(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026195
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用電解質添加剤
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240220BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240220BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240220BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240220BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240220BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023200825
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2021516923の分割
【原出願日】2019-10-03
(31)【優先権主張番号】62/741,275
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シャルロット マレー
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィアーヌ ローション
(72)【発明者】
【氏名】カリム ザジブ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リチウムイオン電池用添加剤を提供する。
【解決手段】下記の一般式I、V、またはIXのニトリル系低分子有機化合物を添加剤として使用する。少なくとも1つのニトリル基を含む添加剤は、電解質だけでなく電池の他の構成成分とも相溶性があり、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、リチウムイオン電池用添加剤に関する。より詳細には本発明は、リチウムイオン電池の電解質と併用するニトリル系添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、エネルギー源として広く使用されており、その需要は増加している。典型的には、そのような電池は、負極すなわちアノードと、正極すなわちカソードと、離間させた2つの電極の間に提供される電解質とを具備する。電解質は、有機分子またはポリマーを含んでもよく、概して、LiPF6、LiTFSI、またはLiFSIなどのリチウム塩をも含む。さらに電解質は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などの直鎖状カーボネート、またはエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状カーボネートを含んでもよい。
【0003】
電解質の性質や組成に関連した、そしてリチウムイオン電池の性能や安全性を向上させることを目的とした様々な研究が、当技術分野で報告されている。例えば、1つまたは複数のニトリル基を含む添加剤の使用が報告されている[非特許文献1-3]。実際、当技術分野では、ニトリル基を含む有機化合物が、高い電圧および温度で良好な電気化学的特性と安定性を示すことは公知である。
【0004】
リチウムイオン電池の性能や安全性を向上させる方法が、依然求められている。特に、電解質中の添加剤として使用するニトリル系有機化合物が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、リチウムイオン電池の電解質と併用する添加剤を設計し、準備した。本発明の添加剤は、以下に記載の有機化合物であり、少なくとも1つのニトリル基を含む。この有機化合物は、電解質だけでなく電池の他の構成成分とも相溶性がある。
【0006】
よって本発明は、以下を、その態様に準拠して提供する。
(1) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Iを有し、
【化1】
式中:
Qが、5から12員環または二環式環であり、随意に、前記環が、N、O、およびSからなる群から選択される同一または異なる1つまたは複数のヘテロ原子を含み;好ましくは、Qが、5~10員環、または5員環、または6員環、または二環式環であり;
Lが、存在しまたは存在せず、アルキル、アルケン、およびアルキン基のうちの1つまたは複数を含むリンカであり;
mが、1から10、1から6、1から5、1から4、1から3の整数である方法。
(2) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式IIを有し、
【化2】
式中:
Xが、CまたはNであり;Lが、存在しまたは存在せず、アルキル、アルケン、およびアルキン基のうちの1つまたは複数を含むリンカであり;
Riが、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2、SO
2、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;
mが、1から5、または1から4、または1から3の整数であり;
m’が、0から5、0から4、0から3、1から5、1から4、1から3の整数である方法。
(3) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式IIIを有し、
【化3】
式中:
Xが、CまたはNであり;
Riが、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2、SO
2、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、Riが、それぞれ独立に、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;
m’が、0から5、0から4、0から3、1から5、1から4、1から3の整数である方法。
(4) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式IVを有し、
【化4】
式中:
Xが、CまたはNであり;
Riが、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2、SO
2、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;
m’が、0から5、0から4、0から3、1から5、1から4、1から3の整数である方法。
