IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マウント シナイ スクール オブ メディスンの特許一覧 ▶ ジェンザイム・コーポレーションの特許一覧

特開2024-26214酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症に対する用量漸増酵素補充療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026214
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症に対する用量漸増酵素補充療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20240220BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 9/18 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K38/46 ZNA
A61P3/00
C12N9/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201609
(22)【出願日】2023-11-29
(62)【分割の表示】P 2022171242の分割
【原出願日】2010-08-28
(31)【優先権主張番号】61/238,113
(32)【優先日】2009-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502375437
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディスン アット マウント シナイ
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シュークマン,エドワード,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】デスニック,ロバート,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コックス,ジェラルド,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アンドリューズ,ローラ,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マリー,ジェームズ,エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症(ASMD)、具体的にはニーマン・ピック病(NPD)の非神経学的兆候、特定の実施態様ではNPD B型を持つヒト被験者の治療のために酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)を使用した好適な酵素補充療法レジメンを提供する。
【解決手段】初めは毒性のない低用量で投与され、その後の投与で漸増される。次に、患者が忍容性を示したASMの最高用量を維持量として使用する。または、忍容性が示された最高用量よりも低い治療有効量を維持量として使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症を持つヒト被験者を治療する方法であって、
(a)ヒト被験者の蓄積スフィンゴミエリン基質を減量するためのレジメンであって、
(i)酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)の非毒性の初期低用量をヒト被験者に投与すること、
(ii)連続的により高い用量のASMをヒト被験者に投与し、ビリルビンの上昇または関連有害事象によって示される1つ以上の有害な副作用について、被験者を各連続用量の後にモニターすること、を含むレジメン、および
(b)被験者が忍容性を示した最高用量以下の用量を維持量として被験者に投与することを含む維持レジメン、を含む方法。
【請求項2】
ヒト被験者の酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症治療用の酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)であって、
(a)蓄積スフィンゴミエリン基質を減量するためのレジメンであって、
(i)酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)の非毒性の初期低用量を投与すること、
(ii)連続的により高い用量のASMを投与し、ビリルビンの上昇または関連有害事象によって示される1つ以上の有害な副作用について、被験者を各連続用量の後にモニターすること、を含むレジメン、および
(b)被験者が忍容性を示した最高用量以下の用量を維持量として被験者に投与することを含む維持レジメン、で投与するよう調製されている、酸性スフィンゴミエリナーゼ。
【請求項3】
ASMが組み換えヒトASM(rhASM)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
初期用量の範囲がrhASM 0.1mg/kg~1mg/kgである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
初期用量がrhASM 0.1mg/kg~0.5mg/kgである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
初期用量がrhASM 0.1mg/kgである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
以前の用量が投与されてから1週間、2週間、3週間または4週間後に、連続的漸増用量が投与される、請求項1または3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
以前の用量が投与されてから1週間後に、連続的漸増用量が投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以前の用量が投与されてから2週間後に、連続的漸増用量が投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
連続的漸増用量が以前の用量より約0.1~1.0mg/kg高い、請求項7、8および9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
連続的漸増用量が以前の用量より0.1~0.5mg/kg高い、請求項7、8および9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ヒト被験者が忍容性を示した最高用量が1mg/kg~3mg/kgである、請求項1および3~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
忍容性を示した最高用量がヒト被験者に維持量として投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
維持量が、忍容性を示した最高用量未満の治療効果のある用量である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
維持レジメンの間に、ビリルビンの上昇または関連有害事象として示される1つ以上の有害な副作用について被験者をモニターし、維持量を調整することをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
維持量が被験者に2~4週間ごとに投与される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
rhASMである、請求項2に記載のASM。
【請求項18】
初期用量の範囲がrhASM 0.1mg/kg~1mg/kgである、請求項17に記載のrhASM。
【請求項19】
初期用量がrhASM 0.1mg/kg~0.5mg/kgである、請求項17に記載のrhASM。
【請求項20】
初期用量がrhASM 0.1mg/kgである、請求項17に記載のrhASM。
【請求項21】
以前の用量が投与されてから1週間、2週間、3週間または4週間後に、連続的漸増用量が投与される、請求項2および17~20のいずれか1項に記載のASM。
【請求項22】
以前の用量が投与されてから1週間後に、連続的漸増用量が投与される、請求項21に記載のASM。
【請求項23】
以前の用量が投与されてから2週間後に、連続的漸増用量が投与される、請求項21に記載のASM。
【請求項24】
連続的漸増用量が以前の用量より約0.1~1.0mg/kg高い、請求項21、22および23のいずれか1項に記載のASM。
【請求項25】
連続的漸増用量が以前の用量より約0.1~0.5mg/kg高い、請求項21、22および23のいずれか1項に記載のASM。
【請求項26】
ヒト被験者が忍容性を示した最高用量が1mg/kg~3mg/kgである、請求項2および17~26のいずれか1項に記載のASM。
【請求項27】
忍容性を示した最高用量がヒト被験者に維持量として投与される、請求項2および17~26のいずれか1項に記載のASM。
【請求項28】
維持量が、忍容性を示した最高用量未満の治療効果のある用量である、請求項27に記載のASM。
【請求項29】
維持量が被験者に2~4週間ごとに投与される、請求項27に記載のASM。
【請求項30】
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症を持つヒト被験者を治療する方法であって、
連続的用量での漸増用量レジメンでrhASMを投与することを含み、連続的用量が、
(a)0.1mg/kg、
(b)0.3mg/kg、および
(c)0.6mg/kg、
であり、ここでrhASMの各用量は少なくとも2回投与され、各用量は2週間ごとに投与され、次のレベルに用量を増加する前に、被験者は有毒な副作用についてモニターされる、ヒト被験者を治療する方法。
【請求項31】
漸増用量レジメンに1mg/kgの連続的用量をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
漸増用量レジメンに2mg/kgの連続的用量をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
漸増用量レジメンに3mg/kgの連続的用量をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
漸増用量レジメンで、連続的用量で投与するよう調製されたヒト被験者の酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症の治療用のrhASMであって、
連続的用量が、
(a)0.1mg/kg、
(b)0.3mg/kg、および
(c)0.6mg/kg、
であり、ここで各用量は少なくとも2回投与され、各用量は2週間ごとに投与され、次のレベルに用量を増加する前に、被験者は有毒な副作用についてモニターされる、rhASM。
【請求項35】
漸増用量レジメンに1mg/kgの連続的用量をさらに含む、請求項34に記載のrhASM。
【請求項36】
漸増用量レジメンに2mg/kgの連続的用量をさらに含む、請求項35に記載のrhASM。
【請求項37】
漸増用量レジメンに3mg/kgの連続的用量をさらに含む、請求項36に記載のrhASM。
【請求項38】
用量が静脈内投与される、請求項1、3~16および30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
用量が皮内、皮下または筋肉内投与される、請求項1、3~16および30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症がニーマン・ピック病(NPD)A型である、請求項1、3~16および30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症がNPD B型である、請求項1、3~16および30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ヒト被験者が、酸性スフィンゴミエリナーゼをコードしている遺伝子にミスセンス変異を持つ、請求項1、3~16および30~33に記載の方法。
【請求項43】
変異がL302P、H421YまたはR496Lである、請求項1、3~16および30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
ヒト被験者が、酸性スフィンゴミエリナーゼをコードしている遺伝子に変異を持ち、変異がΔR608である、請求項1、3~16および30~33に記載の方法。
【請求項45】
用量が静脈内投与される、請求項2、17~29および34~37のいずれか1項に記載のASM。
【請求項46】
用量が皮下または筋肉内投与される、請求項2、17~29および34~37のいずれか1項に記載のASM。
【請求項47】
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症がニーマン・ピック病(NPD)A型である、請求項2、17~29および34~37のいずれか1項に記載のASM。
【請求項48】
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症がNPD B型である、請求項2、17~29および34~37のいずれか1項に記載のASM。
【請求項49】
ヒト被験者が、酸性スフィンゴミエリナーゼをコードしている遺伝子にミスセンス変異を持つ、請求項2、17~29および34~37のいずれか1項に記載のASM。
【請求項50】
変異がL302P、H421YまたはR496Lである、請求項2、17~29および34~37のいずれか1項に記載のASM。
【請求項51】
ヒト被験者が、酸性スフィンゴミエリナーゼをコードしている遺伝子に変異を持ち、変異がΔR608である、請求項2、17~29および34~37のいずれか1項に記載のASM。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2009年8月28日出願の米国仮出願番号第61/238,113号に対して優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
1.序論
本発明は、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症(ASMD)、具体的にはニーマン・ピック病(NPD)の非神経学的兆候、特定の実施態様ではNPD B型を持つヒト被験者の治療のために酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)を使用した用量漸増酵素補充療法に関連する。
【0003】
2.背景技術
酸性スフィンゴミエリナーゼE.C. 3.1.4.12(ASM)は、脳、肝臓、肺、脾臓、リンパ節に見られるリン脂質貯蔵物質であるスフィンゴミエリンをセラミドとホスホリルコリンに加水分解するリソソームのホスホジエステラーゼ酵素である。ASM活性の欠乏は、体がスフィンゴミエリンを分解することを不能にし、ニーマン・ピック病と呼ばれるリソソーム蓄積症(ライソゾーム病)を引き起こす。
【0004】
ニーマン・ピック病は遺伝的常染色体劣性の脂質蓄積症で、マクロファージおよびニューロンなどの細胞のリソソームへのスフィンゴミエリンの過剰蓄積を特徴とし、これは正常な細胞機能を損なう。ニーマン・ピック病A型は乳児の急速進行性神経変性疾患で、典型的には2~3歳までに死に至る。ニーマン・ピック病B型は肝臓と脾臓の肥大、および呼吸困難をもたらし、一般的に成人期早期までに死亡する。ニーマン・ピック病のこれらの2つのタイプは、どちらもASM欠乏症に関連しており、本明細書では総称してニーマン・ピック病、またはASM欠乏症(ASMD)と呼ぶ。ニーマン・ピック病の他のタイプ、例えばC型は、ASM遺伝子の突然変異を伴わず、ASMの機能に直接起因しない。サブタイプAとBの顕著な臨床的多様性の根底にある生化学および分子障害の性質は、未だに不明である。両方のサブタイプを持つ患者は、残留ASM活性(正常の約1~10%)を持つが、生化学分析では2つの表現型を確実に見分けることができない。さらに、NPD B型の臨床経過は非常に変わりやすく、現在、疾患の重症度と残留ASM活性の相関関係を証明することは不可能である。
【0005】
NPDは、一般集団よりもアシュケナージ系ユダヤ人の子孫で発生頻度が高い。アシュケナージ系ユダヤ人におけるニーマン・ピック病A型の発生は約1/40,000で、遺伝子頻度(q)は約1/200、およびヘテロ接合体キャリア頻度(2 pq)は1/100である(Goodman, 1979, 「Genetic Disorders Among The Jewish People」, John Hopkins Univ. Press, Baltimore, pp. 96-100)。アシュケナージユダヤ系集団におけるNPD B型のヘテロ接合体キャリアの発生は、より頻度が低い(Goodman、上記)。NPD A型およびB型を合わせたヘテロ接合体キャリア頻度は、アシュケナージ系ユダヤ人の子孫において約1/70と推定されている。A型またはB型いずれかのNPDに罹患している患者の酵素的診断は確実になされ得るが(SpenceおよびCallahan、上記)、偏性ヘテロ接合体の酵素的検出は、特に末梢白血球を酵素源として使用することに問題があることが証明された。おそらく、一部のソースでの中性スフィンゴミエリナーゼの発生および/または変異対立遺伝子から生じる残留ASM活性の存在は、どちらかの疾患サブタイプに対して確実にはキャリアを判別できないことに寄与している。中性スフィンゴミエリナーゼを発現しない培養皮膚線維芽細胞を使用しても、ヘテロ接合体の明確な結果は得られていない。個別の国で行なわれた疫学研究では、世界のいくつかの国を総合したニーマン・ピック病A型およびB型の羅患率は、新生児で1/167,000~1/250,000の間であると推定されている(Miekle et al., 1999 JAMA 281 (3):249-254; Poorthuis et al., 1999 Hum Genet 105:151-156; Pinto et al., 2004 Euro. J. Hum. Gene. 12:87-92)。ヘテロ接合体キャリアの割合は、1/200~1/250の間であると考えられている。
【0006】
酵素補充療法は他のリソソーム蓄積病に対しても使用されている。酵素補充療法は、欠乏酵素の活性を外部から供給された酵素で補充しようとするものである。ニーマン・ピック病の酵素補充療法の場合、罹患している人がスフィンゴミエリンを処理できるようにし、そのリソソーム内への蓄積を防止することが目標である。効果を得るには、このような療法は、まず蓄積したスフィンゴミエリンを分解するために十分な量の補充酵素に加えて、スフィンゴミエリンのさらなる蓄積を防止するための補充酵素の継続的投与が必要である。
【0007】
3.発明の概要
本発明は、ASMDを持つヒト被験者、特にNPDの非神経学的兆候、特定の実施態様ではNPDB型を持つ被験者の治療に対する用量漸増酵素補充療法に関係する。より具体的には、ASM酵素はこのような患者に、初めは毒性のない低用量で投与され、その後の投与で漸増される。次に、患者が忍容性を示したASMの最高用量を維持量として使用できる。または、忍容性が示された最高用量よりも低い治療有効量を維持量として使用できる。
【0008】
本発明は、部分的には、ヒト被験者(すなわち、ASMD患者またはニーマン・ピック病患者)の蓄積スフィンゴミエリン基質を除去するために必要なASMの用量は、有害な副作用(毒性の臨床兆候を含む)をもたらすという発見に基づいている。これは、欠乏はあるものの少なくともいくらかの酵素活性を持つ、ASMDの重症度の軽いタイプであるNPD B型患者においては特に驚きである。
【0009】
さらに具体的には、NPDの治療には、病変臓器(例えば、特に、肝臓、脾臓、肺、心臓、腎臓および脳)のASM酵素の適正分布を達成するために十分な高用量の投与を必要とする。ASMノックアウトマウスモデル(ASKMOマウス)での研究では、投与された組み換えヒトASM(rhASM)の大部分は肝臓および脾臓に分布し、基質を減少するが、肺、心臓および脳への分布はかなり少ないことが示された(Miranda et al. FASEB 2000, 14:1988; He et al., 1999, Biochimica et Biophsyica Acta 1432: 251-264 図9Bも参照のこと)。ASMKOマウスモデルでより高い用量のrhASMを使用したその後の研究では、基質が減少し、3.0mg/kg以下の用量では毒性は観察されなかった。実際、毒性の臨床症状は10mg/kg以上の用量が使用されるまで観察されなかった。「Dose Responsive Toxicological Findings Following Intravenous Administration of Recombinant Human Acid Sphingomyelinase (rhASM) to Acid Sphingomyelinase Knock-out (ASMKO) Mice.」C. Nickerson, J. Murray, A. Vitsky, M. Hawes, S. Ryan, P. Ewing, B. Thurberg, L. Andrews. Dept Pharm/Tox, Pathology, Genzyme Corp., Framingham, MA., American Society of Human Genetics 2005;および「Elevations of Pro-Inflammatory Cytokines and Decreases in Cardiovascular Hemodynamics Following Intravenous Administration of Recombinant Human Acid Sphingomyelinase (rhASM) to Acid Sphingomyelinase Knock-out (ASMKO) Mice.」J. Murray, A.M. D’ Angona, C. Nickerson, A. Vitsky, M. Hawes, S. Ryan, P. Ewing, B. Thurberg, L. Andrews. Dept. Pharmacology/Toxicology & Pathology, Genzyme Corp., Framingham, MA., Society of Toxicology 2006を参照。
【0010】
これらのASKMOデータに基づいて、セクション6(下記)に記載のように、非神経因性ASMDのヒト被験者を1.0mg/kg rhASMという控えめな最大用量で治療した。全く予想外なことに、臨床症状を伴う関連有害事象の発現を含む、ヒト被験者での毒性は、0.3 mg/kgという低い用量で観察された。ASM酵素が、少なくとも一部の酵素活性を持ち疾患が比較的軽度であるヒト被験者よりも重度の状態を反映するはずであるノックアウトマウスモデルでは存在しないため、この結果は特に驚きであった。
【0011】
いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、ASM治療で起こる有害な副作用は、ASMD患者に蓄積されたスフィンゴミエリン基質の分解および、プロアポトーシス性でプロ炎症性サイトカイン反応と高ビリルビン血症を誘発する生成物セラミドの放出に起因する可能性がある。この問題に対処するため、我々は、病変臓器における適正分布を達成するために必要な高用量のASM酵素の安全な投与を可能にするレジメンを開発した。このレジメンによると、非常に低用量のASMを初期治療に使用して蓄積基質をゆっくりと分解させると、伴う副作用が少なくなる。基質は被験者内では枯渇しているので(蓄積基質は「減量されている」ので)、用量を安全に漸増することができる。
【0012】
このプロトコールによると、非毒性で低用量のASM酵素をNPD疾患患者に初期投与し、徐々に用量を漸増する。ASM酵素の用量漸増に伴い、患者の総ビリルビン濃度、急性期反応物(急性相反応物質)の生成、炎症性メディエーターの生成、および関連有害事象をモニターすることができる。低用量のASMの投与および用量の漸増は、蓄積したスフィンゴミエリンの減量を促進する。一旦患者が減量されたら、標的臓器(例えば、肝臓、脾臓、肺、心臓、腎臓、脳、骨髄、骨格、関節など)にASM酵素を適正に分布させるために、より高い用量を患者に安全に投与することができる。特定の実施態様では、患者が忍容性を示した最高用量を維持量として使用できる。一部の実施態様では、患者の状態に応じて、維持量を時間とともに増加または減少し得る。
【0013】
特定の実施態様では、次のレベルに用量を引き上げる前に安定した反応を確実に得るために、患者の治療は、血漿スフィンゴミエリン濃度、血漿セラミド濃度、炎症性反応の評価基準である「急性期反応物」および炎症性メディエーターの生成、ビリルビン濃度(総、直接、間接)、および/または他の生化学マーカーの測定によってモニターされる。これらのマーカーには、C反応性タンパク質(CRP)または高感度CRP(hs-CRP)、サイトカイン(例えば、IL-8、IL-6)、カルシトニンおよびフェリチンが含まれるがこれに限定されない。具体的な実施態様では、患者は、1つ以上の関連有害事象に関してモニターされる場合があり、これには全身症状(例えば、発熱、吐気、嘔吐、痛み、筋肉痛)および黄疸が含まれるがこれに限定されない。
【0014】
治療開始には、1mg/kg未満の用量が好ましい。初期用量は、治療量に達するまで徐々に増加される。このような用量漸増は、最高耐量を決定するために使用することができる。例えば、一旦患者の蓄積スフィンゴミエリナーゼ基質を減量したら、毒性が観察されるまで用量をさらに増加し得る。維持量は適宜調整することができ、患者の状態によって継続的および定期的に再調整できる。
【0015】
具体的な実施態様では、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症を持つヒト被験者を治療する方法は、(a)(i)ASMの非毒性で低い初期用量をヒト被験者に投与すること、(ii)ASMの連続的漸増用量を投与し、各連続投与の後に、ビリルビンの上昇または関連有害事象によって示される1つ以上の有害な副作用について被験者をモニターすること、を含む、ヒト被験者の蓄積スフィンゴミエリン基質を減量するためのレジメン、および(b)被験者に対する維持量として、被験者が忍容性を示した最高用量以下の用量を投与することを含む維持レジメン、を含む。
【0016】
別の具体的な実施態様では、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症を持つヒト被験者を治療する方法は、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、および1.0mg/kgの連続的用量での漸増用量レジメンでrhASMを投与することを含むが、ここでrhASMの各用量は少なくとも2回投与され、各用量は2週間ごとに投与され、用量を次のレベルに増加させる前に、患者は有毒な副作用に関してモニターされる。
【0017】
別の具体的な実施態様では、(a)(i)酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)の非毒性で低い初期用量を投与すること、(ii)ASMの連続的漸増用量を投与し、各連続投与の後に、ビリルビンの上昇または関連有害事象によって示される1つ以上の有害な副作用について被験者をモニターすること、を含む、蓄積スフィンゴミエリン基質を減量するためのレジメン、および(b)被験者に対する維持量として、被験者が忍容性を示した最高用量以下の用量を投与することを含む維持レジメンで投与するよう調製された、ヒト被験者の酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症治療用の酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)が本明細書に記載されている。
【0018】
別の具体的な実施態様では、漸増用量レジメンで、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、および1.0mg/kgと漸増し、連続投与するよう調製された、ヒト被験者の酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症の治療用の組み換えヒトASMが本明細書に記載されているが、ここで各用量は少なくとも2回投与され、各用量は2週間ごとに投与され、次のレベルに用量を増加する前に、被験者は有毒な副作用についてモニターされる。
【0019】
3.1.用語
本明細書において、「約」および「およそ」という用語は任意の値の文脈において任意の値の前後の範囲を指すために互換的に使用され、ここで結果得られる値は明示的に列挙された値と実質的に同じである。具体的な実施態様では、「約」は任意の値または範囲の10%、15%、25%以内を意味する。
【0020】
本明細書において、「高齢者」という用語は65歳以上のヒトを指す。
【0021】
本明細書において、「成人」という用語は18歳以上のヒトを指す。
【0022】
本明細書において、「子ども」という用語は1歳から18歳までのヒトを指す。
【0023】
本明細書において、「乳児」という用語は新生児から1歳までのヒトを指す。
【0024】
本明細書において、「幼児」という用語は1歳から3歳までのヒトを指す。
【0025】
本明細書において、「有害事象」という用語は、Clinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model(非営利の臨床データ標準化団体申請臨床試験データモデル)標準用語バージョン3.1.1.に定義されているように、「医薬品を投与された患者または臨床試験被験者における任意の有害な医学的発現」を指す。「関連有害事象」とは、治療と因果関係を持つ有害事象である。
【0026】
本明細書において、「維持量」および類似の用語は、望ましい治療効果を維持するためにASMD患者に投与される用量を指す。具体的な実施態様では、維持量は、(i)例えばMRIなど、当技術分野において周知の技術で評価された脾臓体積の減少、(ii)例えば、肝臓サンプルの生化学分析および/または組織形態計測的分析など、当技術分野において周知の技術で評価された肝臓スフィンゴミエリンレベルの減少、(iii)例えば、パーセント予想最大作業負荷、ピーク酸素消費量および二酸化炭素生成を含む、サイクルエルゴメータ運動負荷試験法による最大作業負荷など、当技術分野において周知の技術で評価された運動能力の増加、(iv)例えば肺拡散能力(DLco)、例えばスパイロメトリー技術で測定された努力性肺活量(FVC)の予測パーセント、例えばスパイロメトリー技術で測定された1秒量(FEV1)、および全肺気量などの、American Thoracic Society, 1991, Am. Rev. Respir. Dis. 144: 1202-1218に記載されている技術など、当技術分野において周知の技術で評価された肺機能の向上、(v)気管支肺胞洗浄(BAL)スフィンゴミエリンの減少、(vi)例えばMRIなど、当技術分野で知られている技術で評価された肝臓体積の減少、(vii)例えば、高解像度コンピュータ断層撮影(CT)スキャンまたは胸部X線など、当技術分野において周知の技術で評価された肺の外観の改善、(viii)例えば、タンデム質量分析で測定された、肝臓、皮膚、血漿および乾燥血液スポット(DBS)のスフィノミエリン濃度の減少、(ix)ASMDおよび/またはそれに関連する症状の重症度の低減または改善、(x)ASMDに関連する症状出現期間の減少、(xi)ASMDに関連する症状の再発の防止、(xii)被験者の入院の減少、(vi)入院期間の減少、(xiii)被験者の生存の増加、(xiv)死亡率の減少、(xv)入院率の減少、(xvi)ASMDに関連する症状の数の減少、(xvii)ASMD患者の無症状生存の増加、(xviii)神経機能の改善(例えば、精神運動機能、社会的反応性など)、(xix)例えばBAL細胞数およびプロファイルで測定される肺クリアランスの改善、(xx)キトトリオシダーゼの血清レベルの減少、(xxi)ケモカイン(c-c)モチーフ・リガンド18(CCL18)の血清レベルの減少、(xxii)脂質プロファイルの改善(例えば、HDL、LDL、コレステロール、トリグリセリド、および総コレステロール:HDL比)および(xxiii)例えば調査表によって評価される生活の質向上のうち、望ましい治療効果の1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上を維持する。特定の実施態様では、維持量は、患者が忍容性を示した最高または最大用量である。
