細胞がβ細胞の集団に分化させる。一部の実施形態では、β細胞は幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞である。一部の実施形態では、β細胞はC-PEPおよびNKX6-1を発現する。一部の実施形態では、β細胞はグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。
【0026】
[0027]一部の実施形態では、本明細書に記載した方法の組成物は、ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、またはスタウロスポリンのうち少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、接触させるステップは少なくとも3日間である。一部の実施形態では、接触させるステップは少な
くとも5日間である。一部の実施形態では、接触させるステップは約7日間である。
【0027】
[0028]一部の実施形態では、膵前駆細胞の集団のうち少なくとも1個の膵前駆細胞はPDX1およびNKX6-1のうち少なくとも1つを発現する。一部の実施形態では、内分泌細胞の集団のうち少なくとも1個の内分泌細胞はCHGAを発現する。
【0028】
[0029]本明細書に記載した方法のいずれかによって生成した内分泌細胞が本明細書で提供される。
[0030]膵前駆細胞、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、および任意選択で内分泌細胞を含む組成物が本明細書で提供される。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170、MC1568、またはTMP195のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の実施形態では、組成物中のKD5170の濃度は少なくとも0.1μMである。一部の実施形態では、KD5170の濃度は少なくとも0.5μMである。一部の実施形態では、KD5170の濃度は約1μMである。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はEZH2阻害剤である。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の実施形態では、DZNepの濃度は少なくとも0.1μMである。一部の実施形態では、DZNepの濃度は少なくとも0.5μMである。一部の実施形態では、DZNepの濃度は約1μMである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170であり、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の実施形態では、組成物はin vitro組成物である。一部の実施形態では、組成物はベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、またはスタウロスポリンのうち少なくとも1つをさらに含む。
【0029】
[0031]膵前駆細胞またはその前駆体をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤およびヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップを含み、接触させるステップが膵前駆細胞の分化を誘起する、方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、膵前駆細胞はβ細胞に分化される。一部の実施形態では、β細胞は幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞である。一部の実施形態では、β細胞はC-PEPおよびNKX6-1を発現する。一部の実施形態では、β細胞はグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170、MC1568、またはTMP195のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はEZH2阻害剤である。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170であり、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の実施形態では、本方法はin vitroで実施される。
【0030】
[0032]膵前駆細胞またはその前駆体を、細胞の分化をもたらすために十分な量のKD5170と接触させるステップを含む方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、本方法は膵前駆細胞をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNe
p、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の実施形態では、膵前駆細胞は内分泌細胞に分化する。一部の実施形態では、膵前駆細胞はβ細胞に分化する。一部の実施形態では、β細胞は幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞である。一部の実施形態では、β細胞はC-PEPおよびNKX6-1を発現する。一部の実施形態では、β細胞はグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。
【0031】
[0033](a)複数の幹細胞をin vitroで分化して膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団を得るステップ、(b)細胞集団をin vitroでヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させて少なくとも1個の内分泌細胞を産生させるステップ、および(c)内分泌細胞をin vitroで成熟させて少なくとも1個のSC-β細胞を得るステップを含む方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、幹細胞はヒト多能性幹細胞である。一部の実施形態では、本方法は細胞集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、またはスタウロスポリンのうち少なくとも1つと接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、SC-β細胞はC-PEPおよびNKX6-1を発現する。一部の実施形態では、SC-β細胞はグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。一部の実施形態では、本方法は細胞集団をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170である。
【0032】
[0034]膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団を、内分泌細胞を産生するために十分な量のヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤とin vitroで接触させるステップ、および内分泌細胞をin vitroで成熟させて、グルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する少なくとも1つのSC-β細胞を得るステップを含む方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、本方法は複数の幹細胞をin vitroで分化させて膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団を得るステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は細胞集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、またはスタウロスポリンのうち少なくとも1つと接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は細胞集団をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。
【0033】
[0035](i)標的細胞を刺激性化合物と接触させるステップであって、接触させるステップが標的細胞の選択マーカーを誘起して標的細胞の細胞表面に局在化させるステップ、および(ii)細胞表面の選択マーカーの局在化に基づいて標的細胞を選択するステップを含む、細胞の集団から標的細胞を選択するための方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、選択マーカーはPSA-NCAMを含む。一部の実施形態では、標的細胞を選択するステップは細胞ソーティングによる。一部の実施形態では、選択するステップは、選択マーカーが標的細胞の表面に局在化しているときに標的細胞の選択マーカーを抗原結合ポリペプチドと接触させるステップを含む。一部の実施形態では、抗原結合ポリペプチドは抗体を含む。一部の実施形態では、抗原結合ポリペプチドはPSA-NCAMに結合する。一部の実施形態では、本方法は、細胞の集団を、細胞の集団のうち少なくとも
1個の細胞の細胞表面から選択マーカーを除去する化合物と処理するステップをさらに含む。一部の実施形態では、細胞の集団は標的細胞を刺激性化合物と接触させるステップの前に上記化合物と処理される。一部の実施形態では、化合物は選択マーカーを少なくとも1個の細胞の細胞表面から開裂させる。一部の実施形態では、化合物は酵素である。一部の実施形態では、化合物はエンドシアリダーゼである。一部の実施形態では、エンドシアリダーゼはエンドニューラミニダーゼ(Endo-N)である。一部の実施形態では、標的細胞は内分泌細胞である。一部の実施形態では、刺激性化合物はアルギニンまたはグルコースのうち少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、内分泌細胞はβ細胞である。一部の実施形態では、β細胞はSC-β細胞である。一部の実施形態では、刺激性化合物はイソプロテレノールを含む。一部の実施形態では、内分泌細胞はEC細胞である。一部の実施形態では、細胞の集団のうち1個または複数の細胞は刺激性化合物と接触したときに選択マーカーを細胞表面に局在化することができない。一部の実施形態では、刺激性化合物はグルコースまたはアルギニンのうち少なくとも1つであり、1個または複数の細胞はEC細胞である。一部の実施形態では、刺激性化合物はイソプロテレノールであり、1個または複数の細胞はβ細胞である。一部の実施形態では、標的細胞を選択するステップは細胞の集団のうち1個または複数の細胞から標的細胞を分離する。
【0034】
[0036]膵前駆細胞またはその前駆体の集団を少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物と接触していない膵前駆細胞の対応する集団と比較して増加した割合の膵島細胞をもたらす、方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、膵島細胞は少なくとも1個のβ細胞を含む。一部の実施形態では、β細胞はSC-β細胞を含む。一部の実施形態では、SC-β細胞はグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。一部の実施形態では、膵島細胞は少なくとも1個のアルファ細胞を含む。一部の実施形態では、膵島細胞はデルタ細胞を含む。一部の実施形態では、膵島細胞はポリホルモナル(PH)細胞を含む。一部の実施形態では、本方法は複数の幹細胞をin vitroで分化して膵前駆細胞またはその前駆体の集団を得るステップをさらに含む。一部の実施形態では、幹細胞はヒト多能性幹細胞である。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はDNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はEZH2阻害剤である。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一部の実施形態では、組成物中のDZNepの濃度は0.1μMより大きい。一部の実施形態では、DZNepの濃度は少なくとも0.5μMである。一部の実施形態では、DZNepの濃度は約1μMである。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170、MC1568、またはTMP195のうち少なくとも1つである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170である。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はHDAC阻害剤およびEZH2阻害剤を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物はDZNepおよびKD5170を含む。
【0035】
[0037]本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に示されている。本開示の特徴および利点についてのより十分な理解は、本開示の原理が利用される例示的実施形態
を示す以下の詳細な説明、および以下の添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】[0038]3-デアザネプラノシンA塩酸塩(DZNep)、GSK126、EPZ6438の化学構造を示す。
【
図2】[0039]KD5170およびMC1568の化学構造を示す。
【
図3】[0040]メチルトランスフェラーゼ阻害剤の化学構造を示す。
【
図4】[0041]DZNep類似体の化学構造を示す。
【
図5】[0042]本明細書に記載されている分化ステージの概要である。
【
図6】[0043]本明細書に記載されているステージ5のヒストンメチル化および脱アセチル化の阻害を含む、hPSCからINS+細胞への分化誘導の概略図である。DE:胚体内胚葉;PGT;原腸管;PPT1;早期膵前駆細胞;PPT2;PDX1+/NKX6.1+膵前駆細胞;EN:NKX6.1/Cペプチド+細胞;SC-β:幹細胞由来ベータ細胞。
【
図7】[0044]ステージ5の細胞が、NGN3を発現して、幹細胞(SC)の膵島細胞への分化を開始することを示す。
【
図8】[0045]ステージ5においてEZH2またはHDACを阻害することによって、内分泌細胞およびSC-β細胞が増加することを示す。
【
図9】[0046]ステージ5においてEZH2およびHDACを併用阻害することによって、内分泌細胞が有意に増加することを示す。
【
図10】[0047]ステージ5においてEZH2およびHDACを併用阻害することによって、内分泌細胞が有意に増加することを示す。
【
図11】[0048]ステージ5においてEZH2およびHDACを併用阻害することによって、SC β細胞が有意に増加することを示す。
【
図12】[0049]ステージ5(n=2)における内分泌細胞の増加を示す。
【
図13】[0050]EZH2およびHDACを併用阻害することによって、ステージ5におけるニューロゲニン3+前駆細胞が増加することを示す。
【
図14】[0051]DZNepが他のEZH2阻害剤より優れていることを示す。
【
図15】[0052]KD5170が他のHDAC阻害剤より優れていることを示す。
【
図16】[0053]ステージ5においてEZH2およびHDACを併用阻害することによって、NKX6-1+前駆細胞が増加することを示す。
【
図17】[0054]ステージ5においてEZH2およびHDACを試験するための実験概要である。
【
図18】[0055]候補スクリーニング設定の概略図である。
【
図19】[0056](VMAT1+ INS-)EC集団における特異的減少を示す。
【
図20】[0057](NKX6.1- ChromA+)PH細胞が同時に増加することを示す。PH:ポリホルモン細胞。
【
図21】[0058](NKX6.1+ INS+)SC-β集団のパーセンテージが影響を受けていないことを示す。
【
図22】[0059]細胞表面マーカー発見スクリーニングの様々なプレートを示す。
【
図23】[0060]ステージ5のMACSマーカーのスクリーニングを示す。
【
図24】[0061]SC-ベータ細胞の標識化およびMACSマーカーのスクリーニングの概略図を示す。
【
図25】[0062]PSA-NCAMのマイクロビーズに基づく選別により、オンターゲット細胞が濃縮され、SOX9+細胞が低減することを示す。
【
図26】[0063]PSA-NCAM選別後に、EC細胞(VMAT1+)が残存することを示す。
【
図27】[0064]エンド-N酵素処理の際に、PSA-NCAM発現が有意に減少することを示す。エンド-Nは、NCAMに関連するシアル酸残基の最小長7~9残基の特徴を有する、α-2,8-結合を含むシアル酸の線状ポリマーを迅速かつ特異的に分解するエンドシアリダーゼである。生理的条件でのNCAMにおけるPSAの切断。
【
図28】[0065]PSA-NCAMのマイクロビーズ選別を使用してEC細胞を取り除く概略図である。
【
図29】[0066]EC細胞が、分化プロセスにおいて早期に特異化した腸前駆細胞から生じ得ることを示す。
【
図30】[0067]ステージ0完了時にOCT4のパーセンテージが低いと、後のステージではCDX2のパーセンテージがより高くなることを示す。高いOct4%は、安定した分化に必要とされる。Sox17誘導におけるばらつきは、高いOct4%と同程度のままである。
【
図31】[0068]EC細胞分化の阻害剤を特定するための化合物スクリーニングに基づく手法の概略図である。
【
図32】[0069]ステージ5の細胞上での化合物スクリーニングの概略図である。
【
図33】[0070]増殖細胞の照射線量に依存する低減を示す。
【
図34】[0071]高線量のガンマ線照射がSC-膵島の組成および機能に有意な影響を及ぼさなかったことを示す。
【
図35】[0072]凍結保存したSC-膵島が照射の60日後にBGを制御する能力を失ったことを示す。
【
図36】[0073]対照試料と比較した、照射した試料のベータ細胞数を示す。
【
図37】[0074]照射した移植mRA膵島細胞によって維持される血糖コントロールを示す。
【
図38】[0075]照射したSC-膵島を有する全ての動物における血糖コントロールを示す。
【
図39】[0076]ヒト多能性幹細胞を本開示による幹細胞由来膵β細胞に分化させるための2つの例示的プロトコール(v11およびv12)の図を示す。
【
図40】[0077]v12プロトコールによって、v11プロトコールと比較して、ステージ5で高い割合のISL1およびNKX6.1を発現する細胞(ISL1陽性、NKX6.1陽性)ならびに低い割合のISL陰性、NKX6.1陰性細胞、ならびにステージ4で低い割合のCDX2陽性細胞が産生されたことを示す。
【
図41】[0078]v12プロトコールによって産生された細胞クラスターが、v11プロトコールと比較して、凍結保存後により高い回収率を有したことを示す。
【
図42】[0079]v11プロトコールとv12プロトコールが同等の割合のSC-β細胞を産生したことを示す。
【
図43】[0080]v11プロトコールとv12プロトコールが同等のGSIS応答およびインスリン含量を有する細胞クラスターを産生したことを示す。
【
図44】[0081]それぞれ、低グルコース(LG)、高グルコース(HG)、および塩化カリウム(KCl)チャレンジに応答して、バイオリアクター中で、本発明において提供される方法に従って産生した例示的細胞集団のインスリン放出性能、ならびにこの細胞集団のインスリン含量をまとめる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0082]以下の記述および実施例によって、本開示の実施形態を詳細に説明する。本開示は本明細書に記載した特定の実施形態に限定されず、したがって変動し得ることを理解されたい。当業者であれば、本開示には多数の変形および改変が存在し、これらは本開示の範囲内に包含されることが認識される。
【0038】
[0083]全ての用語は当業者によって理解されるように理解されることを意図している。他に定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術における当業者によって共通に理解されると同じ意味を有する。
【0039】
[0084]本明細書で用いる見出しは整理の目的のみのためであって、記載した主題を限定するものと解釈すべきではない。
[0085]本開示の種々の特徴を単一の実施形態に関連して記述することができるが、特徴を個別にまたは任意の適切な組合せで提供することもできる。逆に、明確にするために本開示を個別の実施形態に関連して本明細書に記載することができるが、本開示を単一の実施形態で実行することもできる。
【0040】
[0086]以下の定義は当技術における定義を補うものであって本出願を指向しており、関連するまたは関連しないいかなる例、例えば広く共有されているいかなる特許または特許出願にも帰属されない。本明細書に記載した方法および材料と同様のまたは等価のいかなる方法および材料も本開示を試験するための実施において用いることができるが、本明細書には好ましい材料および方法を記載している。したがって、本明細書で用いる用語は特定の実施形態を記述する目的のためのみであって、限定することを意図していない。
定義
[0087]本出願において単数形の使用は、特に他の記述がなければ、複数形を含む。本明細書で用いる場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって他が明確に記述されない限り、複数の指示物を含むことに留意しなければならない。
【0041】
[0088]本出願において「または」の使用は、他の記述がなければ、「および/または」を意味する。本明細書で用いる用語「および/または」および「それらの任意の組合せ」ならびにそれらの文法的等価物は、相互交換可能に用いられ得る。これらの用語は、任意の組合せが具体的に意図されることを伝達することができる。説明目的のみのために、以下の語句、「A、B、および/またはC」または「A、B、C、またはそれらの任意の組合せ」は、「個別にA、個別にB、個別にC、AおよびB、BおよびC、AおよびC、ならびにA、B、およびC」を意味し得る。用語「または」は、文脈によって特に離接的な使用が意味されない限り、接続的または離接的に用いられ得る。
【0042】
[0089]さらに、用語「含む(including)」ならびに「含む(include、includes)」および「含まれる(included)」等の他の形態の使用は、限定的でない。
[0090]明細書中における「一部の実施形態」、「一実施形態(an embodiment、one embodiment)」、または「他の実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記述された特
定の特徴、構造、または特性が本開示の少なくとも一部の実施形態に含まれるが、必ずしも全ての実施形態には含まれないことを意味する。
【0043】
[0091]本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、単語「含む(comprising)」(ならびに「comprise」および「comprises」等のcomprisingの任意の形)、「有する(having)」(ならびに「have」および「has」等のhavingの任意の形)、「含む(including)」(
ならびに「includes」および「include」等のincludingの任意の形)、または「含む(containing)」(ならびに「contains」および「contain」等のcontainingの任意の形)は包
括的またはオープンエンドであり、言及されていない追加的な要素または方法ステップを排除しない。本明細書で論じる任意の実施形態は本開示の任意の方法または組成物に関して実行することができ、逆もそうであることが意図されている。さらに、本開示の組成物は本開示の方法を達成するために用いることができる。
【0044】
[0092]本明細書で用いる参照の数値およびその文法的等価物に関連する用語「約」は、その数値それ自体およびその数値のプラスマイナス10%の値の範囲を含み得る。
[0093]用語「約」または「ほぼ」は、当業者によって決定される特定の値についての許容される誤差範囲内を意味し、これは部分的にその値がどのようにして測定されまたは決定されたか、例えば測定システムの限界によることになる。例えば、「約」は当技術における慣例によって標準偏差の1倍以内または1倍を超えることを意味し得る。あるいは、
「約」は所与の値の20%まで、10%まで、5%まで、または1%までの範囲を意味し得る。別の例では、「約10」の量は、10および9から11までの任意の量を含む。さらに別の例では、参照数値に関連する用語「約」は、その値のプラスマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の範囲をも含み得る。あるいは、特に生物学的なシステムまたはプロセスに関しては、用語「約」は、ある値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。出願および特許請求の範囲において特定の値が記載されている場合には、他に記述がなければ、特定の値についての許容される誤差範囲内を意味する用語「約」を前提とすべきである。
【0045】
[0094]本明細書で用いる用語「糖尿病」およびその文法的等価物は、長期間にわたる高い血糖レベルによって特徴付けられる疾患を意味し得る。例えば、本明細書で用いる用語「糖尿病」およびその文法的等価物は、それだけに限らないが、1型糖尿病、2型糖尿病、嚢胞性線維症関連糖尿病、外科的糖尿病、妊娠性糖尿病、およびミトコンドリア糖尿病を含む全てまたは任意の型の糖尿病を意味し得る。一部の例では、糖尿病は遺伝性糖尿病の1形態であり得る。
【0046】
[0095]用語「内分泌細胞」は、特に特定しない限り、「膵島」、「膵島細胞」、「膵島同等物」、「膵島様細胞」、「膵臓島」、およびその文法的等価物等の、生体の膵臓に存在するホルモン生成細胞を意味し得る。一実施形態では、内分泌細胞は膵前駆細胞または前駆体から分化することができる。膵島細胞は、それだけに限らないが、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞、および/または膵ε細胞を含む様々な型の細胞を含み得る。膵島細胞は細胞の群、細胞クラスター、その他をも意味し得る。
【0047】
[0096]用語「前駆細胞」および「前駆体」細胞は本明細書において相互交換可能に用いられ、分化によって生じることができる細胞と比較してより原始的な(例えば発生経路または発達において完全に分化した細胞よりも早いステップにある)細胞表現型を有する細胞を意味する。前駆細胞はまた、顕著なまたは極めて高い増殖可能性を有し得ることが多い。前駆細胞は発生経路および細胞が発生し分化する環境に応じて、多くの異なった分化細胞型または単一の分化細胞型を生じることができる。
【0048】
[0097]インスリン陽性内分泌細胞に関連する用語としての「その前駆体」は、前駆細胞をインスリン陽性内分泌細胞に分化するために適した条件下で培養したときにインスリン陽性内分泌細胞に分化することができる、例えば多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、膵前駆細胞、または内分泌前駆細胞を含む任意の細胞を意味し得る。
【0049】
[0098]本明細書で用いる用語「外分泌細胞」は、外分泌腺、即ち管を通してその分泌物を放出する腺の細胞を意味し得る。特定の実施形態では、外分泌細胞は膵外分泌細胞を意味し得る。これは小腸に分泌される酵素を生成することができる膵細胞である。これらの酵素は、食物が胃腸管を通過する際にこれを消化することを助けることができる。膵外分泌細胞はランゲルハンス島としても公知であり、これは2つのホルモン、即ちインスリンおよびグルカゴンを分泌することができる。膵外分泌細胞はいくつかの細胞型、即ちα-2細胞(これはホルモングルカゴンを生成することができる)、またはβ細胞(これはホルモンインスリンを製造することができる)およびα-1細胞(これは制御因子ソマトスタチンを生成することができる)のうち1つであり得る。非インスリン生成外分泌細胞は、本明細書で本用語を用いる場合、α-2細胞またはα-1細胞を意味し得る。用語「膵外分泌細胞」は「膵内分泌細胞」を包含し、これは血流中に分泌されるホルモン(例えばインスリン(β細胞から生成される)、グルカゴン(α-2細胞によって生成される)、ソマトスタチン(デルタ細胞によって生成される)、および膵ポリペプチド(F細胞によって生成される)を生成する膵細胞を意味し得る。
【0050】
[0099]用語「幹細胞から誘導されたβ細胞」、「SC-β細胞」、「機能性β細胞」、「機能性膵β細胞」、「成熟SC-β細胞」、およびそれらの文法的等価物は、膵β細胞を示す少なくとも1つのマーカー(例えばPDX-1またはNKX6.1)を呈し、インスリンを分泌し、および内分泌成熟β細胞に特徴的なグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)応答を呈する細胞(例えば非天然膵β細胞)を意味し得る。一部の実施形態では、本明細書で用いる用語「SC-β細胞」および「非天然β細胞」は相互交換可能である。一部の実施形態では、「SC-β細胞」は成熟した膵細胞を含む。SC-β細胞は幹細胞から(例えば直接)誘導される必要はないことを理解されたい。それは、本開示の方法が、出発点として任意の細胞を用いて任意のインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体からSC-β細胞を誘導することができるからである(本発明はこの様式に限定することを意図していないので、例えば胚幹細胞、人工多能性幹細胞、前駆細胞、部分的に再プログラミングされた体細胞(例えば人工多能性幹細胞とそれが誘導されたもとの体細胞との間の中間状態に部分的に再プログラミングされた体細胞)、万能性細胞、全能性細胞、上記の任意の細胞の分化転換したバージョン、その他を用いることができる)。一部の実施形態では、SC-β細胞は多重のグルコースチャレンジ(例えば少なくとも1回、少なくとも2回、もしくは少なくとも3回またはそれ以上の一連のグルコースチャレンジ)に対する応答を呈する。一部の実施形態では、応答は多重のグルコースチャレンジに対する内因性膵島(例えばヒト膵島)の応答に類似している。一部の実施形態では、SC-β細胞の形態は内因性β細胞の形態に類似している。一部の実施形態では、SC-β細胞は内因性β細胞のGSIS応答に類似したin vitroのGSIS応答を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は内因性β細胞のGSIS応答に類似したin vivoのGSIS応答を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は内因性β細胞のGSIS応答に類似したin vitroおよびin vivoの両方のGSIS応答を呈する。SC-β細胞のGSIS応答は、SC-β細胞を宿主(例えばヒトまたは動物)に移植した後、2週以内に観察することができる。一部の実施形態では、SC-β細胞はインスリンを分泌顆粒に詰め込む。一部の実施形態では、SC-β細胞はカプセル化された結晶インスリン顆粒を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は1を超える刺激インデックスを呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は1.1を超える刺激インデックスを呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は2を超える刺激インデックスを呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞はサイトカインに応答してサイトカイン誘起アポトーシスを呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞からのインスリンの分泌は公知の抗糖尿病薬(例えば分泌促進物質)に応答して増強される。一部の実施形態では、SC-β細胞はモノホルモナルである。一部の実施形態では、SC-β細胞は他のホルモン、例えばグルカゴン、ソマトスタチン、または膵ポリペプチドを異常に共発現しない。一部の実施形態では、SC-β細胞は低い複製速度を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞はグルコースに応答して細胞内Ca2+を増加させる。
【0051】
[0100]本明細書で用いる場合、用語「インスリン生成細胞」およびその文法的等価物は、膵前駆細胞またはその前駆体から分化し、インスリンを分泌する細胞を意味する。インスリン生成細胞は、その用語が本明細書に記載されているように、膵β細胞、ならびに構造的または誘導的な様式でインスリンを合成(例えばインスリン遺伝子を転写し、プロインスリンmRNAを翻訳し、およびプロインスリンmRNAを修飾してインスリンタンパク質に)し、発現(例えばインスリン遺伝子が運搬する表現型の形質を実現)し、または分泌(インスリンを細胞外スペースに放出)する膵β様細胞(例えばインスリン陽性内分泌細胞)を含み得る。例えばインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体を本開示の方法に従ってSC-β細胞に分化することによって生成されたインスリン生成細胞の集団は、膵β細胞またはβ様細胞(例えば内因性β細胞の少なくとも1つもしくは少なくとも2つの特徴を有し、内因性成熟β細胞に類似したグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)応答を呈する細胞)であってよい。例えば本明細書に開示した方法によって生成されたインスリン生成細胞の集団は成熟した膵β細胞またはSC-β細胞を含んでよく、非インス
リン生成細胞(例えばインスリンを生成せずまたは分泌しないこと以外は細胞様表現型を有する細胞)を含んでもよい。
【0052】
[0101]用語「インスリン陽性β様細胞」、「インスリン陽性内分泌細胞」、およびそれらの文法的等価物は、膵β細胞を示す少なくとも1つのマーカーを呈し、インスリンも発現するが、内因性β細胞に特徴的なグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)応答を欠く細胞(例えば膵内分泌細胞)を意味し得る。
【0053】
[0102]用語「β細胞マーカー」は、限定なく、特異的に膵β細胞中に発現しまたは存在するタンパク質、ペプチド、核酸、タンパク質および核酸の多型、スプライス変異体、タンパク質または核酸の断片、要素、およびその他の分析物質を意味する。例示的なβ細胞マーカーには、それだけに限らないが、膵および十二指腸のホメオボックス1(Pdx1)ポリペプチド、インスリン、c-ペプチド、アミリン、E-カドヘリン、Hnf3β、PCI/3、B2、Nkx2.2、GLUT2、PC2、ZnT-8、ISL1、Pax6、Pax4、NeuroD、1 Inf1b、Hnf-6、Hnf-3ベータ、およびMafA、ならびにZhangら、Diabetes. 50(10):2231-6 (2001)によって記載されたもの
が含まれる。一部の実施形態では、β細胞マーカーは核3-細胞マーカーである。一部の実施形態では、β細胞マーカーはPdx1またはPH3である。
【0054】
[0103]用語「膵内分泌マーカー」は、限定なく、特異的に膵内分泌細胞中に発現しまたは存在するタンパク質、ペプチド、核酸、タンパク質および核酸の多型、スプライス変異体、タンパク質または核酸の断片、要素、およびその他の分析物質を意味し得る。例示的な膵内分泌細胞マーカーには、それだけに限らないが、Ngn-3、NeuroD、およびIslet-1が含まれる。
【0055】
[0104]用語「膵前駆細胞」、「膵内分泌前駆細胞」、「膵前駆体」、「膵内分泌前駆体」、およびそれらの文法的等価物は本明細書で相互交換可能に用いられ、膵内分泌細胞、膵外分泌細胞、または膵導管細胞を形成することができる膵ホルモン発現細胞になることができる幹細胞を意味し得る。これらの細胞は少なくとも1つの型の膵細胞、例えばインスリンを生成するβ細胞、グルカゴンを生成するα細胞、ソマトスタチンを生成するδ細胞(またはD細胞)、および/または膵ポリペプチドを生成するF細胞に向けた分化に関与している。そのような細胞は以下のマーカー、NGN3、NKX2.2、NeuroD、ISL-1、Pax4、Pax6、またはARXのうち少なくとも1つを発現することができる。
【0056】
[0105]本明細書で用いる用語「Pdx1陽性膵前駆細胞」は、膵β細胞等のSC-β細胞に分化する能力を有する膵内胚葉(PE)細胞である細胞を意味し得る。Pdx1陽性膵前駆細胞はマーカーPdx1を発現する。その他のマーカーには、それだけに限らないが、Cdcp1、またはPtf1a、またはHNF6もしくはNRx2.2が含まれる。Pdx1の発現は、抗Pdx1抗体を用いる免疫化学または定量的RT-PCR等の当業者には公知の任意の方法によって評価することができる。一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞はNKX6.1の発現を欠く。一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、それがNKX6.1の発現を欠くので、Pdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞と称することもできる。一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は「膵前腸内胚葉細胞」と名付けることもできる。
【0057】
[0106]本明細書で用いる用語「Pdx1陽性、NKX6-1陽性の膵前駆細胞」は、膵β細胞等のインスリン生成細胞に分化する能力を有する膵内胚葉(PE)細胞である細胞を意味し得る。Pdx1陽性、NKX6-1陽性の膵前駆細胞はマーカーPdx1およびNKX6-1を発現する。その他のマーカーには、それだけに限らないが、Cdcp1、
またはPtf1a、またはHNF6もしくはNRx2.2が含まれる。NKX6-1の発現は、抗NKX6-1抗体を用いる免疫化学または定量的RT-PCR等の当業者には公知の任意の方法によって評価することができる。本明細書で用いる場合、用語「NKX6.1」および「NKX6-1」は等価で相互交換可能である。一部の例では、Pdx1陽性、NKX6-1陽性の膵前駆細胞は「膵前腸前駆体細胞」と名付けることもできる。
【0058】
[0107]本明細書で用いる用語「Ngn3陽性内分泌前駆細胞」は、転写因子ニューロゲニン-3(Ngn3)を発現する膵内分泌細胞の前駆体を意味し得る。前駆細胞は多能性幹細胞よりも分化しており、僅かな種類の細胞にしか分化できない。特に、Ngn3陽性内分泌前駆細胞は5種類の膵内分泌細胞型(α、β、δ、ε、およびPP)に分化する能力を有している。Ngn3の発現は、抗Ngn3抗体を用いる免疫化学または定量的RT-PCR等の当業者には公知の任意の方法によって評価することができる。
【0059】
[0108]用語「NeuroD」および「NeuroD1」は相互交換可能に用いられ、膵内分泌前駆細胞において発現するタンパク質およびそれをコードする遺伝子を特定する。
[0109]用語「選択マーカー」は、発現された場合に、細胞毒性もしくは細胞増殖抑制性の薬剤に対する耐性(例えば抗生剤耐性)、原栄養性、またはそのタンパク質を発現する細胞を発現しない細胞から区別するための基礎として用いることができる特定のタンパク質の発現等の選択可能な表現型を細胞に付与する遺伝子、RNA、またはタンパク質を意味する。本明細書で用いる用語「選択マーカー」は、遺伝子または遺伝子の発現生成物、例えばコードされたタンパク質を意味し得る。一部の実施形態では、選択マーカーは、それを発現しない細胞または顕著に低いレベルでそれを発現する細胞と比較して、それを発現する細胞に増殖および/または生存の有利性を付与する。そのような増殖および/または生存の有利性は、典型的には細胞がある条件、即ち「選択的条件」下に維持されている場合に生じる。効果的な選択を確実にするため、細胞の集団は、そのマーカーを発現しない細胞が増殖せずおよび/または生存せず、それらがその集団から排除されまたはその数が集団のごく少ない部分にまで減少するような条件下および十分な時間で維持することができる。細胞の集団を選択的条件下に維持することによって増殖および/または生存の有利性を付与するマーカーを発現する細胞を選択して、そのマーカーを発現しない細胞を主としてまたは完全に排除するプロセスは、本明細書において「陽性選択」と称され、そのマーカーは「陽性選択に有用」と呼ばれる。陰性選択および陰性選択に有用なマーカーも、本明細書に記載した方法のある場合には目的である。そのようなマーカーの発現は、そのマーカーを発現しない細胞または顕著に低いレベルでそれを発現する細胞と比較して、そのマーカーを発現する細胞に増殖および/または生存の不利益を付与する(あるいは、別の方式で考慮すると、そのマーカーを発現しない細胞は、そのマーカーを発現する細胞と比較して、増殖および/または生存の有利性を有する)。したがって、そのマーカーを発現する細胞は、選択的条件で十分な時間維持されれば、細胞の集団から主としてまたは完全に排除され得る。
【0060】
[0110]用語「エピジェネティクス」は、DNA配列の変化を含まない遺伝子機能の遺伝性の変化を意味する。エピジェネティクスは遺伝子の活性および発現に影響する染色体の変化を意味することが最も多いが、ゲノムの修飾に由来しない任意の遺伝可能な表現型の変化を記述するために用いることもできる。細胞および生理学的な表現型の形質に対するそのような効果は外的または環境的な要因に起因することがあるか、または正常な発生プログラムの一部であることもある。エピジェネティクスはヌクレオチド配列の変化を含まないゲノムの機能的に関連する変化を意味することもある。そのような変化を生成する機構の例としてはDNAのメチル化およびヒストンの修飾があり、そのそれぞれは根底にあるDNA配列を改変せずに、遺伝子が発現される様式を改変する。遺伝子の発現はDNAのサイレンサー領域に結合している抑制タンパク質の作用によって制御され得る。これらのエピジェネティクスは細胞の寿命の間の細胞分割を通して持続することができ、これら
が生命体の根底にあるDNA配列の変化を含まないとしても、多世代にわたって持続することができる。真核細胞の生物学におけるエピジェネティクスの1つの例として、細胞分化のプロセスがある。形態形成の間に全能性幹細胞が種々の多能性細胞になり、次いでこれが完全に分化した細胞になることができる。
【0061】
[0111]用語「エピジェネティック修飾化合物」は、遺伝子にエピジェネティクスを起こさせる、即ちDNA配列を変化させずに遺伝子の発現を変化させる化合物を意味する。エピジェネティクスは、遺伝子がオンまたはオフされるかを決定することを助け、ある種の細胞、例えばベータ細胞におけるタンパク質の生成に影響することができる。DNAのメチル化およびヒストンの修飾等のエピジェネティック修飾はDNAの接近可能性およびクロマチンの構造を改変し、それにより遺伝子発現のパターンを規制する。これらのプロセスは成体生命体における独特の細胞系統の正常な発生および分化に重要である。これらは外因性の影響によって修飾することができ、したがって表現型または病態表現型の環境的改変に寄与し得るか、またはその結果であり得る。重要なことに、エピジェネティック修飾は多能性遺伝子の規制において重要な役割を有し、これは分化の間に不活性化される。非限定的なエピジェネティック修飾化合物の例には、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ブロモドメイン阻害剤、またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0062】
[0112]用語「分化した細胞」またはその文法的等価物は、その天然形においてその用語が本明細書において定義されるように多能性ではない任意の初代細胞を意味する。別の言い方では、用語「分化した細胞」は、細胞分化プロセスにおいて特殊性の低い細胞型(例えば人工多能性幹細胞等の幹細胞)の細胞から誘導された特殊性の高い細胞型の細胞を意味し得る。理論に限定されることは望まないが、正常な個体発生の過程における多能性幹細胞は、最初に膵細胞およびその他の内胚葉細胞型を形成することができる内胚葉細胞に分化することができる。内胚葉細胞のさらなる分化は膵経路に導かれ、細胞の約98%は外分泌性、導管性、またはマトリックスの細胞になり、約2%が内分泌細胞になる。早期の内分泌細胞は膵島前駆細胞であり、次いでこれがさらに、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、または膵ポリペプチドを分泌するインスリン生成細胞(例えば機能性内分泌細胞)に分化することができる。内胚葉細胞は内胚葉起源の他の細胞、例えば肺、肝臓、腸、胸腺等に分化することもできる。
【0063】
[0113]本明細書で用いる場合、用語「体細胞」は、生殖系列細胞とは反対に、生命体を形成する任意の細胞を意味し得る。哺乳動物では、生殖系列細胞(「配偶子」としても公知である)は、受精の間に融合して接合子と呼ばれる細胞を生成する精子および卵子であり、接合子から哺乳動物の胚の全体が発生する。体細胞がそれから作られる細胞である精子および卵子(生殖母細胞)および未分化幹細胞は別として、哺乳動物の体内の全ての他の細胞型は体細胞である。内部器官、皮膚、骨、血液、および結合組織は全て体細胞から作られている。一部の実施形態では、体細胞は「非胚性体細胞」であり、これは胚に存在せずまたは胚から得られず、そのような細胞のin vitro増殖に起因しない体細胞を意味する。一部の実施形態では、体細胞は「成体体細胞」であり、これは胚または胎児以外の生命体に存在しもしくはこれから得られ、またはそのような細胞のin vitro増殖に起因する細胞を意味する。他に指示しなければ、少なくとも1個のインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体をインスリン生成性でグルコース応答性の細胞に変換するための方法は、in vivoおよびin vitroの両方で実施することができる(少なくとも1個のインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体が対象の中に存在する場合にはin vivoが実施され、単離され培地中に維持された少なくとも1個のインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体を用いてin vitroが実施される)。
【0064】
[0114]本明細書で用いる場合、用語「成体細胞」は胚発生の後で体内の至るところに見出される細胞を意味し得る。
[0115]本明細書で用いる場合、用語「内胚葉細胞」は極めて早期の胚の中の3つの一次胚細胞層のうちの1つからのものである細胞を意味し得る(他の2つの胚細胞層は中胚葉および外胚葉である)。内胚葉は3つの層のうち最も内側にある。内胚葉細胞は分化して最初に胚性腸を生じ、次いで呼吸管および消化管(例えば腸)のライニング、肝臓、ならびに膵を生じる。
【0065】
[0116]本明細書で用いる用語「内胚葉起源の細胞」は、内胚葉細胞から発生しまたは分化した任意の細胞を意味し得る。例えば、内胚葉起源の細胞には肝臓、肺、膵、胸腺、腸、胃、および甲状腺の細胞が含まれる。理論に縛られることは望まないが、肝臓および膵の前駆細胞(膵前駆細胞とも称される)は胚前腸内の内胚葉細胞から発生する。これらが特定されてからすぐに、肝臓および膵の前駆細胞は全く異なった細胞機能および再生能力を急速に獲得する。これらの変化は、脊椎動物の間で高度に保存された誘起シグナルおよび遺伝子制御因子によって引き起こされる。臓器の発生および再生に対する興味は、肝不全およびI型糖尿病の治療処置における肝細胞および膵β細胞への強いニーズによって加速されてきた。多様なモデルの生命体およびヒトにおける研究によって、肝細胞および膵細胞の分化を引き起こし、多様な幹細胞および前駆細胞の型からの肝細胞およびβ細胞の分化をどのように促進するかについての指針を提供する進化的に保存された誘起シグナルおよび転写因子のネットワークが明らかになってきた。
【0066】
[0117]本明細書で用いる用語「胚体内胚葉」は、内胚葉細胞から分化し、SC-β細胞(例えば膵β細胞)に分化することができる細胞を意味し得る。胚体内胚葉細胞はマーカーSox17を発現する。胚体内胚葉細胞に特徴的なその他のマーカーには、それだけに限らないが、MIXL2、GATA4、HNF3B、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CXCR4、Cerberus、OTX2、グーセコイド、C-Kit、CD99、CMKOR1、およびCRIP1が含まれる。特に、本明細書の胚体内胚葉細胞はSox17ならびに一部の実施形態ではSox17およびHNF3Bを発現し、顕著なレベルのGATA4、SPARC、APF、またはDABは発現しない。胚体内胚葉細胞はマーカーPdx1については陽性ではない(例えばそれらはPdx1陰性である)。胚体内胚葉細胞は肝臓、肺、膵、胸腺、腸、胃、および甲状腺の細胞を含む細胞に分化する能力を有している。Sox17およびその他の胚体内胚葉のマーカーの発現は、例えば抗Sox17抗体を用いる免疫化学または定量的RT-PCR等の当業者には公知の任意の方法によって評価することができる。
【0067】
[0118]用語「膵内胚葉」は、膵β細胞を含む多重の膵臓系統に分化することができるが、非膵臓系統に分化する能力をもはや有しない内胚葉起源の細胞を意味し得る。
[0119]本明細書で用いる用語「原腸管細胞」または「腸管細胞」は、内胚葉細胞から分化し、SC-β細胞(例えば膵β細胞)に分化することができる細胞を意味し得る。原腸管細胞は以下のマーカー、HNP1-β、HNF3-β、またはHNF4-αのうち少なくとも1つを発現する。原腸管細胞は肺、肝臓、膵、胃、および腸の細胞を含む細胞に分化する能力を有している。HNF1-βおよびその他の原腸管のマーカーの発現は、例えば抗HNF1-β抗体を用いる免疫化学等の当業者には公知の任意の方法によって評価することができる。
【0068】
[0120]本明細書で用いる用語「幹細胞」は、増殖することができ、次に分化したまたは分化可能な娘細胞を生じることができる多数の母細胞を産生する能力を有するより多くの前駆細胞を生じる未分化の細胞を意味し得る。娘細胞それ自体は、増殖し、続いて1つまたは複数の成熟細胞型に分化する子孫を生成するように誘起される一方、親の発生可能性を有する1個または複数の細胞を保持することができる。用語「幹細胞」は、特定の状況
下ではより特殊化されまたは分化した表現型に分化する能力または可能性を有し、特定の状況下では実質的に分化せずに増殖する能力を保持している前駆細胞のサブセットを意味し得る。一実施形態では、幹細胞という用語は一般に、その子孫(descendants、progeny)が、胚の細胞および組織の漸進的多様化で起こるように、分化によって、例えば完全に個別の特徴を獲得することによって、しばしば異なる方向に、特殊化する、天然に存在する母細胞を意味する。細胞の分化は典型的には多くの細胞分割を通して起こる複雑なプロセスである。分化した細胞は万能性細胞由来であってよく、万能性細胞はそれ自体、万能性細胞由来、等々である。これらの万能性細胞のそれぞれは幹細胞であると考えられるが、それぞれが生じることができる細胞型の範囲はかなり変動し得る。いくつかの分化した細胞はより大きな発生の可能性を有する細胞を生じる能力をも有する。そのような能力は天然であってもよく、種々の因子を用いる処理によって人工的に誘起してもよい。多くの生物学的な例では、幹細胞は2つ以上の異なった細胞型を有する子孫を生成することができるので「万能性」でもあるが、これは「幹細胞性」であるために必要ではない。「自己更新」は幹細胞の定義の他の古典的な部分であり、これは本書で用いるように重要である。理論的には、自己更新は2つの主な機構のいずれかによって起こり得る。幹細胞は非対称的に分割され、1つの娘は幹細胞状態を保持し、他の娘はいくつかの異なった他の特定の機能および表現型を発現することができる。あるいは、集団中の幹細胞のいくつかは2つの幹細胞に対称的に分割することができ、それにより集団中のいくつかの幹細胞は全体として維持される一方、集団中の他の細胞は分化した子孫のみを生じる。形式的には、幹細胞として始まった細胞が分化した表現型に向かって進行するが、「逆行」し、幹細胞の表現型を逆発現することも可能である。これは当業者によって「脱分化」または「再プログラミング」または「逆分化」と称されることが多い。本明細書で用いる場合、用語「多能性幹細胞」には、胚幹細胞、人工多能性幹細胞、胎盤幹細胞等が含まれる。
【0069】
[0121]本明細書で用いる用語「多能性」は、種々の条件下で2種以上の分化した細胞型に分化し、好ましくは3種全ての胚細胞層に特徴的な細胞型に分化する能力を有する細胞を意味し得る。多能性細胞は、一次的には例えばヌードマウスの奇形腫形成アッセイを用いて2種以上の細胞型、好ましくは3種全ての胚葉層に分化する能力によって特徴付けられる。多能性は胚幹(ES)細胞マーカーの発現によっても証明されるが、多能性のための好ましい試験は3種の胚葉層のそれぞれの細胞へ分化する能力を実証することである。そのような細胞を単に培養するだけではそれ自体、これらの細胞を多能性にするわけではないことに留意されたい。再プログラミングされた多能性細胞(例えば本明細書でその用語を定義するようにiPS細胞)は、一般には培養中に限られた回数の分割のみの能力を有する初代親細胞と比較して、成長の可能性を失わずに延長された継代の能力を有することも特徴としている。
【0070】
[0122]本明細書で用いる場合、用語「iPS細胞」および「人工多能性幹細胞」は相互交換可能に用いられ、例えば1つまたは複数の遺伝子の強制的な発現を誘起することによって、非多能性細胞から、典型的には成体体細胞から人工的に誘導された(例えば誘起された、または完全な逆転による)多能性幹細胞を意味し得る。
【0071】
[0123]用語「表現型」は、実際の遺伝子型に関わらず、環境条件および因子の特定の組のもとに細胞または生命体を定義する1つまたはいくつかの生物的特徴の全てを意味し得る。
【0072】
[0124]用語「対象」、「患者」、または「個体」は本明細書で相互交換可能に用いられ、それから細胞が得られ、および/または本明細書に記載した細胞を用いる予防的処置を含む処置がそれに提供される動物、例えばヒトを意味し得る。ヒト対象等の特定の動物に特有な感染、病態、または疾患状態の処置については、対象という用語はその特定の動物を意味し得る。本明細書で相互交換可能に用いられる「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳
動物」には、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、および非ヒト霊長類等の哺乳動物が含まれる。用語「対象」には、それだけに限らないが哺乳類、爬虫類、両生類、および魚類を含む任意の脊椎動物も包含される。しかし有利には、対象はヒト等の哺乳動物、または例えばイヌ、ネコ、ウマ、その他の家畜、もしくはウシ、ヒツジ、ブタ、その他の生産用哺乳動物等のその他の哺乳動物である。「それを必要とする患者」または「それを必要とする対象」は、本明細書では糖尿病に限らず、例えば疾患または障害を有すると診断されたか、その疑いがある患者を意味する。
【0073】
[0125]本明細書で用いる「投与する」は、本明細書に記載した1つまたは複数の組成物を患者または対象に提供することを意味し得る。例として限定せずに、組成物の投与、例えば注射は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、または筋肉内(i.m.)注射によって実施することができる。1つまたは複数のそのような経路を採用することができる。非経口投与は、例えばボーラス注射または時間をかけた段階的潅流によるものでよい。あるいは、または同時に、投与は経口経路によるものでよい。さらに、投与は細胞のボーラスまたはペレットを手術で堆積してもよく、医用デバイスを位置決めしてもよい。一実施形態では、本開示の組成物は、増殖性障害を治療しまたは予防するために有効な量の本明細書に記載した核酸配列または本明細書に記載した少なくとも1つの核酸配列を含むベクターを発現する操作された細胞または宿主細胞を含み得る。薬学的組成物は、1つまたは複数の薬学的にまたは生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載した細胞集団を含んでよい。そのような組成物は、中性緩衝食塩液、リン酸緩衝食塩液等の緩衝液、グルコース、マンノース、スクロース、もしくはデキストラン、マンニトール等の炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、またはグリシン等のアミノ酸、抗酸化剤、EDTAもしくはグルタチオン等のキレート化剤、アジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、および保存剤を含んでもよい。
【0074】
[0126]用語「処理する(treat、treating)」、「処理」、およびそれらの文法的等価
物には、単離された細胞に適用する場合、細胞を任意の種類のプロセスまたは条件に供するか、または細胞に任意の種類の操作または手順を実施することが含まれる。対象に適用する場合、この用語は医学的または外科的な注意、介護、または管理を個体に提供することを意味する。個体は通常、病気または傷害を有するか、または集団の平均的な構成員と比較して病気になる危険が増大しており、そのような注意、介護、または管理を必要としている。
【0075】
[0127]本明細書で用いる場合、用語「処置する」および「処置」は、疾患の少なくとも1つの症状の低減または疾患の改善として、例えば有利なまたは所望の臨床的結果を対象が得るように、有効量の組成物を対象に投与することを意味し得る。本発明の目的のため、有利なまたは所望の臨床的結果には、それだけに限らないが、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の消失、疾患の状態の安定化(例えば悪化しないこと)、疾患の進行の遅延または遅くなること、疾患の状態の改善または軽減、および寛解(部分的であっても全面的であっても)が、検出されても検出されなくても、含まれる。処置することは、処置を受けなかった場合に予想される生存と比較して延長された生存を意味することもある。したがって、当業者であれば、処置が疾患の状態を改善することはあるが、疾患の完全な治癒ではないこともあることを認識している。本明細書で用いる場合、用語「処置」には予防が含まれる。あるいは、疾患の進行が減弱されまたは停止されれば、「処置」は効果的である。「処置」は、処置を受けなかった場合に予想される生存と比較して延長された生存を意味することもある。処置を必要とする者には、心臓の病態があると既に診断された者、ならびに遺伝的な感受性または体重、食事、健康等のその他の要因によって心臓の病態が進行する可能性がある者が含まれる。
【0076】
[0128]用語「治療有効量」、「治療量」、またはそれらの文法的等価物は、必要な用量および期間で、所望の治療結果を達成するための有効な量を意味し得る。治療有効量は、疾患の状態、個体の年齢、性別、および体重等の要因、ならびに1または複数の対象において所望の応答を引き起こす本明細書に記載した組成物の能力によって変動し得る。本開示の組成物の投与すべき正確な量は、年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度、および患者(対象)の病態における個別の相違を考慮して臨床医が決定することができる。
【0077】
[0129]あるいは、患者または対象に対する本明細書に記載した1つまたは複数の組成物の投与の薬理学的および/または生理学的な効果は「予防」であってよく、例えばその効果は疾患またはその症状を完全にまたは部分的に防止する。「予防有効量」は、必要な用量および期間で、所望の予防結果(例えば疾患の発症の防止)を達成するための有効な量を意味し得る。
【0078】
[0001]全体に開示したいくつかの数値は、例えば「Xは少なくともまたは少なくとも約100、または200[または任意の数]である」と称される。この数値にはその数それ自体および以下
i)Xは少なくとも100である、
ii)Xは少なくとも200である、
iii)Xは少なくとも約100である、および
iv)Xは少なくとも約200である
の全てが含まれる。
【0079】
[0002]全体に開示した数値によって、これら全ての異なった組合せが意図されている。他にその反対が具体的に指示されなければ、それが治療薬の投与についてであっても、日、月、年、重量、用量、その他についてであっても、開示した全ての数値はこのように解釈すべきである。
【0080】
[0003]全体に開示した範囲は、例えば「Xは1~2日目もしくは約1~2日目に、または2~3日目もしくは約2~3日目に[または任意の数値範囲に]投与される」と称されることがある。この範囲にはその数それ自体(例えば範囲の終点)および以下
i)Xは1日目と2日目の間に投与される、
ii)Xは2日目と3日目の間に投与される、
iii)Xは約1日目と2日目の間に投与される、
iv)Xは約2日目と3日目の間に投与される、
v)Xは1日目と約2日目の間に投与される、
vi)Xは2日目と約3日目の間に投与される、
vii)Xは約1日目と約2日目の間に投与される、および
viii)Xは約2日目と約3日目の間に投与される
の全てが含まれる。
【0081】
[0130]全体に開示した範囲によって、これら全ての異なった組合せが意図されている。他にその反対が具体的に指示されなければ、それが治療薬の投与についてであっても、日、月、年、重量、用量、その他についてであっても、開示した全ての範囲はこのように解釈すべきである。
I.要旨
[0131]態様では、本開示は膵前駆細胞を分化する組成物および方法を提供する。本明細書で提供する組成物および方法は、高純度の膵β細胞、高インスリン含量、および天然の膵β細胞または天然の膵島と類似し得る優れたグルコース依存性インスリン分泌応答を有する膵β細胞、細胞集団、または細胞クラスターを提案することができる。
【0082】
[0132]一部の態様では、膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、クロモグラニンA陽性(CHGA+)細胞の割合が増加しまたはC-ペプチド陽性かつNKX6.1陽性(C-PEP+、NKX6.1+)の細胞の割合が増加した内分泌細胞の集団をもたらす、方法が本明細書で提供される。
【0083】
[0133]一部の態様では、本開示は、膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、VMATまたはCdx2を発現する細胞の割合が減少した内分泌細胞の集団をもたらす、方法を提供する。
【0084】
