(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026188
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、計測装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20240220BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240220BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20240220BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20240220BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20240220BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240220BHJP
【FI】
G08G1/01
G09B29/00 Z
G09B29/10 Z
G16Y40/60
G16Y20/20
G16Y10/40
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200371
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2022107526の分割
【原出願日】2016-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】幸田 健志
(72)【発明者】
【氏名】水戸 研司
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地図の更新を確実かつ正確に実行することが可能な情報処理装置及び計測装置を提供する。
【解決手段】サーバ装置4は、地物に関する地物情報を含む高度化地
図DB43を記憶部42に記憶する。そして、サーバ装置4は、地物を計測する外界センサを搭載する複数の車載機から、地物情報と当該地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報Idfを受信する。また、サーバ装置4は、複数の差異情報Idfに基づいて算出した信頼度に応じて、実際の地物の計測データである生データの送信を要求する生データ要求信号SRを、車載機に送信する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地物に関する地物情報を記憶する記憶部と、
地物を計測する計測装置を搭載する複数の移動体から、地物情報と当該地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報を受信する受信部と、
複数の前記差異情報に基づいて算出した信頼度に応じて、前記実際の地物の計測データの送信を前記複数の移動体または他の移動体に対して要求する要求部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データを更新する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設置されたセンサの出力に基づき地図データを更新する技術が知られている。例えば、特許文献1には、最新の地図データを管理しているサーバと、サーバから地図の更新情報を受信するナビゲーション装置とを有するナビゲーションシステムにおいて、センサにて地図データの変化を検知した場合に、検知した地点における地図の更新要求頻度を上げる設定を行うナビゲーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各車両がセンサにより地図データに対する変化点を検出した場合に、その変化点に関するデータを、地図データを管理するサーバに送信することで、地図データの更新を行うシステムが知られている。このようなシステムでは、サーバは、例えば、所定個数以上の同一又は類似の変化点のデータを受信した場合に、当該変化点について信頼できると判断し、当該変化点のデータを地図データに反映させる。一方、変化の信頼性が中程度の場合(即ち変化したか否か明確に判定できない場合)には、実際に変化があったにも関わらず地図データに反映できなかったり、実際には変化がなかったにも関わらず地図データに誤った変化を反映してしまったりする可能性がある。一方、自動運転で利用するような高度化地図においては、地図に変化が生じた場合は確実かつ正確に更新する必要がある。特許文献1には、上記の課題については、何ら開示及び示唆がない。
【0005】
本発明は、例えば、上記のような課題を解決するためになされたものであり、地図の更新を確実かつ正確に実行することが可能な情報処理装置及び計測装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、情報処理装置であって、地物に関する地物情報を記憶する記憶部と、地物を計測する計測装置を搭載する複数の移動体から、地物情報と当該地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報を受信する受信部と、複数の前記差異情報に基づいて算出した信頼度に応じて、前記実際の地物の計測データの送信を前記複数の移動体または他の移動体に対して要求する要求部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、移動体に搭載される計測装置であって、前記移動体周辺に存在する物体の位置を計測する計測部と、前記計測部による計測データを逐次記憶する記憶部と、地物に関する地物情報を記憶する記憶部を備える外部装置から、前記地物に関連する位置の情報を含む送信要求を受信する受信部と、前記移動体の位置と前記