(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026160
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ヒトサイトメガロウイルス免疫原性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/12 20060101AFI20240220BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240220BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240220BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240220BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240220BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240220BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240220BHJP
C07K 14/045 20060101ALN20240220BHJP
C12N 15/38 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
A61K39/12 ZNA
A61K39/39
A61K9/107
A61K47/02
A61K9/127
A61K9/14
A61P37/04
A61P31/12
C07K14/045
C12N15/38
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023198785
(22)【出願日】2023-11-24
(62)【分割の表示】P 2020514916の分割
【原出願日】2018-09-11
(31)【優先権主張番号】17306179.7
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592055820
【氏名又は名称】サノフィ・パスツール
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・シャオー
(72)【発明者】
【氏名】ラファエラ・デュマ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ヘンスラー
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ・ピション
(72)【発明者】
【氏名】ファビエンヌ・ピラス-デゥーセ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中和抗体レベルを高め、持続的免疫応答を誘導して長期防御を誘導するワクチン、より詳細には広範な免疫応答を誘導するHCMVワクチンを提供する。
【解決手段】HCMV gB抗原、HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原およびTh1誘導アジュバントを含む免疫原性組成物を提供する。さらに、HCMVワクチンとして使用するための免疫原性組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- HCMV gB抗原;
- HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原;および
- Th1誘導アジュバント
を含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記Th1誘導アジュバントは、同じHCMV gB抗原および同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む組成物中のMF59より、低いIgG1:IgG2a、c比、および/または高いINF-γレベル、および/または低いIL-5レベルをマウスにおいて誘導する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記Th1誘導アジュバントは:
- TLR-4アゴニスト;または
- 350~650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有するポリアクリル酸ポリマー塩
を含む、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記Th1誘導アジュバントは:
- リポ多糖、モノホスホリルリピドA(MPL)、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)、グルコピラノシル脂質アジュバント(GLA)、第二世代の脂質アジュバント(SLA)、非炭水化物骨格によって連結されたリン脂質二量体およびアミノアルキルグルコサミニドホスフェート、もしくはそれらの誘導体からなる群から選択されるTLR-4アゴニスト;または
- 350~650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有するポリアクリル酸ポリマー塩
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記Th1誘導アジュバントはTLR-4アゴニストを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記TLR4アゴニストは、水性ナノ懸濁液、リン酸カルシウム、リポソーム、ビロソーム、ISCOM、マイクロ粒子およびナノ粒子、またはエマルジョンなどの送達系との組合せである、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記送達系は水中油型エマルジョンである、請求項6に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記TLR-4アゴニストは、E6020(CAS番号:287180-63-6)およびGLA(CAS番号1246298-63-4)TLR-4アゴニストから選択される、請求項5~7のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記Th1誘導アジュバントは、350~650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有する直鎖または分枝鎖ポリアクリル酸ポリマー塩を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記直鎖または分枝鎖ポリアクリル酸ポリマー塩はPAA225000である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記HCMV gB抗原は、細胞内タンパク質分解切断部位に1つまたはいくつかの変異を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記HCMV gB抗原は、完全長gBポリペプチド、膜貫通ドメインの少なくとも一部を欠く完全長gBポリペプチド、膜貫通ドメインの実質的に全てを欠く完全長gBポリペプチド、細胞内ドメインの少なくとも一部を欠く完全長gBポリペプチド、細胞内ドメインの実質的に全てを欠く完全長gBポリペプチド、または膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインの実質的に両方を欠く完全長gBポリペプチドである、請求項1~11のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記HCMV gB抗原はgBdTmである、請求項1~12のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原において、gH抗原は、膜貫通ドメインの少なくとも一部を欠き、好ましくはgH抗原は、膜貫通ドメインの実質的に全てを欠く、請求項1~113のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記gHは、UL75遺伝子によってコードされる完全長gHの外部ドメインを含む、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
HCMV gBおよびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合は唯一のHCMV抗原である、請求項1~15のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
HCMVワクチンとして使用するための、請求項1~16のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記ワクチンは、中和抗体レベルおよび/または持続を高める、請求項17に記載の使用するための免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HCMV gB抗原、HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原およびTh1誘導アジュバントを含む免疫原性組成物に関する。本発明はさらに、HCMVワクチンとして使用するための免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、ヘルペスウイルスファミリーに属する偏在性ウイルスである。該ウイルスは、表面に糖タンパク質スパイクを持つ脂質二重膜に包まれ、テグメントに囲まれたカプシドに含有された直鎖二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)からなる。このファミリーの他のメンバーのように、HCMVは潜伏感染および再活性化の特徴を有する。HCMVは多くの細胞を感染させ、潜伏する能力を有する。
【0003】
免疫正常宿主では、ほとんどのHCMV感染は無症候性または極めて軽度であり、疲労、倦怠感、中程度の熱、リンパ節症、肝腫大もしくは肝臓酵素の軽微な増加などのいくつかの非特異的症状を伴う。しかし、異種親和性陰性単核球症(Heterophil-negative mononucleosis)が以前は健康な個体の約10%で観察される。
【0004】
対照的に、子宮内で感染した新生児およびAIDSによって免疫抑制された成人、または固形臓器もしくは骨髄移植の関連では、臨床徴候は極めて重症になり得る。
【0005】
HCMV感染症の有病率は年齢とともに上昇し、社会経済的要因の影響を受ける。血清学的調査は、開発途上国および先進国の社会経済的下層群においてより高い有病率を示している。出産可能年齢の女性に関して、HCMV血清陽性女性の割合は、先進国の高および中所得層の約50%から低所得集団の80%以上にわたる。過去20年間に異なる西欧諸国において異なる年齢クラス、女性および男性を含む一般集団で行われた調査により、幼児および思春期層のHCMV血清有病率は40~50%にわたるが、より年上の対象(40歳以上)では、HCMV血清有病率は80%より高いことが世界的に示された。
【0006】
HCMVは、尿、唾液、乳汁、精液、生殖器分泌物を含む感染者の分泌物に長期にわたって排出される;HCMVは故に、水平伝播(子どもから子どもへ、子どもから親へ、およびセックスパートナー間の濃厚接触を通じた)または胎盤を通じたもしくは出生時の体液接触および授乳を通じた、もしくは血液製剤もしくは移植臓器への曝露による、母親から胎児もしくは乳児への垂直伝播のどちらかで伝播される。
【0007】
HCMVは、先進国世界における先天性感染の最も一般的な原因である。先天性感染とは、新生児の出生前に母親から胎児へ伝播される感染を指す。米国では毎年、推定8000人の乳児が先天性HCMV感染の結果、精神遅滞、失明および感音性難聴を含む障害をきたしている。
【0008】
先天的に感染した新生児のうち5%~10%は、小頭症、脈絡網膜炎、頭蓋内石灰化、肝脾腫、肝炎、黄疸、高直接ビリルビン血症、血小板減少症、点状出血、および貧血などの主な徴候を出生時に有する。症候性先天性HCMV疾患を有するこれらの新生児のうち、死亡率は乳児期および生存者で約10%であるが、50~90%が精神遅滞、脳性麻痺、感音性聴覚損失または視力障害などの後遺症を有する。
【0009】
先天性HCMV感染を有する多くの乳児は、出生時に無症候性である。出生時に無症候
性であり、新生児期にウイルススクリーニングによってHCMV血清陽性と同定された乳児の約15%は、聴覚損失または中枢神経系異常などの後遺症を有することが追跡研究により示されている。
【0010】
全体として、欧州および米国で毎年生まれる乳児約17,000人は永続的後遺症を有する。
【0011】
一次感染が妊娠後期に生じる場合より一次感染が妊娠第1期に生じる場合、先天性HCMV感染は頻度がより高く、より重症である。全体的に見て、妊娠中の一次HCMV感染は、胎児への40%の伝播リスクを伴う。
【0012】
妊娠中の母体HCMV感染または先天性HCMV感染を予防または治療する有効な手段は、現在入手できない。
【0013】
HCMVはまた、臓器および骨髄移植レシピエント並びにAIDS患者における重要なウイルス病原体でもある。HCMV血清陰性固形臓器移植レシピエントのHCMV関連罹患率は60%に近い。固形臓器移植では、血清陰性患者がHCMV陽性ドナーから移植片を受け取る場合、該疾患は最も重症である。対照的に、骨髄または幹細胞移植では、HCMV感染の起源が内因性感染の再活性化であることを示している血清陰性ドナーから細胞を受け取るHCMV血清陽性対象では、該疾患は最も重症である。
【0014】
HCMVは、同種移植レシピエントの約15%で間質性肺炎、肝炎、胃腸疾患、骨髄抑制、および網膜炎を引き起こす。これらの直接的な終末器官疾患に加えて、HCMVは、移植片拒絶反応、アテローム性動脈硬化の加速、および細菌または真菌感染につながる可能性がある免疫抑制などの間接的な影響を伴っている。
【0015】
HCMVワクチンの開発は、それ故に、医学研究所ワクチン優先順位付け報告書において主要な公衆衛生目的と考えられている(非特許文献1)。多くの候補ワクチンが記載されているが、これまでのところ認可されたものはない(非特許文献2)。
【0016】
MF59アジュバントを用いるサイトメガロウイルス糖タンパク質Bワクチンは、移植レシピエントにおける第2相無作為化プラセボ対照試験で有望な結果を示した(非特許文献3)。出産可能年齢の女性における第2相プラセボ対照無作為化二重盲検試験は、MF59アジュバントを用いる組換えHCMVエンベロープ糖タンパク質Bからなる同じワクチンをプラセボと比較して評価した。結果は、原発性HCMVのHCMV獲得を防ぐ上で50%の効能を示した。しかし、免疫原性結果は、gB/MF59製剤によって誘導される中和抗体(Ab)のレベルが、第3回投与の投与1カ月後にピークレベルであり、次いで急速に減少することを示した(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Vaccines for the 21st century:A tool for decision making.Washington D.C.:National Academy Press;2000年のKathleen R、Stratton、Jane S、Durch、Lawrence RS.Editors committee to study priorities for Vaccine Development Division of Health Promotion and Disease Prevention Institute of Medicine
【非特許文献2】Plotkinら、Vaccines、第6版、Elsevier編、2013、Schleissら、Cytomegalovirus vaccines、1032~1041頁
【非特許文献3】Griffithsら、Lancet、2011、377(9773):1256~63頁
【非特許文献4】Passら、The New England Journal of Medecine、2009、360:1191~9頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
結果として、HCMVワクチン効能を改善する必要、特に、中和抗体レベルを高め、持続的免疫応答を誘導して長期防御を誘導するワクチンを見出す必要がある。また、より詳細にはより広範な免疫応答を誘導するHCMVワクチンを見出す必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
予期しないことに、本発明の本発明者らは、これらの要件に適合する新たな免疫原性組成物をこのたび見出した。
【0020】
本発明は故に、HCMV gB抗原、HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原およびTh1誘導アジュバントを含む免疫原性組成物に関する。
【0021】
特に、前記Th1誘導アジュバントは:
- TLR-4アゴニスト;または
- 350~650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有するポリアクリル酸ポリマー塩
を含む。
【0022】
1つの実施形態において、前記Th1誘導アジュバントはTLR-4アゴニストを含む。
【0023】
特に、前記TLR4アゴニストは、水性ナノ懸濁液、リン酸カルシウム、リポソーム、ビロソーム、ISCOM、マイクロ粒子およびナノ粒子、またはエマルジョンなどの送達系との組合せである。
【0024】
より具体的には、前記送達系は水中油型エマルジョンである。
【0025】
特に、前記TLR-4アゴニストは、E6020(CAS番号:287180-63-6)およびGLA(CAS番号1246298-63-4)TLR-4アゴニストから選択される。
【0026】
1つの実施形態において、前記Th1誘導アジュバントは、350~650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有する直鎖または分枝鎖ポリアクリル酸ポリマー塩、特にPAA225000を含む。