【0027】
一部の実施態様では、維持量はASMの0.5mg/kg~1.5mg/kg、0.75mg/kg~1.25mg/kg、1mg/kg~2.5mg/kg、1mg/kg~2.75mg/kg、1.5mg/kg~2.5mg/kg、1.5mg/kg~2.75mg/kg、2mg/kg~2.5mg/kg、2mg/kg~2.75mg/kg、2.5mg/kg~2.75mg/kg、2.5mg/kg~3mg/kg、3mg/kg~4mg/kg、3mg/kg~5mg/kg、4mg/kg~5mg/kg、2mg/kg~5mg/kgまたは5mg/kg~10mg/kgの間の用量である。特定の実施態様では、維持量はASMの5mg/kg~15mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、10mg/kg~20mg/kg、15mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~30mg/kg、25mg/kg~50mg/kg、30mg/kg~40mg/kg、30mg/kg~45mg/kgまたは40mg/kg~50mg/kgの間の用量である。一部の実施態様では、維持量はASMの0.75mg/kg、0.80mg/kg、0.85mg/kg、0.90mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.25mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.75mg/kg、または2mg/kgである。特定の実施態様では、維持量はASMの2.5mg/kg、2.75mg/kg、3mg/kg、3. 25mg/kg、3.5mg/kg、3.75mg/kg、4mg/kg、4.25mg/kg、4.5mg/kg、4.75mg/kg、5mg/kg、5.5mg/kg、6mg/kg、6.5mg/kg、7mg/kg、7.5mg/kg、8mg/kg、8.5mg/kg、9mg/kg、9.5mg/kgまたは10mg/kgである。一部の実施態様では、維持量はASMの11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kgまたは50mg/kgである。一部の実施態様では、最高用量がASM 10mg/kgの時、維持量はASMの少なくとも1mg/kg、少なくとも2mg/kg、少なくとも3mg/kg、少なくとも4mg/kg、少なくとも5mg/kg、少なくとも6mg/kg、少なくとも7mg/kg、少なくとも8mg/kgである。特定の実施態様では、最高用量が50mg/kgの時、維持量はASMの少なくとも10mg/kg、少なくとも15mg/kg、少なくとも20mg/kg、少なくとも25mg/kg、少なくとも30mg/kg、または少なくとも35mg/kgである。
【0028】
本明細書において、「非毒性用量」および類似の用語は、(i)通常の日常機能を妨げ、追加的なモニタリング、介入、または治療を必要とする臨床症状、またはさらなるモニタリング、治療、または介入を必要とする臨床的に懸念される異常検査値または処置結果として定義される、中等度または重度の関連有害事象(例えば、Clinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model(臨床データ標準化団体申請臨床試験データモデル)標準用語バージョン3.1.1.を参照)、(ii)ASMの用量投与後、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間、5日、1週間、2週間または3週間以上続く、1.5mg/dL、1.75mg/dL、2.0mg/dL、2.1mg/dL、2.2mg/dL、2.3mg/dL、2.4mg/dL、2.5mg/dL、2.6mg/dL、2.7mg/dL、2.75mg/dL、2.8mg/dL、2.9mg/dL、3.0mg/dL、3.1mg/dL、3.2mg/dL、3.3mg/dL、3.4mg/dL、3.5mg/dL、3.6mg/dL、3.7mg/dL、3.8mg/dL、3.9mg/dLまたは4mg/dLを超えるか、または2.1mg/dL~2.5mg/dL、2.1mg/dL~3.0mg/dL、または2.1mg/dL~4mg/dLの範囲の総ビリルビン値、(iii)ASMの用量投与後、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間で、8.2μg/mL、8.3μg/mL、8. 4μg/mL、8.5μg/mL、8.75μg/mL、9μg/mL、9.5μg/mL、10μg/mL、11μg/mL、12μg/mL、13μg/mL、14μg/mL、15μg/mL、16μg/mL、17μg/mL、18μg/mL、19μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、55μg/mL、60μg/mL、65μg/mL、70μg/mL、75μg/mL、または80μg/mLを超えるか、または8.2μg/mL~10μg/mL、8.5μg/mL~10μg/mdL、9μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~15μg/mL、10μg/mL~20μg/mL、15μg/mL~20μg/mL、または20μg/mL~30μg/mLの範囲の血漿セラミド濃度、または(iv)急性期反応のうち1つ、2つ、3つまたはすべてを生じることなくASMD患者に投与された用量を指す。ASMの「非毒性用量」は、例えば、使用される酵素の安定性、使用される酵素の活性、および/または酵素の投与経路によって変化し得る。例えば、活性を増加させた変形ASM酵素の用量は、未変形ASMの投与量よりも低いことがある。当業者であれば、酵素の安定性、酵素の活性、および/または酵素の投与経路に基づいて、投与される酵素の用量を調整することができる。
【0029】
急性期反応は、ASM投与後の炎症性反応を示す早期反応である(一般的に、例えば12~72時間以内)。急性期反応は、急性期反応物(例えば、CRP/hs-CRP、フェリチン、フィブリノーゲン、鉄またはトランスフェリン)の濃度の変化、好中球のパーセントの変化、プロトロンビン時間の変化、または部分トロンボプラスチン時間の変化によって評価できる。具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のCRP/hs-CRP濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のCRP/hs-CRP濃度の増加は急性期反応の測定値として利用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量の投与から、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、正常血漿CRP/hs-CRP濃度を超える血漿CRP/hs-CRP濃度は、急性期反応の測定値として利用できる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約8.1mg/L、8.2mg/L、8.3mg/L、8.4mg/L、8.5mg/L、9mg/L、9.5mg/L、10mg/L、11mg/L、または12mg/Lを超えるか、または8.5mg/L~10mg/L、または8.5mg/dL~12mg/L、または10mg/L~12mg/Lの範囲にある血漿CRP/hs-CRP濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0030】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のフェリチン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のフェリチンの増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿フェリチン濃度を超える血漿フェリチン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に約300ng/mL、325ng/mL、350ng/mL、375ng/mL、400ng/mL、425ng/mL、450ng/mL、475ng/mL、500ng/mL、525ng/mL、550ng/mL、575ng/mL、600ng/mL、625ng/mL、650ng/mL、675ng/mL、700ng/mL、725ng/mL、750ng/mL、775ng/mL、800ng/mL、850ng/mL、900ng/mL、950ng/mL、1000ng/mL、1050ng/mL、1100ng/mL、1150ng/mL、または1200ng/mLを超えるか、または600ng/mL~800ng/mL、650ng/mL~850ng/mL、600ng/mL~1000ng/mL、600ng/mL~1200ng/mL、800ng/mL~1000ng/mL、900ng/mL~1000ng/mL、または1000ng/mL~1200ng/mLの範囲にある血漿フェリチン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0031】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のIL-8濃度と比較した、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の血漿または血清IL-8濃度の増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿IL-8濃度を超える血漿または血清IL-8濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約24pg/mL、50pg/mL、75pg/mL、100pg/mL、200pg/mL、300pg/mL、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、または900pg/mLを超える血漿IL-8濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0032】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のIL-6濃度と比較した、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の血漿または血清IL-6濃度の増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿または血清IL-6濃度を超える血漿または血清IL-6濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約4.4pg/mL、6pg/mL、8pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mL、25pg/mL、または30pg/mLを超える血漿IL-6濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0033】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のカルシトニン濃度と比較した、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の血漿または血清カルシトニン濃度の増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿カルシトニン濃度を超える血漿または血清カルシトニン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約 9.4pg/mL、20pg/mL、30pg/mL、40pg/mL、50pg/mL、75pg/mL、100pg/mL、150pg/mL、200pg/mL、または250pg/mLを超える血漿カルシトニン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0034】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のフィブリノーゲン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のフィブリノーゲンの増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿フィブリノーゲン濃度を超える血漿フィブリノーゲン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約350mg/L、375mg/L、400mg/L、425mg/L、または450mg/Lを超えるか、または350mg/dL~400mg/dL、350mg/dL~450mg/dLまたは400mg/dL~450mg/dLの範囲にある血漿フィブリノーゲン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0035】
1つの実施態様では、ASM投与前の総白血球の患者の好中球のパーセントと比較した、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の総白血球の好中球のパーセントの増加は、急性期反応の測定値として利用できる。別の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、総白血球濃度の正常好中球パーセントを超える総白血球の好中球パーセントの増加は、急性期反応の測定値として利用できる。特定の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上である総白血球濃度の正常好中球パーセントの増加は、急性期反応の測定値として利用できる。
【0036】
本明細書において、「非毒性の低用量」および類似の用語は、初期用量または被験者に投与される用量の文脈においては、ASMDを治療するために被験者に投与されるASMの初回用量または用量であって非毒性の投与量を指す。特定の実施態様では、非毒性の低用量は、ASMの0.001mg/kg~0.01mg/kg、0.001mg/kg~0.01mg/kg、0.001mg/kg~0.05mg/kg、0.001mg/kg~0.1mg/kg、0.001mg/kg~0.5mg/kg、0.05mg/kg~0.275mg/kg、0.075mg/kg~0.275mg/kg、0.05mg/kg~0.2mg/kg、0.075mg/kg~0.2mg/kg、0.1mg/kg~0.275mg/kg、0.1mg/kg~0.25mg/kg、0.1mg/kg~1mg/kg、0.5mg/kg~1mg/kg、0.75mg/kg~1mg/kg、0.1mg/kg~2mg/kg、0.5mg/kg~2mg/kg、0.75mg/kg~2mg/kg、1mg/kg~2mg/kgまたは1.25mg/kg~2mg/kg、1.5mg/kg~2mg/kgまたは1.75mg/kg~2mg/kgの用量である。一部の具体的な実施態様では、非毒性の低用量は、ASMの0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.0075mg/kg、0.01mg/kg、0.0125mg/kg、0.025mg/kg、0.05mg/kg、0.075mg/kg、0.1mg/kg、0.125mg/kg、0.15mg/kg、0.175mg/kg、0.2mg/kg、0.225mg/kg、0.25mg/kg、0.275mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.75mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kgまたは1mg/kgの用量である。
【0037】
「被験者」および「患者」という用語は本明細書では、ヒトを指すために互換的に使用される。具体的な実施態様では、ヒトは、ASMDと診断されている。
【0038】
本明細書において、ASMの用量を投与するという文脈での「治療効果がある」という用語は、利益または治療効果をもたらすASMの量を指す。具体的な実施態様では、ASMの用量を投与するという文脈での「治療効果がある」という用語は、以下の効果の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上を達成するために十分なASMの量を指す。(i)例えばMRIなど、当技術分野において周知の技術で評価された脾臓体積の減少、(ii)例えば、肝臓サンプルの生化学分析および/または組織形態計測的分析など、当技術分野において周知の技術で評価された肝臓スフィンゴミエリンレベルの減少、(iii)例えば、パーセント予想最大作業負荷、ピーク酸素消費量および二酸化炭素生成を含む、サイクルエルゴメータ運動負荷試験法による最大作業負荷など、当技術分野において周知の技術で評価された運動能力の増加、(iv)例えば肺拡散能力(DLco)、例えばスパイロメトリー技術で測定された努力性肺活量(FVC)の予測パーセント、例えばスパイロメトリー技術で測定された1秒量(FEV1)、および全肺気量などの、American Thoracic Society, 1991, Am. Rev. Respir. Dis. 144: 1202-1218に記載されている技術など、当技術分野において周知の技術で評価された肺機能の向上、(v)気管支肺胞洗浄(BAL)スフィンゴミエリンの減少、(vi)例えばMRIなど、当技術分野において周知の技術で評価された肝臓体積の減少、(vii)例えば、高解像度CTスキャンまたは胸部X線など、当技術分野において周知の技術で評価された肺の外観の改善、(viii)例えば、タンデム質量分析で測定された、肝臓、皮膚、血漿および乾燥血液スポット(DBS)のスフィノミエリン濃度の減少、(ix)ASMDおよび/またはそれに関連する症状の重症度の低減または改善、(x)ASMDに関連する症状出現期間の減少、(xi)ASMDに関連する症状の再発の防止、(xii)被験者の入院の減少、(vi)入院期間の減少、(xiii)被験者の生存の増加、(xiv)死亡率の減少、(xv)入院率の減少、(xvi)ASMDに関連する症状の数の減少、(xvii)ASMD患者の無症状生存の増加、(xviii)神経機能の改善(例えば、精神運動機能、社会的反応性など)、(xix)例えばBAL細胞数およびプロファイルで測定される肺クリアランスの改善、(xx)キトトリオシダーゼの血清レベルの減少、(xxi)ケモカイン(c-c)モチーフ・リガンド18(CCL18)の血清レベルの減少、(xxii)脂質プロファイルの改善(例えば、HDL、LDL、コレステロール、トリグリセリド、および総コレステロール:HDL比)および(xxiii)例えば調査表によって評価される生活の質(QOL)向上。
【0039】
本明細書において、「療法」という用語は、ASMDまたはそれに関する状態や症状の治療、管理または改善に使用できる、任意のプロトコール、方法、組成物、処方および/または薬剤を指す。特定の実施態様では、「療法」という用語は、ASMDまたはそれに関連する状態や症状の治療、管理、予防または改善に有用な生物学的療法、補助療法、および/または他の療法を指す。実施態様では、「療法」という用語は、(i)病変部位へのASMの送達を強化する、(ii)ASMの活性を強化する、および(iii)ASMの安定性を強化する治療のうち、1つまたは2つ以上を行なう療法を指す。特定の実施態様では、「療法」という用語は、ASM以外の療法を指す。具体的な実施態様では、「追加療法」とは、ASM以外の療法を指す。
【0040】
本明細書において、「毒性効果」および類似の用語は、ASMの用量の投与に続く、(i)通常の日常機能を妨げ、追加的なモニタリング、介入、または治療を必要とする臨床症状、またはさらなるモニタリング、治療、または介入を必要とする臨床的に懸念される異常検査値または処置結果として定義される、中等度または重度の関連有害事象。例えば、Clinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model(臨床データ標準化団体申請臨床試験データモデル)標準用語バージョン3.1.1.を参照、(ii)ASMの用量投与後、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間、5日、1週間、2週間または3週間以上続く、1.5mg/dL、1.75mg/dL、2.0mg/dL、2.1mg/dL、2.2mg/dL、2.3mg/dL、2.4mg/dL、2.5mg/dL、2.6mg/dL、2.7mg/dL、2.75mg/dL、2.8mg/dL、2.9mg/dL、3.0mg/dL、3.1mg/dL、3.2mg/dL、3.3mg/dL、3.4mg/dL、3.5mg/dL、3.6mg/dL、3.7mg/dL、3.8mg/dL、3.9mg/dLまたは4mg/dLを超えるか、または2.1mg/dL~2.5mg/dL、2.1mg/dL~3.0mg/dL、または2.1mg/dL~4mg/dLの範囲の総ビリルビン値、(iii)ASMの用量投与後、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間で、8.2μg/mL、8.3μg/mL、8.4μg/mL、8.5μg/mL、8.75μg/mL、9μg/mL、9.5μg/mL、10μg/mL、11μg/mL、12μg/mL、13μg/mL、14μg/mL、15μg/mL、16μg/mL、17μg/mL、18μg/mL、19μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、55μg/mL、60μg/mL、65μg/mL、70μg/mL、75μg/mL、または80μg/mLを超えるか、または8.2μg/mL~10μg/mL、8.5μg/mL~10μg/mL、9μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~15μg/mL、10μg/mL~20μg/mL、15μg/mL~20μg/mL、または20μg/mL~30μg/mLの範囲の血漿セラミド濃度、または(iv)急性期反応のうち、1つ、2つ、3つまたはすべてを指す。
【0041】
急性期反応は、急性期反応物(例えば、C反応性タンパク質、フェリチン、アルブミン、IL-8、IL-6、カルシトニン、フィブリノーゲン、鉄またはトランスフェリン)の濃度の変化、好中球のパーセントの変化、プロトロンビン時間の変化、または部分トロンボプラスチン時間の変化によって評価できる。具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のCRP/hs-CRP濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のCRP/hs-CRP濃度の増加は急性期反応の測定値として利用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量の投与から、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、正常血漿CRP/hs-CRP濃度を超える血漿CRP/hs-CRP濃度は、急性期反応の測定値として利用できる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約8.1mg/L、8.2mg/L、8.3mg/L、8.4mg/L、8.5mg/L、8.6mg/L、8.7mg/L、8.8mg/L、8.9mg/L、9mg/L、9.5mg/L、10mg/L、11mg/L、または12mg/Lを超えるか、または8.5mg/L~10mg/L、または8.5mg/L~12mg/L、または10mg/L~12mg/Lの範囲にある血漿CRP/hs-CRP濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0042】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のフェリチン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のフェリチンの増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿フェリチン濃度を超える血漿フェリチン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に約600ng/mL、625ng/mL、650ng/mL、675ng/mL、700ng/mL、725ng/mL、750ng/mL、775ng/mL、800ng/mL、850ng/mL、900ng/mL、950ng/mL、1000ng/mL、1050ng/mL、1100ng/mL、1150ng/mL、または1200ng/mLを超えるか、または600ng/mL~800ng/mL、650ng/mL~850ng/mL、600ng/mL~1000ng/mL、600ng/mL~1200ng/mL、800ng/mL~1000ng/mL、900ng/mL~1000ng/mL、または1000ng/mL~1200ng/mLの範囲にある血漿フェリチン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0043】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のフィブリノーゲン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のフィブリノーゲンの増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿フィブリノーゲン濃度を超える血漿フィブリノーゲン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約350mg/L、375mg/L、400mg/L、425mg/L、または450mg/Lを超えるか、または350mg/dL~400mg/dL、350mg/dL~450mg/dLまたは400mg/dL~450mg/dLの範囲にある血漿フィブリノーゲン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0044】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のアルブミン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のアルブミン濃度の減少は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の濃度0.2、0.4、0.6、1、1.5、2.0g/dLという正常範囲3.5~5.0g/dLからのアルブミン濃度の減少は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0045】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のフェリチン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のフェリチン濃度の減少は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の濃度20、40、60、80、100、120、140、160mcg/dLという正常範囲60~170mcg/dLからのフェリチン濃度の減少は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0046】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のトランスフェリン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のトランスフェリン濃度の減少は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の濃度20、40、60、80、100、120、140、160、180mg/dLという正常範囲202~336mg/dLからのフェリチン濃度の減少は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0047】
1つの実施態様では、ASM投与前の総白血球の患者の好中球のパーセントと比較した、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の総白血球の好中球のパーセントの増加は、急性期反応の測定値として利用できる。別の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、総白血球濃度の正常好中球パーセントを超える総白血球の好中球パーセントの増加は、急性期反応の測定値として利用できる。特定の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上である総白血球濃度の正常好中球パーセントの増加は、急性期反応の測定値として利用できる。
【0048】
4.図面の簡単な説明
図1はプロトコールデザインの図的表現である。
【0049】
図2は、以下に記述されているプロトコールに登録された患者の人口統計学およびベースライン特性を示した表である。
【0050】
図3A、3B、および3Cは、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者の経時的なセラミドの血漿レベル(図3A)、およびスフィンゴミエリンの血漿レベル(図3B)、および乾燥血液スポットのスフィンゴミエリンレベル(図3C)を示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
【0051】
図4は、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定された総ビリルビンレベルを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
【0052】
図5A~5Gは、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定されたCRP/hs-CRPのレベル(図5A)、好中球のパーセント(図5B)、フィブリノーゲン(図5C)、フェリチン(図5D)、IL-8(図5E)、IL-6(図5F)、およびカルシトニン(図5G)を示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
【0053】
図6は、それぞれが異なるrhASM用量を投与された4人の患者の治療中に発生した有害事象の表であり、これらの事象は(たぶん、おそらく、または明らかに)治療に関連していると考えられた。