送信要求に含まれる位置とが所定距離内となった後に、前記記憶部に記憶された計測データを前記外部装置に送信する送信部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、地物に関する地物情報を記憶する記憶部を有する情報処理装置が実行する制御方法であって、地物を計測する計測装置を搭載する複数の移動体から、地物情報と当該地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報を受信する受信工程と、複数の前記差異情報に基づいて算出した信頼度に応じて、前記実際の地物の計測データの送信を前記複数の移動体または他の移動体に対して要求する要求工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項に記載の発明は、移動体に搭載され、前記移動体周辺に存在する物体の位置を計測する計測部を有する計測装置が実行する制御方法であって、前記計測部による計測データを記憶部に逐次記憶する記憶工程と、地物に関する地物情報を記憶する記憶部を備える外部装置から、前記地物に関連する位置の情報を含む送信要求を受信する受信工程と、前記移動体の位置と前記送信要求に含まれる位置とが所定距離内となった後に、前記記憶部に記憶された計測データを前記外部装置に送信する送信工程と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】(A)車載機の機能的構成を示す。(B)サーバ装置の機能的構成を示す。
【
図3】車載機及びサーバ装置の機能的な関係を示す機能ブロック図である。
【
図5】生データ要求信号のデータ構造の一例である。
【
図7】実施例に係る処理手順を示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、情報処理装置は、地物に関する地物情報を記憶する記憶部と、地物を計測する計測装置を搭載する複数の移動体から、地物情報と当該地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報を受信する受信部と、複数の前記差異情報に基づいて算出した信頼度に応じて、前記実際の地物の計測データの送信を前記複数の移動体または他の移動体に対して要求する要求部と、を備える。
【0012】
上記情報処理装置は、記憶部と、受信部と、要求部とを備える。記憶部は、地物に関する地物情報を記憶する。受信部は、地物を計測する計測装置を搭載する複数の移動体から、地物情報と当該地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報を受信する。要求部は、複数の差異情報に基づいて算出した信頼度に応じて、実際の地物の計測データの送信を複数の移動体または他の移動体に対して要求する。この態様により、情報処理装置は、差異情報に基づき、変更がある可能性がある地物について、移動体から対象の地物の計測データを取得して分析し、地物の変化を的確に判定することができる。
【0013】
上記情報処理装置の一態様では、前記計測データは、前記差異情報よりも大容量である。この態様により、情報処理装置は、不要な計測データの送受信に伴う通信量の増加を好適に抑制しつつ、地物の変化を的確に判定することができる。
【0014】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記信頼度が所定の上限値を超える場合は、前記地物情報を更新し、前記信頼度が所定の下限値に満たない場合は、前記地物情報を更新しない更新部を備え、前記要求部は、前記信頼度が前記上限値以下かつ前記下限値以上である場合に、前記計測データの送信を要求する。この態様により、情報処理装置は、不要な計測データの送受信に伴う通信量の増加を好適に抑制しつつ、差異情報のみでは地物の変化を的確に判定できない場合であっても、計測データに基づき地物の変化を的確に判定することができる。
【0015】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記要求部は、前記信頼度の算出に必要な数の前記差異情報を所定期間内に受信できない場合、前記計測データの送信を要求する。この態様により、情報処理装置は、差異情報が必要数収集できずに地物の変化の有無を正確に判定できない場合であっても、計測データに基づき地物の変化を的確に判定することができる。
【0016】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記計測データは、レーザを照射する測距装置が生成する三次元データである。この態様により、情報処理装置は、計測データに基づき地物の変化の有無を的確に判定することができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態によれば、移動体に搭載される計測装置であって、前記移動体周辺に存在する物体の位置を計測する計測部と、前記計測部による計測データを逐次記憶する記憶部と、地物に関する地物情報を記憶する記憶部を備える外部装置から、前記地物に関連する位置の情報を含む送信要求を受信する受信部と、前記移動体の位置と前記送信要求に含まれる位置とが所定距離内となった後に、前記記憶部に記憶された計測データを前記外部装置に送信する送信部と、を備える。この態様では、計測装置は、地物情報を管理する外部装置から地物に関連する位置の情報を含む送信要求を受信した場合に、外部装置が地物情報の変更等に関する解析等を好適に実行できるように、対象の地物の計測データを外部装置に送信することができる。
【0018】
上記計測装置の一態様では、前記記憶部は、前記移動体の位置が変化した場合に前記計測データを更新する。この態様により、計測装置は、同一地点で計測された計測データが重複して記憶部に記憶されるのを好適に抑制することができる。
【0019】