【0027】
特に、前記HCMV gB抗原は、細胞内タンパク質分解切断部位に1つまたはいくつかの変異を含む。
【0028】
さらに具体的には、前記HCMV gB抗原は、完全長gBポリペプチド、膜貫通ドメインの少なくとも一部を欠く完全長gBポリペプチド、膜貫通ドメインの実質的に全てを欠く完全長gBポリペプチド、細胞内ドメインの少なくとも一部を欠く完全長gBポリペ
プチド、細胞内ドメインの実質的に全てを欠く完全長gBポリペプチド、または膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインの実質的に両方を欠く完全長gBポリペプチドである。
【0029】
より具体的には、前記HCMV gB抗原はgBdTmである。
【0030】
特に、前記HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原において、gH抗原は、膜貫通ドメインの少なくとも一部を欠き、好ましくはgH抗原は、膜貫通ドメインの実質的に全てを欠く。
【0031】
より具体的には、前記gHは、UL75遺伝子によってコードされる完全長gHの外部ドメインを含む。
【0032】
さらに具体的には、本発明による免疫原性組成物において、HCMV gBおよびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合体は唯一のHCMV抗原である。
【0033】
本発明は、HCMVワクチンとして使用するための本発明による免疫原性組成物にさらに関する。
【0034】
特に、前記ワクチンは、中和抗体レベルおよび/または持続を高める。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】種々のアジュバントを含むまたは含まないCMV-gB 2μgおよび五量体で0、20および227日時点で免疫されたマウスから20~257日目に回収された血清中の、補体あり(パネルA)または補体なし(パネルB)上皮細胞での血清中和アッセイによって測定されたHCMV BAD-rUL131-Y4 GFP株に特異的な中和抗体価の動態を示す図である。
【
図3】種々のアジュバントを含むまたは含まないCMV-gB 2μgおよび五量体で0および20日目に免疫されたマウスから34日目に回収された血清中の、補体あり(パネルA)または補体なし(パネルB)上皮細胞および補体あり(パネルC)または補体なし(パネルD)線維芽細胞での血清中和アッセイによって測定されたHCMV BAD-rUL131-Y4 GFP株に特異的な中和抗体価を示す図である。
【
図4】種々のアジュバントを含むまたは含まないCMV-gB 2μgおよび五量体で0および20日時点で免疫されたマウスから208日目に回収された血清中の、補体あり(パネルA)または補体なし(パネルB)上皮細胞および補体あり(パネルC)または補体なし(パネルD)線維芽細胞での血清中和アッセイによって測定されたHCMV BAD-rUL131-Y4 GFP株に特異的な中和抗体価を示す図である。
【
図5】種々のアジュバントを含むまたは含まないCMV-gB 2μgおよび五量体で0、20および227日時点で免疫されたマウスから257日時点で回収された血清中の、補体あり(パネルA)または補体なし(パネルB)上皮細胞および補体あり(パネルC)または補体なし(パネルD)線維芽細胞での血清中和アッセイによって測定されたHCMV BAD-rUL131-Y4 GFP株に特異的な中和抗体価を示す図である。
【
図6】種々のアジュバントを含むまたは含まないCMV-gB 2μgおよび五量体で0、21および227日時点で免疫されたマウスから34、208および257日時点で回収された血清中のElISAによって測定された、CMV-gB(パネルA)またはCMV-五量体(パネルB)に特異的な抗gB IgG1およびIgG2c抗体価を示す図である。
【
図7】MF59または種々のアジュバントを含むCMV-gB 2μgおよび五量体で0、21および227日時点で免疫されたマウスからの各群に関する、34、208および257日時点で計算された平均IgG1/IgG2c抗体比を示す図である。
【
図8】種々のアジュバントを含むまたは含まないCMV-gB 2μgおよび五量体で0、20および227日時点で免疫されたマウス由来の脾臓細胞で34、208および257日時点でモニターされた、組換えCMV-gB(パネルA)またはCMV-五量体(パネルB)によるエクスビボ刺激時のIL-5およびIFN-γサイトカイン分泌細胞頻度(サイトカイン分泌細胞/10
6脾臓細胞)を示す図である。
【
図9】種々のアジュバントを含むまたは含まないCMV-gB 2μgおよび五量体で0、20および227日時点で免疫されたマウス由来の、34、208および257日時点のCMV-gB(パネルA)またはCMV-五量体(パネルB)どちらかに特異的な抗体分泌形質芽細胞のIgG1およびIgG2cパーセンテージを示す図である。
【
図10】種々のアジュバントを含むまたは含まないCMV-gB 2μgおよび五量体で0、20および227日時点に免疫されたマウス由来の、34、208および257日時点のCMV-gB(パネルA)またはCMV-五量体(パネルB)どちらかに特異的な抗体分泌記憶B細胞のIgG1およびIgG2cパーセンテージを示す図である。
【
図11】PAAアジュバントと共に製剤化されたCMV-gBおよびCMV-gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体の種々の用量でD0に免疫されたマウスからD20に回収された血清中の、補体の存在下の上皮細胞ARPE-19または線維芽細胞MRC-5に関する血清中和アッセイによって測定されたHCMV BAD-rUL131-Y4 GFP株に特異的な中和抗体価を示す図である。
【
図12】PAAアジュバントと共に製剤化されたCMV-gBおよびCMV-gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体の種々の用量でD0およびD21に免疫されたマウスからD35に回収された血清中の、補体の存在下(12A)または非存在下(12B)どちらかの上皮細胞ARPE-19に関する血清中和アッセイによって測定されたHCMV BAD-rUL131-Y4 GFP株に特異的な中和抗体価を示す図である。
【
図13】PAAアジュバントと共に製剤化されたCMV-gBおよびCMV-gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体3μgでD0およびD21に免疫されたマウスからD35に回収された脾臓細胞でのELISPOTアッセイによって測定された、CMV-gB、CMV-gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体(パネルA)またはCMV-五量体ペプチドプール(パネルB)どちらかによるエクスビボ刺激時のマウス脾臓細胞におけるIFN-γサイトカイン産生細胞定量化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
免疫原性組成物
以前に述べたように、本発明による免疫原性組成物は:
- HCMV gB抗原;
- HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原;
- Th1誘導アジュバント
を含む。
【0037】
「HCMV」は、ヒトサイトメガロウイルスに使用され、およびヒトサイトメガロウイルスの任意の株である。
【0038】
用語「含む(comprising)」/「含む(comprises)」/「含む(comprise)」/「含む(comprised)」は、それぞれ「含む(including)」/「含む(includes)」/「含む(include)」/「含む(included)」およびそれぞれ「からなる(consisting」/「からなる(consists)」/「からなる(consist)」/「からなる(consi
sted)」を包含し、例えばXを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなる場合もあれば、またはさらなる何か、例えばX+Yを含む場合もある。
【0039】
「抗原」は本明細書で使用される場合、当業者に公知の通常の意味を有する。特に、「抗原」とは、免疫学的応答の引き金を引く、1つまたはそれ以上のエピトープ(直鎖状、立体構造のどちらか、または両方)を含有する任意の分子を指す。
【0040】
本発明の文脈において、抗原は、タンパク質が十分な免疫原性を維持している限り、天然の配列に対する欠失、付加および置換などの修飾を有するタンパク質をさらに含む。これらの修飾は、例えば部位特異的変異誘発を介して故意にであってもよく、または宿主細胞において抗原の発現中に生じる変異などの偶然であってもよい。抗原はまた、コンセンサス配列によってコードされるタンパク質またはその断片でもあってもよい。
【0041】
本発明による免疫原性組成物において使用することができる抗原は、特にHCMV gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原である。
【0042】
HCMV gB抗原
本発明によるHCMV gB抗原は、中和抗体を誘導する完全長gBポリペプチドまたはgB由来ポリペプチドである。
【0043】
gBは、HCMVゲノムのUL55遺伝子によってコードされる。gBの天然型(すなわちgp130)のサイズは、株により少し異なり得るオープンリーディングフレーム(ORF)のサイズに依存する。例えば、2717bp長であるAD169株のORFは、906個のアミノ酸の完全長gBをコードするのに対し、Towne株のORFは、907個のアミノ酸の完全長gBをコードする。これらの2つの株のタンパク質配列は、参照によってその全体を組み入れるUS2002/0102562(
図2)に記載されている。gBの天然型は、通常は23~25アミノ酸長であるアミノ酸シグナル配列と、これに続く、残基アルギニン460からセリン461の間に細胞内タンパク質分解切断部位を含有する細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内ドメインを含有する。通常、完全長gBは、細胞で生じる翻訳後機構の結果としてアミノ酸シグナル配列が欠失されている。本発明の目的に適切な完全長gBは、HCMV株TowneおよびAD169、ならびに他の同等の株の完全長gBの両方を包含することが十分に理解されるであろう。中和抗体を誘導するいくつかの抗原ドメインが記載されている。特に、該ドメインには、gp130のアミノ酸残基461から680の間に位置するドメインが挙げられ、このドメインは2つの不連続ドメイン、残基461から619の間のドメインおよび残基620から680の間のドメインにさらに分けられる(US5,547,834)。該ドメインにはまた、アミノ酸残基560から640の間に位置する抗原ドメイン1(AD-1)(Schoppel K.ら、Virology、1996、216:133~45頁)、またはアミノ酸残基65から84の間(Axelsson Fら、Vaccine、2007、26:41~6頁)もしくはアミノ酸残基27から84の間(Burke HGら、PLoS pathogens、2015、11:e1005227頁)に位置する抗原ドメイン2(AD-2)も挙げられる。それ故に、上記に引用した抗原ドメインの1つまたはいくつかに相同な配列をそのアミノ酸配列に含むポリペプチドもまた本発明の目的に適している。用語「~に相同な配列」は、TowneまたはAD169株(US2002/0102562に記載されている)に由来する天然のgBと考えられる抗原ドメインのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性があるアミノ酸配列を意味することが意図される。典型的には、配列相同性は、少なくとも90%の配列同一性に基づき、さらにより具体的には、配列相同性は完全(100%の配列同一性)である。
【0044】
本明細書で使用される場合、第2の配列と少なくともx%の同一性を有する第1の配列は、両方の配列がグローバルアライメントにより最適に整列されるとき、第2のアミノ酸配列の全長と比べて、マッチした第2の配列のアミノ酸に同一である第1の配列のアミノ酸の数をx%が表すことを意味する。両方の配列は、xが最大であるとき最適に整列される。同一性のパーセンテージのアライメントおよび決定は、グローバルアライメントアルゴリズム、例えば、NeedlemanおよびWunsch、J.Mol Biol.、48、443~453頁(1970)に記載されたNeedlemanおよびWunschアルゴリズムを使用して、例えば、ポリペプチド配列比較のための以下のパラメータ:比較マトリックス:HenikoffおよびHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、89、10915~10919頁(1992)からのBLOSUM62、ギャップペナルティ:8およびギャップ長ペナルティ:2;ならびにポリヌクレオチド配列比較のための以下のパラメータ:比較マトリックス:マッチ=+10、ミスマッチ=0;ギャップペナルティ:50およびギャップ長ペナルティ:3を用いて、手動または自動で実行することができる。
【0045】
上記のパラメータと共に使用されるプログラムは、「ギャップ」プログラムとしてGenetics Computer Group、Madison WIから公開されている。前述のパラメータは、それぞれ、ペプチド比較(末端ギャップに対するペナルティなしに加えて)および核酸比較のためのデフォルトパラメータである。
【0046】
特に本発明の目的に適しているgB由来ペプチドまたはポリペプチドは、US5,547,834に記載のgp55である。gp55は、細胞内タンパク質分解切断部位でのgBの切断に由来する;そのアミノ酸配列は、セリン残基461からC末端の間にある配列に対応する。膜貫通配列の全てもしくは一部および細胞内C末端ドメインの全てもしくは一部(例えば、残基461から646の間の天然のgBのアミノ酸配列に相同な配列を有するペプチド)が欠失されたgp55または細胞内C末端ドメインの全てもしくは一部(例えば、残基461から680の間の天然のgBのアミノ酸配列に相同な配列を有するペプチド)が欠失されたgp55などの切断型のgp55も使用することができる。そのような切断型のgp55も、参照によってその全体を組み入れるUS5,547,834に記載されている。
【0047】
細胞内タンパク質分解切断部位に、その後が無効にされるように1つまたはいくつかの変異を有する完全長gBの変異型を使用することも可能である。特に、変異は、gp130の配列の残基457から460の間に位置し、より具体的には、アルギニン460および/またはリジン459および/またはアルギニン457に位置する。この態様において、完全長gBの変異型は、全てのドメインが中和抗体の標的となる細胞外ドメイン全体を有する。そのような変異型は、組換えタンパク質として生産される時の宿主でのその分泌、およびその容易な下流精製を可能にするために、膜貫通配列の全てもしくは一部および/または細胞内C末端ドメインの全てもしくは一部が二次的に欠失される。そのようなgB誘導体は、中和抗体の標的となる実質的に全てのドメインが保存される限り好ましい。
【0048】
したがって、本発明の1つの態様においてHCMV gBは、細胞内タンパク質分解切断部位に1つまたはいくつかの変異を含み、特にHCMV gBは、完全長HCMV gB、膜貫通ドメインの少なくとも一部を欠く完全長HCMV gB、膜貫通ドメインの実質的に全てを欠く完全長gBポリペプチド、細胞内ドメインの少なくとも一部を欠く完全長gBポリペプチド、細胞内ドメインの実質的に全てを欠く完全長HCMV gB、ならびに膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインの実質的に両方を欠く完全長HCMV gBポリペプチドの群の中からさらに選択される。
【0049】
表現「細胞内ドメインの実質的に全てを欠く」または「膜貫通ドメインの実質的に全て
を欠く」は、前記ドメインに対応するアミノ酸配列の少なくとも80%が欠失されることを意味する。
【0050】
本発明の文脈において、「ドメインの少なくとも一部を欠く」とは、ドメインの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%を欠くが、80%未満を欠くことを意味する。
【0051】
1つの実施形態において、HCMV gB抗原は、gBの外部ドメイン、すなわち膜貫通配列の全ておよび細胞内C末端ドメインの全てが欠失された完全長gBである。「外部ドメイン」は、膜を越えて細胞外空間に伸びる膜貫通アンカー型タンパク質の一部である。
【0052】
本発明によるHCMV gB抗原はまた、他の変異および/または欠失および/または付加も含有してもよい。例えば、HCMV gB抗原は、EP2627352に記載の細胞外ドメインに位置する融合ループ1(FL1)ドメインおよび融合ループ2(FL2)ドメインの少なくとも1つにおける少なくとも1個のアミノ酸の欠失または置換を含有してもよい。あるいはまたはさらに、該抗原は、EP2627352に記載のリーダー配列の少なくとも一部の欠失を含有してもよい。本発明によるHCMV gB抗原はまた、WO2016092460に記載の疎水性表面1内(アミノ酸残基154~160および236~243)にグリコシル化部位をもたらす変異も含んでもよい。特に、前記グリコシル化部位は、N-X-S/T/Cモチーフを含むNグリコシル化部位であり、ここで、Xは任意のアミノ酸残基である(が、好ましくはプロリンではない)。HCMV gB抗原は、グリコシル化部位をもたらす変異を含んでもよく、前記グリコシル化部位は、WO2016092460に記載の、(1)疎水性表面2内(アミノ酸残基145~167および230~252);または(2)融合ループ1(FL1)(アミノ酸残基155~157)および/もしくは融合ループ2(FL2)(アミノ酸残基240~242)から20オングストローム以内の残基にある。HCMV gB抗原は、WO2016092460に記載の、C末端の少なくとも12残基長である異種配列を含んでもよい。特に、gBタンパク質は、異種配列が外部ドメインのC末端で融合される融合タンパク質であってもよい。
