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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002616
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20231228BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H02J1/00 304E
H02J7/00 P
H02J1/00 306L
H02J7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101932
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】梶澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一馬
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼台 尭資
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 正治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功史
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋介
(72)【発明者】
【氏名】飯田 一鑑
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】高山 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 豊大
(72)【発明者】
【氏名】岩名 毅
(72)【発明者】
【氏名】田邊 隼希
(72)【発明者】
【氏名】中島 信頼
(72)【発明者】
【氏名】富澤 弘貴
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165BB02
5G165CA01
5G165CA04
5G165DA01
5G165DA02
5G165EA02
5G165GA09
5G165HA01
5G165HA07
5G165HA17
5G165JA04
5G165JA07
5G165LA01
5G165LA02
5G165NA01
5G165NA10
5G165PA01
5G503AA04
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB03
5G503CA01
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503GD03
(57)【要約】
【課題】補助用マイコン70と転舵マイコン30との通信に異常が生じた場合に適切に対処できるようにした電源装置を提供する。
【解決手段】補助用マイコン70と転舵マイコン30とは、通信線Lcを介して通信する。補助用マイコン70がリセットされる場合、転舵マイコン30は補助用マイコン70との通信が途絶することを検知する。その場合であっても、転舵マイコン30は、通信線Lcを介した通信を可能な状態に維持する。転舵マイコン30は、補助用マイコン70がリセットから復帰する場合、通信を再開させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される駆動用制御装置および補助用制御装置を備え、
前記車両は、主電源、補助電源、および供給経路を備え、
前記補助電源は、前記主電源から給電された電力を蓄える電源であり、
前記供給経路は、前記主電源から前記車両内の電子機器に電力を供給する経路であって且つ、前記車両の起動スイッチの状態に応じて開閉されるように構成され、
前記駆動用制御装置は、前記主電源および前記補助電源のいずれかを電源としつつ前記車両に搭載される機器の状態を制御する装置であり、
前記補助用制御装置は、前記補助電源の状態を制御する装置であり、
前記駆動用制御装置と前記補助用制御装置とは互いに通信可能とされており、
前記駆動用制御装置と前記補助用制御装置との2つのうちのいずれか1つである第1制御装置は、残りの1つである第2制御装置と正常に通信できない場合であっても、前記第2制御装置との通信機能を継続させることによって、前記第2制御装置と正常に通信できる状態となることにより前記第2制御装置との通信を実行するように構成されている電源装置。
【請求項2】
前記第1制御装置は、前記第2制御装置との通信ができない場合、その旨を通知する通知処理を実行するように構成されている請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記第2制御装置は、前記第2制御装置が起動する場合、前記第1制御装置との通信を開始しつつ、イニシャルチェックを実行するように構成され、
