(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026173
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/129 20210101AFI20240220BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240220BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240220BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240220BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20240220BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240220BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240220BHJP
H01M 50/119 20210101ALN20240220BHJP
【FI】
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/105
H01G11/78
B32B15/085 Z
B32B27/20 Z
B32B27/32 Z
H01M50/119
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199745
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2022174263の分割
【原出願日】2017-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 大介
(72)【発明者】
【氏名】唐津 誠
(57)【要約】
【課題】成形性に優れると共に、表面に白粉が表出し難く、十分なラミネート強度及び十分なシール強度が得られる蓄電デバイス外装材用のシーラントフィルムを提供する。
【解決手段】最も金属箔側に配置される第1無延伸フィルム層7と、該第1無延伸フィルム層の一方の面に積層された第2無延伸フィルム層8と、を含む2層以上の積層体からなり、第1無延伸フィルム層7は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体を含有し、かつ滑剤を含有しない構成又は滑剤を0ppmを超えて250ppm以下含有する構成であり、第2無延伸フィルム層8は、プロピレン系重合体と、滑剤と、を含有し、第2無延伸フィルム層8における滑剤の含有濃度が500ppm~5000ppmである構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラントフィルムからなる内側シーラント層と、該内側シーラント層の片面側に積層 された金属箔層とを含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記シーラントフィルムは、第1無延伸フィルム層と、該第1無延伸フィルム層の一方の面に積層された第2無延伸フィルム層と、前記第2無延伸フィルム層における前記第1無延伸フィルム層が積層された側とは反対側の面に積層された第3無延伸フィルム層を含む3層以上の積層体からなり、
前記第1無延伸フィルム層は、前記シーラントフィルムにおいて最も金属箔側に配置される層であり、
前記第1無延伸フィルム層は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の 共重合成分を含有するランダム共重合体を含有し、
前記第1無延伸フィルム層は、滑剤を含有しない構成であり、又は滑剤を0ppmを超 えて100ppm以下含有する構成であり、
前記第2無延伸フィルム層は、プロピレン系重合体と、滑剤と、を含有し、
前記第2無延伸フィルム層における滑剤の含有濃度が2500ppm~5000ppm であり、
前記第3無延伸フィルム層は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、滑剤と、を含有し、
前記第3無延伸フィルム層における滑剤の含有濃度が200ppm~3000ppmであることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記第2無延伸フィルム層における滑剤含有濃度は、前記第3無延伸フィルム層における滑剤含有濃度の1.0倍~5.0倍である請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記第3無延伸フィルム層の表面に存在する滑剤量が0.1μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン、タブレット等の携帯機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイスの外装材を構成するのに用いられるシーラントフィルム、該シーラントフィルムを用いた蓄電デバイス用外装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル電気機器の薄型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気2重層コンデンサ等の蓄電デバイスの外装材としては、従来の金属缶に代えて、耐熱性樹脂層/接着剤層/金属箔層/接着剤層/熱可塑性樹脂層(内側シーラント層)からなる積層体が用いられている。また、電気自動車等の電源、蓄電用途の大型電源、キャパシタ等も上記構成の積層体(外装材)で外装されることも増えてきている。前記積層体に対して張り出し成形や深絞り成形が行われることによって、略直方体形状等の立体形状に成形される。このような立体形状に成形することにより、蓄電デバイス本体部を収容するための収容空間を確保することができる。
【0003】
このような立体形状にピンホールや破断等なく良好状態に成形するには内側シーラント層の表面の滑り性を向上させることが求められる。内側シーラント層の表面の滑り性を向上させて良好な成形性を確保するものとして、外装樹脂フィルム、第1の接着剤層、化成処理アルミニウム箔、第2の接着剤層、シーラントフィルムを順次積層した積層材であって、前記シーラントフィルムはα-オレフィンの含有量が2~10重量%であるプロピレンとα-オレフィンのランダム共重合体から成り、これに滑剤を1000~5000ppm含有させたものである二次電池容器用積層材が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、外装材(積層材)の生産工程での加温保持時間や保管期間によって外装材の最内層表面(内側シーラント層の内面)の滑剤析出量のコントロールが難しく、成形時のすべり性は良いものの、滑剤が表面に過度に析出するために、外装材の成形時に成形金型の成形面に滑剤が付着堆積していって白粉(滑剤による白粉)が発生する。このような白粉が成形面に付着堆積した状態になると、良好な成形を行い難くなることから、白粉が付着堆積する毎に清掃して白粉の除去を行う必要が生じるが、このような白粉の清掃除去を行うことで外装材の生産性が低下するという問題があった。
【0006】
また、内側シーラント層における金属箔側の面にも滑剤が多くブリードし、このためにラミネート強度(金属箔と内側シーラント層とのラミネート強度)が低下し、金属箔と内側シーラント層との間で剥離を生じやすいという問題もあった。
【0007】
勿論、滑剤の添加量(滑剤含有率)を低減すれば、白粉の付着堆積を抑制すること及びラミネート強度の低下を防止することが可能になるが、この場合には表面滑剤析出量が不足して成形性が悪くなるという問題を生じる。このように従来では、「優れた成形性」と、「外装材表面での白粉表出の抑制および十分なラミネート強度の確保」とを両立させることが難しかった。
【0008】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、成形性に優れると共に、表面に白粉が表出し難く、かつ十分なラミネート強度及び十分なシール強度の得られる、蓄電デバイスの外装材用シーラントフィルム及び蓄電デバイス用外装材とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]第1無延伸フィルム層と、該第1無延伸フィルム層の一方の面に積層された第2無延伸フィルム層と、を含む2層以上の積層体からなるシーラントフィルムであって、