【0053】
天然のHCMV gBは、ホモ三量体である関連ウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)gBおよびエプスタインバーウイルス(EBV)gBにおけるgBタンパク質の3D結晶学構造に基づき、ホモ三量体であると仮定されている(Heldweinら、Science、2006、313:217~220頁;Backovicら、PNAS、2009、106(8):2880~2885頁)。本発明によるHCMV gB抗原は、三量体(天然型)、および/または六量体(三量体天然型の二量体)、および/または十二量体(六量体の二量体)型であってもよい。特に、本発明による免疫原性組成物のHCMV gB抗原部分は、実質的に単量体型ではなく、より具体的には単量体型ではない。表現「~は実質的に単量体型ではない」は、HCMV gB抗原の20%未満、特に10%未満、特に5%未満が単量体型であることを意味する。
【0054】
実施形態によれば、gB抗原は、配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に、前記gB抗原は、配列番号1:SSTRGTSATHSHHSSHTTSAAHSRSGSVSQRVTSSQTVSHGVNETIYNTTLKYGDVVGVNTTKYPYRVCSMAQGTDLIRFERNIVCTSMKPINEDLDEGIMVVYKRNIVAHTFKVRVYQKVLTFRRSYAYIHTTYLLGSNTEYVAPPMWEIHHINSHSQCYSSYSRVIAGTVFVAYHRDSYENKTMQLMPDDYSNTHSTRYVTVKDQWHSRGSTW
LYRETCNLNCMVTITTARSKYPYHFFATSTGDVVDISPFYNGTNRNASYFGENADKFFIFPNYTIVSDFGRPNSALETHRLVAFLERADSVISWDIQDEKNVTCQLTFWEASERTIRSEAEDSYHFSSAKMTATFLSKKQEVNMSDSALDCVRDEAINKLQQIFNTSYNQTYEKYGNVSVFETTGGLVVFWQGIKQKSLVELERLANRSSLNLTHNTTQTSTDGNNATHLSNMESVHNLVYAQLQFTYDTLRGYINRALAQIAEAWCVDQRRTLEVFKELSKINPSAILSAIYNKPIAARFMGDVLGLASCVTINQTSVKVLRDMNVKESPGRCYSRPVVIFNFANSSYVQYGQLGEDNEILLGNHRTEECQLPSLKIFIAGNSAYEYVDYLFKRMIDLSSISTVDSMIALDIDPLENTDFRVLELYSQKELRSSNVFDLEEIMREFNSYKQRVKYVEDKRLCMQPLQNLFPYLVSADGTTVTSGNTKDTSLQAPPSYEESVYNSGRKGPGPPSSDASTAAPPYTNEQAYQMLLALVRLDAEQRAQQNGTDSLDGQTGTQDKGQKPNLLDRLRHRKNGYRHLKDSDEEENVと少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性またはさらには100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
好ましい実施形態においてgB抗原は、配列番号1と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0056】
本発明の文脈において特に適切なHCMV gB抗原は、C末端ドメインの全てもしくは一部が欠失しているおよび/または膜貫通配列の全てもしくは一部が欠失している、切断部位が無効である切断型の完全長gBである。特に好ましい切断型のgBは、参照によってその全体を組み入れるUS6,100,064に記載されている、gBdTMと呼ばれるものに対応する。US6,100,064では、シグナル配列は24アミノ酸長と仮定され、アミノ酸位置がそれに応じて
図10に示された。本発明者らは、このシグナル配列が実際に25アミノ酸長であることを発見した。US6,100,064の
図10において、Ser-1のC末端(すなわち、シグナル配列のC末端)を示した全てのアミノ酸位置は、そのため1から減らされなければならない。したがってgBdTMは、細胞外ドメインが細胞質ドメインに直接連結されるように、切断部位の3個の変異(アルギニン432はスレオニンに置換され、リジン434はグルタミンに置換され、およびアルギニン435はスレオニンに置換される;番号を振り直した位置を考慮)、およびアミノ酸残基バリン676からアルギニン751の間の膜貫通領域の欠失(番号を振り直した位置を考慮)を有する。そのようなgB由来ポリペプチドは、分泌型でこの産物を発現する組換え細胞によって産生されることから、精製がより容易である。得られた型は、これがgB Towne株に由来する場合、シグナル配列および膜貫通領域が欠失された806アミノ酸長のポリペプチドである。
【0057】
本明細書に記載されたHCMV gBタンパク質またはそこから誘導されるペプチドもしくはポリペプチドは、当業者に周知の任意の方法によって合成することができる。そのような方法には、固相(R.B.Merrifield、J.Am.Chem.Soc.、85(14)、2149~2154頁(1963))、もしく液相での従来の化学合成、構成的アミノ酸またはその誘導体からの酵素合成(K.Morihara、Trends in Biotechnology、5(6)、164~170頁(1987))、無細胞タンパク質合成(Katzenら、Trends in Biotechnology、23(3)、150~156頁(2005))、および組換え技術による生物学的生産方法が挙げられる。
【0058】
例えば、HCMV gB抗原は、組換え宿主細胞を用いた生物学的生産プロセスを使用して得ることができる。そのようなプロセスでは、本明細書に記載のHCMV gB抗原をコードする核酸を含有する発現カセットが宿主細胞に導入され、該宿主細胞は、対応するタンパク質の発現を可能にする条件で培養される。それによって生産されたタンパク質が、次いで回収および精製される。タンパク質を精製するための方法は、当業者に周知である。得られた組換えタンパク質は、分画、クロマトグラフィー方法、特異的モノクローナルまたはポリクローナル抗体等を使用する免疫親和性方法などの個別にまたは組み合わせて使用される方法によって、溶解物および細胞抽出物または培養培地上清から精製することができる。特に、得られた組換えタンパク質は、培養培地上清から精製される。
【0059】
HCMV gBタンパク質またはそこから誘導されるペプチドもしくはポリペプチドは、通常、組換えDNA法によって得られ、当業者に周知の方法に従って精製される。参照によってその全体を組み入れるUS6,100,064およびUS2002/0102562に記載された方法が、特に使用される。
【0060】
例えば、本発明によるgB抗原は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養物で産生される組換え糖タンパク質である。HCMVのTowne株由来のgB遺伝子は、US6,100,064に記載の細胞培養における分泌を促進するために、分子の切断部位および膜貫通部分を除去するように変異誘発することができる。分泌される分子は、19個の潜在的N結合グリコシル化部位を保持する806個のアミノ酸のポリペプチドであり、gBdTmとも呼ばれる。精製プロセスは、アフィニティーおよびイオン交換クロマトグラフィー工程を必要とした。
【0061】
HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原
本発明による免疫原性組成物の別の抗原部分は、HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原である。
【0062】
前記五量体複合体は、5つの成分の間でジスルフィド結合および非共有結合的相互作用によりアセンブルされて、立体構造エピトープを提示することができる機能複合体を形成する(Ciferriら、PNAS、2015、112(6):1767~1772頁;Wenら、Vaccine、2014、32(30):3796~3804頁)。
【0063】
前記複合体は既に記載されており、当業者によって公知である。前記複合体は、特にRyckmanら(Journal of Virology、2008年1月、60~70頁)および特許出願WO2014/005959に記載されている。前記HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合体は、修飾されたHCMV gHポリペプチドを特に含んでもよく、前記ポリペプチドは、膜貫通(TM)ドメインの少なくとも一部を欠く。いくつかの実施形態において、gHポリペプチドは、天然のTMドメインの一部を保持してもよいが、タンパク質を脂質二重膜に滞留させるには十分ではない。好ましい実施形態においてgHポリペプチドは、膜貫通ドメインの実質的に全てを欠く。より好ましい実施形態においてgHポリペプチドは、完全長の天然のTMドメインを欠く。
【0064】
故に、gHポリペプチドは、天然のgH TMドメインの最大10個のアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸)を含有し得る。
【0065】
本発明の文脈において、「ドメインの少なくとも一部を欠く」とは、ドメインの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%を欠くが、80%未満を欠くことを意味する。
【0066】
表現「細胞内ドメインの実質的に全てを欠く」または「膜貫通ドメインの実質的に全てを欠く」は、前記ドメインに対応するアミノ酸配列の少なくとも80%が欠失されることを意味する。
【0067】
あるいはまたはTMドメインの一部もしくは全てを欠くことに加えて、ポリペプチドは、HCMV gHの細胞内ドメインの一部または実質的に全てまたは全てを欠いてもよい。
【0068】
好ましい実施形態においてgHポリペプチドは、細胞内ドメインの実質的に全てを欠く。より好ましい実施形態においてgHポリペプチドは、完全長の天然の細胞内ドメインを欠く。
【0069】
好ましい実施形態において、gHポリペプチドは、TMドメインの全ておよび細胞内ドメインの全てを欠く。
【0070】
1つの実施形態において、前記gHは、UL75遺伝子によってコードされる完全長gHの外部ドメインを含む。
【0071】
UL75遺伝子によってコードされるHCMV糖タンパク質H(gH)は、不活性化に不可欠なビリオン糖タンパク質であり、アルファ、ベータおよびガンマヘルペスウイルスのメンバーの間で保存される。gHはgLと安定な複合体を形成し、この複合体の形成はgHの細胞表面発現を促進する。HSV-2およびEBV gH/gL複合体の結晶構造に基づき、gLサブユニットおよびgHのN末端残基は、gBとの相互作用および膜融合の活性化に関与する球状ドメイン(「頭部」)を構造の一端に形成する。ウイルス膜の近位にあるgHのC末端ドメイン(「尾部」)もまた膜融合に関与する。1つの実施形態において、本明細書に記載された五量体複合体のgHポリペプチドは、配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に、gH抗原は、配列番号2:
RYGAEAVSEPLDKAFHLLLNTYGRPIRFLRENTTQCTYNNSLRNSTVVRENAISFNFFQSYNQYYVFHMPRCLFAGPLAEQFLNQVDLTETLERYQQRLNTYALVSKDLASYRSFSQQLKAQDSLGEQPTTVPPPIDLSIPHVWMPPQTTPHGWTESHTTSGLHRPHFNQTCILFDGHDLLFSTVTPCLHQGFYLIDELRYVKITLTEDFFVVTVSIDDDTPMLLIFGHLPRVLFKAPYQRDNFILRQTEKHELLVLVKKDQLNRHSYLKDPDFLDAALDFNYLDLSALLRNSFHRYAVDVLKSGRCQMLDRRTVEMAFAYALALFAAARQEEAGAQVSVPRALDRQAALLQIQEFMITCLSQTPPRTTLLLYPTAVDLAKRALWTPNQITDITSLVRLVYILSKQNQQHLIPQWALRQIADFALKLHKTHLASFLSAFARQELYLMGSLVHSMLVHTTERREIFIVETGLCSLAELSHFTQLLAHPHHEYLSDLYTPCSSSGRRDHSLERLTRLFPDATVPATVPAALSILSTMQPSTLETFPDLFCLPLGESFSALTVSEHVSYVVTNQYLIKGISYPVSTTVVGQSLIITQTDSQTKCELTRNMHTTHSITAALNISLENCAFCQSALLEYDDTQGVINIMYMHDSDDVLFALDPYNEVVVSSPRTHYLMLLKNGTVLEVTDVVVDATDSRと少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性またはさらには100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0072】
好ましい実施形態においてgHポリペプチドは、配列番号2と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0073】
HCMV糖タンパク質L(gL)は、UL115遺伝子によってコードされる。gLは、ウイルス複製に不可欠であると考えられており、gLの全ての既知の機能的特性はgHとの二量体化と直接関連がある。gL/gH複合体は、宿主細胞へのウイルスの侵入につながるウイルス膜および細胞膜の融合に必要とされる。
【0074】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載された五量体複合体のgLポリペプチドは、配列番号3と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に、gL抗原は、配列番号3:
AAVSVAPTAAEKVPAECPELTRRCLLGEVFQGDKYESWLRPLVNVTGRDGPLSQLIRYRPVTPEAANSVLLDEAFLDTLALLYNNPDQLRALLTLLSSDTAPRWMTVMRGYSECGDGSPAVYTCVDDLCRGYDLTRLSYERSIFTEHVLGFELVPPSLFNVVVAIRNEATRTNRAVRLPVSTAAAPEGITLFYGLYNAVKEFCLRHQLDPPLLRHLDKYYAGLPPELKQTRVNLPAHSRYGPQAVDARと少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性またはさらには100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0075】
好ましい実施形態においてgLポリペプチドは、配列番号3と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0076】
一実施形態によれば、本明細書に記載された五量体複合体のUL128ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に、UL128抗原は、配列番号4:
EECCEFINVNHPPERCYDFKMCNRFTVALRCPDGEVCYSPEKTAEIRGIVTTMTHSLTRQVVHNKLTSCNYNPLYLEADGRIRCGKVNDKAQYLLGAAGSVPYRWINLEYDKITRIVGLDQYLESVKKHKRLDVCRAKMGYMLQと少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性またはさらには100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
好ましい実施形態においてUL128ポリペプチドは、配列番号4と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0078】
UL130は、UL131A~128遺伝子座の中心および最大の(214コドン)遺伝子である。遺伝子の概念上の翻訳は、推定ケモカインドメイン(アミノ酸46~120)内の2つの潜在的N結合グリコシル化部位(Asn85およびAsn118)を含有する親水性タンパク質の前にある長い(25個のアミノ酸)N末端シグナル配列、および固有のC末端領域の末端近くのさらなるNグリコシル化部位(Asn201)を予測する。UL130は、TMドメインを欠いていると予測される。
【0079】
UL130は、感染細胞から非効率的に分泌されるが、ゴルジ成熟型としてビリオンエンベロープに取り込まれる内腔糖タンパク質であると報告されている(Patroneら:「Human Cytomegalovirus UL130 Protein Promotes Endothelial Cell Infection through a Producer Cell Modification of the Vi
rion.」、Journal of Virology79(2005):8361~8373頁)。
【0080】
一実施形態によれば、本明細書に記載された五量体複合体のUL130ポリペプチドは、配列番号5と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に、UL130抗原は、配列番号5:
SPWSTLTANQNPSPLWSKLTYSKPHDAATFYCPFIYPSPPRSPLQFSGFQRVLTGPECRNETLYLLYNREGQTLVERSSTWVKKVIWYLSGRNQTILQRMPRTASKPSDGNVQISVEDAKIFGAHMVPKQTKLLRFVVNDGTRYQMCVMKLESWAHVFRDYSVSFQVRLTFTEANNQTYTFCTHPNLIVと少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性またはさらには100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0081】