前記第1制御装置は、前記第2制御装置との通信が復帰した場合であっても、前記第2制御装置が前記イニシャルチェックを実行している間、前記通知処理を継続するように構成されている請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1制御装置は、前記第2制御装置との通信が復帰して且つ前記第2制御装置が前記イニシャルチェックを完了する場合、前記通知処理を終了するように構成されている請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1制御装置は、記憶装置を備えて且つ、前記第2制御装置との通信ができない場合、最後に通信した内容を記憶装置に保持する保持処理と、前記保持した内容に基づき前記車両に搭載される機器の状態を制御する処理と、を実行するように構成されている請求項1記載の電源装置。
【請求項6】
前記第1制御装置は、前記第2制御装置との通信が再開する場合、前記記憶装置に記憶した内容を更新する更新処理を実行するように構成されている請求項5記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、転舵輪にアシストトルクを付与する制御を実行する制御装置であるEPSECUに補助電源が接続されたシステムが記載されている。このシステムにおいて、補助電源は、電源制御用ECUによって制御される。また、このシステムでは、電源制御用ECUとEPSECUとが通信可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-140883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記電源制御用ECUとEPSECUとの通信が途絶える場合、誤ったデータに基づく制御がなされることを抑制すべく、通信を停止することが考えられる。しかしその場合、補助電源を利用できなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.車両に搭載される駆動用制御装置および補助用制御装置を備え、前記車両は、主電源、補助電源、および供給経路を備え、前記補助電源は、前記主電源から給電された電力を蓄える電源であり、前記供給経路は、前記主電源から前記車両内の電子機器に電力を供給する経路であって且つ、前記車両の起動スイッチの状態に応じて開閉されるように構成され、前記駆動用制御装置は、前記主電源および前記補助電源のいずれかを電源としつつ前記車両に搭載される機器の状態を制御する装置であり、前記補助用制御装置は、前記補助電源の状態を制御する装置であり、前記駆動用制御装置と前記補助用制御装置とは互いに通信可能とされており、前記駆動用制御装置と前記補助用制御装置との2つのうちのいずれか1つである第1制御装置は、残りの1つである第2制御装置と正常に通信できない場合であっても、前記第2制御装置との通信機能を継続させることによって、前記第2制御装置と正常に通信できる状態となることにより前記第2制御装置との通信を実行するように構成されている電源装置である。
【0006】
上記構成では、第1制御装置は、第2制御装置と正常に通信できない場合であっても、第2制御装置との通信機能を継続させる。そのため、第2制御装置と正常に通信できる状態となることにより、通信を実行できる。そのため、通信を実行した場合には、駆動用制御装置が補助用制御装置と通信しつつ、補助電源を利用することなどができる。
【0007】
2.前記第1制御装置は、前記第2制御装置との通信ができない場合、その旨を通知する通知処理を実行するように構成されている上記1記載の電源装置である。
上記構成では、第1制御装置は、第2制御装置と通信できない場合、その旨を通知する。そのため、通信できない異常時であることを運転者に把握させることができる。
【0008】
3.前記第2制御装置は、前記第2制御装置が起動する場合、前記第1制御装置との通信を開始しつつ、イニシャルチェックを実行するように構成され、前記第1制御装置は、前記第2制御装置との通信が復帰した場合であっても、前記第2制御装置が前記イニシャルチェックを実行している間、前記通知処理を継続するように構成されている上記2記載の電源装置である。
【0009】
第2制御装置との通信が途絶える要因としては、第2制御装置が一時的に停止することが考えられる。その場合、第2制御装置は起動すると、イニシャルチェックをする。第2制御装置がイニシャルチェックをしている間は、たとえ第1制御装置と第2制御装置との通信が再開されたとしても、信頼性の高い通信ができているとは限らない。そこで上記構成では、第2制御装置がイニシャルチェックを実行している間は、通知処理を継続する。これにより、イニシャルチェックがなされている期間に、運転者が正常と認識することを抑制できる。
【0010】
4.前記第1制御装置は、前記第2制御装置との通信が復帰して且つ前記第2制御装置が前記イニシャルチェックを完了する場合、前記通知処理を終了するように構成されている上記3記載の電源装置である。
【0011】
上記構成では、第2制御装置がイニシャルチェックを完了する場合に通知処理を終了した。これにより、正常な状態に復帰したことを運転者に認知させることができる。