[0134]一部の態様では、本開示は、細胞集団を含む組成物であって、細胞集団がフローサイトメトリーによって測定して、(a)少なくとも約20%の、C-ペプチドおよびNKX6.1を発現する細胞、(b)少なくとも約60%の、CHGAを発現する細胞、(c)多くとも約20%の、Cdx2を発現する細胞、または(d)多くとも約45%の、VMAT1を発現する細胞を含む、組成物を提供する。一部の例では、組成物はフローサイトメトリーによって測定して、(a)少なくとも約20%の、C-ペプチドおよびNKX6.1を発現する細胞、(b)少なくとも約60%の、CHGAを発現する細胞、および(c)多くとも約20%の、Cdx2を発現する細胞を含む。一部の例では、組成物はまた、フローサイトメトリーによって測定して、多くとも約45%の、VMAT1を発現する細胞を含む。一部の例では、組成物はエピジェネティック修飾化合物をさらに含む。
【0085】
[0135]一部の態様では、本開示はフローサイトメトリーによって測定して、少なくとも約30%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞ならびに多くとも約20%のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む細胞集団を含む組成物を提供する。請求項34の組成、細胞集団は少なくとも約35%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞を含む。一部の例では、細胞集団は少なくとも約40%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞を含む。一部の例では、細胞集団は多くとも約15%のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む。一部の例では、組成物はエピジェネティック修飾化合物をさらに含む。
【0086】
[0136]一部の態様では、本開示は、膵前駆細胞、およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤のうち少なくとも1つを含む組成物を提供する。一部の態様では、本開示は、膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させて内分泌細胞を含む細胞集団を産生させるステップ、および内分泌細胞を含む細胞集団を成熟させて、グルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する少なくとも1個の膵β細胞を得るステップを含む方法を提供する。一部の例では、成熟ステップは、内分泌細胞を含む細胞集団を対象にin vivoで埋め込んだ後に行われる。一部の例では、成熟ステップはin vitroで行われる。
【0087】
[0137]一部の態様では、本開示は(a)Pdx-1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団を骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤およびトランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触させ、それによりPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団を産生させるステップ、および(b)Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させて内分泌細胞を含む細胞集団を産生させるステップを含む方法を提供する。
【0088】
[0138]一部の例では、本明細書で提供される方法は、(a)集団中の多能性幹細胞をTGF-βスーパーファミリーからの成長因子およびWNTシグナル伝達経路活性化剤と接触させることによって多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップ、(b)胚体内胚葉細胞をFGFファミリーからの成長因子と接触させることによって胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかを原腸管細胞に分化させるステップ、(c)原腸管細胞をROCK阻害剤、FGFファミリーからの成長因子、BMPシグナル伝達経路阻害剤、PKC活性化剤、レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、SHH経路阻害剤、およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子と接触させることによって原腸管細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性膵前駆細胞に分化させるステップ、(d)Pdx1陽性膵前駆細胞をROCK阻害剤、TGFβスーパーファミリーからの成長因子、FGFファミリーからの成長因子、RAシグナル伝達経路活性化剤、およびSHH経路阻害剤と接触させることによってPdx1陽性膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップ、ならびに(e)Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をTGF-βシグナル伝達経路阻害剤、EGFファミリーからの成長因子、RAシグナル伝達経路活性化剤、SHH経路阻害剤、THシグナル伝達経路活性化剤、γ-セクレターゼ阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、ROCK阻害剤、BMPシグナル伝達経路阻害剤、およびエピジェネティック修飾化合物と接触させることによってPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞の少なくともいくつかを少なくとも1個のNKX6.1+かつC-ペプチド+の細胞を含む細胞集団に分化させるステップを含む。
【0089】
[0139]一部の態様では、本開示は細胞を照射して増殖を低減させる方法を提供する。一部の例では、本方法は内分泌細胞を含むin vitroの細胞集団を約100rad~約100,000radの線量で約1分~約60分の時間の照射に曝露するステップを含む。
【0090】
[0140]一部の例では、細胞の増殖を低減させる方法は幹細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、膵前駆細胞、または内分泌細胞を含む細胞集団を照射に曝露するステップであって、照射が照射に供されていない対応する細胞集団と比較して増殖能力が低減した細胞集団をもたらすステップを含む。
II.内分泌細胞を産生する方法
[0141]態様では、本開示は膵前駆細胞または前駆体から内分泌細胞を産生する組成物および方法に関する。幹細胞から内分泌細胞を産生して少なくとも1個のSC-β細胞を提供するある例示的な詳細なプロトコールは、それぞれ参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0240212号および第2015/0218522号に記載されている。
【0091】
[0142]一部の例では、内分泌細胞の第1の集団を産生するための方法は、膵前駆細胞またはその前駆体の集団を少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物を含む第1の組成物と接触させて内分泌細胞の第1の集団を産生させるステップであって、少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物を欠く第2の組成物を用いて産生された内分泌細胞の第2の集団と比較して、内分泌細胞の第1の集団の中の低減した割合の細胞がVMAT
+またはCdx2
+を発現するステップを含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾化合物はステージ5で添加され(
図5~
図6)、それにより内分泌細胞がその割合を以下:(1)VMAT1マーカー(
図19)またはCdx2によってマークされる内分泌の集団を低減させる、(2)アルファ細胞およびその他の非ベータ細胞である膵島細胞への運命に運命付けられる細胞の割合を増加させる(
図20)、および(3)組成物中のベータ細胞の割合を増加させる(
図8)、のように変化させることを誘起することができる。
【0092】
[0143]一部の実施形態では、内分泌細胞の第1の集団はVMAT+かつINS-である。一部の実施形態では、膵前駆細胞の集団はPH細胞の集団に分化する。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾化合物を欠く第2の組成物を用いて産生された内分泌細胞の第2の集団と比較して、内分泌細胞の第1の集団の中の増加した割合の細胞はNKX6.1-またはChromA+である。一部の実施形態では、増加した割合の細胞はNKX6.1-かつChromA+である。一部の実施形態では、膵前駆細胞の第1の集団はβ細胞の集団に分化する。一部の実施形態では、β細胞は幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞である。一部の実施形態では、β細胞はC-PEPおよびNKX6-1を発現する。一部の実施形態では、β細胞はグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。一部の実施形態では、本明細書に記載した方法はin vitroで実施される。
【0093】
[0144]一部の例では、第1の組成物および第2の組成物は、i)SHH経路阻害剤、ii)RAシグナル伝達経路活性化剤、iii)γ-セクレターゼ阻害剤、iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、v)プロテインキナーゼ阻害剤、vi)BMPシグナル伝達経路阻害剤、vii)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、viii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路アゴニスト、またはix)ROCK阻害剤のうち少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、第1の組成物および第2の組成物は、ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、スタウロスポリン、またはそれらの任意の組合せのうち少なくとも1つを含む。一部の例では、第1の組成物および第2の組成物は、いずれもベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンを含む。
【0094】
[0145]膵前駆細胞またはその前駆体をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップを含み、接触させるステップが膵前駆細胞を誘起して内分泌細胞に分化させる、内分泌細胞を産生する方法が本明細書で提供される。一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepを含む。一部の例では、本方法は膵前駆細胞またはその前駆体を、i)SHH経路阻害剤、ii)RAシグナル伝達経路活性化剤、iii)γ-セクレターゼ阻害剤、iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、v)プロテインキナーゼ阻害剤、vi)BMPシグナル伝達経路阻害剤、vii)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、viii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路アゴニスト、またはix)ROCK阻害剤のうち少なくとも1つと接触させるステップをさらに含む。
【0095】
[0146]膵前駆細胞またはその前駆体をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤およびヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップを含み、接触させるステップが膵前駆細胞を誘起して内分泌細胞に分化させる、内分泌細胞を産生する方法が本明細書で提供される。一部の例では、本方法は膵前駆細胞またはその前駆体を、i)SHH経路阻害剤、ii)RAシグナル伝達経路活性化剤、iii)γ-セクレターゼ阻害剤、iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、v)プロテインキナーゼ阻害剤、vi)BMPシグナル伝達経路阻害剤、vii)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、viii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路アゴニスト、またはix)ROCK阻害剤のうち少なくとも1つと接触させるステップをさらに含む。
【0096】
[0147]一部の実施形態では、内分泌細胞はβ細胞に分化する。一部の実施形態では、β細胞は幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞である。一部の実施形態では、β細胞はC-PEPおよびNKX6-1を発現する。一部の実施形態では、β細胞はグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害
剤、またはそれらの組合せである。
【0097】
[0148]膵前駆細胞またはその前駆体をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させるステップを含み、HDAC阻害剤がKD5170である、内分泌細胞を産生する方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、本方法は膵前駆細胞をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、内分泌細胞はCHGAを発現する。一部の実施形態では、内分泌細胞はβ細胞に分化する。一部の実施形態では、β細胞は幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞である。一部の実施形態では、β細胞はC-PEPおよびNKX6-1を発現する。一部の実施形態では、β細胞はグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。
【0098】
[0149]細胞の集団および培地を含む組成物であって、細胞が膵前駆細胞を含み、培地がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤およびヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む組成物も本明細書で提供される。一部の実施形態では、膵前駆細胞は培地と接触すると誘起されて内分泌細胞に分化する。
【0099】
[0150]非限定的なエピジェネティック修飾化合物の例には、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ブロモドメイン阻害剤、またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0100】
[0151]一実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はゼステホモログ2(EZH2)のエンハンサーの阻害剤である。EZH2はヒストン-リシン N-メチルトランスフェラーゼ酵素である。EZH2阻害剤の非限定的な例には、3-デアザネプラノシンA(DZNep)、EPZ6438、EPZ005687(S-アデノシルメチオニン(SAM)競合的阻害剤)、EI1、GSK126、およびUNC1999が含まれる。DZNepは全てのタンパク質メチルトランスフェラーゼの生成物系阻害剤であるS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)の加水分解を阻害してSAHの細胞内濃度の上昇を導き、これが次にEZH2を阻害する。DZNepはEZH2に特異的ではなく、他のDNAメチルトランスフェラーゼをも阻害する。GSK126はEZH1の150倍の選択性を有するSAM競合性EZH2阻害剤である。UNC1999はGSK126の類似体であり、その相当物であるGSK126より選択性が低い。
【0101】
[0152]一実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一実施形態では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170(メルカプトケトン系HDAC阻害剤)、MC1568(クラスIIa HDAC阻害剤)、TMP195(クラスIIa HDAC阻害剤)、またはそれらの任意の組合せである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はボリノスタット、ロミデプシン(Istodax)、チダミド、パノビノスタット(ファリダク)、ベリノスタット(PXD101)、パノビノスタット(LBH589)、バルプロ酸、モセチノスタット(MGCD0103)、アベキシノスタット(PCI-24781)、エンチノスタット(MS-275)、SB939、レスミノスタット(4SC-201)、ギビノスタット(ITF2357)、キシノスタット(JNJ-26481585)、HBI-8000(ベンザミドHDI)、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、CHR-2845、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ME-344、スルホラファン、またはそれらの任意の変異体である。
【0102】
[0153]一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばDZNep)
の濃度は0.01~10μMまたは約0.01~10μMであってよい。例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばDZNep)の濃度は約0.01~1、0.1~1、0.25~1、0.5~1、1~5、または1~10μMであってよい。ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばDZNep)の濃度は約5、4、3、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、または0.01μM未満であってよい。
【0103】
[0154]一部の実施形態では、本方法は膵前駆細胞または前駆体を第1のまたは第2の組成物と少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、または少なくとも20日、接触させるステップを含む。一部の実施形態では、本方法は膵前駆細胞または前駆体を第1のまたは第2の組成物と約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、または約20日、接触させるステップを含む。
【0104】
[0155]一部の実施形態では、膵前駆細胞はPDX1およびNKX6.1のうち少なくとも1つを発現する。一部の実施形態では、膵前駆細胞はPDX1とNKX6.1の両方を発現する。一部の実施形態では、内分泌細胞はCHGAを発現する。
エピジェネティック修飾
[0156]エピジェネティクスはDNA配列の変化によらない遺伝性の改変を意味し得る。むしろ、DNAのメチル化およびヒストンの修飾等のエピジェネティック修飾はDNAの接近容易性およびクロマチンの構造を改変し、それにより遺伝子発現のパターンを規制することができる。これらのプロセスは成体生命体における独特の細胞系統の正常な発生および分化に重要であり得る。これらは外因性の影響によって修飾することができ、したがって表現型または病態表現型の環境的改変に寄与し得るか、またはその結果であり得る。重要なことに、エピジェネティックプログラミングは多能性遺伝子の規制において重要な役割を有し得、これは分化の間に不活性化される。
【0105】
[0157]クロマチンは核内タンパク質と会合した染色体DNAの複合体である。クロマチン中のDNAはヌクレオソームと称される単位の中でヒストンタンパク質の周囲に詰め込まれている。ヌクレオソームは、2つのH2A-H2Bダイマーによって取り囲まれた2つのH3-H4ヒストンダイマーからなるヒストンタンパク質のオクタマーコアと会合した147塩基対のDNAを有し得る。N-末端のヒストンテールはヌクレオソームから核管腔に突出し得る。H1ヒストンはヌクレオソームの間に位置するリンカーDNAと会合することができる。ヌクレオソームの間隔はクロマチンの構造を決定し、これはヘテロクロマチンとユークロマチンに幅広く分割することができる。クロマチンの構造および転写マシナリーへの遺伝子の接近可能性は、DNAおよびヒストンテールへの修飾によって規制することができる。
【0106】
[0158]分化した哺乳動物細胞において、DNA中に見出される主要なエピジェネティック修飾はCpGジヌクレオチド配列中のシトシン残基のC5位へのメチル基の共有結合の修飾(DNAのメチル化)であり得る。未分化の幹細胞では、CpG中以外のシトシンもメチル化されることがあり、非CpGシトシンのメチル化は特に胚幹細胞における遺伝子の規制に重要であり得る。しかしCpGのメチル化はリピート要素およびトランスポゾンの転写の抑制を確実にするためには重要な機構であり、刷り込みおよびX染色体の不活化にも重要な役割を果たし得る。CpGのメチル化による転写遺伝子のサイレンシングも、
非発現細胞中で組織特異的遺伝子を抑制することによって、発生および分化の間のいくつかの組織特異的遺伝子の発現を制限することができる。
【0107】
[0159]CpGのメチル化はいくつかの機構によって転写を抑制することができる。特定のCpGにおけるメチル基の存在は、いくつかの転写因子によるDNAの認識および結合を直接ブロックすることができる。あるいは、他の因子がメチル化されたDNAに優先的に結合し、転写因子の接近をブロックすることがある。例えば、MeCP2およびその他のファミリーメンバーはメチルCpGに結合し、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)等のヒストン修飾タンパク質を動員することによって、転写抑制に寄与することができる。続いてヒストンの脱アセチル化はクロマチンの縮合を促進し、転写をさらに抑制することができる。この一連の事象によって、DNAのメチル化およびある種のヒストンの修飾の機能がともに、エピジェネティック修飾の対象となる遺伝子の転写のオンオフ状態にいかに寄与しているかが説明される。
【0108】
[0160]DNAメチルトランスフェラーゼ酵素(DNMT)のファミリーは、de novoのDNAのメチル化およびその維持に関与している。胚発生の間、de novoメチル化はDNMT3AおよびDNMT3B 15によって行われ得る。あまねく発現しているDMNT1はCpGのメチル化の細胞内レベルを維持するために主として関わり得る。DNMT1は半メチル化DNAを認識し、複製の間に形成された非メチル化娘ストランドにメチル基を付加するように複合体中で機能し得る。CpGの塩基対形成により、引き続く複製サイクルの間のメチル化の相互の維持を可能にすることができる。このようにして、非遺伝子的形質(DNAのメチル化)を細胞から細胞へと伝えることができ、それとともに遺伝子発現に対する文脈的効果を伝えることができる。このように、メチル化は長期で比較的安定なエピジェネティック形質であると考えることができ、その効果は細胞の表現型を維持するために貢献し得る。
【0109】
[0161]DNAのメチル化はある種のヒストンの状態、例えば脱アセチル化の持続を促進し、それにより翻訳後のヒストンの修飾を保持する機構を提供することができる。ヒストンは翻訳後に修飾され、ホスホリル化、遍在化、アセチル化、およびメチル化を含む多くの方式でクロマチンを再構成することができる。これらのヒストンの修飾の中で、H3およびH4のテールのリシン残基のε-アミノ基におけるヒストンのアセチル化は、高度に一貫して転写の促進に関連している。アセチル化されて開いたクロマチンの構造によっても、転写リプレッサーの接近が可能になる。例えば、BRG1およびBrd4等のいくつかのブロモドメイン含有因子はアセチル化ヒストンを標的としており、これらの因子はここでリプレッサー(またはアクチベーター)複合体の形成に介在し得る。アセチル化は、CREB結合タンパク質(CBP)、およびp300、MYST、ならびにGNAT等のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)コファクターの成長するファミリーの1つを動員するDNA配列特異的転写因子の認識および結合によりクロマチンの領域を標的とすることができる。
【0110】
[0162]ヒストンの脱アセチル化はCpGのメチル化およびクロマチンの不活性状態と相関し得る。ヒストンデアセチラーゼ酵素(HDAC)には4つのクラスがあり、そのメンバーはヒストンおよび/またはその他のタンパク質標的を脱アセチル化することができる。これらの規制タンパク質はそれ自体、アセチル化、ホスホリル化、およびスモイル化による規制の対象となり、これはその機能、細胞内分布、およびタンパク質-タンパク質の会合に影響し得る。配列特異的DNA結合タンパク質およびコリプレッサー複合体との相互作用は、ある種のHDACタンパク質からヒストンを遺伝子特異的な様式で標的とし得る。
【0111】
[0163]大部分のヒストンリシンメチルトランスフェラーゼは、SETホモロジードメイ
ン、即ちそれらの構造的類似性に基づいて7つのサブファミリーにグループ分けすることができるタンパク質の広いファミリーを有し得る。SET1ファミリーメンバーはH3K4をメチル化することによって、活性クロマチンを特異的に助長することができる。その他のヒストンリシンメチルトランスフェラーゼファミリーはいくつかのヒストン標的をメチル化することができる。さらに、これらのメチルトランスフェラーゼのいくつかはメチル化DNAまたはCBP39等の他のタンパク質に特異的に結合する追加のドメインを有し得る。HDACタンパク質はヒトでは18メンバーのファミリーを含むことができ、それらの大きさ、細胞内局在、触媒活性部位の数、および酵母のHDACタンパク質への相同性に基づいて4つのクラスに分けられる。クラスIにはHDAC1、HDAC2、HDAC3、およびHDAC8が含まれる。クラスIIは6つのHDACタンパク質からなり、これらはさらに2つのサブクラスに分割される。クラスIIaにはHDAC4、HDAC5、HDAC7、およびHDAC9が含まれ、これらはそれぞれ単一の触媒活性部位を含む。クラスIIbにはHDAC6およびHDAC10が含まれ、これらはいずれも2つの活性部位を含むが、HDAC6のみが触媒として有効な2つの活性部位を有する。HDAC11は系統発生学的な解析に基づく唯一のクラスIVのメンバーである。クラスI、II、およびIVのHDACタンパク質は、結晶学的解析によって示されるように、金属イオン依存性機構によって作用し得る。対照的に、サーチュイン(SIRT1-7)と称されるクラスIIIのHDACタンパク質は、他のHDACタンパク質とは無関係のNAD+依存性機構によって作用し得る。一実施形態では、HDACタンパク質のHDAC阻害剤は細胞の分化を誘起する。一実施形態では、HDAC阻害剤は細胞の分化に関連する重要な遺伝子を上方制御する。
エピジェネティック修飾化合物
[0164]用語「エピジェネティック修飾化合物」は、遺伝子にエピジェネティクスを起こさせる、即ちDNA配列を変化させずに遺伝子の発現を変化させる化合物を意味し得る。エピジェネティクスは遺伝子がオンまたはオフされるかを決定することを助け、ある種の細胞、例えばβ-細胞におけるタンパク質の生成に影響することができる。DNAのメチル化およびヒストンの修飾等のエピジェネティック修飾はDNAの接近可能性およびクロマチンの構造を改変し、それにより遺伝子発現のパターンを規制することができる。これらのプロセスは成体生命体における独特の細胞系統の正常な発生および分化に重要であり得る。これらは外因性の影響によって修飾することができ、したがって表現型または病態表現型の環境的改変に寄与し得るか、またはその結果であり得る。重要なことに、エピジェネティック修飾は多能性遺伝子の規制において重要な役割を有し得、これは分化の間に不活性化される。非限定的なエピジェネティック修飾化合物の例には、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ブロモドメイン阻害剤、またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0112】
[0165]一実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はゼステホモログ2(EZH2)のエンハンサーの阻害剤である。EZH2はヒストン-リシン N-メチルトランスフェラーゼ酵素である。本明細書で提供される方法において使用できるEZH2阻害剤の非限定的な例には、3-デアザネプラノシンA(DZNep)、EPZ6438、EPZ005687(S-アデノシルメチオニン(SAM)競合的阻害剤)、EI1、GSK126、およびUNC1999が含まれる。DZNepは全てのタンパク質メチルトランスフェラーゼの生成物系阻害剤であるS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)の加水分解を阻害してSAHの細胞内濃度の上昇を導き、これが次にEZH2を阻害することができる。DZNepはEZH2に特異的ではなく、他のDNAメチルトランスフェラーゼをも阻害することができる。GSK126はEZH1の150倍の選択性を有するSAM競合性EZH2阻害剤である。UNC1999はGSK126の類似体であり、その相当物であるGSK126より選択性が低い。
【0113】
[0166]一実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一実施形態では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一実施形態では、HDAC阻害剤はKD5170(メルカプトケトン系HDAC阻害剤)、MC1568(クラスIIa HDAC阻害剤)、TMP195(クラスIIa HDAC阻害剤)、またはそれらの任意の組合せである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はボリノスタット、ロミデプシン(Istodax)、チダミド、パノビノスタット(ファリダク)、ベリノスタット(PXD101)、パノビノスタット(LBH589)、バルプロ酸、モセチノスタット(MGCD0103)、アベキシノスタット(PCI-24781)、エンチノスタット(MS-275)、SB939、レスミノスタット(4SC-201)、ギビノスタット(ITF2357)、キシノスタット(JNJ-26481585)、HBI-8000(ベンザミドHDI)、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、CHR-2845、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ME-344、スルホラファン、またはそれらの任意の変異体である。
III.膵前駆細胞を産生する方法
[0167]態様では、本開示は原腸管細胞をPdx1陽性膵β細胞に分化させる組成物および方法に関する。一部の例では、本方法は原腸管細胞を骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤およびトランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子を含む組成物と接触させるステップを含む。一部の例では、組成物はそれだけに限らないが線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーからの成長因子、ソニックヘッジホッグ(SHH)経路阻害剤、レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、プロテインキナーゼC(PKC)活性化剤、およびRho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤を含む1つまたは複数の追加的な分化因子をさらに含む。
【0114】
[0168]一部の例では、本明細書で提供する方法は、原腸管細胞を含む細胞の集団をBMPシグナル伝達経路阻害剤およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子を含む第1の組成物と接触させることによって、Pdx1陽性膵前駆細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターを産生させるステップを含み、原腸管細胞はPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化する。一部の例では、接触させるステップは約1日、2日、または3日を要する。一部の例では、接触させるステップは約1日を要する。一部の例では、原腸管細胞は、BMPシグナル伝達経路阻害剤およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子を含む組成物と接触することによって、Pdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞に分化する。一部の例では、産生させるステップは、Pdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞を、それだけに限らないが、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子、FGFファミリーからの成長因子、SHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路活性化剤、およびROCK阻害剤を含む1つまたは複数の分化因子を含む第2の組成物と接触させることによって、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップをさらに含む。一部の例では、第2の組成物はBMPシグナル伝達経路阻害剤を含まない。
【0115】
[0169]一部の例では、本明細書で提供する方法により、原腸管細胞を含む細胞の集団をPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターに分化させることによって、多くとも約30%、多くとも約25%、多くとも約20%、多くとも約15%、多くとも約10%、多くとも約5%、多くとも約4%、多くとも約3%、多くとも約2%、または多くとも約1%のCHGA陽性細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターを得ることができる。一部の例では、本明細書で提供する方法により、原腸管細胞を含む細胞の集団をPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターに分化させることによって、フローサイトメトリーによって測定して多くとも約25%、多くとも約20%、多くとも約15%、または多くとも約10%のCDX2陽性細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターを得ることができる。一部の
例では、本明細書で提供する方法により、原腸管細胞を含む細胞の集団をPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターに分化させることによって、多くとも約30%のCHGA陽性細胞および多くとも約30%のCDX2陽性細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターを得ることができる。一部の例では、本明細書で提供する方法により、原腸管細胞を含む細胞の集団をPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターに分化させることによって、多くとも約20%のCHGA陽性細胞および多くとも約5%のCDX2陽性細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターを得ることができる。一部の例では、本明細書で提供する方法により、原腸管細胞を含む細胞の集団をPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターに分化させることによって、多くとも約15%のCHGA陽性細胞および多くとも約3%のCDX2陽性細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターを得ることができる。
【0116】
[0170]一部の例では、本明細書で提供するBMPシグナル伝達経路阻害剤はDMH-1、その誘導体、類似体、または変異体を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供するBMPシグナル伝達経路はDMH-1を含む。一部の実施形態では、本方法は原腸管細胞を約0.01μM~約10μM、約0.05μM~約5μM、約0.1μM~約1μM、または約0.15μM~約0.5μMのDMH-1と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、原腸管細胞を約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.42、0.45、0.48、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1、1.2、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、2.0、4.0、6.0、8.0、または10μMと接触させるステップを含む。一部の実施形態では、本方法は原腸管細胞を約0.25μMと接触させるステップを含む。一部の例では、原腸管細胞の分化に使用するBMPシグナル伝達経路阻害剤はLDN193189(本明細書では「LDN」とも名付ける)を含まない。
【0117】
[0171]一部の例では、本明細書で提供する方法は、原腸管細胞を含む細胞の集団をDMH-1、またはその誘導体、類似体、もしくは変異体と接触させることによって、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターを産生するステップを含む。
【0118】
[0172]特定の理論に縛られることは望まないが、本明細書で開示した方法の一部の実施形態では、原腸管細胞のPdx1陽性膵前駆細胞への分化の間に、BMPシグナル伝達経路の阻害は、標的を外した細胞、例えば腸系統の細胞またはCDX2遺伝子発現陽性の細胞の産生を低減させることに寄与することができる。一方、一部の例では、原腸管細胞のPdx1陽性膵前駆細胞またはPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞への分化の間、II型受容体介在TGF-βシグナル伝達経路の活性化は、ニューロゲニン3(Ngn3)またはクロモグラニンA(CHGA)の早期の誘起を低減することに寄与することができる。これらの早期の誘起は、一部の例では、成熟したSC-β細胞よりはポリホルモン性の細胞の産生に導く。成熟したSC-β細胞は、一部の例ではモノホルモン性であり、例えばインスリンのみを分泌するが、ソマトスタチンまたはグルカゴンのような他の膵ホルモンを分泌しない。BMPシグナル伝達経路とTGF-βシグナル伝達経路のクロストークがあり得る。一部の例では、BMPシグナル伝達経路の阻害剤は副作用、例えばとりわけ、II型受容体介在TGF-βシグナル伝達経路のブロックを有することがある。例えば比較的選択性が低いBMPシグナル伝達経路阻害剤であるLDN193189に
よるII型受容体介在TGF-βシグナル伝達経路の阻害は、
図15に示すように、NGN3/CHGAの早期の誘起を導き、それによりポリホルモン性細胞を産生することがある。ある理論に縛られることは望まないが、一部の例では、高度に選択的なBMPシグナル伝達経路阻害剤、例えばDMH-1またはその誘導体、類似体、もしくは変異体を使用することによって、II型受容体介在TGF-βシグナル伝達経路に対する阻害効果を低減することができる。他の一部の例では、特定の理論に縛られることは望まないが、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子をBMPシグナル伝達経路阻害剤と共インキュベーションすることによって、BMPシグナル伝達経路を選択的に阻害する一方、II型受容体介在TGF-βシグナル伝達経路の比較的高い活性化レベルを維持することができる。一部の例では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子をBMPシグナル伝達経路阻害剤と共インキュベーションすることによって、標的を外した細胞、例えばCDX2陽性細胞の産生を低減し、例えば原腸管細胞から分化した細胞におけるNGN3またはCHGAの早期の誘起の結果としてのポリホルモン性細胞の産生を低減することができる。
【0119】
[0173]一部の態様では、本開示は、Pdx1陽性膵前駆細胞または前駆体を含む細胞の集団を、細胞のクラスター化を促進する条件下で、a)線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、b)ソニックヘッジホッグ経路阻害剤、および任意選択でc)低濃度のレチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤を含む少なくとも2つのβ細胞成熟因子と少なくとも5日間接触させて集団中の少なくとも1個のPdx陽性膵前駆細胞のNKX6-1陽性膵前駆細胞への分化を誘起するステップを含み、NKX6-1陽性膵前駆細胞がNKX6-1を発現する、Pdx1陽性膵前駆細胞からNKX6-1陽性膵前駆細胞を生成する方法を提供する。
【0120】
[0174]一部の実施形態では、集団中のPdx1陽性膵前駆細胞の少なくとも10%が誘起されてNKX6-1陽性膵前駆細胞に分化する。一部の実施形態では、集団中のPdx1陽性膵前駆細胞の少なくとも95%が誘起されてNKX6-1陽性膵前駆細胞に分化する。一部の実施形態では、NKX6-1陽性膵前駆細胞はPdx1、NKX6-1、およびFoxA2を発現する。一部の実施形態では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、胚幹細胞および人工多能性幹細胞からなる群から選択される多能性幹細胞の集団から生成される。
IV.幹細胞および再プログラミング
[0175]SC-β細胞(例えば成熟膵β細胞またはβ-様細胞)またはその前駆体を生成するための幹細胞の使用が本明細書で提供される。一実施形態では、それぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0240212号および第2015/0218522号に記載されたものと同様のプロトコールを用い、少なくとも1個のSC-β細胞を提供するために、幹細胞の代わりに、またはそれとともに胚細胞を使用してよい。好適な胚細胞は、例えば最後の生理周期の約8~11週後に採取したヒト胎児材料中に存在する原初胚細胞から調製することができる。説明的な胚細胞の調製法は、例えばShamblottら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998および米国特許第6,090,622号に記載されている。
【0121】
[0176]SC-β細胞(例えば膵β細胞)を産生する組成物および方法が本明細書で提供される。一般には、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体、例えば本明細書に開示した方法によって生成した膵前駆細胞は、様々な細胞の混合物または組合せ、例えば原腸管細胞、Pdx1陽性膵前駆細胞、Pdx1陽性、NKX6-1陽性の膵前駆細胞、Ngn3陽性内分泌前駆細胞、インスリン陽性内分泌細胞(例えばβ-様細胞)、および/またはその他の多能性細胞もしくは幹細胞等の細胞の混合物を含み得る。
【0122】
[0177]少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体は、幹細胞または多能性細胞を所望の分化段階に分化する任意の好適な培養プロトコールに従って生成することができる
。一部の実施形態では、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体は、少なくとも1個の多能性細胞を少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体に分化させるために適した時間および条件下で少なくとも1個の多能性細胞を培養することによって生成される。
【0123】
[0178]一部の実施形態では、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体は、実質的に純粋なSC-β細胞またはその前駆体の集団である。一部の実施形態では、SC-β細胞またはその前駆体の集団は多能性細胞または分化した細胞の混合物を含む。一部の実施形態では、SC-β細胞またはその前駆体の集団は胚幹細胞または多能性細胞またはiPS細胞を実質的に含まないか、それらを欠いている。
【0124】
[0179]一部の実施形態では、体細胞、例えば線維芽細胞は、対象から例えば組織生検、例えば皮膚生検として単離することができ、本明細書に記載した組成物および方法における使用のための少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体を生成するためのさらなる分化のための人工多能性幹細胞に再プログラミングすることができる。一部の実施形態では、体細胞、例えば線維芽細胞は当業者には公知の方法によって培地中に維持され、一部の実施形態では、本明細書に開示した方法によってSC-β細胞に変換される前に増加させられる。
【0125】
[0180]一部の実施形態では、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体は当業者には公知の方法によって培地中に維持され、一部の実施形態では、本明細書に記載した方法によってSC-β細胞に変換される前に増加させられる。
【0126】
[0181]さらに、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体、例えば膵前駆細胞は任意の哺乳動物種からのものであってよく、その非限定的な例にはネズミ科、ウシ科、サル科、ブタ科、ウマ科、ヒツジ科、またはヒトの細胞が含まれる。明確かつ単純にするため、本明細書における方法の説明は哺乳動物の少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体に言及しているが、本明細書に記載した方法の全ては少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体の他の細胞型に容易に適用できることを理解されたい。一部の実施形態では、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体はヒト個体から誘導される。
幹細胞
[0182]本開示の実施形態は膵β細胞またはその前駆体の産生のための幹細胞の使用に関し得る。本明細書で用いる用語「幹細胞」は、自己更新し、分化した細胞型を産生する能力を有する細胞(例えば植物幹細胞、脊椎動物幹細胞)を意味し得る(Morrisonら、(1997) Cell 88:287-298)。細胞発生学の文脈においては、形容詞「分化した」または「分化している」は相対的な用語である。「分化した細胞」は、それと比較している細胞よりも発生の経路をさらに下流に進行した細胞であり得る。したがって、多能性幹細胞は系統が制限された前駆細胞(例えば中胚葉幹細胞)に分化することができ、これは次にさらに制限された細胞(例えばニューロン前駆細胞)に分化することができ、これは最終段階の細胞(例えば最終分化細胞、例えばニューロン、心筋細胞等)に分化することができる。最終段階の細胞はある種の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持できることも保持できないこともある。幹細胞は特定のマーカー(例えばタンパク質、RNA等)の存在および特定のマーカーの非存在によって特徴付けることができる。幹細胞はin vitroとin vivoの両方の機能性アッセイ、特に多種の分化した子孫を生じる幹細胞の能力に関連するアッセイによっても同定することができる。一実施形態では、宿主細胞は成体幹細胞、体幹細胞、非胚幹細胞、胚幹細胞、造血幹細胞であり、多能性幹細胞、およびトロホブラスト幹細胞を含む。
【0127】
[0183]目的の幹細胞、例えば本明細書で提供する方法に使用できる幹細胞は、多能性幹細胞(PSC)を含み得る。本明細書で用いる用語「多能性幹細胞」または「PSC」は
、生命体の全ての細胞型を生成することができる幹細胞を意味する。したがって、PSCは生命体の全ての胚葉の細胞(例えば脊椎動物の内胚葉、中胚葉、および外胚葉)を生じることができる。多能性細胞は奇形腫を形成すること、および生命体の外胚葉、中胚葉、または内胚葉の組織に寄与することができる。植物の多能性幹細胞は植物の全ての細胞型(例えば根、茎、葉、その他の細胞)を生じることができる。
【0128】
[0184]本開示の実施形態は膵β細胞またはその前駆体の産生のためのPSCの使用に関し得る。動物のPSCはいくつかの異なった方式で誘導することができる。例えば、胚幹細胞(ESC)は胚の内部細胞集塊から誘導することができる(Thomsonら、Science. 1998 Nov. 6; 282(5391):1145-7)。一方、人工多能性幹細胞(iPSC)は体細胞から誘
導することができる(Takahashiら、Cell. 2007 Nov. 30; 131(5):861-72;Takahashiら
、Nat Protoc. 2007; 2(12):3081-9;Yuら、Science. 2007 Dec. 21; 318(5858):1917-20. Epub 2007 Nov. 20)。用語PSCはその起源に関わらず多能性幹細胞を意味すること
ができるので、用語PSCは用語ESCおよびiPSC、ならびにPSCの別の例である用語、胎児胚幹細胞(EGSC)をも包含することができる。PSCは確立された細胞株の形態であってよく、これらは初代胚組織から直接得ることができ、または体細胞から誘導することもできる。
【0129】
[0185]本開示の実施形態は膵β細胞またはその前駆体の産生のためのESCの使用に関し得る。「胚幹細胞(ESC)」は胚から、典型的には胚盤胞の内部細胞集塊から単離されたPSCを意味し得る。ESC株、例えばhESBGN-01、hESBGN-02、hESBGN-03、hESBGN-04(BresaGen,Inc.社);HES-1、HES-2、HES-3、HES-4、HES-5、HES-6(ES Cell International社);Miz-hES1(MizMedi Hospital-Seoul National University);HSF-1、HSF-6(University of California at San Francisco);およびH1、H7、H9、H13、H14(Wisconsin Alumni
Research Foundation (WiCell Research Institute)がNIH Human Embryonic Stem Cell Registryに列挙されている。目的の幹細胞にはその他の霊長類からの胚幹細胞、例えばアカゲザル幹細胞およびマーモセット幹細胞も含まれる。幹細胞は任意の哺乳動物種、例えばヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯類、例えばマウス、ラット、ハムスター、霊長類等から得ることができる(Thomsonら、(1998) Science 282:1145;Thomsonら、(1995) Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:7844;Thomsonら、(1996) Biol. Reprod. 55:254;Shamblottら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998)。培養では、ES
Cは大きな核-細胞質比、明確な境界、および目立った核を有する平坦なコロニーとして成長することができる。さらに、ESCはSSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、およびアルカリホスファターゼを発現することができるが、SSEA-1は発現しない。ESCを産生し特徴解析する方法の例は、例えばそれぞれが全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,029,913号、同第5,843,780号、および同第6,200,806号に見出すことができる。未分化の形態のhESCを増殖させる方法は、それぞれが全体として本明細書に組み込まれるWO第99/20741号、WO第01/51616号、およびWO第03/020920号に記載されている。
【0130】
[0186]「胎児胚幹細胞(EGSC)または胎児胚細胞」または「EG細胞」は、胚細胞および/または胚細胞前駆細胞、例えば原初胚細胞、例えば精子および卵子になることができる胚細胞から誘導されたPSCを意味し得る。胎児胚細胞(EG細胞)は上記の胎児幹細胞と同様の特性を有すると考えられている。EG細胞を産生し特徴解析する方法の例は、例えばそれぞれが全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,153,684
号;Matsui, Y.ら、(1992) Cell 70:841;Shamblott, M.ら、(2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 113;Shamblott, M.ら、(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:13726;およびKoshimizu, U.ら、(1996) Development, 122:1235に見出すことができる。
【0131】
[0187]本開示の実施形態は膵β細胞またはその前駆体の産生のためのiPSCの使用に関し得る。「人工多能性幹細胞」または「iPSC」は、PSCでない細胞から(例えばPSCに対して分化した細胞から)誘導されたPSCを意味し得る。iPSCは最終的に分化した細胞を含む多種の異なった細胞型から誘導することができる。iPSCはES細胞様の形態を有し、大きな核-細胞質比、明確な境界、および目立った核を有する平坦なコロニーとして成長することができる。さらに、iPSCは、それだけに限らないがアルカリホスファターゼ、SSEA3、SSEA4、Sox2、Oct3/4、Nanog、TRA160、TRA181、TDGF1、Dnmt3b、FoxD3、GDF3、Cyp26a1、TERT、およびzfp42を含む当業者には公知の1つまたは複数の重要な多能性マーカーを発現することができる。iPSCを産生し特徴解析する方法の例は、例えばそれぞれが全体として本明細書に組み込まれる米国特許公開第2009/0047263号、同第2009/0068742号、同第2009/0191159号、同第2009/0227032号、同第2009/0246875号、および同第2009/0304646に見出すことができる。一般にiPSCを産生するためには、体細胞を再プログラミングして多能性幹細胞にする当技術で公知の再プログラミング因子(例えばOct4、SOX2、KLF4、MYC、Nanog、Lin28、その他)を体細胞に提供する。
【0132】
[0188]本開示の実施形態は膵β細胞またはその前駆体の産生のための体細胞の使用に関し得る。「体細胞」は実験的操作の非存在下では生命体内の全ての型の細胞を通常には生じない生命体内の任意の細胞を意味し得る。換言すれば、体細胞は十分に分化しており、したがって生体の3つ全ての胚葉の細胞、例えば外胚葉、中胚葉、および内胚葉の細胞を天然には産生しない細胞であり得る。例えば、体細胞にはニューロンおよびニューロン前駆細胞が含まれ、ニューロン前駆細胞は中枢神経系の全てのまたはいくつかの細胞型を天然に生じることができるが、中胚葉または内胚葉の系統の細胞を生じることはできない。
【0133】
[0189]ある特定の例では、幹細胞は本明細書で開示した方法による少なくとも1つの分化因子または組成物に曝露される前には未分化(例えば特定の系統に関わっていない細胞)であってよく、一方、他の例では、本明細書に記載した少なくとも1つの分化因子または組成物に曝露する前に幹細胞を1つまたは複数の中間細胞型に分化することが望ましいことがある。例えば、幹細胞は未分化細胞の形態学的、生物学的、または物理的な特徴を呈することがあり、これらの特徴はこれらの細胞を胎児起源または成体起源の分化した細胞と区別するために用いることができる。一部の例では、未分化細胞は高い核/細胞質比および目立った核を有する細胞のコロニーにおいて微視的な二次元で現れ得る。幹細胞はそれ自体(例えば実質的に未分化細胞が何ら存在しない)であってよく、または分化細胞の存在下に使用してもよい。ある特定の例では、幹細胞は成長し、任意選択で分化し得るために、好適な栄養剤および任意選択で他の細胞の存在下で培養することができる。例えば、幹細胞の成長を補助するために、胎児線維芽細胞または線維芽細胞様細胞が培養中に存在してもよい。線維芽細胞は幹細胞の成長の1つの段階の間に存在してよいが、必ずしも全ての段階に存在する必要はない。例えば、線維芽細胞は最初の培養段階で幹細胞の培養に添加し、1つまたは複数の引き続く培養段階では幹細胞の培養に添加しなくてもよい。
【0134】
[0190]本発明の全ての態様において使用する幹細胞は任意の種類の組織(例えば胎児もしくは前胎児の組織等の胚組織、または成体組織)から誘導される任意の細胞であってよく、これらの幹細胞は適切な条件下で種々の細胞型、例えば3つの胚葉(内胚葉、中胚葉
、および外胚葉)の全てまたは少なくとも1つの誘導体からなる子孫を生成する能力があるという特徴を有し得る。これらの細胞型は確立された細胞株の形態で提供することができ、または初代胚組織から直接得て、直ちに分化に使用することもできる。NIH Human Embryonic Stem Cell Registryに列挙されている細胞、例えばhESBGN-01、hESBGN-02、hESBGN-03、hESBGN-04(BresaGen,Inc.社);HES-1、HES-2、HES-3、HES-4、HES-5、HES-6(ES Cell International社);Miz-hES1(MizMedi Hospital-Seoul National University);HSF-1、FISF-6(University of California at San Francisco);およびH1、H7、H9、H13、H14(Wisconsin Alumni Research Foundation (WiCell Research Institute)が含まれる。一部の実施形態では、成熟したインスリン陽性細胞への化学的に誘起された分化のために使用したヒト幹細胞または多能性幹細胞の供給源には、ヒト胚を破壊するステップは含まれていなかった。一部の実施形態では、成熟したインスリン陽性細胞への化学的に誘起された分化のために使用したヒト幹細胞または多能性幹細胞の供給源には、ヒト胚を破壊するステップは含まれていない。
【0135】
[0191]別の例では、幹細胞は固体組織を含む組織から単離することができる。一部の実施形態では、組織は皮膚、脂肪組織(例えばアジポーズ組織)、筋肉組織、心臓または心臓組織である。他の実施形態では、組織は例えばそれだけに限らないが臍帯血、胎盤、骨髄、または軟骨である。
【0136】
[0192]本明細書で提供する方法において使用され得る幹細胞には、Thomsonら、(1998) Science 282:1145によって記載されたヒト胚幹(hES)細胞、アカゲザル幹細胞等の他の霊長類からの胚幹細胞(Thomsonら、(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7844)、マーモセット幹細胞(Thomsonら、(1996) Biol. Reprod. 55:254)、およびヒト胎児胚(hEG)細胞(Shambloftら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998)によって例示される種々の型の胚細胞も含まれ得る。本明細書で提供する方法には、中胚葉幹細胞およびその他の早期心臓発生細胞等の系統に関与する幹細胞も適用可能である(Reyesら、(2001) Blood 98:2615-2625、EisenbergおよびBader、(1996) Circ Res. 78(2):205-16等
を参照されたい)。幹細胞は任意の哺乳動物種、例えばヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯類、例えばマウス、ラット、ハムスター、霊長類等から得ることができる。一部の実施形態では、ヒト胚は本明細書に開示した方法および組成物に使用する多能性細胞の供給源のために破壊されなかった。一部の実施形態では、ヒト胚は本明細書に開示した方法および組成物に使用する多能性細胞の供給源のために破壊されない。
【0137】
[0193]内皮、筋肉、および/またはニューロンの幹細胞の好適な供給源からの細胞の混合物を、本開示の目的のために哺乳動物のドナーから収穫することができる。好適な供給源は造血微小環境である。例えば、好ましくは固定化された(例えば動員された)循環末梢血を対象から取り出すことができる。一実施形態では、幹細胞は再プログラミングされた幹細胞、例えば体細胞または分化した細胞から誘導された幹細胞であってよい。そのような実施形態では、脱分化された幹細胞は、例えばそれだけに限らないが新生物細胞、腫瘍細胞、およびがん細胞、あるいは人工多能性幹細胞もしくはiPS細胞等の、誘導され再プログラミングされた細胞であってよい。
【0138】
[0194]一部の実施形態では、本明細書に記載した膵β細胞は、毛髪細胞、角化細胞、性腺刺激ホルモン産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、ソマトトロピン産生細胞、乳腺刺激ホルモン産生細胞、クロマフィン細胞、傍濾胞細胞、グロムス細胞、メラニン形成細胞、母斑細胞、メルケル細胞、象牙芽細胞、セメント芽
細胞、角膜角化細胞、網膜ムラー細胞、網膜色素上皮細胞、ニューロン、グリア細胞(例えば乏突起樹状細胞、星状膠細胞)、上衣細胞、松果体細胞、肺細胞(例えばI型肺細胞およびII型肺細胞)、クララ細胞、ゴブレット細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、胃主細胞、壁細胞、小窩細胞、K細胞、D細胞、I細胞、ゴブレット細胞、パネス細胞、腸細胞、マイクロフォールド細胞、肝細胞、肝星細胞、(例えば中胚葉からのクッパー細胞)、胆嚢細胞、房心細胞、膵星細胞、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞(例えばPP細胞)、膵ε細胞、甲状腺(例えば濾胞性細胞)、副甲状腺(例えば副甲状腺主細胞)、好酸性細胞、尿路上皮細胞、骨芽細胞、骨細胞、軟骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋芽細胞、筋細胞、筋サテライト細胞、腱細胞、心筋細胞、脂肪芽細胞、脂肪細胞、カハル介在細胞、血管芽細胞、内皮細胞、メサンギウム細胞(例えば糸球体内メサンギウム細胞および糸球体外メサンギウム細胞)、傍糸球体細胞、緻密斑細胞、間質細胞(stromal cells)、間質細胞(interstitial cells)、テロサイト単純上皮細胞、有
