(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002618
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
F16L 33/03 20060101AFI20231228BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20231228BHJP
F16B 2/24 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F16L33/03
F16B7/04 302A
F16B2/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101936
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】窪田 裕人
(72)【発明者】
【氏名】秋山 智之
【テーマコード(参考)】
3H017
3J022
3J039
【Fターム(参考)】
3H017EA12
3J022DA11
3J022EA34
3J022EB12
3J022EC12
3J022EC17
3J022FA02
3J022FA08
3J022FB04
3J022FB08
3J022FB12
3J022HA02
3J022HB04
3J022HB06
3J039AA03
3J039BB01
3J039FA01
(57)【要約】
【課題】狭小なスペースでも使用可能なクリップを提供する。
【解決手段】コイルばね部2A,2Bは、直列に連接されている。コイルばね部2Aは、ポートが挿入された状態のチューブの外径より小さい所定の内径Dを有し、ポートがチューブに挿入された状態においてチューブのポートが挿入された部分を保持するものである。コイルばね部2Aの中心軸Caの方向から見た見かけのクリップ1の内接円の直径である見かけの内寸幅Daが、ポートが挿入されていない状態のチューブをクリップ1が保持可能な所定の寸法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に連接された複数のコイルばね部を備えたクリップであって、
本クリップの一方の端部に配置された前記コイルばね部は、挿入部材が挿入された状態のチューブの外径より小さい所定の内径を有し、前記挿入部材が前記チューブに挿入された状態において前記チューブの前記挿入部材が挿入された部分を保持するものであり、
前記一方の端部に配置された前記コイルばね部の中心軸方向から見た見かけの本クリップ内接円の直径が、前記挿入部材が挿入されていない状態の前記チューブを本クリップが保持可能な所定の寸法であることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
互いに隣接する前記コイルばね部の間でそれぞれの中心軸が互いに屈曲しており、
本クリップによる前記挿入部材が挿入されていない状態の前記チューブの保持力に関する前記チューブの属性に応じて、互いに隣接する前記コイルばね部の間の中心軸の屈曲角度、および前記一方の端部に配置された前記コイルばね部以外の各コイルばね部の巻き数が調整されていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
互いに隣接する前記コイルばね部の間でそれぞれの中心軸が前記コイルばね部の半径方向に互いにずれており、
本クリップによる前記挿入部材が挿入されていない状態の前記チューブの保持力に関する前記チューブの属性に応じて、前記一方の端部に配置された前記コイルばね部以外の各コイルばね部の巻き数が調整されていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項4】
互いに中心軸がずれた状態で直列に連接された複数のコイルばね部を備えたクリップであって、
本クリップの一方の端部に配置された前記コイルばね部は、挿入部材が挿入された状態のチューブを保持状態に締め付けるものであることを特徴とするクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
チューブに挿入された挿入部材からチューブが抜けることを防止するためのクリップが知られている。
【0003】
例えば、インクジェット印刷装置におけるインクの流路を構成するチューブがポート(挿入部材)から抜けることを防止するために、ポートにチューブを留めるクリップが用いられている。
【0004】
上記のように用いられるクリップとして、リング状のクリップ本体と、クリップ本体の内径を拡大するためのつまみとを備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
この種のクリップを用いて挿入部材にチューブを留める作業を行う際、まず、作業者がチューブをクリップ本体に挿入する。
【0006】