5.前記第1制御装置は、記憶装置を備えて且つ、前記第2制御装置との通信ができない場合、最後に通信した内容を記憶装置に保持する保持処理と、前記保持した内容に基づき前記車両に搭載される機器の状態を制御する処理と、を実行するように構成されている上記1記載の電源装置である。
【0012】
上記構成では、第1制御装置は、第2制御装置との通信ができない場合、最後に通信した内容に基づき機器の状態を制御する。最後に通信した内容は、実際の状態に近い可能性が高いことから、実際の状態を極力反映しつつ制御することができる。
【0013】
6.前記第1制御装置は、前記第2制御装置との通信が再開する場合、前記記憶装置に記憶した内容を更新する更新処理を実行するように構成されている上記5記載の電源装置である。
【0014】
上記構成では、第1制御装置は、通信が再開することにより記憶装置に記憶した内容を更新することにより、記憶装置に記憶される内容を最新の内容とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態にかかる操舵制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】同実施形態にかかる通信処理の手順を示す流れ図である。
図3】同実施形態にかかる補助用マイコンが実行する処理の手順を示す流れ図である。
図4】同実施形態にかかる転舵マイコンが実行する処理の手順を示す流れ図である。
図5】同実施形態にかかる通信処理を例示するタイムチャートである。
図6】同実施形態の比較例にかかる通信処理を例示するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
「前提構成」
図1に、本実施形態にかかる車両の操舵制御システムの構成を示す。本実施形態では、操舵系として、ステアリングホイールと転舵輪との動力の伝達経路が遮断されている、いわゆるステアバイワイヤシステムを想定している。
【0017】
転舵モータ10は、転舵輪を転舵させるための転舵アクチュエータに備えられている。転舵モータ10の端子には、転舵制御装置20によって、電圧が印加される。詳しくは、転舵制御装置20は、インバータ22を備えている。そして、転舵モータ10の端子には、インバータ22の出力電圧が印加される。
【0018】
転舵制御装置20は、転舵マイコン30を備えている。転舵マイコン30は、制御対象である転舵モータ10の制御量を制御すべく、インバータ22を操作する。転舵マイコン30は、PU32および記憶装置34を備えている。PU32は、CPU,GPU,TPU等の少なくとも1つの処理ユニットを備えたソフトウェア処理装置である。記憶装置34は、PU32が実行するプログラムを記憶している。
【0019】
補助用制御装置50は、制御対象としての補助電源56の状態を制御する装置である。補助電源56は、バッテリ40からの電荷を蓄える蓄電装置である。補助電源56は、たとえばコンデンサであってよい。
【0020】
補助用制御装置50は、主電源ラインLbとインバータ22との間を開閉するスイッチング素子52を備えている。補助用制御装置50は、スイッチング素子52を介して主電源ラインLbと補助電源56との間を開閉するスイッチング素子54を備えている。補助用制御装置50は、補助電源56と転舵マイコン30とを接続するダイオード58を備えている。ダイオード58は、補助電源56の正極端子側をアノードとして且つ転舵マイコン30側をカソードとする整流素子である。補助用制御装置50は、起動時ラインLigと転舵マイコン30とを接続するダイオード60を備えている。ダイオード60は、バッテリ40側をアノードとして且つ転舵マイコン30側をカソードとする整流素子である。補助用制御装置50は、ダイオード58のアノード側と補助電源56との間を開閉するスイッチング素子62を備えている。
【0021】
補助用制御装置50は、補助用マイコン70を備えている。補助用マイコン70は、補助電源56の電圧および電流を検出して補助電源56の状態を監視する。補助用マイコン70は、スイッチング素子52を開閉操作することによって、バッテリ40からインバータ22への電力の供給を制御する。また、補助用マイコン70は、スイッチング素子54を開閉操作することによって、補助電源56とインバータ22との間の電力の授受を制御する。また、補助用マイコン70は、スイッチング素子62を開閉操作することによって、補助電源56から転舵マイコン30への電力の供給を制御する。
【0022】
補助用マイコン70は、PU72および記憶装置74を備えている。
「補助電源56の利用時の通信処理」
図2に、転舵マイコン30が補助電源56を利用するときの転舵マイコン30および補助用マイコン70の処理の手順を示す。図2に示す処理は、記憶装置34に記憶されたプログラムをPU32がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。また、図2に示す処理は、記憶装置74に記憶されたプログラムをPU72がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって、各処理のステップ番号を表現する。
