IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオエヌテック アーゲーの特許一覧

特開2024-26224免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法
<>
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図1A
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図1B
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図1C
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図2
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図3
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図4
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図5A
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図5B
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図5C
  • 特開-免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法 図5D
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026224
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を予測する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20240220BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
A61P35/00
A61P37/04
A61K48/00
A61K39/00 H
A61K31/7088
A61K38/17
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202429
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2019568031の分割
【原出願日】2018-06-01
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/064140
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509146023
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH SE
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチド、特に腫瘍関連ネオ抗原が、ワクチン接種などの免疫療法のために有用なエピトープ、特に腫瘍関連ネオエピトープを含むかどうかを予測する方法を提供する。
【解決手段】免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/またはMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを確認することを含む方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/またはMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを確認することを含む方法。
【請求項2】
前記異なるクラスのMHC分子がMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子であり、ならびに/または前記異なるMHCクラスに拘束されたT細胞がCD4+およびCD8+T細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されること、および/またはMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、同じMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認することを含む方法。
【請求項5】
前記異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
同じMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを確認することを含む方法。
【請求項8】
前記同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子であり、および/または前記同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞が異なるCD8+T細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されること、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、
(i)前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/またはMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを確認すること、
(ii)同じMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認すること、ならびに/または
(iii)前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを確認すること
の1つ以上を確認することを含む方法。
【請求項11】
前記異なるクラスのMHC分子がMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子であり、ならびに/または前記異なるMHCクラスに拘束されたT細胞がCD4+およびCD8+T細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されること、および/または前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子であり、および/または前記同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞が異なるCD8+T細胞である、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されること、および/または前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ペプチドおよび/またはポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドおよび/またはポリペプチドを同定する工程、ならびに
(ii)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/またはMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【請求項18】
前記異なるクラスのMHC分子がMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子であり、ならびに/または前記異なるMHCクラスに拘束されたT細胞がCD4+およびCD8+T細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されること、および/または前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ペプチドおよび/またはポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドおよび/またはポリペプチドを同定する工程、ならびに
(ii)疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【請求項21】
前記異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ペプチドおよび/またはポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドおよび/またはポリペプチドを同定する工程、ならびに
(ii)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【請求項24】
前記同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子であり、および/または前記同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞が異なるCD8+T細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されること、および/または前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ペプチドおよび/またはポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドおよび/またはポリペプチドを同定する工程、ならびに
(ii)(1)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/またはMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、
(2)疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、および/または
(3)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程
の1つ以上を確認する工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【請求項27】
前記異なるクラスのMHC分子がMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子であり、ならびに/または前記異なるMHCクラスに拘束されたT細胞がCD4+およびCD8+T細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されること、および/またはMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子であり、および/または前記同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞が異なるCD8+T細胞である、請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されること、および/または前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
工程(ii)で試験される前記異なるアミノ酸修飾が、同じおよび/または異なるペプチドまたはポリペプチド内に存在する、請求項17から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
工程(ii)で試験された前記異なるアミノ酸修飾について得られたスコアを比較することを含む、請求項17から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患特異的アミノ酸修飾(1または複数)が、疾患特異的体細胞変異(1または複数)によるものである、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患が癌であり、前記免疫療法が抗癌免疫療法である、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記免疫療法が、
(i)少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド、
(ii)(i)の下でのペプチドまたはポリペプチドの断片であって、少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む断片を含むペプチドまたはポリペプチド、および
(iii)(i)または(ii)の下での前記ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸
の1つ以上の投与を含む、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ワクチンを提供するのに有用である、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ワクチンを提供するための方法であって、
(i)請求項1から38のいずれか一項に記載の方法によって免疫療法に有用であると予測される1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を同定する工程、
(ii)(1)免疫療法に有用であると予測される前記疾患特異的アミノ酸修飾の少なくとも1つを含む、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド、
(2)(i)の下でのペプチドまたはポリペプチドの断片であって、免疫療法に有用であると予測される前記疾患特異的アミノ酸修飾の少なくとも1つを含む断片を含むペプチドまたはポリペプチド、および
(3)(i)または(ii)の下でのペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸
の1つ以上を含むワクチンを提供する工程
を含む方法。
【請求項40】
前記断片が、MHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドであるか、またはMHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドを提供するようにプロセシングされ得る、請求項1から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
請求項38から40のいずれか一項に記載の方法に従って生産されるワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチド、特に腫瘍関連ネオ抗原が、ワクチン接種などの免疫療法のために有用なエピトープ、特に腫瘍関連ネオエピトープを含むかどうかを予測する方法に関する。本発明の方法は、特に、患者の腫瘍に特異的なワクチンを提供するため、したがって個別化癌ワクチンに関連して使用され得る。
【背景技術】
【0002】
免疫系の進化は、脊椎動物において2種類の防御:自然免疫と適応免疫に基づく高度に有効なネットワークをもたらした。病原体に関連する一般的な分子パターンを認識する不変受容体に依存する、進化的に古い自然免疫系とは対照的に、適応免疫は、B細胞(Bリンパ球)およびT細胞(Tリンパ球)上の高度に特異的な抗原受容体ならびにクローン選択に基づく。B細胞は抗体の分泌によって体液性免疫応答を惹起するが、T細胞は、認識された細胞の破壊につながる細胞性免疫応答を媒介する。
【0003】
T細胞は、ヒトおよび動物の細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たす。特定の抗原の認識および結合は、T細胞の表面に発現されるT細胞受容体によって媒介される。T細胞のT細胞受容体(TCR)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合し、標的細胞の表面に提示される免疫原性ペプチド(エピトープ)と相互作用することができる。TCRの特異的結合は、増殖および成熟エフェクターT細胞への分化をもたらすT細胞内のシグナルカスケードを開始させる。多種多様な抗原を標的とすることができるためには、T細胞受容体は大きな多様性を有する必要がある。
【0004】
抗原特異的免疫療法は、感染症または悪性疾患を制御するために患者における特異的免疫応答を増強または誘導することを目指す。増加しつつある病原体関連および腫瘍関連抗原の同定は、免疫療法のための適切な標的の幅広いコレクションをもたらした。これらの抗原に由来する免疫原性ペプチド(エピトープ)を提示する細胞は、能動または受動免疫戦略のいずれかによって特異的に標的化され得る。能動免疫は、患者において、疾患細胞を特異的に認識し、死滅させることができる抗原特異的T細胞を誘導し、増殖させる傾向がある。対照的に、受動免疫は、インビトロで増殖させ、任意で遺伝的に操作したT細胞の養子移入(養子T細胞療法;ACT)に基づく。
【0005】
腫瘍ワクチンは、能動免疫によって内因性の腫瘍特異的免疫応答を誘導することを目指す。腫瘍ワクチン接種には、疾患細胞全体、タンパク質、ペプチドまたは患者への移入後に樹状細胞(DC)をパルスすることによってインビボもしくはインビトロで直接適用できるRNA、DNAもしくはウイルスベクターなどの免疫化ベクターを含む、様々な抗原形式を使用することができる。
【0006】
癌の体細胞変異は、治療用ワクチンアプローチのための理想的な標的である(Castle,J.C.et al.Cancer Res.72,1081-1091(2012);Schumacher,T.N.&Schreiber,R.D.Science 348,69-74(2015);Tureci,O.et al.Clin.Cancer Res.22,1885-1896(2016))。それらは、ペプチドにプロセシングされ、腫瘍細胞の表面に提示され、T細胞によってネオエピトープとして認識され得る。ネオエピトープは、中枢性免疫寛容を免れ、健常組織には存在しないため、潜在的に強い免疫原性と自己免疫のより低い可能性を兼ね備える。新たなデータは、チェックポイント遮断(Rizvi,N.A.et al.Science 348,124-128(2015);Snyder,A.et al.N.Engl.J.Med.371,2189-2199(2014);Van Allen,E.M.et al.Science 350,207-211(2015);Le,D.T.et al.N.Engl.J.Med.372,2509-2520(2015);Mcgranahan,N.et al.Science 351,1463-1469(2016))および養子T細胞療法(Tran,E.et al.Science 344,641-645(2014);Robbins,P.F.et al.Nat.Med.19,747-752(2013);Tran,E.et al.N.Engl.J.Med.375,2255-2262(2016))などの臨床免疫療法の良好な臨床結果がネオエピトープの免疫認識に関連することを示している。本発明者らは、マウス腫瘍モデルにおいて、ミュータノーム(すなわち次世代シーケンシングによって同定された体細胞変異の全体)の実質的な割合が免疫原性であり、これらのネオエピトープが好ましくはCD4T細胞によって認識されることを実証した。ミュータノームのデータからインシリコで予測されたネオエピトープからなるワクチンは、強力な抗腫瘍活性を示し、確立された積極的に成長するマウス腫瘍の完全な拒絶を誘導した(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015))。同様に、単独または質量分析と組み合わせたエクソームおよびトランスクリプトーム解析によってマウス腫瘍モデルで同定されたMHCクラスIネオエピトープは、適切なワクチン標的および腫瘍拒絶抗原であると考えられる(Yadav,M.et al.Nature 515,572-576(2014);Gubin,M.M. et al.Nature 515,577-581(2014))。全体として、これらの研究はネオエピトープワクチンに対する強い興味を生み出した(Carreno,B.M. et al.Science 348,803-808(2015);Bobisse,S.,Foukas,P.G.,Coukos,G.&Harari,A.Ann.Transl.Med.4,262(2016);Katsnelson,A.Nat.Med.22,122-124(2016);Delamarre,L.,Mellman,I.&Yadav,M.Science 348,760-1(2015))。
【0007】
ヒト癌では、癌変異の大部分が個々の患者に固有のものであり、したがって個別化治療戦略が必要とされる。各患者について、個人的な癌変異プロフィールを、要求に応じて製造される個別に適合されたワクチンの組成情報を与えるためのディープシーケンシングによって決定する必要がある。
【0008】
本明細書では、III期およびIV期黒色腫の患者におけるこの個別化免疫療法のファーストインヒューマン適用を報告する。通常の腫瘍生検からの個々の変異の包括的な同定のための次世代シーケンシング、潜在的に関連するHLAクラスIおよびクラスIIネオエピトープのコンピュータ予測、ならびに各患者に固有のポリネオエピトープRNAワクチンの設計および製造を含む、臨床開発ガイドラインに準拠した工程を設定する。適格患者は、個別化RNAワクチンが得られるまで、NY-ESO-1およびチロシナーゼRNAからなる共通の腫瘍抗原ワクチンで開始した。合計で、13人の患者が治療を完了し、治療は実行可能で、安全であり、良好に忍容されることが示された。免疫原性率は驚くほど高かった。ネオエピトープの60%がワクチン誘導T細胞によって特異的に認識された。各患者は、その10個の個別ネオ抗原のうち少なくとも3つに応答し、幅広い多様なTCRレパートリが集められた。ワクチン接種の開始から2~4週間後の血液中のネオエピトープ特異的T細胞の頻度は、検出するのにインビトロ増殖を必要とする低い数値から、高い1桁のパーセントまでに及んだ。ワクチン誘導ネオエピトープ反応性T細胞を含む活発な浸潤物および自己腫瘍細胞のネオエピトープ特異的死滅が、ワクチン接種後に切除された黒色腫転移を有する2人の患者で示された。
【0009】
すべての患者における累積の再発性転移事象の臨床評価は、患者の以前の病歴と比較してネオエピトープRNAワクチン接種後に極めて有意の減少を明らかにし、無増悪生存期間が持続する非常に良好な臨床転帰をもたらした。腫瘍の急速な進行のために短期間だけネオエピトープワクチンで治療された複数の転移を有する1人の患者は、その後のPD-1遮断にほぼ即座に応答し、完全な応答を経験した。直接のネオエピトープワクチン治療に関連する客観的な腫瘍退縮が2人の患者で記録された。これらの患者のうちの1人は、進行性転移の完全な応答があり、26ヶ月間持続的な疾患制御を継続した。2人目の患者は客観的な腫瘍応答を経験したが、多特異的で完全に機能性のネオ抗原反応性T細胞の存在にもかかわらず、後になって再発した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Castle,J.C.et al.Cancer Res.72,1081-1091(2012)
【非特許文献2】Schumacher,T.N.&Schreiber,R.D.Science 348,69-74(2015)
【非特許文献3】Tureci,O.et al.Clin.Cancer Res.22,1885-1896(2016)
【非特許文献4】Rizvi,N.A.et al.Science 348,124-128(2015)
【非特許文献5】Snyder,A.et al.N.Engl.J.Med.371,2189-2199(2014)
【非特許文献6】Van Allen,E.M.et al.Science 350,207-211(2015)
【非特許文献7】Le,D.T.et al.N.Engl.J.Med.372,2509-2520(2015)
【非特許文献8】Mcgranahan,N.et al.Science 351,1463-1469(2016)
【非特許文献9】Tran,E.et al.Science 344,641-645(2014)
【非特許文献10】Robbins,P.F.et al.Nat.Med.19,747-752(2013)
【非特許文献11】Tran,E.et al.N.Engl.J.Med.375,2255-2262(2016)
【非特許文献12】Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015)
【非特許文献13】Yadav,M.et al.Nature 515,572-576(2014)
【非特許文献14】Gubin,MM et al.Nature 515,577-581(2014)
【非特許文献15】Carreno,BM et al.Science 348,803-808(2015)
【非特許文献16】Bobisse,S.,Foukas,PG,Coukos,G.&Harari,A.Ann.Transl.Med.4,262(2016)
【非特許文献17】Katsnelson,A.Nat.Med.22,122-124(2016)
【非特許文献18】Delamarre,L.,Mellman,I.&Yadav,M.Science 348,760-1(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
免疫療法のための適切なエピトープの定義は依然として課題である。したがって、エピトープ、特にネオエピトープが免疫療法において有用であるかどうかを予測するためのモデルが必要とされている。
【0012】
ネオエピトープ特異的応答のサブタイピングは、免疫原性ネオエピトープの高頻度のCD4T細胞媒介認識という本発明者らの以前の所見を確認しただけでなく(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015))、ワクチンに使用されたネオエピトープの4分の1に対するCD8T細胞応答も示した。変異に対するCD4応答の優位性は、ペプチドリガンドの組成および長さに関するHLAクラスII分子の無差別性によって説明され得るが、高度に特異的なHLAクラスI分子は、狭い長さ分布の限られたセットのペプチドに結合する(Arnold,P.Y.et al.J.Immunol.169,739-49(2002))。観察されたCTL応答の約3分の2は、それぞれのネオエピトープの異なる位置に対して反応するCD4T細胞によって同時に認識された変異に対するものであった。ワクチンに含まれるすべてのネオエピトープの50%がCD4T細胞応答を示したので、観察された連鎖は、CD4とCD8ネオエピトープ免疫応答の純粋な同時発生ではない可能性が高い。ヘルパーエピトープに共有結合しているCTLエピトープは、より免疫原性が高いことが公知である(Shirai,M.et al.J.Immunol.152,549-556(1994))。CD4T細胞はCD8T細胞ネオエピトープを交差提示するDC上のそれらのリガンドを認識し、CD40L媒介のDC活性化によってコグネイトT細胞の補助を提供するので、HLAクラスIおよびクラスIIネオエピトープを保有する変異は、CTLプライミングのための機構的に有利な条件を提供する(Schoenberger,S.P.,Toes,R.E.,van der Voort,E.I.,Offringa,R.&Melief,C.J.Nature 393,480-3(1998))。関連して、本発明者らはまた、全く同じ変異が、異なるHLAクラスI拘束性エレメント上に提示され、独立したCD8T細胞によって認識されるネオエピトープを生じさせ得ることも見出した(図3b)。同様に、全く同じエピトープ/拘束性エレメント複合体が、異なるTCRクローン型を有するネオエピトープ特異的T細胞によって認識されることを見出した。これらの所見は、変異特異的T細胞の予想外に幅広いレパートリがネオエピトープワクチン接種によって動員され得、各単一変異がT細胞特異性の多様性を利用することを例示する。
【0013】
要約すると、本明細書に提示される所見は、適切な個別化ネオエピトープワクチン、特に個別化RNAネオエピトープワクチンの定義が、癌患者の広範なネオ抗原特異的T細胞レパートリを明らかにし、そのミュータノームの有効な標的化を可能にし得ることを実証する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/またはMHC分子、好ましくは異なるクラスのMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを確認することを含む方法に関する。
【0015】
一実施形態では、異なるクラスのMHC分子はMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子であり、ならびに/または異なるMHCクラスに拘束されたT細胞はCD4+およびCD8+T細胞である。一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されること、および/または疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。
【0016】
本発明の別の態様は、免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、同じMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認することを含む方法に関する。
【0017】
一実施形態では、異なるT細胞受容体は異なるクローン型である。一実施形態では、同じMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。
【0018】
本発明の別の態様は、免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを確認することを含む方法に関する。
【0019】
一実施形態では、同じクラスの異なるMHC分子は異なるMHCクラスI分子であり、および/または同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞は異なるCD8+T細胞である。一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されること、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。
【0020】
本発明の別の態様は、免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、
(i)疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/またはMHC分子、好ましくは異なるクラスのMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを確認すること、
(ii)同じMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認すること、ならびに/または
(iii)疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを確認すること
の1つ以上を確認することを含む方法に関する。
【0021】
一実施形態では、異なるクラスのMHC分子はMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子であり、ならびに/または異なるMHCクラスに拘束されたT細胞はCD4+およびCD8+T細胞である。一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されること、および/または疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。一実施形態では、異なるT細胞受容体は異なるクローン型である。一実施形態では、同じMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。一実施形態では、同じクラスの異なるMHC分子は異なるMHCクラスI分子であり、および/または同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞は異なるCD8+T細胞である。一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されること、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。
【0022】
本発明の別の態様は、免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ペプチドおよび/またはポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドおよび/またはポリペプチドを同定する工程、ならびに
(ii)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/またはMHC分子、好ましくは異なるクラスのMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法に関する。
【0023】