次いで、作業者が、チューブに挿入部材を挿入させる。チューブに挿入部材が挿入されたことで外径が拡大したチューブに対して、作業者がつまみを握りながらクリップを取り付け、手を放すことでクリップにより挿入部材にチューブが留められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したクリップは、クリップ本体からつまみが延出しているため、設置のためにつまみの分のスペースを必要とする。このため、狭小なスペースでの使用が困難であった。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、狭小なスペースでも使用可能なクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、直列に連接された複数のコイルばね部を備えたクリップであって、本クリップの一方の端部に配置された前記コイルばね部は、挿入部材が挿入された状態のチューブの外径より小さい所定の内径を有し、前記挿入部材が前記チューブに挿入された状態において前記チューブの前記挿入部材が挿入された部分を保持するものであり、前記一方の端部に配置された前記コイルばね部の中心軸方向から見た見かけの本クリップ内接円の直径が、前記挿入部材が挿入されていない状態の前記チューブを本クリップが保持可能な所定の寸法であることを特徴とするクリップが提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、互いに中心軸がずれた状態で直列に連接された複数のコイルばね部を備えたクリップであって、本クリップの一方の端部に配置された前記コイルばね部は、挿入部材が挿入された状態のチューブを保持状態に締め付けるものであることを特徴とするクリップが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクリップによれば、狭小なスペースでも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、第1実施形態に係るクリップの平面図である。(b)は、(a)に示すクリップの正面図である。
【
図2】ポートが挿入されていない状態のチューブをクリップが保持している状態を示す断面図である。
【
図3】
図1に示すクリップでポートにチューブを留める手順を説明するための図である。
【
図4】(a)は、
図1に示すクリップに対して中心軸の屈曲角度およびコイルばね部の巻き数を変えたクリップの平面図である。(b)は、(a)に示すクリップの正面図である。
【
図5】(a)は、比較例のクリップの平面図である。(b)は、(a)に示すクリップの正面図である。
【
図6】
図5に示すクリップでポートにチューブを留める手順を説明するための図である。
【
図7】(a)は、第1実施形態の変形例に係るクリップの平面図である。(b)は、(a)に示すクリップの正面図である。
【
図8】(a)は、第2実施形態に係るクリップの平面図である。(b)は、(a)に示すクリップの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0015】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
[第1実施形態]
図1(a)は、第1実施形態に係るクリップの平面図である。
図1(b)は、
図1(a)に示すクリップの正面図である。
【0017】
図1(a),(b)に示すように、第1実施形態に係るクリップ1は、2つのコイルばね部2A,2Bを備える。
【0018】
クリップ1は、チューブ10(
図3参照)がポート11(挿入部材に相当、
図3参照)から抜けることを防止するために、ポート11にチューブ10を留めるためのものである。
【0019】
チューブ10は、例えば、インクジェット印刷装置におけるインクの流路を構成するものである。チューブ10は、ゴム等の弾性を有する素材で形成されている。
【0020】
ポート11は、例えば、インクジェット印刷装置におけるインクジェットヘッドに設けられ、インクを供給または排出するためのチューブ10をインクジェットヘッドに接続するためのものである。ポート11がチューブ10に挿入されることで、ポート11にチューブ10が接続される。
【0021】
コイルばね部2A,2Bは、金属等からなる線材3を巻いて形成されている。コイルばね部2A,2Bは、それぞれの中心軸Ca,Cbが互いに屈曲するように直列に連接されている。
【0022】
コイルばね部2A,2Bは、それぞれの内径Dが、ポート11が挿入された状態のチューブ10の外径より小さい所定の寸法となるように形成されている。ここで、ポート11が挿入された状態のチューブ10の外径は、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10の外径より大きい。
【0023】
コイルばね部2Aは、ポート11がチューブに挿入された状態においてチューブ10のポート11が挿入された部分を保持状態に締め付けるものである。上述の内径Dは、ポート11が挿入された状態のチューブ10をコイルばね部2Aが押さえることができる寸法に設定されている。
【0024】