【0023】
図2に示す一連の処理において、補助用マイコン70のPU72は、まず、補助電源56の放電電流Iを検出する(S10)。放電電流Iは、正の場合に放電していることを示し、負の場合に充電していることを示す。次に、PU72は、放電電流Iの積算処理に基づき、補助電源56の残量Qrを更新する(S12)。ここで、PU72は、放電電流Iに、図2の一連の処理の周期Tを乗算した値だけ残量Qrを減量補正する。次にPU72は、S12の処理によって更新された残量Qrを送信する(S14)。なお、PU72は、S14の処理を完了する場合、図2に示す処理のうち補助用マイコン70が実行する処理を一旦終了する。
【0024】
これに対し、転舵マイコン30のPU32は、残量Qrを受信する(S20)。次にPU72は、残量Qrに応じて転舵モータ10のトルクの大きさに対する上限ガード値であるトルクガード値TrqLを算出する(S22)。PU72は、残量Qrが大きい場合のトルクガード値TrqLを残量が小さい場合のトルクガード値TrqL以上に設定する。この処理は、記憶装置74にマップデータが記憶された状態において、PU72によってトルクガード値TrqLをマップ演算する処理とすればよい。ここで、マップデータは、残量Qrを入力変数として且つ、トルクガード値TrqLを出力変数とするデータである。
【0025】
ここで、マップデータとは、入力変数の離散的な値と、入力変数の値のそれぞれに対応する出力変数の値と、の組データである。またマップ演算は、たとえば、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれかに一致する場合、対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とする処理とすればよい。また、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれにも一致しない場合、マップデータに含まれる複数の出力変数の値の補間によって得られる値を演算結果とする処理とすればよい。また、これに代えて、マップ演算は、上記いずれにも一致しない場合、マップデータに含まれる複数の入力変数の値のうちの実際の入力変数の値に最も近い値に対応する出力変数の値を演算結果とする処理としてもよい。
【0026】
次に、PU32は、目標トルクTrq*を算出する(S24)。たとえば、PU32は、運転者がステアリングホイールに加えるトルクに応じて目標トルクTrq*を算出してもよい。またたとえば、PU32は、車両の操舵をアシストする制御の要求に応じて目標トルクTrq*を算出してもよい。
【0027】
次にPU32は、転舵モータ10の目標トルクTrq*の絶対値が、トルクガード値TrqLよりも大きいか否かを判定する(S26)。PU72は、トルクガード値TrqLよりも大きいと判定する場合(S26:YES)、目標トルクTrq*の大きさをトルクガード値TrqLとする(S28)。PU32は、S28の処理を完了する場合と、S26の処理において否定判定する場合と、には、転舵モータ10のトルクを目標トルクTrq*に近づけるように制御すべく、インバータ22を操作する(S30)。
【0028】
なお、PU32は、S30の処理を完了する場合、図2に示す一連の処理を一旦終了する。
「補助用マイコン70の処理」
図3に、補助用マイコン70のPU72が実行する処理の手順を示す。図3に示す処理は、記憶装置74に記憶されたプログラムをPU72がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。
【0029】
図3に示す一連の処理において、PU72は、まず、チェック完了フラグFa1が「0」であるか否かを判定する(S40)。チェック完了フラグFa1は、「1」である場合に、補助用マイコン70の起動後、イニシャルチェックが終了したことを示す。また、チェック完了フラグFa1は、「0」である場合に、補助用マイコン70の起動後、イニシャルチェックが完了していないことを示す。チェック完了フラグFa1は、補助用マイコン70の起動時には、初期化処理によって「0」とされる。PU72は、チェック完了フラグFa1が「0」であると判定する場合(S40:YES)、イニシャルチェックを実行する(S42)。イニシャルチェックは、たとえば補助用制御装置50の所定箇所にバッテリ40の電圧が印加されているか等に基づく、補助用制御装置50の回路部分のチェックを含む。また、イニシャルチェックは、補助用マイコン70内の各種状態のチェックを含む。この各種状態のチェックには、記憶装置74に記憶されたデータの値のチェックも含まれる。
【0030】
そして、PU72は、イニシャルチェックが完了したか否かを判定する(S44)。PU72は、イニシャルチェックが完了したと判定する場合(S44:YES)、チェック完了フラグFa1に「1」を代入して且つ、通信線Lcを介してイニシャルチェックが完了した旨を転舵マイコン30に通知する(S46)。
【0031】