好ましい実施形態においてUL130ポリペプチドは、配列番号5と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0082】
UL131Aとも呼ばれるUL131の機能は、内皮細胞だけでなく上皮細胞においてもHCMV複製に必要とされる。一実施形態によれば、本明細書に記載された五量体複合体のUL131Aポリペプチドは、配列番号6と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に、UL131A抗原は、配列番号6:
QCQRETAEKNDYYRVPHYWDACSRALPDQTRYKYVEQLVDLTLNYHYDASHGLDNFDVLKRINVTEVSLLISDFRRQNRRGGTNKRTTFNAAGSLAPHARSLEFSVRLFANと少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性またはさらには100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0083】
好ましい実施形態においてUL131ポリペプチドは、配列番号6と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
配列番号2~6は、株BE/28/2011(Genbank ID KP745669、Kremkowら、2015)由来である。
【0084】
本発明の免疫原性組成物の五量体複合抗原部分において、gH、gLおよびUL128はジスルフィド結合を介して連結されるが、UL130およびUL131Aは非共有結合的相互作用によって五量体複合体に取り込まれる。例えば、UL130タンパク質および/またはUL131Aタンパク質は、非共有結合的相互作用によって五量体複合体に取り込まれる。さらに、UL130タンパク質および/またはUL131Aタンパク質は、非共有結合的相互作用によって連結される。
【0085】
五量体複合体のための一連の立体構造エピトープが知られている。例えば、Macagno(Macagnoら:「Isolation of human monoclonal antibodies that potently neutralize humancytomegalovirus infection by targeting different epitopes on the gH/gL/UL128-131 complex.」、Journal of Virology84(2010):1005~13頁)は、内皮、上皮、および骨髄細胞のHCMV感染を中和するヒトモノクローナル抗体のパネルを単離した。1つの実施形態において、本発明の免疫原性組成物の五量体複合抗原部分は、Macagno(2010)によって同定された1つま
たはそれ以上の立体構造エピトープを有する。
【0086】
五量体複合抗原の各タンパク質は、挿入、欠失および置換などの変異が、抗原としてのタンパク質の使用にとって有害にならない限り、これらの変異を含有してもよい。さらに、そのような変異は、本発明による五量体複合体を形成するタンパク質の能力を妨げるべきではない。本発明の五量体複合体を形成する能力は、タンパク質精製を行うこと、ならびに非還元PAGE、ウエスタンブロットおよび/またはサイズ排除クロマトグラフィーによってタンパク質を分析することにより試験することができる。該タンパク質が複合体の一部を形成するならば、該タンパク質は全て非変性PAGEゲルの単一のバンドに存在し得、および/またはサイズ排除クロマトグラムで単一のピークに存在し得る。
【0087】
前記五量体複合体の発現は、当業者に公知の方法に従って実現することができる。例えばHofmannら(Biotechnology and Bioengineering、2015)に記載された方法に言及することができる。
【0088】
本発明の文脈において使用するための適切な発現系は当業者に周知であり、多くはDoyle(Doyle編 High Throughput Protein Expression and Purification:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology).Humana Press、2008)に詳細に記載されている。一般に、必要とされた宿主においてポリペプチドを産生する核酸分子を維持、増殖および発現するのに適した任意の系またはベクターを使用することができる。適当なヌクレオチド配列は、例えば、Sambrook(Sambrook、J.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第3版 Cold Spring Harbor Laboratory Press、2000)に記載された手法などの様々な周知のおよび日常的な手法のいずれかによって発現系に挿入することができる。一般に、コード遺伝子は、所望のペプチドをコードするDNA配列が形質転換された宿主細胞でRNAに転写されるように、プロモーター、および場合により、オペレーターなどの制御エレメントの制御下に置かれる。適切な発現系の例には、例えば以下に由来するベクター:細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス(バキュロウイルス(例えば特許出願WO2015170287に記載された)、パポーバウイルス(例えばSV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスなど)、またはそれらの組合せ、例えば、コスミドおよびファージミドを含む、プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝エレメントに由来するものを含む、例えば染色体系、エピソーム系およびウイルス由来系が挙げられる。ヒト人工染色体(HAC)もまた、プラスミドで含有および発現されるより大きなDNA断片を送達するのに使用することができる。
【0089】
HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原の5つの異なる組換えタンパク質を同時におよび等モル状態で発現するためには、いくつかの可能性がある。本発明の免疫原性組成物のHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原部分に関する第1の可能性(1)は、同じまたは類似の調節エレメント(プロモーター、エンハンサー、スプライスシグナル、終結シグナル・・・)の制御下の5つのORF全て、および場合により細胞株選択のための選択系を含有する単一のベクターを構築することである。ベクターは5つの発現カセット(例えば、Albersら、J.Clin.Invest.、2015、125(4):1603~1619頁;またはCheshenkoら、Gene Ther.、2001、8(11):846~854頁に記載の)を含有してもよく、または5つの成分(gH、gL、UL128、UL130およびUL131)は、HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原の5つのタンパク質へと適切なポリタンパク質成熟の引き金を引
くエレメントと単一のORFで融合される(例えば、Szymczak-Workmanら、Cold Spring Harb.Protoc.、2012、2012(2):199~204頁に記載の自己切断配列)。その第2のケースでは、全ての切断が正しく生じると仮定して等モル性が保証されている。本発明の免疫原性組成物のHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原部分に関する別の可能性(2)は、HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原の1つの成分、および場合により細胞株選択のための選択系を各々が発現する5つのベクターを構築することである。5つのベクターは、標的細胞株に同時トランスフェクトされる。可能性(1)から可能性(2)の間の任意の中間系もまた、必要とされるベクターの数を最小化し、各ベクターを妥当なサイズ(例えば12kb未満)に維持するために設計される。
【0090】
適切な発現系には、微生物、例えば、組換えバクテリオファージ、プラスミドもしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス(例えば特許出願WO2015170287に記載された))で感染させたもしくは形質転換された昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)もしくは細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系;または動物細胞系が挙げられる。無細胞翻訳系もまた、タンパク質を産生するのに使用することができる。
【0091】
適切な植物細胞遺伝子発現系の例には、米国特許第5,693,506号;米国特許第5,659,122号;米国特許第5,608,143号、およびZenk(1991):「Chasing the enzymes of secondary metabolism: Plant cell cultures as a pot of goal.」Phytochemistry、30(12)、3861~3863頁。Zess NaukUMK Tornu、13:253~256頁に記載されたものが挙げられる。特に、導入遺伝子を含有する全植物が回収されるように、プロトプラストが単離および培養されて全再生植物をもたらす全ての植物が使用される。実際には、サトウキビ、テンサイ、綿、果樹および他の樹木、マメ科植物ならびに野菜の全ての主要な種を含むがこれらに限定されない全ての植物が、培養細胞または組織から再生される。
【0092】
HEK293細胞は、リン酸カルシウムおよびポリエチレンイミン(PEI)方法を含む様々な手法による高いトランスフェクション能力のために、本発明による五量体複合体のHCMVタンパク質の一過性発現に適している。HEK293の有用な細胞株は、EBVのEBNA1タンパク質を発現するもの、例えば293-6Eである(Loignonら:「Stable high volumetric production of glycosylated human recombinant IFNalpha2b in HEK293 cells.」、BMC Biotechnology8(2008):65頁)。形質転換されたHEK293細胞は、高レベルのタンパク質を増殖培地に分泌し、故に増殖培地から直接そのようなタンパク質複合体を精製できるようにすることが示されている。
【0093】
CHO細胞は、HCMVタンパク質の工業生産、および特に本発明による免疫原性組成物のHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原部分の工業生産に特に適切な哺乳動物宿主である。
【0094】
トランスフェクションは、リン酸カルシウム、電気穿孔の使用を含む当技術分野で周知の一連の方法によって、または細胞膜と融合し、積み荷を内側に堆積させるリポソームを生産するための材料とカチオン性脂質を混合することによって実行することができる。
【0095】
細胞上清または封入体から組換えタンパク質を精製するための方法は、当技術分野で周知である。特に、本発明による免疫原性組成物のHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原部分は、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製することができる。
【0096】
特に、本発明による免疫原性組成物は、HCMVウイルスを含まない。
特に、本発明による免疫原性組成物は、HCMV gBおよびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合体が唯一のHCMV抗原である、本明細書に記載の免疫原性組成物である。
【0097】
Th1誘導アジュバント
「アジュバント」は本明細書で使用される場合、当業者に一般に公知の意味を有する。特に、アジュバントは、抗原の免疫原性を調節する薬剤または物質を指す。「免疫原性を調節する」は、抗原によって生成される免疫応答の規模および/または期間を増強することを含む。より具体的にはアジュバントは、抗原の存在下でアジュバントが誘導する免疫応答のタイプに従って分類することもできる。本発明による免疫原性組成物において使用することができるアジュバントは、Th1誘導アジュバントである。
【0098】
「Th1誘導」アジュバントは、抗原または抗原の組合せに対するTh1応答を増強するアジュバントとして定義することができる。
【0099】
免疫応答は、体液性または細胞媒介性免疫応答(伝統的に、それぞれ抗体および細胞性エフェクター防御機構によって特徴付けられる)の2つの極端なカテゴリーに大別することができる。これらのカテゴリーの応答は、Th1型応答(細胞媒介性応答)、およびTh2型免疫応答(体液性応答)と呼ばれている。マウスでは、Th1型応答は、IgG2aまたはIgG2cサブタイプ(マウス株に応じて)の抗体の生成によってしばしば特徴付けられが、ヒトでは、これらはIgG1およびIgG3型抗体に対応し得る。Th2型免疫応答は、マウスのIgG1、IgA、およびIgMを含む広範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成によって特徴付けられる。Th1型およびTh2型免疫応答はまた、サイトカイン分泌の異なるパターンによっても特徴付けられる(Mosmannら、Annual Review of Immunology、1989、7:145~173頁;Constantら、Annual Review of Immunology、1997、15:297~322頁)。Th1型免疫応答は、Tリンパ球によるIFN-γおよび/またはIL-2サイトカインの産生増加を伴うが、Th-2型免疫応答は、IL-4、IL-5、IL-6、IL-13、および/またはIL-10サイトカインの産生増加を伴う。Th1およびTh2型免疫応答の区別は絶対的でない。実際には、対象は、Th1優位またはTh2優位と言い表される免疫応答を支持することになる。伝統的に、ワクチン接種または感染後の免疫応答のTh1:Th2バランスの最良の指標には、抗原で刺激したときのインビトロでのTリンパ球によるTh1もしくはTh2サイトカイン産生の直接測定、および/または抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a、c比の測定(少なくともマウスにおいて)が挙げられる。
【0100】
また、本発明による免疫原性組成物の態様において、免疫応答をTh1型優位に誘導するアジュバントは、Th1誘導アジュバントとみなされる。優先的には、本発明による免疫原性組成物において使用することができるアジュバントは、免疫応答をTh1型優位に誘導する。
【0101】
以前に述べたように、これは、マウスにおけるIgG1:IgG2a、c比の測定によって決定することができる。INF-γの増加は、優位なTh1応答のさらなる指標であ
る。好ましくは、IL-5の産生減少も観察される。
【0102】
好ましくは、HCMV gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む本発明による免疫原性組成物において使用することができるTh1誘導アジュバントは、同じHCMV gB抗原および同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む組成物中のMF59より多くのTh1偏向応答プロファイルを誘導する。
【0103】
MF59は、特許出願WO90/14837、米国特許第6,299,884号および6,451,325号、ならびにOttら、「MF59--Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines」in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.およびNewman,M.J.編)Plenum Press、New York、1995、277~296頁)に記載されたスクアレンベースの水中油型エマルジョンである。
【0104】
特に、HCMV gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む本発明による免疫原性組成物において使用することができるTh1誘導アジュバントは、同じHCMV gB抗原および同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む組成物中のMF59より低いIgG1:IgG2a、c比をマウスにおいて誘導する。
【0105】
より具体的には、HCMV gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む本発明による免疫原性組成物において使用することができるTh1誘導アジュバントは、同じHCMV gB抗原および同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む組成物中のMF59より高いINF-γレベルをマウスにおいて誘導する。
【0106】
さらにより具体的には、HCMV gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む本発明による免疫原性組成物において使用することができるTh1誘導アジュバントは、同じHCMV gB抗原および同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む組成物中のMF59より低いIL-5レベルをマウスにおいて誘導する。
【0107】
さらにより具体的には、HCMV gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む本発明による免疫原性組成物において使用することができるTh1誘導アジュバントは、同じHCMV gB抗原および同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む組成物中のMF59より、低いIgG1:IgG2a、c比および高いINF-γレベルをマウスにおいて誘導する。