(5) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Aを有し、
【化5】
式中、R
1からR
5が、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2、SO
2、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、R
1からR
5が、それぞれ独立に、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択される方法。
(6) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Bを有し、
【化6】
式中:
XがCであり、R
3がHであり;またはXがNであり;
R
1からR
5が、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2、SO
2、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、R
1からR
5が、それぞれ独立に、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択される方法。
(7) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記A1、A2、A3、またはA4である方法
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
(8) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7またはB8である方法
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
(9) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Vを有し、
【化19】
式中:
Lが、存在しまたは存在せず、アルキル、アルケン、およびアルキン基のうちの1つ以上を含むリンカであり;
R
1からR
3が、それぞれ独立にアルキル基であり;好ましくはC1からC6またはC1からC3のアルキル基であり;より好ましくはR
1からR
3の少なくとも1つがCH
3である、またはR
1~R
3のそれぞれがCH
3である方法。
(10) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式VIを有し、
【化20】
式中:
nが、0から6、または0から5、または0から4、または0から3、または0から2の整数であり;好ましくは、nが、0から3の整数であり;より好ましくは、nが、0または1であり;
R
1からR
3が、それぞれ独立にアルキル基であり;好ましくはC1からC6またはC1からC3のアルキル基であり;より好ましくはR
1からR
3の少なくとも1つがCH
3である、またはR
1からR
3のそれぞれがCH
3である方法。
(11) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Cを有し、
【化21】
式中、nが、0から6、または0から5、または0から4、または0から3、または0から2の整数であり;好ましくは、nが、0から3の整数であり;より好ましくは、nが、
0または1である方法。
(12) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が下記のC1またはC2である方法
【化22】
【化23】
(13) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式IXを有し、
【化24】
式中:
R
1が、CNまたはCH
3であり;
L
1およびL
2が、それぞれ独立に、存在しまたは存在せず、それぞれ独立に、アルキル、アルケン、および/またはアルキン基を含むリンカであり;
Yが、Na、K、またはLiであり;好ましくは、Yが、Naである方法。
(14) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Xを有し、
【化25】
式中:
L
1およびL
2が、それぞれ独立に、存在しまたは存在せず、それぞれ独立に、アルキル、アルケン、および/またはアルキン基のうちの1つまたは複数を含むリンカであり;
Yが、Na、K、またはLiであり;好ましくは、Yが、Naである方法。
(15) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式XIを有し、
【化26】
式中:
n1およびn2が、それぞれ独立に、0から10、または0から6、または0から3の
整数であり;好ましくは、n1およびn2の少なくとも1つが0であり、またはn1およびn2の両方が0であり;
Yが、Na、K、またはLiであり;好ましくは、Yが、Naである方法。
(16) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Dを有し、
【化27】
式中、Yが、Na、KまたはLiであり;好ましくはYが、Naである方法。
(17) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式D1を有する方法
【化28】
(18) 下記一般式VIIを有する化合物であって、
【化29】
式中、R
1およびR
2が、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2、SO
2、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択される、化合物。
(19) 下記一般式VIIIを有する化合物であって、
【化30】
式中、Xがハロゲン原子であり;好ましくはXがFである、化合物。
(20) 下記の式B4の化合物
【化31】
(21) ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、上記(18)から(20)のいずれか1つに定義される方法。
(22) 前記ニトリル系有機化合物が電解質に添加され;随意に、前記添加剤(ニトリル系有機化合物)の量が、約0.01から約5.0%重量、または約0.01から約5.0%重量、または約0.01から約3.0%重量、または約0.01から約1.0%重量、または約0.05から約1.0%重量、または約0.1から約1.0%重量、または約0.1から約0.8%重量、または約0.1から約0.5%重量、または約0.1から約0.3%重量、または約0.1%重量、または約0.5%重量である、上記(1)から(17)、および(21)のいずれか1つに記載の方法。