前記第1無延伸フィルム層は、前記シーラントフィルムにおいて最も金属箔側に配置される層であり、
前記第1無延伸フィルム層は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体を含有し、
前記第1無延伸フィルム層は、滑剤を含有しない構成であり、又は滑剤を0ppmを超えて250ppm以下含有する構成であり、
前記第2無延伸フィルム層は、プロピレン系重合体と、滑剤と、を含有し、
前記第2無延伸フィルム層における滑剤の含有濃度が500ppm~5000ppmであることを特徴とする蓄電デバイスの外装材用シーラントフィルム。
【0011】
[2]前記第2無延伸フィルム層における前記第1無延伸フィルム層が積層された側とは反対側の面に積層された第3無延伸フィルム層をさらに含み、前記第3無延伸フィルム層は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、滑剤と、を含有し、前記第3無延伸フィルム層における滑剤の含有濃度が200ppm~3000ppmである前項1に記載の蓄電デバイスの外装材用シーラントフィルム。
【0012】
[3]前記第2無延伸フィルム層における滑剤含有濃度は、前記第3無延伸フィルム層における滑剤含有濃度の1.0倍~5.0倍である前項2に記載の蓄電デバイスの外装材用シーラントフィルム。
【0013】
[4]前項1に記載のシーラントフィルムからなる内側シーラント層と、該内側シーラント層の片面側に積層された金属箔層とを含み、前記第2無延伸フィルム層の表面に存在する滑剤量が0.1μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[5]前項2または3に記載のシーラントフィルムからなる内側シーラント層と、該内側シーラント層の片面側に積層された金属箔層とを含み、前記第3無延伸フィルム層の表面に存在する滑剤量が0.1μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0015】
[6]外側層としての耐熱性樹脂層と、前項1に記載のシーラントフィルムからなる内側シーラント層と、これら両層間に配置された金属箔層とを含み、前記第2無延伸フィルム層の表面に存在する滑剤量が0.1μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0016】
[7]外側層としての耐熱性樹脂層と、前項2または3に記載のシーラントフィルムからなる内側シーラント層と、これら両層間に配置された金属箔層とを含み、前記第3無延伸フィルム層の表面に存在する滑剤量が0.1μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0017】
[8]前項4~7のいずれか1項に記載の外装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【0018】
[9]前項1~3のいずれか1項に記載のシーラントフィルムと、金属箔とを第1接着剤を介して積層した積層体を準備する工程と、
前記積層体を加熱処理して蓄電デバイス用外装材を得るエージング工程と、を含むことを特徴とする蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【0019】
[10]前記第1接着剤が熱硬化性接着剤である前項9に記載の蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【0020】
[11]金属箔の一方の面に第2接着剤を介して耐熱性樹脂フィルムが積層されると共に前記金属箔の他方の面に第1接着剤を介して前項1~3のいずれか1項に記載のシーラントフィルムが積層された構成の積層体を準備する工程と、
前記積層体を加熱処理して蓄電デバイス用外装材を得るエージング工程と、を含むことを特徴とする蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【0021】
[12]前記第1接着剤が熱硬化性接着剤であり、前記第2接着剤が熱硬化性接着剤である前項11に記載の蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【0022】
[13]加熱処理して得た前記蓄電デバイス用外装材の最内層の表面に存在する滑剤量が0.1μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲である前項9~12のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
[1]及び[2]の発明では、エージング処理後の外装材の内側表面(内側シーラント層の最内層の表面)に存在する(析出する)滑剤量の減少を抑制し得て成形時に良好なすべり性を確保できて成形性に優れるとともに、外装材の内側表面(内側シーラント層の最内層の表面)に白粉が表出し難く、十分なシール強度が得られる。また、エージング処理後の外装材の内側シーラント層における金属箔側の第1無延伸フィルム層の表面7aに存在する滑剤量が少ないものとなるので、十分なラミネート強度(金属箔と内側シーラント層とのラミネート強度)を確保できる。更に、前記エージング処理後の外装材の表面(内側シーラント層の最内層の表面)に存在する滑剤量は、輸送や保管時等に熱履歴を受けても変動しないので、優れた成形性を安定して備えた外装材の提供が可能となる。
【0024】
[3]の発明では、第2無延伸フィルム層における滑剤含有濃度は、外装材の最内層を形成する第3無延伸フィルム層における滑剤含有濃度の1.0倍~5.0倍である構成になっており、エージング処理の際に、1.0倍以上であることで最内層の第3無延伸フィルム層9から第2無延伸フィルム層8への滑剤の滑剤濃度勾配による界面(両フィルム層8、9の界面)への集中的な移動を抑制できるし、5.0倍以下であることで第2無延伸フィルム層8から最内層の第3無延伸フィルム層9への滑剤の滑剤濃度勾配による界面(両フィルム層8、9の界面)への集中的な移動を抑制できて、エージング処理後の外装材の最内層を形成する第3無延伸フィルム層の表面9aに存在する滑剤量を0.1μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲に制御することが可能となる。これにより成形性をさらに向上させることができる。
【0025】
[4]、[5]、[6]及び[7]の発明では、成形性に優れると共に、表面に白粉が表出し難く、かつ十分なラミネート強度及び十分なシール強度の得られる蓄電デバイス用外装材を提供できる。
【0026】
また、[6]及び[7]の発明では、さらに外側層としての耐熱性樹脂層を備えているから、金属箔層における内側シーラント層と反対側の絶縁性を十分に確保できるし、蓄電デバイス用外装材の物理的強度及び耐衝撃性を向上させることができる。
【0027】
[8]の発明では、良好な成形がなされると共に、外装ケースの表面(内側シーラント層の最内層の表面)に白粉が表出し難く、かつ十分なラミネート強度及び十分なシール強度の得られる蓄電デバイス用外装ケースを提供できる。
【0028】
[9]~[12]の発明では、成形性に優れると共に、表面に白粉が表出し難く、かつ十分なラミネート強度及び十分なシール強度の得られる蓄電デバイス用外装材を製造できる。
【0029】
また、[11]及び[12]の発明では、さらに外側層としての耐熱性樹脂層を備えているから、金属箔層における内側シーラント層と反対側の絶縁性を十分に確保できるし、外装材の物理的強度および耐衝撃性を向上させることができる。
【0030】
[13]の発明では、外装材の最内層の表面に存在する滑剤量が0.1μg/cm2~
1.0μg/cm2の範囲であるから、成形時により良好なすべり性を発現し、さらに良
好な成形性を確保できると共に、白粉の表出を一層防止できる蓄電デバイス用外装材を製造することができる。また、得られた蓄電デバイス用外装材の最内層の表面に存在する滑剤量(0.1μg/cm2~1.0μg/cm2)は、輸送や保管時等に熱履歴を受けても変動しないので、優れた成形性を安定して備えた蓄電デバイス用外装材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の他の実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る蓄電デバイスの一実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図3の蓄電デバイスを構成する外装材(平面状のもの)、蓄電デバイス本体部及び外装ケース(立体形状に成形された成形体)をヒートシールする前の分離した状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