上記計測装置の他の一態様では、前記記憶部は、前記移動体のそれぞれ異なる複数の位置に対応する複数の前記計測データを記憶するものであって、前記移動体の位置が変化した場合に、最も長い期間記憶された計測データを1つ消去し、前記計測部による新たな計測データを1つ記憶する。この態様により、計測装置は、直近の所定距離内を走行した際に生成した計測データを記憶部に記憶させることができる。
【0020】
本発明の他の好適な実施形態によれば、地物に関する地物情報を記憶する記憶部を有する情報処理装置が実行する制御方法であって、地物を計測する計測装置を搭載する複数の移動体から、地物情報と当該地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報を受信する受信工程と、複数の前記差異情報に基づいて算出した信頼度に応じて、前記実際の地物の計測データの送信を前記複数の移動体または他の移動体に対して要求する要求工程と、を有する。情報処理装置は、この制御方法を実行することで、差異情報に基づき、変更がある可能性がある地物について、移動体から対象の地物の計測データを取得して分析し、地物の変化を的確に判定することができる。
【0021】
本発明の他の好適な実施形態によれば、移動体に搭載され、前記移動体周辺に存在する物体の位置を計測する計測部を有する計測装置が実行する制御方法であって、前記計測部による計測データを記憶部に逐次記憶する記憶工程と、地物に関する地物情報を記憶する記憶部を備える外部装置から、前記地物に関連する位置の情報を含む送信要求を受信する受信工程と、前記移動体の位置と前記送信要求に含まれる位置とが所定距離内となった後に、前記記憶部に記憶された計測データを前記外部装置に送信する送信工程と、を有する。計測装置は、この制御方法を実行することで、地物情報を管理する外部装置から地物に関連する位置の情報を含む送信要求を受信した場合に、外部装置が地物情報の変更等に関する解析等を好適に実行できるように、対象の地物の計測データを外部装置に送信することができる。
【0022】
好適な例では、プログラムは、上記いずれかに記載の情報処理装置又は計測装置としてコンピュータを機能させる。コンピュータは、上述のプログラムを実行することで、好適に上記記載の情報処理装置又は計測装置として機能する。
【実施例0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0024】
[システム構成]
図1は、本実施例に係る高度化地図システムの概略構成である。高度化地図システムは、地物を計測するための外界センサを備える複数の車載機1(1A、1B、…)と、高度化地
図DB43を記憶するサーバ装置4とを備える。そして、高度化地図システムは、高度化地
図DB43に登録された道路周辺の地物の位置や形状などの地物に関する情報(「地物情報」とも呼ぶ。)を的確に更新する。
【0025】
車載機1は、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)やカメラなどの1または複数の外界センサを有し、外界センサの出力に基づき自車位置の高精度な推定などを行う。
【0026】
本実施例では、車載機1は、外界センサの出力に基づき、高度化地
図DB43に登録された地物情報の差異を検出し、検出した差異に関する情報(「差異情報Idf」とも呼ぶ。)をサーバ装置4へ送信する。また、車載機1は、外界センサが出力する未加工のデータ(所謂生データ)を要求する信号(「生データ要求信号SR」とも呼ぶ。)を受信した場合に、生データ要求信号SRが指定する位置を検出対象範囲に含んだ生データに関する情報(「生データ情報Irw」とも呼ぶ。)をサーバ装置4へ送信する。以後では、説明の便宜上、差異情報Idfを送信する車載機1を適宜「車載機1A」と呼び、生データ要求信号SRに基づき生データ情報Irwを送信する車載機1を適宜「車載機1B」と呼ぶ。なお、各車両に搭載される車載機1は、実際には車載機1A及び車載機1Bの両方の機能を有してもよい。車載機1は、本発明における「計測装置」の一例である。
【0027】
サーバ装置4は、道路周辺に存在する各地物に対応した地物情報を含む高度化地
図DB43を記憶し、車載機1の要求に応じて高度化地
図DB43の一部又は全部を配信する。高度化地
図DB43に地物情報として登録される地物は、例えば、道路脇に周期的に並んでいるキロポスト、100mポスト、デリニエータ、交通インフラ設備(例えば標識、方面看板、信号)、電柱、街灯などの人工的な地物の他、樹木などの天然の地物であってもよい。本実施例では、サーバ装置4は、車載機1Aから受信する差異情報Idfに基づき、高度化地
図DB43に登録される地物情報の変化の有無を判定する。このとき、サーバ装置4は、差異情報Idfの信頼度(「信頼度Rdf」とも呼ぶ。)を算出し、算出した信頼度Rdfに応じて車載機1に生データ要求信号SRを送信する。そして、サーバ装置4は、生データ要求信号SRに基づく生データ情報Irwを受信した場合に、生データ情報Irwに含まれる生データを解析し、高度化地
図DB43に登録された地物情報の更新の要否及び更新内容を決定する。サーバ装置4は、本発明における「情報処理装置」及び「外部装置」の一例である。
【0028】
[車載機及びサーバ装置の構成]
図2(A)は、車載機1の機能的構成を示すブロック図である。車載機1は、主に、通信部11と、記憶部12と、センサ部13と、入力部14と、制御部15と、出力部16とを有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0029】
通信部11は、制御部15の制御に基づき、差異情報Idf、生データ要求信号SR、生データ情報Irwなどのデータ通信をサーバ装置4と行う。また、通信部11は、制御部15の制御に基づき、地物情報を含む地図データをサーバ装置4から受信する。
【0030】