一実施形態では、異なるクラスのMHC分子はMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子であり、ならびに/または異なるMHCクラスに拘束されたT細胞はCD4+およびCD8+T細胞である。一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されること、および/または疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。
【0024】
本発明の別の態様は、免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ペプチドおよび/またはポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドおよび/またはポリペプチドを同定する工程、ならびに
(ii)疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法に関する。
【0025】
一実施形態では、異なるT細胞受容体は異なるクローン型である。一実施形態では、同じMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。
【0026】
本発明の別の態様は、免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ペプチドおよび/またはポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドおよび/またはポリペプチドを同定する工程、ならびに
(ii)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法に関する。
【0027】
一実施形態では、同じクラスの異なるMHC分子は異なるMHCクラスI分子であり、および/または同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞は異なるCD8+T細胞である。一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されること、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。
【0028】
本発明の別の態様は、免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ペプチドおよび/またはポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドおよび/またはポリペプチドを同定する工程、ならびに
(ii)(1)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/またはMHC分子、好ましくは異なるクラスのMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、
(2)疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程、および/または
(3)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程
の1つ以上を確認する工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法に関する。
【0029】
一実施形態では、異なるクラスのMHC分子はMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子であり、ならびに/または異なるMHCクラスに拘束されたT細胞はCD4+およびCD8+T細胞である。一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されること、および/または疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。一実施形態では、異なるT細胞受容体は異なるクローン型である。一実施形態では、同じMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。一実施形態では、同じクラスの異なるMHC分子は異なるMHCクラスI分子であり、および/または同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞は異なるCD8+T細胞である。一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されること、および/または同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であることは、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す。
【0030】
一実施形態では、工程(ii)で試験される異なるアミノ酸修飾は、同じおよび/または異なるペプチドまたはポリペプチド内に存在する。一実施形態では、本発明の方法は、工程(ii)で試験された異なるアミノ酸修飾について得られたスコアを比較することを含む。
【0031】
本発明のすべての態様の一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾(1または複数)は、疾患特異的体細胞変異(1または複数)によるものである。本発明のすべての態様の一実施形態では、疾患は癌であり、免疫療法は抗癌免疫療法である。本発明のすべての態様の一実施形態では、免疫療法は、
(i)少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド、
(ii)(i)の下でのペプチドまたはポリペプチドの断片であって、少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む断片を含むペプチドまたはポリペプチド、および
(iii)(i)または(ii)の下でのペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸
の1つ以上の投与を含む。本発明のすべての態様の一実施形態では、本発明の方法は、ワクチンを提供するのに有用である。
【0032】
本発明の別の態様は、ワクチンを提供するための方法であって、
(i)本発明の方法のいずれかによって免疫療法に有用であると予測される1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を同定する工程、
(ii)(1)免疫療法に有用であると予測される疾患特異的アミノ酸修飾の少なくとも1つを含む、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド、
(2)(i)の下でのペプチドまたはポリペプチドの断片であって、免疫療法に有用であると予測される疾患特異的アミノ酸修飾の少なくとも1つを含む断片を含むペプチドまたはポリペプチド、および
(3)(i)または(ii)の下でのペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸
の1つ以上を含むワクチンを提供する工程
を含む方法に関する。
【0033】
本発明のすべての態様の一実施形態では、断片は、MHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドであるか、またはMHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドを提供するようにプロセシングされ得る(例えばMHC結合予測は、断片がMHCに結合することを示す)。
【0034】
本発明の別の態様は、本発明の方法に従って生産されるワクチンに関する。本発明に従って提供されるワクチンは、薬学的に許容される担体を含んでもよく、任意で1つ以上のアジュバント、安定剤などを含んでもよい。ワクチンは、治療用または予防用ワクチンの形態であり得る。
【0035】
本発明のすべての態様の一実施形態では、免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性の指示は、疾患特異的アミノ酸修飾を含む疾患細胞で発現されるペプチドもしくはポリペプチド、またはその断片を含むペプチドもしくはポリペプチド、例えば投与時に疾患特異的アミノ酸修飾を含むエピトープまたはワクチン配列(場合によりコード核酸の形態)が免疫応答を誘導することを示す。
【0036】
本発明のすべての態様の一実施形態では、ペプチドまたはポリペプチド内のアミノ酸修飾は、1つ以上のコード領域内の非同義変異を同定することによって同定される。一実施形態では、アミノ酸修飾は、1つ以上の癌細胞および場合により1つ以上の非癌性細胞などの1つ以上の細胞のゲノムまたはトランスクリプトームを部分的または完全に配列決定し、1つ以上のコード領域内の変異を同定することによって同定される。一実施形態では、前記変異は体細胞変異である。一実施形態では、前記変異は癌変異である。
【0037】
本発明のすべての態様の一実施形態では、特に癌患者などの患者に個別化ワクチンを提供するために、修飾(1または複数)が前記患者に存在し、本発明の方法が前記患者に対して実施される。
【0038】
本発明の別の態様は、本発明に従って提供されるワクチンを患者に投与することを含む、患者において免疫応答を誘導する方法に関する。
【0039】
本発明の別の態様は、
(a)本発明による方法を用いてワクチンを提供する工程;および
(b)ワクチンを患者に投与する工程
を含む、患者を治療する方法に関する。
【0040】
本発明の別の態様は、本明細書に記載のワクチンを患者に投与することを含む、患者を治療する方法に関する。
【0041】
一実施形態では、患者は癌患者であり、ワクチンは、その投与が癌特異的ネオエピトープを提供するワクチンなどの抗癌ワクチンである。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の治療方法において使用するための、特に癌を治療または予防するのに使用するための、本明細書に記載のワクチンを提供する。
【0043】
本明細書に記載の癌の治療は、外科的切除および/または放射線および/または従来の化学療法と組み合わせることができる。
【0044】
本発明はまた、以下に関する:
1.疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であるかどうかを予測する方法であって、疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうかを判定することを含む方法。
【0045】
2.異なるクラスのMHC分子がMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子である、項目1に記載の方法。
【0046】
3.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されることが、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目1または2に記載の方法。
【0047】
4.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを判定することをさらに含む、項目1から3のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
5.疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であるかどうかを予測する方法であって、疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを判定することを含む方法。
【0049】
6.異なるMHCクラスに拘束されたT細胞がCD4+およびCD8+T細胞である、項目4または5に記載の方法。
【0050】
7.異なるMHCクラスに拘束されたT細胞による、MHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目4から6のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
8.疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であるかどうかを予測する方法であって、疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを判定することを含む方法。
【0052】
9.異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、項目8に記載の方法。
【0053】
10.異なるT細胞受容体を有するT細胞による、同じMHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目8または9に記載の方法。
【0054】
11.疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であるかどうかを予測する方法であって、疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうかを判定することを含む方法。
【0055】
12.同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子である、項目11に記載の方法。
【0056】
13.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されることが、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目11または12に記載の方法。
【0057】
14.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを判定することをさらに含む、項目11から13のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
15.疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であるかどうかを予測する方法であって、疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを判定することを含む方法。
【0059】
16.同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子である、項目14または15に記載の方法。
【0060】
17.同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞が異なるCD8+T細胞である、項目14から16のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
18.同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞による、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目14から17のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
19.疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であるかどうかを予測する方法であって、
(i)疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうかを判定すること、
(ii)疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを判定すること、
(iii)疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを判定すること、
(iv)疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうかを判定すること、および
(v)疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを判定すること
の1つ以上を判定することを含む方法。
【0063】
20.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、およびMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを判定することを含む、項目19に記載の方法。
【0064】
21.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを判定することを含む、項目19または20に記載の方法。
【0065】
22.異なるクラスのMHC分子がMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子である、項目19から21のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
23.異なるMHCクラスに拘束されたT細胞がCD4+およびCD8+T細胞である、項目19から22のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
24.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されることが、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目19から23のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
25.異なるMHCクラスに拘束されたT細胞による、MHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目19から24のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
26.異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、項目19から25のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
27.異なるT細胞受容体を有するT細胞による、同じMHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目19から26のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
28.同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子である、項目19から27のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
29.同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞が異なるCD8+T細胞である、項目19から28のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
30.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されることが、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目19から29のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
31.同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞による、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目19から30のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
32.免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるポリペプチドを同定する工程、および
(ii)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうかを判定する工程、および
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【0076】
33.異なるクラスのMHC分子がMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子である、項目32に記載の方法。
【0077】
34.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されることが、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目32または33に記載の方法。
【0078】
35.工程(ii)が、疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを判定することをさらに含む、項目32から34のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
36.免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるポリペプチドを同定する工程、および
(ii)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを判定する工程、および
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【0080】
37.異なるMHCクラスに拘束されたT細胞がCD4+およびCD8+T細胞である、項目35または36に記載の方法。
【0081】
38.異なるMHCクラスに拘束されたT細胞による、MHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目35から37のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
39.免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるポリペプチドを同定する工程、および
(ii)疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを判定する工程、および
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【0083】
40.異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、項目39に記載の方法。
【0084】
41.異なるT細胞受容体を有するT細胞による、同じMHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目39または40に記載の方法。
【0085】
42.免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるポリペプチドを同定する工程、および
(ii)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうかを判定する工程、および
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【0086】
43.同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子である、項目42に記載の方法。
【0087】
44.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されることが、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目42または43に記載の方法。
【0088】
45.工程(ii)が、同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを判定することをさらに含む、項目42から44のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
46.免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるポリペプチドを同定する工程、および
(ii)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを判定する工程、および
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【0090】
47.同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子である、項目46に記載の方法。
【0091】
48.同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞が異なるCD8+T細胞である、項目45から47のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
49.同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞による、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目45から48のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
50.免疫療法における有用性について疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
(i)各ポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるポリペプチドを同定する工程、および
(ii)(1)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうかを判定する工程、
(2)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、MHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを判定する工程、
(3)疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの断片が、同じMHC分子に関連して提示された場合に、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを判定する工程、
(4)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうかを判定する工程、および
(5)同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを判定する工程
の1つ以上を判定する工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程
を含む方法。
【0094】
51.工程(ii)が、同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるかどうか、およびMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性であるかどうかを判定することを含む、項目50に記載の方法。
【0095】
52.工程(ii)が、同じ疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるかどうか、および同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性であるかどうかを判定することを含む、項目50または51に記載の方法。
【0096】
53.異なるクラスのMHC分子がMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子である、項目50から52のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
54.異なるMHCクラスに拘束されたT細胞がCD4+およびCD8+T細胞である、項目50から53のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
55.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が異なるクラスのMHC分子に関連して提示されることが、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目50から54のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
56.異なるMHCクラスに拘束されたT細胞による、MHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目50から55のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
57.異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、項目50から56のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
58.異なるT細胞受容体を有するT細胞による、同じMHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目50から57のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
59.同じクラスの異なるMHC分子が異なるMHCクラスI分子である、項目50から58のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
60.同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞が異なるCD8+T細胞である、項目50から59のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
61.疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片が同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されることが、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目50から60のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
62.同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞による、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合の疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの同じまたは異なる断片に対するT細胞反応性が、疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、項目50から61のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
63.工程(ii)で試験されるアミノ酸修飾が同じポリペプチド内に存在する、項目32から62のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
64.工程(ii)で試験されるアミノ酸修飾が異なるポリペプチド内に存在する、項目32から63のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
65.工程(ii)で試験された異なるアミノ酸修飾について得られたスコアを比較することを含む、項目32から64のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
66.疾患特異的アミノ酸修飾(1または複数)が、疾患特異的体細胞変異(1または複数)によるものである、項目1から65のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
67.疾患が癌であり、免疫療法が抗癌免疫療法である、項目1から66のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
68.免疫療法が、
(i)少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるポリペプチド、
(ii)(i)の下でのポリペプチドの断片であって、少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む断片を含むポリペプチド、および
(iii)(i)または(ii)の下でのポリペプチドをコードする核酸
の1つ以上の投与を含む、項目1から67のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