第1発明に係る、蓄電デバイスの外装材用シーラントフィルム3の一実施形態を
図1に示す。前記シーラントフィルム3は、第1無延伸フィルム層7と、該第1無延伸フィルム層7の一方の面に積層された第2無延伸フィルム層8と、を含む2層以上の積層体からなり、前記第1無延伸フィルム層7は、前記シーラントフィルム3において最も金属箔4側に配置される層であり、前記第1無延伸フィルム層は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体を含有し、前記第1無延伸フィルム層7は、滑剤を含有しない構成、又は滑剤を含有する構成であり、前記第2無延伸フィルム層8は、プロピレン系重合体と、滑剤と、を含有する。
【0033】
また、第2発明に係る、蓄電デバイスの外装材用シーラントフィルムの一実施形態を
図2に示す。このシーラントフィルム3は、第2無延伸フィルム層8と、該第2無延伸フィルム層8の一方の面に積層された第1無延伸フィルム層7と、前記第2無延伸フィルム層8の他方の面に積層された第3無延伸フィルム層9と、を含む3層以上の積層体からなり、前記第1無延伸フィルム層7は、前記シーラントフィルム3において最も金属箔4側に配置される層であり、前記第1無延伸フィルム層7は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体を含有し、前記第1無延伸フィルム層7は、滑剤を含有しない構成、又は滑剤を含有する構成であり、前記第2無延伸フィルム層8は、プロピレン系重合体と、滑剤と、を含有し、前記第3無延伸フィルム層9は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、滑剤と、を含有する。
【0034】
前記第1無延伸フィルム層7および前記第3無延伸フィルム層9を構成するランダム共重合体は、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するランダム共重合体である。前記ランダム共重合体に関して、前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエン等が挙げられる。
【0035】
前記第2無延伸フィルム層8を構成するプロピレン系重合体は、重合成分として少なくともプロピレンを含有する重合体である。前記プロピレン系重合体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホモポリプロピレン、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するブロック共重合体等が挙げられる。中でも、前記プロピレン系重合体として、ホモポリプロピレンおよび前記ブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を使用するのが好ましい。
【0036】
前記ブロック共重合体に関して、前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエンなどが挙げられる。
【0037】
前記第2無延伸フィルム層8は、前記プロピレン系重合体と、エラストマー成分と、前記滑剤と、を含有する構成であるのが好ましい。中でも、前記プロピレン系重合体に前記エラストマー成分が添加されてミクロ相分離したモルフォロジー(微細構造)を呈するものであるのがより好ましい。即ち、前記プロピレン系重合体の海にエラストマー成分が島状に相分離した海島構造を呈するエラストマー変性プロピレン系重合体であるのが好ましく、この場合には白化現象をより生じ難くすることができ、シール後の絶縁性をさらに向上させることができる。前記エラストマー成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、EPR(エチレンプロピレンラバー)、プロピレン-ブテンエラストマー、プロピレン-ブテン-エチレンエラストマー、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)等が挙げられ、中でも、前記エラストマー成分としてEPR(エチレンプロピレンラバー)を用いるのが好ましい。
【0038】
そして、第1発明に係るシーラントフィルム3は、前記第1無延伸フィルム層7は、滑剤を含有しない構成であり、又は滑剤を0ppmを超えて250ppm以下含有する構成であり、前記第2無延伸フィルム層における滑剤の含有濃度が500ppm~5000ppmに設定されることが重要である。このような条件を満足していることで、接着剤を硬化させるためのエージング処理を行った際に、第2無延伸フィルム層8に存在する滑剤が、第1無延伸フィルム層7内に移動するのを抑制できるので、外装材1の最内層(第2無延伸フィルム層)の表面8aに析出する滑剤量を確保できて外装材の成形時に良好なすべり性を確保できて優れた成形性が得られると共に、最内層(第2無延伸フィルム層8)の表面8aに白粉が表出し難く、かつ十分なラミネート強度及び十分なシール強度を確保できる。第1無延伸フィルム層7における滑剤の含有濃度が250ppmを超えると、第1無延伸フィルム層7における金属箔層4側の表面7aでの滑剤存在量が多くなり、十分なラミネート強度(金属箔と内側シーラント層とのラミネート強度)を確保できなくなる。また、第2無延伸フィルム層8における滑剤の含有濃度が500ppm未満では、接着剤を硬化させるためのエージング処理を行った後において外装材1の最内層の表面8aに存在する滑剤量が十分でなくなり優れた成形性が得られなくなるし、5000ppmを超えると、接着剤を硬化させるためのエージング処理を行った後において第2無延伸フィルム層8から第1無延伸フィルム層7へ滑剤が移動しやすく、第1無延伸フィルム層7における金属箔層4側の表面7aでの滑剤存在量が多くなり、十分なラミネート強度(金属箔と内側シーラント層とのラミネート強度)を確保できなくなるし、最内層(第2無延伸フィルム層8)の表面8aに白粉が顕著に生じやすい。
【0039】
中でも、第1発明に係るシーラントフィルム3において、前記第1無延伸フィルム層7は、滑剤を含有しない構成であり、又は滑剤を0ppmを超えて150ppm以下含有する構成であるのが好ましい。さらに、第1発明に係るシーラントフィルム3において、前記第1無延伸フィルム層7は、滑剤を10ppm~90ppm含有するのがより好ましく、中でも滑剤を20ppm~60ppm含有するのが特に好ましい。また、前記第2無延伸フィルム層8は、滑剤を700ppm~4500ppm含有するのが好ましく、滑剤を800ppm~4000ppm含有するのがより好ましく、中でも滑剤を1000ppm~2700ppm含有するのが特に好ましい。
【0040】
また、さらに前記第3無延伸フィルム層を設ける構成(第2発明)を採用する場合には、前記第1無延伸フィルム層7は、滑剤を含有しない構成であり、又は滑剤を0ppmを超えて250ppm以下含有する構成であり、第2無延伸フィルム層8における滑剤の含有濃度が500ppm~5000ppmに設定され、前記第3無延伸フィルム層9における滑剤の含有濃度が200ppm~3000ppmに設定されることが重要である。
【0041】