(23) 上記(1)から(17)のいずれか1つの方法に定義される、I、II、III、IV、A、B、A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、V、VI、C、C1、C2、IX、X、XI、D、およびD1からなる群から選択される化合物を含む電解質。
(24) 上記(18)から(20)のいずれか1つに定義される化合物を含む電解質。(25) 上記(23)または(24)に定義される電解質を含む電池。
(26) 上記(1)から(17)のいずれか1つの方法に定義される、I、II、III、IV、A、B、A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、V、VI、C、C1、C2、IX、X、XI、D、およびD1からなる群から選択される化合物を含む、リチウムイオン電池に使用される電解質用の添加剤。
(27) 上記(18)から(20)のいずれか1つに定義される化合物を含む、リチウムイオン電池に使用される電解質用の添加剤。
(28) リチウムイオン電池が、リチウム含有材料をカソードが含む電池である、上記
(1)から(27)のいずれか1つに記載の方法、電解質、電池、または添加剤。
(29) リチウムイオン電池が、カンラン石、リチウム酸化物、ニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)を含め、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムニッケル酸化物(LNO)、および同類のものをカソードが含む電池である、上記(1)から(27)のいずれか1つに記載の方法、電解質、電池、または添加剤。
(30) 電池の性能(容量、可逆性)が改善される、上記(28)または(30)に記載の方法、電解質、電池、または添加剤。
【0007】
本発明の他の目的、利点、および特徴は、添付の図面を参照しつつ単に例示として与えられたその特定の実施形態の、以下の非限定的な記載を理解すれば、さらに明らかとなるであろう。
【0008】
本特許または出願のファイルには、カラーで描かれた図面が1つ以上含まれている。この特許または特許出願公報のカラー図面付きの複写物は、請求および必要な手数料の支払いのあり次第、国内官庁から提供されることになる。
【0009】
添付図面では:
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】45℃で300サイクル後のLMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+本発明による1MのLiPF
6+0.1重量%の添加剤(系列Aの化合物))対参照のサイクルデータ。
【
図2】45℃でのLMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+1MのLiPF
6+0.1重量%の本発明による添加剤(系列Aの化合物))対参照の静電容量(0.05C)。
【
図3】0および100サイクル時点での、LMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+1MのLiPF
6+0.1重量%の本発明による添加剤(系列Aの化合物))対参照のナイキスト線図。
【
図4】45℃で300サイクル後のLMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+本発明による1MのLiPF
6+0.5重量%の添加剤(系列Bの化合物))対参照のサイクルデータ。
【
図5】45℃でのLMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+1MのLiPF
6+0.5重量%の本発明による添加剤(系列Bの化合物))対参照の静電容量(0.05C)。
【
図6】0および200サイクル時点での、LMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+1MのLiPF
6+0.5重量%の本発明による添加剤(系列Bの化合物))対参照のナイキスト線図。
【
図7】45℃で300サイクル後のLMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+本発明による1MのLiPF
6+0.5重量%の添加剤(系列Cの化合物))対参照のサイクルデータ。
【
図8】45℃でのLMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+1MのLiPF
6+0.5重量%の本発明による添加剤(系列Cの化合物))対参照の静電容量(0.05C)。
【
図9】0および100サイクル時点での、LMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+1MのLiPF
6+0.5重量%の本発明による添加剤(系列Cの化合物))対参照のナイキスト線図。
【
図10】45℃で100サイクル後のLMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+本発明による1MのLiPF
6+0.5重量%の添加剤(系列Dの化合物))対参照のサイクルデータ。
【0011】
【
図11】45℃でのLMFP-LTO電池(PC/EMC/DMC(4/3/3)+1MのLiPF
6+0.5重量%の本発明による添加剤(系列Dの化合物))対参照の静電容量(0.05C)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明をさらに記載するに先だって、本発明は、以下に記載の特定の実施形態には限定されないと理解されるのが望ましく、これは、そうした実施形態の変形がなされる可能性があって、それでも添付の特許請求の範囲内に収まる可能性があるためである。また、採用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図してはいないと理解されたい。その代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確定される。
【0013】
本明細書で使用される用語の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下に複数の定義を与える。さらに、別段の定義がない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術的および科学的用語は、本開示が関係する当業者に共通に理解されているものと同一の意味を有する。
【0014】
特許請求の範囲および/または明細書中で「含む(comprising)」という用語とともに使用される場合の「a」または「an」という語の使用は、「1つ(one)」を意味してもよいが、「1つまたは複数(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」、および「1つまたは複数(one or more than one)」の意味と一致する。同様に、「別の」という語は、「少なくとも第2またはそれ以上の」を意味してもよい。