クリップ1は、上述のように、中心軸Ca,Cbが互いに屈曲するように形成されているため、中心軸Caの方向から見た(平面視における)、中心軸Ca,Cbの屈曲方向における見かけの内寸幅Daが、コイルばね部2A,2Bの内径Dより小さい。見かけの内寸幅Daは、中心軸Caの方向から見た見かけのクリップ1の内接円の直径である。クリップ1は、見かけの内寸幅Daが、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10の外径より小さい所定の寸法になるように形成されている。具体的には、見かけの内寸幅Daは、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10を、後述するようにクリップ1が保持可能な寸法に設定されている。見かけの内寸幅Daは、コイルばね部2A,2B間における中心軸Ca,Cbの屈曲角度α、およびコイルばね部2Bの巻き数の調整により、調整されている。
【0025】
クリップ1は、コイルばね部2A,2B間でコイルばね加工におけるピッチツールを1巻き分だけ挿入して、1ピッチ分だけピッチを広げることで製造できる。特別な加工を必要としないため、クリップ1は量産性が高い。
【0026】
次に、クリップ1の作用について説明する。
【0027】
作業者によりポート11が挿入されていない状態のチューブ10がクリップ1に挿入されると、
図2に示すように、クリップ1がチューブ10を保持することで、チューブ10にクリップ1が取り付けられる。
【0028】
このとき、
図2において線材3の断面を黒塗りで示した3箇所での3点支持により、クリップ1がチューブ10を保持する。この3点支持における、
図2における左側の2箇所の接点と右側の1箇所の接点との間の、チューブ10の軸方向に直交する方向における距離(接点間距離)は、前述した
図1の見かけの内寸幅Daと同程度であり、見かけの内寸幅Daが小さいほど、接点間距離も小さくなる。前述のように、見かけの内寸幅Daは、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10をクリップ1が、
図2に示すように保持可能な寸法に設定されている。
【0029】
次いで、作業者が、
図3の左側の図に示すように、クリップ1が取り付けられたチューブ10をポート11の近傍へ持ち運び、クリップ1が取り付けられたチューブ10にポート11を挿入させる。これにより、
図3の右側の図に示すように、チューブ10がポート11に接続され、クリップ1によりポート11にチューブ10を留めた状態となる。
【0030】
この状態では、ポート11が挿入された範囲のチューブ10の外径は、ポート11が挿入される前の状態から拡大しており、チューブ10のポート11が挿入された部分をコイルばね部2Aが押さえている。
図3の右側の図の状態において、コイルばね部2Aの上端が、チューブ10に挿入されたポート11の上端とほぼ同じ位置にある。
【0031】
次に、見かけの内寸幅Daの調整について説明する。
【0032】
前述のように、見かけの内寸幅Daは、コイルばね部2A,2B間における中心軸Ca,Cbの屈曲角度α、およびコイルばね部2Bの巻き数の調整により、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10をクリップ1が保持可能な寸法に調整されている。
【0033】
屈曲角度αが同じであれば、コイルばね部2Bの巻き数が大きいほど、見かけの内寸幅Daが小さくなる。コイルばね部2Bの巻き数が同じであれば、屈曲角度αが大きいほど、見かけの内寸幅Daが小さくなる。
【0034】
チューブ10は、材質等によって、ポート11が挿入された状態における外径が同じであっても、ポート11が挿入されていない状態における外径は異なることがある。このため、チューブ10のポート11が挿入されていない状態における外径に応じて、屈曲角度αおよびコイルばね部2Bの巻き数の調整により、見かけの内寸幅Daが調整されている。
【0035】
また、見かけの内寸幅Daが同じでも、屈曲角度αとコイルばね部2Bの巻き数との組み合わせを変えることが可能である。
【0036】
例えば、
図4(a),(b)に示すクリップ1Aは、
図1のクリップ1に対し、屈曲角度αおよびコイルばね部2Bの巻き数が異なる以外は、同様の構成である。
図4のクリップ1Aでは、
図1のクリップ1に対し、コイルばね部2Bの巻き数を大きくして、屈曲角度αを小さくすることにより、同じ見かけの内寸幅Daを実現している。
【0037】
ここで、チューブ10は、例えば、ロール状に巻かれて保管されていたことにより、曲がった状態のくせが付き、曲率を持っていることがある。
【0038】
曲率を持っているチューブ10をクリップ1に保持させようとした場合において、例えば、中心軸Ca,Cbの屈曲の向きとチューブ10の曲がりの向きとが同じであると、十分な保持力が得られず、クリップ1がチューブ10から脱落するおそれがある。
【0039】