このような条件を満足していることで、接着剤を硬化させるためのエージング処理を行った際に、第3無延伸フィルム層9に存在する滑剤が、第2無延伸フィルム層8や第1無延伸フィルム層7内に移動するのを抑制できるので、外装材1の最内層(第3無延伸フィルム層)の表面9aに析出する滑剤量を確保できて外装材の成形時に良好なすべり性を確保できて優れた成形性が得られると共に、最内層(第3無延伸フィルム層9)の表面9aに白粉が表出し難く、かつ十分なラミネート強度及び十分なシール強度を確保することができる。第1無延伸フィルム層7における滑剤の含有濃度が250ppmを超えると、第1無延伸フィルム層7における金属箔層4側の表面7aでの滑剤存在量が多くなって、十分なラミネート強度(金属箔と内側シーラント層とのラミネート強度)を確保できなくなる。また、第2無延伸フィルム層8における滑剤の含有濃度が500ppm未満では、接着剤を硬化させるためのエージング処理を行った際に最内層の第3無延伸フィルム層9から第2無延伸フィルム層8へ滑剤が移動しやすく、最内層の表面9aに存在する滑剤量が十分でなくなり、成形時の滑り性が悪くなるし、5000ppmを超えると、接着剤を硬化させるためのエージング処理を行った際に第2無延伸フィルム層8から第1無延伸フィルム層7へ滑剤が移動しやすく、第1無延伸フィルム層7における金属箔層4側の表面7aでの滑剤存在量が多くなり、十分なラミネート強度(金属箔と内側シーラント層とのラミネート強度)を確保できなくなる。また、第3無延伸フィルム層7における滑剤の含有濃度が200ppm未満では、接着剤を硬化させるためのエージング処理を行った後において最内層の表面9aに存在する滑剤量が十分でなくなり優れた成形性が得られなくなるし、3000ppmを超えると、接着剤を硬化させるためのエージング処理を行った後において最内層の表面9aに白粉を顕著に生じるものとなり、白粉を清掃、除去する作業が必要となって生産性が低下するという問題を生じる。
【0042】
中でも、第2発明に係るシーラントフィルム3において、前記第1無延伸フィルム層7は、滑剤を含有しない構成であり、又は滑剤を0ppmを超えて150ppm以下含有する構成であるのが好ましい。さらに、第2発明に係るシーラントフィルム3において、前記第1無延伸フィルム層7は、滑剤を10ppm~90ppm含有するのがより好ましく、中でも滑剤を20ppm~60ppm含有するのが特に好ましい。また、第2発明に係るシーラントフィルム3において、前記第2無延伸フィルム層8は、滑剤を700ppm~4500ppm含有するのが好ましく、滑剤を800ppm~4000ppm含有するのがより好ましく、中でも滑剤を1000ppm~2700ppm含有するのが特に好ましい。また、第2発明に係るシーラントフィルム3において、前記第3無延伸フィルム層9は、滑剤を300ppm~2700ppm含有するのが好ましく、滑剤を500ppm~2000ppm含有するのがより好ましく、中でも滑剤を800ppm~1200ppm含有するのが特に好ましい。
【0043】
第2発明に係るシーラントフィルム3において、前記第2無延伸フィルム層8における滑剤含有濃度は、前記第3無延伸フィルム層9における滑剤含有濃度の1.0倍~5.0倍であるのが好ましい。エージング処理の際に、1.0倍以上であることで最内層の第3無延伸フィルム層9から第2無延伸フィルム層8への滑剤の滑剤濃度勾配による界面(両フィルム層8、9の界面)への集中的な移動を抑制できるし、5.0倍以下であることで第2無延伸フィルム層8から最内層の第3無延伸フィルム層9への滑剤の滑剤濃度勾配による界面(両フィルム層8、9の界面)への集中的な移動を抑制できて、エージング処理後の外装材の最内層を形成する第3無延伸フィルム層の表面9aに存在する滑剤量を0.1μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲に制御することが可能となって、成形性をさらに向上させることができる。中でも、前記第2無延伸フィルム層8における滑剤含有濃度は、前記第3無延伸フィルム層9における滑剤含有濃度の1.0倍~4.5倍であるのがより好ましく、さらには1.0倍~4.0倍であるのが特に好ましい。
【0044】
前記滑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族系ビスアミド等が挙げられる。
【0045】
前記飽和脂肪酸アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。前記不飽和脂肪酸アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0046】
前記置換アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、N-オレイルパルチミン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。また、前記メチロールアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチロールステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0047】
前記飽和脂肪酸ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0048】
前記不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0049】
前記脂肪酸エステルアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ステアロアミドエチルステアレート等が挙げられる。前記芳香族系ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-システアリルイソフタル酸アミド等が挙げられる。
【0050】
前記シーラントフィルム3の厚さは、10μm~100μmに設定されるのが好ましい。10μm以上とすることでピンホールの発生を十分に防止できると共に、100μm以下に設定することで樹脂使用量を低減できてコスト低減を図ることができる。
【0051】
前記シーラントフィルム3として
図1の2層積層構成を採用する場合において、2層の厚さの比率は、第1無延伸フィルム層7の厚さ/第2無延伸フィルム層8の厚さ=5~90/95~10の範囲に設定されるのが好ましく、中でも、第1無延伸フィルム層7の厚さ/第2無延伸フィルム層8の厚さ=5~40/95~60の範囲に設定されるのが特に好ましい。
【0052】
また、前記シーラントフィルム3として
図2の3層積層構成を採用する場合において、3層の厚さの比率は、第1無延伸フィルム層7の厚さ/第2無延伸フィルム層8の厚さ/第3無延伸フィルム層9の厚さ=5~45/90~10/5~45の範囲に設定されるのが好ましく、中でも、第1無延伸フィルム層7の厚さ/第2無延伸フィルム層8の厚さ/第3無延伸フィルム層9の厚さ=5~20/90~60/5~20の範囲に設定されるのが特に好ましい。
【0053】
前記シーラントフィルム3として
図1の2層積層構成を採用する場合において、最内層を形成する第2無延伸フィルム層8に、さらにアンチブロッキング剤を含有せしめてもよい。また、前記シーラントフィルム3として
図2の3層積層構成を採用する場合において、最内層を形成する第3無延伸フィルム層9に、さらにアンチブロッキング剤を含有せしめてもよい。前記アンチブロッキング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ粒子、アクリル樹脂粒子、ケイ酸アルミニウム粒子等が挙げられる。前記アンチブロッキング剤の粒子径は、平均粒子径で0.1μm~10μmの範囲にあるのが好ましく、中でも平均粒子径で1μm~5μmの範囲にあるのがより好ましい。前記アンチブロッキング剤を、最内層を形成する第2無延伸フィルム層8または最内層を形成する第3無延伸フィルム層9に含有せしめる際のその含有濃度は、100ppm~5000ppmに設定されるのが好ましい。
【0054】
前記アンチブロッキング剤(粒子)を前記最内層に含有せしめることにより、最内層の表面(
図1では8a、
図2では9a)に微小突起を形成しフィルム同士の接触面積を小さくしてシーラントフィルム同士のブロッキングを抑制できる。また、前記滑剤とともにアンチブロッキング剤(粒子)を含有させることで前記成形時のすべり性をさらに向上させることができる。
【0055】
前記シーラントフィルム3は、多層押出成形、インフレーション成形、Tダイキャストフィルム成形等の成形法により製造されるのが好ましい。
【0056】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1は、上記構成を備えたシーラントフィルム3を用いて作製されたものである。
【0057】
本発明に係る第1の製造方法(蓄電デバイス用外装材の製造方法)について説明する。まず、上記本発明(第1発明又は第2発明)のシーラントフィルム3と、金属箔4とを第1接着剤(内側接着剤)6を介して積層した構成の積層体を準備する。この時、シーラントフィルム3の第1無延伸フィルム層7が第1接着剤6と接する。次に、得られた積層体を加熱処理する(エージング処理を行う)ことによって本発明の蓄電デバイス用外装材1を得ることができる。