足細胞、腎近位細管刷子縁細胞、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、顆粒膜細胞、ペッグ細胞、胚葉細胞、精子、卵子、リンパ球、ミエロイド細胞、内皮前駆細胞、内皮幹細胞、血管芽細胞、中血管芽細胞、周皮壁細胞、脾細胞(例えばTリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、ミクロファージ、白血球)、トロホブラスト幹細胞、またはそれらの任意の組合せのうち1つまたは複数から誘導することができる。
再プログラミング
[0195]本明細書で用いる用語「再プログラミング」は、体細胞の分化状態を改変または逆行させるプロセスを意味し得る。細胞は再プログラミングの前に部分的にまたは最終的に分化させることができる。再プログラミングは体細胞の分化状態の多能性細胞への完全な逆行を包含し得る。そのような分化の完全な逆行は人工多能性(iPS)細胞を生成し得る。本明細書で用いる再プログラミングは、細胞の分化状態の、例えば、多能性でも万能性でもないがそれが生じた元の分化した細胞の1つまたは複数の特定の特徴を失った細胞である万能性状態の細胞または体細胞への部分的な逆行、例えば分化した細胞の様々な体細胞型への直接的再プログラミングをも包含し得る。再プログラミングには、接合子が成体に成長する際の細胞の分化の間に起こる核酸の修飾(例えばメチル化)、クロマチンの縮合、エピジェネティクス、ゲノムの刷り込み等の遺伝可能なパターンの少なくともいくつかの改変、例えば逆行が含まれ得る。
【0139】
[0196]本明細書で用いる場合、用語「再プログラミング因子」は、細胞の「再プログラミング」、即ちそれによって細胞が異なった細胞型または表現型に変換される分化、および/または脱分化、および/または分化転換に関連する分子を意味し得る。再プログラミング因子は一般に、細胞の分化、脱分化、および/または分化転換に関連する遺伝子の発現に影響する。転写因子は再プログラミング因子の例である。
【0140】
[0197]本明細書で用いる用語「分化」およびその文法的等価物は、特殊性の低い細胞(例えばより高い細胞能力を有するより原始的な細胞)が特殊性の高い細胞型(例えばより低い細胞能力を有するより原始的でない細胞)になるプロセスを意味し、用語「脱分化」は、特殊性の高い細胞が特殊性の低い細胞型(例えばより高い細胞能力を有するより原始的な細胞)になるプロセスを意味し、用語「分化転換」は、特定の細胞型の細胞がその「細胞能力」または「原始性」のレベルを顕著に変化させずに別の細胞型に変換されるプロセスを意味し得る。理論に縛られることは望まないが、細胞がその「細胞能力」または「原始性」のレベルを顕著に変化させずに1つの系統関与細胞型または最終的に分化した細胞型から別の系統関与細胞型または最終的に分化した細胞型に変換された場合には、細胞は「分化転換」すると考えられる。
【0141】
[0198]本明細書で用いる場合、用語「細胞分化能」は、細胞が異なる系統の細胞に分化する能力を意味すると理解されたい。例えば、多能性細胞(例えば幹細胞)は、3つの胚葉、即ち内胚葉(胃の内部ライニング、胃腸管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、尿生殖
器)、または外胚葉(上皮組織および神経系)のいずれの細胞にも分化する可能性を有し、したがって高い細胞分化能を有する。万能性細胞(例えば幹細胞またはある型の誘起された幹細胞)は多いが限られた数の系統(例えば造血幹細胞、心幹細胞、または神経幹細胞等)から細胞を生じる能力を有し、多能性細胞よりは比較的低い細胞分化能を有している。特定の系統に関与し、または最終的に分化した細胞は、さらに低い細胞分化能を有し得る。当技術で公知の分化転換の特定の例には、例えば線維芽ベータ細胞の、または膵外分泌細胞からベータ細胞への変換等が含まれる。
【0142】
[0199]したがって、細胞はより原始的な細胞に分化させることができ(例えば最終的に分化した細胞は万能性または多能性に分化することができ)、または細胞はより原始性の低い細胞に脱分化させることができる(例えば万能性または多能性の細胞は系統に関与する細胞または最終的に分化した細胞に分化することができる)。しかし、一実施形態では、細胞は例えば同様の細胞能力レベルで1つの細胞型(または表現型)から別の細胞型(または表現型)に変換または分化転換させることができる。したがって、本開示の一実施形態では、本開示の誘起するステップは、本開示の細胞を再プログラミングして、分化し、脱分化し、および/または分化転換することができる。本開示の一実施形態では、本開示の誘起するステップは、細胞を再プログラミングして分化転換することができる。
【0143】
[0200]1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド再プログラミング因子を使用し、例えば分化、脱分化、および/または分化転換することによって特定の型の細胞を再プログラミングまたは誘起して別の型の細胞にする方法は、当業者には公知である。そのような方法は、細胞の再プログラミングに関連する1つまたは複数の転写因子またはその他のポリペプチドをコードする遺伝材料の導入に依拠し得る。例えば、Pdx1、Ngn3およびMafA、またはそれらの機能的断片は全て、本開示の細胞の細胞分化、脱分化、および/または分化転換を誘起することができるペプチドをコードしていることが知られている公知である。当業者に公知のいくつかの方法では、再プログラミング遺伝子(上記の遺伝子等)によってコードされる外因性ポリペプチド(例えば組換えポリペプチド)が細胞と接触して、例えば本開示の細胞を誘起する。当業者であれば、他の遺伝子も細胞の再プログラミングに関連し、そのような遺伝子をコードする外因性分子(またはその機能性断片)およびコードされたポリペプチドもポリヌクレオチドまたはポリペプチドの再プログラミング因子(例えば、続いて細胞の再プログラミングに関連する別の遺伝子の発現レベルに影響するポリヌクレオチドまたはポリペプチド)であると考えられることが認識される。例えば、p53の不活性化を低減させる外因性のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのエピジェネティック遺伝子サイレンサーの導入によって、人工多能性幹細胞(iPSC)を誘起する効率が上昇することが示されている。したがって、エピジェネティックサイレンサーをコードする外因性のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびに細胞の再プログラミングまたは細胞のプログラミング効率の上昇に直接または間接に関与すると思われるその他の遺伝子またはタンパク質は、外因性のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの再プログラミング因子を構成すると考えられる。当業者であれば、細胞の再プログラミングの阻害に関与する遺伝子の発現をノックダウンすることができるRNAi分子(またはRNAi分子をコードする遺伝子材料)の導入等の、細胞の再プログラミングに影響する他の方法が存在することが認識される。したがって、細胞の再プログラミングに関連し、または細胞の再プログラミングを促進する任意の外因性のポリヌクレオチド分子またはポリペプチド分子は、本明細書に記載した外因性のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの再プログラミング因子であると理解されたい。
【0144】
[0201]本開示の一部の実施形態では、本方法には小分子でない再プログラミング因子の使用は含まれない。しかし、本方法では培地、血清、血清代替物、補助剤、抗生剤、その他、例えばRPMI、腎上皮基本培地(REBM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、MCDB131培地、CMRL1066培地、F12、ウシ胎児血清(FCS)
、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、D-グルコース、L-グルタミン、GlutaMAX.TM-1(ジペプチド、L-アラニン-L-グルタミン)、B27、ヘパリン、プロゲステロン、プトレシン、ラミニン、ニコチンアミド、インスリン、トランスフェリン、セレン酸ナトリウム、セレン、エタノールアミン、ヒト上皮細胞成長因子(hEGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、ヒドロコルチゾン、エピネフリン、ノルマシン、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、およびアンホテリシン等の「日常的」な組織培養成分を利用できることが認識される。これらの典型的な組織培養成分(および組織培養で日常的に使用されるその他の同様の組織培養成分)は、本開示の目的のための小分子の再プログラミング分子ではない。これらの成分は本明細書で定義する小分子でも、本明細書で定義する再プログラミング因子でもない。
【0145】
[0202]したがって、一実施形態では、本開示は、細胞を1つまたは複数の外因性のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの再プログラミング因子とともに培養するステップを含まない。したがって、一実施形態では、本開示の方法は、誘起されたβ細胞を産生すること、またはそうでなければ本開示の細胞を誘起して分化させ、脱分化させ、および/または分化転換させることに関与する、例えばトランスポゾン、ウイルストランスジェニックベクター(レトロウイルスベクター等)、プラスミド、mRNA、miRNA、ペプチド、またはこれらの分子のいずれかの断片を導入することによる、1つまたは複数の外因性のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの再プログラミング因子の導入を含まない。
【0146】
[0203]即ち、一実施形態では、本方法は、1つまたは複数の外因性のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの再プログラミング因子の非存在下で実施される。したがって、一実施形態では、本開示の方法では、ポリペプチド転写因子、分化、脱分化、および/または分化転換の誘起に特異的に関連するその他のポリペプチド因子、ポリペプチド転写因子をコードするポリヌクレオチド配列、分化、脱分化、および/または分化転換の誘起に特異的に関連するその他のポリペプチド因子をコードするポリヌクレオチド配列、mRNA、干渉RNA、マイクロRNA、ならびにそれらの断片を添加せずに、小分子(例えばHDAC阻害剤)を利用して細胞を再プログラミングすることを理解されたい。
V.ゼノフリー培地
[0204]態様では、本開示は、ゼノフリー培地中で前駆細胞(例えばiPSC細胞等の幹細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、Pdx1陽性膵前駆細胞、NKX6.1陽性膵前駆細胞、またはインスリン陽性内分泌細胞)を分化するステップを含む、膵β細胞、例えばSC-β細胞を産生する方法に関する。動物起源の細胞および/または細胞クラスターを培養するためのゼノフリー培地は、他の動物からの製品を有しなくてよい。一部の例では、ヒトの細胞および/または細胞クラスターを培養するためのゼノフリー培地はいかなる非ヒト動物からの製品をも有しなくてよい。例えば、ヒトの細胞および/または細胞クラスターを培養するためのゼノフリー培地は、ウシ胎児血清(FBS)またはウシ血清アルブミン(BSA)の代わりに、ヒト血清アルブミン(HSA)またはヒト血小板溶解物(PLT)を含んでよい。
【0147】
[0205]一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、血清アルブミンを欠く培地の中で前駆細胞(例えばiPSC細胞等の幹細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、Pdx1陽性膵前駆細胞、NKX6.1陽性膵前駆細胞、またはインスリン陽性内分泌細胞)を分化するステップによる、膵β細胞、例えばSC-β細胞を産生するステップを含む。一部の例では、培地中に血清アルブミンまたはHSAを使用しない本明細書で提供した方法によって産生された膵β細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターは、その代わりにBSAを使用する他の同等の方法によって産生された膵β細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターと比較して、顕著な改善を有し得る。改善には、得られた最終の細胞集団における高いパーセンテージの膵β細胞、高いGSIS応答(例えばグルコースチャレンジに応答するより多くのインスリン放出)、高いGSIS刺激インデックス、産生された細胞ク
ラスター中の膵β細胞の分布のより高い均一性、またはそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0148】
[0206]一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む培地中で幹細胞、例えばhES細胞またはiPS細胞を含む細胞の集団を分化するステップを含む。一部の例では、幹細胞は胚体内胚葉細胞に分化される。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む培地中で胚体内胚葉細胞を含む細胞の集団を分化するステップを含む。一部の例では、胚体内胚葉細胞は原腸管細胞に分化される。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む培地中で原腸管細胞を含む細胞の集団を分化するステップを含む。一部の例では、原腸管細胞はPdx1陽性膵前駆細胞(例えばPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞またはPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞)に分化される。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む培地中でPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞を含む細胞の集団を分化するステップを含む。一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞はPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化される。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む培地中でPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞の集団を分化するステップを含む。一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞はインスリン陽性内分泌細胞に分化される。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む培地中でインスリン陽性内分泌細胞を含む細胞の集団を分化するステップを含む。一部の例では、インスリン陽性内分泌細胞は膵β細胞、例えばSC-β細胞に分化される。
【0149】
[0207]一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、約0.001%(w/v)~約5%(w/v)、約0.005%(w/v)~約4%(w/v)、約0.01%(w/v)~約3%(w/v)、約0.02%(w/v)~約2.5%(w/v)、約0.03%(w/v)~約2%(w/v)、約0.04%(w/v)~約1%(w/v)、約0.045%(w/v)~約0.5%(w/v)、または約0.05%(w/v)~約0.1%(w/v)のHSAを含む培地の使用を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、約0.001%、0.002%、0.0025%、0.005%、0.0075%、0.01%、0.0125%、0.015%、0.0175%、0.02%、0.0225%、0.025%、0.0275%、0.03%、0.0325%、0.035%、0.0375%、0.04%、0.0425%、0.045%、0.0475%、0.05%、0.0525%、0.055%、0.575%、0.06%、0.0625%、0.065%、0.0675%、0.07%、0.0725%、0.075%、0.0775%、0.08%、0.085%、0.09%、0.1%、0.12%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、または4%、5%(w/v)のHSAを含む培地の使用を含む。用語「w/v」は重量/体積または体積あたり重量のパーセンテージの短縮形である。例えば、培地100mL中の1mgのHSAは1%(w/v)の濃度を有する。
【0150】
[0208]一部の例では、本明細書で提供する方法により、原腸管細胞を含む細胞の集団をPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターに分化することによって、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、または少なくとも約95%のPdx1陽性細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターを得ることができる。一部の例では、本明細書で提供する方法により、原腸管細胞を含む
細胞の集団をPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターに分化することによって、多くとも約60%、多くとも約50%、多くとも約40%、多くとも約35%、多くとも約30%、多くとも約25%、多くとも約22%、多くとも約20%、多くとも約18%、多くとも約15%、多くとも約14%、多くとも約13%、多くとも約11%、多くとも約12%、多くとも約10%、または多くとも約5%のCDX2陽性細胞を含む細胞の集団または細胞クラスターを得ることができる。
VI.幹細胞から誘導されたベータ細胞を産生する方法
[0209]SC-β細胞(例えば膵β細胞)を産生する方法が本明細書で提供される。幹細胞から内分泌細胞を産生して少なくとも1個のSC-β細胞を提供する詳細なプロトコールは、それぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0240212号および同第2015/0218522号に記載されている。
【0151】
[0210]内胚葉は消化管および呼吸管、甲状腺、肝臓、ならびに膵を生じることができる。内胚葉系統の代表的な疾患としてはインスリンを生成するβ細胞の破壊に起因する1型糖尿病がある。in vitroにおけるヒト多能性幹細胞(hPSC)からの機能性β細胞の産生は、1型糖尿病の置換細胞療法のための実際的で更新可能な細胞源になり得る。芽球段階の胚の内部細胞集塊から産生される胚幹(ES)細胞は、損傷された任意の細胞の移植または細胞に基づく療法のための有望な細胞源を表している。これらは培地中に維持され、それ自体で更新され、未分化ES細胞として無限に増殖することができる。ES細胞は外胚葉、中胚葉、および内胚葉の系統細胞または組織として、生体の全ての細胞型に分化することができる。ES細胞の主な利点は培地中での安定な自己更新および分化の可能性である。
【0152】
[0211]胚体内胚葉は胚発生の原腸形成のプロセスによってin vivoで内部細胞集塊から産生され、このプロセスで胚盤葉上層細胞が3つの胚葉を形成するように指令される。胚体内胚葉は膵β細胞、肝臓の肝細胞、肺の肺胞細胞、甲状腺、胸腺、ならびに栄養管および呼吸管の上皮ライニング等の生命臓器に寄与する多様な細胞および組織を生じることができる。これは、臓側および壁側内胚葉を生じることができる胚体外組織の原始内胚葉とは異なる。ES細胞から誘導された胚体内胚葉は、理論的には任意の内胚葉誘導体になることができ、ES細胞を内胚葉系統に導くことは治療用の内胚葉誘導体を産生させるための必須要件である。
【0153】
[0212]胚体内胚葉の前後軸の正確なパターニングによって、最終的には原腸管が形成され得る。胚体内胚葉によって誘導された原腸管は、前後軸に沿って咽頭、食道、胃、十二指腸、小腸、および大腸、ならびに膵、肺、甲状腺、胸腺、副甲状腺、および肝臓等の関連する臓器を誘起する。原腸管の前腸の前部は肺、甲状腺、食道、および胃になる。膵、肝臓、および十二指腸は、前腸の後部から起源する。原腸管の中腸および後腸は小腸および大腸を生じる。前腸の前部は発生マーカー、NK2ホメオボックス(NKX2-1)およびSRY(性決定領域Y)-ボックス2(SOX2)を発現し、前腸の後部は造血的に発現されるホメオボックス(HHEX)、膵および十二指腸のホメオボックス1(PDX1)、ワンカットホメオボックス1(ONECUT1、HNF6として公知である)、および肝細胞核因子4アルファ(HNF4A)を発現し、中腸/後腸は尾型ホメオボックス1(CDX1)、尾型ホメオボックス2(CDX2)、ならびに運動ニューロンおよび膵のホメオボックス1(MNX1)(3、19、20)を発現する。
【0154】
[0213]膵β細胞の分化の成功には、分化した細胞が生理学的に適切な量のインスリンを合成し分泌することが必要である。hPSC細胞の分化を指令する例示的な段階的プロトコールが開発され、これは正常な膵内分泌発生の主な段階を反復する分化プロセスを伴う(
図5)。hPSC細胞のホルモン発現膵内分泌細胞への分化は、hPSC細胞を、胚の発生、中内胚葉および胚体内胚葉への分化、原腸内胚葉の確立、前腸後部のパターニング
、ならびに膵内胚葉および内分泌前駆体の特定化および成熟からなる主要な段階に通過させることによって行われる。これらの段階を通じて、hPSC細胞は膵内分泌表現型およびin vitroにおけるグルコース応答インスリン分泌の能力を得ることができる。
【0155】
[0214]一般に、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体、例えば本明細書に開示した方法によって生成した膵前駆細胞は、様々な細胞の混合物または組合せ、例えばPdx1陽性膵前駆細胞、Pdx1およびNKX6-1を共発現する膵前駆細胞、Ngn3陽性内分泌前駆細胞、インスリン陽性内分泌細胞(例えばβ-様細胞)、およびインスリン陽性内分泌細胞、ならびに/またはその他の多能性細胞もしくは幹細胞を含み得る。
【0156】
[0215]少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体は、幹細胞または多能性細胞を所望の分化段階に分化する任意の好適な培養プロトコールに従って生成することができる。一部の実施形態では、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体は、少なくとも1個の多能性細胞を少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体に分化するために適した時間および条件下で少なくとも1個の多能性細胞を培養することによって生成される。
【0157】
[0216]一部の実施形態では、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体は、実質的に純粋なSC-β細胞またはその前駆体の集団である。一部の実施形態では、SC-β細胞またはその前駆体の集団は多能性細胞または分化した細胞の混合物を含む。一部の実施形態では、SC-β細胞またはその前駆体の集団は実質的に胚幹細胞または多能性細胞またはiPS細胞を含まないか、それらを欠いている。
【0158】
[0217]一部の実施形態では、体細胞、例えば線維芽細胞は、対象から例えば組織生検、例えば皮膚生検として単離することができ、本明細書に記載した組成物および方法における使用のための少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体を生成するためのさらなる分化のための人工多能性幹細胞に再プログラミングすることができる。一部の実施形態では、体細胞、例えば線維芽細胞は当業者には公知の方法によって培地中に維持され、一部の実施形態では、本明細書に開示した方法によってSC-β細胞に変換される前に増加させられる。
【0159】
[0218]一部の実施形態では、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体は当業者には公知の方法によって培地中に維持され、一部の実施形態では、本明細書に開示した方法によってSC-β細胞に変換される前に増加させられる。
【0160】
[0219]さらに、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体、例えば膵前駆細胞は任意の哺乳動物種からのものであってよく、その非限定的な例にはネズミ科、ウシ科、サル科、ブタ科、ウマ科、ヒツジ科、またはヒトの細胞が含まれる。明確かつ単純にするため、本明細書における方法の説明は哺乳動物の少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体に言及しているが、本明細書に記載した方法の全ては少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体の他の細胞型に容易に適用できることを理解されたい。一部の実施形態では、少なくとも1個のSC-β細胞またはその前駆体はヒト個体から誘導される。
【0161】
[0220]膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させてSC-β細胞を産生するステップを含み、細胞集団が幹細胞からin vitroで誘導される、幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞を産生するための方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、幹細胞はヒト多能性幹細胞である。一部の実施形態では、本方法は、細胞集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、スタウロスポリン、またはそれらの任意の組合せのうち少なくとも1つと接触させるステップをさらに含む
。一部の実施形態では、SC-β細胞はC-PEPおよびNKX6-1を発現する。一部の実施形態では、SC-β細胞はグルコースチャレンジに対してin vitroでグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。一部の実施形態では、本方法は細胞集団をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップをさらに含む。
【0162】
[0221]膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させてSC-β細胞を産生するステップを含み、細胞集団が幹細胞からin vitroで誘導され、SC-β細胞がグルコースチャレンジに対してin vitroでグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する、幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞を産生するための方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、幹細胞はヒト多能性幹細胞である。一部の実施形態では、本方法は、細胞集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、スタウロスポリン、またはそれらの任意の組合せのうち少なくとも1つと接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は細胞集団をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させるステップをさらに含む。
【0163】
[0222]非限定的で例示的なエピジェネティック修飾化合物には、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ブロモドメイン阻害剤、またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0164】
[0223]一実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はゼステホモログ2(EZH2)のエンハンサーの阻害剤である。EZH2はヒストン-リシン N-メチルトランスフェラーゼ酵素である。EZH2阻害剤の非限定的な例には、3-デアザネプラノシンA(DZNep)、EPZ6438、EPZ005687(S-アデノシルメチオニン(SAM)競合的阻害剤)、EI1、GSK126、およびUNC1999が含まれる。DZNepは全てのタンパク質メチルトランスフェラーゼの生成物系阻害剤であるS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)の加水分解を阻害してSAHの細胞内濃度の上昇を導き、これが次にEZH2を阻害する。DZNepはEZH2に特異的ではなく、他のDNAメチルトランスフェラーゼをも阻害する。GSK126はEZH1の150倍の選択性を有するSAM競合性EZH2阻害剤である。UNC1999はGSK126の類似体であり、その相当物であるGSK126より選択性が低い。
【0165】
[0224]一実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDZNepである。一実施形態では、HDAC阻害剤はクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである。一実施形態では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤はKD5170(メルカプトケトン系HDAC阻害剤)、MC1568(クラスIIa HDAC阻害剤)、TMP195(クラスIIa HDAC阻害剤)、またはそれらの任意の組合せである。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はボリノスタット、ロミデプシン(Istodax)、チダミド、パノビノスタット(ファリダク)、ベリノスタット(PXD101)、パノビノスタット(LBH589)、バルプロ酸、モセチノスタット(MGCD0103)、アベキシノスタット(PCI-24781)、エンチノスタット(MS-275)、SB939、レスミノスタット(4SC-201)、ギビノスタット(ITF2357)、キシノスタット(JNJ-26481585)、HBI-8000(ベンザミドHDI)、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、CHR-2845、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ME-344、スルホラファン、またはそれらの任意の変異体である。
【0166】
[0225]一部の例では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばDZNep)の濃度は0.01~10μMまたは約0.01~10μMであってよい。例えば、ヒスト
ンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばDZNep)の濃度は約0.01~1、0.1~1、0.25~1、0.5~1、1~5、または1~10μMであってよい。ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばDZNep)の濃度は約5、4、3、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、または0.01μM未満であってよい。
【0167】
[0226]本開示の態様には胚体内胚葉細胞が含まれる。本明細書において使用する胚体内胚葉細胞は、任意の供給源から誘導されまたは任意の好適なプロトコールに従って産生され得る。一部の態様では、多能性幹細胞、例えばiPSCまたはhESCは内胚葉細胞に分化される。一部の態様では、内胚葉細胞(ステージ1)は、例えば原腸管細胞(ステージ2)、Pdx1陽性膵前駆細胞(ステージ3)、NKX6.1陽性膵前駆細胞(ステージ4)、またはNgn3陽性内分泌前駆細胞もしくはインスリン陽性内分泌細胞(ステージ5)にさらに分化され、続いてSC-β細胞(ステージ6)に誘起されまたは成熟する。
【0168】
[0227]一部の例では、胚体内胚葉細胞は、集団中の少なくともいくつかの多能性細胞を胚体内胚葉細胞に分化させることによって、例えば多能性細胞の集団をi)TGF-βスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子およびii)WNTシグナル伝達経路活性化剤と接触させて多能性細胞の少なくともいくつかの胚体内胚葉細胞への分化を誘起することによって、得ることができ、胚体内胚葉細胞は胚体内胚葉に特徴的な少なくとも1つのマーカーを発現する。
【0169】
[0228]多能性幹細胞を(例えば単独で、またはWNTシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起して胚体内胚葉細胞に分化させることができるTGF-βスーパーファミリーからの任意の成長因子を、本明細書で提供する方法に使用することができる。一部の例では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子はアクチビンAを含む。一部の例では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子は成長分化因子8(GDF8)を含む。多能性幹細胞を(例えば単独で、またはTGF-βスーパーファミリーからの成長因子と組み合わせて)誘起して胚体内胚葉細胞に分化させることができる任意のWNTシグナル伝達経路活性化剤は、本明細書で提供する方法において使用することができる。一部の例では、WNTシグナル伝達経路活性化剤はCHIR99Q21を含む。一部の例では、WNTシグナル伝達経路活性化剤はWnt3a組換えタンパク質を含む。
【0170】
[0229]一部の例では、集団中の少なくともいくつかの多能性細胞を胚体内胚葉細胞に分化するステップは、多能性細胞の集団をi)アクチビンA、およびii)CHIR99021と好適な期間、例えば約2日、約3日、約4日、または約5日、接触させて集団中の多能性細胞の少なくともいくつかの胚体内胚葉細胞への分化を誘起するプロセスによって達成され、胚体内胚葉細胞は胚体内胚葉に特徴的な少なくとも1つのマーカーを発現する。
【0171】
[0230]一部の例では、本方法は、多能性細胞の集団を好適な濃度、例えば約10ng/mL、約20ng/mL、約50ng/mL、約75ng/mL、約80ng/mL、約90ng/mL、約95ng/mL、約100ng/mL、約110ng/mL、約120ng/mL、約130ng/mL、約140ng/mL、約150ng/mL、約175ng/mL、約180ng/mL、約200ng/mL、約250ng/mL、または約300ng/mLのTGF-βスーパーファミリーからの成長因子(例えばアクチビンA)と接触させることによって多能性細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップを含む。一部の例では、本方法は多能性細胞の胚体内胚葉細胞への分化のための約100ng/mLのアクチビンAの使用を含む。一部の例では、本方法は多能性細胞の胚体内胚葉細胞
への分化のための約200ng/mLのアクチビンAの使用を含む。
【0172】
[0231]一部の例では、本方法は、多能性細胞の集団を好適な濃度、例えば約0.01μM、約0.05μM、約0.1μM、約0.2μM、約0.5μM、約0.8μM、約1μM、約1.5μM、約2μM、約2.5μM、約3μM、約3.5μM、約4μM、約5μM、約8μM、約10μM、約12μM、約15μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、または約200μMのWNTシグナル伝達経路活性化剤(例えばCHIR99021)と接触させることによって多能性細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップを含む。一部の例では、本方法は多能性細胞の胚体内胚葉細胞への分化のための約2μMのCHIR99021の使用を含む。一部の例では、本方法は多能性細胞の胚体内胚葉細胞への分化のための約5μMのCHIR99021の使用を含む。
【0173】
[0232]一部の例では、本明細書で開示した方法によって生成した胚体内胚葉細胞は、Nodal、Tmprss2、Tmem30b、St14、Spink3、Sh3gl2、Ripk4、Rab1S、Npnt、Clic6、Cldn5、Cacna1b、Bnip1、Anxa4、Emb、FoxA1、Sox17、およびRbm35aからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現し、少なくとも1つのマーカーの発現は、それが誘導されたもとの多能性幹細胞に対して、胚体内胚葉細胞において統計学的に有意な量で上方制御される。一部の例では、本明細書で開示した方法によって生成した胚体内胚葉細胞は、Gata4、SPARC、AFP、およびDab2からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーを、それが誘導されたもとの多能性幹細胞に対して統計的に有意な量で発現しない。一部の例では、本明細書で開示した方法によって生成した胚体内胚葉細胞は、Zic1、Pax6、Flk1、およびCD31からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーを、それが誘導されたもとの多能性幹細胞に対して統計的に有意な量で発現しない。一部の例では、本明細書で開示した方法によって生成した胚体内胚葉細胞は、それが誘導されたもとの多能性幹細胞に対してより高いレベルのSmad2のホスホリル化を統計的に有意な量で有する。一部の例では、本明細書で開示した方法によって生成した胚体内胚葉細胞は、in vivoで腸管を形成する能力を有する。一部の例では、本明細書で開示した方法によって生成した胚体内胚葉細胞は、腸細胞に特徴的な形態を有する細胞に分化することができ、腸細胞に特徴的な形態を有する細胞はFoxA2および/またはClaudin6を発現する。一部の例では、本明細書で開示した方法によって生成した胚体内胚葉細胞は、内胚葉起源の細胞にさらに分化することができる。
【0174】
[0233]一部の例では、多能性幹細胞の集団は、いずれの分化の前にも、または分化の第1段階の間に、少なくとも1つのβ細胞分化因子の存在下に培養される。任意の多能性幹細胞、例えばヒト多能性幹細胞もしくはヒトiPS細胞、または本明細書で論じた任意の多能性幹細胞もしくはその他の好適な多能性幹細胞を使用することができる。一部の例では、本明細書に記載したβ細胞分化因子は多能性幹細胞の集団の培地中に存在してよく、または多能性幹細胞の集団の成長(例えば複製または増加)の間に一度にまたは定期的に添加してよい。ある特定の例では、多能性幹細胞の集団は、いずれの分化の前にも少なくとも1つのβ細胞分化因子に曝露してよい。他の例では、多能性幹細胞の集団は、分化の第1段階の間に少なくとも1つのβ細胞分化因子に曝露してよい。
【0175】
[0234]本開示の態様には原腸管細胞が含まれる。本明細書において使用する原腸管細胞は、任意の供給源から誘導されまたは任意の好適なプロトコールに従って産生され得る。一部の態様では、胚体内胚葉細胞は原腸管細胞に分化される。一部の態様では、原腸管細胞は、例えばPdx1陽性膵前駆細胞、NKX6.1陽性膵前駆細胞、Ngn3陽性内分泌前駆細胞、インスリン陽性内分泌細胞にさらに分化され、続いてSC-β細胞に誘起されまたは成熟する。
【0176】
[0235]一部の例では、原腸管細胞は、集団中の少なくともいくつかの胚体内胚葉細胞を原腸管細胞に分化させることによって、例えば胚体内胚葉細胞を線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子と接触させて胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかの原腸管細胞への分化を誘起することによって、得ることができ、原腸管細胞は原腸管細胞に特徴的な少なくとも1つのマーカーを発現する。
【0177】
[0236]胚体内胚葉細胞を(例えば単独で、または他の因子と組み合わせて)誘起して原腸管細胞に分化させることができるFGFファミリーからの任意の成長因子を、本明細書で提供する方法に使用することができる。一部の例では、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は角化細胞成長因子(KGF)を含む。一部の例では、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子はFGF2を含む。一部の例では、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子はFGF8Bを含む。一部の例では、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子はFGF10を含む。一部の例では、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子はFGF21を含む。
【0178】
[0237]一部の例では、原腸管細胞は、集団中の少なくともいくつかの胚体内胚葉細胞を原腸管細胞に分化させることによって、例えば胚体内胚葉細胞をある期間、例えば約1日、約2日、約3日、または約4日、KGFと接触させて胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかの原腸管細胞への分化を誘起することによって、得ることができる。
【0179】
[0238]一部の例では、本方法は、胚体内胚葉細胞を例えば約10ng/mL、約20ng/mL、約50ng/mL、約75ng/mL、約80ng/mL、約90ng/mL、約95ng/mL、約100ng/mL、約110ng/mL、約120ng/mL、約130ng/mL、約140ng/mL、約150ng/mL、約175ng/mL、約180ng/mL、約200ng/mL、約250ng/mL、または約300ng/mLの好適な濃度のFGFファミリーからの成長因子(例えばKGF)と接触させることによって胚体内胚葉細胞を原腸管細胞に分化させるステップを含む。一部の例では、本方法は胚体内胚葉細胞の原腸管細胞への分化のための約50ng/mLのKGFの使用を含む。一部の例では、本方法は胚体内胚葉細胞の原腸管細胞への分化のための約100ng/mLのKGFの使用を含む。
【0180】
[0239]本開示の態様にはPdx1陽性膵前駆細胞が含まれる。本明細書において使用するPdx1陽性膵前駆細胞は、任意の供給源から誘導されまたは任意の好適なプロトコールに従って産生され得る。一部の態様では、原腸管細胞はPdx1陽性膵前駆細胞に分化される。一部の態様では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、例えばNKX6.1陽性膵前駆細胞、Ngn3陽性内分泌前駆細胞、インスリン陽性内分泌細胞にさらに分化され、続いてSC-β細胞に誘起されまたは成熟する。
【0181】
[0240]一部の態様では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、集団中の少なくともいくつかの原腸管細胞をPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることによって、例えば原腸管細胞をi)少なくとも1つのBMPシグナル伝達経路阻害剤、ii)TGF-βスーパーファミリーからの成長因子、iii)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、iv)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、v)少なくとも1つのレチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、vi)少なくとも1つのプロテインキナーゼC活性化剤、およびvii)ROCK阻害剤と接触させて原腸管細胞の少なくともいくつかのPdx1陽性膵前駆細胞への分化を誘起することによって、得ることができ、Pdx1陽性膵前駆細胞はPdx1を発現する。
【0182】
[0241]一部の態様では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、集団中の少なくともいくつかの原腸管細胞をPdx1陽性膵前駆細胞に分化することによって、例えば原腸管細胞をi)少
なくとも1つのBMPシグナル伝達経路阻害剤、ii)TGF-βスーパーファミリーからの成長因子、iii)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、iv)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、v)少なくとも1つのレチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、およびvi)少なくとも1つのプロテインキナーゼC活性化剤と接触させて原腸管細胞の少なくともいくつかのPdx1陽性膵前駆細胞への分化を誘起することによって、得ることができ、Pdx1陽性膵前駆細胞はPdx1を発現する。
【0183】
[0242]一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、集団中の少なくともいくつかの原腸管細胞をPdx1陽性膵前駆細胞に分化することによって、例えば原腸管細胞をi)少なくとも1つのBMPシグナル伝達経路阻害剤、ii)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、iii)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、iv)少なくとも1つのレチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、およびv)少なくとも1つのプロテインキナーゼC活性化剤と接触させて原腸管細胞の少なくともいくつかのPdx1陽性膵前駆細胞への分化を誘起することによって、得ることができ、Pdx1陽性膵前駆細胞はPdx1を発現する。
【0184】
[0243]一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、集団中の少なくともいくつかの原腸管細胞をPdx1陽性膵前駆細胞に分化することによって、例えば原腸管細胞をi)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、ii)少なくとも1つのレチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、およびiii)少なくとも1つのプロテインキナーゼC活性化剤と接触させることによって、得ることができ、Pdx1陽性膵前駆細胞はPdx1を発現する。
【0185】
[0244]一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、集団中の少なくともいくつかの原腸管細胞をPdx1陽性膵前駆細胞に分化することによって、例えば原腸管細胞をi)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、およびii)少なくとも1つのレチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤と接触させて原腸管細胞の少なくともいくつかのPdx1陽性膵前駆細胞への分化を誘起することによって、得ることができ、Pdx1陽性膵前駆細胞はPdx1を発現する。
【0186】
[0245]原腸管細胞を(例えば単独で、またはTGF-βスーパーファミリーからの成長因子、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つのSHH経路阻害剤、少なくとも1つのレチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、少なくとも1つのプロテインキナーゼC活性化剤、およびROCK阻害剤と組み合わせて)誘起してPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることができる任意のBMPシグナル伝達経路阻害剤を、本明細書で提供する方法に使用することができる。一部の例では、BMPシグナル伝達経路阻害剤は、LDN193189またはDMH-1を含む。一部の例では、本方法は、原腸管細胞を例えば約30nM、約40nM、約50nM、約60nM、約70nM、約80nM、約90nM、約100nM、約110nM、約120nM、約130nM、約140nM、約150nM、約160nM、約170nM、約180nM、約190nM、約200nM、約210nM、約220nM、約230nM、約240nM、約250nM、約280nM、約300nM、約400nM、約500nM、または約1μMの濃度のBMPシグナル伝達経路阻害剤(例えばLDN193189)と接触させるステップを含む。一部の例では、本方法は、原腸管細胞を例えば約0.01μM、約0.02μM、約0.05μM、約0.1μM、約0.2μM、約0.5μM、約0.8μM、約1μM、約1.2μM、約1.5μM、約1.75μM、約2μM、約2.2μM、約2.5μM、約2.75μM、約3μM、約3.25μM、約3.5μM、約3.75μM、約4μM、約4.5μM、約5μM、約8μM、約10μM、約15μM、約20μM、約30μM、約40μM、約50μM、または約100μMの濃度のBMPシグナル伝達経路阻害剤(例えばDMH-1)と接触させるステップを含む。
【0187】
[0246]原腸管細胞を(例えば単独で、または少なくとも1つのBMPシグナル伝達経路阻害剤、FGFファミリーからの成長因子、少なくとも1つのSHH経路阻害剤、少なくとも1つのレチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、少なくとも1つのプロテインキナーゼC活性化剤、およびROCK阻害剤と組み合わせて)誘起してPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることができるTGF-βスーパーファミリーからの任意の成長因子を使用することができる。一部の例では、TGF-βファミリーからの成長因子はアクチビンAを含む。一部の例では、TGF-βファミリーからの成長因子はアクチビンAまたはGDF8を含む。一部の例では、本方法は、原腸管細胞を例えば約5ng/mL、約7.5ng/mL、約8ng/mL、約9ng/mL、約10ng/mL、約11ng/mL、約12ng/mL、約13ng/mL、約14ng/mL、約15ng/mL、約16ng/mL、約17ng/mL、約18ng/mL、約19ng/mL、約20ng/mL、約21ng/mL、約22ng/mL、約23ng/mL、約24ng/mL、約25ng/mL、約26ng/mL、約27ng/mL、約28ng/mL、約29ng/mL、約30ng/mL、約35ng/mL、約40ng/mL、約50ng/mL、または約100ng/mLの濃度のTGF-βスーパーファミリーからの成長因子(例えばアクチビンA)と接触させるステップを含む。
【0188】
[0247]原腸管細胞を(例えば単独で、または少なくとも1つのBMPシグナル伝達経路阻害剤、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子、少なくとも1つのSHH経路阻害剤、少なくとも1つのレチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、少なくとも1つのプロテインキナーゼC活性化剤、およびROCK阻害剤と組み合わせて)誘起してPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることができるFGFファミリーからの任意の成長因子を使用することができる。一部の例では、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、角化細胞成長因子(KGF)を含む。一部の例では、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、FGF2、FGF8B、FGF10、およびFGF21からなる群から選択される。一部の例では、本方法は、原腸管細胞を例えば約10ng/mL、約20ng/mL、約50ng/mL、約75ng/mL、約80ng/mL、約90ng/mL、約95ng/mL、約100ng/mL、約110ng/mL、約120ng/mL、約130ng/mL、約140ng/mL、約150ng/mL、約175ng/mL、約180ng/mL、約200ng/mL、約250ng/mL、または約300nm/mLの濃度のFGFファミリーからの成長因子(例えばKGF)と接触させるステップを含む。
【0189】
[0248]原腸管細胞を(例えば単独で、または少なくとも1つのBMPシグナル伝達経路阻害剤、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子、少なくとも1つのレチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、少なくとも1つのプロテインキナーゼC活性化剤、およびROCK阻害剤と組み合わせて)誘起してPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることができる任意のSHH経路阻害剤を使用することができる。一部の例では、SHH経路阻害剤はSant1を含む。一部の例では、本方法は、原腸管細胞を例えば約0.001μM、約0.002μM、約0.005μM、約0.01μM、約0.02μM、約0.03μM、約0.05μM、約0.08μM、約0.1μM、約0.12μM、約0.13μM、約0.14μM、約0.15μM、約0.16μM、約0.17μM、約0.18μM、約0.19μM、約0.2μM、約0.21μM、約0.22μM、約0.23μM、約0.24μM、約0.25μM、約0.26μM、約0.27μM、約0.28μM、約0.29μM、約0.3μM、約0.31μM、約0.32μM、約0.33μM、約0.34μM、約0.35μM、約0.4μM、約0.45μM、約0.5μM、約0.6μM、約0.8μM、約1μM、約2μM、または約5μMの濃度のSHH経路阻害剤(例えばSant1)と接触させるステップを含む。
【0190】
[0249]原腸管細胞を(例えば単独で、または少なくとも1つのBMPシグナル伝達経路阻害剤、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つのSHH経路阻害剤、少なくとも1つのプロテインキナーゼC活性化剤、およびROCK阻害剤と組み合わせて)誘起してPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることができる任意のRAシグナル伝達経路活性化剤を使用することができる。一部の例では、RAシグナル伝達経路活性化剤はレチノイン酸を含む。一部の例では、本方法は、原腸管細胞を例えば約0.02μM、約0.1μM、約0.2μM、約0.25μM、約0.3μM、約0.4μM、約0.45μM、約0.5μM、約0.55μM、約0.6μM、約0.65μM、約0.7μM、約0.75μM、約0.8μM、約0.85μM、約0.9μM、約1μM、約1.1μM、約1.2μM、約1.3μM、約1.4μM、約1.5μM、約1.6μM、約1.7μM、約1.8μM、約1.9μM、約2μM、約2.1μM、約2.2μM、約2.3μM、約2.4μM、約2.5μM、約2.6μM、約2.7μM、約2.8μM、約3μM、約3.2μM、約3.4μM、約3.6μM、約3.8μM、約4μM、約4.2μM、約4.4μM、約4.6μM、約4.8μM、約5μM、約5.5μM、約6μM、約6.5μM、約7μM、約7.5μM、約8μM、約8.5μM、約9μM、約9.5μM、約10μM、約12μM、約14μM、約15μM、約16μM、約18μM、約20μM、約50μM、または約100μMの濃度のRAシグナル伝達経路活性化剤(例えばレチノイン酸)と接触させるステップを含む。
【0191】
[0250]原腸管細胞を(例えば単独で、または少なくとも1つのBMPシグナル伝達経路阻害剤、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つのSHH経路阻害剤、少なくとも1つのRAシグナル伝達経路活性化剤、およびROCK阻害剤と組み合わせて)誘起してPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることができる任意のPKC活性化剤を使用することができる。一部の例では、PKC活性化剤はPdBUを含む。一部の例では、PKC活性化剤はTPBを含む。一部の例では、本方法は、原腸管細胞を例えば約10μM、約20μM、約50μM、約75μM、約80μM、約100μM、約120μM、約140μM、約150μM、約175μM、約180μM、約200μM、約210μM、約220μM、約240μM、約250μM、約260μM、約280μM、約300μM、約320μM、約340μM、約360μM、約380μM、約400μM、約420μM、約440μM、約460μM、約480μM、約500μM、約520μM、約540μM、約560μM、約580μM、約600μM、約620μM、約640μM、約660μM、約680μM、約700μM、約750μM、約800μM、約850μM、約900μM、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、または約5mMの濃度のPKC活性化剤(例えばPdBU)と接触させるステップを含む。
【0192】
[0251]原腸管細胞を(例えば単独で、または少なくとも1つのBMPシグナル伝達経路阻害剤、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つのSHH経路阻害剤、PKC活性化剤、および少なくとも1つのRAシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起してPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることができる任意のROCK阻害剤を使用することができる。一部の例では、ROCK阻害剤はThiazovivin、Y-27632、Fasudil/HA1077、またはH-1152を含む。一部の例では、ROCK阻害剤はY-27632を含む。一部の例では、ROCK阻害剤はThiazovivinを含む。一部の例では、本方法は、原腸管細胞を例えば約0.2μM、約0.5μM、約0.75μM、約1μM、約2μM、約3μM、約4μM、約5μM、約6μM、約7μM、約7.5μM、約8μM、約9μM、約10μM、約11μM、約12μM、約13μM、約14μM、約15μM、約16μM、約17μM、約18μM、約19μM、約20μM、約21μM、約22μM、約23μM、約24μM、約25μM、約26μM、約27μM、約28μM、約29μM、約30μM、約35μM、約40μM、約50μM、または約100μMの濃度のROCK阻害剤(例えばY-2
7632またはThiazovivin)と接触させるステップを含む。
【0193】
[0252]一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、集団中の少なくともいくつかの原腸管細胞をPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることによって、例えば原腸管細胞を好適な期間、例えば約1日、約2日、約3日、または約4日、レチノイン酸、KGF、Sant1、LDN193189、PdBU、Y-27632、およびアクチビンAと接触させることによって、得ることができる。一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、集団中の少なくともいくつかの原腸管細胞をPdx1陽性膵前駆細胞に分化させることによって、例えば原腸管細胞を約2日、レチノイン酸、KGF、Sant1、LDN193189、PdBU、Y-27632、およびアクチビンAと接触させることによって、得ることができる。一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は、少なくともいくつかの原腸管細胞をS3培地中で分化させることによって、得ることができる。
【0194】
[0253]本開示の態様にはNKX6.1陽性膵前駆細胞が含まれる。本明細書において使用するNKX6.1陽性膵前駆細胞は、任意の供給源から誘導されまたは任意の好適なプロトコールに従って産生され得る。一部の態様では、Pdx1陽性膵前駆細胞はNKX6.1陽性膵前駆細胞に分化される。一部の態様では、NKX6.1陽性膵前駆細胞は、例えばNgn3陽性内分泌前駆細胞、またはインスリン陽性内分泌細胞にさらに分化され、続いてSC-β細胞に誘起されまたは成熟する。
【0195】
[0254]一部の態様では、Pdx1陽性膵前駆細胞からNKX6.1陽性膵前駆細胞を生成する方法は、Pdx1陽性膵前駆細胞を含む細胞の集団を(例えば細胞のクラスター化を促進しおよび/または細胞の生存を促進する条件下で)a)線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、b)ソニックヘッジホッグ経路阻害剤、および任意選択でc)低濃度のレチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤を含む少なくとも2つのβ細胞分化因子と接触させて集団中の少なくとも1個のPdx陽性膵前駆細胞のNKX6.1陽性膵前駆細胞への分化を誘起するステップを含み、NKX6.1陽性膵前駆細胞はNKX6.1を発現する。
【0196】
[0255]一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞は、Pdx1陽性膵前駆細胞をi)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、ii)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、および任意選択でiii)低濃度のRAシグナル伝達経路活性化剤と接触させてPdx1陽性膵前駆細胞の少なくともいくつかのPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞への分化を誘起するステップによって得られ、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞はPdx1およびNKX6.1を発現する。