【0108】
特に、HCMV gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む本発明による免疫原性組成物において使用することができるTh1誘導アジュバントは、同じHCMV gB抗原および同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む組成物中のMF59より、低いIgG1:IgG2a、c比および低いIL-5レベルをマウスにおいて誘導する。
【0109】
より具体的には、HCMV gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む本発明による免疫原性組成物において使用する
ことができるTh1誘導アジュバントは、同じHCMV gB抗原および同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む組成物中のMF59より、低いIgG1:IgG2a、c比、高いINF-γレベルおよび低いIL-5レベルをマウスにおいて誘導する。
【0110】
特に、本発明による免疫原性組成物は:
- HCMV gB抗原;
- HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原;および
- Th1誘導アジュバント
を含み、前記Th1誘導アジュバントが、同じHCMV gB抗原および同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む組成物中のMF59より、低いIgG1:IgG2a、c比、および/または高いINF-γレベル、および/または低いIL-5レベルをマウスにおいて誘導する、免疫原性組成物である。
【0111】
特に、本発明によるTh1誘導アジュバントは:
- TLR-4アゴニスト;または
- 350~650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有する直鎖または分枝鎖ポリアクリル酸ポリマー塩
を含む。
【0112】
特に、本発明による免疫原性組成物は:
- HCMV gB抗原;
- HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原;および
- Th1誘導アジュバント
を含み、前記Th1誘導アジュバントが:
- リポ多糖、モノホスホリルリピドA(MPL)、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)、グルコピラノシル脂質アジュバント(GLA)、第二世代の脂質アジュバント(SLA)、非炭水化物骨格およびアミノアルキルグルコサミニドホスフェートによって連結されたリン脂質二量体、もしくはそれらの誘導体からなる群から選択されるTLR-4アゴニスト;または
- 350~650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有するポリアクリル酸ポリマー塩
を含む、免疫原性組成物である。
【0113】
1つの実施形態において、前記Th1誘導アジュバントはTLR-4アゴニストを含む。
【0114】
TLR(toll様受容体)アゴニストは、天然のTLRリガンド、TLRリガンド模倣物、合成または化学的TLRリガンド、病原体関連分子パターンを含む細胞または粒子、微生物病原体、細菌、ウイルスおよびウイルス様粒子を意味すると理解される。
【0115】
TLR4(4型toll様受容体)は、免疫系の抗原提示細胞によって発現される受容体である;TLR4は、グラム細菌感染に対する初期防御機構に関与する。グラム細菌のリポ多糖(LPS)は、TLR4の天然のリガンドである;TLR4は受容体を活性化し、生化学的事象のカスケード、特にNf-カッパB転写因子の活性化、および炎症促進性サイトカインの産生の引き金を引く。TLR4経路を刺激する化合物の能力は、例えばJournal of Biological Chemistry、(2001)、276巻(3)、1873~1880頁に記載されているような当業者に公知の方法によって
評価することができる。
【0116】
TLR4アゴニストの例には、モノホスホリルリピドA(MPL)、またはその誘導体、特に、GB2211502もしくはUS4912094に記載の3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)、またはその誘導体、グルコピラノシル脂質アジュバントもしくはGLAとも呼ばれるリン酸化ヘキサアシル二糖(Phosphorylated hexaacyl disaccharide)(CAS番号1246298-63-4)またはその誘導体、第二世代の脂質アジュバント(SLA)(例えば、Carterら、Clin.Transl.Immunology、2016、5(11):e108頁またはEP2437753またはUS9480740に記載された)、またはその誘導体、WO98/50399もしくはWO01/034617に記載のアミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、またはその誘導体、特に、US6,113,918に記載されたRC529、またはその誘導体、ならびにUS2003/0153532もしくはUS2005/0164988に記載の非炭水化物骨格によって連結された化学的化合物もしくはリン脂質二量体(ホモ二量体またはヘテロ二量体)、またはその誘導体、特に、以下の名称:ER803022(CAS番号:287180-56-7)、ER803058(CAS番号:287180-57-8)、ER803732(CAS番号:287106-29-0)、ER803789(CAS番号:287180-61-4)、ER804053(CAS番号:287180-62-5)、ER804057(CAS番号:287180-63-6)、ER804058(CAS番号:287180-65-8)、ER804059(CAS番号:287180-64-7)、ER8044442(CAS番号:287180-78-3)、ER804764(CAS番号:287180-87-4)、ER111232(CAS番号:287180-48-7)、ER112022(CAS番号:287180-46-5)、ER112048(CAS番号:287106-02-9)、ER112065(CAS番号:287180-49-8)、ER112066(CAS番号:287180-50-1)、ER113651(CAS番号:287180-51-2)、ER118989(CAS番号:287180-52-3)、ER119327(CAS番号:287180-54-5)およびER119328(CAS番号:287180-55-6)の下、US2003/0153532に同定および例示された化合物、またはその誘導体が挙げられる。これらの化合物は、1つまたはいくつかの不斉炭素を概ね有する。これらの化合物が1つまたはいくつかの不斉炭素を有するとき、化合物は、光学異性体の混合物としてまたは特異的異性体の形態で使用することができる。
【0117】
特に、前記TLR-4アゴニストは、非炭水化物骨格によって連結されたリン脂質二量体およびGLA TLR-4アゴニストから選択される。
【0118】
特に、TLR4アゴニストは、非炭水化物骨格によって連結されたリン脂質二量体である。
【0119】
特に、TLR4アゴニストは、式I、II、IIIまたはIVの非炭水化物骨格によって連結された化学的化合物またはリン脂質二量体:
式Iの非炭水化物骨格によって連結された化合物またはリン脂質二量体
【化1】
【0120】
式IIの非炭水化物骨格によって連結された化合物またはリン脂質二量体
【化2】
【0121】
式IIIの非炭水化物骨格によって連結された化合物またはリン脂質二量体
【化3】
【0122】
式IVの非炭水化物骨格によって連結された化合物またはリン脂質二量体
【化4】
(式中、式I、II、IIIまたはIVの各々に関して、R1は:
a)C(O);
b)C(O)-(C
1~C
14アルキル)-C(O)、ここで、前記C
1~C
14アルキルは、ヒドロキシル、C
1~C
5アルコキシ、C
1~C
5アルキレンジオキシ、(C
1~C
5アルキル)アミノまたは(C
1~C
5アルキル)アリールと場合により置換され、ここで、前記(C
1~C
5アルキル)アリールの前記アリール部分は、C
1~C
5アルコキシ、(C
1~C
5アルキル)アミノ、(C
1~C
5アルコキシ)アミノ、(C
1~C
5アルキル)アミノ(C
1~C
5アルコキシ)、-O-(C
1~C
5アルキル)アミノ(C
1~C
5アルコキシ)、-O-(C
1~C
5アルキル)アミノ-C(O)-(C
1~C
5アルキル)-C(O)OH、または-O-(C
1~C
5アルキル)アミノ-C(O)-(C
1~C
5アルキル)-C(O)-(C
1~C
5)アルキルと場合により置換されている;c)ヒドロキシルまたはアルコキシと場合により置換されたC
2~C
15直鎖または分枝鎖を含むアルキル;および
d)-C(O)-(C
6-C
12アリーレン)-C(O)-、ここで、前記アリーレンは、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロまたはアミノと場合により置換されている;
からなる群から選択され、
aおよびbは、独立に0、1、2、3または4であり;
d、d’、d’’、e、e’およびe’’は、独立に0、1、2、3または4であり;
X
1、X
2、Y
1およびY
2は、空値、酸素、NHおよびN(C(O)(C
1~C
14アルキル))、およびN(C
1~C
14アルキル)からなる群から独立に選択され;
W
1およびW
2は、カルボニル、メチレン、スルホンおよびスルホキシドからなる群から独立に選択され;
R
2およびR
5は:
a)オキソ、ヒドロキシルまたはアルコキシと場合により置換されている、C
2~C
20直鎖または分枝鎖アルキル;
b)オキソ、ヒドロキシルまたはアルコキシと場合により置換されている、C
2~C
20直鎖または分枝鎖アルケニルまたはジアルケニル、;
c)オキソ、ヒドロキシルまたはアルコキシと場合により置換されている、C
2~C
20直鎖または分枝鎖アルコキシ;
d)NH-(C
2~C
20直鎖または分枝鎖アルキル)、ここで、前記アルキル群は、オキソ、ヒドロキシまたはアルコキシと場合により置換されている;および
e)
【化5】
(式中、Zは、OおよびNHからなる群から選択され、ならびにMおよびNは、C
2~C
20直鎖または分枝鎖を含むアルキル、アルケニル、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルアミノおよびアシルアミノからなる群から独立に選択される)からなる群から独立に選択され;
R
3およびR
6は、オキソまたはフルオロと場合により置換された、C
2~C
20直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルケニルからなる群から独立に選択され;
R
4およびR
7は、C(O)-(C
2~C
20直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルケニル)、C
2~C
20直鎖または分枝鎖アルキル、C
2~C
20直鎖または分枝鎖アルコキ
シ、およびC
2~C
20直鎖または分枝鎖アルケニルからなる群から独立に選択され;ここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルコキシ群は、ヒドロキシル、フルオロまたはC
1~C
5アルコキシと独立におよび場合により置換されている;
G
1、G
2、G
3およびG
4は、酸素、メチレン、アミノ、チオール、-C(O)NH-、-NHC(O)-、および-N(C(O)(C
1~C
4アルキル))-からなる群から独立に選択され;
またはG
2R
4もしくはG
4R
7は、一緒に水素原子またはヒドロキシルであってもよく;
ならびにここで、式IIIに関して:
a’およびb’は、独立に2、3、4、5、6、7または8、好ましくは2であり;
Z
1は、-OP(O)(OH)
2、-P(O)(OH)
2、-OP(O)(OR
8)(OH)からなる群から選択され、ここで、R
8は、C
1~C
4アルキル鎖、-OS(O)
2OH、-S(O)
2OH、-CO
2H、-OB(OH)
2、-OH、-CH
3、-NH
2および-NR
9
3であり、ここで、R
9はC
1~C
4アルキル鎖である;
Z
2は、-OP(O)(OH)
2、-P(O)(OH)
2、-OP(O)(OR
10)(OH)からなる群から選択され、ここで、R
10は、C
1~C
4アルキル鎖、-OS(OH)
2OH、-S(OH)
2OH、-CO
2H、-OB(OH)
2、-OH、-CH
3、-NH
2および-NR
11であり、ここで、R
11はC
1~C
4アルキル鎖である;
ならびに式中、式IVに関して:
R
12は、HもしくはC
1~C
4アルキル鎖である);
または式I、II、IIIまたはIVの非炭水化物骨格によって連結された化合物またはリン脂質二量体の薬学的に許容される塩である。
【0123】
特に、本発明によるTLR4アゴニストは、式I
【化6】
の非炭水化物骨格によって連結された化学的化合物もしくはリン脂質二量体、
または非炭水化物骨格によって連結されたこの化合物もしくはリン脂質二量体の薬学的に許容される塩である。
【0124】
好ましくは、
R
1は、C(O)またはC(O)-(CH2)n-C(O)であり(nは1、2、3または4)、
a、b、d、d’、d’’、e、e’およびe’’は独立に1または2であり、
X1、X2、Y1およびY2はNHであり、
W1およびW2はC(O)であり、
R
2およびR
5は、オキソと場合により置換されたC
10~C
15直鎖アルキル、NH-(C
10~C
15直鎖アルキル)、および
【化7】
(式中、MおよびNは、独立にC2~C20直鎖アルキルまたはアルケニルである)からなる群から独立に選択され、
R3およびR6は、C5~C10直鎖アルキルであり、
R4およびR7は、水素、C(O)-(C8~C12直鎖アルキル)またはC(O)(C8 C12直鎖アルケニル)からなる群から選択され、
G1およびG3は、酸素または-NH(CO)-であり、
G2およびG4は酸素である。
【0125】
特に、本発明によるTLR4アゴニストは、非炭水化物骨格によって連結された対称リン脂質二量体(ホモ二量体)である。より具体的には、非炭水化物骨格によって連結された対称リン脂質二量体は、トリアシルリン脂質(triacyl phospholipid)の二量体である。より具体的には、前記TLR-4アゴニストは、E6020(CAS番号:287180-63-6)である。
【0126】
特に、前記TLR-4アゴニストは、GLA(CAS番号1246298-63-4)である。
【0127】
これらのTLR4アゴニストは、これらをリン酸カルシウム、リポソーム、ビロソーム、ISCOM、マイクロ粒子およびナノ粒子、またはエマルジョンなどの送達系と組み合わせることもできる。
【0128】
そのため、特に、本発明によるTLR4アゴニストは、水性ナノ懸濁液、リン酸カルシウム、リポソーム、ビロソーム、ISCOM、マイクロ粒子およびナノ粒子、またはエマルジョンなどの送達系との組合せである。
【0129】
そのような送達系は以前に記載されており、当業者に周知である。
【0130】
特に、前記TLR-4アゴニストは、E6020(CAS番号:287180-63-
6)およびGLA(CAS番号1246298-63-4)TLR-4アゴニストから選択される。
【0131】
送達系と組み合わされるTLR4アゴニストの適切な製剤の例として、以下の化学式:
【化8】
を有する化合物の二ナトリウム塩である、化合物ER804057(現在はE6020と呼ばれる)(CAS番号:287180-63-6)をTLR4アゴニストとして含む水中油型エマルジョンを引用することができる。
【0132】
E6020の4個の不斉炭素は、全てR配置(R,R,R,R)である。そのようなエマルジョンは、例えばWO2004/060396に記載の顕微溶液化法、またはWO2007/080308に記載の転相温度プロセス(PITプロセス)によって得ることができる。
【0133】
そのため、特に、本発明によるTLR4アゴニストは、水中油型エマルジョン、より具体的には、スクアレンベースの水中油型エマルジョンとの組合せである。
【0134】
本発明の目的に適した水中油型エマルジョンは、代謝性油(油の容量がエマルジョンの総容量の0.5~20%(v/v)、特に1~10%(v/v)、およびより具体的には1~5%(v/v)に相当する)、水溶液(水溶液の容量が総容量の80~99.5%(v/v)、特に90~99%(v/v)に相当する)および1つまたはいくつかの乳化剤(乳化剤の総量がエマルジョンの総量の0.001~5%(w/w)、特に0.001~2%(w/w)、およびより具体的には0.01~2%(w/w)に相当する)を含む。代謝性油は一般に、アルカン、アルケン、アルキン、ならびにそれらの対応する酸およびアルコール、そのエーテルおよびエステル、およびその混合物を含むがこれらに限定されない、約6個~約30個の炭素原子を有するものである。油は、エマルジョン組成物が投与されるヒト対象の身体によって代謝され、対象にとって実質的に毒性がない、本質的に任意の植物油、魚油、動物油または合成的に製造された油であってもよい。代謝性油は、20~40個の炭素を有する不飽和炭化水素、または20~40個の炭素原子を有する分枝鎖多価不飽和炭化水素、例えば、テルペノイドであてもよい。スクアレン、2,6,1
0,15,19,23-ヘキサメチル-2,6,10,14,18,22-テトラコサヘキサエンとして知られる不飽和テルペノイド、およびその飽和類似体、スクアランがしばしば好ましい。スクアレンおよびスクアランを含む魚油は、商業的供給源から容易に入手可能であり、または当技術分野で公知の方法によって得ることができる。一般に使用される別の油はトコフェロールである。組成物がトコフェロールを含む場合、α、β、γ、δ、εまたはξトコフェロールのいずれかが使用されるが、α-トコフェロールが好ましい。相当な数の適切な乳化剤(表面活性物質、界面活性剤等とも呼ばれる)が薬学で使用され、その多くは、十分に非毒性である限り本発明のエマルジョンの組成物において有用である。生物学的状況用に特異的に設計され、および生物学的状況で一般に使用される数多くの乳化剤がある。例えば、数多くの生物学的界面活性剤(表面活性物質)がそのためSigma Chemicalによってリストされている。そのような表面活性物質は、4つの基本タイプ:アニオン性、カチオン性、双性イオン性、および非イオン性に分けられる。