PU72は、S46の処理を完了する場合と、S40,S44の処理において否定判定する場合と、には、通信異常フラグFa2が「1」であるか否かを判定する(S48)。通信異常フラグFa2は、「1」である場合に、転舵マイコン30との通信ができない異常時であることを示す。通信異常フラグFa2は、「0」である場合に、転舵マイコン30と正常に通信ができることを示す。
【0032】
PU72は、通信異常フラグFa2が「0」であると判定する場合(S48:NO)、転舵マイコン30との通信ができない異常時であるか否かを判定する(S50)。PU72は、異常時であると判定する場合(S50:YES)、通信異常フラグFa2に「1」を代入する(S52)。そしてPU72は、通信を継続する(S54)。すなわち、PU72は、通信を停止することなく、転舵マイコン30からデータが送信された場合には、いつでも通信を開始可能な状態とする。なお、PU72は、通信が可能な状態から通信が不可能な状態に移行することによってS50の処理において肯定判定した場合には、通信が途絶する直前において転舵マイコン30から受け取ったデータを記憶装置74に保持する。
【0033】
一方、PU72は、通信異常フラグFa2が「1」であると判定する場合(S48:YES)、以下の条件(A)および条件(B)の論理積が真であるか否かを判定する(S56)。
【0034】
条件(A):転舵マイコン30との通信が可能な状態に復帰した旨の条件である。
条件(B):転舵マイコン30からイニシャルチェックが完了した旨の通知をうけた旨の条件である。
【0035】
PU72は、論理積が偽であると判定する場合(S56:NO)、S54の処理に移行する。一方、PU72は、論理積が真であると判定する場合(S56:YES)には、通信異常フラグFa2に「0」を代入する(S58)。PU72は、S58の処理を完了する場合と、S50の処理において否定判定する場合と、には、都度の転舵マイコン30との通信によって得られたデータによって記憶装置74に記憶するデータを更新する(S60)。
【0036】
なお、PU72は、S54,S60の処理を完了する場合、図3に示す一連の処理を一旦終了する。
「転舵マイコン30の処理」
図4に、転舵マイコン30のPU32が実行する処理の手順を示す。図4に示す処理は、記憶装置34に記憶されたプログラムをPU32がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。
【0037】
図4に示す一連の処理において、PU32は、まず、チェック完了フラグFt1が「0」であるか否かを判定する(S70)。チェック完了フラグFt1は、「1」である場合に、転舵マイコン30の起動後、イニシャルチェックが終了したことを示す。また、チェック完了フラグFt1は、「0」である場合に、転舵マイコン30の起動後、イニシャルチェックが完了していないことを示す。チェック完了フラグFt1は、転舵マイコン30の起動時には、初期化処理によって「0」とされる。PU32は、チェック完了フラグFt1が「0」であると判定する場合(S70:YES)、イニシャルチェックを実行する(S72)。イニシャルチェックは、たとえばインバータ22の所定箇所にバッテリ40の電圧が印加されているか等に基づく、転舵制御装置20の回路部分のチェックを含む。また、イニシャルチェックは、転舵マイコン30内の各種状態のチェックを含む。この各種状態のチェックには、記憶装置34に記憶されたデータの値のチェックも含まれる。
【0038】
そして、PU32は、イニシャルチェックが完了したか否かを判定する(S74)。PU32は、イニシャルチェックが完了したと判定する場合(S74:YES)、チェック完了フラグFt1に「1」を代入して且つ、イニシャルチェックが完了した旨を補助用マイコン70に通知する(S76)。
【0039】
PU32は、S76の処理を完了する場合と、S70,S74の処理において否定判定する場合と、には、通信異常フラグFt2が「1」であるか否かを判定する(S78)。通信異常フラグFt2は、「1」である場合に、補助用マイコン70との通信ができない異常時であることを示す。通信異常フラグFt2は、「0」である場合に、補助用マイコン70と正常に通信ができることを示す。
【0040】
PU32は、通信異常フラグFt2が「0」であると判定する場合(S78:NO)、補助用マイコン70との通信ができない異常時であるか否かを判定する(S80)。PU32は、通信ができない異常時であると判定する場合(S80:YES)、通信異常フラグFt2に「1」を代入するとともに、図1に示すウォーニングランプ80を点灯させる(S82)。そしてPU32は、通信を継続する(S84)。すなわち、PU32は、通信を停止することなく、補助用マイコン70からデータが送信された場合には、いつでも通信を開始可能な状態とする。なお、PU32は、通信が可能な状態から通信が不可能な状態に移行することによってS80の処理において肯定判定する場合、通信が途絶する直前において補助用マイコン70から受け取ったデータを記憶装置34に保持する。
【0041】
一方、PU32は、通信異常フラグFt2が「1」であると判定する場合(S78:YES)、以下の条件(C)および条件(D)の論理積が真であるか否かを判定する(S86)。