【0197】
[0256]一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞は、Pdx1陽性膵前駆細胞をi)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、ii)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、および任意選択でiii)低濃度のRAシグナル伝達経路活性化剤、iv)ROCK阻害剤、ならびにv)TGF-βスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子と接触させてPdx1陽性膵前駆細胞の少なくともいくつかのPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞への分化を誘起することによって得られる。一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞は、Pdx1陽性膵前駆細胞を、細胞のクラスター化を促進する条件下でFGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子と接触させることによって得られる。
【0198】
[0257]一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は多能性細胞の集団から生成される。一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞はiPS細胞の集団から生成される。一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞はESC細胞の集団から生成される。一部の例では、Pdx1陽性膵前駆細胞は胚体内胚葉細胞の集団から生成される。一部の例では、Pdx1陽性膵
前駆細胞は原腸管細胞の集団から生成される。
【0199】
[0258]Pdx1陽性膵前駆細胞を(例えば単独で、または少なくとも1つのSHH経路阻害剤、ROCK阻害剤、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子、および少なくとも1つのレチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起してNKX6.1陽性膵前駆細胞に分化させることができるFGFファミリーからの任意の成長因子を、本明細書で提供する方法に使用することができる。一部の例では、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、角化細胞成長因子(KGF)を含む。一部の例では、FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、FGF2、FGF8B、FGF10、およびFGF21からなる群から選択される。一部の例では、本方法は、Pdx1陽性膵前駆細胞を例えば約10ng/mL、約20ng/mL、約50ng/mL、約75ng/mL、約80ng/mL、約90ng/mL、約95ng/mL、約100ng/mL、約110ng/mL、約120ng/mL、約130ng/mL、約140ng/mL、約150ng/mL、約175ng/mL、約180ng/mL、約200ng/mL、約250ng/mL、または約30ng/mLの濃度のFGFファミリーからの成長因子(例えばKGF)と接触させるステップを含む。
【0200】
[0259]Pdx1陽性膵前駆細胞を(例えば単独で、またはFGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つのレチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、ROCK阻害剤、およびTGF-βスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子と組み合わせて)誘起してNKX6.1陽性膵前駆細胞に分化させることができる任意のSHH経路阻害剤を、本明細書で提供する方法に使用することができる。一部の例では、SHH経路阻害剤はSant1を含む。一部の例では、本方法は、Pdx1陽性膵前駆細胞を例えば約0.001μM、約0.002μM、約0.005μM、約0.01μM、約0.02μM、約0.03μM、約0.05μM、約0.08μM、約0.1μM、約0.12μM、約0.13μM、約0.14μM、約0.15μM、約0.16μM、約0.17μM、約0.18μM、約0.19μM、約0.2μM、約0.21μM、約0.22μM、約0.23μM、約0.24μM、約0.25μM、約0.26μM、約0.27μM、約0.28μM、約0.29μM、約0.3μM、約0.31μM、約0.32μM、約0.33μM、約0.34μM、約0.35μM、約0.4μM、約0.45μM、約0.5μM、約0.6μM、約0.8μM、約1μM、約2μM、または約5μMの濃度のSHH経路阻害剤(例えばSant1)と接触させるステップを含む。
【0201】
[0260]Pdx1陽性膵前駆細胞を(例えば単独で、またはFGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つのSHH経路阻害剤、ROCK阻害剤、およびTGF-βスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子と組み合わせて)誘起してNKX6.1陽性膵前駆細胞に分化させることができる任意のRAシグナル伝達経路活性化剤を使用することができる。一部の例では、RAシグナル伝達経路活性化剤はレチノイン酸を含む。一部の例では、本方法は、Pdx1陽性膵前駆細胞を例えば約0.02μM、約0.1μM、約0.2μM、約0.25μM、約0.3μM、約0.4μM、約0.45μM、約0.5μM、約0.55μM、約0.6μM、約0.65μM、約0.7μM、約0.75μM、約0.8μM、約0.85μM、約0.9μM、約1μM、約1.1μM、約1.2μM、約1.3μM、約1.4μM、約1.5μM、約1.6μM、約1.7μM、約1.8μM、約1.9μM、約2μM、約2.1μM、約2.2μM、約2.3μM、約2.4μM、約2.5μM、約2.6μM、約2.7μM、約2.8μM、約3μM、約3.2μM、約3.4μM、約3.6μM、約3.8μM、約4μM、約4.2μM、約4.4μM、約4.6μM、約4.8μM、約5μM、約5.5μM、約6μM、約6.5μM、約7μM、約7.5μM、約8μM、約8.5μM、約9μM、約9.5μM、約10μM、約12μM、約14μM、約15μM、約16μM、約18μM、約20μM、約50μM、または約100μMの濃度のRAシグナル伝達経路活性
化剤(例えばレチノイン酸)と接触させるステップを含む。
【0202】
[0261]Pdx1陽性膵前駆細胞を(例えば単独で、またはFGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つのSHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路活性化剤、およびTGF-βスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子と組み合わせて)誘起してNKX6.1陽性膵前駆細胞に分化させることができる任意のROCK阻害剤を使用することができる。一部の例では、ROCK阻害剤は、Thiazovivin、Y-27632、Fasudil/HA1077、または14-1152を含む。一部の例では、本方法は、Pdx1陽性膵前駆細胞を例えば約0.2μM、約0.5μM、約0.75μM、約1μM、約2μM、約3μM、約4μM、約5μM、約6μM、約7μM、約7.5μM、約8μM、約9μM、約10μM、約11μM、約12μM、約13μM、約14μM、約15μM、約16μM、約17μM、約18μM、約19μM、約20μM、約21μM、約22μM、約23μM、約24μM、約25μM、約26μM、約27μM、約28μM、約29μM、約30μM、約35μM、約40μM、約50μM、または約100μMの濃度のROCK阻害剤(例えばY-27632またはThiazovivin)と接触させるステップを含む。
【0203】
[0262]Pdx1陽性膵前駆細胞を(例えば単独で、またはFGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つのSHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路活性化剤、およびROCK阻害剤と組み合わせて)誘起してNKX6.1陽性膵前駆細胞に分化させることができるTGF-βスーパーファミリーからの任意の活性化剤を使用することができる。一部の例では、TGF-βスーパーファミリーからの活性化剤はアクチビンAまたはGDF8を含む。一部の例では、本方法は、Pdx1陽性膵前駆細胞を例えば約0.1ng/mL、約0.2ng/mL、約0.3ng/mL、約0.4ng/mL、約0.5ng/mL、約0.6ng/mL、約0.7ng/mL、約0.8ng/mL、約1ng/mL、約1.2ng/mL、約1.4ng/mL、約1.6ng/mL、約1.8ng/mL、約2ng/mL、約2.2ng/mL、約2.4ng/mL、約2.6ng/mL、約2.8ng/mL、約3ng/mL、約3.2ng/mL、約3.4ng/mL、約3.6ng/mL、約3.8ng/mL、約4ng/mL、約4.2ng/mL、約4.4ng/mL、約4.6ng/mL、約4.8ng/mL、約5ng/mL、約5.2ng/mL、約5.4ng/mL、約5.6ng/mL、約5.8ng/mL、約6ng/mL、約6.2ng/mL、約6.4ng/mL、約6.6ng/mL、約6.8ng/mL、約7ng/mL、約8ng/mL、約9ng/mL、約10ng/mL、約20ng/mL、約30ng/mL、または約50ng/mLの濃度のTGF-βスーパーファミリーからの成長因子(例えばアクチビンA)と接触させるステップを含む。一部の例では、本方法は、Pdx1陽性膵前駆細胞を例えば約5ng/mLの濃度のTGF-βスーパーファミリーからの成長因子(例えばアクチビンA)と接触させるステップを含む。
【0204】
[0263]一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞は、Pdx1陽性膵前駆細胞を、細胞のクラスター化を促進する条件下で、KGF、Sant1、およびRAと5日間接触させることによって得られる。一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞は、Pdx1陽性膵前駆細胞を、細胞のクラスター化を促進する条件下で、KGF、Sant1、RA、Y27632、およびアクチビンAと5日間接触させることによって得られる。一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞は、Pdx1陽性膵前駆細胞を、細胞のクラスター化を促進する条件下で、KGFと5日間接触させることによって得られる。一部の例では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞は、Pdx1陽性膵前駆細胞をS3培地中で接触させることによって得られる。
【0205】
[0264]本開示の態様にはインスリン陽性内分泌細胞が含まれる。本明細書において使用するインスリン陽性内分泌細胞は、任意の供給源から誘導されまたは任意の好適なプロトコールに従って産生され得る。一部の態様では、NKX6.1陽性膵前駆細胞はインスリン陽性内分泌細胞に分化される。一部の態様では、インスリン陽性内分泌細胞は、例えばSC-β細胞への誘起または成熟によってさらに分化される。
【0206】
[0265]一部の態様では、NKX6.1陽性膵前駆細胞からインスリン陽性内分泌細胞を生成する方法は、NKX6.1陽性膵前駆細胞を含む細胞の集団を(例えば細胞のクラスター化を促進する条件下で)a)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、およびb)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と接触させて、集団中の少なくとも1個のNKX6.1陽性膵前駆細胞のインスリン陽性内分泌細胞への分化を誘起するステップを含み、インスリン陽性内分泌細胞はインスリンを発現する。一部の例では、インスリン陽性内分泌細胞はPdx1、NKX6.1、NKX2.2、Mafb、glis3、Sur1、Kir6.2、Znt8、SLC2A1、SLC2A3、および/またはインスリンを発現する。
【0207】
[0266]NKX6.1陽性膵前駆細胞の分化を(例えば単独で、または他のβ細胞分化因子、例えば甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起してインスリン陽性内分泌細胞に分化させることができる任意のTGF-βシグナル伝達経路阻害剤を使用することができる。一部の例では、TGF-βシグナル伝達経路は、TGF-βI型受容体キナーゼシグナル伝達を含む。一部の例では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤はAlk5阻害剤IIを含む。
【0208】
[0267]NKX6.1陽性膵前駆細胞の分化を(例えば単独で、または他のβ細胞分化因子、例えばTGF-βシグナル伝達経路阻害剤と組み合わせて)誘起してインスリン陽性内分泌細胞に分化させることができる任意の甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤を使用することができる。一部の例では、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤はトリヨードチロニン(T3)を含む。一部の例では、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤はGC-1を含む。
【0209】
[0268]一部の例では、本方法は細胞(例えばNKX6.1陽性膵前駆細胞)の集団を少なくとも1つの追加の因子と接触させるステップを含む。一部の例では、本方法はPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をi)SHH経路阻害剤、ii)RAシグナル伝達経路活性化剤、iii)γ-セクレターゼ阻害剤、iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、v)プロテインキナーゼ阻害剤、vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、またはvii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤のうち少なくとも1つと接触させるステップを含む。
【0210】
[0269]一部の例では、本方法は、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を、i)SHH経路阻害剤、ii)RAシグナル伝達経路活性化剤、iii)γ-セクレターゼ阻害剤、iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、v)少なくとも1つの骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、viii)プロテインキナーゼ阻害剤、またはix)ROCK阻害剤のうち少なくとも1つと接触させるステップを含む。
【0211】
[0270]一部の例では、本方法は、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を、i)SHH経路阻害剤、ii)RAシグナル伝達経路活性化剤、iii)γ-セクレターゼ阻害剤、iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、v)少なくとも1つの骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、vi)T
GF-βシグナル伝達経路阻害剤、vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、viii)エピジェネティック修飾化合物、ix)プロテインキナーゼ阻害剤、またはx)ROCK阻害剤のうち少なくとも1つと接触させるステップを含む。
【0212】
[0271]一部の実施形態では、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞からインスリン陽性内分泌細胞を生成する方法において、分化因子のいくつかは分化のステップの間、最初の1日、2日、3日、4日、または5日間のみ存在する。一部の例では、SHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路活性化剤、およびEGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子等の分化因子のいくつかは、インキュベーションの最初の3日間の後に培地から除去される。
【0213】
[0272]集団中のNKX6.1陽性膵前駆細胞のインスリン陽性内分泌細胞への分化を(例えば単独で、またはTGF-βシグナル伝達経路阻害剤のいずれかおよび/もしくは甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起することができる任意のγ-セクレターゼ阻害剤を使用することができる。一部の例では、γ-セクレターゼ阻害剤はXXIを含む。一部の例では、γ-セクレターゼ阻害剤はDAPTを含む。一部の例では、本方法は、NKX6.1陽性膵前駆細胞を例えば約0.01μM、約0.02μM、約0.05μM、約0.075μM、約0.1μM、約0.2μM、約0.3μM、約0.4μM、約0.5μM、約0.6μM、約0.7μM、約0.8μM、約0.9μM、約1μM、約1.1μM、約1.2μM、約1.3μM、約1.4μM、約1.5μM、約1.6μM、約1.7μM、約1.8μM、約1.9μM、約2μM、約2.1μM、約2.2μM、約2.3μM、約2.4μM、約2.5μM、約2.6μM、約2.7μM、約2.8μM、約2.9μM、約3μM、約3.2μM、約3.4μM、約3.6μM、約3.8μM、約4μM、約4.2μM、約4.4μM、約4.6μM、約4.8μM、約5μM、約5.2μM、約5.4μM、約5.6μM、約5.8μM、約6μM、約6.2μM、約6.4μM、約6.6μM、約6.8μM、約7μM、約8μM、約9μM、約10μM、約20μM、約30μM、または約50μMの濃度のγ-セクレターゼ阻害剤(例えばXXI)と接触させるステップを含む。
【0214】
[0273]集団中のNKX6.1陽性膵前駆細胞のインスリン陽性内分泌細胞への分化を(例えば単独で、またはTGF-βシグナル伝達経路阻害剤のいずれかおよび/もしくは甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起することができるEGFファミリーからの任意の成長因子を使用することができる。一部の例では、EGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子はベータセルリンを含む。一部の例では、EGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子はEGFを含む。一部の例では、本方法は、NKX6.1陽性膵前駆細胞を例えば約1ng/mL、約2ng/mL、約4ng/mL、約6ng/mL、約8ng/mL、約10ng/mL、約12ng/mL、約14ng/mL、約16ng/mL、約18ng/mL、約20ng/mL、約22ng/mL、約24ng/mL、約26ng/mL、約28ng/mL、約30ng/mL、約40ng/mL、約50ng/mL、約75ng/mL、約80ng/mL、約90ng/mL、約95ng/mL、約100ng/mL、約150ng/mL、約200ng/mL、約250ng/mL、または約300ng/mLの濃度のEGFファミリーからの成長因子(例えばベータセルリン)と接触させるステップを含む。
【0215】
[0274]NKX6.1陽性膵前駆細胞の分化を(例えば単独で、またはTGF-βシグナル伝達経路阻害剤のいずれかおよび/もしくは甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起してインスリン陽性内分泌細胞に分化させることができる任意のRAシグナル伝達経路活性化剤を使用することができる。一部の例では、RAシグナル伝達経路活性化剤はRAを含む。一部の例では、本方法は、NKX6.1陽性膵前駆細胞を例えば約0.02μM、約0.1μM、約0.2μM、約0.25μM、約0.3μM、約
0.4μM、約0.45μM、約0.5μM、約0.55μM、約0.6μM、約0.65μM、約0.7μM、約0.75μM、約0.8μM、約0.85μM、約0.9μM、約1μM、約1.1μM、約1.2μM、約1.3μM、約1.4μM、約1.5μM、約1.6μM、約1.7μM、約1.8μM、約1.9μM、約2μM、約2.1μM、約2.2μM、約2.3μM、約2.4μM、約2.5μM、約2.6μM、約2.7μM、約2.8μM、約3μM、約3.2μM、約3.4μM、約3.6μM、約3.8μM、約4μM、約4.2μM、約4.4μM、約4.6μM、約4.8μM、約5μM、約5.5μM、約6μM、約6.5μM、約7μM、約7.5μM、約8μM、約8.5μM、約9μM、約9.5μM、約10μM、約12μM、約14μM、約15μM、約16μM、約18μM、約20μM、約50μM、または約100μMの濃度のRAシグナル伝達経路活性化剤(例えばレチノイン酸)と接触させるステップを含む。
【0216】
[0275]NKX6.1陽性膵前駆細胞の分化を(例えば単独で、またはTGF-βシグナル伝達経路阻害剤のいずれかおよび/もしくは甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起してインスリン陽性内分泌細胞に分化させることができる任意のSHH経路阻害剤を、本明細書で提供する方法に使用することができる。一部の例ではSHH経路阻害剤はSant1を含む。一部の例では、本方法は、NKX6.1陽性膵前駆細胞を例えば約0.001μM、約0.002μM、約0.005μM、約0.01μM、約0.02μM、約0.03μM、約0.05μM、約0.08μM、約0.1μM、約0.12μM、約0.13μM、約0.14μM、約0.15μM、約0.16μM、約0.17μM、約0.18μM、約0.19μM、約0.2μM、約0.21μM、約0.22μM、約0.23μM、約0.24μM、約0.25μM、約0.26μM、約0.27μM、約0.28μM、約0.29μM、約0.3μM、約0.31μM、約0.32μM、約0.33μM、約0.34μM、約0.35μM、約0.4μM、約0.45μM、約0.5μM、約0.6μM、約0.8μM、約1μM、約2μM、または約5μMの濃度のSHH経路阻害剤(例えばSant1)と接触させるステップを含む。
【0217】
[0276]NKX6.1陽性膵前駆細胞の分化を(例えば単独で、またはTGF-βシグナル伝達経路阻害剤のいずれかおよび/もしくは甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起してインスリン陽性内分泌細胞に分化させることができる任意のBMPシグナル伝達経路阻害剤を使用することができる。一部の例では、BMPシグナル伝達経路阻害剤はLDN193189またはDMH-1を含む。一部の例では、本方法は、NKX6.1陽性膵前駆細胞を例えば約30nM、約40nM、約50nM、約60nM、約70nM、約80nM、約90nM、約100nM、約110nM、約120nM、約130nM、約140nM、約150nM、約160nM、約170nM、約180nM、約190nM、約200nM、約210nM、約220nM、約230nM、約240nM、約250nM、約280nM、約300nM、約400nM、約500nM、または約1μMの濃度のBMPシグナル伝達経路阻害剤(例えばLDN1931189)と接触させるステップを含む。
【0218】
[0277]集団中のNKX6.1陽性膵前駆細胞のインスリン陽性内分泌細胞への分化を(例えば単独で、またはTGF-βシグナル伝達経路阻害剤のいずれかおよび/もしくは甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起することができる任意のROCK阻害剤を使用することができる。一部の例では、ROCK阻害剤はThiazovivin、Y-27632、Fasudil/HA1077、またはH-1152を含む。一部の例では、ROCK阻害剤はY-27632を含む。一部の例では、ROCK阻害剤はThiazovivinを含む。一部の例では、本方法は、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を例えば約0.2μM、約0.5μM、約0.75μM、約1μM、約2μM、約3μM、約4μM、約5μM、約6μM、約7μM、約7.5μM、約8μM、約9μM、約10μM、約11μM、約12μM、約13μM、約14μM、約1
5μM、約16μM、約17μM、約18μM、約19μM、約20μM、約21μM、約22μM、約23μM、約24μM、約25μM、約26μM、約27μM、約28μM、約29μM、約30μM、約35μM、約40μM、約50μM、または約100μMの濃度のROCK阻害剤(例えばY-27632またはThiazovivin)と接触させるステップを含む。
【0219】
[0278]集団中のNKX6.1陽性膵前駆細胞のインスリン陽性内分泌細胞への分化を(例えば単独で、またはTGF-βシグナル伝達経路阻害剤のいずれかおよび/もしくは甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起することができる任意のエピジェネティック修飾化合物を使用することができる。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤またはHDAC阻害剤を含む。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばDZNepを含む。一部の例では、エピジェネティック修飾化合物はHDAC阻害剤、例えばKD5170を含む。一部の例では、本方法は、Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を例えば約0.01μM、約0.025μM、約0.05μM、約0.075μM、約0.1μM、約0.15μM、約0.2μM、約0.5μM、約0.75μM、約1μM、約2μM、約3μM、約4μM、約5μM、約6μM、約7μM、約7.5μM、約8μM、約9μM、約10μM、約15μM、約20μM、約25μM、約30μM、約35μM、約40μM、約50μM、または約100μMの濃度のエピジェネティック修飾化合物(例えばDZNepまたはKD5170)と接触させるステップを含む。
【0220】
[0279]一部の例では、細胞の集団は任意選択でプロテインキナーゼ阻害剤と接触させられる。一部の例では、細胞の集団はプロテインキナーゼ阻害剤と接触させられない。一部の例では、細胞の集団はプロテインキナーゼ阻害剤と接触させられる。集団中のNKX6.1陽性膵前駆細胞のインスリン陽性内分泌細胞への分化を(例えば単独で、またはTGF-βシグナル伝達経路阻害剤のいずれかおよび/もしくは甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤と組み合わせて)誘起することができる任意のプロテインキナーゼ阻害剤を使用することができる。一部の例では、プロテインキナーゼ阻害剤はスタウロスポリンを含む。
【0221】
[0280]一部の例では、本方法は、細胞(例えばNKX6.1陽性膵前駆細胞)の集団をXXI、Alk5i、T3またはGC-1、RA、Sant1、およびベータセルリンと7日間接触させて集団中の少なくとも1つのNKX6.1陽性膵前駆細胞のインスリン陽性内分泌細胞への分化を誘起するステップを含み、インスリン陽性内分泌細胞はインスリンを発現する。一部の例では、本方法は、細胞(例えばNKX6.1陽性膵前駆細胞)の集団をXXI、Alk5i、T3またはGC-1、RA、Sant1、ベータセルリン、およびLDN193189と7日間接触させて集団中の少なくとも1つのNKX6.1陽性膵前駆細胞のインスリン陽性内分泌細胞への分化を誘起するステップを含み、インスリン陽性内分泌細胞はインスリンを発現する。一部の実施形態では、1つまたは複数の分化因子がステージ5の一部で、例えばステージ5の期間の最初の1日、2日、3日、4日、5日、または6日にのみ、またはステージの期間の最後の1日、2日、3日、4日、5日、または6日に、添加される。1つの例では、細胞はSHHシグナル伝達経路阻害剤とステージ5の間の最初の2日、3日、4日または5日にのみ接触させられ、その後、SHHシグナル伝達経路阻害剤は培地から除去される。別の例では、細胞はBMPシグナル伝達経路阻害剤とステージ5の間の最初の1日、2日、または3日にのみ接触させられ、その後、BMPシグナル伝達経路阻害剤は培地から除去される。
【0222】
[0281]一部の例では、本方法は細胞(例えばNKX6.1陽性膵前駆細胞)の集団をBE5培地中で培養して集団中の少なくとも1個のNKX6.1陽性膵前駆細胞のインスリ
ン陽性内分泌細胞への分化を誘起するステップを含み、インスリン陽性内分泌細胞はインスリンを発現する。
【0223】
[0282]本開示の態様は膵β細胞(例えば非天然膵β細胞)を産生するステップを含む。非天然膵β細胞は、一部の例では、形態および機能において内因性成熟β細胞と類似しているが、それにも関わらず天然β細胞とは区別される。
【0224】
[0283]一部の例では、本明細書で提供する方法を用いて産生されたインスリン陽性膵内分泌細胞は、単独で、または他の型の細胞、例えばその前駆体、例えば幹細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、Pdx1陽性膵前駆細胞、もしくはNKX6.1陽性膵前駆細胞とともに、細胞クラスターを形成することができる。
【0225】
[0284]一部の例では、インスリン陽性内分泌細胞を含む細胞集団は、いかなる外因性分化因子(例えばTGF-βシグナル伝達経路の阻害剤、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、PKC活性化剤、TGF-βスーパーファミリー、FGFファミリー、もしくはEGFファミリーからの成長因子、SHHシグナル伝達経路阻害剤、γ-セクレターゼ阻害剤、ROCK阻害剤、またはBMPシグナル伝達経路阻害剤)の添加もなしに、SC-β細胞に成熟するように直接誘起することができる。
【0226】
[0285]一部の例では、インスリン陽性内分泌細胞を分化因子と接触させることによって、インスリン陽性内分泌細胞を含む細胞集団を直接誘起してSC-β細胞に成熟させることができる。分化因子は、本明細書に記載したTGF-βシグナル伝達経路の少なくとも1つの阻害剤および甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤を含み得る。一部の例では、SC-β細胞はインスリン陽性内分泌細胞を含む細胞の集団をAlk5iおよびT3もしくはGC-1と接触させることによって得ることができる。
【0227】
[0286]一部の例では、インスリン陽性内分泌細胞はNS-GFs培地、MCDB131培地、DMEM培地、またはCMRL培地中で成熟させることができる。一部の例では、インスリン陽性内分泌細胞は10%FBSを補ったCMRL培地中で成熟させることができる。一部の例では、インスリン陽性内分泌細胞は1%HSAを補ったDMEM培地中で成熟させることができる。他の例では、SC-β細胞は、インスリン陽性内分泌細胞を含む細胞の集団を、2%BSAを補ってもよいMCDB131培地中で培養することによって得ることができる。一部の例では、インスリン陽性内分泌細胞をSC-β細胞に成熟させるための2%BSAを補ったMCDB131培地は、本明細書に記載した小分子の因子を含まなくてよい。一部の例では、インスリン陽性内分泌細胞をSC-β細胞に成熟させるための2%BSAを補ったMCDB131培地は、血清(例えばFBS)を含まなくてよい。
【0228】
[0287]一部の態様では、本開示は多能性細胞からSC-β細胞を産生する方法を提供し、本方法は、a)多能性幹細胞をTGF-βスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子およびWNTシグナル伝達経路活性化剤と3日間接触させることによって集団中の多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップ、b)胚体内胚葉細胞をFGFファミリーからの少なくとも1つの因子と3日間接触させるプロセスによって胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかを原腸管細胞に分化させるステップ、c)原腸管細胞をi)レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、ii)FGFファミリーからの少なくとも1つの因子、iii)SHH経路阻害剤、iv)BMPシグナル伝達経路阻害剤(例えばDMH-1またはLDN193189)、v)PKC活性化剤、およびvi)ROCK阻害剤と接触させるプロセスによって原腸管細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性膵前駆細胞に分化させるステップ、d)Pdx1陽性膵前駆細胞を細胞のクラスター化を促進する条件下でi)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、ii)少なくとも1つのSHH
経路阻害剤、および任意選択でiii)RAシグナル伝達経路活性化剤、および任意選択でiv)ROCK阻害剤、ならびにv)TGF-βスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子と5日間、1日おきに接触させるプロセスによってPdx1陽性膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップであって、NKX6.1陽性膵前駆細胞がPdx1およびNKX6.1を発現するステップ、e)Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、ii)THシグナル伝達経路活性化剤、iii)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、iv)RAシグナル伝達経路活性化剤、v)ガンマ-セクレターゼ阻害剤、任意選択でvi)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、および任意選択でvii)BMPシグナル伝達経路阻害剤と5日~7日の間、1日おきに接触させるプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞に分化させるステップ、ならびにf)Pdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞を外因性の分化因子なしに7日~14日の間、1日おきに培地(例えばNS-GFs培地、BSAを補ったMCDB培地、MCDB131培地、またはDMEM/F12培地)中で培養してPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少なくともいくつかのSC-β細胞へのin vitroの成熟を誘起するプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少なくともいくつかをSC-β細胞に分化させるステップであって、SC-β細胞がin vitroおよび/またはin vivoでGSIS応答を呈するステップを含む。一部の例では、GSIS応答は内因性成熟β細胞のGSIS応答に類似している。
【0229】
[0288]一部の態様では、本開示は多能性細胞からSC-β細胞を産生する方法を提供し、本方法は、a)多能性幹細胞をTGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子およびWNTシグナル伝達経路活性化剤と3日間接触させることによって集団中の多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップ、b)胚体内胚葉細胞をFGFファミリーからの少なくとも1つの因子と3日間接触させるプロセスによって胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかを原腸管細胞に分化させるステップ、c)原腸管細胞をi)レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、ii)FGFファミリーからの少なくとも1つの因子、iii)SHH経路阻害剤、iv)BMPシグナル伝達経路阻害剤、v)PKC活性化剤、vi)ROCK阻害剤、およびvii)TGFβスーパーファミリーからの成長因子と2日間接触させるプロセスによって原腸管細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性膵前駆細胞に分化させるステップ、d)Pdx1陽性膵前駆細胞を細胞のクラスター化を促進する条件下でi)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、ii)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、および任意選択でiii)RAシグナル伝達経路活性化剤、および任意選択でiv)ROCK阻害剤、ならびにv)TGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子と5日間、1日おきに接触させるプロセスによってPdx1陽性膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップであって、NKX6.1陽性膵前駆細胞がPdx1およびNKX6.1を発現するステップ、e)Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、ii)THシグナル伝達経路活性化剤、iii)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、iv)RAシグナル伝達経路活性化剤、v)γ-セクレターゼ阻害剤、任意選択でvi)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、および任意選択でvii)BMPシグナル伝達経路阻害剤と5日~7日の間、1日おきに接触させるプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞に分化させるステップ、ならびにf)Pdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞を外因性の分化因子なしに7日~14日の間、1日おきに培地(例えばNS-GFs培地、BSAを補ったMCDB培地、MCDB131培地、またはDMEM/F12培地)中で培養してPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少な
くともいくつかのSC-β細胞へのin vitroの成熟を誘起するプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少なくともいくつかをSC-β細胞に分化させるステップであって、SC-β細胞がin vitroおよび/またはin vivoでGSIS応答を呈するステップを含む。一部の例では、GSIS応答は内因性成熟β細胞のGSIS応答に類似している。
【0230】
[0289]一部の態様では、本開示は多能性細胞からSC-β細胞を産生する方法を提供し、本方法は、a)多能性幹細胞をTGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子およびWNTシグナル伝達経路活性化剤と3日間接触させることによって集団中の多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップ、b)胚体内胚葉細胞をFGFファミリーからの少なくとも1つの因子と3日間接触させるプロセスによって胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかを原腸管細胞に分化させるステップ、c)原腸管細胞をi)レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、ii)FGFファミリーからの少なくとも1つの因子、iii)SHH経路阻害剤、iv)PKC活性化剤、およびv)ROCK阻害剤と接触させるプロセスによって原腸管細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性膵前駆細胞に分化させるステップ、d)Pdx1陽性膵前駆細胞を細胞のクラスター化を促進する条件下でi)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、ii)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、および任意選択でiii)RAシグナル伝達経路活性化剤、および任意選択でiv)ROCK阻害剤、ならびにv)TGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子と5日間、1日おきに接触させるプロセスによってPdx1陽性膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップであって、NKX6.1陽性膵前駆細胞がPdx1およびNKX6.1を発現するステップ、e)Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、ii)THシグナル伝達経路活性化剤、iii)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、iv)RAシグナル伝達経路活性化剤、v)γ-セクレターゼ阻害剤、および任意選択でvi)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子と5日~7日の間、1日おきに接触させるプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞に分化させるステップ、ならびにf)Pdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞を外因性の分化因子なしに7日~14日の間、1日おきに培地(例えばNS-GFs培地、BSAを補ったMCDB培地、MCDB131培地、またはDMEM/F12培地)中で培養してPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少なくともいくつかのSC-β細胞へのin vitroの成熟を誘起するプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少なくともいくつかをSC-β細胞に分化させるステップであって、SC-β細胞がin
vitroおよび/またはin vivoでGSIS応答を呈するステップを含む。一部の例では、GSIS応答は内因性成熟β細胞のGSIS応答に類似している。
【0231】
[0290]一部の態様では、本開示は多能性細胞からSC-β細胞を産生する方法を提供し、本方法は、a)多能性幹細胞をTGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子およびWNTシグナル伝達経路活性化剤と3日間接触させることによって集団中の多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップ、b)胚体内胚葉細胞をFGFファミリーからの少なくとも1つの因子と3日間接触させるプロセスによって胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかを原腸管細胞に分化させるステップ、c)原腸管細胞をi)レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、ii)FGFファミリーからの少なくとも1つの因子、iii)SHH経路阻害剤、iv)BMPシグナル伝達経路阻害剤(例えばDMH-1またはLDN193189)、v)PKC活性化剤、およびvi)ROCK阻害剤と接触させるプロセスによって原腸管細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性膵前駆細胞に分化させるステップ、d)Pdx1陽性膵前駆細胞を細胞のクラスター化を促進する条件下でi)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、ii)少なくとも1つのSHH経
路阻害剤、および任意選択でiii)RAシグナル伝達経路活性化剤、および任意選択でiv)ROCK阻害剤、ならびにv)TGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子と5日または6日間、1日おきに接触させるプロセスによってPdx1陽性膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップであって、NKX6.1陽性膵前駆細胞がPdx1およびNKX6.1を発現するステップ、e)Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をi)SHH経路阻害剤、ii)RAシグナル伝達経路活性化剤、iii)γ-セクレターゼ阻害剤、iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの少なくとも1つの成長因子、v)少なくとも1つの骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、viii)エピジェネティック修飾化合物(例えばDZNepまたはKD5170)、ix)プロテインキナーゼ阻害剤、およびx)ROCK阻害剤と5日~7日の間、1日おきに接触させるプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞に分化させるステップ、ならびにf)Pdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞を外因性の分化因子なしに7日~14日の間、1日おきに培地(例えばNS-GFs培地、BSAを補ったMCDB培地、MCDB131培地、またはDMEM/F12培地)中で培養してPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少なくともいくつかのSC-β細胞へのin vitroの成熟を誘起するプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少なくともいくつかをSC-β細胞に分化するステップであって、SC-β細胞がin vitroおよび/またはin vivoでGSIS応答を呈するステップを含む。一部の例では、GSIS応答は内因性成熟β細胞のGSIS応答に類似している。
【0232】
[0291]一部の態様では、本開示は多能性細胞からSC-β細胞を産生する方法を提供し、本方法は、a)多能性幹細胞をTGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子およびWNTシグナル伝達経路活性化剤と3日間接触させることによって集団中の多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップ、b)胚体内胚葉細胞をFGFファミリーからの少なくとも1つの因子と3日間接触させるプロセスによって胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかを原腸管細胞に分化させるステップ、c)原腸管細胞をi)レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、ii)FGFファミリーからの少なくとも1つの因子、iii)SHH経路阻害剤、iv)BMPシグナル伝達経路阻害剤(例えばDMH-1またはLDN193189)、v)PKC活性化剤、およびvi)ROCK阻害剤と接触させるプロセスによって原腸管細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性膵前駆細胞に分化させるステップ、d)Pdx1陽性膵前駆細胞を細胞のクラスター化を促進する条件下でi)FGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子、ii)少なくとも1つのSHH経路阻害剤、および任意選択でiii)RAシグナル伝達経路活性化剤、および任意選択でiv)ROCK阻害剤、ならびにv)TGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの因子と5日または6日間、1日おきに接触させるプロセスによってPdx1陽性膵前駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップであって、NKX6.1陽性膵前駆細胞がPdx1およびNKX6.1を発現するステップ、e)Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をi)γ-セクレターゼ阻害剤、ii)少なくとも1つの骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、iii)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、iv)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、v)エピジェネティック修飾化合物(例えばDZNepまたはKD5170)、vi)プロテインキナーゼ阻害剤、およびvii)ROCK阻害剤と5日~7日の間、1日おきに接触させ、5日~7日の間の最初の3日の間にPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をSHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路、およびEGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子と接触させて、その後それらをPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞から除去するプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前
駆細胞の少なくともいくつかをPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞に分化させるステップ、ならびにf)Pdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞を外因性の分化因子なしに7日~14日の間、1日おきに培地(例えばNS-GFs培地、BSAを補ったMCDB培地、MCDB131培地、またはDMEM/F12培地)中で培養してPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少なくともいくつかのSC-β細胞へのin vitroの成熟を誘起するプロセスによってPdx1陽性、NKX6.1陽性、インスリン陽性の内分泌細胞の少なくともいくつかをSC-β細胞に分化するステップであって、SC-β細胞がin vitroおよび/またはin vivoでGSIS応答を呈するステップを含む。一部の例では、GSIS応答は内因性成熟β細胞のGSIS応答に類似している。
【0233】
[0292]第1の細胞クラスターから分離された細胞を培養するために使用された培地は、ゼノフリーであり得る。動物を起源とする細胞および/または細胞クラスターを培養するためのゼノフリー培地は、他の動物由来の生成物を有することができない。一部の事例では、ヒト細胞および/または細胞クラスターを培養するためのゼノフリー培地は、いずれの非ヒト動物由来の生成物も有することができない。例えば、ヒト細胞および/または細胞クラスターを培養するためのゼノフリー培地は、ウシ胎仔血清(FBS)の代わりにヒト血小板溶解物(PLT)を含むことができる。例えば、培地は、約1%~約20%、約5%~約15%、約8%~約12%、約9~約11%の血清を含むことができる。一部の事例では、培地は、約10%の血清を含むことができる。一部の事例では、培地は、小分子および/またはFBSを含むことができない。例えば、培地は、2%のBSAを補充したMCDB131基礎培地を含むことができる。一部の事例では、培地は、血清を含まない。一部の例では、培地は、外因性小分子またはシグナル伝達経路アゴニストもしくはアンタゴニスト、例えば、線維芽細胞成長因子ファミリー(FGF、例えば、FGF2、FGF8B、FGF10、またはFGF21)からの成長因子、ソニックヘッジホッグアンタゴニスト(例えば、Sant1、Sant2、Sant4、Sant4、Cur61414、フォルスコリン、トマチジン、AY9944、トリパラノール、シクロパミン、またはこれらの誘導体)、レチノイン酸シグナル伝達アゴニスト(例えば、レチノイン酸、CD1530、AM580、TTHPB、CD437、Ch55、BMS961、AC261066、AC55649、AM80、BMS753、タザロテン、アダパレン、またはCD2314)、Rho関連コイルドコイル含有プロテインキナーゼ(ROCK)の阻害剤(例えば、チアゾビビン、Y-27632、ファスジル/HA1077、または14-1152)、プロテインキナーゼC(PKC)の活性化剤(例えば、ホルボール12,13-ジブチレート(PDBU)、TPB、ホルボール12-ミリステート 13-アセテート、ブリオスタチン1、またはこれらの誘導体)、TGFβスーパーファミリーのアンタゴニスト(例えば、Alk5阻害剤II(CAS 446859-33-2)、A83-01、SB431542、D4476、GW788388、LY364947、LY580276、SB505124、GW6604、SB-525334、SD-208、SB-505124、またはこれらの誘導体)、骨形成タンパク質(BMP)1型受容体の阻害剤(例えば、LDN193189またはこれらの誘導体)、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤(例えば、T3、GC-1またはこれらの誘導体)、ガンマセクレターゼ阻害剤(例えば、XXI、DAPT、またはこれらの誘導体)、TGF-βシグナル伝達経路の活性化剤(例えば、WNT3aまたはアクチビンA) 上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子(例えば、ベータセルリンまたはEGF)、広範囲のキナーゼ(例えば、スタウロスポリンまたはその誘導体)、非必須アミノ酸、ビタミンまたは酸化防止剤(例えば、シクロパミン、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンA、またはこれらの誘導体)、あるいはN-アセチルシステイン、硫酸亜鉛、またはヘパリンのような他の添加物を含むことができない。一部の事例では、再凝集培地は、外因性細胞外マトリックス分子を含むことができない。一部の事例では、再凝集培地は、Matrigel(商標)を含まない。一部の事例では、再凝集培地は、他の細胞外マトリックス分子または
材料、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リシン、ポリ-D-リシン、ビトロネクチン、ラミニン、フィブロネクチン、PLOラミニン、フィブリン、トロンビン、およびRetroNectinならびにこれらの混合物、または、例えば、溶解された細胞膜調製物を含まない。
【0234】
[0293]当業者であれば、培地中に補充される血清アルブミンの濃度が変化し得ることを認識するであろう。例えば、培地(例えば、MCDB131)は、約0.01%、0.05%、0.1%、1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、または約15%のBSAを含むことができる。他の事例では、培地は、約0.01%、0.05%、0.1%、1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、または約15%のHSAを含むことができる。使用される培地(例えば、MCDB131培地)は、伝統的な基礎培地に見られない構成成分、例えば、微量元素、プトレシン、アデニン、チミジン、ならびに高レベルの一部のアミノ酸およびビタミンを含有することができる。これらの添加物によって、非常に低いレベルの血清または規定された構成成分が補充される培地を可能とすることができる。培地は、タンパク質および/または成長因子を含まなくてもよく、かつEGF、ヒドロコルチゾン、および/またはグルタミンが補充されてもよい。培地は、1つまたは複数の細胞外マトリックス分子(例えば、細胞外タンパク質)を含んでもよい。培地において使用される非限定的な例示的細胞外マトリックス分子としては、コラーゲン、胎盤マトリックス、フィブロネクチン、ラミニン、メロシン、テネイシン、ヘパリン、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、アグリカン、バイグリカン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、およびデコリンを挙げることができる。一部の事例では、培地は、ラミニン、例えば、LN-332を含む。一部の事例では、培地は、ヘパリンを含む。
【0235】
[0294]培地は、例えば、培地中の細胞に最適な環境を与えるために、培養中に周期的に交換することができる。再凝集のために第1の細胞クラスターから分離された細胞を培養する場合、培地は、少なくともまたは約4時間毎、12時間毎、24時間毎、48時間毎、3日毎もしくは4日毎に交換することができる。例えば、培地は、約48時間毎に交換することができる。
【0236】
[0295]一部の事例では、細胞は、動的条件下(例えば、細胞が、懸濁培養下にある間、一定の動きまたは撹拌に供される条件下)で培養することができる。細胞を動的培養するために、細胞は、制御ユニットに接続され、よって、制御された培養系を提供することができる容器(例えば、スピナーフラスコ(例えば、200ml~3000ml、例えば、250mlの;100mlの;または125mlのエルレンマイヤー中の)などの非接着性容器)中で培養することができる。一部の事例では、細胞は、それらの増殖能力を維持しながら、非動的条件(例えば、静的培養)下で培養することができる。細胞を非動的培養するために、細胞は、接着性培養ベッセル中で培養することができる。接着性培養ベッセルは、ベッセル表面の細胞への接着性を改良するために、細胞外マトリックス(ECM)などの細胞接着のための基質のいずれかでコーティングされてもよい。細胞接着のための基質は、(使用される場合)幹細胞またはフィーダー細胞を付着させることを意図する任意の材料であり得る。細胞接着のための基質としては、コラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リシン、ポリ-D-リシン、ビトロネクチン、ラミニン、フィブロネクチン、PLOラミニン、フィブリン、トロンビン、およびRetroNectinならびにこれらの混合物、例えば、Matrigel(商標)、ならびに溶解された細胞膜調製物が挙げられる。
【0237】
[0296]動的細胞培養ベッセル(例えば、スピナーフラスコ)中の培地は、撹拌され得る(例えば、スターラーによって)。スピン速度は、再凝集される第2の細胞クラスターのサイズと相関し得る。スピン速度は、第2の細胞クラスターのサイズが内因性膵島に類似
することができるように制御され得る。一部の事例では、スピン速度は、第2の細胞クラスターのサイズが、約75μm~約250μmとなり得るように制御される。動的細胞培養ベッセル(例えば、スピナーフラスコ)のスピン速度は、1分当たり約20回転(rpm)~約100rpm、例えば、約30rpm~約90rpm、約40rpm~約60rpm、約45rpm~約50rpmであり得る。一部の事例では、スピン速度は、約50rpmであり得る。
【0238】
[0297]本明細書において提供されるステージ6の細胞は、本明細書に記載されているように、分離および再凝集プロセスに供されても供されなくてもよい。一部の事例では、インスリン陽性内分泌細胞を含む細胞クラスターは再凝集され得る。細胞クラスターの再凝集により、インスリン陽性内分泌細胞を濃縮することができる。一部の事例では、細胞クラスター中のインスリン陽性内分泌細胞は、膵β細胞へとさらに成熟され得る。例えば、再凝集後に、第2の細胞クラスターは、天然の膵島に似た、in vitroでのGSISを呈し得る。例えば、再凝集後に、第2の細胞クラスターは、in vitroでのGSISを呈する非天然膵β細胞を含み得る。一部の実施形態では、再凝集プロセスは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、PCT出願PCT/US2018/043179の開示に従って実施され得る。
【0239】
[0298]本明細書において提供される方法に従って得られるステージ6の細胞は、凍結保存および再凝集手順の後に、高い回収率を有することができる。一部の事例では、ステージ3におけるBMPシグナル伝達経路阻害剤(例えば、DMH-1またはLDN)およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子(例えば、アクチビンA)の処置ならびにステージ5におけるエピジェネティック修飾化合物(例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、EZH2阻害剤、例えば、DZNep)の処置に関与する分化プロセスで得られるステージ6の細胞は、このような処置を伴わない対応する細胞集団と比較して、ステージ5の後の凍結保存後により高い回収率を有し得る。一部の事例では、ステージ3におけるBMPシグナル伝達経路阻害剤(例えば、DMH-1またはLDN)およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子(例えば、アクチビンA)の処置ならびにステージ5におけるエピジェネティック修飾化合物(例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、EZH2阻害剤、例えば、DZNep)の処置に関与する分化プロセスで得られるステージ6の細胞は、ステージ3におけるBMPシグナル伝達経路阻害剤(例えば、DMH-1またはLDN)およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子(例えば、アクチビンA)の処置を伴わない対応する細胞集団と比較して、ステージ5の後の凍結保存後により高い回収率を有し得る。一部の事例では、ステージ3におけるBMPシグナル伝達経路阻害剤(例えば、DMH-1またはLDN)およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子(例えば、アクチビンA)の処置ならびにステージ5におけるエピジェネティック修飾化合物(例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、EZH2阻害剤、例えば、DZNep)の処置に関与する分化プロセスで得られるステージ6の細胞は、ステージ5の後の凍結保存後に、少なくとも約35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、48%、49%、または50%である回収率を有し得る。回収率は、凍結保存前の細胞と比較した、凍結保存、解凍および回収、ならびに再凝集手順後に生存し、再凝集した細胞クラスターを形成する細胞のパーセンテージとして計算することができる。