【0015】
本明細書および請求項に使用されるとおり、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(composites)」など、含む(comprising)のあらゆる形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および有する(has)」など、有する(having)のあらゆる形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(include)」および「含む(includes)」など、含む(including)のあらゆる形態)、または「含む(containing)」(ならびに「含む(contain)」および「含む(contains)」など、含む(containing)のあらゆる形態)は、包括的なまたは非制限的な語であり、さらなる未記載の要素または工程ステップを除外するものではない。
【0016】
本明細書で数値または百分率を指す場合に使用されるとおり、「約」という用語は、数値または百分率を決定するのに使用される方法に起因するばらつき、統計的な偏差、および人為的誤りを含む。さらに、本出願の各数値パラメータは少なくとも、報告された有効桁数に照らして、通常の丸め法を適用することにより解釈されるのが望ましい。
【0017】
本明細書で使用される用語「アルキル」または「アルク(alk)」は、別段指定がない限り、炭素数1から15の直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素から誘導される一価の基を表し、メチル、エチル、n-およびiso-プロピル、n-、sec-、iso-およびtert-ブチル、ネオペンチル、および同類のものがその例であり、1つ、2つ、3つ、または炭素数2以上のアルキル基の場合には4つの置換基で随意に置換されていてもよい。
【0018】
本明細書で交換可能に使用される「アルコキシ」または「アルキロキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子基に結合したアルキル基を表す。
【0019】
本明細書で交換可能に使用される「アルキルチオ」または「チオアルコキシ」という用語は、硫黄原子を介して親分子基に結合したアルキル基を表す。
【0020】
本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、2つの水素原子を除去することにより直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素から誘導される飽和二価の炭化水素基を表し、メチレン、エチレン、イソプロピレン、および同類のものがその例である。
【0021】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、別段指定がない限り、炭素数2~15、例えば炭素数2~6、または炭素数2~4の一価の直鎖または分岐鎖基を表し、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含み、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、および同類のものがその例であり、1つ、2つ、3つ、または4つの置換基で随意に置換されていてもよい。
【0022】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、炭素-炭素三重結合を含む炭素数2~6の一価の直鎖または分岐鎖の基を表し、エチニル、1-プロピニル、および同類のものがその例であり、1つ、2つ、3つ、または4つの置換基で随意に置換されていてもよい。
【0023】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、特段指定がない限り、炭素数3~8の一価の飽和または不飽和の非芳香族環状炭化水素基を表し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、および同類のものがその例である。
【0024】
本明細書で交換可能に使用される「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、F、Cl、Br、およびIを表す。
【0025】
本明細書で使用されるとおり、用語「ヘテロ原子」は、酸素、硫黄、または窒素であると理解される。
【0026】
本発明者らは、リチウムイオン電池の電解質と併用する添加剤を設計し、製造した。本発明の添加剤は、以下に記載の有機化合物であり、少なくとも1つのニトリル基を含む。また、この有機化合物は、電解質だけでなく電池の他の構成成分とも相溶性がある。
【0027】
より詳細には、電解質と併用する本発明の添加剤は、本明細書に記載の、そして以下に図示される一般式I~XI、A、B、C、およびDを有するニトリル系有機化合物である。
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【0028】
そのような有機化合物は、以下の表1で定義される化合物、すなわち、化合物A1~A4、B1~B8、C1~C2、およびD1がその例である。
表1.本発明による有機化合物(系列A、B、C、D)
【0029】
【表1-1】
【表1-2】
【化37】
【化38】
【0030】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに詳細に記載する。
添加剤としてリチウムイオン電解質と併用するニトリル系有機化合物
【0031】
実施例1 - 化合物を準備する一般的な手順。15mLのクロロホルム中、アルデヒド(1等量)の溶液に、モロノジニトリル(molonodinitrile)(1.5等量)と数滴のトリエチルアミンを加える。混合物を窒素下で一晩還流させる。室温に戻した後、ジクロロメタンを加え、溶液を水で2回洗浄し、MgSO4上で乾燥させる。溶媒除去後、残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル/ジクロロメタン)にかけて固体を得る。
【0032】
【0033】
鮮やかな黄色の固体(70%)。
NMR 1H (400 MHz,CDCl3) δ: 7.69 (d,1H,J =
4Hz); 7.64 (s,1H); 7.38 (dd,1H,J = 4Hz,J = 12Hz); 6.95 (d,1H,J = 12Hz); 3.99 (s,3H); 3.93 (s,3H).