記憶部12は、制御部15が実行するプログラムや、制御部15が所定の処理を実行するのに必要な情報を記憶する。例えば、記憶部12は、通信部11から受信した地物情報を含む地図データを記憶する。
【0031】
また、本実施例では、車載機1Bの記憶部12は、直近の所定距離分の走行区間内で生成された生データを一時的に記憶するための生データ用キャッシュ21に記憶する。後述するように、制御部15は、所定距離だけ車両が走行するごとに、外界センサ31の最新の生データを、該生データを取得した際の時刻、自車位置および自車姿勢の情報と紐付けして、生データ用キャッシュ21に記憶させる。この時、生データを生成するのに利用された外界センサ31の位置、種別、および設定条件に関する情報についても、生データ用キャッシュ21に記憶させるようにしてもよい。この場合、生データ用キャッシュ21は、先入先出法に基づき、最も長い期間記憶された生データを削除して最新の生データを新たに記憶する。このように、制御部15は、時間に応じて生データを蓄積せずに、走行距離に応じて生データを蓄積することで、車両の停車時に同じ場所で生成された生データが生データ用キャッシュ21に重複して蓄積されるのを好適に抑制することができる。
【0032】
センサ部13は、車両の周辺に存在する地物を計測するための1または複数の外界センサ31と、GPS受信機32と、ジャイロセンサ33と、加速度センサ34と、速度センサ35とを含む。外界センサ31は、ライダやカメラなどの車両の周辺に存在する地物等を計測し、その計測データを制御部15へ出力する。例えば、ライダは、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群情報を計測データとして出力する。また、カメラは、所定間隔ごとに生成する撮影画像データを制御部15へ出力する。外界センサ31は、本発明における「計測部」の一例である。
【0033】
入力部14は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、出力部16は、例えば、制御部15の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。
【0034】
制御部15は、プログラムを実行するCPUなどを含み、車載機1の全体を制御する。例えば、制御部15は、GPS受信機32等の出力に基づき予測した自車位置を指定した地図データの要求信号をサーバ装置4へ通信部11により送信することで、サーバ装置4から地物情報を含む自車位置周辺の地図データを通信部11により受信して記憶部13に記憶させる。また、制御部15は、通信部11を介し、差異情報Idfの送信処理、生データ要求信号SRの受信処理、生データ情報Irwの送信処理を行い、本発明における「受信部」及び「送信部」として機能する。
【0035】
図2(B)は、サーバ装置4の機能的構成を示すブロック図である。サーバ装置4は、主に、制御部45の制御に基づき車載機1とデータ通信を行う通信部41と、記憶部42と、制御部45とを有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0036】
記憶部42は、制御部45が実行するプログラムや、制御部45が所定の処理を実行するのに必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部42は、高度化地
図DB43を記憶する。高度化地
図DB43は、車載機1の外界センサ31による検出対象となる各地物に対応する地物情報を含んでいる。また、記憶部42は、後述するように、制御部45の制御に基づき、複数の車載機1から受信した差異情報Idf及び生データ情報Irwを蓄積する。
【0037】
制御部45は、プログラムを実行するCPUなどを含み、サーバ装置4の全体を制御する。例えば、制御部45は、通信部41により地図データの要求信号を受信した場合に、当該要求信号に含まれる位置情報が示す位置周辺の地物情報を含む地図データを、高度化地
図DB43から抽出して要求元の車載機1に送信する。また、本実施例では、制御部45は、機能的には、後述する差異情報受信部46と、生データ要求部47と、地図更新部48とを含む。
【0038】
[地図更新処理]
次に、高度化地
図DB43の更新処理の詳細について説明する。
【0039】
(1)機能ブロック
図3は、車載機1(1A、1B)とサーバ装置4の各要素との機能的な関係を示す機能ブロック図である。
【0040】
差異情報受信部46は、高度化地
図DB43に地物情報が登録された地物の変化を検出した車載機1Aから、地物の変化を示す差異情報Idfを、通信部41より受信する。ここで、差異情報Idfは、地物の計測データなどは含まず、生データ情報Irwよりもデータ容量が小さい。また、差異情報Idfには、地物の識別情報(「地物ID」とも呼ぶ。)が含まれており、いずれの地物に関する情報であるかが識別可能となっている。差異情報受信部46は、本発明における「受信部」の一例である。なお、車載機1Aは、地物の変化を検出したか否かに関わらず、外界センサ31の出力に基づく地物の検出結果を示す差異情報Idfを、差異情報受信部46へ送信してもよい。この場合、差異情報Idfには、対象の地物の差異を検出したか否かの情報が含まれる。
【0041】
生データ要求部47は、記憶部42に記憶された地物ごとの差異情報Idfに基づき、信頼度Rdfを算出する。この場合、生データ要求部47は、例えば、各地物に対して検出処理が行われた母数を推定し、当該母数に対して地物の消失や変更を指し示す差異情報Idfの割合に基づき信頼度Rdfを算出する。この場合、生データ要求部47は、各車載機1から定期的に受信する位置情報等を参照することで、対象の地物を検出可能な路線を通過した車載機1をカウントして上述の母数を算出してもよく、当該路線の統計的な交通量を参照することで上述の母数を推定してもよい。また、他の例では、生データ要求部47は、差異情報Idfが地物に変化がなかったときにも送信される場合には、受信した差異情報Idfの数に基づき上述の母数を算出してもよい。また、他の例では、生データ要求部47は、地物の消失や変更を指し示す差異情報Idfの個数のみに基づき対応する信頼度Rdfを算出してもよい。さらに別の例では、受信した差異情報Idfに含まれる、地物検出処理に用いた外界センサ31の種別、または車両の種別を示す情報を識別し、特定の種別の外界センサ31または車両によって検出された差異情報Idfに重み付けして、若しくは、特定の種別の外界センサ31または車両によって検出された差異情報Idfのみに基づいて、信頼度Rdfを算出してもよい。