【0240】
[0299]一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される方法を使用して得られる非天然膵β細胞またはその前駆体の凍結保存に関する。一部の実施形態では、非天然膵β細胞を含む細胞集団は、凍結保存によって保存することができる。例えば、非天然β細胞、例えば、ステージ6の細胞を含む細胞集団は、一部の事例では、細胞懸濁液、例えば、単一細胞の懸濁液中に分離されてもよく、細胞懸濁液は、凍結保存、例えば、凍結保存溶液中で凍結することができる。細胞の分離は、本明細書に与えられる技法のいずれ
か、例えば、酵素処理によって行うことができる。細胞は、最高-20℃、最高-30℃、最高-40℃、最高-50℃、最高-60℃、最高-70℃、最高-80℃、最高-90℃、最高-100℃、最高-110℃、最高-120℃、最高-130℃、最高-140℃、最高-150℃、最高-160℃、最高-170℃、最高-180℃、最高-190℃、または細胞は最高-200℃の温度で凍結することができる。一部の事例では、細胞は、約-80℃の温度で凍結される。一部の事例では、細胞は、約-195℃の温度で凍結される。凍結保存に必要とされる低温をもたらすために、以下に限定されないが、電気冷凍庫、固体二酸化炭素、および液体窒素などの任意の冷却方法を使用することができる。一部の事例では、カスタムメイドと市販の溶液の両方を含む、当業者にとって利用可能な任意の凍結保存溶液を、低温での保存用に細胞をインキュベートするために使用することができる。例えば、凍結保護物質を含有する溶液を使用してもよい。凍結保護物質は、細胞を凍結による損傷から保護するために構成される薬剤であり得る。例えば、凍結保護物質は、凍結保存溶液のガラス転移温度を低下させることができる物質であり得る。使用することができる例示的な凍結保護物質として、DMSO(ジメチルスルホキシド)、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロール)、デキストラン(例えば、デキストラン-40)、およびトレハロースが挙げられる。他の作用のために、追加の薬剤を凍結保存溶液に添加してもよい。一部の事例では、市販の凍結保存溶液、例えば、FrostaLife(商標)、pZerve(商標)、Prime-XV(登録商標)、Gibco Synth-a-Freeze Cryopreservation Medium、STEM-CELLBANKER(登録商標)、CryoStor(登録商標) Freezing Media、HypoThermosol(登録商標) FRS Preservation Media、およびCryoDefend(登録商標) Stem Cells Mediaを本明細書において提供される方法において使用することができる。
【0241】
[0300]分化プロセスの間に、細胞を本明細書で提供される照射処置に供することができる。一部の事例では、ステージ6における細胞集団、例えば、インスリン陽性内分泌細胞から膵β細胞へと分化される細胞を有する細胞集団または細胞クラスターは、一定期間照射される。一部の事例では、凍結保存からの回収後の再凝集後のステージ6の細胞集団は、一定期間照射される。一部の事例では、凍結保存された細胞(例えば、ステージ5の終わりに凍結保存された細胞)は、次の分化プロセスのために、解凍および回収前に、ある特定の期間照射される。
【0242】
[0301]V.分化因子
[0302]本開示の態様は、例えば、インスリン陽性内分泌細胞の成熟または他の前駆細胞のSC-β細胞(例えば、成熟膵β細胞)への分化を誘導するために、前駆細胞(例えば、幹細胞、例えば、iPS細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、Pdx1陽性膵前駆細胞、NKX6.1陽性膵前駆細胞、インスリン陽性内分泌細胞)をβ細胞分化因子と接触させることに関する。一部の実施形態では、分化因子は、例えば、本明細書に記載の方法に従って、多能性細胞(例えば、iPSCまたはhESC)の胚体内胚葉細胞への分化を誘導することができる。一部の実施形態では、分化因子は、例えば、本明細書に記載の方法に従って、胚体内胚葉細胞の原腸管細胞への分化を誘導することができる。一部の実施形態では、分化因子は、例えば、本明細書に記載の方法に従って、原腸管細胞のPdx1陽性膵前駆細胞への分化を誘導することができる。一部の実施形態では、分化因子は、例えば、本明細書に記載の方法に従って、Pdx1陽性膵前駆細胞のNKX6-1陽性膵前駆細胞への分化を誘導することができる。一部の実施形態では、分化因子は、例えば、本明細書に記載の方法に従って、NKX6-1陽性膵前駆細胞のインスリン陽性内分泌細胞への分化を誘導することができる。一部の実施形態では、分化因子は、例えば、本明細書に記載の方法に従って、インスリン陽性内分泌細胞のSC-β細胞への成熟を誘導することができる。
【0243】
[0303]本明細書に記載の少なくとも1つの分化因子は、単独で、または他の分化作用剤と組み合わせて使用し、本明細書に開示されている方法に従って、SC-β細胞を産生することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の分化因子は、SC-β細胞を産生する方法において使用される。
【0244】
[0304]形質転換成長因子-β(TGF-β)スーパーファミリー
[0305]本開示の態様は、分化因子としての形質転換成長因子-β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子の使用に関する。「TGF-βスーパーファミリー」は、公知のTGFβファミリーのメンバーの構造的および機能的特徴を有するタンパク質を意味する。タンパク質のTGFβファミリーとしては、TGFβシリーズのタンパク質、インヒビン(インヒビンAおよびインヒビンBを含む)、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、およびアクチビンABを含む)、MIS(ミュラー管阻害物質)、BMP(骨形成タンパク質)、dpp(デカペンタプレジック)、Vg-1、MNSF(モノクローナル非特異的抑制因子)などが挙げられる。このファミリーのタンパク質の活性は、様々な細胞型の特定の受容体への特異的結合に基づき得る。このファミリーのメンバーは、特にC末端において、それらの機能に相関する配列同一性の領域を共有することができる。TGFβファミリーは、100を超える別々のタンパク質を含むことができ、これらは全て、アミノ酸配列同一性の少なくとも1つの領域を共有する。本明細書に開示されている方法において使用することができるファミリーのメンバーとしては、以下のタンパク質が挙げられるが、これらに限定されず、以下のタンパク質は、GenBank受託番号:P07995、P18331、P08476、Q04998、P03970、P43032、P55102、P27092、P42917、P09529、P27093、P04088、Q04999、P17491、P55104、Q9WUK5、P55103、O88959、O08717、P58166、O61643、P35621、P09534、P48970、Q9NR23、P25703、P30884、P12643、P49001、P21274、O46564、O19006、P22004、P20722、Q04906、Q07104、P30886、P18075、P23359、P22003、P34821、P49003、Q90751、P21275、Q06826、P30885、P34820、Q29607、P12644、Q90752、O46576、P27539、P48969、Q26974、P07713、P91706、P91699、P27091、O42222、Q24735、P20863、O18828、P55106、Q9PTQ2、O14793、O08689、O42221、O18830、O18831、O18836、O35312、O42220、P43026、P43027、P43029、O95390、Q9R229、O93449、Q9Z1W4、Q9BDW8、P43028、Q7Z4P5、P50414、P17246、P54831、P04202、P01137、P09533、P18341、O19011、Q9Z1Y6、P07200、Q9Z217、O95393、P55105、P30371、Q9MZE2、Q07258、Q96S42、P97737、AAA97415.1、NP-776788.1、NP-058824.1、EAL24001.1、1 S4Y、NP-001009856.1、NP-1-032406.1、NP-999193.1、XP-519063.1、AAG17260.1、CAA40806.1、NP-1-001009458.1、AAQ55808.1、AAK40341.1、AAP33019.1、AAK21265.1、AAC59738.1、CAI46003.1、B40905、AAQ55811.1、AAK40342.1、XP-540364.1、P55102、AAQ55810.1、NP-990727.1、CAA51163.1、AAD50448.1、JC4862、PN0504、BAB17600.1、AAH56742.1、BAB17596.1、CAG06183.1、CAG05339.1、BAB17601.1
、CAB43091.1、A36192、AAA49162.1、AAT42200.1、NP-789822.1、AAA59451.1、AAA59169.1、XP-541000.1、NP-990537.1、NP-1-002184.1、AAC14187.1、AAP83319.1、AAA59170.1、BAB16973.1、AAM66766.1、WFPGBB、1201278C、AAH30029.1、CAA49326.1、XP-344131.1、AA-148845.1、XP-1-148966.3、148235、B41398、AAH77857.1、AAB26863.1、1706327A、BAA83804.1、NP-571143.1、CAG00858.1、BAB17599.1、BAB17602.1、AAB61468.1、PN0505、PN0506、CAB43092.1、BAB17598.1、BAA22570.1、BAB16972.1、BAC81672.1、BAA12694.1、BAA08494.1、B36192、C36192、BAB16971.1、NP-034695.1、AAA49160.1、CAA62347.1、AAA49161.1、AAD30132.1、CAA58290.1、NP-005529.1、XP-522443.1、AAM27448.1、XP-538247.1、AAD30133. I、AAC36741.1、AAH10404.1、NP-032408.1、AAN03682.1、XP-509161.1、AAC32311.1、NP-651942.2、AAL51005.1、AAC39083.1、AAH85547.1、NP-571023.1、CAF94113.1、EAL29247.1、AAW30007.1、AAH90232.1、A29619、NP-001007905.1、AAH73508.1、AADO2201.1、NP-999793.1、NP-990542.1、AAF19841.1、AAC97488.1、AAC60038.1、NP 989197.1、NP-571434.1、EAL41229.1、AAT07302.1、CAI19472.1、NP-031582.1、AAA40548.1、XP-535880.1、NP-1-037239.1、AAT72007.1、XP-418956.1、CAA41634.1、BAC30864.1、CAA38850.1、CAB81657.2、CAA45018.1、CAA45019.1、BAC28247.1、NP-031581.1、NP-990479.1、NP-999820.1、AAB27335.1、S45355、CAB82007.1、XP-534351.1、NP-058874.1、NP-031579.1、1REW、AAB96785.1、AAB46367.1、CAA05033.1、BAA89012.1、IES7、AAP20870.1、BAC24087.1、AAG09784.1、BAC06352.1、AAQ89234.1、AAM27000.1、AAH30959.1、CAGO1491.1、NP-571435.1、1REU、AAC60286.1、BAA24406.1、A36193、AAH55959.1、AAH54647.1、AAH90689.1、CAG09422.1、BAD16743.1、NP-032134.1、XP-532179.1、AAB24876.1、AAH57702.1、AAA82616.1、CAA40222.1、CAB90273.2、XP-342592.1、XP-534896.1、XP-534462.1、1LXI、XP-417496.1、AAF34179.1、AAL73188.1、CAF96266.1、AAB34226.1、AAB33846.1、AAT12415.1、AA033819.1、AAT72008.1、AAD38402.1、BAB68396.1、CAA45021.1、AAB27337.1、AAP69917.1、AATI2416.1、NP-571396.1、CAA53513.1、AA033820.1、AAA48568.1、BAC02605.1、BAC02604.1、BAC02603.1、BAC02602.1、BAC02601.1、BAC02599.1、BAC02598.1、BAC02597.1、BAC02595.1、BAC02593.1、BAC02592.1、BAC02590.1、AAD28039.1、AAP74560.1、AAB94786.1、NP-001483.2、XP-528195.1、NP-571417.1、NP-001001557. I、AAH43222.1、AAM33143.1、CAG10381.1、B
AA31132.1、EAL39680.1、EAA12482.2、P34820、AAP88972.1、AAP74559.1、CAI16418.1、AAD30538.1、XP-345502.1、NP-1-038554.1、CAG04089.1、CAD60936.2、NP-031584.1、B55452、AAC60285.1、BAA06410.1、AAH52846.1、NP-031580.1、NP-1-036959.1、CAA45836.1、CAA45020.1、Q29607、AAB27336.1、XP-547817.1、AAT12414.1、AAM54049.1、AAH78901.1、AA025745.1、NP-570912.1、XP-392194.1、AAD20829.1、AAC97113.1、AAC61694.1、AAH60340.1、AAR97906.1、BAA32227.1、BAB68395.1、BAC02895.1、AAWS 1451.1、AAF82188.1、XP-544189.1、NP-990568.1、BAC80211.1、AAW82620.1、AAF99597.1、NP-571062.1、CAC44179.1、AAB97467.1、AAT99303.1、AAD28038.1、AAH52168.1、NP-001004122.1、CAA72733.1、NP-032133.2、XP-394252.1、XP-224733.2、JH0801、AAP97721.1、NP-989669.1、S43296、P43029、A55452、AAH32495.1、XP-542974.1、NP-032135.1、AAK30842.1、AAK27794.1、BAC30847.1、EAA12064.2、AAP97720.1、XP-525704.1、AAT07301.1、BAD07014.1、CAF94356.1、AAR27581.1、AAG13400.1、AAC60127.1、CAF92055.1、XP-540103.1、AA020895.1、CAF97447.1、AAS01764.1、BAD08319.1、CAA10268.1、NP-998140.1、AAR03824.1、AAS48405.1、AAS48403.1、AAK53545.1、AAK84666.1、XP-395420.1、AAK56941.1、AAC47555.1、AAR88255.1、EAL33036.1、AAW47740.1、AAW29442.1、NP-722813.1、AARO8901.1、AAO 15420.2、CAC59700.1、AAL26886.1、AAK71708.1、AAK71707.1、CAC51427.2、AAK67984.1、AAK67983.1、AAK28706.1、P07713、P91706、P91699、CAG02450.1、AAC47552.1、NP-005802.1、XP-343149.1、AW34055.1、XP-538221.1、AAR27580.1、XP-125935.3、AAF21633.1、AAF21630.1、AAD05267.1、Q9Z1 W4、NP-1-031585.2、NP-571094.1、CAD43439.1、CAF99217.1、CAB63584.1、NP-722840.1、CAE46407.1、XP-1-417667.1、BAC53989.1、BAB19659.1、AAM46922.1、AAA81169
.1、AAK28707.1、AAL05943.1、AAB17573.1、CAH25443.1、CAG10269.1、BAD16731.1、EAA00276.2、AAT07320.1、AAT07300.1、AAN15037.1、CAH25442.1、AAK08152.2、2009388A、AAR12161.1、CAGO1961.1、CAB63656.1、CAD67714.1、CAF94162.1、NP-477340.1、EAL24792.1、NP-1-001009428.1、AAB86686.1、AAT40572.1、AAT40571.1、AAT40569.1、NP-033886.1、AAB49985.1、AAG39266.1、Q26974、AAC77461.1、AAC47262.1、BAC05509.1、NP-055297.1、XP-546146.1、XP-525772.1、NP-060525.2、AAH33585.1、AAH69080.1、CAG12751.1、AAH74757.2、NP-034964.1、NP-038639.1、042221、
AAF02773.1、NP-062024.1、AAR18244.1、AAR14343.1、XP-228285.2、AAT40573.1、AAT94456.1、AAL35278.1、AAL35277.1、AAL17640.1、AAC08035.1、AAB86692.1、CAB40844.1、BAC38637.1、BAB16046.1、AAN63522.1、NP-571041.1、AAB04986.2、AAC26791.1、AAB95254.1、BAA11835.1、AAR18246.1、XP-538528.1、BAA31853.1、AAK18000.1、XP-1-420540.1、AAL35276.1、AAQ98602.1、CAE71944.1、AAW50585.1、AAV63982.1、AAW29941.1、AAN87890.1、AAT40568.1、CAD57730.1、AAB81508.1、AAS00534.1、AAC59736.1、BAB79498.1、AAA97392.1、AAP85526.1、NP-999600.2、NP-878293.1、BAC82629.1、CAC60268.1、CAG04919.1、AAN10123.1、CAA07707.1 AAK20912.1、AAR88254.1、CAC34629.1、AAL35275.1、AAD46997. I、AAN03842.1、NP-571951.2、CAC50881.1、AAL99367.1、AAL49502.1、AAB71839.1、AAB65415.1、NP-624359.1、NP-990153.1、AAF78069.1、AAK49790.1、NP-919367.2、NP-001192.1、XP-544948.1、AAQ18013.1、AAV38739.1、NP-851298.1、CAA67685.1、AAT67171.1、AAT37502.1、AAD27804.1、AAN76665.1、BAC11909.1、XP-1-421648.1、CAB63704.1、NP-037306.1、A55706、AAF02780.1、CAG09623.1、NP-067589.1、NP-035707.1、AAV30547.1、AAP49817.1、BAC77407.1、AAL87199.1、CAG07172.1、B36193、CAA33024.1、NP-1-001009400.1、AAP36538.1、XP-512687.1、XP-510080.1、AAH05513.1、1KTZ、AAH14690.1、AAA31526.1によって特定される。
【0245】
[0306]本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βスーパーファミリーからの成長因子は、天然に得ることができるかまたは組換え体であり得る。一部の実施形態では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子は、アクチビンAを含む。用語「アクチビンA」は、アクチビンAの断片および誘導体を含み得る。例示的なアクチビンAの配列は、米国特許出願公開第2009/0155218号(’218公報)における配列番号1に開示されている。アクチビンAの他の非限定的な例は、’218公報の配列番号2~16に提供され、アクチビンAをコードする核酸の非限定的な例は、’218公報の配列番号33~34に提供されている。一部の実施形態では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子は、’218公報の配列番号1と少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、またはそれより高い割合で同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み得る。
【0246】
[0307]一部の実施形態では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子は、成長分化因子8(GDF8)を含む。用語「GDF8」は、GDF8の断片および誘導体を含み得る。GDF8ポリペプチドの配列は、当業者に利用可能である。一部の実施形態では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子は、ヒトGDF8ポリペプチド配列(GenBank受託EAX10880)と少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、またはそれより高い割合で同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0247】
[0308]一部の実施形態では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子は、GDF8に密接に関連する成長因子、例えば、成長分化因子11(GDF11)を含む。一部の実施形態では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子は、ヒトGDF11ポリペプチド配列(GenBank受託AAF21630)と少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、またはそれより高い割合で同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0248】
[0309]一部の実施形態では、TGF-βスーパーファミリーからの成長因子は、TGF-βスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子を模倣する薬剤と置き換えることができる。TGF-βスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子を模倣する例示的な薬剤としては、限定されないが、IDE1およびIDE2が挙げられる。
【0249】
[0310]骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤
[0311]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのBMPシグナル伝達経路阻害剤の使用に関する。BMPシグナル伝達ファミリーは、TGF-βスーパーファミリーの多様なサブセットである(Sebaldら Biol. Chem. 385:697~710頁、2004年)。20種を超える公知のBMPリガンドは、3つの異なるII型(BMPRII、ActRIIa、およびActRIIb)および少なくとも3つのI型(ALK2、ALK3、およびALK6)受容体によって認識される。二量体のリガンドは、受容体ヘテロマーのアセンブリーを促進し、構成的に活性なII型受容体セリン/トレオニンキナーゼにI型受容体セリン/トレオニンキナーゼをリン酸化させる。活性化I型受容体は、BMP応答性(BR-)SMADエフェクター(SMAD1、5、および8)をリン酸化して、TGFシグナル伝達も促進するco-SMADであるSMAD4との複合体における核移行を促進する。さらに、BMPシグナルは、SMADに依存しない手法で、MAPK p38などの細胞内エフェクターを活性化し得る(Noheら Cell Signal 16:291~299頁、2004年)。可溶性BMPアンタゴニスト、例えば、ノギン、コーディン、グレムリン、およびフォリスタチンは、リガンド隔離によってBMPシグナル伝達を制限する。
【0250】
[0312]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるBMPシグナル伝達経路阻害剤は、DMH-1、またはその誘導体、類似体、もしくはバリアントを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるBMPシグナル伝達経路阻害剤は、以下の化合物または以下の化合物の誘導体、類似体、もしくはバリアントを含む:
【0251】
【0252】
[0313]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるBMPシグナル伝達経路阻害剤は、LDN193189(LDN193189、1062368-24-4、LDN-193189、DM 3189、DM-3189、IUPAC名:4-[6-(4-ピペラジン-1-イルフェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル]キノロンとしても公知)を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるBMPシグナル伝達経路阻害剤は、以下の化合物または以下の化合物の誘導体、類似体、もしくはバリアントを含む:
【0253】
【0254】
[0314]一部の事例では、DMH-1は、LDN193189と比較して、より選択的であり得る。本開示の一部の実施形態では、DMH-1は、本明細書において提供される方法に対して特に有用であり得る。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物は、LDN193189の使用を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物は、原腸管細胞からPdx1陽性膵前駆細胞を産生するために、LDN193189、またはその誘導体、類似体、もしくはバリアントの使用を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物は、原腸管細胞からPdx1陽性膵前駆細胞を産生するための、DMH-1、またはその誘導体、類似体、もしくはバリアントの使用に関する。
【0255】
[0315]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるB
MPシグナル伝達経路阻害剤は、LDN193189の類似体または誘導体、例えば、LDN193189の塩、水和物、溶媒、エステル、またはプロドラッグを含む。一部の実施形態では、LDN193189の誘導体(例えば、塩)は、LDN193189ヒドロクロリドを含む。
【0256】
[0316]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるBMPシグナル伝達経路阻害剤は、米国特許出願公開第2011/0053930号からの式Iの化合物を含む。
【0257】
[0317]TGF-βシグナル伝達経路阻害剤
[0318]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのTGF-βシグナル伝達経路阻害剤の使用に関する。
【0258】
[0319]一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路は、TGF-β受容体I型キナーゼ(TGF-β RI)シグナル伝達を含む。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、ALK5阻害剤II(CAS 446859-33-2、RepSoxとしても公知であるTGF-B RIキナーゼのATP競合阻害剤、IUPAC名:2-[5-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1,5-ナフチリジン)を含む。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、ALK5阻害剤IIの類似体または誘導体である。
【0259】
[0320]一部の実施形態では、ALK5阻害剤IIの類似体または誘導体(「ALK5i」とも称される)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0021519号に記載されている式Iの化合物である。
【0260】
[0321]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、米国特許出願公開第2010/0267731号に記載されているTGF-β受容体阻害剤である。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、米国特許出願公開第2009/0186076号および同第2007/0142376号に記載されているALK5阻害剤を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、A 83-01である。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、A 83-01ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、A 83-01を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、SB 431542である。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、SB
431542ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、SB 431542を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、D 4476である。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、D 4476ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、D 4476を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、GW 788388である。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、GW 788388ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、GW 788388を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、LY 364947である。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、LY 364947ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、LY 364947を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供さ
れる方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、LY 580276である。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、LY 580276ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、LY 580276を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、SB 525334である。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、SB 525334ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、SB 525334を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、SB 505124である。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、SB 505124ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、SB 505124を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、SD 208である。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、SD 208ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、SD 208を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、GW 6604である。一部の実施形態では、TGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、GW 6604ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、GW 6604を除外する。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、GW 788388である。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるTGF-βシグナル伝達経路阻害剤は、GW
788388ではない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、GW 788388を除外する。
【0261】
[0322]上記化合物のコレクションから、以下のものを様々な供給源から得ることができる:Sigma, P.O. Box 14508, St. Louis, Mo.,
63178-9916から入手可能なLY-364947、SB-525334、SD-208、およびSB-505124;Calbiochem(EMD Chemicals, Inc.),480 S. Democrat Road, Gibbstown, N.J., 08027から入手可能な616452および616453;GlaxoSmithKline, 980 Great West Road, Brentford, Middlesex, TW8 9GS, United Kingdomから入手可能なGW788388およびGW6604;Lilly Research,
Indianapolis, Ind. 46285から入手可能なLY580276;ならびにBiogen Idec, P.O. Box 14627, 5000 Davis Drive, Research Triangle Park, N.C., 27709-4627から入手可能なSM16。
【0262】
[0323]WNTシグナル伝達経路
[0324]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのWNTシグナル伝達経路の活性化剤の使用に関する。
【0263】
[0325]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるWNTシグナル伝達経路活性化剤は、CHIR99021を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるWNTシグナル伝達経路活性化剤は、CHIR99021の誘導体、例えば、CHIR99021の塩、例えば、CHIR99021のトリヒドロクロリド、ヒドロクロリド塩を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるWNTシグナル伝達経路活性化剤は、Wnt3a組換えタンパク質を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるWNTシグナル伝達経路活性化剤は、グリコーゲン合成酵素キナ
ーゼ3(GSK3)阻害剤を含む。例示的なGSK3阻害剤としては、限定されないが、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、BIO-アセトキシム、FRATide、10Z-ヒメニアルジシン、インディルビン-3’オキシム、ケンパウロン、L803、L803-mts、炭酸リチウム、NSC 693868、SB 216763、SB 415286、TC-G 24、TCS 2002、TCS 21311、TWS 119、およびこれらのいずれかの類似体または誘導体が挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法、組成物、およびキットは、WNTシグナル伝達経路活性化剤を除外する。
【0264】
[0326]線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリー
[0327]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのFGFファミリーからの成長因子の使用に関する。
【0265】
[0328]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるFGFファミリーからの成長因子は、ケラチノサイト成長因子(KGF)を含む。KGFのポリペプチド配列は、当業者に利用可能である。一部の実施形態では、FGFファミリーからの成長因子は、ヒトKGFポリペプチド配列(GenBank受託AAB21431)に対して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、またはそれより高い割合で同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0266】
[0329]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるFGFファミリーからの成長因子は、FGF2を含む。FGF2のポリペプチド配列は、当業者に利用可能である。一部の実施形態では、FGFファミリーからの成長因子は、ヒトFGF2ポリペプチド配列(GenBank受託NP_001997)に対して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、またはそれより高い割合で同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0267】
[0330]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるFGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、FGF8Bを含む。FGF8Bのポリペプチド配列は、当業者に利用可能である。一部の実施形態では、FGFファミリーからの成長因子は、ヒトFGF8Bポリペプチド配列(GenBank受託AAB40954)に対して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、またはそれより高い割合で同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0268】
[0331]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるFGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、FGF10を含む。FGF10のポリペプチド配列は、当業者に利用可能である。一部の実施形態では、FGFファミリーからの成長因子は、ヒトFGF10ポリペプチド配列(GenBank受託CAG46489)に対して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、またはそれより高い割合で同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0269】
[0332]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるFGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、FGF21を含む。FGF21のポ
リペプチド配列は、当業者に利用可能である。一部の実施形態では、FGFファミリーからの成長因子は、ヒトFGF21ポリペプチド配列(GenBank受託AAQ89444.1)に対して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、またはそれより高い割合で同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0270】
[0333]ソニックヘッジホッグ(SHH)シグナル伝達経路
[0334]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのSHHシグナル伝達経路阻害剤の使用に関する。
【0271】
[0335]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、Sant1を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、SANT2を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、SANT3を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、SANT4を含む。一部の実施形態では、SHHシグナル伝達経路阻害剤は、Cur61414を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、フォースコリンを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、トマチジンを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、AY9944を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、トリパラノールを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、化合物Aまたは化合物Bを含む(米国特許出願公開第2004/0060568号に開示されている)。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるSHHシグナル伝達経路阻害剤は、米国特許出願公開第2006/0276391号に開示されているヘッジホッグシグナル伝達にアンタゴナイズするステロイダルアルカロイド(例えば、シクロパミンまたはその誘導体)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法、組成物、およびキットは、SHHシグナル伝達経路阻害剤を除外する。
【0272】
[0336]Rhoキナーゼ(ROCK)シグナル伝達経路
[0337]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのROCKシグナル伝達経路阻害剤(ROCK阻害剤)の使用に関する。
【0273】
[0338]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるROCK阻害剤は、Y-27632またはチアゾビビンを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるROCK阻害剤は、チアゾビビンを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるROCK阻害剤は、Y-27632を含む。一部の事例では、本明細書において提供される方法および組成物におけるROCK阻害剤は、以下の化合物またはその誘導体を含む:
【0274】
【0275】
[0339]一部の事例では、本明細書において提供される方法および組成物におけるROCK阻害剤は、以下の化合物またはその誘導体を含む:
【0276】
【0277】
[0340]本明細書において提供される方法および組成物において使用することができるROCK阻害剤の非限定的な例としては、チアゾビビン、Y-27632、ファスジル/H
A1077、H-1152、リパスジル、Y39983、Wf-536、SLx-2119、アザベンゾイミダゾール-アミノフラザン、DE-104、オレフィン、イソキノリン、インダゾール、およびピリジンアルケン誘導体、ROKα阻害剤、XD-4000、HMN-1152、4-(1-アミノアルキル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサン-カルボキサミド、Rhostatin、BA-210、BA-207、BA-215、BA-285、BA-1037、Ki-23095、VAS-012、ならびにキナゾリンが挙げられる。
【0278】
[0341]レチノイン酸シグナル伝達経路
[0342]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのレチノイン酸シグナル伝達のモジュレーターの使用に関する。
【0279】
[0343]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるレチノイン酸シグナル伝達のモジュレーターは、レチノイン酸シグナル伝達の活性化剤を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるRAシグナル伝達経路活性化剤は、レチノイン酸を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるRAシグナル伝達経路活性化剤は、レチノイン酸受容体アゴニストを含む。本明細書において提供される方法および組成物における例示的なレチノイン酸受容体アゴニストとしては、限定されないが、CD 1530、AM 580、TTNPB、CD 437、Ch 55、BMS 961、AC 261066、AC 55649、AM 80、BMS 753、タザロテン、アダパレン、およびCD
2314が挙げられる。
【0280】
[0344]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるレ
チノイン酸シグナル伝達のモジュレーターは、レチノイン酸シグナル伝達の阻害剤を含む。一部の実施形態では、レチノイン酸シグナル伝達経路阻害剤は、DEAB(IUPAC名:2-[2-(ジエチルアミノ)エトキシ]3-プロパ-2-エニルベンズアルデヒド)を含む。一部の実施形態では、レチノイン酸シグナル伝達経路阻害剤は、DEABの類似体または誘導体を含む。
【0281】
[0345]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるレチノイン酸シグナル伝達経路阻害剤は、レチノイン酸受容体アンタゴニストを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるレチノイン酸受容体アンタゴニストは、(E)-4-[2-(5,6-ジヒロド-5,5-ジメチル-8-フェニル-2-ナフタレニル)エテニル]安息香酸、(E)-4-[[(5,6-ジヒロド-5,5-ジメチル-8-フェニルエチニル)-2-ナフタレニル]エテニル]安息香酸、(E)-4-[2-[5,6-ジヒロド-5,5-ジメチル-8-(2-ナフタレニル)-2-ナフタレニル]エテニル]-安息香酸、および(E)-4-[2-[5,6-ジヒロド-5,5-ジメチル-8-(4-メトキシフェニル)-2-ナフタレニル]エテニル]安息香酸を含む。一部の実施形態では、レチノイン酸受容体アンタゴニストは、BMS 195614(CAS番号253310-42-8)、ER 50891(CAS番号187400-85-7)、BMS 493(CAS番号170355-78-9)、CD 2665(CAS番号170355-78-9)、LE 135(CAS番号155877-83-1)、BMS 453(CAS番号166977-43-1)、またはMM 11253(CAS番号345952-44-5)を含む。
【0282】
[0346]ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法、組成物、およびキットは、レチノイン酸シグナル伝達のモジュレーターを除外する。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法、組成物、およびキットは、レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤を除外する。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法、組成物、およびキットは、レチノイン酸シグナル伝達経路阻害剤を除外する。
【0283】
[0347]プロテインキナーゼC
[0348]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのプロテインキナーゼC活性化剤の使用に関する。プロテインキナーゼCは、プロテインキナーゼ酵素の最も大きなファミリーのうちの1つであり、種々のアイソフォームから構成される。従来のアイソフォームとしては、a、βI、βII、γが挙げられ;新規アイソフォームとしては、δ、ε、η、Θが挙げられ;および非典型的アイソフォームとしては、ξ、およびι/λが挙げられる。PKC酵素は、主にサイトゾルであるが、活性化されると膜に移動する。細胞質では、PKCは、他のキナーゼによってリン酸化されるかまたは自己リン酸化する。活性化されるために、一部のPKCアイソフォーム(例えば、PKC-ε)は、ジアシルグリセロール(「DAG」)結合部位またはホスファチジルセリン(「PS」)結合部位に結合するために分子を必要とする。他のものは、いずれの二次的結合メッセンジャーも必要とせず活性化され得る。DAG部位に結合するPKC活性化剤としては、以下に限定されないが、ブリオスタチン、ピコローグ(picologue)、ホルボールエステル、アプリシアトキシン、およびグニジマクリンが挙げられる。PS部位に結合するPKC活性化剤としては、以下に限定されないが、多価不飽和脂肪酸およびその誘導体が挙げられる。単独でまたは1つまたは複数の他のβ細胞分化因子と組み合わせて、少なくとも1つのインスリンを産生する内分泌細胞またはその前駆体の、SC-β細胞への分化を誘導することが可能である任意のプロテインキナーゼC活性化剤を本明細書に記載の方法、組成物、およびキットにおいて使用することができることが企図される。
【0284】
[0349]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるPKC活性化剤は、PdbUを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方
法および組成物におけるPKC活性化剤は、TPBを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるPKC活性化剤は、WIPO公開第WO/2013/071282号に記載されているように、シクロプロパン化多価不飽和脂肪酸、シクロプロパン化一価不飽和脂肪酸、シクロプロパン化多価不飽和脂肪アルコール、シクロプロパン化一価不飽和脂肪アルコール、シクロプロパン化多価不飽和脂肪酸エステル、シクロプロパン化一価不飽和脂肪酸エステル、シクロプロパン化多価不飽和脂肪酸サルフェート、シクロプロパン化一価不飽和脂肪酸サルフェート、シクロプロパン化多価不飽和脂肪酸ホスフェート、シクロプロパン化一価不飽和脂肪酸ホスフェート、大環状ラクトン、DAG誘導体、イソプレノイド、オクチリンドラクタムV、グニジマクリン、イリパリダール、インゲノール、ナフタレンスルホンアミド、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤、線維芽細胞成長因子18(FGF-18)、インスリン成長因子、ホルモン、および成長因子活性化剤を含む。一部の実施形態では、ブリオスタチン(bryostain)は、ブリオスタチン-1、ブリオスタチン-2、ブリオスタチン-3、ブリオスタチン-4、ブリオスタチン-5、ブリオスタチン-6、ブリオスタチン-7、ブリオスタチン-8、ブリオスタチン-9、ブリオスタチン-10、ブリオスタチン-11、ブリオスタチン-12、ブリオスタチン-13、ブリオスタチン-14、ブリオスタチン-15、ブリオスタチン-16、ブリオスタチン-17、またはブリオスタチン-18を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法、組成物、およびキットは、プロテインキナーゼC活性化剤を除外する。
【0285】
[0350]γ-セクレターゼ阻害剤
[0351]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのγ-セクレターゼ阻害剤の使用に関する。
【0286】
[0352]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるγ-セクレターゼ阻害剤は、XXIを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるγ-セクレターゼ阻害剤は、DAPTを含む。本明細書において提供される方法および組成物における追加の例示的なγ-セクレターゼ阻害剤としては、限定されないが、米国特許第7,049,296号、同第8,481,499号、同第8,501,813号、およびWIPO公開第WO/2013/052700号に記載のγ-セクレターゼ阻害剤が挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法、組成物、およびキットは、γ-セクレターゼ阻害剤を除外する。
【0287】
[0353]甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤
[0354]本開示の態様は、β細胞分化因子としての甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤の使用に関する。
【0288】
[0355]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物における甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤は、トリヨードチロニン(T3)を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物における甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤は、GC-1を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物における甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤は、T3またはGC-1の類似体または誘導体を含む。本明細書において提供される方法および組成物におけるT3の例示的な類似体としては、以下に限定されないが、選択的および非選択的甲状腺ホルモン模倣物(thyromimetic)、TRβ選択的アゴニスト-GC-1、GC-24、4-ヒドロキシ-PCB 106、MB07811、MB07344,3,5-ジヨードチロプロピオン酸(DITPA);選択的TR-βアゴニスト GC-1;3-ヨードチロナミン(T(1)AM)および3,3’,5-トリヨードサイロ酢酸(Triac)(ホルモンチロキシンの生物活性代謝産物(T(4));KB-2115およびKB-141;チロナミン;SKF L-94901;DIBIT;3’-AC
-T2;テトラヨードサイロ酢酸(Tetrac)およびトリヨードサイロ酢酸(Triac)(チロキシン[T4]およびトリヨードチロニン[T3]アラニン鎖の酸化的脱アミノ化および脱炭酸化による)、3,3’,5’-トリヨードチロニン(rT3)(T4およびT3脱ヨウ素化による)、3,3’-ジヨードチロニン(3,3’-T2)および3,5-ジヨードチロニン(T2)(T4、T3、およびrT3脱ヨウ素化による)、および3-ヨードチロナミン(T1AM)およびチロナミン(T0AM)(T4およびT3脱ヨウ素化およびアミノ酸脱炭酸化による)、ならびにTHの構造的類似体として、例えば、3,5,3’-トリヨードチロプロピオン酸(Triprop)、3,5-ジブルモ-3-ピリダジノン-1-チロニン(L-940901)、N-[3,5-ジメチル-4-(4’-ヒドロキシ-3’-イソプロピルフェノキシ)-フェニル]-オキサミン酸(CGS 23425)、3,5-ジメチル-4-[(4’-ヒドロキシ-3’-イソプロピルベンジル)-フェノキシ]酢酸(GC-1)、3,5-ジクロロ-4-[(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェノキシ)フェニル]酢酸(KB-141)、および3,5-ジヨードチロプロピオン酸(DITPA)が挙げられる。
【0289】
[0356]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物における甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤は、T3のプロドラッグまたはプロホルモン、例えば、T4甲状腺ホルモン(例えば、チロキシンまたはL-3,5,3’,5’-テトラヨードチロニン)を含む。
【0290】
[0357]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物における甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤は、米国特許第7,163,918号に記載されているヨードチロニン組成物である。
【0291】
[0358]上皮細胞成長因子(EGF)ファミリー
[0359]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのEGFファミリーからの成長因子の使用に関する。
【0292】
[0360]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるEGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、ベータセルリンを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるEGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、EGFを含む。上皮細胞成長因子(EGF)は、大きな膜内在性タンパク質前駆体からタンパク質分解によって切断された53アミノ酸のサイトカインである。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるEGFファミリーからの成長因子は、バリアントEGFポリペプチド、例えば、米国特許第7,084,246号に開示されているように、ヒト野生型EGFポリペプチド配列に対して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有する単離された上皮細胞成長因子ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるEGFファミリーからの成長因子は、米国特許第8,247,531号に開示されているように、EGF受容体に結合し、これをアゴナイズする、操作されたEGF突然変異体を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるEGFファミリーからの少なくとも1つの成長因子は、EGFファミリーのシグナル伝達経路を活性化する薬剤と置き換えられる。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるEGFファミリーからの成長因子は、EGFを模倣する化合物を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法、組成物、およびキットは、EGFファミリーからの成長因子を除外する。
【0293】
[0361]プロテインキナーゼ阻害剤
[0362]本開示の態様は、β細胞分化因子としてのプロテインキナーゼ阻害剤の使用に関する。
【0294】
[0363]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるプロテインキナーゼ阻害剤は、スタウロスポリンを含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるプロテインキナーゼ阻害剤は、スタウロスポリンの類似体を含む。本明細書において提供される方法および組成物におけるスタウロスポリンの例示的な類似体としては、限定されないが、Ro-31-8220、ビスインドリルマレイミド(Bis)化合物、10’-{5”-[(メトキシカルボニル)アミノ]-2”-メチル}-フェニルアミノカルボニルスタウロスポリン、スタラログ(staralog)(例えば、Lopezら、「Staurosporine-derived inhibitors broaden the scope of analog-sensitive kinase technology」、J. Am. Chem.