69.ワクチンを提供するのに有用な、項目1から68のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
70.ワクチンを提供する方法であって、
(i)項目1から69のいずれか1つに記載の方法によって、免疫療法に有用であると予測される1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を同定する工程、
(ii)(1)免疫療法に有用であると予測される疾患特異的アミノ酸修飾の少なくとも1つを含む、疾患細胞で発現されるポリペプチド、
(2)(i)の下でのポリペプチドの断片であって、免疫療法に有用であると予測される疾患特異的アミノ酸修飾の少なくとも1つを含む断片を含むポリペプチド、および
(3)(i)または(ii)の下でのポリペプチドをコードする核酸
の1つ以上を含むワクチンを提供する工程
を含む方法。
【0114】
71.断片が、MHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドであるか、またはMHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドを提供するようにプロセシングされ得る、項目1から70のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
72.項目69から71のいずれか1つに記載の方法に従って生産されるワクチン。
【0116】
73.項目1から68のいずれか1つに記載の方法に従って同定された疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸を含む免疫原性組成物を投与することを含む、癌を治療する方法。
【0117】
74.前記免疫原性組成物がワクチンである、項目73に記載の方法。
【0118】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本発明を以下で詳細に説明するが、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0120】
以下において、本発明の要素を説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらは、追加の実施形態を創製するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および好ましい実施形態は、本発明を明確に記述される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明確に記述される実施形態を任意の数の開示される要素および/または好ましい要素と組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願において記述されるすべての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、本出願の説明によって開示されているとみなされるべきである。
【0121】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)",H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,(1995)Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerlandに記載されているように定義される。
【0122】
本発明の実施は、特に指示されない限り、当技術分野の文献(例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)で説明されている生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
【0123】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈上特に必要とされない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含を意味するが、いかなる他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の排除も意味しないと理解され、しかしいくつかの実施形態では、そのような他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群が排除され得る、すなわち主題は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含に存する。本発明の説明に関連して(特に特許請求の範囲に関連して)使用される「1つの」および「その」という用語および同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別々の値を個別に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。
【0124】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「等」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図し、特許請求される本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0125】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される資料(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書等を含む)の各々は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のためにそのような開示に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。
【0126】
本発明は、疾患細胞に存在するタンパク質またはタンパク質断片を疾患細胞の標識として利用し、疾患細胞を標的とすることによる、疾患、特に癌疾患の免疫療法を想定する。特に、疾患細胞は、MHCに関連して疾患細胞の表面に提示されるタンパク質の断片を標的とすることによって標的化され得る。具体的には、本発明は、免疫療法に適したペプチドまたはポリペプチドの断片内に位置する、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド中の疾患特異的アミノ酸修飾を定義することを目的とする。1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を含むそのような断片は、免疫療法、特に疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドおよび前記ペプチドまたはポリペプチドの断片を発現する疾患細胞に対する効率的な細胞性免疫応答を惹起するのに適したネオエピトープであるか、またはそれを含む。疾患特異的アミノ酸修飾を含む適切な断片が同定されると、この断片(場合により、より大きなポリペプチドの一部として)または断片(場合により、より大きなポリペプチドの一部として)をコードする核酸を、特にMHCに関連して提示された場合に修飾ペプチドまたはポリペプチドを発現する細胞を認識するT細胞などの適切なエフェクター細胞を誘導および/または活性化することによって、断片が由来する修飾ペプチドまたはポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答を増強または誘導するために、ワクチンとして使用し得る。
【0127】
本発明によれば、1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を含み、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチドは、本明細書では「ネオ抗原」とも称される。さらに、本発明によれば、例えば、特にMHC分子に関連して提示された場合に、T細胞によって認識され、好ましくは本発明の方法によって免疫療法に有用であると決定された、1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を含むネオ抗原の断片(場合により、より大きなポリペプチドの一部として、例えばネオ抗原または人工ペプチドもしくはポリペプチドの一部として、例えば本発明の方法によって免疫療法に有用であると決定されたネオエピトープの2つ以上を含むマルチエピトープポリペプチドの一部として)は、本明細書では「ネオエピトープ」とも称される。
【0128】
本発明によれば、疾患特異的アミノ酸修飾は、好ましくは1つ以上の疾患特異的体細胞変異によるものである。特に好ましい一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾は癌特異的アミノ酸修飾であり、疾患特異的体細胞変異は癌特異的体細胞変異である。したがって、本発明によれば、ワクチンは、好ましくは患者の疾患特異的アミノ酸修飾/疾患特異的体細胞変異を特徴とし、好ましくは投与時に1つ以上の変異に基づくネオエピトープを提供する。したがって、ワクチンは、1つ以上の変異に基づくネオエピトープを含むペプチドもしくはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を含み得る。一実施形態では、疾患特異的アミノ酸修飾は、疾患特異的体細胞変異を同定することによって、例えば疾患組織または1つ以上の疾患細胞のゲノムDNAおよび/またはRNAを配列決定することによって同定される。
【0129】
本発明によれば、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって共有結合で連結された2個以上、好ましくは3個以上、好ましくは4個以上、好ましくは6個以上、好ましくは8個以上、好ましくは10個以上、好ましくは13個以上、好ましくは16個以上、好ましくは21個以上、および好ましくは8、10、20、30、40または50個、特に100個までのアミノ酸を含む物質を指す。「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは100個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書では互換的に使用される。
【0130】
本発明によれば、「疾患特異的アミノ酸修飾」という用語は、疾患細胞のペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列に存在するが、対応する正常な、すなわち非疾患細胞のペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列には存在しないアミノ酸修飾に関する。
【0131】
本発明によれば、「腫瘍特異的アミノ酸修飾」または「癌特異的アミノ酸修飾」という用語は、腫瘍または癌細胞のペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列に存在するが、対応する正常な、すなわち非腫瘍性または非癌性細胞のペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列には存在しないアミノ酸修飾に関する。
【0132】
本発明によれば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に関する「修飾」という用語は、野生型ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列などの親配列と比較したペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質における配列変化に関する。この用語には、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体およびアミノ酸置換変異体、好ましくはアミノ酸置換変異体が含まれる。本発明によるこれらの配列変化はすべて、潜在的に新しいエピトープを生成し得る。
【0133】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。
【0134】
アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、4、5、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。
【0135】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、4、5、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。
【0136】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。
【0137】
本発明によれば、疾患特異的アミノ酸修飾またはエピトープもしくはワクチン配列などの疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチド断片は、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドに由来し得る。
【0138】
「由来する」という用語は、本発明によれば、特定のアミノ酸配列などの特定の実体が、それが由来する物体に存在することを意味する。アミノ酸配列、特に特定の配列領域の場合、「由来する」は、特に、関連するアミノ酸配列が、それが存在するアミノ酸配列に由来することを意味する。
【0139】
本発明によれば、本明細書に記載のペプチドまたはポリペプチドは、好ましくは1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を含む。一実施形態では、これらの1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾は、ペプチドまたはポリペプチドのエピトープまたは潜在的エピトープ内に位置する。したがって、本明細書に記載の好ましいペプチドまたはポリペプチドは、好ましくは1つ以上のネオエピトープを含むネオ抗原である。同様に、本明細書に記載の好ましいペプチドまたはポリペプチド断片は、1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片であり、1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾が断片内に位置する。したがって、本明細書に記載の好ましいペプチドまたはポリペプチド断片はネオエピトープである。
【0140】
本発明によれば、「疾患特異的変異」という用語は、疾患細胞の核酸に存在するが、対応する正常な、すなわち非疾患細胞の核酸には存在しない体細胞変異に関する。
【0141】
本発明によれば、「腫瘍特異的変異」または「癌特異的変異」という用語は、腫瘍または癌細胞の核酸に存在するが、対応する正常な、すなわち非腫瘍性または非癌性細胞の核酸には存在しない体細胞変異に関する。「腫瘍特異的変異」および「腫瘍変異」という用語、ならびに「癌特異的変異」および「癌変異」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0142】
「免疫応答」という用語は、免疫系の反応に関する。「免疫応答」という用語には、自然免疫応答と適応免疫応答が含まれる。好ましくは、免疫応答は免疫細胞の活性化に関連し、より好ましくは細胞性免疫応答に関連する。
【0143】
本明細書に記載の組成物によって誘導される免疫応答は、樹状細胞および/またはマクロファージなどの抗原提示細胞の活性化、前記抗原提示細胞による抗原またはその断片の提示、ならびにこの提示による細胞傷害性T細胞の活性化の工程を含むことが好ましい。
【0144】
「免疫応答を誘導する」とは、誘導前には免疫応答が存在しなかったことを意味し得るが、誘導前に一定レベルの免疫応答が存在しており、誘導後に前記免疫応答が増強されることも意味し得る。したがって、「免疫応答を誘導する」には「免疫応答を増強する」ことも含まれる。好ましくは、被験体において免疫応答を誘導した後、前記被験体は癌疾患などの疾患を発症することから保護されるか、または免疫応答を誘導することによって疾患状態が改善される。例えば、腫瘍発現抗原に対する免疫応答は、癌疾患を有する患者、または癌疾患を発症する危険性のある被験体において誘導され得る。この場合の免疫応答の誘導は、被験体の疾患状態が改善されること、被験体が転移を発症しないこと、または癌疾患を発症する危険性がある被験体が癌疾患を発症しないことを意味し得る。
【0145】
「細胞性免疫応答」および「細胞性応答」という用語または同様の用語は、「ヘルパー」または「キラー」として作用するT細胞またはTリンパ球が関与するクラスIまたはクラスII MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に対する免疫応答を指す。ヘルパーT細胞(CD4T細胞とも称される)は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8T細胞またはCTLとも称される)は、癌細胞などの疾患細胞を死滅させ、さらなる疾患細胞の産生を防止する。好ましい実施形態では、本発明は、1つ以上の疾患関連抗原を発現し、好ましくはそのような疾患関連抗原をクラスI MHCと共に提示する疾患細胞に対する抗疾患CTL応答、特に1つ以上の腫瘍発現抗原を発現し、好ましくはそのような腫瘍発現抗原をクラスI MHCと共に提示する腫瘍細胞に対する抗腫瘍CTL応答の刺激を含む。
【0146】
本発明によれば、「抗原」または「免疫原」という用語は、免疫応答の標的であるおよび/または免疫応答を惹起する任意の物質、好ましくはペプチドまたはポリペプチドを包含する。特に、「抗原」は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する任意の物質に関する。一実施形態では、「抗原」という用語は、T細胞エピトープなどの少なくとも1つのエピトープを含む分子を含む。好ましくは、本発明に関連して抗原は、場合によりプロセシング後に、好ましくは抗原または抗原を発現する細胞に特異的な免疫反応を誘導する分子である。本発明の実施形態に関連して、抗原は、好ましくは細胞、好ましくは抗原提示細胞によって、MHC分子に関連して提示され、抗原または抗原を発現する細胞に対する免疫反応をもたらす。
【0147】
「疾患関連抗原」という用語は、その最も広い意味で使用され、疾患に関連する任意の抗原を指す。一実施形態では、疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激して疾患細胞に対する細胞性免疫応答を生じさせる1つ以上のエピトープを含む分子である。したがって、疾患関連抗原は治療目的に使用され得る。疾患関連抗原は、癌、典型的には腫瘍に関連し得る。
【0148】
本発明によれば、「ネオ抗原」という用語は、親ペプチドまたはポリペプチドと比較して1つ以上のアミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドに関する。例えば、ネオ抗原は腫瘍関連ネオ抗原であり得、「腫瘍関連ネオ抗原」という用語には、腫瘍特異的変異によるアミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドが含まれる。
【0149】
「エピトープ」という用語は、抗原などの分子中の抗原決定基、すなわち、免疫系によって認識される、例えば、特にMHC分子に関連して提示された場合にT細胞によって認識される抗原の一部または断片を指す。ペプチドまたはポリペプチドのエピトープは、好ましくは前記ペプチドまたはポリペプチドの連続または不連続部分を含み、好ましくは5~100、好ましくは5~50、より好ましくは8~30、最も好ましくは10~25アミノ酸長であり、例えばエピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であり得る。一実施形態では、エピトープは、細胞の表面上のMHC分子などのMHC分子に結合し、場合によりT細胞の表面上のT細胞受容体などのT細胞受容体によって認識され得る。したがって、一実施形態では、エピトープは「MHC結合ペプチド」であり、より好ましくは「T細胞エピトープ」である。
【0150】
「主要組織適合遺伝子複合体」という用語および「MHC」という略語は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、すべての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または疾患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質または分子は、ペプチドに結合し、T細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、T細胞に対して自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)と非自己抗原(例えば侵入微生物の断片)の両方を表示する。
【0151】
MHC領域は、クラスI、クラスII、およびクラスIIIの3つのサブグループに分けられる。MHCクラスIタンパク質は、α鎖およびβ2ミクログロブリン(15番染色体によってコードされるMHCの一部ではない)を含有する。それらは、抗原断片を細胞傷害性T細胞に提示する。ほとんどの免疫系細胞、特に抗原提示細胞では、MHCクラスIIタンパク質はα鎖とβ鎖を含み、抗原断片をTヘルパー細胞に提示する。MHCクラスIII領域は、補体成分およびサイトカインをコードするものなどの他の免疫成分をコードする。
【0152】
MHCは、多遺伝子性(いくつかのMHCクラスIおよびMHCクラスII遺伝子が存在する)および多型性(各遺伝子の複数の対立遺伝子が存在する)の両方である。
【0153】
本明細書で使用される場合、「ハプロタイプ」という用語は、1つの染色体上に見出されるMHC対立遺伝子およびそれによってコードされるタンパク質を指す。ハプロタイプはまた、MHC内のいずれか1つの遺伝子座に存在する対立遺伝子を指してもよい。MHCの各クラスは、いくつかの遺伝子座で表される:例えば、クラスIについてはHLA-A(ヒト白血球抗原A)、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-H、HLA-J、HLA-K、HLA-L、HLA-PおよびHLA-V、ならびにクラスIIについてはHLA-DRA、HLA-DRB1-9、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DOA、およびHLA-DOB。「HLA対立遺伝子」および「MHC対立遺伝子」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0154】
MHCは極端な多型を示す:ヒト集団内には、各遺伝子座に、異なる対立遺伝子を含む非常に多数のハプロタイプが存在する。クラスIとクラスIIの両方の異なる多型MHC対立遺伝子は、異なるペプチド特異性を有する:各対立遺伝子は、特定の配列パターンを示すペプチドに結合するタンパク質をコードする。
【0155】
本発明のすべての態様の好ましい一実施形態では、MHC分子はHLA分子である。
【0156】
本明細書で使用される場合、ペプチドまたはエピトープがMHC分子に結合する場合、そのペプチドまたはエピトープは「MHC分子に関連して提示される」と言われる。そのような結合は、当技術分野で公知の任意のアッセイを使用して検出し得る。「MHC結合ペプチド」という用語は、MHCクラスIおよび/またはMHCクラスII分子に結合するペプチドに関する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には8~10アミノ酸長であるが、より長いまたはより短いペプチドも有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には10~25アミノ酸長であり、特に13~18アミノ酸長であるが、より長いおよびより短いペプチドも有効であり得る。本発明のすべての態様の好ましい一実施形態では、MHC分子はHLA分子である。
【0157】
ペプチドまたはエピトープが、例えばワクチン配列またはポリペプチドの追加の配列を含むより大きな実体の一部であり、プロセシング後、特に切断後に提示される場合、プロセシングによって生成されたペプチドまたはエピトープは、MHC分子への結合に適した長さを有する。好ましくは、プロセシング後に提示されるペプチドまたはエピトープの配列は、ワクチン接種に使用される抗原またはポリペプチドのアミノ酸配列に由来する、すなわちその配列は、前記抗原またはポリペプチドの断片に実質的に対応し、好ましくは完全に同一である。
【0158】
したがって、MHC結合ペプチドは、一実施形態では、抗原の断片に実質的に対応し、好ましくは完全に同一である配列を含む。
【0159】
本明細書で使用される場合、「ネオエピトープ」という用語は、正常な非疾患(例えば非癌性)または生殖系列細胞などの参照中には存在しないが、疾患細胞(例えば癌細胞)中に見出されるエピトープを含む。これには、特に、正常な非疾患または生殖系列細胞中に対応するエピトープが見出されるが、疾患細胞の1つ以上の変異のためにエピトープの配列が変化してネオエピトープを生じる状況が含まれる。
【0160】
本明細書で使用される場合、「T細胞エピトープ」という用語は、T細胞受容体によって認識される立体配置でMHC分子に結合するペプチドを指す。典型的には、T細胞エピトープは抗原提示細胞の表面に提示される。本発明によるT細胞エピトープは、好ましくは、免疫応答、好ましくは抗原、または疾患細胞、特に癌細胞などの抗原の発現および好ましくは抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞性応答を刺激することができる抗原の部分または断片に関する。好ましくは、T細胞エピトープは、クラスI MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞性応答を刺激することができ、好ましくは抗原応答性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を刺激することができる。
【0161】
一実施形態では、本発明によるワクチンは、標的生物のワクチン接種に適した1つ以上のネオエピトープを提供する。当業者は、免疫生物学およびワクチン接種の原理の1つが、治療される疾患に関して免疫学的に関連するワクチンで生物を免疫することによって、疾患に対する免疫保護反応が生じるという事実に基づくことを理解する。本発明によれば、抗原は、好ましくは自己抗原である。
【0162】
「免疫原性」という用語は、好ましくは癌に対する治療などの治療的処置に関連する免疫応答を誘導する相対的な有効性に関する。本明細書で使用される場合、「免疫原性の」という用語は、免疫原性を有するという特性に関する。例えば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に関連して使用される場合の「免疫原性修飾」という用語は、前記修飾によって引き起こされるおよび/または前記修飾に対する免疫応答を誘導するための前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の有効性に関する。好ましくは、非修飾ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、免疫応答を誘導しない、異なる免疫応答を誘導する、または異なるレベル、好ましくはより低いレベルの免疫応答を誘導する。
【0163】
本発明によれば、「免疫原性」または「免疫原性の」という用語は、好ましくは生物学的に関連する免疫応答、特にワクチン接種に有用な免疫応答を誘導する相対的有効性に関する。したがって、好ましい一実施形態では、アミノ酸修飾または修飾ペプチドは、被験体において標的修飾に対する免疫応答を誘導する場合、免疫原性であり、この免疫応答は治療または予防目的に有益であり得る。
【0164】
本明細書で使用される場合、「免疫療法のための疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する」または「疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であるかどうかを予測する」という用語は、疾患特異的アミノ酸修飾、特に疾患特異的アミノ酸修飾を含む抗原、または疾患特異的アミノ酸修飾を含む抗原の断片、例えば疾患特異的アミノ酸修飾を含む1つ以上のエピトープ、特に1つ以上のT細胞エピトープを含む抗原の断片が、免疫応答を誘導するまたは免疫応答を標的化するのに有用であるかどうかの予測を指す。「免疫療法に有用であると予測される疾患特異的アミノ酸修飾」という用語または類似の用語は、疾患特異的アミノ酸修飾、特に疾患特異的アミノ酸修飾を含む抗原、または疾患特異的アミノ酸修飾を含む抗原の断片、例えば疾患特異的アミノ酸修飾を含む1つ以上のエピトープ、特に1つ以上のT細胞エピトープを含む抗原の断片が、免疫応答を誘導するまたは免疫応答を標的化するのに有用であると予測されているという事実を指す。疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であると予測される場合、例えば、疾患特異的アミノ酸修飾を含む抗原、または疾患特異的アミノ酸修飾を含む抗原の断片、例えば疾患特異的アミノ酸修飾を含む1つ以上のエピトープ、特に1つ以上のT細胞エピトープを含む抗原の断片を、本明細書に記載のワクチン接種のためまたはワクチンを設計するために使用し得る。
【0165】
本発明によれば、T細胞エピトープなどのエピトープは、複数のエピトープを含むワクチン配列および/またはポリペプチドなどのより大きな実体の一部としてワクチン中に存在し得る。提示されるペプチドまたはエピトープは、適切なプロセシング後に生成される。また、エピトープは、MHCへの結合またはTCR認識に必須ではない1つ以上の残基において修飾され得る。そのような修飾されたエピトープは、免疫学的に等価とみなされ得る。好ましくは、エピトープは、MHCによって提示され、T細胞受容体によって認識されると、適切な共刺激シグナルの存在下で、ペプチド/MHC複合体を特異的に認識するT細胞受容体を担持するT細胞のクローン増殖を誘導することができる。好ましくは、エピトープは、抗原の断片のアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含む。好ましくは、抗原の前記断片は、MHCクラスIおよび/またはクラスII提示ペプチドである。
【0166】
「抗原プロセシング」または「プロセシング」とは、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の、前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の断片であるプロセシング産物への分解(例えばポリペプチドのペプチドへの分解)、および細胞、好ましくは抗原提示細胞による特異的T細胞への提示のためのMHC分子とこれらの断片の1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
【0167】
「抗原提示細胞」(APC)は、その細胞表面にMHC分子と会合したタンパク質抗原のペプチド断片を提示する細胞である。一部のAPCは、抗原特異的T細胞を活性化し得る。
【0168】
プロフェッショナル抗原提示細胞は、食作用または受容体媒介エンドサイトーシスのいずれかによって抗原を内部移行し、次いでクラスII MHC分子に結合した抗原の断片をその膜上に表示することにおいて非常に効率的である。T細胞は、抗原提示細胞の膜上の抗原-クラスII MHC分子複合体を認識し、それと相互作用する。次に、追加の共刺激シグナルが抗原提示細胞によって生成され、T細胞の活性化をもたらす。共刺激分子の発現は、プロフェッショナル抗原提示細胞の決定的な特徴である。
【0169】
プロフェッショナル抗原提示細胞の主な種類は、最も広範囲の抗原提示を有し、おそらく最も重要な抗原提示細胞である樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および特定の活性化上皮細胞である。樹状細胞(DC)は、末梢組織中で捕捉された抗原を、MHCクラスIIおよびIの両方の抗原提示経路によってT細胞に提示する白血球集団である。樹状細胞は免疫応答の強力な誘導因子であり、これらの細胞の活性化が抗腫瘍免疫の誘導の重要な工程であることは周知である。樹状細胞は、「未成熟」細胞および「成熟」細胞として好都合に分類され、これらは、よく特徴付けられた2つの表現型を区別する簡単な方法として使用することができる。しかし、この命名法は、分化のすべての可能な中間段階を排除すると解釈されるべきではない。未成熟樹状細胞は、Fcγ受容体およびマンノース受容体の高発現と相関する、抗原取り込みおよびプロセシングの高い能力を有する抗原提示細胞として特徴付けられる。成熟表現型は、典型的には、これらのマーカーの発現はより低いが、クラスIおよびクラスII MHC、接着分子(例えばCD54およびCD11)ならびに共刺激分子(例えばCD40、CD80、CD86および4-1 BB)などのT細胞活性化に関与する細胞表面分子の発現が高いことを特徴とする。樹状細胞の成熟は、そのような抗原提示樹状細胞がT細胞プライミングを引き起こす樹状細胞活性化の状態と称され、一方未成熟樹状細胞による提示は寛容をもたらす。樹状細胞の成熟は、主に、生得的受容体によって検出される微生物特徴を有する生体分子(細菌DNA、ウイルスRNA、エンドトキシン等)、炎症誘発性サイトカイン(TNF、IL-1、IFN)、CD40Lによる樹状細胞表面のCD40の連結、およびストレスによる細胞死を被っている細胞から放出される物質によって引き起こされる。樹状細胞は、骨髄細胞をインビトロで顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)および腫瘍壊死因子αなどのサイトカインと共に培養することによって得ることができる。