【0042】
そして、生データ要求部47は、算出した信頼度Rdf等に基づき、生データ情報Irwを解析して地物情報の変化の有無を詳細に解析する必要があると判断した場合、車載機1Bに生データ要求信号SRを送信する。この場合、後述するように、生データ要求信号SRには、検出対象となる地物の位置情報が含まれている。この場合、例えば、生データ要求部47は、生データ情報Irwが必要な地物が存在する位置から所定距離以内に存在する車載機1Bに生データ要求信号SRを送信する。なお、生データ要求部47は、例えば、道路上を走行する各車載機1から位置情報を所定間隔ごとに受信することで、各車載機1の位置を特定する。
【0043】
ここで、生データ要求信号SRの送信タイミングについて具体例を用いて補足説明する。
【0044】
例えば、生データ要求部47は、信頼度Rdfが所定の上限閾値(「第1閾値」とも呼ぶ。)以下であって、所定の下限閾値(「第2閾値」とも呼ぶ。)以上の場合に、地物情報の変化の有無を詳細に解析する必要があると判断し、生データ要求信号SRを送信する。例えば、上述の第1閾値は、差異情報Idfが信頼できる情報であると断定可能か否かを判定するための閾値であり、上述の第2閾値は、差異情報Idfが信頼できない情報であると断定可能か否かを判定するための閾値である。第1閾値は、本発明における「所定の上限値」の一例であり、第2閾値は、本発明における「所定の下限値」の一例である。
【0045】
他の例では、生データ要求部47は、高度化地
図DB43に地物情報が登録された地物のうち、所定期間内に信頼度Rdfの算出に必要な個数の差異情報Idfが集まらなかった地物が存在する場合に、当該地物の位置を指定した生データ要求信号SRを送信する。さらに別の例では、生データ要求部47は、地図データ中の道路と実際の道路とが異なることを検出した旨の通知情報を車載機1から受信した場合に、当該道路周辺の位置を指定した生データ要求信号SRを送信する。
【0046】
そして、生データ要求部47は、生データ要求信号SRの応答として、車載機1Bから対象の地物を計測した生データを含む生データ情報Irwを、通信部41を介して受信する。そして、生データ要求部47は、受信した生データ情報Irwを、記憶部42に蓄積する。生データ要求部47は、本発明における「要求部」の一例である。
【0047】
地図更新部48は、記憶部42に記憶された生データ情報Irwに基づき高度化地
図DB43の地物情報を更新する。例えば、地図更新部48は、同一の地物を対象とした所定個数以上の生データ情報Irwが記憶部42に蓄積された場合に、蓄積した生データ情報Irwを解析することで、対応する地物の変化の有無を判定する。そして、地図更新部48は、解析結果に基づき、対象の地物の位置、形状等の変更又は消失等があったと判断した場合、高度化地
図DB43に登録された対象の地物の地物情報を、解析結果に基づき変更する。地図更新部48は、本発明における「更新部」の一例である。
【0048】
ここで、車載機1Bが生データ要求信号SRを受信した場合の処理について補足説明する。
【0049】
例えば、車載機1Bは、外界センサ31の検出対象範囲が車両の前方方向に存在する場合等には、生データ要求信号SRに含まれる位置情報が示す位置に所定距離以内に接近したときに、生データ用キャッシュ21に記憶された生データの一部又は全部を抽出し、生データ情報Irwとしてサーバ装置4へ送信する。上述の所定距離は、例えば外界センサ31の検出可能距離の範囲内で且つ、その物体の検出に必要十分な距離などに設定される。他の例では、車載機1Bは、外界センサ31の検出範囲が車両の後方や側面方向を含む場合などでは、生データ要求信号SRに含まれる位置情報が示す位置を通過後に所定距離以上離れたときに、生データ用キャッシュ21に記憶された生データの一部又は全部を抽出し、生データ情報Irwとしてサーバ装置4へ送信する。車載機1Bは、生データ要求信号SRに含まれる位置情報が示す位置から所定距離以内に接近する、または接近後に所定距離以上離れるという条件を満たした時点で、即時に生データ情報Irwを送信してもよいし、条件を満たした後の任意のタイミングで送信してもよい。
【0050】
これらの例によれば、車載機1Bは、生データ要求信号SRで指定された位置に存在する地物を対象範囲に含む生データを好適にサーバ装置4へ送信することができる。さらに、車載機1Bは、生データ用キャッシュ21に記憶された複数の位置で生成された生データを含む生データ情報Irwを送信することで、対象の地物が停車車両などの死角に一時的に入り、対象の地物が生データ情報Irwに含まれていない場合であっても、好適にサーバ装置4に複数の生データから地物の位置及び形状等を統計的に検出させることができる。
【0051】
(2)データ構造
次に、差異情報Idf、生データ要求信号SR、及び生データ情報Irwの各データ構造の具体例について説明する。
【0052】
(2-1)差異情報
図4は、地物の変化を検出した際に車載機1Aが生成する差異情報Idfのデータ構造の一例である。
図4に示す地物情報IFは、ヘッダ情報と、ボディ情報とを含む。
【0053】