Soc. 2013年;135(48):18153~18159頁を参照されたい。)、およびcgp41251が挙げられる。
【0295】
[0364]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるプロテインキナーゼ阻害剤は、PKCβの阻害剤である。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるプロテインキナーゼ阻害剤は、以下の構造を有するPKCβの阻害剤、または以下のような化合物の誘導体、類似体もしくはバリアントである:
【0296】
【0297】
[0365]一部の実施形態では、PKCβの阻害剤は、以下の構造を有するGSK-2化合物または以下のような化合物の誘導体、類似体もしくはバリアントである:
【0298】
【0299】
[0366]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるPKCの阻害剤は、ビスインドリルマレイミドである。例示的なビスインドリルマレイミド
としては、限定されないが、ビスインドリルマレイミドI、ビスインドリルマレイミドII、ビスインドリルマレイミドIII、ヒドロクロリド、またはその誘導体、類似体もしくはバリアントが挙げられる。
【0300】
[0367]一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるPKC阻害剤は、シュードヒペリシン、またはその誘導体、類似体、もしくはバリアントである。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物におけるPKC阻害剤は、インドルビン-3-モノオキシム(indorublin-3-monoximc)、5-ヨードまたはその誘導体、類似体、もしくはバリアントである。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法、組成物、およびキットは、プロテインキナーゼ阻害剤を除外する。
VII.SC-β細胞
[0368]本開示のSC-β細胞は、正常なβ細胞の機能に重要であるβ細胞の多くの特徴的な特徴を共有する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、in vitroで、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)応答を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、in vivoで、GSIS応答を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、in vitroおよびin vivoでのGSIS応答を呈する。一部の実施形態では、GSIS応答は、内因性成熟膵β細胞のGSIS応答に似ている。一部の実施形態では、SC-β細胞は、少なくとも1つのグルコースチャレンジに対するGSIS応答を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、少なくとも2つの連続的グルコースチャレンジに対するGSIS応答を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、少なくとも3つの連続的グルコースチャレンジに対するGSIS応答を呈する。一部の実施形態では、GSIS応答は、複数のグルコースチャレンジに対する内因性ヒト膵島のGSIS応答に似ている。一部の実施形態では、GSIS応答は、細胞をヒトまたは動物へと移植した直後に観察される。一部の実施形態では、GSIS応答は、細胞をヒトまたは動物へと移植してからおよそ24時間以内に観察される。一部の実施形態では、GSIS応答は、細胞をヒトまたは動物へと移植してからおよそ1週間以内に観察される。一部の実施形態では、GSIS応答は、細胞をヒトまたは動物へと移植してからおよそ2週間以内に観察される。一部の実施形態では、低いグルコース濃度と比較して、高いグルコース濃度に応答して分泌されるインスリンの比率によって特徴付けられる細胞の刺激指数は、内因性成熟膵β細胞の刺激指数に類似している。一部の実施形態では、SC-β細胞は、1より大きい刺激指数を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、1より大きいかまたは1に等しい刺激指数を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、1.1より大きい刺激指数を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、1.1より大きいかまたは1.1に等しい刺激指数を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、2より大きい刺激指数を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、1より大きいかまたは1に等しい刺激指数を呈する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、少なくとも2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5.0またはそれより大きい刺激指数を呈する。
【0301】
[0369]本開示の一部の実施形態は、SC-β細胞を含む細胞培養物または細胞集団などの細胞組成物であって、SC-β細胞が、少なくとも1種のインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体に由来している細胞組成物に関する。一部の実施形態では、細胞組成物は、インスリン陽性内分泌細胞を含む。一部の実施形態では、細胞組成物は、NKX6.1膵前駆細胞を含む。一部の実施形態では、細胞組成物は、PDX1膵前駆細胞を含む。一部の実施形態では、細胞組成物は、原腸管細胞を含む。一部の実施形態では、細胞組成物は、胚体内胚葉細胞を含む。
【0302】
[0370]ある特定の実施形態に従って、化学的に誘導されたSC-β細胞は哺乳動物細胞であり、好ましい実施形態では、このようなSC-β細胞はヒトSC-β細胞である。一部の実施形態では、インスリン陽性内分泌細胞は、胚体内胚葉細胞、例えば、ヒト胚体内胚葉幹細胞に由来している。ある特定の実施形態に従って、化学的に誘導されたPDX1陽性膵前駆細胞は哺乳動物細胞であり、好ましい実施形態では、このようなPDX1陽性膵前駆細胞はヒトPDX1陽性膵前駆細胞である。
【0303】
[0371]本開示の他の実施形態は、本明細書に開示されている方法によって産生されたSC-β細胞を含む単離された細胞集団または細胞培養物などの組成物に関する。本開示の一部の実施形態は本明細書に開示されている方法によって産生された化学的に誘導されたSC-β細胞を含む単離された細胞集団または細胞培養物などの組成物に関する。一部の実施形態では、SC-β細胞は、SC-β細胞集団における全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満を含む。一部の実施形態では、組成物は、細胞集団における全細胞の約90%超、例えば、SC-β細胞である細胞集団における全細胞の少なくとも約95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%または少なくとも約99%、または少なくとも約100%を構成するSC-β細胞の集団を含む。
【0304】
[0372]本開示のある特定の他の実施形態は、SC-β細胞とインスリン陽性内分泌細胞またはSC-β細胞が由来するその前駆体の組合せを含む、単離された細胞集団または細胞培養物などの組成物に関する。一部の実施形態では、SC-β細胞が由来するインスリン陽性内分泌細胞は、単離された細胞集団または培養物における全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満を含む。
【0305】
[0373]本開示の追加の実施形態は、本明細書に記載のプロセスによって産生され、大多数の細胞型として化学的に誘導されたSC-β細胞を含む、単離された細胞集団または細胞培養物などの組成物に関する。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法およびプロセスは、少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、少なくとも約90%、少なくとも約89%、少なくとも約88%、少なくとも約87%、少なくとも約86%、少なくとも約85%、少なくとも約84%、少なくとも約83%、少なくとも約82%、少なくとも約81%、少なくとも約80%、少なくとも約79%、少なくとも約78%、少なくとも約77%、少なくとも約76%、少なくとも約75%、少なくとも約74%、少なくとも約73%、少なくとも約72%、少なくとも約71%、少なくとも約70%、少なくとも約69%、少なくとも約68%、少なくとも約67%、少なくとも約66%、少なくとも約65%、少なくとも約64%、少なくとも約63%、少なくとも約62%、少なくとも約61%、少なくとも約60%、少なくとも約59%、少なくとも約58%、少なくとも約57%、少なくとも約56%、少なくとも約55%、少なくとも約54%、少なくとも約53%、少なくとも約52%、少なくとも約51%または少なくとも約50%のSC-β細胞を含む、単離された細胞培養物および/または細胞集団を産生する。
【0306】
[0374]別の実施形態では、単離された細胞集団または細胞(または細胞培養物)の組成物は、ヒトSC-β細胞を含む。他の実施形態では、本明細書に記載されている方法およびプロセスは、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なく
とも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%または少なくとも約1%のSC-β細胞を含む単離された細胞集団を産生し得る。好ましい実施形態では、単離された細胞集団は、ヒトSC-β細胞を含み得る。一部の実施形態では、細胞培養物または集団におけるSC-β細胞のパーセンテージは、培養物中に残っているフィーダー細胞に関係なく計算される。
【0307】
[0375]本開示のさらに別の態様は、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なくとも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%または少なくとも約1%のNKX6.1+/C-ペプチド+細胞を含む、細胞集団または細胞(または細胞培養物)の組成物に関する。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約20%のNKX6.1+/C-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約40%のNKX6.1+/C-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約50%のNKX6.1+/C-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約17.9%のNKX6.1+/C-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約41.5%のNKX6.1+/C-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約50.6%のNKX6.1+/C-ペプチド+細胞を含む。
【0308】
[0376]一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約89%、少なくとも約88%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なくとも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%または少なくとも約1%のNKX6.1+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約40%のNKX6.1+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約60%のNKX6.1+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約85%のNKX6.1+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約36.9%のNKX6.1+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約63.4%のNKX6.1+細
胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約89.5%のNKX6.1+細胞を含む。
【0309】
[0377]一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なくとも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%または少なくとも約1%のC-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約30%のC-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約55%のC-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約26.8%のC-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約57.7%のC-ペプチド+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約55.2%のC-ペプチド+細胞を含む。
【0310】
[0378]一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約89%、少なくとも約88%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なくとも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%または少なくとも約1%のクロモグラニンA(CHGA)+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約40%のCHGA+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約85%のCHGA+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、少なくとも約95%のCHGA+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約37.7%のCHGA+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約87.5%のCHGA+細胞を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるような細胞集団または細胞の組成物は、約96.4%のCHGA+細胞を含む。
【0311】
[0379]本開示のさらなる他の実施形態は、SC-β細胞およびインスリン陽性内分泌細胞またはそれらが分化されるその前駆体の混合物を含む、単離された細胞集団または細胞培養物などの組成物に関する。例えば、約95個毎のインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体に対して少なくとも約5個のSC-β細胞を含む細胞培養物または細胞集団が産生され得る。他の実施形態では、約5個毎のインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体に対して少なくとも約95個のSC-β細胞を含む細胞培養物または細胞集団が産生され
得る。さらに、他の比率のインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体に対するSC-β細胞を含む細胞培養物または細胞集団が企図される。例えば、約1,000,000個毎、または少なくとも100,000個の細胞、または少なくとも10,000個の細胞、または少なくとも1000個の細胞または500個、もしくは少なくとも250個もしくは少なくとも100個もしくは少なくとも10個のインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体に対して少なくとも約1個のSC-β細胞を含む組成物を生成することができる。
【0312】
[0380]一部の態様では、本開示は、少なくとも約50%のPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞、最大約30%、28%、26%、25%、24%、22%、20%、18%、16%、14%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、または2%のクロモグラニンA(CHGA)陽性細胞、および最大約30%、28%、26%、25%、24%、22%、20%、18%、16%、または15%のCDX2陽性細胞を含む細胞クラスターを提供する。一部の事例では、細胞クラスターは、最大約20%のCDX2陽性、NKX6.1陽性の細胞を含む。一部の事例では、細胞クラスターは、最大約5%のCHGA陽性細胞を含む。一部の実施形態では、細胞クラスターは、最大約20%のCDX2陽性、NKX6.1陽性の細胞および最大約5%のCHGA陽性細胞を含む。一部の実施形態では、細胞クラスターは、少なくとも約60%、62%、64%、65%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、または95%のPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む。一部の実施形態では、細胞クラスターは、少なくとも約65%のPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む。
【0313】
[0381]一部の実施形態では、少なくとも約50%のPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞、最大約30%のクロモグラニンA(CHGA)陽性細胞、および最大約30%のCDX2陽性細胞を含む細胞クラスターは、約30%を超えるクロモグラニンA(CHGA)陽性細胞または約30%を超えるCDX2陽性細胞を有する同等の細胞クラスターと比較して、特定の機能的特徴を有し得る。例えば、一部の事例では、少なくとも約50%のPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞、最大約30%のクロモグラニンA(CHGA)陽性細胞、および最大約30%のCDX2陽性細胞を含む細胞クラスターのさらなる分化により、フローサイトメトリーによって測定して、少なくとも約50%のPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞、および30%を超えるクロモグラニンA(CHGA)陽性細胞または30%を超えるCDX2陽性細胞を含む同等の細胞クラスターから分化した非天然膵β細胞を含む第2の細胞クラスターより高いグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)刺激指数を有する非天然膵β細胞を含む第1の細胞クラスターが得られる。
【0314】
[0382]一部の態様では、本開示は、少なくとも約60%、62%、64%、65%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、または90%のPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞および最大約40%、38%、36%、34%、32%、30%、28%、26%、25%、24%、22%、20%、18%、16%、15%、14%、12%、または10%のCDX2陽性細胞を含む細胞クラスターを提供する。一部の実施形態では、細胞クラスターは、少なくとも約85%のPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞を含む。一部の実施形態では、細胞クラスターは、最大約15%のCDX2陽性細胞を含む。一部の事例では、細胞クラスターは、少なくとも約85%のPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞および最大約15%のCDX2陽性細胞を含む。
【0315】
[0383]一部の実施形態では、少なくとも約60%のPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞および最大約40%のCDX2陽性細胞を含む細胞クラスターは、約40%を超えるCDX2陽性細胞を有する同等の細胞クラスターと比較して、特定の機能的特徴を
有し得る。例えば、一部の事例では、少なくとも約60%のPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞および最大約40%のCDX2陽性細胞を含む細胞クラスターのさらなる分化により、フローサイトメトリーによって測定して、少なくとも約60%のPdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞および40%を超えるCDX2陽性細胞を含む同等の細胞クラスターから分化した非天然膵β細胞を含む第2の細胞クラスターより高いグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)刺激指数を有する非天然膵β細胞を含む第1の細胞クラスターが得られる。
【0316】
[0384]一部の態様では、本開示は、非天然膵β細胞を含む細胞クラスターを提供する。一部の実施形態では、本明細書に開示されている細胞クラスターは、原腸管細胞を骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤および形質転換成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触させることによって原腸管細胞の分化から得られる。一部の実施形態では、細胞クラスターは、接触させることなく原腸管細胞の分化から得られた同等の第2の細胞クラスターと比較して、より数の多い、1立方マイクロメートル当たりの非天然膵β細胞を有する。一部の実施形態では、細胞クラスターは、同等の第2の細胞クラスターと比較して、少なくとも約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、または1.6倍数の多い、1立方マイクロメートル当たりの非天然膵β細胞を有する。
【0317】
[0385]一部の事例では、本明細書に開示されている非天然膵β細胞を含む細胞クラスターは、BMPシグナル伝達経路阻害剤またはTGF-βファミリーからの成長因子と接触させることなく原腸管細胞の分化から得られた同等の細胞クラスターと比較して、グルコースチャレンジに応答してより高いインスリン分泌を呈する。一部の実施形態では、細胞クラスターは、同等の第2の細胞クラスターと比較して、少なくとも約1.2、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5倍高いインスリン分泌を呈する。一部の実施形態では、細胞クラスターは、同等の第2の細胞クラスターと比較して、より高いGSIS刺激指数を呈する。一部の実施形態では、細胞クラスターのGSIS刺激指数は、第2の細胞クラスターのものよりも、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.2倍、少なくとも約2.4倍、少なくとも約2.8倍、または少なくとも約3倍高い。一部の実施形態では、細胞クラスターのGSIS刺激指数は、第2の集団のものよりも、少なくとも約3倍高い。一部の実施形態では、GSIS刺激指数は、2mMのグルコースチャレンジに応答したインスリン分泌に対する20mMのグルコースチャレンジに応答したインスリン分泌の比率として計算される。一部の実施形態では、非天然膵β細胞は、グルコースチャレンジに曝露された場合に、in vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する。一部の事例では、非天然膵β細胞は、第1の濃度のK+に応答したインスリン分泌を呈する。一部の実施形態では、細胞クラスターは、第1の濃度のK+に応答した同等の第2の細胞クラスターと比較して、より高いインスリン分泌を呈する。一部の実施形態では、細胞クラスターは、第1の濃度のK+に応答した同等の第2の細胞クラスターと比較して、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.2倍、少なくとも約2.4倍、少なくとも約2.8倍、少なくとも約3倍、少な
くとも約3.2倍、少なくとも約3.4倍、少なくとも約3.6倍、少なくとも約3.8倍、少なくとも約4倍高いインスリン分泌を呈する。
【0318】
[0386]一部の事例では、本明細書に開示されている細胞集団または細胞クラスター、例えば、細胞選別プロセスを介さずに単離された細胞集団または細胞クラスターは、選別されていない。一部の実施形態では、本明細書に開示されている細胞クラスターは、所与の環境、例えば、3D懸濁液培養で培養された細胞の自己凝集によって形成された細胞クラスターを指し得る。一部の実施形態では、本明細書に開示されている細胞クラスターは、本明細書に記載されているように、分化プロセスの間に形成された中間体細胞クラスター
である。一部の事例では、中間体細胞クラスター、例えば、Pdx1陽性、NKX6.1陰性の膵前駆細胞を含む細胞クラスター(例えば、ステージ3の細胞クラスター)またはPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞クラスター(例えば、ステージ4の細胞クラスター)を含む細胞クラスターは、細胞選別に供されない。一部の事例では、細胞選別を経た細胞集団は、本明細書に開示されている中間体細胞クラスターを形成することができない。例えば、細胞選別を経た後の、Pdx1陽性膵前駆細胞は、本明細書に開示されている細胞クラスターを形成することができない場合がある。
【0319】
[0387]本明細書に記載されている細胞選別は、細胞のサイズ、形状(形態)、表面タンパク質発現、内因性シグナルタンパク質の発現、またはこれらの任意の組合せにおける差に依拠することによって、複数の細胞から1群の細胞を単離するプロセスを指し得る。一部の事例では、細胞選別は、細胞をフローサイトメトリーに供することを含む。フローサイトメトリーは、レーザーまたはインピーダンスに基づく生物物理学的技術であり得る。フローサイトメトリーの間に、細胞を、流体流に懸濁させ、電子検出装置を通過させることができる。フローサイトメトリーの1種である、蛍光活性化細胞選別(FACS)では、細胞の光学特性(例えば、レーザー励起時の発光波長)のうちの1つまたは複数のパラメーターに基づいて、物理的に分離し、それによって、フローサイトメトリーを使用して目的の細胞を精製することができる。本明細書に記載されているように、選別されていない細胞クラスターは、活性細胞選別プロセス、例えば、フローサイトメトリーに供されていない複数の細胞によって形成された細胞クラスターであり得る。一部の事例では、本明細書で議論されているフローサイトメトリーは、細胞内で発現される1つまたは複数のシグナルペプチドに基づき得る。例えば、細胞クラスターは、シグナルペプチド(例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはtdTomato)を発現する細胞を含むことができる。一部の事例では、シグナルペプチドは、細胞内のインスリン発現のインジケーターとして発現される。例えば、細胞クラスターは、インスリンプロモーターの制御下で、GFPをコードする外因性核酸配列を有する細胞を含むことができる。インスリンプロモーターは、内因性または外因性プロモーターであり得る。一部の事例では、これらの細胞内でのGFPの発現は、細胞内でのインスリン発現を示すことができる。よって、GFPシグナルは、膵β細胞のマーカーであり得る。一部の事例では、本明細書に記載されている細胞選別は、磁気抗体または他のリガンドを使用して異なる種類の細胞を標識し、磁気特性の差を細胞選別について使用することができる、磁気活性化フローサイトメトリーを含み得る。
【0320】
[0388]本明細書に記載のPdx1、NKX6.1、インスリン、NGN3、またはCHGAのような1つまたは複数の特定のマーカーを発現する細胞のパーセンテージは、フローサイトメトリーアッセイのような技法を使用して検出したパーセンテージの値であり得る。一部の事例では、フローサイトメトリーアッセイの間に、本明細書で議論された細胞集団または細胞クラスターは、トリプシンまたはTrypLE(商標)Expressのような消化酵素中でのインキュベーションによって、単細胞懸濁液中に分散される。分散された細胞は、PBSのような好適な緩衝液中で洗浄され、遠心分離され、次いで、4%のPFAのような固定緩衝液中に再懸濁され得る。次いで、目的の細胞マーカーに対する一次抗体とのインキュベーションを行うことができ、その後、二次抗体と共にインキュベートすることができる。抗体のインキュベーション後に、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによる分離に供することができる。フローサイトメトリー以外の技法を使用して、本明細書に記載の細胞を特徴付ける、例えば、細胞のパーセンテージを決定することもできる。細胞の特徴付けの方法の非限定的な例としては、遺伝子のシーケンシング、顕微鏡技法(蛍光顕微鏡、原子力顕微鏡)、核型分析、イソ酵素分析、DNA特性、ウイルス感受性が挙げられる。
【0321】
[0389]一部の態様では、本開示は、グルコース応答性インスリン分泌細胞の集団を含む
組成物であって、細胞が、グルコースで誘導した際に分泌されるインスリンの量と比較して、KCl(例えば、約20~約50mM、例えば、約30mM)で誘導した際により多量のインスリンを分泌する、組成物に関する。一部の実施形態では、グルコース応答性インスリン分泌細胞の集団は、グルコースで誘導した際に分泌されるインスリンの量と比較して、KClで誘導した際に、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍多量のインスリンを分泌する。
【0322】
[0390]一部の態様では、本開示は、グルコース応答性インスリン分泌細胞の集団を含む組成物であって、細胞が、シグナル伝達因子の非存在下における同等の細胞と比較して、シグナル伝達因子の存在下ので、KClおよび/またはグルコースで誘導した際により多量のインスリンを分泌する、組成物に関する。一部の実施形態では、細胞は、高グルコースの存在下でより多量のインスリンを分泌するが、低グルコースの存在下では分泌しない。一部の実施形態では、高グルコース濃度は、約10~20mMである。一部の実施形態では、低グルコース濃度は、約2~5mMである。
【0323】
[0391]一部の態様では、本開示は、分化した膵前駆細胞の集団を含む組成物であって、集団が、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも60%の膵β細胞を含む、組成物に関する。一部の実施形態では、集団は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、または90%の膵β細胞を含む。一部の実施形態では、集団は、基本培地の構成成分と接触していない同等の集団と比較して、所定の基本培地の構成成分と接触した際に、より高いパーセンテージの膵β細胞を含む。
【0324】
[0392]本明細書に記載の本開示の方法に従って産生された、in vitroで成熟した、SC-β細胞(例えば、膵β細胞)は、多くの利点を実証し、例えば、in vitroでのグルコース刺激インスリン分泌を実施し、遺伝子発現と超微細構造によってヒト膵島β細胞に似ており、マウスへと移植された場合にヒトインスリンを分泌し、高血糖症を改善し、細胞療法に対する新たなプラットフォーム(例えば、追加のおよび/または機能的β細胞を必要とする対象への移植)、薬物スクリーニング(例えば、インスリン産生/分泌、生存、脱分化など)、研究(例えば、正常なβ細胞と糖尿病のβ細胞の間の機能の差を決定すること)、および組織工学(例えば、膵島を再構築する際に第1の細胞型としてSC-β細胞を使用すること)を提供する。
VIII.増殖を低減する方法
[0393]本明細書に記載の方法に従って産生されるSC-β細胞の細胞集団において増殖を低減するための方法が本明細書において提供される。方法は、内分泌細胞を含むin vitro細胞集団に照射するステップを含む。一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団の照射は、約100rad~約100,000radの線量で約1分~約60分の時間である。
【0325】
[0394]一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団の照射は、約100rad~約50,000rad、約100rad~約25,000rad、約100rad~約10,000rad、約250rad~約25,000rad、約500rad~約25,000rad、約1,000rad~約25,000rad、約2,500rad~約25,000rad、約5,000rad~約25,000rad、または約10,000rad~約15,000radの線量である。一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団の照射は、約10,000radの線量である。一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団の照射は、約1分~約55分、約1分~約50分、約1分~約45分、約1分~約40分、約1分~約35分、約1分~約30分、約1分~約25分、約1分~約20分、約1分~約10分、約1分~約5分、約10分~約55分、約15分~約55分、約20分~約55分、約25分~約55分、約30分~約55分、約20分~約40分、または約25分~約35分の間行われる。一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団の照射は、約3
0分間である。
【0326】
[0395]本明細書で使用される場合、照射は、イオン化照射を指し得る。これは、細胞集団を、ガンマ線、x線、紫外線放射、アルファ線、ベータ線(電子線)、または中性子線に曝露することによって行われ得る。ある特定の理論に拘束されることを望むものではないが、イオン化照射は、細胞のDNAに損傷を与えること、例えば、細胞を増殖させることによって細胞成長を、かつ結果として細胞死を制御し得る。一部の事例では、本明細書に記載されているように、照射に供された内分泌細胞を含む細胞集団は、照射に供されていない対応する細胞集団と比較して、より小さい割合の増殖の可能な細胞または増殖細胞を有する。一部の事例では、照射に曝露されていない対応する細胞集団と比較して、照射に曝露された内分泌細胞を含む細胞集団では、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、400%、420%、450%、480%、または500%小さい割合の増殖の可能な細胞または増殖細胞が存在する。
【0327】
[0396]一部の事例では、本明細書において提供される方法は、膵分化の間に、幹細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、膵前駆細胞、または内分泌細胞を含む細胞集団を照射に曝露するステップを含む。一部の事例では、照射によって、照射に供されていない対応する細胞集団と比較して、増殖能力の低下した細胞集団が得られる。
【0328】
[0397]一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、本明細書において提供される分化方法のいずれかによって得られる細胞集団である。一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、本明細書において提供される段階的分化方法によって得られる細胞集団である。一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、分化プロトコールのステージ6の細胞集団である。一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、ステージ6の1日目(S6d1)、S6d2、S6d3、S6d4、S6d5、S6d6、またはS6d7の細胞集団である。一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、凍結保存から解凍され回収された細胞集団である。一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、照射に曝露されている間、凍結保存されている。内分泌細胞を含む細胞集団は、本明細書に記載されているように、照射に曝露された後に膵β細胞へとさらに分化するために、解凍および回収され得る。
【0329】
[0398]一部の事例では、内分泌細胞を含む細胞集団は、膵β細胞を含む細胞集団へとさらに分化/成熟されてもよく、照射に対する同一の曝露を受けない対応する細胞集団と比較して、より小さい割合の増殖の可能な細胞または増殖細胞を有し得る。一部の事例では、照射に曝露されていない対応する細胞集団と比較して、内分泌を含む照射された細胞集団から得られた膵β細胞を含む細胞集団において、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、400%、420%、450%、480%、または500%小さい割合の増殖の可能な細胞または増殖細胞が存在する。
【0330】
[0399]一部の事例では、内分泌を含む照射された細胞集団から得られた膵β細胞を含む細胞集団は、それを必要とする対象に移植される。膵β細胞を含む細胞集団は、対象における血中グルコースレベルを制御する助けとなり得る。一部の事例では、内分泌を含む照射された細胞集団から得られた膵β細胞を含む細胞集団は、対象において少なくとも約50日、60日、70日、80日、90日、またはさらに長い間、血中グルコース制御を維持することができる。一部の事例では、内分泌を含む照射された細胞集団から得られた膵β細胞を含む細胞集団は、対象において60日間、血中グルコース制御を維持することが
できる。一部の事例では、内分泌を含む照射された細胞集団から得られた膵β細胞を含む細胞集団は、対象において90日間、血中グルコース制御を維持することができる。
IX.幹細胞由来ベータ細胞を濃縮する方法
[0400]SC-β細胞およびインスリン陽性内分泌細胞またはSC-β細胞が由来するその前駆体を含む細胞の混合集団などの、細胞の異種集団由来のSC-β細胞の集団を単離する方法が本明細書において提供される。上記プロセスのいずれかによって産生されたSC-β細胞の集団を、いずれかの細胞表面マーカー、例えば、SC-β細胞上に存在する(インスリン陽性内分泌細胞またはそれが由来するその前駆体上に存在しない)ポリシアル化神経細胞接着分子(PSA-NCAM)を使用することによって、濃縮、単離および/または精製することができる。このような細胞表面マーカーは、SC-β細胞に対して特異的であるアフィニティータグとも称される。
【0331】
[0401]一部の実施形態では、細胞表面マーカーは、誘導性細胞表面マーカーである。例えば、PSA-NCAMは、ある特定のシグナルによって表面に誘導され得る。様々な種類の内分泌細胞は、様々なシグナルに応答することができる。一部の実施形態では、PSA-NCAMは、酵素、例えば、エンドノイラミニダーゼまたはエンドNによって表面から選択的に切断され得る。エンドNは、NCAMに関連するシアル酸残基の最小長7~9残基の特徴を有する、αー2,8-結合を含むシアル酸の線状ポリマーを迅速かつ特異的に分解するエンドシアリダーゼである。
細胞選別
[0402]本明細書において提供される方法は、内分泌細胞の第1の集団および内分泌細胞の第2の集団を含む細胞組成物であって、内分泌細胞の第1の集団の低減した割合の集団が、内分泌細胞の第2の集団と比較して、VMAT+またはCdx2+を発現する、組成物に関する。一部の実施形態では、内分泌細胞の第1および第2の集団は、グルコースおよび幹細胞(hPSCまたはEC)によって誘導され得るベータ細胞を含む。一部の実施形態では、幹細胞は、イソプロテレノールによって誘導される。一部の実施形態では、細胞集団は、誘導されたインスリン産生ベータ細胞および非インスリン産生細胞である細胞の混合物を含む。一部の実施形態では、PSA-NCAMは、「白紙状態」を創出するために全ての細胞から切断されることが可能であり、細胞型特異的刺激物質を用いて細胞表面に誘導して、表面に多量のPSA-NCAMを有する唯一の細胞型を得ることができ、かつアフィニティータグ、例えば、抗PSA-NCAM抗体を使用して、誘導されたSC-β細胞を選択的に選別することができる。このように、分化したSC-β細胞が、内分泌細胞の集団において、他の内分泌細胞から選別され、濃縮され得る。SC-β細胞。一部の実施形態では、細胞集団のうちの1つまたは複数の細胞は、刺激性化合物と接触した場合に、細胞表面に選択マーカーを局在化することができない。
【0332】
[0403]SC-β細胞に特異的なアフィニティータグの例は、SC-β細胞の細胞表面上に存在するが、他の細胞型(例えば、インスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体)上には実質的に存在しない、ペプチドなどのマーカー分子に対して特異的である抗体(例えば、抗PSA-NCAM抗体)、リガンドまたは他の結合剤である。一部のプロセスでは、SC-β細胞(例えば、ヒトSC-β細胞)上の細胞表面抗原に結合する抗体は、本明細書に記載の方法によって産生される化学的に誘導された(例えば、本明細書に記載されているような少なくとも1つのβ細胞成熟因子と接触させることによって)SC-β細胞の濃縮、単離または精製のためのアフィニティータグとして使用される。このような抗体は公知であり、市販されている。
【0333】
[0404]当業者であれば、SC-β細胞の濃縮、単離および/または精製のために抗体を使用することに関するプロセスを容易に認識するであろう。例えば、一部の実施形態では、試薬、例えば、抗体は、細胞間および基質との接着を低減するために処理された、SC-β細胞を含む細胞集団と共にインキュベートされる。次いで、細胞集団は、洗浄、遠心
分離、および再懸濁される。一部の実施形態では、抗体が標識で既に標識されていなければ、次いで、細胞懸濁液を、一次抗体に結合することが可能であるFACSコンジュゲート抗体などの二次抗体と共にインキュベートする。次いで、SC-β細胞を緩衝液中で洗浄、遠心分離および再懸濁する。次いで、SC-β細胞懸濁液を分析し、蛍光活性化細胞選別機(FACS)を使用して選別する。抗体に結合した、再プログラムされた蛍光細胞を、非結合、非蛍光細胞(例えば、未成熟の、インスリン産生細胞)から別々に収集し、それによって、細胞懸濁液中に存在する他の細胞、例えば、インスリン陽性内分泌細胞もしくはその前駆体、または未成熟の、インスリン産生細胞(例えば、他の分化した細胞型)からのSC-β細胞の単離がもたらされる。
【0334】
[0405]本明細書に記載のプロセスの別の実施形態では、SC-β細胞を含む単離された細胞組成物は、代替アフィニティーに基づく方法を使用することによって、またはSC-β細胞に特異的である同一もしくは異なるマーカーを使用する追加回数の選別によって、さらに精製され得る。例えば、一部の実施形態では、FACS選別を使用して、単独もしくはC-ペプチドの発現と共に、またはあるいは本明細書に開示されているβ細胞マーカーと共に、細胞集団においてこれらのマーカーのうちの1つを発現しない細胞(例えば、陰性細胞)から、NKX6-1を発現するSC-β細胞を最初に単離する。第2のFACS選別、例えば、第1の選別とは異なるマーカーに関して陽性である細胞を単離するためにFACSを再度使用して陽性細胞を選別することにより、再プログラムされた細胞に関して細胞集団を濃縮する。代替の実施形態では、FACS選別を使用して、ほとんどのインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体上に存在するが、SC-β細胞上に存在しないマーカーを負に選別することによって、細胞を分ける。
【0335】
[0406]本明細書に記載のプロセスの一部の実施形態では、SC-β細胞は、抗体を使用せずに、蛍光標識され、次いで、蛍光活性化細胞選別機(FACS)を使用することによって非標識細胞から単離される。このような実施形態では、GFP、YFPをコードする核酸またはルシフェラーゼをコードする遺伝子などの発現可能な蛍光マーカー遺伝子をコードする別の核酸を使用して、上記の方法を使用して再プログラムされた細胞を標識する。例えば、一部の実施形態では、GFPをコードする核酸またはその生物学的に活性な断片の少なくとも1つのコピーは、SC-β細胞へと最初に化学的に誘導される少なくとも1つのインスリン陽性内分泌細胞中に導入され、その下流で、GFP遺伝子産物またはその生物学的に活性な断片の発現がインスリンプロモーターの制御下にあるように、インスリンプロモーターなどのプロモーターがSC-β細胞中で発現した。
【0336】
[0407]今まさに記載された手順に加えて、化学的に誘導されたSC-β細胞は、細胞単離のための他の技法によって単離される場合もある。さらに、SC-β細胞はまた、SC-β細胞の選択的生存または選択的拡大を促進する成長条件での連続的継代培養の方法によって、濃縮または単離されてもよい。このような方法は当業者に公知であり、例えば、とりわけ、インスリン、アクチビンA、TGF-ベータ1、2、および3を含むTGF-ベータファミリーのメンバー、骨形成タンパク質(BMP-2、-3、-4、-5、-6、-7、-11、-12、および-13)、線維芽細胞成長因子-1および-2、血小板由来成長因子-AA、および-BB、血小板リッチプラズマ、インスリン様成長因子(IGF-I、II)成長分化因子(GDF-5、-6、-7、-8、-10、-11、-15)、血管内皮細胞由来成長因子(VEGF)、肝細胞成長因子(HGF)、プレイオトロフィン、エンドセリン、上皮細胞成長因子(EGF)、ベータ-セルリンなどの薬剤の使用を含み得る。他の医薬化合物としては、例えば、ニコチンアミド、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびII、GLP-1および2ミメティボディ、エキセンディン-4、レチノイン酸、副甲状腺ホルモンを挙げることができる。
【0337】
[0408]本明細書に記載の方法を使用して、SC-β細胞の濃縮、単離および/または精
製された集団は、インスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体(本明細書に記載の方法によって多能性幹細胞から分化した)から、in vitroで産生することができる。一部の実施形態では、好ましい濃縮、単離および/または精製方法は、ヒト多能性幹細胞から、またはヒト人工多能性幹(iPS)細胞から分化した、ヒトインスリン陽性内分泌細胞またはその前駆体からのヒトSC-β細胞のin vitro産生に関する。SC-β細胞が、その前は胚体内胚葉(その前はiPS細胞に由来する)に由来するインスリン陽性内分泌細胞から分化したこのような実施形態では、SC-β細胞は、iPS細胞を産生するために細胞が得られた対象に対して自己由来であり得る。
【0338】
[0409]本明細書に記載の方法を使用して、SC-β細胞の単離された細胞集団は、インスリン陽性内分泌細胞または前駆体集団の化学誘導の前の細胞集団と比較して、少なくとも約2~約1000倍に、SC-β細胞含量が濃縮される。一部の実施形態では、SC-β細胞は、インスリン陽性内分泌細胞または前駆体集団の化学誘導の前の集団と比較して、少なくとも約5~約500倍に濃縮され得る。他の実施形態では、SC-β細胞は、インスリン陽性内分泌細胞または前駆体集団の化学誘導の前の集団と比較して、少なくとも約10~約200倍に濃縮され得る。さらなる他の実施形態では、SC-β細胞は、インスリン陽性内分泌細胞または前駆体集団の化学誘導の前の集団と比較して、少なくとも約20~約100倍に濃縮され得る。さらに他の実施形態では、SC-β細胞は、インスリン陽性内分泌細胞または前駆体集団の化学誘導の前の集団と比較して、少なくとも約40~約80倍に濃縮され得る。ある特定の実施形態では、SC-β細胞は、インスリン陽性内分泌細胞または前駆体集団の化学誘導の前の集団と比較して、少なくとも約2~約20倍に濃縮され得る。
【0339】
[0410]標的細胞(例えば、SC-β細胞)を細胞集団から選択する方法であって、標的細胞を刺激性化合物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、標的細胞の選択マーカー(例えば、PSA-NCAM)を誘導して、標的細胞の細胞表面に局在化させ、細胞表面における選択マーカー(例えば、PSA-NCAM)の局在化に基づいて標的細胞(例えば、SC-β細胞)を選択する方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、選択マーカーは、PSA-NCAMを含む。一部の実施形態では、標的細胞を選択することは、細胞選別による。一部の実施形態では、選択することは、標的細胞の選択マーカーを、選択マーカーが標的細胞の表面に局在化された場合に、抗原結合ポリペプチドと接触させることを含む。一部の実施形態では、抗原結合ポリペプチドは、抗体を含む。一部の実施形態では、抗原結合ポリペプチドは、PSA-NCAMに結合する。一部の実施形態では、方法は、細胞の集団を、選択マーカーを標的細胞集団のうちの少なくとも1つの細胞の細胞表面から除去する化合物(例えば、酵素)で処理するステップをさらに含む。一部の実施形態では、標的細胞の刺激性化合物との接触の前に、標的細胞の集団を化合物で処理する。一部の実施形態では、化合物は、少なくとも1つの細胞の細胞表面から選択マーカーを切断する。一部の実施形態では、標的細胞は、内分泌細胞である。一部の実施形態では、刺激性化合物は、グルコースを含む。一部の実施形態では、内分泌細胞は、β細胞である。一部の実施形態では、β細胞は、SC-β細胞である。一部の実施形態では、刺激性化合物は、イソプロテレノールを含む。一部の実施形態では、内分泌細胞は、EC細胞である。刺激性化合物がグルコースであり、1つまたは複数の細胞がEC細胞である、請求項102に記載の方法。一部の実施形態では、刺激性化合物がイソプロテレノールであり、1つまたは複数の細胞がβ細胞である。一部の実施形態では、標的細胞を選択することにより、細胞集団のうちの1つまたは複数の細胞から標的細胞を分離する。
照射
[0411]一部の実施形態では、インスリン産生内分泌細胞(例えば、幹細胞由来ベータ細胞)は、細胞のフィーダー層の存在下で培養することができる。このような細胞は、例えば、マウスまたはヒト起源であってもよい。インスリン産生内分泌細胞(例えば、幹細胞
由来ベータ細胞)はまた、照射されるか、マイトマイシンcなどの化学的不活性化剤による処理によって化学的に不活性化されるか、またはそうでなければ、所望の場合、それらの増殖を阻害するために処理され得る。他の実施形態では、インスリン産生内分泌細胞(例えば、幹細胞由来ベータ細胞)は、フィーダー細胞なしで培養される。
【0340】
[0412]多能性幹細胞は、フィーダー細胞を有さない場合でさえも、未分化状態で維持され得る。フィーダー細胞を含まない培養に関する環境は、適切な培養基質、特に、Matrigel(登録商標)またはラミニンなどの細胞外マトリックスを含む。典型的には、細胞が完全に分散する前に、酵素消化を停止される(コラゲナーゼIVにより約5mM)。次いで、約10~2,000個の細胞の凝集塊を、さらに分散させることなく基質上に直接プレーティングする。フィーダーフリー培養は、分化せずに細胞の増殖を支持する因子を含有する栄養培地によって支持される。このような因子は、このような因子を分泌する細胞、例えば、照射された(約4,000rad)初代マウス胎仔線維芽細胞、テロメル化されたマウス線維芽細胞、またはpPS細胞由来の線維芽細胞様細胞と共に、培地を培養することによって、培地中に導入することができる。培地は、20%の血清置き換えおよび4ng/mLのbFGFを補充したKO DMEMなどの血清フリー培地中で、約5~6×104cm-2の濃度でフィーダーをプレーティングすることによって条件づけることができる。1~2日間条件付けした培地に、さらなるbFGFを補充し、1~2日間多能性幹細胞の培養を支持するために使用する。フィーダーフリー培養方法の特徴については、国際特許出願公開第WO 01/51616号;およびXuら、Nat. Biotechnol. 19:971、2001年においてさらに議論されている。
X.医薬組成物
[0413]本開示は、前記方法のいずれかによって産生された細胞を含有するかまたは前記細胞集団のいずれかを含有する治療用組成物に関する。治療用組成物は、例えば、人工脳脊髄液またはリン酸緩衝生理食塩水を含む生理学的に適合性の溶液をさらに含むことができる。治療用組成物を使用して、糖尿病を処置、予防、または安定化することができる。例えば、体細胞または幹細胞は、処置を必要としている個体または健康な個体から得ることができ、本開示の方法によって幹細胞由来ベータ細胞に再プログラムすることができる。本開示の一実施形態では、幹細胞由来ベータ細胞は、選別され、濃縮され、状態を処置するために個体中に導入される。別の実施形態では、幹細胞は、個体への導入前に、ベータ細胞への分化に好適な条件下で培養され、疾患組織または損傷を受けた組織の正常な機能を置き換えるかまたは補助するために使用することができる。本開示の大きな利点は、移植に好適な同じHLA型を有する健康な個体からの、患者に特異的なヒトベータ細胞または適合性幹細胞由来ベータ細胞の本質的に制限のない供給を提供することである。細胞療法において、自家細胞および/または適合性細胞の使用は、免疫拒絶を受けやすい非自家細胞の使用に対して、より大きな利益をもたらす。対照的に、自家細胞は、重大な免疫応答を誘発しにくい。
【0341】
[0414]一部の事例では、本開示は、疾患(例えば、糖尿病)の処置のための様々な方法において、非天然膵β細胞(ベータ細胞)集団ならびに細胞の構成成分および生成物を利用することができる医薬組成物を提供する。ある特定の事例は、生細胞(例えば、単独のまたは他の細胞型と混合した非天然膵β細胞)を含む医薬組成物を包含する。他の事例は、非天然膵β細胞の構成成分(例えば、細胞溶解液、可溶性細胞画分、条件培地、ECM、または前述のいずれかの構成成分)または生成物(例えば、非天然膵β細胞によってまたは遺伝子修飾によって生成された栄養因子および他の生体因子、非天然膵β細胞の培養からの条件培地)を含む医薬組成物を包含する。いずれかの事例では、医薬組成物は、他の活性剤、例えば、当業者に公知の抗炎症剤、外因性小分子アゴニスト、外因性小分子アンタゴニスト、抗アポトーシス剤、酸化防止剤、および/または成長因子をさらに含んでもよい。
【0342】
[0415]本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される担体(例えば、媒体または賦形剤)と共に製剤化される、非天然膵β細胞、またはその構成成分もしくは生成物を含むことができる。薬学的に許容される担体(または媒体)という用語は、生物学的に適合性の担体または媒体という用語と交換可能に使用することができ、治療上投与される細胞および他の薬剤と適合性であるだけでなく、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の合併症を有することなく、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのにも好適である、試薬、細胞、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指し得る。好適な薬学的に許容される担体としては、水、塩溶液(例えば、リンゲル液)、アルコール、油、ゼラチン、およびラクトース、アミロース、またはデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンを挙げることができる。このような調製物は、滅菌され、所望の場合、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝液、および着色剤などの補助剤と混合され得る。生細胞以外の細胞の構成成分または生成物を含む医薬組成物は、液体として製剤化することができる。生きた非天然膵β細胞を含む医薬組成物は、液体、半固体(例えば、ゲル、ゲルカプセル、またはリポソーム)または固体(例えば、マトリックス、スキャフォールドなど)として製剤化することができる。
【0343】
[0416]本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、適切な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに好適な、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指し得る。
【0344】
[0417]本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、1つの器官、または体の部分から、別の器官、または体の部分に対象の化合物を運ぶまたは輸送することに関連する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルク ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒カプセル化材料を指し得る。各担体は、製剤の他の成分に適合し、患者に有害でないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体としての役割を果たし得る材料のいくつかの例として、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)セルロースならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの滑沢剤;(8)ココアバターおよび坐剤用ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG)などのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質無含有水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;(22)ポリペプチドおよびアミノ酸などの嵩高剤;(23)血清アルブミン、HDLおよびLDLなどの血清成分;(22)エタノールなどのC2~C12アルコール;ならびに(23)医薬製剤中に用いられる他の非毒性適合性物質が挙げられる。湿潤剤、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤および酸化防止剤は、製剤中に存在してもよい。例えば、「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などの用語は、本明細書において交換可能に使用される。
【0345】
[0418]細胞集団に関して本明細書で使用される「治療有効量」という表現は、任意の医学的処置に適用できる合理的なベネフィット/リスク比で、一匹の動物の少なくとも細胞小集団においていくつかの所望の治療効果を生じるのに有効である、本開示の細胞、例えば、SC-β細胞もしくは成熟膵β細胞の集団、またはSC-β細胞を含む組成物における関連する細胞の量を意味する。例えば、糖化ヘモグロビンレベル、空腹時血中グルコースレベル、低インスリン血症などの1型、1.5型または2型糖尿病の少なくとも1つの症状に、統計的に有意な、測定可能な変化をもたらすのに十分である、対象に投与されたSC-β細胞集団の量。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。一般的に、治療有効量は、対象の病歴、年齢、状態、性別、ならびに対象の医学的状態の重篤度および種類、ならびに他の医薬活性剤の投与に応じて変化し得る。
【0346】
[0419]一部の事例では、幹細胞由来ベータ細胞の医薬組成物は、薬学的に使用され得る調製物への活性化合物の処理を容易にする、賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用して、従来の手法で製剤化される。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。本明細書に記載の医薬組成物の概要は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版(Easton、Pa.: Mack Publishing Company、1995年);Hoover, John E.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvania 1975年;Liberman, H.A.およびLachman, L.編、Pharmaceutical Dosage
Forms、Marcel Decker、New York、N.Y.、1980年;ならびにPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版(Lippincott Williams & Wilkins 1999年)に見られる。
【0347】
[0420]医薬組成物は、任意選択で、例えば、例のみとして、従来の混合、溶解、造粒、糖衣形成(dragee-making)、研和(levigating)、乳化、カプセル化、捕捉または圧縮プロセスによる従来の手法で製造される。
【0348】
[0421]ある特定の実施形態では、組成物は、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸および塩酸などの酸;水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリス-ヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基;クエン酸塩/デキストロース、炭酸水素ナトリウムおよび塩化アンモニウムなどの緩衝剤を含む、1つまたは複数のpH調整剤または緩衝剤を含むこともできる。このような酸、塩基および緩衝剤は、組成物のpHを許容可能な範囲に維持するために必要な量で含まれる。
【0349】