【0135】
アニオン性界面活性剤の例には、アルギン酸、カプリル酸、コール酸、1-デカンスルホン酸、デオキシコール酸、1-ドデカンスルホン酸、N-ラウロイルサルコシン、およびタウロコール酸が挙げられる。
【0136】
カチオン性界面活性剤には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化メチルベンゼトニウム、および4-ピコリンドデシルスルフェートが挙げられる。
【0137】
双性イオン性界面活性剤の例には、3-[(3-コールアミドプロピル)-ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(一般にCHAPSと略される)、3-[(コールアミドプロピル)ジメチオアンモニオ-2-ヒドロキシ-l-プロパンスルホネート(一般にCHAPSOと略される)、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、ホスファチジルコリンおよびリゾ-アルファ-ホスファチジルコリンが挙げられる。
【0138】
非イオン性界面活性剤の例には、デカノイル-N-メチルグルカミド、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、n-ドデシル ベータ-D-グルコピラノシド、ポロキサマー、脂肪アルコールのエチレンオキシド縮合物(例えば、商品名Lubrolで販売されているもの)、脂肪酸のポリオキシエチレンエーテル(特にC12~C20脂肪酸)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、商品名Tween(登録商標)で販売されている)、およびソルビタン脂肪酸エステル(例えば、商品名Span(登録商標)で販売されている)が挙げられる。
【0139】
特に有用な表面活性物質群は、ソルビタンベースの非イオン性表面活性物質である。これらの表面活性物質は、ソルビトールを脱水して1,4-ソルビタンを得、次いでこれが1またはそれ以上の当量の脂肪酸と反応されることによって典型的には製造される。脂肪酸置換部分は、エチレンオキシドとさらに反応されて第2の表面活性物質群を得ることができる。
【0140】
脂肪酸置換ソルビタン表面活性物質は、1,4-ソルビタンを、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、または類似の長鎖脂肪酸などの脂肪酸と反応させて1,4-ソルビタンモノエステル、1,4-ソルビタンセスキエステルまたは1,4-ソルビタントリエステルを得ることによって典型的には作られる。これらの表面活性物質のいくつかに関する一般名には、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、およびソルビタントリオレエートが挙げられる。これらの表面活性物質は、S
PAN(登録商標)またはARLACEL(登録商標)という名称で市販されている。SPAN(登録商標)およびARLACEL(登録商標)表面活性物質は親油性であり、一般に油に可溶性または分散性である。これらはまた、ほとんどの有機溶媒に可溶性である。これらは水には一般に不溶性であるが、分散性である。一般にこれらの表面活性物質は、1.8~8.6の間の親水性-親油性バランス(HLB)数を有する。そのような表面活性物質は、当技術分野で公知の手段によって容易に作ることができ、または市販されている。
【0141】
関連する表面活性物質群は、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステルおよびポリオキシエチレンソルビタントリエステルを含む。これらの材料は、典型的には、エチレンオキシドを1,4-ソルビタンモノエステルまたはトリエステルに付加して製造される。ポリオキシエチレンの付加は、親油性ソルビタンモノエステルまたはトリエステル表面活性物質を、水には一般に可溶性または分散性であり、有機液体には様々な程度に可溶性である親水性表面活性物質に変換する。TWEEN(登録商標)表面活性物質は、エマルジョン安定性を促進するために、例えば、関連するソルビタンモノエステルまたはトリエステル表面活性物質と組み合わせることができる。TWEEN(登録商標)表面活性物質は一般に、9.6~16.7の間にあるHLB値を有する。TWEEN(登録商標)表面活性物質は、数多くの製造業者、例えばICI America’s Inc.、ウィルミントン、デラウエアから、登録商標ATLAS(登録商標)表面活性物質で市販されている。
【0142】
単独で、またはSPAN(登録商標)、ARLACEL(登録商標)および/またはTWEEN(登録商標)表面活性物質と併用して使用することができる別の非イオン性表面活性物質群は、エチレンオキシドと長鎖脂肪酸との反応によって作られるポリオキシエチレン脂肪酸である。このタイプの最も一般的に利用可能な表面活性物質は、MYRJ(登録商標)という名称で販売されており、ステアリン酸のポリオキシエチレン誘導体である。MYRJ(登録商標)表面活性物質は、TWEEN(登録商標)表面活性物質と同じように親水性で、水に可溶性または分散性である。MYRJ(登録商標)表面活性物質は、エマルジョンの形成において使用するために、例えば、TWEEN(登録商標)表面活性物質、またはTWEEN(登録商標)/SPAN(登録商標)もしくはARLACEL(登録商標)表面活性物質混合物とブレンドしてもよい。MYRJ(登録商標)表面活性物質は、当技術分野で公知の方法によって作ることができ、またはICI America’s Inc.から市販されている。
【0143】
ポリオキシエチレンベースの非イオン性表面活性物質の別の群は、ラウリル、アセチル、ステアリルおよびオレイルアルコールから得られるポリオキシエチレン脂肪酸エーテルである。これらの材料は、典型的には、エチレンオキシドを脂肪アルコールに付加して上記のように製造される。これらの表面活性物質の商品名は、BRIJ(登録商標)である;BRIJ(登録商標)表面活性物質は、表面活性物質のポリオキシエチレン部分のサイズに応じて親水性または親油性であり得る。これらの化合物の製造は当技術分野から利用可能であるが、これらの化合物はまた、ICI America’s Inc.などの商業的供給源から容易に入手可能である。
【0144】
本発明の実践において使用することができる他の非イオン性表面活性物質は、例えば:ポリオキシエチレン、ポリオール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシプロピレン脂肪エーテル、ポリオキシエチレンを含有する蜜蝋誘導体、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪グリセリド、グリセリン脂肪酸エステルまたは他のポリオキシエチレン酸アルコールもしくは12~22炭素原子の長鎖脂肪酸のエーテル誘導体である。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、セテアレス-12(Eumulgin(登録商標)B1という名称で販売されている)、セテアレ
ス-20(Eumulgin(登録商標)B2)、ステアレス-21(Eumulgin(登録商標)S21)、セテス-20(Simulsol(登録商標)58またはBrij(登録商標)58)、セテス-10(Brij(登録商標)56)、ステアレス-10(Brij(登録商標)76)、ステアレス-20(Brij(登録商標)78)、オレス-10(Brij(登録商標)96またはBrij(登録商標)97)およびオレス-20(Brij(登録商標)98またはBrij(登録商標)99)からなる群から選択される。各化学名に帰する数は、化学式のエチレンオキシド単位の数に対応する。特定の態様において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、Eumulgin(商標)B1という名称でCognis社によって提供されているBRIJ(登録商標)56またはポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテルである。9未満のHLBを有する特に適切なソルビタンエステルおよびマンニドエステルベースの表面活性物質の中でも、Dehymuls SMOTMまたはSpan(登録商標)80という名称で販売されているソルビタンモノオレエートを挙げることができる。マンニドエステルベースの表面活性物質の中でも、Sigma社、またはMontanide80(商標)の名称でSeppic社によって販売されているマンニドモノオレエートを挙げることができる。
【0145】
本発明の組成物のエマルジョン部分で、2つ以上の表面活性物質を組み合わせることができる。
【0146】
本発明の組成物のO/Wエマルジョン部分の水溶液は、緩衝食塩水または純水である。本発明の組成物は非経口投与が意図されるため、組成物と生理学的流体の間のイオン濃度の差分による組成物の投与後の膨張または急速な吸収を防ぐために、ワクチンとして使用される最終緩衝溶液を、張度、すなわち、浸透圧が通常の生理学的流体と本質的に同じとなるように作ることが好ましい。通常の生理学的条件と適合するpHを維持するために、食塩水を緩衝することも好ましい。また、特定の場合では、gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原がO/Wエマルジョン中に存在するならば、これらの安定性を確実にするためにpHを特定のレベルに維持することも必要である場合がある。
【0147】
いずれの生理学的に許容される緩衝液も本明細書で使用することができるが、リン酸緩衝液が好ましい。酢酸、トリス、重炭酸、炭酸、クエン酸等などの他の許容される緩衝液が、リン酸緩衝液の代替物として使用される。水性成分のpHは、好ましくは6.0~8.0の間である。
【0148】
本発明の組成物のO/Wエマルジョン部分は、O/Wエマルジョンを製造する時点で付加し得る、またはO/Wエマルジョンが製造されたら付加し得る補足成分を含んでもよい。
【0149】
例には、WO2007/080308に記載されたプロセスに従って得られたE6020を含有するスクアレンベースの水中油型(O/W)エマルジョン、AF04を示すことができる。
【0150】
GLA(CAS番号1246298-63-4)TLR-4アゴニストは、以下の化学式:
【化9】
を有する化合物である。
【0151】
GLAは、例えばAvanti Polarのカタログ、参照番号699800で購入することができる(Avanti Polar Lipids Inc.、アラバスター、米国)。
【0152】
特に、GLAは、リン酸カルシウム、リポソーム、ビロソーム、ISCOM、マイクロ粒子およびナノ粒子、またはエマルジョンなどの送達系との組合せである。優先的には、GLAは、水中油型エマルジョン、より具体的には、スクアレンベースの水中油型エマルジョンとの組合せである。
【0153】
例には、GLAを含有するスクアレンベースの水中油型(O/W)エマルジョン、GLA-SQEMを示すことができる。
【0154】
以下の表1には、10%スクアレンの濃度でGLA-SQEM100mLを得るのに使用される種々の原料の量が述べられている。最終エマルジョンは、リン酸アンモニウム22.5mMにスクアレン4%(v/v)(34mg/ml)およびGLA100μg/mLを含有する。
【0155】
【0156】
油相は、槽で55~60℃の超音波処理によって製造される。次いで、水相が油相の上に添加される(秤量)。30秒、2サイクル中、Ultra Turrax T25(IKA)で9500r/分の均質化後にプレエマルジョンが得られる。次いで、顕微溶液化がEmulsiflex C3で55psiの空気圧(1450~1600barの間の均質化圧力)で20回通過中に行われる。エマルジョンは、次いで25mMアンモニウムリン酸緩衝液に2.5倍希釈されて、4%スクアレンで最終GLA-SQEMエマルジョンを得る。エマルジョンは、10mlシリンジおよびAcrodisc 0.8~0.2μm Supor Membraneフィルター(PALL n°PN4187)を用いて約40℃で滅菌濾過される。
【0157】
TLR4アゴニストを含む他の適切なアジュバントは、リポソーム製剤に3D-MPLおよびQS21を含むAS01、または水中油型エマルジョンに製剤化された3D-MPLおよびQS21を含むAS02(Garconら、Exp.Rev.of Vaccines、2007、6(5):723~739頁、EP0671948)である。
【0158】
1つの実施形態において、前記Th1誘導アジュバントは、350~650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有する直鎖または分枝鎖ポリアクリル酸ポリマー塩である。
【0159】
前記ポリマーは、直鎖または分枝鎖ポリアクリル酸ポリマーであるが、架橋ポリマーではない。
【0160】
「ポリアクリル酸ポリマー」とは、アクリル酸単位だけからなるポリマーを意味する。そのため、塩の形態では、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、アクリル酸の塩に対応する単位だけからなる、またはアクリル酸の遊離酸形態に対応する単位およびアクリル酸の塩に対応する単位だけからなる。
【0161】
直鎖または分枝鎖ポリアクリル酸ポリマーは、単量体としてのアクリル酸のみの重合に
よって得られる。重合は、ほとんどの場合、開始剤または触媒として酸化剤を使用するラジカル重合によって実行される。最も使用される酸化剤は、過硫酸塩(ペルオキシ二硫酸塩)、例えば過硫酸ナトリウムまたはカリウムである。分枝鎖ポリアクリル酸ポリマーは、例えば、Macromolecules 2011、44、5928~5936頁に記載されている。本発明によるポリマーが直鎖である場合、そのMark Houwinkの傾きは0.7より高いまたは0.7に等しい(Yan J.K.、Pei J.J.、Ma H.L.、Wang Z.B.2015.Effects of ultrasound on molecular properties,structure,chain conformation and degradation kinetics of carboxylic curdlan.Carb.Carb.Polymers.121、64~70頁)。
【0162】
ポリアクリル酸ポリマー塩は、固体形態(沈殿物または粉末)中または好ましくは液体製剤中にあってもよい。液体製剤は、ポリアクリル酸ポリマー塩および水溶液を含むことになる。好ましくは、そのような製剤は、5.5~8.0の範囲のpHを有する。このpHは、NaOHのような塩基を水溶液に取り込むことによって得ることができる。水溶液は、リン酸緩衝液、TRIS(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、Hepes(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、ヒスチジンまたはクエン酸緩衝液などの緩衝液を用いて得られる緩衝液水溶液であってもよい。液体製剤はまた、1つまたはいくつかのNaClなどの追加の塩を含んでもよい。
【0163】
特に、前記直鎖または分枝鎖ポリアクリル酸ポリマー塩は、アクリル酸の塩に対応する単位だけからなる、またはアクリル酸の遊離酸形態に対応する単位およびアクリル酸の塩に対応する単位だけからなる。
【0164】
有利には、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の総乾燥重量に対して0.005%未満、好ましくは0.001%未満(w/w)の酸化剤を含み、および/または前記ポリアクリル酸ポリマー塩の総乾燥重量に対して0.005%未満、好ましくは0.001%未満(w/w)の過硫酸塩を含む。
【0165】
より具体的な実施形態において、前記ポリアクリル酸ポリマーはNa+を用いた塩である。
【0166】
具体的な実施形態において、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は約4以下、好ましくは約2.5以下の多分散指数を有する。
【0167】
具体的な実施形態において、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、380~620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4以下の多分散指数を有する;または400~600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4以下の多分散指数を有する;または380~620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5以下の多分散指数を有する;または400~600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2以下の多分散指数を有する。
【0168】
有利には、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の総乾燥重量に対して、遊離酸形態または塩形態で0.005%w/w未満のアクリル酸単量体を含む。
【0169】
有利な実施形態によれば、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、5.5~8.0の範囲のpHを有する液体製剤液体製剤中にある。
【0170】
有利な実施形態によれば、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、特にリン酸緩衝液、またはTRIS、Hepes、ヒスチジンもしくはクエン酸緩衝液を用いた緩衝液水溶液中にある。
【0171】
有利な実施形態によれば、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、透析濾過および滅菌される。