【0054】
図7は、初期治療期間を示すダイアグラムであり、ASMDを持つ患者の用量漸増および用量維持段階、フェーズ2(第2相試験)のrhASM反復用量プロトコールから成る。
【0055】
5.発明の詳細な説明
本発明は、ASMDを持つヒト被験者、特にNPDの非神経学的兆候、特定の実施態様ではNPDB型を持つ被験者の治療に対する用量漸増酵素補充療法に関係する。より具体的には、酵素ASMはこのような患者に、初めは非毒性の低用量で投与され、その後の投与で漸増される。患者が忍容性を示したASMの最高用量を維持量として使用できる。または、忍容性が示された最高用量よりも低い治療有効量を維持量として使用できる。
【0056】
NPDの治療には、病変臓器(例えば、脾臓、肺、心臓、腎臓および脳)のASM酵素の適正分布を達成するために十分な用量を必要とする。ASMKOマウスに組み換えヒトASMを静脈内投与した後、ASM活性のほとんどは肝臓に分布し、わずかなASM酵素活性が、脾臓、心臓、腎臓および肺などの他の病変臓器で検出される(例えば、He et al., 1999, Biochimia et Biophsyica Acta 1432: 251-264の図9Bを参照)。そのため、ASMDまたはニーマン・ピック病に悩む患者の肺、心臓および腎臓に、投与された酵素を確実に分布・送達するために、非常に高い用量が必要となる。
【0057】
ASMノックアウトマウスモデル(ASKMOマウス)での研究では、投与されたrhASM の大部分は肝臓および脾臓に分布し、基質を減少するが、肺、心臓および脳への分布はかなり少ないことが示された(Miranda et al. FASEB 2000, 14:1988)。ASMKOマウスモデルで高用量のrhASMを使用したその後の研究では、基質が減少し、3.0mg/kg以下の用量では毒性は観察されなかった。実際、毒性の臨床症状は10mg/kg以上の用量が使用されるまで観察されなかった。「Dose Responsive Toxicological Findings Following Intravenous Administration of Recombinant Human Acid Sphingomyelinase (rhASM) to Acid Sphingomyelinase Knock-out (ASMKO) Mice」 C. Nickerson, J. Murray, A. Vitsky, M. Hawes, S. Ryan, P. Ewing, B. Thurberg, L. Andrews. Dept Pharm/Tox, Pathology, Genzyme Corp., Framingham, MA., American Society of Human Genetics 2005;および「Elevations of Pro-Inflammatory Cytokines and Decreases in Cardiovascular Hemodynamics Following Intravenous Administration of Recombinant Human Acid Sphingomyelinase (rhASM) to Acid Sphingomyelinase Knock-out (ASMKO) Mice」 J. Murray, A.M. D’Angona, C. Nickerson, A. Vitsky, M. Hawes, S. Ryan, P. Ewing, B. Thurberg, L. Andrews. Dept. Pharmacology/Toxicology & Pathology, Genzyme Corp., Framingham, MA., Society of Toxicology 2006を参照。
【0058】
これらのASKMOデータに基づいて、セクション6に記載のように(下記)、非神経因性ASMDのヒト被験者を1.0mg/kgという控えめな最大用量で治療した。全く予想外なことに、臨床症状を伴う有害事象の発現を含む、ヒト被験者での毒性は、0.3mg/kgという低い用量で観察された。ASM酵素が、少なくとも一部の酵素活性を持ち疾患が比較的軽度であるヒト被験者よりも重度の状態を反映するはずであるノックアウトマウスモデルでは存在しないため、この結果は特に驚きであった。
【0059】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、高用量のASMのNPD患者への投与は、大量のスフィンゴミエリンの加水分解をもたらし高濃度のセラミドを生じる可能性があり、これらのNPD患者で観察される有害な副作用を引き起こす可能性がある。ASM酵素は、細胞の細胞膜の主要成分であるスフィンゴミエリン(例えば、Milaus et al., 2010 FEBS Letters 584: 1887-1894を参照)を、セラミドとホスホコリンに加水分解する。セラミドは細胞死で役割を果たすことが知られており、プロアポトーシス剤であることが知られている(例えば、Smith and Schuchman, 2008, FASEB 22: 3419-3431を参照)。
【0060】
さらに、特性化されたリソソーム蓄積病に関連している他のリソソーム酵素とは異なり、ASMは、血漿中に見られる中性pHおよびリソソームで見られる酸性pHでスフィンゴミエリンを加水分解する(例えば、Schissel et al., 1998. J. Biol. Chem. 273: 2738-2746を参照)。血漿中で機能するためのASM酵素の能力は、リポタンパク質および細胞の細胞膜で見られるスフィンゴミエリンの加水分解をもたらし、分解生成物セラミドの量を増加させ、高用量のASM酵素を投与されたNPD患者で観察される有害な副作用を生じさせる可能性がある。
【0061】
酵素の高用量投与に関連する毒性を回避または最小化しながら、病変臓器へのASM酵素の適正な分布を達成することに関する問題を解決するために、発明者は本明細書に記載のレジメンを開発し、ここでは、ASM酵素の非毒性の低用量をNPD患者に初期投与し、経時的に用量を漸増する。ASM酵素の用量漸増に伴い、患者の総/直接/間接ビリルビン濃度、急性期反応物の生成、炎症性メディエーター、および関連有害事象をモニターすることができる。低用量のASMの投与および酵素の漸増は、蓄積したスフィンゴミエリンの減量を促進する。一旦患者が減量されたら、標的臓器(例えば、肝臓、脾臓、肺、心臓、腎臓、脳、骨髄、骨格、関節など)にASM酵素が適正に分布することを確実にするために、より高い用量を患者に安全に投与することができる。特定の実施態様では、患者が忍容性を示した最高用量を維持量として使用できる。または、忍容性が示された最高用量よりも低い治療有効量を維持量として使用できる。一部の実施態様では、患者の状態に応じて、維持量を増加または減少し得る。
【0062】
特定の実施態様では、次のレベルに用量を引き上げる前に安定した反応を確実に得るために、患者の治療は、血漿スフィンゴミエリン濃度、血漿セラミド濃度、炎症性反応の評価基準である「急性期反応物」および炎症性メディエーターの生成、ビリルビン濃度(総、直接、または間接)、および/または他の生化学マーカーを測定することでモニターできる。これらのマーカーには、CRP/hs-CRP、サイトカイン(例えば1L-8、1L-6)、カルシトニン、フェリチンを含むがこれに限定されない。具体的な実施態様では、患者は、1つ以上の関連有害事象に関してモニターされる場合があり、これには全身症状(例えば、発熱、吐気、嘔吐、痛み、筋肉痛および黄疸)を含むがこれに限定されない。
【0063】
5.1.用量漸増プロトコール
ASMDを治療する方法が記載されており、これには被験者に蓄積したスフィンゴミエリンの量を減少させるために、ASMの非毒性の初期低用量を1回以上患者に投与することを含む。一定期間経過後、治療効果があり患者が忍容性を示した最高用量に達するまで、ASMの用量を漸増することができる。一旦この投与量が特定されたら、それを被験者を治療するための維持量として使用できる。維持量は、ASMDを治療するために、被験者に毎週、2週間に1回、または毎月投与できる。一部の実施態様では、維持量を投与されている被験者は、(i)関連有害事象、(ii)総/直接/間接ビリルビン濃度、(iii)血漿セラミド濃度、または(iv)急性期反応のうち、1つ、2つ、3つまたはすべてについて、3カ月ごと、6カ月ごとまたは1年ごとにモニターされる。被験者が中等度の強度の関連有害事象(例えば、関連する中等度の有害事象)、ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の総ビリルビン値を超える総ビリルビン濃度、ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の血漿セラミド濃度を超える血漿セラミド濃度、または急性期反応を経験した場合は、用量を調整する必要があるかどうかを判断するために、医師または他の医療専門家が被験者への投与量を評価することができる。
【0064】
1つの実施態様では、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症を持つヒト被験者を治療する方法は、(a)(i)ASMの非毒性で低い初期用量をヒト被験者に投与すること、(ii)ASMの連続的漸増用量を投与し、各連続投与の後に、ビリルビンの上昇または関連有害事象によって示される、1つ以上の有害な副作用について被験者をモニターすること、を含む、ヒト被験者の蓄積スフィンゴミエリン基質を減量するためのレジメン、および(b)被験者に対する維持量として、被験者が忍容性を示した最高用量以下の用量を投与することを含む維持レジメンと、を含む。特定の実施態様では、ASMの初期用量の範囲は、0.1mg/kg~0.5mg/kgまたは0.1mg/kg~1mg/kgである。一部の実施態様では、以前の用量から1週間、2週間、3週間または4週間後に、連続的漸増用量が投与される。特定の実施態様では、連続的漸増用量は、以前の用量よりも約0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、1.2mg/kg、1.5mg/kg、1.75mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kgまたは5mg/kg高い。一部の実施態様では、連続的漸増用量は、以前の用量よりも0.1~0.5mg/kg、0.1mg/kg~1mg/kg、0.5mg/kg~1mg/kg、0.5mg/kg~2mg/kg、1mg/kg~2mg/kg、2mg/kg~4mg/kgまたは2mg/kg~5mg/kg高い。特定の実施態様では、被験者が忍容性を示した最高用量は1mg/kg~2.5mg/kgである。一部の実施態様では、最高用量は、維持用量としてヒト被験者に投与される。
【0065】
特定の実施態様では、ASMDを持つヒト被験者を治療する方法は、(a)ヒト被験者に蓄積したスフィンゴミエリンの量を減少させるための減量ASM投与を含み、ここで減量ASM投与は、(i)ASMの非毒性の低用量をヒト被験者に投与すること、および(ii)ヒト被験者が、総ビリルビン濃度の上昇、血漿セラミド濃度の上昇、急性期反応物の生成、炎症性メディエーターの生成、または有害事象(例えば、Clinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model(臨床データ標準化団体申請臨床試験データモデル)標準用語バージョン3.1.1)によって示される1つ以上の副作用を示さない場合、ASMの連続的漸増用量をそのヒトに投与することを含み、かつ(b)維持ASM投与を含み、ここで維持ASM投与はASMの維持用量をヒト被験者に反復投与することを含む。一部の実施態様では、ASMの用量の投与後一定期間(例えば、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、1週間、または次の投与まで)、患者は1つ以上の有害な副作用または総ビリルビンに関してモニターされる。特定の実施態様では、投与される維持量は、患者の治療過程において調整され得る。一部の実施態様では、被験者に投与される維持量は、被験者が忍容性を示した最大用量である。
【0066】
具体的な実施態様では、ASMDを治療する方法は、ASMの非毒性の初期低用量(例えば、ASMの0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、0.1mg/kg~0.5mg/kg、または0.5~1mg/kgの用量)をそれを必要とする被験者に投与し、一定期間(例えば3日、1週間、2週間、または3週間)後に、当技術分野で知られている技術(例えば、He et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載されている技術など)で測定した1つ以上の病変臓器のASM活性レベルが、ASMDを持たない被験者(例えば、健常被験者または5、10、15、20、30、40、50、75、100、150、175またはそれ以上の被験者の集団)の対応臓器のASM活性の少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上になるまで、ASMの被験者への投与量を連続的に増加させることを含む。別の実施態様では、ASMDを治療する方法は、ASMの0.1mg/kg用量をそれを必要とする被験者に投与し、一定期間(例えば3日、1週間、2週間、または3週間)後に、当技術分野で知られている技術(例えば、He et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載されている技術など)で測定した1つ以上の次の病変臓器のASM活性レベルが、ASMDを持たない被験者(例えば、健常被験者または5、10、15、20、30、40、50、75、100、150、175またはそれ以上の被験者の集団)の対応臓器のASMの正常活性の5%~10%、5%~15%、5%~20%、10%~15%、10%~20%、15%~20%、15%~25%、25%~50%、50%~75%、または75%~95%になるまで、ASMの被験者への投与量を連続的に増加させることを含む。特定の実施態様では、総ビリルビン濃度が2.0mg/dLまたは2.1mg/dL以下で被験者が中等度または重度の関連有害事象を経験しない場合は、徐々に用量を増加する。特定の実施態様では、正常健常被験者のASM活性は、Horinouchi et al., 1995, Nature Genetics 10: 288-293(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のアッセイを使用した健常マウスの類似臓器のASM活性に基づいて、脳、心臓、腎臓および肝臓ではタンパク質の約20~40単位/mgと推定されている。特定の実施態様では、正常健常被験者のASM活性は、Horinouchi et al., 1995, Nature Genetics 10: 288-293に記載のアッセイを使用した健常マウスの類似臓器のASM活性に基づいて、肺ではタンパク質の15~25単位/mg、脾臓ではタンパク質の10~15単位/mgと推定されている。特定の実施態様では、1つ以上の病変臓器で一旦ASM活性が正常または正常値の特定のパーセントに達すると、被験者が忍容性を示した最高用量以下の用量を維持量として被験者に投与することができる。経時的に、被験者の健康状態により、維持量を調整し得る。被験者の状況によっては、維持量は増加または減少させ得る。
【0067】
1つの実施態様では、ASMDを治療する方法は、(a)ASMの非毒性の初期低用量を、それを必要とするヒトに投与すること、および(b)ASMの用量の投与後、ヒトが(i)例えばClinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model(臨床データ標準化団体申請臨床試験データモデル)標準用語バージョン3.1.1.で定義される重度の関連有害事象、(ii)ASMの用量投与後、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間、5日、1週間、2週間または3週間以上続く、1.5mg/dL、1.75mg/dL、2.0mg/dL、2.1mg/dL、2.2mg/dL、2.3mg/dL、2.4mg/dL、2.5mg/dL、2.6mg/dL、2.7mg/dL、2.75mg/dL、2.8mg/dL、2.9mg/dL、3.0mg/dL、3.1mg/dL、3.2mg/dL、3.3mg/dL、3.4mg/dL、3.5mg/dL、3.6mg/dL、3.7mg/dL、3.8mg/dL、3.9mg/dLまたは4mg/dLを超えるか、または2.1mg/dL~2.5mg/dL、2.1mg/dL~3.0mg/dL、または2.1mg/dL~4mg/dLの範囲の総ビリルビン値、(iii)ASMの用量投与後、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間で、8.2μg/mL、8.3μg/mL、8.4μg/mL、8.5μg/mL、8.75μg/mL、9μg/mL、9.5μg/mL、10μg/mL、11μg/mL、12μg/mL、13μg/mL、14μg/mL、15μg/mL、16μg/mL、17μg/mL、18μg/mL、19μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、55μg/mL、60μg/mL、65μg/mL、70μg/mL、75μg/mL、または80μg/mLを超えるか、または8.2μg/mL~10μg/mL、8.5μg/mL~10μg/mL、9μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~15μg/mL、10μg/mL~20μg/mL、15μg/mL~20μg/mL、または20μg/mL~30μg/mLの範囲の血漿セラミド濃度、または(iv)急性期反応を含む副作用のうち、1つ、2つ、3つまたは4つを発現しない場合、ASMの連続的漸増用量を投与することを含む。この実施態様によると、ヒトが項目(i)~(iv)のいずれか1つ以上を発現しない限り、ASMの連続的漸増用量をそれを必要とするヒトに投与することができる。ヒトが項目(i)~(iv)のいずれか1つ以上を発現した場合は、兆候の重度によって、項目(i)~(iv)の発現を引き起こした同じ用量を反復するか、または以前の用量まで減量することができる。
【0068】
別の実施態様では、ASMDを治療する方法は、(a)ASMの初期用量0.1mg/kgを、それを必要とするヒトに投与すること、(b)ASMの用量の投与後に、ヒトにおける、(i)総ビリルビン濃度、(ii)関連有害事象の発現、(iii)急性期反応、または(iv)血漿セラミド濃度、(c)項目(i)~(iv)の1つ以上に基づいて、ASMの用量を調整する(例えば、増量または減量)かまたは維持するかを決定すること、(d)前のステップ(c)で決定されたASMの用量の投与に続いて、ステップ(b)および(c) を反復することのうち1つ以上をモニターすることを含む。別の実施態様では、ASMDを治療する方法は、(a)ASMの初期用量0.1mg/kgを、2~4週間間隔で2回、それを必要とするヒトに投与すること、(b)ASMの各用量の投与後に、ヒトにおける、(i)総ビリルビン濃度、(ii)関連有害事象の発現、(iii)急性期反応、または(iv)血漿セラミド濃度、(c)項目(i)~(iv)の1つ以上に基づいて、ASMの用量を調整する(例えば、増量または減量)かまたは維持するかを決定すること、(d)前のステップ(c)で決定されたASMの用量の投与に続いて、ステップ(b)および(c)を反復することのうち1つ以上をモニターすることを含む。これらの実施態様によると、初期用量0.1mg/kgまたはステップ(c)で決定された調整用量が以下をもたらす場合、ASMのより高い用量を1回以上2~4週間間隔でヒトに投与することができる:(i)ASMの別の用量を投与する期限の前に総ビリルビン濃度が2.0mg/dL以下になる、(ii)関連有害事象がないかまたは軽度の関連有害事象のみである、(iii)ASMの最後の用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、48時間、または72時間後の血漿セラミドが正常範囲内である、または(iv)急性期反応がないかまたは統計的に有意でない急性期反応がある。しかし、初期用量0.1mg/kgまたはステップ(c)で決定された調整用量が、(i)ASMの別の用量を投与する期限の前に総ビリルビン濃度が2.1mg/dL以上になる、(ii)関連有害事象、(iii)ASMの最後の用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、48時間、または72時間後の血漿セラミドが正常範囲より高い、または(iv)統計的に有意な急性期反応のうちいずれかをもたらす場合は、用量を維持または減少できる。
【0069】
別の実施態様では、ASMDを治療する方法は、(A)0.1mg/kgの初期用量を2週間間隔で2回、それを必要とするヒトに投与すること、(B)ASMの各初期用量の投与に続いて(i)総ビリルビン濃度、(ii)関連有害事象の発現のどちらか、(iii)(i)と(ii)の両方をモニターすること、(C)項目(i)~(iii)の1つ以上に基づいてASMの用量を調整するか(例えば、増量または減量)または維持するかを決定すること、(D)前のステップ(C)で決定されたASMの用量の投与に続いて、ステップ(B)および(C)を反復することを含むが、ここで(a)総ビリルビン濃度が2.0mg/dL以下であるかまたはヒトが軽度の関連有害事象を示す場合は、ヒトに投与される用量は増加される、(b)総ビリルビン濃度が2.1mg/dL~3.1mg/dLであるかまたはヒトが中等度の関連有害事象を示す場合、ヒトには継続して現在の用量を2~4週間間隔で1~4回投与し、最後の投与用量の後、総ビリルビン濃度が依然として2.0mg/dLを超える場合は、この用量が維持される、(c)総ビリルビン濃度が3mg/dLを超えるかまたはヒトが重度の関連有害事象を示す場合、ヒトへの投与量は減少されるかまたはもはやASMは投与されない。
【0070】
別の実施態様では、ASMDを治療する方法は、(A)0.3mg/kgの初期用量を2週間間隔で2回、それを必要とするヒトに投与すること、(B)各用量のASM投与に続いて(i)総ビリルビン濃度、(ii)関連有害事象の発現のどちらか、(iii)(i)と(ii)の両方をモニターすること、(C)項目(i)~(iii)の1つ以上に基づいてASMの用量を調整するか(例えば、増量または減量)または維持するかを決定すること、(D)前のステップ(C)で決定されたASMの用量の投与に続いて、ステップ(B)および(C)を反復することを含むが、ここで(a)総ビリルビン濃度が2.0mg/dL以下であるかまたはヒトが軽度の関連有害事象を示す場合は、ヒトに投与される用量は増加される、(b)総ビリルビン濃度が2.1mg/dL~3.1mg/dLであるかまたはヒトが中等度の関連有害事象を示す場合、ヒトには継続して現在の用量を2~4週間間隔で1~4回投与し、最後の投与用量の後、総ビリルビン濃度が依然として2.0mg/dLを超える場合は、この用量が維持される、(c)総ビリルビン濃度が3mg/dLを超えるかまたはヒトが重度の関連有害事象を示す場合、ヒトへの投与量は減少されるかまたはもはやASMは投与されない。
【0071】
具体的な実施態様では、ASMDを治療する方法は、それを必要とする被験者に、ASMの0.1mg/kgの用量を投与し、2週間後にASMの0.3mg/kgの用量を2週間ごとに投与することを含む。別の具体的な実施態様では、ASMDを治療する方法は、それを必要とする被験者に、ASMの0.1mg/kgの用量を投与し、ASMの0.1mg/kg用量の投与から2週間後にASMの0.3mg/kgの用量を、ASMの0.3mg/kg用量の投与から2週間後にASMの0.6mg/kg用量を投与することを含む。別の具体的な実施態様では、ASMDを治療する方法は、それを必要とする被験者に、ASMの0.1mg/kgの用量を投与し、ASMの0.1mg/kg用量の投与から2週間後にASMの0.3mg/kgの用量を、ASMの0.3mg/kg用量の投与から2週間後にASMの0.6mg/kg用量を、ASMの0.6mg/kg用量の投与から2週間後にASMの1mg/kgの用量を投与することを含む。特定の実施態様では、各用量は、用量を次のレベルに増量する前に、少なくとも2回、好ましくは2~4回反復し得る。これらの実施態様によると、総ビリルビン値が2.0mg/dL以下である、および/または被験者が軽度の関連有害事象を経験した場合にのみ、用量が増加される。総ビリルビン値が2.1~3mg/dLの間である、および/または被験者が中等度の関連有害事象を経験した場合は、用量は増加されない。総ビリルビン値が総ビリルビンの3.0mg/dLを超える、および/または被験者が重度の関連有害事象を経験した場合は、以前の耐量まで用量を減少する。
【0072】
具体的な実施態様では、患者は、セクション8または9以降(下記)に記述されているプロトコール、または類似のプロトコールに従って、ASMDに対する治療を受ける。
【0073】
具体的な実施態様では、ASMDを治療する方法は、ASMの0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、または0.1mg/kg~0.5mg/kg、または0.1mg/kg~1mg/kgの用量を、それを必要とする被験者に投与し、一定期間(例えば、3日、1週間、2週間、3週間または4週間)後に、総ビリルビン濃度が2.1mg/dL以下で、被験者が中等度または重度の関連有害事象を経験しない場合は、被験者に投与するASMの用量を徐々に増加することを含む。一部の実施態様では、ASMの用量は、治療効果があり、被験者が忍容性を示した最大または最高用量を達成するまで、徐々に増加される。特定の実施態様では、このような忍容性を示した最高または最大用量は、病変臓器の蓄積スフィンゴミエリンが減量されるまで投与され、その後、忍容性を示した最大用量よりも低いものの、治療効果がある維持量が被験者に投与される。一部の実施態様では、患者の状態が改善するにつれ、維持量は経時的に減らされる。
【0074】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性が示された最高用量は、1つまたは2つ以上の重度の関連有害事象または関連有害事象(例えばClinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model(臨床データ標準化団体申請臨床試験データモデル)標準用語バージョン3.1.1で定義されるもの)を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASMの投与前の患者の総ビリルビン濃度と比較して、総ビリルビン濃度を増加させることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量であり、ここでこの増加は2日間、3日間、5日間、1週間、2週間、または3週間を超えて続く。別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASMの投与後、総ビリルビン濃度が、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間、5日間、1週間、2週間、または3週間を超えて継続して、正常総ビリルビン濃度よりも高くなることがない、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常総ビリルビン濃度は、およそ1.2mg/dL未満である。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの投与後、総ビリルビン濃度が、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間、5日間、1週間、2週間、または3週間を超えて継続して、約1.5mg/dL、1.75mg/dL、2.0mg/dL、2.1mg/dL、2.2mg/dL、2.3mg/dL、2.4mg/d、2.5mg/dL、2.6mg/dL、2.7mg/dL、2.75mg/dL、2.8mg/dL、2.9mg/dL、3.0mg/dL、3.1mg/dL、3.2mg/dL、3.3mg/dL、3.4mg/dL、3.5mg/dL、3.6mg/dL、3.7mg/dL、3.8mg/dL、3.9mg/dLまたは4mg/dL を超えるか、または2.1mg/dL~2.5mg/dL、2.1mg/dL~3.0mg/dL、または2.1mg/dL~4mg/dLの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0075】
別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿セラミド濃度が正常血漿セラミド濃度を超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常血漿セラミド濃度は約1.5~8μg/mLである。特定の実施態様では、忍容性を示した最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿セラミド濃度が約8.2μg/mL、8.3μg/mL、8.4μg/mL、8.5μg/mL、8.75μg/mL、9μg/mL、9.5μg/mL、10μg/mL、11μg/mL、12μg/mL、13μg/mL、14μg/mL、15μg/mL、16μg/mL、17μg/mL、18μg/mL、19μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、55μg/mL、60μg/mL、65μg/mL、70μg/mL、75μg/mL、または80μg/mLを超えるか、または8.2μg/mL~10μg/mL、8.5μg/mL~10μg/mL、9μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~15μg/mL、10μg/mL~20μg/mL、15μg/mL~20μg/mL、または20μg/mL~30μg/mLの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0076】
別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、急性期反応を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。急性期反応は、急性期反応物の濃度の変化、プロトロンビン時間の変化、部分トロンボプラスチン時間の変化、または好中球のパーセントの変化によって評価できる。例えば、急性期反応は、被験者へのASM投与前のものまたはASMDを持たないヒト(例えば、健常人)のものと比較した、被験者へのASM投与後の以下の因子の1つ以上の増加によって評価できる:好中球のパーセント、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、総ビリルビン濃度、C反応性タンパク質(CRP/hs-CRP)濃度、血清アミロイドA(SAA)、血清アミロイドP成分、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、フェリチン濃度、IL-6濃度、IL-8濃度、カルシトニン濃度、アルブミン濃度、またはフィブリノーゲン濃度。急性期反応もASM投与前の被験者の鉄濃度またはアルブミン濃度、またはASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の鉄濃度またはアルブミン濃度と比較した、被験者へのASM投与後の鉄濃度またはアルブミン濃度の減少によって評価できる。