[0422]他の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の塩を、組成物のオスモル濃度を許容可能な範囲にするために必要な量で含むこともできる。このような塩は、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムカチオンおよび塩化物、クエン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、リン酸、炭酸水素、硫酸、チオ硫酸または重亜硫酸アニオンを有する塩を含み、好適な塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウムおよび硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0350】
[0423]本明細書に記載の医薬組成物は、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、脳内、脳室内、関節内、腹腔内、または頭蓋内)、鼻腔内、頬側、舌下、または直腸投与経路を含むがこれらに限定されない任意の好適な投与経路によって投与される。一部の事例では、医薬組成物は、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、脳内、脳室内、関節内、腹腔内、または頭蓋内)投与のために製剤化される。
【0351】
[0424]本明細書に記載の医薬組成物は、任意の好適な剤形へと製剤化され、この剤形としては、限定するものではないが、水性経口分散液、液体、ゲル、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー、懸濁液など(治療される個体による経口摂取のための)、固体経口剤形、エアゾール剤、制御放出製剤、速溶製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、散剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、遅延放出製剤、徐放製剤、拍動性の放出製剤、多重微粒子製剤、ならびに即時混合放出および制御放出製剤が挙げられる。一部の実施形態では、医薬組成物は、カプセル剤へと製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は、溶液剤(例えば、IV投与のために)へと製剤化される。一部の事例では、医薬組成物は、輸液剤として製剤化される。一部の事例では、医薬組成物は、注射剤として製剤化される。
【0352】
[0425]本明細書に記載の薬学的固体剤形は、任意選択で、本明細書に記載の化合物および1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤、例えば、適合性担体、結合剤、充填剤、懸濁化剤、風味剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、モイスチャリング剤、可塑剤、安定化剤、浸透増強剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、保存剤、またはこれらの1つもしくは複数の組合せを含む。
【0353】
[0426]さらなる他の態様では、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版(2000年)に記載されているものなど、標準的なコーティング手順を使用して、組成物の周りにフィルムコーティングが与えられる。一部の実施形態では、組成物は、粒子へと製剤化され(例えば、カプセルで投与するために)、粒子の一部または全てがコーティングされる。一部の実施形態では、組成物は、粒子へと製剤化され(例えば、カプセルで投与するために)、粒子の一部または全てはマイクロカプセル化される。一部の実施形態では、組成物は、粒子へと製剤化され(例えば、カプセルで投与するために)、粒子の一部または全ては、マイクロカプセル化されず、コーティングされない。
【0354】
[0427]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される組成物は、微生物の活性を阻害するために1つまたは複数の保存剤を含んでもよい。好適な保存剤としては、水銀含有物質、例えば、メルフェン(merfen)およびチオメルサール;安定化二酸化塩素;ならびに第四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化セチルピリジニウムが挙げられる。
【0355】
[0428]一部の実施形態では、本開示の組成物は、例えば、糖尿病を処置または予防するのに有効な量で、幹細胞由来ベータ細胞を含むことができる。医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的にまたは生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載されている幹細胞由来ベータ細胞を含むことができる。このような組成物は、緩衝剤、例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えば、グリシン;酸化防止剤;キレート剤、例えば、EDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤を含むことができる。
【0356】
[0429]医薬組成物は、当業者によく知られているように、補助化合物を含むことができる。例えば、医薬組成物は、使用される酸化防止剤の種類に応じて変わる範囲内で、酸化防止剤を含有することができる。通常使用される酸化防止剤の合理的な範囲は、約0.01質量対容積%~約0.15質量対容積%のEDTA、約0.01質量対容積%~約2.0質量対容積%の亜硫酸ナトリウム、および約0.01質量対容積%~約2.0質量対容積%のメタ重亜硫酸ナトリウムである。当業者は、上記のそれぞれについて、約0.1質量対容積%の濃度を使用することができる。他の保存剤化合物としては、腎投与に好適な
他の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸およびその塩または亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸ナトリウムも用いることができるが、メルカプトプロピオニルグリシン、N-アセチルシステイン、β-メルカプトエチルアミン、グルタチオンおよび類似種が挙げられる。
【0357】
[0430]緩衝剤は、標的組織における刺激を最小限にするために、約4.0~8.0の範囲で製剤のpHを維持するために使用することができる。直接腹腔内注射のために、製剤は、pH7.2~7.5、好ましくはpH7.35~7.45であるべきである。組成物は、腎臓への投与に好適な等張化剤を含んでもよい。これらの中で、血液とほぼ等張である製剤を作製するために、塩化ナトリウムが好適である。
【0358】
[0431]ある特定の事例では、医薬組成物は、粘度増強剤を用いて製剤化される。例示的な薬剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、およびポリビニルピロリドンである。医薬組成物は、必要である場合に添加される共溶媒を有してもよい。好適な共溶媒としては、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート、プロピレングリコール、およびポリビニルアルコールを挙げることができる。保存剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀もしくは硝酸フェニル水銀、チメロサール、またはメチルもしくはプロピルパラベンも含まれてもよい。
【0359】
[0432]細胞、細胞の構成成分または細胞の生成物を含む医薬組成物は、当技術分野で公知のいくつかの送達方法のうちの1つまたは複数で、患者の腎臓に送達されてもよい。一部の事例では、組成物は、腎臓に送達される(例えば、腎被膜の上および/または腎被膜の下に)。別の実施形態では、組成物は、周期的な腹腔内または腎内注射によって、腎臓内の様々な位置に送達されてもよい。あるいは、組成物は、当業者に公知の他の剤形で、例えば、事前に形成されたかまたはin situで形成されたゲルまたはリポソームで適用されてもよい。
【0360】
[0433]半固体または固体担体中に生細胞を含む医薬組成物は、腎被膜の上または下に外科移植するために製剤化されてもよい。液体組成物も外科的手段で投与されてもよいことが認識されるべきである。特定の事例では、半固体または固体の医薬組成物は、非生分解性または生分解性であってもよい半透過性ゲル、格子、細胞スキャフォールドなどを含むことができる。例えば、ある特定の事例では、外因性細胞を、その周辺から隔離し、さらに、細胞が生物学的分子(例えば、インスリン)を周辺細胞または血流に対して分泌および送達できるようにすることが、望ましいかまたは適切である場合がある。これらの事例では、細胞は、移植細胞を宿主組織から物理的に分離する、非分解性で、選択的に透過性の障壁により囲まれた生きた非天然膵β細胞または非天然膵β細胞を含む細胞集団を含む自律性インプラントとして製剤化されてもよい。そのようなインプラントは、「免疫保護性」と呼ばれることもあり、これは薬理学的に誘導された免疫抑制の非存在下で、免疫細胞および巨大分子が移植細胞を死滅させるのを防ぐ能力を有するからである。
【0361】
[0434]他の事例では、様々な分解性ゲルおよびネットワークを、本開示の医薬組成物に対して使用することができる。例えば、持続放出製剤に特に好適な分解性材料としては、生体適合性ポリマー、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲンなどが挙げられる。
【0362】
[0435]他の事例では、生分解性、好ましくは、生体吸収性(bioresorbableまたはbioabsorbable)のスキャフォールドまたはマトリックス上またはその中に細胞を送達するのが望ましいかまたは適切であり得る。これらの典型的な三次元生体材料は、スキャフォールドに付着した、スキャフォールド内に分散した、またはスキャフォールドに捕捉された細胞外マトリックスに組み込まれた生細胞を含有する。一旦、
身体の標的領域に移植されると、これらの移植片は宿主組織と一体となり、移植細胞が次第に確立されてくる。
【0363】
[0436]本開示において使用することができるスキャフォールドまたはマトリックス(「フレームワーク」と総称されることがある)材料の例としては、不織マット、多孔質発泡体、または自己集合ペプチドが挙げられる。不織マットは、例えば、グリコール酸と乳酸(PGA/PLA)の合成吸収性コポリマー、発泡体、および/またはポリ(イプシロン-カプロラクトン)/ポリ(グリコール酸)(PCL/PGA)コポリマーを含む繊維を使用して形成されてもよい。
【0364】
[0437]別の実施形態では、フレームワークはフェルトであり、このフェルトは、生体吸収性材料、例えば、PGA、PLA、PCLコポリマーもしくはブレンド、またはヒアルロン酸から製造されたマルチ糸から構成され得る。この糸は、クリンピング、カッティング、カーディングおよびニードリングからなる標準的なテキスタイル加工技術を使用してフェルトにされる。別の実施形態では、細胞を混成構造であり得る発泡体スキャフォールド上に播種する。前記実施形態の多くでは、フレームワークは、有用な形状に成型することができる。さらに、非天然膵β細胞は、プレフォーム型の、非分解性外科用または移植用デバイス上で、培養することができる。
【0365】
[0438]マトリックス、スキャフォールドまたはデバイスは、細胞の接着を増強するために、細胞の接種前に処理することができる。例えば、接種前に、ナイロンマトリックスは、0.1モル酢酸で処理し、ポリリジン、PBS、および/またはコラーゲン中でインキュベートして、このナイロンをコーティングすることができる。ポリスチレンも硫酸を使用してて同様に処理することができる。また、フレームワークの外面は、細胞の接着または成長および組織の分化を向上させるために、例えば、フレームワークの血漿コーティングまたは1つもしくは複数のタンパク質(例えば、コラーゲン、弾性繊維、細網繊維)、糖タンパク質、グリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン硫酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸)、細胞マトリックス、および/または、以下に限定されないが、とりわけ、ゼラチン、アルギン酸塩、寒天、アガロース、および植物ゴムなどの他の材料の添加などにより修飾することができる。
【0366】
[0439]一態様では、本開示は、少なくとも1つの膵β細胞を含む細胞クラスターを含むデバイスを提供した。本明細書において提供されるデバイスは、対象へと移植された場合に、インスリンを産生および放出するように構成され得る。デバイスは、少なくとも1つの膵β細胞、例えば、非天然膵β細胞を含む細胞クラスターを含み得る。デバイス中の細胞クラスターは、in vitro GSISを呈し得る。デバイスは、半透膜をさらに含むことができる。半透膜は、デバイス中に細胞クラスターを保持するよう構成され、細胞クラスターによって分泌されるインスリンの通過を可能とすることができる。デバイスの一部の事例では、細胞クラスターは、半透膜によってカプセル化され得る。カプセル化は、当業者に利用可能な任意の技法によって実施され得る。半透膜は、当業者が認識し、検証するように、任意の好適な材料から作製することもできる。例えば、半透膜は、多糖またはポリカチオンから作製することができる。一部の事例では、半透膜は、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、および他のポリヒドロキシ酸、ポリ(カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、アルブミン、コラーゲン、フィブリン、ポリアミノ酸、プロラミン、アルギネート、アガロース、ゼラチンを含むアガロース、デキストラン、ポリアクリレート、エチレン-酢酸ビニルポリマーおよび他のアシル置換酢酸セルロースならびにそれらの誘導体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン
化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、またはそれらの任意の組合せから作製することができる。一部の事例では、半透膜は、アルギネートを含む。一部の事例では、細胞クラスターは、半透膜で囲まれたアルギネートコアを含むマイクロカプセル中にカプセル化される。一部の事例では、アルギネートコアは、例えば、RGD配列(アルギニン、グリシン、アスパラギン酸)と共有結合によりコンジュゲートしたオリゴペプチドを有するアルギネートコアを含むスキャフォールドを生成するために改変される。一部の事例では、アルギネートコアは、例えば、安定性の向上した、化学酵素的に操作されたアルギネートを有する、共有結合によって強化されたマイクロカプセルを生成するために改変される。一部の事例では、アルギネートコアは、例えば、アクリレート官能化されたリン脂質のin-situ重合によってアセンブルされた膜模倣フィルムを生成するために改変される。一部の事例では、マイクロカプセルは、エピメラーゼを使用して、酵素によって改変されたアルギネートから構成される。一部の事例では、マイクロカプセルは、マイクロカプセル膜の隣接する層間に共有結合を含む。一部の実施形態では、マイクロカプセルは、フェノール部分で連結したアルギネートを含むサブシーブカプセルを含む。一部の事例では、マイクロカプセルは、アルギネート-アガロースを含むスキャフォールドを含む。一部の事例では、SC-β細胞は、アルギネート内にカプセル化される前にPEGで修飾される。一部の事例では、単離された細胞、例えば、SC-β細胞の集団は、光反応性リポソームおよびアルギネート内にカプセル化される。マイクロカプセル中に用いられるアルギネートは、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、キトサン、ポリエステル中空繊維、コラーゲン、ヒアルロン酸、RODを含むデキストラン、BHDおよびポリエチレングリコール-ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(MPC-コ-n-ブチルメタクリレート-コ-4-ビニルフェニルボロン酸(PMBV)およびポリ(ビニルアルコール)(PVA)、アガロース、ゼラチンを含むアガロース、ならびにこれらの多層の事例を含む他の好適な生体材料で置き換えることができる。一部の事例では、本明細書において提供されるデバイスは、体外のセグメントを含み、例えば、デバイスの一部は、デバイスが対象に移植される場合に、対象の体外に存在し得る。体外セグメントは、本明細書において提供される細胞または細胞クラスターを含むか含まないかに関わらず、デバイスの任意の機能的構成成分を含み得る。
XI.処置方法
[0440]対象における疾患を処置または予防するための方法がさらに本明細書において提供される。本明細書において提供されるかまたは本明細書において提供される方法に従って産生される細胞クラスターまたは細胞を含む組成物は、対象の膵機能の度合を回復させるために、対象へと投与することができる。例えば、内因性膵島に似ている細胞クラスター、もしくは内因性膵β細胞に似ている細胞(例えば、非天然膵β細胞またはSC-β細胞)またはこれらの前駆体は、糖尿病を処置するために、対象に移植することができる。
【0367】
[0441]方法は、本出願に開示されている細胞クラスターまたは細胞を対象、例えば、それを必要とする対象に移植するステップを含み得る。用語「移植するステップ」は、所望の部位に導入された細胞または細胞クラスターの少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって、細胞もしくは細胞クラスター、細胞もしくはその細胞クラスターの任意の部分、または細胞、細胞クラスターもしくはこれらの任意の部分を含む任意の組成物の対象への配置を指し得る。細胞または細胞クラスターは、膵臓に直接移植されるか、またはあるいは、移植された細胞の少なくとも一部または細胞が生存可能である対象の所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与され得る。対象への投与後の細胞または細胞クラスターの生存期間は、数時間、例えば、24時間程度の短さ、数日まで、数年ほどの長期であってもよい。一部の事例では、細胞もしくは細胞クラスター、または細胞もしくは細胞クラスターのいずれかの部分は、例えば、移植した細胞または細胞クラスターを移植した位置に維持し、移動を避けるために、カプセル(例えば、マイクロカプセル)で、膵臓以外の位置、例えば、肝臓内または皮下に、経投与されてもよい。
【0368】
[0442]本明細書で使用される場合、用語「処置すること(treating)」および「処置(treatment)」は、対象が、疾患の少なくとも1つの症状の低減または疾患の改善、例えば、有益なまたは所望の臨床結果を有するように、有効量の組成物(例えば、細胞クラスターまたはその一部)を対象に投与することを指し得る。この開示の目的として、有益なまたは所望の臨床結果としては、以下に限定されないが、検出可能か検出不可能かに関わらず、1つもしくは複数の症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患状態の安定化(例えば、悪化しない)、疾患進行の遅延または緩慢化、疾患状態の改善または軽減、および寛解(例えば、部分的または全体的)が挙げられる。処置することは、処置を受けていない場合に期待される生存と比較して、生存が延長されることを指し得る。よって、当業者は、処置が、疾患状態を改善することができるが、疾患に対する完全な治癒でなくてもよいことを理解する。本明細書で使用される場合、用語「処置(treatment)」は、予防を含む。
【0369】
[0443]例示的な投与方式としては、以下に限定されないが、注射、注入、点眼、吸入、または摂取が挙げられる。「注射」としては、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、および胸骨内への注射および注入が挙げられる。好ましい実施形態では、組成物は、静脈内注射または注入によって投与される。
【0370】
[0444]疾患または障害の「処置(treatment)」、「予防(prevention)」または「改善(amelioration)」は、このような疾患または障害の開始を遅延または予防すること、このような疾患または障害に関連する状態の進行、深刻化または悪化、進行または重篤度を、反転、緩和、改善、阻害、緩慢化または停止させることを意味する。一実施形態では、疾患または障害の症状は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%緩和される。
【0371】
[0445]糖尿病の処置は、標準的な医学的方法によって決定される。糖尿病処置の目標は、可能な限り安全に、糖レベルを低下させて、正常に近づけることである。共通して設定される目標は、食前に、1デシリットル当たり80~120ミリグラム(mg/dl)であり、就寝時に、100~140mg/dlである。特定の内科医は、他の要因、例えば、多くの場合、患者が低血糖反応をどの程度有するかに応じて、患者に対して異なる標的を設定してもよい。有用な医療的試験としては、血糖レベルを決定するための患者の血液および尿における試験、グリコシル化ヘモグロビンレベル(HbA1c;過去2~3カ月にわたる平均血中グルコースレベルの測定、正常範囲は4~6%である。)についての試験、コレステロールおよび脂肪レベルについての試験、ならびに尿タンパク質レベルについての試験が挙げられる。このような試験は、当業者に公知の標準的な試験である(例えば、American Diabetes Association、1998年を参照されたい)。好効果の処置プログラムは、そのプログラムにおいて、糖尿病に関する合併症、例えば、目の疾患、腎臓疾患、または神経疾患を患者がほとんど患っていないことによっても決定することができる。
【0372】
[0446]対象における糖尿病の開始を遅延させることは、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも6カ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも20年、少なくとも30年、少なくとも40年またはそれより長い期間、対象の寿命全体を含み得る間、糖尿病の少なくとも1つの症状、例えば、高血糖、低インスリン血症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、失明、記憶喪失、腎不全、心血管疾患(冠動脈疾患、末梢動脈疾患、脳血管疾患、アテローム硬化症、および高血圧を含む)、神経症、自律神経機能不全、高血糖性高浸透
圧昏睡、またはこれらの組合せの開始の遅延を指す。
【0373】
[0447]一部の態様では、本開示は、本明細書において提供される細胞または細胞クラスター(例えば、インスリン産生細胞)を含むデバイスを対象に移植するステップを含む方法であって、デバイスが、対象における血中グルコースレベルの低減に十分な量でインスリンを放出する方法に関する。一部の実施形態では、インスリン産生細胞は、グルコース応答性インスリン産生細胞である。
【0374】
[0448]一部の実施形態では、本明細書において提供される細胞もしくは細胞クラスター、またはデバイスの移植によって誘導されるように、対象における血中グルコースレベルの低減は、糖尿病の閾値よりも低いグルコースの量をもたらす。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物対象である。一部の実施形態では、哺乳動物対象は、ヒトである。一部の実施形態では、グルコースの量は、移植の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日後に、糖尿病の閾値よりも低く低下される。
【0375】
[0449]上記で詳細に記載されているように、本開示の医薬組成物は、以下の:(1)経口投与、例えば、水薬(水溶液もしくは非水性溶液または懸濁液)、ロゼンジ、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、錠剤(例えば、頬、舌下、および全身での吸収を標的とするもの)、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への塗布用のペースト剤;(2)非経口投与、例えば、無菌の溶液剤もしくは懸濁剤、または持続放出製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による;(3)局所塗布、例えば、クリーム剤、軟膏剤または制御放出パッチもしくは皮膚に塗布されるスプレー剤;(4)膣内または直腸内、例えば、ペッサリー、クリーム剤またはフォーム剤;(5)舌下;(6)眼;(7)経皮;(8)経粘膜;または(9)経鼻に採用されたものを含む固体または液体形態での投与用に専用に製剤化され得る。さらに、化合物は、患者に移植するか、または、薬剤送達システムを使用して注射され得る。例えば、Urquhartら、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 24:199~236頁(1984年);Lewis編 「Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals」(Plenum Press、New York、1981年);米国特許第3,773,919号;および米国特許第353,270,960号明細書を参照されたい。
【0376】
[0450]本明細書の方法によって処置することができる対象は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。一部の事例では、対象は、哺乳動物であり得る。対象の例としては、以下に限定されないが、霊長類、例えば、サル、チンパンジー、バンブー(bamboo)、またはヒトが挙げられる。一部の事例では、対象は、ヒトである。対象は、以下に限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギなどを含む非霊長類の動物であってもよい。一部の事例では、処置を受けている対象は、それを必要とする対象、例えば、それを必要とするヒトである。
【0377】
[0451]ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。用語「患者」および「対象」は、本明細書において交換可能に使用される。好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、1型糖尿病、2型真性糖尿病、または糖尿病前症の動物モデルを表す対象として有利に使用することができる。さらに、本明細書に記載の方法を使用して、家畜および/またはペットを処置することができる。対象は、雄であっても雌であってもよい。対象は、糖尿病(例えば、1型または2型)、糖尿病に関連する1つもしくは複数の合併症、または糖尿病前症を患っているか、または有すると予め診断または特定されている者、および任意選択で、糖尿病、糖尿病に関連する1つもしくは複数の合併症、または糖尿病前症
に対する処置を受ける必要がなかった者であり得る。対象は、糖尿病または糖尿病前症を患っていない者であってもよい。対象は、糖尿病、糖尿病に関連する1つもしくは複数の合併症、または糖尿病前症を患っていると診断または特定されているが、糖尿病、糖尿病に関連する1つもしくは複数の合併症、または糖尿病前症についての1つまたは複数の処置を受けた結果として、公知の糖尿病リスク要因における改善を示す者であってもよい。あるいは、対象は、糖尿病、糖尿病に関連する1つもしくは複数の合併症、または糖尿病前症を有すると予め診断されていない者であってもよい。例えば、対象は、糖尿病、糖尿病に関連する合併症、もしくは糖尿病前症についての1つもしくは複数のリスク要因を呈する者、または糖尿病リスク要因を呈さない対象、または糖尿病、1つもしくは複数の糖尿病関連の合併症、もしくは糖尿病前症について無症候である対象であってもよい。対象は、糖尿病もしくは糖尿病前症を患っているかまたは糖尿病もしくは糖尿病前症になるリスクにある者であってもよい。対象は、本明細書で定義されているように、糖尿病に関連する1つもしくは複数の合併症または糖尿病前症を有すると診断または特定された者であってもよく、あるいは、対象は、糖尿病に関連する1つもしくは複数の合併症または糖尿病前症を有すると予め診断または特定されていない者であってもよい。
【0378】
[0452]方法は、当技術分野の任意の手段を使用して、細胞クラスターを対象に移植するステップを含み得る。例えば、方法は、腹腔内空間、腎被膜下、腎被膜、大網、皮下空間を介して、または膵床(pancreatic bed)注入によって、細胞クラスターを移植するステップを含み得る。例えば、移植は、被膜下移植、筋肉内移植、または門脈内移植、例えば、門脈内注入であり得る。免疫防御性カプセル化は、細胞クラスターに免疫防御性を与えるために実行され得る。一部の事例では、本明細書において提供される処置の方法は、移植片(例えば、細胞またはデバイス)に対する移植拒絶応答または他の免疫応答をモジュレートするまたは低減するための免疫応答モジュレーターを投与することを含み得る。この方法において使用することができる免疫応答モジュレーターの例としては、アザチオプリンおよびミコフェノール酸のようなプリン合成阻害剤、レフルノミドおよびテリフルノミドのようなピリミジン合成阻害剤、メトトレキサートのような抗葉酸剤、タクロリムス、シクロスポリン、ピメクロリムス、アベチムス、グスペリムス、レナリドマイド、ポマリドミド、サリドマイド、PDE4阻害剤、アプレミラスト、アナキンラ、シロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、ゾタロリムス、抗胸腺細胞グロブリン抗体、抗リンパ球グロブリン抗体、CTLA-4、その断片、ならびにアバタセプトおよびベラタセプトのようなその融合タンパク質、エタネルセプトおよびペグスネルセプトのようなTNF阻害剤、アフリベルセプト、アレファセプト、リロナセプト、エクリズマブのような補体成分5に対する抗体、アダリムマブ、アフェリモマブ、セルトリズマブペゴール、ゴリムマブ、インフリキシマブ、およびネレリモマブのような抗TNF抗体、メポリズマブのようなインターロイキン5に対する抗体、オマリズマブのような抗IgE抗体、ファラリモマブのような抗インターフェロン抗体、エルシリモマブのような抗IL-6抗体、レブリキズマブおよびウステキヌマブのようなIL-12およびIL-23に対する抗体、セクキヌマブのような抗IL-17抗体、ムロモナブ-CD3、オテリキシズマブ、テプリズマブ、およびビシリズマブのような抗CD3抗体、クレノリキシマブ、ケリキシマブ、およびザノリムマブのような抗CD4抗体、エファリズマブのような抗CD11a抗体、エルリズマブのような抗CD18抗体、オビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブおよびパスコリズマブのような抗CD20抗体、ゴミリキシマブおよびルミリキシマブのような抗CD23抗体、テネリキシマブおよびトラリズマブのような抗CD40抗体、アセリズマブのようなCD62L/L-セレクチンに対する抗体、ガリキシマブのような抗CD80抗体、ガビリモマブのような抗CD147/ベイシジン抗体、ルプリズマブのような抗CD154抗体、ベリムマブおよびブリシビモドのような抗BLyS抗体、イピリムマブおよびトレメリムマブのような抗CTLA-4抗体、ベルチリムマブ(Bertilimumab)、レルデリムマブ、およびメテリムマブのような抗CAT抗体、ナタリズマブのような抗インテグリン抗体、トシリ
ズマブのようなインターロイキン-6受容体に対する抗体、オデュリモマブ(odulimomab)のような抗LFA-1抗体、バシリキシマブ、ダシリズマブ、およびイノリモマブのようなIL-2受容体/CD25に対する抗体、アトロリムマブ、セデリズマブ、フォントリズマブ、マスリモマブ、モロリムマブ、ペキセリズマブ、レスリズマブ、ロベリズマブ、シプリズマブ、タリズマブ、テリモマブアリトックス、バパリキシマブ、およびベパリモマブのようなTリンパ球(ゾリモマブアリトック)に対する抗体を挙げることができる。
【0379】
[0453]「消泡剤」は、水性分散液の凝固、完成フィルム中の泡を生じさせ得るか、または一般に加工を害し得る、加工中の発泡を減少させる。例示的な消泡剤としては、シリコンエマルジョンまたはソルビタンセスキオレアートが挙げられる。
【0380】
[0454]「酸化防止剤」としては、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびトコフェロールが挙げられる。ある特定の実施形態では、酸化防止剤は必要に応じて化学的安定性を高める。
【0381】
[0455]本明細書に記載の製剤は、酸化防止剤、金属キレート剤、チオール含有化合物および他の一般的な安定化剤から利益を得ることができる。このような安定化剤の例としては、以下に限定されないが、(a)約0.5%~約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%~約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1~約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mMのEDTA、(e)約0.01%~約2%w/vのアスコルビン酸、(f)約0.003%~約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%~約0.5%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)デキストラン硫酸、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェートおよび他のヘパリン類似物質、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの二価のカチオン;または(n)これらの組合せが挙げられる。
【0382】
[0456]「結合剤」は、粘着性を与え、例えば、アルギン酸およびその塩;セルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース(例えば、Methocel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標))、エチルセルロース(例えば、Ethocel(登録商標))、および微結晶性セルロース(例えば、Avicel(登録商標));微結晶性デキストロース;アミロース;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;多糖酸;ベントナイト;ゼラチン;ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー;クロスポビドン;ポビドン;デンプン;アルファ化デンプン;トラガカント、デキストリン、糖、例えば、スクロース(例えば、Dipac(登録商標))、グルコース、デキストロース、糖蜜、マンニトール、ソルビトール、キシリトール(例えば、Xylitab(登録商標))、およびラクトース;天然または合成ゴム、例えば、アカシア、トラガカント、ガティガム、イサポール殻(isapol husk)の粘液、ポリビニルピロリドン(例えば、Polyvidone(登録商標)CL、Kollidon(登録商標)CL、Polyplasdone(登録商標)XL-10)、ラーチ・アラボガラクタン(larch arabogalactan)、Veegum(登録商標)、ポリエチレングリコール、ロウ、アルギン酸ナトリウムなどを含む。
【0383】
[0457]「担体」または「担体材料」としては、医薬において一般的に使用される任意の賦形剤が挙げられ、本明細書に開示されている化合物、例えば、イブルチニブの化合物および抗がん剤との適合性、ならびに所望の剤形の放出プロファイル特性に基づいて選択されるべきである。例示的な担体材料としては、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などが挙げられる。「薬
学的に適合性の担体材料」としては、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン酸ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスフォチジルコリン(phosphotidylcholine)、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カリウム、セルロースおよびセルロースコンジュゲート、糖類 ステアロイルラクチル酸ナトリウム、カラギーナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化デンプンなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第19版(Easton,Pa.:Mack Publishing Company、1995年);Hoover,John E.、Remington’s Pharmaceutical
Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvania 1975年;Liberman,H.A.およびLachman,L編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker,New York,N.Y.、1980年;ならびにPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版(LippincotT Williams&Wilkins1999)を参照されたい。
【0384】
[0458]「分散剤」、および/または「粘度調整剤」としては、液体媒体または造粒法もしくはブレンド法によって薬物の拡散および均質性を制御する材料が挙げられる。一部の実施形態では、これらの薬剤はまた、コーティングまたは浸食性マトリックスの有効性を促進する。例示的な拡散促進剤/分散剤としては、例えば、親水性ポリマー、電解質、Tween(登録商標)60もしくは80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;Plasdone(登録商標)として商業的に公知)、および炭水化物系分散剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC-SL、およびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、HPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M、およびHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、非結晶性セルロースなど、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとの4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポールとしても公知)、ポロキサマー(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック共重合体である、Pluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)、およびF108(登録商標));およびポロキサミン(例えば、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの逐次付加から誘導された四官能性ブロック共重合体である、Poloxamine 908(登録商標)としても公知の、Tetronic 908(登録商標)(BASF Corporation、Parsippany、N.J.))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S-630)、ポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールは約300~約6000、または約3350~約4000、または約7000~約5400の分子量を有し得る、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ゴム、例えば、トラガカントゴムおよびアカシアゴム、グアーゴム、キサンタン(キサンタンゴムを含む)など、糖類、セルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシル化ソルビ
タンモノラウレート、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギネート、キトサンおよびそれらの組合せが挙げられる。セルロースまたはトリエチルセルロースなどの可塑剤も分散剤として使用することができる。リポソーム分散液および自己乳化分散液において特に有用な分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルグリセロール、コレステロールおよびミリスチン酸イソプロピルである。
【0385】
[0459]1つまたは複数の浸食促進剤の1つまたは複数の拡散促進剤との組合せも本発明の組成物において使用することができる。
[0460]用語「希釈剤」は、送達前に目的の化合物を希釈するために使用される化学化合物を指す。希釈剤は、それらがより安定な環境を提供し得るため、化合物を安定化させるためにも使用され得る。リン酸緩衝生理食塩水溶液を含むが、これらに限定されない、緩衝溶液中に溶解した塩(これはまた、pH制御または維持も提供し得る)が当技術分野で希釈剤として利用される。ある特定の実施形態では、希釈剤は、カプセル充填のための均一な配合のために圧縮を促進するかまたは十分なかさを作り出すために、組成物のかさを増加させる。このような化合物としては、例えば、ラクトース、デンプン、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、Avicel(登録商標)などの微結晶性セルロース;第二リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物;リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム;無水ラクトース、噴霧乾燥ラクトース;アルファ化デンプン、Di-Pac(登録商標)(Amstar)などの圧縮糖;マンニトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート、スクロース系希釈剤、精製粉末糖;第一硫酸カルシウム一水和物、硫酸カルシウム二水和物;乳酸カルシウム三水和物、デキストレート;加水分解した穀物固形物、アミロース;粉末化セルロース、炭酸カルシウム;グリシン、カオリン;マンニトール、塩化ナトリウム;イノシトール、ベントナイトなどが挙げられる。
【0386】
[0461]「充填剤」としては、ラクトース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、セルロース粉末、デキストロース、デキストレート、デキストラン、デンプン類、アルファ化デンプン、スクロース、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコールなどの化合物が挙げられる。
【0387】
[0462]「滑沢剤」および「流動化剤」は、材料の付着または摩擦を防止、低減または阻害する化合物である。例示的な滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、水酸化カルシウム、タルク、ナトリウムステアリルフマレート、鉱物油などの炭化水素、または水素添加大豆油(Sterotex(登録商標))などの水素添加植物油、高級脂肪酸およびアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などのそれらのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、グリセロール、タルク、ロウ、Stearowet(登録商標)、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG-4000)またはCarbowax(商標)などのメトキシポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベへン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸マグネシウムもしくはナトリウム、Syloid(商標)、Cab-O-Sil(登録商標)などのコロイド状シリカ、トウモロコシデンプンなどのデンプン、シリコーン油、界面活性剤などが挙げられる。
【0388】
[0463]「可塑剤」は、マイクロカプセル材料またはフィルムコーティングの脆性を低下させるようにそれらを軟化させるために使用される化合物である。好適な可塑剤としては、例えば、PEG 300、PEG 400、PEG 600、PEG 1450、PEG 3350、およびPEG 800などのポリエチレングリコール、ステアリン酸、プ
ロピレングリコール、オレイン酸、トリエチルセルロースおよびトリアセチンが挙げられる。一部の実施形態では、可塑剤はまた、分散剤または湿潤剤としても機能し得る。
【0389】
[0464]「可溶化剤」としては、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムドクサート、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁塩、ポリエチレングリコール200~600、グリコフロール、トランスクトール(transcutol)、プロピレングリコール、およびジメチルイソソルビドなどの化合物が挙げられる。
【0390】
[0465]「安定化剤」としては、任意の酸化防止剤、緩衝剤、酸、保存剤などの化合物が挙げられる。
[0466]「懸濁化剤」としては、例えば、ポリビニルピロリドン、例えば、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールは、約300~約6000、または約3350~約4000、または約7000~約5400の分子量を有し得る)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースアセテートステアレート、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、例えば、トラガカントガムおよびおよびアカシアガム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタンなどのガム、糖類、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系材料、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシ化モノラウリン酸ソルビタン、ポリエトキシ化モノラウリン酸ソルビタン、ポビドンなどの化合物が挙げられる。
【0391】
[0467]「界面活性剤」としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムドクサート、Tween60または80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート、ポロキサマー(polaxomer)、胆汁塩、モノステアリン酸グリセリル、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド、例えばPluronic(登録商標)(BASF)などの化合物が挙げられる。いくつかの他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)水素添加ヒマシ油;ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。一部の実施形態では、界面活性剤は、物理安定度を増強するためまたは他の目的のために含まれてもよい。
【0392】
[0468]「粘度増強剤」としては、例えば、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギネート、アカシア、キトサンおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0393】
[0469]「湿潤剤」としては、例えば、オレイン酸、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミンオレエート、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ナトリウムドクサート、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ナト
リウムドクサート(sodium doccusate)、トリアセチン、Tween 80、ビタミンE TPGS、アンモニウム塩などの化合物が挙げられる。
【0394】
[0470]本開示は、上記に記載され、例示された実施形態に限定されないが、添付の請求項の範囲内で変更および修正が可能である。
[0471]例示的実施形態
[1]膵前駆細胞またはその前駆体の集団を少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合
物を含む組成物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが、前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、VMATまたはCdx2を発現する細胞の割合が減少した内分泌細胞の集団をもたらす、方法。
[2]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物が、DNAメチル化阻害剤、ヒ
ストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む、段落[1]に記載の方法。
[3]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物がヒストンメチルトランスフェ
ラーゼ阻害剤を含む、段落[2]に記載の方法。
[4]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、段落[3]に記載の方法。
[5]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、または
EPZ6438のうち少なくとも1つである、段落[3]または[4]に記載の方法。
[6]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、段落[5]に記載の方法。
[7]前記組成物中の前記DZNepの濃度が0.1μMより大きい、段落[6]に記載の方法。
[8]前記DZNepの前記濃度が少なくとも0.5μMである、段落[7]に記載の方法。
[9]前記DZNepの前記濃度が約1μMである、段落[7]に記載の方法。
[10]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む、段落[1]から[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、段落[10]に記載の方法。
[12]前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、またはTMP195のうち少なくとも1つである、段落[11]に記載の方法。
[13]前記HDAC阻害剤がKD5170である、段落[12]に記載の方法。
[14]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物がHDAC阻害剤およびEZH2阻害剤を含む、段落[1]に記載の方法。
[15]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物がDZNepおよびKD5170を含む、段落[1]に記載の方法。
[16]前記VMATを発現する細胞のうち少なくとも1個がINS-である、段落[1]から[15]のいずれか一項に記載の方法。
[17]前記膵前駆細胞の集団のうち少なくともいくつかの細胞がPH細胞の集団に分化する、段落[1]から[16]のいずれか一項に記載の方法。
[18]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物と接触していない前記内分泌細胞の対応する集団と比較して、前記内分泌細胞の集団のうちの増加した割合の細胞がNKX6.1-またはChromA+である、段落[17]に記載の方法。
[19]前記増加した割合の細胞のうち少なくとも1個の細胞がNKX6.1-かつChromA+である、段落[18]に記載の方法。
[20]前記膵前駆細胞の集団のうち少なくともいくつかの細胞がβ細胞の集団に分化する、段落[1]から[19]のいずれか一項に記載の方法。
[21]前記β細胞が幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞である、段落[20]に記載の方
法。
[22]前記β細胞がC-PEPおよびNKX6-1を発現する、段落[20]または[21]に記載の方法。
[23]前記β細胞がグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する、段落[20]から[22]のいずれか一項に記載の方法。
[24]in vitroで実施される、段落[1]から[23]のいずれか一項に記載の方法。
[25]前記組成物が、ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、またはスタウロスポリンのうち少なくとも1つを含む、段落[24]に記載の方法。
[26]前記接触させるステップが少なくとも3日間である、段落[24]または[25]に記載の方法。
[27]前記接触させるステップが少なくとも5日間である、段落[24]または[25]に記載の方法。
[28]前記接触させるステップが約7日間である、段落[24]または[25]に記載の方法。
[29]前記膵前駆細胞の集団のうち少なくとも1個の膵前駆細胞がPDX1およびNKX6-1のうち少なくとも1つを発現する、段落[1]から[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30]前記内分泌細胞の集団のうち少なくとも1個の内分泌細胞がCHGAを発現する、段落[1]から[29]のいずれか一項に記載の方法。
[31]段落[1]から[30]のいずれか一項に記載の方法によって生成された細胞。
[32]膵前駆細胞、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、および任意選択で内分泌細胞を含む組成物。
[33]前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、段落[32]に記載の組成物。
[34]前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、またはTMP195のうち少なくとも1つである、段落[33]に記載の組成物。
[35]前記HDAC阻害剤がKD5170である、段落[34]に記載の組成物。
[36]前記組成物中の前記KD5170の濃度が少なくとも0.1μMである、段落[35]に記載の組成物。
[37]前記KD5170の前記濃度が少なくとも0.5μMである、段落[36]に記載の組成物。
[38]前記KD5170の前記濃度が約1μMである、段落[37]に記載の組成物。
[39]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、段落[32]から[38]のいずれか一項に記載の組成物。
[40]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである、段落[39]に記載の組成物。
[41]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、段落[40]に記載の組成物。
[42]前記DZNepの濃度が少なくとも0.1μMである、段落[41]に記載の組成物。
[43]前記DZNepの前記濃度が少なくとも0.5μMである、段落[42]に記載の組成物。
[44]前記DZNepの前記濃度が約1μMである、段落[42]に記載の組成物。
[45]前記HDAC阻害剤がKD5170であり、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、段落[32]に記載の組成物。
[46]in vitro組成物である、段落[32]から[45]のいずれか一項に記載の組成物。[47]ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、またはスタウロスポリンのうち少なくとも1つをさらに含む、段落[46]に記載の組成物。
[48]膵前駆細胞またはその前駆体をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤およびヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが前記膵前駆細胞の分化を誘起する、方法。
[49]前記膵前駆細胞がβ細胞に分化する、段落[48]に記載の方法。
[50]前記β細胞が幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞である、段落[49]に記載の方法。
[51]前記β細胞がC-PEPおよびNKX6-1を発現する、段落[49]または[50]に記載の方法。
[52]前記β細胞がグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する、段落[49]から[51]のいずれか一項に記載の方法。
[53]前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、段落[48]から[52]のいずれか一項に記載の方法。
[54]前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、またはTMP195のうち少なくとも1つである、段落[53]に記載の方法。
[55]前記HDAC阻害剤がKD5170である、段落[54]に記載の方法。
[56]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、段落[48]から[55]のいずれか一項に記載の方法。
[57]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである、段落[56]に記載の方法。
[58]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、段落[57]に記載の方法。
[59]前記HDAC阻害剤がKD5170であり、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、段落[48]に記載の方法。
[60]in vitroで実施される、段落[48]から[59]のいずれか一項に記載の方法。
[61]膵前駆細胞またはその前駆体を、前記細胞の分化をもたらすために十分な量のKD5170と接触させるステップを含む方法。
[62]前記膵前駆細胞をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップをさらに含む、段落[61]に記載の方法。
[63]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである、段落[62]に記載の方法。
[64]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、段落[63]に記載の方法。
[65]前記膵前駆細胞が内分泌細胞に分化する、段落[61]から[64]のいずれか一項に記載の方法。
[66]前記膵前駆細胞がβ細胞に分化する、段落[61]から[65]のいずれか一項に記載の方法。
[67]前記β細胞が幹細胞から誘導されたβ(SC-β)細胞である、段落[66]に記載の方法。
[68]前記β細胞がC-PEPおよびNKX6-1を発現する、段落[66]または[67]に記載の方法。
[69]前記β細胞がグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する、段落[66]から[68]のいずれか一項に記載の方法。
[70]a)複数の幹細胞をin vitroで分化させて膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団を得るステップ、
b)前記細胞集団をin vitroでヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させて少なくとも1個の内分泌細胞を産生させるステップ、および
c)前記内分泌細胞をin vitroで成熟させて少なくとも1個のSC-β細胞を得るステップ
を含む方法。
[71]前記幹細胞がヒト多能性幹細胞である、段落[70]に記載の方法。
[72]前記細胞集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、またはスタウロスポリンのうち少なくとも1つと接触させるステップをさらに含む、段落[70]または[71]に記載の方法。
[73]前記SC-β細胞がC-PEPおよびNKX6-1を発現する、段落[70]から[72]のいずれか一項に記載の方法。
[74]前記SC-β細胞がグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する、段落[70]から[73]のいずれか一項に記載の方法。
[75]前記細胞集団をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させるステップをさらに含む、段落[70]から[74]のいずれか一項に記載の方法。
[76]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである、段落[75]に記載の方法。
[77]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、段落[76]に記載の方法。
[78]前記HDAC阻害剤がKD5170である、段落[70]から[77]のいずれか一項に記載の方法。
[79]膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団を、内分泌細胞を産生するために十分な量のヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤とin vitroで接触させるステップ、および前記内分泌細胞をin vitroで成熟させて、グルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する少なくとも1つのSC-β細胞を得るステップを含む方法。
[80]複数の幹細胞をin vitroで分化させて前記膵前駆細胞またはその前駆体を含む前記細胞集団を得るステップをさらに含む、段落[79]に記載の方法。