これに対し、クリップ1Aでは、クリップ1よりも、前述した3点支持における、コイルばね部2Bにおける接点と、コイルばね部2Aにおける2つの接点のそれぞれとの間の、チューブ10の軸方向における距離を長くすることができる。これにより、クリップ1Aは、クリップ1よりも、曲率を持っているチューブ10でも安定して保持できる。
【0040】
チューブ10が曲率を持っていない、あるいは曲率が比較的小さい状態で、クリップ1Aで実現可能なチューブ10の保持力までは要求されない場合において、
図1のクリップ1の構成とすることができる。
図1のクリップ1は、
図4のクリップ1Aよりも、全長が短いコンパクトな構成とすることができる。
【0041】
このように、チューブ10が曲率を有するか否かや、チューブ10の曲率の大きさ等の、クリップ1,1Aによるポート11が挿入されていない状態のチューブ10の保持力に関するチューブ10の属性に応じて、屈曲角度αおよびコイルばね部2Bの巻き数を調整することで、クリップ1,1Aの全長が過度に大きくなることを抑えつつ、チューブ10を保持する安定性を向上させることが可能である。
【0042】
次に、比較例のクリップについて説明する。
図5(a)は、比較例のクリップの平面図である。
図5(b)は、
図5(a)に示すクリップの正面図である。
【0043】
図5(a),(b)に示すように、比較例のクリップ21は、線材を巻いて形成されたコイルばねからなるクリップ本体22と、クリップ本体22の内径Dkを拡大するためのつまみ23A,23Bとを備える。
【0044】
クリップ21を用いてポート11にチューブ10を留める際、まず、作業者が、
図6の左側の図に示すように、チューブ10をクリップ本体22に挿入する。
【0045】
次いで、作業者が、つまみ23A,23Bを握ってクリップ本体22の内径Dkを拡大させつつ、チューブ10にポート11を挿入させる。
【0046】
次いで、作業者がつまみ23A,23Bから手を放すことで、クリップ本体22の内径Dkが縮小し、ポート11が挿入されたチューブ10をクリップ21が保持する。この結果、
図6の右側の図に示すように、チューブ10がポート11に接続され、クリップ21によりポート11にチューブ10を留めた状態となる。
【0047】
上述のような比較例のクリップ21は、クリップ本体22からつまみ23A,23Bが延出しているため、設置のためにつまみ23A,23Bの分のスペースを必要とする。このため、狭小なスペースでの使用が困難である。
【0048】
また、つまみ23A,23Bの周辺に構造物や束線がある場合、つまみ23A,23Bが構造物に干渉したり、束線にダメージを与えたりするおそれがある。
【0049】
また、クリップ21を用いてポート11にチューブ10を留める作業を狭小なスペースで行う場合、つまみ23A,23Bを握ることが困難で作業性が低下するおそれがある。
【0050】
また、つまみ23A,23Bを握ったことによりクリップ本体22が塑性変形して内径Dkが拡大し、クリップ21がチューブ10を保持できなくなるおそれがある。特に、クリップ本体22の巻き数が小さい場合、クリップ本体22が塑性変形しやすい。
【0051】
これに対し、本実施形態のクリップ1,1Aでは、つまみを設ける必要がないため、狭小なスペースでも使用できる。また、クリップ1,1Aが周辺の構造物に干渉したり、束線にダメージを与えたりするおそれは小さい。また、クリップ1,1Aでは、つまみを握る作業が不要なため、作業性の低下が抑えられる。また、クリップ1,1Aが塑性変形してチューブ10を保持できなくなるおそれは小さい。
【0052】
また、比較例のクリップ21において、クリップ本体22の内径Dkを、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10をクリップ21が保持可能であり、かつ、つまみ23A,23Bを握って内径Dkを拡大させなくても、チューブ10にポート11を挿入でき、ポート11が挿入された状態のチューブ10をクリップ21が保持可能な寸法に設定される場合がある。この場合、つまみ23A,23Bは省略可能である。
【0053】
しかしながら、この場合、クリップ21およびチューブ10の公差設定に高い精度が必要である。クリップ本体22の内径Dkの加工精度が不足している場合、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10に対するクリップ21の保持が緩くなり、クリップ21が脱落して紛失するおそれがある。
【0054】
これに対し、クリップ1,1Aでは、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10を前述のように3点で支持するため、見かけの内寸幅Daとチューブ10の外径との差分によるクリップ1,1Aまたはチューブ10の変形を許容するスペースがある。このため、見かけの内寸幅Daの誤差の許容範囲を広くすることができる。この結果、要求される加工精度を抑えつつ、クリップ1,1Aにポート11が挿入されていない状態のチューブ10を保持させることができる。
【0055】