【0058】
次に、本発明に係る第2の製造方法(蓄電デバイス用外装材の製造方法)について説明する。金属箔4の一方の面に第2接着剤(外側接着剤)5を介して耐熱性樹脂フィルム(外側層)2が積層されると共に前記金属箔4の他方の面に第1接着剤(内側接着剤)6を介して上記本発明(第1発明又は第2発明)のシーラントフィルム3が積層された構成の積層体を準備する。この時、シーラントフィルム3の第1無延伸フィルム層7が第1接着剤(内側接着剤)6と接する(
図1、2参照)。次に、得られた積層体を加熱処理する(エージング処理を行う)ことによって、
図1、2に示す構成の本発明の蓄電デバイス用外装材1を得ることができる。即ち、このようなエージング処理を経て得られた本発明の蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層4の一方の面に第2接着剤層(外側接着剤層)5を介して耐熱性樹脂層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面に第1接着剤層(内側接着剤層)6を介して内側シーラント層(シーラントフィルム)(内側層)3が積層一体化された構成である(
図1、2参照)。シーラントフィルム3として、上記第1発明のシーラントフィルムを使用した場合には、シーラントフィルム3の第2無延伸フィルム層8が最内層を形成する(
図1参照)。また、シーラントフィルム3として、上記第2発明のシーラントフィルムを使用した場合には、シーラントフィルム3の第3無延伸フィルム層9が最内層を形成する(
図2参照)。
【0059】
前記第1接着剤(内側接着剤)6としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱硬化性接着剤等が挙げられる。また、前記第2接着剤(外側接着剤)5としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱硬化性接着剤等が挙げられる。前記熱硬化性接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。
【0060】
前記エージング処理の加熱温度は、65℃以下に設定するのが好ましく、中でも、接着剤の硬化度および外装材の最内層に存在する滑剤量の好適量の保持の観点から、35℃~45℃に設定するのがより好ましい。また、前記エージング処理の加熱時間については、接着剤の種類により硬化時間が変わるため、接着剤の種類に合わせ十分な接着強度が得られる時間以上であれば良いが、工程のリードタイムを考慮すると、加熱時間は、十分な接着強度が得られる限りにおいてなるべく短い方が良い。
【0061】
上記エージング処理を経て得られた蓄電デバイス用外装材1は、製造に使用するシーラントフィルム3として、上述した本発明(第1発明又は第2発明)のシーラントフィルムを用いているので、成形性に優れると共に、表面に白粉が表出し難く、かつ十分なラミネート強度及び十分なシール強度が得られる。
【0062】
前記エージング処理を経て得られた蓄電デバイス用外装材1において、最内層の表面に存在する滑剤量は0.1μg/cm
2~1.0μg/cm
2の範囲にあるのが好ましい。即ち、シーラントフィルム3として、上記第1発明のシーラントフィルムを使用した場合には、第2無延伸フィルム層8の表面8aに存在する滑剤量が0.1μg/cm
2~1.0μg/cm
2の範囲にあるのが好ましく(
図1参照)、またシーラントフィルム3として
、上記第2発明のシーラントフィルムを使用した場合には、第3無延伸フィルム層9の表面9aに存在する滑剤量が0.1μg/cm
2~1.0μg/cm
2の範囲にあるのが好ましい(
図2参照)。中でも、前記エージング処理を経て得られた蓄電デバイス用外装材1において、前記最内層の表面8a、9aに存在する滑剤量は0.1μg/cm
2~0.6μg/cm
2の範囲にあるのがより好ましい。
【0063】
本発明の蓄電デバイス用外装材1において、前記内側シーラント層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液等に対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0064】
また、前記耐熱性樹脂層(基材層;外側層)2は、必須の構成層ではないものの、前記金属箔層4の他方の面(内側シーラント層とは反対側の面)に第2接着剤層(外側接着剤層)5を介して耐熱性樹脂層2が積層された構成を採用するのが好ましい(
図1、2参照)。このような耐熱性樹脂層2を設けることにより、金属箔層4の他方の面(内側シーラント層とは反対側の面)側の絶縁性を十分に確保できるし、蓄電デバイス用外装材1の物理的強度および耐衝撃性を向上させることができる。
【0065】
前記耐熱性樹脂層(基材層;外側層)2を構成する耐熱性樹脂としては、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、上記第1発明では、第2無延伸フィルム層8を構成する樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、上記第2発明では、第3無延伸フィルム層9を構成する樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましい。
【0066】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0067】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2の厚さは、2μm~50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは2μm~50μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは7μm~50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで外装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0068】
前記金属箔層4は、外装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔等が挙げられ、中でも、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)を用いるのが好ましい。前記金属箔層4の厚さは、5μm~120μmであるのが好ましい。5μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、120μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記金属箔層4の厚さは、10μm~80μmであるのがより好ましい。
【0069】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面(内側シーラント層3側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を
含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0070】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2が好ましい。
【0071】
前記第2接着剤層(外側接着剤層)5の厚さは、1μm~5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材1の薄膜化、軽量化の観点から、前記外側接着剤層5の厚さは、1μm~3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0072】
前記第1接着剤層(内側接着剤層)6の厚さは、1μm~5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材1の薄膜化、軽量化の観点から、前記内側接着剤層6の厚さは、1μm~3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0073】
本発明の蓄電デバイス用外装材1は、例えば、リチウムイオン2次電池用外装材として用いられる。前記蓄電デバイス用外装材1は、成形を施されることなくそのまま外装材として使用されてもよいし(