【0170】
ノンプロフェッショナル抗原提示細胞は、ナイーブT細胞との相互作用に必要なMHCクラスIIタンパク質を構成的には発現しない;これらは、IFNγなどの特定のサイトカインによってノンプロフェッショナル抗原提示細胞が刺激されたときにのみ発現される。
【0171】
「抗原の提示を特徴とする細胞」または「抗原を提示する細胞」または同様の表現は、MHC分子、特にMHCクラスI分子に関連して、例えば抗原のプロセシングによって、疾患細胞、例えば癌細胞、または抗原もしくは前記抗原に由来する断片を提示する抗原提示細胞などの細胞を意味する。同様に、「抗原の提示を特徴とする疾患」という用語は、特にクラスI MHCを用いた抗原の提示を特徴とする細胞が関与する疾患を示す。細胞による抗原の提示は、抗原をコードするRNAなどの核酸を細胞にトランスフェクトすることによって達成され得る。
【0172】
「提示される抗原の断片」または同様の表現は、例えば抗原提示細胞に直接加えた場合に、断片がMHCクラスIまたはクラスII、好ましくはMHCクラスIによって提示され得ることを意味する。一実施形態では、断片は、抗原を発現する細胞によって天然に提示される断片である。
【0173】
「標的細胞」とは、細胞性免疫応答などの免疫応答の標的である細胞を意味する。標的細胞には、抗原、すなわち抗原に由来するペプチド断片を提示する細胞が含まれ、癌細胞などの望ましくない細胞が含まれる。好ましい実施形態では、標的細胞は、本明細書に記載の抗原を発現し、好ましくはクラスI MHCと共に前記抗原を提示する細胞である。
【0174】
「部分」という用語は画分を指す。アミノ酸配列またはタンパク質などの特定の構造に関して、その「部分」という用語は、前記構造の連続または不連続な画分を示し得る。好ましくは、アミノ酸配列の一部分は、前記アミノ酸配列のアミノ酸の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%を含む。好ましくは、部分が不連続な画分である場合、前記不連続な画分は、構造の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、またはそれ以上の部分で構成され、各部分は構造の連続要素である。例えば、アミノ酸配列の不連続な画分は、前記アミノ酸配列の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、またはそれ以上、好ましくは4個以下の部分から構成されてもよく、各部分は、好ましくはアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸、少なくとも10個の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも20個の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも30個の連続するアミノ酸を含む。
【0175】
「部分」および「断片」という用語は、本明細書では互換的に使用され、連続要素を指す。例えば、アミノ酸配列またはタンパク質などの構造の一部は、前記構造の連続する要素を指す。構造の一部分、一部、または断片は、好ましくは前記構造の1つ以上の機能的特性を含む。例えば、エピトープ、ペプチドまたはタンパク質の一部分、一部または断片は、好ましくはそれが由来するエピトープ、ペプチドまたはタンパク質と免疫学的に等価である。本発明に関連して、アミノ酸配列などの構造の「一部」は、好ましくは構造全体またはアミノ酸配列の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%を含み、好ましくはそれからなる。
【0176】
本発明に関連して「エフェクター細胞」、「免疫エフェクター細胞」または「免疫反応性細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクター機能を発揮する細胞に関する。「免疫反応性細胞」は、好ましくは、抗原、または抗原もしくはそのペプチド断片(例えばT細胞エピトープ)の提示を特徴とする細胞に結合し、免疫応答を媒介することができる。例えば、そのような細胞は、サイトカインおよび/またはケモカインを分泌し、抗体を分泌し、癌性細胞を認識し、場合により細胞を排除する。例えば、免疫反応性細胞には、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、および樹状細胞が含まれる。好ましくは、本発明に関連して、免疫反応性細胞はT細胞、好ましくはCD4および/またはCD8T細胞である。
【0177】
好ましくは、「免疫反応性細胞」は、特に抗原提示細胞または癌細胞などの疾患細胞の表面などのMHC分子に関連して提示される場合、ある程度の特異性で抗原またはそのペプチド断片を認識する。好ましくは、前記認識は、抗原またはそのペプチド断片を認識する細胞が応答性または反応性になることを可能にする。細胞が、MHCクラスII分子に関連して抗原またはそのペプチド断片を認識する受容体を担持するヘルパーT細胞(CD4T細胞)である場合、そのような応答性または反応性は、サイトカインの放出ならびに/またはCD8リンパ球(CTL)および/もしくはB細胞の活性化を含み得る。細胞がCTLである場合、そのような応答性または反応性は、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介細胞溶解による、MHCクラスI分子に関連して提示される細胞、すなわちクラスI MHCと共に抗原を提示することを特徴とする細胞の排除を含み得る。本発明によれば、CTL応答性は、持続的なカルシウム流動、細胞分裂、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、CD44およびCD69などの活性化マーカーの上方調節、ならびに抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解死滅を含み得る。CTL応答性はまた、CTL応答性を正確に示す人工レポータを使用して判定し得る。抗原または抗原断片を認識し、応答性または反応性であるそのようなCTLは、本明細書では「抗原応答性CTL」とも称される。細胞がB細胞である場合、そのような応答性は免疫グロブリンの放出を含み得る。
【0178】
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。
【0179】
T細胞は、リンパ球として公知の白血球の群に属し、細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たす。これらは、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるこれらの細胞表面上の特別な受容体の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他の種類のリンパ球と区別することができる。胸腺は、T細胞の成熟に関与する主要な器官である。それぞれ別個の機能を有する、T細胞のいくつかの異なるサブセットが発見されている。
【0180】
Tヘルパー細胞は、数ある機能の中でも、B細胞の形質細胞への成熟ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む、免疫学的過程において他の白血球を補助する。これらの細胞は、その表面にCD4タンパク質を発現するため、CD4+T細胞としても公知である。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示された場合に活性化される。ひとたび活性化されると、これらは速やかに分裂し、能動免疫応答を調節または補助するサイトカインと呼ばれる小さなタンパク質を分泌する。
【0181】
細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶反応にも関与する。これらの細胞は、その表面にCD8糖タンパク質を発現するため、CD8+T細胞としても公知である。これらの細胞は、身体のほぼあらゆる細胞の表面上に存在する、MHCクラスIに関連する抗原に結合することによってその標的を認識する。
【0182】
T細胞の大部分は、いくつかのタンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有する。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファおよびベータ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から生成され、α-およびβ-TCR鎖と呼ばれる2つの別々のペプチド鎖で構成されている。γδ T細胞(ガンマデルタT細胞)は、その表面に異なるT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小さなサブセットである。しかし、γδ T細胞では、TCRは1本のγ鎖と1本のδ鎖で構成される。このT細胞の群は、αβ T細胞よりもはるかにまれである(全T細胞の2%)。
【0183】
T細胞の活性化における最初のシグナルは、T細胞受容体が別の細胞上のMHCによって提示される短いペプチドに結合することによって提供される。これは、そのペプチドに特異的なTCRを有するT細胞のみが活性化されることを確実にするパートナー細胞は通常、プロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞であり、ナイーブ応答の場合は通常樹状細胞であるが、B細胞およびマクロファージは重要なAPCであり得る。
【0184】
本発明によれば、分子は、標準的なアッセイにおいて所定の標的に対して有意な親和性を有し、前記所定の標的に結合する場合、前記所定の標的に結合することができる。「親和性」または「結合親和性」は、しばしば平衡解離定数(K)によって測定される。分子は、標準的なアッセイにおいて標的に対して有意な親和性を有さず、前記標的に有意に結合しない場合、前記標的に(実質的に)結合することができない。
【0185】
細胞傷害性Tリンパ球は、インビボで抗原またはそのペプチド断片を抗原提示細胞に取り込むことによってインビボで生成され得る。抗原またはそのペプチド断片は、タンパク質として、DNA(例えばベクター内)として、またはRNAとして表され得る。抗原は、プロセシングされてMHC分子のペプチドパートナーを生成し得るが、その断片はさらなるプロセシングを必要とせずに提示され得る。特にこれらがMHC分子に結合できる場合は、後者に当てはまる。一般に、皮内注射による患者への投与が可能である。しかし、リンパ節への結節内注射も実施し得る(Maloy et al.(2001),Proc Natl Acad Sci USA 98:3299-303)。得られる細胞は、関心対象の複合体を提示し、自己細胞傷害性Tリンパ球によって認識され、その後増殖する。
【0186】
CD4+またはCD8+T細胞の特異的活性化は、様々な方法で検出し得る。特異的T細胞活性化を検出する方法には、T細胞の増殖、サイトカイン(例えばIFNγなどのリンホカイン)の産生、または細胞溶解活性を検出することが含まれる。CD4+T細胞の場合、特異的T細胞活性化を検出する好ましい方法は、T細胞の増殖の検出である。CD8+T細胞の場合、特異的T細胞活性化を検出する好ましい方法は、細胞溶解活性の生成の検出である。特に、細胞内サイトカイン染色またはELISPOTは、例えば本明細書に記載の方法を使用することによって、CD4+およびCD8+T細胞の両方によって産生されるサイトカインの検出に使用することができる。
【0187】
一般に、ELISPOTアッセイでは、検定するサイトカインの特異的エピトープに結合する捕捉抗体で膜の表面を被覆する。細胞が活性化されると共に、サイトカインが放出され、固定化された抗体によって膜表面に直接捕捉される。したがって、サイトカインは、分泌細胞を直接取り囲む領域に「捕捉」される。その後の検出工程は、固定化されたサイトカインを、本質的に活性化された細胞の分泌フットプリントである「免疫スポット」として可視化する。したがって、ELISPOTアッセイ技術は、特異的抗原刺激に応答して所与のサイトカイン(例えばIFNγ)を産生しているT細胞の数および/または頻度を推定することを可能にする。スポット数を複製物から得られた中央値として表し、陰性対照(例えば非刺激細胞)と比較し得る。一定の細胞数あたり最小数のスポットが観察される場合、および/またはスポット数が陰性対照と比較して一定のレベルを超える場合、応答は陽性と定義され得る。例えば、1x10細胞、1x10細胞、または1x10細胞あたり少なくとも5つのスポットが存在する場合、および/またはスポット数がそれぞれの陰性対照の2倍、3倍、4倍、5倍、さらにはそれより高い場合、応答は陽性と定義され得る。
【0188】
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子が、例えば体液性および/もしくは細胞性免疫応答の誘導、誘導される免疫反応の強さおよび/もしくは持続時間、または誘導される免疫反応の特異性などの免疫学的作用の種類に関して、同じもしくは本質的に同じ免疫学的特性を示し、ならびに/または同じもしくは本質的に同じ免疫学的作用を及ぼすことを意味する。本発明に関連して、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは免疫化に使用されるペプチドまたはポリペプチドの免疫学的作用または特性に関して使用される。例えば、アミノ酸配列が被験体の免疫系に曝露されたときに、参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応を誘導する場合、前記アミノ酸配列は参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。
【0189】
本発明に関連して「免疫エフェクター機能」という用語は、例えば腫瘍細胞の死滅、または腫瘍の播種および転移の抑制を含む腫瘍成長の阻害および/もしくは腫瘍発生の阻害をもたらす免疫系の成分によって媒介される任意の機能を含む。好ましくは、本発明に関連して免疫エフェクター機能は、T細胞媒介エフェクター機能である。そのような機能は、ヘルパーT細胞(CD4T細胞)の場合、T細胞受容体によるMHCクラスII分子に関連した抗原または抗原断片の認識、サイトカインの放出、ならびに/またはCD8リンパ球(CTL)および/もしくはB細胞の活性化を含み、CTLの場合は、T細胞受容体によるMHCクラスI分子に関連した抗原または抗原断片の認識、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介細胞溶解による、MHCクラスI分子に関連して提示される細胞、すなわちクラスI MHCと共に抗原を提示することを特徴とする細胞の排除、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、ならびに抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解性死滅を含む。
【0190】
一般に、本発明によれば、疾患特異的アミノ酸修飾および疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチドの断片であって、1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を含む断片を、免疫療法における有用性に関して評価する。免疫療法のための予測される有用性を有する1つ以上の断片は、例えば1つ以上の断片が由来するペプチドもしくはポリペプチド、またはペプチドもしくはポリペプチドの1つ以上のペプチド断片、特にペプチドもしくはポリペプチドの1つ以上の(潜在的な)MHC結合ペプチドを含むワクチンを提供するために使用し得る。ワクチンはまた、1つ以上の断片が由来するペプチドもしくはポリペプチド、またはペプチドもしくはポリペプチドの1つ以上のペプチド断片、特にペプチドもしくはポリペプチドの1つ以上の(潜在的な)MHC結合ペプチドをコードするRNAなどの核酸も含み得る。
【0191】
本発明によれば、「スコア」という用語は、例えばMHC分子上のポリペプチド断片の提示を測定するアッセイ、またはMHC分子上のポリペプチド断片に対するT細胞反応性を測定するアッセイを含む試験またはアッセイの、通常は数値で表される結果に関する。「より良いスコア」または「スコアがより良い」などの用語は、試験またはアッセイのより良い結果または最良の結果に関する。
【0192】
ポリペプチドの提示およびT細胞反応性のレベルは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して測定することができる。ペプチドの提示は、例えば周知の予測方法および実験方法を使用して測定することができる。例えば、MHC-ペプチド親和性を測定するために、多くの生化学的アッセイが開発されてきた。古典的な方法は、通常放射性標識された参照ペプチドをMHCに結合させる競合アッセイである。T細胞反応性アッセイも、MHCペプチド結合を測定するために使用し得る。T細胞反応性は、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISPOT)またはサイトカイン分泌アッセイ(CSA)を含む免疫学的アッセイによって、本明細書に記載されているように評価することができる。
【0193】
本発明によれば、疾患特異的アミノ酸修飾は、(1)異なるクラスのMHC分子に関連して提示されるおよび/もしくは異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応する、(2)同じMHC分子に関連して提示された場合に異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応する、ならびに/または(3)同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示されるおよび/もしくは同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応する、少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドエピトープの予測される能力に従って採点し得る。一般に、疾患特異的アミノ酸修飾または少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチドエピトープが(1)から(3)のパラメータのより多くを満たすほど、疾患特異的アミノ酸修飾はより良く採点される。
【0194】
「予測する」、「予測すること」または「予測」などの用語は、例えば疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用である可能性の決定に関する。疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾は、ポリペプチドの同じまたは異なる断片(これらの断片は疾患特異的アミノ酸修飾を含む)が異なるクラスのMHC分子に関連して提示される場合、ポリペプチドの同じまたは異なる断片が異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性である場合、またはその両方である場合、免疫療法に有用であると同定される。あるいはまたはさらに、同じMHC分子に関連して提示された場合に疾患特異的アミノ酸修飾を含むポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性である場合、疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾は免疫療法に有用であると同定される。あるいはまたはさらに、疾患細胞で発現されるポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾は、ポリペプチドの同じまたは異なる断片(これらの断片は疾患特異的アミノ酸修飾を含む)が同じクラスの異なるMHCに関連して提示される場合、同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合にポリペプチドの同じまたは異なる断片が同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性である場合、またはその両方である場合、免疫療法に有用であると同定される。
【0195】
MHC分子に関連した疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片の提示は、例えば任意のペプチド:MHC結合予測ツールを使用することによって、および/またはMHC分子への断片の結合を実験的に測定することによって確認し得る。
【0196】
MHC分子に関連して提示される場合、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片とT細胞との反応性は、例えば実験的に確認し得る。
【0197】
一実施形態では、評価は通常、疾患特異的アミノ酸修飾を有する患者で認められるMHC分子および/またはT細胞に対して行われる。したがって、本発明は、患者のMHCおよび/またはT細胞レパートリを決定することも含み得る。
【0198】
「疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの異なる断片」という用語は、一実施形態では、修飾ペプチドまたはポリペプチドの異なる断片を含むまたはそれからなるペプチドに関し、前記異なる断片は、ペプチドまたはポリペプチド内に同じ修飾(1または複数)を含むが、修飾(1または複数)の長さおよび/または位置が異なる。ペプチドまたはポリペプチドが位置xに修飾を有する場合、それぞれが前記位置xをカバーする前記ペプチドまたはポリペプチドの異なる配列ウィンドウを含む、前記ペプチドまたはポリペプチドの2つ以上の断片は、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの異なる断片とみなされる。
【0199】
「異なるアミノ酸修飾」という用語は、同じおよび/または異なるペプチドまたはポリペプチドのいずれかの異なるアミノ酸修飾に関する。
【0200】
好ましくは、本発明によれば、「疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片」は、MHC結合に適切な長さを有する。
【0201】
免疫療法に対する有用性が本発明に従って評価されるか、または本発明による免疫療法における有用性について選択および/またはランク付けされるアミノ酸修飾は、好ましくは、疾患細胞、特に患者の癌または腫瘍細胞などの細胞の核酸における突然変異から生じる。そのような変異は、既知の配列決定技術によって同定され得る。したがって、本発明の方法は、抗癌ワクチンなどの患者特異的ワクチンを提供するために癌患者などの患者に対して実施され得る。
【0202】
一実施形態では、突然変異は、腫瘍標本のゲノム、エクソームおよび/またはトランスクリプトームと、非腫瘍形成性標本のゲノム、エクソームおよび/またはトランスクリプトームとの間の配列差を同定することによって決定され得る、癌患者の腫瘍標本における癌特異的体細胞変異である。
【0203】
本発明によれば、腫瘍標本は、腫瘍または癌細胞を含むかまたは含むと予想される、患者に由来する身体試料などの任意の試料に関する。身体試料は、血液などの任意の組織試料、原発性腫瘍もしくは腫瘍転移から得られた組織試料、または腫瘍もしくは癌細胞を含む任意の他の試料であり得る。好ましくは、身体試料は血液であり、癌特異的体細胞変異または配列差は、血液中に含まれる1つ以上の循環腫瘍細胞(CTC)において決定される。別の実施形態では、腫瘍標本は、循環腫瘍細胞(CTC)などの1つ以上の単離された腫瘍もしくは癌細胞、または循環腫瘍細胞(CTC)などの1つ以上の単離された腫瘍もしくは癌細胞を含む試料に関する。
【0204】
非腫瘍形成性標本は、患者、または好ましくは患者と同じ種である別の個体、好ましくは腫瘍もしくは癌細胞を含まないもしくは含まないと予想される健常個体に由来する身体試料などの任意の試料に関する。身体試料は、血液などの任意の組織試料または非腫瘍形成性組織からの試料であり得る。
【0205】
本発明は、患者の癌変異シグネチャーの決定を含み得る。「癌変異シグネチャー」という用語は、患者の1つ以上の癌細胞に存在するすべての癌変異を指し得るか、または患者の1つ以上の癌細胞に存在する癌変異の一部分のみを指し得る。したがって、本発明は、患者の1つ以上の癌細胞に存在するすべての癌特異的変異の同定を含み得るか、または患者の1つ以上の癌細胞に存在する癌特異的変異の一部分のみの同定を含み得る。一般に、本発明の方法は、本発明の方法に含まれる十分な数の修飾または修飾ペプチドもしくはポリペプチドを提供する、多数の変異の同定を提供する。
【0206】
好ましくは、本発明に従って同定される変異は、非同義変異、好ましくは腫瘍または癌細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチドの非同義変異である。
【0207】
一実施形態では、癌特異的体細胞変異または配列差は、腫瘍標本のゲノム、好ましくはゲノム全体で決定される。したがって、本発明は、1つ以上の癌細胞のゲノム、好ましくはゲノム全体の癌変異シグネチャーを同定することを含み得る。一実施形態では、癌患者の腫瘍標本における癌特異的体細胞変異を同定する工程は、全ゲノム癌変異プロフィールを同定することを含む。
【0208】
一実施形態では、癌特異的体細胞変異または配列差は、腫瘍標本のエクソーム、好ましくはエクソーム全体で決定される。したがって、本発明は、1つ以上の癌細胞のエクソーム、好ましくはエクソーム全体の癌変異シグネチャーを同定することを含み得る。一実施形態では、癌患者の腫瘍標本における癌特異的体細胞変異を同定する工程は、全エクソーム癌変異プロフィールを同定することを含む。
【0209】
一実施形態では、癌特異的体細胞変異または配列差は、腫瘍標本のトランスクリプトーム、好ましくはトランスクリプトーム全体で決定される。したがって、本発明は、1つ以上の癌細胞のトランスクリプトーム、好ましくはトランスクリプトーム全体の癌変異シグネチャーを同定することを含み得る。一実施形態では、癌患者の腫瘍標本における癌特異的体細胞変異を同定する工程は、全トランスクリプトーム癌突然変異プロフィールを同定することを含む。
【0210】
一実施形態では、癌特異的体細胞変異を同定するまたは配列差を同定する工程は、1つ以上、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはさらにそれ以上の癌細胞の単一細胞配列決定を含む。したがって、本発明は、前記1つ以上の癌細胞の癌変異シグネチャーを同定することを含み得る。一実施形態では、癌細胞は循環腫瘍細胞である。循環腫瘍細胞などの癌細胞は、単一細胞配列決定の前に単離し得る。
【0211】
一実施形態では、癌特異的体細胞変異を同定するまたは配列差を同定する工程は、次世代シーケンシング(NGS)を使用することを含む。
【0212】
一実施形態では、癌特異的体細胞変異を同定するまたは配列差を同定する工程は、腫瘍標本のゲノムDNAおよび/またはRNAを配列決定することを含む。
【0213】
癌特異的体細胞変異または配列差を明らかにするために、腫瘍標本から得られた配列情報を、好ましくは、患者または異なる個体のいずれかから入手し得る生殖系列細胞などの正常な非癌性細胞のDNAまたはRNAなどの核酸を配列決定することから得られた配列情報などの参照と比較する。一実施形態では、正常なゲノム生殖系列DNAは、末梢血単核細胞(PBMC)から得られる。
【0214】
「ゲノム」という用語は、生物または細胞の染色体内の遺伝情報の総量に関する。
【0215】
「エクソーム」という用語は、発現される遺伝子のコード部分であるエクソンによって形成された、生物のゲノムの一部を指す。エクソームは、タンパク質および他の機能的遺伝子産物の合成において使用される遺伝的青写真を提供する。これはゲノムの最も機能的に関連する部分であり、したがって、生物の表現型に寄与する可能性が最も高い。ヒトゲノムのエクソームは、全ゲノムの1.5%を構成すると推定されている(Ng,PC et al.,PLoS Gen.,4(8):1-15,2008)。
【0216】
「トランスクリプトーム」という用語は、1つの細胞または細胞の集団で産生されるmRNA、rRNA、tRNA、および他の非コードRNAを含むすべてのRNA分子のセットに関する。本発明に関連して、トランスクリプトームは、1つの細胞、細胞の集団、好ましくは癌細胞の集団、または特定の時点での所与の個体のすべての細胞で産生されるすべてのRNA分子のセットを意味する。
【0217】
「核酸」は、本発明によれば、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、より好ましくはRNA、最も好ましくはインビトロ転写RNA(IVT RNA)または合成RNAである。核酸には、本発明によれば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子が含まれる。本発明によれば、核酸は、一本鎖または二本鎖の線状または共有結合環状閉鎖分子として存在し得る。本発明によれば、核酸は単離することができる。「単離された核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってインビトロで増幅された、(ii)クローニングによって組換え生産された、(iii)例えば切断およびゲル電気泳動による分離によって精製された、または(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。核酸は、細胞への導入、すなわち細胞のトランスフェクションのために、特にDNA鋳型からのインビトロ転写によって調製され得るRNAの形態で使用することができる。RNAは、適用の前に配列の安定化、キャッピング、およびポリアデニル化によってさらに修飾することができる。
【0218】
「遺伝物質」という用語は、DNAまたはRNAのいずれかの単離された核酸、二重らせんの一区画、染色体の一区画、または生物もしくは細胞のゲノム全体、特にそのエクソームもしくはトランスクリプトームを指す。
【0219】
「変異」という用語は、参照と比較した核酸配列の変化または相違(ヌクレオチド置換、付加または欠失)を指す。「体細胞変異」は、生殖細胞(精子および卵子)を除く身体の細胞のいずれかで起こる可能性があり、したがって子供に伝わらない。これらの変化は、(常にではないが)癌または他の疾患を引き起こすことがある。好ましくは、変異は非同義変異である。「非同義変異」という用語は、翻訳産物におけるアミノ酸置換などのアミノ酸変化をもたらす変異、好ましくはヌクレオチド置換を指す。
【0220】
本発明によれば、「変異」という用語は、点変異、インデル、融合、クロモスリプシスおよびRNA編集を含む。
【0221】
本発明によれば、「インデル」という用語は、共局在化された挿入および欠失ならびにヌクレオチドの正味の増加または減少をもたらす変異として定義される、特別な変異クラスを表す。ゲノムのコード領域では、インデルの長さが3の倍数でない限り、フレームシフト変異を生じさせる。インデルは点変異と対比させることができる;インデルが配列にヌクレオチドを挿入するおよび配列からヌクレオチドを欠失させる場合、点変異はヌクレオチドの1つを置き換える置換の形態である。
【0222】
融合は、2つの以前は別々の遺伝子から形成されたハイブリッド遺伝子を生成することができる。これは、転座、中間部欠失、または染色体逆位の結果として起こり得る。多くの場合、融合遺伝子は癌遺伝子である。発癌性融合遺伝子は、2つの融合パートナーから新しいまたは異なる機能を有する遺伝子産物をもたらし得る。あるいは、原癌遺伝子は強力なプロモータに融合し、それにより上流の融合パートナーの強力なプロモータによって引き起こされる上方調節によって発癌性機能が機能し始める。発癌性融合転写物は、トランススプライシングまたはリードスルー事象によっても引き起こされ得る。
【0223】
本発明によれば、「クロモスリプシス」という用語は、単一の破壊事象によってゲノムの特定の領域が破砕され、その後縫い合わされる遺伝的現象を指す。
【0224】
本発明によれば、「RNA編集」または「RNA編集する」という用語は、RNA分子の情報内容が塩基構造の化学的変化によって改変される分子過程を指す。RNA編集には、シチジン(C)からウリジン(U)およびアデノシン(A)からイノシン(I)への脱アミノ化などのヌクレオシド修飾、ならびに非鋳型ヌクレオチドの付加および挿入が含まれる。mRNAでのRNA編集は、コードされているタンパク質のアミノ酸配列を、ゲノムDNA配列によって予測されるものとは異なるように有効に改変する。
【0225】
「癌変異シグネチャー」という用語は、非癌性参照細胞と比較した場合に癌細胞に存在する一連の変異を指す。
【0226】