【0042】
条件(C):補助用マイコン70との通信が可能な状態に復帰した旨の条件である。
条件(D):補助用マイコン70からイニシャルチェックが完了した旨の通知をうけた旨の条件である。
【0043】
PU32は、論理積が偽であると判定する場合(S86:NO)、S84の処理に移行する。一方、PU32は、論理積が真であると判定する場合(S86:YES)には、通信異常フラグFt2に「0」を代入するとともに、ウォーニングランプ80を消灯する(S88)。PU32は、S88の処理を完了する場合と、S80の処理において否定判定する場合と、には、都度の補助用マイコン70との通信によって得られたデータによって記憶装置34に記憶するデータを更新する(S90)。
【0044】
なお、PU32は、S84,S90の処理を完了する場合、図4に示す一連の処理を一旦終了する。
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
【0045】
図5に、転舵マイコン30と補助用マイコン70とのそれぞれの状態を示す。図5においては、転舵マイコン30を「MCt」と記載して且つ、補助用マイコン70を「MCas」と記載している。
【0046】
転舵マイコン30と補助用マイコン70とは、起動後、通信をする。ここで、たとえば図5に示すように、補助用マイコン70がリセットされる場合、通信が途絶する。その場合、転舵マイコン30のPU32は、ウォーニングランプ80を点灯することによって、バッテリ40の電力が遮断される場合に補助電源56を正常に利用できる状況にない旨、運転者に通知する。
【0047】
ここで、通信が途絶する場合、通信線Lcにノイズが重畳することに起因して、誤ったデータに基づき制御がなされることを抑制する観点から、通信を遮断する動機がある。しかし、その場合、起動スイッチ42が一旦開状態とされた後再度閉状態とされるまで、通信を再開できない。したがって、起動スイッチ42が一旦開状態とされた後再度閉状態とされるまで、補助電源56を正常に利用できない。
【0048】
そこで転舵マイコン30は、補助用マイコン70との通信を継続する。一方、補助用マイコン70は、リセットから復帰すると、イニシャルチェックを開始するとともに、転舵マイコン30との通信を再開する。このように、転舵マイコン30のPU32は、通信を遮断しないために、補助用マイコン70がリセットから復帰すると、補助用マイコン70との通信を再開できる。
【0049】
これに対し、通信が途絶する場合に通信を遮断する場合には、図6に示すように、通信を再開できる状態であるにもかかわらず、通信を再開できない。すなわち、たとえば補助用マイコン70が停止する場合、補助用マイコン70が復帰すると、補助用マイコン70は、通信可能な状態となる。しかし、転舵マイコン30が、通信途絶後に通信を遮断すると、転舵マイコン30および補助用マイコン70間で通信を再開できない。またたとえば転舵マイコン30が停止する場合、転舵マイコン30が復帰すると、転舵マイコン30は、通信可能な状態となる。しかし、補助用マイコン70が、通信途絶後に通信を遮断すると、転舵マイコン30および補助用マイコン70間で通信を再開できない。
【0050】
図5に戻り、転舵マイコン30のPU32は、通信が再開された場合であっても、補助用マイコン70のPU72がイニシャルチェックを完了するまでの期間は、ウォーニングランプ80の点灯を継続する。イニシャルチェックを完了するまでの間は、補助用制御装置50が正常に機能することが確認されていない。そのため、補助電源56を利用するための制御を正常に実行可能であることが確認されていない。そのため、PU32は、ウォーニングランプ80の点灯を継続する。これにより、補助電源56を利用するための制御を正常に実行可能ではない状態であることを運転者に把握させることができる。
【0051】
また、PU32は、補助用マイコン70との通信ができなくなる場合、補助用マイコン70との最後の通信内容を記憶装置34に保持する。この通信内容には、図2のS20の処理において受信した残量Qrの情報が含まれる。そのため、たとえば、バッテリ40の電力供給が遮断された異常時において、補助用マイコン70との通信が途絶した場合、PU32は、通信が途絶する直前の残量Qrに基づき、S22~S30の処理を実行する。ここで、通信が途絶する直前の残量Qrは、補助電源56の実際の残量に近似する値であると考えられる。したがって、残量Qrとしてデフォルト値を用いる場合等と比較して、S22~S30の処理をより適切に実行できる。
【0052】
ちなみに、S50,S80の処理において肯定判定される場合としては、通信の確立後に、通信が途絶する場合に限らない。たとえば、起動スイッチ42が開状態から閉状態に切り替わった後、転舵マイコン30および補助用マイコン70の起動タイミングにずれが生じる場合においても、S50,S80の処理において肯定判定されうる。すなわち、たとえば補助用マイコン70の起動が遅れる場合、転舵マイコン30のPU32は、S80の処理において肯定判定する。そして、S80の処理において肯定判定されることを条件に通信を遮断する場合には、起動スイッチ42が一旦開状態に切り替わった後、再度閉状態に切り替わるまで、補助用マイコン70と転舵マイコン30との通信ができない。したがって、補助電源56を正常に利用することができなくなるおそれがある。