ヘッダ情報は、「ヘッダID」、「バージョン情報」、「差異検出時の時刻情報」、「差異検出時の自車位置情報」、「差異検出時の自車姿勢情報」の各フィールドを含む。「ヘッダID」には、差異情報Idfであることを示す識別情報が登録される。「バージョン情報」には、ボディ情報のデータ構造のバーションが登録される。「差異検出時の時刻情報」、「差異検出時の自車位置情報」、「差異検出時の自車姿勢情報」には、それぞれ、地物の変化(即ち差異)を検出した時の時刻情報、位置情報、及び車両の姿勢情報が登録される。この場合、車載機1は、例えば、ジャイロセンサ33、加速度センサ34などの内界センサからの検出信号に基づき、地物検出時での車両のロール角、ピッチ角、及びヨー角を算出し、これらの角度の情報を「差異検出時の自車姿勢情報」に登録する。
【0054】
ボディ情報は、「地物ID」、「変化特定フラグ」、「センサ種別情報」の各フィールドを含む。「地物ID」には、高度化地
図DB43の中で一意に割り当てられる地物の識別情報が登録される。地物IDは、対象の地物を段階的に特定する複数のIDにより構成されていてもよい。例えば「道路標識A」の地物IDは、「道路標識」という種別を表すIDと、道路標識の中の一種である「A」を示すIDとから構成されていてもよい。この場合、これらのIDは異なるフィールドに登録されてもよい。
【0055】
「変化特定フラグ」には、変化したことを示すフラグが登録される。例えば、「変化特定フラグ」には、対象の地物が消滅したことを示すフラグ、対象の地物の位置が変化したことを示すフラグ、対象の地物が変形したことを示すフラグなどが登録される。「センサ種別情報」には、地物検出処理に用いた外界センサ31の種別を示す情報が登録される。なお、「センサ種別情報」に代えて、又はこれに加えて、車両の種別を示す「車種情報」が設けられてもよい。
【0056】
このように、差異情報Idfには、データ容量が多いデータを登録するフィールドが存在しないため、外界センサ31の計測データ(生データ)を含む生データ情報Irwと比べてデータ容量が少ない。
【0057】
(2-2)生データ要求信号
図5は、生データ要求信号SRのデータ構造の一例を示す。
図5の例では、生データ要求信号SRは、ヘッダ情報として、生データ要求信号SRであることを示す「ヘッダID」と「バージョン情報」を含むと共に、ボディ情報として、「位置情報」及び「生データ送信条件」を含む。
【0058】
ここで、「位置情報」には、生データ情報Irwを取得する対象となる地点(即ち変更の有無の判定対象となる地物の位置)を特定する情報が登録される。好適には、「位置情報」に加えて、「地物ID」のフィールドがさらに設けられる。
【0059】
「生データ送信条件」には、生データ情報Irwの取得時の条件を規定する情報が登録される。ここでは、「生データ送信条件」は、「自車位置条件」、「走行速度条件」、「時間帯条件」、「センサ条件」の各サブフィールドを含む。「自車位置条件」には、生データ情報Irwの取得時の車両の位置に関する条件が登録され、例えば、生データ情報Irwを取得するときの、車線を指定した車線番号および、車両の姿勢を指定などが登録されている。「走行速度条件」には、生データ情報Irwの取得時の車両速度の条件(例えばx(「x」は正数)km/h以下など)が登録される。「時間帯条件」には、生データ情報Irwを取得する際の時間帯の条件が登録される。
【0060】
「センサ条件」は、生データ情報Irwに含める生データを生成する外界センサ31に関する条件が登録され、「センサ種別条件」と「センサデータ条件」の各サブフィールドから構成される。「センサ種別条件」は、生データ情報Irwを生成する外界センサ31の種別(例えばライダ又はカメラ等)を規定する情報が登録される。「センサデータ条件」には、センサ種別条件で指定した外界センサ31に対する生データの生成時の設定などの条件が登録される。例えば、ライダの場合、「センサデータ条件」には、y(yは正数)メートル以上離れた対象物の点群情報のみを生データとして送信すべき旨、所定輝度以上となる点群情報のみを生データとして送信すべき旨などが登録される。さらに「センサ条件」として、車両の複数の位置に外界センサ31が存在する場合に、生データの生成に使用された外界センサ31の位置条件を指定するサブフィールドを設けてもよい。つまり、「センサ条件」には、生データを生成する外界センサ31および、その設定に関する条件を指定する情報が登録される。
【0061】
なお、生データ情報Irwの要否を示すフラグ情報(例えば要の場合を「1」、不要の場合を「0」とする。)を格納する「生データ送信要求フラグ」などのフィールドがさらにボディ情報に設けられてもよい。
【0062】
(2-3)生データ情報
図6は、生データ要求信号SRを受信した車載機1Bが生成する生データ情報Irwのデータ構造の一例を示す。
図6に示す地物情報IFは、ヘッダ情報と、ボディ情報とを含む。
【0063】
ヘッダ情報は、「ヘッダID」、「バージョン情報」、「生データ取得時の時刻情報」、「生データ取得時の自車位置情報」、「生データ取得時の自車姿勢情報」の各フィールドを含む。「ヘッダID」には、生データ情報Irwであることを示す識別情報が登録される。「バージョン情報」には、ボディ情報のデータ構造のバーションが登録される。「生データ取得時の時刻情報」、「生データ取得時の自車位置情報」、「生データ取得時の自車姿勢情報」には、それぞれ、ボディ情報に含まれる生データの生成時の時刻情報、位置情報、及び車両の姿勢情報が登録される。
【0064】
ボディ情報は、「生データの種類ID」、「生データサイズ」、「生データ」の各フィールドを含む。「生データの種類ID」には、生データの種類を示す識別情報又は生データを出力した外界センサ31の種類を示す識別情報が登録される。「生データサイズ」には、「生データ」に登録される生データのサイズ情報が登録される。「生データ」には、生データ用キャッシュ21から抽出された生データが登録される。
【0065】
(3)処理フロー