[81]前記細胞集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、またはスタウロスポリンのうち少なくとも1つと接触させるステップをさらに含む、段落[79]または[80]に記載の方法。
[82]前記細胞集団をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させるステップをさらに含む、段落[79]から[81]のいずれか一項に記載の方法。
[83]前記HDAC阻害剤がKD5170である、段落[82]に記載の方法。
[84]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、またはEPZ6438のうち少なくとも1つである、段落[79]から[83]のいずれか一項に記載の方法。
[85]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、段落[84]に記載の方法。
[86](i)標的細胞を刺激性化合物と接触させるステップであって、前記接触させるステップが前記標的細胞の選択マーカーを誘起して前記標的細胞の細胞表面に局在化させるステップ、および
(ii)前記細胞表面の前記選択マーカーの前記局在化に基づいて前記標的細胞を選択するステップ
を含む、細胞の集団から前記標的細胞を選択するための方法。
[87]前記選択マーカーがPSA-NCAMを含む、段落[86]に記載の方法。
[88]前記標的細胞を選択する前記ステップが細胞ソーティングによる、段落[87]に記載の方法。
[89]前記選択するステップが、前記選択マーカーが前記標的細胞の前記表面に局在化しているときに前記標的細胞の前記選択マーカーを抗原結合ポリペプチドと接触させるステップを含む、段落[88]に記載の方法。
[90]前記抗原結合ポリペプチドが抗体を含む、段落[89]に記載の方法。
[91]前記抗原結合ポリペプチドが前記PSA-NCAMに結合する、段落[90]に記載の方法。
[92]前記細胞の集団を、前記細胞の集団のうちの少なくとも1個の細胞の細胞表面から前記選択マーカーを除去する化合物と処理するステップをさらに含む、段落[86]から[91]のいずれか一項に記載の方法。
[93]前記細胞の集団が、前記標的細胞を前記刺激性化合物と接触させる前記ステップの前に前記化合物と処理される、段落[92]に記載の方法。
[94]前記化合物が、前記選択マーカーを前記少なくとも1個の細胞の前記細胞表面から開裂させる、段落[92]または[93]に記載の方法。
[95]前記化合物が酵素である、段落[94]に記載の方法。
[96]前記化合物がエンドシアリダーゼである、段落[95]に記載の方法。
[97]前記エンドシアリダーゼがエンドニューラミニダーゼ(Endo-N)である、段落[96]に記載の方法。
[98]前記標的細胞が内分泌細胞である、段落[86]から[97]のいずれか一項に記載の方法。[99]前記刺激性化合物がアルギニンまたはグルコースのうち少なくとも1つを含む、段落[86]から[98]のいずれか一項に記載の方法。
[100]前記内分泌細胞がβ細胞である、段落[98]に記載の方法。
[101]前記β細胞がSC-β細胞である、段落[101]に記載の方法。
[102]前記刺激性化合物がイソプロテレノールを含む、段落[98]に記載の方法。
[103]前記内分泌細胞がEC細胞である、段落[98]に記載の方法。
[104]前記細胞の集団のうち1個または複数の細胞が、前記刺激性化合物と接触したとき
に前記選択マーカーを細胞表面に局在化することができない、段落[86]から[103]のいず
れか一項に記載の方法。
[105]前記刺激性化合物がグルコースまたはアルギニンのうち少なくとも1つであり、前
記1個または複数の細胞がEC細胞である、段落[104]に記載の方法。
[106]前記刺激性化合物がイソプロテレノールであり、前記1個または複数の細胞がβ細
胞である、段落[104]に記載の方法。
[107]前記標的細胞を選択する前記ステップが前記細胞の集団のうち前記1個または複数
の細胞から前記標的細胞を分離する、段落[104]から[106]のいずれか一項に記載の方法。[108]膵前駆細胞またはその前駆体の集団を少なくとも1つのエピジェネティック修飾化
合物を含む組成物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物と接触していない膵前駆細胞の対応する集団と比較して増加した割合の膵島細胞をもたらす、方法。
[109]前記膵島細胞が少なくとも1個のβ細胞を含む、段落[108]に記載の方法。
[110]前記β細胞がSC-β細胞を含む、段落[109]に記載の方法。
[111]前記SC-β細胞がグルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺
激インスリン分泌応答を呈する、段落[110]に記載の方法。
[112]前記膵島細胞が少なくとも1個のアルファ細胞を含む、段落[108]に記載の方法。
[113]前記膵島細胞がデルタ細胞を含む、段落[108]に記載の方法。
[114]前記膵島細胞がポリホルモナル(PH)細胞を含む、段落[108]に記載の方法。
[115]複数の幹細胞をin vitroで分化して前記膵前駆細胞またはその前駆体の集
団を得るステップをさらに含む、段落[108]から[114]のいずれか一項に記載の方法。
[116]前記幹細胞がヒト多能性幹細胞である、段落[115]に記載の方法。
[117]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物がDNAメチル化阻害剤、ヒ
ストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む、段落[108]から[116]のいずれか一項に記載の方法。
[118]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物がヒストンメチルトランスフ
ェラーゼ阻害剤を含む、段落[117]に記載の方法。
[119]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、段落[118]に記載の方法。
[120]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、また
はEPZ6438のうち少なくとも1つである、段落[118]または[119]に記載の方法。
[121]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、段落[120]に記載の方法。
[122]前記組成物中の前記DZNepの濃度が0.1μMより大きい、段落[121]に記載の方法。
[123]前記DZNepの前記濃度が少なくとも0.5μMである、段落[122]に記載の方法。
[124]前記DZNepの前記濃度が約1μMである、段落[123]に記載の方法。
[125]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物がヒストンデアセチラーゼ(
HDAC)阻害剤を含む、段落[108]から[124]のいずれか一項に記載の方法。
[126]前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、
またはそれらの組合せである、段落[125]に記載の方法。
[127]前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、またはTMP195のうち少
なくとも1つである、段落[126]に記載の方法。
[128]前記HDAC阻害剤がKD5170である、段落[127]に記載の方法。
[129]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物がHDAC阻害剤およびEZ
H2阻害剤を含む、段落[108]に記載の方法。
[130]前記少なくとも1つのエピジェネティック修飾化合物がDZNepおよびKD51
70を含む、段落[108]に記載の方法。
【実施例0395】
[0472]これらの実施例は、例示の目的のみのために提供され、本発明において与えられる請求項の範囲を限定するものではない。
実施例1.hPSC由来のベータ細胞におけるヒストンアセチル化
[0473]システムズアプローチ(例えば、Ardaら(Cell Metabolism
23: 909~920頁、2016年))を使用して、(1)小児および成人からの膵組織の獲得、(2)安定した信頼性の高い細胞精製方法を開発すること、(3)包括的なトランスクリプトームおよびヒストン修飾マップの作成、ならびに(4)膵島の生理および機能の系統的アッセイを含む、ヒト膵島細胞における年齢に依存した遺伝子発現プログラムを特定する。若年および成人のヒト膵島細胞における年齢に依存した遺伝子のヒストン媒介性調節の別々の方式は、記載されたゲノムワイドヒストンマップで明らかにされる。Xuら(EMBO J 2014)は、ヒストンメチル化が、内分泌前駆細胞におけるNGN3、NKX6.1、およびNKX2.2遺伝子において低減されることを記載している。NGN3細胞では、H3K27me3は、NGN3、NeuroD1、およびNKX6.1エレメントから枯渇しており、これは、各遺伝子の活性化と一致している。Haumaitreら(MCB 2013)は、膵臓の分化の間のHDAC発現および活性の全体的低減について報告している。Xie(Cell Stem Cell, 2013)は、in vitro分化の間に、クロマチン構造が不適切に再構築されることを報告している。EZH2阻害およびHDAC阻害によりNGN3発現が増加し、より多くの幹細胞由来ベータ細胞をもたらされ、このことは、NGN3がベータ細胞の発生にとって重要であることを示唆する。
実施例2.ヒストンメチル化および脱アセチル化の阻害
[0474]NGN3のmRNA発現を本明細書に記載の分化誘導の各ステップにおいて調査し(
図5)、細胞がNGN3を発現し、SC-β細胞の分化を開始することを確認した(
図7)。SC-β細胞の分化におけるヒストンメチル化および脱アセチル化の阻害効果を調査した(
図6)。hESC株(D97、D114、およびD241 HUES8)において本明細書に記載の分化誘導のステージ5(
図5~6)をEZH2阻害剤(DZNep)、HDAC阻害剤(KD5170)、およびこれらの組合せで処理した(
図6)。
【0396】
[0475]候補阻害剤のスクリーニングを
図18に記載したように実施した。ステージ5におけるEZH2またはHDACの阻害(D97 HUES8)は、内分泌細胞およびSC-β細胞を増加させた(
図8)。ステージ5におけるEZH2およびHDACの組合せによる阻害(D114 HUES8)は、内分泌細胞を有意に増加させた(
図9~11)。SC-β細胞は、DZNepおよびKD5170を含むステージ5の終わりに35.4%含んだ。C-ペプチド陽性細胞の全パーセンテージは39.6%であり、このことは、最
大4%のC-ペプチド陽性NKX6.1多ホルモン細胞が存在することを示唆した(
図11)。ステージ5におけるEZH2およびHDACの組合せによる阻害を
図17に記載したように試験した。ステージ5におけるEZH2およびHDACの組合せによる阻害(D241 HUES8)は、ステージ5におけるニューロゲニン(neorogenin)3+前駆細胞を増加させた(
図12~13)。ステージ5におけるEZH2およびHDACの組合せによる阻害は、NKX6.1+前駆細胞を増加させた(
図16)。
【0397】
[0476]DZNepによる阻害は、VMAT1+INS- EC集団における特異的減少(
図19)、それに伴うNKX6.1-ChromA+ PH細胞の増加(
図20)、および影響を受けないNKX6.1+INS+ SC-β細胞集団(
図21)を示した。ステージ5全体を通してDZNep(1μM)による阻害は、生存能に影響を及ぼさず、(VMAT1+INS-)EC集団の半分より多くを除去した(
図19~21)。
【0398】
[0477]まとめると、ヒストンメチルトランスフェラーゼおよびデアセチラーゼ阻害剤は、NGN3の発現およびベータ細胞の分化を増加させ、ステージ5におけるDZNepによるEZH2阻害は、内分泌細胞(CHGA+)、前駆細胞(NKX6-1+)およびプレ-SC-b細胞(C-PEP+,NKX6-1+)の比率を増加させた。他のEZH2阻害剤(UNC1999、GSK126)は、3つの細胞型全ての比率を増加させなかった(
図14)。ステージ5におけるKD5170によるHDAC阻害は、プレ-SC-β細胞(C-PEP+、NKX6-1+)のパーセンテージを増加させた。他のHDAC阻害剤(酪酸ナトリウム、TSA、SAHA)は、プレ-SC-β細胞のパーセンテージを増加させなかった(
図15)。ステージ5におけるDZNepおよびKD5170によるEZH2およびHDACの組合せによる阻害(HUES8)は、内分泌細胞(CHGA+)、前駆細胞(NKX6-1+)およびプレ-SC-b細胞(C-PEP+、NKX6.1+)の分化を相乗的かつ有意に促進した。
実施例3.幹細胞の膵β細胞(SC-β細胞)への分化
[0478]
図39に例示したように、2つの例示的な分化プロトコールv11およびv12を試験した。2つのプロトコールは、共に、同様の試薬を共有する6ステージの段階的プロトコールであり、最初の5ステージのそれらの分化ステップは、
図5に示したような分化プロトコールに大部分は基づいており、それらの差異は以下の通りである:(a)v12プロトコールでは、ステージ3の1日目(S3d1)に培地中に0.25μMのDMH-1が存在し、ステージ3の1日目と2日目(S3d1~S3d2)に培地中に20ng/mLのアクチビンAが存在した;(b)v11プロトコールでは、ステージ3においてDMH-1もアクチビンAも添加されなかった;(c)v11プロトコールおよびv12プロトコールの両方では、ステージ5の1、3、5、7日目に100nMの培地中にDZNepが存在した。v11プロトコールとv12プロトコールの両方のステージ6を、外因性分化因子を含まない1%のHASを補充したDMEM/F12培地中で、ステージ5から産生細胞を培養することによって実施した。培地は、ステージ6を通して1日おきに交換した。
【0399】
[0479]一実験では、2つの異なるプロトコールによる幹細胞株D705に由来する細胞培養物を異なるステージで検査した。
図40は、それぞれ、ステージ4(S4)およびステージ5(S5)の分化細胞において、NKX6.1、Pdx1、Cdx2、ISL1、およびCHGAの表面発現レベルを調査した際のフローサイトメトリーの結果を示す。図に示されているように、v12プロトコールにより、S4でCdx2+細胞およびS5でISL1-/NKX6.1-細胞のパーセンテージが低減し、S5で分化したISL+/NKX6.1+細胞のパーセンテージが増加した。
【0400】
[0480]ステージ5の後の凍結保存および再凝集手順後(CryoRA細胞)ならびにステージ6(S6)の分化のための細胞の回収前に、細胞培養物も調査した。この実験では
、
図41のグラフでまとめたように、ステージ6の11日目(S6d11)のCryoRA細胞クラスターの細胞の計数によって、v11プロトコールによって得た細胞と比較して、v12プロトコールによって得た細胞で、細胞回収率がかなり高いことが示された。2つのプロトコールによって得たS6d11細胞のフローサイトメトリー分析(
図42)によって、SC-β細胞組成物が同等のパーセンテージ、約40%を構成することが示された。2つのプロトコールによって得たS6d14細胞におけるグルコース応答を調査するために、in vitro GSISアッセイも実施し、これにより、2つのプロトコール間で同等の結果が示された。インスリン含量も同等であることが示された(
図43)。
【0401】
[0481]一実験では、膵β細胞を含む細胞クラスターを例示的プロトコールによってバイオリアクター中で産生した。グルコースで刺激したインスリン分泌(GSIS)アッセイ(
図44A)において、SC-膵島細胞クラスターを低い(LG、2.8mM)もしくは高い(HG、20mM)グルコース条件または2.8mMのグルコースと30mMのKClの組合せ(KCl)に連続して曝露した。6個の独立したバッチの平均を示す。活性を分析する別の方法として、全インスリン含量に対して、SC-膵島細胞クラスターも溶解および分析した(
図44B)。データは、平均+/-SEMである。
実施例4.SC-β細胞表面マーカーの特定スクリーニングおよび選別
[0482]選択的SC-β細胞表面マーカーの特定のための細胞表面マーカーライブラリースクリーニング(Miltenyi MACSマーカースクリーニング)を、371種のAPCコンジュゲートモノクローナル抗体を用いて実施した(
図22~23)。スクリーニングにより、ウェルの52.3%(371のうちの194)が分析に十分な細胞を含有したことが示された。ニューポートグリーンまたはフルオジン3によるSC-β生細胞の標識およびMACSマーカーのスクリーニングは、
図24に記載したように実施することができる。
【0402】
[0483]PSA-NCAMマイクロビーズ選別によるSC-β細胞の精製は、
図28に記載したように実施した。PSA-NCAMマイクロビーズに基づく選別により、オンターゲット細胞を濃縮し、SOX9+細胞を低減させた(
図25)。PSA-NCAM選別後に、EC細胞(VMAT1+)が残存した(
図26)。選別後に、細胞を14日間培養した。エンドN酵素処理の際に、PSA-NCAM発現が有意に低下した(
図27)。エンド-Nは、NCAMに関連するシアル酸残基の最小長7~9残基の特徴を有する、α-2,8-結合を含むシアル酸の線状ポリマーを迅速かつ特異的に分解するエンドシアリダーゼである。生理的条件でのNCAMにおけるPSAの切断。
【0403】
[0484]PSA-NCAMを使用してEC細胞を除去するために、既存のPSA-NCAMはエンドN酵素で除去することができ、PSA-NCAMはアルギニンで刺激することによってSC-β細胞上に選択的に発現し得る。PSA-NCAMを発現するSC-β細胞は、
図28に記載したように、マイクロビーズを使用して選別することができる。
実施例5.hESCの品質およびDE誘導の改良
[0485]分化の初期に腸系統を特定し、特定された腸前駆細胞からEC細胞を生じされることができる(
図29)。ステージ0における低いOct4%によって、後のステージにおいてより高いCDX2のパーセンテージがもたらされた。安定した分化には、高いOct4%が必要であった。Sox17による誘導のばらつきは、高いOct4%でも一定のままであった(
図30)。CDX2+腸集団は、ステージ1の因子濃度によって決まった。Chir/AA濃度とタイミングを微調整することにより、CDX2集団を低減させ、SC-β細胞の分化を改善することができる。
実施例6.EC細胞分化阻害剤のスクリーニング
[0486]EC細胞分化の阻害剤を特定するためのステージ5の細胞に関するさらなる化合物スクリーニング戦略を
図31~32に示す。Matrigelをコーティングした96
ウェルプレートを使用して、分化細胞を播種する。1ウェル当たり0.1~0.3×10
6個の細胞で、細胞をプレーティングする。対照として、DMSOのみを使用する。0.1%のDMSO中0.1μM、1.0μM、および10μMの濃度で、Wnt経路ライブラリー、エピジェネティックスライブラリー、GPCR化合物ライブラリー、および幹細胞シグナル伝達化合物ホルモンライブラリーをスクリーニングする。早期ステージマーカーとしてCDX2+および後期ステージマーカーとしてVMAT+を用いて、高含量画像分析によりEC細胞の定量を決定する。
実施例7.幹細胞由来膵島細胞のγ照射
[0487]幹細胞由来膵島細胞集団の増殖を様々な照射線量(8,000radおよび10,000rad)で阻害した。照射を実施しなかった場合、細胞の増殖および移植片の拡大を観察した(
図33)。高いγ照射線量(10,000rad)は、幹細胞由来膵島細胞の組成および機能に有意な影響を及ぼさなかった(
図34)。照射した凍結保存幹細胞由来膵島細胞について、血中グルコースを制御する能力を調査した。凍結保存細胞を解凍し、照射し、回収せずに照射直後に移植した。照射の60日後に、凍結保存幹細胞由来膵島細胞は、血中グルコースを制御する能力を失った(
図35)。照射した試料において、増強されたベータ細胞数を観察した(
図35~36)。一実験では、凍結保存幹細胞由来膵島細胞を解凍する前に、γ照射を行い、その後、動物モデル中に移植される前に、細胞を凍結保存から回収し、再凝集させた(解凍前照射)。
図37に示したように、凍結保存からの回収後に照射された(解凍後照射)幹細胞由来膵島細胞の移植を受ける動物と比較して、解凍前照射を受ける幹細胞由来膵島細胞を移植した動物は、より長い期間血糖コントロールを呈した。照射した幹細胞由来膵島細胞を移植した全ての動物は、移植片が外植されるまで血糖コントロールを示した。(
図38)
[0488]まとめると、増殖細胞の数は、γ照射の放射線量に依存した。増殖細胞数は、幹細胞由来膵島細胞がより高い放射線量で照射された場合により低下した。γ照射は、幹細胞由来膵島細胞の組成および機能に有意な影響を与えなかった。細胞が凍結されている間にγ照射を行った場合、得られた幹細胞由来膵島細胞の移植片は、移植された動物モデルにおいてより長い血糖コントロール効果を有した。
【0404】
[0489]本開示の好ましい実施形態が本明細書において示され、記載されてきたが、このような実施形態は、例としてのみ提供される。多数の変化、変更、および置換が、現在、本開示から逸脱することなく当業者に対して生じるであろう。本明細書に記載の本開示の
実施形態に対する様々な変更が本開示の実践において用いられ得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を規定し、これらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにこれらの均等物がそれらによって網羅されることが意図される。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが、前記エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、クロモグラニンA陽性(CHGA+)細胞の割合が増加した、またはC-ペプチド陽性かつNKX6.1陽性(C-PEP+、NKX6.1+)の細胞の割合が増加した内分泌細胞の集団をもたらす、方法。
[2]膵前駆細胞またはその前駆体の集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが、前記エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、VMATまたはCdx2を発現する細胞の割合が減少した内分泌細胞の集団をもたらす、方法。
[3]前記エピジェネティック修飾化合物が、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、[3]に記載の方法。
[5]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、[4]に記載の方法。
[6]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される、[4]または[5]に記載の方法。
[7]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、[6]に記載の方法。
[8]前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団に接触させる前記DZNepの濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、[7]に記載の方法。
[9]前記DZNepの前記濃度が少なくとも約0.5μMである、[8]に記載の方法。
[10]前記DZNepの前記濃度が約1μMである、[8]に記載の方法。
[11]前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む、[1]から[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、[11]に記載の方法。
[13]前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される、[12]に記載の方法。
[14]前記HDAC阻害剤がKD5170である、[13]に記載の方法。
[15]前記エピジェネティック修飾化合物がHDAC阻害剤およびEZH2阻害剤を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[16]前記エピジェネティック修飾化合物がDZNepおよびKD5170を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[17]in vitroで実施される、[1]から[16]のいずれかに記載の方法。
[18]前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団を(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステッ
プをさらに含む、[1]から[17]のいずれかに記載の方法。
[19](A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含む、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含む、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含む、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含む、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含む、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含む、
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含む、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含む、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
[18]に記載の方法。
[20]前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団を、ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む、[18]または[19]に記載の方法。
[21]前記接触させるステップが少なくとも3日間である、[18]から[20]のいずれかに記載の方法。
[22]前記接触させるステップが、前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団を前記エピジェネティック修飾化合物と3日を超える期間接触させるステップ、および前記期間のうち最初の3日間に前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団と前記接触させるステップの後で、前記SHH経路阻害剤、前記RAシグナル伝達経路活性化剤、または前記EGFファミリーからの前記成長因子を除去するステップを含む、[21]に記載の方法。
[23]前記接触させるステップが少なくとも5日間である、[18]から[22]のいずれかに記載の方法。
[24]前記接触させるステップが約7日間である、[18]から[23]のいずれかに記載の方法。
[25]前記膵前駆細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞がPDX1およびNKX6-1のうち少なくとも1つを発現する、[1]から[24]のいずれかに記載の方法。
[26]前記膵前駆細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞がPDX1およびNKX6-1の両
方を発現する、[1]から[25]のいずれかに記載の方法。
[27]前記内分泌細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞がCHGAを発現する、[1]から[26]のいずれかに記載の方法。
[28]前記内分泌細胞の集団のうち少なくとも1個の細胞がC-ペプチドおよびNKX6.1を発現する、[1]から[27]のいずれかに記載の方法。
[29]前記内分泌細胞の集団が、フローサイトメトリーによって測定して、前記エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、400%、420%、450%、480%、または500%高い割合のCHGA+細胞を含む、[1]から[28]のいずれかに記載の方法。
[30]前記内分泌細胞の集団が、フローサイトメトリーによって測定して、前記エピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、400%、420%、450%、480%、または500%高い割合のC-PEP+、NKX6.1+細胞を含む、[1]から[29]のいずれかに記載の方法。
[31]前記内分泌細胞の集団が、フローサイトメトリーによって測定して、前記少な
くとも1つのエピジェネティック修飾化合物と接触していない内分泌細胞の対応する集団よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、320%、350%、380%、または400%低い割合の、VMATまたはCdx2を発現する細胞を含む、[1]から[30]のいずれかに記載の方法。
[32][1]から[31]のいずれかに記載の方法によって生成された細胞。
[33]細胞集団を含む組成物であって、前記細胞集団が、フローサイトメトリーによって測定して、
(a)少なくとも約20%の、C-ペプチドおよびNKX6.1を発現する細胞、
(b)少なくとも約60%の、CHGAを発現する細胞、
(c)多くとも約20%の、Cdx2を発現する細胞、または
(d)多くとも約45%の、VMAT1を発現する細胞
を含む、組成物。
[34]フローサイトメトリーによって測定して、少なくとも約30%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞および多くとも約20%のISL1陰性NKX6.1陰性の細胞を含む細胞集団を含む組成物。
[35]前記細胞集団が、少なくとも約35%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞を含む、[34]に記載の組成物。
[36]前記細胞集団が、少なくとも約40%のISL1陽性、NKX6.1陽性の細胞を含む、[34]に記載の組成物。
[37]前記細胞集団が、多くとも約15%のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む、[34]から[36]のいずれかに記載の組成物。
[38]フローサイトメトリーによって測定して、
(a)少なくとも約20%の、C-ペプチドおよびNKX6.1を発現する細胞、
(b)少なくとも約60%の、CHGAを発現する細胞、および
(c)多くとも約20%の、Cdx2を発現する細胞
を含む、[33]から[37]のいずれかに記載の組成物。
[39]フローサイトメトリーによって測定して、多くとも約45%の、VMAT1を発現する細胞を含む、[38]に記載の組成物。
[40]エピジェネティック修飾化合物をさらに含む、[33]から[39]のいずれかに記載の組成物。
[41]前記エピジェネティック修飾化合物が、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはブロモドメイン阻害剤のうち1つまたは複数を含む、[40]に記載の組成物。
[42]前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、[40]に記載の組成物。
[43]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、[42]に記載の組成物。
[44]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される、[42]または[43]に記載の組成物。
[45]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、[44]に記載の組成物。
[46]前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団に接触させる前記DZNepの濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、[45]に記載の組成物。
[47]前記DZNepの前記濃度が少なくとも約0.5μMである、[46]に記載
の組成物。
[48]前記DZNepの前記濃度が約1μMである、[46]に記載の組成物。
[49]前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む、[40]から[48]のいずれかに記載の組成物。
[50]前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、[49]に記載の組成物。
[51]前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される、[50]に記載の組成物。
[52]前記HDAC阻害剤がKD5170である、[50]に記載の組成物。
[53]前記エピジェネティック修飾化合物がHDAC阻害剤およびEZH2阻害剤を含む、[40]に記載の組成物。
[54]前記エピジェネティック修飾化合物がDZNepおよびKD5170を含む、[40]に記載の組成物。
[55](i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤をさらに含む、[33]から[54]のいずれかに記載の組成物。
[56](A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含む、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含む、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含む、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含む、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含む、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含むか
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含む、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含む、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
[55]に記載の組成物。
[57]ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤を含む、[55]または[56]に記載の組成物。
[58]膵前駆細胞、およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤のうち少なくとも1つを含む組成物。
[59]内分泌細胞をさらに含む、[58]に記載の組成物。
[60]前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、[58]または[59]に記載の組成物。
[61]前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される、[60]に記載の組成物。
[62]前記HDAC阻害剤がKD5170である、[61]に記載の組成物。
[63]前記組成物中の前記KD5170の濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、[62]に記載の組成物。
[64]前記KD5170の前記濃度が少なくとも0.5μMである、[63]に記載の組成物。
[65]前記KD5170の前記濃度が約1μMである、[64]に記載の組成物。
[66]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、[58]から[65]のいずれかに記載の組成物。
[67]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、
およびEPZ6438からなる群から選択される、[66]に記載の組成物。
[68]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、[67]に記載の組成物。
[69]前記組成物中の前記DZNepの濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、[68]に記載の組成物。
[70]前記DZNepの前記濃度が少なくとも約0.5μMである、[69]に記載の組成物。
[71]前記DZNepの前記濃度が約1μMである、[69]に記載の組成物。
[72]前記HDAC阻害剤がKD5170であり、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、[58]に記載の組成物。
[73]in vitro組成物である、[58]から[72]のいずれかに記載の組成物。
[74](i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤をさらに含む、[58]から[73]のいずれかに記載の組成物。
[75](A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含むか、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含むか、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含むか、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含むか、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含むか、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含むか、
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含むか、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含むか、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
[74]に記載の組成物。
[76]ベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤をさらに含む、[74]または[75]に記載の組成物。
[77]膵前駆細胞またはその前駆体を含む細胞集団をヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させて、内分泌細胞を含む細胞集団を産生させるステップ、および
前記内分泌細胞を含む細胞集団を成熟させて、グルコースチャレンジに対してin vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する少なくとも1個の膵β細胞を得るステップ
を含む方法。
[78]前記細胞集団を(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む、[77]に記載の方法。
[79](A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含む、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含む、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含む、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含む、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含む、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含む、
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含む、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含む、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
[78]に記載の方法。
[80]前記細胞集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む、[78]または[79]に記載の方法。
[81]前記細胞集団をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させるステップをさらに含む、[77]から[80]のいずれかに記載の方法。
[82]前記HDAC阻害剤がKD5170である、[81]に記載の方法。
[83]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される、[77]から[82]のいずれかに記載の方法。
[84]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、[83]に記載の方法。
[85]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させる前記ステップが、前記内分泌細胞を含み、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、クロモグラニンA陽性(CHGA+)細胞の割合が増加した、またはC-ペプチド陽性かつNKX6.1陽性(C-PEP+、NKX6.1+)の細胞の割合が増加した集団をもたらす、[77]から[84]のいずれかに記載の方法。
[86]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触させる前記ステップが、前記内分泌細胞を含み、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と接触していない内分泌細胞の対応する集団と比較して、VMATまたはCdx2を発現する細胞の割合が減少した集団をもたらす、[77]から[85]のいずれかに記載の方法。
[87]前記膵前駆細胞またはその前駆体のうち前記少なくとも1個の細胞がPdx1およびNKX6.1の両方を発現する、[77]から[86]のいずれかに記載の方法。
[88]複数の幹細胞をin vitroで分化させて前記膵前駆細胞またはその前駆体を含む前記細胞集団を得るステップをさらに含む、[77]から[87]のいずれかに記載の方法。
[89][77]から[88]のいずれかに記載の方法によって産生された膵β細胞。
[90](a)Pdx1陰性NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団を骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤およびトランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触させ、それによりPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団を産生させるステップ、および
(b)前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む前記細胞集団をエピジェネティック修飾化合物と接触させて、内分泌細胞を含む細胞集団を産生させるステップ
を含む方法。
[91]前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がDMH-1、その誘導体、類似体、または変異体を含む、[90]に記載の方法。
[92]前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記DMH-1の濃度が、約0.01μM~約10μM、約0.05μM~約5μM、約0.1μM~約1μM、または約0.15μM~約0.5μMである、[91]に記載の方法。
[93]前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記DMH-1の濃度が約0.25μMのDMH-1である、[91]に記載の方法。
[94]前記TGF-βスーパーファミリーからの成長因子がアクチビンAを含む、[91]から[93]のいずれかに記載の方法。
[95]前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記ア
クチビンAの濃度が、約0.5ng/mL~約200ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約2ng/mL~約50ng/mL、または約5ng/mL~約30ng/mLである、[94]に記載の方法。
[96]前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記アクチビンAの濃度が少なくとも約5ng/mLまたは少なくとも約10ng/mLのアクチビンAである、[94]に記載の方法。
[97]前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団に接触させる前記アクチビンAの濃度が約20ng/mLのアクチビンAである、[94]に記載の方法。
[98]前記Pdx1陰性、NKX6.1陰性の原腸管細胞の集団を接触させる前記ステップが、FGFファミリーからの成長因子、SHH経路阻害剤、RAシグナル伝達経路活性化剤、プロテインキナーゼC活性化剤、およびROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む、[90]から[97]のいずれかに記載の方法。
[99]前記エピジェネティック修飾化合物が、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラ
ーゼ阻害剤、およびブロモドメイン阻害剤からなる群から選択される化合物を含む、[90]から[98]のいずれかに記載の方法。
[100]前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、[99]に記載の方法。
[101]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がEZH2阻害剤である、[100]に記載の方法。
[102]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNep、GSK126、およびEPZ6438からなる群から選択される、[100]または[101]に記載の方法。
[103]前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤がDZNepである、[102]に記載の方法。
[104]前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団に接触させる前記DZNepの濃度が、約0.05μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.5μM~約5μM、約0.75μM~約2.5μM、または約1μM~約2μMである、[103]に記載の方法
[105]前記DZNepの前記濃度が少なくとも約0.5μMである、[104]に記載の方法。
[106]前記DZNepの前記濃度が約1μMである、[104]に記載の方法。
[107]前記エピジェネティック修飾化合物がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む、[90]から[106]のいずれかに記載の方法。
[108]前記HDAC阻害剤がクラスI HDAC阻害剤、クラスII HDAC阻害剤、またはそれらの組合せである、[107]に記載の方法。
[109]前記HDAC阻害剤がKD5170、MC1568、およびTMP195からなる群から選択される、[108]に記載の方法。
[110]前記HDAC阻害剤がKD5170である、[109]に記載の方法。
[111]in vitroで実施される、[90]から[110]のいずれかに記載の方法。
[112]前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む前記集団を(i)SHH経路阻害剤、(ii)レチノイン酸(RA)シグナル伝達経路活性化剤、(iii)γ-セクレターゼ阻害剤、(iv)上皮細胞成長因子(EGF)ファミリーからの成長因子、(v)骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤、(vi)TGF-βシグナル伝達経路阻害剤、(vii)甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤、(viii)プロテインキナーゼ阻害剤、および(ix)ROCK阻害剤からなる群から選択される薬剤と接触させるステップをさらに含む、[90]から[111]のいずれかに記載
の方法。
[113](A)前記SHH経路阻害剤がSANT1を含む、
(B)前記RAシグナル伝達経路活性化剤がレチノイン酸を含む、
(C)前記γ-セクレターゼ阻害剤がXXIを含む、
(D)前記EGFファミリーからの成長因子がベータセルリンを含む、
(E)前記BMPシグナル伝達経路阻害剤がLDNを含む、
(F)前記TGF-βシグナル伝達経路阻害剤がAlk5i IIを含むか、
(G)前記甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化剤がGC-1を含む、
(H)前記プロテインキナーゼ阻害剤がスタウロスポリンを含む、または
(I)前記ROCK阻害剤がチアゾビニンを含む、
[112]に記載の方法。
[114]前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む前記集団をベータセルリン、チアゾビニン、レチノイン酸、SANT1、XXI、Alk5i II、GC-1、LDN、およびスタウロスポリンからなる群から選択される薬剤と接触させるステップを含む、[112]または[113]に記載の方法。
[115]前記接触させるステップが少なくとも3日間である、[112]から[114]のいずれかに記載の方法。
[116]前記接触させるステップが、前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む前記集団を前記エピジェネティック修飾化合物と3日を超える期間接触させるステップ、および前記期間のうち最初の3日間に前記膵前駆細胞またはその前駆体の集団と前記接触させるステップの後で、前記SHH経路阻害剤、前記RAシグナル伝達経路活性化剤、または前記EGFファミリーからの成長因子を除去するステップを含む、[115]に記載の方法。
[117]前記接触させるステップが少なくとも5日間である、[112]から[116]のいずれかに記載の方法。
[118]前記接触させるステップが約7日間である、[112]から[116]のいずれかに記載の方法。
[119]前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団が、フローサイトメトリーによって測定して多くとも約10%の、Cdx2を発現する細胞を含む、[90]から[118]のいずれかに記載の方法。
[120]前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞を含む細胞集団が、前記骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤および前記トランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と接触していない対応する細胞集団と比較して、より少ない割合の、Cdx2を発現する細胞を含む、[90]から[119]のいずれかに記載の方法。
[121]前記内分泌細胞を含む細胞集団が、フローサイトメトリーによって測定して、少なくとも約40%の、ISL1およびNKX6.1を発現する細胞を含む、[90]から[120]のいずれかに記載の方法。
[122]前記内分泌細胞を含む細胞集団が、前記骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤および前記トランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と前記接触をしていない対応する細胞集団と比較して、より多い割合の、ISL1およびNKX6.1を発現する細胞を含む、[90]から[121]のいずれかに記載の方法。
[123]前記内分泌細胞を含む細胞集団が、フローサイトメトリーによって測定して、多くとも約15%のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む、[90]から[122]のいずれかに記載の方法。
[124]前記内分泌細胞を含む細胞集団が、前記骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路阻害剤および前記トランスフォーメーション成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーからの成長因子と前記接触をしていない対応する細胞集団と比較して、より少ない割合のISL1陰性、NKX6.1陰性の細胞を含む、[90]から[122]の
いずれかに記載の方法。
[125]前記内分泌細胞を含む細胞集団を凍結保存するステップをさらに含む、[90]から[124]のいずれかに記載の方法。
[126]前記内分泌細胞を含む細胞集団が細胞クラスターであり、前記方法が、
(a)前記細胞クラスターから複数の細胞を分離するステップ、および
(b)ステップ(a)からの前記複数の細胞を再凝集培地中で培養して、前記複数の細胞の少なくとも一部に第2の細胞クラスターを形成させるステップ
をさらに含む、[90]から[125]のいずれかに記載の方法。
[127]前記分離するステップが、前記複数の細胞をフローサイトメトリーに供するステップを含まない、[126]に記載の方法。
[128]前記再凝集培地が血清を含まない、[126]または[127]に記載の方法。
[129]前記再凝集培地が外因性分化因子を含まない、[126]から[128]のいずれかに記載の方法。
[130]前記内分泌細胞をin vitroで成熟させて、グルコースチャレンジに対してin
vitroグルコース刺激インスリン分泌応答を呈する少なくとも1個の膵β細胞を得るステップをさらに含む、[90]から[129]のいずれかに記載の方法。
[131]前記成熟させるステップが無血清培地中で実施される、[130]に記載の方法。
[132]前記成熟させるステップがゼノフリー培地中で実施される、[130]または[131]に記載の方法。
[133]前記成熟させるステップが外因性分化因子を含まない培地中で実施される、[130]から[132]のいずれかに記載の方法。
[134]前記成熟させるステップがヒト血清アルブミン(HSA)の存在下で実施される、[130]から[133]のいずれかに記載の方法。
[135]前記HSAが約0.1%~約5%、約0.5%~約2%の濃度で存在する、[134]に記載の方法。
[136]前記HSAが約1%の濃度で存在する、[134]に記載の方法。
[137](a)集団中の多能性幹細胞をTGF-βスーパーファミリーからの成長因子およびWNTシグナル伝達経路活性化剤と接触させることによって、前記多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるステップ、
(b)前記胚体内胚葉細胞をFGFファミリーからの成長因子と接触させることによって、前記胚体内胚葉細胞の少なくとも一部を原腸管細胞に分化させるステップ、
(c)前記原腸管細胞をROCK阻害剤、FGFファミリーからの成長因子、BMPシグナル伝達経路阻害剤、PKC活性化剤、レチノイン酸シグナル伝達経路活性化剤、SHH経路阻害剤、およびTGF-βスーパーファミリーからの成長因子と接触させることによって前記原腸管細胞の少なくとも一部をPdx1陽性膵前駆細胞に分化させるステップ、(d)前記Pdx1陽性膵前駆細胞をROCK阻害剤、TGFβスーパーファミリーからの成長因子、FGFファミリーからの成長因子、RAシグナル伝達経路活性化剤、およびSHH経路阻害剤と接触させることによって前記Pdx1陽性膵前駆細胞の少なくとも一部をPdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞に分化させるステップ、ならびに
(e)前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞をTGF-βシグナル伝達経路阻害剤、EGFファミリーからの成長因子、RAシグナル伝達経路活性化剤、SHH経路阻害剤、THシグナル伝達経路活性化剤、γ-セクレターゼ阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、ROCK阻害剤、BMPシグナル伝達経路阻害剤、およびエピジェネティック修飾化合物と接触させることによって前記Pdx1陽性、NKX6.1陽性の膵前駆細胞の少なくとも一部を少なくとも1個のNKX6.1+かつC-ペプチド+の細胞を含む細胞集団に分化させるステップ
を含む方法。
[138][90]から[129]のいずれかまたは[137]に記載の方法によって産生された内分泌細胞を含む細胞集団。
[139][130]から[136]のいずれかに記載の方法によって産生されるSC-β細胞を含む細胞集団。
[140]内分泌細胞を含むin vitroの細胞集団を約100rad~約100,000radの線量で約1分~約60分の時間の照射に曝露するステップを含む方法。
[141]幹細胞、胚体内胚葉細胞、原腸管細胞、膵前駆細胞、または内分泌細胞を含む細胞集団を照射に曝露するステップを含み、前記照射が、照射に供されていない対応する細胞集団と比較して増殖能力が低減した細胞集団をもたらす、細胞の増殖を低減させる方法。
[142]前記細胞集団が、約100rad~約50,000rad、約100rad~約25,000rad、約100rad~約10,000rad、約250rad~約25,000rad、約500rad~約25,000rad、約1,000rad~約25,000rad、約2,500rad~約25,000rad、約5,000rad~約25,000rad、または約10,000rad~約15,000radの照射に曝露される、[140]または[141]に記載の方法。
[143]前記細胞集団が約10,000radの照射に曝露される、[140]または[141]に記載の方法。
[144]前記細胞集団が、約1分~約55分、約1分~約50分、約1分~約45分、約1分~約40分、約1分~約35分、約1分~約30分、約1分~約25分、約1分~約20分、約1分~約10分、約1分~約5分、約10分~約55分、約15分~約55分、約20分~約55分、約25分~約55分、約30分~約55分、約20分~約40分、または約25分~約35分、照射に曝露される、[140]から[143]のいずれかに記載の方法。
[145]前記細胞集団が約30分、照射に曝露される、[140]から[143]のいずれかに記載の方法。
[146]前記照射がイオン化照射を含む、[140]から[145]のいずれかに記載の方法
。
[147]前記イオン化照射がガンマ線、X線、紫外線放射、アルファ線、ベータ線、または中性子線を含む、[140]から[146]のいずれかに記載の方法。
[148]前記照射が、前記照射に供されていない対応する細胞クラスターと比較して増殖が低減した細胞集団をもたらす、[140]から[147]のいずれかに記載の方法。
[149]前記細胞集団が、約50μm~約500μm、約50μm~約300μm、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、約600μm~約150μm、約700μm~約150μm、約80μm~約150μm、または約60μm~約100μmの直径を有する第2の細胞クラスターを含む、[140]から[148]のいずれかに記載の方法。
[150](a)第1の細胞クラスターから複数の細胞を分離するステップ、および
(b)ステップ(a)からの前記複数の細胞を再凝集培地中で培養して、前記複数の細胞の少なくとも一部に前記第2の細胞クラスターを形成させるステップ
をさらに含む、[149]に記載の方法。
[151]前記分離するステップが、前記複数の細胞をフローサイトメトリーに供するステップを含まない、[150]に記載の方法。
[152]前記第1の細胞クラスターが、第3の細胞クラスターを分離し、前記第3の細胞クラスターから分離した細胞を培養して、前記第1の細胞クラスターを形成させることによって得られる、[150]または[151]に記載の方法。
[153]前記細胞クラスターが前記照射の前に凍結保存され、前記方法が、凍結保存された前記細胞クラスターを前記照射の前に解凍するステップをさらに含む、[149]
に記載の方法。
[154]前記細胞クラスターが前記照射に供されている間に凍結保存される、[149]に記載の方法。
[155]凍結保存された前記細胞クラスターを照射の後に解凍し、前記内分泌細胞の少なくとも一部を分化させるステップをさらに含む、[154]に記載の方法。
[156]膵前駆細胞またはその前駆体をin vitroで分化させることによって前記内分泌細胞を含む前記細胞集団を得るステップをさらに含む、[140]から[155]のいずれかに記載の方法。
[157]幹細胞をin vitroで分化させ、それにより前記内分泌細胞を含む前記細胞集団を産生させるステップをさらに含む、[140]から[156]のいずれかに記載の方法。
[158]前記内分泌細胞の少なくとも一部をin vitroで膵β細胞に成熟させ、それにより細胞集団を産生させるステップをさらに含む、[140]から[157]のいずれかに記載の方法。
[159]前記膵β細胞をそれを必要とする対象に埋め込むステップをさらに含む、[158]に記載の方法。
[160]埋め込まれた前記膵β細胞が、前記対象において少なくとも約50日、60日、70日、80日、90日、またはそれより長く、血中グルコースレベルを制御するように構成されている、[159]に記載の方法。
[161][140]から[157]のいずれかに記載の方法によって産生された内分泌細胞を含む細胞集団。
[162][158]から[160]のいずれかに記載の方法によって産生された膵β細胞を含む細胞集団。
細胞集団が、NKX6.1およびISL1を発現し、in vitroでグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)応答を呈する細胞を含む、請求項1に記載の医薬組成物。