以上説明したように、クリップ1,1Aは、それぞれの中心軸Ca,Cbが互いに屈曲するように直列に連接されたコイルばね部2A,2Bを備える。コイルばね部2Aは、ポート11が挿入された状態のチューブ10の外径より小さい内径Dを有し、ポート11がチューブ10に挿入された状態においてチューブ10のポート11が挿入された部分を保持する。そして、クリップ1,1Aは、見かけの内寸幅Daが、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10をクリップ1,1Aが保持可能な寸法に設定されている。
【0056】
これにより、内径Dを拡大させるためのつまみを設けることなく、作業中にチューブ10からクリップ1,1Aが脱落することを抑えつつ、クリップ1,1Aによりポート11にチューブ10を留めることを実現できる。このように、内径Dを拡大させるためのつまみが不要であるため、前述のように、クリップ1,1Aは、狭小なスペースでも使用可能とすることができる。
【0057】
また、前述のように、クリップ1,1Aが周辺の構造物に干渉したり、束線にダメージを与えたりするおそれが抑えられる。また、クリップ1,1Aでは、つまみを握る作業が不要なため、作業性の低下が抑えられる。また、クリップ1,1Aが塑性変形してチューブ10を保持できなくなるおそれが抑えられる。また、要求される加工精度を抑えつつ、クリップ1,1Aにポート11が挿入されていない状態のチューブ10を保持させることができる。
【0058】
また、見かけの内寸幅Daを適切に設定することで、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10を、チューブ10の内径が縮小されることを抑えつつ、クリップ1,1Aに保持させることが可能である。このため、チューブ10にポート11を挿入させてクリップ1によりポート11にチューブ10を留める作業を容易にすることが可能である。
【0059】
また、クリップ1,1Aでは、クリップ1,1Aによるポート11が挿入されていない状態のチューブ10の保持力に関するチューブ10の属性に応じて、コイルばね部2A,2B間における中心軸Ca,Cbの屈曲角度α、およびコイルばね部2Bの巻き数が調整されている。これにより、クリップ1,1Aの全長が過度に大きくなることを抑えつつ、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10をクリップ1,1Aが保持する際の安定性を向上させることが可能である。
【0060】
(第1実施形態の変形例)
図7(a)は、第1実施形態の変形例に係るクリップの平面図である。
図7(b)は、
図7(a)に示すクリップの正面図である。
【0061】
図7(a),(b)に示すように、本変形例に係るクリップ1Bは、3つのコイルばね部2A~2Cを備える。クリップ1Bは、上述した第1実施形態のクリップ1に対し、コイルばね部2Bに連接されたコイルばね部2Cを追加した構成である。コイルばね部2A~2Cは、それぞれの中心軸Ca~Ccが互いに屈曲するように直列に連接されている。
【0062】
クリップ1Bでも、クリップ1と同様に、クリップ1Bの一方の端部に配置されたコイルばね部2Aが、ポート11がチューブ10に挿入された状態においてチューブ10のポート11が挿入された部分を保持するものである。そして、コイルばね部2Aの中心軸Caの方向から見た見かけの内寸幅Daが、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10をクリップ1Bが保持可能な寸法に設定されている。
【0063】
コイルばね部2A,2B間における中心軸Ca,Cbの屈曲角度α、コイルばね部2B,2C間における中心軸Cb,Ccの屈曲角度β、およびコイルばね部2A以外のコイルばね部2B,2Cの巻き数の調整により、見かけの内寸幅Daが調整されている。
【0064】
また、第1実施形態のクリップ1と同様に、クリップ1Bによるポート11が挿入されていない状態のチューブ10の保持力に関するチューブ10の属性に応じて、屈曲角度α,β、およびコイルばね部2B,2Cの巻き数が調整されている。
【0065】
クリップ1Bでも、第1実施形態のクリップ1と同様に、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10がクリップ1Bに挿入されると、クリップ1Bがチューブ10を保持することで、チューブ10にクリップ1Bが取り付けられる。
【0066】
そして、クリップ1Bが取り付けられたチューブ10にポート11を挿入させることで、チューブ10がポート11に接続される。この結果、チューブ10のポート11が挿入された部分をコイルばね部2Aが押さえ、クリップ1Bによりポート11にチューブ10を留めた状態となる。
【0067】
このような本変形例のクリップ1Bでも、上述した第1実施形態のクリップ1と同様の効果が得られる。
【0068】
なお、中心軸Ccが中心軸Cbに対して、中心軸Cbの中心軸Caに対する屈曲とは逆側に屈曲するものであってもよい。
【0069】