本発明によれば、「参照」は、腫瘍標本からの結果を相関させ、比較するために使用し得る。典型的には、「参照」は、患者または1つ以上の異なる個体、好ましくは健常個体、特に同じ種の個体から得られた1つ以上の正常な標本、特に癌疾患を患っていない標本に基づいて入手し得る。「参照」は、十分に多数の正常標本を試験することによって経験的に決定することができる。
【0227】
変異を決定するために、任意の適切な配列決定方法を本発明に従って使用することができ、次世代シーケンシング(NGS)技術が好ましい。方法のシーケンシング工程の速度を上げるために、将来は第三世代シーケンシング方法がNGS技術に取って代わる可能性がある。明確化のために、本発明に関連して「次世代シーケンシング」または「NGS」という用語は、サンガー化学として公知の「従来の」シーケンシング方法とは対照的に、ゲノム全体を小片に分割することによって核酸鋳型をゲノム全体に沿ってランダムに並行して読み取る、すべての新規ハイスループットシーケンシング技術を意味する。そのようなNGS技術(超並列シーケンシング技術としても公知である)は、全ゲノム、エクソーム、トランスクリプトーム(ゲノムのすべての転写配列)またはメチローム(ゲノムのすべてのメチル化配列)の核酸配列情報を非常に短い時間で、例えば1~2週間以内、好ましくは1~7日以内、または最も好ましくは24時間以内に送達することができ、原理上は、単一細胞配列決定アプローチを可能にする。市販されているかまたは文献で言及されている複数のNGSプラットフォーム、例えばZhang et al.2011:The impact of next-generation sequencing on genomics.J.Genet Genomics 38(3),95-109;またはVoelkerding et al.2009:Next generation sequencing:From basic research to diagnostics.Clinical chemistry 55,641-658に詳述されているものを本発明に関連して使用することができる。そのようなNGS技術/プラットフォームの非限定的な例は以下の通りである。
1)最初にRonaghi et al.1998:A sequencing method based on real-time pyrophosphate」.Science 281(5375),363-365に記載された、Roche関連会社である454 Life Sciences (Branford,Connecticut)のGS-FLX 454 Genome Sequencer(商標)で実施されるパイロシーケンシングとして公知の合成によるシーケンシング技術。この技術は、エマルジョンPCR増幅のための油に取り囲まれたPCR反応物を含有する水性ミセル中に激しくボルテックスすることによって一本鎖DNA結合ビーズが封入される、エマルジョンPCRを使用する。パイロシーケンシング工程では、ポリメラーゼがDNA鎖を合成する際にヌクレオチド取り込み中にリン酸分子から放出される光が記録される。
【0228】
2)可逆的な色素ターミネータに基づいており、例えばIllumina/Solexa Genome Analyzer(商標)およびIllumina HiSeq 2000 Genome Analyzer(商標)で実施される、Solexa(現在はIllumina Inc.の一部、San Diego,California)によって開発された合成によるシーケンシングアプローチ。この技術では、4つすべてのヌクレオチドを、DNAポリメラーゼと共にフローセルチャネル中のオリゴプライミングクラスタ断片に同時に添加する。シーケンシングのために、架橋増幅によって4つすべての蛍光標識ヌクレオチドを有するクラスタ鎖を伸長させる。
【0229】
3)例えばApplied Biosystems(現在のLife Technologies Corporation,Carlsbad, California)のSOLid(商標)プラットフォームで実施される、ライゲーションによるシーケンシングアプローチ。この技術では、固定長のすべての可能なオリゴヌクレオチドのプールを、配列決定された位置に従って標識する。オリゴヌクレオチドをアニーリングし、連結する;DNAリガーゼによる一致した配列の優先的連結によって、その位置のヌクレオチドの情報を与えるシグナルが得られる。配列決定する前に、DNAをエマルジョンPCRによって増幅する。それぞれが同じDNA分子のコピーのみを含む得られたビーズをスライドガラス上に載せる。2番目の例として、Dover Systems(Salem,New Hampshire)のPolonator(商標)G.007プラットフォームも、並列シーケンシングのためにランダムに配置したビーズに基づくエマルジョンPCRを使用してDNA断片を増幅することによる、ライゲーションによるシーケンシングアプローチを用いる。
【0230】
4)例えばPacific Biosciences(Menlo Park,California)のPacBio RSシステム、またはHelicos Biosciences(Cambridge, Massachusetts)のHeliScope(商標)プラットフォームで実施されるような単一分子シーケンシング技術。この技術の明確な特徴は、単一分子リアルタイム(SMRT)DNAシーケンシングと定義される、増幅なしで単一のDNAまたはRNA分子を配列決定するその能力である。例えば、HeliScopeは、高感度の蛍光検出システムを使用して、それぞれのヌクレオチドが合成される際にそれを直接検出する。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく同様のアプローチが、Visigen Biotechnology(Houston, Texas)から開発されている。他の蛍光に基づく単一分子技術は、U.S.Genomics(GeneEngine(商標))およびGenovoxx(AnyGene(商標))からのものである。
【0231】
5)例えば複製中に一本鎖上のポリメラーゼ分子の動きを監視するためにチップ上に配置された様々なナノ構造を使用する、単一分子シーケンシングのためのナノ技術。ナノ技術に基づくアプローチの非限定的な例は、Oxford Nanopore Technologies(Oxford,UK)のGridON(商標)プラットフォーム、Nabsys(Providence,Rhode Island)によって開発されたハイブリダイゼーション支援ナノポアシーケンシング(HANS(商標))プラットフォーム、およびコンビナトリアルプローブアンカーライゲーション(cPAL(商標))と呼ばれるDNAナノボール(DNB)技術による特許保護されたリガーゼベースのDNAシーケンシングプラットフォーム。
【0232】
6)単一分子シーケンシングのための電子顕微鏡検査に基づく技術、例えばLightSpeed Genomics(Sunnyvale,California)およびHalcyon Molecular(Redwood City,California)によって開発されたもの。
【0233】
7)DNAの重合中に放出される水素イオンの検出に基づくイオン半導体シーケンシング。例えば、Ion Torrent Systems(San Francisco,California)は、微細加工されたウェルの高密度アレイを使用して、この生化学的工程を超並列方式で実施する。各ウェルは異なるDNA鋳型を保持する。ウェルの下にはイオン感応層があり、その下に特許保護されたイオンセンサーがある。
【0234】
好ましくは、DNAおよびRNA調製物はNGSの出発物質としての役割を果たす。そのような核酸は、生物学的物質などの試料から、例えば新鮮な急速凍結されたもしくはホルマリン固定されたパラフィン包埋腫瘍組織(FFPE)から、または新鮮単離された細胞から、または患者の末梢血に存在するもしくはCTCから、容易に得ることができる。正常な非変異ゲノムDNAまたはRNAは、正常な体組織から抽出することができるが、生殖系列細胞が本発明に関連して好ましい。生殖系列のDNAまたはRNAは、非血液悪性腫瘍の患者の末梢血単核細胞(PBMC)から抽出し得る。FFPE組織または新鮮単離された単一細胞から抽出された核酸は非常に断片化されているが、NGS適用には適する。
【0235】
エクソーム配列決定のためのいくつかの標的NGS法が文献に記載されており(総説については、例えばTeer and Mullikin 2010:Human Mol Genet 19(2),R145-51参照)、そのすべてが本発明と併せて使用することができる。これらの方法の多く(例えばゲノム捕捉、ゲノム分配、ゲノム濃縮などとして記載されている)は、ハイブリダイゼーション技術を使用し、アレイに基づく(例えばHodges et al.2007:Nat.Genet.39,1522-1527)および液体に基づく(例えばChoi et al.2009:Proc.Natl.Acad.Sci USA 106,19096-19101)ハイブリダイゼーションアプローチが含まれる。DNA試料の調製とそれに続くエクソーム捕捉のための市販のキットも入手可能であり、例えばIllumina Inc.(San Diego, California)は、TruSeq(商標)DNA試料調製キットおよびエクソーム濃縮キットTruSeq(商標)Exome Enrichment Kitを提供している。
【0236】
例えば腫瘍試料の配列を生殖系列試料の配列などの参照試料の配列と比較する場合、癌特異的体細胞変異または配列差を検出する際の偽陽性所見の数を低減するために、これらの試料種のうちの一方または両方の複製物で配列を決定することが好ましい。したがって、生殖系列試料の配列などの参照試料の配列を2回、3回またはそれ以上決定することが好ましい。あるいはまたはさらに、腫瘍試料の配列を2回、3回またはそれ以上決定する。また、生殖系列試料の配列などの参照試料の配列および/または腫瘍試料の配列は、ゲノムDNAの配列を少なくとも1回決定し、前記参照試料および/または前記腫瘍試料のRNAの配列を少なくとも1回決定することによって、複数回決定することも可能であり得る。例えば、生殖系列試料などの参照試料の複製物間の変動を決定することによって、統計量としての予想される体細胞変異の偽陽性率(FDR)を推定することができる。1つの試料の技術的な繰り返しは同一の結果を生じるはずであり、この「対同一物比較」で検出された変異は偽陽性である。特に、参照試料に対する腫瘍試料での体細胞変異検出の偽発見率を決定するために、参照試料の技術的繰り返しを、偽陽性の数を推定するための参照として使用することができる。さらに、様々な品質関連の測定基準(例えばカバレッジまたはSNP品質)を、機械学習アプローチを使用して単一の品質スコアに組み合わせてもよい。所与の体細胞変動について、品質スコアを超える他のすべての変動が計数され得、これはデータセット内のすべての変動のランク付けを可能にする。
【0237】
本発明に関連して、「RNA」という用語は、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含み、好ましくは完全にまたは実質的にリボヌクレオチド残基からなる分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。「RNA」という用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的または完全に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAなどの組換え生産されたRNAを含む。そのような改変は、例えばRNAの末端(1または複数)へのまたは内部での、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加を含み得る。RNA分子中のヌクレオチドは、非天然のヌクレオチドまたは化学合成されたヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドなどの非標準のヌクレオチドも含み得る。これらの改変されたRNAは、類似体または天然に存在するRNAの類似体と称され得る。
【0238】
本発明によれば、「RNA」という用語は「mRNA」を含み、好ましくは「mRNA」に関する。「mRNA」という用語は「メッセンジャーRNA」を意味し、DNA鋳型を使用して作製され、ペプチドまたはポリペプチドをコードする「転写物」に関する。典型的には、mRNAは、5'-UTR、タンパク質コード領域、3'-UTR、および場合によりポリ(A)尾部を含む。mRNAは、細胞内およびインビトロで限られた半減期しか有さない。本発明に関連して、mRNAは、DNA鋳型からのインビトロ転写によって作製され得る。インビトロ転写の方法は当業者に公知である。例えば、様々なインビトロ転写キットが市販されている。
【0239】
本発明によれば、RNAの安定性および翻訳効率は、必要に応じて改変し得る。例えば、RNAは、RNAの安定化作用を有するおよび/または翻訳効率を増加させる1つ以上の修飾によって安定化され、その翻訳が増加し得る。そのような修飾は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2006/009448号に記載されている。本発明に従って使用されるRNAの発現を増加させるために、コード領域内、すなわち発現されるペプチドまたはタンパク質をコードする配列内で、好ましくは発現されるペプチドまたはタンパク質の配列を変化させずに、GC含量を増加させてmRNAの安定性を高め、コドン最適化を実施し、したがって細胞中での翻訳を増強するようにRNAを修飾し得る。
【0240】
本発明で使用されるRNAに関連して「修飾」という用語は、前記RNA中に天然には存在しないRNAの任意の修飾を含む。
【0241】
本発明の一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAは、非キャップ5'-三リン酸を有さない。そのような非キャップ5'-三リン酸の除去は、RNAをホスファターゼで処理することによって達成できる。
【0242】
本発明によるRNAは、その安定性を高めるおよび/または細胞毒性を低下させるために修飾リボヌクレオチドを有し得る。例えば、一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、シチジンを5-メチルシチジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。あるいはまたはさらに、一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、ウリジンをプソイドウリジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。
【0243】
一実施形態では、「修飾」という用語は、RNAに5'-キャップまたは5'-キャップ類似体を提供することに関する。「5'-キャップ」という用語は、mRNA分子の5'末端に認められるキャップ構造を指し、一般に独特の5'-5'三リン酸結合によってmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。「従来の5'-キャップ」という用語は、天然に存在するRNAの5'-キャップ、好ましくは7-メチルグアノシンキャップ(mG)を指す。本発明に関連して、「5'-キャップ」という用語には、RNAキャップ構造に類似し、好ましくはインビボおよび/または細胞中で、RNAに結合した場合RNAを安定化するおよび/またはRNAの翻訳を増強する能力を有するように修飾されている5'-キャップ類似体が含まれる。
【0244】
RNAに5'-キャップまたは5'-キャップ類似体を提供することは、前記5'-キャップまたは5'-キャップ類似体の存在下でのDNA鋳型のインビトロ転写によって達成され得、前記5'-キャップは生成されたRNA鎖に共転写的に組み込まれるか、またはRNAは、例えばインビトロ転写によって生成され得、5'-キャップは、キャッピング酵素、例えばワクシニアウイルスのキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに付着させ得る。
【0245】
RNAはさらなる修飾を含み得る。例えば、本発明で使用されるRNAのさらなる修飾は、天然のポリ(A)尾部の伸長もしくは切断、または前記RNAのコード領域に関連しない非翻訳領域(UTR)の導入、例えばα2グロビン、α1グロビン、βグロビン、好ましくはβグロビン、より好ましくはヒトβグロビンなどのグロビン遺伝子に由来する1コピー以上、好ましくは2コピーの3'-UTRによる既存の3'-UTRの交換もしくはその挿入などの、5'-UTRまたは3'-UTRの改変であり得る。
【0246】
マスクされていないポリA配列を有するRNAは、マスクされたポリA配列を有するRNAよりも効率的に翻訳される。「ポリ(A)尾部」または「ポリA配列」という用語は、典型的にはRNA分子の3'末端に位置するアデニル(A)残基の配列に関し、「マスクされていないポリA配列」は、RNA分子の3'末端のポリA配列がポリA配列のAで終了し、ポリA配列の3'末端、すなわち下流に位置するA以外のヌクレオチドが後続していないことを意味する。さらに、約120塩基対の長いポリA配列は、RNAの最適な転写物安定性および翻訳効率をもたらす。
【0247】
したがって、本発明に従って使用されるRNAの安定性および/または発現を増加させるために、好ましくは10~500、より好ましくは30~300、さらにより好ましくは65~200、特に100~150個のアデノシン残基の長さを有するポリA配列と共に存在するようにRNAを修飾し得る。特に好ましい実施形態では、ポリA配列は約120個のアデノシン残基の長さを有する。本発明に従って使用されるRNAの安定性および/または発現をさらに増加させるために、ポリA配列を脱マスク化することができる。
【0248】
RNAの「安定性」という用語は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量、または数の半分を除去するのに必要な期間に関する。本発明に関連して、RNAの半減期はRNAの安定性の指標である。RNAの半減期は、RNAの「発現の持続時間」に影響を与え得る。長い半減期を有するRNAは長期間発現されると予想することができる。
【0249】
言うまでもなく、本発明に従ってRNAの安定性および/または翻訳効率を低下させることが望ましい場合、RNAの安定性および/または翻訳効率を増加させる上記の要素の機能を妨げるようにRNAを修飾することが可能である。
【0250】
「発現」という用語は、本発明に従ってその最も一般的な意味で使用され、例えば転写および/または翻訳による、RNAおよび/またはペプチドもしくはポリペプチドの産生を含む。RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、特にペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の産生に関する。また、これは核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過性または安定であり得る。
【0251】
本発明に関連して、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に翻訳され得る。本発明によれば、「転写」という用語は「インビトロ転写」を含み、「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、無細胞系においてインビトロで合成される過程に関する。好ましくは、クローニングベクターを転写物の生成に適用する。これらのクローニングベクターは、一般に転写ベクターと称され、本発明によれば「ベクター」という用語に包含される。本発明によれば、本発明で使用されるRNAは、好ましくはインビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモータは、任意のRNAポリメラーゼの任意のプロモータであり得る。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、およびSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、本発明によるインビトロ転写は、T7またはSP6プロモータによって制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
【0252】
本発明による「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNAの鎖が、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を作製するようにアミノ酸の配列のアセンブリを指令する、細胞のリボソームにおける過程に関する。
【0253】
本発明に従って核酸と機能的に連結され得る発現制御配列または調節配列は、核酸に関して同種または異種であり得る。コード配列および調節配列は、コード配列の転写または翻訳が調節配列の制御下または影響下にあるように一緒に共有結合されている場合、「機能的に」連結されている。調節配列とコード配列との機能的連結によって、コード配列が機能的ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に翻訳される場合、調節配列の誘導は、コード配列のリーディングフレームシフトまたはコード配列が所望のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に翻訳されないことを生じさせずに、コード配列の転写をもたらす。
【0254】
「発現制御配列」または「調節配列」という用語は、本発明によれば、核酸の転写または誘導されたRNAの翻訳を制御する、プロモータ、リボソーム結合配列および他の制御エレメントを含む。本発明の特定の実施形態では、調節配列を制御することができる。調節配列の正確な構造は種または細胞型に応じて異なり得るが、一般に、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などの転写または翻訳の開始に関与する5'-非転写配列ならびに5'-および3'-非翻訳配列を含む。特に、5-'非転写調節配列は、機能的に結合した遺伝子の転写制御のためのプロモータ配列が含まれるプロモータ領域を含む。調節配列は、エンハンサー配列または上流活性化配列も含むことができる。
【0255】
好ましくは、本発明によれば、細胞で発現させるRNAを前記細胞に導入する。本発明による方法の一実施形態では、細胞に導入するRNAは、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られる。
【0256】
本発明によれば、「発現することができるRNA」および「コードするRNA」などの用語または同様の用語は、本明細書では互換的に使用され、特定のペプチドまたはポリペプチドに関して、RNAが、適切な環境、好ましくは細胞内に存在する場合、発現されて前記ペプチドまたはポリペプチドを生成できることを意味する。好ましくは、本発明によるRNAは、細胞翻訳機構と相互作用して、それが発現することができるペプチドまたはポリペプチドを提供することができる。
【0257】
「移入する」、「導入する」または「トランスフェクトする」などの用語は、本明細書では互換的に使用され、核酸、特に外因性または異種核酸、特にRNAの細胞への導入に関する。本発明によれば、細胞は器官、組織および/または生物の一部を形成することができる。本発明によれば、核酸の投与は、裸の核酸として、または投与試薬と組み合わせて達成される。好ましくは、核酸の投与は裸の核酸の形態である。好ましくは、RNAは、RNase阻害剤などの安定化物質と組み合わせて投与される。本発明はまた、長期間の持続的発現を可能にするために核酸を細胞内に繰り返し導入することも想定する。
【0258】
細胞は、例えばRNAと複合体を形成することまたはRNAが封入もしくはカプセル化された小胞を形成することによって、RNAが会合できる任意の担体を用いてトランスフェクトすることができ、裸のRNAと比較してRNAの安定性の増加をもたらすことができる。本発明に従って有用な担体には、例えばカチオン性脂質、リポソーム、特にカチオン性リポソーム、およびミセルなどの脂質含有担体、ならびにナノ粒子が含まれる。カチオン性脂質は、負に帯電した核酸と複合体を形成し得る。任意のカチオン性脂質を本発明に従って使用し得る。
【0259】
好ましくは、細胞、特にインビボで存在する細胞内へのペプチドまたはポリペプチドをコードするRNAの導入は、細胞内での前記ペプチドまたはポリペプチドの発現をもたらす。特定の実施形態では、核酸を特定の細胞に標的化することが好ましい。そのような実施形態では、細胞への核酸の投与に適用される担体(例えばレトロウイルスまたはリポソーム)は、標的分子を示す。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質または標的細胞上の受容体のリガンドに特異的な抗体などの分子は、核酸担体に組み込み得るか、またはそれに結合し得る。核酸がリポソームによって投与される場合、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質を、標的化および/または取り込みを可能にするためにリポソーム製剤に組み込み得る。そのようなタンパク質は、特定の細胞型、インターナライズされるタンパク質に対する抗体、細胞内の位置を標的とするタンパク質などに特異的なカプシドタンパク質またはその断片を包含する。
【0260】
「細胞」または「宿主細胞」という用語は、好ましくは無傷の細胞、すなわち酵素、細胞小器官、または遺伝物質などのその正常な細胞内成分を放出していない無傷の膜を有する細胞である。無傷の細胞は、好ましくは生存可能な細胞、すなわちその正常な代謝機能を実施することができる生細胞である。好ましくは、前記用語は、本発明によれば、外因性核酸で形質転換またはトランスフェクトすることができる任意の細胞に関する。「細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば大腸菌(E.coli))または真核細胞(例えば樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、HEK293細胞、HELA細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。外因性核酸は、細胞内で、(i)それ自体で自由に分散して、(ii)組換えベクターに組み込まれて、または(iii)宿主細胞のゲノムもしくはミトコンドリアDNAに組み込まれて見出され得る。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、および霊長動物からの細胞などの哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は、多数の組織型に由来し、初代細胞および細胞株を含み得る。具体的な例には、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄幹細胞、および胚性幹細胞が含まれる。さらなる実施形態では、細胞は抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球、またはマクロファージである。
【0261】
核酸分子を含む細胞は、好ましくは核酸によってコードされるペプチドまたはポリペプチドを発現する。
【0262】
「クローン増殖」という用語は、特定の実体が増加する過程を指す。本発明に関連して、この用語は、好ましくは、リンパ球が抗原によって刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特異的リンパ球が増幅される免疫学的応答に関連して使用される。好ましくは、クローン増殖はリンパ球の分化をもたらす。
【0263】
「低減する」または「阻害する」などの用語は、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上のレベルの全体的な減少を生じさせる能力に関する。「阻害する」という用語または同様の語句には、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわちゼロまたは本質的にゼロへの低減が含まれる。
【0264】
「増加させる」、「増強する」、「促進する」または「延長する」などの用語は、好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも100%、好ましくは少なくとも200%、特に少なくとも300%の増加、増強、促進または延長に関する。これらの用語は、ゼロまたは測定不能もしくは検出不能なレベルから、ゼロより高いレベルまたは測定可能もしくは検出可能なレベルへの増加、増強、促進または延長にも関連し得る。
【0265】
本発明は、免疫療法に有用であると予測されるアミノ酸修飾を同定する方法を提供する。アミノ酸修飾は、患者の疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内に存在する。「患者の疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド」という用語は、ペプチドまたはポリペプチドの発現が実験的に試験されたことを必ずしも意味しない。むしろ、ペプチドまたはポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームが患者の疾患細胞内に存在し、したがって、ペプチドまたはポリペプチドが患者の疾患細胞で発現される可能性があることを意味する。
【0266】
免疫療法に有用であると予測されるアミノ酸修飾は、ワクチンを設計するために使用し得る。具体的には、ワクチンは、疾患細胞によって発現され、本発明の方法によって免疫療法に有用であると予測されるアミノ酸修飾を含むペプチドもしくはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードするRNAなどの核酸を含み得る。あるいはまたはさらに、ワクチンは、疾患細胞によって発現されるペプチドもしくはポリペプチドの断片であって、本発明の方法によって免疫療法に有用であると予測されるアミノ酸修飾を含有する断片を含むワクチンペプチドもしくはポリペプチド、または前記ワクチンペプチドもしくはポリペプチドをコードするRNAなどの核酸を含み得る。
【0267】
本発明の方法が、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片が、(1)異なるクラスのMHC分子に関連して提示される、および/もしくはMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性である、(2)同じMHC分子に関連して提示された場合に、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性である、ならびに/または(3)同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示される、および/もしくは同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性である、ことを示す場合、ワクチンペプチドまたはポリペプチドは、好ましくは、少なくとも前記断片をカバーするペプチドもしくはポリペプチドの配列またはより長い配列、すなわちワクチン配列を含む。
【0268】
本発明の方法が、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの異なる断片が、(1)異なるクラスのMHC分子に関連して提示される、および/もしくはMHC分子に関連して提示された場合に、異なるMHCクラスに拘束されたT細胞と反応性である、ならびに/または(2)同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示される、および/もしくは同じクラスの異なるMHC分子に関連して提示された場合に、同じMHCクラスに拘束された異なるT細胞と反応性である、ことを示す場合、ワクチンペプチドまたはポリペプチドは、好ましくは、少なくとも前記断片をカバーするペプチドもしくはポリペプチドの配列またはより長い配列、すなわちワクチン配列を含む。
【0269】
本発明によれば、「ワクチン」という用語は、投与時に、病原体または癌細胞などの疾患細胞を認識して攻撃する免疫応答、特に細胞性免疫応答を誘導する医薬製剤(医薬組成物)または製品に関する。ワクチンは、疾患の予防または治療に使用し得る。「個別化癌ワクチン」または「オーダーメイド癌ワクチン」という用語は、特定の癌患者に関するものであり、癌ワクチンが個々の癌患者の必要性または特別な状況に適合していることを意味する。
【0270】
一実施形態では、本発明に従って提供されるワクチンは、本発明の方法によって免疫療法に有用であると予測される1つ以上のアミノ酸修飾または1つ以上の修飾ペプチドを含むペプチドもしくはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸、好ましくはRNAを含み得る。
【0271】
本発明に従って提供される癌ワクチンは、患者に投与された場合、好ましくは、患者の腫瘍などの患者の疾患細胞に特異的なT細胞を刺激する、プライミングする、および/または増殖させるのに適した1つ以上のT細胞エピトープを提供する。T細胞は、好ましくは、T細胞エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対して向けられる。本明細書に記載のワクチンは、好ましくは、クラスI MHCによる1つ以上の腫瘍関連ネオ抗原の提示を特徴とする癌疾患に対する細胞性応答、好ましくは細胞傷害性T細胞活性を誘導または促進することができる。癌特異的変異を標的とするワクチンは、患者の腫瘍に特異的である。