図4参照)、例えば、深絞り成形、張り出し成形等の成形に供されて外装ケース10として使用されてもよい(
図4参照)。
【0074】
本発明の蓄電デバイス用外装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を
図3に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、
図3、4に示すように、外装材1を成形して得られた外装ケース10と、平面状の外装材1とにより外装部材15が構成されている。しかして、本発明の外装材1を成形して得られた外装ケース10の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に、本発明の外装材1が成形されることなくその内側シーラント層3側を内方(下側)にして配置され、該平面状外装材1の内側シーラント層3の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29の内側シーラント層3とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の蓄電デバイス30が構成されている(
図3、4参照)。前記外装ケース10の収容凹部の内側の表面は、内側シーラント層3になっており、収容凹部の外面が耐熱性樹脂層(外側層)2になっている(
図4参照)。なお、外装ケース10を形成する外装材として
図1に示す外装材を用いた場合には、収容凹部の内側の表面は、最内層の第2無延伸フィルム層8になっており、外装ケース10を形成する外装材として
図2に示す外装材を用いた場合には、収容凹部の内側の表面は、最内層の第3無延伸フィルム層9になっている。
【0075】
図3において、39は、前記外装材1の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29とが接合(溶着)されたヒートシール部である。なお、前記蓄電デバイス30において、蓄電デバイス本体部31に接続されたタブリードの先端部が、外装部材15の外部に導出されているが、図示は省略している。
【0076】
前記蓄電デバイス本体部31としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0077】
前記ヒートシール部39の幅は、0.5mm以上に設定するのが好ましい。0.5mm以上とすることで封止を確実に行うことができる。中でも、前記ヒートシール部39の幅は、3mm~15mmに設定するのが好ましい。
【0078】
なお、上記実施形態では、外装部材15が、外装材1を成形して得られた外装ケース10と、平面状の外装材1と、からなる構成であったが(
図3、4参照)、特にこのような組み合わせに限定されるものではなく、例えば、外装部材15が、一対の平面状の外装材1からなる構成であってもよいし、或いは、一対の外装ケース10からなる構成であってもよい。
【実施例0079】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0080】
<実施例1>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0081】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤5を介して厚さ25μmの二軸延伸6ナイロンフィルム2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0082】
次に、エチレン-プロピレンランダム共重合体および100ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ12μmの第1無延伸フィルム7、エチレン-プロピレンブロック共重合体、2500ppmのエルカ酸アミドおよび2000ppmのシリカ粒子(アンチブロッキング剤;平均粒子径が2μm)を含有してなる厚さ28μmの第2無延伸フィルム8が2層積層されるようにTダイを用いて共押出することにより、これら2層が積層されてなる厚さ40μmのシーラントフィルム(第1無延伸フィルム層7/第2無延伸フィルム層8)3を得た後、該シーラントフィルム3の第1無延伸フィルム層7面を、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤6を介して、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で10日間エージングする(加熱する)ことによって、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0083】
なお、前記2液硬化型マレイン酸変性ポリプロピレン接着剤として、主剤としてのマレイン酸変性ポリプロピレン(融点80℃、酸価10mgKOH/g)100質量部、硬化剤としてのヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート体(NCO含有率:20質量%)8質量部、さらに溶剤が混合されてなる接着剤溶液を用い、該接着剤溶液を固形分塗布量が2g/m2になるように、前記アルミニウム箔4の他方の面に塗布して、加熱乾燥させた後、前記シーラントフィルム3の第1無延伸フィルム層7面に重ね合わせた。
【0084】
得られた蓄電デバイス用外装材1において、外装材1の最内層(第2無延伸フィルム層8)の表面8aに存在する滑剤量は0.27μg/cm2であり、外装材のシーラントフ
ィルム3における金属箔層4側の表面(第1無延伸フィルム層7の表面)7aに存在する滑剤量は0.38μg/cm2であった(表1参照)。
【0085】
<実施例2>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を0ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を3000ppmに設定した以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0086】
<実施例3>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃
で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0087】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤5を介して厚さ25μmの二軸延伸6ナイロンフィルム2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0088】
次に、エチレン-プロピレンランダム共重合体および100ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ6μmの第1無延伸フィルム7、エチレン-プロピレンブロック共重合体および2500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ28μmの第2無延伸フィルム8、エチレン-プロピレンランダム共重合体、1000ppmのエルカ酸アミドおよび2000ppmのシリカ粒子(アンチブロッキング剤;平均粒子径が2μm)を含有してなる厚さ6μmの第3無延伸フィルム9が、この順で3層積層されるようにTダイを用いて共押出することにより、これら3層が積層されてなる厚さ40μmのシーラントフィルム(第1無延伸フィルム層7/第2無延伸フィルム層8/第3無延伸フィルム層9)3を得た後、該シーラントフィルム3の第1無延伸フィルム層7面を、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤6を介して、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で10日間エージングする(加熱する)ことによって、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0089】
なお、前記2液硬化型マレイン酸変性ポリプロピレン接着剤として、主剤としてのマレイン酸変性ポリプロピレン(融点80℃、酸価10mgKOH/g)100質量部、硬化剤としてのヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート体(NCO含有率:20質量%)8質量部、さらに溶剤が混合されてなる接着剤溶液を用い、該接着剤溶液を固形分塗布量が2g/m2になるように、前記アルミニウム箔4の他方の面に塗布して、加熱乾燥させた後、前記シーラントフィルム3の第1無延伸フィルム層7面に重ね合わせた。