また、上述した第1実施形態では2つのコイルばね部2A,2Bを備えるクリップ1,1Aを示し、本変形例では3つのコイルばね部2A~2Cを備えるクリップ1Bを示したが、コイルばね部の数はこれらに限らない。複数のコイルばね部が、互いに隣接するコイルばね部の間でそれぞれの中心軸が互いに屈曲するように直列に連接されているものであればよい。
【0070】
[第2実施形態]
図8(a)は、第2実施形態に係るクリップの平面図である。
図8(b)は、
図8(a)に示すクリップの正面図である。
【0071】
図8(a),(b)に示すように、第2実施形態に係るクリップ1Cは、上述した第1実施形態のクリップ1におけるコイルばね部2A,2Bの中心軸Ca,Cbが互いに屈曲している構成を、中心軸Ca,Cbがコイルばね部2A,2Bの半径方向に互いにずれている構成に変更したものである。
【0072】
クリップ1Cでは、見かけの内寸幅Daは、中心軸Caの方向から見た、中心軸Ca,Cbのずれ方向におけるクリップ1Cの見かけの内寸の幅寸法である。クリップ1Cにおいても、見かけの内寸幅Daは、第1実施形態のクリップ1と同様に、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10をクリップ1Cが保持可能な寸法に設定されている。見かけの内寸幅Daは、コイルばね部2A,2B間における中心軸Ca,Cbのずれ量Sの調整により、調整されている。
【0073】
また、クリップ1Cでは、チューブ10が曲率を有するか否かや、チューブ10の曲率の大きさ等の、クリップ1Cによるチューブ10の保持力に関するチューブ10の属性に応じて、コイルばね部2Bの巻き数が調整されている。
【0074】
ここで、曲率を持っているチューブ10をクリップ1Cに保持させようとした場合、中心軸Ca,Cbのずれの向きとチューブ10の曲がりの向きとが同じであると、十分な保持力が得られず、クリップ1Cがチューブ10から脱落するおそれがある。
【0075】
クリップ1Cでは、後述のように、コイルばね部2A,2Bにおいてそれぞれの巻き数分の接点でチューブ10を押圧して、チューブ10を保持する。このため、コイルばね部2Bの巻き数が大きいほど、曲率が大きいチューブ10でも安定して保持できる。
【0076】
そこで、クリップ1Cによるチューブ10の保持力に関するチューブ10の属性に応じて、コイルばね部2Bの巻き数が調整することで、クリップ1Cの全長が過度に大きくなることを抑えつつ、チューブ10を保持する安定性を向上させることが可能である。
【0077】
クリップ1Cは、コイルばね部2A,2B間で1巻き分だけ巻径を大きくすることで製造できる。特別な加工を必要としないため、クリップ1Cも第1実施形態のクリップ1,1Aと同様に、量産性が高い。
【0078】
クリップ1Cでも、第1実施形態のクリップ1と同様に、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10がクリップ1Cに挿入されると、クリップ1Cがチューブ10を保持することで、チューブ10にクリップ1Cが取り付けられる。
【0079】
ここで、クリップ1Cは、第1実施形態のクリップ1における上述した3点支持ではなく、コイルばね部2A,2Bにおいてそれぞれの巻き数分の接点でチューブ10を押圧して、チューブ10を保持する。
【0080】
そして、クリップ1Cが取り付けられたチューブ10にポート11を挿入させることで、チューブ10がポート11に接続される。この結果、チューブ10のポート11が挿入された部分をコイルばね部2Aが押さえ、クリップ1Cによりポート11にチューブ10を留めた状態となる。
【0081】
このような第2実施形態のクリップ1Cでも、上述した第1実施形態のクリップ1と同様に、内径Dを拡大させるためのつまみが不要であるため、狭小なスペースでも使用できる。
【0082】
また、第1実施形態のクリップ1と同様に、クリップ1Cが周辺の構造物に干渉したり、束線にダメージを与えたりするおそれが抑えられる。また、つまみを握る作業が不要なため、作業性の低下が抑えられる。また、クリップ1Cが塑性変形してチューブ10を保持できなくなるおそれが抑えられる。
【0083】
また、クリップ1Cでは、前述のように、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10を、コイルばね部2A,2Bにおいてそれぞれの巻き数分の接点で押圧して、チューブ10を保持する。このようなクリップ1Cでも、第1実施形態のクリップ1と同様に、見かけの内寸幅Daとチューブ10の外径との差分によるクリップ1Cまたはチューブ10の変形を許容するスペースがある。このため、第1実施形態のクリップ1と同様に、要求される加工精度を抑えつつ、クリップ1Cにポート11が挿入されていない状態のチューブ10を保持させることができる。
【0084】