【0077】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASM投与前の患者のCRP/hs-CRP濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のCRP/hs-CRP濃度の増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿CRP/hs-CRP濃度が正常血漿CRP/hs-CRP濃度を超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常血漿CRP/hs-CRP濃度は、およそ8mg/dL未満である。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿CRP/hs-CRP濃度が約8.1mg/L、8.2mg/L、8.3mg/L、8.4mg/L、8.5mg/L、8.6mg/L、8.7mg/L、8.8mg/L、8.9mg/L、9mg/L、9.5mg/L、10mg/L、11mg/L、または12mg/Lを超えるか、または8.5mg/L~10mg/L、または8.5mg/dL~12mg/L、または10mg/L~12mg/Lの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0078】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASM投与前の患者のフェリチン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のフェリチン濃度の増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿フェリチン濃度が正常血漿フェリチン濃度を超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常血漿フェリチン濃度は10~30ng/mLである。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿フェリチン濃度が約300ng/mL、325ng/mL、350ng/mL、375ng/mL、400ng/mL、425ng/mL、450ng/mL、475ng/mL、500ng/mL、525ng/mL、550ng/mL、575ng/mL、600ng/mL、625ng/mL、650ng/mL、675ng/mL、700ng/mL、725ng/mL、750ng/mL、775ng/mL、800ng/mL、850ng/mL、900ng/mL、950ng/mL、1000ng/mL、1050ng/mL、1100ng/mL、1150ng/mL、または1200ng/mLを超えるか、または600ng/mL~800ng/mL、650ng/mL~850ng/mL、600ng/mL~1000ng/mL、600ng/mL~1200ng/mL、800ng/mL~1000ng/mL、900ng/mL~1000ng/mL、または1000ng/mL~1200ng/mLの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量で、急性期反応の測定値として使用できる。
【0079】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のIL-8濃度と比較した、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の血漿または血清IL-8濃度の増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿IL-8濃度を超える血漿または血清IL-8濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約24pg/mL、50pg/mL、75pg/mL、100pg/mL、200pg/mL、300pg/mL、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、または900pg/mLを超える血漿IL-8濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0080】
具体的な実施態様では、ASM投与前の患者のIL-6濃度と比較した、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の血漿または血清IL-6濃度の増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿IL-6濃度を超える血漿または血清IL-6濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約4.4pg/mL、6pg/mL、8pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mL、25pg/mL、または30pg/mLを超える血漿IL-6濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0081】
具体的な実施態様では、ASMの投与前の患者のカルシトニン濃度と比較した、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の血漿または血清カルシトニン濃度の増加は、急性期反応の測定値として使用できる。別の具体的な実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に正常血漿カルシトニン濃度を超える血漿または血清カルシトニン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。特定の実施態様では、ASMの用量投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、約9.4pg/mL、20pg/mL、30pg/mL、40pg/mL、50pg/mL、75pg/mL、100pg/mL、150pg/mL、200pg/mL、または250pg/mLを超える血漿カルシトニン濃度は、急性期反応の測定値として使用できる。
【0082】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASM投与前の患者のフィブリノーゲン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のフィブリノーゲン濃度の増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿フィブリノーゲン濃度が正常血漿フィブリノーゲン濃度を超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常血漿フィブリノーゲン濃度は150mg/dL~300mg/dLである。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿フィブリノーゲン濃度が約350mg/dL、375mg/dL、400mg/dL、425mg/dL、または450mg/dLを超えるか、または350mg/dL~400mg/dL、350mg/dL~450mg/dLまたは400mg/dL~450mg/dLの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0083】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASM投与前の患者の総白血球の好中球パーセントと比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の総白血球の好中球パーセントの増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、総白血球の好中球パーセントが総白血球濃度の正常好中球パーセントを超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の総白血球の好中球の正常パーセントは、45%~60%である。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、総白血球の好中球パーセントの70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0084】
別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、投与されたASMに対する抗体の増加を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、過敏性反応を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、サイトカイン放出症候群を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0085】
特定の実施態様では、治療効果があり、被験者が忍容性を示した最高用量は、1mg/kg~2.5mg/kg、2mg/kg~3mg/kg、3mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、15mg/kg~20mg/kg、15mg/kg~25mg/kg、20mg/kg~30mg/kg、または25mg/kg~50mg/kgである。一部の実施態様では、治療効果があり、被験者が忍容性を示した最高用量は、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、または15mg/kgである。特定の実施態様では、治療効果があり、被験者が忍容性を示した最高用量は、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、または50mg/kgである。
【0086】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性が示された最高用量は、1つまたは2つ以上の重度の関連有害事象または関連有害事象(例えばClinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model(臨床データ標準化団体申請臨床試験データモデル)標準用語バージョン3.1.1で定義されるもの)を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASM投与前の患者の総ビリルビン濃度と比較して、総ビリルビン濃度を増加させることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量であり、ここでこの増加は2日間、3日間、5日間、1週間、2週間、または3週間を超えて続く。別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASMの投与後、総ビリルビン濃度が、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間、5日間、1週間、2週間、または3週間を超えて継続して、正常総ビリルビン濃度よりも高くなることがない、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常総ビリルビン濃度は、およそ1.2mg/dL未満である。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの投与後、総ビリルビン濃度が、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間、5日間、1週間、2週間、または3週間を超えて継続して、約1.5mg/dL、1.75mg/dL、2.0mg/dL、2.1mg/dL、2.2mg/dL、2.3mg/dL、2.4mg/d、2.5mg/dL、2.6mg/dL、2.7mg/dL、2.75mg/dL、2.8mg/dL、2.9mg/dL、3.0mg/dL、3.1mg/dL、3.2mg/dL、3.3mg/dL、3.4mg/dL、3.5mg/dL、3.6mg/dL、3.7mg/dL、3.8mg/dL、3.9mg/dLまたは4mg/dL を超えるか、または2.1mg/dL~2.5mg/dL、2.1mg/dL~3.0mg/dL、または2.1mg/dL~4mg/dLの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0087】
別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿セラミド濃度が正常血漿セラミド濃度を超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常血漿セラミド濃度は約1.5~8μg/dLである。特定の実施態様では、忍容性を示した最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿セラミド濃度が約8.2μg/mL、8.3μg/mL、8.4μg/mL、8.5μg/mL、8.75μg/mL、9μg/mL、9.5μg/mL、10μg/mL、11μg/mL、12μg/mL、13μg/mL、14μg/mL、15μg/mL、16μg/mL、17μg/mL、18μg/mL、19μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、55μg/mL、60μg/mL、65μg/mL、70μg/mL、75μg/mL、または80μg/mLを超えるか、または8.2μg/mL~10μg/mL、8.5μg/mL~10μg/mL、9μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~12μg/mL、10μg/mL~15μg/mL、10μg/mL~20μg/mL、15μg/mL~20μg/mL、または20μg/mL~30μg/mLの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0088】
別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、急性期反応を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。急性期反応は、急性期反応物の濃度の変化、プロトロンビン時間の変化、部分トロンボプラスチン時間の変化、または好中球のパーセントの変化によって評価できる。例えば、急性期反応は、被験者へのASM投与前のものまたはASMDを持たないヒト(例えば、健常人)のものと比較した、被験者へのASM投与後の、好中球のパーセント、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、総ビリルビン濃度、C反応性タンパク質(CRP/hs-CRP)濃度、血清アミロイドA(SAA)、血清アミロイドP成分、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、フェリチン濃度、アルブミン濃度、またはフィブリノーゲン濃度の因子の1つ以上の増加によって評価できる。急性期反応もASM投与前の被験者の鉄濃度またはアルブミン濃度、またはASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の鉄濃度またはアルブミン濃度と比較した、被験者へのASM投与後の鉄濃度またはアルブミン濃度の減少によって評価できる。
【0089】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASM投与前の患者のCRP/hs-CRP濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のCRP/hs-CRP濃度の増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿CRP/hs-CRP濃度が正常血漿CRP/hs-CRP濃度を超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常血漿CRP/hs-CRP濃度は、およそ8mg/L未満である。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿CRP/hs-CRP濃度が約8.1mg/L、8.2mg/L、8.3mg/L、8.4mg/L、8.5mg/L、8.6mg/L、8.7mg/L、8.8mg/L、8.9mg/L、9mg/L、9.5mg/L、10mg/L、11mg/L、または12mg/Lを超えるか、または8.5mg/L~10mg/L、または8.5mg/L~12mg/L、または10mg/L~12mg/Lの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0090】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASM投与前の患者のフェリチン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のフェリチン濃度の増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿フェリチン濃度が正常血漿フェリチン濃度を超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常血漿フェリチン濃度は10~30ng/mLである。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿フェリチン濃度が約600ng/mL、625ng/mL、650ng/mL、675ng/mL、700ng/mL、725ng/mL、750ng/mL、775ng/mL、800ng/mL、850ng/mL、900ng/mL、950ng/mL、1000ng/mL、1050ng/mL、1100ng/mL、1150ng/mL、または1200ng/mLを超えるか、または600ng/mL~800ng/mL、650ng/mL~850ng/mL、600ng/mL~1000ng/mL、600ng/mL~1200ng/mL、800ng/mL~1000ng/mL、900ng/mL~1000 ng/mL、または1000ng/mL~1200ng/mLの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0091】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASM投与前の患者のフィブリノーゲン濃度と比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後のフィブリノーゲン濃度の増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿フィブリノーゲン濃度が正常血漿フィブリノーゲン濃度を超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の正常血漿フィブリノーゲン濃度は150mg/dL~300mg/dLである。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、血漿フィブリノーゲン濃度が約350mg/dL、375mg/dL、400mg/dL、425mg/dL、または450mg/dLを超えるか、または350mg/dL~400mg/dL、350mg/dL~450mg/dLまたは400mg/dL~450mg/dLの範囲に入ることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0092】
具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、ASM投与前の患者の総白血球の好中球パーセントと比較した、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後の総白血球の好中球パーセントの増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の具体的な実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、総白血球の好中球パーセントが総白血球濃度の正常好中球パーセントを超えることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の総白血球の好中球の正常パーセントは、45%~60%である。特定の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示す最高用量は、ASMの用量の投与から6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間後に、総白血球の好中球パーセントの70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の増加を生じることなく、ASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0093】
別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、投与されたASMに対する抗体の増加を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、過敏性反応を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。別の実施態様では、治療効果があり、忍容性を示した最高用量は、サイトカイン放出症候群を生じることなくASMDの治療に効果を示す最高投与量である。
【0094】
特定の実施態様では、治療効果があり、被験者が忍容性を示した最高用量は、1mg/kg~2.5mg/kg、2mg/kg~3mg/kg、3mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、15mg/kg~20mg/kg、15mg/kg~25mg/kg、20mg/kg~30mg/kg、または25mg/kg~50mg/kgである。一部の実施態様では、治療効果があり、被験者が忍容性を示した最高用量は、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、または15mg/kgである。特定の実施態様では、治療効果があり、被験者が忍容性を示した最高用量は、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、または50mg/kgである。
【0095】
特定の実施態様では、本明細書に記載のASM用量は、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、1週間ごと、8日ごと、9日ごと、10日ごと、11日ごと、12日ごと、13日ごと、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、または5週間ごとに被験者に投与される。一部の実施態様では、本明細書に記載のASM用量は、3~5日ごと、3~7日ごと、5~7日ごと、5~10日ごと、5~14日ごと、7~14日ごと、2~4週間ごと、または3~5週間ごとに被験者に投与される。特定の実施態様では、ASMの用量の投与頻度は、用量を調整するにつれて変わる。例えば、0.3mg/kgの用量を1週間または2週間ごとに投与し、1mg/kgの用量を2週間または3週間ごとに投与し得る。
【0096】
一部の実施態様では、ASMの用量(例えば、維持量)は、12週間、20週間、25週間、30週間、35週間、40週間、45週間、50週間、52週間、1年間、1.5年間、2年間、2.5年間、3年間、3.5年間、4年間、または患者が関連有害事象、ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)のビリルビン値を超える総ビリルビン値、ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の血漿セラミド濃度を超える血漿セラミド濃度、または急性期反応を経験するまで、被験者に投与される。
【0097】
特定の実施態様では、ASMの非毒性の初期低用量は、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、1週間ごと、8日ごと、9日ごと、10日ごと、11日ごと、12日ごと、13日ごと、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、または5週間ごとに被験者に投与される。一部の実施態様では、本明細書に記載のASM用量は、3~5日ごと、3~7日ごと、5~7日ごと、5~10日ごと、5~14日ごと、7~14日ごと、2~4週間ごと、または3~5週間ごとに被験者に投与される。特定の実施態様では、ASMの非毒性の初期低用量は、4週間、6週間、8週間、12週間、14週間またはそれ以上投与される。
【0098】
特定の実施態様では、ASM用量の漸増は、以前の用量よりも約0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、1.2mg/kg、1.5mg/kg、1.75mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kgまたは5mg/kg高い。一部の実施態様では、ASMの用量の漸増は、前回の用量よりも0.1~0.5mg/kg、0.1mg/kg~1mg/kg、0.5mg/kg~1mg/kg、0.5mg/kg~2mg/kg、1mg/kg~2mg/kg、2mg/kg~4mg/kgまたは2mg/kg~5mg/kg高い。
【0099】
本明細書に記載のASM用量は、治療効果を達成するために有益な任意の経路で投与することができる。ASMの用量の具体的な投与経路には、静脈内、脳室内、皮内、経皮、皮下、筋肉内、鼻腔内、吸入、肺内、局所、経粘膜、頭蓋内、髄腔内、硬膜外および滑液嚢内を含むがこれに限定されない。1つの実施態様では、ASMの用量は、それを必要とする被験者に全身的(例えば、非経口的)に投与される。別の実施態様では、ASMの用量は、それを必要とする被験者に局所的に投与される。
【0100】
ASMDの身体(非中枢神経)発現の治療に効果のあるASM酵素の用量は、脳関門を効果的に通過することができない。従って、具体的な実施態様では、ASMは、患者に脳室内投与されるか、またはNPD患者の脳にくも膜下腔内投与される。リソソーム蓄積酵素の脳への脳内送達方法については、例えば米国特許出願公開第2009/0130079号および第2009/0123451号(いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。特定の実施態様では、ASMは患者に側脳室内投与される。ASMの側脳室内注入方法については、例えば、Dodge et al., 2009, Experimental Neurology 215: 349-357(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。一部の実施態様では、ASMは間接的側脳室内注射で患者に投与される。例えば、Yang et al., 2007, Experimental Neurology 207: 258-266を参照。一部の実施態様では、脳の酵素を標的とするASMの変性型が、セクション5.2に記述のように(下記)、ASMDを治療するために患者に投与される。
【0101】
患者に投与されたASM酵素のわずかなパーセントのみが肺に達する。従って、具体的な実施態様では、ASMは患者の肺に投与される。特定の実施態様では、ASMは患者に鼻腔内または吸入投与される。ASMの鼻腔内投与に関する情報については、Ziegler et al., 2009, Molecular Genetics and Metabolism 97: 35-42(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。一部の実施態様では、肺の酵素を標的とするASMの変性型が、セクション5.2に記述のように(下記)、ASMDを治療するために患者に投与される。特定の実施態様では、ASMはネブライザーを使って患者に投与される。ASMの肺への送達は、気管支鏡、定量吸入器、またはネブライザーを通した肺内注入によって行い得る。
【0102】
特定の実施態様では、ASM酵素は患者に全身的に投与されるだけでなく、脳および肺などの特定臓器に局所的に投与される。一部の実施態様では、ASM酵素の局所投与は、酵素の全身投与を補完する。具体的な実施態様では、全身投与(例えば、静脈内投与)で患者の蓄積スフィンゴミエリンが減少した後、ASM酵素は、例えば、脳または肺に局所投与される。
【0103】
特定の実施態様では、ASMの投与前に、患者の遺伝子型(ジェノタイプ)を調べる。一部の実施態様では、患者が発現しているASMのグリコシル化パターンは、ASMの投与前に決定される。患者が内因的に発現しているものと類似/適合するASMの投与は、潜在的免疫原性を低減し得る。
【0104】
特定の実施態様では、内因的に発現されたASMの活性は、ASMの投与前に決定される。内因的に発現されたASMの活性は、当業者に周知の技術を使用して、DBSおよび培養線維芽細胞中で測定できる。
【0105】
具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、例えばMRIなど、当技術分野で周知の技術で評価した脾臓体積を減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、例えば、肝臓の生化学分析および/または組織形態計測的分析など、当技術分野で周知の技術で評価された、肝臓スフィンゴミエリンレベルを減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、例えば、パーセント予想最大作業負荷、ピーク酸素消費量および二酸化炭素生成を含む、サイクルエルゴメータ運動負荷試験法による最大作業負荷など、当技術分野で周知の技術で評価された、運動能力を増加させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、例えば、DLco、FVC、FEV、および/またはTLCなど、当技術分野で周知の技術で評価された肺機能を向上させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、気管支肺胞洗浄(BAL)スフィンゴミエリンを減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、例えばMRIなど、当技術分野で周知の技術で評価した肝臓体積を減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、例えば、高解像度CTスキャンまたは胸部X線など、当技術分野で周知の技術で評価された肺の外観を改善する。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、肺クリアランスを改善する。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、肝臓、皮膚、血漿およびDBS中のスフィンゴミエリン濃度を減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、血漿キトトリオシダーゼレベルを減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、血清CCL18レベルを減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、患者の脂質プロファイルを改善する(例えば、コレステロールの低下)。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、ASMDの重症度および/またはそれに関連する症状を低減または改善する。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、ASMDに関連する症状の期間を減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、ASMDに関連する症状の再発を防止する。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、被験者の入院を減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、入院期間を短縮させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、被験者の生存を増加させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、被験者の死亡率を減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、被験者の入院率を減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、ASMDに関連する症状の数を減少させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、患者の無症状生存を増加させる。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、被験者の神経機能(例えば、精神運動機能、社会的反応性など)を改善する。