図7は、差異情報Idfを生成する車載機1Aと、サーバ装置4と、サーバ装置4から生データ要求信号SRを受信して生データ情報Irwを生成する車載機1Bとのそれぞれの処理手順を示すフローチャートである。車載機1A、サーバ装置4、及び車載機1Bは、
図7に示すフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0066】
まず、車載機1Aは、GPS受信機32、ジャイロセンサ33、加速度センサ34、速度センサ35等の出力に基づき、車両の現在位置、姿勢、速度等を検出する(ステップS11)。
【0067】
次に、車載機1Aは、外界センサ31の出力に基づく地物検出処理を行う(ステップS12)。この場合、例えば、車載機1Aは、ステップS11で予測した現在位置周辺に存在する地物を記憶部12に記憶した地物情報に基づき特定し、当該地物を外界センサ31の出力に基づき検出する処理を行う。なお、この場合、車載機1Aは、例えば、サーバ装置4から自車位置周辺の地物情報を含む地図データを定期的にサーバ装置4から受信しておくことで、高度化地
図DB43に登録された地物情報と同一内容の地物情報を記憶部12に保有しておく。
【0068】
そして、車載機1Aは、検出対象の地物に変化があるか否か判定する(ステップS13)。この場合、例えば、車載機1Aは、ステップS11で予測した現在位置及び外界センサ31の出力に基づき特定した地物の位置及び形状等と、記憶部12に記憶した地物情報が示す地物の位置及び形状等とを比較することで、対象の地物の位置又は形状の変更や対象の地物の消失等が発生したか否か判定する。そして、車載機1Aは、検出対象の地物に変化があると判断した場合(ステップS13;Yes)、差異情報Idfを生成し、サーバ装置4へ送信する(ステップS14)。一方、車載機1Aは、検出対象の地物に変化がないと判断した場合(ステップS13;No)、ステップS11へ処理を戻す。なお、車載機1Aは、検出対象の地物に変化がないと判断した場合であっても、検出対象の地物に変化がなかった旨の情報を、検出対象の地物の地物ID等と共にサーバ装置4へ送信してもよい。この場合の差異情報Idfは、例えば、信頼度Rdfの算出に用いられる。
【0069】
サーバ装置4は、複数の車両の車載機1Aから送信される差異情報Idfを受信して蓄積する(ステップS21)。そして、サーバ装置4は、差異情報Idfが蓄積された地物ごとに、以下のステップS22~S27の処理を実行する。
【0070】
サーバ装置4は、差異情報Idfが蓄積された地物について、蓄積した差異情報Idfが消失を示し、かつ、その信頼度Rdfが第1閾値を超えたか否か判定する(ステップS22)。そして、サーバ装置4は、蓄積した差異情報Idfが消失を示し、かつ、その信頼度Rdfが第1閾値を超えたと判断した場合(ステップS22;Yes)、当該差異情報Idfが信頼できると判断し、高度化地
図DB43の更新を行う(ステップS27)。具体的には、この場合、サーバ装置4は、対象の地物に関する地物情報を高度化地
図DB43から削除する、又は、当該地物が消失した旨の情報を地物情報に付加する。
【0071】
一方、サーバ装置4は、蓄積した差異情報Idfが消失以外の変更を示しているか、又は、信頼度Rdfが第1閾値以下である場合(ステップS22;No)、生データ要求条件を満たすか否か判定する(ステップS23)。例えば、サーバ装置4は、信頼度Rdfが第2閾値未満の場合には、対応する差異情報Idfは信頼性が低いと判断し、生データ要求条件を満たさないと判断する。他の例では、サーバ装置4は、蓄積した差異情報Idfが消失以外の変更を示し、かつ、その信頼度Rdfが第2閾値以上の場合、生データ要求条件を満たすと判断する。さらに別の例では、サーバ装置4は、蓄積した差異情報Idfが消失を示し、かつ、その信頼度Rdfが第1閾値以下かつ第2閾値以上の場合、生データ要求条件を満たすと判断する。さらに別の例では、サーバ装置4は、信頼度Rdfの算出に必要な個数の差異情報Idfが集まらなかった場合に、生データ要求条件を満たすと判断する。
【0072】
そして、サーバ装置4は、生データ要求条件を満たすと判断した場合(ステップS23;Yes)、対象の地物の位置等を指定した生データ要求信号SRを、対象の地物の周辺位置に存在する車載機1Bに対して送信する(ステップS24)。一方、サーバ装置4は、生データ要求条件を満たさないと判断した場合(ステップS23;No)、ステップS21へ処理を戻す。
【0073】
道路を走行する各車両に搭載される車載機1Bは、外界センサ31から出力された所定走行距離分の生データを生データ用キャッシュ21に記憶する(ステップS31)。そして、車載機1Bは、サーバ装置4から生データ要求信号SRを受信した場合、生データ要求信号SRが示す生データの要求位置の情報を記憶する(ステップS32)。
図5の例では、車載機1Bは、ボディ情報の「位置情報」に登録された情報を、上述の生データの要求位置の情報として記憶する。
【0074】
そして、車載機1Bは、ステップS32で記憶した生データの要求位置の周辺を走行しているか否か判定する(ステップS33)。そして、車載機1Bは、生データの要求位置の周辺を走行していると判断した場合(ステップS33;Yes)、生データ用キャッシュ21に記憶した生データのうち、生データ要求信号SRに含まれるボディ情報の「生データ送信条件」に登録された情報に対応する生データを含む生データ情報Irwをサーバ装置4に送信する(ステップS34)。一方、車載機1Bは、ステップS32で記憶した生データの要求位置の周辺を走行していないと判断した場合(ステップS33;No)、ステップS31へ処理を戻し、引き続き生データ用キャッシュ21に外界センサ31の生データを記憶する。
【0075】