【0172】
ポリアクリル酸ポリマー塩またはポリアクリル酸ポリマー塩の液体製剤が透析濾過される場合、透析濾過後に滅菌が生じる。
【0173】
本発明によれば、重量平均分子量Mwはサイズ排除クロマトグラフィーによって得られる。有利には、3つの検出器:右角度光散乱検出器、屈折率検出器および4キャピラリー示差粘度計が、サイズ排除クロマトグラフィーカラム後に使用される。Mwの決定に使用されるdn/dcは、好ましくは、既知の濃度のポリアクリル酸ポリマーのパネルを備えた屈折率検出器を使用して決定される。過硫酸塩の含量および遊離酸形態または塩形態のアクリル酸単量体の含量は、導電率検出による高速陰イオン交換クロマトグラフィーによって決定することができる。
【0174】
そのようなポリマーを製造するプロセスは、例えば以下の連続工程:
a)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を有する工程、
b)不純物を取り除くために、ポリアクリル酸ポリマーの溶液を精製する工程、
および
c)精製されポリアクリル酸ポリマーの溶液を滅菌する工程
を含む。
【0175】
そのようなポリマー塩の溶液を保管するプロセスは、例えば、上述した製造プロセスと、これに続く溶液中での得られたポリマーの保管工程を含む。
【0176】
特に、350~650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有する前記直鎖または分枝鎖ポリアクリル酸ポリマー塩は、PAA225000である。
【0177】
PAA225000と名付けられた製品(参照番号18613、ナトリウム塩)は、Polysciences Europe(エッペルハイム、ドイツ)から濃縮溶液の形態で得ることができる。これが水で希釈されて20mg/mlの濃度を得、12時間の間、室温、撹拌下で維持される。pHはHClで7.55に調整され、溶液は、2kDaカットオフ透析カセット(Thermo Fischer Scientific、コートアボフ、フランス)を使用して150mM NaCl水溶液に対して室温で透析される(3連続槽)。溶液は、次いで滅菌のために0.22μm PVDF膜を通じて濾過される。ポリマー塩の分子量が次いで測定され、488550Daであり得る。ポリマー塩のMnは129070Daであり得、このIPは3.8であり得る。
【0178】
ポリマーは、次いで、150mM NaCl水溶液にポリマー20mg/mlを含む溶液として+4℃で保管される。この溶液は、次いで、ポリマー塩2mg/mlを含む食塩水溶液を得るために、滅菌水で10倍に濃縮されたPBS 1Cと混合される。
【0179】
いずれの他のTh1誘導アジュバントも、本発明の組成物において使用することができる。Th1型免疫応答を優位に誘導することが知られているアジュバントの例として、以下のものが引用される:サポニン、例えばWO8809336もしくはUS5057540に記載されているもの、特にQS21およびその合成もしくは半合成類似体、TLR3
アゴニスト、例えばポリI:Cおよびその誘導体、TLR5アゴニスト、例えばフラジェリンおよびその誘導体、TLR7アゴニストもしくはTLR7/8アゴニスト、例えばイミダゾキノリンおよびその誘導体、例えばEP1318835に記載されているもの、TLR8アゴニスト、例えばVTX-2337としても知られるモトリモド(Luら、Clin Cancer Res、2012、18(2):499~509頁に記載の)およびその誘導体もしくはDynavaxによって開発されたTLR8アゴニスト、TLR9アゴニスト、例えばCpGオリゴデオキシヌクレオチドおよびその誘導体(例えばVollmerら、Expert Opin.Biol.Ther.、2005、5(5):673~682頁に記載されている)、特にISS1018もしくはCpG7909、RIG-I様受容体(RLR)アゴニスト、例えばRIG-Iアゴニスト、特にKineta製5’三リン酸RNAもしくは低分子量アゴニスト、またはインターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)アゴニスト、特に環状ジヌクレオチド(例えばc-ジ-AMP、c-ジ-GMP、c-ジ-GAMP)、Payneら、Dev Biol Stand.1998、92:79~87頁に記載のポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](PCPP)、Dar Aら、Vet Immunol Immunopathol.、2012、146(3~4):289~95頁に記載のポリ[ジ(ナトリウムカルボキシラトエチルフェノキシ)]ホスファゼン(PECP)、またはカーボポールを含む、アジュバントまたはアジュバントの組合せ。
【0180】
これらのTh1誘導アジュバントは、水性ナノ懸濁液、リン酸カルシウム、リポソーム、ビロソーム、ISCOM、マイクロ粒子およびナノ粒子、エマルジョンなどの送達系と組み合わせることができる。
【0181】
本発明による免疫原性組成物のアジュバントおよび抗原は、任意の薬学的に許容されるビヒクルと共に製剤化することができる。本発明の文脈において、表現「薬学的に許容されるビヒクル」は、本発明による免疫原性組成物の生理学的活性、すなわち免疫応答を誘導するその能力を保持しながら、ヒトへの投与のための生理学的に許容されるビヒクルを指す。1つの例示的な薬学的に許容されるビヒクルは、生理食塩水緩衝液である。他の生理学的に許容されるビヒクルは当業者に公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版)、A.Gennaro編、1990、Mack Publishing Company、Easton、Paに記載されている。本明細書に記載の免疫原性組成物は、pH調整剤および緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤等などの生理学的条件に近づけるのに必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、ヒト血清アルブミン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、塩酸L-アルギニン、サッカロース、D-トレハロース無水物、ソルビトール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび/または尿素を場合により含有してもよい。さらに、ワクチン組成物は、例えば、希釈剤、結合剤、安定剤、および保存剤を含む、薬学的に許容される添加剤を場合により含んでもよい。
【0182】
免疫原性組成物のpHは、通常は5.5~8の間、より好ましくは6.5~7.5の間(例えば約7)である。安定なpHは、緩衝液、例えばトリス緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、Hepes緩衝液、またはヒスチジン緩衝液の使用によって維持することができる。故に、免疫原性組成物は一般に緩衝液を含む。免疫原性組成物は、ヒトに関して等張であってもよい。免疫原性組成物はまた、NaClなどの1つまたはいくつかの追加の塩も含んでもよい。
【0183】
免疫原性組成物は、従来の滅菌手法によって滅菌され、または滅菌濾過される。得られた水溶液は、液体形態で包装および保管され、または凍結乾燥される。凍結乾燥製造物は
、投与の前に滅菌水性担体で再構成される。好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、WO2009109550に記載のプリル化プロセスを介してマイクロペレットとして包装および保管される。各マイクロペレットは、場合により水中油型エマルジョンと共に、gB抗原、gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原およびTh1誘導アジュバントを含み得る。あるいは、場合により水中油型エマルジョンとのgB抗原、gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原およびTh1誘導アジュバントは、本発明の組成物を得るために水性再構成の前後に混合される異なるマイクロペレットに、単独でまたは任意の組合せで含まれる。
【0184】
本発明による免疫原性組成物のアジュバントおよび抗原部分は、製品間で不適合がなければ通常一緒に混合され、またはあるいはアジュバントは、対象への投与の直前にその場で添加することができる。
【0185】
1つの実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、HCMV gB抗原、HCMV
gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原およびTh1誘導アジュバントの既製の混合物として製造される。
【0186】
別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、ヒト対象への投与の直前にその場で製造される。故に、本発明は、すぐに混合可能な様々な成分を含むキットを提供する。キットは、HCMV gB抗原、HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原、Th1誘導アジュバントおよび場合により水中油型エマルジョンを使用時まで別々に保たれるようにする。
【0187】
これらの成分は、キット内で互いに物理的に分離され、この分離は様々な方法で達成することができる。例えば、成分は、バイアルなどの別々の容器中にあってもよい。いくつかの構成において、全ての成分は使用時まで別々に保たれる。好ましくは、gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原は同じ容器中にあり、Th1誘導アジュバントおよび場合により水中油型エマルジョンは別の容器中にある。バイアルの内容物は、次いで、例えば、1つのバイアルの内容物を取り出し、これを他のバイアルに添加することによって、または全てのバイアルの内容物を別々に取り出し、これらを新たな容器で混合することによって混合することができる。1つの例において、1つまたはそれ以上のキット成分はシリンジ中にあり、および他方はバイアルなどの容器中にある。シリンジは、混合のためにその内容物を別の容器に挿入するのに使用され(例えば、針を用いて)、混合物は次いでシリンジに吸引される。シリンジの混合された内容物は、次いで、典型的には新たな滅菌針を介して患者に投与される。別の構成において、キット成分は、同じシリンジ中で一緒に保持されるが、別々に保持される。シリンジが作動されると(例えば、患者への投与中に)、チャンバーの内容物が混合される。この構成は、使用時の別々の混合工程の必要性を回避する。キット成分は、一般に水性形態である。いくつかの構成において、1つまたはそれ以上の成分は、乾燥形態(例えば、凍結乾燥形態でまたはマイクロペレットとして)であり、他の成分は水性形態である。乾燥成分を再活性化し、患者への投与用の水性組成物を得るために、成分は混合される。1つまたはそれ以上の凍結乾燥成分は、バイアル内またはシリンジ中にあってもよい。乾燥成分は、マンニトール、スクロース、またはドデシルマルトシドなどの安定剤、およびその混合物、例えばラクロース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物等を含んでもよい。いくつかの構成において、全ての成分は、同じ受容器またはいくつかの受容器に別々に保たれた乾燥形態(例えば、凍結乾燥形態でまたはマイクロペレットとして)であり、キットは、ワクチンの再構成用の水溶液を含有する別の受容器を含有する。
【0188】
したがって、本発明は:(i)HCMV gB抗原およびHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原を含む第1のキット成分、および(ii
)Th1誘導アジュバントおよび場合により水中油型エマルジョンを含む第2のキット成分を含むキット;ならびにHCMV感染を防ぐためのそのようなキットの使用を提供する。
【0189】
好ましい実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、HCMV gB抗原、HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原およびTh1誘導アジュバントの既製の混合物として、1つのバイアル/シリンジで利用可能である。
【0190】
本発明による免疫原性組成物は、粘膜投与(例えば、鼻腔内または舌下)、非経口投与(例えば、筋肉内、皮下、経皮、または皮内経路)、または経口投与によるなどの、任意の適切な経路により投与することができる。当業者に理解されるように、本発明のワクチンは、意図された投与経路と適合するように適切に製剤化される。
【0191】
本発明による免疫原性組成物は、単独でまたは適切な薬学的担体と共に投与することができ、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、またはエマルジョンなどの固体または液体形態であってもよい。
【0192】
エアロゾルとして使用するために、溶液または懸濁液中の本発明による免疫原性組成物は、適切な噴射剤、例えば、従来のアジュバントを含むプロパン、ブタン、またはイソブタンのような炭化水素噴射剤と一緒に加圧エアロゾル容器に包装することができる。本発明の材料はまた、ネブライザーまたはアトマイザーなどの非加圧形態で投与することもできる。
【0193】
使用
以前に述べたように、本発明はまた、HCMVワクチンとして使用するための本明細書に記載の免疫原性組成物にも関する。
【0194】
特に、本発明によるHCMVワクチンは、サブユニットワクチンである。
【0195】
本発明は、本発明による免疫原性組成物の免疫学的に有効な量の投与を含む、それを必要とする患者におけるHCMV感染の予防の方法にさらに関する。
【0196】
「HCMV」は、以前に記載されているように使用され、HCMV感染は、特に、妊娠中の母体HCMV感染または先天性感染に関し得る。
【0197】
特に、前記ワクチン/免疫原性組成物は、中和抗体レベルおよび/または持続を高める。より具体的には、HCMV gB抗原、HCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原およびTh1誘導アジュバントを含む前記ワクチン/免疫原性組成物は、同じHCMV gB抗原、同じHCMV gH/gL/UL128/UL130/UL131五量体複合抗原およびMF59アジュバントを含むワクチン/免疫原性組成物より高い中和抗体レベルおよび/または持続を誘導する。
【0198】
本明細書で使用される場合「ワクチン」とは、特にその薬剤により、対象を病気から防御または治療する免疫応答を誘導するために投与される免疫原性組成物を意味する。本発明のワクチンは、初(および/または反復)感染を防ぐために、感染の前に対象に投与する予防(preventive)(予防(prophylactic))ワクチンとしての使用が意図される。先天性HCMV感染の特定の場合において、本発明は、母親から胎児または乳児への垂直HCMV伝播を防ぐために、思春期の少女および妊娠前の妊娠可能年齢の女性に対する予防ワクチンとしての使用が意図される。
【0199】
本発明による免疫原性組成物は、本明細書に記載された抗原およびアジュバントの免疫学的に有効な量を含む。「免疫学的に有効な量」は、対象に投与されたとき、使用された抗原に対する免疫応答を誘発するのに有効な量である。この量は、治療される対象の健康状態および体調、対象の年齢、抗体を産生する対象の免疫系の能力、所望の防御の程度、ワクチン製剤、医学的状況の治療担当医の評価に応じて異なり得る。この量は、当業者により日常的な方法によって決定される。
【0200】
本明細書で言及される「対象」は、「患者」と同じように使用され、ヒト、特に、CMV血清状態が何であれ妊娠可能年齢の女性(16~45歳)および思春期の少女(11~15歳)、ならびに男性、子ども、または固形臓器または幹細胞移植の患者候補を指す。特に、前記患者または対象はHCMVに罹患しやすい。
【0201】
本明細書に記載の「中和抗体」は当業者に公知の意味を有し、例えば宿主細胞へのウイルスの侵入をブロックすること、および細胞から細胞へのウイルス播種をブロックすることによって、標的を直接中和する抗体をカバーすることが意図される。中和抗体は、標的から防御することができる機能的抗体である。中和抗体レベルおよび/または持続の増加を決定するのに利用可能な方法のいくつかの実例が、本出願の実験部分に提供されている。
【0202】
本発明によるワクチンは、ワクチンを投与するために一般に使用される任意の経路によって投与することができる。期待された免疫応答の誘導をもたらすレジメンを使用することができる。通常、免疫スケジュールは、数回の投与を含む。投与される免疫原性組成物の量は、所望の免疫応答を産生するのに十分であり、当業者によって決定される。
【0203】
本発明によるワクチンは、複数回投与で投与することができる。例えば、本発明によるワクチンは、1回、2回または3回投与で投与することができる。本発明によるワクチンが3回投与で投与される場合、初回投与および3回目の投与は、好ましくは約12カ月離して投与される。例えば、本発明のワクチンは、初回投与、2回目の投与および3回目の投与で投与され、前記2回目の投与は、前記初回投与の約1カ月~3カ月後に投与されることになり、ならびに前記3回目の投与は、前記初回投与の約6カ月~12カ月後に投与されることになる。あるいは、3回投与は、0カ月、約1~2カ月(例えば約1カ月半)および約6カ月で投与することができる。
【0204】
本発明によるワクチンは、2回投与で投与することができる。好ましくは、初回投与および2回目の投与は、約1、3、6、8または9カ月離して投与される。
【0205】
本発明によるワクチンは、単回投与で投与することができる。
【0206】
場合により、本発明によるワクチンのブースター投与が、最初の免疫後(すなわち、最初の免疫レジメンで計画された最終回投与の投与後)例えば6カ月~10年後の間、例えば6カ月、1年、3年、5年または10年の間に使用することができる。