【0034】
【0035】
黄色の固体(40%)。
NMR 1H (400 MHz,CDCl3) δ: 7.77 (s,1H).NMR 19F (400 MHz,CDCl3) δ: -132.55 (s,2H);
-143.68 (s,1H); -158.50 (s,1H).
【0036】
【0037】
白色固体。
NMR 1H (400 MHz,CDCl3) δ: 8.60 (d,1H,J =
4Hz); 8.25 (dd,1H,J = 4Hz,J = 12Hz); 8.18 (s,1H); 8.15 (d,1H,J = 12Hz).
【0038】
【0039】
鮮やかな黄色の固体。
NMR 1H (400 MHz,CDCl3) δ: 8.12 (d,1H,J =
4Hz); 8.03 (s,1H); 7.67 (dd,1H,J = 4Hz,J = 12Hz).NMR 19F (400 MHz,CDCl3) δ: -63.65 (s,3F).
【0040】
【0041】
白色固体。
NMR 1H (400 MHz,CDCl3) δ: 8.02 (d,2H,J =
12Hz); 7.83 (d,2H,J = 8Hz); 7.80 (s,1H).NMR 19F (400 MHz,CDCl3) δ: -63.48 (s,3F).
【0042】
【0043】
白色固体。
NMR 1H (400 MHz,CDCl3) δ: 7.99 (d,2H,J =
8Hz); 7.83 (d,2H,J = 8Hz); 7.74 (s,1H).
【0044】
【0045】
淡い橙色の固体。
NMR 1H (400 MHz,CDCl3) δ: 8.39 (d,2H,J =
12Hz); 8.07 (d,2H,J = 8Hz); 7.88 (s,1H).
【0046】
【0047】
桃色の固体。
NMR 1H (400 MHz,CDCl3) δ: 8.89 (d,2H,J =
12Hz); 7.81 (s,2H); 7.68 (d,2H,J = 8Hz).
【0048】
系列AおよびCの化合物、ならびに化合物D1は市販のものであり、受領時の状態で使用した。
【0049】
諸図を参照すると、
図1~3に、系列Aの化合物を用いて得られた結果の概要が示されており;
図4~6に、系列Bの化合物を用いて得られた結果の概要が示されており;
図7~9に、系列Cの化合物を用いて得られた結果の概要が示されており;
図10~11に、系列Dの化合物を用いて得られた結果の概要が示されている。なお、本発明による電池だけでなく参照の電池もビニレンカーボネート(VC)を含有していないことに留意するのが望ましく、このことが、300サイクル後の安定性に乏しいことの説明になる。それにもかかわらず、見て分かるとおり、本発明による添加剤を含む電池は、はるかに優れた安定性を示している。
【0050】
図2から分かるとおり、0.1wt%の化合物A1またはA4を使用することにより、電池容量の向上とともに、さらに良好な可逆性が可能となっている。さらには、電池抵抗の全体的な減少が認められる(
図3)。
【0051】
図5に、化合物B1と化合物B4について得られた結果を示す。0.5wt%の添加剤を使用することにより、電池容量の向上が可能となっている。電池抵抗の全体的な減少が認められる(
図6)。
【0052】
図7に、化合物C1と化合物C2について得られた結果を示す。0.5重量%の添加剤を使用することにより、45℃で300サイクル後の良好な安定性が得られている。
図8
から分かるとおり、より良好な結果が、化合物C1(短い炭素鎖)について得られている。
【0053】
図10に、化合物D1について得られた結果を示す。
図11から分かるとおり、0.5重量%の化合物D1を使用することにより、電池容量の向上とともに、さらに良好な可逆性が可能となっている。
【0054】
当業者に理解されるとおり、電解質と併用するこの添加剤は、電解質およびカソード活物質を含む電池の構成要素と相溶となるように適合される。
【0055】
本発明は、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)-リチウムチタン酸化物(LTO)電池に関連して記載されている。当業者に理解されるとおり、他のリチウムイオン電池もまた使用してもよい。換言すると、カソード活物質がリチウム含有材料を含むいかなる電池を使用してもよい。そのようなリチウム含有材料は、カンラン石、リチウム酸化物、ニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)を含め、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムニッケル酸化物(LNO)、および同類のものであってもよい。
【0056】
また、当業者に理解されるとおり、アノード材料は、例えば、リチウム合金、Si、SiOx、黒鉛と炭素の混合物、チタン酸塩、チタン酸リチウムなど、いかなる好適なタイプのものであってもよい。
【0057】
特許請求の範囲は、実施例に記載された好ましい実施形態によって制限されないのが望ましく、全体としての記載と一致する最も広い解釈が与えられるのが望ましい。
【0058】
本明細書は複数の文献を参照しており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
参考文献
【0059】
1.Rohan R.et al.J.Phys.Chem.C(2016),120(12),6450-6458.