【0106】
別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、患者の生活の質を向上する。特定の具体的な実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、例えば、簡易倦怠感尺度(Brief Fatigue Inventory:BFI; Mendoza et al., 1999, Cancer 85(5): 1186-1196)、簡易疼痛調査用紙(Brief Pain Inventory-Short Form:BPI-SF; Cleeland et al., 1994, Ann Acad Med Singapore 23(2): 129-138)、ASM健康評価質問表(ASM-Health Assessment Questionnaire、BFI、BPI-SF、簡易フォーム36健康調査の複合である)、呼吸困難と疲労を評価するための慢性呼吸疾患自記式標準化質問表(Chronic Respiratory Disease Questionnaire Self-Administered Standardized:CRQ-SAS; Schunemann et al., 2005, Eur. Respir. J. 25: 31-40)、急性ケア後の活動性尺度(Activity Measure for Post-Acute Care:AM-PAC)、機能的運動性(例えば、運動性、自己管理、応用認知)を評価するためのコンピュータ適応型テストで評価される、患者の生活の質を改善する。
【0107】
酸性スフィンゴミエリナーゼ酵素
ASMとは、米国特許第4,039,388号、第4,082,781号、第5,686,240号、第7,563,591号、および国際公開番号WO 2007/078806号およびWO 2006/058385号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているもののような当業者に周知の技術で評価した、スフィンゴミエリンをセラミドとホスホリルコリンに加水分解する能力を維持する酸性スフィンゴミエリン酵素の任意の形態を指す。具体的な実施態様では、He et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載されている蛍光ベースの高性能液体クロマトグラフィーアッセイにおいて、酸性スフィンゴミエリナーゼ酵素は、スフィンゴミエリンをセラミドとホスホリルコリンに加水分解する能力を持つ。具体的な実施態様では、酸性スフィンゴミエリナーゼは、例えば、He et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載のアッセイで測定されたASM-1(SEQ ID NO: 1、下記)の活性の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、75%、80%、85%、80%、90%、95%または98%、または30%~50%、40%~50%、50%~75%、50%~90%、75%~80%、75%~90%、75%~95%、または85%~95%を持つ。
【0108】
具体的な実施態様では、ASMはヒトASMである。選択的スプライシングから生じる、ヒトASMのさまざまなアイソフォームがある。ヒトASMアイソフォームの1つであるヒトASMアイソフォーム1(ASM-1と呼ばれることもある)は、UniProtKB/Swiss-Prot Accession No. P17405-1で見られるアミノ酸配列を持つ。別のヒトASMアイソフォームであるヒトASMアイソフォーム2(ASM-2と呼ばれることもある)は、UniProtKB/Swiss-Prot. Accession No. P17405-2で見られるアミノ酸配列を持つ。第三のヒトASMアイソフォームであるヒトASMアイソフォーム3(ASM-3と呼ばれることもある)は、UniProtKB/Swiss-Prot. Accession No. P17405-3で見られるアミノ酸配列を持つ。最も多いアイソフォームであるASM-1のアミノ酸配列を以下に示す。
【0109】
【化1】
【0110】
ASM-1のアミノ酸残基363~374(すなわち、IGGFYALSPYPG(SEQ ID NO:2))がアミノ酸YLSSVETQEGKR(SEQ ID NO:3)で置換されており、ASM-1のアミノ酸残基375~418がASM-2では欠けているという点で、ASM-2はASM-1とは異なる。ASM-1のアミノ酸残基363~418がASM-3では欠けているという点で、ASM-3はASM-1とは異なる。例えばHe et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載されているアッセイで測定して、ASM-2およびASM-3が酵素活性を持つ限りは、これらは被験者に投与できるASMとして含まれる。具体的な実施態様では、ASM-2およびASM-3が、例えば、He et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載のアッセイで測定されたASM-1の活性の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、75%、80%、85%、80%、90%、95%または98%、または30%~50%、40%~50%、50%~75%、50%~90%、75%~80%、75%~90%、75%~95%、または85%~95% を持つ限りは、これらは被験者に投与できるASMとして含まれ得る。
【0111】
具体的な実施態様では、ヒトASMは、SEQ ID NO:1(上記)に開示されているヒト酸性スフィンゴミエリナーゼのアミノ酸配列、米国特許第6,541,218号に開示されているヒト酸性スフィンゴミエリナーゼのアミノ酸配列(例えば、米国特許第6,541,218号のSEQ ID NO:2)、またはSchuchman et al., 1991, J. Biol. Chem. 266: 8531-8539の図3に開示されているアミノ酸配列を持ち、これらそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
具体的な実施態様では、ヒトASMは処理された成熟型である。他の実施態様では、ヒトASMは未成熟の未処理形態である。ASM-1に関しては、未成熟型はアミノ酸の長さが629で、アミノ酸残基1~46で見られるシグナルペプチドを含む。ASM-1の成熟型はシグナルペプチドを持たず、アミノ酸残基47からアミノ酸残基629までからなる。ヒトASM-1は、アミノ酸残基85~169からのサポシンBタイプドメインを含む。ASM-1に関しては、以下のアミノ酸残基はグリコシル化(具体的には、N結合型グリコシル化)されている:86、175、335、395および520。
【0113】
ヒトASMのアイソフォームに加えて、ヒトASMのさまざまな自然発生変異型がある。例えば、ASMの推定シグナルペプチドをコードしている遺伝子領域内に、異なる数のヘキサヌクレオチド反復単位を持つヒトASM遺伝子の自然発生変異型が特定されている。 例えば、9、7、6、5、4回のヘキサヌクレオチド反復に対応する5つの対立遺伝子の特定を記述しているWan and Schuchman, 1995, Biochimica et Biophysica Acta 1270: 207-210(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。さらに、単一アミノ酸変化を持つヒトASMの自然発生変異型が特定されている。単一多型に関する情報については、例えば、Schuchman et al., 1991, J. of Biol. Chem 266: 8531-8539およびSchuchman et al., 1991, Nucleic Acids Research 19(11): 3160(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。例えばHe et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載されているアッセイで測定して、ヒトASMの任意の自然発生変異型が酵素活性 を持つ限りは、これらは被験者に投与できるASMとして含まれる。具体的な実施態様では、ヒトASMの任意の自然発生変異型が、例えば、He et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載のアッセイで測定されたASM-1の活性の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、75%、80%、85%、80%、90%、95%または98%、または30%~50%、40%~50%、50%~75%、50%~90%、75%~80%、75%~90%、75%~95%、または85%~95% を持つ限りは、これらは被験者に投与できるASMとして含まれ得る。
【0114】
遺伝子コード化ヒトASMに対する多くの一塩基多型(SNP)が特定されている(例えば、SNPの例については、NCBIウェブサイト:ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/を参照)。例えばHe et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載されているアッセイで測定して、ASMの遺伝子コード化において任意のSNPが酵素活性を持つ限りは、これらは被験者に投与できるASMとして含まれる。具体的な実施態様では、ASMの遺伝子コード化における任意のSNPが、例えば、He et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120に記載のアッセイで測定されたASM-1の活性の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、75%、80%、85%、80%、90%、95%または98%、または30%~50%、40%~50%、50%~75%、50%~90%、75%~80%、75%~90%、75%~95%、または85%~95% を持つ限りは、これらは被験者に投与できるASMとして含まれ得る。特定の実施態様では、ASMはヒトASMの変形形態である。具体的な実施態様では、ヒトASMの変形形態は、米国特許第7,527,956号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているものである。別の実施態様では、ヒトASMの変形形態は、国際公開番号WO 2008/136451号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているものである。一部の具体的な実施態様では、ASMは、以下の特性の1つまたは2つ以上を有するヒトASMの変形形態である:(i)未変形ヒトASMと比較した病変部位ターゲティングの増加(例えば、肺および/または脳)、(ii)未変形ヒトASMと比較した安定性の増加、および(iii)未変形ヒトASMと比較した活性の増加。ASMの安定性、活性およびターゲティングを測定するために、当技術分野で周知の技術を使用できる。具体的な実施態様では、ASMのターゲティングを評価するためにGamacho et al., 2008, J. Pharmacol. Exp. Ther. 325: 400-408(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている技術が使用される。別の具体的な実施態様では、ASMの安定性を評価するためにHe et al., 1999, Biochimica et Biophysica Acta 1432: 251-264または Dhami et al., 2001, Lab. Invest. 81: 987-999(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている技術が使用される。別の具体的な実施態様では、ASMの活性を評価するために、He et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている技術が使用される。
【0115】
1つの実施態様では、ASMは、ASM-1などの未変形ヒトASMと比較して増加した酵素活性を持つヒトASMの変形形態である。例えば、野生型組み換えヒトASM(例えば、ASM-1など)よりも高い活性を持つ組み換えヒトASMの突然変異型については、Qiu et al., 2003, J. Biol. Chem. 278(35): 32744-32752および米国特許第7,527,956号を参照。一部の実施態様では、亜鉛カチオンの添加により、ASMは、未変形ヒトASM(例えば、ASM-1など)に比べてより高い酵素活性を持つ。ASM活性における亜鉛の役割に関する考察については、例えば、Schissel et al., 1998, J. Biol. Chem 273: 18250-18259(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。別の実施態様では、ASMは、未変形ヒトASM(例えば、ASM-1など)と比較して、ヒトASMの天然受容体(例えば、マンノース6-リン酸または高マンノース)に対してより大きな親和性を持つヒトASMの変形形態である。具体的な実施態様では、米国特許第7,001,994号および国際特許出願公開番号WO2010/075010号および米国特許出願公開第2010/0173385号(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、天然受容体の酵素のターゲティングを増加させるために、ASMはオリゴ糖に共役されている。別の実施態様では、ASMは、ASMの天然受容体とは異なる代替的受容体(例えば、肺などの臓器へのターゲティングを増加させ得る細胞間接着分子(ICAM)-1)に結合するヒトASMの変形形態である。1つの実施態様では、ASMは、未変形ヒトASM(例えば、ASM-1など)よりも高い安定性を持つヒトASMの変形形態である。
【0116】
一部の実施態様では、ASMは、インスリン様成長因子(IGF)-I、IGF-II、レプチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、またはヒトインスリン受容体(HIR)に結合するヒト化抗体などの標的部分に、直接または間接的に、共役または縮合している。リソソーム貯蔵酵素に対する標的部分としてのIGF-Iの使用の考察については、例えば、米国特許出願公開第2009/0029467号および米国特許第7,560,424号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照し、リソソーム貯蔵酵素に対する標的部分としてのIGF-IIの使用の考察については、米国特許第7,396,811号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。標的部分IGF-IおよびIGF-IIは、ASM酵素のリソソームへのターゲティングを強化することができる。G-CSFおよびレプチンなどのホルモンの標的部分としての使用の考察については、例えば、国際特許出願公開番号WO 2007/091250号、および米国特許出願公開第2010/0183577号(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。酵素などの医薬品に結合したヒトインスリン受容体(HIR)に結合するヒト化モノクローナル抗体の考察については、米国特許出願公開第2004/0101904号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。標的部分G-CSF、レプチンおよびHIRに結合する抗体は、ASM酵素の脳へのターゲティングを促進することができる。
【0117】
特定の実施態様では、ASMは、未変形ASM(例えば、ASM-1などの未変形ヒトASMなど)と比較して活性が低下したASMの変形形態(例えば、ヒトASMの変形形態)である。一部の実施態様では、ASMは、未変形ASM(例えば、ASM-1などの未変形ヒトASMなど)と比較して、病変部位へのターゲティングが増加し、酵素活性が低下している、ASMの変形形態(例えば、ヒトASMの変形形態)である。
【0118】
特定の実施態様では、ASMはASMの高度リン酸化形である。リソソーム酵素の高度リン酸化形を生成する技術の考察については、米国特許出願公開第2002/0150981号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0119】
ASM酵素は当技術分野で周知の任意の方法で生成することができ、これには組み換えDNA法、cDNAクローニング(ヒトAMSのcDNAクローニングについては、例えば、Schuchman et al., 1991, J. Biol. Chem 266: 8531-8539および米国特許第5,773,278号を参照。なお、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、遺伝子クローン化、遺伝子活性化(遺伝子活性化技術については、例えば、米国特許第5,641,670号を参照。なお、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、または高レベルのASM酵素を生成する選択細胞株(例えば、哺乳類、酵母、原核生物、昆虫細胞[例えばSf9、Sf21、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)およびカイコ(Bombyx mori)]および植物細胞)を含むがこれに限定されない。ASMおよびASM生成のための方法が、例えば、米国特許第5,773,278号、第6,541,218号、第5,686,240号、および第7,527,956号(いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。具体的な実施態様では、ASMは組み換えで生成されたASM(例えば、組み換えで生成されたヒトASM)である。適正処理(すなわち、シグナル切断、グリコシル化、リン酸化およびタンパク質の選別)のための細胞機構および要素を有する細胞発現系が好ましい。例えば、適正に畳まれ処理された生物学的に活性な酵素の発現のためには、哺乳類の細胞発現系が好ましく、ヒトに投与された時、このような発現生成物は、正しい組織ターゲティングを示し、有害な免疫学的反応を示さないはずである。
【0120】
特定の実施態様では、ASM(例えば、ヒトASM)は、哺乳類細胞のASM cDNAの過剰発現によって生成される。具体的な実施態様では、ヒトASMは、チャイニーズ・ハムスターの卵巣(CHO)細胞のヒトASM cDNAの過剰発現によって生成される。CHO細胞のヒトASM cDNAの過剰発現の方法については、He et al., 1999, Biochimia et Biophsyica Acta 1432: 251-264および米国特許第6,541,218号(いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。特定の実施態様では、ヒトASMは、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼを共発現するCHO細胞のヒトASM cDNAの過剰発現によって生成される。例えば、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼを発現するように人工的に作り出されたCHO細胞を記述している、米国特許第5,047,335号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。
【0121】
別の具体的な実施態様では、哺乳類細胞はヒト細胞である。組み換えによってASMを発現する(例えば、ヒトASM)ために使用され得るヒト細胞の例には、Crucell Per.C6細胞、HT 1080細胞、HeLa細胞、HEK 293細胞、293T細胞、WI38細胞、HuT292細胞、LF 1043(HEL)細胞、MRC-5細胞、TMK-1細胞、BT483細胞、Hs578T細胞、HTB2細胞、HTB3細胞、HTB4細胞、BT 20細胞、T47D細胞、CRL7O3O細胞、HsS78Bst細胞、721細胞、A2780細胞、A172細胞、A253細胞、COR-L23/R23細胞、COV-434細胞、DU145細胞、DuCaP細胞、EM2細胞、Saos-2細胞、U373細胞、WM39細胞、L132細胞、A-5489細胞、G-293細胞、G-401細胞、CAKI-1細胞、RD細胞、およびYAR細胞が含まれるがこれに限定されない。ASMを発現するために使用され得る他の例示的ヒト細胞には、Immuno Polymorphism Database of the European Molecular Biology Laboratory(ヨーロッパ分子生物学研究室の免役多型データベース)および米国国立衛生研究所のデータベースにリストされているヒト細胞、および例えば、American Type Culture Collection(バージニア州マナッサス)、およびLifeline Cell Technology(メリーランド州ウォーカースビル)など、市販のものが含まれる。生成にヒト細胞株を使用する時、hASMにcDNA、gDNAを使用して、または米国特許第5,641,670号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているものなど遺伝子活性化技術によってrhASMを生成することができる。
【0122】
ASM(例えば、ヒトASM)を生成するために使用され得る他の哺乳類細胞の例には、Vero細胞、VERY細胞、BHK細胞、COS細胞、MDCK細胞、または3T3細胞を含むがこれに限定されない。特定の実施態様では、ASM(例えば、ヒトASM)を生成するために骨髄腫細胞が使用される。骨髄腫細胞の非限定的な例には、NS0細胞、45.6 TG1.7細胞、AF-2 clone 9B5細胞、AF-2 clone 9B5細胞、J558L細胞、MOPC 315細胞、MPC-11細胞、NCI-H929細胞、NP細胞、NS0/1細胞、P3 NS1 Ag4細胞、P3/NS1/1-Ag4-1細胞、P3U1細胞、P3X63Ag8細胞、P3X63Ag8.653細胞、P3X63Ag8U.1細胞、RPMI 8226細胞、Sp20-Ag14細胞、U266B1細胞、X63AG8.653細胞、Y3.Ag.1.2.3細胞、およびYO細胞が含まれる。
【0123】
一部の実施態様では、ASMの発現のために植物細胞培養系が使用される。植物細胞培養系を使用したタンパク質の生成のための植物細胞および方法については、例えば、米国特許第5,929,304号、第7,504,560号、第6,770,799号、第6,551,820号、第6,136,320号、第6,034,298号、第5,914,935号、第5,612,487号および第5,484,719号、米国特許出願公開第2009/0208477号、第2009/0082548号、第2009/0053762号、第2008/0038232号、第2007/0275014号および第2006/0204487号、およびShoji et al., 2008, Vaccine, 26(23):2930-2934, and D’Aoust et al., 2008, J. Plant Biotechnology, 6(9):930-940(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。特に、米国特許出願第2009/0208477号、第2008/0038232号および第2006/0204487号は、形質転換植物根(具体的にはニンジン細胞)を使用した、酵素的に活性な高マンノースリソソーム酵素の発現と生成について記述している。具体的な実施態様では、ニンジン細胞はASMを発現するように遺伝子操作されている。特定の実施態様では、藻(例えば、緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii))は、ASMを発現するように遺伝子操作されていることがある(例えば、2010年3月7日にオンライン出版されたRasala et al., 2010, Plant Biotechnology Journal(参照によりその全体が本書に組み込まれる)を参照)。
【0124】
ASMの組織および細胞内取り込みは、高マンノース残基(例えば、マクロファージ中)とマンノース-6-リン酸(例えば、肝臓中)の両方によって媒介される。従って、薬物分布を改善するためには、グリカン含量の変化および/またはリン酸化を伴うASMの生成が望ましいことがある。例えば、ASMは、少なくとも1つのゴルジ処理マンノシダーゼに突然変異(例えば、ノックアウト)を有する細胞によって生成される。1つの実施態様では、突然変異は、遺伝子の発現を減少する、タンパク質または活性レベルを減少する、またはマンノシダーゼの分布または他の翻訳後修飾(例えば、炭化水素鎖の処理)を変える。具体的な実施態様では、突然変異は、ゴルジ処理マンノシダーゼ活性のレベルを減少させる。突然変異は、クラス1処理マンノシダーゼ、クラス2処理マンノシダーゼ、クラス1処理マンノシダーゼおよびクラス2処理マンノシダーゼで起こり得る。クラス1処理マンノシダーゼには、ゴルジ・マンノシダーゼIA、ゴルジ・マンノシダーゼIB、ゴルジ・マンノシダーゼICを含む。クラス2処理マンノシダーゼには、ゴルジ・マンノシダーゼIIを含む。例えば、高マンノースタンパク質を生成する方法については、国際特許出願公開番号WO 02/15927号および米国特許第7,138,262号(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0125】
特定の実施態様では、ASMを発現している細胞は、抗体、キフネンシン、スワインソニン、マンノスタチン、6-デオキシ-1,4-ジデオキシ-1,4-イミノ-D-マンニトール(6-デオキシ-DIM)、または6-デオキシ-6-フルオロ-1,4-ジデオキシ-1,4-イミノ-D-マンニトール(6-デオキシ-6-フルオロ-DIM)などのマンノシダーゼ阻害剤の存在下で培養される。このような阻害剤の存在下でのASMの培養は、高マンノースASMの生成をもたらし得る。一部の実施態様では、ASMを発現している細胞は、アンチセンス分子またはリボザイムなどの核酸配列を含み、細胞マンノシダーゼ核酸配列(例えば、mRNA)に結合するかまたはこれを不活化し、タンパク質の発現を阻害し得る。例えば、高マンノースタンパク質を生成する方法については、国際特許出願公開番号WO 02/15927号および米国特許第7,138,262号(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。
【0126】
特定の実施態様では、組み換えで発現されたASM酵素の炭化水素鎖は、ノイラミニダーゼ、ガラクトシダーゼおよびβ-N-アセチルグルコサミニダーゼなど、さまざまな酵素での配列処理によって再構築される。リソソーム酵素の炭化水素鎖の再構築方法については、例えば、米国特許第5,549,892号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。
【0127】
マンノース-6-リン酸(M6P)によって媒介されるASMの取り込みは、ASMを修飾して高リン酸化マンノース残基およびM6Pを生成することによって強化され得る。例えば、ASMは、細胞内取り込みを強化するために、組み換え技術で追加的マンノース-6-リン酸をASMに導入することによって修飾できる。例えば、Matsuoka et al., 2010 Mole. Ther.18:1519-1526(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。他の実施態様では、マンノース-6-リン酸(M6P)を含むリン酸化オリゴ糖誘導体にASMを結合することができる。例えば、米国特許第7,001,994号、米国特許出願公開US2010/0173385号および国際公開番号WO2010/075010号を参照。別のアプローチでは、追加的高リン酸化マンノース-6-リン酸残基を含む組み換えASMの発現のために、酵母培養系を使用することができる。例えば、Akeboshi et al., 2009 Glycobiology 19(9):1002-1009(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。
【0128】
一旦ASMが生成されたら、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、高性能液体クロマトグラフィー、親和性、特にASMに対する親和性で、タンパク質Aによって、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、吸収率較差溶解度、またはタンパク質の分離または精製の他の任意の標準技術など、タンパク質の分離または精製において当技術分野で周知の任意の方法によって分離または精製することができる。ASM酵素が培養細胞によって分泌される場合は、ASMは培地から容易に回収され得る。ASMの精製方法については、例えば、He et al., 1999, Biochimia et Biophsyica Acta 1432: 251-264を参照。
【0129】
ASM酵素は、任意の投与経路(例えば、注入、皮下、筋肉内、髄腔内、脳室内、鼻腔内、吸入または皮内)に対して処方できる。ASM酵素は、凍結乾燥形態で供給でき、使用前に例えば、滅菌生理食塩(例えば、0.9 %塩化ナトリウム)または滅菌水で再構成する。または、ASM酵素は水溶液形態で供給され得る。特定の実施態様では、ASMは亜鉛を含む処方で被験者に投与される。一部の実施態様では、ASM酵素は、例えば、シリンジポンプまたはポンプ付き注入バッグを使用して、患者に注入される。
【0130】