【0090】
得られた蓄電デバイス用外装材1において、外装材の最内層(第3無延伸フィルム層9)の表面9aに存在する滑剤量は0.25μg/cm2であり、外装材のシーラントフィルム3における金属箔層4側の表面(第1無延伸フィルム層7の表面)7aに存在する滑剤量は0.25μg/cm2であった(表1参照)。
【0091】
<実施例4>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を60ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を1000ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0092】
<実施例5>
積層前の第3無延伸フィルム層9におけるエルカ酸アミドの含有濃度を500ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0093】
<実施例6>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を60ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を1000ppmに設定し、積層前の第3無延伸フィルム層9におけるエルカ酸アミドの含有濃度を2000ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0094】
<実施例7>
第1無延伸フィルム層7、第2無延伸フィルム層8および第3無延伸フィルム層9において滑剤としてエルカ酸アミドに代えてベヘン酸アミドを用い、積層前の第1無延伸フィルム層7におけるベヘン酸アミドの含有濃度を50ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0095】
<実施例8>
第1無延伸フィルム層7、第2無延伸フィルム層8および第3無延伸フィルム層9において滑剤としてエルカ酸アミドに代えてオレイン酸アミドを用いた以外は、実施例7と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0096】
<実施例9>
第1無延伸フィルム層7、第2無延伸フィルム層8および第3無延伸フィルム層9において滑剤としてエルカ酸アミドに代えてステアリン酸アミドを用いた以外は、実施例7と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0097】
<実施例10>
積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を4500ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0098】
<実施例11>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を0ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を2000ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0099】
<比較例1>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を400ppmに設定した以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0100】
<比較例2>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を50ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を6000ppmに設定した以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0101】
<比較例3>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を500ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0102】
<比較例4>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を400ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を1000ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0103】
<比較例5>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を500ppmに設定し、積層前の第3無延伸フィルム層9におけるエルカ酸アミドの含有濃度を500ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0104】
<比較例6>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を360ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を1000ppmに設定し、積層前の第3無延伸フィルム層9におけるエルカ酸アミドの含有濃度を2000ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0105】
<比較例7>
第1無延伸フィルム層7、第2無延伸フィルム層8および第3無延伸フィルム層9において滑剤としてエルカ酸アミドに代えてベヘン酸アミドを用い、積層前の第1無延伸フィルム層7におけるベヘン酸アミドの含有濃度を320ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0106】
<比較例8>
第1無延伸フィルム層7、第2無延伸フィルム層8および第3無延伸フィルム層9において滑剤としてエルカ酸アミドに代えてオレイン酸アミドを用いた以外は、比較例7と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0107】
<比較例9>
第1無延伸フィルム層7、第2無延伸フィルム層8および第3無延伸フィルム層9において滑剤としてエルカ酸アミドに代えてステアリン酸アミドを用いた以外は、比較例7と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0108】
<比較例10>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を400ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を4500ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0109】
<比較例11>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を60ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を100ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0110】
<比較例12>
積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を5500ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0111】
<比較例13>
積層前の第3無延伸フィルム層9におけるエルカ酸アミドの含有濃度を100ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0112】
<比較例14>
積層前の第1無延伸フィルム層7におけるエルカ酸アミドの含有濃度を60ppmに設定し、積層前の第2無延伸フィルム層8におけるエルカ酸アミドの含有濃度を1000ppmに設定し、積層前の第3無延伸フィルム層9におけるエルカ酸アミドの含有濃度を4000ppmに設定した以外は、実施例3と同様にして蓄電デバイス用外装材を得た。