また、第1実施形態のクリップ1と同様に、見かけの内寸幅Daを適切に設定することで、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10を、チューブ10の内径が縮小されることを抑えつつ、クリップ1Cに保持させることが可能である。このため、チューブ10にポート11を挿入させてクリップ1によりポート11にチューブ10を留める作業を容易にすることが可能である。
【0085】
また、クリップ1Cでは、クリップ1Cによるポート11が挿入されていない状態のチューブ10の保持力に関するチューブ10の属性に応じて、コイルばね部2Bの巻き数が調整されている。これにより、クリップ1Cの全長が過度に大きくなることを抑えつつ、ポート11が挿入されていない状態のチューブ10をクリップ1Cが保持する安定性を向上させることが可能である。
【0086】
なお、上述した第2実施形態では2つのコイルばね部2A,2Bを備えるクリップ1Cを示したが、コイルばね部の数はこれらに限らない。複数のコイルばね部が、互いに隣接するコイルばね部の間でそれぞれの中心軸がコイルばね部の半径方向に互いにずれているものであればよい。また、中心軸方向の一方側に隣接するコイルばね部に対する中心軸のずれの向きが他のコイルばね部とは逆になっているコイルばね部が含まれていてもよい。
【0087】
3つ以上のコイルばね部が、互いに隣接するコイルばね部の間でそれぞれの中心軸がコイルばね部の半径方向に互いにずれるように連接されたクリップでは、一方の端部に配置されたコイルばね部(ポート11がチューブ10に挿入された状態においてチューブ10を保持するコイルばね部)以外の各コイルばね部の巻き数が、クリップによるポート11が挿入されていない状態のチューブ10の保持力に関するチューブ10の属性に応じて調整されているものとしてもよい。
【0088】
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1実施形態、第1実施形態の変形例、および第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0089】
上述した第1実施形態、第1実施形態の変形例、および第2実施形態では、コイルばね部2A以外のコイルばね部2B,2Cもコイルばね部2Aと同じ寸法の内径Dを有するものとした。しかし、コイルばね部2A以外のコイルばね部2B,2Cの内径がコイルばね部2Aの内径Dとは異なっていてもよい。
【0090】
また、1つのクリップに、互いに隣接するコイルばね部の間で中心軸が互いに屈曲している箇所と、互いに隣接するコイルばね部の間で中心軸がコイルばね部の半径方向に互いにずれている箇所との両方が含まれていてもよい。また、クリップは、互いに隣接するコイルばね部の間で中心軸が互いに屈曲しているものや中心軸がコイルばね部の半径方向に互いにずれているものに限らず、互いに中心軸がずれた状態で複数のコイルばね部が直列に連接されたものであればよい。
【0091】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0092】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0093】
(付記1)
直列に連接された複数のコイルばね部を備えたクリップであって、
本クリップの一方の端部に配置された前記コイルばね部は、挿入部材が挿入された状態のチューブの外径より小さい所定の内径を有し、前記挿入部材が前記チューブに挿入された状態において前記チューブの前記挿入部材が挿入された部分を保持するものであり、
前記一方の端部に配置された前記コイルばね部の中心軸方向から見た見かけの本クリップ内接円の直径が、前記挿入部材が挿入されていない状態の前記チューブを本クリップが保持可能な所定の寸法であることを特徴とするクリップ。
【0094】
(付記2)
互いに隣接する前記コイルばね部の間でそれぞれの中心軸が互いに屈曲しており、
本クリップによる前記挿入部材が挿入されていない状態の前記チューブの保持力に関する前記チューブの属性に応じて、互いに隣接する前記コイルばね部の間の中心軸の屈曲角度、および前記一方の端部に配置された前記コイルばね部以外の各コイルばね部の巻き数が調整されていることを特徴とする付記1に記載のクリップ。
【0095】
(付記3)
互いに隣接する前記コイルばね部の間でそれぞれの中心軸が前記コイルばね部の半径方向に互いにずれており、
本クリップによる前記挿入部材が挿入されていない状態の前記チューブの保持力に関する前記チューブの属性に応じて、前記一方の端部に配置された前記コイルばね部以外の各コイルばね部の巻き数が調整されていることを特徴とする付記1に記載のクリップ。
【0096】
(付記4)
互いに中心軸がずれた状態で直列に連接された複数のコイルばね部を備えたクリップであって、
本クリップの一方の端部に配置された前記コイルばね部は、挿入部材が挿入された状態のチューブを保持状態に締め付けるものであることを特徴とするクリップ。
【符号の説明】
【0097】
1,1A~1C, クリップ
2A~2C コイルばね部
3 線材
10 チューブ
11 ポート
21 クリップ
22 クリップ本体
23A,23B つまみ
Ca~Cc 中心軸