【0272】
本発明に従って提供されるワクチンは、患者に投与された場合、好ましくは、本発明の方法によって免疫原性であると予測されるアミノ酸修飾または修飾ペプチドを組み込んだ、1つ以上のT細胞エピトープ、例えば2個以上、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、好ましくは60個まで、55個まで、50個まで、45個まで、40個まで、35個まで、または30個までのT細胞エピトープを提供するワクチンに関する。そのようなT細胞エピトープは、本明細書では「ネオエピトープ」とも称される。患者の細胞、特に抗原提示細胞によるこれらのエピトープの提示は、好ましくは、MHCに結合した場合にT細胞がエピトープを標的とすること、したがって患者の腫瘍、好ましくは原発性腫瘍および腫瘍転移が、T細胞エピトープが由来する抗原を発現し、腫瘍細胞の表面上に同じエピトープを提示することをもたらす。
【0273】
本発明の方法は、癌ワクチン接種のための同定されたアミノ酸修飾または修飾ペプチドの有用性を判定するさらなる工程を含み得る。したがって、さらなる工程には以下の1つ以上が含まれ得る:(i)修飾が既知のまたは予測されるMHC提示エピトープ内に位置するかどうかの評価、(ii)修飾がMHC提示エピトープ内に位置するかどうかのインビトロおよび/またはインシリコ試験、例えば修飾が、MHC提示エピトープにプロセシングされるおよび/またはMHC提示エピトープとして提示されるペプチド配列の一部であるかどうかの試験、ならびに(iii)想定される修飾エピトープが、特にその天然配列状況で存在する場合、例えば天然に存在するペプチドまたはポリペプチド内で前記エピトープにも隣接するアミノ酸配列に隣接している場合、および抗原提示細胞で発現された場合に、所望の特異性を有する患者のT細胞などのT細胞を刺激することができるかどうかのインビトロ試験。そのような隣接配列は、それぞれ3個以上、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、好ましくは50個まで、45個まで、40個まで、35個まで、または30個までのアミノ酸を含んでもよく、N末端および/またはC末端でエピトープ配列に隣接していてもよい。
【0274】
本発明に従って決定される修飾ペプチドは、癌ワクチン接種用のエピトープとしてのその有用性についてランク付けし得る。したがって、一態様では、本発明は、同定された修飾ペプチドが、提供されるそれぞれのワクチンにおけるその有用性について分析および選択される、手動またはコンピュータベースの分析処理を含む。好ましい実施形態では、前記分析処理は、コンピュータアルゴリズムベースの処理である。好ましくは、前記分析処理は、エピトープを、免疫原性であるその能力の予測に従って決定および/またはランク付けすることを含む。
【0275】
本発明に従って同定され、本発明のワクチンによって提供されるネオエピトープは、好ましくは、ポリエピトープポリペプチドなどの前記ネオエピトープを含むポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードする核酸、特にRNAの形態で存在する。さらに、ネオエピトープは、ワクチン配列の形態でポリペプチド内に存在し得る、すなわちその天然の配列状況で、例えば天然に存在するペプチドまたはポリペプチド内で前記エピトープにも隣接するアミノ酸配列に隣接して、存在し得る。そのような隣接配列は、それぞれ5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、好ましくは50個まで、45個まで、40個まで、35個まで、または30個までのアミノ酸を含んでもよく、N末端および/またはC末端でエピトープ配列に隣接していてもよい。したがって、ワクチン配列は、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上、40個以上、および好ましくは最大50個、最大45個、最大40個、最大35個または最大30個のアミノ酸を含み得る。一実施形態では、ネオエピトープおよび/またはワクチン配列は、ポリペプチド中で頭-尾で並んでいる。
【0276】
一実施形態では、ネオエピトープおよび/またはワクチン配列は、リンカー、特に中性リンカーによって間隔をあけられている。本発明による「リンカー」という用語は、エピトープまたはワクチン配列などの2つのペプチドドメイン間に付加されて前記ペプチドドメインを接続するペプチドに関する。リンカー配列に関して特に制限はない。しかし、リンカー配列は、2つのペプチドドメイン間の立体障害を低減し、良好に翻訳され、エピトープのプロセシングを支援するまたは可能にすることが好ましい。さらに、リンカーは、免疫原性の配列要素を全く有さないかまたはごくわずかしか有してはならない。リンカーは、好ましくは、望ましくない免疫反応を生じ得る、隣接するネオエピトープ間の接合部縫合から生成されるもののような非内因性ネオエピトープを作成すべきではない。したがって、ポリエピトープワクチンは、好ましくは、望ましくないMHC結合接合部エピトープの数を減らすことができるリンカー配列を含むべきである。Hoyt et al.(EMBO J.25(8),1720-9,2006)およびZhang et al.(J.Biol.Chem.,279(10),8635-41,2004)は、グリシンリッチ配列がプロテアソームプロセシングを損ない、したがってグリシンリッチリンカー配列の使用は、プロテアソームによってプロセシングされ得るリンカー含有ペプチドの数を最小限に抑えるように作用することを示した。さらに、グリシンはMHC結合溝の位置で強い結合を阻害することが観察された(Abastado et al.,J.Immunol.151(7),3569-75,1993)。Schlessinger et al.(Proteins,61(1),115-26,2005)は、アミノ酸配列に含まれるアミノ酸グリシンおよびセリンが、プロテアソームによってより効率的に翻訳およびプロセシングされるより柔軟なタンパク質をもたらし、コードされているネオエピトープへのより良好なアクセスを可能にすることを見出した。リンカーは、それぞれ3個以上、6個以上、9個以上、10個以上、15個以上、20個以上、好ましくは50個まで、45個まで、40個まで、35個まで、または30個までのアミノ酸を含み得る。好ましくは、リンカーはグリシンおよび/またはセリンアミノ酸に富む。好ましくは、リンカーのアミノ酸の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%はグリシンおよび/またはセリンである。1つの好ましい実施形態では、リンカーは、アミノ酸グリシンおよびセリンから実質的に構成される。一実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列(GGS)(GSS)(GGG)(SSG)(GSG)を含み、ここで、a、b、c、dおよびeは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20から独立してから選択される数であり、a+b+c+d+eは0とは異なり、好ましくは2以上、3以上、4以上、または5以上である。一実施形態では、リンカーは、配列GGSGGGGSGなどの実施例に記載されるリンカー配列を含む、本明細書に記載される配列を含む。
【0277】
特に好ましい一実施形態では、本発明によるポリエピトープポリペプチドなどの1つ以上のネオエピトープを組み込んだポリペプチドを、抗原提示細胞などの患者の細胞で発現されてポリペプチドを産生し得る核酸、好ましくはインビトロ転写または合成RNAなどのRNAの形態で患者に投与する。本発明はまた、本発明の目的のために、「ポリエピトープポリペプチド」という用語に含まれる1つ以上のマルチエピトープポリペプチドを、好ましくは抗原提示細胞などの患者の細胞で発現されて1つ以上のポリペプチドを産生し得る核酸、好ましくはインビトロ転写または合成RNAなどのRNAの形態で投与することも想定する。複数のマルチエピトープポリペプチドの投与の場合、異なるマルチエピトープポリペプチドによって提供されるネオエピトープは、異なるかまたは部分的に重複していてもよい。ひとたび抗原提示細胞などの患者の細胞に存在すると、本発明によるポリペプチドは、プロセシングされて、本発明に従って同定されたネオエピトープを生成する。本発明に従って提供されるワクチンの投与は、好ましくは、MHC提示エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対するCD8+T細胞応答を誘発することができる、MHCクラスI提示エピトープを提供する。本発明に従って提供されるワクチンの投与はまた、MHC提示エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対するCD4+T細胞応答を誘発することができる、MHCクラスII提示エピトープも提供し得る。さらに、本発明に従って提供されるワクチンの投与は、1つ以上のネオエピトープ(公知のネオエピトープおよび本発明に従って同定されたネオエピトープを含む)、ならびに癌特異的体細胞変異を含まないが癌細胞によって発現され、好ましくは癌細胞に対する免疫応答、好ましくは癌特異的免疫応答を誘導する1つ以上のエピトープを提供し得る。
【0278】
本発明に従って提供されるワクチンは、組換えワクチンであってもよい。
【0279】
本発明に関連して「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作製された」ことを意味する。好ましくは、本発明に関連して組換えポリペプチドなどの「組換え実体」は、天然には存在せず、好ましくは天然では組み合わされないアミノ酸または核酸配列などの実体の組合せの結果である。例えば、本発明に関連して組換えポリペプチドは、ネオエピトープ、または例えばペプチド結合もしくは適切なリンカーによって互いに融合された異なるタンパク質もしくは同じタンパク質の異なる部分に由来するワクチン配列などの、いくつかのアミノ酸配列を含み得る。
【0280】
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人によって意図的に改変されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。
【0281】
本明細書に記載の薬剤および組成物は、疾患、例えば、抗原を発現し、その断片を提示する疾患細胞の存在を特徴とする疾患を有する被験体を治療するために使用することができる。特に好ましい疾患は癌疾患である。本明細書に記載の薬剤および組成物は、本明細書に記載の疾患を予防するための免疫化またはワクチン接種にも使用し得る。
【0282】
「疾患」という用語は、個体の身体を侵す異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、もともと感染症などの外部源からの因子によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能障害によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしばより広く使用され、罹患した個体に疼痛、機能障害、窮迫、社会的問題、もしくは死亡を引き起こす、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす状態を指す。このより広い意味では、疾患は時に、損傷、無力、障害、症候群、感染、孤立した症状、逸脱した挙動、および構造と機能の非定型なバリエーションを含むが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリーとみなされ得る。多くの疾患を患い、それと共に生活することは人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的にだけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。
【0283】
「正常な」という用語は、健康な状態または健康な被験体もしくは組織における状態、すなわち非病的状態を指し、「健康な」とは、好ましくは非癌性を意味する。
【0284】
「抗原に関連する疾患」または「抗原が関与する疾患」という用語は、抗原に関係する任意の疾患、例えば抗原または抗原を発現する細胞の存在を特徴とする疾患を指す。抗原が関与する疾患は、癌疾患または単に癌であり得る。上述のように、抗原は、腫瘍関連抗原などの疾患関連抗原であり得る。
【0285】
「抗原を発現する細胞が関与する疾患」とは、本発明によれば、疾患組織または器官の細胞における抗原の発現が検出されることを意味する。疾患組織または器官の細胞における発現は、健常組織または器官の状態と比較して増加し得る。増加とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%、さらにはそれ以上の増加を指す。一実施形態では、発現は疾患組織でのみ認められ、健常組織での発現は抑制される。本発明によれば、抗原を発現する細胞が関与するまたは関連する疾患には、癌疾患が含まれる。
【0286】
「癌疾患」または「癌」という用語は、典型的には無秩序な細胞成長を特徴とする個体の生理学的状態を指すかまたは表す。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるが、これらに限定されない。より具体的には、そのような癌の例には、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が含まれるが、これらに限定されない。本発明による「癌」という用語は、癌転移も含む。
【0287】
本発明によれば、「腫瘍」または「腫瘍疾患」という用語は、好ましくは腫脹または病変を形成する細胞(新生細胞、腫瘍形成性細胞または腫瘍細胞と呼ばれる)の異常な成長を指す。「腫瘍細胞」とは、急速な制御されない細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。腫瘍は、構造機構および正常組織との機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、通常、良性、前悪性または悪性のいずれかであり得る明確な組織塊を形成する。
【0288】
本発明の目的のために、「癌」および「癌疾患」という用語は、「腫瘍」および「腫瘍疾患」という用語と互換的に使用される。
【0289】
「転移」とは、癌細胞がその元の部位から身体の別の部位に広がることを意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発性腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、内皮基底膜の貫通による体腔および血管への進入、次いで血液によって輸送された後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新しい腫瘍、すなわち二次腫瘍または転移性腫瘍の成長は、血管新生に依存する。腫瘍転移は、腫瘍細胞または成分が残存して転移能を発現し得るため、しばしば原発性腫瘍の除去後にも起こる。一実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発性腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。
【0290】
二次腫瘍または転移性腫瘍の細胞は、元の腫瘍の細胞に類似する。これは、例えば卵巣癌が肝臓に転移した場合、二次腫瘍は異常な肝臓細胞ではなく、異常な卵巣細胞で構成されることを意味する。そこで、肝臓の腫瘍は、肝臓癌ではなく転移性卵巣癌と呼ばれる。
【0291】
「循環腫瘍細胞」または「CTC」という用語は、原発性腫瘍または腫瘍転移から分離して血流中を循環する細胞に関する。CTCは、異なる組織におけるさらなる腫瘍(転移)のその後の成長のための種子を構成し得る。循環腫瘍細胞は、転移性疾患を有する患者の全血1mLあたり1~10個程度のCTCの頻度で認められる。CTCを単離するための研究方法が開発されている。CTCを単離するためのいくつかの研究方法、例えば上皮細胞が正常な血液細胞には存在しない細胞接着タンパク質EpCAMを一般的に発現するという事実を利用する技術が当技術分野で記述されている。免疫磁気ビーズに基づく捕捉は、磁気粒子と結合したEpCAMに対する抗体で血液標本を処理し、続いて、タグ付けされた細胞を磁場中で分離することを含む。次いで、単離された細胞を、別の上皮マーカーであるサイトケラチンに対する抗体、および一般的な白血球マーカーCD45で染色して、まれなCTCを混入白血球から区別する。この堅固で半自動化されたアプローチは、CTCを約1個のCTC/mLの平均収率および0.1%の純度で同定する(Allard et al.,2004:Clin Cancer Res 10,6897-6904)。CTCを単離する2番目の方法は、EpCAMに対する抗体で被覆することによって機能的にした80,000個のマイクロポストを包埋したチャンバに全血を流すことを含む、マイクロ流体に基づくCTC捕捉装置を使用する。次いで、CTCを、サイトケラチンまたは前立腺癌のPSAもしくは乳癌のHER2などの組織特異的マーカーのいずれかに対する二次抗体で染色し、マイクロポストを三次元座標に沿って複数の平面で自動走査することによって可視化する。CTCチップは、50細胞/mlの収率中央値および1~80%の範囲の純度で患者のサイトケラチン陽性循環腫瘍細胞を同定することができる(Nagrath et al.,2007:Nature 450,1235-1239)。CTCを単離するための別の可能性は、血液チューブ中のCTCを捕捉、同定、および計数するVeridex,LLC(Raritan,NJ)のCellSearch(商標)循環腫瘍細胞(CTC)試験を使用することである。CellSearch(商標)システムは、免疫磁気標識および自動デジタル顕微鏡検査の組合せに基づく、全血中のCTCの計数のための米国食品医薬品局(FDA)に認可された方法である。いるCTCを単離するための他の方法が文献に記載されており、そのすべてが本発明と併せて使用することができる。
【0292】
再発は、人が過去に影響を受けた状態によって再び影響を受ける場合に起こる。例えば、患者が腫瘍疾患を患い、前記疾患の治療を受けて成功し、前記疾患を再び発症する場合、前記新たに発症した疾患は再発とみなされ得る。しかし、本発明によれば、腫瘍疾患の再発は、元の腫瘍部位でも起こり得るが、必ずしもそうとは限らない。したがって、例えば、患者が卵巣腫瘍を患い、治療を受けて成功した場合、再発は、卵巣腫瘍の発生または卵巣とは異なる部位での腫瘍の発生であり得る。腫瘍の再発には、腫瘍が元の腫瘍の部位とは異なる部位で発生する状況および元の腫瘍の部位で発生する状況も含まれる。好ましくは、患者が治療を受けた元の腫瘍は原発性腫瘍であり、元の腫瘍の部位とは異なる部位の腫瘍は二次腫瘍または転移性腫瘍である。
【0293】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導、増強、または抑制することによる疾患または状態の治療に関する。免疫応答を誘発または増幅するように設計された免疫療法は、活性化免疫療法として分類され、免疫応答を低減または抑制する免疫療法は抑制免疫療法として分類される。「免疫療法」という用語には、抗原免疫化もしくは抗原ワクチン接種、または腫瘍免疫化もしくは腫瘍ワクチン接種が含まれる。「免疫療法」という用語はまた、関節リウマチ、アレルギー、糖尿病または多発性硬化症などの自己免疫疾患に関連して不適切な免疫応答をより適切な免疫応答に調節するように、免疫応答を操作することにも関する。
【0294】
「免疫化」または「ワクチン接種」という用語は、例えば治療的または予防的理由で、免疫応答を誘導する目的で個体に抗原を投与する工程を表す。
【0295】
「治療的処置」または単に「治療」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長させる(増加させる)任意の治療に関する。前記治療は、個体の疾患を除去し、個体の疾患の発症を停止もしくは遅延させ、個体の疾患の発症を阻害もしくは遅延させ、個体の症状の頻度もしくは重症度を低下させ、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個体の再発を減少させ得る。
【0296】
「予防的治療」または「予防的処置」という用語は、個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図した任意の治療に関する。「予防的治療」または「予防的処置」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0297】
「保護する」、「予防する」、「予防的」、「防止的」、または「保護的」という用語は、個体における疾患、例えば腫瘍の発生および/または伝播の予防および/または治療に関する。例えば、免疫療法の予防的投与、例えば本明細書に記載の組成物を投与することによる予防的投与は、受容する個体を腫瘍の発生から保護することができる。例えば、免疫療法の治療的投与、例えば本明細書に記載の組成物を投与することによる治療的投与は、疾患の発症を停止させる、例えば腫瘍の進行/成長の阻害をもたらすことができる。これは、好ましくは腫瘍の除去をもたらす、腫瘍の進行/成長の減速、特に腫瘍の進行の中断を含む。免疫療法の治療的投与は、例えば既存の腫瘍の播種または転移から個体を保護し得る。
【0298】
「個体」または「被験体」という用語は、脊椎動物、特に哺乳動物に関する。例えば、本発明に関連して哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長動物、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ等のような飼いならされた哺乳動物、マウス、ラット、ウサギ、モルモット等のような実験動物、ならびに動物園の動物などの捕獲されている動物である。「被験体」という用語は、鳥類(特にニワトリ、アヒル、ガチョウ、七面鳥などの飼いならされた鳥)、および魚類(特に養殖魚、例えばサケまたはナマズ)などの非哺乳類脊椎動物にも関連する。本明細書で使用される「動物」という用語には、ヒトも含まれる。好ましくは、「患者」という用語は、罹患した個体に関する。
【0299】
本明細書に記載される薬剤は、任意の適切な医薬組成物の形態で投与し得る。「医薬組成物」という用語は、治療上有効な薬剤またはその塩を、好ましくは緩衝剤、防腐剤および張度調整剤などの医薬賦形剤と共に含む製剤に関する。前記医薬組成物は、前記医薬組成物を個体に投与することによって疾患または障害を治療する、予防する、またはその重症度を軽減するのに有用である。医薬組成物は、当技術分野では医薬製剤としても知られる。医薬組成物は、局所的または全身的に投与することができる。
【0300】
「全身投与」という用語は、薬剤が個体の体内に有意の量で広く分布するようになり、生物学的作用を発現するように、治療上有効な薬剤を投与することを指す。本発明によれば、投与は非経口投与によることが好ましい。
【0301】
「非経口投与」という用語は、治療上有効な薬剤を、薬剤が腸を通過しないように投与することを指す。「非経口投与」という用語には、静脈内投与、皮下投与、皮内投与または動脈内投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0302】
特に好ましい一実施形態では、本発明による組成物は、骨格筋などの筋肉組織に投与される。したがって、筋肉内注射等による筋肉内投与は好ましい投与経路である。
【0303】
投与は様々な方法で達成することができる。一実施形態では、本発明による組成物は注射によって投与される。好ましい実施形態では、注射は針によって行われる。代替手段として、無針注射も使用し得る。
【0304】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つのアジュバントを含み得る。「アジュバント」という用語は、個体に抗原または抗原ペプチドと組み合わせて投与された場合に、免疫応答を延長または増強または促進する化合物に関する。アジュバントは、抗原の表面の増加、体内での抗原の保持の延長、抗原放出の遅延、マクロファージへの抗原の標的化、抗原の取り込みの増加、抗原プロセシングの増強、サイトカイン放出の刺激、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、T細胞などの免疫細胞の刺激と活性化、および免疫細胞の非特異的活性化を含む1つ以上の機構によってその生物活性を発揮すると想定されている。アジュバントは、油エマルジョン(例えばフロイントアジュバント)、無機化合物(ミョウバンなど)、細菌産物(百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素など)、または免疫刺激複合体などの異種群の化合物を含む。アジュバントの例には、サポニン、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、トコフェロールまたはミョウバンが含まれるが、これらに限定されない。
【0305】
本発明による医薬組成物は、一般に「薬学的に有効な量」および「薬学的に許容される製剤」で適用される。
【0306】
「薬学的に有効な量」という用語は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻止に関する。これは、疾患の進行を遅くすること、特に疾患の進行を妨げるまたは逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の防止であり得る。本明細書に記載の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズおよび体重を含む患者の個々のパラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに類似の因子に依存する。したがって、本明細書に記載の組成物の投与量は、様々なそのようなパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される実質的により高い用量)を使用し得る。
【0307】
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0308】
本発明の医薬組成物は、塩、緩衝剤、防腐剤、担体および場合により他の治療薬を含み得る。好ましくは、本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む。
【0309】
「賦形剤」という用語は、結合剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤などの、活性成分ではない医薬組成物中のすべての物質を示すことが意図されている。
【0310】
「希釈剤」という用語は、希釈するおよび/または希薄にする作用物質に関する。さらに、「希釈剤」という用語には、流体、液体または固体の懸濁液および/または混合媒体のいずれか1つ以上が含まれる。
【0311】
「担体」という用語は、ヒトへの投与に適した1つ以上の適合性の固体または液体の充填剤または希釈剤に関する。「担体」という用語は、活性成分の適用を容易にするために活性成分と組み合わせる天然または合成の有機または無機成分に関する。好ましくは、担体成分は、鉱油、動物、または植物由来するもの、例えば落花生油、大豆油、ゴマ油、ヒマワリ油等を含む、水または油などの滅菌液体である。塩溶液および水性デキストロースおよびグリセリン溶液も、水性担体化合物として使用し得る。
【0312】
治療的使用のための薬学的に許容される担体または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。適切な担体の例には、例えば炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが含まれる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロールおよび水が含まれる。
【0313】
医薬担体、賦形剤または希釈剤は、意図される投与経路および標準的な薬務に関して選択することができる。本発明の医薬組成物は、担体(1もしくは複数)、賦形剤(1もしくは複数)または希釈剤(1もしくは複数)として、またはそれらに加えて、任意の適切な結合剤(1もしくは複数)、潤滑剤(1もしくは複数)、懸濁剤(1もしくは複数)、コーティング剤(1もしくは複数)および/または可溶化剤(1もしくは複数)を含み得る。適切な結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、グルコースなどの天然糖、無水ラクトース、自由流動ラクトース、βラクトース、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ゴム、カルボキシメチルセルロースならびにポリエチレングリコールが含まれる。適切な潤滑剤の例には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。防腐剤、安定剤、染料、さらには香味剤を医薬組成物に提供してもよい。防腐剤の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。酸化防止剤および懸濁剤も使用し得る。
【0314】
一実施形態では、組成物は水性組成物である。水性組成物は、場合により溶質、例えば塩を含んでもよい。一実施形態では、組成物は凍結乾燥組成物の形態である。凍結乾燥組成物は、それぞれの水性組成物を凍結乾燥することによって得られる。
【0315】
本明細書で提供される薬剤および組成物は、単独で、または外科手術、照射、化学療法および/もしくは骨髄移植(自己、同系、同種異系もしくは非血縁)などの他の治療レジメンと組み合わせて使用し得る。
【0316】
本発明を詳細に説明し、図面および実施例によって例示するが、これらは例示目的のみに使用するものであり、限定することを意図しない。説明および実施例によって、同様に本発明に含まれるさらなる実施形態が当業者にアクセス可能である。
【図面の簡単な説明】
【0317】
図1A】ネオエピトープに対する純粋なCD4または二重のCD4/CD8T細胞応答の誘導の例示的症例。図1aは、患者のペンタトープRNAで刺激した患者P19のワクチン接種前と接種後のCD4およびCD8T細胞濃縮培養物を、ST5(腫瘍形成性サプレッサー5)タンパク質中の変異ネオエピトープをカバーするOLPを負荷した自己DCに対して読み出した。
図1B図1bは、患者特異的ペンタトープRNAで刺激した患者P19のワクチン接種前と接種後のCD4およびCD8T細胞濃縮培養物を、UTP6(小サブユニットプロセソーム成分)タンパク質中の変異ネオエピトープをカバーするOLPを負荷した自己DCに対してIFNγ-ELISpotで読み出した。
図1C図1cは、患者特異的ペンタトープRNAで刺激した患者P19のワクチン接種前と接種後のCD4およびCD8T細胞濃縮培養物を、UTP6(小サブユニットプロセソーム成分)タンパク質中の変異ネオエピトープをカバーするOLPを負荷した自己DCに対してIFNγ-ELISpotで読み出した。図1cは、CD4およびCD8T細胞培養物を、刺激後にフローサイトメトリによって純度について品質管理した。
図2】患者P01のCD8T細胞からクローニングしたNARFL-E62K特異的TCRの特異性。NARFL(核プレラミンA認識因子様)タンパク質中の変異に対するTCR No.1、No.5、No.7またはNo.9でトランスフェクトしたCD8T細胞を、HLA-A*3101でトランスフェクトしたK562細胞の認識についてIFNg-ELISpotによって試験し、変異配列または野生型配列のいずれかをカバーする個々の15量体ペプチドでパルスした。
図3】ネオエピトープRNAワクチン接種下での再発の危険性が高い黒色腫患者における疾患制御。図3aは、単一TILからクローニングしたTCR No.8のTCR-α/β鎖をコードするRNAを健常ドナー由来のCD8T細胞にトランスフェクトし、RETSAT-P546S OLPでパルスした患者のHLAクラスI分子の2つを発現するK562細胞で試験した。図3bは、2つのHLA対立遺伝子での内在ネオエピトープの提示の描画。変異に下線を付している(図4も参照のこと)。
図4】同じ突然変異によって生成された2つの異なるHLA拘束性T細胞エピトープに対するCD8T細胞応答の誘導。図4aは、個々のP17-RETSAT-P546S OLPを負荷した自己DCでのP17のワクチン接種後のCD8T細胞のIFNγELISpotアッセイ試験。図4bは、多量体染色による患者P17からのワクチン接種後のTILにおけるP17-RETSAT-P546(OLP 3および4によってコードされる)内の最も良好に予測されたHLA A*6801拘束性最小エピトープであるHSCVMASLRを認識するCD8T細胞の検出。図4cは、OLP 1および2を認識する患者P17のTILから得られた2つのHLA B*3701拘束性RETSAT-P546S-TCRの特異性。