2.Kim Y.-S.et al.ACS Appl.Mater.Interfaces(2014),6(11),8913-8920.
3.Pohl B.et al.J.Electrochem.Soc.(2015),162(3),A460-A464.
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Iを有し、
【化47】
式中:
Qが、5から12員環または二環式環であり、随意に、前記環が、N、O、およびSからなる群から選択される同一または異なる1つまたは複数のヘテロ原子を含み;好ましくは、Qが、5~10員環、または5員環、または6員環、または二環式環であり;
Lが、存在しまたは存在せず、アルキル、アルケン、およびアルキン基のうちの1つまたは複数を含むリンカであり;
mが、1から10、1から6、1から5、1から4、1から3の整数である方法。
(項2)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式IIを有し、
【化48】
式中:
Xが、CまたはNであり;
Lが、存在しまたは存在せず、アルキル、アルケン、およびアルキン基のうちの1つまたは複数を含むリンカであり;Riが、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2
、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2
、SO
2
、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;
mが、1から5、または1から4、または1から3の整数であり;
m’が、0から5、0から4、0から3、1から5、1から4、1から3の整数である方法。
(項3)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式IIIを有し、
【化49】
式中:
Xが、CまたはNであり;Riが、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2
、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2
、SO
2
、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、Riが、それぞれ独立に、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;
m’が、0から5、0から4、0から3、1から5、1から4、1から3の整数である方法。
(項4)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式IVを有し、
【化50】
式中:
Xが、CまたはNであり;Riが、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2
、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2
、SO
2
、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;
m’が、0から5、0から4、0から3、1から5、1から4、1から3の整数である方法。
(項5)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Aを有し、
【化51】
式中、R
1
からR
5
が、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2
、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2
、SO
2
、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、R
1
からR
5
が、それぞれ独立に、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択される方法。
(項6)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Bを有し、
【化52】
式中:
XがCであり、R
3
がHであり;またはXがNであり;
R
1
からR
5
が、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2
、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2
、SO
2
、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、R
1
からR
5
が、それぞれ独立に、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択される方法。
(項7)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記のA1、A2、A3、またはA4である方法
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
(項8)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記のB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、またはB8である方法
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
(項9)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Vを有し、
【化65】
式中:
Lが、存在しまたは存在せず、アルキル基、アルケン基、およびアルキン基のうちの1つまたは複数を含むリンカであり;
R
1
からR
3
が、それぞれ独立にアルキル基であり;好ましくはC1からC6またはC1からC3のアルキル基であり;より好ましくはR
1
からR
3
の少なくとも1つがCH
3
である、またはR
1
からR
3
のそれぞれがCH
3
である方法。
(項10)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式VIを有し、
【化66】
式中:
nが、0から6、または0から5、または0から4、または0から3、または0から2の整数であり;好ましくは、nが、0から3の整数であり;より好ましくは、nが、0または1であり;