特定の実施態様では、ASMはリポソームまたはポリカチオン性担体などの担体で被験者に投与される。ASMの投与に使用され得る担体については、例えば、米国特許第5,716,614号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。一部の実施態様では、ASMは、ICAM-1標的ナノ担体で被験者に投与される。ICAM-1標的ナノ担体を使用したASM送達については、例えば、Muro et al., 2006, Mol. Ther. 13(1): 135-141(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。
【0131】
5.2.患者集団
具体的な実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、遺伝子コード化酸性スフィンゴミエリナーゼに1つ以上の突然変異を持つかまたは持つと診断されているヒトである。特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、ニーマン・ピック病(NPD)を持つかまたは持つと診断されているヒトである。1つの実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、NPD A型を持つかまたは持つと診断されているヒトである。別の具体的な実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、NPD B型を持つかまたは持つと診断されているヒトである。
【0132】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、SMPD1遺伝子に1つ以上の突然変異を持つ。一部の実施態様では、突然変異はミスセンス突然変異である。他の実施態様では、突然変異は、1つまたは2つ以上のアミノ酸残基の欠失をもたらす欠失である。具体的な実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、1つ以上の突然変異を持つ。
【0133】
【表1】



【0134】
酸性スフィンゴミエリナーゼ遺伝子(指定SMPD1)の突然変異については、例えば、Simonaro et al., 2002, Am. J. Hum. Genet. 71: 1413-1419(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。
【0135】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、正常ヒトASM(例えば、ASM-1)の活性の2~5%、5~10%、5~15%、5~20%、5%~30%、または20%~30%でASMを内因的に発現する。一部の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受けた被験者は、正常ヒトASM(例えば、ASM-1)の活性の30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満でASMを内因的に発現する。ASMの活性を測定するために使用できる技術については、例えば、米国特許第4,039,388号、第4,082,781号、第5,686,240号、第7,563,591号、および国際公開番号WO 2007/078806号とWO 2006/058385号(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。具体的な実施態様では、ASMの活性を測定するために、He et al., 2003, Analytical Biochemistry 314: 116-120(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている蛍光ベースの高性能液体クロマトグラフィーアッセイが使用される。
【0136】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、NPDの症状の1つ以上を示す。NPDの症状には、腹部膨張、肝腫大、脾腫、肝脾腫大、好中球減少、肺疾患、リンパ節症、組織化学的に特徴的なNPD泡沫細胞の存在、貧血(例えば、小球性貧血)、血小板減少症、反復性嘔吐、慢性便秘、成長障害、(例えば、線形成長および体重の減少)、思春期遅発症、反復性のあざ、反復性出血、アテローム性脂質プロファイル(高コレステロール、トリグリセリド、LDL、および低HDL)、痛み(頭痛、背中、四肢、腹部)、疲労、早期満腹感、低持久力、骨減少症、神経学的兆候、および呼吸困難(例えば、間質性肺疾患、息切れ)を含むがこれに限定されない。NPDの神経学的兆候には、サクランボ赤色斑点、低血圧、筋力低下、精神運動遅延、痙性、社会的不応症、易刺激性、痙攣を含む。
【0137】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、非神経因性NPDと一致する臨床的特徴の2つ以上を示すヒト被験者である。具体的な実施態様では、本明細書に記載されている方法に従って[ASMD]の治療を受ける被験者は、非神経因性NPD(血小板減少症、貧血、好中球減少、肝腫大、脾腫、および肺疾患)と一致する臨床的特徴の2つ以上を示すヒト被験者である。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、神経因性NPDと一致する臨床的特徴の2つ以上を示すヒト被験者である。
【0138】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、例えば磁気共鳴画像法(MRI)など、当技術分野で周知の技術で評価して、健常人の脾臓体積よりも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍または12倍大きい脾臓体積を持つヒトである。具体的な実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、例えばMRIなど、当技術分野で周知の技術で評価して、健常人の脾臓体積よりも8倍大きい脾臓体積を持つヒトである。一部の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、例えばMRIなど、当技術分野で周知の技術で評価して、健常人の脾臓体積よりも8~12倍、9~12倍、10~12倍、または12~14倍大きい脾臓体積を持つヒトである。具体的な実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、例えばMRIなど、当技術分野で周知の技術で評価して、正常値の8倍以上(MN:正常に対する倍数)(すなわち、体重の1.6%)の脾臓体積を持つヒトである。
【0139】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、健常人の肺拡散能力(DLCO)予測値の20%~80%、25%~80%、30%~80%、40%~80%、50%~80%、または60%~80%の間のDLCOを持つヒトである。特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、健常人の予測DLCOの20%~90%、25%~90%、30%~90%、40%~90%、50%~90%、60%~90%、または70%~90%の間のDLCOを持つヒトである。DLCOは、肺胞毛細血管膜を通しての拡散律速ガス(例えば、一酸化炭素)の1分あたりの拡散速度を測定する。DLCOは、既知量の一酸化炭素を吸入した後に、吐き出す一酸化炭素の量を比較することによって計算できる。DLCOを評価するためには、当技術分野で周知の技術を使用できる。
【0140】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、ヒトの乳児である。一部の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、生後2~3カ月、2~6カ月、3~6カ月、4~6カ月、5~8カ月、または6~9カ月のヒトである。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、ヒトの子どもである。一部の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、1~3歳、2~3歳、3~5歳、4~5歳、5~7歳、または6~9歳のヒトである。
【0141】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、成人である。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、高齢者である。一部の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、10~18歳、10~20歳、12~20歳、15~20歳、20~25歳、21~25歳、21~30歳、25~30歳、30~35歳、35~40歳、40~45歳、45~50歳、50~55歳、55~60歳、60~65歳、65~70歳、70~75歳、75~80歳、80~85歳、85~90歳、90~95歳、または95~100歳のヒトである。
【0142】
具体的な実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、ヒトの女性である。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、ヒトの男性である。特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、妊娠していないかまたは授乳していないヒトの女性である。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、妊娠しているまたは妊娠する予定であるか、または授乳しているヒトの女性である。
【0143】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、主要臓器移植(例えば、肝臓または骨髄移植)を受けたことのないヒトである。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、主要臓器移植(例えば、肝臓または骨髄移植)を受けたことのあるヒトである。一部の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、脾全切除術または脾部分切除術を受けたことのないヒトである。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、脾全切除術または脾部分切除術を受けたことのあるヒトである。
【0144】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、以下を1つも持たない、または持つと診断されていないヒトである:活動性B型肝炎、活動性C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、肝硬変、または重大な心疾患(例えば、中等度または重度の肺高血圧または弁機能不全、または心エコー検査による50%未満、40%未満、30%未満または20%未満の左室駆出率)。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、以下の1つ以上を持つか、または持つと診断されているヒトである:活動性B型肝炎、活動性C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、肝硬変、または重大な心疾患(例えば、中等度または重度の肺高血圧または弁機能不全、または心エコー検査による50%未満、40%未満、30%未満または20%未満の左室駆出率)。
【0145】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、以下を1つも持たないヒトである:1.25、1.5、1.75または2を超える国際標準化比(INR)、60×103/μL未満の血小板数、250 IU/Lを超えるアラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)、250 IU/Lを超えるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、または1.5mg/dL、1.75mg/dLまたは2mg/dLを超える総ビリルビン。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、以下の1つ以上を持つヒトである:1.25、1.5、1.75または2を超える国際標準化比(INR)、60×103/μL未満の血小板数、250 IU/Lを超えるアラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)、250 IU/Lを超えるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、または1.5mg/dL、1.75mg/dLまたは2mg/dLを超える総ビリルビン。
【0146】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、以下の薬を1つも服用していないヒトである:クロルプロマジン、イミプラミンまたはデシプラミン。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、以下の薬を1つ以上服用しているヒトである:クロルプロマジン、イミプラミンまたはデシプラミン。
【0147】
特定の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、出血を起こすかまたは長引かせる可能性があるか(例えば、抗凝固剤、イブプロフェン、アスピリン、ニンニクサプリメント、イチョウおよびチョウセンニンジン)、または潜在的肝毒性を持つ(例えば、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル[HMG]-CoA還元酵素阻害剤、エリスロマイシン、バルプロ酸、抗うつ薬、カバおよびエキナセア)ハーブ系サプリメントまたは薬を服用していないヒトである。他の実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、以下のハーブ系サプリメントまたは薬を1つ以上服用しているヒトである:抗凝固剤、イブプロフェン、アスピリン、ニンニクサプリメント、イチョウ、チョウセンニンジン、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル[HMG]-CoA還元酵素阻害剤、エリスロマイシン、バルプロ酸、抗うつ薬、カバおよびエキナセア。
【0148】
具体的な実施態様では、本明細書に提供されている方法に従ってASMDの治療を受ける被験者は、セクション6、8、9以降の実施例の被験者に対する基準の1つまたは2つ以上、またはすべてを満たすヒトである。
【0149】
5.3.治療のモニタリング
本明細書に提供されている方法によると、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に複数のパラメータ(例えば、因子またはマーカー)をモニターできる。特定の実施態様では、必要に応じてまたはASMでの治療過程中に推奨されるように、ASMの投与前に身体検査が行なわれる。身体検査には以下の評価を含み得る:一般的外観、皮膚、頭、耳、目、鼻、および喉(HEENT)、リンパ節、心臓、肺、腹部、四肢/関節、神経学的、精神的状態、および反射。特定の実施態様では、ASM用量の投与前、投与中および/または投与後にバイタルサイン、連続心拍数、呼吸数、体温および酸素飽和度を評価することができる。心拍数は、例えばASMの用量投与の6時間前から開始して、ASMの用量投与後最大72時間までテレメトリーで連続的にモニターできる。
【0150】
特定の実施態様では、血中白血球百分率、血中尿素窒素(BUN)、重炭酸塩、クレアチニン、グルコース、尿酸、カルシウム、リン酸、アルブミン、総タンパク質、ナトリウム、カリウム、塩化物、乳酸脱水素酵素、クレアチニンキナーゼ、クレアチニンキナーゼのMB分画、および尿検査(尿の色、外観、比重、pH、タンパク質、グルコース、ケトン、ビリルビン、ヘモグロビン、および必要であれば顕微鏡検査を含む)はASM用量の投与前、投与中、および/または投与後の指定された時点で実施され得る。特定の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中、および/または投与後に、肝臓検査、凝固研究、および/または空腹時脂質プロファイルを実施できる。肝機能検査には、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリリン酸塩(AP)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、総ビリルビン、直接ビリルビンの濃度の評価を含み得る。凝固研究には、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、国際標準化比(INR)、D二量体濃度、およびフィブリノーゲン濃度の評価を含み得る。空腹時脂質プロファイル評価には、総コレステロール(TC)、低比重リポタンパク質(LDL)、高比重リポタンパク質(HDL)、超低比重リポタンパク質(VLDL)およびトリグリセリドの評価を含み得る。
【0151】
特定の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に皮膚の生検が行なわれる。一部の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に肝臓の生検が行なわれる。皮膚および肝臓の生検のスフィンゴミエリンレベルは、メタモルファ組織学的分析で評価できる。
【0152】
特定の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中または/および投与後に肺機能検査が行なわれる。肺機能検査機器の較正および検査実施プロトコールは、米国胸部学会(ATS)ガイドライン(ATS, 1991, Am Rev Respir Dis 144: 1202-1218)に従って標準化できる。特定の実施態様では、努力性肺活量(FVC)の予測パーセントは、ASMの用量の投与前、投与中、および投与後に評価される。FVCは、努力呼吸中に吐き出される空気の総量である。FVCは、標準スパイロメトリー技術を使用して測定できる。
【0153】
特定の実施態様では、1秒量(FEV1)は、ASMの用量の投与前、投与中、および投与後に実施できる。FEV1は、FVCの最初の1秒間に吐き出せる空気の量である。FEV1は、標準スパイロメトリー技術を使用して測定できる。
【0154】
特定の実施態様では、全肺気量(TLC)は、ASMの用量の投与前、投与中、および投与後に評価され得る。TLCは、最大吸気努力の後の肺内の空気の総量である。TLCは、全身プレチスモグラフィーを使用して測定できる。
【0155】
特定の実施態様では、DLcoは、ASMの用量の投与前、投与中、および投与後に評価され得る。DLcoは、肺胞毛細血管膜を通してのガス(一酸化炭素、CO)拡散律速の1分あたりの拡散速度を測定する。DLcoは、既知量の一酸化炭素(CO)を吸入した後に、吐き出すCOの量を比較することによって計算できる。肺胞毛細血管膜を通過して拡散しないヘリウムは、空気トラッピングを制御するため、吸気COにトレーサーとして含めることができる。
【0156】
特定の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中、および/または投与後に、胸部X線(後部・前部および側部)を取得することができる。特定の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に、腹部MRIが取得される。
【0157】
特定の実施態様では、バイオマーカー、ビリルビン濃度、総白血球の好中球パーセントを評価するために、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に血液サンプルを採取する。具体的な実施態様では、当技術分野で周知の技術を使用して、以下のバイオマーカーの1つ以上の濃度が評価される:CRP/hs-CRP濃度、スフィンゴミエリン濃度、鉄濃度、フェリチン濃度、カルシトニン濃度、アルブミン濃度、SAA、血清アミロイドP成分、ACE、CCL18、キトトリオシダーゼ、トランスフェリン、フィブリノーゲン濃度、および血漿スフィンゴミエリン濃度、血漿セラミド濃度。具体的な実施態様では、当技術分野で周知の技術を使用して、以下のサイトカインの1つ以上の濃度が評価される:IL-6およびIL-8。
【0158】
特定の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中、および/または投与後に、ASMに対する抗体(例えば、抗組み換えヒトASM IgGおよび/または抗組み換えヒトASM IgE)の濃度が評価される。一部の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に、1つまたは2つ以上の補体因子の濃度が評価される。特定の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に、血清トリプターゼの濃度が評価される。特定の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に、ASMに対するIgE媒介反応を決定するために皮膚検査が評価される。
【0159】
特定の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に、ASMの薬物動態プロファイルが測定される。一部の実施態様では、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に、BAL細胞数が測定される。ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に評価し得る他のパラメータについては、セクション8以降(下記)を参照。
【0160】
特定の実施態様では、本明細書に記載されている因子またはマーカーは、ASMの用量投与の1週間、72時間、48時間、24時間、12時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分または15分前に評価される。一部の実施態様では、本明細書に記載されている因子またはマーカーはASMの用量投与中に評価される。例えば、本明細書に記載されている因子またはマーカーはASMの用量投与中に評価される。特定の実施態様では、本明細書に記載されている因子またはマーカーは、ASMの用量投与から、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、36時間、48時間、72時間、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月またはそれ以上後に評価される。特定の実施態様では、本明細書に記載されている因子またはマーカーは、ASMの特定の投与回数から数時間または数週間後に評価される。例えば、本明細書に記載されている因子またはマーカーは、ASMの特定の投与回数の後、4週間ごと、1カ月ごと、2カ月ごと、3カ月ごと、4カ月ごと、5カ月ごとまたは6カ月ごとに評価される。特定の実施態様では、因子またはマーカーは、4週間ごと、1カ月ごと、2カ月ごと、3カ月ごと、4カ月ごと、5カ月ごと、6カ月ごと、7カ月ごと、8カ月ごと、9カ月ごと、10カ月ごと、11カ月ごと、または12カ月ごとに評価される。一部の実施例では、因子またはマーカーは、1~2カ月ごと、1~4カ月ごと、2~4カ月ごと、2~4カ月ごと、3~4カ月ごと、2~5カ月ごと、3~5カ月ごと、4~5カ月ごと、2~6カ月ごと、3~6カ月ごと、4~6カ月ごと、または5~6カ月ごとに評価される。特定の実施態様では、因子またはマーカーは、6~8カ月ごと、6~12カ月ごと、8~12カ月ごと、9~12カ月ごと、または10~12カ月ごとに評価される。一部の実施態様では、本明細書に記載されている因子またはマーカーは、ASMの用量の投与前、投与中および/または投与後に1つも評価されない。
【0161】
特定の実施態様では、1つ以上の因子またはマーカーの評価の結果は、ASMの投与量を調整すべきであることを示す。
【0162】
5.4.生体サンプル
本明細書に記載されている方法によると、生体サンプルは、細胞集団、因子またはマーカー(例えば、バイオマーカー)の検出および/または測定の前に1つ以上の前処理段階を受ける。特定の実施態様では、生体液は、遠心分離、ろ過、沈殿、透析、またはクロマトグラフィー、またはこのような前処理段階の組み合わせによって前処理される。他の実施態様では、組織サンプルは、凍結、化学的固定、パラフィン包埋、脱水、透過、または均質化に続いて、遠心分離、ろ過、沈殿、透析、またはクロマトグラフィー、またはこのような前処理段階の組み合わせによって前処理される。一部の実施態様では、サンプルは、本明細書に記載されている方法に従って、サンプル中の特定の細胞タイプの数または量を決定する前に、サンプルから特定のタイプの細胞を除去することにより、またはサンプルから破片を除去することによって前処理される。
【0163】
生体サンプルは、組織サンプル、生体液、分泌物、またはヒト被験者からの他の任意のサンプルであり得る。一部の実施態様では、生体サンプルは血液サンプルまたは骨髄サンプルである。特定の実施態様では、生体サンプルは組織サンプル(例えば、肝臓、皮膚または肺の生検)である。一部の実施態様では、生体サンプルは尿などの生体液である。特定の実施態様では、生体サンプルは痰または鼻の分泌サンプルである。一部の実施態様では、生体サンプルは口のスワブである。
【0164】
当技術分野で周知の技術を使用して、生体サンプルに存在する特定タイプの細胞の有無、数、量またはパーセントを評価することができる。例えば、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を使用して細胞を選別することができる。蛍光活性化細胞選別装置(FACS)は、粒子の蛍光特性に基づいて、細胞を含む粒子を選別する既知の方法である。例えば、Kamarch, 1987, Methods Enzymol 151:150-165を参照。個々の粒子の蛍光部分のレーザー励起は、小電荷を生じ、混合物からの正荷電粒子と負荷電粒子の電磁分離が可能となる。特定細胞の細胞表面上にある抗原決定基を検出するために使用される抗体またはリガンドは、FITCまたはフィコエリトリンなどの蛍光色素で標識される。細胞は、標識された抗体またはリガンドが細胞に結合するのに十分な時間、蛍光標識された抗体またはリガンドと共に培養される。細胞は、細胞選別装置(セルソーター)で処理され、他の細胞から目的細胞を分離する。FACSで選別された粒子は、分離を促進するために、マイクロタイタープレートの個々のウェルに直接入れることができる。
【0165】
磁気ビーズを使用して細胞を分離することもできる。例えば、磁気ビーズ(直径0.5~100μm)に結合する粒子の能力に基づいて粒子を分離する方法である、磁気活性化細胞選別(MACS)技術を使用して選別することもできる。細胞固相表面分子またはハプテンを特異的に認識する抗体の共有結合付加を含むさまざまな有用な修飾を、磁気ミクロスフェア上で実施できる。その後、選択されたビーズを物理的に操作するために磁場を加える。具体的な実施態様では、血液細胞表面マーカーに対する抗体が磁気ビーズに結合される。次にビーズを血液細胞培養物と混合して結合させる。その後、細胞を磁場を通して通過させ、対象となる血液細胞表面マーカーを持つ細胞を選び出す。このようにして、これらの細胞は単離できる。
【0166】
一部の実施態様では、培養皿の表面を抗体でコートし、パニングと呼ばれる方法で細胞を選別するために使用される。別々の皿を、特定の細胞に特異的な抗体でコートすることができる。細胞はまず、目的の血液細胞に特異的な抗体でコートされた皿に加えられる。十分にすすいだ後、培養皿に結合されたままになっている細胞は、対象となる細胞マーカーを発現する細胞である。細胞表面抗原決定基またはマーカーの例には、Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞に対するCD2、Tリンパ球に対するCD3、白血球に対するCD11a、Tリンパ球に対するCD28、Bリンパ球に対するCD19、Bリンパ球に対するCD20、Bリンパ球に対するCD21、Bリンパ球に対するCD22、Bリンパ球に対するCD23、白血球に対するCD29、単球に対するCD14、血小板に対するCD41、血小板に対するCD61、顆粒球に対するCD66、顆粒球に対するCD67、単球およびマクロファージに対するCD68を含むがこれに限定されない。
【0167】
マーカー(バイオマーカーを含む)または因子の有無、濃度または量は、当技術分野で周知の技術を使用して評価することができる。マーカー(バイオマーカーを含む)または因子の有無、濃度または量は、当業者に周知の技術を使用してタンパク質レベルおよび/またはRNAレベルで測定できる。タンパク質レベルでは、ELISAおよび免役沈降などの免役測定法およびウェスタンブロットを使用して、マーカー(バイオマーカーを含む)または因子の有無、濃度または量を測定できる。さらに、FACSを使用して、マーカー(バイオマーカーを含む)または因子の有無、濃度または量を測定できる。RNAレベルでは、RT-PCRおよびノーザンブロットを使用して、マーカー(バイオマーカーを含む)または因子の有無、濃度または量を測定できる。
【0168】
5.5.併用療法
一部の実施態様では、ASMDを治療する方法には、ASMの投与と1つ以上の追加治療薬の併用を伴う。本明細書で使用される場合、「併用」という用語は、ASMの投与という文脈では、ASMDの治療に使用される1つ以上の追加治療薬(例えば、薬剤)の投与の前、同時、またはその後のASM用量の投与を指す。「併用」という用語の使用は、ASMおよび1つ以上の追加治療薬が被験者に投与される順序を制限しない。具体的な実施態様では、ASMの用量と1つ以上の追加治療薬の投与の間隔は、約1~5分、1~30分、30~60分、1時間、1~2時間、2~6時間、2~12時間、12~24時間、1~2日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、15週間、20週間、26週間、52週間、11~15週間、15~20週間、20~30週間、30~40週間、40~50週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、1年、2年、またはその間の任意の期間であり得る。特定の実施態様では、ASMの用量と1つ以上の追加治療薬は、1日、1週間、2週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、1年、2年、または5年間隔未満で投与される。
【0169】
一部の実施態様では、本明細書に提供される併用療法には、ASMの用量を2~4週間ごとに投与し、および1つ以上の追加治療薬を1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1カ月に1回、2カ月(例えば、約8週間)に1回、3カ月(例えば、約12週間)に1回、または4カ月(例えば、約16週間)に1回投与することを伴う。特定の実施態様では、ASMと1つ以上の追加治療薬は、周期的に被験者に投与される。サイクリング療法には、ASMを一定期間投与し、その後1つ以上の追加治療薬を一定期間投与し、この連続投与を反復することを伴う。特定の実施態様では、サイクリング療法は、ASMまたは追加治療薬を一定期間(例えば、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、10週間、20週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、2年、または3年)投与しない休薬期間を含むこともある。1つの実施態様では、投与サイクル数は、1~12サイクル、2~10サイクル、または2~8サイクルである。