一方、サーバ装置4は、生データ要求信号SRを送信した地物の各々に対し、所定数以上の生データ情報Irwを受信したか否か判定する(ステップS25)。上述の所定数は、例えば、生データ情報Irwに対する公知の画像解析及び統計解析等により地物検出を行うのに必要な生データ情報Irwの数に設定される。そして、サーバ装置4は、所定数以上の生データ情報Irwを受信したと判断した場合(ステップS25;Yes)、受信した生データ情報Irwを対象にした地物検出のための解析処理を行うことで、実際に対象の地物に変化があったか否かを判定する(ステップS26)。一方、サーバ装置4は、所定数未満の生データ情報Irwしか受信していないと判断した場合(ステップS25;No)、引き続き生データ情報Irwの受信処理を行う。
【0076】
そして、サーバ装置4は、生データ情報Irwの解析に基づき、実際に対象の地物に変化があったと判断した場合(ステップS26;Yes)、生データ情報Irwの解析結果に基づき高度化地
図DB43の更新を行う(ステップS27)。一方、サーバ装置4は、生データ情報Irwの解析に基づき、実際に対象の地物に変化がなかったと判断した場合(ステップS26;No)、フローチャートの処理を終了する。
【0077】
以上説明したように、本実施例に係るサーバ装置4は、地物に関する地物情報を含む高度化地
図DB43を記憶部42に記憶する。そして、サーバ装置4は、地物を計測する外界センサ31を搭載する複数の車載機1から、地物情報と当該地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報Idfを受信する。また、サーバ装置4は、複数の差異情報Idfに基づいて算出した信頼度Rdfに応じて、実際の地物の計測データである生データの送信を要求する生データ要求信号SRを車載機1へ送信する。この態様により、サーバ装置4は、差異情報Idfに基づき、変更がある可能性がある地物について、車載機1から対象の地物の生データを取得して詳細に分析し、地物の変化を的確に判定することができる。
【0078】
ここで、生データ情報Irwを収集して高度化地
図DB43の更新処理を行う効果について補足説明する。
【0079】
一般に、個々の車載機1Aが送信する差異情報Idfは、それぞれの車載機1Aが単独で判断した情報になるため、誤検出に基づくデータも含まれる可能性がある。そこで、本実施例に係るサーバ装置4は、複数の車載機1Aの同一地点の差異情報Idfを集めて分析することにより、差異情報Idfに対する信頼度Rdfを好適に算出することができる。この場合、サーバ装置4は、例えば、信頼度Rdfが上限の第1閾値を越えた場合に高度化地
図DB43を更新し、信頼度Rdfが下限の第2閾値未満の場合には高度化地
図DB43を更新しない。そして、サーバ装置4は、このようにして更新された高度化地
図DB43を再び各車載機1に配信することで、常に最新の地図を車載機1が利用可能となる。
【0080】
一方、環境の動的な変化が激しい場所などでは、信頼度Rdfが第1閾値以下かつ第2閾値以上となり差異情報Idfを信頼してよいか否かを確定できない状況が起こり得る。このような場合、生データは現実世界を加工せずに捕らえた計測データであることから、サーバ装置4は、各車載機1Bから生データ情報Irwを収集することで、より詳細な分析を行って地物の変化の有無を判定することができる。一方、生データは通常データ量が大きいため、サーバ装置4は、生データの必要な箇所を指定した生データ要求信号SRを車載機1Bに送信することで、必要最低限の生データを受信する。これにより、通信データ量を好適に削減することができる。
【0081】
[変形例]
サーバ装置4は、生データ要求信号SRの送信に代えて、生データを要求する旨の情報を車載機1へ配信する地図データに埋め込んでもよい。
【0082】
図8(A)は、生データを要求する旨の情報を埋め込み可能な地物情報のデータ構造の一例である。
【0083】
図8(A)の例では、地物情報のボディ情報には、「属性情報」のフィールドが設けられ、さらに「属性情報」には「信頼度」のサブフィールドが設けられる。この場合、例えば、サーバ装置4は、生データ情報Irwが必要な地物の地物情報の「信頼度」のサブフィールドを「Unknown」と設定する。この場合、サーバ装置4から地図データを受信した車載機1Bは、対象の地物情報を参照した際に、「信頼度」のサブフィールドが「Unknown」と設定されていることから、対象の地物の信頼度が不明であり生データ情報Irwの送信が必要であると判断する。そして、車載機1Bは、対象の地物情報の位置情報が示す位置周辺を通過した際に、生データ用キャッシュ21に記憶した生データを含む生データ情報Irwをサーバ装置4へ送信する。
【0084】
他の例では、生データが必要な地点を任意に指定可能なテーブルを、リンクやノードを表す路線情報の属性情報として定義してもよい。
図8(B)は、上述のテーブルのデータ構造の一例である。
【0085】
図8(B)の例では、ヘッダ情報には、「リンクID又はノードID」のフィールドが設けられ、対応するリンクID又はノードIDが登録される。また、ボディ情報には、「位置情報形式情報」、「サイズ情報」、及び複数(ここではn個)の「位置情報」の各フィールドが設けられている。ここで、「位置情報形式情報」には、「位置情報」に格納される情報の形式(例えば緯度経度により表す形式又は位置参照形式等)の識別情報が登録される。「サイズ情報」には、「位置情報」のフィールドの数(ここではn個)の情報が登録される。「位置情報」には、生データが必要な地物の位置情報又は計測位置を指定する位置情報が登録される。
【0086】
この場合、サーバ装置4は、
図8(B)のテーブルを属性情報として路線情報に含め、当該路線情報を含む地図データを車載機1へ配信する。そして、
図8(B)のテーブルを受信した車載機1Bは、ボディ情報の「位置情報」で指定された位置に基づき、生データを生成し、当該生データを含む生データ情報Irwをサーバ装置4へ送信する。なお、実施例と同様、サーバ装置4は、対象の路線又はその周辺の路線を走行している車載機1Aに対し、
図8(B)のテーブルを生データ要求信号SRとして送信してもよい。