R
1
からR
3
が、それぞれ独立にアルキル基であり;好ましくはC1からC6またはC1からC3のアルキル基であり;より好ましくはR
1
~R
3
の少なくとも1つがCH
3
である、またはR
1
からR
3
のそれぞれがCH
3
である方法。
(項11)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Cを有し、
【化67】
式中、nが、0から6、または0から5、または0から4、または0から3、または0から2の整数であり;好ましくは、nが、0から3の整数であり;より好ましくは、nが、0または1である方法。
(項12)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が下記のC1またはC2である方法
【化68】
【化69】
(項13)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式IXを有し、
【化70】
式中:
R
1
が、CNまたはCH
3
であり;
L
1
およびL
2
が、それぞれ独立に、存在しまたは存在せず、それぞれ独立に、アルキル、アルケン、および/またはアルキン基を含むリンカであり;Yが、Na、K、またはLiであり;好ましくは、Yが、Naである方法。
(項14)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Xを有し、
【化71】
式中:
L
1
およびL
2
が、それぞれ独立に、存在しまたは存在せず、それぞれ独立に、アルキル、アルケン、および/またはアルキン基のうちの1つまたは複数を含むリンカであり;
Yが、Na、K、またはLiであり;好ましくは、Yが、Naである方法。
(項15)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式XIを有し、
【化72】
式中:
n1およびn2が、それぞれ独立に、0から10、または0から6、または0から3の整数であり;好ましくは、n1およびn2の少なくとも1つが0であり、またはn1およびn2の両方が0であり;
Yが、Na、K、またはLiであり;好ましくは、Yが、Naである方法。
(項16)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式Dを有し、
【化73】
式中、Yが、Na、K、またはLiであり;好ましくはYが、Naである方法。
(項17)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、下記一般式D1を有する方法
【化74】
(項18)
下記一般式VIIを有する化合物であって、
【化75】
式中、R
1
およびR
2
が、それぞれ独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルケン、アルキン、アリールおよびアルキルアリール、アルコキシ、チオアルコキシ、OH、SH、NH
2
、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、ハロゲノアルコキシ、ハロゲノチオアルコキシ、シアノアルキル、シアノアルケン、シアノアルキン、CN、NO
2
、SO
2
、COOH、ならびにアシロキシカルボニルからなる群から選択され;好ましくは、H、アルキロキシ、ハロゲン、ハロゲノアルキル、ニトロ、およびシアノからなる群から選択され;より好ましくは、H、ハロゲン、ニトロ、およびシアノからなる群から選択される、化合物。
(項19)
下記一般式VIIIを有する化合物であって、
【化76】
式中、Xがハロゲン原子であり;好ましくはXがFである、化合物。
(項20)
下記の式B4の化合物
【化77】
(項21)
ニトリル系有機化合物を電池の電解質と併用することを含む、リチウムイオン電池の性
能と安全性を向上させる方法であって、前記化合物が、上記項18から20のいずれか一項に定義される方法。
(項22)
前記ニトリル系有機化合物が電解質に添加され;随意に、前記添加剤(ニトリル系有機化合物)の量が、約0.01から約5.0%重量、または約0.01から約5.0%重量、または約0.01から約3.0%重量、または約0.01から約1.0%重量、または約0.05から約1.0%重量、または約0.1から約1.0%重量、または約0.1から約0.8%重量、または約0.1から約0.5%重量、または約0.1から約0.3%重量、または約0.1%重量、または約0.5%重量である、上記項1から17、および21のいずれか一項に記載の方法。
(項23)
上記項1から17のいずれか一項に記載の方法に定義される、I、II、III、IV、A、B、A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、V、VI、C、C1、C2、IX、X、XI、D、およびD1からなる群から選択される化合物を含む電解質。
(項24)
上記項18から20のいずれか一項に定義される化合物を含む電解質。
(項25)
上記項23または24に定義される電解質を含む電池。
(項26)
上記項1から17のいずれか一項に記載の方法に定義される、I、II、III、IV、A、B、A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、V、VI、C、C1、C2、IX、X、XI、D、およびD1からなる群から選択される化合物を含む、リチウムイオン電池に使用される電解質用の添加剤。
(項27)
上記項18から20のいずれか一項に定義される化合物を含む、リチウムイオン電池に使用される電解質用の添加剤。
(項28)
リチウムイオン電池が、リチウム含有材料をカソードが含む電池である、上記項1から27のいずれか一項に記載の方法、電解質、電池、または添加剤。
(項29)
リチウムイオン電池が、カンラン石、リチウム酸化物、ニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)を含め、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムニッケル酸化物(LNO)、および同類のものをカソードが含む電池である、上記項1から27のいずれか一項に記載の方法、電解質、電池、または添加剤。
(項30)
電池の性能(容量、可逆性)が改善される、上記項28または30に記載の方法、電解質、電池、または添加剤。
【外国語明細書】