【0170】
一部の実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、追加治療薬と併用してASMを投与する前に、ASMを単一薬剤として一定期間投与することを含む。特定の実施態様では、本明細書に提供されているASMDを治療する方法は、追加治療薬と併用してASMを投与する前に、追加治療薬のみを一定期間投与することを含む。
【0171】
一部の実施態様では、本明細書に記載されている方法に従ったASMと1つ以上の追加治療薬の投与は、ASMまたは前述の1つ以上の追加治療薬の単独の投与と比べて、付加的効果を持つ。一部の実施態様では、本明細書に記載されている方法に従ったASMと1つ以上の追加治療薬の投与は、ASMまたは前述の1つ以上の追加治療薬の単独の投与と比べて、相乗効果を持つ。
【0172】
本明細書で使用される場合、「相乗的」という用語は、その組み合わせが任意の2つ以上の単一治療薬(例えば、薬剤)の相加効果よりも効果的である、1つ以上の追加治療薬(例えば、薬剤)と併用したASM用量の投与の効果を指す。具体的な実施態様では、併用療法の相乗効果によって、ASMまたは追加治療薬のより低い投与量(例えば、準至適用量)を使用することが可能になる、および/またはASMまたは追加治療薬の被験者への投与の頻度を少なくすることができる。特定の実施態様では、ASMまたは追加治療薬のより低い投与量を利用できること、および/またはASMまたは前述の追加治療薬をより少ない頻度で投与できることにより、ASMDの治療におけるASMまたは前述の追加治療薬それぞれの有効性を減少させることなく、ASMまたは前述の追加治療薬それぞれの被験者への投与に関連する毒性が減少する。一部の実施態様では、相乗効果は、ASMD治療において、ASMおよび前述の追加治療薬それぞれの有効性の向上をもたらす。一部の実施態様では、ASMと1つ以上の追加治療薬の併用の相乗効果は、任意の単一治療薬の使用に関連する有害または好ましくない副作用を回避または低減する。
【0173】
具体的な実施態様では、ASMの特定の用量の投与に関連する可能性のある、(i)関連有害事象、(ii)ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)のビリルビン値を超える総ビリルビン値、(iii)ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の血漿セラミド濃度を超える血漿セラミド濃度、または(iv)急性期反応のうち、1つ以上を低減または改善するために、1つ以上の追加治療薬がASMと併用して被験者に投与される。具体的な実施態様では、ASMの特定の用量の投与に関連する可能性のある、(i)関連有害事象、(ii)ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)のビリルビン値を超える総ビリルビン値、(iii)ASMDを持たないヒト(例えば、健常人)の血漿セラミド濃度を超える血漿セラミド濃度、または(iv)急性期反応のうち1つ以上を最小化しながら肺機能を向上させるために、1つ以上の追加治療薬がASMと併用して被験者に投与される。
【0174】
特定の実施態様では、ASMDと関連する症状をコントロールまたは軽減するために、ASMと1つ以上の追加治療薬が被験者に併用投与される。一部の実施態様では、ASMと併用して被験者に投与される1つ以上の追加治療薬は鎮痛薬である。ASMと併用して投与できる治療薬の具体的な例には、N-アセチル-L-システイン(NAC)、S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)、インターロイキン(IL)-6 抗体、IL-6 受容体抗体、デキサメタゾン、L-Nil(誘導性NOSの選択的阻害剤)、L-NAME(NOSの選択的阻害剤)、塩基性線維芽細胞成長因子(b-FGF)、イミプラミン(スフィンゴミエリナーゼ阻害剤)、D609(スフィンゴミエリナーゼ阻害剤)、およびN-オレオイルエタノールアミン(NOE、セラミド阻害剤)を含むがこれに限定されない。
【0175】
特定の実施態様では、小分子シャペロンなどのシャペロンがASMと併用して投与される。例えば、ASMと併用して被験者に投与し得る薬剤(例えば、小分子)については、米国特許第7,750,050号および国際公開番号WO 2004/045574号およびWO 2010/015816号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)を参照。一部の実施態様では、シャペロン(例えば、小分子シャペロン)は、病変部位へのASMのターゲティングを増加する、ASMの活性を安定化する、およびASMの活性を強化する働きのうち、1つ、2つまたはすべてを行なう。
【0176】
一部の実施態様では、デキサメタゾンなどのグルココルチコステロイドが、ASMと併用して投与される。ASMと併用して投与し得る薬剤(例えば、グルココルチコステロイド)については、例えば、米国特許第7,658,916号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。
【0177】
一部の実施態様では、基質減少子が、ASMと併用して被験者に投与される。具体的な実施態様では、スフィンゴミエリンの量を減少するか、スフィンゴミエリン合成の速度を低下させるか、またはその両方を行なう分子(例えば、小分子)が、ASMと併用して被験者に投与される。トリシクロデカン-9-イル-キサントゲン酸およびスフィンゴミエリン・シンターゼsiRNAなどのスフィンゴミエリン・シンターゼ阻害剤については、例えば、Li etal. 2007, Biochim Biophys Act 1771(9):1186-1194(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。
【0178】
一部の実施態様では、ASMの潜在的免疫原性を減少させる治療薬が、ASMと併用して被験者に投与される。特定の実施態様では、ベネドリルがASMと併用して被験者に投与される。
【0179】
ASMと1つ以上の追加治療薬の組み合わせは、同じ医薬組成物で被験者に投与できる。または、ASMと1つ以上の追加治療薬は、別々の医薬組成物で被験者に同時に投与できる。ASMと1つ以上の追加治療薬は、別々の医薬組成物で被験者に連続的に投与できる。ASMと1つ以上の追加治療薬は、同じ投与経路または異なる投与経路で被験者に投与することもできる。
【0180】
5.6.医薬品
1つの態様では、最終的に包装・表示された医薬品が本明細書に記載されている。1つの実施態様では、医薬品は、適切な器または容器(例えば、ガラスバイアルまたは密封された他の容器)に入ったASMの単位投与形態(剤形)を含む。一部の実施態様では、単位投与形態は、ASMの凍結乾燥製剤であり、これらの状況下では、医薬品は、ASMの凍結乾燥製剤を再構成するための滅菌生理食塩水または滅菌水の入った第二の容器を含み得る。他の実施態様では、単位投与形態は、被験者に投与する前に再構成の必要がない水溶性のASM製剤である。具体的な実施態様では、ASMの単位投与形態は、被験者に非毒性、低用量の酵素を投与するのに十分な量のASMを含む。特定の実施態様では、単位投与形態は、ASMの被験者への投与の選択経路に適している。具体的な実施態様では、単位投与形態は、被験者への静脈内送達に適している。
【0181】
1つの実施態様では、医薬品は、適切な器または容器(例えば、ガラスバイアルまたは密封された他の容器)に入ったASMの単位投与形態、および被験者へのASMの投与のための注入ポンプまたはシリンジポンプを含む。
【0182】
他の医薬品と同様に、包装材料および容器は、保管および配送中に製品の安定性を守るようにデザインされている。さらに、医薬品は、医師、技師または患者にASMDの適切な治療方法をアドバイスする使用説明書または他の情報資料を含む。つまり、医薬品は、実際の用量(例えば、用量漸増プロトコール)、モニタリング手順、および他のモニタリング情報を含むがこれに限定されない投与レジメンを示すかまたは示唆する指示手段を含む。特定の実施態様では、医薬品には、患者の遺伝子型を調べる方法(例えば、SMPD1遺伝子のPCRプライマー)を含む。
【0183】
6.実施例1:ASM欠乏症を持つ成人における組み換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)酵素補充療法の臨床試験
6.1.序論
ASMDは、スフィンゴミエリンがセラミドとホスホリルコリンに正常に分解されない時に起こる、常染色体劣性のリソソーム蓄積障害である。その結果として、スフィンゴミエリンが細胞内の主に細網内皮系に蓄積し、肝脾腫大症、貧血、血小板減少症、および間質性肺疾患をもたらす。成長遅延およびアテローム性脂質プロファイルも一般的な所見である。残留ASM活性がほとんどまたは全くない患者が最も重度の症状を呈し、幼年期の発症、成長障害、神経変性を示し、3歳までに死に至る(ニーマン・ピック病A型、NPD A)。より高い残留ASM活性を持つ患者は、発症年齢がさまざまで、不均一な所見と身体症状があり、神経障害はほとんどまたは全くなく、一般的に成人期まで生存する(NPD B)。現在、ASMDを持つ患者に対する治療法はない。
【0184】
酵素補充療法(ERT)は、ゴーシェ病、ムコ多糖症I、II、およびVI型、ファブリー病、ポンぺ病を含むいくつかのリソソーム蓄積障害の治療に用いられ成果をあげている。組み換えヒトリソソーム酵素は静脈内投与され、その後のリソソームへのターゲティングのために、受容体媒介エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる。ASMDの治療に対する原理の証明は、Dr. Edward Schuchmanの研究室(Mount Sinai Medical Center)によって示され、ここではASMノックアウトマウス(ASMKO)モデルにおいて、組み換えヒトASM(rhASM)の静脈注射で肝臓と脾臓のスフィンゴミエリンレベルが効果的に減少し、程度は小さいものの肺でのレベルも減少した(Miranda, et al., FASEB 2000;14:1988)。しかし、rhASMは血液脳関門を通過することができないため、脳のスフィンゴミエリンレベルは減少しなかった。ASMKOマウスは残留ASM活性またはタンパク質を持たず、急速に重度の神経疾患を発症することから、この動物はNPD A型のモデルとして最も適していると考えられる(Buccinna et al., 2009, J. Neurochem. 109:105-115を参照)。
【0185】
さらなる研究では、rhASMの隔週投与により、ASMKOマウスのスフィンゴミエリンレベルが用量依存的(0.3~3mg/kg)に減少することが確認された。単回投与および反復投与に対する無毒性量(NOAEL)は、ASMKOマウスにおいてそれぞれ0.3mg/kgおよび3mg/kgであると決定された。より高い用量のrhASMで肺のスフィンゴミエリンレベルを枯渇させようとしたその後の試みでは、予想外の毒性が引き起こされた。10mg/kg以上の用量では、正常動物ではないASMKOマウスのみが、サイトカインレベルの大きな上昇に伴う肝炎、副腎出血、心血管ショックおよび死亡を経験し、サイトカイン放出症候群が示唆された。rhASMの高用量で見られた毒性およびサイトカインの上昇は、ASMKOマウスをより低い用量のrhASMで数回前治療することによって改善または予防することができたため、スフィンゴミエリン分解の速度と量が重要な役割を果たしていることが示唆される。
【0186】
NPD A型のモデルであるASMKOマウスでは、その後のrhASMの0.3mg/kg以下の単回投与およびrhASMの3.0mg/kg以下の反復投与では毒性は観察されず、rhASMの10mg/kg以上の単回投与が行なわれるまで重度の毒性は観察されなかった。従って、ASMKOマウスで観察された単回投与NOAEL(0.3mg/kg)に対して10倍の安全マージンを確保するために、ヒト被験者の単回投与に対しては、rhASMの保守的な開始用量の0.03mg/kgが選択された。ASMKOマウスで重度の毒性が観察された用量(10mg/kg)に対して10倍の安全マージンを確保するために、ヒト被験者の単回投与に対しては、rhASMの最大用量の1.0mg/kgが選択された。以下に規定されたプロトコールの完了時、rhASM 0.3mg/kgという低用量でヒト被験者における毒性が予想外に観察された。
【0187】
6.2.材料と方法
6.2.1.ヒトプロトコールのデザイン
このプロトコールは、単一施設、単回投与、用量漸増第1相試験であった。試験の主な目的は、非神経因性ASMD(ニーマン・ピックB)を持つ成人におけるrhASMの単回投与の安全性と薬物動態を評価することであった。rhASMの0.03、0.1、0.3、0.6、1.0mg/kg の単回投与が、用量コホート別に連続して注入された。初期の試験デザインでは最低15人の患者を要請していた(5つのコホートに各3人の患者)。患者登録が困難であったため、プロトコールは、最初の2つのコホートにはそれぞれ3人の患者を登録し、最後の3つのコホートにはそれぞれ2人の患者を登録するように変更された。独立データモニタリング委員会が試験を監視し、すべてのプロトコール手順はIRBによって承認された。図1はプロトコールの患者フローを示す。
【0188】
6.2.2.患者
プロトコールに適格となるためには、患者は年齢が18~65歳で、ASM酵素活性の欠乏があり、脾臓体積が正常の2倍以上、ASTとALTが250 IU/L以下、ビリルビンが3.6mg/dL以下、INRが1.5以下、DLcoが予測値の30%超、血小板が60,000/mL以下でなければならない。肝硬変(肝生検による)、重大な心疾患、脾全切除術を経験した場合、または潜在的に肝毒性がある、出血を促進する、またはrhASMを阻害する薬またはハーブ系サプリメントを服用している場合、患者は除外された。
【0189】
合計13人の患者が登録され、11人の患者にrhASMが注入された。rhASMは、チャイニーズ・ハムスターの卵巣細胞のASM cDNAの過剰発現によって生成された。注入患者の平均年齢は30.8歳で、すべてが白人(非ヒスパニック/非ラテン系)であり、平均脾臓体積は正常の10.8倍であった。1人が脾部分切除術を受けており、残りの患者の脾臓はプロトコール登録時には無傷であった。図2は、このプロトコールの患者の人口統計学およびベースライン特性を示す。
【0190】
スクリーニングが完了し、適格性が確認されたら、患者はベースライン・テレメトリーのために心疾患集中治療室(CCU)に一晩入院し、翌朝rhASMを注入された。テレメトリーで、患者は投与後72時間モニターされた(CCUで24時間、一般臨床研究センターで48時間)。患者は第14日に一泊来院、第28日に外来来院した。
【0191】
以下はプロトコール中に行なわれた健康診断を説明するものである。
【0192】
・ 身体検査 第0、1、2、14および28日
・ 化学分析、血液学、および尿検査-注入前、その後24、48、72時間、第14、28日
・ 肝機能検査-注入前、その後72時間まで12時間ごと、第14、28日、アルドステロン、コルチゾール、δ-4-アンド ロステネジオン-注入前、その後72時間まで12時間ごと
・ ACTH刺激試験-スクリーニング、第14日テレメトリー-72時間まで連続的なECG、心エコー図-注入前、注入終了時、および注入後1、2、6、12および4時間後、第14日
・ 心臓バイオマーカー(BNP、心臓トロポニンI、CPK-MB)-注入前、その後2、6、12、24時間
・ 血漿中スフィンゴミエリン、セラミドレベル-注入前、その後24、48、72時間、第14および28日
・ 肺機能試験およびCXR-スクリーニング、第14日
・ MRIによる肝臓および脾臓体積-スクリーニング、第14日
・ 肝臓および皮膚の生検-スクリーニング、第14日
・ バイオマーカー-投与前、第14、28日
・ 抗rhASM IgG試験-注入前、第28日
・ 薬物動態-注入前30分以内、注入開始後15分、注入終了時、および注入後15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、48時間、72時間の時点。
【0193】
・ サイトカイン(IL-1a、IL-1b、IL-6、G-CSF、GM-CSF、MIP-1a、TNF-a)-薬物動態時点(上記)および第14日
6.3.結果
図3Aおよび3Bに示されるように、血漿セラミドレベルと血漿スフィンゴミエリンレベルは、それぞれいくつかの時点で決定された。血漿セラミドレベルは、6時間まで用量依存性の上昇を示し、18~72時間でピークに達した。血漿スフィンゴミエリンレベルはベースラインでは正常で、経時的に一定の傾向は示さなかった。最高用量(1mg/kg)を投与された患者番号12112では、血漿スフィンゴミエリンレベルは投与後に上昇し、72時間でピークに達した。
【0194】
図4は、プロトコールのいくつかの時点に渡って決定された総ビリルビンレベルを示す。総ビリルビンは、24時間まで用量依存性の上昇を示し、48~60時間でピークに達した。最高用量(1mg/kg)を投与された患者番号12112の最高総ビリルビンは4.7mg/dLであった。直接ビリルビンおよび間接ビリルビンでは比例的増加が示された。ALT、AST、またはアルカリホスファターゼでは増加は見られなかった。最高用量(1mg/kg、患者番号12112)および最低用量(0.03mg/kg、患者番号10503)を投与された2人の患者では、72時間までGGTの軽度の増加が見られた(非表示)。ヘモグロビンおよびヘマトクリットレベルは、プロトコール全体を通して安定しており、溶血はビリルビンレベルの増加の原因でないことを示していた。
【0195】
図5A~5Gは、数人の患者に対するいくつかの時点で決定された急性期反応(炎症)マーカー、CRP/hs-CRP、好中球%、フィブリノーゲン、フェリチン、IL-8、IL-6、カルシトニンのレベルをそれぞれ示す。CRP/hs-CRPは、24時間まで一時的な用量依存性の上昇を示し、48~72時間でピークに達し、第14日までに正常に戻った。他の急性期反応物も増加(好中球%、フィブリノーゲン、フェリチン、PTおよびPTT)および減少(鉄、アルブミン)を示した。特定の炎症バイオマーカー(例えば、サイトカイン、IL-6およびIL-8)およびカルシトニンも、用量依存性の大幅な増加を示し、注入後48時間でピークに達した。これらの炎症性メディエーターの中で、最大変化は、降順に、IL 8(ピークは正常上限の33.8倍)、カルシトニン(ピークは正常上限の33.4倍)、CRP(ピークは正常上限の9.8倍)、およびフェリチン(ピークは正常上限の3.9倍)で起こった。血小板数またはフィブリン分解物では傾向は見られなかった(非表示)。検査所見の急性期反応物の上昇は、一部の患者において発熱、悪心、嘔吐、頭痛、痛み、および筋肉痛の全身臨床症状と相関していた。
【0196】
図6は、それぞれが異なるrhASM用量を投与された4人の患者の治療中に発生した有害事象の表であり、これらの事象は(たぶん、おそらく、または明らかに)治療に関連していると考えられた。表に示されるように、rhASM 0.3mg/kgを投与された患者番号11509は、中等度から重度の有害事象を第2日目から呈した。
【0197】
プロトコールで報告された関連有害事象に関しては、テレメトリー、ECG、心エコー図、またはバイオマーカー(BNP、心臓トロポニンI、CPK-MB)または副腎ホルモン不全による著しい心血管変化はなかった。1人の患者(番号12112、1.0mg/kgコホート)では、投与後24時間の朝にコルチゾールレベルの増加が見られ、これはいくつかの進行中の中等度の関連有害事象に対する正常な生理学的ストレス反応をおそらく意味すると考えられた。さらに、0.3mg/kg以上のrhASMを投与された6人中4人の患者は、薬物に関連すると評価された合計19件の臨床および検査関連有害事象を経験した。関連有害事象の強度は、軽度から重度までに渡ったが、ほとんどは中等度で介入を必要としなかった。これらには、発熱(n=2)、痛み[筋肉痛、腹部、脚、および腰の痛み](n=2)、悪心(n=2)、強膜黄疸および尿ウロビリノーゲン(n=1)、疲労(n=1)、嘔吐(n=1)、リンパ球浸潤/肝臓生検での肝細胞の変性(n=1)、急性期反応(n=4)、ビリルビンの増加(n=2)、およびフィブリンD二量体の増加(n=1)が含まれた。臨床症状の発症は、1人の患者の腰痛が72時間後に始まった以外は、注入後12時間に始まり、72時間までに消散した。第14日に、1人の患者(rhASM 0.6mg/kg、患者番号12313)の肝臓生検が、リンパ球浸潤の2つの新しい病巣を示した。1つは小さく(直径0.1mm)もう一方は中等度(直径0.5mm)で、肝細胞の変性に関連していた。コホート5の第一の患者(rhASM 1mg/kg、患者番号12112)が、高ビリルビン血症(ピーク4.7mg/dL)の用量制限毒性を経験したとき、このプロトコールは中止された。
【0198】
この結果は、ASMDを患うヒトにおける、rhASM 0.3mg/kg以上の用量での予想外の用量依存性の臨床および検査有害事象の遅延発症を示した。さらに、このプロトコールの結果を考慮して、2つの重要な安全性検査所見が述べられた。抗ビリルビン血症に関しては、直接ビリルビンおよび間接ビリルビンの用量に比例した増加が観察されたが、肝障害に一致するマーカー(AST、ALT、AP)または溶血(ヘモグロビンおよびヘマトクリット)の兆候は見られなかった。2人の患者のGGTが48~72時間で軽度に上昇し、1人の患者でリンパ球浸潤の2つの新しい病巣が見られ、このうち1つは肝細胞の変性に関連していた。
【0199】
もう1つの所見は、急性期反応、つまり炎症についてであった。結果は、rhASMの投与量の増加に対応して、CRP/hs-CRP、好中球%、フェリチン、IL-6、IL-8、カルシトニン、フィブリノーゲン、PY、PTTの増加、および鉄とアルブミンの減少を示した。全身臨床症状の発熱、悪心、嘔吐、痛み、および筋肉痛は、急性期反応に関連している可能性が高い。結果では、心血管変化に関連するサイトカイン放出症候群の兆候、および腎臓ホルモン障害の兆候は示されなかった。
【0200】
6.4.結論
上述のプロトコールは、ASMDを持つ成人患者における酵素補充療法の最初の試みである。ヒトの生物活性用量では、rhASMは、心血管変化に関連するサイトカイン放出症候群、または副腎ホルモン不全を生じなかった。主な安全性所見は、用量依存性の高ビリルビン血症および急性期反応であった。両方の有害事象は、スフィンゴミエリンのセラミドとホスホリルコリンへの分解におそらく関連しているが、正確な分子メカニズムは完全にはわかっていない。ビリルビン、セラミド、CRP/hs-CRP、1L-8、1L-6、カルシトニン、フェリチンを含む、いくつかの安全性バイオマーカーが特定された。さらに、高ビリルビン血症所見に基づいて、rhASMの忍容性を示した最大開始用量は0.6mg/kgであった。
【0201】
また、ASMKOマウスにおけるNOAEL(「無毒性量」)が0.3mg/kgであったことを考えると、患者の臨床症状を伴う有害事象の発症が、0.3mg/kgという低用量で観察されたことは驚きであった。特に、ASMKOマウスの毒性の臨床症状は、10mg/kg以上の用量が使用されるまで観察されなかった。
【0202】
7.実施例2:酸性スフィンゴミエリン・ノックアウトマウスにおける減量期に続く反復用量静脈注射の毒性プロトコール
この実施例は、酸性スフィンゴミエリナーゼ・ノックアウト(ASMKO)マウスでの、減量期に続く、組み換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の反復静脈内投与の潜在的毒性の調査を説明している。ASMKOマウスで、rhASM 10mg/kgを初期用量として有毒な副作用が観察され始めることが確立されたので、以下の調査は、観察可能な毒性を最小限伴うかまたは全く伴わずに、rhASMのより高い用量をASMKOマウスの肺および脳などの病変標的部位に投与できるように、ASMKOマウスへの組み換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の漸増用量投与が蓄積スフィンゴミエリンを十分減量するかどうかを判断するためにデザインされた。
【0203】
JK ASMKOマウスには、3mg/kgのrhASMが試験日(SD)の第1、3、5、7日に投与された(減量期)。SD第9日から開始して隔週、13週間(7用量)、マウスは3、10、または30mg/kgのrhASM治療用量を投与された(治療期)。
【0204】
rhASMは、オスとメスのASMKOマウスに、ボーラス注入で側方尾静脈に静脈内投与された。グループ1~3は、減量期(SD第1、3、5、7日)の間に、3mg/kgのrhASMを投与された。グループ1、2、3は、それぞれ3、10、30mg/kgのrhASMを、治療期(SD第9、23、37、51、65、79、93日)中に投与された。各グループのマウスの1つのサブセット(グループ1の性別あたり2匹の最初のマウス、およびグループ2~3の性別あたり4匹の最初のマウス)は、トキシコキネティクス(TK)(5分後)およびセラミドレベル(4時間後)の分析のために、試験前に加えて治療期投与1、4、7から5分および4時間後に採血された。各グループのマウスの他のサブセット(グループ1の性別あたり2匹の最後のマウス、およびグループ2~3の性別あたり4匹の最後のマウス)は、げっ歯類複数検体プロファイル(4時間後)および急性期タンパク質/肝機能検査レベル(24時間後)の分析のために、試験前に加えて治療期投与1、4、7から4時間および24時間後に採血された。表2(下記)の試験デザインを参照。
【0205】
最初の治療期投与およびその後の各投与から始まるアナフィラキシー反応の可能性のため、試験品投与の後、各マウスはアナフィラキシーの兆候(例えば、不穏状態、咀嚼、顔をこする、じんま疹、浮腫、嗜眠、および毛のみすぼらしさ)がないか注意深く観察された。マウスは、治療期の最初の投与前から開始して、その後の各投与前に、ジフェンヒドラミン(DPH)を投与された。
【0206】
5mg/mLの濃度のDPHは、50mg/mLの市販原液を滅菌0.9%生理食塩水で希釈して調製された。DPHは、アナフィラキシー反応の可能性を避けるために、rhASMの投与の10~20分前に、最近の体重に基づいて20mg/kg(4mL/kg)の用量で腹腔内(IP)投与された。DPHの前治療にもかかわらず、試験動物が、試験品投与の後に過敏性反応を示した場合は、DPHの10mg/kg(2mL/kg)の第二の用量が、腹腔内投与された。
【0207】
すべてのマウスは、SD第100日にCO2窒息で安楽死させた。安楽死後、臨床病理学および免疫原性分析のために、心穿刺で血液を採取した。採血後、すべてのマウスについて剖検を行なった。すべての組織は、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中に保存し、その後病理組織学的分析を行なった。肝臓、脾臓、腎臓、および肺の一部分を、スフィンゴミエリン負荷量の分析のために、2%グルタルアルデヒド/2%パラホルムアルデヒド中に保存した。肝臓、脾臓、腎臓および肺の一部分も、将来の分析の可能性に備えて採取され、-70℃以下で保存された。
【0208】
剖検後、死体を含めた残りのすべての組織が10%NBF中に入れられた。
【0209】
【表2】
【0210】
生存中の所見:
試験の第1日はSD 1(投与の第1日)と見なされる。動物の体重は、SD -1から開始して試験の過程中、週1回測定され、その後は毎週月曜日に測定された。月曜日から金曜日まで1日1回、症状観察が行なわれた。すべての異常および正常所見が記録された。各用量の投与の直前、10~20分後、50~70分後に投与後の臨床観察/採点が行なわれた。すべての異常および正常所見が記録された。有害事象が起こった場合は担当獣医師および/または試験ディレクターに相談し、そのアドバイスに基づいて適切な措置が取られた。
【0211】
安楽死:
動物の健康および福祉に影響する有害事象が起こった場合、その動物はCO2窒息で安楽死させ、胸部、腹部および頭蓋腔を切開して、将来の分析の可能性に備えて10%中性緩衝ホルマリン(NBF)に漬けた。動物が死亡した場合、将来の分析の可能性に備えて、死体全体を10% NBF中に保存した。試験の終了時、すべての生存動物はCO2窒息で安楽死させた。
【0212】
サンプル採取:
用量分析:毎日の投与の処方後1~10分以内に、すべての用量レベルから約500マイクロリットル(500μL)の試験品が採取され、-70℃以下の温度を維持するよう設定された冷凍庫に移されるまでドライアイス上で保存された。用量分析サンプルは、SD 第1、3、5、7、9、23、37、51、65、79、93日に移され、分析まで-70℃以下で保存された。用量分析サンプルはA280アッセイで測定された。
【0213】
血液採取:TK、げっ歯類複数検体プロファイル、および急性期タンパク質/肝機能検査レベルの分析用に血液を採取するため、イソフルランと酸素の混合物でマウスに麻酔をかけた。血液採取は、血液採取表(表4と5(下記)を参照)および以下のテキストに従って、SD第-1、9、51および93日(それぞれ、試験前、および第1、第4、および第7治療期投与)に行なわれた。
rhASMトキシコキネティクス:グループ1の性別あたり2匹の最初のマウス、およびグループ2~3の性別あたり4匹の最初のマウスでは、ピークrhASMレベルの分析のために、試験前(SD -1)および第1、第4、第7の治療期投与から5分後に血液サンプルを採取した。すべての動物の血液は、無意識のマウスの後眼窩静脈叢から採取された。約60μLの全血をヘマトクリットチューブに採取し、室温で少なくとも1分間凝固させた。毎分10,000回転(RPM)で5分間遠心分離して、これらのサンプルから血清を調製した。遠心分離後、血清を採取し、-70℃以下の温度を維持するよう設定された冷凍庫に移されるまでドライアイス上で保存した。一旦移された後は、すべてのサンプルは分析まで、-70℃以下で保存された。TKサンプルはSD 第1、9、51、および93日に移された。TKサンプルは、酵素免疫測定法(ELISA)で測定された。
セラミドレベルの分析:グループ1の性別あたり2匹の最初のマウス、およびグループ2~3の性別あたり4匹の最初のマウスでは、セラミドレベル分析のために、試験前(SD -1)および第1、第4、第7の治療期投与から4時間後に血液サンプルを採取した。これらの動物の血液は、無意識のマウスの後眼窩静脈叢から採取された。約240μLの全血をカリウムEDTAチューブに採取し、血塊の形成を防止するために最大30分間Nutatorミキサー上に置いた。10,000 RPMで5分間遠心分離して、これらのサンプルから血漿を調製した。遠心分離後、血漿を採取し、-70℃以下の温度を維持するよう設定された冷凍庫に移されるまでドライアイス上で保存した。一旦移された後は、すべてのサンプルは質量分析グループによる分析まで、-70℃以下で保存された。セラミドサンプルはSD第94日までに移された。セラミドサンプルは質量分析法で測定された。
げっ歯類多検体プロファイル(MAP)の分析:グループ1の性別あたり2匹の最後のマウス、およびグループ2~3の性別あたり4匹の最後のマウスでは、げっ歯類多検体プロファイル分析のために、試験前(SD -1)、および第1、第4、第7の治療期投与から4時間後に血液サンプルを採取した。これらの動物の血液は、無意識のマウスの後眼窩静脈叢から採取された。約150μLの全血を血清分離チューブに採取し、少なくとも30分間凝固させた。10,000 RPMで5分間遠心分離して、これらのサンプルから血清を調製した。遠心分離後、血清を採取し、-70℃以下の温度を維持するよう設定された冷凍庫に移されるまでドライアイス上で保存した。一旦移された後は、すべてのサンプルはげっ歯類の多検体プロファイル分析のためにSD第94日までに出荷されるまで、-70℃以下で保存された。サンプルはドライアイス上に載せてRules Based Medicineに発送された。げっ歯類多検体プロファイル表(表3、下記を参照)は、測定された検体の一覧である。