【0113】
【0114】
【0115】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材(エージング処理済み)について下記評価法に基づいて評価を行った。その結果を表1、2に示す。
【0116】
なお、表1、2に記載の動摩擦係数は、JIS K7125-1995に準拠して各蓄電デバイス用外装材(エージング処理済み)の最内層の表面について測定した動摩擦係数である(
図1、2参照)。前記最内層の表面は、実施例1、2及び比較例1、2では第2無延伸フィルム層の表面8aであり、実施例3~11及び比較例3~14では第3無延伸フィルム層の表面9aである(
図1、2参照)。
【0117】
<外装材の最内層の表面に存在する滑剤量の評価法>
各蓄電デバイス用外装材から縦100mm×横100mmの矩形状の試験片を2枚切り出した後、これら2枚の試験片を重ね合わせて互いの内側シーラント層の周縁部同士をヒートシール温度200℃でヒートシールして袋体を作製した。この袋体の内部空間内にシリンジを用いてアセトン1mLを注入し、内側シーラント層の最内層の表面とアセトンとが接触した状態で3分間放置した後、袋体内のアセトンを抜き取った。この抜き取った液中に含まれる滑剤量をガスクロマトグラフを用いて測定、分析することにより、外装材の最内層の表面に存在する滑剤量(μg/cm2)を求めた。即ち、最内層の表面1cm2あたりの滑剤量を求めた。
【0118】
<外装材における第1無延伸フィルム層の表面7aに存在する滑剤量の評価法>
各実施例および各比較例において共押出により作成したシーラントフィルム3を縦200mm×横200mmの矩形状に切り出した後、これに40℃で10日間エージングを行った。エージング後のフィルムから縦100mm×横100mmの矩形状の試験片を2枚切り出した後、これら2枚の試験片を互いの第1無延伸フィルム層7が接触するように重ね合わせて、周縁部をナイロンフィルムで覆った後、周囲をヒートシール温度200℃でヒートシールして袋体を作製した。この袋体の内部空間内にシリンジを用いてアセトン1mLを注入し、第1無延伸フィルム層の表面(袋体の内側表面)とアセトンとが接触した状態で3分間放置した後、袋体内のアセトンを抜き取った。この抜き取った液中に含まれる滑剤量をガスクロマトグラフを用いて測定、分析することにより、第1無延伸フィルム層の表面7aに存在する滑剤量(μg/cm2)を求めた。即ち、第1無延伸フィルム層
の表面1cm2あたりの滑剤量を求めた。
【0119】
<成形性評価法>
成形深さフリーのストレート金型を用いて外装材に対し下記成形条件で深絞り1段成形を行い、各成形深さ(9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm)毎に成形性を評価し、コーナー部にピンホールが全く発生しない良好な成形を行うことができる最大成形深さ(mm)を調べた。判定は、最大成形深さが5mm以上であるものを「○」とし、最大成形深さが2mm以上5mm未満であるものを「△」とし、最大成形深さが2mm未満であるものを「×」とした。なお、ピンホールの有無は、ピンホールを透過してくる透過光の有無を目視により観察することにより調べた。
(成形条件)
成形型…パンチ:33.3mm×53.9mm、ダイ:80mm×120mm、コーナーR:2mm、パンチR:1.3mm、ダイR:1mm
しわ押さえ圧…ゲージ圧:0.475MPa、実圧(計算値):0.7MPa
材質…SC(炭素鋼)材、パンチRのみクロムメッキ。
【0120】
<白粉の有無評価法>
各蓄電デバイス用外装材から縦600mm×横100mmの矩形状の試験片を切り出した後、得られた試験片を内側シーラント層3面(即ち最内層の表面8a又は9a)を上側にして試験台の上に載置し、この試験片の上面に、黒色のウェスが巻き付けられて表面が黒色を呈しているSUS製錘(質量1.3kg、接地面の大きさが55mm×50mm)を載せた状態で、該錘を試験片の上面と平行な水平方向に引張速度4cm/秒で引っ張ることによって錘を試験片の上面に接触状態で長さ400mmにわたって引張移動させた。引張移動後の錘の接触面のウェス(黒色)を目視で観察し、ウェス(黒色)の表面に白粉が顕著に生じていたものを「×」とし、白粉がある程度(中程度)生じていたものを「△」とし、白粉が殆どないか又は白粉が認められなかったものを「○」とした。なお、上記黒色のウェスとしては、TRUSCO社製「静電気除去シートS SD2525 3100」を使用した。
【0121】
<シール強度評価法>
得られた外装材から幅15mm×長さ150mmの試験体を2枚切り出した後、これら2枚の試験体を互いの内側シーラント層同士で接触するように重ね合わせた状態で、テスター産業株式会社製のヒートシール装置(TP-701-A)を用いて、ヒートシール温度:200℃、シール圧:0.2MPa(ゲージ表示圧)、シール時間:2秒の条件にて片面加熱によりヒートシールを行った。
【0122】
次に、上記のようにして内側シーラント層同士がヒートシール接合された一対の外装材について、JIS Z0238-1998に準拠して島津アクセス社製ストログラフ(AGS-5kNX)を使用して該外装材(試験体)をシール部分の内側シーラント層同士で引張速度100mm/分で90度剥離させた時の剥離強度を測定し、これをシール強度(N/15mm幅)とした。
【0123】
このシール強度が、30N/15mm幅以上であるものを「○」(合格)とし、30N/15mm幅未満であるものを「×」とした。
【0124】
<剥離界面の凝集度の評価法>
上記シール強度(剥離強度)を測定した後の外装材の内側シーラント層の剥離部(破壊部)の両面を目視で観察し、剥離部(破壊部)の両面の白化の有無や程度(白化が強いほど凝集度が大きいと判断できる)を下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
白化が顕著に生じていて凝集度の大きいものを「○」、白化がある程度生じていて凝集度が中程度のものを「△」、白化が認められないか又は白化が殆どなくて凝集度の低いものを「×」とした。
【0125】
<ラミネート強度評価法>
得られた外装材から幅15mm×長さ150mmの試験体を切り出し、この試験体の長さ方向の端部をアルカリ性の剥離液に浸漬することによって内側シーラント層3と金属箔層(アルミニウム箔層)4とを剥離させた。JIS K6854-3(1999年)に準拠し、島津製作所製ストログラフ(AGS-5kNX)を使用して、一方のチャックで金属箔層(アルミニウム箔層)4を含む積層体を挟み付け固定し、他方のチャックで前記剥離したシーラント層3を挟み付け固定し、この状態で引張速度100mm/分でT型剥離させた時の剥離強度を測定し、これを内側シーラント層3と金属箔層4とのラミネート強度(接着強度)(N/15mm幅)とした。この剥離強度の測定は25℃環境下で行った。下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
ラミネート強度が「5.0N/15mm幅」以上であったものを「○」とし、ラミネート強度が「5.0N/15mm幅」未満であったものを「×」とした。
【0126】
表1から明らかなように、本発明のシーラントフィルムを用いて構成された実施例1~11の本発明の蓄電デバイス用外装材は、成形性に優れていて、外装材の最内層の表面に白粉が表出し難いものであると共に、十分なラミネート強度及び十分なシール強度が得られた。
【0127】
これに対し、本発明の規定範囲を逸脱している比較例1~10では、十分なラミネート強度が得られなかった。さらに、比較例2、8では、シール強度も不十分であった。また、本発明の規定範囲を逸脱している比較例11、13では、成形性が悪かったし、比較例14では最内層の表面に白粉を生じ、比較例12では、最内層の表面に白粉を生じ、シール強度が不十分であり、ラミネート強度も不十分であった。
本発明に係るシーラントフィルムを用いて製作された蓄電デバイス用外装材、本発明に係る蓄電デバイス用外装材、および本発明の製造方法により得られた蓄電デバイス用外装材は、具体例として、例えば、
・リチウム2次電池(リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等)等の蓄電デバイス
・リチウムイオンキャパシタ
・電気2重層コンデンサ
・全固体電池
等の各種蓄電デバイスの外装材として用いられる。