図5A】ネオエピトープに対するCD4+およびCD8+T細胞の両方によって媒介される既存の免疫応答。図5Aは、OLPのプールで刺激し、標的001_107をカバーするOLPのプールを負荷した自己DCに対してIFNγ-ELISpotで読み出した患者P01のCD4+およびCD8+T細胞濃縮培養物。標的001_107にはワクチン接種しなかった。
図5B図5Bは、CD4+およびCD8+T細胞培養物(IVS)を、刺激後にフローサイトメトリによって純度について品質管理した。
図5C図5Cは、OLPのプールで刺激し、標的006_003をカバーするOLPのプールを負荷した自己DCに対してIFNγ-ELISpotで読み出した患者P06のCD4+およびCD8+T細胞濃縮培養物。標的006_003にはワクチン接種しなかった。
図5D図5Dは、CD4+およびCD8+T細胞培養物を、刺激後にフローサイトメトリによって純度について品質管理した。
【実施例0318】
本明細書で使用される技術および方法は、本明細書に記載されているか、またはそれ自体既知の方法で、例えばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されているように実施される。キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、特に指示されない限り、製造者の情報に従って実施される。
【0319】
実施例1:材料および方法
試験デザイン
この多施設第I相試験(NCT02035956)の主な目的は、ワクチンの安全性およびワクチンが誘導する抗原特異的免疫応答を評価することであった。
【0320】
この試験は、ヘルシンキ宣言および臨床試験実施基準ガイドラインに従って、各参加施設および管轄規制当局の施設内倫理委員会または独立倫理委員会の承認を得て実施された。すべての患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0321】
適格患者は18歳以上で、治療のいずれかの段階で完全寛解、部分寛解または安定した疾患の悪性黒色腫ステージIIIA-CまたはIV(AJCC 2009黒色腫分類)を有していた。転移のある患者は、個別化ワクチンが入手可能になるまで活性化合物で治療できる場合、適格であった。患者は、十分な血液学的および末端器官機能を有していなければならなかった。主な除外基準は、臨床的に関連する自己免疫疾患、HIV、HBV、HCV、および急性EBVまたはCMV感染、ならびに脳転移であった。正規の治療は43日以内に8回の注射であった;継続的な治療は治験担当医師の裁量に委ねられた。RNAペンタトープを1.0mg/mLのリンガー液(RotexmedicaまたはBAG Healthcare)で希釈し、別々の鼠径リンパ節に注射した。2つの異なる用量範囲を調べるために、10人の患者に治療あたり500μg、3人の患者に1000μgを投与した。
【0322】
主な試験評価
免疫原性試験のための白血球除去法を、初回の前(訪問12、「ワクチン接種前」と称される)および8回目のワクチン注射後(訪問20、「ワクチン接種後」と称される)に実施した。
【0323】
CTスキャンおよびMRIによる胸部、腹部、脳のイメージングを、ベースライン(訪問1)、ワクチン接種前(訪問12)、90日目(訪問21)および継続治療の終了時(訪問26)に、局所イメージングガイドラインとおよびRECISTバージョン1.1および免疫関連奏効判定基準(irRC)ガイドライン(Wolchok, J.D. et al.Clin.Cancer Res.15,7412-20(2009))に従って実施した。安全性は、グレード1からグレード5まで、CTCAE v4.03に従って特徴付けた。
【0324】
本明細書に示されているデータは、2016年11月のデータカットオフ日での予備的な中間解析に基づく。
【0325】
患者材料
ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)または新鮮凍結腫瘍組織を通常の診断切除で取得し、H&E染色切片で腫瘍含有量を評価した。
【0326】
新鮮腫瘍試料を腫瘍浸潤リンパ球(TIL)および原発腫瘍細胞株の調製に使用した。
【0327】
TILを、以前に公表されているように(Dudley, M.E.,Wunderlich,J.R.,Shelton,T.E.,Even,J.&Rosenberg,S.A.J.Immunother.26,332-42)、2%ヒト血清アルブミン(CSL-Behring)および6000U/mL IL-2(Proleukin S、Novartis)を添加したX-Vivo 15培地(Lonza)で2週間培養した新鮮腫瘍組織の小片から成長させた。その後、30ng/mLの抗CD3 IgG2a(クローンOKT3、eBiosciences)および300U/mLのIL-2(Proleukin S、Novartis)の存在下で、照射した同種異系PBMCをフィーダ細胞として使用して、TILを2週間増殖させた。
【0328】
患者由来の黒色腫細胞株の生成のために、新鮮腫瘍組織断片を、15%FCS(Biochrome AG)を添加したRPMI1640培地(Life Technologies)で培養した。
【0329】
免疫モニタリングのためまたは製造工程の出発材料として得たPBMCは、健常ドナーの軟膜または黒色腫患者の末梢血試料からFicoll-Hypaque(Amersham Biosciences)密度勾配遠心分離によって単離した。未成熟DC(DC)は、以前に記載されているように(Holtkamp,S.et al.Blood 108,4009-17(2006))生成した。
【0330】
次世代シーケンシング
QiagenのQIAamp DNA FFPE Tissueキットの修正版を使用して、3つの10μmカールのFFPE腫瘍組織からDNAを3回重複して抽出した。QiagenのRNeasy FFPEキットを使用して、FFPE腫瘍カールからのRNA抽出を2回重複して行った。新鮮凍結腫瘍試料または細胞からのDNAおよびRNA抽出には、QiagenのDNeasy Blood and TissueキットおよびRNeasy Mini Kitをそれぞれ使用した。
【0331】
抽出した核酸を様々なライブラリの作製に使用した。RNA-Seqライブラリを、IlluminaのTruSeq RNA Sample PrepキットV2およびインプットとして1μgの全RNAを使用して、FFPE腫瘍または細胞株RNAから2つ重複して調製した。DNAエクソーム捕捉ライブラリを、AgilentのSureSelect XT V4 Human All Exonを使用して、1~3μgのFFPE腫瘍DNAおよび一致するPBMC DNAから2つ重複して構築した。
【0332】
MZ-GaBa-018および一致するPBMCの全ゲノムシーケンシング(WGS)のためのNGSライブラリを、microTUBE-15(Covaris Ltd)を使用して総量15μLのゲノムDNA 100ngを約160bpの平均断片長に断片化することによって調製した。ライブラリは、断片化したgDNA 25ngをインプットとして使用して、NEBのIllumina(登録商標)用のNEBNext(登録商標)Ultra(商標)DNA Library Prep Kitで調製した。
【0333】
次世代シーケンシング(NGS)のために、ライブラリを2nMまたは10nMに希釈し、Illumina TruSeq PE Clusterキットv3-cBot-HSを使用して10pMでクラスタ化した。各エクソーム捕捉ライブラリを1つのレーンで個別に配列決定したが、RNAライブラリの複製物は、1つのレーンで2プレックスとして配列決定した。すべてのライブラリを、IlluminaのTruSeq SBS Kit v3-HS 50サイクルの2つを使用して、Illumina HiSeq 2500プラットフォームで50-ntのペアエンド配列決定した。MZ-GaBa-018細胞株および一致するPBMC のWGSライブラリをそれぞれ4レーンに広げ、IlluminaのTruSeq SBSキットv3-HS 200サイクルを使用して同じプラットフォームで100ntのペアエンド配列決定した。
【0334】
バイオインフォマティクスおよび突然変異の発見
1人の患者に対するすべてのミュータノーム関連データ解析工程は、Pythonプログラミング言語で実装されたソフトウェアパイプラインによって調整した。DNAライブラリについては、少なくとも150x10のペアエンド50ntリード、RNAライブラリについては、少なくとも75x10のペアエンド50ntリードが必要であった。
【0335】
変異検出のために、bwa(Li,H.&Durbin,R.Bioinformatics 25,1754-1760(2009))を使用してDNAリードを参照ゲノムhg19に整列させた。腫瘍および一致する正常試料からの重複エクソームを単一ヌクレオチド変異体について分析した。正常試料中の推定上のホモ接合遺伝子型を有する遺伝子座を同定し、フィルタをかけて単一ヌクレオチド変異体に対する高信頼性コールを保持した。残りの部位を、推定上のホモ接合またはヘテロ接合変異事象についてさらに検査した。潜在的な偽陽性を排除するために疑わしい部位にフィルタをかけた。複製物の合計および個別の複製物の両方を試験することによって複製物を組み込んだ。単一ヌクレオチド変異体の最終リストは、正常試料の高信頼性ホモ接合部位、および腫瘍試料の高信頼性ヘテロ接合またはホモ接合変異事象で構成された。変異体を遺伝子、転写物、潜在的なアミノ酸配列変化およびRNA-Seq由来の発現値と関連付けるために、同定された変異体のゲノム座標をUCSCの公知の遺伝子転写物座標と比較した。
【0336】
RNA-Seqについては、bowtie(Langmead,B.,Trapnell,C.,Pop,M.&Salzberg,S.L.Genome Biol.10,R25(2009))を使用してRNAリードをhg19参照ゲノムおよびトランスクリプトームに整列させ、遺伝子発現をUCSCの公知の遺伝子転写物およびエクソン座標との比較によって決定し、続いてRPKM単位に正規化した(Mortazavi,A.et al.Nat.Methods 5,1-8(2008))。
【0337】
ネオエピトープの優先順位付けおよび選択
同定された単一ヌクレオチド変異体から、進化的手順によって最大46個の予測変異体を選択した:a)ナンセンス変異体の除去ならびに非ゼロのエクソンおよび転写物発現によるフィルタリング;続いて、安定ソートアルゴリズムを使用して最初にエクソン発現で、次にHLAクラスI結合予測スコアでソートし、最大46個の変異体を選択する(P01~P04)。b)RNA-Seqデータ内のナンセンス変異体の除去ならびに非ゼロのエクソンおよび転写物発現と非ゼロの変異体頻度によるフィルタリング;続いて、安定ソートアルゴリズムを使用して最初にエクソン発現で、次にHLAクラスI結合予測スコアでソートし、最大23個の標的ペプチド配列を選択する;続いて、安定ソートアルゴリズムを使用して最初にHLAクラスI結合予測スコアで、次にエクソン発現で残りの標的ペプチド配列をソートし、最大23個の追加の標的ペプチド配列を選択する;両方の選択工程は、46個を超える選択変異体をもたらさなかった(P05-P07、P09-P12)、ならびにc)RNA-Seqデータ内のナンセンス変異体の除去ならびに非ゼロのエクソンおよび転写物発現と非ゼロの変異体頻度によるフィルタリング;続いて、安定ソートアルゴリズムを使用して最初にエクソン発現で、次にHLAクラスII結合予測スコアでソートし、遺伝子発現が10 RPKM以上の最大20個の標的ペプチド配列を選択する;続いて、安定ソートアルゴリズムを使用して最初に発現で、次にHLAクラスI結合予測スコアで残りの標的ペプチド配列をソートし、最大20個の追加の標的ペプチド配列を選択する;続いて、安定ソートアルゴリズムを使用して最初にHLAクラスI結合予測スコアで、次にエクソン発現で残りの標的ペプチド配列をソートし、最大46個の選択変異体を満たした(P17、P19)。患者あたり最大10個の変異標的ペプチドの最終選択には、MHC IおよびMHC II結合予測、遺伝子発現および変異体対立遺伝子頻度に基づいて標的ペプチドを評価する標的選択委員会の決定が必要であった。
【0338】
HLA結合親和性は、HLA-A/Bについてはすべての変異体を含む8~11量体、またはHLA-DRB/DQB結合の推定には15量体を使用して、IEDB T細胞予測ツール(Kim,Y.et al.Nucleic Acids Res.40,W525-30(2012))(バージョン2.5)のIEDB推奨モードによって予測した。単一変異体についてのすべての予測から、最良のコンセンサススコアをそれぞれの変異体に関連付けた。
【0339】
このデータに基づき、サンガーシーケンシングによる確認のために単一ヌクレオチド変異体の短いリストを選択した。
【0340】
確認サンガーシーケンシング
プライマー設計のために、変異部位に隣接するゲノム配列を参照ゲノムから抽出し、primer3ソフトウェアのインプットとして使用した(Untergasser,A.et al.Nucleic Acids Res.40,e115(2012);Koressaar,T.&Remm,M.Bioinformatics 23,1289-91(2007))。blastを使用してアウトプットプライマー対を参照ゲノムに整列させた(Kent,W.J.Genome Res.12,656-64(2002))。オフターゲット遺伝子座へのアラインメントを有するプライマー対を除去し、残りの最適なプライマー対を各インプット部位に戻した。
【0341】
PCR(初期活性化のために95°Cで15分、続いて変性のために94°Cで30秒の35サイクル、アニーリングのために60°Cで30秒、伸長のために72°Cで30秒、および最終伸長のために72°Cで6分)によって腫瘍組織およびPBMC DNAから選択した各変異遺伝子座を増幅することにより、サンガーシーケンシングを実施した。各PCR産物を、QIAxcel(Qiagen)装置を使用して品質管理し、ExoI/AP処理またはMinElute PCR Purification Kit(Qiagen(登録商標))によって精製した。サンガーシーケンシングは、Eurofins/MWG Ebersberg,Germanyによって実施された。
【0342】
インビトロ転写RNAの製造
製造は、GMP(適正製造基準)ガイドラインに従って実施した。5つの推定上のネオエピトープをコードする合成DNA断片を、HLAクラスIおよびII経路への最適化ルーティングのためのsecドメインおよびMITDドメイン(Kreiter,S.et al.J.Immunol.180,309-318(2008))ならびにRNAの安定性と翻訳効率を改善するための骨格配列要素(Holtkamp,S.et al.Blood 108,4009-17(2006))を含む出発ベクターにクローニングした。DNAを線状化し、分光光度的に定量化し、クリーンルーム環境において7.5mM ATP、CTP、UTP、GTPおよび3mM β-S-ACA(D1)キャップ類似体(Kuhn,A.N. et al.Gene Ther.17,961-971(2010))の存在下で、以前に記載されているように(Grudzien-Nogalska,E.et al.Methods Mol.Biol.969,55-72(2013))T7 RNAポリメラーゼによるインビトロ転写に供した。磁性粒子を使用してRNAを精製し(Berensmeier,S.Appl.Microbiol.Biotechnol.73,495-504(2006))、ゲル電気泳動およびマイクロ流体キャピラリー電気泳動(Experion、Biorad)によって完全性を評価した。さらなる分析には、濃度、外観、pH、浸透圧、効力、内毒素レベルおよび無菌性の測定が含まれた。
【0343】
PBMCのインビトロ刺激
CD4およびCD8T細胞を、マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用して凍結保存PBMCから単離した。T細胞、CD4またはCD8除去PBMCを一晩静置した。CD4またはCD8除去PBMCを、患者特異的変異標的、eGFP、インフルエンザマトリックスタンパク質1(M1)または破傷風p2/p16配列(陽性対照)をコードするRNAでエレクトロポレーションし、37°Cで3時間静置し、15Gyで照射した。次いで、CD4/CD8T細胞およびエレクトロポレーションして照射した抗原提示細胞を2:1のエフェクター対標的比で組み合わせた。1日後、10U/mL IL-2(Proleukin S、Novartis)および5ng/mL IL-15(Peprotech)を含む新鮮培地を添加した。培養の開始から7日後にIL-2を補充した。刺激の11日後、細胞をフローサイトメトリで分析し、ELISpotアッセイで使用した。
【0344】
ELISpot
IFNγに特異的な抗体(Mabtech)でプレコーティングしたマルチスクリーンフィルタプレート(Merck Millipore)をPBSで洗浄し、2%ヒト血清アルブミン(CSL-Behring)を含むX-Vivo 15(Lonza)で1~5時間ブロックした。0.5~3x10個のエフェクター細胞/ウェルを、RNAでエレクトロポレーションした、またはペプチド、黒色腫細胞株またはHLAクラスIもしくはIIをトランスフェクトしたK562細胞を負荷した、自己DCで16~20時間(TILでは40時間)刺激した。エクスビボT細胞応答の分析のために、凍結保存PBMCを、37℃で2~5時間の休止期間後にELISpotに供した。すべての試験は二重または三重に実施し、アッセイ陽性対照(ブドウ球菌(Staphyloccocus)エンテロトキシンB(Sigma Aldrich))および反応性が公知の参照ドナーからの細胞を含んだ。ビオチン結合抗IFNγ抗体(Mabtech)でスポットを可視化した後、ExtrAvidin-Alkaline Phosphatase(Sigma-Aldrich)およびBCIP/NBT基質(Sigma-Aldrich)と共にインキュベートした。CTLのImmunoSpot(登録商標)Series S five Versa ELISpot Analyzer(S5Versa-02-9038)を使用してプレートをスキャンし、ImmunoCapture V6.3ソフトウェアで分析した。スポット数をそれぞれ三重に実施したものの中央値として要約した。変異RNAまたはペプチドによって刺激したT細胞応答を、対照RNA(ルシフェラーゼ)をエレクトロポレーションした標的細胞または非負荷標的細胞とそれぞれ比較した。応答は、エクスビボ設定では1x10細胞あたり最低5スポット、またはIVS後設定では5x10細胞あたり最低25スポット、およびそれぞれの対照の2倍を超えるスポット数で陽性と定義した。
【0345】
多量体染色およびデータ分析
変異特異的CD8T細胞を、免疫原性変異からの9または10アミノ酸長のエピトープを担持するデキストラマー(Immudex)を使用して同定した。最初に細胞を多量体で染色した後、細胞表面マーカーの染色(CD28 CD28.8、CD197 150503、CD45RA HI100、CD3 UCHT1、CD16 3G8、CD14、MΦP9、CD19 SJ25C1、CD27 L128、CD279 EH12、CD8 RPA-T8 all BDおよびCD4 OKT4 Biolegend)ならびに生細胞/死細胞染色(DAPI BD)を実施した。次に、染色した細胞をBD LSR Fortessa SORPで取得した。一重項、生細胞、多量体陽性事象を、CD3(もしくはCD8)陽性、CD4/CD14/CD16/CD19陰性、またはCD3(もしくはCD8)陽性/CD4陰性事象内で同定した。患者特異的ネオエピトープに対するHLA-A*0201デキストラマーの特異性は、HLA-A*0201血液ドナーの染色の欠如によって実証されている。
【0346】
細胞内サイトカイン染色
単一ネオエピトープをコードするRNAでエレクトロポレーションした自己DCを10:1のE:T比で添加し、ブレフェルジンAおよびモネンシンの存在下に37℃で約16時間培養した。細胞を生存率について染色し(固定可能な生存率染料eFluor506、eBioscience)、続いて表面マーカー(CD8 SK1 BD、CD4 OKT4、Biolegend)について染色した。透過処理後、細胞内サイトカイン染色を行い(IL-2 MQ1-17H12、IFNγ B27 all BDおよびTNFα Mab11 Biolegend)、試料をBD FACS Canto II(Becton Dickinson)で取得した。
【0347】
単一細胞選別
PBMC、精製CD8またはCD4T細胞またはTILの抗原特異的増殖の11日後に、単一の抗原特異的T細胞の選別を行った。選別の前に、2x10個の増殖したT細胞を、それぞれのネオ抗原または対照抗原をコードするIVT RNAでトランスフェクトした2x10個の自己DCで再刺激した。16~20時間後、細胞を回収し、IFNγ分泌アッセイキット(Miltenyi Biotec)を使用してCD14、CD19、CD3、CD8、CD4、CD137、CD134(すべてBD Biosciencesから)およびIFNγに対する蛍光色素結合抗体で処理した。単一のネオ抗原特異的T細胞の選別は、BD FACS Ariaフローサイトメータ(BD Biosciences)で実施した。ウェルあたり1つの二重陽性細胞(IFNγ/CD8、CD137/CD8、IFNγ/CD4またはCD134/CD4)を、3T3-L1キャリア細胞を含む96ウェルV底プレート(Greiner Bio-One)に回収し、遠心分離し、-65°C~-85°Cで保存した。
【0348】
ネオエピトープ特異的TCRのクローニング
単一T細胞からのTCR遺伝子のクローニングを以前に記載されているように実施した(Simon,P.et al.Cancer Immunol.Res.2,1230-44(2014))。簡単に説明すると、Micro RNeasy Kit(Qiagen)で抽出した全RNAを、RevertAid H-Reverse Transcriptase(Thermo Fisher)を用いたテンプレートスイッチcDNA合成に使用し、続いてPfuUltra Hotstart DNA Polymerase(Agilent)を使用して前増幅した。得られたcDNAのアリコートをVα-/Vβ遺伝子特異的マルチプレックスPCRに使用した。キャピラリー電気泳動システム(Qiagen)で生成物を分析した。430~470bpのバンドを有する試料をアガロースゲルでサイズ分画し、バンドを切り出して、Gel Extraction Kit(Qiagen)を使用して精製した。精製断片を配列決定し、IMGT/V-Questツール(Brochet,X.,Lefranc,M.-P.&Giudicelli,V.Nucleic Acids Res.36,W503-8(2008))を使用してそれぞれのV(D)J接合部を分析した。新規で生産的に再構成された対応するTCR鎖のDNAをNotIで消化し、完全なTCR-α/β鎖のインビトロ転写のための適切な骨格を含むpST1ベクターにクローニングした(Simon,P.et al.Cancer Immunol.Res.2,1230-44(2014))。
【0349】
TCR-Typerキット(BioNTech Diagnostics)を使用して、PBMCからの全RNAでTCR-α/βのディープシーケンシングを実施した。得られたDNAライブラリを、2x300bpのペアエンド化学を用いてIllumina MiSeqシーケンサでシ配列決定した。Typer Toolboxソフトウェアを用いてシーケンシングデータを分析した。試料あたりのTCR読み取りの合計数は、1.1x10~1.5x10の範囲であった。
qRT-PCR
【0350】
qRT-PCR
ExpressArt FFPE Clear RNAreadyキット(AmpTec)およびgDNA Eraserと共にPrimeScript(商標)RT Reagent Kit(Takara Bio Inc.)を使用して、それぞれRNAおよびcDNAを作製した。BioMark(商標)HDシステム(Fluidigm(登録商標))または96-Well Applied Biosystems 7300 Real-Time PCR Systemを使用してqRT-PCRを実施した。BioMark(商標)または「BioMark(商標)HD System Fluidigm(登録商標)Advanced Development Protocol 28」でQuantitative SYBR(登録商標)Green Real-Time PCRまたはTaqMan(登録商標)Gene Expression Assaysを使用して、FFPE由来のRNAから「Fast Gene Expression Analysis」に従って試料とアッセイを調製し、分析した。96.96 Gene Expression Dynamic Array IFCを、IFC Controller HXを使用して負荷した。
【0351】
免疫組織化学
3~4μmのFFPE切片の脱パラフィン後、スライドガラスを、0.05%Tween-20(pH6.0)を添加した10mMクエン酸中で120°Cにて10分間煮沸し、その後クエンチし(0.3%Hによって;15分)、室温でPBS中の10%ヤギ血清でブロックした(30分)。
【0352】
スライドガラスを、ブロッキング緩衝液中の0.2μg/mL抗ヒトCD3(F7.2.38;Dako)、0.2μg/mL抗ヒトCD8(C8/144B;Dako)、1μg/mL抗ヒトFoxP3(236A/E7;Abcam)、1:200抗PD-L1(13684;Cell Signaling Technologies)または1:2500抗β-2-ミクログロブリン(D8P1H;Cell Signaling Technologies)と共に2~8°Cで一晩インキュベートした。赤色基質‐色素原溶液(VectorRed;Vector Labs)と共にホースラディッシュペルオキシダーゼ標識二次抗体(BrightVision HRP、Immunologic)を用いて抗体の結合を可視化した。腫瘍細胞を1μg/mLのMelan-A特異的抗体(A103、Dako)で染色した。
【0353】
その後、切片をマイヤーのヘマトキシリン(Carl Roth GmbH)で対比染色し、コンピュータベースの分析(Definiens Developer)による評価に供した。
【0354】
分析のために、スライドガラスをスキャンし(Axio.Scan;Zeiss)、コンピュータ画像解析ソフトウェア(Developer、Definiens)によって、手動で事前に定義した腫瘍、正常組織および壊死領域を定量化した。CD3、CD8およびFoxP3 TILの数を、腫瘍組織として分類された領域で測定した。
【0355】
HLA抗原のクローニング
HLA抗原は、それぞれの高解像度HLAタイピング結果に従ってサービスプロバイダ(Eurofins Genomics)によって合成された。HLA-DQA配列を、DQA1_s(PHO-GCC ACC ATG ATC CTA AAC AAA GCT CTG MTG C)およびDQA1_as(TAT GCG ATC GCT CAC AAK GGC CCY TGG TGT CTG)プライマーを使用して、2.5U Pfuのポリメラーゼでドナー特異的cDNAから増幅した。HLA抗原を適切に消化されたIVTベクターにクローニングした(Simon,P.et al.Cancer Immunol.Res.2,1230-44(2014))。
【0356】
細胞へのRNA導入
予冷した4mmギャップの滅菌エレクトロポレーションキュベット(Bio-Rad)中のX-VIVO 15培地(Lonza)に懸濁した細胞にRNAを添加した。BTX ECM 830方形波エレクトロポレーションシステム(T細胞:500V/3ミリ秒/1パルス;iDC:300V/12ミリ秒/1パルス;バルクPBMC:400V/6ミリ秒/1パルス;MZ-GaBa-018:225V/3ミリ秒/2パルス;K562:200V/8ミリ秒/3パルス)でエレクトロポレーションを実施した。
【0357】
ペプチド
オーバーラップペプチドプール(OLP)と称される、27量体ネオ抗原配列(ネオ抗原あたり4OLP)または対照抗原(HIV-gag、TPTE)をカバーする11アミノ酸のオーバーラップを有する合成15量体ペプチド、または8~11量体エピトープを使用した。すべての合成ペプチドはJPT Peptide Technologies GmbHから購入し、AquaDest(Aqua B.Braun、BRAUN Melsungen)に溶解して、10%DMSOで3mMの最終濃度にした。
【0358】
フローサイトメトリ分析
トランスフェクトしたTCR遺伝子の細胞表面発現を、TCR-β鎖の適切な可変領域ファミリーまたは定常領域に対するPEまたはFITC結合抗TCR抗体(Beckman Coulter)、およびFITCまたはAPC標識抗CD8/CD4抗体(BD Biosciences)を使用したフローサイトメトリによって分析した。TCRトランスフェクトT細胞の機能を評価するために使用される抗原提示細胞のHLA抗原を、FITC標識HLAクラスII特異的抗体(Beckman Coulter)およびPE標識HLAクラスI特異的抗体(BD Biosciences)で染色することによって検出した。BD FACSCanto(商標)II分析フローサイトメータ(BD Biosciences)でフローサイトメトリ分析を実施した。取得したデータは、FlowJoソフトウェアのバージョン10(Tree Star)を使用して分析した。
【0359】
細胞毒性アッセイ
ルシフェラーゼに基づく細胞毒性アッセイを以前に記載されているように実施した(Omokoko,T.A.et al.J.Immunol.Res.2016,9540975(2016))。ルシフェラーゼRNA単独でまたはB2M RNAと組み合わせてトランスフェクトした1x10個の標的細胞を、変異特異的エフェクターT細胞(OKT3活性化TCRトランスフェクトCD8T細胞またはCD4/CD8IVS T細胞)と19~25時間共培養した。D-ルシフェリン(BD Biosciences;最終濃度1.2mg/mL)を含む反応混合物を添加した。1時間後、Tecan Infinite M200リーダ(Tecan)を使用して発光を測定した。総ルシフェラーゼ活性の減少を測定することによって細胞死滅を計算した。生細胞は、ルシフェリンのルシフェラーゼ媒介酸化によって測定した。特異的死滅を次の式に従って計算した:
【数1】
【0360】
アポトーシスアッセイ
カスパーゼ3/7活性化アポトーシスアッセイ(IncuCyte)のために、96ウェルコーニングプレートにウェルあたり1x10個の黒色腫細胞および20x10個のエフェクターT細胞を24時間播種した。カスパーゼ3/7試薬を5mM保存溶液(Essen Bioscience)の1:1000希釈で添加し、各条件を三重に実施した。IncuCyte Zoom Live-contentイメージングシステム(Essen Bioscience)において37°C、5%COで、細胞を10倍の倍率で画像化した。24時間にわたって1時間ごとに4つの画像/ウェルで画像を取得した。IncuCyte分析ソフトウェアを使用してデータを分析し、緑色(アポトーシス)細胞/画像を検出および定量化した。GraphPad Prismソフトウェアを使用して、各時点での緑色オブジェクト数の平均とSDをプロットした。
【0361】
実施例2:ネオエピトープによる個別化RNAワクチン接種の臨床的実現可能性および良好な安全性
以前に、本発明者らは、腫瘍変異の包括的なマッピングから出発して個々のワクチン組成物の製造と上市に至るまで、複数の体細胞変異をコードするRNAワクチン(以下「ネオエピトープRNAワクチン」)の設計と生産のための個別化関連手順を説明した(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015);Vormehr,M.et al.J.Immunol.Res.2015,6(2015);Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016))。これらの手順を、規制ガイドラインに準拠した標準化された工程へとさらに発展させた。
【0362】
ステージIIIおよびIVの黒色腫患者の発現された非同義変異を、通常の凍結またはホルマリン固定・パラフィン包埋(FFPE)腫瘍生検からおよび健常組織DNAの供給源としての血液細胞からの核酸のエクソームおよびRNAシーケンシングによって同定した。変異をランク付けるために2つの独立した原則を適用した。1つは、変異をコードするRNAの高発現レベルと組み合わせて患者のHLAクラスII分子への予測される高親和性結合を使用した。もう1つは、予測されるHLAクラスI結合に基づいた。変異対立遺伝子頻度と相対転写値は、同等の予測HLA結合親和性を有する変異に優先順位を付けるためのさらなる差別化因子として機能した。優先順位付けた腫瘍特異的体細胞変異をサンガーシーケンシングによって確認した。
【0363】
患者ごとに10個の変異を選択し(患者P09については5個のみ)、変異の1つを示す5つの27量体ペプチドをそれぞれコードする2つの合成RNA(ペンタトープRNA)に構築した。適正製造基準(GMP)グレードの工程に従って100%の成功率で高純度のRNAを生産した。RNAワクチンの原薬製造期間の中央値は68日(49~102日の範囲)であった。ファーストインヒューマン使用および研究段階の規制要件により、製造された個別化ワクチンはそれぞれ、変異の選択からワクチンの上市までの合計期間の中央値を103日(89日~160日の範囲)に延長する広範な分析試験を受けた。
【0364】