【0053】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1]駆動用制御装置は、転舵制御装置20に対応する。補助用制御装置は、補助用制御装置50に対応する。主電源は、バッテリ40に対応する。補助電源は、補助電源56に対応する。供給経路は、起動時ラインLigに対応する。「通信機能を継続する」ことは、S54,S84の処理に対応する。[2]第1制御装置は、転舵制御装置20に対応する。通知処理は、S82の処理に対応する。[3,4]S86の処理において肯定判定する場合にS88の処理を実行することに対応する。[5]保持処理は、S84の処理に対応する。制御する処理は、S22~S30の処理に対応する。[6]S60,S90の処理に対応する。
【0054】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
「通知処理について」
・通知処理としては、ウォーニングランプ80を点灯する処理に限らない。たとえば警告音を発する処理であってもよい。さらにたとえば、表示装置に、文字または特定の図形を表示する処理であってもよい。
【0056】
・上記実施形態では、イニシャルチェックの完了後にウォーニングランプ80を消灯したが、これに限らない。
・上記実施形態では、補助用制御装置50は、通知処理を実行する機能を有していなかったが、これに限らない。
【0057】
「保持処理について」
・上記実施形態では、最後に通信した内容を、通信が再開されるまで保持したが、これに限らない。たとえば、残量Qrについては、補助電源56を利用した制御の継続時間が所定時間以上となることにより、減少補正してもよい。
【0058】
「補助電源について」
・補助電源としては、コンデンサに限らない。たとえば2次電池であってもよい。
「駆動用制御装置について」
・上記実施形態では、駆動用制御装置として、転舵制御装置20を例示したが、これに限らない。たとえばステアリングホイールに反力を付与する反力アクチュエータを操作する操舵制御装置であってもよい。また、たとえば操舵制御装置と転舵制御装置との協働で、駆動用制御装置を構成してもよい。その場合、たとえば補助用制御装置50と通信可能なのは、操舵制御装置のみとしてもよい。また、その場合、ウォーニングランプ80を操作するのは、転舵制御装置20の役割としてもよい。換言すれば、通知処理については、転舵制御装置20が実行することとしてもよい。
【0059】
またたとえば、ステアリングホイールの回転を規制するロック機構を制御する制御装置であってもよい。またたとえば、車両の変速装置の状態を切り替えるシフト制御装置であってもよい。またたとえば、ブレーキアクチュエータを操作することによって、車両の制動力を制御する制御装置であってもよい。
【0060】
・駆動用制御装置としては、PU32と記憶装置34とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、駆動用制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア処理回路や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1または複数のソフトウェア処理回路および1または複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路によって実行されればよい。
【0061】
「補助用制御装置について」
・補助用制御装置50としては、PU72と記憶装置74とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、補助用制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア処理回路や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1または複数のソフトウェア処理回路および1または複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路によって実行されればよい。
【0062】
「操舵系について」
・上記実施形態では、ステアバイワイヤシステムを例示したが、これに限らない。たとえば、ステアリングホイールと転舵輪との動力伝達がなされる操舵系であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…転舵モータ
20…転舵制御装置
22…インバータ
30…転舵マイコン
40…バッテリ
42…起動スイッチ
50…補助用制御装置
56…補助電源
70…補助用マイコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6