【0207】
学術論文または抄録、公開特許出願、発行特許または任意の他の参考文献を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、引用される参考文献に示された全てのデータ、表、図および本文を含む全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0208】
本発明の範囲において、「使用するための免疫原性組成物」は、「免疫原性組成物の使用」と同等であること、ならびに特に「ワクチンとして使用するための免疫原性組成物」は、「ワクチンとしての免疫原性組成物の使用」および「ワクチンとして使用することが意図される医薬品を製造するための免疫原性組成物の使用」と同等であることが理解され
なければならない。
【0209】
以下の図面および実施例によって本発明をさらに例示する。
【実施例0210】
培養上清の除去後、D3またはD4に、細胞をPBS中1%ホルマリン100μlで1時間、室温で固定した。次いでプレートをPBSで3回洗浄し、Microvision蛍光プレートリーダーでの分析前に室温で風乾して各ウェルの感染細胞をカウントした。
対照として、細胞対照(ウイルスなし)の2個のウェル、および4.2logFFU/mLを含有するウイルス希釈液の半分に感染した細胞を含む6個のウェルが各プレートに存在した。これらの6個のウェルの平均により、特異的シグナル値の50%として決定される血清中和の閾値を定義した。中和エンドポイント力価は、計算された50%特異的シグナル値を下回る最終希釈の逆数として定義した。中和力価(μPRNT50)は、個々の血清ごとに感染細胞の50%減少を誘導した最終希釈、すなわち、計算された50%特異的シグナル値より低い感染細胞した最終希釈として定義した。幾何平均中和抗体価は群ごとに計算した。
Dynex 96ウェルマイクロプレートを0.05M炭酸/重炭酸緩衝液、pH9.6(Sigma)中、CMV-gBまたはCMV-五量体1μg/ウェルで4℃、一晩コーティングした。次いで、PBS Tween乳汁(PBS pH7.1、0.05% Tween20、1%(w/v)粉末脱脂乳(DIFCO))150μL/ウェルでプレートを37℃、少なくとも1時間ブロックした。全ての次なるインキュベーションは100μLの最終容量で実行し、その後PBS pH7.1、0.05% Tween20で3回洗浄した。血清試料の連続2倍希釈をPBS-Tween-乳汁(1/1000または1/10000から開始)で行い、ウェルに添加した。プレートを37℃で90分間インキュベートした。洗浄後、PBS-Tween-乳汁中1/2000で希釈したヤギ抗マウスIgG1またはIgG2cペルオキシダーゼコンジュゲート抗体(Southern Biotech)をウェルに添加し、プレートを37℃で90分間インキュベートした。プレートをさらに洗浄し、既製のTetra Methyl Benzidine(TMB)基質溶液(TEBU)100μL/ウェルと暗所で20℃、30分間インキュベートした。反応をHCl 1M(Prolabo)100μL/ウェルで停止した。
光学密度(OD)をプレートリーダー(VersaMax-Molecular Devices)を用いて450nm~650nmで測定した。滴定曲線から0.2~3.0のOD値範囲について、IgG1またはIgG2c抗体価をCodUnitソフトウェアを使用して計算した(各プレートにおける参照マウス過免疫血清)。任意のELISA単位(EU)で表されたこの参照のIgG1またはIgG2c価は、1.0のODを示す逆
数希釈log10に対応する。抗体検出の閾値は10 ELISA単位(1.0 log10)であった。全ての最終力価をlog10(Log)で表した。
D0に、96ウェルIPFL底マイクロプレート(Multiscreen)の膜を、35%エタノール25μLで1分間プレウェッティングした。エタノールを次いで除去し、各ウェルをPBS 1×200μLで2回洗浄した。マイクロプレートを次いで、それぞれ1/100および1/50で希釈したラット抗マウスIFN-γまたはラット抗マウスIL-5抗体(10μg/ml、Pharmingen)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。
D2に、プレートをPBS 1×-BSA 0.1%(200μL/ウェル)で6回洗浄した。洗浄工程後、ビオチン化抗マウスIFN-γまたは抗マウスIL5抗体100μL/ウェルを、1μg/mLでPBS1×-BSA 0.1%に室温、2時間、暗所で添加した。プレートをPBS 1×-BSA 0.1%(200μL/ウェル)でもう3回洗浄した。次いで、PBS 1×-BSA 0.1%中1μg/mLのストレプトアビジン-PE 100μL/ウェルを、室温、暗所で1時間インキュベートした。
IFN-γまたはIL5分泌細胞(IFN-γSCまたはIL5 SC)に対応する各スポットを、自動FLUOROSPOTプレートリーダー(Microvision)を用いて数えた。結果を106脾臓細胞あたりのIFN-γまたはIL-5分泌細胞の数として表した。
D0に、96ウェルIPFL底マイクロプレート(Multiscreen)の膜を、35%エタノール25μLで1分間プレウェッティングした。エタノールを次いで除去し、各ウェルをPBS 1×200μLで2回洗浄した。マイクロプレートを次いで、それぞれ1/68、1/100および1/100で希釈したCMV-gB抗原(10μg/ml、Sanofi)、CMV-五量体(10μg/ml、NAC)または全IgG抗体(10μg/ml、KPL)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。
D2に、プレートをPBS 1×-BSA 0.1%(200μL/ウェル)で6回洗浄した。洗浄工程後、抗マウスIgG1 PEまたは抗マウスIgG2c FITCまたは抗マウス全IgG抗体100μL/ウェルを、それぞれ4、2または0.5μg/mLでPBS1×-BSA 0.1%に室温、2時間、暗所で添加した。プレートをPBS 1×-BSA 0.1%(200μL/ウェル)でもう6回洗浄した。読み取りまで暗所でプレートを5℃±3℃で保管した。
抗体分泌細胞(ASC)(IgG1 ASC、IgG2c ASCまたは全IgG ACS)に対応する各スポットを、自動FLUOROSPOTプレートリーダー(Microvision)を用いて数えた。結果を106脾臓細胞あたりの抗体分泌細胞の数として表した。
非アジュバントCMV-gBおよび五量体を投与した群について、低い中和抗体応答が20日時点で検出され(補体ありまたはなし、それぞれのGMT=33および32)、次いで62日目まで増加してプラトーに達した。GMTは、62日目~226日目の間、補体の存在下または非存在下、90~212または65~170にわたった。補体の存在下または非存在下、それぞれのGMT=1026または815で257日時点で検出されたように、226日時点の3回目の注射は中和抗体価をブーストした。
全てのアジュバント群(MF59、PAA、AF04およびGLA-SQEM)について、20日目(すなわち、最初の注射の20日後)に補体の存在下または非存在下の中和抗体価を検出した。MF59をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体を投与した群C3については、GMTはそれぞれ220または74であり、他のアジュバント製剤を投与した群D3~F3については、GMT≧383および≧83であった。34日時点で(すなわち、2回目の注射の14日後)、全てのアジュバント群は、2回の注射後の応答のピークを示し、GMTは補体の存在下または非存在下、それぞれ3625~30755または2020~8048にわたった。
6カ月間(34~226日目の間)にわたり、上皮ベースの中和抗体価は、補体の存在下または非存在下、それぞれ1058~8505または655~2883にわたる力価までわずかに減少した。同様に、補体の存在下または非存在下、それぞれ6792(すなわちMF59-)~37166(すなわちPAA-)または5449(すなわちMF59-)~28657(すなわちPAAアジュバント群)にわたるGMTで257日時点で検出されたように、226日時点の3回目の注射は中和抗体価をブーストした。
種々のアジュバント群、すなわちSPA09、AF04およびGLA-SQEMをMF59参照と比較するために、2つの固定係数(群および時間)を用いる統計的混合モデルを、34~226日目の間の反復中和抗体価で行った。
表6に示される群比較に関して、補体の存在下では、MF59をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価は、非アジュバントCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価より有意には優れていなかったのに対し、全ての他のアジュバント群(すなわちPAA、AF04およびGLA-SQEM)は、MF59をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価より有意に優れていた(全てのp値<0.001)。
補体の非存在下では、MF59をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価は、非アジュバントCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価より有意には優れていなかった。AF04をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価は、MF59をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価より有意には優れていなかったのに対し、全ての他のアジュバント群(すなわちPAAおよびGLA-SQEM)は、MF59をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価より有意に優れていた(全てのp値≦0.009)。AF04をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価は、非アジュバントCMV-gBおよび五量体を投与したマウスで得られた中和抗体価より有意に優れていた(全てのp値<0.001
)。
類似の中和抗体プロファイルが上皮および線維芽細胞ベースの中和アッセイの両方で観察された。より高い中和力価が上皮ベースの中和アッセイでモニターされ、補体の存在下または非存在下、GMTはそれぞれ少なくとも5倍または11倍高かった。
34日時点に、すなわち2回目の注射の14日後、非アジュバントCMV-gBおよび五量体で免疫したマウスでは、中和抗体価が検出されないか、または低い中和抗体価が検出された(それぞれ、MRC-5細胞でGMT≦8およびARPE-19細胞でGMT≦46)。全てのCMV-gBおよび五量体アジュバント群について、著しいアジュバント効果が観察され、非アジュバント群と比べて、補体の存在または非存在に関係なく、MR
C-5でSN力価の14~最大337倍の増加およびARPE-19細胞で44~319倍の増加を認めた。
MF59を除く全てのアジュバント下位群3において、3回目の注射後の257日時点で検出された中和抗体価は、細胞タイプおよび補体の有無がどうであれ、2回目の注射後の34日時点で検出されたものより有意に高かった(全てのp値≦0.002)。
257日時点のMF59参照とのアジュバント比較に関して、GLA-SQEMを除く全てのアジュバント(すなわちPAAおよびAF04)は、細胞タイプおよび補体の有無がどうであれ、MF59より高い中和抗体価を誘導した(優位性の検定、片側ダネット補正、全てのp値≦0.05)。GLA-SQEMに関して、誘導された補体依存性中和抗体価は、MF59によって誘導されたものに対して有意に高かった(ARPE-19またはMRC-5細胞でそれぞれ5.3または8.9倍高い、優位性の検定、片側ダネット補正、全てのp値<0.001)のに対し、補体の非存在下では誘導された中和は、どの細胞タイプであれ有意には異ならなかった。
D208に、すなわち2回目の注射の最大7カ月後、gB+五量体+AF04またはPAAまたはGLA-SQEMを含む組成物は、gB+五量体+MF59を含む組成物より高い中和抗体レベルを示し、抗体の機能性のより良好な持続を示した。D257、ブースト1カ月後の測定された中和抗体の増加は、記憶応答を反映し、gB+五量体+MF59を含む組成物より高いgB+五量体+AF04またはPAAまたはGLA-SQEMを含む組成物の力価を示す。
全てこれらの結果は、gB+五量体+AF04またはPAAまたはGLA-SQEMを含む免疫原性組成物が、gB+五量体+MF59を含む組成物より高い中和抗体レベルおよび持続を示すことを示している。
IgG1抗体価に関して、全ての試験アジュバントは、非アジュバント群と比べてIgG1抗体価を有意に増加させた。MF59と比べた場合、どの抗原および時点であれ、AF04の有意差は示されなかった。MF59よりIgG1価が有意に低いアジュバント効果が、34および208日時点でPAAについて観察された(少なくとも2.4倍の減少、全てのp値≦0.045、差の検定、片側ダネット補正)が、3回目のブースター注射後257日時点では観察されなかった。MF59参照と比べて、GLA-SQEMは、全ての試験した時点で有意に低い抗gB IgG1価(少なくとも2.5倍減少、全てのp値≦0.033、差の検定、片側ダネット補正)、および208および257日時点で低い抗五量体IgG1価(少なくとも2.7倍減少、全てのp値≦0.005、差の検定、片側ダネット補正)を誘導した。IgG2c抗体価に関して、全ての試験アジュバントは、非アジュバント群と比べてIgG2c抗体価を有意に増加させた。gBまたは五量体どちらかに特異的なIgG2cに関して、どの時点であれ、MF59よりIgG2c価が有
意に高いアジュバント効果が、全ての試験アジュバント、すなわちPAA、AF04およびGLA-SQEMについて観察された(少なくとも11倍高い;全てのp値<0.001、差の検定、片側ダネット補正)。
IFN-γ分泌細胞頻度、全ての試験アジュバント、すなわちPAA、AF04およびGLA-SQEMに関して、MF59と比べてIFN-γ産生の有意な8~最大29倍の増加が記録された(全てのp値≦0.001、差の検定、片側ダネット補正)。
257日時点で、CMV-gBおよびCMV-五量体刺激時のIL-5およびIFN-γ応答は両方とも34日時点と比較して増加していたが、Th1/Th2プロファイルは保存された。IL-5分泌細胞に関して、高いIL-5 SC頻度がMF59を投与したマウスで検出された(CMV-gBまたは五量体刺激時、それぞれ268および2284
IL-5 SC/106脾臓細胞)。
PAA、AF04およびGLA-SQEMを投与した群で検出されたIL-5分泌物は、MF59で得られたものより有意に低かった(p値≦0.003、差の検定、片側ダネット補正)。
IFN-γ分泌細胞頻度、全ての試験アジュバント、すなわちPAA、AF04およびGLA-SQEMに関して、MF59と比べてIFN-γSC頻度の有意な増加が記録された(全てのp値≦0.001、差の検定、片側ダネット補正)。
まとめると、全ての試験アジュバントは、IgG1/IgG2c比によって示された傾向と一致する、MF59より多くのTh-1偏向全体的応答プロファイルを誘導した。
IgG1/IgG2c比によって示された傾向と一致して、まとめると、全ての試験アジュバントは、Th-1偏向全体的細胞性応答プロファイルを誘導し、一方MF59は、Th2偏向全体的細胞性応答プロファイルを誘導した。
予想通り、208日時点の検出されたASCに関して応答は低かった。これは、最初のワクチン接種シリーズの6カ月後、低い割合の循環形質芽細胞がマウス脾臓で検出されたことを示している。
3回目の注射の30日後(257日時点)、ASC頻度(CMV-gBまたはCMV-五量体に特異的なIgG1またはIgG2cのどちらか)は、208日時点と比較して増
加した。やはり、257日時点のIgG1 ASC頻度の平均は3.1%~9%にわたり、全ての試験アジュバント間に有意差はなかった。IgG2c ASC頻度に関して、MF59をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体をマウスに投与した場合、低い%が検出された。反対に、PAA、AF04およびGLA-SQEMをアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体は、CMV-gBまたはCMV-五量体どちらの抗原特異性であれ、MF59より有意に高い%のIgG2c ASCを誘導した(全てのp値<0.001、差の検定、片側ダネット補正)。
208日時点の検出されたASCに関して、記憶B細胞は、CMV-五量体に特異的なIgG1 ASCが主に検出され、%は試験アジュバントとは独立に1.6%~3.24%にわたった。IgG2c ASC頻度に関して、MF59をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体をマウスに投与した場合、低い%が検出された。反対に、PAA、AF04およびGLA-SQEMをアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体は、MF59より有意に高い%のIgG2c ASCを誘導した(全てのp値<0.001、差の検定、片側ダネット補正)。
IgG2c ASC頻度に関して、MF59をアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体をマウスに投与した場合、低い%が検出された。反対に、PAAおよびGLA-SQEMをアジュバントとして用いたCMV-gBおよび五量体は、CMV-gBまたはCMV-五量体どちらの抗原特異性であれ、MF59より有意に高い%のIgG2c
ASCを誘導した(全てのp値<0.001、差の検定、片側ダネット補正)。
これらの結果は、gB+五量体+PAAまたはAF04またはGLA-SQEMを含む組成物による、gB+五量体+MF59を含む組成物より高い記憶応答レベルを示している。防御持続の媒介因子であることが知られているこのより高い記憶細胞頻度は、優位なTh1型応答プロファイルを保つことも明らかである。