NY-ESO-1および/またはチロシナーゼ陽性黒色腫を有する患者に、ネオエピトープRNAワクチンが得られるまでの橋渡しのために、これら2つの腫瘍関連共有自己抗原(TAA)をコードするRNAワクチンを提供した。8つの用量の個々のRNAワクチンを超音波制御下でリンパ節に経皮注射した。その後、免疫原性試験のためのワクチン接種後の血液試料を採取した。治験担当医師の裁量でネオエピトープワクチン接種を継続した。
【0365】
20人の患者が臨床試験に参加するためにスクリーニングされ、そのうち16人は選択基準および除外基準に従って適格と認められ、試験に登録された。2人の患者は同意を撤回し、1人の患者は新たに診断された急速に進行する脳転移のために治験治療を開始することができなかった。したがって、合計13人の患者がネオエピトープRNAワクチンを受け、9人の患者は先行して橋渡しのTAA RNAワクチンを受けた。
【0366】
すべての患者は、最大20回のネオエピトープRNAワクチン投与を受けて成功裏に治療を完了した。患者ごとに検出された変異の数(69~1440の範囲)は、黒色腫の予想範囲内であった(Lawrence,M.S.et al.Nature 499,214-8(2013);Vormehr,M. et al.Curr.Opin.Immunol.39,14-22(2016))。10人の患者は、BRAFまたはHRAS/NRAS遺伝子に最も一般的な黒色腫ドライバー変異を有していた(Hodis,E.et al.Cell 150,251-263(2012))。変異プロフィールは、紫外線誘発黒色腫に典型的なシトシンからチミンへの移行(C>T)に支配されていた(Pleasance,E.D.et al.Nature 463,191-196(2009))。
【0367】
全体として、治療はすべての患者に良好に忍容された。報告された18例の重篤な有害事象(SAE)のうちで、2人の患者における4例のSAEは、ネオエピトープワクチン治療下で発現したが、試験薬には関連していなかった。ネオエピトープワクチン治療下で発現した有害事象(AE)は、ほとんどがグレード1または2であった。グレード4または5のAEはなかった。薬物関連AEは、いずれの器官別大分類にも属さなかった。臨床的安全性および結果データは、別のところで詳細に報告する。
【0368】
実施例3:ネオエピトープRNAワクチン接種による多重特異性T細胞免疫の誘導
この試験で個別に投与した125個のネオエピトープのそれぞれの免疫原性を測定するために、ワクチン接種前とワクチン接種後の血液試料からの高度に濃縮されたCD4およびCD8T細胞を分析した。変異を中心とする単一の27アミノ酸(aa)配列をコードするRNAでトランスフェクトした自己樹状細胞(DC)またはそれぞれの配列をカバーする15量体オーバーラップペプチド(OLP)を負荷したDCに対するIFNγ ELISpotによって免疫原性を読み取った。両方の免疫原性の読み取りは、極めて一致する結果を生じた。
【0369】
全体として、ネオエピトープの60%が免疫原性であることが判明した。各ワクチン接種患者は、個々のネオエピトープの少なくとも3つに応答した。免疫原性ネオエピトープの3分の1に対して既存のT細胞が存在し、ワクチン接種後にさらに増殖した。ネオエピトープのほぼ70%に対する応答は、ワクチン接種前には検出できず、新たに誘導された。
【0370】
ネオエピトープの大部分はもっぱらCD4によって認識され、より小さな画分はCD8T細胞によってのみ認識された。免疫原性ネオエピトープの約4分の1は、CD4およびCD8T細胞の両方と二重反応性であった。CD4T細胞とCD8T細胞の交差汚染は実験的に排除することができた(図1c)。15量体OLPによる応答の詳細な特徴付けは、CD4T細胞とCD8T細胞がネオエピトープのわずかに異なる部分を認識することを示した(図1a、b)。免疫原性ネオエピトープは、ポリネオエピトープ形式の適合性を支持するペンタトープRNAの5つの位置にわたって均等に分布していた。
【0371】
ネオエピトープ誘導T細胞が非変異対応物を認識するかどうかを評価するために、ELISpotによって野生型または変異エピトープを示すRNAまたはOLPでパルスしたDCを試験した。ネオエピトープRNAワクチン誘導応答の大部分について、それぞれの野生型エピトープに対する反応性は、検出されなかったかまたはより低いレベルであった。応答の約4分の1は、ELISpot分析によってバックグラウンドを上回る野生型エピトープとの反応性を示した。13aaのWT配列が、HLAクラスIおよびHLAクラスII分子上に提示され得る点変異のN末端とC末端を伸長させ、野生型エピトープ反応性T細胞をもたらし得ることは十分に考えられる。しかし、自己反応性T細胞の強力な増殖は、中枢性寛容機構によって抑制されると予想される。したがって、野生型RNA DCの有意な認識を示したワクチン標的(P04-C7-E258K、P09-MAN1A2-E323D、P05-FAM135-A479S)に対するT細胞の応答をより詳細に特徴付けた。P04-C7-E258Kについては、OLPを負荷したDCの試験によって野生型エピトープの反応性は確認されなかった。P09-MAN1A2-E323Dについては、27量体のaa9~23にわたるペプチドの変異および野生型の両方のエピトープの認識が観察されたが、aa5~19にわたるペプチドでは変異型のみが認識された。これは、交差反応性免疫応答が、腫瘍制御を発揮し得る、変異エピトープを排他的に認識するT細胞を含み得ることを意味する。すべての場合に、自己DCは、それぞれの野生型遺伝子を内因的に発現するにもかかわらず、非変異遺伝子産物の生物学的に有意な認識を除いて、それぞれのT細胞によって認識されないことが認められた。
【0372】
実施例4:ワクチン接種による中枢性記憶およびエフェクター記憶表現型を有するネオエピトープ特異的T細胞の迅速で効率的な増殖
この試験の免疫原性ネオエピトープの約5分の1は、非常に高い応答を誘発した。これらのT細胞は、事前のインビトロ刺激なしで血液試料のエクスビボ試験によって検出可能であった。ネオエピトープおよび共有TAAのワクチン接種を受けた患者では、ネオエピトープに対するT細胞応答がより強かった。分子レベルでT細胞認識を検討するために、選択した患者のワクチン接種後のT細胞培養物からネオエピトープ特異的T細胞受容体(TCR)をクローニングした。単一のネオエピトープ特異的CD4およびCD8T細胞をフローサイトメトリによって選別し、RT-PCRに基づくTCRシーケンシングに供した(Simon,P.et al.Cancer Immunol.Res.2,1230-44(2014))。クローニングしたTCRα鎖およびβ鎖をRNAにインビトロ転写し、ネオ抗原特異性およびHLA拘束性を試験するためにT細胞に同時トランスフェクトした。
【0373】
患者P01において、すべてが異なるTCRα/βクローン型で構成される4つのTCRを同定した(表1)。
【0374】
【表1】
TCR V(D)J遺伝子はIMGT命名法で示されている。V:可変; D:多様性;J:接合部;C:定数。OLP、オーバーラップペプチド;t.b.d.、実施予定;NARFL、核プレラミンA認識因子様(NARFL)、mRNA;HPN、ヘプシン;PPFIA4、タンパク質チロシンホスファターゼ、受容体型、fポリペプチド(PTPRF)、相互作用タンパク質(リプリン)、α4。
【0375】
4つのTCRはすべて、HLA A*3101上の核プレラミンA認識因子様遺伝子に由来する免疫優性NARFL-E62Kネオエピトープを認識したが、非変異エピトープは認識しなかった(図2)。
【0376】
患者P02は、リプリンα4遺伝子に由来するネオエピトープであるPPFIA4-S709Nを認識する2つのHLA B*3906拘束性TCRおよび変異ヘプシンHPN-G71RネオエピトープのHLA DRB1*0401拘束性認識を有する2つのTCRを有しており、これらは野生型交差反応性に関して異なっていた。
【0377】
これらのTCRのTCR-β配列を、ワクチン接種前(訪問V1、V12)およびワクチン接種後(訪問V20)の患者の末梢血細胞から生成されたTCRディープシーケンシングデータで確認した。それぞれのTCRβクローン型は、ワクチン接種前には検出できなかったが、ワクチン接種後の血液試料では非常に豊富であった。
【0378】
エクスビボMHC多量体分析による数人の患者のネオエピトープ応答の検討は、ネオエピトープワクチン接種の開始から2~4週間以内に、循環CD8T細胞の1桁の高いパーセンテージまでの急速な増殖を明らかにした。ネオエピトープ特異的CD8T細胞は、弱いPD-1陽性の記憶表現型亜集団を含んでいた。一部のネオエピトープ応答は中枢性記憶によって支配され、他はエフェクター記憶T細胞に支配された。ネオエピトープ負荷DCで刺激すると、CD8T細胞は、IFNγとTNFαの同時発現を伴う典型的な細胞傷害性サイトカインパターンを示した。
【0379】
実施例5:個別化ネオエピトープRNAワクチン接種による、再発の危険性が高い黒色腫患者における疾患制御
13人の試験患者のほとんどは最近再発した疾患の病歴があり、全員が再発の危険性が高かった。ネオエピトープRNAワクチン接種前と接種後のすべての患者で記録された黒色腫再発の比較は、この高危険度患者集団における著しく長い無増悪生存期間につながる、長期累積再発転移事象の非常に有意な減少(p<0.0001)を明らかにした。8人の患者は、ネオエピトープワクチン接種の開始時に測定可能な病変を有していなかった。8人の患者全員が、ワクチンネオエピトープに対して強い免疫応答を示し、データカットオフまでの全追跡期間(12~23ヶ月の範囲)内で無再発のままであった。免疫応答の動態と効力は様々であった;多くはワクチン接種の最初の3~4週間以内に進行した。他の5人の患者は、試験登録後に腫瘍の進行を経験し、ワクチンの適用前に標準的な治療を受けた。5人の患者全員が、個別化ワクチンが利用可能になった時点で測定可能な疾患を有していた。ネオエピトープワクチン接種下でのこれらの患者の疾患の経過は、次のように進行した:
患者P02は、試験登録時にいくつかの測定可能な内臓およびリンパ節転移を有しており、BRAF阻害剤で治療され、その治療下で疾患は緩やかに進行した。ネオエピトープワクチン接種が開始されたとき、BRAF阻害剤治療は継続された。P02は、10個のワクチンネオエピトープのうち6個に対してCD4T細胞応答を開始し、リンパ節転移の収縮、安定した内臓転移、進行性胸部病変および新しい測定可能な転移性病変を伴う混合応答を経験した。放射線療法ならびに進行性および新しい病変の切除後、患者はさらなる医学的治療を拒否し、最後の来院から12ヶ月後に亡くなった。
【0380】
患者P03のネオエピトープワクチン接種は、試験登録直後のいくつかの新しい肺門リンパ節および腎臓転移を伴う疾患の再発のために延期された。局所放射線療法と抗CTLA-4治療は失敗に終わった。腎転移は急速に進行し続け、切除された。この後、ネオエピトープRNAワクチン接種が開始され、3個のネオエピトープに対するT細胞応答が生じ、そのうち2個はCD8T細胞によって認識され、1個はCD4およびCD8T細胞によって認識された。ワクチン接種前に進行していた肺門リンパ節転移は、磁気共鳴画像法(MRI)によって決定されたように、その後12ヶ月以内に完全に消散した。患者は合計18回のワクチン注射による治療を完了し、さらなる治療なしで26ヶ月間再発がないままであった。
【0381】
患者P17は、試験への登録後に腋窩リンパ節転移と診断され、これは安定なままであり、4回のネオエピトープRNAワクチン注射後に切除され、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)および自己黒色腫細胞株(MZ-I-017)を作製するのに使用された。患者はさらに14回の注射にわたってワクチン接種を継続した。特に、P17のPBMCでは、ワクチンの10個のネオエピトープすべてに対する反応性T細胞が検出された。ネオエピトープ特異的T細胞も、腫瘍浸潤リンパ球内で検出された。グアニル酸結合タンパク質(GBP1-P86F)およびレチノールサチュラーゼ(RETSAT-P546S)の変異エピトープに対する反応性は特に高かった。RETSAT-P546Sネオエピトープ内で、HLA-A*6801拘束性最小エピトープ(HSCVMASLR)を同定し、HLA多量体染色によってTILにおけるこのエピトープに対するCD8T細胞の存在を確認した。
【0382】
自己由来RETSAT-P546S RNAをトランスフェクトしたDCでTILを刺激し、それぞれのTCRをクローニングした。単一細胞クローニングによって同定されたRETSAT-P546S特異的TCR No.8でトランスフェクトしたT細胞は、自己APCではなく自己黒色腫細胞株MZ-I-017を効率的に死滅させた。これは、腫瘍細胞によるネオエピトープの発現、プロセシングおよび提示を確認しただけでなく、ワクチン誘導細胞傷害性T細胞による腫瘍細胞上でのその有効な認識も確認した。驚くべきことに、TCR No.8のさらなる特徴付けは、最初に決定された最小エピトープとは異なる、ネオエピトープのHLA-B*3701(HLA-A*6801ではなく)拘束性認識を明らかにした(図3a、b、図4)。これは、同じ患者において、単一の変異が異なるペプチド/HLA複合体に対するCD8T細胞応答を同時に引き起こし得ることを示す(図3b)。
【0383】
患者P07には、ネオエピトープRNAワクチン接種の開始時に一連の再発と進行性の皮膚および内臓転移があった。P07は、6個のネオ抗原に対して強いT細胞応答を発現し、そのうち5個はエクスビボで測定可能であった。最初の画像診断で継続的な疾患進行が記録されたため、ネオエピトープワクチン接種を中止した。P07は、特別な配慮による抗PD-1(ペンブロリズマブ)プログラムに登録された。患者は、すべての黒色腫病変の急速な退縮、2ヶ月以内に標的病変の80%のサイズ縮小、および最終的に継続的なPD-1遮断下での完全奏効を経験した。ワクチン誘導T細胞は、ワクチン接種終了後最大9ヶ月間、高頻度の抗PD-1治療下で存続した。
【0384】
実施例6:ネオエピトープに対するCD4+およびCD8+T細胞の両方によって媒介される既存の免疫応答
患者材料
免疫原性試験のために得たPBMCは、黒色腫患者の末梢血試料または白血球除去法からFicoll-Hypaque(Amersham Biosciences)密度勾配遠心分離によって単離した。NCT02035956からの過剰な材料は、大規模な免疫原性試験に使用した。試験デザインは80ページに記載されている。
【0385】
ネオエピトープの選択
次世代シーケンシングの工程は81ページで詳細に説明されている。大規模な免疫原性試験のために、結合予測および標的発現レベルなどのいくつかの特徴をカバーする偏りのないアプローチを使用して、最大100個のネオエピトープを選択した。
【0386】
CD4およびCD8 T細胞のインビトロ刺激
ゼロ日目に、マイクロビーズ(Miltenyi Biotech)を使用して凍結保存PBMCから単球を単離し、IL-4/GM-CSFおよびIL-6/IL-1β/TNFα/PGE2を含むサイトカインカクテルを添加することによって急速樹状細胞(fDC)に分化させた。2日後、CD4+およびCD8+T細胞を、マイクロビーズ(Miltenyi Biotech)を使用して凍結保存PBMCから単離した。インビトロ刺激のために、CD4+T細胞とオーバーラップペプチド(OLP)プールを負荷したfDCを10:1のエフェクター対標的比で組み合わせ、CD8+T細胞とOLPプールを負荷したCD4除去PBMCを1:10のエフェクター対標的比で組み合わせた。1日後、10U/mL IL-2(Proleukin S、Novartis)および5ng/mL IL-15(Peprotech)を含む新鮮培地を添加した。培養の開始から7日後にIL-2を補充した。11日間のインビトロ培養後、細胞をフローサイトメトリで分析し、IFNγ ELISpotアッセイのエフェクター細胞として使用した。
【0387】
IFNγ ELIspot
未成熟樹状細胞(iDC)をIFNγ ELIspotアッセイの標的として使用した。マイクロビーズ(Milteniy Biotech)を使用して凍結保存PBMCから単球を単離し、IL-4およびGM-CSFの存在下で未成熟樹状細胞(iDC)に分化させた。
【0388】
IFNγに特異的な抗体(Mabtech)でプレコーティングしたマルチスクリーンフィルタプレート(Merck Millipore)を、2%ヒト血清アルブミン(CSL-Behring)を含むX-VIVO 15(Lonza)で1~5時間ブロックした。CD4+T細胞については、0.5x10個のエフェクター細胞/ウェルを、10:1のエフェクター対標的比で18~20時間、OLPを負荷した自己iDCで再刺激した。CD8+T細胞については、1x10個のエフェクター細胞/ウェルを、10:1のエフェクター対標的比で18~20時間、OLPを負荷した自己iDCで再刺激した。すべての試験を三重に実施し、アッセイ陽性対照(ブドウ球菌エンテロトキシンB(Sigma Aldrich))を含めた。対照OLPプールを負荷したiDCとエフェクターのみを陰性対照として使用した。ビオチン結合抗IFNγ抗体(Mabtech)でスポットを可視化した後、エクストラアビジンアルカリホスファターゼ(Sigma-Aldrich)およびBCIP/NBT基質(Sigma-Aldrich)と共にインキュベートした。CTLのImmunoSpot(登録商標)S6Core ELISpot Analyzerを使用してプレートをスキャンし、ImmunoCapture(商標)v6.6ソフトウェアで分析した。変異ペプチドによって刺激したT細胞応答を対照ペプチド(無関係なペプチドプール)と比較した。平均スポット数がそれぞれの対照と比較して少なくとも2倍高い場合、応答を陽性と定義した。
【0389】
ペプチド
インビトロ刺激のために、27量体ネオ抗原配列をカバーする11アミノ酸のオーバーラップを有する合成15量体ペプチド(粗生成物)を使用した(オーバーラップペプチド(OLP)と称した)。すべての合成ペプチドを購入し、JPT Peptide Technologies GmbHによって予備プールし、DMSO(AppliChem)に溶解してOLPあたり5mg/mLのストック濃度にした。インビトロ刺激には、ELISpot読み出し3.5μg/mLについて、OLPあたり2.5μg/mLの最終濃度を使用した。異なるネオ抗原のプール(ネオ抗原あたり4OLP)を、インビトロ刺激およびマトリックスアプローチを用いたELISpot読み出しに使用した。
【0390】
フローサイトメトリ分析
CD4およびCD8 T細胞培養物の純度をフローサイトメトリ(CD25 PE、CD56 PE CY7、CD8 APC、eFluor780 FVD、CD3 BV421、CD4 FITC)によって評価した。フローサイトメトリ分析は、BD FACSVerseTM(BD Biosciences)で実施した。取得したデータは、FlowJoソフトウェアのバージョン10(Tree Star)を使用して分析した。
【0391】
結果
これまでに7人の患者を分析し、CD4+およびCD8+T細胞の両方によって媒介される合計26の反応性を検出した。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
【配列表】
2024026224000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫療法のために疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド内の疾患特異的アミノ酸修飾の有用性を評価する方法であって、
当該方法は、以下:
(i)疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、MHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示されるかどうか、およびMHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示された場合に、CD4+およびCD8+T細胞と反応性であるかどうかを確認する工程であって、
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じもしくは異なる断片がMHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示されること、およびMHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じもしくは異なる断片がCD4+およびCD8+T細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、工程、
(ii)同じMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程であって、
同じMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示し、前記異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、工程、
(iii)前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるMHCクラスI分子に関連して提示されるかどうか、および異なるMHCクラスI分子に関連して提示された場合に、異なるCD8+T細胞と反応性であるかどうかを確認する工程であって、
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるMHCクラスI分子に関連して提示されること、および異なるMHCクラスI分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるCD8+T細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、工程、
の1つ以上を含む、方法。
【請求項2】
免疫療法における有用性につい疾患特異的アミノ酸修飾を選択するおよび/またはランク付けする方法であって、
当該方法は、以下:
(i)疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチドを同定する工程であって、前記ペプチドまたはポリペプチドが少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、工程、ならびに
(ii)以下:
(1)前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、MHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示されるかどうか、およびMHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示された場合に、CD4+およびCD8+T細胞と反応性であるかどうかを確認する工程であって、
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じもしくは異なる断片がMHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示されること、およびMHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じもしくは異なる断片がCD4+およびCD8+T細胞と反応性であることが、前記癌特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、工程、
(2)同じMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であるかどうかを確認する工程であって、
同じMHC分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの断片が異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示し、前記異なるT細胞受容体が異なるクローン型である、工程、
(3)前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じまたは異なる断片が、異なるMHCクラスI分子に関連して提示されるかどうか、および異なるMHCクラスI分子に関連して提示された場合に、異なるCD8+T細胞と反応性であるかどうかを確認する工程であって、
前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるMHCクラスI分子に関連して提示されること、および異なるMHCクラスI分子に関連して提示された場合に、前記疾患特異的アミノ酸修飾を含む前記ペプチドまたはポリペプチドの同じもしくは異なる断片が異なるCD8+T細胞と反応性であることが、前記疾患特異的アミノ酸修飾が免疫療法に有用であることを示す、工程、
の1つ以上を含む工程、ならびに
(iii)(i)の下で同定された少なくとも1つのさらなるアミノ酸修飾について工程(ii)を繰り返す工程、
を含む、方法。
【請求項3】
工程(ii)で試験される前記異なるアミノ酸修飾が、同じおよび/または異なるペプチドまたはポリペプチド内に存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)で試験された前記異なるアミノ酸修飾について得られたスコアを比較することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患特異的アミノ酸修飾(1または複数)が、疾患特異的体細胞変異(1または複数)によるものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記MHCクラスIおよびクラスII分子が、HLAクラスIおよびクラスII分子である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
MHC分子に関連した、疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片の提示は、ペプチド:MHC結合予測ツールを使用することにより、および/または前記断片のMHC分子への結合を実験的に測定することにより確認される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ワクチンを提供するのに有用である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫療法が、
(i)少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド、
(ii)(i)の下でのペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1つの断片を含むペプチドまたはポリペプチドであって、前記断片は少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチド、および
(iii)(i)または(ii)の下での前記ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸
の1つ以上の投与を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ワクチンを提供するための方法であって、
(i)請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって免疫療法に有用であると予測される1つ以上の疾患特異的アミノ酸修飾を同定する工程、
(ii)(1)免疫療法に有用であると予測される前記疾患特異的アミノ酸修飾の少なくとも1つを含む、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド、
(2)(1)の下でのペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1つの断片を含むペプチドまたはポリペプチドであって、前記断片は免疫療法に有用であると予測される前記疾患特異的アミノ酸修飾の少なくとも1つを含むペプチドまたはポリペプチド、および
(3)(1)または(2)の下での前記ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸
の1つ以上を含むワクチンを提供する工程
を含む方法。
【請求項11】
前記断片が、MHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドであるか、またはMHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドを提供するようにプロセシングされ得る、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
免疫療法のためのワクチンであって、
当該ワクチンは、以下:
(i)少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド、
(ii)(i)の下でのペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1つの断片を含むペプチドまたはポリペプチドであって、前記断片は、少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、ペプチドまたはポリペプチド、
(iii)(i)または(ii)の下での前記ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸、
の1つ以上を含み、
前記ペプチドまたはポリペプチドの断片は、以下:
(1)MHCクラスIおよびクラスII結合ペプチドもしくは潜在的なMHCクラスIおよびクラスII結合ペプチドであるか、またはMHCクラスIおよびクラスII結合ペプチドもしくは潜在的なMHCクラスIおよびクラスII結合ペプチドを提供するようにプロセシングされており、MHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示された場合、CD4+およびCD8+T細胞と反応性であり、
(2)MHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドであるか、またはMHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドを提供するようにプロセシングされており、同じMHC分子に関連して提示された場合、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であり、および/または
(3)異なるMHCクラスI分子に結合したペプチドもしくは異なるMHCクラスI分子に潜在的に結合したペプチドであるか、または異なるMHCクラスI分子に結合したペプチドもしくは異なるMHCクラスI分子に潜在的に結合したペプチドを提供するようにプロセシングされており、異なるMHCクラスI分子に関連して提示された場合に、異なるCD8+細胞と反応性である、
、ワクチン。
【請求項13】
医薬の製造におけるワクチンの使用であって、
前記医薬は、免疫療法のための医薬であり、
前記ワクチンは、以下:
(i)少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、疾患細胞で発現されるペプチドまたはポリペプチド、
(ii)(i)の下でのペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1つの断片を含むペプチドまたはポリペプチドであって、前記断片は、少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含む、ペプチドまたはポリペプチド、
(iii)(i)または(ii)の下での前記ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸、
の1つ以上を含み、
前記ペプチドまたはポリペプチドの断片は、以下:
(1)MHCクラスIおよびクラスII結合ペプチドもしくは潜在的なMHCクラスIおよびクラスII結合ペプチドであるか、またはMHCクラスIおよびクラスII結合ペプチドもしくは潜在的なMHCクラスIおよびクラスII結合ペプチドを提供するようにプロセシングされており、MHCクラスIおよびクラスII分子に関連して提示された場合、CD4+およびCD8+T細胞と反応性であり、
(2)MHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドであるか、またはMHC結合ペプチドもしくは潜在的なMHC結合ペプチドを提供するようにプロセシングされており、同じMHC分子に関連して提示された場合、異なるT細胞受容体を有するT細胞と反応性であり、および/または
(3)異なるMHCクラスI分子に結合したペプチドもしくは異なるMHCクラスI分子に潜在的に結合したペプチドであるか、または異なるMHCクラスI分子に結合したペプチドもしくは異なるMHCクラスI分子に潜在的に結合したペプチドを提供するようにプロセシングされており、異なるMHCクラスI分子に関連して提示された場合に、異なるCD8+細胞と反応性である、使用。
【請求項14】
ワクチンの提供に使用するために、少なくとも1つの疾患特異的アミノ酸修飾を含むペプチドまたはポリペプチドの断片を分析および選択するための、コンピュータベースの分析処理であって、
当該コンピュータベースの分析処理は、疾患特異的アミノ酸修飾を、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法により予測された免疫療法における有用性について測定および/またはランク付けすることを含む、コンピュータベースの分析処理。