【0214】
【表3】
【0215】
急性期タンパク質/肝機能検査レベルの分析:グループ1の性別あたり2匹の最後のマウス、およびグループ2~3の性別あたり4匹の最後のマウスでは、急性期タンパク質(血清アミロイドAおよび血清アミロイドP)および肝機能(ビリルビンおよびアラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT))レベルの分析のために、試験前(SD -1)および第1、第4、第7の治療期投与から24時間後に血液サンプルを採取した。これらの動物の血液は、無意識のマウスの後眼窩静脈叢から採取された。約150μLの全血を血清分離チューブに採取し、少なくとも30分間凝固させた。10,000 RPMで5分間遠心分離して、これらのサンプルから血清を調製した。遠心分離後、血清を採取し、-70℃以下の温度を維持するよう設定された冷凍庫に移されるまでドライアイス上で保存した。一旦移された後は、すべてのサンプルは急性期タンパク質/肝機能検査分析のためにSD第94日までに出荷されるまで、-70℃以下で保存された。サンプルはドライアイス上に載せてAnalyticsに発送された。
【0216】
【表4】
【0217】
【表5】
【0218】
剖検
臨床病理学および免疫原性の分析のための終末血液採取:安楽死後、臨床病理学および免疫原性分析を目的として、すべての主要試験動物からの全血採取(約500μL以上)のために全動物に心穿刺が行なわれた。約150μLの全血をカリウムEDTAチューブに入れ、血液学パラメータ分析のためにゆっくりと反転した。ゆっくりと反転させた後、すべてのサンプルは、分析まで2~10℃で保存されるまで、Nutatorミキサー上で振とうしながら室温で保存された。残りの血液(血液学分析のための150μLの採取に続く心穿刺により採取)は血清分離チューブに入れられ、少なくとも30分間室温で凝固させ、10,000 RPMで5分間、遠心分離して、血清を採取する。約30μLの血清を、免疫原性分析のためにエッペンドルフチューブに入れ、残りの血清は臨床化学分析のためにエッペンドルフチューブに入れた。免疫原性サンプルは、-70℃以下に温度を維持するよう設定された冷凍庫に保存されるまでドライアイス上で保存した。免疫原性サンプルは、ELISAで測定された。臨床化学サンプルは、分析まですべてのサンプルが-20℃以下で保存されるまで、ドライアイス上に置かれた。血液学および臨床化学検体表(表6、下記を参照)は、測定された検体の一覧である。
【0219】
【表6】
【0220】
すべての動物の血液学分析および臨床化学分析の結果は、有資格の病理学者によって解釈された。
【0221】
組織採取:SD第100日の安楽死後、すべての動物は、組織採取のため剖検された。剖検には、死体の外部特徴、身体外部開口部、腹部および胸部の空洞、臓器および組織の検査が含まれた。肉眼的所見が記録された。組織採取表(表7、下記を参照)は、10% NBF中に採取された組織の一覧である。肉眼的病変も採取され、10% NBF中に保存された。残りの死体は10% NBF中で保存された。
【0222】
【表7】
【0223】
臓器重量:剖検時、上記の太字の臓器は重量を測定した。対の臓器は一緒に重量測定した。重量は臓器重量フォームに記録された。剖検前に測定された体重に基づいて、体に対する臓器重量のパーセントおよび脳に対する臓器の比を計算した。
組織病理:すべての動物からのサンプルおよび試験動物の肉眼的病変が組織病理に移された。各動物からの上記の保存組織は、パラフィン中に埋め込まれた。すべての組織は薄片化され、ヘマトキシリンとエオシンで染色され、顕微鏡で検査された。すべての切片は、組織学変化の評価のため、有資格の病理学者によって顕微鏡検査された。
【0224】
すべての動物の肝臓、脾臓、腎臓、および肺のサンプルが採取され、スフィンゴミエリン負荷量の分析のために、2%グルタルアルデヒド/2%パラホルムアルデヒド中で固定された。これらの組織は、重クロム酸カリウム/四酸化オスミウムで後固定され、エポン中に包埋された。光学顕微鏡検査のため、1ミクロンの切片をタンニン酸およびトルイジンブルーで染色した。各サンプルのスフィンゴミエリン負荷量は、有資格の病理学者によって、MetaMorphソフトウェアを使ってコンピュータ形態計測で定量された。
【0225】
すべての動物の肝臓、脾臓、腎臓、および肺のサンプルが採取され、液体窒素中で冷凍されて、将来の分析の可能性に備えて-70℃以下で冷凍保存された。
【0226】
サンプル分析:
用量分析は、A280分析およびトキシコキネティクスで測定され、免疫原性サンプルはELISAで分析された。
【0227】
セラミド分析は、質量分析で測定された。
【0228】
血液学および臨床病理サンプルは、それぞれSysmex XTV 2000 IV Hematology AnalyzerおよびRadnox Daytona Clinical Chemistry Analyzerを使用して測定された。
【0229】
組織サンプルは処理され、病理組織学的分析は、SOPに従って有資格の病理学者が解釈した。臨床病理学分析の結果は、SOPに従って、有資格の病理学者が解釈した。
【0230】
8.実施例3:組み換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)酵素補充療法の漸増用量
8.1.序論
下記のプロトコールは、rhASMのより高い反復用量を達成するためのオプションとして患者内の用量漸増に使用される。0.3、0.6、および1.0mg/kgを2週間ごと(q2w)に40週間投与した場合の、rhASM注入の安全性、有効性、および薬物動態(PK)、ならびにrhASM注入の長期安全性および有効性が評価される。
【0231】
8.2.材料と方法
8.2.1.プロトコールデザイン
治療対象の12人のNP-B型患者は、性別については不問とした。患者は初めに少なくとも1用量のrhASM 0.1mg/kgを投与される。rhASM 0.1mg/kgの注入に忍容性を示した患者は、次に漸増用量0.3mg/kg、0.6mg/kg、および1mg/kgを忍容性を示す限り2週間ごとに投与される。1.0mg/kgに忍容性を示した患者は、次に脾臓体積別(正常の12倍未満または12倍以上)に階層化され、rhASM 1.0mg/kgまたは3.0mg/kgの2つの標的用量のうちいずれか1つを投与するために無作為化され、3.0mg/kg投与群に無作為化された患者は忍容性を示す限り、2.0mg/kg、次に3.0mg/kgに漸増される。rhASMの0.1mg/kg用量に忍容性を示さない患者は、置き換えられる(補充・交代)。患者が増量に耐えられない場合は、26週間の維持量期間の間、最大耐量を維持する。
【0232】
すべての患者で、0.1mg/kgから標的用量へ用量が漸増される。漸増期間中の投与量調整は、標的用量に達するまで2週間ごとに行なわれる(忍容性を示した場合)。初期注入(rhASM 0.1mg/kg)およびその後の投与に続いて、患者の転帰(すなわち、有害事象(AE)の発生/重症度、および血清ビリルビン、hsCRP、他の急性期反応タンパク質、セラミド)が再評価される。用量漸増期間中に投与される次回の用量は、以下の基準に従って決定される。
1. 総ビリルビン値が2.0mg/dL以下または軽度のAE→次の用量に漸増する(該当する場合)
2. 総ビリルビン値が2.1~3.0mg/dLまたは中等度のAE→用量漸増なし、現在の用量を反復する
3. 総ビリルビン値が3.0mg/dL超または重度のAE→前回投与された/忍容性を示した用量に減量する
rhASMに関連すると判断された重篤有害事象(SAE)、次の予定用量の前に2.0mg/dL未満にビリルビン値が低下しない場合、または投与用量でのrhASMの安全性に関して懸念を引き起こすAEは、用量制限毒性(DLT)と考えられ得る。患者がDLTを経験した場合、その患者に対するその後の投与は一時的に中止されるべきである。DLTを引き起こした用量を投与するために、患者に再投与することができ、忍容性を示した場合は、当初の計画通りに治療を進められる。
【0233】
患者が0.1mg/kgの2回の投与(すなわち、初期注入および1回の再投与)に耐えられない場合、漸増用量では治療は行なわず、試験を中止し、置き換えられる。0.3mg/kg用量に忍容性を示した患者は、rhASMの初期注入(0.1mg/kg)を投与され、2週間後に0.3mg/kgのrhASMを投与される(0.1mg/kg用量の後に用量漸増基準が満たされていることを前提とする)。その後のrhASM用量は、用量漸増期間中2週間ごとに最大18週間投与される。患者が0.3mg/kgまで漸増することに成功し、その後基準番号2または番号3(上記)を満たす場合、患者には2回再投与できる。再投与が成功しない(すなわち、標的用量に達することができない)場合、患者は40週間の治療期間の残りの期間、0.1mg/kgのrhASM用量を継続する。
【0234】
0.6mg/kg用量レジメンで治療される患者は、rhASMの初期注入(0.1mg/kg)を投与され、その後0.3mg/kgのrhASMを1回、0.6mg/kgのrhASMを40週間の治療期間の残りの期間に2週間ごとに投与される(前の0.1mg/kgおよび0.3mg/kgのrhASM注入に十分忍容性を示したことを前提とする)。1.0mg/kg用量レジメンで治療される患者は、rhASMの初期注入(0.1mg/kg)を投与され、その後0.3mg/kgのrhASMを1回、その後0.6mg/kgのrhASMを1回、その後1.0mg/kgのrhASMを40週間の治療期間の残りの期間に2週間ごとに投与される(前の0.1mg/kg、0.3mg/kg、および0.6mg/kgのrhASM注入に十分忍容性を示したことを前提とする)。患者が0.3mg/kgから0.6mg/kgまで、または0.6mg/kgから1.0mg/kgまで漸増することに成功し、その後基準番号2または番号3(上記)を満たす場合、患者には2回再投与できる。再投与が成功しない(すなわち、標的用量に達することができない)場合、患者は40週間の治療期間の残りの期間、低いほうの耐量を継続する。
【0235】
40週間の治療期間後、患者は、維持量レベルで治療を継続してもよい。
【0236】
8.2.2.患者
各患者は、これらのレジメンに従って治療を受けるためには、以下の適格基準を満たさなければならない。
1. ニーマン・ピック(N-P)病と一致する、確認されたASM欠乏
2. 肺拡散能力(DLco)が20%超、予測正常値の80%未満
3. 脾臓体積が正常の8倍以上(体重の1.6%以上)
4. 妊娠の可能性がある女性患者は、血清妊娠試験がβ-hCGに対して陰性でなければならず、プロトコールの期間中、医療上許容される避妊方法を使用することに同意する必要がある。
【0237】
8.2.3.治療
患者は、0.1mg/kgのrhASM IVを約35分間かけて単回投与される。投与ガイドラインは以下の表8に要約されている。0.1mg/kgのrhASMの初期注入に忍容性を示した患者は、標的治療用量に用量が漸増される(rhASM 0.3、0.6または1.0mg/kg)。すべての患者で、0.1mg/kgから標的用量へ用量が漸増される。漸増期間中の投与量調整は、標的用量に達するまで2週間ごとに行なわれる。
【0238】
【表8】

【0239】
各患者の、ベースラインでの脾臓腫の程度は、疾患の重症度の指標として正常に対する倍数(正常の何倍)で記録できる。正常脾臓体積は、体重の0.2%に等しい。
【0240】
各来院で、患者は新しいまたは現在進行中の有害事象(AE)を評価されるべきである。
【0241】
臨床エンドポイントは、ベースラインから維持量期間の第26週までの変化率(%)として測定できる。有効性の一次エンドポイントは、MRIで測定した脾臓体積の減少である。有効性の二次エンドポイントには、肝臓のスフィンゴミエリンレベルの減少、サイクルエルゴメータ運動負荷試験法での予想最大作業負荷%で測定される運動能力の増加、予測DLco%としての肺機能の向上、気管支肺胞洗浄(BAL)細胞数とプロファイル、およびスフィンゴミエリン、セラミド、サイトカイン、キトトリオシダーゼレベルで測定し得る肺クリアランスの増加を含む。有効性の三次エンドポイントには、MRIで測定された肝臓体積の減少、予測FVC、FEV1、TLC%で測定できる肺機能の向上、高解像度CTスキャン、胸部X線での肺の外観の改善、HDL、LDL、総コレステロール、トリグリセリドレベルおよび総コレステロールに対するHDLコレステロールの比で測定される脂質プロファイルの改善、血小板数の改善、ヘモグロビン、皮膚、血漿、DBSでのスフィンゴミエリンレベルの減少、ならびにCCL18、ACEなどの他のバイオマーカーの改善を含む。
【0242】
9.実施例4:組み換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)酵素補充療法の漸増用量
9.1.序論
下記のプロトコールは、ASMDを持つ成人患者の組み換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の安全性、有効性および薬物動態を評価するために、反復投与、用量比較を利用する。プロトコールの目的には以下を含む:(i)rhASM用量漸増の安全性の評価、(ii)2週間ごとに26週間静脈内投与されるrhASMの最大耐量または無作為化用量の安全性、有効性および薬物動態の評価、および(iii)第26週からプロトコールの完了まで2週間ごとに静脈内投与されるrhASM注入の長期安全性および有効性の評価。
【0243】
9.2.材料と方法
9.2.1.患者
各患者は、これらのレジメンに従って治療を受けるためには、以下の適格基準を満たさなければならない。
1. ニーマン・ピック(NPD)病と一致する、確認された酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)欠乏。
2. 血小板減少症、貧血、好中球減少症、肝腫大、脾臓腫大、および非神経因性NPDと一致する肺疾患を含む、2つ以上の特徴的臨床特性
3. 一酸化炭素肺拡散能力(DLCO)が20%超、予測正常値の80%未満
4. 脾臓体積が正常の8倍(MN)以上(すなわち、体重の1.6%以上)脾部分切除術は、スクリーニング/ベースラインから1年以上前に行なわれ、残留脾臓体積が正常の8倍以上の場合は許される。
5. 妊娠の可能性がある女性患者は、血清妊娠試験がβヒト絨毛性ゴナドトロピン(β‐HGC)に対して陰性でなければならず、プロトコールの期間中、医療上許容される避妊方法を使用することに同意する必要がある。
【0244】
9.2.2.プロトコールデザイン
rhASMに0.1mg/kgで忍容性を示す患者は、プロトコールに登録できる。各患者のプロトコール参加は3つの期間から成り得る。
1. スクリーニング/ベースライン(‐60~‐1日)。
2. 一次治療期間(約32~46週間)。
用量漸増(DE)段階(一次DE-約6~16週間)。
― rhASMを0.1から0.3、0.6、1.0mg/kgへと安全に漸増したら、患者を脾臓体積(正常の12倍未満と12倍以上)別に階層化および無作為化し、プロトコールの残りの期間、1.0mg/kgで投与を続けるか、または用量漸増を継続して2.0mg/kgおよび3.0mg/kgに続いて、rhASMを3.0mg/kgまたは最大耐量(二次DE-4週間)投与する。
― 非無作為化患者は、最大耐量(rhASM 1.0mg/kg未満)を維持する。
用量維持(DM)段階(最大耐量または無作為化用量で26週間)。
3. 長期治療期間(最大耐量または無作為化用量で少なくとも182週間)。
【0245】
スクリーニング/ベースライン評価は、rhASMの初期注入の少なくとも24時間前に完了することができる。プロトコールへの登録は、患者が0.1mg/kgでのrhASMの投与2回に耐えられることを条件とする。初めに、すべての適格患者は、用量漸増(DE)第1日にrhASM 0.1mg/kgの単回投与を受ける。この用量に耐えられない患者には、2週間後に再投与する。rhASM 0.1mg/kgの2回の投与(すなわち、初期用量および再投与量)に耐えられない患者は試験を中止し、約12人の患者(0.1mg/kgのrhASMに忍容性を示す患者)が登録されていることを確実にするために置き換えられる。
【0246】
rhASMの用量は、一次DE段階の間、0.1から0.3、0.6、1.0mg/kgへと2週間ごとに漸増することができる。一次DE段階の間、2週間ごとに、患者のrhASMの用量を0.1から1.0mg/kgへと安全に漸増することができる(図7に示される)。
【0247】
一次および二次DE段階中、以下の用量漸増基準に従い、次に投与すべきrhASMの用量を決定できる。
1. 総ビリルビン(rhASMの次の予定投与の前の最高値で、注入前の採血を含む)が2.0mg/dL未満、もしくは関連有害事象(AE)がないかまたは軽度の場合→次の用量に漸増する。
2. 総ビリルビンが2.0mg/dLを超えるが3.0mg/dL未満であるか、または軽度の関連AEがある場合→同じ用量を反復する。
・次の投与の直前に総ビリルビンが2.0mg/dLを超えたままである場合→一時的に患者へのさらなる投与を中止する(用量制限毒性[DLT]の可能性)。
3. 総ビリルビンが3.0mg/dL以上または重度の関連AEがある場合→用量を減少する。
・次の投与の直前に総ビリルビンが2.0mg/dLを超えたままである場合→一時的に患者へのさらなる投与を中止する(DLTの可能性)。
4. 無作為化される前、または16週間の一次DE段階の終わりまで最大耐量を続ける前は、一次DE段階のみ、患者には必要に応じて(特定の用量レベルで)何度でも再投与できる(二次DE段階では再投与は許可されていない)。
5. 登録された患者(すなわち、rhASMの0.1mg/kgに耐えられる患者)は、1.0mg/kgの用量まで漸増できずに無作為化できない場合、または標的無作為化用量(すなわち、rhASM 1.0mg/kgまたは3.0mg/kg)に耐えられない場合、置き換えることができない。これらの患者は、最大耐量でプロトコールを継続できる。
【0248】
注入が行なわれなかった場合、患者には以前の注入と同じ用量を投与できる。来院時間枠の±5日を超えた場合、その注入は行なうことができず、患者はその注入に対する予定時間に次の注入を受けるべきである。
このプロトコールの目的では、以下の基準のいずれかが満たされた場合、結果は、任意の用量でのrhASMの用量制限毒性(DLT)の可能性を示すものと考えられ得る。
・医師によってrhASMに関連していると判断された重篤有害事象(SAE)、または
・総ビリルビンが次の投与の直前に2.0mg/dLを超えたままである、または
・医師の意見では、投与用量でのrhASMの安全性に関して懸念をもたらす有害事象(AE)。
【0249】
関連有害事象の重症度は医師によって評価される。軽度の関連有害事象は通常一時的で、最小限の治療または治療的介入のみ必要とされる可能性がある。中等度の関連有害事象は通常、追加的な特定治療的介入で軽減される。この事象は、毎日の日常活動を妨げ、不快感を引き起こすが、被験者に著しいまたは永久的な危害のリスクをもたらすことはない。重篤有害事象は、毎日の日常活動を中断させるか、または臨床状態に著しく影響を及ぼすか、または集中的な治療的介入を必要とすることがある。
【0250】
用量を漸増し、第16週までに1.0mg/kgのrhASMに安全に忍容性を示した患者はすべて、脾臓体積別(正常の12倍未満と12倍以上)に階層化し、以下のいずれかに1:1の割合で無作為化できる。
・1.0mg/kgのrhASM(または最大耐量)を2週間ごとに26週間投与継続するか、または
・2.0mg/kgおよび3.0mg/kgへとrhASM用量漸増(DE)を継続し、その後rhASM 3.0mg/kg(または最大耐量)を2週間ごとに26週間投与する。
【0251】
二次DE段階中、3.0mg/kg投与群に無作為化された患者は、3.0mg/kg(または最大耐量、図7参照)で26週間のDM段階を開始する前に、4週間で rhASM用量を3.0mg/kgまで漸増しなければならない。
【0252】
一次DE段階は、各患者に対する期間が約6~16週間の範囲である。これは、rhASMの用量漸増中に患者が経験する、個々の患者の忍容性の問題(もしある場合)に依存する。一次DE段階中、各患者は、rhASM用量を2週間ごとに0.1mg/kgから1.0mg/kg(図7に示す)まで漸増することができる。
【0253】
一次DE段階は、患者がrhASMの用量1.0mg/kgを投与され忍容性を示した時、または第16週に達した時のどちらか早い時点で完了され得る。用量の再投与または用量の減量につながる基準を満たさない場合、患者は各用量の単回注入を受け(すなわち、合計4回のrhASM注入)、6週間の一次DE段階に入ることができる。しかし、用量の再投与または用量の減量につながる基準を満たした場合は、一次DE段階の長さは6週間を超えることができるが、16週間を超えることはできない。
【0254】
用量を漸増し、第16週までに1.0mg/kgに安全に忍容性を示した患者は、2つの標的用量群(すなわち、rhASM 1.0mg/kgまたは3.0mg/kg)のうち1つの群に割り当てることができる。
【0255】
3.0mg/kgのrhASMに無作為化された患者は、2回の注入から成る二次DE段階に入ることができる(図7参照)。この段階で、第一の注入(すなわち、2.0mg/kg)は最初の耐量1.0mg/kgの2週間後、第二の注入(すなわち、3.0mg/kgまたは最大耐量)は、最初の耐量1.0mg/kgの4週間後に実施される。従って、二次DE段階は、最初の耐量1.0mg/kgの4週間後に完了することができる。再投与は許可されない。患者が2.0mg/kgの最初の用量に耐えられない場合、rhASMの第二の用量は、最大耐量(すなわち、1.0mg/kg)まで減少するか、または用量制限毒性(DLT)の可能性がある場合は一時的に中断することができる。
【0256】
患者には、一次治療期間の26週間DM段階中、引き続き最大耐量または無作為化用量のrhASMを2週間ごとにIV投与できる。これは、無作為化および非無作為化患者の両方を含むことができる。
【0257】
図7に示されるように、1.0mg/kg用量群の患者は、無作為化後、1.0mg/kgの最初の用量でDM段階を開始することができるが、3.0mg/kg用量群の患者は、無作為化後、rhASMの第三の用量でDMを開始することができる。その後のrhASM用量は、すべての無作為化患者に対し、DM段階の26週間の間、2週間ごとにIV投与できる。
【0258】
非無作為化患者は、16週間のDE段階の2週間後に、DM段階をrhASMの最初の用量で開始できる。これらの患者は、合計26週間、2週間ごとに、rhASMの最大耐量(1.0mg/kg未満)を継続できる。
【0259】
無作為化患者が、DM段階での注入中に、中等度/重度の関連AE(すなわち、注入に関連する反応(IAR))を経験した場合、患者へのrhASM注入を中止し再開するか(すなわち、中断)、または注入速度を下げることができる。可能性のあるDLTが起こらなかった場合は、患者はDM段階の残りの期間、rhASMのこの用量を継続できる。
【0260】
第26週のすべてのプロトコール評価が完了した後、すべての患者(非無作為化患者を含む)は、長期治療期間に入り、少なくとも182週間[3.5年]の間、またはプロトコールの終了まで、2週間ごとにIVでのrhASM治療を(DM段階中に投与されたrhASM用量で)継続できる。長期治療期間には、プロトコール完了(または患者の離脱/中止)来院および安全性フォローアップのための電話(rhASMの最後の投与後30~37日)を含む。rhASMの個々の患者用量は、一次治療期間分析の結果に基づいて、長期治療期間で調整し得る。必要な用量漸増は前述のように行なうことができる。
【0261】
9.3.治療
患者は、0.1、0.3、0.6および1.0mg/kgのrhASMの静脈内注入を、一次DE段階の間、2週間ごとに投与される。3.0mg/kgのrhASMに無作為化された患者は、3.0mg/kg(または最大耐量)を投与される前、二次DE段階中の2週間後に2.0mg/kgを投与される。26週間のDM段階の間、患者は、DE段階に続いて2週間ごとに1.0mg/kgまたは3.0mg/kg(または最大耐量)を投与される。長期治療期間の間、DM段階で投与されたrhASM用量が2週間ごとにIV投与される。
【0262】
患者は、用量に応じて、約35~135分かけてrhASMの各静脈内注入を受ける(以下の表9を参照)。プロトコール治療薬(rhASM)は、標準的なプログラム可能注入ポンプおよび0.22ミクロンの低タンパク質結合性インラインフィルターを使用して注入される。mg/kgで用量を計算するためには、体格指数(BMI) ≦30(体重kg)/(身長m)の患者では実際の体重を使用し、BMI >30の患者では、患者の身長を使用してBMIの30に対応する体重を計算する。
【0263】
【表9】


【0264】
臨床エンドポイントは、rhASMの最大耐量または無作為化用量の26週間投与後、正常に対する脾臓体積の倍数(磁気共鳴画像法で測定)のベースラインからの変化率(%)として測定できる。有効性の二次エンドポイントには、肝臓体積(MRIで測定)、肺画像化(高解像度コンピュータ断層撮影および胸部X線による)、肺機能検査(一酸化炭素肺拡散能力の予測パーセント、努力肺活量の予測パーセント、1秒量、および全肺気量を含む)、サイクルエルゴメータ運動負荷試験法による運動能力(パーセント予想最大作業負荷、ピーク酸素消費量、および二酸化炭素産生量を含む)、医師用グローバル・アセスメントの変化、血清キトトリオシダーゼ、CCL18、およびACEなどの有効性バイオマーカー、血小板数、ヘモグロビンレベルなどの血液学パラメータを含む。有効性評価は、空腹時脂質、凝固検査、疾患関連バイオマーカー、医療効果指標、および患者の写真も含み得る。
【0265】
安全性評価は、用量投与の前、投与中および/または投与後に実施できる。実施し得る安全性評価には以下を含む:神経学的評価を伴う身体検査、バイタルサイン(例えば、収縮期と拡張期血圧、体温、心拍数、呼吸数および酸素飽和度)、ECG、ドップラー付きCHO、血液化学(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、塩化物、血液尿窒素、クレアチニン、尿酸、ALT、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、総ビリルビン、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルカリホスフェート、総タンパク質、アルブミン、グルコース、コレステロールなど)、血液学(例えば、全血球計算値)、尿検査、ガンに関連するバイオマーカーのバイオマーカー分析、ホルモン、サイトカイン(例えば、IL-8およびIL-6)、心血管のリスク、急性期反応物および他の細胞プロセス、血清抗rhASM IgG濃度、血清抗rhASM IgE濃度、血清トリプターゼ活性、および過敏反応の皮膚試験。さらに、薬物動態および薬力学評価は、投与前、投与中および/または投与後に実施できる。例えば、スフィンゴミエリンレベルは、肝臓および皮膚で生検によって、血漿およびDBSでタンデム質量分析によって評価できる。
【0266】
本明細書に引用されているすべての参考文献は、参照によりその全体およびすべての目的が、それぞれの個別の出版物または特許または特許出願が、その全体およびすべての目的が参照により組み込まれることを具体的かつ個別に示されたのと同じ程度で本明細書に組み込まれる。
【0267】
本発明は、本明細書に記載された具体的な実施態様によって範囲を制限されないものとする。もちろん、記載されているものに加えて、本発明のさまざまな変更が、前述の説明および添付の図から当業者には明らかとなるであろう。このような変更は、添付の請求項の範囲内に入ることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0268】
図1図1はプロトコールデザインの図的表現である。
図2図2は、以下に記述されているプロトコールに登録された患者の人口統計学およびベースライン特性を示した表である。
図3A図3Aは、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者の経時的なセラミドの血漿レベルを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図3B図3Bは、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者の経時的なスフィンゴミエリンの血漿レベルを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図3C図3Cは、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者の経時的な乾燥血液スポットのスフィンゴミエリンレベルを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図4図4は、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定された総ビリルビンレベルを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図5A図5Aは、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定されたCRP/hs-CRPのレベルを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図5B図5Bは、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定された好中球のパーセントを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図5C図5Cは、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定されたフィブリノーゲンを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図5D図5Dは、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定されたフェリチンを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図5E図5Eは、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定されたIL-8を示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図5F図5Fは、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定されたIL-6を示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図5G図5Gは、プロトコールの間、rhASMの異なる用量を投与された異なる患者で、経時的に測定されたカルシトニンを示すグラフである。グラフの右軸は、患者番号とrhASMの投与量を示す。
図6図6は、それぞれが異なるrhASM用量を投与された4人の患者の治療中に発生した有害事象の表である。
図7図7は、初期治療期間を示すダイアグラムであり、ASMDを持つ患者の用量漸増および用量維持段階、フェーズ2(第2相試験)のrhASM反復用量プロトコールから成る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7
【配列表】
2024026214000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明